説明

SSRモードS信号受信装置

【課題】SSRモード応答信号の受信信号が地面等の反射波と合成されて受信されても、反射波を除去して直接波を適切に検出し、データ解読できるようにする。
【解決手段】微分器5が、A/D変換された受信電力合成パルス信号を微分し、相関演算器6が受信電力合成パルス信号を形成した各パルスの前縁及び後縁における振幅及び時間の相関レベルを演算して出力し、反射レベル検索器82がその相関レベルに基づき、反射波を除去し合成波を再合成するための演算パラメータを生成して、逆演算器81に供給する。
従って、たとえマルチパスにより受信信号の波形が変化したとしても、振幅及び時間の相関レベルに基づく逆演算によって、反射波の干渉除去ないしは再合成を図り、SSRモードS応答パルス信号を適正に取り出すことができるので、監視すべきターゲット(航空機)の検出率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、ATCトランスポンダから送信されたSSRモードS応答信号を二次監視レーダ側で受信した受信信号が、直接波と、地面等での反射を経た反射波との合成波であるとき、合成波から反射波を除外または再合成して直接波を適正に検出可能なSSRモードS信号受信装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
航空交通管制(ATC:Air Traffic Control)において、地上に設置された二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar、以下SSRと称する)からの質問信号が航空機に向けて送信され、その質問信号を受信した航空機搭載のATCトランスポンダは、その質問信号に対する応答信号がSSRに向けて送信される。
【0003】
ATCトランスポンダからの応答信号を受信したSSRは、その応答信号に含むデータを解読することにより、当該航空機を監視のための各種情報を取得する。
【0004】
SSRとATCトランスポンダとの間の質問応答には、航空機の識別情報を得るためのモードA、高度情報を得るためのモードC、識別情報や高度情報に加えて進路情報や速度情報等を得ることができるモードSとがある(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
なお、航空機搭載のSSRモードS用トランスポンダは、モードS応答信号を一定間隔で自動的に送信するので、その送信信号は地上局だけでなく、飛行する他の航空機でも受信できる。
【0006】
SSRモードS用トランスポンダから送信されるSSRモードS応答信号は、図5に示したように、4つのパルスで特定パターンを形成した先頭のプリアンブル信号と、それに続くデータブロック信号とが縦続したパルス信号列として構成されている。
【0007】
地上局のSSRにおいて、SSRモードS応答信号を受信して解読しようとするとき、受信するSSRモードS応答信号には、空間における電波伝搬の環境状況等により種々のノイズが含まれることが多く、また直接波地面や海面での反射を経た反射波との合成波として、いわゆるマルチパスによる信号重畳によっても、パルス波形が大きくひずんで受信されることがある。
【0008】
図6は、航空機(ターゲット)Pに搭載されたモードS用トランスポンダからのSSRモードS応答信号をSSRの空中線1で受信するとき、SSR側では直接波Dと、地面や海面等での反射を経た反射波Rとが重畳した合成波として受信されることを示したものである。
【0009】
従来、SSRモードS応答信号を受信したとき、その受信信号が真のSSRモードS応答信号であるか否かは、受信されるプリアンブル信号に閾値レベルLを設定し、その閾値レベルLによる時間幅が、プリアンブルとして規定された時間幅の許容範囲内にあるか否かで判定されていた。
【0010】
すなわち、図7(a)に示した受信パルス信号に対し、閾値レベルLを設定し、波形成形により図7(b)に示したパルスを得たとき、この取り出したパルスの各パルス幅(X,Y,Z)が、規定されたパルス信号であるとされる許容範囲、すなわちw<X,Y,Z<Wにあるか否かを判別し、許容範囲内にあるパルス信号(図7では、図7(b)に示したパルスX)のみが目的とする真のパルス信号であるとして抽出される(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0011】
図6に示したように、地上局のSSRが、スラント(slant)レンジの直接波Dと、地面での反射を介して受信された反射波Rの合成波としてSSRモードS応答信号をしたとき、合成波に含む反射波Rは、経路長の違いから直接波Dに遅れて受信され、また反射損失等により、反射波Rは直接波Dよりも低いレベルで受信される。
【0012】
すなわち、同一信号源からのマルチパス受信において、図8(a)に示した直接波Dにおける振幅Hのパルス信号の受信に対し、地面や海面等での反射を経て受信された反射波Rは、図8(b)に示したように、遅延(Δt)したタイミングでかつ振幅Hよりレベルの低い振幅hのパルスとして受信される。
【0013】
SSRが空中線1を介してマルチパスの信号を合成波として受信したとき、同位相での受信では図8(c)に示した波形となり、逆位相での合成波は図8(d)に示した波形となり、いずれももとの送信パルスの波形からは大きく変形して受信されることがある。
【0014】
従って、SSRにおいて、図8(c)あるいは図8(d)に示したこれら合成波のパルスに対し、閾値レベルLを設定して目的とするパルス信号であるか否かを判定したとき、各合成波の閾値レベルLにおける時間幅(パルス幅)は、もとのパルス信号とは大きく異なった状況のもとでは、ノイズと判定され破棄される。
【0015】
SSRモードS応答信号を構成するパルスのパルス幅は、0.5μsまたは1.0μsのいずれかに規定され、0.5μsのパルス幅の4個のパルスが、規定に従い配列されたプリアンプル信号を検出してはじめて、受信信号がSSRモードS応答信号であることが識別され、その検出されたプリアンブルを基準として、後に続くデータブロックの検出及び解読が行われる。
【0016】
図9(a)は、受信直接波Dのプリアンブル信号を示したもので、図9(b)は,受信反射波Rのプリアンブル信号で、そして図9(c)は、それらがSSRで合成波として受信された信号波形を示したものである。
【0017】
上記のように、従来のSSRモードS受信装置では、図9(c)に示したような合成波に対し閾値レベルLを設定してプリアンブル信号を検出するので、合成波で波形が変形した状態では、適正なプリアンブル信号として検出されることなく破棄されてしまうこととなる。
【0018】
図10(a)は、データブロック信号例の一部を示したもので、1.0μsのビット幅の1/2である0.5μsのパルス幅のパルスにより形成された「1,0,1,0,1,0,1,1,」のパルス信号が、マルチパスにより合成波として受信された信号波形を示したものである。
【0019】
従来のSSRモードS信号受信装置は、図10(a)に示した波形の合成波に対し、閾値レベルLの設定してSSRモードS応答信号を検出するので、その検出波形は、図10(b)に示したものとなり、予め規定されたパルス幅範囲を満足しないパルスを含むので適正に検出されず、解読されなかった。
【非特許文献1】橋田芳男、大友恒、久慈義則「航空管制用二次監視レーダ−SSRモードS」、東芝レビューVol.59 No.2(2004)、p58-61.
【特許文献1】特開2000−206239号公報
【特許文献2】特開2000−304855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のように、例えばSSRにおいて受信したSSRモードS信号が、直接波に反射波が干渉した合成波であるとき、合成によるパルス波形のひずみから、SSRモードS信号として検出されないことがあった。
【0021】
特に、SSRモードS応答信号では、そもそもプリアンブル検出が適正に行われない状況のもとでは、後続するデータブロック信号の検出並びにデータ解読は行われないこととなる。
【0022】
このように、従来のSSRモードS信号受信装置では、合成波を受信したとき、反射波を識別してパルス列信号を適正に検出し得なかったので、SSRモードS応答信号を検出して解読することができず、監視すべきターゲット(航空機)の検出率が著しく低下する。
【0023】
そこで、本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたもので、受信されたSSRモードS応答パルス信号が、たとえ直接波と反射波との合成によるものであっても、反射波を除去または再合成することでSSRモードS応答パルス信号を適正に取り出すことができるSSRモードS信号受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明のSSRモードS信号受信装置は、送信されたパルス信号列を受信して検波する検波手段と、この検波手段により検波された前記受信電力パルス信号列をA/D変換するA/D変換手段と、このA/D変換手段でディジタル化された前記受信電力パルス信号列の波形を微分し、各パルスにおける振幅上昇変化率及び振幅下降変化率に対応した微分信号を出力する微分手段と、この微分手段により出力された前記受信電力パルス信号列における微分信号の振幅及び時間の相関レベルを演算して出力する相関演算手段と、この相関演算手段から出力された前記相関レベルに基づき、前記A/D変換手段の出力信号から反射波を除去または再合成するための前記振幅及び時間に関する演算パラメータを生成する検索手段と、この検索手段により生成された前記演算パラメータに基づき、前記A/D変換手段の出力信号を逆演算し、反射波を除去または再合成して前記受信電力パルス信号列を再生出力する逆演算手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のSSRモードS信号受信装置は、受信電力パルス信号列の波形を微分する微分手段と、この微分手段による微分信号の振幅及び時間の相関レベルを演算して出力する相関演算手段とを有し、この相関演算手段からの各相関レベルに基づく演算パラメータにより、受信出力信号を逆演算して反射波の除去あるいは再合成を行うので、反射波の干渉を抑制した受信パルス列信号を再生出力できる。
【0026】
従って、たとえマルチパスにより受信信号の波形が変化したとしても、SSRモードS応答パルス信号を適正に取り出すことができ、監視すべきターゲット(航空機)の検出率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1ないし図4を参照し、本発明によるSSRモードS信号受信装置の一実施例を説明する。なお、図5ないし図10に示した従来の構成と同一構成には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
図1は、SSR(二次監視レーダ)に採用した本発明に係るSSRモードS信号受信装置の構成図である。
【0029】
図1において、SSRモードS信号受信装置は、水平方向に360度回転可能な空中線1と、この空中線1に接続された検波器2と、検波器2に接続されたA/D変換器3と、A/D変換器3に接続された遅延補償回路4及び微分器5と、微分器5に接続された相関演算器6と、相関演算器6に接続されたプリアンブル検出器7と、プリアンブル検出器7及び相関演算器6並びに遅延補償回路4に接続された再合成処理回路8とから構成される。
【0030】
再合成処理回路8は、遅延補償回路4の出力が供給される逆演算器81と、遅延補償回路4及び相関演算器6並びにプリアンブル検出器7の各出力が供給される反射レベル検索器82とから構成されている。
【0031】
図2は、空中線1に受信されるSSRモードS信号のプリアンブル信号を示したものである。
【0032】
図2(a)ないし図2(c)は、プリアンブルの直接波、反射波、及び合成波をそれぞれ示したものであり、図9(a)ないし図9(c)に示した、同じくプリアンブルの直接波、反射波、及び合成波に対応して示したものである。
【0033】
図2(c)に示したプリアンブル信号の合成波が検波器2で検波され、A/D変換器3において、検波アナログ信号から多値ディジタル信号に変換されて出力され、遅延補償回路4及び微分器5に供給される。
【0034】
微分器5は、いわゆる微分フィルタで構成された微分手段であり、図2(c)に示した合成波(すなわち、受信電力パルス信号列)の波形に対し微分処理を行う。
【0035】
すなわち、微分器5は、図2(d)に示したように、合成波を構成した直接波及び反射波の各パルスの前縁における立ち上がり、及び後縁における立下りを検出して出力する。
【0036】
図3(a)は、図10に示した合成波に対応した波形を示したものであり、図3(a)に示した合成波が微分器5へ供給されることにより、微分器5は図3(b)に示した微分出力を導出する。
【0037】
図2(d)に示した微分器5の出力信号は、相関演算器6に供給される。
【0038】
相関演算器6は、プリアンブル信号のパルス位置に対応する相関フィルタを構成したもので、図1に示したように、加算器61a,61b,61cと各対応する遅延回路62a,62b,62cとの組み合わせ構成からなる3段階(縦続)で相関処理を実行する。
【0039】
各遅延回路62a,62b,62cの遅延量は、プリアンブル信号におけるパルス幅及びパルス配列位置に対応して、0.5μs,1.0μs,3.5μsにそれぞれ設定されている。
【0040】
図2(d)に示した微分器5の出力信号は、規定されたプリアンブル信号のパルス位置に対応する。従って、直接波の相関Ds及び反射波の相関Rsを示した図2(e)に示したように、加算器61aからは0.5μsの相関フィルタにより図2(f)に示した微分出力が抽出され、さらに加算器61bからは1.0μsの相関フィルタにより図2(g)に示した微分出力が抽出され、さらに加算器61cからは3.5μsの相関フィルタにより図2(h)の微分出力が抽出される。
【0041】
図2(h)の微分出力は、合成波のプリアンブル信号における直接波Dと反射波Rとの振幅(振幅差Δh)及び時間(時間差Δt)の相関レベルを示している。
【0042】
図2(h)の相関レベル信号は、プリアンブル検出器7及び再合成処理回路8の反射レベル検索器82に供給される。
【0043】
このように、相関演算器6における微分信号に対する相関演算処理では、図2(c)に示された合成波における波形(信号強度)の上昇変化率と下降変化率との相関の度合いの演算結果から、プリアンブル信号における直接波Dと反射波Rとの振幅及び時間の相関レベルマップが出力される。
【0044】
プリアンブル検出器7は、相関演算器6からの図2(h)に示した相関レベル信号から、図2(i)に示した、基準となるプリアンブルパルスの前縁信号、すなわち先に検出される相関の強い直接波のプリアンブル検出信号が基準信号として、再合成処理回路8の反射レベル検索器82に供給される。
【0045】
反射レベル検索器82と逆演算器81とから構成された再合成処理回路8は、以下説明するように、逆演算器81により、特定した時間及び振幅レベルでの合成波に対する再合成を行うものであり、これにより反射波による波形の歪み干渉を除去して、直接波に戻して出力する。
【0046】
すなわち、空中線1で受信される合成波Pgは、下記(1)式で表される。
【0047】
Pg=αsinωt+βsin(ω(t+Δt))・・・・・(1)
但し、
α:直接波Dの減衰量、
β:反射波Rの減衰量
Δt:直接波Dと反射波Rの到達時間差
上記(1)式において、sinωt=f(t)とおくと下記(2)式が得られる。
【0048】
Pg=αf(t)+βf(t+Δt) (2)
上記(2)式から下記(3)式が得られる。
【0049】
f(t)=(Pg−βf(t+Δt))/α (3)
上記(3)式は、合成波Pgに対し、特定した時間(Δt)と振幅レベル(α,β)に関する逆演算により、f(t)、すなわち直接波Dを合成復元できることを示している。
【0050】
そこで、遅延補償回路4を介して合成波Pgが供給される逆演算器81は、加算回路81aと、加算回路81a出力が供給される割算回路81b並びに減衰係数回路81cと、減衰係数回路81cの出力が供給されて遅延補正を行い加算回路81aにフィードバックする可変遅延線路81dとで構成される。
【0051】
なお、遅延補償回路4は再合成処理回路8に供給される合成波Pgのタイミングと、微分器5、相関演算器6、及びプリアンブル検出器7での処理を経て再合成処理回路8に供給される各信号間のタイミングを一致させるための補正回路である。
【0052】
上記(3)式に示されたように、合成波Pgを導入した逆演算器81は、直接波Dの減衰量(α)、反射波Rの減衰量(β)、及び直接波Dと反射波Rの到達時間差(Δt)のデータがから、再合成により直接波Pg(=f(t))を出力する。
【0053】
反射レベル検索器82には、上記のように、遅延補償回路4から合成波出力信号Pgを、相関演算器6からは図2(f)に示した振幅及び時間の相関レベルマップが、またプリアンブル検出器7からは図2(g)に示したプリアンブル検出信号が供給される。
【0054】
従って、反射レベル検索器82は、プリアンブル検出器7からのプリアンブル検出信号をトリガとして、上記(3)式に基づく逆演算により、直接波f(t)を生成して導出するのに必要な各演算パラメータ、すなわち直接波Dの減衰量(α)すなわち直接波Dの振幅レベル、反射波Rの減衰量(β)、すなわち反射波Rの振幅レベル、及び直接波Dと反射波Rの到達時間差(Δt)を検索し、それぞれ対応する割算回路81b、減衰係数回路81c、及び可変遅延線路81dに供給するので、逆演算器81は、合成波Pgに対する逆演算により直接波f(t)を生成して導出する。
【0055】
このように、再合成処理回路8は、合成波Pgに対する微分及び相関演算を介して得られた、振幅及び時間の相関レベルマップから、反射波を識別し、反射波としての条件を満たすものを抽出し、特定された条件のもとでの逆演算により、合成波Pgに対する再合成が行われて出力される。すなわち、反射波Rによって失った部分を反射波Rに逆合成することで、元の信号波形に戻されて出力される。
【0056】
なお、図1に示した構成において、減衰係数回路81cと可変遅延線路81dとの接続順序は逆でも良い。
【0057】
以上説明したように、本実施例によれば、SSRモードS応答信号のプリアンブル信号に対する振幅及び時間に関する検出パラメータにより、マルチパス受信信号から干渉した反射波を除去し、直接波のプリアンブルを正常かつ適正に検出して出力できるので、続いて送信されてくるデータビット列にも、継続的に適用され、パルス信号列が適正に出力されて解読される。
【0058】
図3(c)及び図3(d)は、再合成処理回路8の再生出力に対し、モードS信号の規格に基づき、パルス信号列に対して施されたゲート処理の結果を示したものである。
【0059】
すなわち、ゲート処理では、プリアンブルで規定された基準位置に基づく0.5μsのゲートフィルタを介して、図3(c)及び図3(d)に示した0.5μs及び1.0μsの検出ビットを生成する。そして、これら検出ビットに基づく位相同期処理のパルス再生を経て、図3(e)に示した正常なパルス信号列が復元されるので、解読器においてモードS信号は適正に解読される。
【0060】
なお、トランスポンダ応答では、1090MHz帯の周波数が採用される。1090MHzの波長λは27cm程度であるが、一般にSSRの受信における距離解像度はこれほど高くはなく、一般には受信電力しか検出されない。
【0061】
従って、上記説明の実施例におけるSSRモードS信号受信装置では、合成位相によるレベル計算ではなく、受信電力波形から合成レベルでの推定を行ったものである。
【0062】
また、反射レベル検索器82における検索では、直接波Dと反射波Rとの間のSSRにおける到達時間差Δtは、ターゲット(航空機)Pの高さ位置と、SSR空中線1の高さ位置、及び空中線1の覆域等によりおのずから限られたものとなる。
【0063】
すなわち、図4に示した配置構成において、空中線1の位置をO、その既知の高さをK、ターゲットの位置をP、その高さをk、既知である直接波の到達距離長さ(すなわち、スラントレンジ)をD、反射波の地面での反射位置をQ、その反射位置Qから空中線1の位置Oに対応した鏡面での虚像位置をE、虚像位置Eの水平線とターゲットPの鉛直線との交点をGとし、E−G間の距離をn、反射波距離長さをmとして、直接波Dと反射波Rとの間の到達時間差Δtを求めると、
まず、三角形の定理から、下記(4)(5)式が得られる。
【0064】
2 =n2 +(k+K)2 (4)
2 =n2 +(k−K)2 (5)
上記(4)(5)式から、反射波距離長さmは下記(6)式となる。
【0065】
m=√(4kK+D2 ) (6)
反射波距離長さmと直接波の到達距離長さDとの経路差(ΔL)は、下記(7)式と表される。
【0066】
ΔL=(m−D)=√(4kK+D2 )−D (7)
従って、到達時間差Δtは、光速をcとすると、下記(8)式によって求められる。
【0067】
Δt=ΔL/c=(√(4kK+D2 )−D)/c (8)
また、SSRからターゲットPを見た、図4に示した見かけ角度θは、下記(9)で表される。
【0068】
θ=sin-1((k−K)/D) (9)
ここで、SSRの空中線1の垂直ビーム幅は、±45度程度であるので、角度θの範囲は下記(10)式で表され範囲に限定される。
【0069】
(−1/√2)<(k−K)/D<(1/√2) (10)
また、ターゲット(航空機)の高度kは、通常45,000feet以下であり、また経路差ΔLは、空中線1の位置の高さKが最大となる。
【0070】
なお、実際の計算では、地球面の湾曲を考慮した計算、あるいは無限平面に補正した計算を行う必要がある。
【0071】
また、上記実施例の説明では、パルス信号列は、ターゲット(航空機)からSSRに向けて送信されるSSRモードS応答信号であるものとして説明したが、この実施例では、要するに直接波と反射波との合成波から、反射波の除去あるいは再合成を行うことにあるので、パルス列信号は、ターゲット(航空機)同士で送受される衝突防止装置のモードS質問信号であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明によるSSRモードS受信装置の一実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示した装置の動作を説明するための信号波形図である。
【図3】図1に示した装置の信号波形図である。
【図4】図1に示した装置と、ATCトランスポンダ(ターゲット)との位置関係を示した説明図である。
【図5】SSRモードS応答信号におけるパルス信号列を示した波形図である。
【図6】SSRとATCトランスポンダとの位置関係を示した説明図である。
【図7】従来のパルス信号におけるノイズと信号との識別方法を説明した信号波形図である。
【図8】従来のSSRモードS信号受信装置における信号検出方法の説明図である。
【図9】SSRモード応答のプリアンブル信号における直接波と、反射波と、合成波とを示した信号波形図である。
【図10】従来のSSRモードS信号受信装置における合成波の検出を示した信号波形図である。
【符号の説明】
【0073】
1 空中線
2 検波器(検波手段)
3 A/D変換器(A/D変換手段)
5 微分器(微分手段)
6 相関演算器(相関演算手段)
7 プリアンブル検出器
8 再合成処理回路
81 逆演算器(逆演算手段)
82 反射レベル検索器(検索手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信されたパルス信号列を受信して検波する検波手段と、
この検波手段により検波された前記受信電力パルス信号列をA/D変換するA/D変換手段と、
このA/D変換手段でディジタル化された前記受信電力パルス信号列の波形を微分し、各パルスにおける振幅上昇変化率及び振幅下降変化率に対応した微分信号を出力する微分手段と、
この微分手段により出力された前記受信電力パルス信号列における微分信号の振幅及び時間の相関レベルを演算して出力する相関演算手段と、
この相関演算手段から出力された前記相関レベルに基づき、前記A/D変換手段の出力信号から反射波を除去または再合成するための前記振幅及び時間に関する演算パラメータを生成する検索手段と、
この検索手段により生成された前記演算パラメータに基づき、前記A/D変換手段の出力信号を逆演算し、反射波を除去または再合成して前記受信電力パルス信号列を再生出力する逆演算手段と
を具備することを特徴とするSSRモードS信号受信装置。
【請求項2】
前記パルス信号列は、SSRのプリアンブル信号とデータブロック信号とで構成され、
前記相関演算手段は、前記プリアンブル信号に基づき前記相関レベルを演算して出力するように構成された
ことを特徴とする請求項1に記載のSSRモードS信号受信装置。
【請求項3】
前記相関演算手段は、前記プリアンブル信号のパルス位置に対応したフィルタ構成により、相関レベルを演算して出力するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載のSSRモードS信号受信装置。
【請求項4】
前記パルス信号列は、ATCトランスポンダから送信されたモードS質問信号であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載のSSRモードS信号受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−240259(P2007−240259A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61424(P2006−61424)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】