説明

Sm−活性化アルミン酸塩およびホウ酸塩蛍光物質

本発明は、(Ln1−a−bGdSmMgSr(Al1−c)zO(3/2w+x+y+3/2z) (I) 式中、Ln=Y、Laおよび/またはLu、a、c=0.0〜1.0、0<b<0.2およびa+b≦1.0、w=1.0〜3.0、x、y=1.0〜2.0およびz>0.0〜12.0、で表される蛍光物質、ならびにこれらの蛍光物質の製造およびLEDからの近紫外線発光の変換のための変換蛍光物質としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sm−活性化アルミン酸塩およびホウ酸塩からなる蛍光物質(phosphor)、これらの製造、ならびに近紫外線LEDのためのLED変換蛍光物質としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明および特殊照明(ディスプレイ、信号、閃光)のための蛍光物質−変換LEDは、全ての製造業者の圧倒的に大部分が青色発光InGaN LEDの使用に頼った状態で、10年より長くの間、開発中であってきた。この理由は、青色LED(420〜480nm)の使用において青色半導体放射線の白色スペクトルへの変換に起因するストークス損失が最小化され、したがって最大のルーメン効率が達成されるためである。80を超える色再現を有する白色光源についての理論限界は、350lm/Wであり、ニチア(Nichia)が丁度250lm/W足らずの白色LEDを最近開発した。このLEDは、YAG:Ceで変換される、青色スペクトル領域において発光するInGaN半導体に基づいている。
【0003】
変換体として黄色発光蛍光物質を用いる2色の白色LEDの不利は、これらの冷光色である(Tc=5000〜8000K)。暖白色LEDの提供は、赤色スペクトル領域(590〜650nm)において発光する第2の蛍光物質の添加により達成される。今まで使用された蛍光物質、すなわち、CaS:Eu、CaAlSiN:EuおよびCaSi:Euは、すべて、広い吸収スペクトルおよびまた広い発光帯の両方によって区別される活性化体Eu2+に基づいている。
暖白色LEDにおける変換体としての赤色発光線エミッターの使用は、これがルーメンを同等にでき、したがってルーメン収量が約20〜30%増加するため、非常に興味深いものである。しかし、例えば、Eu3+およびPr3+などの適当な活性化体は、青色スペクトル領域において弱い吸収帯を有するのみである。したがって、これらのイオンに基づく効率的な赤色発光線エミッターは提供できるが、近紫外線において発光するLEDのための変換体として適するのみであるという結論である。
【0004】
EP 916748は、組成LaMgAl1119(LMA)のランタンマグネシウムアルミン酸塩化合物を開示するが、これは、Smによって活性化されず、したがって、近紫外線LEDにおける使用に不適当である。
【0005】
Ceramics Intern. 2006, 32(6), 665-671, Tang et al. "The photoluminescence of SrAl2O4:Sm phosphors"は、蛍光物質SrAl:Smを開示する。
JP-2000144129は、同時ドープSrAl:Eu,Smを記載する。
【0006】
EP 1121000およびEP 1111966は、組成SrB:SmのSmドープホウ酸塩を記載する。
Singh et al. Physica Status Solidi A:Appl. And Mater. Sci, 2006, 203(8), 2058-2064 "Eu and Sm emission in SrAl12O19 phosphors prepared via combustion synthesis"は、Sm活性化蛍光物質を開示する。
【発明の概要】
【0007】
それゆえ、本発明の目的は、高い光効率および、特に近紫外線LEDにおける使用に関する上述の要件を満たす、新規なSm−活性化蛍光物質を製造することである。
驚くべきことに、組成LaMgAl1119:Sm、GdSrAlO:SmおよびLaSrAlO:SmのSm−活性化アルミン酸塩および組成LnMgB10:Sm、式中Ln=Y、La、GdまたはLu、のSm−活性化ホウ酸塩が、これらの要件を満たすことが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の多数の実施例を参照して本発明がさらに詳細に説明されるが、そこにおいて:
【0009】
【図1】図1はLa0.99Sm0.01MgAl1119の励起スペクトルを示したグラフである。(λ発光=593nm)
【図2】図2はLa0.99Sm0.01MgAl1119の発光スペクトルを示したグラフである。(λ励起=401nm)
【図3】図3はLa0.99Sm0.01SrAlOの励起スペクトルを示したグラフである。(λ発光=602nm)
【図4】図4はLa0.99Sm0.01SrAlOの発光スペクトルを示したグラフである。(λ励起=405nm)
【図5】図5はGd0.99Sm0.01SrAlOの励起スペクトルを示したグラフである。(λ発光=602nm)
【図6】図6はGd0.99Sm0.01SrAlOの発光スペクトルを示したグラフである。(λ励起=406nm)
【図7】図7はLa0.99Sm0.01MgB10の励起スペクトルを示したグラフである。(λ発光=595nm)
【図8】図8はLa0.99Sm0.01MgB10の発光スペクトルを示したグラフである。(λ励起=401nm)
【図9】図9はGd0.99Sm0.01MgB10の励起スペクトルを示したグラフである。(λ発光=595nm)
【図10】図10はGd0.99Sm0.01MgB10の発光スペクトルを示したグラフである。(λ励起=401nm)
【0010】
したがって本発明は、式I
(Ln1−a−bGdSmMgSr(Al1−c)zO(3/2w+x+y+3/2z) (I)
式中、
Ln=Y、Laおよび/またはLu
a,c=0.0〜1.0
0<b<0.2およびa+b≦1.0
w=1.0〜3.0
x,y=1.0〜2.0および
z>0.0〜12.0
で表される蛍光物質に関する。
【0011】
ここで好ましいのは、以下の蛍光物質である:
LaMgAl1119:Sm (II)
LaSrAlO:Sm (III)
GdSrAlO:Sm (IV)
LaMgB10:Sm (V)
GdMgB10:Sm (VI)
【0012】
Sm3+の項図(G. Blasse, B.C. Grabmeier, Luminescent Materials, Springer-Verlag 1994)は、主要な遷移(5/2)が14000〜18000cm−1であることを示し、これは、赤色−橙色発光線の多重線が予期され得ることを意味する。しかし、青色スペクトル領域において適当な遷移が存在しないため、Sm3+は、近紫外線において励起できるのみであり、つまりSm3+−活性化蛍光物質は、近紫外線LEDに適当であるのみであることを意味する。
【0013】
Sm2+は、Eu3+と等電子数であり、つまり項図が実質的にEu3+のものと同一であることを意味する、すなわち、より低いイオン電荷およびその結果としての低いシュタルク分裂のためにエネルギー準位の分裂のみが低減している。したがって、Sm2+−ドープ蛍光物質は、遷移によって引き起こされた10000〜15000cm−1の発光線を示し、それゆえNIRエミッターとして適している。加えて、低位置の強い吸収4f5d帯により、可視スペクトル領域において、すなわち青色発光LEDによっても、励起することができる。
【0014】
Smドープの原子濃度は、Sm2+またはSm3+が組み込まれた結晶学的な部位に基づいて、0.1〜10%である。
本発明の蛍光物質の粒径は、50nm〜30μm、好ましくは1μm〜20μm、より好ましくは2μm〜12μmである。
【0015】
本発明は、さらに、以下のプロセス段階:
a)ランタン、マグネシウム、アルミニウム、サマリウム、ガドリニウム、ホウ素、イットリウム、ルテチウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発材料を混合することによるSm−ドープ化合物の製造、
b)任意に、少なくとも1種のさらなる有機および/または無機物質の添加、
c)蛍光物質の熱的後処理、
を有する、ユーロピウムドーピングされた6−3−6−4アルカリ土類金属酸窒化ケイ素(silicooxynitride)型の化合物の製造方法に関する。
【0016】
化合物または蛍光物質の製造のための出発材料は、対応するオキシド、カーボネートまたはナイトレートからなる。適当な出発物質はまた、さらにシアナミド、ジシアナミド、シアニド、オキザラート、マロネート、フマレート、シトレート、アスコルベートおよびアセチルアセトネートなどの無機および/または有機物質である。
例えば、固体拡散法による製造の場合、アセトン(プロセス段階bを参照)などの有機溶媒を添加することもまたできる。これらは、出発材料のよりよい混和性のための補助物質としての役割を果たす。湿式化学法(詳細には下記を参照)が用いられる場合、使用される方法に応じて、有機物質(例えば、尿素などの沈殿剤)または無機物質(例えば酸)が用いられる。
【0017】
上述した熱的後処理(プロセス段階cを参照)は、多くの時間を要する。それは、また、例えばフォーミングガス(例えば90/10)、純粋な水素を有する還元条件下で、および/または上述した雰囲気を有するもしくは有しないアンモニア雰囲気下で、行うことができる。か焼プロセス中の温度は、数時間(好ましくは8時間)にかけて、950℃〜1800℃、好ましくは1000℃〜1550℃である。
【0018】
固体拡散法による蛍光物質の製造に加えて、湿式化学製造法もまた適当である。尿素を用いた燃焼法(例1参照)が好ましい。この方法においては、例えば、対応する蛍光物質出発材料の硝酸塩溶液を水に溶解させ、その後、還流下で沸騰させ、および尿素を添加して、蛍光物質前駆体をゆっくりと形成させる。
【0019】
加えて、以下の湿式化学法もまた、考えられる:
・NHHCO溶液での共沈(例えば、Jander, Blasius Lehrbuch der analyt. u. praep. anorg. Chem. [Textbook of Analyt. and Prep. Inorg. Chem.] 2002を参照)
・クエン酸およびエチレングリコールの溶液を用いたPecchini法(例えば、Annual Review of Materials Research Vol. 36: 2006, 281-331を参照)
・水性または有機塩溶液(出発物質)の噴霧乾燥
・水性または有機塩溶液(出発物質)の噴霧熱分解
・硝酸塩溶液の蒸散および残留物の熱変換
【0020】
上述のプロセスを用いることにより、本発明の化合物または蛍光物質の任意の所望の外形、例えば球状粒子、薄片および構造化された材料およびセラミックスなどを作製することができる。これらの形状は、本発明において用語「成形体」に集約される。成形体は、好ましくは「蛍光物質体(phosphor body)」である。
【0021】
したがって、本発明はさらに、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物を含むナノ粒子、ならびに/あるいは活性化体としてのサマリウムを有する、または有しない本発明の化合物を含む粒子を担持する粗面を有する、本発明の化合物を含む成形体に関する。
【0022】
さらに好ましい態様において、成形体は、構造化(例えばピラミッド形の)表面をLEDチップの反対側に有する(WO 2008/058619,Merckを参照、それは、その全範囲において本出願の文脈に参照の様式により組み込まれる)。これによって、可能な限り多くの光が、蛍光物質から分離する(coupled out)ことを可能とする。
【0023】
成形体上の構造化された表面は、すでに構造化されている適当な材料でその後コーティングすることによって、または以降の段階において、(フォト)リソグラフィープロセス、エッチングプロセスによって、またはエネルギーもしくは材料ビームを用いた書き込みプロセスまたは機械力の作用によって作製される。
【0024】
さらに好ましい態様において、本発明の成形体は、LEDチップの反対側に、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはこれらの材料の組み合わせを含むナノ粒子、ならびに/あるいはドーパントサマリウムを有するかまたは有しない式Iで表される蛍光物質組成を有する粒子を担持する粗面を有する。ここで粗面は、数100nmまでの粗さを有する。被覆された表面は、全反射を低減するかまたは防止することができ、光が本発明の蛍光物質から分離することができるという利点を有する(WO 2008/058619(Merck)を参照。それは、その全範囲において本出願の文脈に参照の様式により組み込まれる。)。
【0025】
本発明の成形体が、チップの外側を向く表面上に、一次放射線および/または蛍光物質体により発せられる放射線の分離を単純化させる整合された屈折率の層を有するのが、さらに好ましい。
【0026】
さらに好ましい態様において、成形体は、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物からなる、ならびに/あるいは活性化体サマリウムを含まない式Iで表される化合物からなる連続表面コーティングを有する。この表面コーティングは、コーティング材料の屈折率の適当な漸変より、屈折率を周囲環境に整合させることが可能となるという利点を有する。この場合において、蛍光物質の表面における光の散乱が低減され、より大きな割合の光が蛍光物質中に浸透し、そこで吸収および変換されることができる。さらに、整合された屈折率を有する表面コーティングにより、内部の全反射が低減されるため、より多くの光が蛍光物質から分離することが可能になる。
【0027】
さらに、蛍光物質をカプセル封入しなければならない場合には、連続層は有利である。これは、蛍光物質またはその一部の、隣接する環境において拡散する水または他の材料についての感度に対抗するために必要であり得る。閉じた殻を用いて封入するのは、チップにおいて生じる熱からの実際の蛍光物質の熱的分断のためである。この熱ため、蛍光物質の蛍光収率が低減し、また蛍光の色に影響し得る。最後に、このタイプのコーティングは、蛍光物質において生じる格子振動が環境中に伝播することを防止することによって蛍光物質の効率が上昇することを可能にする。
【0028】
さらに、成形体が、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物から、ならびに/あるいはドーパントサマリウムを有するかまたは有しない式Iで表される化合物からなる多孔性表面コーティングを有するのが、好ましい。これらの多孔性コーティングは、単一の層の屈折率をさらに低減させる可能性を提供する。このタイプの多孔性コーティングを、WO 03/027015に記載されている3種の慣用の方法によって製造することができ、それは、その全範囲で本願の文脈に参照の様式によって組み込まれる:ガラス(例えばソーダ石灰ガラス(US 4019884を参照))のエッチング、多孔質層の適用および多孔質層とエッチング操作との組み合わせ。
【0029】
さらに好ましい態様において、成形体は、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなる、周囲環境への化学的結合または物理的接合を促進する官能基を担持する表面を有する。これらの官能基は、例えば、オキソ基を介して結合し、エポキシドおよび/またはシリコーンに基づく結合剤の構成成分への結合を形成することができる、エステルまたは他の誘導体であることができる。この種の表面は、蛍光物質の結合剤中への均一な取り込みが促進されるという利点を有する。さらに、蛍光物質/結合剤系の流動学的特性およびまたポットライフを、そのようにしてある程度調整することができる。混合物の処理は、このように単純化される。周囲環境への物理的接合なる用語は、本文脈に関連して、電荷ゆらぎまたは部分電荷を介して系間で静電相互作用が作用する場合に用いられる。
【0030】
LEDチップに適用される本発明の蛍光物質層が、好ましくはシリコーンおよび均一な蛍光物質粒子の混合物からなり、かつ、シリコーンが表面張力を有するため、この蛍光物質層は、顕微鏡レベルでは均一ではなく、または層の厚さは、完全に一定ではない。
【0031】
さらに好ましい態様としての薄片形態の蛍光物質の製造を、対応する金属塩および/または希土類塩から慣用のプロセスにより行う。製造プロセスは、EP 763573およびWO 2008/058620に詳細に記載されており、それらは、参照の様式によりその全範囲で本願の文脈に組み込まれる。これらの薄片形態の蛍光物質は、例えば極めて大きいアスペクト比、原子的に平滑な表面および調整可能な厚さを有する例えば、雲母、SiO、Al、ZrO、ガラスまたはTiO薄片を含む、天然のまたは合成的に製造した高度に安定な担体または支持体を、蛍光物質層で、水分散体または懸濁液中の沈殿反応によって被覆することによって、製造することができる。
【0032】
雲母、ZrO、SiO、Al、ガラスもしくはTiOまたはそれらの混合物に加えて、薄片はまた、蛍光物質材料自体からなるか、または1種の材料から構築されてもよい。薄片自体が単に、蛍光物質コーティングのための担体としての役割を果たす場合には、後者は、LEDの一次放射線に対して透明であるか、または一次放射線を吸収し、このエネルギーを蛍光物質層に輸送する材料からならなければならない。薄片形態の蛍光物質を、樹脂(例えばシリコーンまたはエポキシ樹脂)中に分散させ、この分散体を、LEDチップに適用する。
【0033】
薄片形態の蛍光物質を、工業的大規模において、50nm〜約20μm、好ましくは150nm〜5μmの厚さで製造することができる。ここでの直径は、50nm〜20μmである。これらは一般的に、1:1〜400:1、特に3:1〜100:1のアスペクト比(粒子の厚さに対する直径の比)を有する。薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。薄片はまた、特にそれらが特に小さい寸法を有する場合には、変換層内の散乱の中心として適する。
【0034】
LEDチップに面する本発明の薄片形態の蛍光物質の表面に、LEDチップによって発せられた一次放射線に関する反射防止作用を有するコーティングを設けることができる。この結果、一次放射線の後方散乱が低減され、後者が本発明の蛍光物質体中へより良好に結合することができる。
【0035】
この目的に適するのは、例えば、以下の厚さd:d=[LEDチップの一次放射線の波長/(4×蛍光物質セラミックスの屈折率)]を有しなければならない、屈折率を整合させたコーティングである。例えばGerthsen, Physik [Physics], Springer Verlag, 第18版、1995を参照。これらのコーティングはまた、フォトニック結晶からなっていてもよく、それはまた、特定の機能を達成するために薄片形態の蛍光物質の表面を構造化することを含む。
【0036】
セラミックス体の形態の本発明の成形体は、WO 2008/017353(Merck)(その全範囲で本願の文脈に参照の様式により組み込まれる)に記載されるプロセスと同様に製造される。このプロセスにおいて、蛍光物質は、対応する出発物質およびドーパントを混合することによって製造され、その後アイソスタティックプレス(isostatic pressing)に供され、均一で、薄く、非孔質の薄片の形態で直接チップの表面に、またはチップからある距離にて(遠隔蛍光概念(remote phosphor concept))適用される。それぞれの配置は、とりわけLEDデバイスの構造に依存し、ここで当業者は、有利な配置を選択することができる。
【0037】
したがって、蛍光物質の励起および発光の位置依存の変化はなく、これは、提供されたLEDが一定の色の均一な光円錐を発して、高い光出力を有することを意味する。セラミックス蛍光物質体を、工業的大規模で、例えば数100nm〜約500μmの厚さの薄片として製造することができる。薄片の大きさ(長さ×幅)は、配置に依存する。チップに直接適用する場合、薄片の寸法は、適当なチップ配置(例えばフリップチップ配置)のチップ表面の約10%〜30%の特定の余分な寸法を有するチップの大きさ(約100μm*100μm〜数mm)に従って、または相応に選択すべきである。蛍光物質薄片を完成したLED上に設置する場合には、発せられた光円錐のすべては、薄片を通過する。
【0038】
セラミックス蛍光物質体の側面を、軽金属または貴金属、好ましくはアルミニウムまたは銀で被覆することができる。金属被覆は、光が蛍光物質体から横方向に出ないという効果を有する。横方向に出る光は、LEDから分離する光流を低減させることができる。セラミックス蛍光物質体の金属被覆を、棒または薄片を得るアイソスタティックプレス後のプロセス段階で行ない、ここで、棒または薄片を、任意に金属被覆の前に必要な大きさに切断することができる。このために、側面を、例えば硝酸銀およびグルコースを含む溶液で湿潤させ、その後高温のアンモニア雰囲気に曝露する。このプロセスにおいて、例えば、銀被覆が側面に形成する。
【0039】
代替的には、無電解金属化処理が適当である。例えば、Hollemann-Wiberg, Lehrbuch der Anorganischen Chemie [Textbook of Inorganic Chemistry], Walter de Gruyter VerlagまたはUllmanns Enzyklopaedie der chemischen Technologie [Ullmann's Encyclopaedia of Chemical Technology]を参照。
セラミックス蛍光物質体を、必要に応じて、LEDチップのベースボードに、水ガラス溶液を用いて固定することができる。
【0040】
さらなる態様において、セラミックス蛍光物質体は、LEDチップの反対側に構造化された(例えばピラミッド形の)表面を有する。これによって、可能な限り多くの光が蛍光物質体から分離するのが可能になる。蛍光物質体上の構造化された表面は、構造化された圧力板を有する圧縮型を用いてアイソスタティック圧縮を行い、したがって構造を表面中にエンボス加工することにより作成される。構造化された表面は、最も薄い可能な蛍光物質体または薄片を製造することが目的である場合に所望される。プレス条件は、当業者に知られている(J. Kriegsmann, Technische keramische Werkstoffe [Industrial Ceramic Materials], 第4章、Deutscher Wirtschaftsdienst, 1998を参照)。用いるプレス温度がプレスされるべき物質の融点の2/3〜5/6であるのが、重要である。
【0041】
本発明はさらに、以下のプロセス段階:
a)ランタン、マグネシウム、アルミニウム、サマリウム、ガドリニウム、ホウ素、イットリウム、ルテチウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発材料を混合することによる、サマリウム−ドープ化合物の製造、
b)任意に、少なくとも1種のさらなる有機および/または無機物質の添加、
c)蛍光物質の熱的後処理、および粗面を有する成形体の形成、
d)表面の、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物を含むナノ粒子での、あるいは本発明の化合物を含むナノ粒子での被覆
を有する、成形体、好ましくは蛍光物質体の製造のための方法に関する。
【0042】
さらに、本発明の蛍光物質は、約350nm〜530nm、好ましくは430nm〜約500nmに及ぶ広範囲にわたり励起することができる。したがって、これらの蛍光物質は、UVまたは青色発光一次光源、例えばLED、または慣用の放電ランプ(例えばHgをベースとする)などによる励起に適するのみならず、451nmにおける青色In3+線を利用するものなどの光源にも適する。
【0043】
本発明はさらに、少なくとも1つの一次光源を有する照明ユニットであって、発光極大が、250nm〜530nm、好ましくは350nm〜約500nmである、前記照明ユニットに関する。440〜480nmの範囲が特に好ましく、ここで一次放射線が、本発明の化合物または蛍光物質によって、より長い波長の放射線に部分的に、または完全に変換される。この照明ユニットは、好ましくは白色光を発するものであるか、または特定のカラーポイントを有する光を発する(カラーオンデマンド原理)。
【0044】
本発明の照明ユニットの好ましい態様において、光源は、特に式InGaAlN、式中0≦i、0≦j、0≦k、およびi+j+k=1である、で表される発光性窒化インジウムアルミニウムガリウムである。
この種の光源の可能な形態は、当業者に知られている。それらは、種々の構造の発光LEDチップであり得る。
【0045】
本発明の照明ユニットの他の好ましい態様において、光源は、ZnO、TCO(透明な導電性酸化物)、ZnSeもしくはSiCに基づく発光配置、またはまた有機発光層(OLED)をベースとする配置である。
本発明の照明ユニットのさらに好ましい態様において、光源は、エレクトロルミネセンスおよび/またはフォトルミネセンスを呈するソースである。光源はさらにまた、プラズマ源または放電源であり得る。
【0046】
本発明の蛍光物質は、用途に応じて、樹脂(例えばエポキシもしくはシリコーン樹脂)中に分散するか、または適当な大きさの比率の場合には、一次光源上に直接配置されるか、あるいはそこから離れて配置されることができる(後者の配置はまた、「遠隔蛍光技術」を含む)。遠隔蛍光技術の利点は、当業者に知られており、例えば以下の刊行物により公開されている:Japanese Journ. of Appl. Phys. Vol. 44, No. 21 (2005). L649-L651。
【0047】
さらなる態様において、蛍光物質と一次光源との間の照明ユニットの光結合を、光伝導配置によって達成するのが好ましい。それゆえ、一次光源が、中央の位置に設置され、光伝導性デバイス、例えば光ファイバーなどによって蛍光物質に光学的に結合することが可能である。このようにして、単に、光スクリーンを形成するように配置され得る1種または種々の蛍光物質と、一次光源に結合する光学導波路とからなる照明の要望に適合した照明を実現することができる。このようにして、強力な一次光源を、電気的設置に好ましい位置に位置させ、光学導波路に結合した蛍光物質を含む照明を、さらなる電気的配線なしで、しかし代わりに単に光学導波路を取り付けることによって、任意の所望の位置に設置することができる。
【0048】
本発明はさらに、本発明の成型体の蛍光物質体としての使用に関する。
本発明はさらに、本発明の化合物の、発光ダイオードからの近紫外線発光の部分的な、または完全な変換のための使用に関する。
さらにまた、本発明の化合物を、近紫外線発光を可視白色放射線に変換するために用いるのが好ましい。さらにまた、本発明の化合物を、一次放射線を特定のカラーポイントに「カラーオンデマンド」概念に従って変換するために用いるのが好ましい。
【0049】
本発明の式Iで表される化合物を、個別に、または当業者によく知られている以下の蛍光物質との混合物として用いることができる:
【化1】

【0050】
【化2】

【0051】
【化3】

【0052】
【化4】

【0053】
以下の例は、本発明を説明することを意図する。しかし、それらは決して、限定的であると考えるべきではない。組成物において用いられることができるすべての化合物または成分は、公知で商業的に入手できるか、または既知の方法によって合成することができる。例において示される温度は、常に℃である。さらに、詳細な説明およびまた例の両方において、組成物中の構成成分の添加量は常に、合計100%とすることは言うまでもない。示されるパーセンテージのデータは、常に一定の関連性で考慮されるべきである。しかし通常は、常に、示される部分量または総量の重量に言及する。
【0054】

例1:La0.99Sm0.01MgAl1119の燃焼法による製造
10.0gの上述の蛍光物質の製造のために、2.1106gのLaおよび0.0228gのSmを200mlの希硝酸(200mlの水中のconc.HNOの10mlから製造した)に溶解させ、および過剰の酸をその後蒸散により除去する。得られた残渣を500mlの蒸留水に溶解させ、3.3556gのMg(NO6HOおよび54.0036gのAl(NO9HOをその後添加し、引き続き80〜90℃に加熱する。次いで10.30gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(カチオンに対しモル比1:0.5で)を添加する。茶色の粉末混合物を得る。混合物をまず1000℃で2時間、その後再び1500℃で8時間加熱する。
【0055】
例2:La0.99Sm0.01SrAlOの固体拡散法による製造
4gの上述の蛍光物質の製造のために、1.5314gのLa、0.0166gのSm、2.803gのSrCOおよび0.4841gのナノ−Alを乳鉢中で細かくし、50mlのアセトンを添加する。混合物をその後1400℃で4時間加熱する。
【0056】
例3:Gd0.99Sm0.01SrAlOの固体拡散法による製造
4gの上述した蛍光物質の製造のために、1.6335gのGd、0.0159gのSm、2.6878gのSrCOおよび0.4641gのナノ−Alを乳鉢中で細かくし、50mlのアセトンを添加する。混合物をその後1400℃で4時間加熱する。
【0057】
例4:La0.99Sm0.01MgB10の固体拡散法による製造
4gの上述の蛍光物質の製造のために、1.7095gのLa、0.0185gのSm、0.8937gのMgCOおよび3.4409gのHBO(5重量%過剰)を乳鉢中で細かくし、50mlのアセトンを添加する。混合物をその後1020℃で8時間加熱する。
【0058】
例5:Gd0.99Sm0.01MgB10の固体拡散法による製造
4gの上述した蛍光物質の製造のために、1.8146gのGd、0.0176gのSm、0.8527gのMgCOおよび3.2829gのHBO(5重量%過剰)を乳鉢中で細かくし、50mlのアセトンを添加する。混合物をその後1020℃で8時間加熱する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
(Ln1−a−bGdSmMgSr(Al1−c)zO(3/2w+x+y+3/2z) (I)
式中、
Ln=Y、Laおよび/またはLu
a、c=0.0〜1.0
0<b<0.2およびa+b≦1.0
w=1.0〜3.0
x、y=1.0〜2.0および
z>0.0〜12.0
で表される蛍光物質。
【請求項2】
以下の蛍光物質:
LaMgAl1119:Sm (II)
LaSrAlO:Sm (III)
GdSrAlO:Sm (IV)
LaMgB10:Sm (V)
GdMgB10:Sm (VI)
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の蛍光物質。
【請求項3】
以下のプロセス段階:
a)ランタン、マグネシウム、アルミニウム、サマリウム、ガドリニウム、ホウ素、イットリウムまたはルテチウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発材料を混合することによるサマリウム−ドープ化合物の製造、
b)任意に、少なくとも1種のさらなる有機および/または無機物質の添加、
c)蛍光物質の熱的後処理、
を有する、請求項1または2に記載の蛍光物質の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の蛍光物質を含む成形体であって、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物を含むナノ粒子、ならびに/あるいは請求項1または2に記載の蛍光物質を含む粒子を担持する粗面を有することを特徴とする、前記成形体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の蛍光物質を含む成形体であって、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物、ならびに/あるいは活性化体サマリウム有しない請求項1または2に記載の蛍光物質からなる連続表面コーティングを有することを特徴とする、前記成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含む成形体であって、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物、ならびに/あるいは活性化体サマリウムを有するまたは有しない請求項1または2に記載の蛍光物質からなる多孔性の表面コーティングを有することを特徴とする、前記成形体。
【請求項7】
請求項1または2に記載の蛍光物質を含む成形体であって、表面が、周囲環境への化学的結合または物理的接合を促進する官能基を担持し、好ましくはエポキシまたはシリコーン樹脂からなることを特徴とする、前記成形体。
【請求項8】
以下のプロセス段階:
a)ランタン、マグネシウム、アルミニウム、サマリウム、ガドリニウム、ホウ素、イットリウムまたはルテチウム含有材料から選択される少なくとも4種の出発材料を混合することによる、サマリウム−ドープ化合物の製造、
b)任意に、少なくとも1種のさらなる有機および/または無機物質の添加、
c)蛍光物質の熱的後処理、および粗面を有する成形体の形成、
d)表面の、SiO、TiO、Al、ZnO、ZrOおよび/またはYまたはそれらの混合酸化物を含むナノ粒子で、あるいは活性化体サマリウムを有するまたは有しない請求項1または2に記載の蛍光物質を含むナノ粒子での被覆
を有する、請求項4〜7のいずれか一項に記載の成形体の製造のための方法。
【請求項9】
発光極大が250nm〜530nmの、好ましくは350nm〜500nmの範囲内にある少なくとも1つの一次光源を有し、ここでこの放射線が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物および/または蛍光物質体によって、より長い波長の放射線に部分的にまたは完全に変換される、照明ユニット。
【請求項10】
光源が、発光性窒化インジウムアルミニウムガリウムであり、特に式InGaAlN、式中、0≦i、0≦j、0≦k、およびI+j+k=1、で表されることを特徴とする、請求項9に記載の照明ユニット。
【請求項11】
光源が、ZnO、TCO(透明な導電性酸化物)、ZnSeまたはSiCに基づく発光性化合物であることを特徴とする、請求項9に記載の照明ユニット。
【請求項12】
光源が有機発光層をベースとする材料であることを特徴とする、請求項9に記載の照明ユニット。
【請求項13】
光源がプラズマまたは放電ランプであることを特徴とする、請求項9に記載の照明ユニット。
【請求項14】
蛍光物質が一次光源上に直接、および/またはそこから離れて配置されることを特徴とする、請求項9〜13のいずれか一項に記載の照明ユニット。
【請求項15】
蛍光物質と一次光源との間の光結合が、光伝導配置によって達成されることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の照明ユニット。
【請求項16】
請求項1または2に記載の少なくとも1種の蛍光物質の、発光ダイオードからの近紫外線発光を部分的に、または完全に変換するための変換蛍光物質としての使用。
【請求項17】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の成形体の、蛍光物質体としての使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2013−508481(P2013−508481A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534560(P2012−534560)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005669
【国際公開番号】WO2011/047757
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】