Staphylococcus感染に対する多糖類ワクチン
本発明は、Staphylococcusの脱アセチル化ポリN−アセチル化グルコサミン(dPNAG)の組成物に関する。このdPNAGは、天然供給源から単離され得、または新規に合成され得る。本発明はまた、Staphylococcus aureus、S.epidermidis、関連する他のコアグラーゼ陰性Staphylococcusまたはコアグラーゼ陽性Staphylococcus、およびica(細胞内接着)遺伝子座を有する他の生物によって引き起こされる感染に対する能動免疫を誘導するワクチンとしての、dPNAGの使用に関する。本発明はさらに、dPNAGに指向される抗体について使用する方法、特に、同じレベルの感染に対する受動免疫を誘導するために使用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Staphylococcus感染の処置および予防のための免疫を誘導するために有用な多糖類組成物に関する。本発明はまた多糖類ベースの抗原、それに関連する抗体および診断キットを作製および使用する方法、ならびにこの多糖類とそれに対する抗体の能動免疫および受動免疫を誘導するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Staphylococcusは、通常ヒトの粘液膜および肌に生息しコロニーを作る、グラム陽性の細菌である。肌または粘膜液が、手術の間または他の外傷で損傷する場合、このStaphylococcusは、内部の組織へのアクセスを獲得し得、感染の発生を引き起こす。Staphylococcusが局所的に増殖しまたはリンパ系または血液系に侵入する場合、Staphylococcus菌血症に関する合併症のような重篤な感染合併症が生じ得る。これらの合併症としてさまざまな臓器における敗血症性ショック、心内膜炎、関節炎、骨髄炎、肺炎および膿瘍が挙げられる。
【0003】
Staphylococcusは、遊離したコアグラーゼを産生するコアグラーゼ陽性生物、および遊離したコアグラーゼを産生しないコアグラーゼ陰性生物の両方を含む。Staphylococcus aureusは最も一般的コアグラーゼ陽性形態である。S. aureusは、一般的に局所部位、管外または管内のいずれかにおいて感染を引き起し、最終的に菌血症を引き起こし得る。S.aureusはまた、急性骨髄炎の主な原因であり、Staphylococcus肺炎感染を引き起こす。さらに、S.aureusは、細菌性髄膜炎の症例の約1〜9%および脳膿腫の症例の10〜15%の原因である。
【0004】
少なくとも21種類のコアグラーゼ陰性のStaphylococcus種が公知であり、それにはS.epidermidis、S.saprophyticus、S.hominis、S.warneri、S.haemolyticus、S.saprophiticus、S.cohnii、S.xylosus、S.simulansおよびS.capitisが含まれる。S.epidermidisは静脈へのアクセスデバイスに関連する最も頻繁な感染原因因子であり、主要な院内の菌血症における最も頻繁な分離菌である。S.epidermidisはまた人工弁の心内膜炎にも関連する。
【0005】
Staphylococcusはまた、動物における一般的な細菌感染源である。例えば、Staphylococcus乳腺炎は、ウシ、ヒツジおよびヤギのような反芻動物における一般的問題である。この疾患は一般的に、抗生物質で処方されてこの感染が軽減されるが、この処置は費用のかかる手順でありかつ、今もなお乳製品の損失を引き起こす。現在までに同定されている最も有効なワクチンは、皮下に投与された無傷のS.aureusワクチンである。しかし、生ワクチンの投与は感染の危険が伴う。この理由より、多くの研究者は、S.aureus死菌ワクチンを産生し、および/またはS.aureusに対する免疫を誘導する夾膜の多糖類または細胞壁成分を単離することを試みてきた。しかし、これらの試みは成功していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明はコアグラーゼ陰性Staphylococcusおよびコアグラーゼ陽性Staphylococcusに対するヒトおよび動物の免疫に有用な方法および生産物に関する。この発明により、S.aureusおよびS.epidermisのようなStaphylococcusからのほとんどアセテート残基で置換されていない、表面多糖類そしてポリN−アセチルグルコサミン(PNAG)が、インビボで高い免疫原性を有し、オプソニン死滅および感染からの保護を仲介する抗体を優先的に誘発することが発見された。それゆえ、この多糖類は、とりわけ、Staphylococcusに対する抗体依存性免疫応答を含む、免疫応答の生成において有用である。
【0007】
一つの局面では、この発明は、少なくとも2つの単量体単位の長さを有するβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物を提供する。ここで、グルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換されている。一つの局面では、その組成物が滅菌されている(例えば、それはインビボ注射に適している)。別の局面では、本発明は、少なくとも2つの単量体単位の長さを有するβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物を提供する。ここで、グルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換されており、そしてその多糖類はキャリアー化合物と結合体化している。
【0008】
本明細書全体において、「本発明の多糖類」とは、アセテート置換が50%未満であるStaphylococcusポリN−アセチルグルコサミン(PNAG)表面多糖類をいう。この多糖類は本明細書において脱アセチル化PNAG(dPNAG)と称される。dPNAGは、完全にまたは部分的に脱アセチル化され得、ただしアセチル化の範囲は0から50%未満であることが理解される。本明細書において使用される場合、天然PNAGはさまざまな程度のアセチル化を有するPNAGの形態の混合物である。天然PNAGはdPNAGを含み得るが、しかし、高いアセチル化形態のPNAGを有する混合物として存在する。本明細書において使用される「高いアセチル化」形態のPNAGとは50%より多くのアセテート置換を有するPNAGである。
【0009】
いくつかの実施形態は、本発明の様々な局面に等しく適用される。これらの実施形態を以下に記載する。
【0010】
一つの実施形態では、この単離された多糖類は次に示す構造によって定義される:
【0011】
【化4】
【0012】
ここで、nは4より大きいまたは等しい整数であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択され、R基の50%未満は−NH−CO−CH3である。この多糖類がキャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合しているリンカーと結合体化している、本発明のいくつかの局面のnは2、3、4、またはそれより大きい。
【0013】
一つの実施形態では、この多糖類は、少なくとも800ダルトンの分子量を有し、他方、他の実施形態では、分子量は、少なくとも1000ダルトンである。なおさらなる実施形態では、分子量は、少なくとも1200ダルトン、少なくとも2000ダルトンより大きく、少なくとも2500ダルトン、少なくとも5000ダルトン、少なくとも7500ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも25,000ダルトン、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも75,000ダルトン、および少なくとも100,000ダルトンからなる群より選択される。なおさらなる実施形態では、分子量は、少なくとも125,000ダルトン、少なくとも150,000ダルトン、少なくとも200,000ダルトン、少なくとも250,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも350,000ダルトン、少なくとも400,000ダルトン、少なくとも450,000ダルトン、および少なくとも500,000ダルトンからなる群より選択される。
【0014】
この単離された多糖類は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5または少なくとも6の単量体単位の長さを有し得る。他の実施形態では、この多糖類の長さは、少なくとも6単量体単位、少なくとも10単量体単位、少なくとも20単量体単位、少なくとも50単量体単位、少なくとも100単量体単位、少なくとも200単量体単位、少なくとも300単量体単位、少なくとも400単量体単位および少なくとも500単量体単位からなる群より選択される。
【0015】
他の実施形態では、グルコサミンのアミノ基(またはR基)の、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下がアセテートに置換される。なおさらなる実施形態では、グルコサミンのアミノ基のいずれもがアセテートで置換されていない。このdPNAGはこれらのいずれかであり得る。
【0016】
それゆえに、この多糖類は、ヘテロ置換ポリマーであり得、ここで、このR基はアセテート置換基(例えば、−NH−CO−CH3)および非置換アミン基(例えば−NH2)の混合物であり、ただし、これらの基の50%はアセテートに置換される。このR基の全てがアミノ基である(いずれもがアセテート置換されていない)場合、この多糖類はまた、ホモ置換され得る。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、この単離された多糖類はキャリアー化合物と結合体化され得る。このキャリアー化合物はリンカーを通してこの多糖類と結合体化され得る。このキャリアー化合物はペプチドキャリアー化合物であり得るが、しかし、このキャリアー化合物はそれに限定されない。
【0018】
これらのおよび他の実施形態では、この単離された多糖類を含む組成物は、薬学的に受容可能なキャリアーをさらに含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、この組成物は、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋または少なくとも99%純粋である(すなわち、この組成物において存在するこの多糖類の、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%がdPNAGである)。なお他の実施形態では、この組成物は、リン酸塩またはテイコ酸を実質的に含まない。好ましくは、この組成物は、グルコサミンのアミノ(R)基において50%より多くのアセテート置換、75%より多くのアセテート置換、90%より多くのアセテート置換を有する多糖類を実質的に含まない。
【0020】
いくつかの実施形態では、この多糖類は次以下の構造からなる。
【0021】
【化5】
【0022】
ここで、X1、X2、X3,X4,X5およびX6の各々は、H,キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのいずれかであり;およびY1,Y2およびY3の各々は、OH、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのいずれかである。いくつかの実施形態では、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのうち一つのみが、この構造と結合体化される。他の実施形態では、X1,X2、X3,X4、X5またはX6の一つのみが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーと結合体化される。なおさらなる他の実施形態では、Y1,Y2またはY3の一つのみが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合するリンカーと結合体化される。なおさらなる他の実施形態では、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのうち一つのみが、このX1,X2、X3,X4、X5、X6、Y1,Y2またはY3の位置のうちの一つにおいて結合体化する。このキャリアー化合物は多糖類であり得る。他の実施形態では、このキャリアー分子は、他の多糖類、ペプチドなどのような一つ以上のキャリアー化合物に、必要に応じて、直接またはリンカーを介して置換された多糖類である。いくつかの実施形態では、このキャリアー多糖類は、N−アセチル−ベータ(β)1−6グルコサミンではない。Xがキャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合しているリンカーである、本発明のいくつかの局面では、nは、2、3、4またはそれより大きくあり得る。
【0023】
本発明は、本発明の多糖類のいずれかを含む、薬学的組成物を提供する。この組成物は、ワクチンとして使用され得る。これらの組成物は、抗原特異的免疫応答のような免疫応答を刺激する有効な量でこの多糖類を含む。このワクチン組成物が、薬学的に受容可能なキャリアーおよび/またはアジュバントをさらに含み得る。この薬学的組成物は、キャリアー化合物と、直接またはリンカーを介してのいずれかで、結合体化された多糖類を含み得る。
【0024】
本発明の他の局面は、本発明のこの多糖類を作製するための方法を提供する。これらの方法は以下に記載される。
【0025】
一つの局面では、本発明は以下に示す方法によって調製される、単離された多糖類を提供する:濃縮された細菌の細胞体調製物から多糖類粗調製物をエタノール沈澱する工程;この粗多糖類をリゾチームおよびリソスタフィンを用いて同時に消化し、次いで、ヌクレアーゼおよびプロテイナーゼKを連続して用いて消化して、消化された多糖類調製物を形成させる工程;この消化された多糖類調製物をサイズ分画する工程;アセチル化多糖類の画分を単離する工程;このアセチル化多糖類を脱アセチル化して、脱アセチル化多糖類(すなわち、50%未満のアセテート置換を有する多糖類)を産生する工程。
【0026】
別の局面では、本発明はまた、以下の方法によって調製される、多糖類を含む多糖類抗原を提供する:細菌培養物から純粋でない多糖類を調製する工程;この純粋でない多糖類を酸または塩基とともにインキュベートさせて、半純粋な多糖類を産生する工程;この調製物を中和する工程;この中和された調製物をフッ化水素酸中でインキュベートさせる工程。一つの実施形態では、この方法はさらに、この調製物からアセチル化多糖類を単離する工程、およびこのアセチル化多糖類を脱アセチル化して、脱アセチル化多糖類を産生する工程を含む。一つの実施形態では、このアセチル化多糖類は、50%未満である所望の程度にまで、化学的に脱アセチル化される。別の実施形態では、このアセチル化多糖類は、50%未満である所望の程度にまで、塩基性溶液とともにインキュベートされることにより、脱アセチル化される。なお別の実施形態では、このアセチル化多糖類は酵素学的に、脱アセチル化される。
【0027】
様々な実施形態は、上記の方法に適用される。これらのさらなる実施形態のいくつかは、以下に記載される。この細菌培養物は、コアグラーゼ陰性Staphylococcus培養物またはコアグラーゼ陽性Staphylococcus培養物であり得る。この細菌培養物は、Staphylococcus aureus培養物またはStaphylococcus epidermidis培養物であり得る。別の実施形態では、多糖類調製物は、カラムを用いてサイズ分画される。
【0028】
本発明の多糖類の調製物の例は、以下の通りである:細菌培養物は、強塩基および強酸とともにインキュベートされて、酸または塩基性溶液が作製される。次いでこの酸溶液および塩基性溶液は、pH2に中和されて、抗原粗懸濁液が生産される。この抗原粗懸濁液は、脱イオン化水のような溶液に対して透析され、そして不溶性粗抗原が収集される。この不溶性粗抗原は、凍結乾燥され得、次いで緩衝液中で再懸濁され得る。この緩衝液は50mM PBSおよび100mM Trisからなる群より選択され得、150mM NaClを伴う。上記強塩基または強酸は、1N NaOHまたは1M HClより強くあり得る。いくつかの実施形態では、この強塩基および強酸は、5N NaOHまたは5M HClである。別の実施形態では、細菌培養抽出物は、18〜24時間にわたり強塩基または強酸中で攪拌される。この強塩基または強酸の抽出はくりかえされ得る。この方法は、抗原調製物を処理して、アセテート置換の所望の程度に到達するまでアミノ結合化アセテート基を除去して、脱アセチル化PNAGを産生する工程をさらに含む。脱アセチル化は、化学的にまたは酵素学的のいずれかで行われ得る。例えば、この抗原調製物は、1.0N NaOH中で、2〜20時間にわたり37℃でインキュベートされ得る。このインキュベーションはまた、より長い時間またはより高い温度でより弱い塩基中で、またはより短い時間もしくはより低い温度でより強い塩基中で行われ得る。
【0029】
あるいは、上記の方法は、さらなる脱アセチル化の必要なしに、50%未満のアセテート置換を有する調製物から単離された画分を代わりに含み得る。
【0030】
なお別の局面では、本発明は、薬学的組成物を作製するための方法を提供する。一つの実施形態では、この多糖類は、薬学的に受容可能なキャリアーおよび/またはアジュバントと合わされる。別の実施形態では、この多糖類は、直接またはリンカーを介してのいずれかで、キャリアー化合物と結合体化され、次いで必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアーおよび/またはアジュバントと合わされる。
【0031】
本明細書に記載の脱アセチル化多糖類(すなわちdPNAG)は、のいずれもは本発明の薬学的または予防方法において使用され得る。
【0032】
別の局面では、本発明は、被験体、好ましくは非げっ歯類被験体における、Staphylococcus感染を予防するための方法を提供する。本発明は、本発明の任意の多糖類を、Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するための有効な量で、それを必要とする被験体を、投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、StaphylococcusはStaphylococcus aureusであり、および他の実施形態では、StaphylococcusはStaphylococcus epidermidisである。
【0033】
この被験体は、Staphylococcus感染され得る任意の被験体であり、および好ましくはげっ歯類ではない。いくつかの実施形態では、この被験体、ヒトの被験体であり、そして他の実施形態では、この被験体は、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌまたはネコである。
【0034】
いくつかの実施形態では、この被験体は、Staphylococcusにさらされる危険状態にあり、そして他の実施形態では、この被験体はStaphylococcusにさらされた被験体である。いくつかの実施形態では、この被験体は、60歳を超えるヒトである。この被験体は、健康な被験体であり得る。いくつかの実施形態では、この被験体は、医療デバイス移植物を受けていない。
【0035】
好ましくは、この多糖類は、本明細書において記載されているかまたは当該分野において公知であるように、ワクチンとして処方される。関連する実施形態では、この多糖類は、アジュバントとともに投与される。他の実施形態では、この多糖類は、被験体に全身投与される。この抗原は、キャリアー化合物と結合体化され得る。いくつかの実施形態では、このキャリアー化合物は、ペプチド化合物であるが、これに限定されない。
【0036】
別の局面では、本発明は、被験体におけるStaphylococcus感染に対する能動免疫を誘導するための方法を提供する。この方法は、Staphylococcus感染に対する能動免疫を誘導するための有効な量の、任意の上記の多糖類を含む組成物を、被験体に投与する段階を含む。一つの実施形態では、この方法は、Staphylococcus aureusによる感染に対する免疫を誘導するための方法である。別の実施形態では、この方法は、Staphylococcus epidermidisによる感染に対する免疫を誘導するための方法である。
【0037】
本発明の別の局面によって、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を産生するための方法は提供される。この方法は、Staphylococcusに対して特異的な抗体を産生するために有効な量の、アジュバントおよび本発明の任意の多糖類を、被験体に投与する工程、およびこの被験体から抗体を単離する工程を含む。本発明のこれらおよび他の局面では、この多糖類は抗原として使用される。一つの実施形態では、この被験体は、ヒトであり、他方、他の実施形態ではこの被験体は、ウサギ、マウスまたはラットのような非ヒト被験体である。この方法は、この抗体を精製する工程をさらに含み得る。
【0038】
別の局面では、本発明は、モノクローナル抗体を産生するための方法を提供する。この方法は、Staphylococcusに対して特異的な抗体を産生するのに有効な量の本発明の単離された多糖類およびアジュバントを被験体に投与する工程、この被験体から脾臓細胞を採取する工程、この被験体からの脾臓細胞と骨髄腫細胞とを融合する工程、ならびに融合サブクローンから抗体産生物を採取する工程を包含する。
【0039】
本発明のなお別の局面によって、本発明の多糖類に対して特異的なモノクローナル抗体を同定する方法が提供される。この方法は、非ヒト被験体における抗原に対する免疫応答を誘導する工程、この被験体から抗体産生細胞を単離する工程、抗体産生細胞から不死化細胞を産生する工程、および本発明の多糖類を用いて、この不死化細胞がこのモノクローナル抗体を産生する能力を試験する工程を含む。一つの実施形態では、この方法はまた、この不死化細胞の上清からモノクローナル抗体を単離する工程を含む。
【0040】
本発明は、本発明の単離された多糖類に選択的に結合する、単離された結合因子を含む組成物をさらに提供する。一つの実施形態では、この単離された結合因子はペプチドである。このペプチドは、抗体、またはそのフラグメントであり得る。この抗体は、ポリクローナル抗体であり得る。この抗体は、ヒトの抗体またはキメラ抗体であり得る。いくつかの重要な実施形態では、この抗体はヒトの抗体である。いくつかの実施形態では、この単離された結合因子は、dPNAGに特異的に結合する。他の実施形態では、この単離された結合因子は、dPNAGおよびdNAGの高いアセチル化形態の両方と結合する。
【0041】
いくつかの実施形態によって、この単離された結合因子は、検出可能標識と結合体化される。この検出可能標識は、放射性標識、酵素、ビオチン分子、アビジン分子または蛍光色素からなる群より選択され得る。この単離された結合因子は、抗生物質のような殺菌剤と結合体化され得る。
【0042】
本発明の別の局面によって、被験体においてStaphylococcus感染に対する能動免疫を誘導する方法が提供される。この感染は、Staphylococcus aureus感染またはStaphylococcus epidermis感染であり得るが、これに限定されない。この方法は、dPNAGと結合する上記の抗体のひとつの、Staphylococcusのオプソニン化を誘導するのに有効な量を、被験体に投与する工程を含む。
【0043】
Staphylococcus感染の予防を意図された上記の方法は、そのような感染の発生の危険状態にある被験体に対して行われ得る。これらの方法は、同様に、Staphylococcus感染を有する被験体の処置に適用され得る。本発明の予防および治療方法は、天然PNAGを発現する細菌種からの感染を有するか、または感染する危険状態にある被験体において使用され得る。
【0044】
さらなる局面では、本発明は、Staphylococcus感染を有する被験体を処置するための方法を提供する。その方法は、本発明の単離された多糖類と結合する、単離された結合因子を、Staphylococcus感染を阻害するのに有効な量で被験体に投与する工程を含む。重要な実施形態では、この結合因子は、PNAGの高いアセチル化形態およびdPNAGと結合する。
【0045】
一つの実施形態では、このStaphylococcus感染は、Staphylococcus epidermidis感染およびStaphylococcus aureus感染からなる群より選択される。別の実施形態では、この単離された結合因子は、抗生物質のような殺菌剤と結合体化される。
【0046】
本発明の別の局面では、多糖類が被験体においてStaphylococcus感染から保護する能力を評価するための方法を提供する。この方法は、この多糖類の有効な量を、被験体に投与する工程(ここで、この多糖類は、能動免疫を誘導する)、この被験体にStaphylococcusをさらす工程、およびこの被験体におけるStaphylococcusの存在について試験する工程を包含する。
【0047】
なお別の局面では、本発明は、サンプルにおけるdPNAGの存在を同定する方法を提供する。その方法は、サンプルを、dPNAGと結合する単離された結合因子と接触させる工程、および単離された結合因子のこのサンプルへの結合を検出する工程を含む。単離された結合因子のこのサンプルへの結合は、このサンプルにおけるdPNAGの存在を示す。この結合因子がまたPNAGにも結合する場合、この方法はまたこのサンプルにおけるPNAGの存在を検出するために使われ得る。一つの実施形態では、このサンプルは、被験体から得られる生物学的サンプルである。この生物学的サンプルは、尿、血、膿、皮膚、痰、関節液、リンパおよび乳汁からなる群より選択され得る。一つの実施形態では、この単離された結合因子は、本明細書に記載の検出可能標識のような検出可能標識と結合体化される。サンプルはまた、移植可能な医療デバイスまたは移植された医療デバイスのスワブから得られ得る。
【0048】
本発明の限定の各々は、本発明の様々な実施形態を包含し得る。それゆえ、任意の一つの要素、または要素の結合を含む、本発明の限定の各々は、本発明の各々の局面に含まれ得ることが予想される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(発明の詳細な説明)
本発明は、Staphylococcus細菌から得られる多糖類の抗体に関する。これらの抗体は、細菌感染に対する免疫を誘導するために、ならびに診断目的および治療目的のための抗体を産生するために有用である。
【0050】
本発明は、乏しくアセチル化されている(すなわち脱アセチル化された)ポリ−N−アセチルグルコサミン(PNAG)(本明細書ではdPNAGと称する)が、高度に免疫原性であり、従って、インビボで保護性免疫応答を刺激するための適切なワクチン候補に相当するという発見に部分的に基づく。脱アセチル化PNAGは、アミノ基の50%未満がアセテート置換されているPNAGである。いくつかの好ましい実施形態では、35%以下のアセテート置換が存在し、他方、他の実施形態では、15%以下のアセテート置換が存在する。本発明によって、dPNAGは、天然PNAGよりも、オプソニンの保護性抗体をより良好に惹起できることがさらに発見された。「天然」PNAGとは、0〜100%に及ぶアセチル化レベルの範囲内の、天然存在するPNAGの混合物が自然に生じることをいう。従ってPNAGは、本明細書に記載の脱アセチル化方法を用いて、天然PNAGから得られ得る。dPNAGに対して調製される抗体は、S.aureusおよびS.epidermidisのようなStaphylococcusに対して有効である。従って、本発明によって、アセチル化の程度が、インビボでの抗体投与において誘導される免疫応答のレベルに影響することが発見された。dPNAG投与の後に惹起される抗体は、dPNAGを認識し、および重要な実施形態ではまた、PNAGの高いアセチル化形態を認識する。
【0051】
本発明は、単離されたdPNAGの組成物、単離する方法、およびいくつかの例ではdPNAGを精製する方法、ならびに、インビボでの治療方法、予防方法および診断方法を含む、使用方法を提供する。本明細書で使用される場合、このdPNAGは、dPNAG抗原として称され得る。後者の用語は、交換可能であることを意図される。本発明はまた、ワクチンとして使用され得るdPNAGの薬学的組成物を提供する。
【0052】
いくつかの局面では、dPNAGは、次の構造を有する。
【0053】
【化6】
【0054】
ここで、nは2から300以上に及ぶ整数であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択される。ただし、R基の50%未満は−NH−CO−CH3である。dPNAGは、ベータ(β)1−6結合を有する(すなわちdPNAGは、ベータ(β)1−6結合によってともに結合されているグルコサミン単量体単位で構成される)。
【0055】
dPNAGは、全てのR基が置換されていない(すなわち、R=NH2)である場合、ホモポリマーであり得る。ホモポリマーは、グルコサミン残基のR基が同一である、dPNAGである。dPNAGはまた、R基の位置が、−NH2および−NH−CO−CH3基の混合物を有するヘテロポリマーであり得る。ただし、R基の50%未満がアセテートに置換される。この実施形態によると、R基の49%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満または1%未満がアセテートに置換され得る。
【0056】
dPNAGのサイズは大いに変動し、そして本明細書に記載のようにdPNAGがキャリアー化合物と結合体化されるかどうかに依存する。いくつかの局面では、dPNAG抗原は、少なくとも100,000ダルトンの分子量を有する。他の局面では、dPNAG抗原は、2000ダルトン未満の分子量を有する。PNAGの分子量は、少なくとも200ダルトン、または少なくとも400ダルトン、または少なくとも600ダルトン、または少なくとも800ダルトンであり得る。より低い分子量のdPNAGは、本発明によって、好ましくはキャリアー化合物と結合体化される場合に、使用され得る。これらのdPNAGは、2〜3単量体単位程度に小さくあり得るが、好ましくは少なくとも4〜6単量体単位の長さである。これらに対応する分子量は、約400、約600、約800、約1000および約1200ダルトンである。500から20,000,000ダルトンまでの間の多糖類は、典型的である。
【0057】
理解されるように、上記の構造におけるnの値は、この抗原の分子量に対して影響を与える。nが300以上の場合は、この構造における最小多糖類の分子量は60,918ダルトンである(300単位×203ダルトン/単位+末端残基における置換基についての18ダルトン)。この抗原が100,000ダルトンの最小分子量を有する場合、この多糖類は、300単位より多くを有するか、またはこの多糖類は、この分子量における違いを創出するキャリアー化合物と結合体化されるかのいずれかである。
【0058】
本発明は、dPNAG抗原の、天然に存在する形態および合成された形態の両方を提供する。本明細書に記載のように、この天然に存在するdPNAGは、天然に存在する供給源に存在する、または天然に存在する供給源から単離され得るか、もしくは天然に存在する供給源に由来し得るdPNAGである。dPNAG抗原はまた、単離された形態で提供される。dPNAGのような単離された多糖類は、通常存在する環境から取り出され、従って分離される。いくつかの例では、単離された多糖類は、構造的にまたは機能的に特徴付けられた他の化合物から充分に分離される。例えば、単離された多糖類は、その化学的組成を決定するために「配列決定され」得る。
【0059】
dPNAGは、このica遺伝子座を有する任意の細菌株から調製され得る。これらの株としては、S.epidermisおよびS.aureusが挙げられるが、これらに限定されず、このica遺伝子座においてこの遺伝子で形質転換されている他の株(例えばS.carnosus)も含む。特に、dPNAGは、S.epidermis RP62A(ATCC番号35984)、S.epidermis RP12(ATCC番号35983)、S.epidermis M187、S.carnosus TM300(pCN27)、S.aureus RN4220(pCN27)およびS.aureus MN8ムコイドを含む特定の株から調製され得る。
【0060】
一つの方法は、塩基または酸とともに純粋でないPNAGをインキュベートして、半純粋のPNAG調製物を生産する工程、この調製物を中和する工程、およびさらにこの中和された調製物をさらに処置してdPNAGを生産する工程を含む。
【0061】
純粋でない天然PNAGは、細胞および無細胞培養物上清を含む、細菌培養物からの天然PNAG粗調製物を抽出して、このPNAG粗調製物から高い分子量の天然PNAG豊富な材料を単離を生じさせる工程を包含する様々な方法によって調製され得、そしてメタノール、エタノール、アセトンまたはおよび水溶液から多糖類の沈澱を引き起こす能力を有すると当該者に知られている他の任意の有機溶媒のような溶媒を用いて、高い分子量のPNAG豊富な材料を含む純粋でないPNAGを最初に沈澱することによって得られ得る。この天然PNAG粗調製物を抽出する工程、および純粋でない天然PNAG抗原調製物を単離して、そして沈澱する工程は、米国特許第5,055,455号を含む方法のような、当該分野で知られている任意の方法によって行われる。この純粋でない材料は、精製され、そして脱アセチル化されて、そして本発明のdPNAGが生産される。
【0062】
この精製工程は、リゾチーム、リソスタフィンおよびプロテイナーゼKのような細胞壁破壊因子、ならびにDNAおよびRNAを消化するDNaseおよびRNaseのようなヌクレアーゼ酵素を含む、生物学的材料を消化し得る細菌性酵素とともに、純粋でないPNAGをインキュベートすることによって達成される。そのあとに、溶液からPNAGを沈澱させる溶媒を添加する工程、この沈澱を収集する工程およびNaOHのような塩基、またはHClのような酸中でPNAGを再溶解する工程、その次に中和する工程が続く。この中和は、このインキュベーションされる工程が酸で行われた場合は塩基を用いて、またはこのインキュベーションされる工程が塩基で行われた場合は酸を用いて、達成され得る。次いで、この中性材料からの不溶性画分は、例えば、フッ化水素酸中でインキュベーションされて、純粋な天然PNAG抗原を生産すること、またはpHが4.0より小さい緩衝液中で再溶解され、そのあと分子篩および/またはイオン交換クロマトグラフィーで処理されるような、処理をされる。
【0063】
別の単離方法は、強塩基または強酸とともにこの細菌をインキュベートさせることによって、細菌培養物からPNAG粗懸濁物を抽出する工程を含む。好ましくは、細菌は、少なくとも2時間、およびより好ましくは少なくとも5時間、10時間、15時間、18時間または24時間、強塩基または強酸中で攪拌される。この強塩基または強酸は、任意のタイプの強塩基または強酸であり得るが、好ましくは少なくとも1MNaOHまたはHClの強さを有する。いくつかの実施形態では、この強塩基または強酸は、5MNaOHまたは5MHClである。次いで、この酸溶液または塩基溶液は、遠心分離されて、細胞体が収集される。いくつかの実施形態では、この抽出手順は、数回繰り返される。生じた酸溶液または塩基溶液は、約pH7に中和され、次いで透析されて、不溶性の純粋でないPNAGが生産される。
【0064】
dPNAGは、50%よりも多くアセテート置換された天然に存在する多糖類から合成され得る。例えば、このdPNAG抗原は、化学手段(例えば、塩基処理)、または酵素手段によって、高度なアセチル化グルコサミンポリマーを脱アセチル化することにより合成され得る。
【0065】
dPNAG抗原はまた、デノボで合成され得る(例えば、Melean et al.Carbohydrate Research,337:1893−1916,2002を参照)。出発材料としては、ポリグルコース(すなわち、デキストラン)、キチンまたはキトサンのようなポリグルコサミン、およびポリグルコサミノウロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ポリグルコサミノウロン酸はまた、本発明のdPNAG抗原を生産するために使用され得る。様々な置換基を有するポリグルコサミンはまた、このPNAG抗原を生産するために改変され得る。例えば、多糖類細胞内付着因子(PIA)は、β−1−6結合型グルコサミン残基の高度なアセチル化ポリマーである。PIAは次の構造を有する。
【0066】
【化7】
【0067】
イミン部分(C−NH)を含むこれらの多糖類に対して、遊離アミノ基は、当業者に公知の通常の化学技術によって形成され得る。一つの適切な方法は、ホウ化水素ナトリウムの使用を含む。このイミン基はホウ化水素ナトリウムを用いて還元され得、遊離アミノ基が生成され得る。これは、2時間室温で攪拌しながら、5mg過剰ホウ化水素を、蒸留水に溶解させた多糖類に加えることによって行われる。次いで、この混合物は水に対して透析され、そして凍結乾燥される。(例えば、DiFabio,et al. Biochem J.,1987 15;244(1):27−33を参照)。
【0068】
本発明は、様々な純度のdPNAG調製物を提供する。本明細書に記載のように、「純粋なdPNAG調製物」は、単離されまたは合成されて、そして92%より多く不純物がないdPNAG調製物である。これらの不純物は、高度のアセテート置換PNAG形態(すなわち、50%より多いアセテート置換体)、ガラクトース、リン酸塩、テイコ酸などを含む。いくつかの実施形態では、dPNAG組成物は、少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%不純物がない、または100%不純物がない。
【0069】
dPNAG組成物はまた、不純物が「実質的にない」と称され得る。例えば、ガラスト−スが実質的にないdPNAG組成物は、dPNAGを含む調製物の中に、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満のガラストースの存在を指し示す。
【0070】
このdPNAG組成物の純度の程度は、当該分野で公知の任意の手段で評価され得る。例えば、この純度は、ガスクロマトグラフィーおよび核磁気共鳴のような化学的分析アッセイで評価して、この材料の構造的側面を確認し得る。
【0071】
いくつかのdPNAG調製物の別の主な不純物は、ホスフェートを含むテイコ酸であり得る。このテイコ酸不純物は、本発明のdPNAG抗原の、化学的特徴付けおよび免疫原性の両方を妨害し得る。本明細書に記載の本発明の方法は、テイコ酸が実質的にない単離されたdPNAG調製物を生産する能力を有する。テイコ酸が実質的にないdPNAG調製物とは、1.0%未満のホスフェート、より好ましくは0.1%未満のホスフェートを有するdPNAG調製物である。このサンプル中に存在するホスフェートの量は、当該分野で公知の任意の手段によって評価され得る。ホスフェート不純物の量は、Keleti,G.およびW.H.Lederer,((1974)Handbook of Micromethods for the Biological Sciences Van Nostrand Reinhold Co.,New York)に記載の方法を用いて評価され得、これは本明細書により、参考として援用される。手短に言えば、このアッセイは次のように行われる:100μgのサンプルに、43.5mlの水、6.5mlの70%過塩素酸(HClO4)および50mlの20N硫酸(H2SO4)をともに加えて作製された溶液を100μl加える。これは、その上部に大理石を有するチューブの中で、2時間95℃で加熱される。次いで、この混合物は、165℃にて乾燥機の中に置かれ、そしてさらに2時間加熱され、次いで室温まで冷却される。次に、下に記載の方法で作製された試薬5が1ml、このサンプルに加えられる:
試薬1:10mlの水に溶解させた酢酸ナトリウム.3H2O 1.36グラム
試薬2:20mlの水に溶解させたモリブデン酸アンモニウム500mg
試薬3:2mlの試薬1、2mlの試薬2および16mlの水
試薬4:使用直前に調製される、20mlの水に溶解させたアスコルビン酸2mg
試薬5:氷浴中で、試薬3を9mlおよび試薬4を1ml加える。
【0072】
試薬5を加えたあと、チューブは徹底的に混合され、そしてこの光学密度が分光光度計で820ナノメートルで読まれる。第一リン酸ナトリウム(チューブ1本につき0.1〜5μgの範囲)からなる検量線を用いて、この試験サンプル中に存在するホスフェートの量を計算する。(Lowry,O.H.,N.R.Roberts,K.Y.Leiner,M.L.Wu and A.L.Farr.,(1954),Biol.Chem.207,1.)。
【0073】
本発明の組成物は、感染のような病理学的状態のインビトロ、インサイチュおよびインビボでの診断を含む、様々な異なる適用に対して有用である。この組成物を用いて、インビボで被験体を免疫して、感染を予防または処置し得る。この組成物はまた、本発明のdPNAG組成物と同じ目的のために有用である、抗体および他の結合性ペプチドを発生させるために使用され得る。従って、本発明は、dPNAGまたは対応する結合因子(例えば、抗体)を含む薬学的組成物を包含する。この薬学的組成物は、それを必要とする被験体に能動免疫または受動免疫のいずれかを誘導させる、ワクチン接種目的のために使用され得る。本発明はまた、dPNAGと結合する抗体のような結合因子を生産するための方法を提供し、この結合因子はStaphylococcus感染および関連する状態の診断および処置において使用され得る。
【0074】
dPNAGは、結合体化された形態または結合体化されない形態で使用され得る。結合体化された形態では、dPNAGは直接またはリンカーを介してのいずれかでキャリアー化合物と結合体化され得る。この結合体化は、グルコサミン単量体単位またはポリマー末端において任意の位置で生じ得る。
【0075】
本明細書において使用される「キャリアー化合物」は、直接またはリンカーを介してのいずれかで多糖類と結合体化され得、および免疫学的に活性または不活性であり得る化合物である。
【0076】
キャリアー化合物としては、タンパク質またはペプチド、多糖類、核酸または他のポリマー、脂質および小分子が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、タンパク質としては、血清アルブミン、免疫グロブリン、アポリポタンパク質およびトランスフェリンのような血漿タンパク質;TRPLE、β−ガラクトシダーゼ、ヘルペスgDタンパク質、アレルゲン、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドのポリペプチド、サルモネラのフラゲリン、ヘモフィルスのピリン、ヘモフィスルスの15kDa膜タンパク質、ヘモフィスルスの28〜30kDa膜タンパク質、ヘモフィスルスの40kDa膜タンパク質、Escherichia coli、非耐熱性(heat−label)エンテロトキシンltb、コレラ毒素のような細菌性ポリペプチド、またはロタウイルスVPおよび呼吸器系合胞体ウイルスfタンパク質および呼吸器系合胞体ウイルスgタンパク質を含むウイルスタンパク質を含む。本発明において有用なタンパク質は、哺乳動物に対して投与するのに安全であり、および必要に応じて免疫学的に有用なキャリアータンパク質である任意のタンパク質を含む。
【0077】
免疫化に特に有用であるキャリアー化合物としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのチログロブリン、またはダイズトリプシンインヒビターのようなタンパク質が挙げられる。免疫される動物のその種において免疫原性である任意の他の化合物が、同様にして使用され得る。
【0078】
多糖類をタンパク質に結合体化させる多くの方法が、当該分野で公知である。一般的に、この多糖類は、活性化され得るか、さもなければ結合体化されやすくさせられるべきであり、すなわち、少なくとも一つの部分が、タンパク質または他分子と共有結合する能力を有するようになされなければならない。多くのそのような方法は、当該分野で公知である。例えば、Jenningsに対して発行された、米国特許第4,356,170号は、過ヨウ素酸を使用して多糖類のアルデヒド基を生成させ、次いでシアノホウ化水素を用いて還元的アミノ化が行われることを記載する。Tsay et al.に対して発行された、米国特許第4,663,160号もまた、過ヨウ素酸を使用してアルデヒド基を生成させるが、次いでシアノホウ化水素のような還元剤の存在下で、シフの塩基反応を用いて(縮合剤の存在下で調製される)4〜12炭素部分を用いて誘導されたタンパク質に、多糖類を結合させた。Gordonに対して発行された、米国特許第4,619,828号は、臭化シアンを用いて多糖類を活性化させ、次いで4〜8炭素原子のスペーサーブリッジを通して、活性化された多糖類とこのタンパク質を結合体化させた。AndersonおよびClementsに対して発行された、米国特許第4,808,700号では、多糖類は、過ヨウ素酸塩による限定的酸化的開裂、グリコシダーゼによる加水分解、または酸加水分解を用いて改変され、少なくとも一つの還元末端を生成させ、そしてシアノホウ化水素の存在下において還元性アミノ化を通してタンパク質と結合体化された。PorroおよびCostantinoに対して発行された、米国特許第4,711,779号は、シアノホウ化水素ナトリウムを用いて還元した末端基に、第一級アミノ基を導入することによって多糖類を活性化し、次にアジピン酸の存在下でエステルに転換し、そしてジメチルスルホキシドのような有機溶媒の存在下で、トキソイドと結合体化させることを記載した。結合体化の多くの他の方法は当該分野で公知である。
【0079】
キャリアー化合物は、リンカーまたはスペーサーを介してdPNAGと結合体化され得る。多糖類は、当該分野で公知の任意の手段によって、リンカーまたはスペーサーと結合され得る。その手段としては、例えば、この多糖類の遊離還元末端を使用して、スペーサーまたはリンカーとの共有結合を生成する方法である。共有結合は、dPNAGの遊離還元末端を遊離1−アミノグリコシド(1−aminoglycocide)に転換することによって生成され得る。次いでそれは、アシル化によりスペーサーと共有結合され得る。(Lundquist et al.,J.Carbohydrate Chem.,10:377(1991))。あるいは、dPNAGは、このスペーサー上での活性基としてN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステルを用いて、このスペーサーと共有結合され得る。(Kochetkow,Carbohydrate Research,146:C1(1986))。dPNAGの遊離還元末端はまた、ヨウ素および水酸化カリウムを用いてラクトンに転換され得る。(Isabell et al.,Methods of Carbohydrate Chemistry,Academic Press,New York(1962))。このラクトンは、このスペーサーまたはこのリンカー上にある第一級アミノ基を用いて、このスペーサーと共有結合され得る。dPNAGの遊離還元末端はまた、還元性アミノ化を用いて、このリンカーまたはこのスペーサーと共有結合され得る。
【0080】
本発明は、dPNAGと結合する抗体を含む。この抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかであり得る。このdPNAG抗体はdPNAGに結合し、そしてまた、50%より多くアセチル化されたPNAG形態と結合し得る。
【0081】
ポリクローナル抗体は、一般的に、抗体およびアジュバントの複数回の皮下注射または腹腔内注射によって動物の中に惹起させられる。dPNAGに対するポリクローナル抗体は、dPNAGの結合体化された形態または結合体化されない形態を、単独で、またはアジュバントとの組み合わせにより、注射することにより生成され得る。
【0082】
ポリクローナル抗体調製物の例を次に示す。dPNAGまたはdPNAG結合体は、フロイント完全アジュバントのようなアジュバントと結合体化され、(例えば、1〜3容積フロイント中に、ウサギまたはマウスに対して100μgの結合体)、そして複数箇所の皮内に注射される。約1ヶ月後、この動物は、複数箇所の皮下に注射されたアジュバント中の抗原または抗原結合体の、初回投与量の5分の1〜10分の1量を用いて追加免疫される。一週間〜二週間後、この動物から採血され、そしてその血清は抗体の存在についてアッセイされる。この動物は、抗体力価がプラトーに達するまで繰り返し追加免疫され得る。この動物には、dPNAG単独、dPNAG結合体、または異なるキャリアー化合物と結合体化されたdPNAGが、アジュバントとともにまたはアジュバントなしで注射され得る。いくつかの実施形態では、この追加免疫は、dPNAGではなくPNAGを含み得、またはこの追加免疫は、dPNAGおよびPNAGの混合物を含み得る。
【0083】
ポリクローナル抗体源を供給することに加えて、この免疫された動物は、抗dPNAGモノクローナル抗体を生成させるために使用され得る。本明細書において使用されるように、用語「モノクローナル抗体」とは、dPNAGの同じエピトープ(すなわち、抗原決定基)と結合する免疫グロブリンの均質の集団をいう。このエピトープはまた、50%より多くアセチル化されたPNAG形態の中にも存在し得る。モノクローナル抗体は、同じIg遺伝子再配列を有し、従って同一の結合特異性を示す。モノクローナル抗体は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、骨髄腫細胞と融合またはエプスタインバーウイルス形質転換により免疫された動物から単離された脾臓細胞を不死化すること、および所望の抗体を発現するクローンについてスクリーニングすることによって調製され得る。他の方法は、再配列されたIg遺伝子配列の単離および不死化細胞株中へのクローニングを含む。モノクローナル抗体を調製する方法および使用する方法は、当該分野において周知である。
【0084】
マウスの抗dPNAGモノクローナル抗体は、免疫抗原としてdPNAGを利用するこれらの任意の方法によって作製され得る。抗dPNAGモノクローナル抗体を生成するための方法の次に示す記載は、例示であり、および例示の目的のためのみに提供される。Balb/cマウスは、完全フロイントアジュバントの中の精製されたdPNAGの約75〜100μgを用いて、腹腔内免疫される。不完全フロイントアジュバント中の約25〜50μgの追加免疫注射は、初回注射後約15日および約35日に投与される。60〜65日目に、このマウスはアジュバントの非存在下で約25μgのdPNAGの追加免疫注射を受ける。あるいは、追加免疫注射は、天然PNAG調製物、またはdPNAGとPNAGとの混合物を含み得る。3日後、このマウスは殺され、そして、Oiに記載されているような手順により、ポリエチレングリコールを用いて、単離された脾臓細胞がマウスの骨髄腫NS−1細胞に融合される(Oi VT:Immunoglobulin−producing hybrid cell lines in Herzenberg LA(ed):Selected Methods in Cellular Biology,San Francisco,CA,Freeman,(1980))。ハイブリドーマ細胞は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT)を用いて選択され、そして培養中で増殖される。融合後14日〜15日間、抗dPNAGモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、固定されたヤギ抗マウスIgG有する、馴化培地から抗dPNAG抗体を捕獲すること、次いで特異的に結合した125I−標識されるdPNAGまたは125I−標識されるPNAGの定量化することによる固相ラジオイムノアッセイを用いて同定される。dPNAGに対する抗体に対して陽性であると試験されたハイブリドーマは、限界希釈によりサブクローニングされ、および再試験される。次いで、ハイブリドーマに関する腹水は、プリスタンで初回刺激されたBALB/cマウス中で、マウス1匹につき約1×106個の細胞を注射することによって調製される。この選択されたモノクローナル抗体が濃縮された濃縮物は、S−200上でゲル濾過によって腹水から生産され、NH4SO4を用いて濃縮される。このペレットは、50%グリセロール/H2Oのような適切な保存溶液中に溶解され、そして4℃で保存される。
【0085】
本明細書において使用される「抗dPNAG抗体」は、ヒト化抗体および抗体フラグメント、ならびにdPNAGおよびいくつかの例では50%より多くアセチル化されたPNAG形態に結合する、インタクトなモノクローナル抗体およびインタクトなポリクローナル抗体を含む。本明細書において使用される「ヒト化モノクローナル抗体」とは、ヒト化モノクローナル抗体またはその機能的に活性なフラグメントであり、このフラグメントは、少なくとも、ヒト定常領域およびヒト以外の種の哺乳動物からのdPNAG結合領域(たとえば、CDR)を有する。単離された形態の、または薬学的調製物中のインタクトなヒト化抗dPNAGモノクローナル抗体は、本発明のいくつかの局面に特に適切である。ヒト化抗体は、このヒト化抗体がdPNAGおよび好ましくは天然PNAG形態を特異的に認識するが、ヒトにおいて抗体それ自体に対する免疫応答を惹起しないという点で特に臨床的有用性を有する。一つの好ましい実施形態では、マウスのCDRを、ヒト化抗体のフレームワーク領域へグラフト化して「ヒト化抗体」を調製する。例えば、Riechmann et al.,Nature 332,323(1988);M.S.Neuberger et al.,Nature 314,268(1985)およびEPA 0 239 400(1987年9月30日公開)を参照。
【0086】
ヒトモノクローナル抗体は、当該分野で公知の任意の方法(Borrebaeck et alに対して発行された米国特許第5,567,610号、Ostbergに対して発行された米国特許第565,354号、Baker et al,Kozber,J.Immunol.133:3001(1984)、Brodeur,et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,p.51−63(Marcel Dekker,Inc,new York,1987)およびBoerner et al.,J.Immunol.,147:86−95(1991)に対して発行された米国特許第5,571,893号で公開されている方法)によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体を調製するための通常の方法に加えて、そのような抗体はまた、ヒト抗体を生成する能力のある、トランスジェニック動物を免疫することによって調製され得る(例えば、Jakobovit et al.,PNAS USA,90:2251(1993),Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993),Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)およびLongbergに対して発行された米国特許第5,569,825号)。
【0087】
dPNAGおよび好ましくは他の天然PNAG形態と反応する、ヒト化モノクローナル抗体を調製するための方法の、次に示す例はまた、例示であり、および例示の目的のためのみに提供される。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト以外の哺乳動物の抗体の非CDR領域を、ヒト化抗体の同様の領域と取り替えることによって組み立てられ得、他方、このもともとの抗体のエピトープ特異性を維持され得る。例えば、非ヒトCDRおよび必要に応じていくつかのフレームワーク領域は、ヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域と共有結合され、機能的抗体が生産し得る。米国では、Protein Design Labs(Mountain View California),Abgenix,およびMedarexのような、商業的に、特異的なマウス抗体領域からヒト化抗体を合成する企業が存在する。
【0088】
欧州特許出願第0239400号(その全体の内容は、本明細書により参考として援用される)は、マウス(またはヒト以外の他の哺乳動物)抗体の少なくともCDR部分がヒト化抗体中に含まれるヒト化クローナル抗体の生産および使用の例示的教示を提供する。手短に言うと、次に示す方法は、少なくともマウスCDRの一部分を含む、ヒト化CDRモノクローナル抗体を構築するために有用である。少なくともIgの重鎖または軽鎖の可変領域(ヒト抗体からのフレームワーク領域を含む)およびマウス抗体のCDR領域を少なくともコードするDNA配列から作動可能に結合される、適切なプロモーターを含む、第一の複製可能な発現ベクターが調製される。必要に応じて相補的なヒトIgの軽鎖または重鎖の可変領域を少なくともコードするDNA配列を作動可能に結合させる適切なプロモーターを含む第二の複製可能な発現ベクターが調製される。次いで、このベクターを用いて、細胞株が形質転換される。好ましくは、この細胞株は、骨髄腫細胞株、ハイブリドーマ細胞株、トリオーマ細胞株もしくはクアドローマ細胞株のようなリンパ系起源の、哺乳動物の不死化細胞株であるか、またはウイルスを用いる形質転換によって不死化された正常のリンパ系細胞である。次いで、この形質転換された細胞株を、当業者において公知の条件下で培養して、このヒト化抗体が生産される。
【0089】
欧州特許出願第0239400号の中で示されているように、複製可能ベクターに挿入されるための特定の抗体ドメインを作製するためのいくつかの技術は、当該分野において周知である。(好ましいベクターおよび組換え技術は、下でより詳細に議論される)。例えば、この領域をコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成によって調製され得る。あるいは、粘着末端を有する二本鎖の合成または制限されたサブクローニングされたCDRカセットが、フレームワーク領域の結合部において連結され得るように、4つのフレームワーク領域が、結合部において適切な制限部位とともに融合される、CDR領域が欠如している合成遺伝子。別の方法は、オリゴヌクレオチド部位指向性変異誘発による可変CDRを含むドメインをコードするDNA配列の調製物を含む。これらの方法の各々は、当該分野で周知である。それゆえ、当業者は、マウスCDRを含むヒト化抗体の、そのエピトープに対する抗体の特異性を破壊することなく、マウスCDR領域を含むヒト化抗体を構築し得る。
【0090】
ヒト抗体はまた、dPNAGに対する抗体を生産する血液またはヒト組織から抗体産生リンパ球を回収することによって得られ得る。これらのリンパ球は、適切な培養条件下において実験室でリンパ球自身を増殖させる細胞を生産するために処置され得る。この細胞培養物はまた、dPNAGに対する抗体の生産についてスクリーニングされ得、次いでクローニングされ得る。クローニング培養物を用いて、dPNAGに対するヒトモノクローナル抗体を生産し得、またはこの抗体の重鎖または軽鎖の様々な部分をコードする遺伝子エレメントがクローニングされ得、そして異なるタイプの抗体の生産のために核酸ベクター中へ挿入される。
【0091】
抗体フラグメントに結合するdPNAGもまた、本発明によって包含される。当該分野で周知のように、抗体分子の小さい一部分のみであるパラト−プは、そのエピトープに対する抗体の結合に関与する(一般的に、Clark,W.R.(1986)The Experimental Fondations of Modern Immunology Wiley&Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,Blackwell Scientific Publications,Oxfordを参照)。例えば、この抗体のpFc’領域およびFc領域は、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原の結合に関与しない。pFc’領域が酵素学的に切除されている抗体、またはpFc’領域なしで生産されている抗体(F(ab’)2フラグメントと称される)は、インタクトな抗体の両方の抗原結合部位を保持する。単離されたF(ab’)2フラグメントは、その2つの抗原結合部位のために、二価のモノクローナルフラグメントと称される。同様に、Fc領域が酵素学的に切除されている抗体、またはFc領域なしで生産されている抗体(Fabフラグメントと称される)は、インタクトな抗体分子の抗原結合部位のうちの一つを保持する。さらに前進すると、このFabフラグメントは、共有結合した抗体軽鎖とFdと称される抗体重鎖の一部(重鎖可変領域)からなる。このFdフラグメントは抗体特異性の主な決定基であり(単一Fdフラグメントは、抗体特異性を変えることなしに、10個までの異なる軽鎖と結合され得る)、そしてこのFdフラグメントは、単離物の際エピトープが結合する能力を保持する。
【0092】
用語Fab、Fc、pFc’、F(ab’)2およびFvは、いずれも標準的な免疫学的意味で使用される[Klein,Immunology(John Wiley,New York,NY,1982);Clark,W.R.(1986)The Experimental Fondations of Modern Immunology(Wiley&Sons,Inc.,New York);Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,(Blackwell Scientific Publications,Oxford)]。周知の機能的活性抗体フラグメントとしては、抗体のF(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、FvフラグメントおよびFdフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。インタクトな抗体のFcフラグメントが欠損したこれらのフラグメントは、循環からより急速に除去され、そしてインタクトな抗体よりも少ない特異的組織結合性を有し得る(Wahl et al.,J.Nucl.Med.24:316−325(1983))。例えば、単鎖抗体は、Ladner et al.に対して発行された米国特許第4,946,778号に記載の方法に従って構築され得る。そのような単鎖抗体は、可撓性のあるリンカー部分によって結合された軽鎖および重鎖の可変領域を含む。単離された可変の重鎖の単ドメイン(単ドメイン抗体(「Fd」))を得るための方法もまた、報告されている(例えば、Ward et al.,Nature 341:644−646(1989)を参照、これは、単離された形態において抗体重鎖可変領域(VH単ドメイン抗体)と結合する標的エピトープに対して充分な親和力を有する、抗体重鎖可変領域を同定するためのスクリーニングする方法を開示する。)。公知の抗体重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列に基づく組換えFvフラグメントを作製するための方法は、当該分野で公知であり、そして例えばMoore et al.米国特許第4,462,334号に記載されている。抗体フラグメントの使用および生産を記載する他の参考文献は、例えば、Fabフラグメント(Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevieer,Amsterdam,1985))、Fvフラグメント(Hochman et al.,Biochemistry 12:1130(1973);Sharon et al.,Biochemistry 15:1591(1976);Ehrilch et al.,米国特許第4,355,023号)および抗体分子の一部(Audilore−Hargreaves,米国特許第4,470,925号)を含む。従って、当業者は、このdPNAGエピトープに対する抗体の特異性を破壊することなく、インタクトな抗体の様々な部分から抗体フラグメントを構築し得る。抗dPNAG抗体によって認識されるエピトープはまた、他の天然PNAG形態上に存在し得ることが理解される。
【0093】
この抗体フラグメントはまた、「ヒト化抗体フラグメント」を包含する。当業者が認識するように、そのようなフラグメントは、インタクトなヒト化抗体の伝統的な酵素学的開裂によって調製され得る。しかし、関与する構築物の性質のために、インタクトな抗体がそのような開裂に対して感受性がない場合、言及されるこの構築物は、出発材料として使用される免疫グロブリンフラグメントを用いて調製され得、または、組換え技術が使用される場合、そのDNA配列それ自身が、所望のフラグメント(これを、化学的手段または生物学的手段によってインビボまたはインビトロにおいて組み合わせて、最終の所望のインタクトな免疫グロブリンフラグメントが調製され得る。)をコードするために改変され得る。
【0094】
dPNAGに対して結合特異性を有する他のdPNAG結合因子は、本発明の診断的方法において使用され得る。いくつかの慣用のアッセイは、dPNAG結合性ペプチドを容易に同定するために使用され得る。本発明のペプチドを同定するためのスクリーニングアッセイは、例えば、Hart,et al.,J.Biol.Chem.269:12468(1994)に記載されているようなファージディスプレイ手順を用いて行われる。Hart et al.は、哺乳動物細胞レセプターに対する新しいペプチドのリガンドを同定するための繊維状ファージディスプレイライブラリーを報告する。一般的に、例えば、M13またはfdファージを用いたファージディスプレイライブラリーは、上述の参考文献に記載のような通常の手順を用いて調製される。このライブラリーは、4〜80アミノ酸残基を含む挿入物を提示する。必要に応じて、この挿入物は、完全に縮重のペプチド配列または偏ったペプチド配列のアレイを表す。dPNAGに選択的に結合するリガンドは、dPNAGに結合するリガンドをファージ表面に発現するファージを選択することによって得られる。次いで、これらのファージは、何サイクルかの再選択に供されて、最も有用な結合性特徴を有するペプチドリガンドを発現するファージが同定される。代表的には、最良の結合性特徴(例えば、最も高い親和性)を示すファージを、核酸分析により特徴付けて、ファージ表面上に発現するペプチドの特定アミノ酸配列を同定し、そしてdPNAGへの最適の結合性を達成するために、発現されたペプチドの長さを同定する。
【0095】
あるいは、そのようなペプチドのリガンドは、一つまたはより多くのアミノ酸を含むペプチドの組み合わせライブラリーから選択され得る。そのようなライブラリーはさらに、非ペプチド合成部分を含んで合成される。この部分は、天然に存在する対応物と比較して酵素学的に分解を受け難い。
【0096】
ペプチドがdPNAGと結合するかどうかを決定するために、任意の公知の結合実験が使用され得る。例えば、このペプチドは、表面上に固定され、次いで標識されたdPNAGと接触させられる。次いで、このペプチドと相互作用するdPNAGの量またはこのペプチドと結合しない量を定量して、ペプチドがdPNAGと結合するかどうかを決定し得る。固定された抗dPNAG抗体を有する表面は、ポジティブコントロールとして使用され得る。結合アッセイはまた、推定上のdPNAG特異的抗体がPNAGの他の天然形態と結合する程度を決定し得る。
【0097】
本発明の組成物は、多くのインビボまたはインビトロにおいての目的のために有用である。例えば、本発明の組成物は、例えば、Staphylococcus感染、およびPNAGを生成する他の細菌種によって引き起こされる感染を予防するための、ヒトおよび動物に対しての能動免疫のためのワクチンとして;Staphylococcus感染を予防または処置するための、他の動物またはヒトに対して投与され得る抗dPNAG抗体を生産するためのヒトまたは動物の免疫のためのワクチンとして;Staphylococcus感染を予防する能力のあるモノクローナル抗体、抗体の作成に必要である遺伝子のライブラリー、またはペプチド模倣物のような生物学的因子に対してスクリーニングするための抗原として;Staphylococcus感染、およびPNAGを生成する細菌の他の種によって引き起こされる感染に対する診断的試薬として;ならびに、Staphylococcus感染およびPNAGを生成する細菌の他の種により引き起こされる感染に対する感受性に関して、ヒトまたは動物の免疫状態を決定するための診断的試薬として抗体応答を生産するために有用である。
【0098】
dPNAGは、被験体におけるStaphylococcusによる感染に対する能動免疫を誘導することによってPNAGを作成する細菌を有する感染に対して、被験体を保護するために使用され得る。この方法は、本発明の任意のPNAG組成物の、Staphylococcusに対する抗体応答のような免疫応答を誘導するための有効な量を、被験体に投与することによって達成される。本明細書において使用される「能動免疫」とは、いくつかのリンパ系細胞の、抗体を生産する細胞への分化を引き起こし、およびある例では、他のリンパ系細胞へ分化する、抗原を被験体に導入することを含む。記憶細胞は、抗体を分泌しないが、抗体が再度身体へ投与される場合に抗原を感知するために、その抗体を記憶細胞膜へ取り込む。
【0099】
この方法は、Staphylococcusによる感染に対する免疫を誘導するために有用である。本明細書において使用される「Staphylococcus」とは、このPNAGを発現する全てのStaphylococcus細胞種をいう。任意の特定の機構により拘束されることは意図しないが、PNAGの高いアセチル化(例えば、50%より多くアセチル化されている形態)は、dPNAGと同じ程度まで、オプソニンの保護的な抗体の生産を顕在化することができないと考えられる。Staphylococcusとして分類される細菌は、当業者において周知であり、および微生物学文献の中で記載されている。PNAGを発現するStaphylococcusとして、Staphylococcus epidermidis(RP62A(ATCC番号35984)、RP12(ATCC番号35983)、およびM187を含む)、Staphylococcus aureus(RN4220(pCN27)およびMN8ムコイドを含む)、およびica遺伝子座(TM300(pCN27)を含む)上の遺伝子を用いて形質転換されたStaphylococcus carnosusのような菌株が挙げられるが、これらに限定されない。PNAGを発現する他の細菌株は、通常の当業者によって容易に同定され得る。例えば、ica遺伝子座を発現するStaphylococcus細菌は、PNAGを発現する。通常の当業者は、ica遺伝子座の核酸配列が公知である(配列番号1およびHeilmann,C.,O.Schweitzer,C.Gerke,N.Vanittanakom,D.Mack and F.Gotz(1996)Molecular basis of intercellular adhesion in the biofilm−forming Staphylococcus epidermidis.Molec.Microbiol.20:1083に、通常記載されている)ので、ica遺伝子座に関連するmRNAまたはタンパク質の発現に対して容易にスクリーニングされ得る。PNAGを発現する細菌株はまた、抗PNAG抗体または抗dPNAG抗体を用いて、免疫電子顕微鏡(または他の免疫実験)によって同定され、この細菌の表面上のPNAGの存在を検出し得る。加えて、細菌株の夾膜は、単離され得、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を用いて分析され得る。
【0100】
本明細書において使用される「被験体」とは、温血哺乳動物であり、および、例えば、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、およびネコを含む。いくつかの実施形態では、この被験体は非げっ歯類被験体である。非げっ歯類被験体は、上述で定義された任意の被験体であるが、特にマウス、ラット、およびウサギのようなげっ歯類を除外する。いくつかの実施形態では、好ましい被験体はヒトである。
【0101】
dPNAGは、抗原に対する抗体応答のような免疫応答を誘導する能力のある任意の被験体に投与され得る。この抗体は特に、免疫応答を生産する能力およびStaphylococcus感染を発生する危険状態にある能力を有する被験体に、Staphylococcusによって引き起こされる全身性感染に対する能動免疫を誘導することに適合する。免疫応答を生産する能力およびStaphylococcus感染を発生する危険状態にある能力を有する被験体は、環境性Staphylococcusにさらされる危険状態にある免疫体系を所有する哺乳動物である。例えば、入院患者は、病院の環境においてこの細菌にさらされる状態にある結果として、Staphylococcus感染を発生する危険状態にある。S.aureusによる感染を発生する、特に高い危険集団は、例えば、透析を受ける腎臓病患者、および高い危険の外科手術を受ける個人を含む。S.epidermidisによる感染を発生する高い危険集団はまた、例えば、静脈系(例えば、中心系)、または人工器官(例えば、臀部または膝に代わる人工器官)のような内在性医療デバイスを有する患者を含む。なぜなら、臨床的分離菌は、しばしば、(生物膜または粘液と称される)細胞外材料であるために、可塑性表面に高く接着するからである。いくつかの実施形態では、この被験体は医療デバイス移植物を受け入れられており、および他の実施形態では、この被験体は医療デバイス移植物を受け入れられていないが、医療デバイス移植物を受け入れる予定はあり得る。S.epidermidisによる感染を発生させる危険状態にある被験体は、例えば、化学療法を受ける早期産新生児および患者が含まれる。
【0102】
dPNAGは、抗体応答を誘導するための有効な量を、被験体に投与され得る。本明細書において使用される「免疫応答(例えば、抗体応答)を誘導するための有効な量」は、(i)例えば、被験体(被験体は、dPNAGおよびPNAGの高いアセチル化形態の両方を認識し得る)において抗dPNAG抗体の生産を誘導すること、記憶細胞およびおそらく細胞毒性リンパ球反応などの生産を誘導することによって、被験体自身の免疫保護を生産する際に被験体を補助すること、および/または(ii)Staphylococcusにさらされる被験体において、Staphylococcusによる感染が発生することを予防することに対して充分であるdPNAGの量である。
【0103】
いくつかの好ましい実施形態では、免疫応答を刺激するためのdPNAGワクチンの有効な量は、Staphylococcusの少なくとも2種類(例えば、S.aureusおよびS.epidermidis)と交差反応する抗体の生産を誘発する能力があるdPNAGワクチンの量である。
【0104】
当業者は、dPNAGの量が、当該分野において公知の慣用の方法によって能動免疫を誘導するために充分であるかどうかを評価し得る。例えば、哺乳動物の中で抗体を生産するための特異的な抗原の能力は、dPNAG抗原を用いてマウスまたは他の被験体において抗体をスクリーニングすることによって評価され得る。
【0105】
本発明の抗dPNAG抗体は、感染因子にさらされる危険状態にあるそれらの被験体における全身感染の発生を予防することによって、被験体において受動免疫を誘導するために有用である。Staphylococcus aureusのようなStaphyloccusによる感染に対する受動免疫を誘導するための方法は、例えばStaphylococcus aureusのようなStaphylococcusのオプソニン化を引き起こすことによって、Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するための抗dPNAG抗体の有効な量を被験体に投与されることによって行われる。本明細書において使用される「受動免疫」とは、被験体に対する抗体の投与を包含し、ここで、この抗体は、Staphylococcus細菌の表面に接着して、そしてStaphylococcus細菌が食作用されることを引き起こすような、異なる被験体(同一のおよび異なる種の被験体を含む)において生産される。
【0106】
この抗dPNAG抗体は、受動免疫を誘導するために、Staphylococcus感染を発生する危険状態にある任意の被験体に投与され得、およびいくつかの実施形態では、dPNAGに対する能動免疫を誘導する能力のない被験体のために特に適合し得る。dPNAGを用いてのワクチン接種は、高い免疫無防備状態である危険状態の被験体に完全に有効ではあり得ないので、これらの被験体は、Staphylococcus aureusのようなStaphylococcusに対して惹起された抗体調製物を用いての処置から利益を得ている。免疫応答を誘導する能力のない被験体とは、免疫無防備状態の被験体(例えば、化学療法を受ける患者、AIDS患者など)、または免疫系のまだ発生していない被験体(例えば、早期産新生児)が挙げられる。
【0107】
この抗dPNAG抗体は、Staphylococcus感染を発生する危険状態にある被験体に投与され、この感染因子が体の中で繁殖することを予防し得またはこの感染因子を殺傷し得る。この抗PNAG抗体はまた、Staphylococcusによって引き起こされる感染を既に有している被験体に投与され、この感染因子が体の中で繁殖することを予防し得またはこの感染因子を殺傷し得る。
【0108】
本発明の抗dPNAG抗体は、Staphylococcus aureusのようなStaphylococcusに対して免疫応答を誘導するための有効な量を、被験体に投与される。本明細書において使用される「Staphylococcusに対して免疫応答を誘導するための有効な量」とは、抗dPNAG抗体の量が、(i)Staphylococcusにさらされた被験体において、Staphylococcusによる感染が発生することを予防する;(ii)感染の発生を阻害する、すなわちStaphylococcusの発生を阻止するまたは遅らせる、および/または(iii)Staphylococcus感染を軽減する、すなわち、感染した被験体における、Staphylococcus細菌の根絶に対して充分であることである。
【0109】
当業者で公知の慣用の手順を用いて、抗dPNAG抗体の量は、抗体のオプソニンの程度を予測するインビトロのオプソニン化分析において、「Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するための有効な量」であるかどうかを決定され得る。Staphylococcus細菌をオプソニン化する抗体は、Staphylococcus細菌のサンプルに加えるときにStaphylococcus細菌の食作用を引き起こす抗体である。オプソニン化分析は、比色定量分析、化学発光分析、蛍光または放射性同位元素標識取り込み分析、細胞仲介性細菌分析または細菌のオプソニン潜在性を測定する他の分析であり得る。次に示すオプソニン化分析は、抗dPNAG抗体の有効な量を決定するために使用され得る。抗dPNAG抗体は、Staphylococcus細菌、および真核生物食作用性細胞、および必要に応じて補体タンパク質と共にインキュベートされる。抗PNAG抗体のオプソニンの能力は、インキュベーションのあとに残っているStaphylococcusの量に基づいて決定される。これは、2つの同様のアッセイ(このうち、一方のみがオプソニン化免疫グロブリンを含む)間で、生存するStaphylococcusの数を比較することによって達成される。制御非特異的免疫グロブリンとのインキュベーションと比較すると、Staphylococcusの数の減少は、オプソニン化を指し示す。
【0110】
本発明の方法はまた、抗dPNAGpure抗体のStaphylococcusのオプソニン化を誘導するための有効な量を被験体に投与することによって、被験体においてStaphylococcusに対する受動免疫を誘導するために有効である。本明細書において使用される抗dPNAGpure抗体とは、本発明の純粋なdPNAG抗体と特定に相互作用し、そしてコアグラーゼ陰性Staphylococcusまたはコアグラーゼ陽性Staphylococcusのオプソニン化を誘導するが、dPNAGの純粋でない調製物と相互作用し得ない抗体である。上述において議論されるように、純粋でないdPNAG調製物は、テイコ酸またはこの抗原の免疫原性を妨げ得る他の不純物によって汚染され得る。当業者は、容易に、抗dPNAG抗体が、慣用の結合アッセイを用いて抗dPNAGpure抗体であるかどうかを同定し得る。例えば、抗dPNAG抗体は、表面に固定され得、次いで標識された純粋でないdPNAG調製物または標識された純粋なdPNAG調製物と接触され得る。この抗体と接触するdPNAG調製物(純粋な調製物対純粋でない調製物)の量、またはこの抗体と結合しない量は、次いで、この抗体が純粋でないdPNAG調製物と結合するかどうかを決定するために定量され得る。重要な実施形態では、この抗dPNAGpure抗体は、コアグラーゼ陰性Staphylococcusおよびコアグラーゼ陽性Staphylococcusに対して有効であり、ならびにその表面にdPNAGまたは高くアセチル化されたPNAGを発現する、任意の適切な微生物に対して有効である。
【0111】
dPNAG抗原は、ワクチンとして処方され得る。ワクチンとして処方するための適切なキャリア媒体は、リン酸ナトリウム緩衝化生理食塩水(pH7.4)、またはリン酸ナトリウム緩衝化生理食塩水(pH6)中で懸濁された0.125Mリン酸アルミニウムゲル、および他の従来型の媒体を包含する。一般的に、ワクチンは、この抗原を約5〜約100μgおよび好ましくは約10〜50μg含み、温血の哺乳動物において有効なレベルの抗体を誘発させる。このdPNAGがワクチンとして投与されるとき、必要に応じてアジュバントを含む。
【0112】
用語「アジュバント」とは、dPNAGへ組み込まれるまたはdPNAGとともに同時に投与される、被験体において免疫応答を増強する任意の物質を含むことを意味する。アジュバントは、アルミニウム化合物、例えば、ゲル、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、およびフロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバント(例えば、この中では、このdPNAG抗原は、パラフィン油エマルジョンの中の滅菌水の水層に組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。パラフィン油は、油の異なるタイプ、例えば、スクアレンまたは落花生油に置き換えられ得る。アジュバント性質を有する他の材料は、BCG(弱毒化Mycobacterium tuberculosis)、リン酸カルシウム、レバミゾ−ル、イソプリノシン、多価陰イオン(例えば、ポリA:U)、レンチナン、百日咳毒、リピドA、サポニン、QS−21、およびペプチド(例えば、ムラミルジペプチド)を含む。希土類塩、例えば、ランタンおよびセリウムはまた、アジュバントとして使用され得る。アジュバントの量は、被験体および部分的な使用されるdPNAG抗原(例えば、アセテート置換の程度)に依存し得、そして過度の実験法なしで、当業者によって容易に決定され得る。
【0113】
一般的に、治療目的のために投与されるとき、本発明の処方物は、薬学的に受容可能な溶液中において適用される。そのような調製物は、慣用的に、薬学的に受容可能な塩濃度、緩衝物質、防腐剤、適合性キャリアー、アジュバント、および必要に応じて他の薬学的成分を含む。
【0114】
本発明の組成物は、それ自体が(ニート)または薬学的に受容可能な塩の形において投与され得る。医薬の中で使われるとき、この塩は薬学的に受容可能であるべきだが、非薬学的に受容可能な塩は、都合よく、薬学的に受容可能な塩それ自体を調製するために使用され得、および本発明の範囲から除外され得ない。そのような薬理学的に受容可能な塩および薬学的に受容可能な塩としては、次に示す酸から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に受容可能な塩は、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩またはカルボン酸カルシウム塩のような、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製され得る。
【0115】
適切な緩衝物質は、酢酸および塩(1〜2%W/V);クエン酸および塩(1〜3%W/V);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%W/V);およびリン酸および塩(0.8〜2%W/V)を含む。適切な防腐剤は、塩化ベンザルコ二ウム(0.003〜0.03%W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9%W/V);パラベン(0.01〜0.25%W/V)およびチメロサール(0.004〜0.02%W/V)を含む。
【0116】
本発明は、医療的使用のために、一つまたはより多くの薬学的に受容可能なキャリアーおよび必要に応じて他の薬学的成分とともにdPNAGを包含する、薬学的組成物を提供する。本明細書において使用される用語「薬学的に受容可能なキャリアー」とは、下記においてより充分に記載されるが、ヒトまたは他の動物への投与に適合する、適合性固体賦形剤または適合性液体賦形剤、希釈剤、またはカプセル化する物質を意味する。本発明では、用語「キャリアー」は、有機成分または無機成分、天然物または合成物(これらとともに、主成分は、この適用を容易にするために結合される)を表す。この薬学的組成物の成分はまた、dPNAGと、およびお互いと、この所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用がないような様式において、混合される能力がある。
【0117】
非経口投与に適する組成物は、都合よく、この多糖類の滅菌した水溶性調製物を含み、この調製物はこの受容者の血液に対して等張性であり得る。とりわけ、使用され得る受容可能な媒体および溶媒は、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌した不揮発性油は、慣習的に、溶媒または懸濁培地として使用される。この目的のために、任意の無刺激性不揮発性油は、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含んで使用され得る。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は、注射可能物質の調製物において用途が見つけられる。皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与などに適したキャリアー処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて見つけられ得る。
【0118】
本発明の調製物は、有効な量で投与される。上述で議論されるような有効な量は、単独のまたはさらなる用量とともに、それぞれ感染性細菌の能動免疫またはオプソニン化を誘導するdPNAGまたは抗dPNAG抗体の量である。投与形態にも依存するが、1ナノグラム/キログラム〜100ナノグラム/キログラムまでの範囲の投与量が、有効であることが考えられる。好ましい範囲は、500ナノグラムと500マイクログラム/キログラムの間、およびより好ましくは1マイクログラムと100マイクログラム/キログラムの間であると考えられる。この絶対量は、この投与がこの細菌を有する高い危険状態にあるがまだ感染していない被験体、または既に感染している被験体に対して行われるのかどうか、併用治療、投与の数および個人の患者の性質(年齢、身体状態、大きさおよび体重を含む)のさまざまな要素に依存する。これらは当業者に周知の要素であり、および慣用の実験法を用いてのみ扱われ得る。最大投与量、つまり安全な医療判断によって最高に安全な投与量が使用されることが、一般的に好まれる。
【0119】
本発明の薬学的組成物の複数の用量が、考慮される。一般的な免疫計画は、抗体の高い用量を投与し、その次に、数週期間待った後、抗体のより低い用量が続くことを包含する。なおさらなる投与量は、同様に投与され得る。受動免疫に対する投薬計画は、必要な場合はより頻繁に投与する点において、全く異なる。細菌感染に対して増大される免疫応答、および/またはその後の感染からの保護が結果として起こる、任意の養生法が使用され得る。特定のdPNAGの複数の投与量の送達に対する所望の時間間隔は、慣用の実験法のみを用いて、当業者により決定され得る。
【0120】
様々な投与経路が利用可能である。もちろん、選択される特定の様式は、選択される特定のdPNAG、治療される特定の状態、および治療的有効性のために必要である投与量に依存する。本発明の方法は、一般的に言えば、医療的に受容可能である任意の様式の投与を用いて実行され得、このことは、臨床的に受容可能でない有害な効果を引き起こすことなく、有効なレベルの免疫応答を生産する任意の様式を意味する。投与の好ましい様式は、非経口経路である。用語「非経口」は、皮下注射、静脈内注射、筋肉間注射、腹腔内注射、または注入技術を包含する。他の経路としては、口、鼻、皮膚、舌下、および局所経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
この組成物は、単位投薬形態の中に都合よく存在し得、および薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。全ての方法は、dPNAGまたはdPNAG結合因子を、一つまたはより多くの付属成分を構成するキャリアーとの会合へと導く工程を包含する。一般的に、この組成物は、このポリマーを、液体キャリアー、微細に分離された固体キャリアー、または両方と、均等におよび親密に会合へと導くことによって調製され、次いで、必要な場合、この生成物を成型させる。このポリマーは、凍結乾燥されて保存され得る。
【0122】
他の送達系としては、時間放出送達系、遅延放出送達系、または持続性放出送達系を挙げることができる。そのような系は、本発明の多糖類の、繰り返される投与を避け、被験体およびその医師にとっての利便性を増やす。多くのタイプの放出送達系は、当業者に公知であり利用できる。これらとしては、ポリ乳酸およびポリグルコール酸、ポリ無水物およびポリカプロラクトンのような、ポリマーに基づく系;コレステロール、コレステロールエステル、およびモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドのような脂肪酸または中性脂肪;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング、便利な結合剤および賦形剤を用いて圧縮される錠剤、部分的に融解される移植物などが挙げられる。特定例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:(a)侵食系(この中では、多糖類が、米国特許第4,452,775号(Kent):同4,667,014号(Nestor et al.);および同4,748,034号および同5,239,660号(Leonard)で見出されるマトリックス内の形態に含まれる)および(b)拡散系(その中では、主薬が、制御された速度で、米国特許第3,832,253号(Higuchi et al.)および同3,854,480号(Zaffaroni)において見出されるポリマーを通して浸透する)。加えて、ポンプに基づくハードウェア送達系が使用され得、これらのいくつかは移植に対して適応する。
【0123】
本発明のPNAG抗原は、PNAG抗原自身によってアジュバントの性質を有し得るということがまた、当業者によって評価され得る。本明細書において記載の多糖類がヒト免疫応答を増大させるまでの程度において、PNAG抗原は、他の材料との結合体化において、アジュバントとして使用され得る。
【0124】
本発明のdPNAG抗原および抗dPNAG抗体は、別の抗細菌性(すなわち、殺菌性)薬物とともに、または抗細菌性反応混液(cocktail)の形態において、または他の細菌性抗原もしくは抗細菌性抗体とともに、送達され得る。抗細菌性抗生物質反応混液は、本発明の任意の組成物と、抗細菌性薬物との混合物である。細菌感染の処置における抗生物質の使用は、慣用されている。能動免疫を誘導するための抗原、および受動免疫を誘導するための抗体の使用もまた、慣用されている。この実施形態では、共通の投与ビヒクル(例えば、錠剤、移植物、注射溶液など)は、本発明において有効な組成物と、抗細菌性抗生物質薬物および/または抗原もしくは抗体とを含み得る。あるいは、この抗細菌性抗生物質薬物および/または抗原もしくは抗体は、別々に投与され得る。この抗細菌性物質(例えば、抗生物質)はまた、dPNAGまたは抗dPNAG抗体と結合体化され得る。
【0125】
抗細菌性抗生物質薬物は、周知であり、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシリン、バカンピシリン、シクラミン、エピシリン、ヘタシリン、ピバンピシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、カルベニシリン、チカルシリン、アブロシリン、メズロシリン、ピペラシリン、アムジノシリン、セファレキシン、セフラジン、セファドキシル、セファクロール、セファゾリン、セフロキシムアキセティル(axetil)、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォタキシン、セフチゾキシム、セフメノキチン、セフトリアキソン、モキサラクタム、セフォテタン、セフォペラゾン、セフタジジム、イミペネム、クラブラネイト、タイメンチン、スルバクタム、ネオマイシン、エリスロマイシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、アミノグリコシド類、キノロン類、テトラサイクリン類およびリファンピン(Goodman and Glilman’s,Pharmacological Basics of Therapeutics,8th Ed.,1993,McGraw Hill Inc.を参照)が挙げられる。
【0126】
他の多糖類抗原および抗体は、当該分野で周知である。例えば、下に示す多糖類抗原および/またはそれに対する抗体は、このdPNAG抗原および/または抗体との結合体で投与され得る:Salmonella typhi夾膜 Vi抗原(Szu,S.C.,X.Li,A.L. Stone and J.B.Robbins,Relation between structure and immunologic properties of the Vicapsular polysaccharide,Infection and Immunity. 59:4555−4561(1991));E.Coli K5夾膜(Vann,W.,M.A.Schmidt,B.Jann and K.Jann,The structure of the capsular polysaccharide(K5 antigen) of urinary tract infective Escherichia coli,010:K5:H4.A polymer similar to desulfo−heparin,Eupopean Journal of Biochemistry.116:359−364,(1981);Staphylococcus aureus5型夾膜(Fournier,J.−M.,K.Hannon,M.Moreau,W.W.Karakawa and W.F.Vann,Isolation of type 5 capsular polysaccharide from Staphylococcus aureus,Ann.Inst.Pasteur/Microbiol.(Paris).138:561−567,(1987));Rhizobium melilori エクス多糖類(expolysaccharide)II(Glazebrook,J.and G.C.Walker,a novel expolysaccharide can function in place of the calcofluor−binding expolysaccharide in nodulation of alfalfa by Rhizobium meliloti,Cell. 65:661−672(1989));B群SteptococcusIII型(Wessels,M.R.,V.Pozagay,D.L.Kasper and H.J.Jennings,Structure and immunochemistry of an oligosaccharide repeating unit of the capsular polysaccharide of type III group B Streptococcus,Journal of Biological Chemistry.262:8262−8267(1987));Pseudomonas aeruginosa Fisher 7O特異的側鎖(Knirel,Y.A.,N.A.Paramonov,E.V.Vinogradov,A.S.Shashkow,B.A.N.K.Kochetkov,E.S.Stanislavsky and E.V.Kholodkova,Somatic antigens of Pseudomonas aeuginosa The structure of O−specific polysaccharide chains of lipopolysaccharides of P.aeruginosa O3(Lanyi),025(Wokatsh) and Fisher immunotypes 3 and 7,European Journal of Biochemistry. 167:549,(1987));Shigella sonnei O特異的側鎖(Kenne,L.,B.Lindberg and K.Petersson,Structual studies of the O−specific side chains of the Shigella Sonnei phase I lipopolysaccharide,Carbohydrate Research.78:119−126,(1980));S.pneumoniaeI型夾膜(Lindberg,B.,Lindqvist,B.,Lonngren,J.,Powell,D.A.,Structual studies of the capsular polysaccharide from Streptococcus pneumoniae type 1,Carbohydrate Research.78:111−117(1980));およびStreptococcus pneumoniae群抗原(Jennings,H.J.,C.Lugowski and N.M.Young,Structure of the complex polysaccharide C−substance from Streptococcus pneumoniae type 1,Biochemistry.19:4712−4719(1980))。
【0127】
他の非ポリペプチド抗原またはそれに対する抗体は、当業者に周知であり、および本発明のdPNAG組成物との結合体で使用され得る。
【0128】
このdPNAG抗原および抗体はまた、被験体もしくはサンプルの免疫状態を決定するための診断アッセイにおいて有用であり、または免疫アッセイにおいての試薬として使用され得る。例えば、この抗体は、サンプル中において、表面にPNAGを有する細菌の存在を検出するために使用され得る。この細菌がサンプル中に存在する場合、この抗体はこの感染された被験体を治療するために使用され得る。この抗体はまた、PNAG抗原の存在に対して、細菌をスクリーニングするために使用され得、および複合混合物から、dPNAGまたはPNAG抗原、およびdPNAGまたはPNAG抗原を含む細菌を単離するために使用され得る。
【0129】
上述に記載のアッセイおよび当該分野で公知の任意の他のアッセイは、このdPNAGまたは抗体、および/または、免疫したこのdPNAGまたは不溶性マトリックス上の抗体を標識することによって達成され得る。dPNAGおよび/または抗体を用いての、この分析的および診断的方法は少なくとも次に示す試薬のうちの一つを使用する:標識された分析アナログ、免疫された分析アナログ、標識された結合パートナー、免疫された結合パートナー、および滅菌結合体。使用される標識は、分析物とその結合パートナーとの結合を妨げない、任意の検出可能な官能基であり得る。多数の標識は、免疫アッセイにおけるそのような使用について公知である。例えば、蛍光色素、化学発光標識および放射性標識のような直接的に検出され得る化合物、ならびに、酵素のように、反応または誘導体化を通して検出され得る化合物。これらのタイプの標識の例としては、32P、14C、125I、3H、および131I 放射性同位元素、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその類似体のような蛍光体、ローダミンおよびその類似体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼおよび細菌性ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号))、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン(2,3−dihydrophthalavinediones)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)が挙げられる。ウリカーゼオキシダーゼおよびキサンチンオキシダーゼのような複素環式オキシダーゼは、過酸化水素を使用する酵素と結合して、HRP、ラクトペルオキシダーゼまたはマイクロペルオキシダーゼ、ビオチンアビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベルのような色素前駆物質、および安定した遊離基を酸化させる。
【0130】
この標識は、当業者に公知の方法によってdPNAGまたは抗dPNAGと結合体化され得る。例えば、米国特許第3,940,475号および同3,645,090号は、蛍光体および酵素の、抗体との結合体化を述べる。他のアッセイは、抗原および抗体とともに慣用されると報告されており、および本発明によって使用され得、組成物およびサンドイッチアッセイを含む。
【0131】
本発明は、dPNAG発現宿主細胞を生産することによってdPNAG抗原を調製する方法、ica遺伝子座を細胞へ導入し、そのような細胞からPNAG抗原を単離し、そしてdPNAGを形成するための抗原を脱アセチル化することによってdPNAG抗原を調製する方法を包含する。PNAG宿主細胞は、ica遺伝子(配列番号1)をコードする核酸を用いて、形質導入または形質転換した細胞に、トランスフェクトすることによって調製され得る。この細胞は、真核細胞または原核細胞であり得るが、好ましくは、細菌細胞であり得る。この細胞は、天然にてPNAGを発現しないStaphylococcusであり得る。
【0132】
一つの実施形態では、このica核酸は、真核細胞または原核細胞内にica核酸の発現を指向させる遺伝子発現配列に作動可能に結合される。この「遺伝子発現配列」は、プロモーター配列またはプロモーター−エンハンサーの組み合わせのような、任意の調節ヌクレオチド配列であり、作動可能に結合されているicaの核酸の有用な転写および翻訳を容易にする。例えば、この遺伝子発現配列は、構成的なプロモーターまたは誘導的なプロモーターのような、哺乳動物のプロモーターまたはウィルスのプロモーターであり得る。構成的な哺乳動物プロモーターとしては、次に示す遺伝子:ヒポキサンチン ホスホリボシル トランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、およびβ−アクチンについてのプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターは、例えば、サルウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロミー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの末端反復配列(LTR)、および単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的なプロモーターは、当業者に公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用であるプロモーターはまた、誘導的なプロモーターを含む。誘導的なプロモーターは、誘導因子の存在下において発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある金属イオンの存在下において、転写および翻訳を促進するために誘導される。他の誘導的なプロモーターは、当業者に公知である。
【0133】
一般的に、この遺伝子発現配列は、必要ならば、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列に含まれる。5’非転写配列は、作動可能に結合されたica核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。この遺伝子発現配列は、必要に応じて、所望のようなエンハンサー配列または上流の活性化配列を含む。
【0134】
このica核酸配列およびこの遺伝子発現配列は、それらが、この遺伝子発現配列の影響または制御下において、このicaコード配列の転写および/または翻訳を配置するような方法で、共有結合される場合、「作動可能に結合される」と言われる。機能的タンパク質に翻訳されるica配列(2つのDNA配列)は、5’遺伝子発現配列中のプロモーターの誘導がica配列の転写を発生させる場合、およびこの2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト変異の誘導を発生させない、(2)このica配列の転写を指示するためのプロモーター領域の能力を妨げない、または(3)タンパク質に翻訳されるための対応するRNA転写物の能力を妨げない場合に、作動可能に結合されると言われる。従って、遺伝子発現配列は、その遺伝子発現配列が生じる転写物が、所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得るようにica核酸配列の転写を実行する能力を有する場合、ica核酸配列と作動可能に結合されていることになる。
【0135】
本発明のica核酸は、単独で、またはベクターとの会合において、その宿主細胞に送達され得る。最も広い意味において、「ベクター」とは、(1)PNAG合成に関与するタンパク質をコードするica遺伝子座中のこの遺伝子を含む核酸分子の送達、または(2)標的細胞によって、PNAG合成に関与するタンパク質をコードするica遺伝子座中のこの遺伝子を含む核酸分子の取り込み:を容易にする能力のある任意の媒体である。好ましくは、このベクターは、このベクターの欠如を発生させる分解の程度に関連する分解を減らして、標的細胞へica分子を運ぶ。一般的に、本発明において有用なベクターは、2種類:生物学的ベクターおよび化学的/物理的ベクターに分割される。生物学的ベクターは、ica核酸の、標的細胞への送達、標的細胞によっての取り込みに対して有用である。化学的/物理的ベクターは、ica核酸またはicaポリペプチドの、標的細胞への送達、標的細胞によっての取り込みに対して有用である。
【0136】
生物学的ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、ウィルス、ウィルス由来の他のビヒクル、もしくは、本発明の核酸配列の挿入または組み込みによって操作されている細菌源、および本発明の核酸配列を付与し得る遊離した核酸フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、生物学的ベクターの好ましい型であり、次に示すウイルス:以下のようなレトロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス;ハーベイマウス肉腫ウイルス;マウス乳癌ウイルス;ラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン−バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス、およびあらゆるレトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。名前はつけられていないが当該分野で公知である、他のベクターも容易に使用され得る。
【0137】
好ましいウイルスベクターは、不必須遺伝子が重要遺伝子と置き換えられた、非細胞変性真核生物ウィルスに基づく。非細胞変性ウイルスはレトロウイルスを含み、レトロウイルスの生活観は、引き続くプロウイルスの宿主細胞内DNAへの組み込みを含むゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写を含む。一般的に、このレトロウイルスは、複製不十分(すなわち、所望のタンパク質の合成を指示する能力はあるが、感染粒子を製造する能力はない)である。複製不十分のレトロウイルスを生産するための標準的プロトコル(外因性遺伝子材料のプラスミドへの組み込み工程、プラスミドを組み込んだパッケージング細胞の形質転換工程、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの生産工程、組織培養液からのウイルス粒子の収集工程、およびウイルス粒子を用いた標的細胞の感染工程を包含する)は、Kriegler,M.,「Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual」、W.H.Freeman Co.,New York(1990)and Murry,E.J.Ed.「Methods in Molecular Biology」,vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,New Jersey(1991)において、提供される。
【0138】
ある適用のための別の好ましいウィルスは、アデノ随伴ウィルス、二本鎖DNAウィルスである。このアデノ随伴ウィルスは、複製不十分であるように操作され得、広い範囲の型および種類の細胞を感染する能力を有する。それは、さらに、熱溶媒安定性および脂質溶媒安定性;多様な系統の細胞においての高い形質導入頻度;および重感染抑制の欠如とそれに伴って形質導入の複数の系列を許すような、有利さを有する。伝えるところによれば、このアデノ随伴ウィルスは、部位特異的な方法において、ヒト細胞内DNAへ組み込まれ得、それに関する挿入性変異誘発の可能性および挿入された遺伝子発現の変異性の可能性を最小化する。加えて、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧の欠如下において少なくとも100回継代の間、組織培養が続けられており、このことは、このアデノ随伴ウイルスのゲノム組換えは、比較的、安定した事象であることを暗に意味する。このアデノ随伴ウィルスはまた、染色体外の様式において機能し得る。
【0139】
この生物学的ベクターに加えて、化学的/物理的ベクターは、ica分子を標的細胞に運ぶために使用され得、そしてその結果取り込みを容易にし得る。本明細書において使用されるように、「化学的/物理的ベクター」とは、ica分子を細胞へ運ぶ能力のある、細菌源またはウイルス源由来の分子以外の天然分子または合成分子をいう。
【0140】
本発明の好ましい化学的/物理的ベクターは、コロイド状分散系である。コロイド状分散系としては、水の中に油があるエマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む、脂質に基づく系が挙げられる。本発明の好ましいコロイド状系は、リポソームである。リポソームは、インビボまたはインビトロにおいて送達ベクターとして有用である人工膜管である。大きな単膜管(LUV)は、0.2〜4.0μmのサイズの範囲であり、大きな高分子をカプセル化し得ることが示されている。RNA、DNA、およびインタクトなビリオンは、水性内部の中でカプセル化され得、そして生物学的活性形態で細胞に送達され得る(Fraley,et al.,Trends Biochem.Sci.,(1981)6:77)。リポソームが有用な遺伝子伝達ベクターであるために、一つ以上の次に示す特徴を与えられなければならない:(1)生物学的活性を保持した状態で、高い効率で、重要な遺伝子のカプセル化;(2)高い効率で、標的細胞の細胞質への、この小胞の水性含量の送達;および(3)遺伝子情報の正確な発現および有用な発現。
【0141】
リポソームは、例えば、LIPOFECTINTMおよびLIPOFECTACETM(これらはN−[1−(2,3ジオレイルオキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム クロリド(DOTMA)およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)のようなカチオン脂質で構成される)のように、Gibco BRLから、商業的に利用できる。リポソームを作製する方法は当該分野で周知であり、および多くの発行物において記載されている。リポソームはまた、Gregoriadis,G.によって、Trends in Biotechnology,(1985)3:235−241中で、概説されている。
【0142】
コンパクション因子はまた、単独で、もしくは、生物学的ベクターまたは本発明の化学的/物理的ベクターとの結合体化状態で、使用され得る。本明細書において使用される「コンパクション因子」とは、核酸上のマイナス電荷を中和し、それにより核酸の微細な顆粒へのコンパクションを可能にするヒストンのような因子をいう。この核酸のコンパクションは、標的細胞による核酸の取り込みを容易にする。このコンパクション因子は、単独で使用され得る、すなわち、細胞によってより効率よく取り込まれる形態で、またはより好ましくは一つ以上の上述で記載のベクターとの結合体化状態で、ica分子を送達し得る。
【0143】
このica核酸の標的細胞による取り込みを容易にするために使用され得る、他の例示的組成物としては、リン酸カルシウムおよび細胞内輸送の他の化学的媒介物、マイクロインジェクション組成物、エレクトロポレーション組成物、および相同的組換え組成物(例えば、ica核酸を標的細胞の染色体内の前もって選んでおいた位置に組み込むため)が挙げられる。
【0144】
次の例は、説明図の目的のために含まれるが、本発明の有効範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0145】
(実施例1:PNAGの精製)
dPNAGは、ica遺伝子座を発現する任意の細菌株から生産され得ることが、本発明によって発見された。特に、これらの細菌株としては、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus aureus、およびこの遺伝子を用いてica遺伝子座に形質変換されたStaphylococcus carnosusのような他のStaphylococcus株が挙げられる。次に示す特定菌株は、その特定菌株からdPNAGを精製するために、本発明によって使用され得る。(その細菌株としては、S.epidermidis RP62A(ATCC番号35984)、S.epidermidis RP12(ATCC番号35983)、Staphylococcus epidermidis M187、S.carnosus TM300(pCN27)、S.aureus RN4220(pCN27)、およびS.aureus MN8ムコイドが挙げられる。)
以下は、ica遺伝子座を含むStaphylococcusからdPNAGを生産するために使用され得る方法である。
【0146】
出発材料は、次に示すような方法で細菌を増殖させることにより、ica遺伝子座を発現するStaphylococcusの培養物から調製する:この多糖類は、16リットルの細菌増殖培地の培養物から調製される。好ましい培地は、RPMI−1640 AUTO−MOD(加圧滅菌(Sigma Chemical Co.,St,Mo.)による滅菌を許容するために修正されたRPMIの調製物)に基づく化学的に規定された培地(CDM)である。このCDMは、アミノ酸、ビタミンおよびヌクレオチドを、他のCDM(Hussain,M.,J.G.M.Hastings,and P.J.White,1991)中で見出されるそれらの濃度に合わせるために、付加的に追加する。コアグラーゼ陰性Staphylococcusによる粘液生産物のための化学的に規定された培地(J.Med.Microbiol.34:143−147)。この培地にまた、1%の最終濃度にまでショ糖およびグルコースを追加する。
【0147】
液体培養物を、多糖類を生産する細菌株の単一のコロニーを用いて播種する。この好ましい菌株は、Staphylococcus aureus MN8m(この多糖類の恒常的な過剰生産者である菌株)を命名される。単一のコロニーを、トリプシンの大豆寒天プレート、または細菌増殖培地の同様のプレートから取り、そして37℃で増殖させる。10〜42℃の温度もまた受容可能である。液体培養物を、1〜96時間37℃でインキュベート、他方、連続的に攪拌させながら、2リットル/分の速度で酸素を用いて流す。このpHは、pH滴定器を通したNaOHの付加によって、増殖期間中7.0に維持する。増殖期間の最後に、細胞体を、30分間で9000gの割合で沈降させ、そしてその上清を、接線方向に流す濾過(10,000〜500,000分子量の分離膜)を通して、〜500mlまで集める。エタノールの2つの容量物と、多糖類粗調製物を調製するために加える。この沈殿物は、遠心分離によって回収され、水中で再懸濁され、そして蒸留水に対して一晩透析する。この抗体は、不溶性である。この不溶性粗抗体は、50mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、0.1Mリン酸塩、0.15M塩化ナトリウム)中で懸濁され、0.5〜16時間37℃でライソゾーム(0.5mg)およびリソスタフィン(0.5mg)を用いて消化する。抗原懸濁液をさらに、0.5〜16時間37℃でヌクレアーゼ(0.5mg)を用いて処理し、次に37〜56℃でプロテイナーゼK(5mg)を用いて0.5〜16時間インキュベーションする。透析および凍結乾燥後、乾燥した抽出物は、5M HCl中で再溶解し、およびpHは、4N NaOHを用いて、2に調整する。この溶液の20mlアリコートを、206nmでの光学的吸収により同定された、溶出した多糖類を有する0.1N HCl/0.15M NaCl緩衝液を用いて、Sephacryl S−300(Pharmacia,Piscataway,NJ)で詰められた5×88cmカラムに適用する。分子サイズの連続的範囲を表す多糖類に対応する画分を、別々に保存し、水に対して透析し、そして凍結乾燥する。あるいは、サイズ分画は、ダイアフィルトレーション膜の使用のように、当該分野で公知の様々な代替の手順を用いて行われ得る。
【0148】
アシル化の程度は、化学的に処理される天然の多糖類によって調整され得る。従って、50%より多いアセテートを有する多糖類は単離され、そして脱アセチル化され、所望のアセチル化レベルを達成する。グルコサミンからアミノ結合されたアセテート基を除去するための処理は、公知の塩基溶液中でされる。好ましい手法は、1.0M NaOH中で、2〜20時間37℃においてのインキュベーションである。より弱塩基性溶液およびより長いインキュベーション時間、またはより高い温度、もしくは、より短いインキュベーション時間またはより低い温度に加えてより強塩基性溶液は、等しく有効的である。一般的に、10より上にpHを上げる任意の処理は、適切な温度下において有効である。
【0149】
また、この抗原を脱アセチル化する酵素学的手段が存在する。酵素学的手段は、クロラムフェニコール脱アセチラーゼおよびicaB遺伝子産物に関連する酵素のような、脱アセチル化酵素を含む。
【0150】
(実施例2:dPNAGジフテリアトキソイド(DTm)結合体化ワクチンの調製)
DTmを、還元性アミノ化によって精製されたdPNAGと共有結合させた。アルデヒド基を初め、下に示す工程1に記載のグルタルアルデヒドを用いたタンパク質の処理によって、デフテリアトキソイド(DTm)の表面上に導入した。活性化型DTmは、引き続いて、下に示す工程2に記載の還元剤(シアノホウ化水素化ナトリウム)の存在下で、活性化型DTmの遊離したアミノ基を通してdPNAGとともに反応させた。
【0151】
(工程1)グルタルアルデヒドを用いたDTmの活性化
10mgのDTm(4.86mg/ml溶液(20mM HEPES緩衝液、50mMNaCl、pH8))を、10kDa MWCO透析カセットを用いて、室温で3時間、0.1M 炭酸塩緩衝液(pH10)に対して透析した。このタンパク質溶液を、完全に炭酸塩緩衝液を用いて交換した場合、グルタルアルデヒドを、最終濃度1.25%にまで加え、そしてこの混合物を2時間室温で攪拌させた。生産されたこの活性化型DTmは、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)に交換し、そして10kDa MWCO濾過膜を用いて限外濾過によって約10mg/mlまで濃縮した。
【0152】
(工程2)活性化型DTmとPNAGの結合
PNAGを、Maira et al.(Maira−Litran T,Kropec A,Abeygunawardana C,Joyce J,Mark IIIG,Goldmann DA,and Pier GB.Immunochemical properties of the staphylococcal poly−N−acetyl glucosamine surface polysaccharide.Infect.Immun.2002;70:4433−4440)に記載のように、精製した。Maira et al.中でPNAG−IIと命名した、この材料の一画分を、この脱アセチル化PNAG(dPNAG)を調製するために使用した。天然PNAGを、5M NaOH中で、2mg/mlの濃度にまで溶解させ、そして攪拌させながら37℃でインキュベートした。18時間後、このサンプルを、氷のスラリー上に置き、そして10℃以下へ冷却させた。5N HClもまた、氷上で冷却させ、そしてこの溶液が中性のpHに到達するまで、0.5mLアリコート中に加えた。このdPNAG溶液を、次いで、10KiloDalton Molecular Weight Cutoff(10K MWCO)透析カセット中で、蒸留水に対して一晩中透析し、凍結乾燥した。この手順は、15〜20%のアセテート置換を有するdPNAGを生産した。
【0153】
精製されたdPNAG(10mg)を、5M HClの0.25ml中で溶解し、等量の5M NaOHを用いて中和し、そして最終容積がPBSを用いて2mlに調整した。dPNAG溶液は、中性のpHにおいて不溶性であるが、わずかな酸性pHまたは塩基性pHにおいて、完全な可溶性で残存する。従って、溶解性を保証するために、dPNAG溶液のpHは、9.0を調整した。dPNAG(10mg)を、PBS中で、活性化型DTmの10mg/ml溶液の1mlと混合し、そしてこの反応のpHを7.5に調整した。200mgの精製されたシアノホウ化水素ナトリウムを、この混合物に加え、そしてこの反応は、混合されながら37℃14時間暗闇中で進行することを可能にした。この時間の後、この反応混合物を、0.1M炭酸塩緩衝液(0.15M NaCl、pH10(10kDa MWCO透析カセット))を用いた透析によって交換し、そしてこの高い分子量結合体化物を、Superose 6 prep−gradeカラムを用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーによって、精製分離した。dPNAG−DTm結合体化物は、20mM HEPES緩衝液(50mM NaCl、pH8)に対して透析され、−2℃で凍結保存した。
【0154】
(実施例3:天然PNAG−DTm結合体化ワクチンの調製)
天然PNAG(この場合、95%〜100%アセテート置換を有する)は、有機のシアノ化薬剤(1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP))を用いて、精製されたDTmと共有結合し、下に示す工程1に記載のこの多糖類の水酸基を活性化した。続いて、CDAP−活性化型PNAGを、付加的なスペーサー分子の必要なしで、下に示す工程2に記載のDTmと結合した。
【0155】
(工程1)CDAPを用いたPNAGの活性化
10mgの精製されたPNAGを、150マイクロリットルの5M HCl中に溶解され、等量の5M NaOHを用いて中和し、そしてホウ酸塩緩衝液(pH9.2)を用いて1mlまで希釈した。CDAPを、アセトニトリル中で100mg/ml濃度に作製し、そして1ヶ月に至るまで−20℃で保存した。200μlのCDAP(20mgを含む)を、ホウ酸塩緩衝液中の以前にボルテックスされたPNAG−II(Maira,et al.Infect.Immun.2002,70:4433−4440)溶液中へゆっくりとピペットで移し(この有機性共通溶液の速い添加は、この多糖類を沈澱させる)、そしてこの反応を、2分間進行させた。
【0156】
(工程2)DTmを用いたCDAP−活性化型PNAGの結合
5mgのDTm(保存溶液は、20mM HEPES緩衝液(50mM NaCl、pH8))を、10kDa MWCO透析カセットを用いて、3時間ホウ酸塩緩衝液(pH9.2)に対して透析させた。CDAPを用いたPNAGの活性化の後、5mgのDTmを、すぐに加え、そしてこの混合物は、攪拌させながら3時間室温で反応させた。この時間の後、この高い分子量の結合体化物を、Superose 6 prep−gradeカラムを用いてゲル濾過クロマトグラフィーによって、結合しなかった成分から精製させた。PNAG−DTm結合体化物を含む画分は貯蔵し、濃縮し、そして−20℃で凍結保存した。
【0157】
(実施例4:ウサギの中においての抗血清の生産)
精製されたPNAG−DTmまたはdPNAG−DTmに対する抗体を、10μgの結合体化された多糖類を用いた2回の皮下免疫によって、完全フロイントアジュバントを用いた1回目の投与および不完全フロイントアジュバントを用いた2回目の投与に対して乳化され、その後に、一週間後に、3日おきに3回、生理食塩水中の抗体が静脈注射することによって、ニュージーランド白色ウサギ中において惹起させた。ウサギから、二週間ごとに採血し、そして血清を結合免疫測定法(ELISA)により試験した。PNAGまたはdPNAG−DTmのいずれかを用いて免疫された2匹の代表的なウサギから、ELISAによって得られた結合曲線は、図1および図2にそれぞれ示す。力価は、Maira et al(Maira−Litran T,Kropec A,Abeygunawardana C,Joyce J,MarkIIIG,Goldmann DA, and Pier GB. Immunochemical properties of the staphylococcal poly−N−acetyl glucosamine surface polysaccharide.Infect.Immun.2002;70:4433−4440)で記載のようにして決定した。
【0158】
(実施例5:マウスにおけるPNAG−DTmおよびdPNAG−DTmの免疫化)
10匹のマウス(Swiss Webster;雌,年齢は生後5〜7週間)の集団を、一週間おきに、0.1mlのPBS中の、1.5μg,0.75μgまたは0.15μgの、PNAG−DTmおよびdPNAG−DTmの結合体化多糖類を皮下免疫され、そして3回目の免疫後、4週間毎週採血した。コントロール集団は、同じ割合で、結合体化されていない多糖類とタンパク質の混合物を用いて免疫させた。天然の結合体化物および脱アセチル化結合体化物を用いて免疫されたマウスの力価は、それぞれ、図3および図4に示す。コントロール集団は、使用された投与量では、どんな力価も発生しなかった。
【0159】
(実施例6:破傷風トキソイドと結合体化したPNAGおよびdPNAGを生産させたウサギ抗血清のオプソニンの殺菌活性)
2匹のウサギを、上述で記載のようにジフテリアトキソイドと結合体化されたPNAGを用いて免疫し、そして2匹のウサギを、上述で記載のようにジフテリアトキソイドと結合体化させたdPNAGを用いて、免疫した。オプソニンの殺菌活性を、Maira et al.(Maira−Litran T,Kropec A,Abeygunawardana C,Joyce J,Mark IIIG,Goldmann DA,and Pier GB.Immunochemical properties of the Staphylococcal poly−N−acetyl glucosamine surface polysaccharide.Infect.Immun.2002;70:4433−4440)に記載された方法を用いて、決定した。力価を決定し、そして40%以上の細菌が殺傷される血清希釈として力価を定義した。様々なStaphylococcus菌株に対する4匹のウサギ抗血清の結合曲線を、図5〜図8に示す。菌株M187は、S.epidermidis菌株であり;他の菌株はすべてS.aureus菌株である。力価の比較は、図9に示す。
【0160】
(等価物)
上に記載された明細書は、当業者が本発明を実行するのを可能にするために十分であると考えられる。本発明は、提供された実施例による有効範囲において、限定されない。なぜなら、実施例は、本発明の一つの局面のただ一つの例示として意図され、他の機能的な等価な実施形態は、本発明の範囲内にあるからである。本明細書に示されている例および本明細書に記載されている例に加えて、本発明の様々な変更は、上の記載から当業者にとって明白になり、そして添付の特許請求の範囲内に含まれる。本発明の有利点および目的は、必ずしも、本発明のそれぞれの実施形態によって包含されない。
【0161】
この出願において言及されるすべての参考文献、特許および特許発行物は、その全体が参考文献として本明細書において援用される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1は、天然PNAGに対する抗体の結合を示す。この抗体は、ジフテリアトキソイドと結合体化された天然PNAGに対して惹起された。
【図2】図2は、脱アセチル化PNAGに対する抗体の結合を示す。この抗体は、ジフテリアトキソイドと結合体化されたdPNAGに対して惹起された。
【図3】図3は、ジフテリアトキソイド(DTm)と結合体化された天然PNAGを用いて、一週間おきに、3回皮下に免疫したマウス(1グループにつき10匹)において得られる抗体力価を示す。動物は、凡例で示される投与量で、免疫された。血液サンプルは、最終免疫化後、1〜4週、毎週得られた。
【図4】図4は、ジフテリアトキソイド(DTm)と結合体化されたdPNAGを用いて、一週間おきに、3回皮下に免疫したマウス(1グループにつき10匹)において得られる抗体力価を示す。動物は、凡例で示される投与量で、免疫された。血液サンプルは、最終免疫化後、1〜4週、毎週得られた。
【図5】図5は、ジフテリアトキソイドと結合体化されるdPNAGを用いて、免疫されたウサギの血清から得られた抗体による、凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ1)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図6】図6は、ジフテリアトキソイドと結合体化されたdPNAGを用いて、免疫されたウサギの血清からの抗体による、凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ2)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図7】図7は、ジフテリアトキソイドに結合体化された天然PNAGを用いて、免疫されたウサギの血清からの抗体による凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ3)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図8】図8は、ジフテリアトキソイドに結合体化された天然PNAGを用いて、免疫されたウサギの血清からの抗体によって、凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ4)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図9】図9は、X軸上で示されたStaphylococcus菌株に対する、4匹のウサギの血清から得られた抗体の、オプソニン性殺傷力価をまとめる。このウサギは、上記の図の凡例で記載されている通りである。各バーは、この細菌の40%以上が殺傷された血清希釈の対数を示す。10より下のバーは、1:10の血清希釈では、細菌の40%を殺傷できない血清を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0163】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、S.aureusからのica遺伝子座のヌクレオチド配列であり、それは、GenBankにおいて受託番号AF086783として寄託された。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Staphylococcus感染の処置および予防のための免疫を誘導するために有用な多糖類組成物に関する。本発明はまた多糖類ベースの抗原、それに関連する抗体および診断キットを作製および使用する方法、ならびにこの多糖類とそれに対する抗体の能動免疫および受動免疫を誘導するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Staphylococcusは、通常ヒトの粘液膜および肌に生息しコロニーを作る、グラム陽性の細菌である。肌または粘膜液が、手術の間または他の外傷で損傷する場合、このStaphylococcusは、内部の組織へのアクセスを獲得し得、感染の発生を引き起こす。Staphylococcusが局所的に増殖しまたはリンパ系または血液系に侵入する場合、Staphylococcus菌血症に関する合併症のような重篤な感染合併症が生じ得る。これらの合併症としてさまざまな臓器における敗血症性ショック、心内膜炎、関節炎、骨髄炎、肺炎および膿瘍が挙げられる。
【0003】
Staphylococcusは、遊離したコアグラーゼを産生するコアグラーゼ陽性生物、および遊離したコアグラーゼを産生しないコアグラーゼ陰性生物の両方を含む。Staphylococcus aureusは最も一般的コアグラーゼ陽性形態である。S. aureusは、一般的に局所部位、管外または管内のいずれかにおいて感染を引き起し、最終的に菌血症を引き起こし得る。S.aureusはまた、急性骨髄炎の主な原因であり、Staphylococcus肺炎感染を引き起こす。さらに、S.aureusは、細菌性髄膜炎の症例の約1〜9%および脳膿腫の症例の10〜15%の原因である。
【0004】
少なくとも21種類のコアグラーゼ陰性のStaphylococcus種が公知であり、それにはS.epidermidis、S.saprophyticus、S.hominis、S.warneri、S.haemolyticus、S.saprophiticus、S.cohnii、S.xylosus、S.simulansおよびS.capitisが含まれる。S.epidermidisは静脈へのアクセスデバイスに関連する最も頻繁な感染原因因子であり、主要な院内の菌血症における最も頻繁な分離菌である。S.epidermidisはまた人工弁の心内膜炎にも関連する。
【0005】
Staphylococcusはまた、動物における一般的な細菌感染源である。例えば、Staphylococcus乳腺炎は、ウシ、ヒツジおよびヤギのような反芻動物における一般的問題である。この疾患は一般的に、抗生物質で処方されてこの感染が軽減されるが、この処置は費用のかかる手順でありかつ、今もなお乳製品の損失を引き起こす。現在までに同定されている最も有効なワクチンは、皮下に投与された無傷のS.aureusワクチンである。しかし、生ワクチンの投与は感染の危険が伴う。この理由より、多くの研究者は、S.aureus死菌ワクチンを産生し、および/またはS.aureusに対する免疫を誘導する夾膜の多糖類または細胞壁成分を単離することを試みてきた。しかし、これらの試みは成功していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明はコアグラーゼ陰性Staphylococcusおよびコアグラーゼ陽性Staphylococcusに対するヒトおよび動物の免疫に有用な方法および生産物に関する。この発明により、S.aureusおよびS.epidermisのようなStaphylococcusからのほとんどアセテート残基で置換されていない、表面多糖類そしてポリN−アセチルグルコサミン(PNAG)が、インビボで高い免疫原性を有し、オプソニン死滅および感染からの保護を仲介する抗体を優先的に誘発することが発見された。それゆえ、この多糖類は、とりわけ、Staphylococcusに対する抗体依存性免疫応答を含む、免疫応答の生成において有用である。
【0007】
一つの局面では、この発明は、少なくとも2つの単量体単位の長さを有するβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物を提供する。ここで、グルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換されている。一つの局面では、その組成物が滅菌されている(例えば、それはインビボ注射に適している)。別の局面では、本発明は、少なくとも2つの単量体単位の長さを有するβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物を提供する。ここで、グルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換されており、そしてその多糖類はキャリアー化合物と結合体化している。
【0008】
本明細書全体において、「本発明の多糖類」とは、アセテート置換が50%未満であるStaphylococcusポリN−アセチルグルコサミン(PNAG)表面多糖類をいう。この多糖類は本明細書において脱アセチル化PNAG(dPNAG)と称される。dPNAGは、完全にまたは部分的に脱アセチル化され得、ただしアセチル化の範囲は0から50%未満であることが理解される。本明細書において使用される場合、天然PNAGはさまざまな程度のアセチル化を有するPNAGの形態の混合物である。天然PNAGはdPNAGを含み得るが、しかし、高いアセチル化形態のPNAGを有する混合物として存在する。本明細書において使用される「高いアセチル化」形態のPNAGとは50%より多くのアセテート置換を有するPNAGである。
【0009】
いくつかの実施形態は、本発明の様々な局面に等しく適用される。これらの実施形態を以下に記載する。
【0010】
一つの実施形態では、この単離された多糖類は次に示す構造によって定義される:
【0011】
【化4】
【0012】
ここで、nは4より大きいまたは等しい整数であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択され、R基の50%未満は−NH−CO−CH3である。この多糖類がキャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合しているリンカーと結合体化している、本発明のいくつかの局面のnは2、3、4、またはそれより大きい。
【0013】
一つの実施形態では、この多糖類は、少なくとも800ダルトンの分子量を有し、他方、他の実施形態では、分子量は、少なくとも1000ダルトンである。なおさらなる実施形態では、分子量は、少なくとも1200ダルトン、少なくとも2000ダルトンより大きく、少なくとも2500ダルトン、少なくとも5000ダルトン、少なくとも7500ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも25,000ダルトン、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも75,000ダルトン、および少なくとも100,000ダルトンからなる群より選択される。なおさらなる実施形態では、分子量は、少なくとも125,000ダルトン、少なくとも150,000ダルトン、少なくとも200,000ダルトン、少なくとも250,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも350,000ダルトン、少なくとも400,000ダルトン、少なくとも450,000ダルトン、および少なくとも500,000ダルトンからなる群より選択される。
【0014】
この単離された多糖類は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5または少なくとも6の単量体単位の長さを有し得る。他の実施形態では、この多糖類の長さは、少なくとも6単量体単位、少なくとも10単量体単位、少なくとも20単量体単位、少なくとも50単量体単位、少なくとも100単量体単位、少なくとも200単量体単位、少なくとも300単量体単位、少なくとも400単量体単位および少なくとも500単量体単位からなる群より選択される。
【0015】
他の実施形態では、グルコサミンのアミノ基(またはR基)の、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下がアセテートに置換される。なおさらなる実施形態では、グルコサミンのアミノ基のいずれもがアセテートで置換されていない。このdPNAGはこれらのいずれかであり得る。
【0016】
それゆえに、この多糖類は、ヘテロ置換ポリマーであり得、ここで、このR基はアセテート置換基(例えば、−NH−CO−CH3)および非置換アミン基(例えば−NH2)の混合物であり、ただし、これらの基の50%はアセテートに置換される。このR基の全てがアミノ基である(いずれもがアセテート置換されていない)場合、この多糖類はまた、ホモ置換され得る。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、この単離された多糖類はキャリアー化合物と結合体化され得る。このキャリアー化合物はリンカーを通してこの多糖類と結合体化され得る。このキャリアー化合物はペプチドキャリアー化合物であり得るが、しかし、このキャリアー化合物はそれに限定されない。
【0018】
これらのおよび他の実施形態では、この単離された多糖類を含む組成物は、薬学的に受容可能なキャリアーをさらに含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、この組成物は、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋または少なくとも99%純粋である(すなわち、この組成物において存在するこの多糖類の、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%がdPNAGである)。なお他の実施形態では、この組成物は、リン酸塩またはテイコ酸を実質的に含まない。好ましくは、この組成物は、グルコサミンのアミノ(R)基において50%より多くのアセテート置換、75%より多くのアセテート置換、90%より多くのアセテート置換を有する多糖類を実質的に含まない。
【0020】
いくつかの実施形態では、この多糖類は次以下の構造からなる。
【0021】
【化5】
【0022】
ここで、X1、X2、X3,X4,X5およびX6の各々は、H,キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのいずれかであり;およびY1,Y2およびY3の各々は、OH、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのいずれかである。いくつかの実施形態では、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのうち一つのみが、この構造と結合体化される。他の実施形態では、X1,X2、X3,X4、X5またはX6の一つのみが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーと結合体化される。なおさらなる他の実施形態では、Y1,Y2またはY3の一つのみが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合するリンカーと結合体化される。なおさらなる他の実施形態では、キャリアー化合物またはキャリアー化合物に結合するリンカーのうち一つのみが、このX1,X2、X3,X4、X5、X6、Y1,Y2またはY3の位置のうちの一つにおいて結合体化する。このキャリアー化合物は多糖類であり得る。他の実施形態では、このキャリアー分子は、他の多糖類、ペプチドなどのような一つ以上のキャリアー化合物に、必要に応じて、直接またはリンカーを介して置換された多糖類である。いくつかの実施形態では、このキャリアー多糖類は、N−アセチル−ベータ(β)1−6グルコサミンではない。Xがキャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合しているリンカーである、本発明のいくつかの局面では、nは、2、3、4またはそれより大きくあり得る。
【0023】
本発明は、本発明の多糖類のいずれかを含む、薬学的組成物を提供する。この組成物は、ワクチンとして使用され得る。これらの組成物は、抗原特異的免疫応答のような免疫応答を刺激する有効な量でこの多糖類を含む。このワクチン組成物が、薬学的に受容可能なキャリアーおよび/またはアジュバントをさらに含み得る。この薬学的組成物は、キャリアー化合物と、直接またはリンカーを介してのいずれかで、結合体化された多糖類を含み得る。
【0024】
本発明の他の局面は、本発明のこの多糖類を作製するための方法を提供する。これらの方法は以下に記載される。
【0025】
一つの局面では、本発明は以下に示す方法によって調製される、単離された多糖類を提供する:濃縮された細菌の細胞体調製物から多糖類粗調製物をエタノール沈澱する工程;この粗多糖類をリゾチームおよびリソスタフィンを用いて同時に消化し、次いで、ヌクレアーゼおよびプロテイナーゼKを連続して用いて消化して、消化された多糖類調製物を形成させる工程;この消化された多糖類調製物をサイズ分画する工程;アセチル化多糖類の画分を単離する工程;このアセチル化多糖類を脱アセチル化して、脱アセチル化多糖類(すなわち、50%未満のアセテート置換を有する多糖類)を産生する工程。
【0026】
別の局面では、本発明はまた、以下の方法によって調製される、多糖類を含む多糖類抗原を提供する:細菌培養物から純粋でない多糖類を調製する工程;この純粋でない多糖類を酸または塩基とともにインキュベートさせて、半純粋な多糖類を産生する工程;この調製物を中和する工程;この中和された調製物をフッ化水素酸中でインキュベートさせる工程。一つの実施形態では、この方法はさらに、この調製物からアセチル化多糖類を単離する工程、およびこのアセチル化多糖類を脱アセチル化して、脱アセチル化多糖類を産生する工程を含む。一つの実施形態では、このアセチル化多糖類は、50%未満である所望の程度にまで、化学的に脱アセチル化される。別の実施形態では、このアセチル化多糖類は、50%未満である所望の程度にまで、塩基性溶液とともにインキュベートされることにより、脱アセチル化される。なお別の実施形態では、このアセチル化多糖類は酵素学的に、脱アセチル化される。
【0027】
様々な実施形態は、上記の方法に適用される。これらのさらなる実施形態のいくつかは、以下に記載される。この細菌培養物は、コアグラーゼ陰性Staphylococcus培養物またはコアグラーゼ陽性Staphylococcus培養物であり得る。この細菌培養物は、Staphylococcus aureus培養物またはStaphylococcus epidermidis培養物であり得る。別の実施形態では、多糖類調製物は、カラムを用いてサイズ分画される。
【0028】
本発明の多糖類の調製物の例は、以下の通りである:細菌培養物は、強塩基および強酸とともにインキュベートされて、酸または塩基性溶液が作製される。次いでこの酸溶液および塩基性溶液は、pH2に中和されて、抗原粗懸濁液が生産される。この抗原粗懸濁液は、脱イオン化水のような溶液に対して透析され、そして不溶性粗抗原が収集される。この不溶性粗抗原は、凍結乾燥され得、次いで緩衝液中で再懸濁され得る。この緩衝液は50mM PBSおよび100mM Trisからなる群より選択され得、150mM NaClを伴う。上記強塩基または強酸は、1N NaOHまたは1M HClより強くあり得る。いくつかの実施形態では、この強塩基および強酸は、5N NaOHまたは5M HClである。別の実施形態では、細菌培養抽出物は、18〜24時間にわたり強塩基または強酸中で攪拌される。この強塩基または強酸の抽出はくりかえされ得る。この方法は、抗原調製物を処理して、アセテート置換の所望の程度に到達するまでアミノ結合化アセテート基を除去して、脱アセチル化PNAGを産生する工程をさらに含む。脱アセチル化は、化学的にまたは酵素学的のいずれかで行われ得る。例えば、この抗原調製物は、1.0N NaOH中で、2〜20時間にわたり37℃でインキュベートされ得る。このインキュベーションはまた、より長い時間またはより高い温度でより弱い塩基中で、またはより短い時間もしくはより低い温度でより強い塩基中で行われ得る。
【0029】
あるいは、上記の方法は、さらなる脱アセチル化の必要なしに、50%未満のアセテート置換を有する調製物から単離された画分を代わりに含み得る。
【0030】
なお別の局面では、本発明は、薬学的組成物を作製するための方法を提供する。一つの実施形態では、この多糖類は、薬学的に受容可能なキャリアーおよび/またはアジュバントと合わされる。別の実施形態では、この多糖類は、直接またはリンカーを介してのいずれかで、キャリアー化合物と結合体化され、次いで必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアーおよび/またはアジュバントと合わされる。
【0031】
本明細書に記載の脱アセチル化多糖類(すなわちdPNAG)は、のいずれもは本発明の薬学的または予防方法において使用され得る。
【0032】
別の局面では、本発明は、被験体、好ましくは非げっ歯類被験体における、Staphylococcus感染を予防するための方法を提供する。本発明は、本発明の任意の多糖類を、Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するための有効な量で、それを必要とする被験体を、投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、StaphylococcusはStaphylococcus aureusであり、および他の実施形態では、StaphylococcusはStaphylococcus epidermidisである。
【0033】
この被験体は、Staphylococcus感染され得る任意の被験体であり、および好ましくはげっ歯類ではない。いくつかの実施形態では、この被験体、ヒトの被験体であり、そして他の実施形態では、この被験体は、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌまたはネコである。
【0034】
いくつかの実施形態では、この被験体は、Staphylococcusにさらされる危険状態にあり、そして他の実施形態では、この被験体はStaphylococcusにさらされた被験体である。いくつかの実施形態では、この被験体は、60歳を超えるヒトである。この被験体は、健康な被験体であり得る。いくつかの実施形態では、この被験体は、医療デバイス移植物を受けていない。
【0035】
好ましくは、この多糖類は、本明細書において記載されているかまたは当該分野において公知であるように、ワクチンとして処方される。関連する実施形態では、この多糖類は、アジュバントとともに投与される。他の実施形態では、この多糖類は、被験体に全身投与される。この抗原は、キャリアー化合物と結合体化され得る。いくつかの実施形態では、このキャリアー化合物は、ペプチド化合物であるが、これに限定されない。
【0036】
別の局面では、本発明は、被験体におけるStaphylococcus感染に対する能動免疫を誘導するための方法を提供する。この方法は、Staphylococcus感染に対する能動免疫を誘導するための有効な量の、任意の上記の多糖類を含む組成物を、被験体に投与する段階を含む。一つの実施形態では、この方法は、Staphylococcus aureusによる感染に対する免疫を誘導するための方法である。別の実施形態では、この方法は、Staphylococcus epidermidisによる感染に対する免疫を誘導するための方法である。
【0037】
本発明の別の局面によって、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を産生するための方法は提供される。この方法は、Staphylococcusに対して特異的な抗体を産生するために有効な量の、アジュバントおよび本発明の任意の多糖類を、被験体に投与する工程、およびこの被験体から抗体を単離する工程を含む。本発明のこれらおよび他の局面では、この多糖類は抗原として使用される。一つの実施形態では、この被験体は、ヒトであり、他方、他の実施形態ではこの被験体は、ウサギ、マウスまたはラットのような非ヒト被験体である。この方法は、この抗体を精製する工程をさらに含み得る。
【0038】
別の局面では、本発明は、モノクローナル抗体を産生するための方法を提供する。この方法は、Staphylococcusに対して特異的な抗体を産生するのに有効な量の本発明の単離された多糖類およびアジュバントを被験体に投与する工程、この被験体から脾臓細胞を採取する工程、この被験体からの脾臓細胞と骨髄腫細胞とを融合する工程、ならびに融合サブクローンから抗体産生物を採取する工程を包含する。
【0039】
本発明のなお別の局面によって、本発明の多糖類に対して特異的なモノクローナル抗体を同定する方法が提供される。この方法は、非ヒト被験体における抗原に対する免疫応答を誘導する工程、この被験体から抗体産生細胞を単離する工程、抗体産生細胞から不死化細胞を産生する工程、および本発明の多糖類を用いて、この不死化細胞がこのモノクローナル抗体を産生する能力を試験する工程を含む。一つの実施形態では、この方法はまた、この不死化細胞の上清からモノクローナル抗体を単離する工程を含む。
【0040】
本発明は、本発明の単離された多糖類に選択的に結合する、単離された結合因子を含む組成物をさらに提供する。一つの実施形態では、この単離された結合因子はペプチドである。このペプチドは、抗体、またはそのフラグメントであり得る。この抗体は、ポリクローナル抗体であり得る。この抗体は、ヒトの抗体またはキメラ抗体であり得る。いくつかの重要な実施形態では、この抗体はヒトの抗体である。いくつかの実施形態では、この単離された結合因子は、dPNAGに特異的に結合する。他の実施形態では、この単離された結合因子は、dPNAGおよびdNAGの高いアセチル化形態の両方と結合する。
【0041】
いくつかの実施形態によって、この単離された結合因子は、検出可能標識と結合体化される。この検出可能標識は、放射性標識、酵素、ビオチン分子、アビジン分子または蛍光色素からなる群より選択され得る。この単離された結合因子は、抗生物質のような殺菌剤と結合体化され得る。
【0042】
本発明の別の局面によって、被験体においてStaphylococcus感染に対する能動免疫を誘導する方法が提供される。この感染は、Staphylococcus aureus感染またはStaphylococcus epidermis感染であり得るが、これに限定されない。この方法は、dPNAGと結合する上記の抗体のひとつの、Staphylococcusのオプソニン化を誘導するのに有効な量を、被験体に投与する工程を含む。
【0043】
Staphylococcus感染の予防を意図された上記の方法は、そのような感染の発生の危険状態にある被験体に対して行われ得る。これらの方法は、同様に、Staphylococcus感染を有する被験体の処置に適用され得る。本発明の予防および治療方法は、天然PNAGを発現する細菌種からの感染を有するか、または感染する危険状態にある被験体において使用され得る。
【0044】
さらなる局面では、本発明は、Staphylococcus感染を有する被験体を処置するための方法を提供する。その方法は、本発明の単離された多糖類と結合する、単離された結合因子を、Staphylococcus感染を阻害するのに有効な量で被験体に投与する工程を含む。重要な実施形態では、この結合因子は、PNAGの高いアセチル化形態およびdPNAGと結合する。
【0045】
一つの実施形態では、このStaphylococcus感染は、Staphylococcus epidermidis感染およびStaphylococcus aureus感染からなる群より選択される。別の実施形態では、この単離された結合因子は、抗生物質のような殺菌剤と結合体化される。
【0046】
本発明の別の局面では、多糖類が被験体においてStaphylococcus感染から保護する能力を評価するための方法を提供する。この方法は、この多糖類の有効な量を、被験体に投与する工程(ここで、この多糖類は、能動免疫を誘導する)、この被験体にStaphylococcusをさらす工程、およびこの被験体におけるStaphylococcusの存在について試験する工程を包含する。
【0047】
なお別の局面では、本発明は、サンプルにおけるdPNAGの存在を同定する方法を提供する。その方法は、サンプルを、dPNAGと結合する単離された結合因子と接触させる工程、および単離された結合因子のこのサンプルへの結合を検出する工程を含む。単離された結合因子のこのサンプルへの結合は、このサンプルにおけるdPNAGの存在を示す。この結合因子がまたPNAGにも結合する場合、この方法はまたこのサンプルにおけるPNAGの存在を検出するために使われ得る。一つの実施形態では、このサンプルは、被験体から得られる生物学的サンプルである。この生物学的サンプルは、尿、血、膿、皮膚、痰、関節液、リンパおよび乳汁からなる群より選択され得る。一つの実施形態では、この単離された結合因子は、本明細書に記載の検出可能標識のような検出可能標識と結合体化される。サンプルはまた、移植可能な医療デバイスまたは移植された医療デバイスのスワブから得られ得る。
【0048】
本発明の限定の各々は、本発明の様々な実施形態を包含し得る。それゆえ、任意の一つの要素、または要素の結合を含む、本発明の限定の各々は、本発明の各々の局面に含まれ得ることが予想される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(発明の詳細な説明)
本発明は、Staphylococcus細菌から得られる多糖類の抗体に関する。これらの抗体は、細菌感染に対する免疫を誘導するために、ならびに診断目的および治療目的のための抗体を産生するために有用である。
【0050】
本発明は、乏しくアセチル化されている(すなわち脱アセチル化された)ポリ−N−アセチルグルコサミン(PNAG)(本明細書ではdPNAGと称する)が、高度に免疫原性であり、従って、インビボで保護性免疫応答を刺激するための適切なワクチン候補に相当するという発見に部分的に基づく。脱アセチル化PNAGは、アミノ基の50%未満がアセテート置換されているPNAGである。いくつかの好ましい実施形態では、35%以下のアセテート置換が存在し、他方、他の実施形態では、15%以下のアセテート置換が存在する。本発明によって、dPNAGは、天然PNAGよりも、オプソニンの保護性抗体をより良好に惹起できることがさらに発見された。「天然」PNAGとは、0〜100%に及ぶアセチル化レベルの範囲内の、天然存在するPNAGの混合物が自然に生じることをいう。従ってPNAGは、本明細書に記載の脱アセチル化方法を用いて、天然PNAGから得られ得る。dPNAGに対して調製される抗体は、S.aureusおよびS.epidermidisのようなStaphylococcusに対して有効である。従って、本発明によって、アセチル化の程度が、インビボでの抗体投与において誘導される免疫応答のレベルに影響することが発見された。dPNAG投与の後に惹起される抗体は、dPNAGを認識し、および重要な実施形態ではまた、PNAGの高いアセチル化形態を認識する。
【0051】
本発明は、単離されたdPNAGの組成物、単離する方法、およびいくつかの例ではdPNAGを精製する方法、ならびに、インビボでの治療方法、予防方法および診断方法を含む、使用方法を提供する。本明細書で使用される場合、このdPNAGは、dPNAG抗原として称され得る。後者の用語は、交換可能であることを意図される。本発明はまた、ワクチンとして使用され得るdPNAGの薬学的組成物を提供する。
【0052】
いくつかの局面では、dPNAGは、次の構造を有する。
【0053】
【化6】
【0054】
ここで、nは2から300以上に及ぶ整数であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択される。ただし、R基の50%未満は−NH−CO−CH3である。dPNAGは、ベータ(β)1−6結合を有する(すなわちdPNAGは、ベータ(β)1−6結合によってともに結合されているグルコサミン単量体単位で構成される)。
【0055】
dPNAGは、全てのR基が置換されていない(すなわち、R=NH2)である場合、ホモポリマーであり得る。ホモポリマーは、グルコサミン残基のR基が同一である、dPNAGである。dPNAGはまた、R基の位置が、−NH2および−NH−CO−CH3基の混合物を有するヘテロポリマーであり得る。ただし、R基の50%未満がアセテートに置換される。この実施形態によると、R基の49%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満または1%未満がアセテートに置換され得る。
【0056】
dPNAGのサイズは大いに変動し、そして本明細書に記載のようにdPNAGがキャリアー化合物と結合体化されるかどうかに依存する。いくつかの局面では、dPNAG抗原は、少なくとも100,000ダルトンの分子量を有する。他の局面では、dPNAG抗原は、2000ダルトン未満の分子量を有する。PNAGの分子量は、少なくとも200ダルトン、または少なくとも400ダルトン、または少なくとも600ダルトン、または少なくとも800ダルトンであり得る。より低い分子量のdPNAGは、本発明によって、好ましくはキャリアー化合物と結合体化される場合に、使用され得る。これらのdPNAGは、2〜3単量体単位程度に小さくあり得るが、好ましくは少なくとも4〜6単量体単位の長さである。これらに対応する分子量は、約400、約600、約800、約1000および約1200ダルトンである。500から20,000,000ダルトンまでの間の多糖類は、典型的である。
【0057】
理解されるように、上記の構造におけるnの値は、この抗原の分子量に対して影響を与える。nが300以上の場合は、この構造における最小多糖類の分子量は60,918ダルトンである(300単位×203ダルトン/単位+末端残基における置換基についての18ダルトン)。この抗原が100,000ダルトンの最小分子量を有する場合、この多糖類は、300単位より多くを有するか、またはこの多糖類は、この分子量における違いを創出するキャリアー化合物と結合体化されるかのいずれかである。
【0058】
本発明は、dPNAG抗原の、天然に存在する形態および合成された形態の両方を提供する。本明細書に記載のように、この天然に存在するdPNAGは、天然に存在する供給源に存在する、または天然に存在する供給源から単離され得るか、もしくは天然に存在する供給源に由来し得るdPNAGである。dPNAG抗原はまた、単離された形態で提供される。dPNAGのような単離された多糖類は、通常存在する環境から取り出され、従って分離される。いくつかの例では、単離された多糖類は、構造的にまたは機能的に特徴付けられた他の化合物から充分に分離される。例えば、単離された多糖類は、その化学的組成を決定するために「配列決定され」得る。
【0059】
dPNAGは、このica遺伝子座を有する任意の細菌株から調製され得る。これらの株としては、S.epidermisおよびS.aureusが挙げられるが、これらに限定されず、このica遺伝子座においてこの遺伝子で形質転換されている他の株(例えばS.carnosus)も含む。特に、dPNAGは、S.epidermis RP62A(ATCC番号35984)、S.epidermis RP12(ATCC番号35983)、S.epidermis M187、S.carnosus TM300(pCN27)、S.aureus RN4220(pCN27)およびS.aureus MN8ムコイドを含む特定の株から調製され得る。
【0060】
一つの方法は、塩基または酸とともに純粋でないPNAGをインキュベートして、半純粋のPNAG調製物を生産する工程、この調製物を中和する工程、およびさらにこの中和された調製物をさらに処置してdPNAGを生産する工程を含む。
【0061】
純粋でない天然PNAGは、細胞および無細胞培養物上清を含む、細菌培養物からの天然PNAG粗調製物を抽出して、このPNAG粗調製物から高い分子量の天然PNAG豊富な材料を単離を生じさせる工程を包含する様々な方法によって調製され得、そしてメタノール、エタノール、アセトンまたはおよび水溶液から多糖類の沈澱を引き起こす能力を有すると当該者に知られている他の任意の有機溶媒のような溶媒を用いて、高い分子量のPNAG豊富な材料を含む純粋でないPNAGを最初に沈澱することによって得られ得る。この天然PNAG粗調製物を抽出する工程、および純粋でない天然PNAG抗原調製物を単離して、そして沈澱する工程は、米国特許第5,055,455号を含む方法のような、当該分野で知られている任意の方法によって行われる。この純粋でない材料は、精製され、そして脱アセチル化されて、そして本発明のdPNAGが生産される。
【0062】
この精製工程は、リゾチーム、リソスタフィンおよびプロテイナーゼKのような細胞壁破壊因子、ならびにDNAおよびRNAを消化するDNaseおよびRNaseのようなヌクレアーゼ酵素を含む、生物学的材料を消化し得る細菌性酵素とともに、純粋でないPNAGをインキュベートすることによって達成される。そのあとに、溶液からPNAGを沈澱させる溶媒を添加する工程、この沈澱を収集する工程およびNaOHのような塩基、またはHClのような酸中でPNAGを再溶解する工程、その次に中和する工程が続く。この中和は、このインキュベーションされる工程が酸で行われた場合は塩基を用いて、またはこのインキュベーションされる工程が塩基で行われた場合は酸を用いて、達成され得る。次いで、この中性材料からの不溶性画分は、例えば、フッ化水素酸中でインキュベーションされて、純粋な天然PNAG抗原を生産すること、またはpHが4.0より小さい緩衝液中で再溶解され、そのあと分子篩および/またはイオン交換クロマトグラフィーで処理されるような、処理をされる。
【0063】
別の単離方法は、強塩基または強酸とともにこの細菌をインキュベートさせることによって、細菌培養物からPNAG粗懸濁物を抽出する工程を含む。好ましくは、細菌は、少なくとも2時間、およびより好ましくは少なくとも5時間、10時間、15時間、18時間または24時間、強塩基または強酸中で攪拌される。この強塩基または強酸は、任意のタイプの強塩基または強酸であり得るが、好ましくは少なくとも1MNaOHまたはHClの強さを有する。いくつかの実施形態では、この強塩基または強酸は、5MNaOHまたは5MHClである。次いで、この酸溶液または塩基溶液は、遠心分離されて、細胞体が収集される。いくつかの実施形態では、この抽出手順は、数回繰り返される。生じた酸溶液または塩基溶液は、約pH7に中和され、次いで透析されて、不溶性の純粋でないPNAGが生産される。
【0064】
dPNAGは、50%よりも多くアセテート置換された天然に存在する多糖類から合成され得る。例えば、このdPNAG抗原は、化学手段(例えば、塩基処理)、または酵素手段によって、高度なアセチル化グルコサミンポリマーを脱アセチル化することにより合成され得る。
【0065】
dPNAG抗原はまた、デノボで合成され得る(例えば、Melean et al.Carbohydrate Research,337:1893−1916,2002を参照)。出発材料としては、ポリグルコース(すなわち、デキストラン)、キチンまたはキトサンのようなポリグルコサミン、およびポリグルコサミノウロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ポリグルコサミノウロン酸はまた、本発明のdPNAG抗原を生産するために使用され得る。様々な置換基を有するポリグルコサミンはまた、このPNAG抗原を生産するために改変され得る。例えば、多糖類細胞内付着因子(PIA)は、β−1−6結合型グルコサミン残基の高度なアセチル化ポリマーである。PIAは次の構造を有する。
【0066】
【化7】
【0067】
イミン部分(C−NH)を含むこれらの多糖類に対して、遊離アミノ基は、当業者に公知の通常の化学技術によって形成され得る。一つの適切な方法は、ホウ化水素ナトリウムの使用を含む。このイミン基はホウ化水素ナトリウムを用いて還元され得、遊離アミノ基が生成され得る。これは、2時間室温で攪拌しながら、5mg過剰ホウ化水素を、蒸留水に溶解させた多糖類に加えることによって行われる。次いで、この混合物は水に対して透析され、そして凍結乾燥される。(例えば、DiFabio,et al. Biochem J.,1987 15;244(1):27−33を参照)。
【0068】
本発明は、様々な純度のdPNAG調製物を提供する。本明細書に記載のように、「純粋なdPNAG調製物」は、単離されまたは合成されて、そして92%より多く不純物がないdPNAG調製物である。これらの不純物は、高度のアセテート置換PNAG形態(すなわち、50%より多いアセテート置換体)、ガラクトース、リン酸塩、テイコ酸などを含む。いくつかの実施形態では、dPNAG組成物は、少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%不純物がない、または100%不純物がない。
【0069】
dPNAG組成物はまた、不純物が「実質的にない」と称され得る。例えば、ガラスト−スが実質的にないdPNAG組成物は、dPNAGを含む調製物の中に、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満のガラストースの存在を指し示す。
【0070】
このdPNAG組成物の純度の程度は、当該分野で公知の任意の手段で評価され得る。例えば、この純度は、ガスクロマトグラフィーおよび核磁気共鳴のような化学的分析アッセイで評価して、この材料の構造的側面を確認し得る。
【0071】
いくつかのdPNAG調製物の別の主な不純物は、ホスフェートを含むテイコ酸であり得る。このテイコ酸不純物は、本発明のdPNAG抗原の、化学的特徴付けおよび免疫原性の両方を妨害し得る。本明細書に記載の本発明の方法は、テイコ酸が実質的にない単離されたdPNAG調製物を生産する能力を有する。テイコ酸が実質的にないdPNAG調製物とは、1.0%未満のホスフェート、より好ましくは0.1%未満のホスフェートを有するdPNAG調製物である。このサンプル中に存在するホスフェートの量は、当該分野で公知の任意の手段によって評価され得る。ホスフェート不純物の量は、Keleti,G.およびW.H.Lederer,((1974)Handbook of Micromethods for the Biological Sciences Van Nostrand Reinhold Co.,New York)に記載の方法を用いて評価され得、これは本明細書により、参考として援用される。手短に言えば、このアッセイは次のように行われる:100μgのサンプルに、43.5mlの水、6.5mlの70%過塩素酸(HClO4)および50mlの20N硫酸(H2SO4)をともに加えて作製された溶液を100μl加える。これは、その上部に大理石を有するチューブの中で、2時間95℃で加熱される。次いで、この混合物は、165℃にて乾燥機の中に置かれ、そしてさらに2時間加熱され、次いで室温まで冷却される。次に、下に記載の方法で作製された試薬5が1ml、このサンプルに加えられる:
試薬1:10mlの水に溶解させた酢酸ナトリウム.3H2O 1.36グラム
試薬2:20mlの水に溶解させたモリブデン酸アンモニウム500mg
試薬3:2mlの試薬1、2mlの試薬2および16mlの水
試薬4:使用直前に調製される、20mlの水に溶解させたアスコルビン酸2mg
試薬5:氷浴中で、試薬3を9mlおよび試薬4を1ml加える。
【0072】
試薬5を加えたあと、チューブは徹底的に混合され、そしてこの光学密度が分光光度計で820ナノメートルで読まれる。第一リン酸ナトリウム(チューブ1本につき0.1〜5μgの範囲)からなる検量線を用いて、この試験サンプル中に存在するホスフェートの量を計算する。(Lowry,O.H.,N.R.Roberts,K.Y.Leiner,M.L.Wu and A.L.Farr.,(1954),Biol.Chem.207,1.)。
【0073】
本発明の組成物は、感染のような病理学的状態のインビトロ、インサイチュおよびインビボでの診断を含む、様々な異なる適用に対して有用である。この組成物を用いて、インビボで被験体を免疫して、感染を予防または処置し得る。この組成物はまた、本発明のdPNAG組成物と同じ目的のために有用である、抗体および他の結合性ペプチドを発生させるために使用され得る。従って、本発明は、dPNAGまたは対応する結合因子(例えば、抗体)を含む薬学的組成物を包含する。この薬学的組成物は、それを必要とする被験体に能動免疫または受動免疫のいずれかを誘導させる、ワクチン接種目的のために使用され得る。本発明はまた、dPNAGと結合する抗体のような結合因子を生産するための方法を提供し、この結合因子はStaphylococcus感染および関連する状態の診断および処置において使用され得る。
【0074】
dPNAGは、結合体化された形態または結合体化されない形態で使用され得る。結合体化された形態では、dPNAGは直接またはリンカーを介してのいずれかでキャリアー化合物と結合体化され得る。この結合体化は、グルコサミン単量体単位またはポリマー末端において任意の位置で生じ得る。
【0075】
本明細書において使用される「キャリアー化合物」は、直接またはリンカーを介してのいずれかで多糖類と結合体化され得、および免疫学的に活性または不活性であり得る化合物である。
【0076】
キャリアー化合物としては、タンパク質またはペプチド、多糖類、核酸または他のポリマー、脂質および小分子が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、タンパク質としては、血清アルブミン、免疫グロブリン、アポリポタンパク質およびトランスフェリンのような血漿タンパク質;TRPLE、β−ガラクトシダーゼ、ヘルペスgDタンパク質、アレルゲン、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドのポリペプチド、サルモネラのフラゲリン、ヘモフィルスのピリン、ヘモフィスルスの15kDa膜タンパク質、ヘモフィスルスの28〜30kDa膜タンパク質、ヘモフィスルスの40kDa膜タンパク質、Escherichia coli、非耐熱性(heat−label)エンテロトキシンltb、コレラ毒素のような細菌性ポリペプチド、またはロタウイルスVPおよび呼吸器系合胞体ウイルスfタンパク質および呼吸器系合胞体ウイルスgタンパク質を含むウイルスタンパク質を含む。本発明において有用なタンパク質は、哺乳動物に対して投与するのに安全であり、および必要に応じて免疫学的に有用なキャリアータンパク質である任意のタンパク質を含む。
【0077】
免疫化に特に有用であるキャリアー化合物としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのチログロブリン、またはダイズトリプシンインヒビターのようなタンパク質が挙げられる。免疫される動物のその種において免疫原性である任意の他の化合物が、同様にして使用され得る。
【0078】
多糖類をタンパク質に結合体化させる多くの方法が、当該分野で公知である。一般的に、この多糖類は、活性化され得るか、さもなければ結合体化されやすくさせられるべきであり、すなわち、少なくとも一つの部分が、タンパク質または他分子と共有結合する能力を有するようになされなければならない。多くのそのような方法は、当該分野で公知である。例えば、Jenningsに対して発行された、米国特許第4,356,170号は、過ヨウ素酸を使用して多糖類のアルデヒド基を生成させ、次いでシアノホウ化水素を用いて還元的アミノ化が行われることを記載する。Tsay et al.に対して発行された、米国特許第4,663,160号もまた、過ヨウ素酸を使用してアルデヒド基を生成させるが、次いでシアノホウ化水素のような還元剤の存在下で、シフの塩基反応を用いて(縮合剤の存在下で調製される)4〜12炭素部分を用いて誘導されたタンパク質に、多糖類を結合させた。Gordonに対して発行された、米国特許第4,619,828号は、臭化シアンを用いて多糖類を活性化させ、次いで4〜8炭素原子のスペーサーブリッジを通して、活性化された多糖類とこのタンパク質を結合体化させた。AndersonおよびClementsに対して発行された、米国特許第4,808,700号では、多糖類は、過ヨウ素酸塩による限定的酸化的開裂、グリコシダーゼによる加水分解、または酸加水分解を用いて改変され、少なくとも一つの還元末端を生成させ、そしてシアノホウ化水素の存在下において還元性アミノ化を通してタンパク質と結合体化された。PorroおよびCostantinoに対して発行された、米国特許第4,711,779号は、シアノホウ化水素ナトリウムを用いて還元した末端基に、第一級アミノ基を導入することによって多糖類を活性化し、次にアジピン酸の存在下でエステルに転換し、そしてジメチルスルホキシドのような有機溶媒の存在下で、トキソイドと結合体化させることを記載した。結合体化の多くの他の方法は当該分野で公知である。
【0079】
キャリアー化合物は、リンカーまたはスペーサーを介してdPNAGと結合体化され得る。多糖類は、当該分野で公知の任意の手段によって、リンカーまたはスペーサーと結合され得る。その手段としては、例えば、この多糖類の遊離還元末端を使用して、スペーサーまたはリンカーとの共有結合を生成する方法である。共有結合は、dPNAGの遊離還元末端を遊離1−アミノグリコシド(1−aminoglycocide)に転換することによって生成され得る。次いでそれは、アシル化によりスペーサーと共有結合され得る。(Lundquist et al.,J.Carbohydrate Chem.,10:377(1991))。あるいは、dPNAGは、このスペーサー上での活性基としてN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステルを用いて、このスペーサーと共有結合され得る。(Kochetkow,Carbohydrate Research,146:C1(1986))。dPNAGの遊離還元末端はまた、ヨウ素および水酸化カリウムを用いてラクトンに転換され得る。(Isabell et al.,Methods of Carbohydrate Chemistry,Academic Press,New York(1962))。このラクトンは、このスペーサーまたはこのリンカー上にある第一級アミノ基を用いて、このスペーサーと共有結合され得る。dPNAGの遊離還元末端はまた、還元性アミノ化を用いて、このリンカーまたはこのスペーサーと共有結合され得る。
【0080】
本発明は、dPNAGと結合する抗体を含む。この抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかであり得る。このdPNAG抗体はdPNAGに結合し、そしてまた、50%より多くアセチル化されたPNAG形態と結合し得る。
【0081】
ポリクローナル抗体は、一般的に、抗体およびアジュバントの複数回の皮下注射または腹腔内注射によって動物の中に惹起させられる。dPNAGに対するポリクローナル抗体は、dPNAGの結合体化された形態または結合体化されない形態を、単独で、またはアジュバントとの組み合わせにより、注射することにより生成され得る。
【0082】
ポリクローナル抗体調製物の例を次に示す。dPNAGまたはdPNAG結合体は、フロイント完全アジュバントのようなアジュバントと結合体化され、(例えば、1〜3容積フロイント中に、ウサギまたはマウスに対して100μgの結合体)、そして複数箇所の皮内に注射される。約1ヶ月後、この動物は、複数箇所の皮下に注射されたアジュバント中の抗原または抗原結合体の、初回投与量の5分の1〜10分の1量を用いて追加免疫される。一週間〜二週間後、この動物から採血され、そしてその血清は抗体の存在についてアッセイされる。この動物は、抗体力価がプラトーに達するまで繰り返し追加免疫され得る。この動物には、dPNAG単独、dPNAG結合体、または異なるキャリアー化合物と結合体化されたdPNAGが、アジュバントとともにまたはアジュバントなしで注射され得る。いくつかの実施形態では、この追加免疫は、dPNAGではなくPNAGを含み得、またはこの追加免疫は、dPNAGおよびPNAGの混合物を含み得る。
【0083】
ポリクローナル抗体源を供給することに加えて、この免疫された動物は、抗dPNAGモノクローナル抗体を生成させるために使用され得る。本明細書において使用されるように、用語「モノクローナル抗体」とは、dPNAGの同じエピトープ(すなわち、抗原決定基)と結合する免疫グロブリンの均質の集団をいう。このエピトープはまた、50%より多くアセチル化されたPNAG形態の中にも存在し得る。モノクローナル抗体は、同じIg遺伝子再配列を有し、従って同一の結合特異性を示す。モノクローナル抗体は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、骨髄腫細胞と融合またはエプスタインバーウイルス形質転換により免疫された動物から単離された脾臓細胞を不死化すること、および所望の抗体を発現するクローンについてスクリーニングすることによって調製され得る。他の方法は、再配列されたIg遺伝子配列の単離および不死化細胞株中へのクローニングを含む。モノクローナル抗体を調製する方法および使用する方法は、当該分野において周知である。
【0084】
マウスの抗dPNAGモノクローナル抗体は、免疫抗原としてdPNAGを利用するこれらの任意の方法によって作製され得る。抗dPNAGモノクローナル抗体を生成するための方法の次に示す記載は、例示であり、および例示の目的のためのみに提供される。Balb/cマウスは、完全フロイントアジュバントの中の精製されたdPNAGの約75〜100μgを用いて、腹腔内免疫される。不完全フロイントアジュバント中の約25〜50μgの追加免疫注射は、初回注射後約15日および約35日に投与される。60〜65日目に、このマウスはアジュバントの非存在下で約25μgのdPNAGの追加免疫注射を受ける。あるいは、追加免疫注射は、天然PNAG調製物、またはdPNAGとPNAGとの混合物を含み得る。3日後、このマウスは殺され、そして、Oiに記載されているような手順により、ポリエチレングリコールを用いて、単離された脾臓細胞がマウスの骨髄腫NS−1細胞に融合される(Oi VT:Immunoglobulin−producing hybrid cell lines in Herzenberg LA(ed):Selected Methods in Cellular Biology,San Francisco,CA,Freeman,(1980))。ハイブリドーマ細胞は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT)を用いて選択され、そして培養中で増殖される。融合後14日〜15日間、抗dPNAGモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、固定されたヤギ抗マウスIgG有する、馴化培地から抗dPNAG抗体を捕獲すること、次いで特異的に結合した125I−標識されるdPNAGまたは125I−標識されるPNAGの定量化することによる固相ラジオイムノアッセイを用いて同定される。dPNAGに対する抗体に対して陽性であると試験されたハイブリドーマは、限界希釈によりサブクローニングされ、および再試験される。次いで、ハイブリドーマに関する腹水は、プリスタンで初回刺激されたBALB/cマウス中で、マウス1匹につき約1×106個の細胞を注射することによって調製される。この選択されたモノクローナル抗体が濃縮された濃縮物は、S−200上でゲル濾過によって腹水から生産され、NH4SO4を用いて濃縮される。このペレットは、50%グリセロール/H2Oのような適切な保存溶液中に溶解され、そして4℃で保存される。
【0085】
本明細書において使用される「抗dPNAG抗体」は、ヒト化抗体および抗体フラグメント、ならびにdPNAGおよびいくつかの例では50%より多くアセチル化されたPNAG形態に結合する、インタクトなモノクローナル抗体およびインタクトなポリクローナル抗体を含む。本明細書において使用される「ヒト化モノクローナル抗体」とは、ヒト化モノクローナル抗体またはその機能的に活性なフラグメントであり、このフラグメントは、少なくとも、ヒト定常領域およびヒト以外の種の哺乳動物からのdPNAG結合領域(たとえば、CDR)を有する。単離された形態の、または薬学的調製物中のインタクトなヒト化抗dPNAGモノクローナル抗体は、本発明のいくつかの局面に特に適切である。ヒト化抗体は、このヒト化抗体がdPNAGおよび好ましくは天然PNAG形態を特異的に認識するが、ヒトにおいて抗体それ自体に対する免疫応答を惹起しないという点で特に臨床的有用性を有する。一つの好ましい実施形態では、マウスのCDRを、ヒト化抗体のフレームワーク領域へグラフト化して「ヒト化抗体」を調製する。例えば、Riechmann et al.,Nature 332,323(1988);M.S.Neuberger et al.,Nature 314,268(1985)およびEPA 0 239 400(1987年9月30日公開)を参照。
【0086】
ヒトモノクローナル抗体は、当該分野で公知の任意の方法(Borrebaeck et alに対して発行された米国特許第5,567,610号、Ostbergに対して発行された米国特許第565,354号、Baker et al,Kozber,J.Immunol.133:3001(1984)、Brodeur,et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,p.51−63(Marcel Dekker,Inc,new York,1987)およびBoerner et al.,J.Immunol.,147:86−95(1991)に対して発行された米国特許第5,571,893号で公開されている方法)によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体を調製するための通常の方法に加えて、そのような抗体はまた、ヒト抗体を生成する能力のある、トランスジェニック動物を免疫することによって調製され得る(例えば、Jakobovit et al.,PNAS USA,90:2251(1993),Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993),Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)およびLongbergに対して発行された米国特許第5,569,825号)。
【0087】
dPNAGおよび好ましくは他の天然PNAG形態と反応する、ヒト化モノクローナル抗体を調製するための方法の、次に示す例はまた、例示であり、および例示の目的のためのみに提供される。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト以外の哺乳動物の抗体の非CDR領域を、ヒト化抗体の同様の領域と取り替えることによって組み立てられ得、他方、このもともとの抗体のエピトープ特異性を維持され得る。例えば、非ヒトCDRおよび必要に応じていくつかのフレームワーク領域は、ヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域と共有結合され、機能的抗体が生産し得る。米国では、Protein Design Labs(Mountain View California),Abgenix,およびMedarexのような、商業的に、特異的なマウス抗体領域からヒト化抗体を合成する企業が存在する。
【0088】
欧州特許出願第0239400号(その全体の内容は、本明細書により参考として援用される)は、マウス(またはヒト以外の他の哺乳動物)抗体の少なくともCDR部分がヒト化抗体中に含まれるヒト化クローナル抗体の生産および使用の例示的教示を提供する。手短に言うと、次に示す方法は、少なくともマウスCDRの一部分を含む、ヒト化CDRモノクローナル抗体を構築するために有用である。少なくともIgの重鎖または軽鎖の可変領域(ヒト抗体からのフレームワーク領域を含む)およびマウス抗体のCDR領域を少なくともコードするDNA配列から作動可能に結合される、適切なプロモーターを含む、第一の複製可能な発現ベクターが調製される。必要に応じて相補的なヒトIgの軽鎖または重鎖の可変領域を少なくともコードするDNA配列を作動可能に結合させる適切なプロモーターを含む第二の複製可能な発現ベクターが調製される。次いで、このベクターを用いて、細胞株が形質転換される。好ましくは、この細胞株は、骨髄腫細胞株、ハイブリドーマ細胞株、トリオーマ細胞株もしくはクアドローマ細胞株のようなリンパ系起源の、哺乳動物の不死化細胞株であるか、またはウイルスを用いる形質転換によって不死化された正常のリンパ系細胞である。次いで、この形質転換された細胞株を、当業者において公知の条件下で培養して、このヒト化抗体が生産される。
【0089】
欧州特許出願第0239400号の中で示されているように、複製可能ベクターに挿入されるための特定の抗体ドメインを作製するためのいくつかの技術は、当該分野において周知である。(好ましいベクターおよび組換え技術は、下でより詳細に議論される)。例えば、この領域をコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成によって調製され得る。あるいは、粘着末端を有する二本鎖の合成または制限されたサブクローニングされたCDRカセットが、フレームワーク領域の結合部において連結され得るように、4つのフレームワーク領域が、結合部において適切な制限部位とともに融合される、CDR領域が欠如している合成遺伝子。別の方法は、オリゴヌクレオチド部位指向性変異誘発による可変CDRを含むドメインをコードするDNA配列の調製物を含む。これらの方法の各々は、当該分野で周知である。それゆえ、当業者は、マウスCDRを含むヒト化抗体の、そのエピトープに対する抗体の特異性を破壊することなく、マウスCDR領域を含むヒト化抗体を構築し得る。
【0090】
ヒト抗体はまた、dPNAGに対する抗体を生産する血液またはヒト組織から抗体産生リンパ球を回収することによって得られ得る。これらのリンパ球は、適切な培養条件下において実験室でリンパ球自身を増殖させる細胞を生産するために処置され得る。この細胞培養物はまた、dPNAGに対する抗体の生産についてスクリーニングされ得、次いでクローニングされ得る。クローニング培養物を用いて、dPNAGに対するヒトモノクローナル抗体を生産し得、またはこの抗体の重鎖または軽鎖の様々な部分をコードする遺伝子エレメントがクローニングされ得、そして異なるタイプの抗体の生産のために核酸ベクター中へ挿入される。
【0091】
抗体フラグメントに結合するdPNAGもまた、本発明によって包含される。当該分野で周知のように、抗体分子の小さい一部分のみであるパラト−プは、そのエピトープに対する抗体の結合に関与する(一般的に、Clark,W.R.(1986)The Experimental Fondations of Modern Immunology Wiley&Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,Blackwell Scientific Publications,Oxfordを参照)。例えば、この抗体のpFc’領域およびFc領域は、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原の結合に関与しない。pFc’領域が酵素学的に切除されている抗体、またはpFc’領域なしで生産されている抗体(F(ab’)2フラグメントと称される)は、インタクトな抗体の両方の抗原結合部位を保持する。単離されたF(ab’)2フラグメントは、その2つの抗原結合部位のために、二価のモノクローナルフラグメントと称される。同様に、Fc領域が酵素学的に切除されている抗体、またはFc領域なしで生産されている抗体(Fabフラグメントと称される)は、インタクトな抗体分子の抗原結合部位のうちの一つを保持する。さらに前進すると、このFabフラグメントは、共有結合した抗体軽鎖とFdと称される抗体重鎖の一部(重鎖可変領域)からなる。このFdフラグメントは抗体特異性の主な決定基であり(単一Fdフラグメントは、抗体特異性を変えることなしに、10個までの異なる軽鎖と結合され得る)、そしてこのFdフラグメントは、単離物の際エピトープが結合する能力を保持する。
【0092】
用語Fab、Fc、pFc’、F(ab’)2およびFvは、いずれも標準的な免疫学的意味で使用される[Klein,Immunology(John Wiley,New York,NY,1982);Clark,W.R.(1986)The Experimental Fondations of Modern Immunology(Wiley&Sons,Inc.,New York);Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,(Blackwell Scientific Publications,Oxford)]。周知の機能的活性抗体フラグメントとしては、抗体のF(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、FvフラグメントおよびFdフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。インタクトな抗体のFcフラグメントが欠損したこれらのフラグメントは、循環からより急速に除去され、そしてインタクトな抗体よりも少ない特異的組織結合性を有し得る(Wahl et al.,J.Nucl.Med.24:316−325(1983))。例えば、単鎖抗体は、Ladner et al.に対して発行された米国特許第4,946,778号に記載の方法に従って構築され得る。そのような単鎖抗体は、可撓性のあるリンカー部分によって結合された軽鎖および重鎖の可変領域を含む。単離された可変の重鎖の単ドメイン(単ドメイン抗体(「Fd」))を得るための方法もまた、報告されている(例えば、Ward et al.,Nature 341:644−646(1989)を参照、これは、単離された形態において抗体重鎖可変領域(VH単ドメイン抗体)と結合する標的エピトープに対して充分な親和力を有する、抗体重鎖可変領域を同定するためのスクリーニングする方法を開示する。)。公知の抗体重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列に基づく組換えFvフラグメントを作製するための方法は、当該分野で公知であり、そして例えばMoore et al.米国特許第4,462,334号に記載されている。抗体フラグメントの使用および生産を記載する他の参考文献は、例えば、Fabフラグメント(Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevieer,Amsterdam,1985))、Fvフラグメント(Hochman et al.,Biochemistry 12:1130(1973);Sharon et al.,Biochemistry 15:1591(1976);Ehrilch et al.,米国特許第4,355,023号)および抗体分子の一部(Audilore−Hargreaves,米国特許第4,470,925号)を含む。従って、当業者は、このdPNAGエピトープに対する抗体の特異性を破壊することなく、インタクトな抗体の様々な部分から抗体フラグメントを構築し得る。抗dPNAG抗体によって認識されるエピトープはまた、他の天然PNAG形態上に存在し得ることが理解される。
【0093】
この抗体フラグメントはまた、「ヒト化抗体フラグメント」を包含する。当業者が認識するように、そのようなフラグメントは、インタクトなヒト化抗体の伝統的な酵素学的開裂によって調製され得る。しかし、関与する構築物の性質のために、インタクトな抗体がそのような開裂に対して感受性がない場合、言及されるこの構築物は、出発材料として使用される免疫グロブリンフラグメントを用いて調製され得、または、組換え技術が使用される場合、そのDNA配列それ自身が、所望のフラグメント(これを、化学的手段または生物学的手段によってインビボまたはインビトロにおいて組み合わせて、最終の所望のインタクトな免疫グロブリンフラグメントが調製され得る。)をコードするために改変され得る。
【0094】
dPNAGに対して結合特異性を有する他のdPNAG結合因子は、本発明の診断的方法において使用され得る。いくつかの慣用のアッセイは、dPNAG結合性ペプチドを容易に同定するために使用され得る。本発明のペプチドを同定するためのスクリーニングアッセイは、例えば、Hart,et al.,J.Biol.Chem.269:12468(1994)に記載されているようなファージディスプレイ手順を用いて行われる。Hart et al.は、哺乳動物細胞レセプターに対する新しいペプチドのリガンドを同定するための繊維状ファージディスプレイライブラリーを報告する。一般的に、例えば、M13またはfdファージを用いたファージディスプレイライブラリーは、上述の参考文献に記載のような通常の手順を用いて調製される。このライブラリーは、4〜80アミノ酸残基を含む挿入物を提示する。必要に応じて、この挿入物は、完全に縮重のペプチド配列または偏ったペプチド配列のアレイを表す。dPNAGに選択的に結合するリガンドは、dPNAGに結合するリガンドをファージ表面に発現するファージを選択することによって得られる。次いで、これらのファージは、何サイクルかの再選択に供されて、最も有用な結合性特徴を有するペプチドリガンドを発現するファージが同定される。代表的には、最良の結合性特徴(例えば、最も高い親和性)を示すファージを、核酸分析により特徴付けて、ファージ表面上に発現するペプチドの特定アミノ酸配列を同定し、そしてdPNAGへの最適の結合性を達成するために、発現されたペプチドの長さを同定する。
【0095】
あるいは、そのようなペプチドのリガンドは、一つまたはより多くのアミノ酸を含むペプチドの組み合わせライブラリーから選択され得る。そのようなライブラリーはさらに、非ペプチド合成部分を含んで合成される。この部分は、天然に存在する対応物と比較して酵素学的に分解を受け難い。
【0096】
ペプチドがdPNAGと結合するかどうかを決定するために、任意の公知の結合実験が使用され得る。例えば、このペプチドは、表面上に固定され、次いで標識されたdPNAGと接触させられる。次いで、このペプチドと相互作用するdPNAGの量またはこのペプチドと結合しない量を定量して、ペプチドがdPNAGと結合するかどうかを決定し得る。固定された抗dPNAG抗体を有する表面は、ポジティブコントロールとして使用され得る。結合アッセイはまた、推定上のdPNAG特異的抗体がPNAGの他の天然形態と結合する程度を決定し得る。
【0097】
本発明の組成物は、多くのインビボまたはインビトロにおいての目的のために有用である。例えば、本発明の組成物は、例えば、Staphylococcus感染、およびPNAGを生成する他の細菌種によって引き起こされる感染を予防するための、ヒトおよび動物に対しての能動免疫のためのワクチンとして;Staphylococcus感染を予防または処置するための、他の動物またはヒトに対して投与され得る抗dPNAG抗体を生産するためのヒトまたは動物の免疫のためのワクチンとして;Staphylococcus感染を予防する能力のあるモノクローナル抗体、抗体の作成に必要である遺伝子のライブラリー、またはペプチド模倣物のような生物学的因子に対してスクリーニングするための抗原として;Staphylococcus感染、およびPNAGを生成する細菌の他の種によって引き起こされる感染に対する診断的試薬として;ならびに、Staphylococcus感染およびPNAGを生成する細菌の他の種により引き起こされる感染に対する感受性に関して、ヒトまたは動物の免疫状態を決定するための診断的試薬として抗体応答を生産するために有用である。
【0098】
dPNAGは、被験体におけるStaphylococcusによる感染に対する能動免疫を誘導することによってPNAGを作成する細菌を有する感染に対して、被験体を保護するために使用され得る。この方法は、本発明の任意のPNAG組成物の、Staphylococcusに対する抗体応答のような免疫応答を誘導するための有効な量を、被験体に投与することによって達成される。本明細書において使用される「能動免疫」とは、いくつかのリンパ系細胞の、抗体を生産する細胞への分化を引き起こし、およびある例では、他のリンパ系細胞へ分化する、抗原を被験体に導入することを含む。記憶細胞は、抗体を分泌しないが、抗体が再度身体へ投与される場合に抗原を感知するために、その抗体を記憶細胞膜へ取り込む。
【0099】
この方法は、Staphylococcusによる感染に対する免疫を誘導するために有用である。本明細書において使用される「Staphylococcus」とは、このPNAGを発現する全てのStaphylococcus細胞種をいう。任意の特定の機構により拘束されることは意図しないが、PNAGの高いアセチル化(例えば、50%より多くアセチル化されている形態)は、dPNAGと同じ程度まで、オプソニンの保護的な抗体の生産を顕在化することができないと考えられる。Staphylococcusとして分類される細菌は、当業者において周知であり、および微生物学文献の中で記載されている。PNAGを発現するStaphylococcusとして、Staphylococcus epidermidis(RP62A(ATCC番号35984)、RP12(ATCC番号35983)、およびM187を含む)、Staphylococcus aureus(RN4220(pCN27)およびMN8ムコイドを含む)、およびica遺伝子座(TM300(pCN27)を含む)上の遺伝子を用いて形質転換されたStaphylococcus carnosusのような菌株が挙げられるが、これらに限定されない。PNAGを発現する他の細菌株は、通常の当業者によって容易に同定され得る。例えば、ica遺伝子座を発現するStaphylococcus細菌は、PNAGを発現する。通常の当業者は、ica遺伝子座の核酸配列が公知である(配列番号1およびHeilmann,C.,O.Schweitzer,C.Gerke,N.Vanittanakom,D.Mack and F.Gotz(1996)Molecular basis of intercellular adhesion in the biofilm−forming Staphylococcus epidermidis.Molec.Microbiol.20:1083に、通常記載されている)ので、ica遺伝子座に関連するmRNAまたはタンパク質の発現に対して容易にスクリーニングされ得る。PNAGを発現する細菌株はまた、抗PNAG抗体または抗dPNAG抗体を用いて、免疫電子顕微鏡(または他の免疫実験)によって同定され、この細菌の表面上のPNAGの存在を検出し得る。加えて、細菌株の夾膜は、単離され得、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を用いて分析され得る。
【0100】
本明細書において使用される「被験体」とは、温血哺乳動物であり、および、例えば、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、およびネコを含む。いくつかの実施形態では、この被験体は非げっ歯類被験体である。非げっ歯類被験体は、上述で定義された任意の被験体であるが、特にマウス、ラット、およびウサギのようなげっ歯類を除外する。いくつかの実施形態では、好ましい被験体はヒトである。
【0101】
dPNAGは、抗原に対する抗体応答のような免疫応答を誘導する能力のある任意の被験体に投与され得る。この抗体は特に、免疫応答を生産する能力およびStaphylococcus感染を発生する危険状態にある能力を有する被験体に、Staphylococcusによって引き起こされる全身性感染に対する能動免疫を誘導することに適合する。免疫応答を生産する能力およびStaphylococcus感染を発生する危険状態にある能力を有する被験体は、環境性Staphylococcusにさらされる危険状態にある免疫体系を所有する哺乳動物である。例えば、入院患者は、病院の環境においてこの細菌にさらされる状態にある結果として、Staphylococcus感染を発生する危険状態にある。S.aureusによる感染を発生する、特に高い危険集団は、例えば、透析を受ける腎臓病患者、および高い危険の外科手術を受ける個人を含む。S.epidermidisによる感染を発生する高い危険集団はまた、例えば、静脈系(例えば、中心系)、または人工器官(例えば、臀部または膝に代わる人工器官)のような内在性医療デバイスを有する患者を含む。なぜなら、臨床的分離菌は、しばしば、(生物膜または粘液と称される)細胞外材料であるために、可塑性表面に高く接着するからである。いくつかの実施形態では、この被験体は医療デバイス移植物を受け入れられており、および他の実施形態では、この被験体は医療デバイス移植物を受け入れられていないが、医療デバイス移植物を受け入れる予定はあり得る。S.epidermidisによる感染を発生させる危険状態にある被験体は、例えば、化学療法を受ける早期産新生児および患者が含まれる。
【0102】
dPNAGは、抗体応答を誘導するための有効な量を、被験体に投与され得る。本明細書において使用される「免疫応答(例えば、抗体応答)を誘導するための有効な量」は、(i)例えば、被験体(被験体は、dPNAGおよびPNAGの高いアセチル化形態の両方を認識し得る)において抗dPNAG抗体の生産を誘導すること、記憶細胞およびおそらく細胞毒性リンパ球反応などの生産を誘導することによって、被験体自身の免疫保護を生産する際に被験体を補助すること、および/または(ii)Staphylococcusにさらされる被験体において、Staphylococcusによる感染が発生することを予防することに対して充分であるdPNAGの量である。
【0103】
いくつかの好ましい実施形態では、免疫応答を刺激するためのdPNAGワクチンの有効な量は、Staphylococcusの少なくとも2種類(例えば、S.aureusおよびS.epidermidis)と交差反応する抗体の生産を誘発する能力があるdPNAGワクチンの量である。
【0104】
当業者は、dPNAGの量が、当該分野において公知の慣用の方法によって能動免疫を誘導するために充分であるかどうかを評価し得る。例えば、哺乳動物の中で抗体を生産するための特異的な抗原の能力は、dPNAG抗原を用いてマウスまたは他の被験体において抗体をスクリーニングすることによって評価され得る。
【0105】
本発明の抗dPNAG抗体は、感染因子にさらされる危険状態にあるそれらの被験体における全身感染の発生を予防することによって、被験体において受動免疫を誘導するために有用である。Staphylococcus aureusのようなStaphyloccusによる感染に対する受動免疫を誘導するための方法は、例えばStaphylococcus aureusのようなStaphylococcusのオプソニン化を引き起こすことによって、Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するための抗dPNAG抗体の有効な量を被験体に投与されることによって行われる。本明細書において使用される「受動免疫」とは、被験体に対する抗体の投与を包含し、ここで、この抗体は、Staphylococcus細菌の表面に接着して、そしてStaphylococcus細菌が食作用されることを引き起こすような、異なる被験体(同一のおよび異なる種の被験体を含む)において生産される。
【0106】
この抗dPNAG抗体は、受動免疫を誘導するために、Staphylococcus感染を発生する危険状態にある任意の被験体に投与され得、およびいくつかの実施形態では、dPNAGに対する能動免疫を誘導する能力のない被験体のために特に適合し得る。dPNAGを用いてのワクチン接種は、高い免疫無防備状態である危険状態の被験体に完全に有効ではあり得ないので、これらの被験体は、Staphylococcus aureusのようなStaphylococcusに対して惹起された抗体調製物を用いての処置から利益を得ている。免疫応答を誘導する能力のない被験体とは、免疫無防備状態の被験体(例えば、化学療法を受ける患者、AIDS患者など)、または免疫系のまだ発生していない被験体(例えば、早期産新生児)が挙げられる。
【0107】
この抗dPNAG抗体は、Staphylococcus感染を発生する危険状態にある被験体に投与され、この感染因子が体の中で繁殖することを予防し得またはこの感染因子を殺傷し得る。この抗PNAG抗体はまた、Staphylococcusによって引き起こされる感染を既に有している被験体に投与され、この感染因子が体の中で繁殖することを予防し得またはこの感染因子を殺傷し得る。
【0108】
本発明の抗dPNAG抗体は、Staphylococcus aureusのようなStaphylococcusに対して免疫応答を誘導するための有効な量を、被験体に投与される。本明細書において使用される「Staphylococcusに対して免疫応答を誘導するための有効な量」とは、抗dPNAG抗体の量が、(i)Staphylococcusにさらされた被験体において、Staphylococcusによる感染が発生することを予防する;(ii)感染の発生を阻害する、すなわちStaphylococcusの発生を阻止するまたは遅らせる、および/または(iii)Staphylococcus感染を軽減する、すなわち、感染した被験体における、Staphylococcus細菌の根絶に対して充分であることである。
【0109】
当業者で公知の慣用の手順を用いて、抗dPNAG抗体の量は、抗体のオプソニンの程度を予測するインビトロのオプソニン化分析において、「Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するための有効な量」であるかどうかを決定され得る。Staphylococcus細菌をオプソニン化する抗体は、Staphylococcus細菌のサンプルに加えるときにStaphylococcus細菌の食作用を引き起こす抗体である。オプソニン化分析は、比色定量分析、化学発光分析、蛍光または放射性同位元素標識取り込み分析、細胞仲介性細菌分析または細菌のオプソニン潜在性を測定する他の分析であり得る。次に示すオプソニン化分析は、抗dPNAG抗体の有効な量を決定するために使用され得る。抗dPNAG抗体は、Staphylococcus細菌、および真核生物食作用性細胞、および必要に応じて補体タンパク質と共にインキュベートされる。抗PNAG抗体のオプソニンの能力は、インキュベーションのあとに残っているStaphylococcusの量に基づいて決定される。これは、2つの同様のアッセイ(このうち、一方のみがオプソニン化免疫グロブリンを含む)間で、生存するStaphylococcusの数を比較することによって達成される。制御非特異的免疫グロブリンとのインキュベーションと比較すると、Staphylococcusの数の減少は、オプソニン化を指し示す。
【0110】
本発明の方法はまた、抗dPNAGpure抗体のStaphylococcusのオプソニン化を誘導するための有効な量を被験体に投与することによって、被験体においてStaphylococcusに対する受動免疫を誘導するために有効である。本明細書において使用される抗dPNAGpure抗体とは、本発明の純粋なdPNAG抗体と特定に相互作用し、そしてコアグラーゼ陰性Staphylococcusまたはコアグラーゼ陽性Staphylococcusのオプソニン化を誘導するが、dPNAGの純粋でない調製物と相互作用し得ない抗体である。上述において議論されるように、純粋でないdPNAG調製物は、テイコ酸またはこの抗原の免疫原性を妨げ得る他の不純物によって汚染され得る。当業者は、容易に、抗dPNAG抗体が、慣用の結合アッセイを用いて抗dPNAGpure抗体であるかどうかを同定し得る。例えば、抗dPNAG抗体は、表面に固定され得、次いで標識された純粋でないdPNAG調製物または標識された純粋なdPNAG調製物と接触され得る。この抗体と接触するdPNAG調製物(純粋な調製物対純粋でない調製物)の量、またはこの抗体と結合しない量は、次いで、この抗体が純粋でないdPNAG調製物と結合するかどうかを決定するために定量され得る。重要な実施形態では、この抗dPNAGpure抗体は、コアグラーゼ陰性Staphylococcusおよびコアグラーゼ陽性Staphylococcusに対して有効であり、ならびにその表面にdPNAGまたは高くアセチル化されたPNAGを発現する、任意の適切な微生物に対して有効である。
【0111】
dPNAG抗原は、ワクチンとして処方され得る。ワクチンとして処方するための適切なキャリア媒体は、リン酸ナトリウム緩衝化生理食塩水(pH7.4)、またはリン酸ナトリウム緩衝化生理食塩水(pH6)中で懸濁された0.125Mリン酸アルミニウムゲル、および他の従来型の媒体を包含する。一般的に、ワクチンは、この抗原を約5〜約100μgおよび好ましくは約10〜50μg含み、温血の哺乳動物において有効なレベルの抗体を誘発させる。このdPNAGがワクチンとして投与されるとき、必要に応じてアジュバントを含む。
【0112】
用語「アジュバント」とは、dPNAGへ組み込まれるまたはdPNAGとともに同時に投与される、被験体において免疫応答を増強する任意の物質を含むことを意味する。アジュバントは、アルミニウム化合物、例えば、ゲル、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、およびフロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバント(例えば、この中では、このdPNAG抗原は、パラフィン油エマルジョンの中の滅菌水の水層に組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。パラフィン油は、油の異なるタイプ、例えば、スクアレンまたは落花生油に置き換えられ得る。アジュバント性質を有する他の材料は、BCG(弱毒化Mycobacterium tuberculosis)、リン酸カルシウム、レバミゾ−ル、イソプリノシン、多価陰イオン(例えば、ポリA:U)、レンチナン、百日咳毒、リピドA、サポニン、QS−21、およびペプチド(例えば、ムラミルジペプチド)を含む。希土類塩、例えば、ランタンおよびセリウムはまた、アジュバントとして使用され得る。アジュバントの量は、被験体および部分的な使用されるdPNAG抗原(例えば、アセテート置換の程度)に依存し得、そして過度の実験法なしで、当業者によって容易に決定され得る。
【0113】
一般的に、治療目的のために投与されるとき、本発明の処方物は、薬学的に受容可能な溶液中において適用される。そのような調製物は、慣用的に、薬学的に受容可能な塩濃度、緩衝物質、防腐剤、適合性キャリアー、アジュバント、および必要に応じて他の薬学的成分を含む。
【0114】
本発明の組成物は、それ自体が(ニート)または薬学的に受容可能な塩の形において投与され得る。医薬の中で使われるとき、この塩は薬学的に受容可能であるべきだが、非薬学的に受容可能な塩は、都合よく、薬学的に受容可能な塩それ自体を調製するために使用され得、および本発明の範囲から除外され得ない。そのような薬理学的に受容可能な塩および薬学的に受容可能な塩としては、次に示す酸から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に受容可能な塩は、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩またはカルボン酸カルシウム塩のような、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製され得る。
【0115】
適切な緩衝物質は、酢酸および塩(1〜2%W/V);クエン酸および塩(1〜3%W/V);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%W/V);およびリン酸および塩(0.8〜2%W/V)を含む。適切な防腐剤は、塩化ベンザルコ二ウム(0.003〜0.03%W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9%W/V);パラベン(0.01〜0.25%W/V)およびチメロサール(0.004〜0.02%W/V)を含む。
【0116】
本発明は、医療的使用のために、一つまたはより多くの薬学的に受容可能なキャリアーおよび必要に応じて他の薬学的成分とともにdPNAGを包含する、薬学的組成物を提供する。本明細書において使用される用語「薬学的に受容可能なキャリアー」とは、下記においてより充分に記載されるが、ヒトまたは他の動物への投与に適合する、適合性固体賦形剤または適合性液体賦形剤、希釈剤、またはカプセル化する物質を意味する。本発明では、用語「キャリアー」は、有機成分または無機成分、天然物または合成物(これらとともに、主成分は、この適用を容易にするために結合される)を表す。この薬学的組成物の成分はまた、dPNAGと、およびお互いと、この所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用がないような様式において、混合される能力がある。
【0117】
非経口投与に適する組成物は、都合よく、この多糖類の滅菌した水溶性調製物を含み、この調製物はこの受容者の血液に対して等張性であり得る。とりわけ、使用され得る受容可能な媒体および溶媒は、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌した不揮発性油は、慣習的に、溶媒または懸濁培地として使用される。この目的のために、任意の無刺激性不揮発性油は、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含んで使用され得る。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は、注射可能物質の調製物において用途が見つけられる。皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与などに適したキャリアー処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて見つけられ得る。
【0118】
本発明の調製物は、有効な量で投与される。上述で議論されるような有効な量は、単独のまたはさらなる用量とともに、それぞれ感染性細菌の能動免疫またはオプソニン化を誘導するdPNAGまたは抗dPNAG抗体の量である。投与形態にも依存するが、1ナノグラム/キログラム〜100ナノグラム/キログラムまでの範囲の投与量が、有効であることが考えられる。好ましい範囲は、500ナノグラムと500マイクログラム/キログラムの間、およびより好ましくは1マイクログラムと100マイクログラム/キログラムの間であると考えられる。この絶対量は、この投与がこの細菌を有する高い危険状態にあるがまだ感染していない被験体、または既に感染している被験体に対して行われるのかどうか、併用治療、投与の数および個人の患者の性質(年齢、身体状態、大きさおよび体重を含む)のさまざまな要素に依存する。これらは当業者に周知の要素であり、および慣用の実験法を用いてのみ扱われ得る。最大投与量、つまり安全な医療判断によって最高に安全な投与量が使用されることが、一般的に好まれる。
【0119】
本発明の薬学的組成物の複数の用量が、考慮される。一般的な免疫計画は、抗体の高い用量を投与し、その次に、数週期間待った後、抗体のより低い用量が続くことを包含する。なおさらなる投与量は、同様に投与され得る。受動免疫に対する投薬計画は、必要な場合はより頻繁に投与する点において、全く異なる。細菌感染に対して増大される免疫応答、および/またはその後の感染からの保護が結果として起こる、任意の養生法が使用され得る。特定のdPNAGの複数の投与量の送達に対する所望の時間間隔は、慣用の実験法のみを用いて、当業者により決定され得る。
【0120】
様々な投与経路が利用可能である。もちろん、選択される特定の様式は、選択される特定のdPNAG、治療される特定の状態、および治療的有効性のために必要である投与量に依存する。本発明の方法は、一般的に言えば、医療的に受容可能である任意の様式の投与を用いて実行され得、このことは、臨床的に受容可能でない有害な効果を引き起こすことなく、有効なレベルの免疫応答を生産する任意の様式を意味する。投与の好ましい様式は、非経口経路である。用語「非経口」は、皮下注射、静脈内注射、筋肉間注射、腹腔内注射、または注入技術を包含する。他の経路としては、口、鼻、皮膚、舌下、および局所経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
この組成物は、単位投薬形態の中に都合よく存在し得、および薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。全ての方法は、dPNAGまたはdPNAG結合因子を、一つまたはより多くの付属成分を構成するキャリアーとの会合へと導く工程を包含する。一般的に、この組成物は、このポリマーを、液体キャリアー、微細に分離された固体キャリアー、または両方と、均等におよび親密に会合へと導くことによって調製され、次いで、必要な場合、この生成物を成型させる。このポリマーは、凍結乾燥されて保存され得る。
【0122】
他の送達系としては、時間放出送達系、遅延放出送達系、または持続性放出送達系を挙げることができる。そのような系は、本発明の多糖類の、繰り返される投与を避け、被験体およびその医師にとっての利便性を増やす。多くのタイプの放出送達系は、当業者に公知であり利用できる。これらとしては、ポリ乳酸およびポリグルコール酸、ポリ無水物およびポリカプロラクトンのような、ポリマーに基づく系;コレステロール、コレステロールエステル、およびモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドのような脂肪酸または中性脂肪;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング、便利な結合剤および賦形剤を用いて圧縮される錠剤、部分的に融解される移植物などが挙げられる。特定例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:(a)侵食系(この中では、多糖類が、米国特許第4,452,775号(Kent):同4,667,014号(Nestor et al.);および同4,748,034号および同5,239,660号(Leonard)で見出されるマトリックス内の形態に含まれる)および(b)拡散系(その中では、主薬が、制御された速度で、米国特許第3,832,253号(Higuchi et al.)および同3,854,480号(Zaffaroni)において見出されるポリマーを通して浸透する)。加えて、ポンプに基づくハードウェア送達系が使用され得、これらのいくつかは移植に対して適応する。
【0123】
本発明のPNAG抗原は、PNAG抗原自身によってアジュバントの性質を有し得るということがまた、当業者によって評価され得る。本明細書において記載の多糖類がヒト免疫応答を増大させるまでの程度において、PNAG抗原は、他の材料との結合体化において、アジュバントとして使用され得る。
【0124】
本発明のdPNAG抗原および抗dPNAG抗体は、別の抗細菌性(すなわち、殺菌性)薬物とともに、または抗細菌性反応混液(cocktail)の形態において、または他の細菌性抗原もしくは抗細菌性抗体とともに、送達され得る。抗細菌性抗生物質反応混液は、本発明の任意の組成物と、抗細菌性薬物との混合物である。細菌感染の処置における抗生物質の使用は、慣用されている。能動免疫を誘導するための抗原、および受動免疫を誘導するための抗体の使用もまた、慣用されている。この実施形態では、共通の投与ビヒクル(例えば、錠剤、移植物、注射溶液など)は、本発明において有効な組成物と、抗細菌性抗生物質薬物および/または抗原もしくは抗体とを含み得る。あるいは、この抗細菌性抗生物質薬物および/または抗原もしくは抗体は、別々に投与され得る。この抗細菌性物質(例えば、抗生物質)はまた、dPNAGまたは抗dPNAG抗体と結合体化され得る。
【0125】
抗細菌性抗生物質薬物は、周知であり、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシリン、バカンピシリン、シクラミン、エピシリン、ヘタシリン、ピバンピシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、カルベニシリン、チカルシリン、アブロシリン、メズロシリン、ピペラシリン、アムジノシリン、セファレキシン、セフラジン、セファドキシル、セファクロール、セファゾリン、セフロキシムアキセティル(axetil)、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォタキシン、セフチゾキシム、セフメノキチン、セフトリアキソン、モキサラクタム、セフォテタン、セフォペラゾン、セフタジジム、イミペネム、クラブラネイト、タイメンチン、スルバクタム、ネオマイシン、エリスロマイシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、アミノグリコシド類、キノロン類、テトラサイクリン類およびリファンピン(Goodman and Glilman’s,Pharmacological Basics of Therapeutics,8th Ed.,1993,McGraw Hill Inc.を参照)が挙げられる。
【0126】
他の多糖類抗原および抗体は、当該分野で周知である。例えば、下に示す多糖類抗原および/またはそれに対する抗体は、このdPNAG抗原および/または抗体との結合体で投与され得る:Salmonella typhi夾膜 Vi抗原(Szu,S.C.,X.Li,A.L. Stone and J.B.Robbins,Relation between structure and immunologic properties of the Vicapsular polysaccharide,Infection and Immunity. 59:4555−4561(1991));E.Coli K5夾膜(Vann,W.,M.A.Schmidt,B.Jann and K.Jann,The structure of the capsular polysaccharide(K5 antigen) of urinary tract infective Escherichia coli,010:K5:H4.A polymer similar to desulfo−heparin,Eupopean Journal of Biochemistry.116:359−364,(1981);Staphylococcus aureus5型夾膜(Fournier,J.−M.,K.Hannon,M.Moreau,W.W.Karakawa and W.F.Vann,Isolation of type 5 capsular polysaccharide from Staphylococcus aureus,Ann.Inst.Pasteur/Microbiol.(Paris).138:561−567,(1987));Rhizobium melilori エクス多糖類(expolysaccharide)II(Glazebrook,J.and G.C.Walker,a novel expolysaccharide can function in place of the calcofluor−binding expolysaccharide in nodulation of alfalfa by Rhizobium meliloti,Cell. 65:661−672(1989));B群SteptococcusIII型(Wessels,M.R.,V.Pozagay,D.L.Kasper and H.J.Jennings,Structure and immunochemistry of an oligosaccharide repeating unit of the capsular polysaccharide of type III group B Streptococcus,Journal of Biological Chemistry.262:8262−8267(1987));Pseudomonas aeruginosa Fisher 7O特異的側鎖(Knirel,Y.A.,N.A.Paramonov,E.V.Vinogradov,A.S.Shashkow,B.A.N.K.Kochetkov,E.S.Stanislavsky and E.V.Kholodkova,Somatic antigens of Pseudomonas aeuginosa The structure of O−specific polysaccharide chains of lipopolysaccharides of P.aeruginosa O3(Lanyi),025(Wokatsh) and Fisher immunotypes 3 and 7,European Journal of Biochemistry. 167:549,(1987));Shigella sonnei O特異的側鎖(Kenne,L.,B.Lindberg and K.Petersson,Structual studies of the O−specific side chains of the Shigella Sonnei phase I lipopolysaccharide,Carbohydrate Research.78:119−126,(1980));S.pneumoniaeI型夾膜(Lindberg,B.,Lindqvist,B.,Lonngren,J.,Powell,D.A.,Structual studies of the capsular polysaccharide from Streptococcus pneumoniae type 1,Carbohydrate Research.78:111−117(1980));およびStreptococcus pneumoniae群抗原(Jennings,H.J.,C.Lugowski and N.M.Young,Structure of the complex polysaccharide C−substance from Streptococcus pneumoniae type 1,Biochemistry.19:4712−4719(1980))。
【0127】
他の非ポリペプチド抗原またはそれに対する抗体は、当業者に周知であり、および本発明のdPNAG組成物との結合体で使用され得る。
【0128】
このdPNAG抗原および抗体はまた、被験体もしくはサンプルの免疫状態を決定するための診断アッセイにおいて有用であり、または免疫アッセイにおいての試薬として使用され得る。例えば、この抗体は、サンプル中において、表面にPNAGを有する細菌の存在を検出するために使用され得る。この細菌がサンプル中に存在する場合、この抗体はこの感染された被験体を治療するために使用され得る。この抗体はまた、PNAG抗原の存在に対して、細菌をスクリーニングするために使用され得、および複合混合物から、dPNAGまたはPNAG抗原、およびdPNAGまたはPNAG抗原を含む細菌を単離するために使用され得る。
【0129】
上述に記載のアッセイおよび当該分野で公知の任意の他のアッセイは、このdPNAGまたは抗体、および/または、免疫したこのdPNAGまたは不溶性マトリックス上の抗体を標識することによって達成され得る。dPNAGおよび/または抗体を用いての、この分析的および診断的方法は少なくとも次に示す試薬のうちの一つを使用する:標識された分析アナログ、免疫された分析アナログ、標識された結合パートナー、免疫された結合パートナー、および滅菌結合体。使用される標識は、分析物とその結合パートナーとの結合を妨げない、任意の検出可能な官能基であり得る。多数の標識は、免疫アッセイにおけるそのような使用について公知である。例えば、蛍光色素、化学発光標識および放射性標識のような直接的に検出され得る化合物、ならびに、酵素のように、反応または誘導体化を通して検出され得る化合物。これらのタイプの標識の例としては、32P、14C、125I、3H、および131I 放射性同位元素、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその類似体のような蛍光体、ローダミンおよびその類似体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼおよび細菌性ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号))、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン(2,3−dihydrophthalavinediones)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)が挙げられる。ウリカーゼオキシダーゼおよびキサンチンオキシダーゼのような複素環式オキシダーゼは、過酸化水素を使用する酵素と結合して、HRP、ラクトペルオキシダーゼまたはマイクロペルオキシダーゼ、ビオチンアビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベルのような色素前駆物質、および安定した遊離基を酸化させる。
【0130】
この標識は、当業者に公知の方法によってdPNAGまたは抗dPNAGと結合体化され得る。例えば、米国特許第3,940,475号および同3,645,090号は、蛍光体および酵素の、抗体との結合体化を述べる。他のアッセイは、抗原および抗体とともに慣用されると報告されており、および本発明によって使用され得、組成物およびサンドイッチアッセイを含む。
【0131】
本発明は、dPNAG発現宿主細胞を生産することによってdPNAG抗原を調製する方法、ica遺伝子座を細胞へ導入し、そのような細胞からPNAG抗原を単離し、そしてdPNAGを形成するための抗原を脱アセチル化することによってdPNAG抗原を調製する方法を包含する。PNAG宿主細胞は、ica遺伝子(配列番号1)をコードする核酸を用いて、形質導入または形質転換した細胞に、トランスフェクトすることによって調製され得る。この細胞は、真核細胞または原核細胞であり得るが、好ましくは、細菌細胞であり得る。この細胞は、天然にてPNAGを発現しないStaphylococcusであり得る。
【0132】
一つの実施形態では、このica核酸は、真核細胞または原核細胞内にica核酸の発現を指向させる遺伝子発現配列に作動可能に結合される。この「遺伝子発現配列」は、プロモーター配列またはプロモーター−エンハンサーの組み合わせのような、任意の調節ヌクレオチド配列であり、作動可能に結合されているicaの核酸の有用な転写および翻訳を容易にする。例えば、この遺伝子発現配列は、構成的なプロモーターまたは誘導的なプロモーターのような、哺乳動物のプロモーターまたはウィルスのプロモーターであり得る。構成的な哺乳動物プロモーターとしては、次に示す遺伝子:ヒポキサンチン ホスホリボシル トランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、およびβ−アクチンについてのプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターは、例えば、サルウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロミー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの末端反復配列(LTR)、および単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的なプロモーターは、当業者に公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用であるプロモーターはまた、誘導的なプロモーターを含む。誘導的なプロモーターは、誘導因子の存在下において発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある金属イオンの存在下において、転写および翻訳を促進するために誘導される。他の誘導的なプロモーターは、当業者に公知である。
【0133】
一般的に、この遺伝子発現配列は、必要ならば、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列に含まれる。5’非転写配列は、作動可能に結合されたica核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。この遺伝子発現配列は、必要に応じて、所望のようなエンハンサー配列または上流の活性化配列を含む。
【0134】
このica核酸配列およびこの遺伝子発現配列は、それらが、この遺伝子発現配列の影響または制御下において、このicaコード配列の転写および/または翻訳を配置するような方法で、共有結合される場合、「作動可能に結合される」と言われる。機能的タンパク質に翻訳されるica配列(2つのDNA配列)は、5’遺伝子発現配列中のプロモーターの誘導がica配列の転写を発生させる場合、およびこの2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト変異の誘導を発生させない、(2)このica配列の転写を指示するためのプロモーター領域の能力を妨げない、または(3)タンパク質に翻訳されるための対応するRNA転写物の能力を妨げない場合に、作動可能に結合されると言われる。従って、遺伝子発現配列は、その遺伝子発現配列が生じる転写物が、所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得るようにica核酸配列の転写を実行する能力を有する場合、ica核酸配列と作動可能に結合されていることになる。
【0135】
本発明のica核酸は、単独で、またはベクターとの会合において、その宿主細胞に送達され得る。最も広い意味において、「ベクター」とは、(1)PNAG合成に関与するタンパク質をコードするica遺伝子座中のこの遺伝子を含む核酸分子の送達、または(2)標的細胞によって、PNAG合成に関与するタンパク質をコードするica遺伝子座中のこの遺伝子を含む核酸分子の取り込み:を容易にする能力のある任意の媒体である。好ましくは、このベクターは、このベクターの欠如を発生させる分解の程度に関連する分解を減らして、標的細胞へica分子を運ぶ。一般的に、本発明において有用なベクターは、2種類:生物学的ベクターおよび化学的/物理的ベクターに分割される。生物学的ベクターは、ica核酸の、標的細胞への送達、標的細胞によっての取り込みに対して有用である。化学的/物理的ベクターは、ica核酸またはicaポリペプチドの、標的細胞への送達、標的細胞によっての取り込みに対して有用である。
【0136】
生物学的ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、ウィルス、ウィルス由来の他のビヒクル、もしくは、本発明の核酸配列の挿入または組み込みによって操作されている細菌源、および本発明の核酸配列を付与し得る遊離した核酸フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、生物学的ベクターの好ましい型であり、次に示すウイルス:以下のようなレトロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス;ハーベイマウス肉腫ウイルス;マウス乳癌ウイルス;ラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン−バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス、およびあらゆるレトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。名前はつけられていないが当該分野で公知である、他のベクターも容易に使用され得る。
【0137】
好ましいウイルスベクターは、不必須遺伝子が重要遺伝子と置き換えられた、非細胞変性真核生物ウィルスに基づく。非細胞変性ウイルスはレトロウイルスを含み、レトロウイルスの生活観は、引き続くプロウイルスの宿主細胞内DNAへの組み込みを含むゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写を含む。一般的に、このレトロウイルスは、複製不十分(すなわち、所望のタンパク質の合成を指示する能力はあるが、感染粒子を製造する能力はない)である。複製不十分のレトロウイルスを生産するための標準的プロトコル(外因性遺伝子材料のプラスミドへの組み込み工程、プラスミドを組み込んだパッケージング細胞の形質転換工程、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの生産工程、組織培養液からのウイルス粒子の収集工程、およびウイルス粒子を用いた標的細胞の感染工程を包含する)は、Kriegler,M.,「Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual」、W.H.Freeman Co.,New York(1990)and Murry,E.J.Ed.「Methods in Molecular Biology」,vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,New Jersey(1991)において、提供される。
【0138】
ある適用のための別の好ましいウィルスは、アデノ随伴ウィルス、二本鎖DNAウィルスである。このアデノ随伴ウィルスは、複製不十分であるように操作され得、広い範囲の型および種類の細胞を感染する能力を有する。それは、さらに、熱溶媒安定性および脂質溶媒安定性;多様な系統の細胞においての高い形質導入頻度;および重感染抑制の欠如とそれに伴って形質導入の複数の系列を許すような、有利さを有する。伝えるところによれば、このアデノ随伴ウィルスは、部位特異的な方法において、ヒト細胞内DNAへ組み込まれ得、それに関する挿入性変異誘発の可能性および挿入された遺伝子発現の変異性の可能性を最小化する。加えて、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧の欠如下において少なくとも100回継代の間、組織培養が続けられており、このことは、このアデノ随伴ウイルスのゲノム組換えは、比較的、安定した事象であることを暗に意味する。このアデノ随伴ウィルスはまた、染色体外の様式において機能し得る。
【0139】
この生物学的ベクターに加えて、化学的/物理的ベクターは、ica分子を標的細胞に運ぶために使用され得、そしてその結果取り込みを容易にし得る。本明細書において使用されるように、「化学的/物理的ベクター」とは、ica分子を細胞へ運ぶ能力のある、細菌源またはウイルス源由来の分子以外の天然分子または合成分子をいう。
【0140】
本発明の好ましい化学的/物理的ベクターは、コロイド状分散系である。コロイド状分散系としては、水の中に油があるエマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む、脂質に基づく系が挙げられる。本発明の好ましいコロイド状系は、リポソームである。リポソームは、インビボまたはインビトロにおいて送達ベクターとして有用である人工膜管である。大きな単膜管(LUV)は、0.2〜4.0μmのサイズの範囲であり、大きな高分子をカプセル化し得ることが示されている。RNA、DNA、およびインタクトなビリオンは、水性内部の中でカプセル化され得、そして生物学的活性形態で細胞に送達され得る(Fraley,et al.,Trends Biochem.Sci.,(1981)6:77)。リポソームが有用な遺伝子伝達ベクターであるために、一つ以上の次に示す特徴を与えられなければならない:(1)生物学的活性を保持した状態で、高い効率で、重要な遺伝子のカプセル化;(2)高い効率で、標的細胞の細胞質への、この小胞の水性含量の送達;および(3)遺伝子情報の正確な発現および有用な発現。
【0141】
リポソームは、例えば、LIPOFECTINTMおよびLIPOFECTACETM(これらはN−[1−(2,3ジオレイルオキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム クロリド(DOTMA)およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)のようなカチオン脂質で構成される)のように、Gibco BRLから、商業的に利用できる。リポソームを作製する方法は当該分野で周知であり、および多くの発行物において記載されている。リポソームはまた、Gregoriadis,G.によって、Trends in Biotechnology,(1985)3:235−241中で、概説されている。
【0142】
コンパクション因子はまた、単独で、もしくは、生物学的ベクターまたは本発明の化学的/物理的ベクターとの結合体化状態で、使用され得る。本明細書において使用される「コンパクション因子」とは、核酸上のマイナス電荷を中和し、それにより核酸の微細な顆粒へのコンパクションを可能にするヒストンのような因子をいう。この核酸のコンパクションは、標的細胞による核酸の取り込みを容易にする。このコンパクション因子は、単独で使用され得る、すなわち、細胞によってより効率よく取り込まれる形態で、またはより好ましくは一つ以上の上述で記載のベクターとの結合体化状態で、ica分子を送達し得る。
【0143】
このica核酸の標的細胞による取り込みを容易にするために使用され得る、他の例示的組成物としては、リン酸カルシウムおよび細胞内輸送の他の化学的媒介物、マイクロインジェクション組成物、エレクトロポレーション組成物、および相同的組換え組成物(例えば、ica核酸を標的細胞の染色体内の前もって選んでおいた位置に組み込むため)が挙げられる。
【0144】
次の例は、説明図の目的のために含まれるが、本発明の有効範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0145】
(実施例1:PNAGの精製)
dPNAGは、ica遺伝子座を発現する任意の細菌株から生産され得ることが、本発明によって発見された。特に、これらの細菌株としては、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus aureus、およびこの遺伝子を用いてica遺伝子座に形質変換されたStaphylococcus carnosusのような他のStaphylococcus株が挙げられる。次に示す特定菌株は、その特定菌株からdPNAGを精製するために、本発明によって使用され得る。(その細菌株としては、S.epidermidis RP62A(ATCC番号35984)、S.epidermidis RP12(ATCC番号35983)、Staphylococcus epidermidis M187、S.carnosus TM300(pCN27)、S.aureus RN4220(pCN27)、およびS.aureus MN8ムコイドが挙げられる。)
以下は、ica遺伝子座を含むStaphylococcusからdPNAGを生産するために使用され得る方法である。
【0146】
出発材料は、次に示すような方法で細菌を増殖させることにより、ica遺伝子座を発現するStaphylococcusの培養物から調製する:この多糖類は、16リットルの細菌増殖培地の培養物から調製される。好ましい培地は、RPMI−1640 AUTO−MOD(加圧滅菌(Sigma Chemical Co.,St,Mo.)による滅菌を許容するために修正されたRPMIの調製物)に基づく化学的に規定された培地(CDM)である。このCDMは、アミノ酸、ビタミンおよびヌクレオチドを、他のCDM(Hussain,M.,J.G.M.Hastings,and P.J.White,1991)中で見出されるそれらの濃度に合わせるために、付加的に追加する。コアグラーゼ陰性Staphylococcusによる粘液生産物のための化学的に規定された培地(J.Med.Microbiol.34:143−147)。この培地にまた、1%の最終濃度にまでショ糖およびグルコースを追加する。
【0147】
液体培養物を、多糖類を生産する細菌株の単一のコロニーを用いて播種する。この好ましい菌株は、Staphylococcus aureus MN8m(この多糖類の恒常的な過剰生産者である菌株)を命名される。単一のコロニーを、トリプシンの大豆寒天プレート、または細菌増殖培地の同様のプレートから取り、そして37℃で増殖させる。10〜42℃の温度もまた受容可能である。液体培養物を、1〜96時間37℃でインキュベート、他方、連続的に攪拌させながら、2リットル/分の速度で酸素を用いて流す。このpHは、pH滴定器を通したNaOHの付加によって、増殖期間中7.0に維持する。増殖期間の最後に、細胞体を、30分間で9000gの割合で沈降させ、そしてその上清を、接線方向に流す濾過(10,000〜500,000分子量の分離膜)を通して、〜500mlまで集める。エタノールの2つの容量物と、多糖類粗調製物を調製するために加える。この沈殿物は、遠心分離によって回収され、水中で再懸濁され、そして蒸留水に対して一晩透析する。この抗体は、不溶性である。この不溶性粗抗体は、50mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、0.1Mリン酸塩、0.15M塩化ナトリウム)中で懸濁され、0.5〜16時間37℃でライソゾーム(0.5mg)およびリソスタフィン(0.5mg)を用いて消化する。抗原懸濁液をさらに、0.5〜16時間37℃でヌクレアーゼ(0.5mg)を用いて処理し、次に37〜56℃でプロテイナーゼK(5mg)を用いて0.5〜16時間インキュベーションする。透析および凍結乾燥後、乾燥した抽出物は、5M HCl中で再溶解し、およびpHは、4N NaOHを用いて、2に調整する。この溶液の20mlアリコートを、206nmでの光学的吸収により同定された、溶出した多糖類を有する0.1N HCl/0.15M NaCl緩衝液を用いて、Sephacryl S−300(Pharmacia,Piscataway,NJ)で詰められた5×88cmカラムに適用する。分子サイズの連続的範囲を表す多糖類に対応する画分を、別々に保存し、水に対して透析し、そして凍結乾燥する。あるいは、サイズ分画は、ダイアフィルトレーション膜の使用のように、当該分野で公知の様々な代替の手順を用いて行われ得る。
【0148】
アシル化の程度は、化学的に処理される天然の多糖類によって調整され得る。従って、50%より多いアセテートを有する多糖類は単離され、そして脱アセチル化され、所望のアセチル化レベルを達成する。グルコサミンからアミノ結合されたアセテート基を除去するための処理は、公知の塩基溶液中でされる。好ましい手法は、1.0M NaOH中で、2〜20時間37℃においてのインキュベーションである。より弱塩基性溶液およびより長いインキュベーション時間、またはより高い温度、もしくは、より短いインキュベーション時間またはより低い温度に加えてより強塩基性溶液は、等しく有効的である。一般的に、10より上にpHを上げる任意の処理は、適切な温度下において有効である。
【0149】
また、この抗原を脱アセチル化する酵素学的手段が存在する。酵素学的手段は、クロラムフェニコール脱アセチラーゼおよびicaB遺伝子産物に関連する酵素のような、脱アセチル化酵素を含む。
【0150】
(実施例2:dPNAGジフテリアトキソイド(DTm)結合体化ワクチンの調製)
DTmを、還元性アミノ化によって精製されたdPNAGと共有結合させた。アルデヒド基を初め、下に示す工程1に記載のグルタルアルデヒドを用いたタンパク質の処理によって、デフテリアトキソイド(DTm)の表面上に導入した。活性化型DTmは、引き続いて、下に示す工程2に記載の還元剤(シアノホウ化水素化ナトリウム)の存在下で、活性化型DTmの遊離したアミノ基を通してdPNAGとともに反応させた。
【0151】
(工程1)グルタルアルデヒドを用いたDTmの活性化
10mgのDTm(4.86mg/ml溶液(20mM HEPES緩衝液、50mMNaCl、pH8))を、10kDa MWCO透析カセットを用いて、室温で3時間、0.1M 炭酸塩緩衝液(pH10)に対して透析した。このタンパク質溶液を、完全に炭酸塩緩衝液を用いて交換した場合、グルタルアルデヒドを、最終濃度1.25%にまで加え、そしてこの混合物を2時間室温で攪拌させた。生産されたこの活性化型DTmは、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)に交換し、そして10kDa MWCO濾過膜を用いて限外濾過によって約10mg/mlまで濃縮した。
【0152】
(工程2)活性化型DTmとPNAGの結合
PNAGを、Maira et al.(Maira−Litran T,Kropec A,Abeygunawardana C,Joyce J,Mark IIIG,Goldmann DA,and Pier GB.Immunochemical properties of the staphylococcal poly−N−acetyl glucosamine surface polysaccharide.Infect.Immun.2002;70:4433−4440)に記載のように、精製した。Maira et al.中でPNAG−IIと命名した、この材料の一画分を、この脱アセチル化PNAG(dPNAG)を調製するために使用した。天然PNAGを、5M NaOH中で、2mg/mlの濃度にまで溶解させ、そして攪拌させながら37℃でインキュベートした。18時間後、このサンプルを、氷のスラリー上に置き、そして10℃以下へ冷却させた。5N HClもまた、氷上で冷却させ、そしてこの溶液が中性のpHに到達するまで、0.5mLアリコート中に加えた。このdPNAG溶液を、次いで、10KiloDalton Molecular Weight Cutoff(10K MWCO)透析カセット中で、蒸留水に対して一晩中透析し、凍結乾燥した。この手順は、15〜20%のアセテート置換を有するdPNAGを生産した。
【0153】
精製されたdPNAG(10mg)を、5M HClの0.25ml中で溶解し、等量の5M NaOHを用いて中和し、そして最終容積がPBSを用いて2mlに調整した。dPNAG溶液は、中性のpHにおいて不溶性であるが、わずかな酸性pHまたは塩基性pHにおいて、完全な可溶性で残存する。従って、溶解性を保証するために、dPNAG溶液のpHは、9.0を調整した。dPNAG(10mg)を、PBS中で、活性化型DTmの10mg/ml溶液の1mlと混合し、そしてこの反応のpHを7.5に調整した。200mgの精製されたシアノホウ化水素ナトリウムを、この混合物に加え、そしてこの反応は、混合されながら37℃14時間暗闇中で進行することを可能にした。この時間の後、この反応混合物を、0.1M炭酸塩緩衝液(0.15M NaCl、pH10(10kDa MWCO透析カセット))を用いた透析によって交換し、そしてこの高い分子量結合体化物を、Superose 6 prep−gradeカラムを用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーによって、精製分離した。dPNAG−DTm結合体化物は、20mM HEPES緩衝液(50mM NaCl、pH8)に対して透析され、−2℃で凍結保存した。
【0154】
(実施例3:天然PNAG−DTm結合体化ワクチンの調製)
天然PNAG(この場合、95%〜100%アセテート置換を有する)は、有機のシアノ化薬剤(1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP))を用いて、精製されたDTmと共有結合し、下に示す工程1に記載のこの多糖類の水酸基を活性化した。続いて、CDAP−活性化型PNAGを、付加的なスペーサー分子の必要なしで、下に示す工程2に記載のDTmと結合した。
【0155】
(工程1)CDAPを用いたPNAGの活性化
10mgの精製されたPNAGを、150マイクロリットルの5M HCl中に溶解され、等量の5M NaOHを用いて中和し、そしてホウ酸塩緩衝液(pH9.2)を用いて1mlまで希釈した。CDAPを、アセトニトリル中で100mg/ml濃度に作製し、そして1ヶ月に至るまで−20℃で保存した。200μlのCDAP(20mgを含む)を、ホウ酸塩緩衝液中の以前にボルテックスされたPNAG−II(Maira,et al.Infect.Immun.2002,70:4433−4440)溶液中へゆっくりとピペットで移し(この有機性共通溶液の速い添加は、この多糖類を沈澱させる)、そしてこの反応を、2分間進行させた。
【0156】
(工程2)DTmを用いたCDAP−活性化型PNAGの結合
5mgのDTm(保存溶液は、20mM HEPES緩衝液(50mM NaCl、pH8))を、10kDa MWCO透析カセットを用いて、3時間ホウ酸塩緩衝液(pH9.2)に対して透析させた。CDAPを用いたPNAGの活性化の後、5mgのDTmを、すぐに加え、そしてこの混合物は、攪拌させながら3時間室温で反応させた。この時間の後、この高い分子量の結合体化物を、Superose 6 prep−gradeカラムを用いてゲル濾過クロマトグラフィーによって、結合しなかった成分から精製させた。PNAG−DTm結合体化物を含む画分は貯蔵し、濃縮し、そして−20℃で凍結保存した。
【0157】
(実施例4:ウサギの中においての抗血清の生産)
精製されたPNAG−DTmまたはdPNAG−DTmに対する抗体を、10μgの結合体化された多糖類を用いた2回の皮下免疫によって、完全フロイントアジュバントを用いた1回目の投与および不完全フロイントアジュバントを用いた2回目の投与に対して乳化され、その後に、一週間後に、3日おきに3回、生理食塩水中の抗体が静脈注射することによって、ニュージーランド白色ウサギ中において惹起させた。ウサギから、二週間ごとに採血し、そして血清を結合免疫測定法(ELISA)により試験した。PNAGまたはdPNAG−DTmのいずれかを用いて免疫された2匹の代表的なウサギから、ELISAによって得られた結合曲線は、図1および図2にそれぞれ示す。力価は、Maira et al(Maira−Litran T,Kropec A,Abeygunawardana C,Joyce J,MarkIIIG,Goldmann DA, and Pier GB. Immunochemical properties of the staphylococcal poly−N−acetyl glucosamine surface polysaccharide.Infect.Immun.2002;70:4433−4440)で記載のようにして決定した。
【0158】
(実施例5:マウスにおけるPNAG−DTmおよびdPNAG−DTmの免疫化)
10匹のマウス(Swiss Webster;雌,年齢は生後5〜7週間)の集団を、一週間おきに、0.1mlのPBS中の、1.5μg,0.75μgまたは0.15μgの、PNAG−DTmおよびdPNAG−DTmの結合体化多糖類を皮下免疫され、そして3回目の免疫後、4週間毎週採血した。コントロール集団は、同じ割合で、結合体化されていない多糖類とタンパク質の混合物を用いて免疫させた。天然の結合体化物および脱アセチル化結合体化物を用いて免疫されたマウスの力価は、それぞれ、図3および図4に示す。コントロール集団は、使用された投与量では、どんな力価も発生しなかった。
【0159】
(実施例6:破傷風トキソイドと結合体化したPNAGおよびdPNAGを生産させたウサギ抗血清のオプソニンの殺菌活性)
2匹のウサギを、上述で記載のようにジフテリアトキソイドと結合体化されたPNAGを用いて免疫し、そして2匹のウサギを、上述で記載のようにジフテリアトキソイドと結合体化させたdPNAGを用いて、免疫した。オプソニンの殺菌活性を、Maira et al.(Maira−Litran T,Kropec A,Abeygunawardana C,Joyce J,Mark IIIG,Goldmann DA,and Pier GB.Immunochemical properties of the Staphylococcal poly−N−acetyl glucosamine surface polysaccharide.Infect.Immun.2002;70:4433−4440)に記載された方法を用いて、決定した。力価を決定し、そして40%以上の細菌が殺傷される血清希釈として力価を定義した。様々なStaphylococcus菌株に対する4匹のウサギ抗血清の結合曲線を、図5〜図8に示す。菌株M187は、S.epidermidis菌株であり;他の菌株はすべてS.aureus菌株である。力価の比較は、図9に示す。
【0160】
(等価物)
上に記載された明細書は、当業者が本発明を実行するのを可能にするために十分であると考えられる。本発明は、提供された実施例による有効範囲において、限定されない。なぜなら、実施例は、本発明の一つの局面のただ一つの例示として意図され、他の機能的な等価な実施形態は、本発明の範囲内にあるからである。本明細書に示されている例および本明細書に記載されている例に加えて、本発明の様々な変更は、上の記載から当業者にとって明白になり、そして添付の特許請求の範囲内に含まれる。本発明の有利点および目的は、必ずしも、本発明のそれぞれの実施形態によって包含されない。
【0161】
この出願において言及されるすべての参考文献、特許および特許発行物は、その全体が参考文献として本明細書において援用される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1は、天然PNAGに対する抗体の結合を示す。この抗体は、ジフテリアトキソイドと結合体化された天然PNAGに対して惹起された。
【図2】図2は、脱アセチル化PNAGに対する抗体の結合を示す。この抗体は、ジフテリアトキソイドと結合体化されたdPNAGに対して惹起された。
【図3】図3は、ジフテリアトキソイド(DTm)と結合体化された天然PNAGを用いて、一週間おきに、3回皮下に免疫したマウス(1グループにつき10匹)において得られる抗体力価を示す。動物は、凡例で示される投与量で、免疫された。血液サンプルは、最終免疫化後、1〜4週、毎週得られた。
【図4】図4は、ジフテリアトキソイド(DTm)と結合体化されたdPNAGを用いて、一週間おきに、3回皮下に免疫したマウス(1グループにつき10匹)において得られる抗体力価を示す。動物は、凡例で示される投与量で、免疫された。血液サンプルは、最終免疫化後、1〜4週、毎週得られた。
【図5】図5は、ジフテリアトキソイドと結合体化されるdPNAGを用いて、免疫されたウサギの血清から得られた抗体による、凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ1)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図6】図6は、ジフテリアトキソイドと結合体化されたdPNAGを用いて、免疫されたウサギの血清からの抗体による、凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ2)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図7】図7は、ジフテリアトキソイドに結合体化された天然PNAGを用いて、免疫されたウサギの血清からの抗体による凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ3)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図8】図8は、ジフテリアトキソイドに結合体化された天然PNAGを用いて、免疫されたウサギの血清からの抗体によって、凡例で示された、Staphylococcus菌株のオプソニン性殺傷(ウサギ4)を示す。各点は、指示された希釈で殺傷された平均パーセントを示す。
【図9】図9は、X軸上で示されたStaphylococcus菌株に対する、4匹のウサギの血清から得られた抗体の、オプソニン性殺傷力価をまとめる。このウサギは、上記の図の凡例で記載されている通りである。各バーは、この細菌の40%以上が殺傷された血清希釈の対数を示す。10より下のバーは、1:10の血清希釈では、細菌の40%を殺傷できない血清を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0163】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、S.aureusからのica遺伝子座のヌクレオチド配列であり、それは、GenBankにおいて受託番号AF086783として寄託された。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4つの単量体単位の長さを有するβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物であって、ここで、グルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換され、かつ、該組成物は滅菌されている、組成物。
【請求項2】
少なくとも2つの単量体単位の長さを有し、かつ、キャリアー化合物と結合したβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物であって、ここで、該多糖類のグルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換されている、組成物。
【請求項3】
前記単離された多糖類は、次の構造を有し、
【化1】
ここで、nは少なくとも4である整数であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択され、ただし、R基の50%未満は−NH−CO−CH3であり、かつ、該多糖類は少なくとも800ダルトンの分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記R基の45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満が−NH−CO−CH3である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記R基のいずれも−NH−CO−CH3ではない、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
nが少なくとも6、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400および少なくとも500からなる群より選択された整数である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記単離された多糖類が、ヘテロに置換されたポリマーである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記単離された多糖類が、少なくとも800ダルトンの分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
前記単離された多糖類が、少なくとも1000ダルトン、少なくとも1200ダルトン、少なくとも1500ダルトン、少なくとも2000ダルトン、少なくとも2500ダルトン、少なくとも5000ダルトン、少なくとも7500ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも25,000ダルトン、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも75,000ダルトンおよび少なくとも100,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
前記単離された多糖類が、少なくとも125,000ダルトン、少なくとも150,000ダルトン、少なくとも200,000ダルトン、少なくとも250,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも350,000ダルトン、少なくとも400,000ダルトン、少なくとも450,000ダルトンおよび少なくとも500,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
β−1,6−グルコサミンポリマーの長さが、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500の単量体単位からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
グルコサミンのアミノ基の40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満がアセテートに置換されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項13】
前記グルコサミンのアミノ基のいずれもアセテートに置換されていない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋および少なくとも99%純粋からなる群より選択される純度を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項15】
前記単離された多糖類がキャリアーと結合体化している、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記単離された多糖類が、リンカーを介して前記キャリアー化合物と結合体化している、請求項1または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記キャリアー化合物が、ペプチドキャリアーである、請求項1または15に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に受容可能なキャリアーをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が滅菌されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
前記単離された多糖類はワクチンとして処方される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項21】
前記単離された多糖類は、次に示す構造
【化2】
からなり、ここで、X1、X2、X3、X4、X5およびX6の各々は、H、キャリアー化合物、またはキャリアー化合物と結合したリンカーのいずれかであり;ならびに、Y1、Y2およびY3の各々は、OH、キャリアー化合物、またはキャリアー化合物と結合したリンカーのいずれかである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項22】
キャリアー化合物、またはキャリアー化合物と結合したリンカーのうちの一つだけが、前記構造と結合体化している、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
X1、X2、X3、X4、X5またはX6のうちの一つだけが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合したリンカーと結合体化している、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
Y1、Y2またはY3のうちの一つだけが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合したリンカーと結合体化している、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記キャリアー化合物が、N−アセチルβ1−6グルコサミンではない多糖類である、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
濃縮された細菌の細胞体調製物から、多糖類の粗調製物をエタノール沈澱させる工程;該粗多糖類をリゾチームおよびリソスタフィンを用いて同時に消化し、次にヌクレアーゼおよびプロテイナーゼKを用いて連続して消化して、消化された多糖類調製物を形成させる工程;
該消化された多糖類調製物をサイズ分画する工程;
アセチル化多糖類の画分を単離する工程;および
該アセチル化多糖類の画分を脱アセチル化して、50%未満のアセテート置換を有する多糖類を生産する工程;
を包含する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離された細菌性多糖類を作製する方法。
【請求項27】
細菌培養物から純物でない多糖類を調製する工程;
該純粋でない多糖類を酸または塩基とともにインキュベートさせて、半純粋の多糖類調製物を生産する工程;
該調製物を中和する工程;
中和された該調製物をフッ化水素酸中でインキュベートさせる工程;
該調製物からアセチル化多糖類を単離させる工程;および
該アセチル化多糖類を脱アセチル化して、50%未満のアセテート置換を有する多糖類を生産する工程;
を包含する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離された細菌性の多糖類を作製する方法。
【請求項28】
細菌培養物から純粋でない多糖類を調製する工程;
該純粋でない多糖類を酸または塩基とともにインキュベートとさせて、半純粋の多糖類調製物を生産する工程;
該調製物を中和する工程;
中和された該調製物をフッ化水素酸中でインキュベートさせる工程;および
該調製物から50%未満のアセテート置換を有する多糖類を単離する工程;
を包含する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離された細菌性多糖類を作製する方法。
【請求項29】
前記細菌培養物が、コアグラーゼ陰性staphylococcus培養物である、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記細菌培養物が、staphylococcus aureus培養物、またはstaphylococcus epidermidis培養物である、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項31】
前記単離された多糖類が、少なくとも1000ダルトン、少なくとも1200ダルトン、少なくとも1500ダルトン、少なくとも2000ダルトン、少なくとも2500ダルトン、少なくとも5000ダルトン、少なくとも7500ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも25,000ダルトン、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも75,000ダルトンおよび少なくとも100,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項32】
前記単離された多糖類が、少なくとも125,000ダルトン、少なくとも150,000ダルトン、少なくとも200,000ダルトン、少なくとも250,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも350,000ダルトン、少なくとも400,000ダルトン、少なくとも450,000ダルトンおよび少なくとも500,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項33】
前記単離された多糖類が、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋および少なくとも99%純粋からなる群より選択された純度を有する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項34】
前記単離された多糖類と、少なくとも一つのキャリアー化合物とを結合体化させる工程を包含する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項35】
前記キャリアー化合物が、リンカーを介して前記単離された多糖類と結合体化される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記キャリアー化合物がペプチドキャリアーである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記アセチル化多糖類が化学的に脱アセチル化される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項38】
前記アセチル化多糖類が、塩基性溶液とのインキュベーションにより脱アセチル化される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記アセチル化多糖類が、酵素学的に脱アセチル化される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項40】
前記多糖類調製物が、カラムを用いてサイズ分画される、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
前記単離された多糖類を、ワクチンとして処方する工程をさらに包含する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項42】
薬学的に受容可能なキャリアーの中に、免疫応答を刺激するために有効な量で、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類を含む薬学的組成物。
【請求項43】
アジュバントをさらに含む、請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記免疫応答が抗原特異的免疫応答である、請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25のいずれか一項に記載の単離された多糖類の、Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するために有効な量を、Staphylococcus感染を有するか、または発生する危険状態にある、非げっ歯類被験体に投与する工程を包含する、非げっ歯類被験体におけるStaphylococcus感染を処置、または予防するための方法。
【請求項46】
前記StaphylococcusはStaphylococcus aureusである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記Staphylococcusは、Staphylococcus epidermidisである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記非げっ歯類被験体が、ヒト被験体である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記非げっ歯類被験体が、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌおよびネコからなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記非げっ歯類被験体がStaphylococcusにさらされる危険状態にある、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記非げっ歯類被験体がStaphylococcusにさらされた被験体である、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記単離された多糖類が、アジュバントと結合体化されて投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記単離された多糖類がワクチンとして処方される、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記単離された多糖類は
【化3】
の構造を有し、ここで、nは少なくとも4であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択され、ただし該R基の50%未満が−NH−CO−CH3である請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記被験体が医療デバイスの移植物を受けていない被験体である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記多糖類が全身に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記単離された多糖類がアジュバントとともに投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記単離された多糖類がキャリアー化合物と結合体化される、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記キャリアー化合物がペプチドキャリアーである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類の、Staphylococcusに対して特異的な抗体を生産するための有効な量およびアジュバントを、被験体に投与する工程;および
該被験体から抗体を単離する工程;
を包含する、抗体を生産するための方法。
【請求項61】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類の、Staphylococcusに対して特異的な抗体を生産するために有効な量およびアジュバントを、被験体に投与する工程;
該被験体から脾臓細胞を採取する工程;
該被験体からの脾臓細胞と骨髄種細胞とを融合する工程;および
融合サブクローンから生産された抗体を採取する工程;
を包含する、モノクローナル抗体を生産するための方法。
【請求項62】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類およびアジュバントを、被験体へ投与することによって、前記細菌性多糖類に対する免疫応答を刺激する工程;および
該被験体から抗体を採取する工程;
を包含する、細菌性多糖類に対するポリクローナル抗体を生産する方法。
【請求項63】
前記抗体を単離する工程をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記被験体がウサギである、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記被験体がヒトである、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記多糖類に対する免疫応答を誘導する工程;
該被験体から抗体産生細胞を単離する工程;
該抗体産生細胞から不死化細胞を生産する工程;および
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類を用いて、該不死化細胞がモノクローナル抗体を生産する能力を試験する工程;
を包含する、非ヒト被験体における多糖類に対して特異的なモノクローナル抗体を同定する方法。
【請求項67】
前記不死化細胞の上清からモノクローナル抗体を単離する工程をさらに包含する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類と結合する、単離された結合因子を含む組成物。
【請求項69】
前記単離された結合因子がペプチドである、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記ペプチドが抗体、またはそのフラグメントである、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記抗体がヒト抗体、またはキメラの抗体である、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記抗体がヒト抗体である、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記単離された結合因子が検出可能標識と結合体化される、請求項68に記載の組成物。
【請求項75】
前記検出可能標識が、放射性標識、酵素、ビオチン分子、アビジン分子および蛍光色素からなる群より選択される、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
前記単離された結合因子が殺菌剤と結合体化されている、請求項68に記載の組成物。
【請求項77】
前記殺菌剤が抗生物質である、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
サンプルを、請求項68に記載の単離された結合因子と接触させる工程;および
該単離された結合因子と該サンプルとの結合を検出する工程を包含し、ここで、該単離された結合因子の結合は、該細菌性多糖類が該サンプル中に存在することを示す、50%未満のアセテート置換を有する細菌性多糖類がサンプル中に存在することを同定する方法。
【請求項79】
前記サンプルが被験体からの生物学的サンプルである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記生物学的サンプルが、尿、血、膿、肌、痰、関節液、リンパおよび乳汁からなる群より選択される、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記単離された結合因子が検出可能標識と結合体化される、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
Staphylococcus感染を阻害するための有効な量で、請求項68に記載の単離された結合因子を、それを必要とする被験体に、投与する工程を包含する、Staphylococcus感染を有するか、または発生する危険状態にある被験体を処置するための方法。
【請求項83】
Staphylococcus感染が、Staphylococcus epidermidis感染およびStaphylococcus aureus感染からなる群より選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記単離された結合因子が殺菌剤と結合体化される、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記殺菌剤が抗生物質である、請求項82に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも4つの単量体単位の長さを有するβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物であって、ここで、グルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換され、かつ、該組成物は滅菌されている、組成物。
【請求項2】
少なくとも2つの単量体単位の長さを有し、かつ、キャリアー化合物と結合したβ−1,6−グルコサミンポリマーを含む単離された多糖類を含む組成物であって、ここで、該多糖類のグルコサミンのアミノ基の50%未満がアセテートに置換されている、組成物。
【請求項3】
前記単離された多糖類は、次の構造を有し、
【化1】
ここで、nは少なくとも4である整数であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択され、ただし、R基の50%未満は−NH−CO−CH3であり、かつ、該多糖類は少なくとも800ダルトンの分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記R基の45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満が−NH−CO−CH3である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記R基のいずれも−NH−CO−CH3ではない、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
nが少なくとも6、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400および少なくとも500からなる群より選択された整数である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記単離された多糖類が、ヘテロに置換されたポリマーである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記単離された多糖類が、少なくとも800ダルトンの分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
前記単離された多糖類が、少なくとも1000ダルトン、少なくとも1200ダルトン、少なくとも1500ダルトン、少なくとも2000ダルトン、少なくとも2500ダルトン、少なくとも5000ダルトン、少なくとも7500ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも25,000ダルトン、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも75,000ダルトンおよび少なくとも100,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
前記単離された多糖類が、少なくとも125,000ダルトン、少なくとも150,000ダルトン、少なくとも200,000ダルトン、少なくとも250,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも350,000ダルトン、少なくとも400,000ダルトン、少なくとも450,000ダルトンおよび少なくとも500,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
β−1,6−グルコサミンポリマーの長さが、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500の単量体単位からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
グルコサミンのアミノ基の40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満がアセテートに置換されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項13】
前記グルコサミンのアミノ基のいずれもアセテートに置換されていない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋および少なくとも99%純粋からなる群より選択される純度を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項15】
前記単離された多糖類がキャリアーと結合体化している、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記単離された多糖類が、リンカーを介して前記キャリアー化合物と結合体化している、請求項1または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記キャリアー化合物が、ペプチドキャリアーである、請求項1または15に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に受容可能なキャリアーをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が滅菌されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
前記単離された多糖類はワクチンとして処方される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項21】
前記単離された多糖類は、次に示す構造
【化2】
からなり、ここで、X1、X2、X3、X4、X5およびX6の各々は、H、キャリアー化合物、またはキャリアー化合物と結合したリンカーのいずれかであり;ならびに、Y1、Y2およびY3の各々は、OH、キャリアー化合物、またはキャリアー化合物と結合したリンカーのいずれかである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項22】
キャリアー化合物、またはキャリアー化合物と結合したリンカーのうちの一つだけが、前記構造と結合体化している、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
X1、X2、X3、X4、X5またはX6のうちの一つだけが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合したリンカーと結合体化している、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
Y1、Y2またはY3のうちの一つだけが、キャリアー化合物またはキャリアー化合物と結合したリンカーと結合体化している、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記キャリアー化合物が、N−アセチルβ1−6グルコサミンではない多糖類である、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
濃縮された細菌の細胞体調製物から、多糖類の粗調製物をエタノール沈澱させる工程;該粗多糖類をリゾチームおよびリソスタフィンを用いて同時に消化し、次にヌクレアーゼおよびプロテイナーゼKを用いて連続して消化して、消化された多糖類調製物を形成させる工程;
該消化された多糖類調製物をサイズ分画する工程;
アセチル化多糖類の画分を単離する工程;および
該アセチル化多糖類の画分を脱アセチル化して、50%未満のアセテート置換を有する多糖類を生産する工程;
を包含する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離された細菌性多糖類を作製する方法。
【請求項27】
細菌培養物から純物でない多糖類を調製する工程;
該純粋でない多糖類を酸または塩基とともにインキュベートさせて、半純粋の多糖類調製物を生産する工程;
該調製物を中和する工程;
中和された該調製物をフッ化水素酸中でインキュベートさせる工程;
該調製物からアセチル化多糖類を単離させる工程;および
該アセチル化多糖類を脱アセチル化して、50%未満のアセテート置換を有する多糖類を生産する工程;
を包含する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離された細菌性の多糖類を作製する方法。
【請求項28】
細菌培養物から純粋でない多糖類を調製する工程;
該純粋でない多糖類を酸または塩基とともにインキュベートとさせて、半純粋の多糖類調製物を生産する工程;
該調製物を中和する工程;
中和された該調製物をフッ化水素酸中でインキュベートさせる工程;および
該調製物から50%未満のアセテート置換を有する多糖類を単離する工程;
を包含する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離された細菌性多糖類を作製する方法。
【請求項29】
前記細菌培養物が、コアグラーゼ陰性staphylococcus培養物である、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記細菌培養物が、staphylococcus aureus培養物、またはstaphylococcus epidermidis培養物である、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項31】
前記単離された多糖類が、少なくとも1000ダルトン、少なくとも1200ダルトン、少なくとも1500ダルトン、少なくとも2000ダルトン、少なくとも2500ダルトン、少なくとも5000ダルトン、少なくとも7500ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも25,000ダルトン、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも75,000ダルトンおよび少なくとも100,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項32】
前記単離された多糖類が、少なくとも125,000ダルトン、少なくとも150,000ダルトン、少なくとも200,000ダルトン、少なくとも250,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも350,000ダルトン、少なくとも400,000ダルトン、少なくとも450,000ダルトンおよび少なくとも500,000ダルトンからなる群より選択された分子量を有する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項33】
前記単離された多糖類が、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋および少なくとも99%純粋からなる群より選択された純度を有する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項34】
前記単離された多糖類と、少なくとも一つのキャリアー化合物とを結合体化させる工程を包含する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項35】
前記キャリアー化合物が、リンカーを介して前記単離された多糖類と結合体化される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記キャリアー化合物がペプチドキャリアーである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記アセチル化多糖類が化学的に脱アセチル化される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項38】
前記アセチル化多糖類が、塩基性溶液とのインキュベーションにより脱アセチル化される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記アセチル化多糖類が、酵素学的に脱アセチル化される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項40】
前記多糖類調製物が、カラムを用いてサイズ分画される、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
前記単離された多糖類を、ワクチンとして処方する工程をさらに包含する、請求項26、27または28に記載の方法。
【請求項42】
薬学的に受容可能なキャリアーの中に、免疫応答を刺激するために有効な量で、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類を含む薬学的組成物。
【請求項43】
アジュバントをさらに含む、請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記免疫応答が抗原特異的免疫応答である、請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25のいずれか一項に記載の単離された多糖類の、Staphylococcusに対する免疫応答を誘導するために有効な量を、Staphylococcus感染を有するか、または発生する危険状態にある、非げっ歯類被験体に投与する工程を包含する、非げっ歯類被験体におけるStaphylococcus感染を処置、または予防するための方法。
【請求項46】
前記StaphylococcusはStaphylococcus aureusである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記Staphylococcusは、Staphylococcus epidermidisである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記非げっ歯類被験体が、ヒト被験体である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記非げっ歯類被験体が、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌおよびネコからなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記非げっ歯類被験体がStaphylococcusにさらされる危険状態にある、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記非げっ歯類被験体がStaphylococcusにさらされた被験体である、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記単離された多糖類が、アジュバントと結合体化されて投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記単離された多糖類がワクチンとして処方される、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記単離された多糖類は
【化3】
の構造を有し、ここで、nは少なくとも4であり、Rは−NH−CO−CH3および−NH2からなる群より選択され、ただし該R基の50%未満が−NH−CO−CH3である請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記被験体が医療デバイスの移植物を受けていない被験体である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記多糖類が全身に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記単離された多糖類がアジュバントとともに投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記単離された多糖類がキャリアー化合物と結合体化される、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記キャリアー化合物がペプチドキャリアーである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類の、Staphylococcusに対して特異的な抗体を生産するための有効な量およびアジュバントを、被験体に投与する工程;および
該被験体から抗体を単離する工程;
を包含する、抗体を生産するための方法。
【請求項61】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類の、Staphylococcusに対して特異的な抗体を生産するために有効な量およびアジュバントを、被験体に投与する工程;
該被験体から脾臓細胞を採取する工程;
該被験体からの脾臓細胞と骨髄種細胞とを融合する工程;および
融合サブクローンから生産された抗体を採取する工程;
を包含する、モノクローナル抗体を生産するための方法。
【請求項62】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類およびアジュバントを、被験体へ投与することによって、前記細菌性多糖類に対する免疫応答を刺激する工程;および
該被験体から抗体を採取する工程;
を包含する、細菌性多糖類に対するポリクローナル抗体を生産する方法。
【請求項63】
前記抗体を単離する工程をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記被験体がウサギである、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記被験体がヒトである、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記多糖類に対する免疫応答を誘導する工程;
該被験体から抗体産生細胞を単離する工程;
該抗体産生細胞から不死化細胞を生産する工程;および
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類を用いて、該不死化細胞がモノクローナル抗体を生産する能力を試験する工程;
を包含する、非ヒト被験体における多糖類に対して特異的なモノクローナル抗体を同定する方法。
【請求項67】
前記不死化細胞の上清からモノクローナル抗体を単離する工程をさらに包含する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、21、22、23、24または25に記載の単離された多糖類と結合する、単離された結合因子を含む組成物。
【請求項69】
前記単離された結合因子がペプチドである、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記ペプチドが抗体、またはそのフラグメントである、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記抗体がヒト抗体、またはキメラの抗体である、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記抗体がヒト抗体である、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記単離された結合因子が検出可能標識と結合体化される、請求項68に記載の組成物。
【請求項75】
前記検出可能標識が、放射性標識、酵素、ビオチン分子、アビジン分子および蛍光色素からなる群より選択される、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
前記単離された結合因子が殺菌剤と結合体化されている、請求項68に記載の組成物。
【請求項77】
前記殺菌剤が抗生物質である、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
サンプルを、請求項68に記載の単離された結合因子と接触させる工程;および
該単離された結合因子と該サンプルとの結合を検出する工程を包含し、ここで、該単離された結合因子の結合は、該細菌性多糖類が該サンプル中に存在することを示す、50%未満のアセテート置換を有する細菌性多糖類がサンプル中に存在することを同定する方法。
【請求項79】
前記サンプルが被験体からの生物学的サンプルである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記生物学的サンプルが、尿、血、膿、肌、痰、関節液、リンパおよび乳汁からなる群より選択される、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記単離された結合因子が検出可能標識と結合体化される、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
Staphylococcus感染を阻害するための有効な量で、請求項68に記載の単離された結合因子を、それを必要とする被験体に、投与する工程を包含する、Staphylococcus感染を有するか、または発生する危険状態にある被験体を処置するための方法。
【請求項83】
Staphylococcus感染が、Staphylococcus epidermidis感染およびStaphylococcus aureus感染からなる群より選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記単離された結合因子が殺菌剤と結合体化される、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記殺菌剤が抗生物質である、請求項82に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2006−513166(P2006−513166A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552204(P2004−552204)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/036358
【国際公開番号】WO2004/043405
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/036358
【国際公開番号】WO2004/043405
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】
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