SAWフィルター
【課題】良好なフィルター特性を実現しながらも従来より小型化することが可能なSAWフィルターを提供すること。
【解決手段】SAWフィルター1は、縦結合多重モードSAWフィルター20と、縦結合多重モードSAWフィルター20に直列に接続された少なくとも1つの反射反転型電極を用いたSAW共振子10と、を含む。SAW共振子10は、圧電基板6上に配置されたIDT15と、その両側に近接配置された反射器13、14と、を有し、反共振周波数が縦結合多重モードSAWフィルター20の通過帯域よりも高域側の周波数に設定されている。IDT15は、櫛状の電極15aと、これと対向して近接配置された櫛状の電極15bと、を含み、電極15aの1つの電極指151及び電極指151を挟む電極15bの2つの電極指152、153の3つの電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置されて構成されている。
【解決手段】SAWフィルター1は、縦結合多重モードSAWフィルター20と、縦結合多重モードSAWフィルター20に直列に接続された少なくとも1つの反射反転型電極を用いたSAW共振子10と、を含む。SAW共振子10は、圧電基板6上に配置されたIDT15と、その両側に近接配置された反射器13、14と、を有し、反共振周波数が縦結合多重モードSAWフィルター20の通過帯域よりも高域側の周波数に設定されている。IDT15は、櫛状の電極15aと、これと対向して近接配置された櫛状の電極15bと、を含み、電極15aの1つの電極指151及び電極指151を挟む電極15bの2つの電極指152、153の3つの電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置されて構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAWフィルター等に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)により励振される弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用した弾性表面波(SAW)フィルターは、高周波帯域の周波数フィルターとして携帯電話機やキーレスエントリーシステム等、様々な電子機器やシステムに用いられている。これまでに様々なSAWフィルターが考案されており、その中でも、弾性表面波の伝播方向に沿って3つのIDTを一列に近接配置し、IDT相互間の音響結合により発生する1次と3次の振動モードを利用して比較的広い通過帯域を実現することができる縦結合1次−3次2重モードSAWフィルター(縦結合1次−3次DMS(Double Mode SAW)フィルター)が広く利用されている。
【0003】
図13は縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性の一例を示しており、図13に示すように、縦結合1次−3次DMSフィルターは、比較的フラットな通過帯域を実現することができる。しかし、縦結合1次−3次DMSフィルターは、通過帯域の高域側近傍(図13における周波数fA付近の周波数領域)の減衰量が小さくなるという問題があり、1つ又は複数の1端子SAW共振子を縦結合1次−3次DMSフィルターの入力端子又は出力端子に直列に接続することにより、フィルター特性を改善したSAWフィルターが提案されている(特許文献1、2)。
【0004】
この1端子SAW共振子は、図14に示すように、反射器303、304の間に複数の電極指を有する櫛状の電極305a、305bが、電極305aの1本の電極指と電極305bの1本の電極指を1対として間挿し合うように対向して配置されたIDT305が近接配置されて構成されている。端子301と端子302の間に逆相の電圧が印加されると、隣り合う2つの電極指の中心間距離dを1波長λとする弾性表面波が励起され、反射器303と304の間に閉じ込められる。そのため、SAW共振子300は、図15に示す共振周波数fr(fr=v/λ:vは弾性表面波が圧電基板の表面を伝搬する速度)を有し、さらに、共振周波数frの高域側に反共振周波数faを有する。この反共振周波数faを図13に示した周波数fAと一致させれば、図16に示すように、fA付近の周波数領域の減衰量が大きくなりフィルター特性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−86870号公報
【特許文献2】特開平8−65096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般に、図14に示した構成のSAW共振子では、図15に示したように1つの反共振周波数しか発生させることができないので、通過帯域の高域側近傍(図13における周波数fA付近の周波数領域)の減衰量をさらに改善して良好なフィルター特性を実現するためには反共振周波数が異なる複数のSAW共振子を直列に接続する必要があり、SAWフィルターの小型化が難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、良好なフィルター特性を実現しながらも従来より小型化することが可能なSAWフィルターを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のSAWフィルターは、圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された複数のIDTと、当該複数のIDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記IDTの間の音響結合によって生じる複数の振動モードを利用する縦結合多重モードSAWフィルターと、前記圧電基板上に配置されたIDTと、当該IDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記縦結合多重モードSAWフィルターの入力端子及び出力端子の少なくとも一方側に直列に接続された少なくとも1つのSAW共振子と、を含み、前記SAW共振子の前記IDTは、少なくとも1つの略一定幅の電極指が形成された櫛状の第1の電極と、前記第1の電極と対向して近接配置され、複数の略一定幅の電極指が形成された櫛状の第2の電極と、を含み、前記第1の電極の1つの電極指及び略同じ間隙をおいて当該1つの電極指を挟む前記第2の電極の2つの前記電極指の3つの前記電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型IDTで構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明におけるSAW共振子は、IDTがいわゆる反射反転型のIDTとして構成されたSAW共振子であるので、本来の反共振周波数に加えて、共振周波数の高次の縦モードスプリアスによる反共振周波数も発生させることができる。従って、これら複数の反共振周波数を、縦結合多重モードSAWフィルターの通過帯域の高域側近傍の減衰量が小さい周波数領域に発生させれば、当該周波数領域の減衰量を改善し、良好なフィルター特性を実現することができる。
【0010】
このように、従来のSAW共振子では1つの反共振周波数しか発生させることができなかったのに対して、反射反転型電極で構成されたSAW共振子は複数の反共振周波数を発生させることができるので、本発明によれば、所望のフィルター特性を得るために必要なSAW共振子の数を減らすことができる。従って、本発明の弾性表面波装置は比較的容易に小型化することができる。
【0011】
(2)このSAWフィルターにおいて、前記第1の電極に形成された前記電極指の幅は、前記第2の電極に形成された前記電極指の幅よりも小さいように構成されていてもよい。
【0012】
(3)このSAWフィルターにおいて、前記縦結合多重モードSAWフィルターは、2つの前記振動モードを利用する縦結合2重モードSAWフィルターであってもよい。
【0013】
(4)このSAWフィルターにおいて、前記SAW共振子の前記反射器は、1つの電極指と当該1つの電極指と幅の異なる2つの電極指の3つの電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型反射器で構成されていてもよい。
【0014】
(5)このSAWフィルターにおいて、前記SAW共振子は、前記反射反転型IDTの電極周期λidtが前記反射器の電極周期λrefよりも大きいように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のSAWフィルターの構成について説明するための図。
【図2】縦結合1次−3次DMSフィルターの概略平面図。
【図3】本実施形態における反射反転電極を用いたSAW共振子の概略平面図。
【図4】反射反転型IDTの一部拡大図。
【図5】反射反転型反射器の一部拡大図。
【図6】反射反転型電極で構成されたSAW共振子のインピーダンス特性の一例を示す図。
【図7】本実施形態のSAWフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【図8】反射反転型IDT及び反射反転型反射器の反射特性を概略的に示す図。
【図9】反射反転電極を用いた他のSAW共振子の概略平面図。
【図10】正規型反射器の一部拡大図。
【図11】縦結合1次−2次DMSフィルターの概略平面図。
【図12】縦結合1次−2次−3次3重モードフィルターの概略平面図。
【図13】縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【図14】従来のSAW共振子の概略平面図。
【図15】従来のSAW共振子のインピーダンス特性の一例を示す図。
【図16】従来のSAWフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態のSAWフィルターの構成について説明するための図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のSAWフィルター1は、SAW共振子10及び縦結合多重モードSAWフィルター20を含んで構成されている。後述するように、SAW共振子10は反射反転型電極を用いて構成されている。
【0019】
SAW共振子10と縦結合多重モードSAWフィルター20は直列に接続されている。具体的には、SAW共振子10の端子11は、SAWフィルター1の入力端子2と接続されている。また、SAW共振子10の端子12は、多重モードSAWフィルター20の端子21と接続されている。さらに、縦結合多重モードSAWフィルター20の端子22は、SAWフィルター1の出力端子3と接続されている。
【0020】
SAWフィルター1は、SAW共振子10と縦結合多重モードSAWフィルター20の構造により決定される中心周波数及び通過帯域幅を有するバンドパスフィルターとして機能し、入力端子2に入力された信号がフィルター処理されて出力端子3から出力される。
【0021】
なお、本実施形態では、端子2を入力端子、端子3を出力端子としているが、端子3を入力端子、端子2を出力端子としても、SAWフィルター1は同様のバンドパスフィルターとして機能する。
【0022】
図2は、縦結合多重モードSAWフィルター20の一例としての縦結合1次−3次DMSフィルターの概略平面図である。
【0023】
縦結合1次−3次DMSフィルター20Aは、圧電基板6の主表面上に形成された、反射器23、IDT25、IDT26、IDT27、反射器24を含んで構成されている。
【0024】
圧電基板6は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ほう酸リチウム(Li2B4O7, LBO)等の単結晶材料や、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電性薄膜、圧電性セラミックス材料などを用いて製造することができる。
【0025】
IDT25、IDT26、IDT27は、弾性表面波の伝搬方向に沿って、反射器23と反射器24の間にこの順に近接して配置されている。
【0026】
IDT25は、一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極25a、25bが、電極25aの1本の電極指と電極25bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT25の電極指ピッチは一定値d1になっている。電極25aは接地され、電極25bは端子22と接続されている。
【0027】
IDT26は、IDT25と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極26a、26bが、電極26aの1本の電極指と電極26bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT26の電極指ピッチはIDT25と同じ一定値d1になっている。電極26aは端子21と接続され、電極26bは接地されている。
【0028】
IDT27は、IDT25と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極27a、27bが、電極27aの1本の電極指と電極27bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT27の電極指ピッチはIDT25と同じ一定値d1になっている。電極27aは接地され、電極27bは端子22と接続されている。
【0029】
反射器23と反射器24は、IDT25、IDT26、IDT27の両側に近接して配置され、一定のグレーティングピッチ(d2)で電極が形成されている。
【0030】
このように構成された縦結合1次−3次DMSフィルター20Aにおいて、f=v/2d1(vは弾性表面波が圧電基板6の表面を伝搬する速度)付近の周波数を有する信号が端子21に入力されると、IDT26により1波長(λ1)が2d1に等しい弾性表面波が励起される。そして、IDT26により励起された弾性表面波がIDT25及びIDT27に到達すると、端子22にf=v/2d1付近の周波数を有する信号が発生する。すなわち、中心周波数をf=v/2d1とするバンドパスフィルターを実現することができる。
【0031】
縦結合1次−3次DMSフィルター20Aでは所望の中心周波数になるように電極指ピッチd1が決められる。そして、反射器23と反射器24がIDT25、IDT26及びIDT27を挟むように近接して配置されているため、反射器23と反射器24の間に1次と3次の2つの振動モードを閉じ込めることが可能になり、これら2つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される。
【0032】
なお、反射効率を高め低損失のフィルターを実現すべく、反射器23および反射器24のグレーティングピッチd2をIDT25、IDT26及びIDT27の電極指ピッチd1よりも少し大きく設定し、IDT25とIDT26の間隔及びIDT26とIDT27の間隔をd1の整数倍とし、IDT25と反射器23の間隔及びIDT27と反射器24の間隔は、IDT26によって励起される弾性表面波の半波長分(λ1/2=d1)にすることが望ましい。
【0033】
図3は、本実施形態における反射反転電極を用いたSAW共振子10の概略平面図である。
【0034】
図3に示すように、SAW共振子10は、圧電基板6の主表面上に形成された、反射反転型反射器13、反射反転型IDT15、反射反転型反射器14を含んで構成されている。
【0035】
反射反転型IDT15は、複数の電極指が形成された櫛状の電極15aと、複数の電極指が形成された櫛状の電極15bが、電極15aの1本の電極指と電極15bの2本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。そして、電極15aは端子11と接続され、電極15bは端子12と接続されている。
【0036】
反射反転型反射器13、14は、反射反転型IDT15の両側に近接して配置されている。
【0037】
図4は反射反転型IDT15の一部を拡大した図である。
【0038】
図4に示すように、反射反転型IDT15は、電極15aの1本の電極指151と電極指151を挟むように形成された電極15bの2本の電極指152、153からなる電極指列が繰り返し規則的に形成されて構成されている。電極指151、152、153の幅はそれぞれw1、w2、w3であり、電極指151と152の間隙及び電極指151と153の間隙はそれぞれg1、g2であり、電極指152と154の間隙及び電極指153と155の間隙はともにg3である。ここで、w2=w3>w1、g1=g2となるように構成してもよい。さらに、g1=g2=g3となるように構成してもよい。
【0039】
このように構成された反射反転型IDT15は、端子11と端子12の間に逆相の電圧が印加されると、1波長λidtがw1+w2+w3+g1+g2+g3と等しい弾性表面波が励起される。
【0040】
図5は反射反転型反射器13、14の一部を拡大した図である。
【0041】
図5に示すように、反射反転型反射器13、14は、1本の電極131と電極131と幅が異なる2本の電極指132、133からなる電極列が繰り返し規則的に形成されて構成されている。電極131、132、133の幅はそれぞれw4、w5、w6であり、電極131と132の間隙及び電極131と133の間隙はそれぞれg4、g5であり、電極132と134の間隙及び電極133と135の間隙はともにg6である。ここで、w5=w6>w4、g4=g5となるように構成してもよい。さらに、g4=g5=g6となるように構成してもよい。
【0042】
このように構成された反射反転型反射器13、14は、反射特性における中心周波数に対応する1波長λrefがw4+w5+w6+g4+g5+g6と等しい。
【0043】
図6は、図3に示したSAW共振子10のインピーダンス特性の一例を示す図である。図6において、縦軸はインピーダンス、横軸は周波数を表している。
【0044】
SAW共振子10では、共振周波数frの高次の縦モードスプリアスが共振周波数frの高域側に発生するため、図6に示すように、本来の反共振周波数faに加えて、fa付近にfb、fc等の複数の反共振周波数が発生する。ここで、fr=v/λidt(vは弾性表面波が圧電基板6の表面を伝搬する速度)であり、vは一定であるので、w1、w2、w3、g1、g2、g3を調整することにより共振周波数frや反共振周波数fa、fb、fc等の反共振周波数を調整することができる。
【0045】
一方、縦結合1次−3次DMSフィルター20Aは、図13に示したようなフィルター特性を有し、fA付近の周波数領域の減衰量が小さい。そこで、本実施形態のSAWフィルター1では、反共振周波数faを周波数fAと一致させたSAW共振子10を縦結合1次−3次DMSフィルター20Aと直列に接続することにより、fA付近の周波数領域の減衰量を大きくすることができる。
【0046】
図7は、このように構成れたSAWフィルター1のフィルター特性の一例を示す図である。図7において、縦軸は損失、横軸は周波数を表している。図7に示すフィルター特性は、圧電基板6が36°回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウム(LiTaO3)、電極膜厚(波長換算膜厚)が6%λ、中心周波数が500MHz、IDT25及びIDT27の電極指が11.5対、IDT26の電極指が11.5対、反射器23及び反射器24の電極指が300本の条件でのフィルター特性である。図16と比較すると明らかなように、SAW共振子10の反共振周波数fa付近の減衰量が大きくなっているだけでなく、反共振周波数fb、fc付近の減衰量も大きくなっている。
【0047】
このように、本実施形態のSAWフィルター1は、複数の反共振周波数を有するSAW共振子10を縦結合1次−3次DMSフィルター20Aと直列に接続しているので、1つの反共振周波数しか存在しないSAW共振子を縦結合1次−3次DMSフィルターと直列に接続していた従来のSAWフィルターと比較して、通過帯域の高域側近傍の周波数領域の減衰量をより改善することができる。
【0048】
なお、縦結合1次−3次DMSフィルター20Aに対して反共振周波数が異なる複数のSAW共振子10を直列に接続すれば、通過帯域の高域側近傍の周波数領域の減衰量をさらに改善したSAWフィルターを実現することができる。その場合でも、従来と同じ若しくはより少ない数のSAW共振子10を用いて従来より良好なフィルター特性を得ることができる。
【0049】
図8は反射反転型IDT15及び反射反転型反射器13、14の反射特性を概略的に示す図である。図8において、縦軸は反射係数Γの絶対値、横軸は周波数を表している。
【0050】
反射反転型IDT15の反射特性は一点鎖線で示されており、図6に示したSAW共振子10の共振周波数frは反射反転型IDT15のストップバンドの上限付近の周波数になる。そのため、λidt=λrefとなるように反射反転型反射器13、14を構成すると、反射反転型反射器13、14の反射特性が反射反転型IDT15の反射特性と同じになり、反射効率が劣化する可能性がある。そこで、反射反転型反射器13、14の反射特性を実線で示すような反射特性にして反射効率を上げるために、λidt>λrefとなるように反射反転型反射器13、14を構成するのが望ましい。
【0051】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0052】
例えば、図9に示すように、図1に示したSAWフィルター1のSAW共振子10において、反射反転型反射器13、14を正規型反射器16、17に置き換えて構成してもよい。
【0053】
図10は正規型反射器16、17の一部を拡大した図であり、図10に示すように、正規型反射器16、17は、一定幅w7の複数の電極が一定の間隙g7で形成されている。正規型反射器16、17は、反射特性における中心周波数に対応する1波長λrefの中に2本の電極指161、162が含まれる。すなわち、1λref=2(w7+g7)となる。
【0054】
なお、反射反転型反射器13、14の場合と同じく、反射効率を上げるために、λidt>λrefとなるように正規型反射器16、17を構成するのが望ましい。このように、反射反転型IDT15と正規型反射器16、17により構成されたSAW共振子10も図6と同様のインピーダンス特性を有するので、通過帯域の高域側近傍の周波数領域の減衰量を改善したSAWフィルターを実現することができる。
【0055】
また、図1に示したSAWフィルター1の縦結合多重モードSAWフィルター20は、図2に示した縦結合1次−3次DMSフィルター20Aに限定されず、縦結合1次−2次DMSフィルターのような他の構成の2重モードSAWフィルターであってもよい。
【0056】
縦結合1次−2次DMSフィルターは、図11に示すように、圧電基板6の主表面上に、反射器203、櫛状の電極205aと205bにより構成されるIDT205、櫛状の電極206aと206bにより構成されるIDT206、反射器204をこの順に配置し、電極205a及び206bをそれぞれ端子21及び端子22と接続し、電極205bと206aを接地することにより構成することができる。このように構成された縦結合1次−2次DMSフィルター20Bは、IDT205とIDT206の間の音響結合により発生した1次と2次の2つの振動モードを反射器203と反射器204の間に閉じ込めることが可能になり、これら2つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される。
【0057】
また、図1に示したSAWフィルター1の縦結合多重モードSAWフィルター20は、縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルターのような3重モードSAWフィルターや4重モード以上の多重モードSAWフィルターであってもよい。
【0058】
縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルターは、図12に示すように、圧電基板6の主表面上に、反射器213、櫛状の電極215aと215bにより構成されるIDT215、櫛状の電極216aと216bにより構成されるIDT216、櫛状の電極217aと217bにより構成されるIDT217、反射器214をこの順に配置し、電極215a及び217bをそれぞれ端子21及び端子22と接続し、電極215bと217aを接地することにより構成することができる。このように構成された縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルター20Cは、IDT215、IDT216及びIDT217の相互間の音響結合により発生した1次、2次、3次の3つの振動モードを反射器213と反射器214の間に閉じ込めることが可能になり、これら3つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される。
【0059】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 SAWフィルター、2 入力端子、3 出力端子、6 圧電基板、10 SAW共振子、11〜12 端子、13〜14 反射反転型反射器、15 反射反転型IDT、16〜17 正規型反射器、20 縦結合多重モードSAWフィルター、20A 縦結合1次−3次DMSフィルター、20B 縦結合1次−2次DMSフィルター、20C 縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルター、21〜22 端子、23〜24 反射器、25〜27 IDT、131〜135 電極指、151〜155 電極指、161〜162 電極指、213〜214 反射器、215〜217 IDT、203〜204 反射器、205〜206 IDT、300 SAW共振子、301 入力端子、302 出力端子、303〜304 反射器、305 IDT
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAWフィルター等に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)により励振される弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用した弾性表面波(SAW)フィルターは、高周波帯域の周波数フィルターとして携帯電話機やキーレスエントリーシステム等、様々な電子機器やシステムに用いられている。これまでに様々なSAWフィルターが考案されており、その中でも、弾性表面波の伝播方向に沿って3つのIDTを一列に近接配置し、IDT相互間の音響結合により発生する1次と3次の振動モードを利用して比較的広い通過帯域を実現することができる縦結合1次−3次2重モードSAWフィルター(縦結合1次−3次DMS(Double Mode SAW)フィルター)が広く利用されている。
【0003】
図13は縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性の一例を示しており、図13に示すように、縦結合1次−3次DMSフィルターは、比較的フラットな通過帯域を実現することができる。しかし、縦結合1次−3次DMSフィルターは、通過帯域の高域側近傍(図13における周波数fA付近の周波数領域)の減衰量が小さくなるという問題があり、1つ又は複数の1端子SAW共振子を縦結合1次−3次DMSフィルターの入力端子又は出力端子に直列に接続することにより、フィルター特性を改善したSAWフィルターが提案されている(特許文献1、2)。
【0004】
この1端子SAW共振子は、図14に示すように、反射器303、304の間に複数の電極指を有する櫛状の電極305a、305bが、電極305aの1本の電極指と電極305bの1本の電極指を1対として間挿し合うように対向して配置されたIDT305が近接配置されて構成されている。端子301と端子302の間に逆相の電圧が印加されると、隣り合う2つの電極指の中心間距離dを1波長λとする弾性表面波が励起され、反射器303と304の間に閉じ込められる。そのため、SAW共振子300は、図15に示す共振周波数fr(fr=v/λ:vは弾性表面波が圧電基板の表面を伝搬する速度)を有し、さらに、共振周波数frの高域側に反共振周波数faを有する。この反共振周波数faを図13に示した周波数fAと一致させれば、図16に示すように、fA付近の周波数領域の減衰量が大きくなりフィルター特性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−86870号公報
【特許文献2】特開平8−65096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般に、図14に示した構成のSAW共振子では、図15に示したように1つの反共振周波数しか発生させることができないので、通過帯域の高域側近傍(図13における周波数fA付近の周波数領域)の減衰量をさらに改善して良好なフィルター特性を実現するためには反共振周波数が異なる複数のSAW共振子を直列に接続する必要があり、SAWフィルターの小型化が難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、良好なフィルター特性を実現しながらも従来より小型化することが可能なSAWフィルターを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のSAWフィルターは、圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された複数のIDTと、当該複数のIDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記IDTの間の音響結合によって生じる複数の振動モードを利用する縦結合多重モードSAWフィルターと、前記圧電基板上に配置されたIDTと、当該IDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記縦結合多重モードSAWフィルターの入力端子及び出力端子の少なくとも一方側に直列に接続された少なくとも1つのSAW共振子と、を含み、前記SAW共振子の前記IDTは、少なくとも1つの略一定幅の電極指が形成された櫛状の第1の電極と、前記第1の電極と対向して近接配置され、複数の略一定幅の電極指が形成された櫛状の第2の電極と、を含み、前記第1の電極の1つの電極指及び略同じ間隙をおいて当該1つの電極指を挟む前記第2の電極の2つの前記電極指の3つの前記電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型IDTで構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明におけるSAW共振子は、IDTがいわゆる反射反転型のIDTとして構成されたSAW共振子であるので、本来の反共振周波数に加えて、共振周波数の高次の縦モードスプリアスによる反共振周波数も発生させることができる。従って、これら複数の反共振周波数を、縦結合多重モードSAWフィルターの通過帯域の高域側近傍の減衰量が小さい周波数領域に発生させれば、当該周波数領域の減衰量を改善し、良好なフィルター特性を実現することができる。
【0010】
このように、従来のSAW共振子では1つの反共振周波数しか発生させることができなかったのに対して、反射反転型電極で構成されたSAW共振子は複数の反共振周波数を発生させることができるので、本発明によれば、所望のフィルター特性を得るために必要なSAW共振子の数を減らすことができる。従って、本発明の弾性表面波装置は比較的容易に小型化することができる。
【0011】
(2)このSAWフィルターにおいて、前記第1の電極に形成された前記電極指の幅は、前記第2の電極に形成された前記電極指の幅よりも小さいように構成されていてもよい。
【0012】
(3)このSAWフィルターにおいて、前記縦結合多重モードSAWフィルターは、2つの前記振動モードを利用する縦結合2重モードSAWフィルターであってもよい。
【0013】
(4)このSAWフィルターにおいて、前記SAW共振子の前記反射器は、1つの電極指と当該1つの電極指と幅の異なる2つの電極指の3つの電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型反射器で構成されていてもよい。
【0014】
(5)このSAWフィルターにおいて、前記SAW共振子は、前記反射反転型IDTの電極周期λidtが前記反射器の電極周期λrefよりも大きいように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のSAWフィルターの構成について説明するための図。
【図2】縦結合1次−3次DMSフィルターの概略平面図。
【図3】本実施形態における反射反転電極を用いたSAW共振子の概略平面図。
【図4】反射反転型IDTの一部拡大図。
【図5】反射反転型反射器の一部拡大図。
【図6】反射反転型電極で構成されたSAW共振子のインピーダンス特性の一例を示す図。
【図7】本実施形態のSAWフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【図8】反射反転型IDT及び反射反転型反射器の反射特性を概略的に示す図。
【図9】反射反転電極を用いた他のSAW共振子の概略平面図。
【図10】正規型反射器の一部拡大図。
【図11】縦結合1次−2次DMSフィルターの概略平面図。
【図12】縦結合1次−2次−3次3重モードフィルターの概略平面図。
【図13】縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【図14】従来のSAW共振子の概略平面図。
【図15】従来のSAW共振子のインピーダンス特性の一例を示す図。
【図16】従来のSAWフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態のSAWフィルターの構成について説明するための図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のSAWフィルター1は、SAW共振子10及び縦結合多重モードSAWフィルター20を含んで構成されている。後述するように、SAW共振子10は反射反転型電極を用いて構成されている。
【0019】
SAW共振子10と縦結合多重モードSAWフィルター20は直列に接続されている。具体的には、SAW共振子10の端子11は、SAWフィルター1の入力端子2と接続されている。また、SAW共振子10の端子12は、多重モードSAWフィルター20の端子21と接続されている。さらに、縦結合多重モードSAWフィルター20の端子22は、SAWフィルター1の出力端子3と接続されている。
【0020】
SAWフィルター1は、SAW共振子10と縦結合多重モードSAWフィルター20の構造により決定される中心周波数及び通過帯域幅を有するバンドパスフィルターとして機能し、入力端子2に入力された信号がフィルター処理されて出力端子3から出力される。
【0021】
なお、本実施形態では、端子2を入力端子、端子3を出力端子としているが、端子3を入力端子、端子2を出力端子としても、SAWフィルター1は同様のバンドパスフィルターとして機能する。
【0022】
図2は、縦結合多重モードSAWフィルター20の一例としての縦結合1次−3次DMSフィルターの概略平面図である。
【0023】
縦結合1次−3次DMSフィルター20Aは、圧電基板6の主表面上に形成された、反射器23、IDT25、IDT26、IDT27、反射器24を含んで構成されている。
【0024】
圧電基板6は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ほう酸リチウム(Li2B4O7, LBO)等の単結晶材料や、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電性薄膜、圧電性セラミックス材料などを用いて製造することができる。
【0025】
IDT25、IDT26、IDT27は、弾性表面波の伝搬方向に沿って、反射器23と反射器24の間にこの順に近接して配置されている。
【0026】
IDT25は、一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極25a、25bが、電極25aの1本の電極指と電極25bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT25の電極指ピッチは一定値d1になっている。電極25aは接地され、電極25bは端子22と接続されている。
【0027】
IDT26は、IDT25と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極26a、26bが、電極26aの1本の電極指と電極26bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT26の電極指ピッチはIDT25と同じ一定値d1になっている。電極26aは端子21と接続され、電極26bは接地されている。
【0028】
IDT27は、IDT25と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極27a、27bが、電極27aの1本の電極指と電極27bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT27の電極指ピッチはIDT25と同じ一定値d1になっている。電極27aは接地され、電極27bは端子22と接続されている。
【0029】
反射器23と反射器24は、IDT25、IDT26、IDT27の両側に近接して配置され、一定のグレーティングピッチ(d2)で電極が形成されている。
【0030】
このように構成された縦結合1次−3次DMSフィルター20Aにおいて、f=v/2d1(vは弾性表面波が圧電基板6の表面を伝搬する速度)付近の周波数を有する信号が端子21に入力されると、IDT26により1波長(λ1)が2d1に等しい弾性表面波が励起される。そして、IDT26により励起された弾性表面波がIDT25及びIDT27に到達すると、端子22にf=v/2d1付近の周波数を有する信号が発生する。すなわち、中心周波数をf=v/2d1とするバンドパスフィルターを実現することができる。
【0031】
縦結合1次−3次DMSフィルター20Aでは所望の中心周波数になるように電極指ピッチd1が決められる。そして、反射器23と反射器24がIDT25、IDT26及びIDT27を挟むように近接して配置されているため、反射器23と反射器24の間に1次と3次の2つの振動モードを閉じ込めることが可能になり、これら2つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される。
【0032】
なお、反射効率を高め低損失のフィルターを実現すべく、反射器23および反射器24のグレーティングピッチd2をIDT25、IDT26及びIDT27の電極指ピッチd1よりも少し大きく設定し、IDT25とIDT26の間隔及びIDT26とIDT27の間隔をd1の整数倍とし、IDT25と反射器23の間隔及びIDT27と反射器24の間隔は、IDT26によって励起される弾性表面波の半波長分(λ1/2=d1)にすることが望ましい。
【0033】
図3は、本実施形態における反射反転電極を用いたSAW共振子10の概略平面図である。
【0034】
図3に示すように、SAW共振子10は、圧電基板6の主表面上に形成された、反射反転型反射器13、反射反転型IDT15、反射反転型反射器14を含んで構成されている。
【0035】
反射反転型IDT15は、複数の電極指が形成された櫛状の電極15aと、複数の電極指が形成された櫛状の電極15bが、電極15aの1本の電極指と電極15bの2本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。そして、電極15aは端子11と接続され、電極15bは端子12と接続されている。
【0036】
反射反転型反射器13、14は、反射反転型IDT15の両側に近接して配置されている。
【0037】
図4は反射反転型IDT15の一部を拡大した図である。
【0038】
図4に示すように、反射反転型IDT15は、電極15aの1本の電極指151と電極指151を挟むように形成された電極15bの2本の電極指152、153からなる電極指列が繰り返し規則的に形成されて構成されている。電極指151、152、153の幅はそれぞれw1、w2、w3であり、電極指151と152の間隙及び電極指151と153の間隙はそれぞれg1、g2であり、電極指152と154の間隙及び電極指153と155の間隙はともにg3である。ここで、w2=w3>w1、g1=g2となるように構成してもよい。さらに、g1=g2=g3となるように構成してもよい。
【0039】
このように構成された反射反転型IDT15は、端子11と端子12の間に逆相の電圧が印加されると、1波長λidtがw1+w2+w3+g1+g2+g3と等しい弾性表面波が励起される。
【0040】
図5は反射反転型反射器13、14の一部を拡大した図である。
【0041】
図5に示すように、反射反転型反射器13、14は、1本の電極131と電極131と幅が異なる2本の電極指132、133からなる電極列が繰り返し規則的に形成されて構成されている。電極131、132、133の幅はそれぞれw4、w5、w6であり、電極131と132の間隙及び電極131と133の間隙はそれぞれg4、g5であり、電極132と134の間隙及び電極133と135の間隙はともにg6である。ここで、w5=w6>w4、g4=g5となるように構成してもよい。さらに、g4=g5=g6となるように構成してもよい。
【0042】
このように構成された反射反転型反射器13、14は、反射特性における中心周波数に対応する1波長λrefがw4+w5+w6+g4+g5+g6と等しい。
【0043】
図6は、図3に示したSAW共振子10のインピーダンス特性の一例を示す図である。図6において、縦軸はインピーダンス、横軸は周波数を表している。
【0044】
SAW共振子10では、共振周波数frの高次の縦モードスプリアスが共振周波数frの高域側に発生するため、図6に示すように、本来の反共振周波数faに加えて、fa付近にfb、fc等の複数の反共振周波数が発生する。ここで、fr=v/λidt(vは弾性表面波が圧電基板6の表面を伝搬する速度)であり、vは一定であるので、w1、w2、w3、g1、g2、g3を調整することにより共振周波数frや反共振周波数fa、fb、fc等の反共振周波数を調整することができる。
【0045】
一方、縦結合1次−3次DMSフィルター20Aは、図13に示したようなフィルター特性を有し、fA付近の周波数領域の減衰量が小さい。そこで、本実施形態のSAWフィルター1では、反共振周波数faを周波数fAと一致させたSAW共振子10を縦結合1次−3次DMSフィルター20Aと直列に接続することにより、fA付近の周波数領域の減衰量を大きくすることができる。
【0046】
図7は、このように構成れたSAWフィルター1のフィルター特性の一例を示す図である。図7において、縦軸は損失、横軸は周波数を表している。図7に示すフィルター特性は、圧電基板6が36°回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウム(LiTaO3)、電極膜厚(波長換算膜厚)が6%λ、中心周波数が500MHz、IDT25及びIDT27の電極指が11.5対、IDT26の電極指が11.5対、反射器23及び反射器24の電極指が300本の条件でのフィルター特性である。図16と比較すると明らかなように、SAW共振子10の反共振周波数fa付近の減衰量が大きくなっているだけでなく、反共振周波数fb、fc付近の減衰量も大きくなっている。
【0047】
このように、本実施形態のSAWフィルター1は、複数の反共振周波数を有するSAW共振子10を縦結合1次−3次DMSフィルター20Aと直列に接続しているので、1つの反共振周波数しか存在しないSAW共振子を縦結合1次−3次DMSフィルターと直列に接続していた従来のSAWフィルターと比較して、通過帯域の高域側近傍の周波数領域の減衰量をより改善することができる。
【0048】
なお、縦結合1次−3次DMSフィルター20Aに対して反共振周波数が異なる複数のSAW共振子10を直列に接続すれば、通過帯域の高域側近傍の周波数領域の減衰量をさらに改善したSAWフィルターを実現することができる。その場合でも、従来と同じ若しくはより少ない数のSAW共振子10を用いて従来より良好なフィルター特性を得ることができる。
【0049】
図8は反射反転型IDT15及び反射反転型反射器13、14の反射特性を概略的に示す図である。図8において、縦軸は反射係数Γの絶対値、横軸は周波数を表している。
【0050】
反射反転型IDT15の反射特性は一点鎖線で示されており、図6に示したSAW共振子10の共振周波数frは反射反転型IDT15のストップバンドの上限付近の周波数になる。そのため、λidt=λrefとなるように反射反転型反射器13、14を構成すると、反射反転型反射器13、14の反射特性が反射反転型IDT15の反射特性と同じになり、反射効率が劣化する可能性がある。そこで、反射反転型反射器13、14の反射特性を実線で示すような反射特性にして反射効率を上げるために、λidt>λrefとなるように反射反転型反射器13、14を構成するのが望ましい。
【0051】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0052】
例えば、図9に示すように、図1に示したSAWフィルター1のSAW共振子10において、反射反転型反射器13、14を正規型反射器16、17に置き換えて構成してもよい。
【0053】
図10は正規型反射器16、17の一部を拡大した図であり、図10に示すように、正規型反射器16、17は、一定幅w7の複数の電極が一定の間隙g7で形成されている。正規型反射器16、17は、反射特性における中心周波数に対応する1波長λrefの中に2本の電極指161、162が含まれる。すなわち、1λref=2(w7+g7)となる。
【0054】
なお、反射反転型反射器13、14の場合と同じく、反射効率を上げるために、λidt>λrefとなるように正規型反射器16、17を構成するのが望ましい。このように、反射反転型IDT15と正規型反射器16、17により構成されたSAW共振子10も図6と同様のインピーダンス特性を有するので、通過帯域の高域側近傍の周波数領域の減衰量を改善したSAWフィルターを実現することができる。
【0055】
また、図1に示したSAWフィルター1の縦結合多重モードSAWフィルター20は、図2に示した縦結合1次−3次DMSフィルター20Aに限定されず、縦結合1次−2次DMSフィルターのような他の構成の2重モードSAWフィルターであってもよい。
【0056】
縦結合1次−2次DMSフィルターは、図11に示すように、圧電基板6の主表面上に、反射器203、櫛状の電極205aと205bにより構成されるIDT205、櫛状の電極206aと206bにより構成されるIDT206、反射器204をこの順に配置し、電極205a及び206bをそれぞれ端子21及び端子22と接続し、電極205bと206aを接地することにより構成することができる。このように構成された縦結合1次−2次DMSフィルター20Bは、IDT205とIDT206の間の音響結合により発生した1次と2次の2つの振動モードを反射器203と反射器204の間に閉じ込めることが可能になり、これら2つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される。
【0057】
また、図1に示したSAWフィルター1の縦結合多重モードSAWフィルター20は、縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルターのような3重モードSAWフィルターや4重モード以上の多重モードSAWフィルターであってもよい。
【0058】
縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルターは、図12に示すように、圧電基板6の主表面上に、反射器213、櫛状の電極215aと215bにより構成されるIDT215、櫛状の電極216aと216bにより構成されるIDT216、櫛状の電極217aと217bにより構成されるIDT217、反射器214をこの順に配置し、電極215a及び217bをそれぞれ端子21及び端子22と接続し、電極215bと217aを接地することにより構成することができる。このように構成された縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルター20Cは、IDT215、IDT216及びIDT217の相互間の音響結合により発生した1次、2次、3次の3つの振動モードを反射器213と反射器214の間に閉じ込めることが可能になり、これら3つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される。
【0059】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 SAWフィルター、2 入力端子、3 出力端子、6 圧電基板、10 SAW共振子、11〜12 端子、13〜14 反射反転型反射器、15 反射反転型IDT、16〜17 正規型反射器、20 縦結合多重モードSAWフィルター、20A 縦結合1次−3次DMSフィルター、20B 縦結合1次−2次DMSフィルター、20C 縦結合1次−2次−3次3重モードSAWフィルター、21〜22 端子、23〜24 反射器、25〜27 IDT、131〜135 電極指、151〜155 電極指、161〜162 電極指、213〜214 反射器、215〜217 IDT、203〜204 反射器、205〜206 IDT、300 SAW共振子、301 入力端子、302 出力端子、303〜304 反射器、305 IDT
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された複数のIDTと、当該複数のIDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記IDTの間の音響結合によって生じる複数の振動モードを利用する縦結合多重モードSAWフィルターと、
前記圧電基板上に配置されたIDTと、当該IDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記縦結合多重モードSAWフィルターの入力端子及び出力端子の少なくとも一方側に直列に接続された少なくとも1つのSAW共振子と、を含み、
前記SAW共振子の前記IDTは、
少なくとも1つの略一定幅の電極指が形成された櫛状の第1の電極と、前記第1の電極と対向して近接配置され、複数の略一定幅の電極指が形成された櫛状の第2の電極と、を含み、前記第1の電極の1つの電極指及び略同じ間隙をおいて当該1つの電極指を挟む前記第2の電極の2つの前記電極指の3つの前記電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型IDTで構成されていることを特徴とするSAWフィルター。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の電極に形成された前記電極指の幅は、前記第2の電極に形成された前記電極指の幅よりも小さいことを特徴とするSAWフィルター。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記縦結合多重モードSAWフィルターは、
2つの前記振動モードを利用する縦結合2重モードSAWフィルターであることを特徴とするSAWフィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記SAW共振子の前記反射器は、
1つの電極指と当該1つの電極指と幅の異なる2つの電極指の3つの電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型反射器で構成されていることを特徴とするSAWフィルター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記SAW共振子は、
前記反射反転型IDTの電極周期λidtが前記反射器の電極周期λrefよりも大きいことを特徴とするSAWフィルター。
【請求項1】
圧電基板上に弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された複数のIDTと、当該複数のIDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記IDTの間の音響結合によって生じる複数の振動モードを利用する縦結合多重モードSAWフィルターと、
前記圧電基板上に配置されたIDTと、当該IDTの両側に近接配置された2つの反射器と、を有し、前記縦結合多重モードSAWフィルターの入力端子及び出力端子の少なくとも一方側に直列に接続された少なくとも1つのSAW共振子と、を含み、
前記SAW共振子の前記IDTは、
少なくとも1つの略一定幅の電極指が形成された櫛状の第1の電極と、前記第1の電極と対向して近接配置され、複数の略一定幅の電極指が形成された櫛状の第2の電極と、を含み、前記第1の電極の1つの電極指及び略同じ間隙をおいて当該1つの電極指を挟む前記第2の電極の2つの前記電極指の3つの前記電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型IDTで構成されていることを特徴とするSAWフィルター。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の電極に形成された前記電極指の幅は、前記第2の電極に形成された前記電極指の幅よりも小さいことを特徴とするSAWフィルター。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記縦結合多重モードSAWフィルターは、
2つの前記振動モードを利用する縦結合2重モードSAWフィルターであることを特徴とするSAWフィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記SAW共振子の前記反射器は、
1つの電極指と当該1つの電極指と幅の異なる2つの電極指の3つの電極指からなる電極指列が1つ又は一定の間隙をおいて複数個規則的に配置された反射反転型反射器で構成されていることを特徴とするSAWフィルター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記SAW共振子は、
前記反射反転型IDTの電極周期λidtが前記反射器の電極周期λrefよりも大きいことを特徴とするSAWフィルター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−245738(P2010−245738A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90948(P2009−90948)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]