説明

SIM機能付き可搬型ハードディスク装置および携帯通信端末

【課題】セキュリティを維持しつつ比較的大容量の記憶領域を有し、かつ、機種変更等の際に加入者関連情報の容易な移植を行う。
【解決手段】SIM機能付き可搬型ハードディスク装置は、携帯電話システムの加入者認証機能を含むSIM機能を実現するための情報を格納した不揮発性半導体メモリ(EEPROM303)と、少なくとも加入者関連情報を記憶するためのハードディスク装置312と、制御手段(CPU305)とを同一筐体内に収納し、携帯通信端末に対して着脱可能な接続手段とを備える。制御手段は携帯通信端末からの指示に応じて不揮発性半導体メモリへのアクセスおよびハードディスク装置へのアクセスを切り替えて行う。また、制御手段は、加入者認証機能によりPIN検証が正常終了した時のみ、利用者による不揮発性半導体メモリおよび前記ハードディスク装置へのアクセスを許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIM機能付き可搬型ハードディスク装置およびこれを着脱可能に装着する携帯通信端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GSM(Global System for Mobile communication)やFOMAなどの携帯電話システムでは、CPU内蔵の1チップICカードであるスマートカードを用いた加入者認証用のSIM(Subscriber Identity Module)を利用している。このような携帯通信端末では、SIMに加入者関連の情報が記憶されているので、機種を変更してもSIMを差し替えることにより、直ちに、通信事業者と契約した内容に従ったサービスの提供を受けることができる。
【0003】
一方、SIMに記憶できる容量はそれほど大きくなく、例えば携帯メールやそれに添付されている画像データ、ダウンロードした楽曲データ、動画、ナビゲーションデータなど膨大な加入者関連情報は記憶できない為、これらの情報は本体の電気的消去可能な再書き込み可能なROMであるEEPROMなどに記憶されている。
【0004】
近年になって、更に加入者関連情報の増大が予想されているなか、内蔵型のHDD(Hard Disc Drive)を搭載する端末も出てきている。しかし、この内蔵型HDDはSIMのような可搬性のものではないために、携帯通信端末の機種変更を行う時に内蔵型HDDに記憶されている加入者関連情報を何らかの形で読み出して、新たな端末の該当部へ移植することが必要であり、利用者に利便性があるとは言えない状態である。しかも、そのためにはデータが一旦、移動先の端末とは別な装置、例えばリーダ/ライタを通過する為に、それらの装置上に加入者関連情報が残る可能性も否定できない。これにより個人情報の漏洩などのリスクが高まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SIM本来の基本思想として、加入者関連情報の可搬性がある。しかし、近年の携帯通信端末では電話帳以外にも、それに関連付けられたネットワーク情報、様々なダウンロードされたデータ、或いは辞書などの利用時の利用者の文字入力学習データ等のデータが膨大である。これらのデータも一種の加入者関連情報でありながら、SIM内の限られた記憶領域内には格納できず、端末本体にある記憶媒体に記憶されているのが実情である。このことが前述した機種変更の際の加入者関連情報の簡単な移植を妨げている。
【0006】
また、機種変更の際に、単純に内蔵されているHDDを可搬型にするだけでもある程度移植は可能である。しかし、そのままでは通常知られている手段で内容を読み出すことも可能であり、セキュリティの面では安全とはいえず、個人情報の保護がなされない。また、リムーバブルHDDはSIMとは別体になっており、SIMとは別々にリムーバブルHDDを差し替える必要があり、この点でも利用者にとっては余計な手間がかかることになる。したがって、利用者にとっては十分な利便性が提供されるとはいえない。
【0007】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、セキュリティを維持しつつ比較的大容量の記憶領域を有し、かつ、機種変更等の際に加入者関連情報の容易な移植を行うことができるSIM機能付き可搬型ハードディスク装置およびこれを用いる携帯通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるSIM機能付き可搬型ハードディスク装置は、携帯電話システムの加入者認証機能を含むSIM機能を実現するための情報を格納した不揮発性半導体メモリと、少なくとも加入者関連情報を記憶するためのハードディスク装置と、制御手段とを同一筐体内に収納し、携帯通信端末に対して着脱可能な接続手段とを備える。前記制御手段は前記携帯通信端末からの指示に応じて前記不揮発性半導体メモリへのアクセスおよび前記ハードディスク装置へのアクセスを切り替えて行う。
【0009】
前記不揮発性半導体メモリおよび前記ハードディスク装置は同一筐体内に収納されているので1回の操作で両者の着脱を同時に行えるとともに、ハードディスク装置は不揮発性半導体メモリより十分に大きな記憶容量を提供できるので比較的大容量の加入者関連情報を記憶することができる。
【0010】
前記制御手段は、前記加入者認証機能によりPIN検証が正常終了した時のみ、利用者による前記不揮発性半導体メモリおよび前記ハードディスク装置へのアクセスを許可することができる。すなわち、SIM機能を利用することにより、PINなどの検証が正常に行われていなければ、ハードディスク装置内の情報にアクセスができないようにすることができる。
【0011】
前記制御手段は、前記不揮発性半導体メモリに記憶されている、加入者に与えられるユニークな情報に基づいて、前記ハードディスク装置の少なくとも一部の領域について暗号化を行うことができる。これは、PINなどの検証が正常に行われた後のデータの保護に有用である。
【0012】
本発明はまた、上記のようなSIM機能付き可搬型ハードディスク装置を着脱可能に装着する携帯通信端末を提供する。
【0013】
この携帯通信端末では、前記SIM機能付き可搬型ハードディスク装置を着脱可能に装着するとともに電池を着脱可能に装着する筐体を有し、この筐体は、前記電池を外した状態でしか前記SIM機能付き可搬型ハードディスク装置の前記筐体への着脱を行えない構造を有することが好ましい。これによりSIM HDDにはいわゆる活線挿抜による電気的な損傷が生じないので、記憶されている内容がそのようなことから保護される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のSIM機能付き可搬型ハードディスク装置によれば、加入者関連情報等を記憶する記憶領域としてハードディスク装置を利用できるので、半導体メモリと比較して格段に大きな記憶容量を安価に得ることができるとともに、SIM機能を利用することによりセキュリティの維持を図ることができる。また、同一筐体内に不揮発性半導体メモリおよびハードディスク装置を収納するので、1回の操作で両者の着脱を同時に行える。これにより、可搬型ハードディスク装置を装着する携帯通信端末の機種変更等の際にも、単一の筐体を端末から端末へ移動させるだけで極めて容易に加入者関連情報の移植を行うことが可能となる。すなわち、例えば、旧端末内に記憶されていた携帯メール、Web情報、ダウンロードしたメロディ、或いはマンマシンインタフェースの設定、文字入力学習情報など旧端末購入後に使用者が設定、或いは取得した情報を全て簡単に新端末へ移動可能であり、移動する為の特別な装置や知識なしで新しい機種ですぐに使用できる。
【0015】
SIM機能を利用することにより、PINなどの検証が正常に行われていなければ、ハードディスク装置内の情報にアクセスができないようにすることができる。これにより、PIN検証前の、必要な情報の保護が図れる。
【0016】
PIN検証後も、不揮発性半導体メモリに記憶されている、加入者に与えられるユニークな情報に基づいて、ハードディスク装置の少なくとも一部の領域について暗号化を行うことにより、記憶情報の保護が図れる。
【0017】
また、例えばハードディスク装置自体が故障してもSIM機能が生きていれば、加入者認証も含めて端末を通常使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本発明では、GSM(Global System for Mobile communication)或いはFOMAで使用されているような加入者認証モジュール(SIM)の機能を、今後普及するであろう携帯通信端末用の小型のリムーバブルハードディスクドライブの制御部に組み込んだモジュール(以下、SIM HDDと呼ぶ)を提案する。本実施の形態では、SIMの機能である加入者関連情報ストレージ機能、ネットワーク認証(Network Authentication)、PIN検証などをSIM HDDにおこなわせる。SIMの加入者認証機能は典型的にはネットワーク認証機能を含むが、PIN検証機能も含みうる。このような機能をSIM HDDに付与することにより、例えば加入者による携帯通信端末の機種変更時などに生じる情報移動を簡便、安全にすることを企図する。
【0020】
以下にそれぞれ図を使用して本実施の形態の詳細を説明する。
【0021】
図1に、本実施の形態に係るSIM HDDを適用する携帯電話器を用いるデジタルセルラーシステムを示している。
【0022】
例えば携帯電話器A(103)から携帯電話器B(104)へ発呼する場合、最初に携帯電話基地局A(101)に位置登録(Location Update)を行う。この時、携帯電話器A(103)には携帯電話基地局A(101)からその基地局の情報であるLAI A(LAI:Location Area Information)が送られてくる。また、ネットワーク認証として携帯電話基地局A(101)に対して加入者の認証を行うために、SIM A中に記憶されているIMSI A(IMSI:International Mobile Subscriber Information)を送る。利用者は相手の電話番号を携帯電話器A(103)に入力してダイアル発呼を行う。この発呼は携帯電話器A(103)が有する内部のソフトウェアで自動的に行うことも可能である。携帯電話器A(103)は無線インタフェースA(105)を通じて携帯電話基地局A(101)に接続を行う。携帯電話基地局A(101)はデジタルインタフェース106(通常はIDSN:Integrated Services Digital Networkなど)で携帯電話基地局B(102)に接続されており、携帯電話器B(104)は無線インタフェースB(107)にてこの携帯電話基地局B(102)に位置登録されているので、最終的に携帯電話器A(103)は携帯電話器B(104)と回線が接続され通話可能となる。
【0023】
同様に最初に携帯電話器B(104)は携帯電話基地局B(102)に位置登録を行う。この時、携帯電話器B(104)には携帯電話基地局B(102)からその基地局の情報であるLAI Bが送られてくる。また、携帯電話基地局B(102)に対して加入者の認証を行うために、SIM B中に記憶されているIMSI Bを送る。
【0024】
一方、有線電話器と携帯電話器A(103)又は携帯電話器B(104)との接続は、PSTN(Public Switched Telephone Network)局108に有線電話器が接続されることによりなされる。PSTN局108は、携帯電話基地局A(101)及び携帯電話基地局B(102)を接続するデジタルインタフェース(106)に接続されている。
【0025】
また、インターネットのサービスプロバイダ109はデジタルインタフェース110を介して携帯電話基地局A(101)に接続されており、携帯電話器A(103)から携帯電話基地局A(101)を経由してサービスを契約内容にしたがって享受できる。このサービスは例えばSMS−PP(Short Message Service Point-To-Point)、同報通信のSMS−CB(Short Message Service Cell Broadcast)或いはGPRS(General Packet Radio Service)等を用いてあるデータを利用者に送り、それに対して応答して利用者のメッセージや選択結果等を送り返すという形で行われる。
【0026】
インターネット上のWebページも、携帯通信端末A(103)或いは携帯通信端末B(104)で表示可能な様に専用のゲートウェイを経由して閲覧が可能である。
【0027】
なお、SIMを装着している各携帯通信端末は、電源ON時には暗証番号(Personal Identity Number:以下PIN)をMMI(マンマシンインタフェース)経由でSIMに入力することにより正当な使用者であることが検証される。例えばPIN検証を3回連続して失敗すると、SIM自体がそれ以降のアクセスを阻止(Block)して携帯通信端末が使用できなくなる。このPINブロックを解除する為にアンブロックPIN(UnblockPIN)が予め設定されており、この正しいアンブロックPINと新たなPIN(前と同じPINでも可)を入力することでPINブロックの解除がなされる。但し、このアンブロックPIN検証も10回連続して失敗すると、そのSIMは使用できなくなる。(その詳細ステップは後述するPIN検証のカウント動作と同様であり、図示省略してある。)このようにSIMは、携帯通信端末本体だけではなくネットワークに対して様々なセキュリティ或いはサービスを提供する為のキーデバイスになっている。
【0028】
次に図2に、携帯電話器の構成例を表したブロック図を示す。まず受信側から説明する。アンテナ201で受信された信号はセレクタ202を通り、受信RF部203(RF: Radio Frequency)へ導かれる。ここで周波数変換に必要なレベルまで増幅され、さらに周波数変換の為にミキサー204へ入力される。変換すべき中間周波数になるよう局発部211から必要な信号がミキサー204へ入力される。このようにして中間周波数に変換された信号は受信IF部205に入力され、ここでA/D変換され、一定のビットレートのサンプル信号となる。このデジタルデータは次の受信復調部206へ入力され、誤り訂正処理等施され音声データ及び通信データに分けられる。
【0029】
音声データは音声復号部207に入力され伸長などの処理をしてビットレート変換されD/Aを経由しアナログ信号へ変換される。アナログ音声信号はスピーカ209を駆動する為に必要な電力を得るために、スピーカアンプ208を経由してスピーカ209より空気中へ放音される。一方、通信データは、受信復調部206から通信データ復号部210へ入力される。
【0030】
送信側の音声は、マイク218により使用者の声が集音され、マイクアンプ217にて必要なレベルまで増幅される。増幅された音声信号は音声符号化部216において、A/D変換によりデジタル信号に変換され、圧縮等の処理を経てビットレートの変換がなされる。これらの音声データは送信変調部215に入力される。一方、送信される通信データは圧縮され、或いは、誤り訂正用の冗長データなどが付加され送信変調部215へ送られる。この送信変調部215にて音声データ及び通信データが変調符号化された後、D/A変換され送信IF部214へ送られる。ここで中間周波数へ変換され必要なレベルまで増幅される。送信IF部214の出力信号は送信周波数へ変換するためにミキサー213へ入力される。このミキサー213の他方の入力へは所望の送信周波数を得るための信号が局発部211から入力される。ミキサー213の出力は送信周波数に変換された変調信号であり、これが送信RF部212に入力される。この送信RF部212にて電力増幅された信号はセレクタ202を経由してアンテナ201から発信される。
【0031】
携帯電話器を使用者が制御するためのマンマシンインタフェースとしてのディスプレイ220aおよびキーボード220bは、I/O220を経由して中央処理装置(CPU)224が処理する。データI/F220cは外部メモリなどのI/Fに使用する。RTC226(RTC: Real Time Clock)は現在時刻情報をCPU224に出力する。不揮発性メモリ(ROM)221は、CPU224が処理すべきプログラムおよび必要なデータを記憶している。随時アクセスメモリ(RAM)222は、CPU224があるデータの処理を行う場合、一時的に処理の中間で発生するデータを記憶するためのものである。電気的書き込み消去可能なメモリ(EEPROM)223は、使用者がキーボード220bを介して入力し、携帯電話器の個人的な設定を行った時などそれらの設定条件などを記憶しておく不揮発性のメモリである。しかし、EEPROMの記憶容量は限られているのでこの記憶をHDDに行わせることも可能である。これにより、使用者は携帯電話器の電源On/Offに伴って毎回条件設定をする必要が無くなる。
【0032】
この従来内蔵されているHDDをSIM HDD401とする場合には、着脱可能な可搬型とするためSIM HDD I/F部227を設け、これを経由して使用される。また、本来のSIMの機能であるPIN検証、サービス関連情報、通信制御情報などもこのSIM HDD I/F部227を経由して行われることになる。
【0033】
図3に、本実施の形態におけるSIM HDD401の内部構造例を示す。SIM HDD401は、I/Oインタフェース308を通じて携帯通信端末本体からの制御を受け、或いはデータ交換を行う。これは、I/Oインタフェース308に接続されたI/Fレジスタ301を介して行われる。不揮発性メモリであるROM304は、CPU305(制御手段)が処理すべきプログラムおよび必要なデータを記憶している。随時アクセスメモリ(RAM)302は、CPU305がデータの処理を行う場合、一時的に処理の中間で発生するデータを記憶するためのものである。電気的書き込み消去可能なメモリEEPROM303は、SIM機能を実現するための情報、具体的には、従来のSIMに設定されているファイルや情報(スクランブルをかける時に加入者に与えられるユニークな情報、例えば加入者番号IMSI或いはネットワーク認証時に使用するIMSIと対になる暗号キー、PINおよびアンブロックPIN)を格納している半導体メモリである。但し、大容量のメモリが必要な電話帳或いはメッセージ等に関してはHDDに保存することも可能である。CPU305は更にHD制御部306を通じてハードディスク(HDD)312にデータを書き込む或いは読み出す。これらの各部はCPUバス307により結合されている。
【0034】
HDD312の記憶領域の全て或いは一部に対して予め設定した方法でスクランブルをかけて暗号化操作をすることにより、もしディスク部分だけを取り出して他のドライブで読み出そうとする悪意ある試みが行われても、それに対する保護が可能になる。例えばハードディスクはセクタ毎に区切ってデータが書き込まれるが、セクタのリンク情報(書き込み領域番号)も一緒に記憶されるので、スクランブルとしては、このリンク情報を、SIM内部にある加入者に唯一与えられるセキュリティ情報(例えば加入者番号そのものであるIMSI或いはそれに関連付けられた外部から知りえないネットワーク認証や基地局との通信の暗号化をする為のデータ生成に使用される暗号キーKi)を基に演算して変更することにより、暗号化、復号化を行うことが可能である。勿論、各セクタに書き込まれるデータそのものを同様な手段を用いて暗号化或いは復号化することも可能である。他に本体から電源であるVcc309、電源On/Off時のSIM HDD401のリセット制御を行うRST310、接地であるGND311などがSIM HDD401に接続される。なお、要素301〜306は1チップのマイクロコンピュータで構成可能であり、この1チップのマイクロコンピュータによりSIM機能が高いセキュリティで実現される。
【0035】
図4に、図3内に示したI/Fレジスタ301の概略の構成例を示す。I/Fレジスタ301は、この例では、シリアル/パラレルデータ変換器45と、データライトレジスタ41、データリードレジスタ42、コントロールレジスタ(制御レジスタ)43、ステータスレジスタ(状態レジスタ)44、ゲート51〜54等で構成されている。なお、データの「リード」および「ライト」は端末側から見た動作名称である。シリアル/パラレル(S/P)データ変換器45は、端末本体との通信プロトコルに従ってシリアルとパラレルのデータ変換を行う。データライトレジスタ41は端末側CPU224がSIM HDDに書き込むデータを一旦設定するレジスタである。このレジスタに設定されたデータはCPU305によりゲート51を介して、指示された記憶領域に格納される。データリードレジスタ42は端末側CPU224がSIM HDDから読み出すデータをCPU305がゲート52を介して設定するレジスタである。このレジスタにデータが設定されたら、端末側CPU224がS/Pデータ変換器45を介して読み出す。コントロールレジスタ43は、端末側CPU224がSIM HDDを制御するための制御情報(HDD機能或いはSIM機能をどのように制御するか)を設定するためのレジスタである。CPU305はこのレジスタに設定された情報をゲート53を介して読み出し、その情報に基づいてSIM HDDの制御を行う。ステータスレジスタ44は、CPU305がゲート54を介してSIM HDDの現在の状態情報(SIM HDDの処理結果或いはI/Fの状態等)を設定するレジスタであり、端末側CPU224がこのレジスタの内容を読み出して、現在のSIM HDDの状態を認識する。
【0036】
図5は、SIM HDD401の構造例を拡大して示す外観図である。SIM HDD401は筐体402内に収納されており、従来のSIMと同様に簡単に持ち運びができるようになっており、且つ静電気等による電気的な損傷、或いは落下等の機械的損傷に対して十分な耐性を与えられている。また、SIM HDD401を携帯通信端末本体に装着する際に、接続の向きが逆方向にならない為の予防として逆挿し防止キー403が機械的構造で設けられている。SIM HDD401は、携帯通信端末本体とは接続ピン404にて接続されことになる。この接続ピン404は例えばスプリングなどの弾性部材により弾性を付与された状態で本体側の接点に接触するようになされ、考えうる振動に対しても十分な接触状態が維持されるようになっている。
【0037】
図6は、図5に示したSIM HDD401を端末本体502に装着する際の様子を示す図である。この図は、携帯通信端末本体502を電池(バッテリ)が装着される面から見た図である。SIM HDD401は電池装着部503内にあるSIM HDD装着部504に挿入され実装することになる。SIM HDD装着部504は、電池装着部503の凹部の更に内側の凹部に設けられている。したがって、SIM HDD401は、電池(図示せず)を取り外した状態でしか着脱ができない。その為、電源がON状態でのいわゆる活線挿抜は発生しないので、SIM HDD401内の電子部品に電気的な損傷を与えることなく安全に着脱が可能となる。
【0038】
図7は、SIM HDDに対してSIM機能或いはHDDのアクセス機能を利用する時に起動されるSIM HDD内部の処理例を示している。どのようにSIM HDDを設定するか、例えば全てのHDDの記憶にスクランブルをかけるか或いはパーティションに区切って指定のパーティションだけにスクランブルをかけるかなどのモード設定情報は端末側CPUがコントロールレジスタ43(図4)に設定しておくものとする。種々のモードはコントロールレジスタ43の所定のビットの値によって設定することができる。
【0039】
最初に、データをアクセスする時にPINが既にブロック状態にあるか否かの判断、すなわちPINブロック判断を行う(S11)。これにより、セキュリティの状態を確認して正常な状態にあるかどうかをチェックする。これはステータスレジスタ44(図4)の所定のビット値に基づいて行うことができる。もしすでにSIM HDDがブロックされていると判定されたならば(S11,Yes)、I/Oインタフェース308を経由して入ってきたデータがブロック状態を解除する為のものかの判断、すなわちアンブロックPIN判断を行う(S12)。ブロック状態を解除する為のデータでないと判定されたならば(S12,No)、SIM HDDの内部状態を携帯通信端末本体に知らしめる為にSIMブロック状態をステータスレジスタ44に設定して(S19)、処理を終了する。
【0040】
先のステップS11でSIM HDDがブロック状態にないと判定された場合には(S11,No)、或いは、入ってきたデータがブロック状態を解除する為のものであった場合には(S12,Yes)、PINが既に検証されているかどうかのPIN検証済み判断を行う(S13)。もしまだ検証が済んでいないと判定されたならば(S13,No)、PINを入力する為の表示を行わせるPIN入力処理を行う(S14)。ついで、入力されたPINデータが正しいPINであるかのPIN検証OK判断を行う(S15)。もし正しいPINが入力されなかったと判定された場合(S15,No)、PINのエラー情報を更新する為のエラーカウンタ更新(Error Counter Update)処理を行う(S16)。この例では、初期値”3”のカウント値をデクリメントする。その後、エラーカウンタがSIMをブロックするべき所定値(この例では”0”)を示しているか否かに関するカウント値判断を行う(S17)。ここでカウント値が所定値となったと判定された場合には(S17,Yes)、SIM HDDの内部状態を携帯通信端末本体に対して報知する為に、ステータスレジスタ44にSIMブロック状態を設定して(S19)、処理を終了する。
【0041】
カウント値判断(S17)でカウント値が所定値に達していないと判定された場合には、単にPINエラーを利用者に報知して(S18)、処理を終了する。この報知はディスプレイ220aへのメッセージ表示(例えば「PINが間違っています。再入力してください。」等)で行うことができる。
【0042】
前記ステップS13のPIN検証済み判断で検証済と判断された場合(S13,Yes)、ステップS21へ進む。前記ステップS15のPIN検証OK判断で入力PINが正しいと判定された場合(S15,Yes)、エラーカウンタの値を初期値にリセットし(S20)、ステップS21へ進む。
【0043】
ステップS21では、コントロールレジスタ43の設定内容に応じて、そのアクセスの対象が何であるかをSIMアクセス判断で行う。もし入力されたデータがSIM(ここではEEPROM303)を対象としたものであると判定されたならば(S21,Yes)、SIMに対してアクセス処理を行い(S25)、処理を終了する。
【0044】
一方、前記ステップS21のSIMアクセス判断でSIMを対象としたものではないと判定されたならば(S21,No)、HDDを対象としたものとしてそれをどのように処理するか否かに関する判断、すなわちHDDノーマル判断を行う(S22)。この判断は端末側CPUにより設定されたコントロールレジスタ43の所定のビット値に基づいて行う。もし通常のHDDへのアクセスであるならば(S22,Yes)、HDDノーマルアクセスを行って(S23)、処理を終了する。前記ステップS22のHDDノーマル判断でセキュリティをかけると判定されたならば(S22,No)、前述したようなスクランブルを利用したHDDスクランブルアクセスを行い(S24)、処理を終了する。
【0045】
なお、HDD部312にアクセスしない場合には、同部への電力供給を一時的に停止するスリープ状態にすることで、SIM HDDの消費電力は従来のSIM程度に抑えられる。また、例えばHDD自体が故障してもSIM機能が生きていれば、PIN認証も含めて端末を通常使用することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態ではSIM HDDにおいてSIM機能とHDD機能を単純に組み合わせることができる。さらに、HDDに記憶されるデータそのものの保護も可能にする。通信事業者はSIMカードの代わりに本発明のリムーバブルSIM HDDを加入者に提供することになる。現在小型のHDDの価格は未だ高めであるが、このような利用が普及することで、従来のSIM並みに提供可能となると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係るSIM HDDを適用する携帯電話器を用いるデジタルセルラーシステムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る携帯電話器の構成例を表したブロック図である。
【図3】本実施の形態におけるSIM HDD内部構造例を示すブロック図である。
【図4】図3内に示したI/Fレジスタの概略の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるSIM HDDの構造例を拡大して示す外観図である。
【図6】図5に示したSIM HDDを端末本体に装着する際の様子を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態においてSIM HDDに対してSIM機能或いはHDDのアクセス機能を利用する時に起動されるSIM HDD内部の処理例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
41…データライトレジスタ、42…データリードレジスタ、43…コントロールレジスタ、44…ステータスレジスタ、45…データ変換器、45…パラレルデータ変換器、51〜54…ゲート、106…デジタルインタフェース、108…PSTN局、109…サービスプロバイダ、110…デジタルインタフェース、201…アンテナ、202…セレクタ、203…受信RF部、204…ミキサー、205…受信IF部、206…受信復調部、207…音声復号部、208…スピーカアンプ、209…スピーカ、210…通信データ復号部、211…局発部、212…送信RF部、213…ミキサー、214…送信IF部、215…送信変調部、216…音声符号化部、217…マイクアンプ、218…マイク、220a…ディスプレイ、220b…キーボード、220c…データI/F、227…SIM HDD I/F部、301…I/Fレジスタ、306…HD制御部、307…CPUバス、308…I/Oインタフェース、312…HDD、401…SIM HDD、402…筐体、403…逆挿し防止キー、404…接続ピン、502…携帯通信端末本体、503…電池装着部、504…SIM HDD装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話システムの加入者認証機能を含むSIM機能を実現するための情報を格納した不揮発性半導体メモリと、少なくとも加入者関連情報を記憶するためのハードディスク装置と、制御手段とを同一筐体内に収納し、携帯通信端末に対して着脱可能な接続手段とを備え、前記制御手段は前記携帯通信端末からの指示に応じて前記不揮発性半導体メモリへのアクセスおよび前記ハードディスク装置へのアクセスを切り替えて行うことを特徴とするSIM機能付き可搬型ハードディスク装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記加入者認証機能によりPIN検証が正常終了した時のみ、利用者による前記不揮発性半導体メモリおよび前記ハードディスク装置へのアクセスを許可することを特徴とする請求項1記載のSIM機能付き可搬型ハードディスク装置。
【請求項3】
前記携帯通信端末からの指示が書き込まれる制御レジスタを有し、前記制御手段は前記制御レジスタに書き込まれた指示に応じた制御を行うことを特徴とする請求項1記載のSIM機能付き可搬型ハードディスク装置。
【請求項4】
前記制御手段がSIM機能付き可搬型ハードディスク装置の現在の状態情報を書き込む状態レジスタを有することを特徴とする請求項1または3記載のSIM機能付き可搬型ハードディスク装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記不揮発性半導体メモリに記憶されている、加入者に与えられるユニークな情報に基づいて、前記ハードディスク装置の少なくとも一部の領域について暗号化を行うことを特徴とする請求項1記載のSIM機能付き可搬型ハードディスク装置。
【請求項6】
SIM機能付き可搬型ハードディスク装置を着脱可能に装着する携帯通信端末であって、
前記SIM機能付き可搬型ハードディスク装置は、携帯電話システムの加入者認証機能を含むSIM機能を実現するための情報を格納した不揮発性半導体メモリと、
ハードディスク装置と、
制御手段とを同一筐体内に収納し、携帯通信端末に対して着脱可能な接続手段とを備え、
前記制御手段は前記携帯通信端末からの指示に応じて前記不揮発性半導体メモリへのアクセスおよび前記ハードディスク装置へのアクセスを切り替えて行う
ことを特徴とする携帯通信端末。
【請求項7】
前記制御手段は、前記加入者認証機能によりPIN検証が正常終了した時のみ、利用者による前記不揮発性半導体メモリおよび前記ハードディスク装置へのアクセスを許可することを特徴とする請求項6記載の携帯通信端末。
【請求項8】
前記SIM機能付き可搬型ハードディスク装置は、前記携帯通信端末からの指示が書き込まれる制御レジスタを有し、前記制御手段は前記制御レジスタに書き込まれた指示に応じた制御を行うことを特徴とする請求項6記載の携帯通信端末。
【請求項9】
前記制御手段がSIM機能付き可搬型ハードディスク装置の現在の状態情報を書き込む状態レジスタを有することを特徴とする請求項6または8記載の携帯通信端末。
【請求項10】
前記制御手段は、前記不揮発性半導体メモリに記憶されている、加入者に与えられるユニークな情報に基づいて、前記ハードディスク装置の少なくとも一部の領域について暗号化を行うことを特徴とする請求項6記載の携帯通信端末。
【請求項11】
前記SIM機能付き可搬型ハードディスク装置を着脱可能に装着するとともに電池を着脱可能に装着する筐体を有し、この筐体は、前記電池を外した状態でしか前記SIM機能付き可搬型ハードディスク装置の前記筐体への着脱を行えない構造を有することを特徴とする請求項6記載の携帯通信端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−121581(P2006−121581A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309534(P2004−309534)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】