SAWフィルタパッケージ
【課題】小型化された構成でありながら、形成した減衰極の変化による減衰量は高域側減衰帯域だけでなく低域側減衰帯域においても、十分に大きくする。
【解決手段】本発明のSAWフィルタパッケージは、第1の電極、第2の電極、第3の電極、及び第4の電極と、第1の電極と第2の電極との間に接続された第1のSAW共振器と、第1の電極と第3の電極とに接続された第2のSAW共振器と、第2の電極と第4の電極とに接続された第3のSAW共振器とが形成された圧電性基板と、複数のパッケージ電極を有すると共に、圧電性基板を搭載するパッケージと、複数のボンディングワイヤからなるボンディングワイヤ群と、を有し、ボンディングワイヤ群を介して、第3の電極と第4の電極とが接続され、かつ、第3の電極及び第4の電極と前記パッケージ電極のうち接地電圧が供給される電極とが接続されたことを特徴とする。
【解決手段】本発明のSAWフィルタパッケージは、第1の電極、第2の電極、第3の電極、及び第4の電極と、第1の電極と第2の電極との間に接続された第1のSAW共振器と、第1の電極と第3の電極とに接続された第2のSAW共振器と、第2の電極と第4の電極とに接続された第3のSAW共振器とが形成された圧電性基板と、複数のパッケージ電極を有すると共に、圧電性基板を搭載するパッケージと、複数のボンディングワイヤからなるボンディングワイヤ群と、を有し、ボンディングワイヤ群を介して、第3の電極と第4の電極とが接続され、かつ、第3の電極及び第4の電極と前記パッケージ電極のうち接地電圧が供給される電極とが接続されたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSAWフィルタパッケージに関し、例えば、携帯電話等の小型移動体通信機器に用いられる送信用または受信用のSAWフィルタを有するSAWフィルタパッケージに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
この種の有極型SAWフィルタについて記載した文献としては、下記の特許文献1、2および非特許文献1がある。
【0003】
近年、小型で、軽量な携帯電話等の移動体通信機器端末の開発が急速に進められている。これに伴い、用いられる部品の小型・高性能化が求められており、弾性表面波(SAW)素子を基本としたRF部品(高周波部品)の開発が求められている。
【0004】
前記非特許文献1に記載された梯子形SAWフィルタの基本回路構成を、図2に示す。
【0005】
図2の梯子形SAWフィルタはRF部の小型化に、大きく貢献するデバイスのため、その実用化が強く要望されている。この梯子形SAWフィルタを用いたSAW分波器等のRFデバイスはすでに開発され、一部、実用に供されている。
【0006】
図2の800(MHz)帯梯子型SAWフィルタの特性(減衰特性(1)とReturn Loss特性(2))を図3に示す。図3のフィルタ特性は、直列腕共振器の交差長が100μm、対数が100本で、並列腕共振器の交差長が70μm、対数が70本の場合に対応している。
【0007】
また図4には、図3の直列腕共振器および並列腕共振器の特性(すなわち、直列腕共振器の虚数部特性がjx、並列腕共振器の虚数部特性がjb、直列腕共振器の実数部特性がrs、並列腕共振器の虚数部特性がrp)を示す。
【0008】
図3に示す通過域(863MHz付近〜911MHz付近の周波数帯域)の高域側減衰域の減衰極は直列腕共振器回路が無限大点(すなわち約42dB)の周波数(すなわち919MHz付近)、通過域の低域側減衰域の減衰極は並列腕共振器回路が零の周波数(すなわち855MHz付近)にて生ずる事が、図4と図3の対比からわかる。
【0009】
なお、図3中には、Q=500の場合の各SAW共振器の回路の実数部も合わせて示している。
【0010】
図3の特性からもわかるように、図2の梯子型SAWフィルタの減衰極は通過帯域の低域側減衰帯域に一個、高域側減衰帯域に一個が存在するため、通過帯域の低域側減衰帯域の特性と高域側減衰帯域の特性が略同じ特性を持っている事が知られている。
【0011】
ところが、移動体通信機器端末の需要の急増に伴ない、800(MHz)帯の周波数帯域を用いる移動体通信の方式および2(GHz)帯の周波数帯域を用いる移動体通信の方式共に送信帯域および受信帯域は広く、且つ、送信帯域と受信帯域の間隔を狭く設定されている。
【0012】
一例として、米国のCDMA(符号分割多元接続)方式のように、送信用の帯域が824〜849MHzで、受信用の帯域が869〜894MHzの場合、送信帯域の高域側減衰帯域に受信帯域が位置しているため、送信帯域の低域側減衰帯域の減衰量はそれほど大きくなくてもかまわないが、高域側減衰帯域の減衰量は十分に大きくなければ、移動体通信機器端末が送信した電波が自身の受信帯域に漏れ込んで受信品質を劣化させる可能性が高い。
【0013】
この観点で図3をみる(図3上で特性曲線を左側(低域側)にずらして考える)と、図3のフィルタ特性では減衰量が、高域側減衰帯域も低域側減衰帯域と同じでほぼ−10dBであるため、高域側の減衰量の大きさが必ずしも十分ではない。
【0014】
これに対し、例えば前記特許文献1(や特許文献2)では、図6に示す構造のSAWフィルタを用いて、図5のようなフィルタ特性を得ることができる。図6のSAWフィルタは、図2の梯子形SAWフィルタCP1と一個のL(インダクタLX)の二端子対回路CP2を持ち、これら2つの二端子対回路CP1、CP2を直列接続することで構成された有極型SAWフィルタLAである。
【0015】
図5において、マーク▽1は周波数818MHz、減衰量−3.0609dBの点を示し、マーク△2は周波数843MHz、減衰量−2.9886dBの点を示し、マーク△3は周波数863MHz、減衰量−43.794dBの点を示し、マーク△4は周波数888MHz、減衰量−38.099dBの点を示している。
【0016】
図5から明らかなように、図5のフィルタ特性を持つSAWフィルタを米国のCDMA方式の送信帯域に適用すれば、高域側減衰帯域における減衰量が十分に大きいため、受信帯域への漏れ込みがほとんど無く、送信、受信ともに、良好な通信品質を得ることができる。
【特許文献1】特開平10−93382号公報
【特許文献2】特開平10−163808号公報
【非特許文献1】SAW共振器を用いた低損失帯域フィルタ:佐藤、伊形、宮下、松田、西原:電子情報通信学会論文誌A,Vol.J76−A,No.2,pp245−252,1993.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら図5のフィルタ特性でも、低域側減衰帯域の減衰量が十分に大きいとはいえないため、上述した米国のCDMA方式の例において、受信用フィルタとして特許文献1のSAWフィルタを適用した場合、必ずしもフィルタ特性が十分でなく、受信品質が劣化する可能性がある。
【0018】
すなわち、上述したCDMA方式の例で、送信用フィルタとして前記特許文献1のSAWフィルタのような良好な特性を持たないフィルタを用いた場合には、自移動体通信機器端末の送信側からの漏れ込みの影響を受信用フィルタによって十分に低減することができず、自移動体通信機器端末以外の無線通信装置から到来する干渉波の影響がある場合などにも、受信用フィルタによってこれを十分に低減することができない。
【0019】
なお、方式によっては、上述した米国のCDMA方式とは反対に、送信帯域のほうが受信帯域よりも周波数が高くなるように設定することもあり得るので、その場合には、前記送信用フィルタと受信用フィルタを置換して考える必要がある。
【0020】
送信用フィルタとするか受信用フィルタとするかに関わらず、特許文献1、特許文献2の有極型SAWフィルタの動作原理に着目すれば、本発明が解決しようとする課題は次のように表現することができる。
【0021】
特許文献1、2などに記載された従来の有極型SAWフィルタにおいては、一個のLの二端子対回路により有限周波数内に減衰極を形成するが、この形成される減衰極の変化による減衰量は通過帯域の低域側減衰帯域においては、小さくなり、通過帯域の高域側減衰帯域においては、大きくなる。したがって、通過帯域の高域側減衰帯域の高減衰量の要求規格は満足できるとしても通過帯域の低域側減衰帯域における要求規格を満足することができない可能性が高い。
【0022】
もしも、図6中のインダクタンスLXのL値をきわめて大きく設定すれば、当該高域側減衰帯域の減衰量を十分に大きくすることが可能であると考えられるが、そのような大きなL値は、実現困難である。
【0023】
また、減衰帯域と通過帯域の間隔(例えば、同一の移動通信端末にとっての送信用周波数帯域と受信用周波数帯域の間隔)が上述したように例えば20(MHz)程度でかなり狭い場合には、急峻なフィルタ特性が必要である。
【0024】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、通過帯域の低域側減衰帯域における要求規格を満足することができるSAWフィルタパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
かかる課題を解決するために、本発明のSAWフィルタパッケージは、第1の電極、第2の電極、第3の電極、及び第4の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に接続された第1のSAW共振器と、前記第1の電極と前記第3の電極とに接続された第2のSAW共振器と、前記第2の電極と前記第4の電極とに接続された第3のSAW共振器とが形成された圧電性基板と、複数のパッケージ電極を有すると共に、前記圧電性基板を搭載するパッケージと、複数のボンディングワイヤからなるボンディングワイヤ群と、を有し、前記ボンディングワイヤ群を介して、前記第3の電極と前記第4の電極とが接続され、かつ、前記第3の電極及び前記第4の電極と前記パッケージ電極のうち接地電圧が供給される電極とが接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上に説明したように、本発明によれば、有極型SAWフィルタの通過帯域の高域側減衰帯域と低域側減衰帯域内に複数個ずつ減衰極を形成するので、小型化された構成でありながら、形成した減衰極の変化による減衰量は高域側減衰帯域だけでなく低域側減衰帯域においても、十分に大きくすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(A)実施形態
以下、本発明にかかるSAWフィルタパッケージの実施形態について説明する。
【0028】
一般にSAWフィルタでは、多数のSAW共振器を利用すれば、通過帯域の低域側減衰帯域においても高域側減衰帯域においても、十分に大きな減衰量を持ち、なおかつ急峻な、理想的なフィルタ特性を獲得することが可能であるが、できるだけ少数のSAW共振器を用いた可及的に小型化されたSAWフィルタによって、このような理想的なフィルタ特性に近い良好なフィルタ特性を獲得することが重要である。
【0029】
SAWフィルタは主に小型化の観点から、800(MHz)帯の周波数帯域を使用する移動体通信用携帯端末機器および2(GHz)帯の周波数帯域を使用する移動体通信用携帯端末機器などのRFフィルタとして、多用されつつある。
【0030】
(A−1)第1の実施形態の構成
本実施形態のSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ10の回路図を図1に示す。当該SAWフィルタ10は、例えば、上述した米国のCDMA方式などにおける携帯電話の受信用フィルタとして機能するものである。もちろん、必要に応じて、送信用フィルタとして用いることも可能である。
【0031】
図1において、当該SAWフィルタ10は、入力端子IN、GND1と、出力端子OUT、GND2と、3つのSAW共振器SR1、PR1、PR2と、3つのインダクタンスL1〜L3と、6つの接続点P1〜P6とを備えている。
【0032】
このうちSAW共振器SR1は、入力端子IN、出力端子OUT間に配置され、接続点P3、P4を有する直列腕に設けられた直列腕SAW共振器である。
【0033】
また、前記SAW共振器PR1(110)は、前記接続点P3と接続点P1を有する並列腕に設けられた並列腕SAW共振器であり、同様に、前記SAW共振器PR2(111)は、前記接続点P4と接続点P2を有する並列腕に設けられた並列腕SAW共振器である。
【0034】
そして、当該接続点P1とP2のあいだにはインダクタンスL2(131)が接続されている。
【0035】
また、入力端子GND1と出力端子GND2とのあいだには接続点P5とP6が設けられ、前記接続点P1と当該接続点P5のあいだにはインダクタンスL1(130)が接続され、前記接続点P2と接続点P6のあいだにはインダクタンスL3(132)が接続されている。
【0036】
すなわち、有極型SAWフィルタ10は、構成要素IN、P3、P4、SR1、PR1、PR2を有する二端子対回路30に対し、構成要素P1、P2、P5、P6、L1〜L3、GND1、GND2を有する二端子対回路31を直列接続することによって構成されている。
【0037】
なお、L1〜L3は必要に応じ、各インダクタンスのL値を示す値としても用いる。
【0038】
図1の回路図に対応する実装例を示したものが、図11である。図11は、通常のIC(半導体集積回路)と同様な微細加工技術によって実現されるSAWフィルタパッケージ10Aを示している。
【0039】
図11において、当該SAWフィルタパッケージ10Aは、パッケージ11上に形成されたパッド12,16と、圧電性基板21とを有する。
【0040】
当該圧電性基板21上に設けられ、「π」字型をなす例えばタングステンの電極14A、14Bには、それぞれSAW共振器100と、110と、111とが接続されている。
【0041】
このうちSAW共振器100は、2つのグレーティング反射器100A、100Cと、そのあいだに配置されたインターディジタル電極(インターディジタル変換器:IDT)100Bとを備えている。
【0042】
インターディジタル電極100Bを構成する櫛歯状電極100BAは、前記電極14Aに電気的に接続されており、当該インターディジタル電極100Bを構成するもう1つの櫛歯状電極100BBは、前記電極14Bに電気的に接続されている。
【0043】
SAW共振器100以外の共振器の構造もこれと同様で、SAW共振器110は、2つのグレーティング反射器110A、110Cと、そのあいだに配置されたインターディジタル電極110Bとを備え、SAW共振器111は、2つのグレーティング反射器111A、111Cと、そのあいだに配置されたインターディジタル電極111Bとを備えている。
【0044】
また、インターディジタル電極110Bを構成する櫛歯状電極110BAは、前記電極14Aに電気的に接続されており、当該インターディジタル電極110Bを構成するもう1つの櫛歯状電極110BBは、パッドP22(前記P1に対応)に電気的に接続されている。
【0045】
同様に、インターディジタル電極111Bを構成する櫛歯状電極111BAは、パッド23(前記P2に対応)に電気的に接続されており、当該インターディジタル電極111Bを構成するもう1つの櫛歯状電極111BBは、前記電極14Bに電気的に接続されている。
【0046】
ただし本実施形態において各SAW共振器SR1、PR1、PR2の交差長と対数は、図7に示す通りである。
【0047】
すなわち、直列腕共振器SR1の交差長は55μm、対数は100本で、並列腕共振器PR1の交差長は66μm、対数は66本で、並列腕共振器PR2の交差長は66μm、対数は66本である。
【0048】
図11上の前記パッド12と電極14Aはインダクタンス分の十分に少ないボンディングワイヤ13によって接続され、前記パッド16と電極14Bはインダクタンス分の十分に少ないボンディングワイヤ15によって接続されているが、インダクタンスとして利用するボンディングワイヤ17(L1に対応),18(L2に対応),19(L3に対応)は、それぞれ所望のL値を持っている。
【0049】
本実施形態では、ボンディングワイヤ17〜19のそれぞれが持つL値は同一値(例えば0.1nH)であるものとする。
【0050】
回路図のレベルで図6に示した従来のSAWフィルタと比べると、本実施形態のSAWフィルタ10は、前記二端子対回路31の構造が相違する。
【0051】
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について説明する。
【0052】
(A−2)第1の実施形態の動作
本実施形態の有極型SAWフィルタ10の二等分回路図を、図12に示す。
【0053】
また、図13は当該有極型SAWフィルタ10の動作を説明するための格子型等価回路図である。
【0054】
図1に示す梯子形SAWフィルタ10はSAW共振器3個(SR1(100),PR1(110),PR2(111))からなる2段π形構成で、上述したように、二端子対回路30に対し、3個のL(L1(130),L2(131),L3(132))から構成された二端子対回路31を直列接続した構成となっている。
【0055】
ここでは、図1の有極型SAWフィルタ10の動作を評価し有極型SAWフィルタ10の減衰極周波数とL値の関係を求めるため、図12の二等分回路を用いる。
【0056】
図12の二等分回路の二等分部の端子(OUT(1),OUT(2),E)の開放時の回路の入力インピーダンスをZFとし、二等分部の端子(OUT(1),OUT(2),E)を接続した短絡時の回路の入力インピーダンスをZSとすると、ZFおよびZSは式(1)および式(2)で与えられる。
【0057】
ZF=Z(PR1(110))+jωL1(130) …(1)
ZS=1/((1/Z(SR1(100))+1/(1/Z(PR1(110))+jω(1/(1/L1(130)+1/L21(131))))) …(2)
ここで、Z(PR1(110))は、図12の並列腕共振器110のインピーダンス、L21(131)のL値は前記L2(131)の半分、すなわちL21(131)=L2(131)/2、また、ωは、fを周波数として、ω=2.0*π*fであり、Z(SR1(100))は図12の直列腕共振器100のインピーダンスの1/2、である。
【0058】
通常、図12の回路の特性は図13の格子形回路の特性で評価される。即ち、この図13の格子形回路の動作伝送係数(図12の回路の特性SF)は、式(1)、式(2)の値(ZF、ZS)を次の式(3)に代入することで求められる。
【0059】
SF=(1+ZF)(1+ZS)/(ZF−ZS) …(3)
したがって、減衰特性α(ω)は式(4)で与えられる。
【0060】
α(ω)=20*LOG(ABS(SF)) …(4)
ここで、ABS(SF)は( )内の絶対値を表し、*は乗算を表わす。
【0061】
即ち、Lにより減衰帯域に減衰極周波数が形成されるか、またはLにより減衰量の増加が発生するのは、次の条件(5A)または(5B)のいずれかが満たされる場合である。
【0062】
ZF=ZS …(5A)
ZS=∞ …(5B)
本実施形態の特徴は、式(1)および式(2)のZF,ZSにL(L1、またはL21)が含まれる事である。即ち、ZFおよびZSにLが含まれる事により、条件(5A)を満足して減衰帯域に減衰極周波数を形成するか、または、条件(5B)を満足して、減衰帯域に減衰極周波数を形成して減衰量が増大する場合である。この点を、図14に示すようなSAW共振器の等価LC回路を用いて説明する。
【0063】
図14の等価LC回路を用いると式(1)、式(2)は式(6)、式(7)で与えられる。
【0064】
ZF=(S^2+ω1^2+S^2*L11*Cf*(S^2+ω2^2))/(S*Cf*(S^2+ω2^2)) …(6)
ZS=(S^2+ω3^2+S^2*L22*Cs*(S^2+ω4^2))/(S*Cs*(S^2+ω4^2)) …(7)
ここで、L11=L1(130)、1/L22=1/L1(130)+1/L21(131)、Cf=並列腕の容量、Cs=直列腕の容量、ω1=並列腕の零点(すなわちインピーダンスが0になる点)、ω2=並列腕の極点(すなわちインピーダンスが極大たは極小になる点)、ω3=直列腕の零点、ω4=直列腕の極点、である。
【0065】
即ち、式(6)、式(7)および減衰極形成の条件である前記(5A)を用いて減衰極を与える周波数は、次の式(8)から得られる。
【0066】
Cf*(S^2+ω2^2)*(S^2+ω1^2+S^2*L11*Cf*(S^2+ω2^2))=(S^2+ω3^2+S^2*L22*Cs*(S^2+ω4^2))*Cs*(S^2+ω4^2)) …(8)
なお、^2は、直前の数値の自乗を意味する。
【0067】
ここで、本実施形態の特徴は式(8)にL11およびL22が含まれる事である。特に、L22の存在により、式(8)から求まる減衰極周波数が通過帯域の低域側減衰帯域になる。
【0068】
次に、本実施形態を、図6に示した従来のSAWフィルタLAと比較する。当該SAWフィルタLAに関する上記ZF、ZSは、式(9)および式(10)で与えられる。
【0069】
ZF=Z(PR1(110))+jωL11(130) …(9)
ZS=1/((1/Z(SR1(100))+1/(1/Z(PR1(110)) …(10)
ここでZ(PR1(110))は、図6に示す並列腕共振器110のインピーダンス、また、L11(130)=2.0*L1(130)で、ωは周波数をfとしてω=2.0*π*fで与えられ、Z(SR1(100))は図6の直列腕共振器110の1/2に相当するインピーダンス値である。
【0070】
対応する各式の比較から明らかなように、本実施形態のSAWフィルタ10と図6のSAWフィルタLAとの大きな違いは、ZSにLが含まれているか否かにある。
【0071】
この場合、式(8)に相当する極周波数は次の式(11)から得られる。
【0072】
Cf*(S^2+ω2^2)*(S^2+ω1^2+S^2*L11*Cf*(S^2+ω2^2))=Cs*(S^2+ω3^2)*(S^2+ω4^2)) …(11)
減衰極形成((5A))の条件ZF=ZSを用いて、減衰極を与える周波数は、本実施形態の場合、前記式(8)から求まり、図6に示す従来のSAWフィルタLAの場合、当該式(11)から求まる。
【0073】
2つの式を比較すると、式(8)にはL11とL22が含まれていたのに対し、当該式(11)にはL11しか含まれていない。このため、従来のSAWフィルタLAでは通過帯域の高域側減衰域に減衰極が形成される。
【0074】
一方、図15は、本実施形態の有極型SAWフィルタ10において、二端子対回路31内の3つのインダクタンスL1〜L3のL値をパラメータとした特性シミュレーション結果である。ここで、図15上のL=0の特性曲線が、図2に示した従来の2段π型梯子型SAWフィルタのフィルタ特性に相当する。
【0075】
この図15から、図2に示した従来の2段π型梯子型SAWフィルタに比較して以下の(1)〜(3)のようなことがわかる。
【0076】
(1) L1(130),L2(131),L3(132)により、通過帯域(約860MHz〜約900MHz)の低域側減衰帯域および高域側減衰帯域に、(低域)減衰極LP21〜LP41、LP22〜LP42および(高域)減衰極HP21〜HP41、HP22〜HP42が形成される。
【0077】
このうち低域減衰極LP21およびLP22はL=0.1nHの場合に対応し、低域減衰極LP31およびLP32はL=0.2nHの場合に対応し、低域減衰極LP41およびLP42はL=0.4nHの場合に対応する。同様に、高域減衰極HP21およびHP22はL=0.1nHの場合に対応し、高域減衰極HP31およびHP32はL=0.2nHの場合に対応し、高域減衰極HP41およびHP42はL=0.4nHの場合に対応する。
【0078】
(2) また、図8に示すように、これらの減衰極により、減衰量が30(dB)以上となる周波数帯域の幅を示す30dB減衰幅が、本実施形態では例えばL=0.2(nH)の場合、低域側減衰帯域において54.5(MHz)および高域側減衰帯域において36.5(MHz)となる。これに対し、図2に示した従来の梯子型SAWフィルタは低域側減衰帯域において43.5(MHz)および高域側減衰帯域において35.0(MHz)となるので、当該30dB減衰幅は本実施形態のほうが、低域側減衰帯域において11.5(MHz)だけ広く、高域側減衰帯域において1.5(MHz)だけ広くなっており、従来の梯子型SAWフィルタに比較して、高減衰特性が得られる。
【0079】
なお、図15から明らかなように、本実施形態における当該30dB減衰幅は、L1〜L3のL値が増加するほど広がる傾向を示す。
【0080】
(3) さらにまた、図15から明らかなように、通過帯域と減衰帯域との間の傾斜はL1〜L3のL値が変化しても変化せず、十分に急峻である。
【0081】
なお、実際の製品レベルでは、SAWフィルタに求められるフィルタ特性は、移動体通信機器端末などに当該SAWフィルタとともに内蔵される増幅器や変調器などとの関係にも配慮して決定されるが、本実施形態の有極型SAWフィルタによれば、このような配慮にも対応することが可能である。
【0082】
(A−3)第1の実施形態の効果
本実施形態によれば、二端子対回路(31)により通過帯域の高域側減衰帯域と低域側減衰帯域内に2つずつ減衰極を形成し、形成した減衰極の変化による減衰量は高域側減衰帯域だけでなく低域側減衰帯域においても、十分に大きい。
【0083】
これにより、通過帯域の高域側減衰帯域の高減衰量の要求規格を満足すると共に通過帯域の低域側減衰帯域における要求規格を満足することができる可能性が高まる。
【0084】
しかも本実施形態では、十分に小さなL値のインダクタンスを利用する小型化されたSAWフィルタを用いてこのようなフィルタ特性を実現することができるので、実現性の点でも優れている。
【0085】
また、上述したように、本実施形態のフィルタ特性は十分に急峻な特性である。
【0086】
これらの点を考慮すると、例えば、上述した米国のCDMA方式の例において、受信用フィルタとして本実施形態の有極型SAWフィルタを適用した場合、十分に良好なフィルタ特性を得ることができるので、受信品質が向上する。
【0087】
もちろん、本実施形態の有極型SAWフィルタは、送信用フィルタとして利用した場合にも優れた特質を備えている点は、上述した通りである。
【0088】
(B)第2の実施形態
以下では、本実施形態が第1の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
【0089】
(B−2)第2の実施形態の構成および動作
本実施形態のSAWフィルタ40の回路図を図16に示す。当該SAWフィル40は、前記SAWフィルタ10に対応するフィルタである。
【0090】
図16において、図1と同じ符号を付与した各部の機能は、図1と対応している。
【0091】
したがって、当該SAWフィルタ40は、前記SAWフィルタ10に対し、直列腕共振器SR2と、並列腕共振器PR3と、インダクタンスL4と、接続点P7、P8を付加した構成を備えている。
【0092】
ここで、直列腕共振器SR2は前記直列腕共振器SR1と同じSAW共振器であり、並列腕共振器PR3は前記並列腕共振器PR1またはPR2と同じSAW共振器である。また、インダクタンスL4は、前記L1〜L3と同様なインダクタンスである。
【0093】
すなわち当該有極型SAWフィルタ40は、4段π型梯子型SAWフィルタをなす二端子対回路と、3個のL(L1(120),L2(121),L3(122))から構成される二端子対回路を、直列接続することによって構成されている。
【0094】
また、図16の回路図に対応する実装例40Aを示した図17でも、図11と同じ符号を付与した各部の機能は、図11と同じである。
【0095】
すなわち、図17の実装例40Aは、図11の実装例10Aに対し、直列腕共振器SR2(101)と、並列腕共振器PR3(112)と、インダクタンスL4(42)と、パッド41,43を付加した構成を備えている。
【0096】
ここでも、ボンディングワイヤ42がインダクタンスL4として機能する。
【0097】
なお、レイアウト上、パッド12にボンディングワイヤ13で接続されている電極は、電極14Aではなく電極14Cである。
【0098】
本実施形態のSAWフィルタ40では、図9に示す如く、各SAW共振器の交差長、対数を選定する。
【0099】
図9の交差長、対数を用いて、Lをパラメータとした特性シミュレーション結果を図18に示す。また、Lの変化による低域側減衰帯域および高域側減衰帯域における減衰極および30(dB)減衰幅の変化を図10に示す。
【0100】
図10及び図18から明らかなように、通過帯域の低域側減衰帯域および高域側減衰帯域に、L1〜L4のL値により減衰極が形成され、例えば、L値を0.5(nH)にすると低域側減衰帯域の減衰極が851.5MHz(これは図18上の点LP81に対応)と841.0MHz(これは図18上の点LP82に対応)になる。
【0101】
この様に減衰極が2個になった事により、30dB減衰量幅がL=0.5(nH)の場合、低域側減衰帯域において20.0(MHz)、高域側減衰帯域において12.0(MHz)となり、従来の梯子型SAWフィルタに比較して、低域側減衰帯域において7(MHz)および高域側減衰帯域において2(MHz)広くなる。
【0102】
即ち、低域側減衰帯域および高域側減衰帯域における減衰特性が大きく改善され、規格を満足する事がわかる。
【0103】
また、図18のフィルタ特性では、通過帯域と減衰帯域の傾斜はL1〜L4のL値が変化しても変わらず、十分に急峻である。
【0104】
(B−2)第2の実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態とほぼ同等な効果を得ることができる。
【0105】
加えて、本実施形態では、通過帯域の低域側減衰帯域と高域側減衰帯域の減衰特性を、比較的自由に制御することが可能である。
【0106】
(C)他の実施形態
上記第1、第2の実施形態では、説明を簡潔にするために、多くの具体的な数値を示したが、これらは例示したものにすぎず、本発明の適用範囲がこれらの数値によって限定されるものではない。
【0107】
したがって、上述したL値も、さまざまな値に変更することが可能であるが、本発明は、小さなL値によって実現可能である。
【0108】
なお、上記第1、第2の実施形態にかかわらず、二端子対回路として、π型二端子対回路のかわりにT型二端子対回路を用いるようにしてもよいことは当然である。
【0109】
また、第2の実施形態の図17の実装例は、一例として、図19の実装例に置換することが可能である。
【0110】
図19の実装例においてはボンディングワイヤ17(L2)のかわりに、電極パターン50をインダクタンスとして利用している。
【0111】
図19の実装例では二端子対回路内に存在する複数のインダクタンスのうち一部が電極パターンで構成される例を示しているが、二端子対回路内に存在する複数のインダクタンスの全部を電極パターンで構成するようにしてもよいことは当然である。
【0112】
このように、本発明の二端子対回路のインダクタは多層基板パッケージによる実現に適している。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第1の実施形態に係る有極型SAWフィルタの回路図である。
【図2】従来の梯子型SAWフィルタの回路図である。
【図3】SAWフィルタの動作説明図である。
【図4】SAWフィルタの動作説明図である。
【図5】SAWフィルタの動作説明図である。
【図6】従来の有極型SAWフィルタの回路図である。
【図7】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図8】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図9】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図10】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図11】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの実装例を示す概略図である。
【図12】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図13】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図14】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図15】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図16】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの回路図である。
【図17】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの実装例を示す概略図である。
【図18】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図19】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの別な実装例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0114】
10、40…有極型SAWフィルタ、13,15,17〜19…ボンディングワイヤ、21…圧電性基板、30,31…二端子対回路、100、110、111…SAW共振器、L1〜L4…インダクタンス、LP21〜LP41、LP22〜LP42、HP21〜HP41、HP22〜HP42…減衰極。
【技術分野】
【0001】
本発明はSAWフィルタパッケージに関し、例えば、携帯電話等の小型移動体通信機器に用いられる送信用または受信用のSAWフィルタを有するSAWフィルタパッケージに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
この種の有極型SAWフィルタについて記載した文献としては、下記の特許文献1、2および非特許文献1がある。
【0003】
近年、小型で、軽量な携帯電話等の移動体通信機器端末の開発が急速に進められている。これに伴い、用いられる部品の小型・高性能化が求められており、弾性表面波(SAW)素子を基本としたRF部品(高周波部品)の開発が求められている。
【0004】
前記非特許文献1に記載された梯子形SAWフィルタの基本回路構成を、図2に示す。
【0005】
図2の梯子形SAWフィルタはRF部の小型化に、大きく貢献するデバイスのため、その実用化が強く要望されている。この梯子形SAWフィルタを用いたSAW分波器等のRFデバイスはすでに開発され、一部、実用に供されている。
【0006】
図2の800(MHz)帯梯子型SAWフィルタの特性(減衰特性(1)とReturn Loss特性(2))を図3に示す。図3のフィルタ特性は、直列腕共振器の交差長が100μm、対数が100本で、並列腕共振器の交差長が70μm、対数が70本の場合に対応している。
【0007】
また図4には、図3の直列腕共振器および並列腕共振器の特性(すなわち、直列腕共振器の虚数部特性がjx、並列腕共振器の虚数部特性がjb、直列腕共振器の実数部特性がrs、並列腕共振器の虚数部特性がrp)を示す。
【0008】
図3に示す通過域(863MHz付近〜911MHz付近の周波数帯域)の高域側減衰域の減衰極は直列腕共振器回路が無限大点(すなわち約42dB)の周波数(すなわち919MHz付近)、通過域の低域側減衰域の減衰極は並列腕共振器回路が零の周波数(すなわち855MHz付近)にて生ずる事が、図4と図3の対比からわかる。
【0009】
なお、図3中には、Q=500の場合の各SAW共振器の回路の実数部も合わせて示している。
【0010】
図3の特性からもわかるように、図2の梯子型SAWフィルタの減衰極は通過帯域の低域側減衰帯域に一個、高域側減衰帯域に一個が存在するため、通過帯域の低域側減衰帯域の特性と高域側減衰帯域の特性が略同じ特性を持っている事が知られている。
【0011】
ところが、移動体通信機器端末の需要の急増に伴ない、800(MHz)帯の周波数帯域を用いる移動体通信の方式および2(GHz)帯の周波数帯域を用いる移動体通信の方式共に送信帯域および受信帯域は広く、且つ、送信帯域と受信帯域の間隔を狭く設定されている。
【0012】
一例として、米国のCDMA(符号分割多元接続)方式のように、送信用の帯域が824〜849MHzで、受信用の帯域が869〜894MHzの場合、送信帯域の高域側減衰帯域に受信帯域が位置しているため、送信帯域の低域側減衰帯域の減衰量はそれほど大きくなくてもかまわないが、高域側減衰帯域の減衰量は十分に大きくなければ、移動体通信機器端末が送信した電波が自身の受信帯域に漏れ込んで受信品質を劣化させる可能性が高い。
【0013】
この観点で図3をみる(図3上で特性曲線を左側(低域側)にずらして考える)と、図3のフィルタ特性では減衰量が、高域側減衰帯域も低域側減衰帯域と同じでほぼ−10dBであるため、高域側の減衰量の大きさが必ずしも十分ではない。
【0014】
これに対し、例えば前記特許文献1(や特許文献2)では、図6に示す構造のSAWフィルタを用いて、図5のようなフィルタ特性を得ることができる。図6のSAWフィルタは、図2の梯子形SAWフィルタCP1と一個のL(インダクタLX)の二端子対回路CP2を持ち、これら2つの二端子対回路CP1、CP2を直列接続することで構成された有極型SAWフィルタLAである。
【0015】
図5において、マーク▽1は周波数818MHz、減衰量−3.0609dBの点を示し、マーク△2は周波数843MHz、減衰量−2.9886dBの点を示し、マーク△3は周波数863MHz、減衰量−43.794dBの点を示し、マーク△4は周波数888MHz、減衰量−38.099dBの点を示している。
【0016】
図5から明らかなように、図5のフィルタ特性を持つSAWフィルタを米国のCDMA方式の送信帯域に適用すれば、高域側減衰帯域における減衰量が十分に大きいため、受信帯域への漏れ込みがほとんど無く、送信、受信ともに、良好な通信品質を得ることができる。
【特許文献1】特開平10−93382号公報
【特許文献2】特開平10−163808号公報
【非特許文献1】SAW共振器を用いた低損失帯域フィルタ:佐藤、伊形、宮下、松田、西原:電子情報通信学会論文誌A,Vol.J76−A,No.2,pp245−252,1993.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら図5のフィルタ特性でも、低域側減衰帯域の減衰量が十分に大きいとはいえないため、上述した米国のCDMA方式の例において、受信用フィルタとして特許文献1のSAWフィルタを適用した場合、必ずしもフィルタ特性が十分でなく、受信品質が劣化する可能性がある。
【0018】
すなわち、上述したCDMA方式の例で、送信用フィルタとして前記特許文献1のSAWフィルタのような良好な特性を持たないフィルタを用いた場合には、自移動体通信機器端末の送信側からの漏れ込みの影響を受信用フィルタによって十分に低減することができず、自移動体通信機器端末以外の無線通信装置から到来する干渉波の影響がある場合などにも、受信用フィルタによってこれを十分に低減することができない。
【0019】
なお、方式によっては、上述した米国のCDMA方式とは反対に、送信帯域のほうが受信帯域よりも周波数が高くなるように設定することもあり得るので、その場合には、前記送信用フィルタと受信用フィルタを置換して考える必要がある。
【0020】
送信用フィルタとするか受信用フィルタとするかに関わらず、特許文献1、特許文献2の有極型SAWフィルタの動作原理に着目すれば、本発明が解決しようとする課題は次のように表現することができる。
【0021】
特許文献1、2などに記載された従来の有極型SAWフィルタにおいては、一個のLの二端子対回路により有限周波数内に減衰極を形成するが、この形成される減衰極の変化による減衰量は通過帯域の低域側減衰帯域においては、小さくなり、通過帯域の高域側減衰帯域においては、大きくなる。したがって、通過帯域の高域側減衰帯域の高減衰量の要求規格は満足できるとしても通過帯域の低域側減衰帯域における要求規格を満足することができない可能性が高い。
【0022】
もしも、図6中のインダクタンスLXのL値をきわめて大きく設定すれば、当該高域側減衰帯域の減衰量を十分に大きくすることが可能であると考えられるが、そのような大きなL値は、実現困難である。
【0023】
また、減衰帯域と通過帯域の間隔(例えば、同一の移動通信端末にとっての送信用周波数帯域と受信用周波数帯域の間隔)が上述したように例えば20(MHz)程度でかなり狭い場合には、急峻なフィルタ特性が必要である。
【0024】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、通過帯域の低域側減衰帯域における要求規格を満足することができるSAWフィルタパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
かかる課題を解決するために、本発明のSAWフィルタパッケージは、第1の電極、第2の電極、第3の電極、及び第4の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に接続された第1のSAW共振器と、前記第1の電極と前記第3の電極とに接続された第2のSAW共振器と、前記第2の電極と前記第4の電極とに接続された第3のSAW共振器とが形成された圧電性基板と、複数のパッケージ電極を有すると共に、前記圧電性基板を搭載するパッケージと、複数のボンディングワイヤからなるボンディングワイヤ群と、を有し、前記ボンディングワイヤ群を介して、前記第3の電極と前記第4の電極とが接続され、かつ、前記第3の電極及び前記第4の電極と前記パッケージ電極のうち接地電圧が供給される電極とが接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上に説明したように、本発明によれば、有極型SAWフィルタの通過帯域の高域側減衰帯域と低域側減衰帯域内に複数個ずつ減衰極を形成するので、小型化された構成でありながら、形成した減衰極の変化による減衰量は高域側減衰帯域だけでなく低域側減衰帯域においても、十分に大きくすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(A)実施形態
以下、本発明にかかるSAWフィルタパッケージの実施形態について説明する。
【0028】
一般にSAWフィルタでは、多数のSAW共振器を利用すれば、通過帯域の低域側減衰帯域においても高域側減衰帯域においても、十分に大きな減衰量を持ち、なおかつ急峻な、理想的なフィルタ特性を獲得することが可能であるが、できるだけ少数のSAW共振器を用いた可及的に小型化されたSAWフィルタによって、このような理想的なフィルタ特性に近い良好なフィルタ特性を獲得することが重要である。
【0029】
SAWフィルタは主に小型化の観点から、800(MHz)帯の周波数帯域を使用する移動体通信用携帯端末機器および2(GHz)帯の周波数帯域を使用する移動体通信用携帯端末機器などのRFフィルタとして、多用されつつある。
【0030】
(A−1)第1の実施形態の構成
本実施形態のSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ10の回路図を図1に示す。当該SAWフィルタ10は、例えば、上述した米国のCDMA方式などにおける携帯電話の受信用フィルタとして機能するものである。もちろん、必要に応じて、送信用フィルタとして用いることも可能である。
【0031】
図1において、当該SAWフィルタ10は、入力端子IN、GND1と、出力端子OUT、GND2と、3つのSAW共振器SR1、PR1、PR2と、3つのインダクタンスL1〜L3と、6つの接続点P1〜P6とを備えている。
【0032】
このうちSAW共振器SR1は、入力端子IN、出力端子OUT間に配置され、接続点P3、P4を有する直列腕に設けられた直列腕SAW共振器である。
【0033】
また、前記SAW共振器PR1(110)は、前記接続点P3と接続点P1を有する並列腕に設けられた並列腕SAW共振器であり、同様に、前記SAW共振器PR2(111)は、前記接続点P4と接続点P2を有する並列腕に設けられた並列腕SAW共振器である。
【0034】
そして、当該接続点P1とP2のあいだにはインダクタンスL2(131)が接続されている。
【0035】
また、入力端子GND1と出力端子GND2とのあいだには接続点P5とP6が設けられ、前記接続点P1と当該接続点P5のあいだにはインダクタンスL1(130)が接続され、前記接続点P2と接続点P6のあいだにはインダクタンスL3(132)が接続されている。
【0036】
すなわち、有極型SAWフィルタ10は、構成要素IN、P3、P4、SR1、PR1、PR2を有する二端子対回路30に対し、構成要素P1、P2、P5、P6、L1〜L3、GND1、GND2を有する二端子対回路31を直列接続することによって構成されている。
【0037】
なお、L1〜L3は必要に応じ、各インダクタンスのL値を示す値としても用いる。
【0038】
図1の回路図に対応する実装例を示したものが、図11である。図11は、通常のIC(半導体集積回路)と同様な微細加工技術によって実現されるSAWフィルタパッケージ10Aを示している。
【0039】
図11において、当該SAWフィルタパッケージ10Aは、パッケージ11上に形成されたパッド12,16と、圧電性基板21とを有する。
【0040】
当該圧電性基板21上に設けられ、「π」字型をなす例えばタングステンの電極14A、14Bには、それぞれSAW共振器100と、110と、111とが接続されている。
【0041】
このうちSAW共振器100は、2つのグレーティング反射器100A、100Cと、そのあいだに配置されたインターディジタル電極(インターディジタル変換器:IDT)100Bとを備えている。
【0042】
インターディジタル電極100Bを構成する櫛歯状電極100BAは、前記電極14Aに電気的に接続されており、当該インターディジタル電極100Bを構成するもう1つの櫛歯状電極100BBは、前記電極14Bに電気的に接続されている。
【0043】
SAW共振器100以外の共振器の構造もこれと同様で、SAW共振器110は、2つのグレーティング反射器110A、110Cと、そのあいだに配置されたインターディジタル電極110Bとを備え、SAW共振器111は、2つのグレーティング反射器111A、111Cと、そのあいだに配置されたインターディジタル電極111Bとを備えている。
【0044】
また、インターディジタル電極110Bを構成する櫛歯状電極110BAは、前記電極14Aに電気的に接続されており、当該インターディジタル電極110Bを構成するもう1つの櫛歯状電極110BBは、パッドP22(前記P1に対応)に電気的に接続されている。
【0045】
同様に、インターディジタル電極111Bを構成する櫛歯状電極111BAは、パッド23(前記P2に対応)に電気的に接続されており、当該インターディジタル電極111Bを構成するもう1つの櫛歯状電極111BBは、前記電極14Bに電気的に接続されている。
【0046】
ただし本実施形態において各SAW共振器SR1、PR1、PR2の交差長と対数は、図7に示す通りである。
【0047】
すなわち、直列腕共振器SR1の交差長は55μm、対数は100本で、並列腕共振器PR1の交差長は66μm、対数は66本で、並列腕共振器PR2の交差長は66μm、対数は66本である。
【0048】
図11上の前記パッド12と電極14Aはインダクタンス分の十分に少ないボンディングワイヤ13によって接続され、前記パッド16と電極14Bはインダクタンス分の十分に少ないボンディングワイヤ15によって接続されているが、インダクタンスとして利用するボンディングワイヤ17(L1に対応),18(L2に対応),19(L3に対応)は、それぞれ所望のL値を持っている。
【0049】
本実施形態では、ボンディングワイヤ17〜19のそれぞれが持つL値は同一値(例えば0.1nH)であるものとする。
【0050】
回路図のレベルで図6に示した従来のSAWフィルタと比べると、本実施形態のSAWフィルタ10は、前記二端子対回路31の構造が相違する。
【0051】
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について説明する。
【0052】
(A−2)第1の実施形態の動作
本実施形態の有極型SAWフィルタ10の二等分回路図を、図12に示す。
【0053】
また、図13は当該有極型SAWフィルタ10の動作を説明するための格子型等価回路図である。
【0054】
図1に示す梯子形SAWフィルタ10はSAW共振器3個(SR1(100),PR1(110),PR2(111))からなる2段π形構成で、上述したように、二端子対回路30に対し、3個のL(L1(130),L2(131),L3(132))から構成された二端子対回路31を直列接続した構成となっている。
【0055】
ここでは、図1の有極型SAWフィルタ10の動作を評価し有極型SAWフィルタ10の減衰極周波数とL値の関係を求めるため、図12の二等分回路を用いる。
【0056】
図12の二等分回路の二等分部の端子(OUT(1),OUT(2),E)の開放時の回路の入力インピーダンスをZFとし、二等分部の端子(OUT(1),OUT(2),E)を接続した短絡時の回路の入力インピーダンスをZSとすると、ZFおよびZSは式(1)および式(2)で与えられる。
【0057】
ZF=Z(PR1(110))+jωL1(130) …(1)
ZS=1/((1/Z(SR1(100))+1/(1/Z(PR1(110))+jω(1/(1/L1(130)+1/L21(131))))) …(2)
ここで、Z(PR1(110))は、図12の並列腕共振器110のインピーダンス、L21(131)のL値は前記L2(131)の半分、すなわちL21(131)=L2(131)/2、また、ωは、fを周波数として、ω=2.0*π*fであり、Z(SR1(100))は図12の直列腕共振器100のインピーダンスの1/2、である。
【0058】
通常、図12の回路の特性は図13の格子形回路の特性で評価される。即ち、この図13の格子形回路の動作伝送係数(図12の回路の特性SF)は、式(1)、式(2)の値(ZF、ZS)を次の式(3)に代入することで求められる。
【0059】
SF=(1+ZF)(1+ZS)/(ZF−ZS) …(3)
したがって、減衰特性α(ω)は式(4)で与えられる。
【0060】
α(ω)=20*LOG(ABS(SF)) …(4)
ここで、ABS(SF)は( )内の絶対値を表し、*は乗算を表わす。
【0061】
即ち、Lにより減衰帯域に減衰極周波数が形成されるか、またはLにより減衰量の増加が発生するのは、次の条件(5A)または(5B)のいずれかが満たされる場合である。
【0062】
ZF=ZS …(5A)
ZS=∞ …(5B)
本実施形態の特徴は、式(1)および式(2)のZF,ZSにL(L1、またはL21)が含まれる事である。即ち、ZFおよびZSにLが含まれる事により、条件(5A)を満足して減衰帯域に減衰極周波数を形成するか、または、条件(5B)を満足して、減衰帯域に減衰極周波数を形成して減衰量が増大する場合である。この点を、図14に示すようなSAW共振器の等価LC回路を用いて説明する。
【0063】
図14の等価LC回路を用いると式(1)、式(2)は式(6)、式(7)で与えられる。
【0064】
ZF=(S^2+ω1^2+S^2*L11*Cf*(S^2+ω2^2))/(S*Cf*(S^2+ω2^2)) …(6)
ZS=(S^2+ω3^2+S^2*L22*Cs*(S^2+ω4^2))/(S*Cs*(S^2+ω4^2)) …(7)
ここで、L11=L1(130)、1/L22=1/L1(130)+1/L21(131)、Cf=並列腕の容量、Cs=直列腕の容量、ω1=並列腕の零点(すなわちインピーダンスが0になる点)、ω2=並列腕の極点(すなわちインピーダンスが極大たは極小になる点)、ω3=直列腕の零点、ω4=直列腕の極点、である。
【0065】
即ち、式(6)、式(7)および減衰極形成の条件である前記(5A)を用いて減衰極を与える周波数は、次の式(8)から得られる。
【0066】
Cf*(S^2+ω2^2)*(S^2+ω1^2+S^2*L11*Cf*(S^2+ω2^2))=(S^2+ω3^2+S^2*L22*Cs*(S^2+ω4^2))*Cs*(S^2+ω4^2)) …(8)
なお、^2は、直前の数値の自乗を意味する。
【0067】
ここで、本実施形態の特徴は式(8)にL11およびL22が含まれる事である。特に、L22の存在により、式(8)から求まる減衰極周波数が通過帯域の低域側減衰帯域になる。
【0068】
次に、本実施形態を、図6に示した従来のSAWフィルタLAと比較する。当該SAWフィルタLAに関する上記ZF、ZSは、式(9)および式(10)で与えられる。
【0069】
ZF=Z(PR1(110))+jωL11(130) …(9)
ZS=1/((1/Z(SR1(100))+1/(1/Z(PR1(110)) …(10)
ここでZ(PR1(110))は、図6に示す並列腕共振器110のインピーダンス、また、L11(130)=2.0*L1(130)で、ωは周波数をfとしてω=2.0*π*fで与えられ、Z(SR1(100))は図6の直列腕共振器110の1/2に相当するインピーダンス値である。
【0070】
対応する各式の比較から明らかなように、本実施形態のSAWフィルタ10と図6のSAWフィルタLAとの大きな違いは、ZSにLが含まれているか否かにある。
【0071】
この場合、式(8)に相当する極周波数は次の式(11)から得られる。
【0072】
Cf*(S^2+ω2^2)*(S^2+ω1^2+S^2*L11*Cf*(S^2+ω2^2))=Cs*(S^2+ω3^2)*(S^2+ω4^2)) …(11)
減衰極形成((5A))の条件ZF=ZSを用いて、減衰極を与える周波数は、本実施形態の場合、前記式(8)から求まり、図6に示す従来のSAWフィルタLAの場合、当該式(11)から求まる。
【0073】
2つの式を比較すると、式(8)にはL11とL22が含まれていたのに対し、当該式(11)にはL11しか含まれていない。このため、従来のSAWフィルタLAでは通過帯域の高域側減衰域に減衰極が形成される。
【0074】
一方、図15は、本実施形態の有極型SAWフィルタ10において、二端子対回路31内の3つのインダクタンスL1〜L3のL値をパラメータとした特性シミュレーション結果である。ここで、図15上のL=0の特性曲線が、図2に示した従来の2段π型梯子型SAWフィルタのフィルタ特性に相当する。
【0075】
この図15から、図2に示した従来の2段π型梯子型SAWフィルタに比較して以下の(1)〜(3)のようなことがわかる。
【0076】
(1) L1(130),L2(131),L3(132)により、通過帯域(約860MHz〜約900MHz)の低域側減衰帯域および高域側減衰帯域に、(低域)減衰極LP21〜LP41、LP22〜LP42および(高域)減衰極HP21〜HP41、HP22〜HP42が形成される。
【0077】
このうち低域減衰極LP21およびLP22はL=0.1nHの場合に対応し、低域減衰極LP31およびLP32はL=0.2nHの場合に対応し、低域減衰極LP41およびLP42はL=0.4nHの場合に対応する。同様に、高域減衰極HP21およびHP22はL=0.1nHの場合に対応し、高域減衰極HP31およびHP32はL=0.2nHの場合に対応し、高域減衰極HP41およびHP42はL=0.4nHの場合に対応する。
【0078】
(2) また、図8に示すように、これらの減衰極により、減衰量が30(dB)以上となる周波数帯域の幅を示す30dB減衰幅が、本実施形態では例えばL=0.2(nH)の場合、低域側減衰帯域において54.5(MHz)および高域側減衰帯域において36.5(MHz)となる。これに対し、図2に示した従来の梯子型SAWフィルタは低域側減衰帯域において43.5(MHz)および高域側減衰帯域において35.0(MHz)となるので、当該30dB減衰幅は本実施形態のほうが、低域側減衰帯域において11.5(MHz)だけ広く、高域側減衰帯域において1.5(MHz)だけ広くなっており、従来の梯子型SAWフィルタに比較して、高減衰特性が得られる。
【0079】
なお、図15から明らかなように、本実施形態における当該30dB減衰幅は、L1〜L3のL値が増加するほど広がる傾向を示す。
【0080】
(3) さらにまた、図15から明らかなように、通過帯域と減衰帯域との間の傾斜はL1〜L3のL値が変化しても変化せず、十分に急峻である。
【0081】
なお、実際の製品レベルでは、SAWフィルタに求められるフィルタ特性は、移動体通信機器端末などに当該SAWフィルタとともに内蔵される増幅器や変調器などとの関係にも配慮して決定されるが、本実施形態の有極型SAWフィルタによれば、このような配慮にも対応することが可能である。
【0082】
(A−3)第1の実施形態の効果
本実施形態によれば、二端子対回路(31)により通過帯域の高域側減衰帯域と低域側減衰帯域内に2つずつ減衰極を形成し、形成した減衰極の変化による減衰量は高域側減衰帯域だけでなく低域側減衰帯域においても、十分に大きい。
【0083】
これにより、通過帯域の高域側減衰帯域の高減衰量の要求規格を満足すると共に通過帯域の低域側減衰帯域における要求規格を満足することができる可能性が高まる。
【0084】
しかも本実施形態では、十分に小さなL値のインダクタンスを利用する小型化されたSAWフィルタを用いてこのようなフィルタ特性を実現することができるので、実現性の点でも優れている。
【0085】
また、上述したように、本実施形態のフィルタ特性は十分に急峻な特性である。
【0086】
これらの点を考慮すると、例えば、上述した米国のCDMA方式の例において、受信用フィルタとして本実施形態の有極型SAWフィルタを適用した場合、十分に良好なフィルタ特性を得ることができるので、受信品質が向上する。
【0087】
もちろん、本実施形態の有極型SAWフィルタは、送信用フィルタとして利用した場合にも優れた特質を備えている点は、上述した通りである。
【0088】
(B)第2の実施形態
以下では、本実施形態が第1の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
【0089】
(B−2)第2の実施形態の構成および動作
本実施形態のSAWフィルタ40の回路図を図16に示す。当該SAWフィル40は、前記SAWフィルタ10に対応するフィルタである。
【0090】
図16において、図1と同じ符号を付与した各部の機能は、図1と対応している。
【0091】
したがって、当該SAWフィルタ40は、前記SAWフィルタ10に対し、直列腕共振器SR2と、並列腕共振器PR3と、インダクタンスL4と、接続点P7、P8を付加した構成を備えている。
【0092】
ここで、直列腕共振器SR2は前記直列腕共振器SR1と同じSAW共振器であり、並列腕共振器PR3は前記並列腕共振器PR1またはPR2と同じSAW共振器である。また、インダクタンスL4は、前記L1〜L3と同様なインダクタンスである。
【0093】
すなわち当該有極型SAWフィルタ40は、4段π型梯子型SAWフィルタをなす二端子対回路と、3個のL(L1(120),L2(121),L3(122))から構成される二端子対回路を、直列接続することによって構成されている。
【0094】
また、図16の回路図に対応する実装例40Aを示した図17でも、図11と同じ符号を付与した各部の機能は、図11と同じである。
【0095】
すなわち、図17の実装例40Aは、図11の実装例10Aに対し、直列腕共振器SR2(101)と、並列腕共振器PR3(112)と、インダクタンスL4(42)と、パッド41,43を付加した構成を備えている。
【0096】
ここでも、ボンディングワイヤ42がインダクタンスL4として機能する。
【0097】
なお、レイアウト上、パッド12にボンディングワイヤ13で接続されている電極は、電極14Aではなく電極14Cである。
【0098】
本実施形態のSAWフィルタ40では、図9に示す如く、各SAW共振器の交差長、対数を選定する。
【0099】
図9の交差長、対数を用いて、Lをパラメータとした特性シミュレーション結果を図18に示す。また、Lの変化による低域側減衰帯域および高域側減衰帯域における減衰極および30(dB)減衰幅の変化を図10に示す。
【0100】
図10及び図18から明らかなように、通過帯域の低域側減衰帯域および高域側減衰帯域に、L1〜L4のL値により減衰極が形成され、例えば、L値を0.5(nH)にすると低域側減衰帯域の減衰極が851.5MHz(これは図18上の点LP81に対応)と841.0MHz(これは図18上の点LP82に対応)になる。
【0101】
この様に減衰極が2個になった事により、30dB減衰量幅がL=0.5(nH)の場合、低域側減衰帯域において20.0(MHz)、高域側減衰帯域において12.0(MHz)となり、従来の梯子型SAWフィルタに比較して、低域側減衰帯域において7(MHz)および高域側減衰帯域において2(MHz)広くなる。
【0102】
即ち、低域側減衰帯域および高域側減衰帯域における減衰特性が大きく改善され、規格を満足する事がわかる。
【0103】
また、図18のフィルタ特性では、通過帯域と減衰帯域の傾斜はL1〜L4のL値が変化しても変わらず、十分に急峻である。
【0104】
(B−2)第2の実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態とほぼ同等な効果を得ることができる。
【0105】
加えて、本実施形態では、通過帯域の低域側減衰帯域と高域側減衰帯域の減衰特性を、比較的自由に制御することが可能である。
【0106】
(C)他の実施形態
上記第1、第2の実施形態では、説明を簡潔にするために、多くの具体的な数値を示したが、これらは例示したものにすぎず、本発明の適用範囲がこれらの数値によって限定されるものではない。
【0107】
したがって、上述したL値も、さまざまな値に変更することが可能であるが、本発明は、小さなL値によって実現可能である。
【0108】
なお、上記第1、第2の実施形態にかかわらず、二端子対回路として、π型二端子対回路のかわりにT型二端子対回路を用いるようにしてもよいことは当然である。
【0109】
また、第2の実施形態の図17の実装例は、一例として、図19の実装例に置換することが可能である。
【0110】
図19の実装例においてはボンディングワイヤ17(L2)のかわりに、電極パターン50をインダクタンスとして利用している。
【0111】
図19の実装例では二端子対回路内に存在する複数のインダクタンスのうち一部が電極パターンで構成される例を示しているが、二端子対回路内に存在する複数のインダクタンスの全部を電極パターンで構成するようにしてもよいことは当然である。
【0112】
このように、本発明の二端子対回路のインダクタは多層基板パッケージによる実現に適している。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第1の実施形態に係る有極型SAWフィルタの回路図である。
【図2】従来の梯子型SAWフィルタの回路図である。
【図3】SAWフィルタの動作説明図である。
【図4】SAWフィルタの動作説明図である。
【図5】SAWフィルタの動作説明図である。
【図6】従来の有極型SAWフィルタの回路図である。
【図7】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図8】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図9】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図10】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図11】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの実装例を示す概略図である。
【図12】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図13】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図14】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図15】第1の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図16】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの回路図である。
【図17】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの実装例を示す概略図である。
【図18】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの動作説明図である。
【図19】第2の実施形態にかかる有極型SAWフィルタの別な実装例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0114】
10、40…有極型SAWフィルタ、13,15,17〜19…ボンディングワイヤ、21…圧電性基板、30,31…二端子対回路、100、110、111…SAW共振器、L1〜L4…インダクタンス、LP21〜LP41、LP22〜LP42、HP21〜HP41、HP22〜HP42…減衰極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、第2の電極、第3の電極、及び第4の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に接続された第1のSAW共振器と、前記第1の電極と前記第3の電極とに接続された第2のSAW共振器と、前記第2の電極と前記第4の電極とに接続された第3のSAW共振器とが形成された圧電性基板と、
複数のパッケージ電極を有すると共に、前記圧電性基板を搭載するパッケージと、
複数のボンディングワイヤからなるボンディングワイヤ群と、を有し、
前記ボンディングワイヤ群を介して、前記第3の電極と前記第4の電極とが接続され、かつ、前記第3の電極及び前記第4の電極と前記パッケージ電極のうち接地電圧が供給される電極とが接続されたことを特徴とするSAWフィルタパッケージ。
【請求項1】
第1の電極、第2の電極、第3の電極、及び第4の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に接続された第1のSAW共振器と、前記第1の電極と前記第3の電極とに接続された第2のSAW共振器と、前記第2の電極と前記第4の電極とに接続された第3のSAW共振器とが形成された圧電性基板と、
複数のパッケージ電極を有すると共に、前記圧電性基板を搭載するパッケージと、
複数のボンディングワイヤからなるボンディングワイヤ群と、を有し、
前記ボンディングワイヤ群を介して、前記第3の電極と前記第4の電極とが接続され、かつ、前記第3の電極及び前記第4の電極と前記パッケージ電極のうち接地電圧が供給される電極とが接続されたことを特徴とするSAWフィルタパッケージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−238496(P2006−238496A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148473(P2006−148473)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【分割の表示】特願2005−311683(P2005−311683)の分割
【原出願日】平成13年1月11日(2001.1.11)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【分割の表示】特願2005−311683(P2005−311683)の分割
【原出願日】平成13年1月11日(2001.1.11)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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