説明

S−ニトロソチオール化合物および関連誘導体

本発明は、無呼吸症並びに睡眠、肥満、ある種の薬品および他の医学的症状に伴う換気過少症の処置を包含する正常な呼吸調節の欠如を処置する方法に関する。一面で、本発明は正常な呼吸の欠如を処置する単一化合物を含んでなる組成物の投与により呼吸の失調の処置に関する。別の面で、本発明は2種もしくはそれ以上の化合物の組み合わせを含んでなりその少なくとも1種が正常な呼吸の欠如を処置する組成物の投与による呼吸の失調の処置に関する。ある面で、化合物はS−ニトロシル化剤である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
呼吸の正常な調節は、血液、組織および脳内の例えば二酸化炭素、pHおよび酸素レベルの如き化学的刺激に対する身体の解釈および応答を包括する複雑な工程である。呼吸調節はまた、覚醒性(すなわち、罹患体が目覚めているかまたは寝ているかどうか)によっても影響される。脳髄質内には、呼吸に影響し且つ種々の信号を解釈しそして呼吸動作を行う筋肉に対して指令を出す呼吸調節中枢がある。重要な筋肉群は腹部、横隔膜、咽頭および胸郭内にある。中枢および末梢にあるセンサーが次に変動する酸素要求に応答しうる脳の中枢呼吸調節部分に入力を与える。
【0002】
正常な呼吸リズムは主として二酸化炭素レベル(CO)における変化に対する身体の迅速な応答により維持される。上昇したCOレベルは呼吸速度および深度を高めるように信号を発生してより高い酸素レベルおよびそれに続くより低いCOレベルをもたらす。逆に、低いCOレベルは呼吸するための刺激がないため無呼吸(呼吸なし)の期間をもたらしうる。これは、人間が換気過少するときに起きる事象である。
【0003】
脳の役割の他に、呼吸調節は末梢および中枢の両方の化学受容器からのフィードバックの結果であるが、各々の正確な寄与は未知である。
【0004】
疾病の一次的または二次的特徴としての正常な呼吸リズムの欠如を伴う種々の疾病がある。呼吸リズム調節の一次的欠如の例は、無呼吸症(呼吸が10〜60秒間にわたり繰り返し停止する中枢性、混合性および閉塞性)並びに先天性中枢性換気過少症候群である。呼吸リズムの二次的欠如は、慢性心肺疾病(例えば、心不全、慢性気管支炎、気腫、および切迫性呼吸不全)、過剰な体重(例えば、肥満症−換気過少症候群)、ある種の薬品(例えば、麻酔薬、鎮痛薬、不安症薬、催眠薬、アルコール、催眠性鎮痛薬)および/または神経系統に影響する因子(例えば、発作、腫瘍、外傷、放射性損傷、ALS)に起因しうる。身体が低い酸素レベルに慢性的に露呈される慢性の閉塞性肺疾病では、CO/pH呼吸刺激を部分的に中和する効果を有する炭酸水素酸塩の腎臓媒介保持によって身体はより低いpHに適合する。それ故、罹患体は感度のより少ない酸素をベースとしたシステムに依存しなければならない。
【0005】
特に、睡眠中の正常な呼吸リズムの欠如は普遍的な症状である。睡眠時無呼吸症は無呼吸または部分的呼吸の頻繁な期間により特徴づけられる。これらの無呼吸症に寄与する重要な因子は、CO受容器感度における低下、低酸素症換気応答感度における低下(例えば、低い酸素レベルに対する低下した応答)および「覚醒性」の欠如を包含する。まとめると正常な呼吸リズムが妨害されて低酸素症(およびそれに伴う酸化ストレス)をもたらしそして実際に重篤な心臓血管結果(高血圧症、発作、心臓発作)を生ずる。いびきは睡眠時無呼吸症と一緒になってある種の特徴を有する。上部気道筋肉がそれらの緊張力を失い、いびきに伴う音を生ずるだけでなく不充分な空気流も生じて、それが低酸素症をもたらしうる。
【0006】
多くの呼吸調節疾患のための決定的な処置は機械的換気または正の気道圧力装置(例えば、連続的な正の気道圧力装置(CPAP装置)、2−レベルの正の気道圧力装置(BiPAP装置))のいずれかである。数種の薬剤が睡眠−関連性呼吸疾患における呼吸を調節するための関与剤として提唱されている。De Backerは論文を発表しそしてプロゲスチン(Progestin)、アルミトリン(Almitrine)およびアセタゾルミド(Acetazolmide)を記述した(非特許文献1)。Hudgelおよ
びThanakitcharuも睡眠障害のある呼吸の薬理学的処置の論文を発表しそして他の剤に加えてメドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、甲状腺置換剤(thyroid replacement)、アセタゾラミド(acetazolamide)、テオフィリン(theophylline)、三環式抗鬱剤、セロトニン再吸収阻害剤およびクリニジン(clonidine)を記述した(非特許文献2)。2005年にQureshiおよびLee−Chiongは広範囲の薬理学的処置を包含する閉塞性睡眠時無呼吸症を処置するための種々の医学的選択肢の論文を発表した。剤の数例は、ベンゾジアゼピン類、催眠薬、アセタゾラミド、抗鬱剤、およびアゴニスト、再吸収阻害剤またはアンタゴニストのいずれかとしてセロトニンに影響する剤を包含する(非特許文献3。
【0007】
特に、DeBackerは炭酸アンヒドラーゼ阻害剤であるアセタゾラミドが呼吸刺激の機構としてのpHを低下させるその従来の作用と関係ない有利な影響を与えるようであることに気付いた。中枢性無呼吸症罹患体における小規模の未調節の臨床試験では、低い服用量のアセタゾラミドは無呼吸事象を処置前の25.5から1ヶ月間の処置後の6.8に低下させた(73%)ことが見出された。優勢的に閉塞性の睡眠時無呼吸症のある罹患体ではそれより少ない低下(約25%)が見られた。
【0008】
さらに最近では、CarleyおよびRadulovackiは閉塞性睡眠時無呼吸症においてつぶれる喉の部分における運動緊張力を高めるためのセロトニンアゴニスト/アンタゴニストの使用を記述した(非特許文献4)。この概念は最近ではオルガノン・アンド・サイプレス・バイオサイエンス(Organon and Cypress Bioscience)および別のグループであるBTG,plcにより商業的に展開中である(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照のこと)。
【0009】
GastonおよびGozalはS−ニトロソチオール信号発生経路を使用して毎分換気量を高めることにより過呼吸に調節をかけることを示すことによる基本的に異なる方式を提案した(引用することにより本発明の内容となる特許文献4)。彼らは、中枢−媒介性の低酸素症換気応答系統はある種のS−ニトロソチオール化合物の調節下にあることを、初めて、示した。GastonおよびGozalは、他の反応の中でも呼吸の速度および深度における増加を引き起こす低い酸素レベルに対する身体の典型的な応答を誘発しうるある群の化合物を示している。
【0010】
哺乳動物が呼吸しそして利用可能な酸素の量および身体の需要に応じて呼吸を変動させる能力は生存にとって必須である。一次的または二次的原因のいずれかによる呼吸リズムの欠如により特徴づけられる種々の症状がある。米国における最も頻繁に起きる症状に関して苦しんでいる個体の推定数は、睡眠時無呼吸症:1500−2000万人;肥満症−換気過少症候群:500−1000万人;慢性心臓病:500万人;慢性閉塞性肺疾病(COPD)/慢性気管支炎:1000万人;薬品−誘発性換気過少症:200−500万人;および機械的換気器の取り外し(weaning):50万人を包含する。
【0011】
呼吸の調節は複雑な工程である。それは呼吸駆動力並びに空気流が内部で起きる管の直径に関係する。例えば、哺乳動物がストローを通して呼吸することを想定する。ストローが乾燥しており且つ壁が堅い場合には、吸気(負の圧力)および呼気(正の圧力)の両方の間に空気は円滑に流れるであろう。しかしながら、ストローが呼気中に湿り始める場合には、壁はつぶれそして動物は空気を吸うことができなくなるであろう。この「湿ったストロー」の例は睡眠時無呼吸症に苦しむ罹患体において起きることを部分的に記述している。睡眠時無呼吸症の罹患体が睡眠に入る時に、呼吸駆動力が低下しそして気道内の筋肉緊張力が低下しそして吸気中に気道がつぶれて正常な呼吸に対する閉塞をもたらす。睡眠時無呼吸症に対する最近の処置は主として正の気道圧力(PAP)装置の使用である。こ
れらの装置に伴うコンプライアンスは一般的に非常に劣悪である。単独でまたは正の気道圧力装置に対する補助として使用できてそれにより気道の通気性を維持するために必要な圧力を低下させる製薬学的製品はこれらのPAP装置に伴うコンプライアンスを改良するかまたは処置の代替手段を提供するための重要な進歩となるであろう。
【0012】
S−ニトロソチオール類は薬品中での広範囲の治療用途を潜在的に有するとして同定された化合物である(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。これらの化合物は酸化窒素(NO)に結合するチオール基(SH)を有する。
【0013】
構造によって、チオール基は酸化窒素(NO)の担体として作用するかまたはNOに共有結合しうる。ある種の分子がNO担体および共有結合された分子の両方の性質を有することも可能である。ある種のSNO剤は呼吸の速度および深度(呼吸調節)、換気−灌流適合性、上部気道筋肉緊張力および肺血管緊張力の調節にとって必須である信号発生剤として作用する。
【0014】
Gaston他は呼吸生物学におけるS−ニトロソチオール信号発正の論文を最近提案した(非特許文献7)。呼吸駆動力が損なわれている罹患体においてそれを回復する能力は低下した呼吸駆動力に関係する症状を有する米国だけで5000万人の罹患体に対する治療薬の新時代を開くであろう(非特許文献7)。
【0015】
SNO化合物の作用の詳細な機構を理解する際に幾つかの大躍進も最近あった。Chen他(非特許文献9)は、SNO S−ニトロソグルタチオンは、嚢胞性線維症における用途に適用される時には、cGMP−依存性およびcGMP−非依存性機構の両者を介するクロリド分泌を刺激することを最近報告した。cGMPに対して一か八かの影響を与えるSNO類はSNO類の分子生物学を理解する際の重要な疑問点であった。SNO類の細胞内生成および測定をもたらす性質の洞察は2004年に発表された論文により提案された(非特許文献10)。
【0016】
PalmerはSNO類がHIF−1を活性化させる経路を記述している。酸素正常状態はHIF−1αの基Pro564およびPro402におけるプラリン(praline)ヒドロキシル化により感作される。低酸素症ではヒドロキシル化は起きず、そしてHIF−1は安定化され、βサブユニットと二量化し、そして低酸素症−調整遺伝子の転写を変更する。HIF−1の活性化が組織虚血、虚血/低酸素症疾患、心臓虚血、末梢虚血の治療処置として並びに心臓発作および発作後の再灌流損傷を減ずるための化学予防剤として提案された(非特許文献11)。逆にHIF−1の阻害剤が種々のタイプの付加的な癌処置用に提案された(非特許文献12)。
【0017】
SNO蛋白質の役割の理解および測定においても数人の研究者が進歩をとげた。多くの科学的努力が−ニトロソチオール部分の不安定性のために困難な挑戦である−正確でかつ再現性のある検定方法に集中された。Zhang他はS−ニトロソ化された蛋白質の同定のためのビオチン−スイッチ検定の使用を最近報告した(非特許文献13)。JaffreyはS−ニトロソ化された蛋白質を親和性および放射活性タグで標識付けしてそれらの検出、精製、および同定を促進させる方式を記述した。これらは、呼吸調節に対する生物学的影響に寄与する特定の標的蛋白質の同定を最終的にもたらすであろう重要な段階である。LancasterおよびGastonは、特定の生活性が特定の蛋白質のS−ニトロソ化または脱ニトロソ化に関係することを確定するための基準を提唱することによる標的蛋白質同定工程の促進において重要な段階を採用した(非特許文献14)。
【0018】
これまでの研究は、ある種のS−ニトロソチオール類が低酸素症換気駆動経路を介して呼吸駆動力を増加させて毎分換気量(1分間当たりに呼吸される空気の量)における増加
をもたらす能力を有することを示した。しかしながら、同定された剤は最新の薬品としては理想的でない。例えば、N−アセチル−L−システイン(これはSNOプロドラッグとして作用する)は経口投与後に劣悪に吸収されそして親薬品のほとんどを破壊する肝臓によって過度の第一回代謝にかけられる。N−アセチルシステイン(例えば、アセタドーテ(ACETADOTE))に関する最も普遍的な臨床使用はアセタミフェン(acetaminophen)に関して意図する治療効果がシステインを代謝分解生成物として分配するかどうかに関しては過量である。しかしながら、呼吸調節目的のためには当該剤は分解生成物でなく完全なN−アセチルシステインである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願公開第20060039866号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20060039867号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20060122127号明細書
【特許文献4】国際公開第03/015605号パンフレット
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】DeBacker WA.1995 Eur.Respir.J.8:1372−1383
【非特許文献2】Hudgel DW and Thanakitcharu S.1998 Am J Respir Crit Care Med 158:691−699
【非特許文献3】Qureshi A and Lee−Chiong,JR,TL Sem.Resp Crit Care Med 2005;26:96−108
【非特許文献4】Carley and Radulovacki,1999,Am.J.Respir.Crit.Care Med.160:1824−1829
【非特許文献5】Hogg N.Annu Rev Pharmacol Toxicol 2002;42:585−600
【非特許文献6】Hogg,N.Free Rad Biol Med 2000;28:1478−1486
【非特許文献7】Gaston et al 2006;Am J Respir Crit Care Med 173:1186−1193
【非特許文献8】Palmer LA.2005;Proc Am Thorac Soc 3:166−169
【非特許文献9】J Biol Chem 2006;281:9190−9199
【非特許文献10】Zhang Y and Hogg N.2004;Am J Physiol−Lung Cell Mol Physiol 287:467−474
【非特許文献11】Nagle DG and Zhou YD.Curr Pharm Des 2006;12:2673−88
【非特許文献12】Melillo G.Mol Cancer Res 2006;4:601−5
【非特許文献13】Free Rad Biol Med.2005;38:874−881
【非特許文献14】Lancaster JR and Gaston B.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2004;287:465−466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、COおよび/または酸素における変化に応答して身体の正常な呼吸調節系統の全部または一部を回復しうる単一化合物あるいは組み合わせ製薬学的製品は呼吸調節障害の発生および重篤性を低下させる際の利点であろう。最少の副作用で罹患体に投与できるそのような製品に関する満たされていない要望が現在ある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の要旨
本発明は製薬学的に許容可能な担体および式I〜LVよりなる群から選択される化合物を含んでなる組成物を包含する。本発明はまたS−ニトロソチオール化合物である化合物も包含する。
【0023】
本発明はまた、製薬学的に許容可能な担体、式I〜LVよりなる群から選択される第一化合物、および第二化合物を含んでなる組成物も包含する。第二化合物は、哺乳動物の呼吸リズムの安定化、哺乳動物の上部気道の通気性の増加、覚醒性の促進、いびきの発生および/または重篤性の減少、炎症の減少、呼吸駆動力の減少、並びに肺機能の改良よりなる群から選択される活性を有することができる。本発明はさらに、第二化合物の所望する効果をもたらすための本発明の組成物の投与方法も包含する。
【0024】
本発明の組成物はまた場合により、第三のすなわち追加の化合物を包含する。第三のすなわち追加の化合物は、第一化合物と同様な別の化合物、第二化合物と同様な別の化合物、または第一および第二化合物の両方と異なる化合物でありうる。
【0025】
本発明はまた、1種もしくはそれ以上の本発明の組成物を投与することによる哺乳動物の治療処置方法も包括する。ある態様では、哺乳動物は人間である。別の態様では、哺乳動物の処置に有用な組成物は製薬学的に許容可能な担体および式I〜LVよりなる群から選択される化合物を含んでなる組成物を包含する。
【0026】
本発明の処置方法は、哺乳動物の呼吸リズムを安定化させるための本発明の組成物の投与、および哺乳動物において毎分換気量を高めるための本発明の組成物の投与を包含する。本発明はまた、機械的換気装置または正の気道圧力装置の使用と一緒になった本発明の化合物の投与方法も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は換気調節を回復するために使用される本発明の化合物の生物学的活性および通気性の評価を示すグラフである。図1はGLN 10,015がフェンタニル(fentanyl)−誘発性換気調節を回復しないことを示す。
【図2】図2は換気調節を回復するために使用される本発明の化合物の生物学的活性および通気性の評価を示すグラフである。図2はGLN 10,013がフェンタニル−誘発性換気調節を成功裡に回復することを示す。
【図3】図3は式XXVIIの化合物の製造を示すスキームである。
【図4】図4は式XXVIIIの化合物の製造を示すスキームである。
【図5】図5は式XXXIIの化合物の製造を示すスキームである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な記述
一面で、本発明は低酸素症−模倣症状の性質、低酸素症−誘発性因子−1を刺激する能力、または両者を有するS−ニトロソチオール化合物を特徴づける。ここのどこか別のところに記載されているように、低酸素症−模倣症状として作用する能力を有する剤と低酸素症−誘発性因子−1の増加した発現との間に生理学的関係がある。
【0029】
一面で、本発明は従ってS−ニトロソチオール化合物、またはその誘導体もしくは改変物質の投与による低酸素症換気応答調節を使用することによる睡眠時無呼吸症の処置に対する単一薬品方式に関する。
【0030】
本発明はまた、S−ニトロソチオール化合物、またはその誘導体もしくは改変物質の投与による低酸素症換気応答調節を補助活性を与える他の薬品と組み合わせることによる睡眠時無呼吸症の処置に対する組み合わせすなわち「複数薬品」方式にも関する。
【0031】
本発明は、2種もしくはそれ以上の化合物の組み合わせを含んでなる組成物が2つもしくはそれ以上の生理学的径路で作用することにより呼吸調節疾患の処置において増加した効果を与えうることを提供し、ここで経路の一方は呼吸リズムの回復のためのS−ニトロソチオール処置により影響される。本発明の別の面で、2種もしくはそれ以上の化合物の組み合わせを含んでなる組成物は同一の生理学的径路で作用することにより呼吸調節疾患の処置において増加した効果を与えうることを提供しうる。
【0032】
劣悪なまたは不充分な呼吸駆動力は換気過少をもたらし、それはさらに低酸素症をもたらす。低酸素症の重要な最初の臨床的発現は眠気または過度の日中睡眠である。従って、低下した呼吸駆動力およびその結果としての低酸素症を引き起こす薬品は寿命を脅かす呼吸抑制および/または生活の質に負の影響を与える過度の日中睡眠の恐れのためにそれらの有用性が時には限定される。呼吸駆動力不足からの低酸素症の別の結果は、長期間の心臓血管および/または代謝結果と関係した酸化ストレスである。S−ニトロソチオール化合物、またはその誘導体もしくは改変物質、並びに呼吸リズムを回復するための化合物を酸化ストレスの減少を助ける剤と組み合わせた組み合わせ製品を使用する単一療法は、本発明に従う低酸素症の短期および長期結果を軽減する重要な二重作用方式を提供しうる。
【0033】
ここに示されるように、S−ニトロソチオール化合物、またはそれらの誘導体もしくは改変物質、並びにS−ニトロソチオール化合物を含んでなる組み合わせ組成物を使用して、血液および組織中の正常な酸素レベルの維持を助けることにより罹患体に対して利点を与えうる呼吸駆動力を低下させる薬品の呼吸抑制効果に反作用する。非限定例として、催眠性鎮痛薬(例えば、モルヒネ(morphine)、フェンタニル(fentanyl)、オキシコドン(oxycodone)、ブプレノルフィン(buprenorphine))が癌罹患体に投与されて疼痛を緩和する。服用量は呼吸抑制の恐れによりしばしば制限される。さらに、これらの薬品からの部分的呼吸抑制でさえ低酸素症並びに生活の質を弱体化させ且つひどく低下させうるその結果としての過度の日中睡眠を引き起こす。全身麻酔薬は呼吸に対する同様な抑制効果を与えそして手術室から手術回復領域への罹患体の移動を遅らせうる。S−ニトロソチオール化合物、またはその誘導体もしくは改変物質を含んでなる単一−もしくは組み合わせ−組成物は従って、麻酔薬の長引く効果に反作用するため並びに罹患体が自力呼吸しうる適切な呼吸駆動力を回復するために有用である。
【0034】
別の非限定例として、過剰な体重は呼吸駆動力を低下させて換気過少および低酸素症をもたらしうる。この症状は肥満症−換気過少症候群と称する。過剰な体重は睡眠関連呼吸疾患の危険因子でもある。S−ニトロソチオール化合物、またはその誘導体もしくは改変物質を含んでなる単一−もしくは組み合わせ−組成物は従って、肥満症の呼吸抑制影響に反作用するために有用である。
【0035】
本発明の単一−もしくは組み合わせ−組成物は、とりわけ、ここで詳細に示されているように、上部気道の筋肉緊張力を増加させ、換気/灌流適合性を改良しそしてエリスロポイエチン(erythropoietin)生成を増加させるためにも有用である。
【0036】
定義
ここで使用される際には、以下の用語の各々はこの章においてそれに関係する意味を有する。
【0037】
冠詞「a」および「an」は冠詞の1つのまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つの)文法的対象をさすためにここでは使用される。例として、「元素」は1つもしくはそれ以上の元素を意味する。
【0038】
用語「約」は当業者により理解されるであろうしそしてそれが使用される概念に対して幾らか変動するであろう。
【0039】
ここで使用される際には、用語「無呼吸症」は呼吸の間欠的停止をもたらす正常呼吸の不存在を意味する。
【0040】
「アンチセンス」はポリペプチドをコードする二重標準DNA分子の非コード鎖の核酸配列または非コード鎖と実質的に同類である配列を特にさす。ここで定義されているように、アンチセンス配列はポリペプチドをコードする二重標準DNA分子を相補する。アンチセンス配列がDNA分子のコード鎖のコード化部分だけを相補することは必要ない。アンチセンス配列がポリペプチドをコードするDNA分子のコード鎖上の調節配列に相補的であることができ、その調節配列はコード配列の発現を調節する。
【0041】
「チェーン−ストークス呼吸」は無呼吸および/または呼吸低下をもたらす呼吸の次第に強まるパターンにより特徴づけられる呼吸の特定パターンをさす。この症状の特徴は呼吸が血液酸素レベルを有する段階がなくなることである。
【0042】
ここで使用される際には、用語「通気性」は開放されているすなわち遮断されていない気道の状況または状態をさす。
【0043】
ここで使用される際には、用語「内因性」は有機体、細胞、組織または系統の内部からのまたは内部で製造されるいずれかの物質をさす。
【0044】
ここで使用される際には、用語「外因性」は有機体、細胞、組織または系統の外部からのまたは外部で製造されるいずれかの物質をさす。
【0045】
ここで使用される際の用語「発現」はそのプロモーターにより誘導される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0046】
ここで使用される際の用語「発現ベクター」は転写されうる遺伝子生成物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターをさす。ある場合には、RNA分子を次に蛋白質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳する。他の場合には、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子、siRNA、リボザイムなどの製造においては翻訳されない。発現ベクターは種々の調節配列を含有することができ、それらは特定の宿主有機体内の操作可能に連結されたコード配列の転写および可能なら翻訳のために必要な核酸配列をさす。転写および翻訳を支配する制御配列の他に、ベクターおよび発現ベクターは他の機能を行う核酸配列も含有しうる。
【0047】
「呼吸低下」は多くの面で無呼吸と同様であるが、呼吸は完全に停止せずに部分的に(すなわち、正常呼吸の100%より少ないが正常呼吸の0%より多い)停止する。呼吸低下はここでは「部分的無呼吸」とも称しそして閉塞性、中枢性または混合タイプに細分されうる。
【0048】
「単離された核酸」は、自然に産出する状態でフランクさせる配列から分離された核酸部分または断片、すなわち、断片に通常は隣接する配列、すなわち内部で自然に産出するゲノム内の断片に隣接する配列、から除去されたDNA断片、をさす。この用語は核酸を自然に伴う他の化合物、すなわち、自然に細胞内に伴うRNAもしくはDNAまたは蛋白質、から実質的に精製された核酸類にも適用される。従ってこの用語は、例えば、ベクター中に、自律的に複製するプラスミドもしくはウイルス中に、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に導入されるか、或いは他の配列とは独立する別個の分子として(例えばcDNAまたはPCRもしくは制限酵素消化により製造されるゲノム性もしくはcDNA断片として)存在する組み換えDNAを包含する。それはまた追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組み換えDNAも包含する。
【0049】
ここで使用される際には、用語「調整する」は生物学的状態におけるいずれかの変化、すなわち、増加、低下など、をさす。
【0050】
ここで使用される際には、用語「プロモーター/調節配列」はプロモーター/調節配列に操作可能に結合される遺伝子生成物の発現に必要な核酸配列を意味する。幾つかの場合には、この配列はコアプロモーター配列であることができ、そして他の場合には、この配列はエンハンサー配列および遺伝子生成物の発現に必要な他の調節因子も包含しうる。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的様式で遺伝子生成物を発現するものでありうる。
【0051】
ここで使用される際には、用語「治療的に有効な量」は組成物が投与される哺乳動物に対して有利な効果を与えるのに充分な治療組成物の量である。
【0052】
ここで使用される際には、用語「低酸素症」は有機体により摂取される酸素量における不足並びに有機体内の組織に移送される酸素量における不足をさす。
【0053】
ここで使用される際には、用語「酸素正常状態」は有機体により摂取される酸素量に関する恒常性すなわち「正常状態」並びに有機体内の組織に移送される酸素の量に関する恒常性すなわち「正常状態」をさす。
【0054】
ここで使用される際には、用語「S−ニトロソチオール経路」は酸素の血液レベルに関する情報がS−ニトロソチオール信号発生により脳に伝達されるにつれて起きる信号発生経路および信号発生機構をさす。特定の理論により拘束しようとは望まないが、本発明に従うS−ニトロソチオール化合物すなわち「SNO類」の例は少なくとも一部でS−ニトロソチオール類により介在される活性または効果並びに低酸素症−模倣物質として作用するそれらの能力を有する化合物である上部気道筋肉緊張力を高めるかまたは低酸素症誘発性因子−1の発現を高める剤を包含する。
【0055】
用語「アルキル」は、それ自体でまたは他の置換基の一部として、断らない限り、指定された炭素原子数(すなわちC−Cは1〜6個の炭素を意味する)を有する直鎖状、分枝鎖状または環式の炭化水素を意味する。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tertブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシルおよびシクロプロピルメチルを包含する。(C−C)アルキル、特にエチル、メチルおよびイソプロピル、が最も好ましい。
【0056】
ここで使用される際には、用語「アルキルカルボニル」または「アシル」はカルボニル基を通して親分子部分に結合されるアルキル基をさす。
【0057】
それ自体でまたは他の置換基の一部として使用される用語「アルケニル」は、断らない限り、指定された炭素原子数を有する安定なモノ不飽和もしくはジ−不飽和の直鎖状、分枝鎖状または環式の炭化水素基を意味する。例は、ビニル、プロペニル(アリル)、クロチル、イソペンテニル、ブタジエニル、1,3−ペンタジエニル、1,4−ペンタジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル並びに高級同族体および異性体を包含する。アルケンを表示する官能基はCH=CHCHにより例示される。
【0058】
用語「アルキレン」は、それ自体でまたは他の置換基の一部として、断らない限り、2価の直鎖状、分枝鎖状または環式鎖状の炭化水素を意味する。
【0059】
それ自体でまたは他の置換基の一部として使用される用語「アルコキシ」は、断らない限り、酸素原子を介して分子の残部に結合される、以上で定義された通りである、指定された炭素原子数を有するアルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ(イソプロポキシ)並びに高級同族体および異性体、を意味する。(C−C)アルコキシ、特にエトキシおよびメトキシ、が好ましい。
【0060】
ここで使用される際には、用語「アルコキシカルボニル」はカルボニル基を通して親分子部分に結合されるアルコキシ基をさす。
【0061】
ここで使用される際には、用語「アルコキシカルボニルアルキル」はアルキル基を通して親分子部分に結合されるアルコキシカルボニル基をさす。
【0062】
ここで使用される際には、用語「カルボキシ」または「カルボキシル」は−COH基をさす。
【0063】
ここで使用される際には、用語「カルボキシアルキル」はアルキル基を通して親分子部分に結合されるカルボキシ基をさす。
【0064】
単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される、用語「アリール」は、断らない限り、1個もしくはそれ以上の環(典型的には1、2もしくは3個の環)を含有する炭素環式芳香族系を意味し、そのような環は例えばビフェニルのように懸垂方式で一緒に結合されていてもよくまたは例えばナフタレンのように縮合されていてもよい。例は、フェニル、アントラシル、およびナフチルを包含する。フェニルおよびナフチルが好ましく、フェニルが最も好ましい。2価アリール(「アリーレン」)基は1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1.4−ナフチレン、2,7−ナフチレン、2,7−フェナンスリレンなどにより例示される。
【0065】
ここで使用される際には、用語「アリールカルボニル」はカルボニル基を通して親分子部分に結合されるアリール基をさす。
【0066】
用語「ヘテロアリール」は芳香族性を有する複素環をさす。多環式ヘテロアリールは部分的に飽和した1個もしくはそれ以上の環を包含しうる。例はテトラヒドロキノリンおよび2,3ジヒドロベンゾフリルを包含する。式Iの化合物に関すると、結合点は芳香族単環式環またはそれ自体芳香族環である多環式芳香族の環成分である原子上にあると理解される。2価ヘテロアリール(「ヘテロアリーレン」)基はチエン−2,5−ジイル、イソキサゾール−3,5−ジイル、ピリド−2,6−ジイル、ピリド−3,5−ジイル、イミダゾール−1,4−ジイル、キノリン−2,4,−ジイルなどにより例示される。
【0067】
ヘテロアリール基の例は、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、特に2および4ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、ピロリル、特に2ピロリル、イミダゾリル
、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、特に3および5ピラゾリル、イソチアゾリル、1,2,3トリアゾリル、1,2,4トリアゾリル、1,3,4トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3チアジアゾリル、1,2,3オキサジアゾリル、1,3,4チアジアゾリルおよび1,3,4オキサジアゾリルを包含する。
【0068】
多環式ヘテロアリール基の例は、インドリル、特に3、4、5、6および7インドリル、インドリニル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、特に1および5イソキノリル、1,2,3,4テトラヒドロイソキノリル、シンノリニル、キノキサリニル、特に2および5キノキサリニル、キナゾリニル、フタラジニル、1,8ナフチリジニル、1,4ベンゾジオキサニル、クマリン、ジヒドロクマリン、ベンゾフリル、特に3,4,1,5ナフチリジニル、5、6および7ベンゾフリル、2,3ジヒドロベンゾフリル、1,2ベンズイソキサゾリル、ベンゾチエニル、特に3、4、5、6、および7ベンゾチエニル、ベンゾキサゾリル、ベンズチアゾリル、特に2ベンゾチアゾリルおよび5ベンゾチアゾリル、プリニル、ベンズイミダゾリル、特に2ベンズイミダゾリル、ベンズトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジニル、およびキノリジジニルを包含する。
【0069】
ここで定義される際には、用語「複素環」または「複素環式」は単環式、二環式、または三環式環系をさす。単環式環系は、酸素、窒素および硫黄から独立して選択されるヘテロ原子を含有するいずれかの3−もしくは4−員環、またはヘテロ原子が酸素、窒素および硫黄から独立して選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を含有する5−、6−もしくは7−員環により例示される。5−員環は0−2個の二重結合を有しそして6−および7−員環は0−3個の二重結合を有する。単環式環系の代表例はアゼチジニル、アゼピニル、アジリジニル、ジアゼピニル、1,3−ジオキソラニル、ジオキサニル、ジチアニル、フリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリル、イソキサゾリニル、イソキサゾリジニル、N−メチルピペラジニル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラジニル、テトラゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チエニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキシドチオモルホリニル、チオピラニル、トリアジニル、トリアゾリル、およびトリチアニルを包含するが、それらに限定されない。
【0070】
ここで使用される際には、用語「C(O)−複素環」はカルボニル基を通して親分子部分に結合される複素環(またはヘテロアリール)基をさす。
【0071】
ヘテロアリールおよび複素環部分の上記リストは代表であることを意図しそして限定するものではない。
【0072】
用語「ハロゲン」は、断らない限り、弗素、塩素、臭素、またはヨウ素原子、好ましくは、弗素、塩素、または臭素、より好ましくは、弗素または塩素、を意味する。
【0073】
用語「(C−C)ペルフルオロアルキル(ここでx<yである)」は全ての水素原子が弗素原子により置換されている最大x個の炭素原子および最大y個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。−CFが好ましい。
【0074】
記述
S−ニトロソチオール化合物(SNO類)は種々の組織内で同定されておりそして多くの生理学的および病理学的事象と関連しているため、当該技術では安全で且つ有効なSNO類を同定する要望が存在する。そのような剤を含有する製薬学的組成物並びに、例えば、睡眠時無呼吸症、慢性閉塞性肺疾病、肥満症−換気過少症候群、薬品−誘発性呼吸抑制および早産の無呼吸症を処置するためのそれらの使用方法に関する要望もある。低酸素症−誘発因子−1の発現を促進するSNO化合物は再灌流損傷およびある種の癌の処置においても有用でありうる。本発明の好ましい態様はこれらの要望を満たし、そしてここに示されるように他の利点も与える。
【0075】
ある態様では、立体異性体、プロドラッグ類、および製薬学的に許容可能な塩類を包含する以下の一般構造(A)および(B)を有するSNO類が提供される。
【0076】
【化1】

【0077】
本発明のSNO低酸素症−模倣物質およびHIF−1剤は広範囲の治療用途にわたる有用性を有し、そして種々の無呼吸症、呼吸低下、換気過少症状、再灌流/虚血症状を包含するがそれらに限定されない種々の疾病、病気、および病理学的症状を処置するために使用できる。
【0078】
本発明の組成物およびそれらの使用
本発明は呼吸の混乱した調節を処置するための組成物および方法を包含する。1つの態様では、本発明は睡眠時無呼吸症を処置するための方法および組成物を提供する。
【0079】
睡眠中に、睡眠の段階または深度に応じて呼吸は変化する。ある個体は短い間隔にわたって呼吸を停止する。そのような無呼吸の事象がより頻繁になりそしてより長く持続する時には、それらは身体の酸素レベルを低下させることがあり、それが睡眠を妨害しうる。罹患体は完全には覚醒しないことがあるが、睡眠の深い休止段階から起こされ、そして結果として翌日に疲労を感じる。
【0080】
一緒に起きうる睡眠時無呼吸症の2つの主なタイプがある。閉塞性睡眠時無呼吸症が最も普遍的であり、その間に、普通は喉の背部内にある主要気道の一次的閉塞により呼吸が遮断される。これは舌および喉の筋肉弛緩のためにしばしば起きて、主要気道を閉鎖する。胸部および横隔膜の筋肉が呼吸努力を行い続けるが、閉塞がいずれの気流も妨害する。数秒間ないし数分間にわたり持続する短い間隔後に、酸素レベルが低下して、呼吸努力をさらに激しくさせ、それが閉塞を開きそして気流の再開を可能にする。これはしばしば大
きないびきおよび身体の不随意運動と共に起きて、患者を深い眠りから起こす。数回の呼吸後に、酸素レベルは正常に戻り、罹患体は睡眠に戻り、主要気道の筋肉が弛緩しそして閉塞が再び起きる。次にこのサイクルがある種の睡眠段階で何回も繰り返される。閉塞性睡眠時無呼吸症のあるほとんどの人間はいびきをかき、睡眠中に彼らの主要気道がすでに部分的に閉塞されているが、必ずしも全てのいびきをかく人間が閉塞性睡眠時無呼吸症ではない。
【0081】
睡眠時無呼吸症のあまり普遍的でない形態は、呼吸の中枢調節が異常であるため、中枢性睡眠時無呼吸症である。この調節中枢は脳内にあり、そしてその機能は種々の因子により妨害されうる。気道に対する障壁はない。脳が呼吸を維持するための胸部および横隔膜の筋肉に信号を与えることが突然できなくなるために、睡眠時無呼吸症のある罹患体は呼吸を停止する。これらの罹患体はいびきおよび身体の不随意運度を伴って呼吸を再開するのではなく、種々の間隔で呼吸を単に開始しそして停止する。機構は閉塞性睡眠時無呼吸症とは異なるが、酸素における周期的な低下により睡眠が妨害され、そして罹患体は同じ日中徴候を被る。
【0082】
ある罹患体は「複合睡眠時無呼吸症」とも称する混合−睡眠時無呼吸症と呼ばれる疾患である無呼吸症の2つの原因の組み合わせを被ることがある。
【0083】
過度の日中の眠気および上記の他の徴候を有することに気付いた個体では、特に彼らがいびきをかきそして不安定な睡眠のあることがわかっている場合には、睡眠時無呼吸症を疑うべきである。一般的に、これらの罹患体は長年にわたり大きないびきを示しており、より頻繁には男性であり、そして日中の眠気が数ヶ月間にわたり徐々に問題になってきたことに気付いている。あまり普遍的でないが、彼らは寝汗または不能症により悩まされることがある。睡眠問題はしばしばアルコールまたは鎮静剤投薬により深刻になる。彼らは罹患体の家族および友人、特に寝室相手、によってもさらに容易に気付かれる。
【0084】
本発明の化合物および方法はS−ニトロソチオール信号発生経路に関係するいずれかの他の呼吸調節に応用可能であることを理解すべきである。すなわち、本発明は2種もしくはそれ以上の化合物の組み合わせを含んでなる組成物が2種もしくはそれ以上の生理学的径路に作用することにより呼吸疾患の処置において強化された効果を与えることができ、ここで経路の一方は呼吸リズムの回復のためのS−ニトロソチオール処置により影響を受ける。
【0085】
本発明の一面で、式I−LVのいずれか1つの化合物またはその誘導体もしくは改変物質は合成有機化学技術の専門家により製造できる。式I−LVのいずれか1つの化合物またはその誘導体もしくは改変物質を罹患体に投与できることは理解されよう。ここのどこか別のところに詳細に記述されているように、そのような化合物は単独で、製薬学的組成物として、または1種もしくはそれ以上の他の化合物と組み合わせて投与できる。
【0086】
式I−LVの化合物の例示構造を以下に示す。しかしながら、ここのどこか別のところに詳細に記述されているように、式I−LVの化合物を多くの方法で改変しうることは当業者により理解されよう。
【0087】
【化2】

【0088】
【化3】

【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
当業者は適切な合成経路を選択しそして実行する方法を認識している。適切な合成方法は同様な化合物の合成を記述している文献の参照により同定することができ、そして次に
同様な化合物のために使用される経路に従い所望する化合物の合成を行い、出発物質、試薬、および反応条件を適宜改変していずれかの特定の所望する化合物を合成する。さらに、例えばComprehensive Organic Synthesis,Ed.B.M.Trost and I.Fleming(Pergamon Press 1991)、Comprehensive Organic Functional Group Transformations,Ed.A.R.Katritzky,O.Meth Cohn,and C.W.Rees(Pergamon Press,1996)、Comprehensive Organic Functional Group
Transformations II,Ed.A.R.Katritzky and
R.J.K.Taylor(Editor)(Elsevier,2nd Edition,2004)、Comprehensive Heterocyclic Chemistry,Ed.A.R.Katritzky and C.W.Rees(Pergamon Press,1984)、およびComprehensive Heterocyclic Chemistry II,Ed.A.R.Katritzky,C.W.Rees,and E.F.V.Scriven(Pergamon Press,1996)の如き文献を参照することができ、それらの全開示は引用することにより本発明の内容となる。
【0094】
非限定例として、当業者がこの開示を助けとして理解するであろうように、Changの方法(引用することにより本発明の内容となる米国特許出願公開第US2006/0154945号明細書)を本発明に適用することができる。さらに、この出願に示されている方法および記述を助けとする時に、当業者は本発明の化合物の同定、検定、および変更方法、並びに本発明に従い有用でありおよび/または所望される化合物の同定方法を理解するであろう。
【0095】
式I−LVのいずれか1つの化合物が1個もしくはそれ以上のキラル中心を含有する時には化合物は純粋なエナンチオマーもしくはジアステレオマー形態としてまたはラセミ混合物として存在しそして単離できることは理解されよう。本発明は従って、睡眠時無呼吸症を包含するがそれに限定されない呼吸−関連疾患の処置において有効である本発明の化合物のいずれかの可能なエナンチオマー類、ジアステレオマー類、ラセミ体または混合物を包含する。
【0096】
キラル中心の存在から生ずる異性体は一対の「エナンチオマー類」と称する重ねることができない異性体を含んでなる。純粋化合物の単一エナンチオマー類は光学的に活性であり、すなわち、それらは平面偏光の面を回転可能である。
【0097】
本発明はジアステレオマー類並びにそれらのラセミ体並びに分割されたジアステレオマー的およびエナンチオマー的に純粋な形態並びに塩類を包括することを意味する。ジアステレオマー対は順および逆相クロマトグラフィー、並びに結晶化を包含する既知の分離技術により分割されうる。
【0098】
「単離された光学異性体」によると、同じ式の1種もしくは複数の対応する光学異性体から実質的に精製された化合物が意味される。好ましくは、単離された異性体は、重量により、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも90%純度、さらにより好ましくは少なくとも98%純度、最も好ましくは少なくとも約99%純度である。
【0099】
単離された光学異性体はラセミ混合物から既知のキラル分離技術により精製できる。1つのそのような方法によると、式Iの構造を有する化合物またはそのキラル中間体のラセミ混合物は適当なキラルカラム、例えば一連のDAICEL(R) CHIRALPAK(R)群のカラム(ダイセル・ケミカル・インダストリーズ・リミテッド(Daicel Ch
emical Industries、Ltd.)、東京、日本)の構成員、を用いるHPLCにより 99%の重量%純度の光学異性体に分離される。カラムは製造業者の指示に従い操作される。
【0100】
本発明の別の面で、2種もしくはそれ以上の化合物の組み合わせを含んでなる組成物は同じ生理学的経路に作用することにより呼吸調節の疾患の処置において強められた効果を与えうる。本発明の一面で、組成物を用いて睡眠時無呼吸症を処置する。
【0101】
本発明によると、S−ニトロソチオール化合物、すなわち式I−LVのいずれか1つの化合物、と一緒に使用される第二化合物は、ここに詳細に記述されているように、具体的な性質または活性に関して選択することができる。本発明の一面で、第三、第四、またはさらなる化合物は同様に、ここに詳細に記述されているように、具体的な性質または活性に関して選択される非−S−ニトロソチオール化合物でありうる。以下のものがそのような化合物の非限定例であるが、本発明において有用であるのはそのような化合物だけとは何ら考えるべきでない。当業者は、この開示を助けとする時には、本発明に従うS−ニトロソチオール化合物と一緒になって有用である第二(または第三、第四など)化合物の同定方法を理解するであろう。
【0102】
表1.本発明に従う化合物と一緒になって有用な化合物の例
a.呼吸リズムを安定化する活性を有する化合物
i.炭酸アンヒドラーゼ阻害剤(例えば、アセタゾラミド、トピラメート(to
piramate))
ii.呼吸刺激剤(例えば、カフェイン、テオフィリン、ドキサプラム(doxa
pram))
iii.催眠性アンタゴニスト(例えば、ナロキソン(naloxone))
iv.ホルモン類(例えば、メドロキシプロゲステロン(medroxyprog
esterone))
b.セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリンまたはGABAに対する作用により上部気道の通気性を高める活性を有する化合物
i.セロトニン剤(例えば、5HT1Aアゴニストであるブスピロン(busp
irone)、セロトニン再吸収阻害剤、5HT3受容器アンタゴニスト、
例えばオンダンセトロン(ondansetron))
ii.ドーパミンおよび/またはノルエピネフリン剤(例えば、ロピネロール(r
opinerole)、ミルナシプラン(milnacipran))
iii.四環式抗鬱剤(例えば、ミルタジピン(mirtazipine)、セチプ
チリン(setiptiline))
c.覚醒を促進する活性を有する化合物
i.モダフィニル(Modafinil)、r−モダフィニル(r−modaf
inil)、アンフェタミン(amphetamine)
d.発作を減ずる活性を有する化合物
i.ゾニサミド(Zonisamide)
e.炎症を減ずることにより上部気道の通気性を高める活性を有する化合物
i.抗ヒスタミン剤(例えば、セチリジン(cetirizine)、アゼラス
チン(azelastine)、デスロラチジン(desloratidi
ne)、フェキソフェナジン(fexofenadine))
ii.ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテルカスト(montelu
kast))
iii.5−リポキシゲナーゼ阻害剤(例えば、ジロイトン(zileuton))
iv.ステロイド類(例えば、フルチカソン(fluticasone))
v.COX−2阻害剤
f.主要治療効果に対する副作用としての呼吸駆動力を減ずる活性を有する化合物
i.オピオイド麻酔薬(例えば、モルヒネ、メペリジン(meperidine
)、フェンタニル(fentanyl)、オキシコドン(oxycodon
e)、ブプレノルフィン(buprenorphine))
ii.鎮静催眠薬(例えば、ロラゼパム(lorazepam)、ゾルピデム(z
olpidem)、ザレプロン(zaleplon))
iii.全身麻酔薬(例えば、ハロタン(halothane)、エンフルラン(e
nflurane)、チオペンタル(thiopental))
iv.エチルアルコール
g.例えば喘息および/または慢性の閉塞性肺疾病の如き疾病において肺機能を改良する活性を有する化合物
i.ステロイド類(例えば、ブデソニド(budesonide)、フルチカソ
ン(fluticasone)、サルメテロール(salmeterol/
フルチカソン組み合わせ))
ii.気管支拡張剤(例えば、サルブタモル(salbutamol)、サルメテ
ロール(salmeterol))
iii.抗コリン作用薬(例えば、チオトロピウム(tiotropium)、イパ
トロピウム(ipatropium))
h.機械的換気または正の気道圧力により呼吸を補助するために使用される装置
i.機械的換気器
ii.CPAP
iii.BiPAP
【0103】
製薬産業における組み合わせ薬品はかなり普遍的であり、そしてそのような薬品の製造および使用は当業者により理解されるであろう。例えば、アドベイル(ADVAIR)はステロイド化合物および気管支拡張剤の組み合わせであり、そして喘息の処置用に使用される。
【0104】
2種もしくはそれ以上の本発明に従う化合物を含んでなる組み合わせはS−ニトロソチオール化合物+アセタゾラミド(およびトピラメートを包含する他の炭酸アンヒドラーゼ阻害剤)、S−ニトロソチオール化合物+セロトニンアゴニスト剤(例えば、5HT1Aアゴニストであるブスピロン、セロトニン再吸収阻害剤)、S−ニトロソチオール化合物+セロトニンアンタゴニスト剤(例えば、5HT3受容器アンタゴニスト、例えばオンダンセトロン)、S−ニトロソチオール化合物+四環式抗鬱剤(例えば、ミルタジピン、セチプチリン)、S−ニトロソチオール化合物+モダフィニル、S−ニトロソチオール化合物+r−モダフィニル、S−ニトロソチオール化合物+ノルエピネフリンおよび/またはドーパミンのニューロン吸収に影響する化合物(例えば、ロピネロール、ミルナシプラン)、S−ニトロソチオール化合物+ゾニサミド、S−ニトロソチオール化合物+脳活性を刺激しおよび/またはオピオイドアンタゴニストである剤(例えば、ドキサプラム、ナロキソン、カフェニン)、S−ニトロソチオール化合物+呼吸抑制を引き起こす催眠性鎮痛薬(例えば、モルヒネ、メペリジン、フェンタニル、オキシコドン、ブプレノルフィン)、S−ニトロソチオール化合物+呼吸抑制を引き起こす全身麻酔薬(ハロタン、エンフルラン、チオペンタール)、S−ニトロソチオール化合物+テオフィリン、S−ニトロソチオール化合物+ステロイドおよび/または喘息もしくは慢性の閉塞性肺疾病を処置するために普遍的に使用される気管支拡張剤(例えば、ブデソニド、フルチカソン、サルブタモル、フォルモテロール、サルメテロール/フルチカソン組み合わせ、チオトロピウム、イパトロピウム)、S−ニトロソチオール類+抗ヒスタミン剤(例えば、セチリジン、アゼラスチン、デスロラチジン、フェキソフェナジン)、S−ニトロソチオール化合物+鎮痛薬/催眠薬(例えば、ロラゼパム、ゾルピデム、ザレプロン)、並びに正の気道圧力呼吸装置(CPAPおよびBiPAPを包含する)と組み合わせたS−ニトロソチオール化合物を包含するが、それらに限定されない。ここに示されているようなS−ニトロソチオール化合物との組み合わせにおいて有用な他の化合物は、引用することにより本発明の内容となる米国特許出願公開第20060039866号に記載されている。
【0105】
式I−LVのいずれか1つの化合物は本発明のいずれかの面で記載されたように総合的な「S−ニトロソチオール」化合物を置換可能であることは理解されよう。
【0106】
本発明の1つの態様では、少なくとも1種の化合物がS−ニトロソチオール経路により作用する2種もしくはそれ以上の化合物の組み合わせが付加的または相乗的効果を与えて正常な呼吸リズムを回復するであろう。本発明の別の態様では、少なくとも1種の化合物がS−ニトロソチオール経路により作用する2種もしくはそれ以上の化合物の組み合わせは同時に投与してもまたはしなくてもよい別の薬品の呼吸抑制効果に反作用する効果を与える。
【0107】
S−ニトロソチオール化合物、すなわち「SNO類」、が種々の臨床的利点を有することは記載されていた。これらは呼吸駆動力における増加、上部気道内の筋肉緊張力における増加、肺内の酸素交換の改良(「換気灌流適合」)、および赤血球生成を増加させる天然ホルモンであるエリスロポイエチン(EPO)の増加した生成を包含するが、それらに限定されない。増加したEPO生成は呼吸問題(低酸素症を伴う)および無呼吸症のある罹患体において特に有用である。そのような症状は低い酸素レベルおよび酸素を運ぶ少ない細胞数の「二重の負の効果」(例えば、早産、腎臓透析罹患体の無呼吸症)をもたらす。
【0108】
本発明の一面で、本発明の化合物は化合物が投与される形態で有用である。すなわち、罹患体に投与される化合物の化学構造および式は本発明の方法により活性である化合物である。別の面で、本発明の化合物は罹患体に投与される化合物の化学構造および式以外の形態で活性である。本発明のこの面で、化合物は化合物が罹患体に投与される形態からまず変更され、付加され、分解され、代謝されなければならない。非限定例として、N−アセチルシステイン(NAC)が1つのそのような化合物である。NACは罹患体にプロ−ドラッグとして投与され、それは身体によりS−ニトロソチオール−N−アセチルシステイン(SNOAC)に代謝される。代謝された化合物であるSNOACは、例えば、患者の呼吸を指令する際に引き続き活性である。例えば、引用することにより本発明の内容となる国際公開第03/015605号パンフレットを参照のこと。
【0109】
本発明の別の面で、S−ニトロソチオール化合物は既知のS−ニトロソチオール化合物の同族体、誘導体または改変物質である。数種の非限定例として、本発明により包括されるS−ニトロソチオール化合物はN−アセチルシステインの同族体、N−アセチルシステインの誘導体、N−アセチルシステインの改変物質、およびN−アセチルシステインの代謝物質を包含する。
【0110】
当業者によりここに示された開示を助けとして理解されるであろうように、S−ニトロソチオール化合物の同族体および誘導体はここに示された本発明に従い製造することができることが理解されよう。当業者はS−ニトロソチオール化合物の1つもしくは複数の部分の本発明に従う改変を同定する方法、並びにそのような改変の実施方法を理解するであろう。さらに、ここに示された詳細な記述に基づき、当業者は1種もしくはそれ以上の追加化合物との組み合わせて使用される時の、そのような化合物の活性、すなわち、本発明に従い呼吸を調節する能力、を有する同族体または誘導体を同定するためのそのような化合物の評価方法を認識するであろう。
【0111】
非限定例として、本発明に従う組み合わせはN−アセチルシステインと組み合わされたアセタゾラミドを含んでなる。ある態様では、本発明に従う組み合わせはN−アセチルシステインと組み合わされた低い服用量(例えば、250mg/日もしくはそれ以下)のアセタゾラミドを含んでなる。いずれかの特定の理論により拘束しようとは望まないが、アセタゾラミドおよびN−アセチルシステインの組み合わせは補足または相乗方式で作用して正常な呼吸リズムを回復しうる。アセタゾラミドはCOに対する身体の感度を回復するように作用することができそしてN−アセチルシステインは低い酸素レベルに対する呼吸中枢の感度を回復するように作用することができる。
【0112】
アセタゾラミドは長年にわたり穏やかな利尿剤として(すなわち、尿出量を高めるためにまたは高山病の処置を助けるために)使用されてきた。アセタゾラミドは二酸化炭素をベースとした呼吸駆動経路を通して作用することも信じられている。血液のpHを下げることにより作用することが提唱されているが、これはそれが呼吸駆動力に影響する唯一の方法でないかもしれない。呼吸駆動力における低下は二酸化炭素成分、酸素成分、または一緒になった両方の成分の劣悪な機能により引き起こされうる。これらの成分は、実際に、相互関連しておりそして一方に対する影響発生は他方および全体的呼吸駆動力に影響しうる。
【0113】
従って、本発明の1つの態様では、COおよびO駆動剤の両方が投与される例えば睡眠時無呼吸症の如き症例では、罹患体の臨床的効果および/または処置を与えるために組み合わせ組成物が使用される。すなわち、1つの態様では、本発明は睡眠時無呼吸症の処置方法を提供する。
【0114】
伝統的な考えはこれまでは、処置に必要なアセタゾラミドが多数の罹患体において長期間にわたり毒性がありすぎることであった。しかしながら、低い服用量のアセタゾラミドは、特に1種もしくはそれ以上の本発明に従う他の化合物と組み合わされて、呼吸駆動力に対する所望する効果を生ずるのに充分でありうる。高い服用量で使用される時の副作用の発生のために低い服用量でより有効でありうる他の化合物はテオフィリンを包含するが、それに限定されない。
【0115】
本発明に従う組み合わせ組成物は正常な呼吸調節の欠如により特徴づけられるいずれの症状を処置するためにも有用である。非限定例として、そのような症状は睡眠時無呼吸症(心不全、腎不全および発作の同時に存在する症状を包含するがそれらに限定されない、中枢性、混合性および閉塞性)、睡眠−障害呼吸(特にいびきおよび覚醒を伴う)、慢性気管支炎、COPD、喘息、アレルギーおよび神経学的疾病(例えば、発作、筋委縮性側索硬化症(ALS))を包含するが、それらに限定されない。本発明の方法および組成物で処置できる他の症状はいびき、肥満症−換気過少症候群、早産の無呼吸症、薬品(例えば、催眠性鎮痛薬、鎮静剤、アルコール、睡眠剤、麻酔薬)による呼吸抑制、中枢性先天性換気過少症候群、発作、外傷、手術および/または放射線による換気過少、並びに高い高度への順化を包含するが、それらに限定されない。
【0116】
本発明に従う組み合わせ組成物は、ここのどこか別のところに記載されているように、正の気道圧力(PAP)装置を用いて処置可能ないずれかの症状の処置を補助するためにも有用である。
【0117】
非限定例として、本発明を用いて高い高度への順化の徴候を処置および/または軽減しうる。人間が低い酸素レベルに応答する際に遺伝的相違が役割を演ずる。呼吸の速度および深度を高めることによりある人々は急速に応答する(低酸素症換気応答)が、他の人々はそれよりゆっくりである。急速に適応する能力が重要である場合がある。例えば、高い高度(例えば、アフガニスタンにおける12,000フィート)で戦闘状態に急速に加えられた兵士はピーク行動で戦闘する必要がある。低酸素症に対する遅い応答は過度の疲労
および劣悪な動作行動をもたらすであろう。兵士にとっては、これは生命を脅かしうる。上記の極端な高度に関しては、症例はかなり明確である。例えばニューヨークからデンバー(5,000フィート)への移動または長期にわたる飛行機の飛行(6,000フィートの客室圧力)の如きより低い高度においても適用可能である。
【0118】
上部気道の緊張力を回復するのを助けてつぶれを防止するためのセロトニンアゴニストまたは再吸収阻害剤化合物(例えば、ミルタザピン(Mirtazapine))が動物において立証された。本発明の一面で、SNO/セロトニンアゴニスト組み合わせ組成物が使用され、それによりSNOを使用して呼吸駆動力を改良し、そしてセロトニンアゴニストが上部気道緊張力を改良して空気流を助けそして閉塞の防止を助ける。
【0119】
別の態様では、本発明はSNOと酸化ストレスを減ずることを意図する剤の組み合わせを包含する。身体が呼吸を停止しそして酸素レベルが低下する時に、睡眠時無呼吸症および他の症状に伴う心臓血管合併症の直接的な原因であると信じられている酸化ストレスをもたらす一連の反応がある。心臓血管合併症は主要な死因である。
【0120】
本発明の一面で、組み合わせ組成物はSNO生成と無関係な代謝経路により酸化ストレスを減ずるために使用されるN−アセチルシステインを含んでなる。すなわち、本発明はN−アセチルシステインまたは別のSNO−含有化合物が第二SNOまたは例えばアセタゾラミドの如くであるがそれに限定されない非−SNO化合物のいずれかである別の薬品と組み合わされて酸化ストレスを減ずる方法および組み合わせ組成物も包含し、ここで第二化合物は呼吸駆動力を高めるために作用する。本発明の方法および組成物中で有用な他の組み合わせは、この開示に示された開示を助けとする時に、当業者により理解されるであろう。
【0121】
別の面で、本発明はSNO化合物並びに哺乳動物における酸化ストレスを処置および/または予防する化合物を含んでなる組み合わせ組成物を包含する。1つの態様では、本発明は本発明の化合物を投与することによる正常呼吸が欠如している罹患体の処置方法を包含する。
【0122】
睡眠時無呼吸症における酸素化パターンを模する頻繁な低酸素症/再酸素化事象は1つの態様では選択脳領域においてNADPHオキシダーゼおよび前炎症性遺伝子発現を誘発し、覚醒−作用ニューロン中での別の態様も包含する1つの態様では、機能性NADPHオキシダーゼの欠如およびNADPHオキシダーゼの薬理学的阻害が間欠的な低酸素症−誘発性神経行動、レドックスおよび前炎症変化に耐性を与え、それにより潜在的標的が閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)のある人間における酸化的な病的状態の予防を強めると判定されている。
【0123】
米国特許出願公開第20060154856号明細書(引用することにより本発明の内容となる)はNADPHオキシダーゼを脳内の間欠的な低酸素症−誘発性損傷の重要な原因であると同定している。別の態様では、OSAのある人間におけるNADPHオキシダーゼ活性化がこの疾病に伴う心臓血管の病的状態に寄与する。NADPHオキシダーゼ経路は従って流布している疾患である睡眠時無呼吸症の神経行動および心臓血管の病的状態の両者のための価値ある薬物療法標的である。本発明の一面によると、本発明は被験体に治療的に有効な量のNADPHオキシダーゼ阻害剤および少なくとも1種の他の化合物を含んでなる組成物を投与することを含んでなる睡眠時無呼吸症呼吸低下症候群から生ずる心臓血管の病的状態、神経行動の病的状態またはそれらの組み合わせを処置する方法を提供する。1つの態様では、少なくとも1種の他の化合物はS−ニトロソチオール信号発生経路の阻害剤である。NADPHオキシダーゼ阻害剤はアポシニン(apocynin)、すなわち4−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、N−バニリルノナナミド(
vanillylnonanamide)、およびスタウロスポリン(staurosporine)を包含するが、それらに限定されない。
【0124】
別の態様では、本発明はSNOと炎症を減ずることを意図する剤の組み合わせを包含する。例は、ロイコトリエン受容器アンタゴニスト(すなわち5−リポキシゲナーゼ阻害剤)、抗ヒスタミンまたは抗−炎症剤(例えば、COX−2阻害剤またはステロイド)を包含する。一面で、本発明は正常な呼吸が欠如している罹患体を処置するためのそのような組み合わせ組成物の使用方法を包含する。
【0125】
睡眠障害呼吸のある罹患体は、炎症を引き起こしそして有効に空気を取り入れる彼らの能力を低下させる渦巻き空気流を有する。ここのどこか別のところに論じられているように、SNO化合物は呼吸駆動力を高めそして上部気道通過直径を高めうる。従って、本発明によると、SNOおよび抗−炎症化合物を含んでなる組み合わせ組成物は良好な治療効果を与えるために有用である(Goldbart et al,Am.J.Respir.Crit.Care.Med.2005;172:364−370)。
【0126】
非限定例として、本発明の組成物および方法を用いるロイコトリエンアンタゴニスト療法は渦巻き空気流から生ずる炎症を減じて、正常呼吸の欠如している罹患体の呼吸を指令する。これは、炎症は気道通過寸法を減ずるため、さらに空気流を制限する炎症を引き起こす原因である。本発明によると、抗−炎症剤を包含する組み合わせ組成物製造は種々の形態の睡眠障害呼吸のある成人及び小児罹患体に対して追加利点を与えるために有用である。
【0127】
本発明の一面で、ロイコトリエンアンタゴニスト(すなわち5−リポキシゲナーゼオキシダーゼ阻害剤)と組み合わされたSNOプロドラッグ(例えば、N−アセチルシステイン)またはSNOは呼吸の障害のある調節を処置するために有用であるが、同時に、そのような呼吸障害に関係する炎症を最少にする。
【0128】
本発明の別の面で、本発明は正常な呼吸調節の欠如に関連する疾病または疾患の処置のための3種もしくはそれ以上の化合物を含んでなる組み合わせ組成物を包含する。本発明はまた、正常な呼吸調節の欠如に関連する疾病または疾患の処置のための3種もしくはそれ以上の化合物を含んでなる組み合わせ組成物を使用する哺乳動物の処置方法も包含する。本発明に従う組成物は1種もしくはそれ以上のSNO化合物を含んでなりうる。別の態様では、本発明に従う組成物は3種もしくはそれ以上の非−SNO化合物を含んでなりうる。本発明の組み合わせ組成物中で有用な化合物はここのどこか別のところに詳細に記述されている。
【0129】
本発明の別の面で、正常呼吸が欠如している罹患体の処置方法はここに記述された本発明の化合物を投与しそして罹患体を正常呼吸欠如の処置用の装置を用いてさらに処置することを含んでなる。ここのどこか別のところに詳細に記述されているように、そのような装置はCPAPおよびBiPAP装置を包含するが、それらに限定されない。
【0130】
別の方法
ここの別のところに記述されているように、本発明のいずれかの組成物または組み合わせ組成物は哺乳動物の呼吸の治療的処置において有用である。一面で、哺乳動物は人間である。哺乳動物の呼吸の治療的処置は哺乳動物における非−正常呼吸状態の改良または補正を包含するが、それらに限定されない。
【0131】
本発明の組成物は当該技術で既知であるいずれかの方法で、そしてさらに、本発明に従う治療効果を得るための組成物の投与に関して有利な方法であることが知られているかも
しくは判定されているいずれかの方法で投与される。本発明の組成物の投与方法および製造はここのどこか別のところにさらに詳細に記述されている。ある態様では、組成物は哺乳動物の脳幹に投与される。別の態様では、組成物は哺乳動物の脳幹の呼吸中枢に投与される。さらに別の態様では、組成物は哺乳動物の脳幹の核孤束に投与される。
【0132】
ある態様では、本発明の方法は哺乳動物の呼吸リズムを安定化させるための本発明の組成物の投与を包含する。別の態様では、本発明の方法は哺乳動物の毎分換気量を高めるための本発明の組成物の投与を包含する。ある面で、哺乳動物の毎分換気量は核孤束内の脳幹呼吸調節中枢のレベルで高められる。
【0133】
ある面で、本発明の方法は第一化合物が哺乳動物の呼吸リズムを安定化させるために有用でありそして第二化合物が哺乳動物に顕著な効果を有するような本発明の組み合わせ組成物の投与を包含する。ある態様では、本発明の方法は第二化合物が哺乳動物における上部気道の通気性を高めうるような本発明の組み合わせ組成物の投与を包含する。別の態様では、本発明の方法は第二化合物が哺乳動物における覚醒を促進するような本発明の組み合わせ組成物の投与を包含する。別の態様では、本発明の方法は第二化合物が哺乳動物における発作の頻度および/または強度を減ずるような本発明の組み合わせ組成物の投与を包含する。別の態様では、本発明の方法は第二化合物が哺乳動物における炎症を減ずるような本発明の組み合わせ組成物の投与を包含する。別の態様では、本発明の方法は第二化合物が哺乳動物における呼吸駆動力を減ずるような本発明の組み合わせ組成物の投与を包含する。別の態様では、本発明の方法は第二化合物が哺乳動物における肺機能を改良するような本発明の組み合わせ組成物の投与を包含する。
【0134】
製薬学的組成物
本発明は本発明の方法を実施するための適当な蛋白質またはペプチドおよび/もしくは核酸の製薬学的組成物の使用も包括する。ここに示される化合物の組成物および組み合わせは単独でまたは他の化合物と組み合わせて使用して障害のある呼吸の処置においておよび睡眠−関連呼吸障害の処置において付加的な、補足的なまたは相乗的な効果を生ずる。
【0135】
ある態様では、本発明を実施するために有用な製薬学的組成物は1ng/kg/日〜100mg/kg/日の間の服用量を分配するように投与される。別の態様では、本発明を実施するために有用な製薬学的組成物は1ng/kg/日〜500mg/kg/日の間の服用量を分配するように投与される。
【0136】
有用である製薬学的に許容可能な担体はグリセロール、水、食塩水、エタノール並びに他の製薬学的に許容可能な塩溶液、例えば燐酸塩類および有機酸類の塩類、を包含するが、それらに限定されない。これらのおよび他の製薬学的に許容可能な担体の例はRemington’s Pharmaceutical Sciences(1991,Mack Publication Co.,New Jersey)に記述されている。
【0137】
製薬学的組成物は殺菌性の注射用の水性もしくは油性懸濁剤または液剤の形態で製造し、包装し、または販売することができる。この懸濁剤または液剤は当該技術に従い調合することができ、そして活性成分の他に追加成分、例えば分散化剤、湿潤剤、を含んでなりうる。そのような殺菌性の注射用調剤は無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒、例えば水または1,3−ブタンジオール、を用いて製造することができる。他の許容可能な希釈剤および溶媒はリンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、および不揮発性油類、例えば合成モノ−またはジ−グリセリド類を包含するが、それらに限定されない。
【0138】
本発明の方法で有用な製薬学的組成物は、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻内、頬、眼、または他の投与経路に適する調剤状態で製造し、包装し、および/または販売す
ることができる。他の意図する調剤は突起したナノ粒子、リポソーム調合物、活性成分を含有する再密封された(resealed)赤血球、および免疫学に基づいた調剤を包含する。
【0139】
本発明の組成物は経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻内、頬、または眼投与経路を包含するがそれらに限定されない多くの経路により投与することができる。本発明の組成物は哺乳動物の脳、脳幹、または中枢神経系のいずれかの他の部分に直接投与することができる。1種もしくは複数の投与経路は当業者に容易に明らかになりそして処置する疾病のタイプおよび重篤度、処置する動物もしくは人間罹患体のタイプおよび年令などを包含する多くの因子に依存するであろう。
【0140】
本発明の方法で有用な製薬学的組成物は経口固体調剤、眼剤、坐剤、エーロゾル剤、局所または他の同様な調剤で全身的に投与することができる。例えば硫酸へパリンまたはその生物学的同等物の如き化合物の他に、そのような製薬学的組成物は製薬学的に許容可能な担体および薬品投与を促進しそして強化することが知られる他の成分を含有しうる。他の可能な調剤、例えばナノ粒子、リポソーム、再密封された赤血球、および免疫学をベースとしたシステム、を使用して本発明の方法に従う化合物を投与することもできる。
【0141】
ここに記載された方法のいずれかを用いて同定される化合物およびそのような化合物の組み合わせを調合しそして呼吸の障害のある調節の処置のために哺乳動物に投与することができる。
【0142】
そのような製薬学的組成物は被験体への投与に適する形態の活性成分のみから構成されてもよく、或いは製薬学的組成物は少なくとも1種の活性成分および1種もしくはそれ以上の製薬学的に許容可能な担体、1種もしくはそれ以上の追加成分、またはこれらのある種の組み合わせを含んでなってもよい。当該技術で既知であるように、活性成分は製薬学的組成物中に生理学的に許容可能なエステルまたは塩の形態で、例えば生理学的に許容可能なカチオンまたはアニオンと組み合わせて、存在しうる。
【0143】
薬剤の局所投与の障害は表皮の角質層である。角質は蛋白質、コレステロール、スフィンゴリピド類、遊離脂肪酸類および種々の他の脂質類から構成され、そして角化した生存細胞を包含する。角質を通る化合物の浸透速度(フラックス)を制限する因子の1つは皮膚表面上に与えられるかまたは適用されうる活性物質の量である。皮膚の単位面積当たりに適用される活性物質の量が多ければ多いほど、皮膚表面と皮膚の下層との間の濃度勾配が大きくなり、そしてまた皮膚を通る活性物質の拡散力が大きくなる。従って、より高い濃度の活性物質を含有する調剤は皮膚を通る活性物質の浸透をもたらし、そしてより低い濃度を有する調剤より多くそしてより一定の速度でもたらすようであり、全ての他の事柄も同等である。
【0144】
ここに記述された製薬学的組成物の調剤は薬学分野で既知であるかまたはその後に進歩したいずれかの方法により製造することができる。一般に、そのような製造方法は活性成分を担体または1種もしくはそれ以上の他の装飾成分と一緒にし、そして次に、必要であるかまたは所望するなら、生成物を所望する単一−または複数−服用量単位に成型または包装する段階を包含する。
【0145】
ここに提供された製薬学的組成物の記述は原則的に人間に対する倫理的投与に適する製薬学的組成物に関するが、当業者はそのような組成物は一般的に全種類の動物への投与に適することを理解するであろう。組成物を種々の動物への投与に適合させるための人間への投与に適する製薬学的組成物の改変はよく理解されており、そして通常の専門的な動物薬剤師はそのような改変を、たとえ行うとしても単なる日常的な実験により、設計しそし
て行うことができる。本発明の製薬学的組成物の投与を行う被験体は人間および他の霊長類、例えば牛、豚、馬、羊、猫、および犬の如き商業関連哺乳動物を包含する哺乳動物を包含するが、それらに限定されない。
【0146】
本発明の方法で有用な製薬学的組成物は経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻内、頬、眼、鞘内または他の投与経路に適する調剤で製造し、包装し、または販売することができる。他の意図する調剤は突起したナノ粒子、リポソーム調合物、活性成分を含有する再密封された赤血球、および免疫学をベースとした調剤を包含する。
【0147】
本発明の製薬学的組成物は塊状で、単一単位服用量として、または複数の単一単位服用量として製造し、包装し、または販売することができる。ここで使用される際には、「単位服用量」は予め決められた量の活性成分を含んでなる製薬学的組成物の分離している量である。活性成分の量は一般に被験体に投与されるであろう活性成分の薬用量またはそのような薬用量の簡便な区分、例えば、そのような薬用量の半分または1/3、に等しい。
【0148】
本発明の製薬学的組成物中の活性成分、製薬学的に許容可能な担体、およびいずれかの追加成分の相対的な量は、処置される被験体の身元、大きさ、および状態に応じてそしてさらに組成物を投与する経路に応じて、変動するであろう。例として、組成物は0.1%〜100%(w/w)の間の活性成分を含んでなりうる。
【0149】
本発明の製薬学的組成物の調節−または持続−放出性調剤は普遍的技術を用いて製造することができる。局所投与に適する調剤は液体または半液体の調合物、例えば、リニメント剤、ローション剤、水中油滴型もしくは油中水滴型乳剤、例えばクリーム剤、軟膏剤もしくはペースト剤、および液剤または懸濁剤を包含するが、それらに限定されない。局所投与可能な調剤は、例えば、約1%〜約10%(w/w)の活性成分を含んでなりうるが、活性成分の濃度は溶媒中の活性成分の溶解限度の如き高さまででありうる。局所投与用の調剤は1種もしくはそれ以上のここに記載された追加成分をさらに含んでなりうる。
【0150】
透過の促進剤を使用することができる。これらの物質は皮膚を越える薬品の浸透速度を高める。当該技術の代表的な促進剤はエタノール、モノラウリン酸グリセロール、PGML(モノラウリン酸ポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシドなどを包含する。他の促進剤はオレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸類、ジメチルスルホキシド、有極性脂質、またはN−メチル−2−ピロリドンを包含する。
【0151】
本発明の組成物のあるものの局所分配用の1つの許容可能な賦形剤はリポソーム類を含有しうる。リポソーム類の組成およびそれらの使用は当該技術で既知である(例えば、Constanzaの米国特許第6,323,219号明細書を参照のこと)。
【0152】
調合しようとする活性化合物の原料は一般的に化合物の特定形態に依存するであろう。小さい有機分子およびペプチジルまたはオリゴ断片は化学的に合成されそして製薬学的用途に適する純粋形態で提供されうる。天然抽出物の生成物は当該技術で既知である技術に従い精製することができる。化合物の組み換え原料も当業者には利用可能である。
【0153】
別の態様では、局所的に活性な製薬学的組成物は場合により他の成分、例えば助剤、抗酸化剤、キレート化剤、界面活性剤、発泡剤、湿潤剤、乳化剤、粘度調節剤、緩衝剤、防腐剤など、と組み合わせうる。別の態様では、透過または浸透促進剤が組成物中に包含されそして透過促進剤を欠く組成物に関して角質の中にそしてそこを通る活性成分の経皮浸透における改良において有効である。オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸類、ジメチルスルホキシド、有極性脂質、
またはN−メチル−2−ピロリドンを包含する種々の透過促進剤が当業者に既知である。別の面で、組成物はヒドロトロピー剤をさらに含んでなることができ、それは角質の構造内で障害を増加させるために作用し、そして角質を越える移送の増加を可能にする。種々のヒドロトロピー剤、例えばイソプロピルアルコール、プロピレングリコール、またはキシレンスルホン酸ナトリウム、が当業者に既知である。
【0154】
局所的に活性な製薬学的組成物は所望する変化に影響を与えるのに有効な量で適用すべきである。ここで使用される際の「有効である量」は変化が所望される皮膚表面の領域を覆うのに充分な量を意味するであろう。活性化合物は組成物の重量容量により約0.0001%〜約15%の量で存在すべきである。より好ましくは、それは組成物の約0.0005%〜約5%の量で存在すべきであり、最も好ましくは、それは組成物の約0.001%〜約1%の量で存在すべきである。そのような化合物は合成的または天然的に誘導されうる。
【0155】
生物学的原料から製造される液体誘導体および天然抽出物は本発明の組成物中で約1〜約99%の濃度(w/v)で使用できる。天然抽出物の断片およびプロテアーゼ阻害剤は組成物の約0.01%〜約20%の、そしてより好ましくは、約1%〜約10%の、異なる好ましい範囲を有しうる。もちろん、本発明の活性剤の混合物を組み合わせそして同一調合物中で一緒にまたは異なる調剤の順次適用で使用することができる。
【0156】
本発明の組成物は組成物の合計重量の約0.005%〜2.0%の防腐剤を含んでなりうる。防腐剤は水性ゲル剤の場合には繰り返される罹患体使用のためにそれが例えば空気または例えば治療用ゲル剤もしくはクリーム剤の如き本発明の組成物を適用するために使用される指との接触を包含する罹患体の皮膚への露呈により環境中の汚染物質に露呈される時の汚染を防止するために使用される。本発明に従い有用な防腐剤の例はベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン類、イミドウレアおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択されるものを包含するが、それらに限定されない。特に好ましい防腐剤は約 0.5%〜2.0%のベンジルアルコールおよび0.05%〜0.5%のソルビン酸の組み合わせである。
【0157】
組成物は水性ゲル調剤中での本発明における使用のための化合物の分解を抑制する酸化防止剤およびキレート化剤を好ましくは包含する。ある種の化合物に好ましい酸化防止剤は組成物の合計重量の約0.01%〜0.3%の好ましい範囲内のBHT、BHA、アルファトコフェロールおよびアスコルビン酸、そしてより好ましくは0.03%〜0.1%のBHTである。好ましくは、キレート化剤は組成物の合計重量の0.01%〜0.5%の重量による量で存在する。特に好ましいキレート化剤は組成物の合計重量の約0.01%〜0.20%の重量範囲内のそしてより好ましくは0.02%〜0.10%の重量による範囲内のエデト酸塩類(例えば、エデト酸二ナトリウム)およびクエン酸を包含する。キレート化剤は組成物中で金属イオンをキレート化するために有用であり、それは調剤の貯蔵寿命にとって重要でありうる。ある種の化合物に関してBHTおよびエデト酸二ナトリウムがそれぞれ特に好ましい酸化防止剤およびキレート化剤であるが、当業者に既知であるように他の適当なそして同等な酸化防止剤およびキレート化剤で代替しうる。
【0158】
調節−放出性調合物を使用することもできそしてそのような調合物の使用方法は当業者に既知である。
【0159】
ある種の場合には、使用される薬用量形態を種々の割合の所望する放出特徴を与えるための例えばヒドロプロピルメチルセルロース、他の重合体マトリックス、ゲル、透過膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム類、もしくは微球またはそれらの組み合わせを使用して中にある1種もしくはそれ以上の活性成分の遅延または調節−放出
剤として提供しうる。ここに記述されたものを包含する当業者に既知である適当な調節−放出性調剤は本発明の製薬学的組成物と一緒の使用に関して容易に選択されうる。それ故、経口投与に適する単一単位薬用量形態、例えば調節−放出に適する錠剤、ゲルキャップ剤、およびカプレット剤、が本発明により包括される。
【0160】
ほとんどの調節−放出性製薬学的生成物はそれらの未調節相手により達成されるものに比べて改良された薬品療法の共通の目標である。理想的には、医学的処置における最適に設計された調節−放出性調合物の使用は最少時間量で症状を治癒または調節するために使用される最少量の薬品により特徴づけられる。調節−放出性調剤の利点は薬品の長期活性、減じられる投薬頻度、および増加した罹患体のコンプライアンスを包含する。さらに、調節−放出性調剤を使用して作用または他の特徴、例えば薬品の血液レベル、の開始時間に影響を与えることができ、そしてそれ故、副作用の発生に影響を与えうる。
【0161】
ほとんどの調節−放出性製薬学的生成物は、所望する治療効果を直ちに生ずる量の薬品を最初に放出しそして長期間にわたり治療効果のこのレベルを維持する別の量の薬品を徐々にそして連続的に放出するように設計される。身体内でこの一定の薬品レベルを維持するためには、薬用量形態から代謝されそして身体から排泄される量を代替する速度で薬品は放出されなければならない。
【0162】
活性成分の調節−放出は、種々の誘発因子、例えばpH、温度、酵素、水、または他の生理学的状態もしくは化合物、により刺激されうる。本発明の概念における用語「調節−放出性成分」はここでは、活性成分の調節−放出を促進する重合体、重合体マトリックス、ゲル、透過膜、リポソーム類、もしくは微球またはそれらの組み合わせを包含するがそれらに限定されない1種もしくは複数の化合物として定義される。
【0163】
液体懸濁剤を普遍的な方法を用いて製造して、水性または油性賦形剤中の活性化合物の懸濁剤を得ることができる。油性賦形剤は、例えば、アーモンド油、油性エステル類、エチルアルコール、植物油、例えばピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはココヤシ油、分別された植物油、および鉱油類、例えば液体パラフィン、を包含する。液体懸濁剤は懸濁化剤、分散化剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、防腐剤、緩衝剤、塩類、香味剤、着色剤、および甘味剤を包含するがそれらに限定されない1種もしくはそれ以上の追加成分をさらに含んでなりうる。油性懸濁剤は濃稠化剤を含んでなりうる。既知の懸濁化剤はソルビトールシロップ、水素化された食用脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビアゴム、およびセルロース誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、を包含するが、それらに限定されない。既知の分散化剤または湿潤剤は天然−産出燐脂質、例えばレシチン、アルキレンオキシドと脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分的エステル、または脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分的エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)を包含するが、それらに限定されない。既知の乳化剤はレシチン、およびアカシアを包含するが、それらに限定されない。既知の防腐剤はパラ−ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、またはn−プロピル、アスコルビン酸、およびソルビン酸を包含するが、それらに限定されない。既知の甘味剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、およびサッカリンを包含する。油性懸濁剤用の既知の濃稠化剤は、例えば、蜜蝋、硬質パラフィン、およびセチルアルコールを包含する。
【0164】
活性成分の水性または油性溶媒中の液体液剤は液体懸濁剤と実質的に同じ方法で製造することができ、主な差異は活性成分を溶媒中に懸濁させずにむしろ溶解させることである
。本発明の製薬学的組成物の液体液剤は液体懸濁剤に関して記述された化合物の各々を含んでなることができ、懸濁化剤が溶媒中への活性成分の溶解を助ける必要がないことは理解されよう。水性溶媒は、例えば、水、および等張性食塩水を包含する。油性溶媒は、例えば、アーモンド油、油性エステル類、エチルアルコール、植物油、例えばピーナッツ油、ゴマ油、またはココヤシ油、分別された植物油、および鉱油、例えば液体パラフィン、を包含する。
【0165】
本発明の製薬学的調合物の粉末状および顆粒状調剤は既知の方法を用いて製造することができる。錠剤を形成するため、カプセル剤に充填するため、または水性もしくは油性賦形剤の添加により水性もしくは油性懸濁剤を製造するために使用されるそのような調剤は被験体に直接投与することができる。これらの調剤の各々は1種もしくはそれ以上の分散化剤または湿潤剤、懸濁化剤、および防腐剤をさらに含んでなりうる。追加の賦形剤、例えば充填剤および甘味剤、香味剤、または着色剤、もこれらの調剤中に包含されうる。
【0166】
水中油滴型乳剤または油中水滴型乳剤の形状の本発明の製薬学的組成物を製造することもできる。油相は植物油、例えばオリーブ油もしくはピーナッツ油、鉱油、例えば液体パラフィン、またはこれらの組み合わせでありうる。そのような組成物は1種もしくはそれ以上の乳化剤、例えば天然産出ゴム類、例えばアラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然−産出燐脂質、例えば大豆またはレシチンホスファチド、脂肪酸類および無水ヘキシトール類の組み合わせから誘導されるエステル類または部分エステル類、例えばモノオレイン酸ソルビタン、およびそのような部分的エステル類とエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、をさらに含んでなりうる。これらの乳剤は、例えば、甘味剤または香味剤を包含する追加成分も含有しうる。
【0167】
ここで使用される際には、「油性」液体は炭素−含有液体分子を含んでなりそして水より低い有極性を示すものである。
【0168】
予め決められた量の活性成分を各々が含有する、錠剤、硬質もしくは軟質カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤、またはロゼンジ剤を包含するがそれらに限定されない経口投与に適する本発明の製薬学的組成物の調剤を製造し、包装し、または販売することができる。経口投与に適する他の調剤は粉末状もしくは顆粒状調剤、水性もしくは油性懸濁剤、水性もしくは油性液剤、ペースト剤、ゲル剤、歯磨きペースト剤、口洗浄剤、コーティング、口すすぎ剤、または乳剤を包含するが、それらに限定されない。口すすぎ剤および口洗浄剤の用語はここでは交換可能式に使用される。
【0169】
本発明の製薬学的組成物は経口または頬投与に適する調剤状で製造し、包装し、または販売することができる。そのような調剤はゲル剤、液剤、懸濁剤、ペースト剤、歯磨きペースト剤、口洗浄剤または口すすぎ剤、およびコーティングを包含するが、それらに限定されない。例えば、本発明の口すすぎ剤は約1.4%の本発明の化合物、クロルヘキシジングルコネート(0.12%)、エタノール(11.2%)、ナトリウムサッカリン(0.15%)、FD&Cブルー(Blue)No.1(0.001%)、ペパーミント油(0.5%)、グリセリン(10.0%)、ツィーン(Tween)60(0.3%)、および100%にするための水を含んでなりうる。別の態様では、本発明の歯磨きペースト剤は約5.5%の本発明の化合物、水中70%のソルビトール(25.0%)、ナトリウムサッカリン(0.15%)、ラウリル硫酸ナトリウム(1.75%)、カルボポル(carbopol)934の6%分散液(15%)、スペアミントの油(1.0%)、水中50%水酸化ナトリウム(0.76%)、二塩基性燐酸カルシウム二水和物(45%)、および100%にするための水を含んでなりうる。ここに記述された調剤の例は完全なものでなくそして本発明はこれらのおよびここに記載されていないが当業者に既知である他の調剤の別の変更を包含する。
【0170】
活性成分を含んでなる錠剤は、例えば、活性成分を場合により1種もしくはそれ以上の追加成分と共に圧縮または成型することにより製造できる。圧縮錠剤は、適当な装置中で、例えば粉末もしくは顆粒状調合物の如き自由−流動性形態の活性成分を場合により1種もしくはそれ以上の結合剤、潤滑剤、賦形剤、表面活性剤、および分散化剤と混合して圧縮することにより、製造できる。成型錠剤は、適当な装置中で、活性成分、製薬学的に許容可能な担体、および混合物を湿らせるのに少なくとも充分な液体の混合物を成型することにより、製造できる。錠剤の製造で使用される製薬学的に許容可能な賦形剤は不活性希釈剤、造粒および崩壊剤、結合剤、並びに潤滑剤を包含するが、それらに限定されない。既知の分散化剤はポテトスターチおよびナトリウムスターチグリコレートを包含するが、それらに限定されない。既知の表面−活性剤はラウリル硫酸ナトリウムを包含するが、それに限定されない。既知の希釈剤は炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶性セルロース、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、および燐酸ナトリウムを包含するが、それらに限定されない。既知の造粒および崩壊剤はコーンスターチおよびアルギン酸を包含するが、それらに限定されない。既知の結合剤はゼラチン、アカシア、予備−ゼラチン化されたトウモロコシスターチ、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含するが、それらに限定されない。既知の潤滑剤はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、およびタルクを包含するが、それらに限定されない。
【0171】
錠剤はコーティングされていなくてもよく、またはそれらを既知の方法でコーティングして被験体の胃腸管内で遅延崩壊を行って、それにより活性成分の持続放出および吸収を与えることができる。例として、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルの如き物質を使用して錠剤をコーティングしうる。さらなる例として、錠剤を米国特許第4,256,108号明細書、第4,160,452号明細書、および第4,265,874号明細書に記述された方法を用いてコーティングして浸透調節放出性錠剤を形成しうる。製薬学的に適合している食用調合物を与えるために、錠剤は甘味剤、香味剤、着色剤、防腐剤、またはこれらのある種の組み合わせをさらに含んでなりうる。
【0172】
活性成分を含んでなる硬質カプセル剤は生理学的に分解可能な組成物、例えばゼラチン、を用いて製造することができる。そのような硬質カプセル剤は活性成分を含んでなることができ、そして例えば不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、またはカオリン、を包含する追加成分をさらに含んでなりうる。
【0173】
活性成分を含んでなる軟質ゼラチンカプセル剤は生理学的に分解可能な組成物、例えばゼラチン、を用いて製造することができる。そのような軟質カプセル剤は活性成分を含んでなり、それは水または油性媒体、例えばピーナッツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油、と混合することができる。
【0174】
液体形態または使用直前の水もしくは他の適当な賦形剤との再構成を意図する乾燥生成物の形態のいずれかの経口投与に適する本発明の製薬学的組成物の液体調剤を製造し、包装し、そして販売することができる。
【0175】
直腸投与に適する調剤中で本発明の製薬学的組成物を製造し、包装し、そして販売することができる。そのような組成物は、例えば、坐剤、停留浣腸調合物、および直腸または結腸灌注用液剤の形態でありうる。
【0176】
活性成分を通常の室温(すなわち、約20℃)において固体であり且つ被験体の直腸温度(すなわち、健康な人間において約37℃)において液体である非−刺激性賦形剤と組み合わせることにより、坐剤調剤を製造できる。適する製薬学的に許容可能な賦形剤はコ
コアバター、ポリエチレングリコール類、および種々のグリセリド類を包含するが、それらに限定されない。坐剤調剤は酸化防止剤および防腐剤を包含するがそれらに限定されない種々の追加成分をさらに含んでなりうる。
【0177】
活性成分を製薬学的に許容可能な液体担体と組み合わせることにより、直腸または結腸灌注用の停留浣腸調合物または液剤を製造できる。当該技術で既知であるように、浣腸調合物を被験体の直腸構造に適合される分配装置を用いて投与することができ、そしてその内部に包装することができる。浣腸調合物は酸化防止剤および防腐剤を包含するがそれらに限定されない種々の追加成分をさらに含んでなりうる。
【0178】
物質に当該技術で既知である化学組成物を含浸させるかまたはコーティングするための方法は当該技術で既知であり、そして化学組成物を表面上に沈着または結合する方法、化学組成物を物質の合成中に物質の構造(すなわち、例えば生理学的に分解可能な物質)内に加える方法、および水性または油性の液剤または懸濁剤を吸収性物質内に吸収させる方法を包含するが、それらに限定されず、その後に乾燥を伴うかまたは伴わない。
【0179】
ここで使用される際には、製薬学的組成物の「非経口投与」は被験体の組織の物理的な割れにより特徴づけられる投与および組織内の割れ目を通す製薬学的組成物の投与のいずれかの経路を包含する。非経口投与はそれ故、組成物の注射により、手術切開による組成物の適用により、組織−浸透性の非−手術外傷による組成物の適用などによる製薬学的組成物の投与を包含するが、それらに限定されない。
【0180】
非経口投与に適する製薬学的組成物の調剤は製薬学的に許容可能な担体、例えば殺菌水または殺菌性等張性食塩水、と組み合わせた活性成分を含んでなる。そのような調剤を大型丸剤投与用または連続的投与用に適する形態で製造し、包装し、または販売することができる。注射調剤を薬用量形態で、例えば防腐剤を含有するアンプル剤または複数−服用量容器で、製造し、包装し、または販売することができる。非経口投与用の調剤は懸濁剤、液剤、油性もしくは水性賦形剤中の乳剤、ペースト剤、および移植可能な持続−放出性のまたは生分解可能な調剤を包含するが、それらに限定されない。そのような調剤は、懸濁化剤、安定剤、または分散化剤を包含するがそれらに限定されない1種もしくはそれ以上の追加成分をさらに含んでなりうる。非経口投与用の調剤の1つの態様では、活性成分は再構成される組成物の非経口投与前の適当な賦形剤(例えば、発熱因子を含まない殺菌水)を用いる再構成用の乾燥状態(すなわち、粉末または顆粒)で提供される。
【0181】
製薬学的組成物は殺菌性の注射可能な水性もしくは油性の懸濁剤または液剤の形態で製造し、包装し、または販売することができる。この懸濁剤または液剤は既知の技術に従い調合することができ、そして活性成分の他にここに記載されている追加成分、例えば分散化剤、湿潤剤、または懸濁化剤、を含んでなりうる。そのような殺菌性の注射可能な調剤は無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒、例えば水または1,3−ブタンジオール、を用いて製造することができる。他の許容可能な希釈剤および溶媒はリンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、および不揮発性油類、例えば合成モノ−もしくはジ−グリセリド類を包含するが、それらに限定されない。有用な他の非経口的に投与可能な調剤は活性成分を微結晶性形態で、リポソーム調合物で、または生分解可能な重合体系の成分として含んでなるものを包含する。持続放出性または移植用の組成物は製薬学的に許容可能な重合体状のまたは疎水性の物質、例えば乳剤、イオン交換樹脂、微溶性重合体、または微溶性塩を含んでなりうる。
【0182】
本発明の製薬学的組成物を頬投与に適する調剤で製造し、包装し、または販売することができる。そのような調剤は、例えば、普遍的な方法を用いて製造される錠剤またはロゼンジ剤の形態であることができ、そして、例えば、0.1〜20%(w/w)の活性成分、経口的に溶解可能であるかまたは分解可能な組成物を含んでなる残部、および1種もしくはそれ以上のここに記述された追加成分でありうる。或いは、頬投与に適する調剤は活性成分を含んでなる粉末またはエアロゾル化もしくは噴霧化された液剤もしくは懸濁剤を含んでなりうる。そのような粉末状の、エアロゾル化された、またはエアロゾル化された調剤は、分散化時に、好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの範囲内の平均粒子または小滴寸法を有し、そして1種もしくはそれ以上のここに記述された追加成分をさらに含んでなりうる。
【0183】
ここで使用される際には、「追加成分」は1種もしくはそれ以上の以下のもの:賦形剤、表面活性剤、分散化剤、不活性希釈剤、造粒および崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、防腐剤、生理学的に分解可能な組成物、例えばゼラチン、水性賦形剤および溶媒、油性賦形剤および溶媒、懸濁化剤、分散化または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、緩衝剤、塩類、濃稠化剤、充填剤、乳化剤、酸化防止剤、抗生物質、抗カビ菌剤、安定剤、および製薬学的に許容可能な重合体状または疎水性物質を包含するが、それらに限定されない。本発明の製薬学的組成物に包含されうる他の「追加成分」は当該技術で既知でありそして、例えば、引用することにより本発明の内容となるGenaro,ed.(1985,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA)に記述されている。
【0184】
典型的には、動物、好ましくは人間、に投与できる本発明の化合物の薬用量は動物のタイプおよび処置される疾病のタイプ、動物の年令並びに投与の方式を包含するがそれらに限定されない多くの因子により変動するであろう。
【0185】
化合物は動物に1日数回の如き頻度で投与することができ、またはそれを例えば1日に1回、1週に1回、2週に1回、1ヶ月に1回、もしくはそれより少ない頻度の如きより少ない頻度で投与することができる。服用量の頻度は当業者に容易に明らかになるであろうしそして例えば処置する疾病のタイプおよび重篤度、動物のタイプおよび年令などを包含するがそれらに限定されない多くの因子により変動するであろう。
【実施例】
【0186】
本発明を次に以下の実施例を参照しながら記述する。これらの実施例は説明目的だけのために提供され、そして本発明はこれらの実施例に限定されず、むしろここに提供された教示の結果として明らかな全ての変更を包括する。
【実施例1】
【0187】
本発明に従う“S−ニトロソチオール−類似”作用を有する化合物の同定
ある態様では、本発明は赤血球内に含有されるヘモグロビンと相互作用してSNOまたはSNOプロドラッグを誘導してSNOHbを作成する1個もしくはそれ以上の分子の同定を提供する(Doctor et al PNAS 2005;102:5709−5714)。この変化は、スクリーニングにより同定される時には、SNO信号剤として作用しうる小分子を同定する。
【実施例2】
【0188】
呼吸調節の評価方法を用いる本発明の化合物の同定
呼吸調節に作用する薬品の影響を評価する確立した方法は、呼吸に影響する重要な因子がしっかりと調節および監視できる閉鎖システムを作成することである。例えば、調節システムは酸素濃度、二酸化炭素濃度および大気圧に関して確立されている。
【0189】
動物ベースの評価に関しては、複数の呼吸機能測定の全身的または鼻のみの評価のいずれかを可能にするシステムが利用可能である。アレルギー、炎症、COPDおよび催眠性
鎮痛薬使用と組み合わされた呼吸の確立された動物モデル(例えば、モルモット、犬、齧歯動物)もある。非限定例として、ロベラセ・レスピラトリー・リサーチ・インスティテュート(Lovelace Respiratory Research Institute)(アルブクエルク、ニューメキシコ州)は新薬の評価および環境露呈目的の確立における多くの実験を有する。別の非限定例では、Onal他は人間におけるおとがい舌筋に対する種々の処置の評価方法を記述した(Onal E、Lopate M and
O’Connor TD Am Rev Respir Dis 1981;124:215−7)。上部気道内の筋肉緊張力は例えば睡眠時無呼吸症およびいびきの如き症状における重要な構成要素でありそしてこの文献は中枢呼吸調節および気道筋肉緊張力の間の密接な関係を示唆している。従って、呼吸の調節に影響する例えばSNO類の如き剤はこの領域おける筋肉緊張力を高めることにより上部気道の通気性も改良しうる。HornerおよびBradleyは睡眠および換気の調節に関する臨床的および動物モデルデータに対する論評を最近提出した(Am J Respir Crit Care Med
2006;173:827−832)。彼らは上部気道筋系に影響する剤の評価に関するOnalの初期の要請(call)を繰り返しそして助けとなりうる種々の動物および人間を照会した。この照会は引用することにより本発明の内容となる。
【実施例3】
【0190】
換気調節を回復するために使用される化合物の生物学的活性および効力を評価するための新規モデル
実験モデル試験種用に、250−300グラムの体重のスプラグ−ダウレイ(Sprague−Dawley)雄ラット(チャールス・リバー(Charles River))を使用した。1キログラム当たり75〜150マイクログラムの範囲にわたる服用量でフェンタニルを使用して25%〜50%の範囲にわたる呼吸低下を誘発した。ラットおよび人間における呼吸低下の誘発におけるフェンタニルおよび他の催眠性鎮痛薬の影響は文献に良く記述されている(Dahan,A.et al.,British Journal of Anaesthesia 94(6):825−34(2005))。誘発された呼吸低下のそのようなモデルは当該技術において自然に発生する呼吸低下の代表として認められている。
【0191】
本発明に従う試験化合物は、このモデルにおけるフェンタニルの投与の前に、同時にまたは後に与えられうる。ある化合物が生物学的活性化が完全に有効であることを必要とするため、投与の順序は重要である。当業者は、生物学的活性化が完全に有効になることを必要とする化合物を認識するかまたは判定しうるであろう。
【0192】
呼吸低下の2つの顕著な段階を引き起こすためには静脈注入による投与の速度も重要である。最初の数分間(0〜5分間)内にしばしば無呼吸(呼吸停止)を伴う最初の深い呼吸低下影響がある。その後に呼吸の回復および45−60分間続く長期の呼吸低下がくる。本発明の化合物は活性によって異なる臨床用途で曲線の一方の部分または両方の部分に影響しうるため呼吸低下曲線の両方の段階を得るためにはフェンタニルの適切な投与が重要である。
【0193】
図1および2は換気調節を回復するために使用される化合物の生物学的活性および効力の評価に関する本発明の方法の有用性を示す。化合物GLN 10,015はフェンタニル−誘発性呼吸低下の逆転において有効でないことが見出された(図1)。しかしながら、化合物GLN 10,013は急性(0〜5分間)および慢性(10〜50分間)段階の両方において呼吸低下を逆転することが見出された(図2)。本発明の化合物GLN 10,013は呼吸低下の当該技術で認められたモデルを有するラットに対して換気調節を成功裡に回復する。
【0194】
特定の理論により拘束しようとは望まないが、この実験データは呼吸低下の急性および慢性段階が異なる機構を有しうることを示唆しており、この差異はここに示された化合物の臨床使用が考察される時に重要になりうる。
【実施例4】
【0195】
人間モデルを使用する本発明の化合物の同定
Hildebrandt他(Blood 2002;99:1552−1555)は、酸素および二酸化炭素濃度の変動する条件下でのN−アセチルシステインの評価用に使用されたプロトコルを記述した。さらに、米軍(ナバル・エーロスペース・メディカル・リサーチ・コマンド(Naval Aerospace Medical Research Command)、ペンサコラ(Pensacola)FL、US・アーミー・リサーチ・インスティテュート・オブ・エンバイロンメンタル・メディスン(US Army
Research Institute of Environmental Medicine)、ナティック、マサチュセッツ州)は全身および顔面のみの両方の露出/監視システムを含む方法を開発した(Sausen et al.Aviat Space
Environ Med 2003;74:1190−7)。
【0196】
別の態様では、機械的換気装置に連結されている入院罹患体は呼吸に対する薬品の影響を厳密に評価する機会がある。呼吸パラメーターが分毎の基準で測定される環境において酸素および二酸化炭素のレベルを調節することができる。
【0197】
ここに記述された動物および人間をベースにしたシステムの他に、低酸素症から生ずる慢性酸化ストレスを示すためにある種の生化学マーカーが使用される分野が出現している。1つのそのような例は酸化ストレスを示すための種々のイソプロスタン類(isoprostanes)の使用である(Cracowski JL and Durand T.Fundam Clin Pharmacol 2006;20:417−27)。
【0198】
しかしながら、ここに示された開示を助けとして提供される時に当業者に理解されるであろうように、上記方法のいずれかを使用して本発明の化合物および/または方法を評価することができる。
【実施例5】
【0199】
本発明に従う化合物の製造
本発明に従う化合物の合成方法がここに示される。表2および図3は式XXVIIの化合物の製造を示し、表3および図4は式XXVIIIの化合物の製造を示し、そして表4および図5は式XXXIIの化合物の製造を示す。
【0200】
【表5】

【0201】
【表6】

【0202】
【表7】

【0203】
ここに引用された各々のおよび全ての特許、特許出願、並びに文献の開示は引用することにより本発明の内容となる。
【0204】
本発明は具体的な態様を参照して開示されてきたが、本発明の他の態様および改変は本発明の真の精神および範囲から逸脱せずに当業者により誘導されうることは明らかである。添付された特許請求の範囲は全てのそのような態様および同等な改変を包含すると解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製薬学的に許容可能な担体および式I:
【化1】

[式中、
R’はH、アリール、アルキル、アリールカルボニル、アルキルカルボニル、カルボキシアルキルおよびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキル、アリールカルボニル、アルキルカルボニル、カルボキシアルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン、および複素環よりなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”はH、OH、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から選択され、
R”’はCO、およびCONR、複素環、並びにC(O)複素環よりなる群から選択され,
R””はH、NO、アルキル、およびアルキルカルボニルよりなる群から選択され、
はアリーレン、ヘテロアリーレン、および(C−C)アルキレンよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、アルコキシカルボニルアルキル、カルボキシアルキル、およびヘテロアリールよりなる群から独立して選択され、該アリール、アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、カルボキシアルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、ハロゲン、および複素環よりなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよい]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項2】
製薬学的に許容可能な担体および式II:
【化2】

[式中、
はアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C−C)アルキル、(C−C)アルキル、(CHであり、ここでn=1−4であり、
はアルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から選択され、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項3】
製薬学的に許容可能な担体および式III:
【化3】

[式中、
R”はH、OH、アリール、ヘテロアリール、(C−C)アルキル、および(C−C)アリルよりなる群から選択され、
はアルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から選択され、
はアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルである]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項4】
製薬学的に許容可能な担体および式IV:
【化4】

[式中、
R’はアリール、アルキルおよびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシから独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
はO、(CH、O(CH(ここでn=1−6である)、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびアルコキシよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項5】
製薬学的に許容可能な担体および式V:
【化5】

[式中、
R’はアリール、アルキルおよびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシから独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
はO、(CH、O(CH(ここでn=1−6である)、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびアルコキシよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項6】
製薬学的に許容可能な担体および式VI:
【化6】

[式中、
R’はアリール、アルキルおよびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシから独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
はO、(CH、O(CH(ここでn=1−6である)、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびアルコキシよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項7】
製薬学的に許容可能な担体および式VII:
【化7】

[式中、
R’はアリール、アルキル、アルコキシ、およびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキル、アルコキシ、またはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシよりなる群から独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”’はH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、およびNRよりなる群から選択され、
R””はH、アルキル、およびアルキルカルボニルよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項8】
製薬学的に許容可能な担体および式VIII:
【化8】

[式中、
はアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C−C)アルキル、(C−C)アルキル、(CHであり、ここでn=1−4であり、
はアルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から選択され、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項9】
製薬学的に許容可能な担体および式IX:
【化9】

[式中、
R”はH、OH、アリール、ヘテロアリール、(C−C)アルキル、および(C−C)アリルよりなる群から選択され、
はアルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から選択され、
はアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルである]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項10】
製薬学的に許容可能な担体および式X:
【化10】

[式中、
R’はアリール、アルキルおよびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシから独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
はO、(CH、O(CH(ここでn=1−6である)、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびアルコキシよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項11】
製薬学的に許容可能な担体および式XI:
【化11】

[式中、
R’はアリール、アルキルおよびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシから独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
はO、(CH、O(CH(ここでn=1−6である)、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびアルコキシよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項12】
製薬学的に許容可能な担体および式XII:
【化12】

[式中、
R’はアリール、アルキルおよびヘテロアリールよりなる群から選択され、該アリール、アルキルまたはヘテロアリールのいずれも場合により(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、NR、OR、アルコキシから独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよく、
R”’はCO、CO、およびCONRよりなる群から選択され、
はO、(CH、O(CH(ここでn=1−6である)、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびアルコキシよりなる群から選択され、
さらにここで、該Rは各場合とも水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、および(C−C)アルキルよりなる群から独立して選択される]
の化合物または該化合物の製薬学的に許容可能な酸、塩基、塩、もしくは異性体を含んでなる組成物。
【請求項13】
呼吸リズムを安定化させるための治療組成物であって、該治療組成物が
a.請求項1−12の1項の化合物を含んでなる第一組成物、および
b.S−ニトロソチオール化合物でない呼吸リズムを安定化させる作用を有する第二化合物を含んでなる第二組成物
を含んでなる組成物。
【請求項14】
該第二化合物が呼吸リズムを安定化させる作用を有する化合物である、請求項13の治
療組成物。
【請求項15】
哺乳動物の呼吸リズムを安定化させる方法であって、該方法が哺乳動物に請求項1−12のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項16】
該第二化合物が炭酸アンヒドラーゼ阻害剤、呼吸刺激剤、催眠性アンタゴニスト、およびホルモンよりなる群から選択される、請求項15の方法。
【請求項17】
該第二化合物が上部気道の通気性を増加させる作用を有する化合物である、請求項13の治療組成物。
【請求項18】
該第二化合物がセロトニンアゴニスト、セロトニンアンタゴニスト、四環式抗鬱剤、ドーパミンに作用する剤、およびノルエピネフィリンに作用する剤よりなる群から選択される、請求項16の方法。
【請求項19】
該第二化合物が覚醒を促進する作用を有する化合物である、請求項13の治療組成物。
【請求項20】
該第二化合物が発作を減ずる作用を有する化合物である、請求項13の治療組成物。
【請求項21】
該第二化合物が炎症を減ずることにより上部気道の通気性を増加させる作用を有する化合物である、請求項13の治療組成物。
【請求項22】
該第二化合物が抗ヒスタミン剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、ステロイド、およびCOX−2阻害剤よりなる群から選択される、請求項18の方法。
【請求項23】
該第二化合物が呼吸駆動力を減ずる作用を有する化合物である、請求項13の治療組成物。
【請求項24】
該第二化合物がオピオイド鎮痛薬、鎮静催眠薬、および全身麻酔薬よりなる群から選択される、請求項22の方法。
【請求項25】
該第二化合物が肺機能を改良する作用を有する化合物である、請求項13の治療組成物。
【請求項26】
該第二化合物がステロイド、気管支拡張剤、および抗コリン作用薬よりなる群から選択される、請求項24の方法。
【請求項27】
さらに第三化合物も含んでなり、ここで該第三化合物がS−ニトロソチオール化合物である、請求項13の組成物。
【請求項28】
さらに第三化合物も含んでなり、ここで該第三化合物がS−ニトロソチオール化合物でない、請求項13の組成物。
【請求項29】
哺乳動物の呼吸リズムを安定化させる方法であって、該方法が哺乳動物に請求項20または21の1項の治療組成物よりなる群から選択される組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項30】
哺乳動物の呼吸リズムを安定化させる方法であって、該方法が哺乳動物に請求項1−12のいずれか1項に記載の化合物よりなる群から選択される組成物を投与することを含ん
でなり、該方法がさらに該哺乳動物を換気補助装置で処置することも含んでなる方法。
【請求項31】
該換気補助装置が機械的換気器、連続的な正の気道圧力(CPAP)装置および二層レベルの正の気道圧力(BiPAP)装置よりなる群から選択される、請求項18の方法。
【請求項32】
請求項1−12のいずれか1項に記載の化合物よりなる群から選択される組成物および請求項13の治療組成物の1種を含んでなる製薬学的組成物であって、該製薬学的組成物がさらに製薬学的に許容可能な担体も含んでなる組成物。
【請求項33】
哺乳動物の呼吸リズムを安定化させる方法であって、該方法が哺乳動物に請求項32の製薬学的組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項34】
該投与経路が非経口、経口および頬よりなる群から選択される、請求項33の方法。
【請求項35】
該非経口投与経路が経皮、静脈内、筋肉内、および皮膚内よりなる群から選択される、請求項34の方法。
【請求項36】
該組成物が少なくとも2つの投与経路により投与される、請求項34の方法。
【請求項37】
個体の孤束核内の脳幹呼吸調節中枢のレベルにおいて毎分換気量(V)を増加させる方法であって、該方法が該個体に請求項1−12のいずれか1項に記載の化合物を投与する段階を含んでなり、ここで該化合物が個体の孤束核内の脳幹呼吸調節中枢のレベルにおいて毎分換気量(V)を増加させる作用を有する方法。
【請求項38】
個体の孤束核内の脳幹呼吸調節中枢のレベルにおいて毎分換気量(V)を増加させる方法であって、該方法が該個体に
a.請求項1−12の1項の化合物を含んでなる第一組成物、および
b.孤束核内の脳幹呼吸調節中枢のレベルにおいて毎分換気量(V)を増加させる作用を有するS−ニトロソチオール化合物でない第二化合物を含んでなる第二組成物
を含んでなる治療組成物を投与する段階を含んでなる方法。
【請求項39】
個体の孤束核内の脳幹呼吸調節中枢のレベルにおいて毎分換気量(V)を増加させる方法であって、該方法が該個体に
a.S−ニトロソチオール第一化合物を含んでなる第一組成物、および
b.孤束核内の脳幹呼吸調節中枢のレベルにおいて毎分換気量(V)を増加させる作用を有するS−ニトロソチオール化合物でない第二化合物を含んでなる第二組成物
を含んでなる治療組成物を投与する段階を含んでなる方法。
【請求項40】
化合物が式XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIX、XX、XXI、XXII、XXIII、XXIV、XXV、XXVI、XXVII、XXVIII、XXIX、XXX、XXXI、XXXII、XXXIII、XXXIV、XXXV、XXXVI、XXXVII、XXXVIII、XXXIX、XL、XLI、XLII、XLIII、XLIV、XLV、XLVI、XLVII、XLVIII、XLIX、L、LI、LII、LIII、LIV、およびLVよりなる群から選択される化合物である、請求項37の方法。
【請求項41】
化合物が式XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIX、XX、XXI、XXII、XXIII、XXIV、XXV、XXVI、XXVII、XXVIII、XXIX、XXX、XXXI、XXXII、XXXIII、XXXIV、XXXV、XXXVI、XXXVII、XXXVIII、XXXIX、XL、XLI、XLII、X
LIII、XLIV、XLV、XLVI、XLVII、XLVIII、XLIX、L、LI、LII、LIII、LIV、およびLVよりなる群から選択される化合物である、請求項1の組成物。
【請求項42】
化合物が式XXVの化合物である、請求項40の方法。
【請求項43】
化合物が式XXVの化合物である、請求項41の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−505844(P2010−505844A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531451(P2009−531451)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/021311
【国際公開番号】WO2008/066603
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508085039)ガレオン・フアーマシユーチカルズ・インコーポレーテツド (2)
【氏名又は名称原語表記】Galleon Pharmaceuticals,Inc.
【Fターム(参考)】