説明

Srcキナーゼ阻害薬による溶骨性病変の阻害

本発明は、骨吸収性疾患、または、骨粗鬆症、関節炎、関節リウマチ、骨への癌転移、骨癌、高カルシウム血症、整形外科インプラントによる溶骨性病変、パジェット病および副甲状腺機能亢進症に伴う骨量減少を一般に含むがそれらには限定されない病的状態と関係する骨吸収を治療するための方法および組成物を含む。代表的な癌には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、頭頸部癌および子宮頸癌が非限定的に含まれる。関節炎性の病状には、アジュバント誘発性、コラーゲン誘発性、細菌誘発性および抗原誘発性の関節炎、特に関節リウマチが非限定的に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.発明の分野
本発明は一般に、細胞生物学、細胞生理学、医学および腫瘍学の分野に関する。より詳細には、これは、破骨細胞形成、特に癌誘発性骨破壊と関係する破骨細胞形成の調節を、それを必要とする対象において行うための方法に関する。なお、本出願は、2005年6月17日に提出された米国仮特許出願第60/691,933号に対する優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
II.関連技術の説明
乳癌は米国において最も頻度が高い女性の癌であり、女性における癌死の原因としては第2位である。乳癌の女性は骨転移のリスクが高い。乳癌の患者の5〜10%は、骨に対する転移性病変を初発症状として呈する。転移性乳癌による溶骨性骨疾患を有する患者は、病的骨折、骨痛、髄圧迫(cord compression)および高カルシウム血症のリスクが高い。骨転移を治療するための現在の標準的医療はビスフォスフォネート療法であり、これは骨事象を遅らせるが、それらを完全に予防することはない。加えて、すべての患者がこの治療に反応するわけでもない。より有効な治療が望まれる一方で、この疾患のさらなる生物学的および分子的な精査が必要である。NF-κB受容体活性化因子(RANK)およびそのリガンド(RANKL、これはTRANCE/ODF/OPGLとしても知られる)は、破骨細胞形成の必須メディエーターであり、関節リウマチ、骨粗鬆症、骨巨細胞腫、パジェット病、転移性の乳癌および前立腺癌、多発性骨髄腫および家族性広汎性骨溶解症を(familial expansile osteolysis)含む、さまざまな疾患への関与が示されている。オステオプロテジェリン(OPG、これはOCIF/TR1としても知られる)は、RANKLがその細胞表面受容体RANKと結合するのを阻害する、可溶性のデコイ受容体である。
【0003】
RANKL、RANKおよびOPGのノックアウトマウスモデルにより、破骨細胞形成(すなわち、骨リモデリング)におけるこれらの分子の必須な役割が実証されている。これらの分子の生物学的な重要性は、OPGの標的指向的破壊による重症骨粗鬆症の誘導、およびRANKLの標的指向的破壊またはOPGの過剰発現による大理石骨病の誘導によって強く示されている。このため、破骨細胞の形成は骨髄の微小環境におけるRANKLとOPGとの相対比に起因する可能性があり、このバランスの変更は多くの代謝性骨障害における骨量減少の主な原因である可能性がある。RANKL-/-マウスと同様に、RANKの標的指向的破壊も大理石骨病の表現型をもたらす。RANK-/-およびRANKL-/-マウスはいずれも破骨細胞の欠如を呈し、このことはこれらの分子が破骨細胞形成のために必須な必要条件であることを示している。さらに、RANKおよびRANKLは、リンパ節器官形成ならびに初期のB細胞およびT細胞の発生のために必要である。その上、TRAF6、c-Src、c-Fos、またはNF-κBサブユニットp50/p52を欠失したマウスも大理石骨病の表現型を呈し;これらの変異体マウスは破骨細胞を有するが、これらの細胞は骨吸収に関して欠陥があるように思われる。このように、RANKLおよびRANKならびにそれらの細胞質シグナル伝達分子は、正常な骨ホメオスタシスを調節する支配的な因子である。
【0004】
骨リモデリングにおけるRANK/RANKL/OPGの重要性と、癌によって誘発されるほとんどの骨破壊が破骨細胞活性の上昇に起因することとの関係により、骨疾患および癌におけるRANK/RANKL/OPGの主要な役割が示唆される。骨粗鬆症におけるRANK/RANKL/OPGの関与に加えて、最近の報告は、関節リウマチ、骨巨細胞腫、パジェット病および家族性広汎性骨溶解症(RANKのエクソン1における変異に起因する)を含む他の疾患においてもこれらの分子が役割を果たす可能性を示唆している。転移性の乳癌および前立腺癌は、骨に浸潤してその中で溶骨性病変を引き起こす転移として増殖する能力を有する。腫瘍が破骨細胞形成および骨破壊の増大を引き起こす転移性腫瘍マウスモデルにおいて、OPGの全身投与は、腫瘍により媒介される骨破壊および骨癌に伴う疼痛を軽減する。このため、RANKシグナル伝達機構に対するターゲティングを、癌および代謝性骨障害に伴う望ましくない骨破壊を阻害するための治療戦略として用いうる可能性がある。転移性癌に伴う望ましくない骨破壊、または骨量減少を伴うもしくはそれと関係のある病状を予防するための、さらなる戦略が求められている。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明に従って、以下が提供される:
下記式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩

式中、nは1から3の整数であり;XはN、CHであり、ただしXがNである場合はnは2または3であり;Rは炭素原子1〜3個のアルキルであり;R(1)は2,4-diCl、5-OMe;2,4-diCl;3,4,5-tri-OMe;2-Cl、5-OMe;2-Me、5-OMe;2,4-di-Me;2,4-diMe-5-OMe、2,4-diCl、5-OEtであり;R(2)は炭素原子1〜2個のアルキルである;
下記式IIの化合物およびその薬学的に許容される塩

式中、nは2または3であり;Rは炭素原子1〜3個のアルキルであり;R(2)は炭素原子1〜2個のアルキルである;
下記式IIIの化合物およびその薬学的に許容される塩

式中、nは2または3であり;R(1)は2,4-diCl、5-OMe;2,4-diCl;3,4,5-tri-OMe;2-Cl、5-OMe;2-Me、5-OMe;2,4-di-Me;2,4-diMe-5-OMe、2,4-diCl、5-OEtであり;R(2)は炭素原子1〜2個のアルキルである;
下記式IVの化合物

式中、nは2または3であり;Rは炭素原子1〜3個のアルキルであり;R(1)は2,4-diCl、5-OMe;2,4-diCl;3,4,5-tri-OMe;2-Cl、5-OMe;2-Me、5-OMe;2,4-di-Me;2,4-diMe-5-OMe、2,4-diCl、5-OEtである。
【0006】
本発明の化合物は、骨吸収、病的骨吸収、破骨細胞活性、破骨細胞形成、溶骨性病変、または骨量減少もしくは骨破壊を伴う他の病的状態を治療、予防または抑制するために用いることができる。ある特定の態様において、化合物は薬学的組成物の一部として用いられる。
【0007】
本発明の具体的な化合物には、以下が含まれる:化合物1:4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-6-メトキシ-7-(3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ)-3-キノリンカルボニトリル;化合物2:4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-7-(3-(4-エチル-1-ピペラジニル)プロポキシ)-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;化合物3:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物4:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[2-(4-エチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;化合物5:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物6:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物7:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物8:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[(1-エチルピペリジン-4-イル)メトキシ-6-メトキシキノリン-3-カルボニトリル;化合物9:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物10:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物11:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-エチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物12:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物13:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物14:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物15:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-プロピル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物16:4-[(2,4-ジクロロフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物17:6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-4-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物18:4-[(2-クロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物19:6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2-メチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物20:4-[(2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物21:6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物22:4-[(2,4-ジクロロ-5-エトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;およびこれらの薬学的に許容される塩。ある特定の態様において、好ましい化合物は、化合物1:4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-6-メトキシ-7-(3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ)-3-キノリンカルボニトリルである。
【0008】
本明細書に記載した任意の方法または組成物は、本明細書に記載した他の任意の方法または組成物に対して組み込むことができるものを意図している。
【0009】
添付の特許請求の範囲および/または明細書において、「含む(comprising)」という用語とともに用いられる場合の、「1つの(a)」または「1つの(an)」という語の使用は、「1つ(one)」を意味しうるが、これはまた、「1つまたはそれ以上の」「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」という意味とも矛盾しない。
【0010】
添付の特許請求の範囲における「または(or)」という用語の使用は、選択肢の択一のみを指すこと、または選択肢が互いに排他的であることが明示的に示されている場合を除き、「および/または」を意味して用いられるが、本開示は、選択肢のみおよび「および/または」を指すという定義を支持する。
【0011】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この詳細な説明から当業者には本発明の趣旨および範囲の範疇にあるさまざまな変更および修正が明らかになると考えられるため、詳細な説明および具体例は、本発明の特定の態様を示してはいるが、例として提示されているのに過ぎないことが理解されるべきである。
【0012】
例示的な態様の説明
生きている骨組織は、カルシウムミネラルの再吸収および沈着のプロセスによって連続的に補充される。吸収-再吸収サイクルとして説明されるこのプロセスは、骨芽細胞および破骨細胞という2種類の細胞によって推進される。破骨細胞は多核細胞であり、骨を分解(または再吸収)する能力を有することが知られている、体内の唯一の細胞である。ある種の病的状態では吸収-再吸収サイクルに欠陥があり、その結果として骨の分解が起こる。骨の分解は典型的には、病的骨折、骨痛、脊髄圧迫および高カルシウム血症のリスク増大をもたらす。
【0013】
本発明の諸態様は、溶骨性病変、骨吸収性疾患、または、骨粗鬆症、関節炎、関節リウマチ、骨への癌転移、骨癌、高カルシウム血症、整形外科インプラントに伴う溶骨性病変、パジェット病、および副甲状腺機能亢進症に伴う骨量減少を一般に含むがそれらには限定されない病的状態と関係する骨吸収を治療するための方法および組成物を含む。代表的な癌には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、頭頸部癌および子宮頸癌が非限定的に含まれる。関節炎性の病状には、アジュバント誘発性、コラーゲン誘発性、細菌誘発性および抗原誘発性の関節炎、特に関節リウマチが非限定的に含まれる。溶骨性病変には、以下のものが非限定的に含まれる:エナメル上皮腫、動脈瘤様骨嚢腫(病変)、高グレード血管肉腫、低グレード血管肉腫、ゴーシェ病の骨病変、副甲状腺機能亢進症の褐色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、軟骨肉腫、脊索腫、淡明細胞型軟骨肉腫(clear cell chondrosarcoma)、通常型の髄内骨肉腫、変形性関節症、類腱線維腫、悪性線維性組織球腫を伴う骨幹部骨髄腔狭窄症、内軟骨腫、好酸球性肉芽腫、類上皮血管内皮腫、骨ユーイング肉腫、骨外性骨肉腫(extraosseous osteosarcoma)、線維肉腫、線維性骨異形成、開花性反応性骨膜炎(florid reactive periostitis)、巨細胞腫、グロムス腫瘍、骨における顆粒球性肉腫、ハードカースル症候群、血管腫、血管外皮細胞腫、高グレード表面骨肉腫、骨ホジキンリンパ腫、皮質内骨肉腫、骨内高分化型骨肉腫、傍骨性軟骨腫、白血病、悪性線維性組織球腫、メロレオストーシス、転移性乳癌、転移性腎臓癌、転移性肺癌、転移性前立腺癌、多病巣性骨肉腫、多発性骨髄腫、骨化性筋炎、骨の神経線維腫、非ホジキンリンパ腫、非骨化性線維腫(線維性皮質欠損症)、ノラ病変(nora's lesion)、骨芽細胞腫、骨軟骨腫、骨軟骨腫症(hmoce)、骨線維性異形成、類骨骨腫、骨腫、骨髄炎、線状骨障害、骨斑紋症、骨肉腫、パジェット病、傍骨性骨肉腫、骨膜性軟骨腫、骨膜性骨肉腫、色素性絨毛結節性滑膜炎、パジェット後肉腫(post-paget's sarcoma)、骨の神経鞘腫、小細胞骨肉腫、孤立性骨嚢胞、孤立性線維性腫瘍、孤立性骨髄腫(形質細胞腫)、軟骨下嚢胞、滑膜軟骨腫症、血管拡張性骨肉腫、「タグ(Tug)」病変‐骨幹端性線維性欠損、または単房性骨嚢胞。
【0014】
I.Src関連キナーゼ阻害薬
本発明にしたがって、下記構造式Iの化合物および/またはその薬学的に許容される塩が提供される:

式中、nは1から3の整数であり;XはN、CHであり、ただしXがNである場合はnは2または3であり;Rは炭素原子1〜3個のアルキルであり;R(1)は2,4-diCl、5-OMe;2,4-diCl;3,4,5-tri-OMe;2-Cl、5-OMe;2-Me、5-OMe;2,4-di-Me;2,4-diMe-5-OMe、2,4-diCl、5-OEtであり;R(2)は炭素原子1〜2個のアルキルである。
【0015】
本発明の具体的な化合物には、以下が含まれる:化合物1:4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-6-メトキシ-7-(3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ)-3-キノリンカルボニトリル;化合物2:4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-7-(3-(4-エチル-1-ピペラジニル)プロポキシ)-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;化合物3:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物4:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[2-(4-エチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;化合物5:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物6:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物7:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物8:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[(1-エチルピペリジン-4-イル)メトキシ-6-メトキシキノリン-3-カルボニトリル;化合物9:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物10:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物11:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-エチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物12:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物13:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物14:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物15:4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-プロピル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物16:4-[(2,4-ジクロロフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;化合物17:6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-4-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物18:4-[(2-クロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物19:6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2-メチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物20:4-[(2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物21:6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;化合物22:4-[(2,4-ジクロロ-5-エトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;およびこれらの薬学的に許容される塩。
【0016】
本発明の化合物は、破骨細胞形成または骨量減少を治療、改善、予防または阻害するために用いることができる。1つの好ましい態様において、化合物は薬学的組成物の一部として用いられる。1つの好ましい態様においては、化合物1:4-((2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ)-6-メトキシ-7-(3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ)-3-キノリンカルボニトリルが、破骨細胞形成または骨量減少を阻害するために用いられる。
【0017】
薬学的に許容される塩とは、以下のような有機酸および無機酸に由来するもののことである:酢酸、乳酸、カルボン酸、クエン酸、桂皮酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、シュウ酸、プロピオン酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、グリコール酸、ピルビン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸および同様に公知である許容される酸。
【0018】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換されたシクロアルキル基およびシクロアルキル置換されたアルキル基を含む、飽和脂肪族基の遊離基を指す。1つの好ましい態様において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格中に3個またはそれ未満の炭素原子を有する。
【0019】
化合物は、経口的;病変内;腹腔内;筋肉内または静脈内注射;注入;リポソームを介した送達;局所的;鼻腔内;肛門内;膣内;舌下;尿道内;経皮的;髄腔内;眼または耳への送達によって提供することができる。本発明の化合物の提供における一貫性を得るためには、本発明の化合物が単位用量の形態にあることが好ましい。適した単位用量形態には、錠剤、カプセル剤、および薬袋またはバイアル中にある粉剤が含まれる。このような単位用量形態は、すべての値およびその間の範囲を含む0.1、0.5、1、10、100、200〜300ngまたはmgの、ある特定の面においては2〜100ngまたはmgの本発明の化合物を含むことができる。もう1つの態様において、単位用量形態は、50〜150mgの本発明の化合物を含む。本発明の化合物は、経口的に、または他の周知の投与経路によって投与することができる。このような化合物は、1日に1、2、3、4、5〜6回、より通常は1日、1週間または1カ月、数週間、数カ月または数年にわたって1、2、3〜4回投与することができる。有効量は当業者によって決定可能であると考えられ;それはまた、化合物の形態にも依存すると考えられる。当業者は、化合物の生物活性をバイオアッセイで決定し、それによってどの用量を投与すべきかを決定するための経験的な活性試験、ならびに臨床試験データの外挿および分析をルーチン的に行いうると考えられる。
【0020】
本発明の化合物は、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、香味剤、色素添加物または担体などの従来の添加剤とともに製剤化することができる。担体は例えば、希釈剤、エアロゾル、局所用担体、水溶液、非水性溶液または固体担体であってよい。担体がポリマーであってもよい。本発明における担体には、リン酸緩衝食塩水、酢酸緩衝食塩水、水、水中油型エマルジョンまたはトリグリセリドエマルジョンなどのエマルジョン、さまざまな種類の湿潤剤、錠剤、被覆錠剤および/またはカプセル剤などの、標準的な薬学的に許容される担体の任意のものが含まれる。
【0021】
経口的または局所的に提供される場合、このような化合物は、種々の担体中にある状態での送達によって対象に提供されると考えられる。典型的には、このような担体は、デンプン、ミルク、糖、ある種の粘土、ゼラチン、ステアリン酸、タルク、植物性脂肪または油、ゴムまたはグリコールなどの添加剤を含む。具体的な担体は、所望の送達方法に基づいて選択する必要があると考えられ、例えば、静脈内または全身送達用にはリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いうると考えられ、局所送達用には植物性脂肪、クリーム、蝋膏、軟膏またはゲルを用いることができる。
【0022】
本発明の化合物は、溶骨性病変および/または骨量減少の治療または予防において有用な、適した希釈剤、保存料、溶解補助剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体とともに送達することができる。このような組成物は液体であるか、または凍結乾燥もしくは他の様式で乾燥された製剤であり、さまざまな緩衝性内容物(例えば、Tris-HCl、酢酸、リン酸)、pHおよびイオン強度を有する希釈剤、表面に対する吸収を防ぐためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加物、界面活性剤(例えば、TWEEN 20、TWEEN 80、PLURONIC F68、胆汁酸塩)、溶解補助剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム)、保存料(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量物質または張性調節剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコールなどのポリマーの共有結合、金属イオンとの錯体形成、またはヒドロゲルもしくはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層もしくは多層小胞、赤血球ゴーストまたはスフェロブラストなどの粒子状調製物の内部または表面への化合物の組み入れを含む。このような組成物は、化合物または組成物の物理的状態、溶解性、安定性、インビボ放出速度およびインビボ除去速度に影響を及ぼすと考えられる。組成物の選択は、特定の病状または疾病を治療、改善または予防することのできる化合物の物理的および化学的な性質に依存すると考えられる。
【0023】
本発明の化合物を、ある期間にわたる化合物の持続的放出を可能にするカプセルを介して、局所的に送達することもできる。制御放出または持続放出用の組成物には、親油性デポー剤(例えば、脂肪酸、蝋状物質、油)形態の製剤が含まれる。
【0024】
本発明はさらに、破骨細胞形成または骨量減少を治療、調節、改善、予防または阻害するための活性治療物質として用いるための、本発明の化合物を提供する。
【0025】
本発明はさらに、ヒトにおける骨量減少を治療する方法であって、溶骨性病変を有すると診断されたかそれを発症するリスクのある個体に対して、本発明の化合物または薬学的組成物の有効量を投与する段階を含む方法を提供する。患者に対して提供される用量は、何が投与されるか、投与の目的、投与の様式などによって変わると考えられる。「治療的有効量」とは、骨量減少の症状の治癒、軽減または改善のために十分な量のことである。
【0026】
本発明の化合物は、単独で、または何らかの関連疾病もしくは病態を治療するために用いられる他の化合物と組み合わせて用いられる。
【0027】
本発明の化合物は、以下のものから調製された:(a)市販の出発材料、(b)文献に記載された通りに調製しうる公知の出発材料、または(c)本明細書中に参照したスキームまたは実験手順に記載された新たな中間体。本発明に含まれる化合物は、米国特許第6,002,008号および第6,780,996号;ならびに米国特許出願20050101780A1に記載された合成経路に従って調製することができ、それらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
反応は、用いる試薬および材料にとって適切であって、行おうとする反応に適している溶媒の中で行われる。有機合成の当業者には、分子上に存在するさまざまな官能基は、提案される化学変換との整合性を有しなければならないことが理解されている。特定されていない場合、合成段階の順序、保護基および脱保護条件の選択は、当業者には容易に明らかであると考えられる。加えて、場合によっては、出発材料上にある置換基が、ある種の反応条件に対して不適合性であってもよい。所定の置換基に関係する制約は、当業者には明らかであると考えられる。反応は、適切な場合には、不活性雰囲気下で行われる。
【0029】
式Iの化合物の調製は文献中に報告されている(Boschelli et al., 2001a;Boschelli et al., 2001b;Boschelli et al., 2003;Boschelli et al., 2004およびYe et al., 2001。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。
【0030】
II.骨吸収-再吸収サイクル
生きている骨組織は、カルシウムミネラルの再吸収および沈着のプロセスによって連続的に補充される。吸収-再吸収サイクルとして説明されるこのプロセスは、骨芽細胞および破骨細胞という2種類の細胞によって推進される。破骨細胞は多核細胞であり、骨を分解(または再吸収)する能力を有することが知られている、体内の唯一の細胞である。この再吸収活性は、骨組織中の破骨細胞形成窩(再吸収窩)によって実現される。実際に、細胞培養物における破骨細胞活性は、骨またはマッコウクジラ象牙質などの硬組織の切片上にこれらの窩を形成する能力によって測定されている。破骨細胞は、形成される複数の血液要素と共通の造血前駆細胞に由来する(Takahashi et al., 1987)。破骨細胞の前駆細胞は、骨髄内に認められる単核細胞(単一の核を有する細胞)であり、これは複製および細胞融合による分化を経た後に成熟した独特の多核破骨細胞を形成する。成熟破骨細胞は、破骨細胞の細胞マーカーとしてしばしば用いられる酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)という酵素の存在により、他の多核細胞とは区別される。
【0031】
異常な破骨細胞の発達または機能と関連のある病的状態の中には、骨粗鬆症のように骨吸収の増加が脆弱なおよび/もしくは脆い骨構造の発生をもたらす状態、または大理石骨病のように骨吸収の増加が過剰な骨量の発生をもたらす状態がある。破骨細胞または骨芽細胞の過剰性または欠乏性の集団の発達は、それに対応する特定のサイトカインの不足または過剰に起因すると考えられている。
【0032】
公知のサイトカインの多くは血液細胞を刺激するか阻害する:M-CSF、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、インターロイキン-1(IL-1)および腫瘍壊死因子(TNF)などのいくつかの増殖調節性サイトカインは、髄の単核細胞の増殖を刺激することが示されている。インターロイキン-1、腫瘍壊死因子およびインターロイキン-6(IL-6)などのサイトカインは破骨細胞の形成および分化に影響を及ぼしうるが(Mundy, 1990)、これらの因子は特異的な破骨細胞増殖調節因子ではない。
【0033】
RANKL、RANKおよびオステオプロテジェリンデコイ受容体(OPG)のノックアウトマウスモデルにより、破骨細胞形成(すなわち、骨リモデリング)におけるこれらの分子の必須な役割が実証されている。これらの分子の生物学的な重要性は、OPGの標的指向的破壊による重症骨粗鬆症の誘導、およびRANKLの標的指向的破壊またはOPGの過剰発現による大理石骨病の誘導によって強く示されている(Bucay et al., 1998;Kong et al., 1999;Mizuno et al., 1998)。このため、破骨細胞の形成は骨髄の微小環境におけるRANKLとOPGとの相対比に起因する可能性があり、このバランスの変動は多くの代謝性骨障害における骨量減少の主な原因である可能性がある。RANKL-/-マウスと同様に、RANKの標的指向的破壊も大理石骨病の表現型をもたらす(Dougall et al., 1999;Li et al., 2000)。RANK-/-およびRANKL-/-マウスはいずれも破骨細胞の欠如を呈し、このことはこれらの分子が破骨細胞形成のために必須な必要条件であることを示している。さらに、RANKおよびRANKLは、リンパ節器官形成ならびに初期のB細胞およびT細胞の発生のために必要である(Dougall et al., 1999;Kong et al., 1999)。その上、TRAF6(Lomaga et al., 1999)、c-Src(Soriano et al., 1991)、c-Fos(Johnson et al., 1992)、またはNF-κBサブユニットp50/p52(Franzoso et al., 1997;Iotsova et al., 1997)を欠失したマウスも大理石骨病の表現型を呈し;これらの変異体マウスは破骨細胞を有するが、これらの細胞は骨吸収に関して欠陥があるように思われる。
【0034】
骨の完全性の維持には、骨形成と骨吸収との動的なバランスを必要とする。活性破骨細胞の正味のプールサイズは、破骨細胞前駆細胞の分化および融合の正味の効果、ならびに活性破骨細胞のアポトーシスの活性および速度によって決まる。骨芽細胞系譜細胞によって発現されるさまざまなサイトカイン(TNF、IL-1、IL-6、IL-11、TGFα)および分子(11α、25-ジヒドロキシビタミンD3および糖質コルチコイド)が破骨細胞分化に役割を果たすことが示されているものの、必須な要素は、RANKL(骨芽細胞により産生)およびRANK(破骨細胞および破骨細胞始原細胞上に発現)、ならびにその結果生じる細胞内シグナル伝達機構および経路であるように思われる。また、M-CSFも必要とされ、その機能は未だに解明されていないが、これはおそらく初期破骨細胞始原細胞の分化の開始および生存のためにのみ必要と思われる。
【0035】
ヒトの骨格は連続的にリモデリングを受けており、通常は約2年で入れ替わり、これはカルシウムホメオスタシスにおける骨格ミネラルの使用を可能にする。骨格の強度および形状は分節的置換によって保たれる:すなわち、骨のある区域が単球-マクロファージ前駆細胞によって形成された破骨細胞によって分解され(Scheven et al., 1986;およびFujikawa et al., 1996)、その一方で、ストロマ細胞に由来する骨芽細胞が新たな骨を合成する(Rickard, et al., 1996)。これらの関連のない細胞は連結的な様式で分化し、数週間のうちに新たな骨区域を生じさせる。
【0036】
多核巨細胞である破骨細胞は造血幹細胞から生じ、これは生理的および病的な骨吸収の原因となる主要細胞である。破骨細胞は骨の無機相および有機相の除去のために特化している(Blair et al., 1986)。骨微小環境におけるサイトカインおよび増殖因子のレベルの変化は、破骨細胞による異常な骨吸収の原因となる(総説については、Mundy, et al., 1997を参照)。すなわち、マウスにおけるIL-4(Lewis, et al., 1993)およびG-CSF(Takahashi, et al., 1996)の強制的発現は骨減少症を誘発するが、可溶性TNF-α受容体(Ammann, et al., 1997)を過剰発現するか、またはIL-6遺伝子(Poli, et al., 1994)に欠損のあるマウスは、エストロゲン欠乏によって引き起こされる骨量減少から防御される。
【0037】
ヒドロキシアパタイトミネラル相の溶解は、炭酸脱水酵素IIおよびプロトンポンプの作用を介した破骨細胞下の再吸収小腔の酸性化に依存する(Vaes, 1968;Baron et al., 1985;Blair et al., 1992)。
【0038】
破骨細胞による過剰な骨吸収は、関節炎、骨粗鬆症、歯周炎、および悪性腫瘍性高カルシウム血症を含む、多くのヒト疾患の病態の一因となる。再吸収の際に、破骨細胞は骨のミネラル成分および有機成分の両方を除去する(Blair et al., 1986)。社会的関心の高い現在の主な骨疾患には、骨粗鬆症、悪性腫瘍性高カルシウム血症、骨転移に起因する骨減少症、歯周病、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチにおける関節周囲びらん、パジェット病、不動誘発性骨減少症および糖質コルチコイド治療がある。これらの状態はすべて、骨吸収(破壊)と骨形成との間の不均衡に起因し、1年当たり平均で約14%という速度で生涯を通じて続く骨量減少を特徴とする。しかし、骨ターンオーバーの速度は部位ごとに異なり、例えば、椎骨の海綿骨および顎の歯槽骨における骨ターンオーバー速度の方が長骨の皮質における骨ターンオーバー速度よりも高い。骨量減少の可能性はターンオーバーと直接関係しており、骨折リスクの増大につながる状態の一つである閉経直後では、椎骨において1年当たり5%を上回る量に達する恐れがある。ターンオーバーは骨芽細胞活性の上昇もしくは低下、または破骨細胞活性の上昇もしくは低下によって影響されうる。対象における破骨細胞および/または骨芽細胞を調節するための組成物および方法は、骨量減少を伴う種々の疾患または病状の治療に有用であると考えられる。
【0039】
以上に列記したすべての病状が、破骨細胞形成または骨吸収を阻害または調節する薬剤による治療によって恩恵を受けると考えられる。骨吸収の阻害のための一つの機序は、破骨細胞前駆細胞の融合の阻害である。
【0040】
III.溶骨性病状を治療するための方法
本発明は、病的な骨吸収性の病気または病状を有する対象の治療を含む。「治療的恩恵」という用語は、溶骨性病状の治療、ならびに/または骨吸収、破骨細胞活性および/もしくは破骨細胞形成の調節を含む、個人の病状の医学的治療に関して、対象の健康状態を促進または向上させるあらゆるものを指す。
【0041】
A.医薬製剤および送達
本発明のある特定の態様においては、本発明の1つまたは複数の化合物の送達を含む方法が意図される。本発明の1つまたは複数の化合物によって予防、改善または治療される可能性のある疾患および病状の例には、肺癌、頭頸部癌、乳癌、膵癌、前立腺癌、腎臓癌、骨癌、精巣癌、子宮頸癌、胃腸癌、結腸癌、膀胱癌および他の癌の転移を含む、骨への癌転移に伴う骨量減少、ならびに溶骨性病変と関係するまたは関連のある他の疾患または病状が非限定的に含まれる。
【0042】
薬学的組成物の「有効量」とは、一般に、明記された所望の結果を検出可能性および反復性を伴って達成するのに、例えば、溶骨性の病状もしくは疾患またはその症状を改善、軽減、最小化する、またはその程度を抑えるのに十分な量と定義される。ある特定の局面においては、疾患の予防、排除、駆除または治癒を含む、より厳格な定義を適用することができる。
【0043】
ある特定の具体的な態様においては、本発明の方法および組成物を用いて、破骨細胞形成を阻害すること、または他の様式で骨の再吸収を反転、妨害もしくは低下させることが求められる。投与の経路は当然ながら病変の部位および性質によって変わると考えられ、これには例えば、皮内、皮下、局部的、非経口的、静脈内、筋肉内、鼻腔内、全身的および経口的な投与および製剤が含まれうる。
【0044】
適切な場合には、連続投与を適用することもできる。シリンジまたはカテーテルを介した送達が意図される。このような連続的灌流は、治療の開始後の約1〜2時間から、約2〜6時間まで、約6〜12時間まで、約12〜24時間まで、約1〜2日まで、約1〜2週まで、またはより長期の期間にわたって行われ得る。一般に、連続的灌流による治療用組成物の用量は、単回または多回注射によって与えられるものと同等と考えられ、灌流が行われる期間に対して調整される。
【0045】
治療は、さまざまな「単位用量」を含みうる。単位用量は、治療用組成物の所定量を含むものと定義される。投与される量ならびに具体的な経路および製剤は、臨床技術分野の当業者の技能の範囲内にある。単位用量を単回注射として投与する必要はなく、ある一定の期間にわたる連続注入を含んでもよい。本発明の単位用量は、製剤の体積当たりのmg数、または治療用組成物の重量(例えば、ミリグラムまたはmg)として記述することが好都合である。
【0046】
いくつかの態様において、本発明の1つまたは複数の組成物を含む組成物の送達のための方法は、全身投与による。しかし、本明細書に開示された薬学的組成物を、代替的には、非経口的、皮下、気管内、静脈内、皮内、筋肉内またはさらには腹腔内に投与することもできる。注射は、シリンジ、または溶液の注射のために用いられる任意の他の方法によるものでよい。
【0047】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの表面活性剤と適宜混合して、水中にて調製することができる。また、分散体を、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物の中、および油中にて調製することもできる。通常の貯蔵および使用の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存料を含む。注射用途のために適した剤形には、無菌の水溶液または分散体、および無菌の注射溶液または分散体の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(米国特許第5,466,468号、これはその全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる)。すべての場合において、その形態は無菌でなければならず、しかも容易に注入可能である程度まで流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、しかも細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0048】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および/または植物油を含む、溶媒または分散媒でありうる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散体の場合には必要な粒径の維持により、および表面活性剤の使用により、維持することができる。微生物作用の防止は、さまざまな抗菌薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって得ることができる。多くの場合には、等張化剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に用いることによって得ることができる。
【0049】
水溶液としての非経口的投与のためには、例えば、溶液を必要に応じて適切に緩衝化し、液体希釈剤を十分な食塩水またはグルコースによってまず等張化すべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内および腹腔内投与のために特に適している。これに関連して、使用可能な滅菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者には周知であると考えられる。例えば、1回分の投与量を1mlの等張NaCl溶液中に溶解し、これを1000mlの皮下注入液に添加するか、または提案された注入部位に注射する(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」 15th Edition, page 1035-1038および1570-1580を参照)。治療される対象の状態に応じて、投与量のある程度の変更を行うことが必要と考えられる。投与を担当する者は、いかなる場合にも、組成物中の有効成分の濃度および個々の対象に対する適切な投与量を決定することになると考えられる。さらに、ヒトへの投与の場合、製剤は、FDA Office of Biologics standardsが要求しているような無菌性、発熱性、全般的安全性および純度を満たすべきである。
【0050】
滅菌注射液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて、以上に挙げた種々の他の成分とともに適切な溶媒中に組み入れた後に、濾過滅菌を行うことによって調製される。一般に、滅菌した種々の有効成分を基本的な分散媒、および以上に挙げたものに由来する必要な他の成分を含む滅菌媒体中に組み入れることによって、分散体は調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、いくつかの調製方法は、あらかじめ滅菌濾過した液体から有効成分の粉末および任意の付加的な所望の成分が得られる、真空乾燥法および凍結乾燥法である。
【0051】
本明細書に開示される組成物は、中性または塩の形態で製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成されたもの)が含まれ、これらは塩酸もしくはリン酸などの無機酸、もしくは酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸などの有機酸との間で形成される。遊離カルボキシル基との間で形成される塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基;およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインなどの有機塩基から生じるものでもよい。製剤化されたところで、溶液は投与製剤に適合する様式で、治療的に有効な量として投与される。製剤は、注射液、薬物放出カプセルなどの種々の剤形として容易に投与される。
【0052】
本明細書で用いる場合、「担体」には、任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、希釈剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張化剤および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁剤、コロイドなどが含まれる。薬学的活性物質に対するこのような媒質および薬剤の使用は当技術分野で周知である。従来の媒質または薬剤が有効成分と適合しない場合を除き、治療的または薬学的な組成物におけるその使用が意図される。補足的な有効成分を組成物に組み入れることもできる。
【0053】
「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに対して投与された場合にアレルギー性または類似の不都合な反応を生じさせない、分子的実体および組成物を指す。有効成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は当技術分野で十分に理解されている。典型的には、そのような組成物は、溶液または懸濁液としての注射液として調製され;注射の前に溶液または懸濁液とするのに適した固体形態を調製することもできる。
【0054】
B.併用療法
ある特定の態様において、本発明の組成物および方法は、骨吸収、破骨細胞活性および/または破骨細胞形成を阻害または調節する化合物を含み、それを続いて、抗腫瘍療法などの他の治療の効果を高めるため、治療しようとする対象の生活の質を改善するために、他の薬剤または組成物と併用して用いることもできる。これらの組成物は、例えば癌細胞の死滅または増殖阻害、および破骨細胞形成、破骨細胞の活性または骨の吸収の阻害といった所望の効果を達成するために有効な併用量として提供されると考えられる。このプロセスは、細胞を、本発明の組成物、および第2の治療薬または多数の因子と同時に接触させる段階を含みうる。これは、細胞を、2つまたはそれ以上の薬剤を含む単一の組成物または医薬製剤と接触させることにより、または細胞を、少なくとも一方の組成物が本発明の組成物を含み、1つまたは複数の他方の化合物が少なくとも第2の治療薬を含むというような2つまたはそれ以上の別個の組成物または製剤と接触させることによって達成しうる。
【0055】
本発明の1つの態様においては、抗破骨細胞療法を、免疫療法介入とともに、アポトーシス誘発薬、抗血管新生薬、抗癌薬または細胞周期調節薬に加えて用いることが意図される。または、治療法を、数分間から数週間の範囲にわたる間隔をあけて、他の薬剤による治療の前または後に行うこともできる。1つまたは複数の第2の治療薬および抗破骨細胞療法を細胞、組織、臓器または対象に対して別個に適用する態様においては、一般に、第2の薬剤および本発明の組成物が対象に対して有利な併用効果を発揮し続けられるように、各々の送達時点の間に有効な期間が過ぎていないことが保証される。このような場合には、細胞を両方の治療手段と互いに約12〜24時間以内に接触させ、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に接触させることが意図される。しかし、状況によっては、各々の投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週)の間隔をおき、治療のための期間を大きく延長することが望ましいこともある。
【0056】
本発明の組成物を「A」とし、第2の治療法、例えば化学療法を「B」として、さまざまな組み合わせを用いることができる。

【0057】
患者に対する本発明の抗破骨細胞組成物の投与は、仮にあるならばその毒性を考慮に入れた上で、そのような組成物の投与のための一般的なプロトコールに従って行われると考えられる。治療サイクルを必要に応じて繰り返すことが予想される。また、さまざまな標準的療法ならびに外科的介入を、記載した治療法と組み合わせて適用することも意図される。
【0058】
具体的な態様においては、化学療法、放射線療法または免疫療法などの抗癌療法を、本明細書に記載した抗破骨細胞療法と組み合わせて用いることが意図される。
【0059】
1.化学療法
癌療法はまた、化学物質または放射線の両者に基づく治療法とのさまざまな併用療法も含みうる。併用化学療法には、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルピシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合薬、タキソール、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、トランスプラチナ(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前述の物の任意の類似体または誘導変異体が含まれる。
【0060】
2.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、幅広く用いられている他の因子には、γ線、X線、および/または腫瘍細胞に対する放射性同位体の直接送達として一般的に知られているものが含まれる。マイクロウェーブ、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号および米国特許第4,870,287号)およびUV照射といったその他の形態のDNA損傷性因子も意図される。これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の構築および維持に対して広範囲の損傷を引き起こす可能性が高い。X線に関する線量の範囲は、長期間(3〜4週間)の1日量50〜200レントゲンから、単回線量2000〜6000レントゲンまでの範囲にわたる。放射性同位体に関する線量の範囲は非常に幅広く、同位体の半減期、放出される放射線の強度および種類、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0061】
「接触される」および「曝露される」という用語は、本明細書では、細胞に対して適用される場合、治療用組成物および化学療法薬もしくは放射線療法薬が標的細胞、組織もしくは対象に対して送達される、または標的細胞に直接並列して配置される、そのプロセスを記載するために用いられる。
【0062】
3.免疫療法
癌治療の文脈において、免疫療法薬は一般に、癌細胞を標的として破壊する免疫エフェクター細胞および分子(例えば、モノクローナル抗体)の使用に依拠している。トラスツズマブ(Herceptin(商標))はそのような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面にある、ある種のマーカーに対して特異的な抗体であってよい。抗体単独でも治療法のエフェクターとしての役割を果たす場合があり、またはこれが他の細胞を動員して実際はそれらに細胞死滅を行わせる場合もある。また、抗体を薬物または毒素(化学療法薬、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)と結合させ、単にターゲティング薬剤として利用することもできる。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってもよい。種々のエフェクター細胞には細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。治療様式の組み合わせ、すなわち直接的な細胞傷害活性とErbB2の阻害または減少により、ErbB2を過剰発現する癌の治療における治療的恩恵が得られると考えられる。
【0063】
癌の受動免疫療法のためには数多くのさまざまなアプローチが存在する。それらは大きく以下に分類することができる:抗体のみの注射;毒素または化学療法薬と結合させた抗体の注射;放射性同位体と結合させた抗体の注射;抗イディオタイプ抗体の注射;および最後に、骨髄における腫瘍細胞のパージング。
【0064】
能動免疫療法では、抗原性のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、または自己もしくは同種の腫瘍細胞組成物もしくは「ワクチン」を、一般的には、異なる細菌アジュバントとともに投与する(Ravindranath and Morton, 1991;Morton et al., 1992;Mitchell et al., 1990;Mitchell et al., 1993)。黒色腫の免疫療法では、高度のIgM反応が誘発される患者の方が、多くの場合、IgM抗体が全くまたはわずかしか誘発されない者よりも生存率が高い(Morton et al., 1992)。IgM抗体は多くの場合一過性抗体であり、この原則に対する例外は抗ガングリオシド抗体または抗糖質抗体であるように思われる。
【0065】
養子免疫療法では、患者の流血中リンパ球または腫瘍内浸潤リンパ球をインビトロで単離し、IL-2などのリンホカインによって活性化するか腫瘍壊死のための遺伝子を形質導入した上で、再び投与する(Rosenberg et al., 1988;1989)。これを実現するためには、動物またはヒト患者に対して、免疫学的有効量の活性化リンパ球を、本明細書に記載されたようなアジュバントが組み込まれた抗原性ペプチド組成物と組み合わせて投与することが考えられる。活性化リンパ球は、以前に血液または腫瘍試料から単離されてインビトロで活性化(または「増殖」)した、患者自身の細胞であることが最も好ましい。この形態の免疫療法により、黒色腫および腎臓癌のいくつかの症例で退縮が生じているが、反応者のパーセンテージは反応しなかった者と比べて低い。
【0066】
4.外科手術
癌患者の約60%は何らかの種類の外科手術を受けると考えられ、これには予防的、診断的または病期判定用、治癒的および姑息的な外科手術が含まれる。治癒的外科手術には、癌組織の全体または一部が物理的に除去、摘出および/または破壊される切除術が含まれる。腫瘍切除術とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除術のほかに、外科手術による治療法には、レーザー外科手術、冷凍外科手術、電気外科手術および顕微鏡制御外科手術(モース外科手術)が含まれる。さらに、本発明を表在癌、前癌または偶発的な量の正常組織の除去と併用することも意図している。
【0067】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含められる。以下の実施例において開示される技術が、本発明の実施において十分に機能することが発明者らによって見出された技術を代表し、そのため、その実施のための好ましい様式を構成するとみなしうることが当業者には理解されるはずである。しかし、当業者は、本発明の開示に鑑みて、開示された特定の態様にさまざまな変化を加えることができ、それでもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を入手しうることも理解するはずである。
【0068】
実施例1
方法
動物および細胞株
雌性無胸腺NCrヌードマウスは、National Cancer Institute、Frederick Cancer Research Facility(Frederick, MD)の動物生産部門から入手した。Black 6マウス(C57BL/6J)は、Charles Rivers(Wilmington, MA)から入手した。マウスは層流キャビネット内にて病原体を含まない特定の条件下で飼育し、8週齡の時点で使用した。すべての設備が、United States Department of Agriculture, Department of Health and Human ServicesおよびNIHの現行の規制および基準に準拠して、American Association for Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)による承認を得ている。マウスにはPurina齧歯類用飼料および水を自由に摂取させた。乳癌細胞株MDA-MB-435細胞は、10%FBSおよび1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen, Carlsbad, CA)を加えたD-MEM(Invitrogen, Carlsbad, CA)中で維持した。マウスのマクロファージ細胞株RAW264.7は、10%FBS(Invitrogen, Carlsbad, CA)を加えたDMEM/F12(Invitrogen, Carlsbad, CA)中で維持した。すべての培地には、Fungizoneを1:100の希釈度(最終濃度:ペニシリンG、ストレプトマイシンが100単位/ml、アンホテリシンBが250ng/ml)で含めた。
【0069】
初代骨髄細胞の培養
脛骨および大腿骨からの初代骨髄細胞(BMM)を、8〜12週齡のBlack 6マウス(C57BU6J)から無菌的に摘出した。骨髄を不完全D-MEMで洗い流し、1200rpmで3分間遠心した上で、5mlの不完全D-MEM中に再懸濁させた。BMM細胞を20mlの赤血球溶解緩衝液(8.3g/l NH4Cl、1g/l炭酸水素ナトリウム、0.4g/l EDTA)中、室温で1〜2分間インキュベートした。10%FBSおよび100単位/mlのペニシリンを加えた25mlのD-MEM(完全D-MEM)を添加し、BMM細胞を1200rpmで3分間遠心した。続いてBMM細胞を10mlの完全D-MEMとともに1.5〜2×107個/10cm培養皿で播き、24時間培養した。非付着細胞を収集して1200rpmで5分間遠心し、細胞傷害アッセイのためには96ウェル培養皿に濃度2.5×104個/ウェルで播き、破骨細胞分化アッセイのためには48ウェルプレートに2×104個/ウェルで、または96ウェルプレートに5×103個/ウェルで播いた。細胞を10ng/ml M-CSFの存在下で3日間培養し、その後にそれらを洗浄し、以降の試験のために用いた。破骨細胞への分化のためには、30〜100ng/mlのRANKLを添加する。培地には2日後に新鮮なM-CSFおよびRANKLを補充した。
【0070】
細胞傷害アッセイ
BMM細胞に対するSKI606の細胞傷害アッセイを、96ウェル平底組織培養皿で行った。BMM細胞(2.5×104個)を播き、上記の通りに処理した。SKI606を培地中に希釈し、ウェルに対して二倍系列希釈を行った。細胞を72時間インキュベートし、残った付着細胞をクリスタルバイオレット(20%メタノール中、0.5%)で染色し、Sorenson緩衝液(0.1Mクエン酸ナトリウム、pH 4.2、50%エタノール中)中にて可溶化した。Bio-Tek Instruments Inc(Winooski, VT)EL800汎用マイクロプレートリーダーを用いて吸光度を630nmで測定した。
【0071】
インビトロでの破骨細胞分化
BMM細胞(2×104個)を上記の通りに48ウェルプレート中で培養した後に、100ng/ml RANKLおよび10ng/ml M-CSFで処理した。この細胞培養物に対して第3日に培地交換を行った。第5日に細胞を固定し、処理96時間後に、ウェル当たりのTRAP陽性の多核(核が3個を上回る)細胞の総数を、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)の白血球酸性ホスファターゼキットを用いて算定することにより、破骨細胞分化に関して評価した。
【0072】
骨吸収アッセイ
BMM細胞(5×103個)を上記の通りに96ウェルプレート中で培養した。手短に延べると、細胞をCambrex(Rockland, ME)のOsteoAssay(商標)プレートに播種し、300nM SKI606の存在下または非存在下において、まず100ng/ml RANKLおよび10ng/ml M-CSFで処理した。第3日に細胞培養物に対して新鮮な10ng/ml M-CSFを添加した。第5日に、上清の20μlのアリコートを用いてOsteoAssay(商標)プレートからの骨吸収を評価した。骨吸収は、OsteoAssay(商標)プレートからのコラーゲンI放出を、Nordic Bioscience Diagnostics(Portsmouth, VA)のCrossLaps for Culture ELISAキットを用いて測定することによって評価した。吸光度は、Bio-Tek Instruments Inc(Winooski, VT)のEL800汎用マイクロプレートリーダーを用いて、650nmでの読み取りを基準として450nmで測定した。
【0073】
時間依存性
BMM細胞(2×104個)を上記の通りに48ウェルプレート中で培養し、300nM SKI606の非存在下または存在下においてRANKL(100ng/ml)で処理したが、この際、SKI606はRANKL刺激と同時に添加して処理96時間後にTRAP染色するか、またはRANKL刺激の12、24もしくは48時間に添加して96時間の時点でTRAP染色を行うかのいずれかとした。続いて、上記の通りに各条件において細胞を固定し、TRAPに関して染色し、破骨細胞の数を算定した。
【0074】
RAW 264.7のMDA MB435細胞との共培養および馴化培地
共培養アッセイのためには、RAW264.7(500個/ウェル)を96ウェルプレートに播き、12時間おいて付着させた。続いてMDA-MB-435をRAW264.7培養物に対してさまざまな密度で導入し、12時間インキュベートした。続いて共培養物を、指定濃度のSKI606の存在下または非存在下で5日間インキュベートした。続いて、上記の通りに各条件において細胞を固定し、TRAPに関して染色し、破骨細胞の数を算定した。
【0075】
馴化培地に関しては、MDA-MB-435細胞を10cmプレート(1×106個/プレート)に播いて36時間インキュベートした。続いて培地を除去し、2500rpmで5分間遠心して上清を単離し、使用時まで4℃においた。RAW264.7細胞(750個/ウェル)を96ウェルプレートに播き、12時間おいて付着させた。MDA-MB-435細胞による馴化培地を添加し、指定濃度のSKI606の存在下または非存在下において5日間インキュベートした。続いて、上記の通りに各条件において細胞を固定し、TRAPに関して染色し、破骨細胞の数を算定した。
【0076】
骨内注射および骨組織試料の処理
MDA-MB-435細胞を0.025%トリプシン‐0.01%EDTA溶液を用いて収集して、PBSで洗浄し、マウスへの移植に備えてPBS中に再懸濁させた。動物個体にケタミン(100mg/kg)+アサプロマジン(2.5mg/kg)の筋肉内注射によって麻酔を施した。雌性無胸腺NCrヌードマウスに対して、5×105個のMDA-MB-435乳癌細胞を含む0.01mlのPBSを、28ゲージHamilton針を用いて各マウスの近位脛骨内に注射した。注射3日後にマウスを3つの群に分け、媒体(0.5%Methocel/0.4%Tween、PBS中)、150mg/kg SKI606を含む媒体の1日1回の経口胃管投与、または10μg/kg Zomeda(ゾレドロン酸)を含む0.1ml PBSの皮下注射による処置を開始した。処置は1日1回、1週当たり5日間として9週間行った。X線像を注射35日後およびさらに14日間隔で撮影した。9週後に、最後のX線像を撮影し、同じ動物個体の腫瘍を有する肢と腫瘍のない肢の重量の違いから腫瘍重量を算出した。腫瘍を注入した脛骨を固定してEDTA中で脱灰処理を行い、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)のTRAP染色キットを用いて切片を多核破骨細胞(核が3個を上回る)の存在に関して染色した。脛骨における腫瘍の発生率を、組織切片の検査によって決定した。腫瘍の重量は以下の通りに決定した:注射肢の重量−同じ動物個体の注射していない後肢の重量。溶解面積はデジタルX線像から推定した;脛骨面積および溶解面積を測定するため、および溶解区域のピクセル/脛骨領域のピクセルの比を算出するために、NIH Scionプログラムを用いた。
【0077】
結果
可能性のあるキナーゼ阻害薬を同定するために、化合物1、2、3、4および5を、RANKLにより誘導されるRAW264.7細胞の破骨細胞分化を阻害する能力に関して試験した。SKI606を選択した理由は、類縁化合物がSrcキナーゼおよびAblキナーゼの二重阻害薬であることが示されているためである(Boschelli et al., 2001b)。SKI606を同定して特性決定を行ったところ、この化合物が、酵素アッセイにおいてSrcをIC50 1.2nMで阻害し、同程度の濃度でSrc依存的プロテインチロシンリン酸化を阻害することが見出された。
【0078】
この化合物はBMM細胞に対して細胞傷害性ではなく、600nM SKI606の下で死滅したのは細胞の10%未満であり、このことは破骨細胞形成に対する阻害作用が前駆細胞に対するSKI606の細胞傷害活性によるものではないことを示している。この4-フェニルアミノ-3-キノリンカルボニトリルの構造は公知であり(図1A)、BMMにおけるRANKLを介した破骨細胞分化に対して用量依存的な様式で阻害作用を有する(図1B)。BMM細胞は、破骨細胞形成の開始後にSKI606が開始された場合にはそれに対する感受性は低いように思われる(図2Aおよび2B)。加えて、Cambrex(Rockland, ME)のOsteoAssay(商標)プレートを用いて、SKI606の存在下または非存在下においてBMM細胞をRANKLによって刺激することにより、SKI606が骨吸収を阻害する能力についても調べた。300nM SKI606の存在下でM-CSFおよびRANKLによって処理されたBMM培養物は、M-CSFおよびRANKLで処理されたものと比較して、骨吸収の指標であるコラーゲンI放出の3.7分の1への低下を呈した。
【0079】
乳癌細胞株;MDA-MB-435が、RAW264.7細胞における破骨細胞形成を誘導する能力も検討した。これは密度依存的であり、MDA-MB-435の最適な数は800個/ウェルであることが見出された(図3A)。この試験に関するRAW264.7細胞の最適な数も確かめられ、MDA-MB-435細胞との共培養に関しては500個/ウェルであった(非提示データ)。MDA-MB-435細胞による馴化培地も、RAW264.7細胞培養物における破骨細胞形成を支援することができ、最適な混合物はDMEM/F12中にMDA-MB-435細胞による馴化培地が10%というものであった(図3B)。このことは、RAW264.7細胞における破骨細胞形成を誘導するMDA-MB-435細胞の能力が、細胞間接触によるのではなく、放出される因子によることを示している。MDA-MB-435はまた、OPGなどの阻害性因子も放出することができ、馴化培地の濃度が高くなるに伴って形成される破骨細胞の数は減少する。
【0080】
そのほかの試験には、SKI606が乳癌により誘導される破骨細胞形成を阻害する能力の調査が含まれた。SKI606は、400nM SKI606という濃度で、RAW264.7細胞においてMDA-MB-435により誘導される破骨細胞形成を有意に阻害した(図4A)。SKI606はまた、MDA-MB-435細胞からの馴化培地によって誘導される破骨細胞形成も阻害することができた(図4B)。
【0081】
SKI606を、5×105個のMDA-MB-435細胞を含む0.01ml PBSを各マウスの近位脛骨内に28ゲージHamilton針を用いて注入した雌性無胸腺NCrヌードマウス(8週齡)を用いて、インビボモデルにおいて評価した。マウスを3つの処置群に分け、組織切片の検査および腫瘍の重量によって、脛骨における腫瘍の発生率を決定した。SKI606またはZomedaで処置したマウスにおける脛骨腫瘍の重量は、対照群の腫瘍よりも有意に小さかった(図5Aおよび表1)。溶解の面積は、SKI606またはZomedaで処置したマウスにおいて有意に小さかった(図5Bおよび表1)。さらに、SKI606処置マウスからの腫瘍の切片において算定されたTRAP陽性細胞も有意に少数であった(図5C)。デジタル画像の合成物は図6A〜6Cに示されている。
【0082】
(表1)MDA-MB-435骨腫瘍マウスモデルに対するSKI606の評価

【0083】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書中に記載したものを補足する例示的な手順上またはその他の詳細を提供する範囲において、参照により明確に本明細書に組み入れられる。
米国特許第4,870,287号
米国特許第5,466,468号
米国特許第5,760,395号
米国特許第6,780,996号
米国特許第6,002,008号
米国特許出願20050101780A1


【図面の簡単な説明】
【0084】
以下の図面は本明細書の一部をなしており、本発明のある特定の局面をさらに例証するために含められる。これらの図面の1つまたは複数を、本明細書中に提示された特定の態様の詳細な説明と併せて参照することにより、本発明はより良く理解されるであろう。
【図1】図1A〜1Cは、SKI606は破骨細胞形成の強力な阻害薬である。(図1A)4-フェニルアミノ-3-キノリンカルボニトリルSKI606の構造。(図1B)BMM細胞を48ウェルプレートに播き(2×104個/ウェル)、4組ずつ、指定濃度のSKI606とともに、M-CSF(10ng/ml)、またはM-CSFおよびRANKL(100ng/ml)で刺激した。第3日にM-CSFを補充した。第5日に細胞を固定し、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)のTRAP染色キットを用いてTRAPに関して染色した。(図1C)示されているデータは3回の実験の代表である。種々の処理による10倍対物レンズを用いた代表的な視野の写真が示されている。
【図2】図2A〜2Bは、BMM細胞はSKI606に時間依存的な様式で反応する。(図2A)BMM細胞を48ウェルプレートに播き(2×104個/ウェル)、4組ずつ、指定された時間にわたってM-CSF(10ng/ml)またはM-CSFおよびRANKL(300ng/ml)で前処理し、続いて300nMのSKI606で処理した。第3日にM-CSFを補充した。第5日に細胞を固定し、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)のTRAP染色キットを用いてTRAPに関して染色した。(図2B)示されているデータは3回の実験の代表である。種々の処理による10倍対物レンズを用いた代表的な視野の写真が示されている。
【図3】図3A〜3Bは、MDA-MB-435細胞は、RAW264.7細胞における破骨細胞形成を刺激する。(図3A)RAW264.7細胞(500個/ウェル;1つの処理当たり8ウェル)を、MDA-MD-435細胞とともに指定された密度で96ウェルプレートに播き、5日間インキュベートした。(図3B)馴化培地を上記の通りに調製した。RAW264.7細胞(750個/ウェル;1つの処理当たり8ウェル)を、指定された濃度のMDA-MB-435からの馴化培地とともに5日間インキュベートした。第5日に培養物を固定し、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)のTRAP染色キットを用いてTRAPに関して染色した。示されているデータは5回の実験の代表である。種々の処理による10倍対物レンズを用いた代表的な視野の写真が示されている。
【図4】図4A〜4Bは、SKI606はRAW264.7においてMDA-MB-435により刺激される破骨細胞形成を阻害する。(図4A)RAW264.7細胞(500個/ウェル;1つの処理当たり8ウェル)を、MDA-MD-435(800個/ウェル)細胞とともに指定された密度で96ウェルプレートに播き、種々の用量のSKI606の存在下で5日間インキュベートした。(図4B)RAW264.7細胞(750個/ウェル;1つの処理当たり8ウェル)を、MDA-MB-435からの10%馴化培地中にて96ウェルプレートに播いて5日間おいた。第5日に培養物を固定し、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)のTRAP染色キットを用いてTRAPに関して染色した。示されているデータは5回の実験の代表である。
【図5】図5A〜5Cは、SKI606は腫瘍増殖および溶骨性病変を有意に低下させる。マウスを3つの処置群に分けた。処置は5×105個のMDA-MB-435細胞の脛骨注射の3日後に開始し、媒体(0.5%Methocel/0.4%Tween、PBS中)、150mg/kg SKI606を含む媒体の経口胃管投与、または10mg/kg Zomeda(ゾレドロン酸)を含む0.1ml PBSの皮下注射を1週当たり5日間で9週間行った。(図5A)腫瘍の重量は以下の通りに決定した:注射肢の重量−同じ動物個体の注射していない後肢の重量。(図5B)溶解面積はデジタルX線像から推定した;脛骨面積および溶解面積を測定するため、および溶解区域のピクセル/脛骨領域のピクセルの比を算出するために、NIH Scionプログラムを用いた。(図5C)腫瘍を注入した脛骨を固定してEDTA中で脱灰処理を行い、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)のTRAP染色キットを用いて切片を多核破骨細胞(核が3個を上回る)の存在に関して染色した。
【図6】図6A〜6Cは、SKI606は腫瘍増殖および溶骨性病変を有意に減少させる。注射の35日後およびさらに14日間隔でX線像を撮影した。9週後に、媒体(0.5%Methocel/0.4%Tween、PBS中)の経口胃管投与による処置を行った対照群(図6A)、150mg/kg(図6B)またはZomeda(図6C)による処置を行ったマウスの最後のX線像を撮影した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨吸収を阻害する方法であって、下記式の化合物またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量を提供する段階を含む方法:
式I

式中、
nは1から3の整数であり;
XはN、CHであり、ただしXがNである場合はnは2または3であり;
Rは炭素原子1〜3個のアルキルであり;
R(1)は2,4-diCl、5-OMe;2,4-diCl;3,4,5-tri-OMe;2-Cl、5-OMe;2-Me、5-OMe;2,4-di-Me;2,4-diMe-5-OMe、2,4-diCl、5-OEtであり;
R(2)は炭素原子1〜2個のアルキルである。
【請求項2】
化合物が、下記式の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の方法:
式I

式中、
nは2から3の整数であり;
XはN、CHであり、ただしXがNである場合はnは2または3であり;
Rは炭素原子1〜3個のアルキルであり;
R(1)は2,4-diCl、5-OMe;2,4-diCl;3,4,5-tri-OMe;2-Cl、5-OMe;2-Me、5-OMe;2,4-di-Me;2,4-diMe-5-OMe、2,4-diCl、5-OEtであり;
R(2)は炭素原子1〜2個のアルキルである。
【請求項3】
化合物が、下記式の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の方法:
式I

式中、
XはN、CHであり;
nは3であり;
R(2)およびRはメチルである。
【請求項4】
R(2)がメチルである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
XがNである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
XがCHである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
化合物が、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
化合物が、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[3-(4-エチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[2-(4-エチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[(1-エチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-6-メトキシキノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-エチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-プロピル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-4-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2-クロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2-メチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;4-[(2,4-ジクロロ-5-エトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;またはこれらの薬学的に許容される塩である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
化合物がSrcキナーゼ阻害薬である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
骨量減少が、骨粗鬆症;骨巨細胞腫;多発性骨髄腫;家族性広汎性骨溶解症(familial expansile osteolysis);骨減少症;歯周病;副甲状腺機能亢進症;関節リウマチにおける関節周囲びらん;パジェット病;不動誘発性骨減少症;悪性腫瘍性高カルシウム血症;骨転移;エナメル上皮腫;動脈瘤様骨嚢胞(病変);血管肉腫(高グレード);血管肉腫(低グレード);ゴーシェ病の骨病変;副甲状腺機能亢進症の褐色腫;軟骨芽細胞腫;軟骨粘液線維腫;軟骨肉腫;脊索腫;淡明細胞型軟骨肉腫(clear cell chondrosarcoma);通常型の髄内骨肉腫;変形性関節症;類腱線維腫;悪性線維性組織球腫を伴う骨幹部骨髄腔狭窄症;内軟骨腫;好酸球性肉芽腫;類上皮血管内皮腫;骨ユーイング肉腫;骨外性骨肉腫(extraosseous osteosarcoma);線維肉腫;線維性骨異形成;開花性反応性骨膜炎(florid reactive periostitis);グロムス腫瘍;骨における顆粒球性肉腫;ハードカースル症候群;血管腫;血管外皮細胞腫;高グレード表面骨肉腫;骨ホジキンリンパ腫;皮質内骨肉腫;骨内高分化型骨肉腫;傍骨性軟骨腫;白血病;悪性線維性組織球腫;メロレオストーシス;転移性乳癌;転移性腎臓癌;転移性肺癌;転移性前立腺癌;多病巣性骨肉腫;骨化性筋炎;骨の神経線維腫;非ホジキンリンパ腫;非骨化性線維腫(線維性皮質欠損症);ノラ病変(Nora's lesion);骨芽細胞腫;骨軟骨腫;骨軟骨腫症;骨線維性異形成;類骨骨腫;骨腫;骨髄炎;線状骨障害;骨斑紋症;傍骨性骨肉腫;骨膜性軟骨腫;骨膜性骨肉腫;色素性絨毛結節性滑膜炎;パジェット後肉腫(post-paget's sarcoma);骨の神経鞘腫;小細胞骨肉腫;孤立性骨嚢胞;孤立性線維性腫瘍;孤立性骨髄腫(形質細胞腫);軟骨下嚢胞;滑膜軟骨腫症;血管拡張性骨肉腫;「タグ(Tug)」病変‐骨幹端性線維性欠損;または単房性骨嚢胞に伴う、請求項1記載の方法。
【請求項11】
骨転移が、肺癌、頭頸部癌、乳癌、膵癌、前立腺癌、腎臓癌、骨癌、精巣癌、子宮頸癌、胃腸癌、結腸癌、膀胱癌の転移である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
骨転移が乳癌または前立腺癌の転移である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
抗腫瘍療法を提供する段階をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
抗腫瘍療法が化学療法、放射線療法、免疫療法または外科手術である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
化合物が経口投与される、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2008−543870(P2008−543870A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517161(P2008−517161)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023529
【国際公開番号】WO2006/138590
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507410825)ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (4)
【Fターム(参考)】