説明

RTM成形方法

【課題】比較的大きな三次元面状体に対しても、樹脂注入から含浸・硬化までの成形工程を、高速で実施し、かつ、従来問題となっていた製品外観や製品精度を向上させ、製品コストの低減をはかることが可能なRTM成形方法を提供すること。
【解決手段】複数の型からなる成形型のキャビティー部に強化繊維基材を配設し、型締めした後、樹脂を注入して成形するRTM成形方法において、前記強化繊維基材と接する成形型の少なくとも一面に樹脂注入口を設け、冷熱媒体が流れる機構を備えてなる樹脂注入部より吐出される樹脂を前記樹脂注入口から注入することを特徴とするRTM成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP(繊維強化樹脂)を成形するためのRTM(Resin Transfer Molding)成形方法に関し、特に、中間部材を用いた高速成形の表面品位向上を可能にするRTM成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FRP、特にCFRP(炭素繊維強化樹脂)は軽量、かつ高い機械的特性を有する複合材料として様々な分野で利用されている。FRP成形方法の一つとして、型に強化繊維織物の積層基材等からなる強化繊維基材を載置し、型閉めの後、型内を減圧して液状樹脂を注入し、加熱硬化させるRTM成形方法が知られている。この方法は、プリプレグ成形のように予め、強化繊維基材に樹脂を含浸させた中間材料を用いることなく、強化繊維基材を直接型に入れ、型内で樹脂含浸をさせることから低コストの成形に用いられている。また、より成形コストを抑える手段としては、従来、型内で賦形させてあった強化繊維基材を、あらかじめ上下の賦形型で挟み込むことで、成形型に設置する前に事前に強化繊維基材にある程度の形状賦形する外段取り法も提案されている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
しかし、このような方法では型への基材配置に要する時間短縮は可能であるが、樹脂注入に要する時間がかかること、流動する樹脂量を大きく設定することが困難であることから、大型品のRTM成形が困難であるという問題があった。
【0004】
そこで、複数の型の間に、厚み方向に貫通する樹脂流路を成形する中間部材を配設し、該中間部材を介して、樹脂を強化繊維基材に対して複数の箇所からほぼ同時に注入するRTM成形が提案されている(たとえば、特許文献2)。この方法によると、比較的大きな三次元面状体に対しても、樹脂注入から含浸・硬化までの成形工程を、樹脂が流れない領域を生じさせること無く、高速で成形することができる。
【0005】
この中間部材を用いたRTM成形方法は、中間部材に樹脂流路用溝および基材方向へ貫通孔を形成することで、樹脂注入時にはこれを樹脂流路として使用することで樹脂を基材に高速分配し含浸させることが可能となる。しかしながら、樹脂硬化後には樹脂流路用溝、および貫通孔に樹脂の塊が残ることから、成形品の重量増加を招いたり、当該塊の樹脂収縮の影響により成形品の表面に凹凸等の外観不良が現れたりする問題があった。また、金属製の中間部材を用いる場合は、再利用可能である反面、中間部材そのものが高価であること、および成形時に中間部材専用の型昇降装置といった特別な設備を必要とすることから、高価な設備費用が必要であった。さらには中間部材に付着した樹脂の除去に時間がかかるといった問題があった。
【0006】
そこで、安価な中間部材として、複数の貫通孔を設けた樹脂製の多孔板や樹脂製フィルムを使用する方法も提案されているが、この場合、一方の型に樹脂通路用の溝を設けなければならないため、型加工コストが増大化していた。また、溝を設けない場合には、上記中間部材と一方の型との間に隙間を形成することが必要であるが、隙間調整が困難で、プロセスが安定しない等の問題があった。
【0007】
また、注入する樹脂のロスを少なくするため、熱硬化性樹脂の不都合な硬化を防止して望ましい円滑な樹脂流路の開閉を可能とするRTM成形方法が提案されている(たとえば特許文献3)。この方法によると、樹脂導入路の冷却により樹脂導入路と金型内との温度差が一定に保たれているため、樹脂導入路内に滞留する樹脂の熱硬化が防止され、樹脂流路の開閉による注入操作が可能となる。しかしながら、樹脂導入路を冷却し内部に滞留する樹脂が熱硬化しないようにすることで、樹脂の粘度が増大し、流動性が低下するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−305719号公報
【特許文献2】特開2005−246902号公報
【特許文献3】特開2009−51208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、上記のような現状に鑑み、比較的大きな三次元面状体に対しても、樹脂注入から含浸・硬化までの成形工程を、高速で実施し、かつ、従来問題となっていた製品外観や高価な型費を抑制し、製品コストの低減をはかることが可能なRTM成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内容は、以下の(1)〜(8)の方法である。
(1)複数の型からなる成形型のキャビティー部に強化繊維基材を配設し、型締めした後、樹脂を注入して成形するRTM成形方法において、前記強化繊維基材と接する成形型の少なくとも一面に樹脂注入口を設け、冷熱媒体が流れる機構を備えてなる樹脂注入部より吐出される樹脂を前記樹脂注入口から注入することを特徴とするRTM成形方法。
(2)前記樹脂注入部に樹脂の流量を制御するバルブ機構を備えてなることを特徴とする(1)に記載のRTM成形方法。
(3)樹脂混合部から前記樹脂注入部をつなぐ樹脂供給路に温度調節機構を備え、樹脂注入時の温度が保持時の温度より高くなるように成形中に温度を変動させることを特徴とする(1)または(2)に記載のRTM成形方法。
(4)前記樹脂注入部が複数配置されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のRTM成形方法。
(5)複数配置された前記バルブ機構が、各々独立して開閉できることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のRTM成形方法。
(6)前記強化繊維基材が、面形状を有する(1)〜(5)のいずれかに記載のRTM成形方法。
(7)前記強化繊維基材が、内部にコア材を有していることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のRTM成形方法。
(8)前記樹脂注入口が配置された成形型と強化繊維基材との間に、樹脂流路用メディアを配置することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のRTM成形方法。
(9)前記、樹脂流路用メディアの厚みが0.2〜1mmの範囲内であることを特徴とする(7)記載のRTM成形方法。
【0011】
ここで、樹脂流路用メディアとは、樹脂注入時、面方向への樹脂流動しやすいものであり、面方向への流動抵抗が低ければ良く、たとえば、網目状に織られた織布等を用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るRTM成形方法によれば、比較的大きな三次元面状体に対しても、樹脂注入から含浸・硬化までの成形工程を、高速で実施し、かつ、従来問題となっていた製品外観や高価な型費を抑制し、製品コストの低減をはかることが可能なRTM成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のRTM成形方法に用いる成形型の概略断面図である。
【図2】本発明のRTM成形方法に用いる成形型において、複数の樹脂注入口を持つ成形型の概略断面図である。
【図3】本発明の別の態様のRTM成形方法に用いる成形型の概略断面図である。
【図4】本発明における強化繊維基材と樹脂流路用メディアの積層構成を示した図である。
【図5】本発明の別の態様における強化繊維基材と樹脂流路用メディアの積層構成を示した図である。
【図6】本発明のRTM成形方法に用いる成形型と樹脂注入機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明は、例えば、図1の成形型(上型)6、成形型(下型)7のような複数の型からなる成形型のキャビティー部に強化繊維基材12を配設し、型締めした後、樹脂を注入して成形するRTM成形方法である。
【0016】
油圧シリンダー1aに接続したシャフトバルブ1bを上昇させることにより、図示していない樹脂注入機より送液された樹脂は、樹脂流路3を通じてキャビティー部内に導入される。キャビティー部の周囲は、成形品形状に加工された樹脂排出溝9によって囲われている。注入された樹脂は、強化繊維基材12内に含浸するとともに、余剰樹脂や強化繊維基材12内に存在していた気体は樹脂排出溝9を通り、排出管10によって型外に排出される。そして、排出管10を図示しないバルブで閉止することにより樹脂排出を止め、シャフトバルブ1bを閉じて型内を密閉し、樹脂を硬化させると一回の成形が完了する。
【0017】
上記成形において、排出管10の先に真空ポンプを接続し、型内を真空にした状態で樹脂を注入すると、樹脂中に残存する気泡の抱きこみの少ない成形品を得ることができる。また余剰樹脂等を強制的に短時間で排出することも可能であるので好ましい態様である。
【0018】
本発明は、この強化繊維基材12を配設したキャビティー部に連通するように成形型6、7の少なくとも一面に樹脂注入口2aを設け、冷却もしくは加熱可能な機能を有した樹脂注入部2から樹脂を注入することが必要である。ここで、少なくとも一面に樹脂注入口2aを設けるとは、キャビティー部に配設した強化繊維基材12の上面、下面、側面のうちから選ばれる少なくとも一面に接するように、成形型(上型)6もしくは成形型(下型)7に樹脂注入口2aを穿設することをいう。樹脂注入口2aの大きさは特に規定しないが、強化繊維基材から流出する樹脂量を増やさないためにも、後述するシャフトバルブ1bの太さ程度とすることが好ましい。
【0019】
この樹脂注入口2aから樹脂を注入できるように、成形型(上型)6もしくは成形型(下型)7の表面には、樹脂注入部2が固定されている。樹脂注入部2は、樹脂を注入するための樹脂流路3が設けられ、この樹脂流路3を開閉するためのバルブ機構としてシャフトバルブ1bが挿通されているとともに、その内部には、冷熱媒体を流通可能にするための冷熱媒体管4が設けられている。樹脂注入部2は、成形型(上型)6もしくは成形型(下型)7と、O−リング2bを介して取付ボルト5で固定されている。O−リング11は、樹脂注入口2aから流出する樹脂の拡散防止、および型内の真空保持をするためのものである。
【0020】
シャフトバルブ1bは、油圧シリンダー1aと接続されており、樹脂注入時はシャフトバルブ1bを上昇させて樹脂流路3を開放して、樹脂を強化繊維基材に含浸させる。また、樹脂注入を終了させるには、シャフトバルブ1bを下降させて樹脂流路3を閉塞させる。油圧シリンダー1aの押圧により、含浸させた樹脂の注入圧力によってシャフトバルブ1bが持ち上がることはない。
【0021】
また、油圧シリンダー1aによってシャフトバルブ1bを上昇/下降させて樹脂流路3を開放/閉塞するだけでなく、樹脂流路3の一部のみを開放することで樹脂の吐出流量を制御してもよい。また、図示していないが、樹脂吐出量が調整可能な樹脂注入制御バルブを、樹脂流路3に設けることも好ましい。
【0022】
樹脂の特性に応じ、樹脂注入部2の内部に設けた冷熱媒体管4に冷媒や熱媒を通すことで、樹脂流路3を冷却もしくは加熱することができるため、樹脂注入配管内の樹脂温度を適切に管理することができ、配管内での樹脂を適正粘度に保持したり、硬化を防止したりすることが可能となる。
【0023】
また、図6に示す樹脂流路3と樹脂混合部64をつなぐ樹脂供給路65に温度調節機構(図示せず)を備えることも好ましい。これにより、樹脂注入部2の内部だけでなく、樹脂注入部2に至るまでの樹脂供給路65や樹脂流路3に存在する樹脂温度の管理が可能となる。
【0024】
これらの温度調節機構を用いることにより、樹脂注入時の温度が保持時の温度より高くなるように成形中に温度を変動させることで、樹脂注入時には温度を高くすることで樹脂粘度を低下させて樹脂の流動性を確保し、保持時には温度を低くすることで樹脂の硬化反応を抑制することができるので、繰り返し成形を行う場合にも、樹脂注入時に素早く樹脂を所定の粘度で注入できるため、より効率の良いRTM成形方法を実施することが出来る。樹脂注入部2および樹脂供給路65の樹脂温度を一定とすると、樹脂温度が高い場合は、熱硬化の抑制が不十分となり樹脂を低粘度で保持できる時間が短くなるため、滞留する樹脂が硬化する恐れがある。また、樹脂温度が低い場合は、樹脂の熱硬化を防ぐことができるものの、樹脂粘度が高くなるため流動性が悪くなり、樹脂の注入に支障を来すこととなる。
【0025】
冷熱媒体管4を流動する媒体の材質は特に規定はなく、水やオイル等が挙げられる。また、その温度は、成形するのに必要な樹脂特性を保持できる温度であれば、特に規定はなく、15℃から300℃の範囲が好ましい。成形中の温度変動範囲は使用する樹脂の樹脂特性に因るが、少なくとも3℃以上変動することが好ましい。熱硬化性樹脂の場合、一般的に温度が10℃上昇すると樹脂粘度および硬化時間が半減するため、成形中の温度変動範囲としては樹脂特性に顕著な変化が見られる10℃以上であることがより好ましい。
【0026】
樹脂供給路65の温度調節機構は温度管理ができれば特に制限はなく、樹脂供給路の周囲に樹脂注入部と同じく冷熱媒体を流動させても良いし、あるいは、電気ヒーター等を用いて温度管理をしても良い。
【0027】
また、図2に示すように、1組の成形型に樹脂注入部21,22,23を設けても良い。このとき、それぞれの樹脂注入部21、22、23のシャフトバルブを独立して開閉できるようにしてもよい。
【0028】
例えば、樹脂注入部22のシャフトバルブを上昇させて樹脂流路を開け、樹脂を樹脂注入口22aから強化繊維基材27に含浸させながら、樹脂が樹脂注入口21a、23aに到達する頃に樹脂注入部21、23のシャフトバルブを持ち上げることで連続して樹脂注入を行うと、気泡の抱きこみや樹脂含浸斑を減らすことも可能である。このように、樹脂注入口を複数設けると、多量の樹脂を短時間で型内に供給することができる。
さらに、各樹脂注入部に設けた樹脂注入制御バルブ(図示せず)を、樹脂流動に合わせ樹脂注入口ごとに独立して開閉制御することにより、樹脂流動をコントロールでき、効果的に樹脂を含浸させて外観品位の良好な成形品を得ることができる。このような樹脂注入制御バルブ(図示せず)を備えることで、各樹脂注入口21a,22a,23aに流入する樹脂量を管理することもでき、安定した樹脂含浸を行うことができる。
【0029】
また、1組の成形型に複数の樹脂注入部を設けている場合、樹脂注入部の1つあるいは複数個を排出部として使用してもよい。この場合、排出管10を用いなくても成形が可能となる。
【0030】
本発明の強化繊維基材12、27に用いられる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素高強度合成繊維等を用いることができ、特に、炭素繊維が好ましい。強化繊維基材の形態は特に限定されず、一方向シートや織物、不織布等を採用でき、通常、これらを複数枚積層して基材を形成し、必要に応じて事前に賦形したプリフォームの形態で用いることができる。
【0031】
特に、強化繊維基材12、27が面形状、すなわち、積層厚みよりも繊維方向に広がりを見せる形状を有する場合、繊維方向と平行して樹脂注入口を配置することによって、強化繊維基材12、27への樹脂供給が広範囲に行われる。その結果、強化繊維基材12、27の積層厚み方向への樹脂含浸が迅速に行われるという効果が得られるので好ましい。
【0032】
本発明の別の態様として、図3に示すように、成形型32と強化繊維基材37の間に樹脂流路用メディア36を配置することもできる。樹脂注入口33aから注入された樹脂は、後述するように樹脂流路用メディア36の織組織を伝って樹脂流路用メディア36が布設された領域に一気に広がり、強化繊維基材37に短時間で含浸させることもできる。
【0033】
樹脂流路用メディア36の厚みを0.2mm以上とすることで、樹脂の含浸時間が短くなり、厚みを1mm以下に抑制することで、余分な樹脂が不要になるので好ましい。逆に、厚みが0.2mm未満になると、樹脂が樹脂流路用メディア36の領域に広がりにくく、短時間で強化繊維基材に含浸させることができなくなる。また、厚みが1mmを超えると、樹脂流路用メディア36上に余剰する樹脂量が増大してしまい、排出量や排出時間が増えるといった問題が生ずる。
【0034】
このように成形型と強化繊維基材との間に樹脂流路用メディアを配置すると、樹脂の流動性を向上させることが可能であることから、少ない樹脂注入口であっても、注入された樹脂はその隙間の領域に一気に広がり、高速で強化繊維基材の板厚方向に樹脂含浸をせしめることが可能となる。
【0035】
また、樹脂流路用メディアを成形後に剥がす場合は、図4に示すように、樹脂流路用メディア41と強化繊維基材43との間に、離型性に優れるピールプライ42を配置し、同時に成形し、硬化後に剥がしても良い。ピールプライ42としては、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等、注入する樹脂との接着力が低い樹脂が好ましい。
【0036】
更に図5に示すように、強化繊維基材52,53の間に樹脂流路用メディア51が配置され、製品に成形後に成形品と一体になる構造となっていても良い。
【0037】
本発明に用いられる樹脂流路用メディア36、41、51の種類としては、特に規定はなく、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。その織組織も特に規定はなく、平織や綾織、メッシュ等が挙げられ、また、マットのような不織布でも良い。
【0038】
本発明に係るRTM成形方法で使用する樹脂としては、粘度が低く強化繊維への含浸が容易な熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を形成するRIM用(Resin Injection Molding)モノマーなどが好適である。熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂、また、ビスマレイド・トリアジン樹脂等のポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリジアリルフタレート樹脂、さらにメラミン樹脂、ユリア樹脂やアミノ樹脂等が挙げられる。
【0039】
また、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン11樹脂などのポリアミド樹脂、またはこれらポリアミド樹脂の共重合ポリアミド樹脂、また、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂などポリエステル樹脂、またはこれらポリエステル樹脂の共重合ポリエステル樹脂、さらにポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂など、更にまた、ポリエルテルエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂などに代表される熱可塑性エラストマー樹脂等が挙げられる。
【0040】
また、上記の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴムから選ばれた複数をブレンドした樹脂を用いることもできる。
【0041】
中でも好ましい樹脂として自動車用外板部材の意匠性に影響を与える成形時の熱収縮を抑える観点から、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0042】
一般的に、複合材料用エポキシ樹脂としては、主剤として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が用いられる。一方、硬化剤としては、ジシアンジアミドにジクロロフェニルジメチル尿素を組み合わせた硬化剤系が作業性、物性等のバランスに優れている点で好適に使用されている。しかし、特に限定されるものではなく、ジアミノジフェニルスルホン、芳香族ジアミン、酸無水物ポリアミドなども使用できる。また、樹脂と前述の強化繊維の比率は、体積比率で30:70〜70:30の範囲内が外板として適当な剛性を保持する点で好ましく、さらに好ましくは、体積比率で40:60〜60:40が、樹脂の強化繊維への含浸性と含浸速度の観点から好ましい。また、FRP構造体の熱収縮を低減させ、クラックの発生を抑えるという点から、エポキシ樹脂または熱可塑性樹脂やゴム成分などを配合した変性エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、ジシクロペタジエン樹脂がより適している。
【0043】
また、本発明に係る成形方法においては、繊維強化樹脂とコア材との積層構造を有する繊維強化樹脂構造体を成形する際にも適用できる。たとえば、コア材の両側に繊維強化樹脂層を配置したサンドイッチ構造を挙げることができる。コア材としては、弾性体や発泡材、ハニカム材の使用が可能であり、軽量化のためには発泡材やハニカム材が好ましい。発泡材の材質としては特に限定されず、たとえば、ポリウレタンやアクリル、ポリスチレン、ポリイミド、塩化ビニル、フェノールなどの高分子材料のフォーム材などを使用できる。ハニカム材の材質としては特に限定されず、たとえば、アルミニウム合金、紙、アラミドペーパー等を使用することができる。
【0044】
以下、図面を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0045】
図1は、本発明の一実施態様に係るRTM成形方法について示してものである。図1において、成形型は、上型6と、下型7から構成され、上型6は支柱13a,13bを通じて昇降装置上盤面14に固定され、下型7は、昇降装置下盤面15に固定されて、成形型が図示していない昇降装置によって開閉可能な構造となっている。また、成形型上型6は温調穴8aに、下型7は温調穴8bに熱媒体を流動させることで、加熱冷却可能な構造となっている。
【0046】
下型7には、製品より若干大きめの樹脂排出溝9が全周に渡って形成されており、その内側のキャビティーに強化繊維基材12を配置する。その後、図示しない昇降装置を稼動させ上型6を閉じる。下型7の周囲にはO−リング11が上型6と接する面に配置されており、型内が密閉される。
【0047】
次に排出管10の先に図示していない真空ポンプを接続し、型内を真空状態に保持する。
【0048】
樹脂注入部2は、冷熱媒体管4内に、成形する樹脂に合わせた温度になるよう流体を循環させる。
【0049】
その後、樹脂流路3に図示していない樹脂注入機を接続し、樹脂を送液する。このとき、油圧シリンダー1aを作動させることで、シャフトバルブ1bを上昇させ、樹脂流路3より樹脂を型内に入れることで、強化繊維基材12に樹脂含浸が始まる。
【0050】
そして、余剰樹脂や気体が樹脂排出溝9を通り、排出管10を通じて型外に排出される。そして、排出管10を図示しないバルブで閉止することにより樹脂排出を止め、シャフトバルブ1bを下降させて閉じることで、型内を密閉する。樹脂注入終了後、樹脂注入部2や樹脂流路3、樹脂供給路65に滞留する樹脂は、樹脂硬化のため昇温した上型6の放熱により、硬化されやすい。このような滞留樹脂の硬化を抑制するため、樹脂を保持しておく場合には、冷熱媒体管4に流す流体温度を下げて樹脂注入部2や樹脂流路3を冷却するとともに、図示しない温度調節機構により樹脂供給路65の温度を低く保っておく。このとき、樹脂に圧力を掛け保持した状態で保持しても良い。そして、所定時間保持し硬化させることで成形を完了させる。
【0051】
最後に図示しない昇降装置を稼動させ、上型6を上昇させることで、樹脂の含浸し硬化した強化繊維基材12を得ることができる。
【0052】
樹脂流路3は、冷熱媒体管4にて低い温度に保たれているので、樹脂注入部2内の樹脂が硬化することを防ぐことができる。その後、新たな強化繊維基材12を配置して成形する際には、再び樹脂注入部2の温度を高くすることで、適切な粘度や温度を保った状態で最初から樹脂を注入することができるため、良好な外観をもつ成形品を、高速でしかも何回も連続して成形することが可能となる。
【0053】
本発明によれば、成形型のキャビティーに配設した強化繊維基材に対し、少なくとも一方の成形型に設けた樹脂注入口より樹脂を注入し、強化繊維基材の厚み方向に含浸させることで、高速に成形することが可能であり、かつ、成形型と強化繊維基材の間に中間板等を用いていないことから、厚み精度の良好な成形品を得られる。
【0054】
一方、コスト面では中間部材を用いることがないことから、従来必要としていた中間部材の清掃作業を行う必要が無く、成形タクトが短縮される。また、設備投資の面では、中間部材を用いないことから、特別な金型昇降装置の必要は無くなること等の効果が得られ、安価に製品を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1a:油圧シリンダー
1b:シャフトバルブ
2:樹脂注入部
2a:樹脂注入口
2b:O−リング
3:樹脂流路
4:冷熱媒体管
5:取付ボルト
6:成形型(上型)
7:成形型(下型)
8a:温調穴
8b:温調穴
9:樹脂排出溝
10:排出管
11:O−リング
12強化繊維基材
13a:支柱
13b:支柱
14:昇降装置上盤面
15:昇降装置下盤面
21:樹脂注入部
21a:樹脂注入口
22:樹脂注入部
22a:樹脂注入口
23:樹脂注入部
23a:樹脂注入口
24:成形型(上型)
25:成形型(下型)
26:排出管
27:強化繊維基材
28a:支柱
28b:支柱
31:成形型(下型)
32:成形型(上型)
33:樹脂注入部
33a:樹脂注入口
34:樹脂流路
35:油圧シリンダー
36:樹脂流路用メディア
37:強化繊維基材
41:樹脂流路用メディア
42:ピールプライ
43:強化繊維基材
51:樹脂流路用メディア
52:強化繊維基材
53:強化繊維基材
61:樹脂注入機
62:主剤タンク
63:硬化剤タンク
64:樹脂混合部
65:樹脂供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の型からなる成形型のキャビティー部に強化繊維基材を配設し、型締めした後、樹脂を注入して成形するRTM成形方法において、前記強化繊維基材と接する成形型の少なくとも一面に樹脂注入口を設け、冷熱媒体が流れる機構を備えてなる樹脂注入部より吐出される樹脂を前記樹脂注入口から注入することを特徴とするRTM成形方法。
【請求項2】
前記樹脂注入部に樹脂の流量を制御するバルブ機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のRTM成形方法。
【請求項3】
樹脂混合部から前記樹脂注入部をつなぐ樹脂供給路に温度調節機構を備え、樹脂注入時の温度が保持時の温度より高くなるように成形中に温度を変動させることを特徴とする請求項1または2に記載のRTM成形方法。
【請求項4】
前記樹脂注入部が複数配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項5】
複数配置された前記バルブ機構が、各々独立して開閉できることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項6】
前記強化繊維基材が、面形状を有する請求項1〜5のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項7】
前記強化繊維基材が、内部にコア材を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項8】
前記樹脂注入口が配置された成形型と強化繊維基材との間に、樹脂流路用メディアを配置することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のRTM成形方法。
【請求項9】
前記樹脂流路用メディアの厚みが0.2〜1mmの範囲内であることを特徴とする請求項8記載のRTM成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−89501(P2010−89501A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209038(P2009−209038)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】