説明

TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する医薬組成物

本発明は、TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖類を含有する医薬組成物を提供し、該組成物は、その中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または生物学的活性の増大を可能にする。本発明は、また、医薬組成物中のTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率を向上させるか、または生物学的活性を増大させるための糖類の使用に関する。また、特に創傷治癒および線維症に関する該医薬組成物の使用について説明する。さらに、本発明は、注射痛を予防または低減するための薬剤を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する医薬組成物に関する。詳細には、本発明は、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する改善された医薬組成物を提供し、該組成物は、TGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または該組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の増大を提供する。本発明は、また、このような医薬組成物の利用方法を提供する。さらに、本発明は、注射痛を予防または低減するための薬剤も提供する。
【背景技術】
【0002】
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)は、多様な生物学的活性を有するサイトカインのファミリーを意味する。TGF−βは、TGF−βスーパーファミリーとして知られている関連サイトカインからなるより広いグループに属している。TGF−βスーパーファミリーのメンバーには、アクチビン、骨形成因子(BMP)、抗ミューラー管ホルモン(AMH)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)サブファミリー、および増殖/分化因子(GDF)サブファミリーが含まれる。TGF−βスーパーファミリーメンバーは、共通のシステインノットモチーフ、および共通の情報伝達経路などの構造的類似性を共有する。TGF−スーパーファミリーのメンバーの実例を図1に示す。
【0003】
TGF−βスーパーファミリーのメンバーの生物学的活性は、多くの異なる治療状況において有用性を有し、従って、TGF−βスーパーファミリーメンバーの医薬としての応用に関して多くの関心がもたれている。
【0004】
TGF−β、TGF−βおよびTGF−βは、創傷治療応答の調節で重要な役割を果たすことが知られており、一方、BMPで調節される骨誘導は、骨の形成、治癒および再構築に関する治療的応用において有用である。
【0005】
TGF−βは、硬皮症、血管形成障害、腎臓疾患、骨粗鬆症、骨疾患、糸球体腎炎および腎臓疾患の予防および/または治療において用途を有する。
【0006】
TGF−βは、神経膠腫、非小細胞性肺癌、膵臓腫瘍、固体腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、老人性黄斑変性、眼損傷、骨粗鬆症、網膜症、潰瘍、癌腫、口内炎症、および硬皮症の治療で使用できる。
【0007】
TGF−βは、線維性障害、硬皮症、血管形成障害、再狭窄、癒着、子宮内膜症、虚血性疾患、体外受精における骨および軟骨誘導、口腔粘膜炎、腎臓疾患の治療において、瘢痕化の予防、低減または抑制において、末梢および中枢神経系における神経細胞再結合の強化において、眼手術(LASIKまたはPRK手術など)合併症の予防、低減または抑制において使用できる。
【0008】
TGF−βスーパーファミリーのその他の多くのメンバーも、治療への応用を有することが知られている。例えば、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)は、多くの神経変性および神経学的疾患(パーキンソン病、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、およびハンティングトン舞踏病など)の治療において、ならびに創傷治療、瘢痕組織の治療において、および角膜組織および角膜疾患の治療における眼の応用分野において有用であることが示唆されている。
【0009】
アルテミン(artemin)(ニューブラスチン(neublastin)またはエノビン(enovin)としても知られている)は、神経変性疾患、精神障害性疼痛および神経障害の予防および/または治療で使用するのに適している。
【0010】
ニュールツリン(neurturin)は、パーキンソン病およびその他の神経学的疾患における治療への応用を有する。
【0011】
ペルセフィン(persephin)は、炎症、多発性硬化症、新生物、創傷およびその他の損傷の治癒、後天性免疫不全症候群(AIDS)、細菌性、ウイルス性およびその他の感染症、免疫不全、アルツハイマー病、ハンティングトン舞踏病、パーキンソン病、脳血管虚血、および変性疾患のような健康状態の治療における治療上の有用性を有すると考えられる。
【0012】
BMP15(増殖分化因子9Bとしても知られている)は、女性不妊症の治療において、避妊において、および骨損傷および創傷の治癒の場合において有用である。
【0013】
スーパーファミリーメンバーGDF9は、女性不妊症の治療において治療上の有用性を有する。
【0014】
ノーダル(nodal)は、筋肉疾患、骨粗鬆症、骨関節炎、創傷治療、歯周病および結合組織病の治療で使用できる。
【0015】
BMP3は、骨損傷、骨粗鬆症、創傷治療、神経系損傷、神経変性疾患、パーキンソン病、脳血管虚血および腎臓疾患の分野で医療上の用途を有する。BMP3bは、分娩合併症の治療で使用できる。
【0016】
BMP−5は、BMP−3と同じ多くの徴候、ならびに、骨粗鬆症、結合組織病、損傷を含む創傷の治癒、骨疾患、歯の疾患、骨関節炎、歯周病、脳血管虚血、腎不全および脳損傷を治療するのに使用できる。
【0017】
GDF−5(軟骨由来形態形成因子としても知られている)は、関節炎、関節症、および新生物の治療で使用できる。
【0018】
BMP10は、骨粗鬆症、創傷治療、潰瘍、歯周病、骨疾患、火傷、結合組織病、骨腫瘍、骨損傷および新生物を治療するのに使用できる。
【0019】
BMP−8(骨形成タンパク質2としても知られている)は、骨疾患の治療で使用できる。
【0020】
BMP−6は、脳血管虚血および癌の治療における治療への応用を有する。
【0021】
BMP−7は、腎臓疾患、石灰沈着、歯の疾患、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、歯周病、骨疾患、脳血管虚血、腎不全、脳損傷、瘢痕組織、筋骨格疾患、および骨粗鬆症の治療で使用できる。
【0022】
BMP−2は、骨粗鬆症、筋骨格疾患および歯周病を含む骨疾患を治療するのに使用できる。
【0023】
BMP−4は、腎臓疾患の治療で使用できる。
【0024】
GDF−3は、免疫障害の治療において治療上の用途を有し、一方、GDF−1は、神経系損傷、多発性硬化症および神経学的疾患の治療で使用できる。
【0025】
GDF−8(ミオスタチンとしても知られている)は、筋肉消耗性疾患およびインスリン非依存性糖尿病の予防および/または治療で使用できる。
【0026】
インヒビン(inhibin)ファミリーのタンパク質は、不妊症、血液学的疾患、貧血症、癌腫、白血病および高リン酸血症および癌の治療で、ならびに避妊で使用できる。
【0027】
アクチビン(activin)は、硬皮症、血管形成障害、瘢痕化および線維症、再狭窄、癒着、子宮内膜症、虚血性疾患、体外受精における骨および軟骨誘導、口腔粘膜炎、および創傷治療の分野で治療上の用途を有する。
【0028】
GDF−15は、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、脳血管虚血、痴呆、免疫障害および新生物を治療するのに使用できる。
【0029】
ミューラー管阻害因子(MIF)は、抗ミューラー管ホルモンまたはMISとしても知られており、転移を含む癌、リンパ性白血病、前立腺腫瘍、子宮頸部腫瘍、乳房腫瘍、眼腫瘍、卵巣腫瘍、内分泌疾患、血管腫、子宮内膜症、炎症、黒色腫、新生物、癌腫、皮膚腫瘍、女性生殖管腫瘍、男性生殖系疾患、勃起機能不全および呼吸窮迫症候群の分野で使用できる。
【0030】
エバフ(ebaf)(レフティ(Lefty)としても知られている)は、脱毛症を始めとする毛髪疾患、硬皮症、線維症、筋ジストロフィー、新生物、自己免疫疾患の治療で、瘢痕組織、肝硬変、肺線維症、黒色腫および癌腫の治療で使用できる。
【0031】
【特許文献1】国際公開第2006/064207号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する医薬組成物に対する広く認められた必要性にも拘らず、現存する組成物と関連した多くの認められた諸問題が存在する。これらの諸問題の中には、所与の組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの全部を回収できないのが一般的であること(該組成物が貯蔵される容器材料へのTGF−βスーパーファミリーメンバーの吸着の結果として発生する問題)、および組成物中に組み込まれ貯蔵されたTGF−βスーパーファミリーメンバーの時間経過に伴う一般的に観察される生物学的活性の低下がある。このことは、また、任意のTGF−βスーパーファミリーメンバー治療薬の製造に関して重要で密接な関係がある。
【0033】
本発明の目的は、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含む従来技術による医薬組成物と関連する諸問題の少なくとも一部を回避または軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば、TGF−βスーパーファミリーメンバー、ならびにTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または生物学的活性の増大を可能にするのに十分な濃度で提供される糖類を含有する医薬組成物が提供される。
【0035】
本発明は、また、医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率を向上し、かつ/または生物学的活性を増大させるための糖類の使用を提供する。生物学的活性の増大は、組成物からのTGF−βの回収後に評価できることを認識されたい。医薬組成物から回収されるTGF−βスーパーファミリーメンバーの量を増加させることができ、この回収されたTGF−βスーパーファミリーメンバーが、増大した生物学的活性を有することができるのが好ましい。本発明のこの態様で使用するのに適した糖類およびTGF−βスーパーファミリーメンバー(および糖類およびスーパーファミリーメンバーの双方の濃度)は、本発明の態様または実施形態のいずれかを参照して、本明細書中のどこかで述べるいずれかの考察に基づいて選択できる。特に、TGF−βは、適切なスーパーファミリーメンバーであり、マルトースは、好ましい糖であり得る。マルトースとTGF−βの組合せが、特に好ましいかもしれない。
【0036】
本発明による医薬組成物中に組み込まれるTGF−βスーパーファミリーメンバーは、生物学的活性の増大を示す(すなわち、本発明の医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの示す生物学的活性が、従来の組成物中に組み込まれた同一量の同じスーパーファミリーメンバーの場合よりも大きい)ことが好ましい。
【0037】
本発明の医薬組成物は、組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上を可能にすべきであり、さらに、該スーパーファミリーメンバーは、生物学的活性の増大を示すことが最も好ましい。
【0038】
本発明者らは、本発明による医薬組成物によって付与される有益な効果は、これまで試験された任意の糖を使用して獲得できることを見出した。しかし、本発明による医薬組成物は、マルトース、スクロース、グルコースおよびマンノースを含む群から選択される糖を含むことが好ましいかもしれない。より好ましくは、本発明による医薬組成物で利用される糖は、マルトースおよびスクロースを含む群から選択することができ、最も好ましくは、その糖はマルトースである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
不確かさを回避するため、「本発明の医薬組成物」(または類似の用語)のような用語は、本発明の第1、第3および第4態様で定義される通りの組成物のみならず、本発明の使用により製造される医薬組成物も包含すると解釈される。
【0040】
本発明は、適切な糖類、または適切な濃度の糖類の存在下にTGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する医薬組成物は、従来技術で周知の医薬組成物と比較した場合、いくつかの驚くべき利点を提供するという本発明者らの発見に基づく。これらの利点には、本発明の医薬組成物からのTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率が2から5倍増大すること、およびこのような組成物中に組み込まれるTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性が4倍増大することが含まれる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖を含有し、その糖は50mg/mLを超える濃度で存在する、薬剤として使用するための医薬組成物が提供される。本発明による組成物は、51〜200mg/mLの濃度、好ましくは60〜150mg/mLの濃度、より好ましくは70〜100mg/mLの濃度、さらにより好ましくは80〜95mg/mLの濃度、最も好ましくは85〜90mg/mLの濃度で提供される糖を含むことができる。
【0042】
本発明のさらに好ましい実施形態では、TGF−βスーパーファミリーメンバー、ならびにグルコースおよびマンノースを含む群から選択される糖を含有する、薬剤として使用するための医薬組成物が提供される。
【0043】
先に、従来技術は、糖アルコールであるマンニトールが、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する医薬組成物で使用するのに好ましい賦形剤を代表することを示唆している。本発明者らは、本発明による医薬組成物が、従来技術によるこれらの好ましい組成物と比較した場合でさえも、種々の利点および有益な効果を提供することを見出した。実際、本発明の驚くほど効果的な組成物は、このようなマンニトールをベースにした製剤と比較して、組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率を2から5倍に向上させること、および生物学的活性を最大4倍まで増大させることを可能にする。
【0044】
本発明による組成物は、このような組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および本来的生物学的活性の増大の双方に関して、従来技術に優る利益を提供する。従来技術は、糖類をこのような大きな効果のために使用できるとの指摘を含まず、かつ、糖類を50mg/mLを超える濃度で含有する組成物の使用が本発明者らにより確認されたいずれかの利点を提供するとの示唆を明確には含んでいない。
【0045】
本発明による組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の増大は、従来技術中で先に開示されている既知組成物に優る重要な利点を付与する。従来技術中には、グルコースおよびマンノースを含む群から選択される糖類が、本発明者らによって確認されたこれらの利点を提供できるということを示唆するものは何もない。
【0046】
当業者は、糖類の適切で薬学上許容される誘導体、バリアントおよび塩も、本発明の医薬組成物中で使用できる特定の状況が存在することを認識するであろう。適切な誘導体、バリアントまたは塩は、マルトース、スクロース、グルコースおよびマンノースを含む群から選択される糖のそれら、特に、マルトースおよびスクロースを含む群から選択される糖類をベースにした(より好ましくは、糖マルトースをベースにした)それらでよい。しかし、本発明者らは、確認された利益は、糖類そのものの使用によって最も容易に付与されると考える。このことは、従来技術が示唆している糖アルコールなどの薬物の使用と対照をなし、それらから区別されるべきである。これらの利点を維持するのに、本発明によれば、糖アルコールを使用すべきでないことを認識されたい。
【0047】
本発明者らは、本発明による医薬組成物が、任意のTGF−βスーパーファミリーメンバーを含めて使用するのに適していることを見出した。従って、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、TGF−βまたはTGF−β類に対する言及は、TGF−βスーパーファミリーの任意のメンバーに対する言及を包含すると解釈できる。このような言及は、すべての既知のスーパーファミリーメンバー、および少なくとも図1に示したTGF−βスーパーファミリーのすべてのメンバーを包含すると解釈すべきであることを認識されたい。好ましくは、本発明による医薬組成物中に組み込まれるTGF−βスーパーファミリーメンバーは、TGF−β、TGF−βおよびTGF−β(それぞれ図2に示した配列ID番号1、2および3に対応する)を含む群から選択できる。最も好ましくは、TGF−βスーパーファミリーメンバーはTGF−βである。
【0048】
当業者は、本発明の医薬組成物は、1種を超えるTGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込むことができることをさらに認識するであろう。複数のTGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込んだこのような組成物は、それらの組み合わされた治療的または生物学的効果に関する相加または相乗的相互作用を有する、TGF−βスーパーファミリーメンバーの組合せを利用することが望まれる状況において好ましいかもしれない。従って、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、TGF−βスーパーファミリーメンバー、特に、本発明の医薬組成物中に組み込まれるTGF−βスーパーファミリーメンバーに対する言及は、2種以上のTGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込んだ組成物も包含すると解釈すべきである。
【0049】
TGF−βスーパーファミリーメンバーなどのタンパク質は、それらのタンパク質を組み込んだ組成物の投与に際して、特に、組成物または貯蔵容器中の疎水性成分と、タンパク質の生物学上または治療上の活性を発揮するようにタンパク質を利用できないように相互作用する傾向を有する。この問題は、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する組成物の貯蔵に際して激化する。このような組成物の貯蔵は、そのように組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの利用困難性を増大させる。組成物内での、および組成物を貯蔵している容器の成分に対するTGF−βスーパーファミリーメンバー分子の結合の発生は、貯蔵時間の経過に伴って増大する。組成物自体内で、またはその他の物質(貯蔵容器など)に対してTGF−βスーパーファミリーメンバー分子が結合すると、結合された分子は、それらの分子が生物学上および/または治療上の活性を達成する有用性を欠如することになる。長期保存の後には、組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの利用可能な生物学上および/または治療上の活性の低減が、該組成物が生物学上および/または治療上無効であると断言されるほどになってしまう可能性がある。
【0050】
賦形剤としてマンニトールを使用する組成物などの既知医薬組成物との比較において、本発明による医薬組成物は、医薬組成物中に最初に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバー総量から有意により高い割合を回収することを可能にする。本発明の目的の場合、組成物からのTGF−βスーパーファミリーメンバーの「回収率」とは、該組成物の投与に際して、治療上および/または生物学上の活性を発揮するために利用できる、組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの割合を指すと解釈できる。注目の医薬組成物(従来技術による組成物または本発明の組成物)からのTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率を調べることのできるモデルは、後記の実験結果の部に記載される。回収率の増大の主な利益は、発揮することのできる生物学的活性の増大にあるが、回収率を評価する場合、使用される方法は、生物学的活性を測定する必要がないことを認識されたい。代わりに、適切な方法は、回収されたTGF−βスーパーファミリーメンバーの量に関する化学的または物理的示度(例えば、回収可能重量)に基づくことができる。
【0051】
上で言及したように、本発明者らは、本発明による医薬組成物が、マンニトールをベースにした組成物に比較した場合、組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率に関して2から5倍の増加を可能にすることを見出した。このような結果は、糖類を50mg/mLを超える濃度で利用する組成物を使用して得ることができる。典型的には、スクロースまたはマンノースを使用する医薬組成物は、従来技術に較べた場合、回収できるTGF−βスーパーファミリーメンバーの2から3倍またはそれ以上の増加を可能にする。マンノースを使用して達成される、マンニトールに比較した場合の回収率の増大は、糖アルコールとは対照的に糖類を使用することの利益を際立たせる。
【0052】
組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上を可能にする組成物の能力の結果として、本発明による医薬組成物は、従来技術のよる組成物に比較して顕著な利点を付与する。従来技術による組成物の投与の際に治療有効量のTGF−βスーパーファミリーメンバーを回収することが可能であるためには、組成物中に、回収することが望まれる治療有効量よりも大量のTGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込むことが必須である(従来技術による組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの全量の一定の割合が、例えば、組成物内でのまたは貯蔵容器に対する結合を介して回収不能になるからである)。従って、従来技術による組成物は、その組成物が、
i)TGF−βスーパーファミリーメンバーの治療有効量、および
ii)回収不能になるTGF−βスーパーファミリーメンバーの量
の総和に等しい総量を組み込むように製造しなければならない。
【0053】
本発明の医薬組成物は、組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーのより大きな回収を可能にするので、(所望される治療有効量のTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収を可能にするために)製造時点でこのような組成物中に組み込まなければならないTGF−βスーパーファミリーメンバーの総量を相対的に低減できる。比較的少量のTGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込んだ医薬組成物を使用することによって所望の治療効果を達成する能力は、従来技術に優るかなりの商業的利点を提供することを認識されたい。
【0054】
TGF−βスーパーファミリーメンバーなどの治療上有用なタンパク質の製造に関する効率性および費用効果の増大を可能にしている進歩にもかかわらず、これらの生物学上および治療上有効なタンパク質は、製造するのに相変わらず比較的費用がかさみ、一般には、それらが組み込まれる医薬組成物の中で最も高価な成分である。対照的に、糖類は、医薬組成物中で使用される比較的安価な化合物を代表する。組成物中に安価な糖類を組み込むことによって、組成物から回収できるTGF−βスーパーファミリーメンバーの量を増大させる本発明の組成物は、従来技術で周知の組成物に優るかなり経済的な利益を提供することを認識されたい。
【0055】
また、本発明による医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の増大は、このような組成物が、既知の組成物に比較して増加した「貯蔵寿命」を有することを意味する。貯蔵されている本発明の組成物から高い割合でTGF−βスーパーファミリーメンバーを回収する能力は、本発明による組成物が、従来技術による組成物の場合よりも、それらの製造後により長期間使用できることを意味する。例えば、従来技術のよる組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーが長期保存後の組成物から回収不能になる傾向は、本発明の組成物を使用した場合、劇的に低下する。この増加した貯蔵寿命は、以下で考察する本発明の組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの本来的な生物学的活性の顕著な増大によってさらに改善される。
【0056】
本発明による医薬組成物からのTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上に加え、本発明者らは、驚くべきことに、本発明による医薬組成物が、その中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの本来的な生物学的活性を有益に増大させることもできることを見出した。
【0057】
本発明の医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの本来的な生物学的活性は、例えば、TGF−βスーパーファミリーメンバーが、ミンク肺上皮細胞(MLEC)の増殖を阻害する能力を参照して測定できる。注目の組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの本来的な生物学的活性を測定できるモデルは、後記の実験結果の部に提示する。
【0058】
別法として、評価すべき本来的な生物学的活性は、問題のTGF−βスーパーファミリーメンバーに対して特異的である活性でよい。例えば、好ましいTGF−βスーパーファミリーメンバーであるTGF−βを組み込んだ本発明の医薬組成物の場合、本来的な生物学的活性は、瘢痕化または線維症を低減および/または抑制する能力でよい。
【0059】
本発明者らは、本発明による医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーが、従来技術による組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーによって示される生物学的活性の最大で5倍の活性を示すことを発見した。本発明の医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の著しい増大は、これらの組成物の驚くべきかつ重要な利点を代表する。実際、本発明による医薬組成物が、その中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性を高めることができるのが当然であることを示唆するものは従来技術中に存在しない。
【0060】
本発明による医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーによって示される高い生物学的活性は、TGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性を治療で利用することが所望される状況において特に有利であることは容易に認識されるであろう。TGF−βスーパーファミリーメンバーのほとんどすべての治療上の適用分野は、スーパーファミリーメンバーの生物学的活性に依拠しているので、本発明による組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の増大は、治療上の有効性の増加と直接的に対応する。
【0061】
TGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込んだ医薬組成物を採用することが周知である多くの治療状況が存在する。このような状況の例には、創傷治癒に関する治療、瘢痕化の予防および/または治療、線維症の予防および/または治療、創傷治癒の加速、上皮再生の促進、瘢痕化および/または線維症の抑制、ならびに骨誘導(例えば、骨形成、治癒、および/または再構築における骨誘導)および序文に記載したその他の治療状況に関する治療への応用が含まれる。
【0062】
本発明者らは、本発明による医薬組成物が、創傷治療および/または線維症の状況で使用するのに特に適していることを見出した。本発明による医薬組成物は、瘢痕化を低減した創傷治療の促進、線維症の予防および/または治療、瘢痕化および/または線維症の抑制、創傷治療の加速、および上皮再生の促進で使用するのに適している。従って、本発明による医薬組成物は、
i)瘢痕化を低減した創傷治療の促進、および/または
ii)線維症の予防および/または治療、および/または
iii)瘢痕化および/または線維症の抑制、および/または
iv)創傷治療の加速、および/または
v)上皮再生の促進
のための薬剤の調製で使用できる。
【0063】
本発明の組成物からのTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上、およびこのような組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の増大に関する利益は、該医薬組成物を製剤する方式により、互に(少なくともある程度は)分離できる。換言すれば、本発明による組成物を、
i)該組成物が、その中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上、およびTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の増大という双方の利益を提供するか、あるいは
ii)該組成物が、その中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上という利益を提供するが、生物学的活性という利益を提供しないか、あるいは
iii)該組成物が、TGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上を提供しないが、その生物学的活性の増大を提供する、ように製造できる。
【0064】
これらの各種選択肢を説明する例を以下で提供する。
【0065】
例えば、本発明の第1態様による組成物は、TGF−βスーパーファミリーメンバー、および組成物の貯蔵中(本発明の目的では、組成物の製造とその実際の使用との間に存在する時間を含むと解釈される)さらには組成物を投与する時点の双方で有効濃度(例えば、50mg/mLを超える)の糖を含有することが好ましい。本発明のこの態様によるこのような組成物は、貯蔵中または貯蔵後におけるTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上に由来する、さらには投与される時点でのTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の増大に由来する利益を得る。
【0066】
本発明による組成物は、また、糖は、貯蔵中に有効濃度(例えば50mg/mLを超える)で存在するが、投与時点でより低い濃度で存在するようなそれらの組成物を包含する。このような状況の典型的な例が、その投与に先立って該組成物を希釈するような例である。本発明のこの実施形態による組成物は、組成物の投与時点で有効濃度(例えば、50mg/mLを超える)の糖を含有しないが、該組成物は、それでも、貯蔵後におけるTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の増大に由来する、またその回収時点におけるTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の増大に由来する利益を得る。
【0067】
本発明による組成物のさらなる実施形態において、糖の有効濃度(例えば、50mg/mLを超える)は、組成物を投与する前に比較的短時間だけ確立できる。この実施形態による組成物の典型的な例は、投与に先立って別の「乾燥」組成物に溶媒を添加して、糖が必要な有効濃度(例えば、50mg/mLを超える)を有する組成物を調製するような例でよい。本発明のこの実施形態による組成物は、それらが投与される部位に驚くほど高い生物学的活性(従来技術の組成物に比較して)を有するTGF−βスーパーファミリーメンバーを提供する。従来技術による組成物に付随する貯蔵後におけるTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率と関連した諸問題は、該組成物を比較的不活性な乾燥状態で貯蔵することによって回避できる。
【0068】
実際、本発明のこの実施形態は有利であり、結果として、本発明の第3形態により、TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖を含有する可溶性医薬組成物が提供され、ここで、その糖は、該組成物を溶解して生理学的溶液とした際に、その糖が、TGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または生物学的活性の増大を可能にするのに十分な濃度で提供されるような比率で提供される。好ましくは、その糖は、組成物を溶解して生理学的溶液とした際に、糖の濃度が50mg/mLを超えるような比率で提供される。糖は、好ましくはマルトースでよい。
【0069】
好ましくは、本発明のこの第3形態による医薬組成物は、水溶性医薬組成物でよい。本発明のこの態様による生理学的溶液は、生理学的濃度または容量オスモル濃度を有する溶液でよい。例えば、哺乳動物での注射に適した本発明のこの態様による可溶性医薬組成物は、該組成物を溶解した際に、約290ミリオスモル(オスモル/L)の容量オスモル濃度を達成できる。本発明のこの第3態様による組成物は、本発明の第1および第2態様による組成物中に見出される、その中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性の増大に関連するすべての利点を付与する。従って、本発明のこの第3態様による組成物は、本発明の第1および第2態様による組成物に関して上述したすべての医学上および/または治療上での使用に適している。
【0070】
組成物が、ヒトなどの哺乳動物中に安全に注射するのに適していると考えられるか否かを決定する因子の1つは、投与時点で該組成物中に存在するナトリウムイオンの濃度である。従って、本発明の第4態様では、TGF−βスーパーファミリーメンバー、ナトリウムイオン源、および糖を含有する可溶性医薬組成物が提供され、そのナトリウムイオン源および糖の量は、130〜160mEq/Lのナトリウム濃度を生成するように該組成物を溶解する際に、その糖濃度が、TGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または生物学的活性の増大を可能にするのに十分であるような量である。好ましくは、ナトリウムイオン源および糖の量は、組成物を溶解して130〜160mEq/Lのナトリウム濃度とした際に、糖の濃度が50mg/mLを超えるような量である。糖は、好ましくは、マルトースでよい。注射可能な医薬組成物で使用するのに適したナトリウムイオン源は、当業者に周知である。好ましくは、本発明の第4態様による組成物は、水溶性組成物でよい。本発明の第4態様のこれら組成物は、上述の医学上および/または治療上の使用により採用することもできることをさらに認識されたい。
【0071】
治療への応用における本発明による医薬組成物の使用に加えて、当業者は、また、本発明による組成物によって示される生物学的活性の増大は、TGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性を非治療目的のために利用する予定である状況においても有益であるかもしれないことを認識するであろう。典型的には、TGF−βスーパーファミリーメンバーのこのような非治療的使用は、研究または実験目的へのそれらの使用に関することができる。従って、本発明は、また、薬剤としてではない使用のための、特に研究および/または実験的使用のための、本発明の第1、第2または第3態様で挙げたような組成物を提供する。
【0072】
本発明者らは、本発明による医薬組成物によって付与される利点は、試験されたすべての製剤を通して利用可能となるが、本発明の医薬組成物は、注射による投与のために組成物を製剤する場合に特に有利である。より好ましくは、本発明による医薬組成物は、皮内注射用に製剤してもよいし、あるいは、皮下注射用に製剤してもよい。皮内注射および/または皮下注射に適した典型的な製剤は、当業者に周知であろう。
【0073】
局所化非経口投与(例えば、皮内、筋内および皮下)および全身性非経口投与(例えば、静脈内および動脈内)に適した、本発明による医薬組成物は、TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖(双方とも所望の純度を有する)を、生理学的に許容される任意選択の担体、賦形剤または安定剤と共に混合することによって、使用に先立って再構成するための凍結乾燥および非凍結乾燥の粉末製剤、非水性および水性の溶液、および半固体製剤の形態で調製できる。賦形剤を始めとする許容される担体は、採用される投与量および濃度で受容者に対して無毒性であり、限定はされないが、リン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを始めとする抗酸化剤;塩化ナトリウム、グリセロールなどの張性調節剤;オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメチオニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、メチルおよび/またはプロピルおよび/またはブチルパラベンなどのアルキルパラベン類、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノールおよびm−クレゾールなどの保存剤;低分子量ポリペプチド(約10個未満のアミノ酸残基を含む);血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;デキストリンを始めとする炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);脂肪酸石鹸、アシル硫酸塩、またはアシルスルホコハク酸塩などのアニオン界面活性剤;第1級、第2級、第3級、または第4級アルキルアミンなどのカチオン界面活性剤;ノニオン界面活性剤、例えば、ソルビタンエステルまたはアシル酸のポリエトキシル化エステル、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのコポリマーが含まれる。
【0074】
例を挙げれば、非経口投与に適した無菌溶液の形態での本発明の医薬組成物は、TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖に加えて次の構成成分、すなわち、
0.01Mから0.1Mのリン酸塩緩衝液、
0.9%w/vまでの塩化ナトリウム(血液との等張性、290〜300mOsm/Lを達成するため)、および
0.1mg/mLモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(商標)80)を含むことができる。
【0075】
上記溶液の凍結乾燥(フリーズドライ)粉末「ケーキ」を調製できた。
【0076】
本発明によるこのような医薬組成物は、無菌溶液、無菌懸濁液のバイアル、アンプル、または事前充填シリンジの形態、あるいは局所化非経口薬物送達に適合した形の薬学上許容される任意のその他の形態で提供できた。
【0077】
本発明による医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および生物学的活性の増大は、一般に、それらの組成物を、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する組成物の貯蔵寿命を向上させるのに使用される凍結乾燥などの現行の取組み方法に対する代案として使用できることを意味する。従って、本発明の医薬組成物は、凍結乾燥されていないことが一般には好ましい場合がある。しかし、凍結乾燥などの周知の技術を本発明の組成物により使用することが望まれる場合もある。これらの技術は、本発明の医薬組成物の貯蔵寿命をいっそうさらに延長することができ、例えば、再構成に適した無菌の凍結乾燥(フリーズドライ)粉末を調製するのに使用できる。
【0078】
本発明による医薬組成物は、眼で使用するために(例えば、点眼薬として)、または腹腔内点滴剤として製剤できる。
【0079】
別法として、または追加的に、本発明による医薬組成物は局所投与のために製剤できる。本発明による医薬組成物の局所投与は、TGF−βスーパーファミリーメンバーが治療効果を発揮している部位に対する継続的ケアの状況で特に好ましい場合がある。
【0080】
局所投与(例えば、経皮/皮膚、眼、耳、鼻、咽頭、口内、直腸、膣、尿道)に適した本発明の医薬組成物は、TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖(双方とも所望の純度を有する)を生理学上許容される任意選択の担体、賦形剤または安定剤と共に混合することによって、凍結乾燥または非凍結乾燥の粉末製剤、非水性または水性溶液、エマルジョンおよび半固体製剤を始めとする非水性または水性分散液/懸濁液の形態で調製できる。賦形剤を始めとする許容される担体は、採用される投与量および濃度で受容者に対して毒性が無く、限定はされないが、精製水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)リンガー溶液、乳酸加リンガー溶液、水−アルコール溶液、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、リン酸塩、酢酸塩、ゼラチン、コラーゲン、Carbopol934(商標)(BF Goodrich Corp.)、植物および合成のオイルおよびワックス、アニオン界面活性剤(脂肪酸石鹸、アシル硫酸塩、またはアシルスルホコハク酸塩など)、カチオン界面活性剤(第1級、第2級、第3級、または第4級アルキルアミンなど)、ノニオン界面活性剤(例えば、アシル酸のソルビタンエステルまたはポリエトキシル化エステル、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのコポリマーなど)が含まれる。本発明の医薬組成物は、適切な保存剤、安定剤、抗酸化剤、抗微生物剤および緩衝剤、例えば、メチルおよび/またはプロピルおよび/またはブチルパラベン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クエン酸、アスコルビン酸などを追加的に含むことができる。製剤で有用なエマルジョン、クリームまたは軟膏基剤としては、水をベースにしたクリームおよびエマルジョン(水中油型)、オイルをベースにしたクリームおよびエマルジョン(油中水型)、軟膏(乳化性または非乳化性炭化水素)、ゲル、ヒドロゲルなどを挙げることができる。局所送達のためのその他の製剤としては、エアゾール、バンデージ、およびその他の創傷包帯を挙げることができる。別法として、本発明の医薬組成物は、適切なポリマーマトリックスまたは膜中に組み込むか、またはカプセル化し、かくして、治療すべき部位またはその近傍に配置または埋め込むのに適した徐放性送達デバイスを提供することができる。
【0081】
局所投与に適した半固体ヒドロゲル製剤の形態をした本発明の医薬組成物は、(TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖に加えて)次の構成成分、すなわち
0.1%w/vから2.0%w/vのヒドロキシセルロース、
0.1%w/vから1.0%w/vのCarbopol934(商標)(BF Goodrich Corp.)、
10から20%w/vのプロピレングリコール、
0.005%w/vから0.020%w/vのメチルパラベン、
0.005%w/vから0.020%w/vのプロピルパラベン、
水酸化ナトリウムまたは塩酸(pH4〜10になるまで)、および
精製水(100%w/vになるまで)をさらに含むことができる。
【0082】
本発明の適切な医薬組成物は、無菌溶液、再構成のための無菌の凍結乾燥または非凍結乾燥粉末、無菌の分散液/懸濁液、無菌の半固体、または局所薬物送達に適合した薬学上許容される任意のその他の形態である、細口瓶、広口瓶、チューブ、スプレーの形態で提供できる。
【0083】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖(双方とも所望の純度を有する)を、生理学的に許容される任意選択の担体、賦形剤または安定剤と共に混合することによって、即時放出および/または調節放出(腸溶性/遅延/徐放)特性を有する、エマルジョン、半固体製剤、錠剤(非被覆または被覆)またはカプセル(硬質または軟質)製剤を始めとする、粉末または顆粒製剤、非水性または水性溶液、非水性または水性分散液/懸濁液製剤の形態で調製できる。賦形剤を始めとする許容される担体は、採用される投与量および濃度で受容者に対して毒性が無く、限定はされないが、精製水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)リンガー溶液、乳酸加リンガー溶液、水−アルコール溶液、セルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよび修飾デンプン、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、リン酸塩、酢酸塩、ゼラチン、コラーゲン、Carbopol934(商標)(BF Goodrich Corp.)、植物および合成のオイルおよびワックス、アニオン界面活性剤(脂肪酸石鹸、アシル硫酸塩、またはアシルスルホコハク酸塩など)、カチオン界面活性剤(第1級、第2級、第3級、または第4級アルキルアミンなど)、ノニオン界面活性剤(例えば、アシル酸のソルビタンエステルまたはポリエトキシル化エステル、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのコポリマーなど)が含まれる。
【0084】
TGF−βスーパーファミリーメンバーは、液体内の懸濁物として(例えば、コロイド状懸濁液として)液体製剤内に分散されること、または溶液として液体内に溶解されることができる。本発明の目的の場合、溶液は、その後に溶液から沈降しない、TGF−βスーパーファミリーメンバーの均一分散物を分散している液体溶媒を含むものとして特徴付けられると考えることができる。
【0085】
本発明による医薬組成物は、好ましくは水性溶液を含むことができる。適切な医薬組成物は、液体組成物でよいし、あるいは、ゲルまたは半固体の組成物を形成するような増粘剤をさらに含むこともできる。適切な増粘剤は、当業者に周知であり、メチルセルロースが含まれる。本発明の第1、第2、または第3態様による医薬組成物において増粘剤を使用すると、いくつかの状況下で有利であり得る。特に、本発明の組成物で増粘剤を使用すると、該組成物を、その組成物が投与され、組成物がその生物学上および/または治療上の効果を有することが所望される部位に保持することを確実にすることにおいて有利であり得る。この利点は、局所用薬剤に関して有益であり、外部適用薬剤(例えば、粘度を増したクリームまたはゲル)および内部適用薬剤(例えば、局所注射のための粘度を増したゲル)の双方に適用できる。本発明による医薬組成物のチキソトロピー製剤は、いくつかの応用分野で、例えば、肺の線維症または瘢痕化の予防および/または治療のために組成物を肺に投与するために使用される経鼻スプレーまたは吸入器の使用(別の方法では比較的到達し難い)において有益であり得ることを認識されたい。
【0086】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、該組成物を含有する事前充填容器で提供できる。このような事前充填容器は、組成物、特に事前滅菌組成物を該組成物が利用される予定の場所に容易に送達するそれらの能力に関して利点を提供する。適切な容器は、選択された製剤および組成物を投与する予定の方法または経路を参照して選択することができ、典型的には、バイアルまたはシリンジなどの容器が含まれる。このような事前充填容器中にTGF−βスーパーファミリーメンバーを含有する医薬組成物を提供することは、TGF−βスーパーファミリーメンバーのタンパク質が時間経過に伴って容器の壁に付着する傾向によって、以前は危うくされていた。さらに、容器中に貯蔵されたTGF−βスーパーファミリーメンバーが時間経過に伴って変性し、活性を失う傾向は、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含む組成物をこの方法で事前充填し貯蔵することの適切性をも限定していた。従って、本発明の医薬組成物は、別の望ましい事前充填容器、特に無菌組成物を含む容器の提供を妨げ、思いとどまらせていた従来技術の欠点に対する解決策を提供する。
【0087】
前に示したように、本発明の医薬組成物は、治療上の使用に広く適合している。従って、本発明の第5態様では、TGF−βスーパーファミリーメンバーの治療活性を必要とする個体に対して、治療量の本発明の第1、第2、第3または第4態様による組成物を投与することを含む治療方法が提供される。治療活性は、TGF−βスーパーファミリーメンバーの治療活性を使用して治療できる疾患または健康状態の予防を始めとする予防療法を包含すると解すべきである。
【0088】
本発明による医薬組成物の好ましい使用は、創傷治療および/または瘢痕の予防/低減の状況中に存在する。本発明者らは、本発明の医薬組成物が、瘢痕化の予防および/または抑制で使用できることを見出した。別法としてまたは追加的に、本発明の医薬組成物は、線維症の予防および/または治療で使用できる。本発明の医薬組成物は、創傷治療を促進するためにも使用できる。創傷治療の促進および/または瘢痕形成の予防もしくは抑制では、創傷形成の前または後に医薬組成物を投与することが好ましいまたは必須である場合がある。従って、医薬組成物は、創傷へのその導入の間、または創傷形成の間、医薬組成物が既に存在する(より初期の投与によって)部位の負傷区域中に存在する。従って、本発明による医薬組成物は、それらが創傷部位によって十分許容されるように製剤され得ることが好ましい。創傷に適用するための製剤は、比較的「マイルド」である医薬用ビヒクルを利用できることが好ましい。適切なビヒクルは、生体適合性、生分解性、ならびに生体再吸収性および生体再溶解性があればよい。好ましい製剤は、炎症を刺激する物質を排除することができ、好ましくは抗炎症薬を含むことができる。
【0089】
瘢痕化の予防および/または抑制を評価できる適切な方法は、例えば、特許文献1に公開されている、本発明者らの同時係属出願中に記載されている。
【0090】
創傷の治療および瘢痕化の抑制における本発明による医薬組成物の使用は非常に有益なので、本発明の第6態様では、創傷治療を促進しかつ/または瘢痕形成を抑制する方法が提供され、該方法は、このような促進および/または抑制を必要とする患者に対して、治療有効量の本発明の第1、第2、第3および第4態様による医薬組成物を投与することを含む。本発明に関して、治癒の促進は、治癒速度の増加および/または治癒品質の向上を包含すると考えることができる。瘢痕形成の抑制は、創傷治癒、あるいは線維組織の異常または過剰沈着によって特徴付けられるその他の線維形成過程と関連した瘢痕化の任意の度合いの抑制(部分抑制から全体的抑制に及ぶことができる)を包含すると考えることができる。本発明の医薬組成物および治療方法は、皮膚線維症、硬皮症、進行性全身性線維症、肺線維症、筋線維症、腎線維症、糸球体硬化症、糸球体腎炎、子宮線維症、腎臓線維症、肝硬変、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、心筋梗塞後線維症、脳卒中後線維症などの中枢神経系線維症、アルツハイマー病または多発性硬化症などの神経変性障害と関連した線維症、増殖性硝子体網膜症(PVR)と関連した線維症、再狭窄、子宮内膜症、虚血性疾患および放射線線維症からなる群から選択される繊維形成障害と関連した瘢痕化(線維症)の予防、低減、抑制または治療で特に有用であり得る。本発明の薬剤および治療方法は、また、リウマチ様関節炎に関連した線維症の予防、低減または管理で有用であり得る。
【0091】
本発明による予防および/または治療は、異常な創傷治癒または瘢痕化応答の危機にある創傷の場合に特に有用であり得る。例えば、本発明の第6態様による予防および/または治療は、慢性創傷(潰瘍)または慢性創傷に発展する傾向のある創傷(例えば、糖尿病、年配者または薬物濫用を伴う患者の創傷)の治療で特に好ましいかもしれない。
【0092】
本発明の第6態様による予防および/または治療は、また、病理学的瘢痕(ケロイドまたは肥厚性瘢痕など)または病理学的瘢痕に発展する傾向のある創傷(火傷、幼児の創傷、アフリカ系カリブ人またはモンゴロイド人個体の創傷、または皮膚張力の高い位置での創傷など)の治療で特に有益であり得る。
【0093】
本発明による医薬組成物は、例えば皮膚創傷の治療における皮膚への投与に特に適合する。しかし、組成物は、限定はされないが、眼の創傷、消化器系の創傷、神経系の創傷、尿道−生殖器系の創傷、呼吸器系の創傷、腎臓の創傷、腱および靭帯創傷、および心臓または循環器系の創傷、損傷および再狭窄後の後に形成される癒着を始めとするその他の創傷タイプの治療で効果的に使用できる。本発明者らは、本発明の医薬組成物および治療方法が、皮膚での使用、眼での使用(LASIKまたはPRK手術などの眼手術に由来する瘢痕化の予防、低減または抑制を含む)、血管での使用、末梢または中枢神経系での使用(瘢痕化の予防、低減または抑制が神経再結合を高める)、腱、靭帯または筋での使用、唇および口蓋を含む口腔での使用(口蓋裂または口蓋の治療に由来する瘢痕化の予防、低減または抑制などで)、肝臓、心臓、脳、消化組織および生殖組織などの内部器官での使用、腹腔、骨盤腔および胸腔などの体腔での使用(瘢痕化の予防、低減または抑制が、癒着形成の発生数および/または形成される癒着の大きさを低減できる)に適していると考える。本発明の薬剤および方法は、腹部、骨盤または脊椎で発生するような癒着を予防、低減または抑制するのに使用できる。本発明の薬剤および方法は、皮膚の瘢痕化(皮膚瘢痕化)を予防、低減または抑制するのに使用するのが特に好ましい。
【0094】
本発明の医薬組成物は、負傷および/または瘢痕化(本発明の目的の場合、線維性障害に関連した線維症を含むと解釈すべきである)の開始に先立って好ましくは投与できる。医薬組成物は、負傷の24時間前までに、好ましくは負傷の10時間前までに、より好ましくは負傷の5時間前までに、最も好ましくは負傷の1時間前までに投与できる。負傷または瘢痕化開始に先立つ本発明による医薬組成物の投与は、選択的創傷(手術処置に関連した創傷など)の場合、または瘢痕化開始について認められた危険(すなわち、線維症に対する傾向または線維症を誘発する可能性のある刺激に対する暴露)が存在する状況で特に有用性があることを認識されたい。
【0095】
別法として、医薬組成物は、負傷または瘢痕化開始の後に投与できる。負傷後に医薬組成物を投与する場合には、医薬組成物を、負傷の直後に、または実行可能な限り負傷のすぐ後に(例えば、負傷患者が医師の保護にゆだねられた後に)投与することが好ましい場合がある。線維性障害の結果として発生する瘢痕化などの瘢痕化の開始後に医薬組成物を投与する場合には、組成物を、瘢痕化の開始が認められた直後に投与できることが好ましい。どちらの場合も、医薬組成物は、負傷または瘢痕化開始の1週間後までに、より好ましくは負傷または瘢痕化開始の24時間後までに、さらにより好ましくは5時間後までに、いっそうさらに好ましくは5時間後までに、最も好ましくは負傷または瘢痕化開始の1時間後までに投与できることが好ましい。
【0096】
本発明による医薬組成物は、局所適用のために製剤できる。本発明のこの実施形態による適切な製剤としては、液体、クリーム、軟膏またはゲル製剤、あるいはスプレーまたはエアゾール製剤を挙げることができる。
【0097】
本発明の方法または薬剤は、創傷は存在しないが、さもなければ瘢痕または慢性創傷を生じさせる創傷が形成されるはずである部位で予防的に使用できる。例を挙げれば、本発明による薬剤は、選択的処置(手術など)の結果として創傷を被るはずである部位に、または負傷の高い危険があると思われる部位に投与できる。本発明の薬剤は、創傷形成の直前に(例えば負傷の6時間前までの期間に)投与されることが好ましい場合があり、あるいは薬剤は負傷前のより早い時点で(例えば、創傷が形成される48時間前までに)投与できる。当業者は、創傷形成前の最も好ましい投与時点は、選択した薬剤の製剤および投与経路、投与予定薬剤の投与量、形成されるはずの創傷の大きさおよび性質、および患者の生物学的状態(患者の年齢、健康、および治癒合併症または有害瘢痕化に対する傾向を参照して決定できる)を始めとするいくつかの因子を参照して決定されることを認識するであろう。本発明による方法および薬剤の予防的使用は、本発明の好ましい実施形態であり、手術創傷に関連する瘢痕化を低減した創傷治癒の加速を促進するのに特に好ましい。
【0098】
また、本発明の方法および薬剤は、創傷が形成された後に投与すると、瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進できる。このような投与は、創傷形成後にできるだけ早期に行なうことが好ましいが、本発明の薬物は、治癒の過程が完結するまでの任意の時期に瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進できる(すなわち、創傷が既に部分的に治癒している事象でさえ、本発明の方法および薬剤を、残存する未治癒部分に関する瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進するのに使用できる)。本発明の方法および薬剤を、瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進するのに使用できる「ウィンドウ(window)」は、問題の創傷の性質(発生した傷害の程度、負傷区域の大きさを含む)によって決まることを認識されたい。従って、大規模な創傷の場合、本発明の方法および薬剤は、治癒反応の比較的末期に投与することができ、それでもなお、瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進できる。本発明の方法および薬剤は、例えば、創傷形成後の最初の24時間以内に投与するのが好ましいが、負傷後10日まで、または10日を過ぎて投与されても瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速をなお促進できる。
【0099】
本発明の方法および薬剤は、瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進するために必要な場合に、1回または複数のふさわしい好機に投与できる。例を挙げれば、治療有効量の薬剤は、治癒の過程が完結するまで、必要な都度、創傷に適用できる。例を挙げれば、本発明の薬剤は、創傷形成に続く少なくとも最初の3日間、毎日または1日に2回創傷に投与できる。
【0100】
最も好ましくは、本発明の方法および薬剤は、創傷形成の前および後の双方で投与できる。本発明者らは、創傷形成の直前における本発明の薬剤の投与、それに続く負傷後の日々におけるこのような薬剤の毎日の投与が、瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進するのに特に有効であることを見出した。
【0101】
創傷に適用されるべき本発明による医薬組成物の量は、薬剤中に組み込まれるTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性および生物学的利用能などのいくつかの因子によって決まる。このことは、次には、TGF−βスーパーファミリーメンバーの正体および組成物の投与方式などの因子によって決まる。本発明による組成物の適切な治療量を決定するその他の因子としては、
i)治療されている対象におけるTGF−βスーパーファミリーメンバーの半減期、
ii)治療される予定の具体的健康状態(例えば、急性負傷、慢性創傷または線維性障害)、
iii)治療されている対象の年齢、を挙げることができる。
【0102】
本発明による組成物の投与頻度は、上述の因子によって、特に、組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの治療されている対象内における半減期によって影響される。
【0103】
一般に、本発明による医薬組成物が、現存する創傷の治療で使用される予定の場合には、該組成物を、創傷が発生したら直ちに(あるいは、身体内部での創傷のように直ちに明白ではない創傷の場合には、創傷を突き止めたら直ちに)投与すべきである。本発明による組成物または方法での治療は、治癒過程が、臨床医の満足まで促進されるまで(および/または瘢痕化が抑制されるまで)継続すべきである。
【0104】
上で言及したように、本発明による組成物の投与頻度は、その中に組み込まれるTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的半減期によって決まる。典型的には、クリームまたは軟膏として製剤された本発明による組成物は、標的組織に対して、標的組織におけるTGF−βスーパーファミリーメンバーの濃度が治療効果を有するのに適切なレベルに維持されるように投与すべきである。このためには、毎日のまたは1日に数回の投与が必要となる場合がある。
【0105】
本発明による医薬組成物は、所望の生物学的または治療的効果(創傷治癒の促進または瘢痕化の抑制など)を達成する能力のある適切な任意の経路で投与できるが、組成物は、活性が要求される部位で、例えば注射によって局所的に投与されることが好ましい。
【0106】
本発明者らは、本発明による医薬組成物を使用する創傷治癒の加速の促進および/または瘢痕化の抑制は、創傷に対して(または、予防的適用の場合には、創傷が形成されるであろう組織または部位に対して)組成物を局所適用することによって特に改善されることを見出している。
【0107】
本発明による医薬組成物は、特にそれらが使用されるであろう方式に応じたいくつかの異なる形態を取ることができる。従って、例えば、医薬組成物は、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲルまたはエアゾールの形態でよい。このような組成物は、すべて、創傷に対する、治療を必要とする対象(人または動物)に対して本発明の薬物を投与する好ましい手段である局所適用に適している。
【0108】
本発明による医薬組成物は、組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーが生物学上または治療上の効果を有するべきであることが所望される部位を覆うのに使用できる無菌の包帯またはパッチ上に用意できる。本発明による医薬組成物によって提供される、組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの貯蔵寿命の向上、回収率の増大、および/または生物学的活性の増大に関する利点は、このような組成物が、事前調製のパッチまたは包帯中に組み込むのに特に適していることを意味することを認識されたい。
【0109】
本発明による医薬組成物は、該組成物が、TGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込んだ組成物の貯蔵と通常的には関連する多くの不都合を回避できるので、低速または遅延放出デバイス内に組み込むのに特に適している。適切なデバイスは、例えば、皮膚上に配置するか、あるいは皮膚下に挿入することができ、TGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込んだ組成物は、数日、数週間または数ヶ月に渡って放出される。このようなデバイスは、TGF−βスーパーファミリーメンバーの長期投与を必要とする患者にとって特に有用であり得る。本発明による医薬組成物のこのような長期投与から特に利益を得ることができる状態の例には、慢性創傷または広範囲急性創傷(火傷など)の治療、および確定された線維形成状態の治療が含まれる。
【0110】
本発明による医薬組成物の1日投与量は、1回の投与(例えば、局所製剤の毎日注射または毎日適用)で与えることができる。別法として、本発明による医薬組成物は、1日の間に2回またはそれ以上の投与を必要とする場合もある。さらなる選択肢において、低速放出デバイスを使用して、反復された投与量の投与を必要としないで本発明による医薬組成物の適切な投与量を患者に提供できる。
【0111】
液体ビヒクルは、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エレキシルおよび加圧組成物を調製するのに使用できる。本発明の薬物は、水、有機溶媒、両者の混合物、または薬学上許容されるオイルまたは脂肪などの薬学上許容される液体ビヒクル中に溶解または懸濁できる。本発明による液体医薬組成物は、水性溶液として提供されることが好ましい。
【0112】
液体ビヒクルは、その他の適切な薬学上の添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、着香剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤または浸透調節剤などを含むことができる。経口および非経口投与のための液体ビヒクルの適切な例には、水(上記の添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール類(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを始めとする)およびそれらの誘導体、ならびにオイル(例えば、分留ココヤシ油およびラッカセイ油)が含まれる。非経口投与の場合、ビヒクルは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどのオイル状エステルでもよい。無菌の液体ビヒクルは、非経口投与のための無菌液状組成物で有用である。加圧組成物のための液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または薬学上許容されるその他の噴射剤でよい。
【0113】
無菌の溶液または懸濁液として製剤された本発明の液体医薬組成物は、筋内、くも膜下、硬膜外、腹腔内、皮内、または皮下注射によって投与できる。無菌溶液は、また、静脈内で投与できる。本発明による注射可能な組成物は、必要なら、結合剤、懸濁剤および保存剤も含むことができることを認識されたい。このような薬剤の適切な例は、当業者に周知である。
【0114】
また、本発明者らは、本発明による医薬組成物が、経口投与に適していることを見出した。本発明のこの実施形態により使用するのに適した製剤には、口内洗浄剤などが含まれる。経口で投与される本発明による医薬組成物は、粘膜病、潰瘍(胃腸および胃の潰瘍を始めとする)、クローン病および潰瘍性大腸炎の予防および/または治療で使用できる。
【0115】
本発明による医薬組成物は、眼に投与するのに適している。従って、このような使用のための本発明組成物の好ましい製剤は、点眼剤の形態でよい。TGF−βなどのTGF−βスーパーファミリーメンバーは、角膜における瘢痕化を低減しながら創傷治癒の加速を促進するのに使用できることが知られている。角膜創傷は、不慮の損傷(前に考察したような)の結果として、または外科手術(例えば、角膜でのレーザー手術)の結果として生じる眼の外傷に由来する場合がある。
【0116】
本発明の医薬組成物は、「内部」部位(すなわち、外部表面というよりも体内に存在する部位)の領域で使用できる。従って、例えば、本発明による薬剤は、鼻、肺またはその他の呼吸器上皮での使用に向けた吸入のために製剤できる。本発明の医薬組成物をこの方式で使用するのが好ましい例には、内部創傷の治療、ならびに呼吸器系における瘢痕化または線維症の予防および/または治療が含まれる。
【0117】
また、本発明による医薬組成物の身体内部での使用は、癒着を形成する危険性の高い創傷の治療で有利であり得る。このような癒着は、消化器または尿道−生殖器系における損傷または創傷の普通の結末であり、有害な負傷組織の機能喪失に至る可能性がある。
【0118】
製薬産業で従来から採用されているような既知の方法(例えば、in vivoでの実験、臨床試験など)を使用して、本発明による医薬組成物の具体的または好ましい製剤、ならびにこのような組成物を投与するための精密な治療計画(組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの1日当たり投与量、および組成物の投与頻度および投与経路など)を確立することができる。
【0119】
創傷治癒で使用するための本発明による医薬組成物の適切な1日当たり投与量は、(限定はされないが)組成物が達成すべき所望の治療活性(例えば、治癒の加速および/または瘢痕化の予防または抑制)、組成物中に組み込まれるTGF−βスーパーファミリーメンバーの正体、負傷組織の性質、治療すべき創傷の面積および/または深さ、創傷の重症度、および病理学的瘢痕または慢性創傷形成に向けさせる諸因子の存否を始めとする一連の諸因子によって決まる。典型的には、本発明による医薬組成物を使って投与すべきTGF−βスーパーファミリーメンバー(TGF−βなど)の適切な投与量は、24時間当たり、0.001ng〜100mgの範囲内のスーパーファミリーメンバーであるが、この数字は、上で概略を述べた諸因子に応答して上向きまたは下向きに変更できる。本発明の医薬組成物を使用して投与されるTGF−βスーパーファミリーメンバーの量は、好ましくは、組織損傷の直線でのセンチメートル当たり50〜500ngでよい。
【0120】
一般に、本発明による医薬組成物は、創傷に投与した場合に、直線でのセンチメートル当たり10ng/100μL〜500ng/100μLの組み込みTGF−βスーパーファミリーメンバー(例えば、TGF−β)の濃度が達成されるように製剤すべきである。好ましくは、TGF−βスーパーファミリーメンバーは、直線でのセンチメートル当たり50ng/100μL〜250ng/100μLの濃度で提供すればよい。
【0121】
当業者は、本発明による医薬組成物の投与によって治療すべき組織中にもたらされることが所望され得るTGF−βスーパーファミリーメンバーの濃度は、ファミリーメンバーの効力、および治療することが所望される特定の細胞および組織型によって決まることを認識するであろう。
【0122】
110〜170のアミノ酸長をもつ典型的なスーパーファミリーメンバー(TGF−β3など)の場合、本発明の医薬組成物は、治療すべき組織中で約19nM〜100nMの、より好ましくは19.664nM〜98.321nMの局所濃度を達成するように投与されることが好ましいかもしれない。
【0123】
本発明による医薬組成物は、換言すれば、所望の治療活性が、本発明による医薬組成物の使用によってのみもたらされる単独療法として治療的に使用できる。別法として、本発明の方法または医薬組成物は、所望の治療効果を達成するために、その他の化合物または治療と組み合わせて使用できる。このような併用療法の一部として使用できる適切な治療は、達成することが所望される治療効果によって決まるが、当業者に周知であろう。
【0124】
本発明の医薬組成物(およびこのような組成物を使用する治療方法)の極めて驚くべき利点は、本発明者らが、注射によるこれらの組成物の投与が、従来技術による組成物の投与で観察されるものと比較して注射痛および紅斑を大きく低減することと関連することを見出したことである。この利益は、本発明の医薬組成物が注射による投与に極めて適しているので、極めて有利である。
【0125】
しかし、本発明者らは、注射痛を低減することの利点は、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含まない医薬組成物を使用しても達成できると考える。
【0126】
従って、本発明の第7態様では、注射痛を予防または低減するための薬剤の製造における糖の使用が提供される。
【0127】
本発明のこの第7態様は、糖類を含む医薬組成物が、対象に投与された場合に疼痛の低減を生じさせるという本発明者らの驚くべき発見に基づく。詳細には、本発明者らは、糖類を含む注射可能な医薬組成物が、対象に注射された場合に注射痛の低減を生じさせることを見出し、本発明の好ましい実施形態において、注射痛を予防または低減するための注射可能薬剤の調製における糖の使用が提供される。
【0128】
本発明の第8態様では、このような注射痛の予防または低減を必要とする患者に対して有効量の糖含有薬剤を投与することを含む、注射痛の予防または低減方法が提供される。本発明のこの態様により投与される薬剤は注射可能な薬剤であることが好ましい。
【0129】
本発明のこれらの態様による、またはこれらの態様で使用するのに適した薬剤は、本発明の前記態様に関連して説明した技術および処方により製造し、かつ製剤できる。
【0130】
注射痛は、一般に認識された医療上の問題であり、注射可能な医薬または組成物の使用を妨げる最も重要な有害作用の1つであり、注射痛(または注射痛の恐怖)は、注射を必要としている患者にかなりの不安を引き起こすかもしれない。本発明の目的の場合、注射痛は、患者の身体中への皮下注射針、カテーテル、カニューレ、およびその他のこのようなデバイスの挿入に関連した疼痛を指すと解釈できる。
【0131】
患者に対して既に疼痛感を受けている部位で注射を投与することは頻繁に必要であり、このことは、注射の受容者によって知覚される疼痛のレベルを悪化させる可能性がある。このような状況の例には、創傷部位での注射、感染症の治療に関連した注射、および自己免疫疾患の治療に関連した注射が含まれる。これらの場合の多くで、注射すべき部位に存在する炎症は、注射に関連した患者の疼痛知覚を増大させる可能性がある。
【0132】
炎症、または注射痛の増強に向かわせるその他の諸因子の不在においてさえ、注射痛に対する患者の自然な反感はいくつかの有害な効果を有する。注射痛は、患者が注射によって薬剤を投与する治療計画を開始または完結できない主な根元的理由の1つである。乳幼児および若齢の子供の場合、対象の拒否反応は、注射を受ける対象に責任を負う親または保護者にとって不快となる場合もある。
【0133】
注射痛に関連したこれらの問題は、本発明の第7態様により製造される薬剤、または本発明の第8態様による治療方法によって部分的に(またはさらには全体的に)軽減できる。
【0134】
本発明者らは、本発明の第7態様により製造される薬剤によって提供される利点は、本発明のすべての薬剤(すなわち、本発明のその他の態様による薬剤)によっても提供されると考える。従って、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、本発明の第7態様の薬剤(および本発明の第8態様の方法)との関連で以下に記載する利点は、本発明のすべての医薬組成物によって提供されると考えるべきである(すべてが、注射痛の予防または低減の原因であると考えられる糖類を含有するからである)。
【0135】
本発明の薬剤の顕著な利点の1つは、注射痛の予防または低減に関するそれらの極めて急速な作用である。本発明の薬剤は、患者へのそれらの注射の際に、注射痛に対するそれらの活性をほとんど即時に発揮できる。従って、本発明により製造される薬剤は、さもなければ患者に薬剤を投与する注射の結果として生じるであろう注射痛を効果的に予防または低減できる。
【0136】
本発明により製造される薬剤の即時的作用は、臨床の関連で多くの利点を提供する。本発明により製造される薬剤を使用することによって、注射痛を軽減または予防するために患者または注射部位を前処置することが必須でなくなる。このことは、多くの医療従事者が相当の時間的強制の下で行動するので、かなり重要であり、注射痛を低減することを意図した現行の事前処置計画と関連したさらなる時間消費が、実践におけるこのような計画の採用に不利な影響を与える主要因子の1つである。実際、現行の事前処置計画を使用すると、かなりの時間消費が必要であるという認識でさえ、それらの広範な応用を妨げている。本発明の薬剤は、その疼痛を低減することが所望される注射そのものによって投与できるので、それらの使用は、注射を投与する過程に対して追加的時間を付加しないことを認識されたい。
【0137】
当業者は、本発明の方法により製造される薬剤(特に、本発明の第7態様により製造される薬剤)は、その他の有効薬物を組み込む「担体」として使用できることを直ちに認識するであろう。本発明により製造される薬剤中にこれらのさらなる有効薬物を組み込むことによって、薬剤を投与されている患者が注射痛の低減を経験するという利点を有する注射によって、患者に対して有効薬物を投与することが可能である。従って、本発明により製造される薬剤が注射痛を低減しながら投与すべき有効薬物をさらに含有することは、本発明の好ましい実施形態である。
【0138】
本発明のこの実施形態に関連して考慮される場合の「有効薬物」は、
i)すべての適切な治療活性剤
ii)すべての適切な麻酔活性剤
iii)すべての適切な診断活性剤、および
iv)すべての化粧活性剤
を含むと解釈すべきである。
【0139】
TGF−βスーパーファミリーのメンバーは、本発明の薬剤および医薬組成物中に組み込むことのできる好ましい有効薬物を構成することを認識されたい。本発明により製造される薬剤中に有利に組み込むことのできる適切な有効薬物のさらなる具体的で例示的な例を以下で考察する。
【0140】
本発明による薬剤の製造で使用される糖類は、一般には不活性な物質であるため、有害な反応なしに多くの適切な有効薬物と共に薬剤中で組み合わせることのできる。本発明により製造される薬剤で使用される糖類は、薬剤中に組み込むことのできるその他の有効薬物の活性を危うくする傾向がなく、またこのような有効薬物を含有する組成物の貯蔵寿命を低下させる傾向もない。
【0141】
本発明により製造される薬剤は、注射痛を予防または低減するための多くの現行戦略で一般的に使用される局所麻酔に優る多くの利点を提供する。本発明により製造される薬剤によって付与される1つの主な利点は、該薬剤(糖類の使用に基づいている)が、現行の麻酔調合物が保持するよりもはるかに低い有害反応の危険を保持することである。世界保健機関のガイドラインは、局所麻酔薬を採用するいくつかの状況において、当該医療スタッフを麻酔薬の使用に関して訓練すること、さらに酸素および蘇生装置を始めとする緊急装置を現場に準備することが推奨されることを提案している。認識されるように、これらの要件に合致させることは、訓練および必要な装置の双方に関して相当の費用を必要とする。
【0142】
対照的に、本発明により調製される薬剤は、安全でかつ使用するのが容易である。本発明により製造された薬剤を投与する人は、特殊な麻酔の訓練を必要とせず、単に注射を実施する能力があればよい。注射を投与するのに必要とされる技能は、患者に容易に教えることができ、緊急装置の準備を必要としないので、患者は、薬剤を自己投与することができ、従って、患者自身の家庭内で注射痛低減の利益を得ることができる。
【0143】
本発明により製造される薬剤で使用される糖類は、現行の抗注射痛戦略で一般的に使用される麻酔薬で起こり得る危険な過敏反応と一般には関連しない。例を挙げれば、リグノカイン(一般的に使用されている局所麻酔薬)に対する過敏は、この局所麻酔薬を使用することの主な有害副作用として一般的に認められている。
【0144】
局所麻酔薬の血管内投与は、たとえ少量でも、潜在的に毒性のある血中濃度を生じさせることができる。従って、局所麻酔薬の投与を必要としないで注射痛を低減できる薬剤を作り出すことは、明確に理解される研究目標である。このタイプの薬剤は、多くの血管を含み、それ故、偶発的な血管内注射の高い危険と関連している口などの組織で特定の用途があるかもしれない。
【0145】
対照的に、本発明により製造される薬剤の効果は、容易に代謝され、かつ有害反応と関連した危険が一般には極めて低い糖類によって提供される。従って、該薬剤を、局所麻酔に対して高い感度を示す傾向のある患者、特に好ましくはリグノカイン過敏症にかかりやすい患者における注射痛の予防または低減で使用することは、本発明の好ましい実施形態である。
【0146】
本発明により製造される薬剤の、従来技術に記載されている局所麻酔薬の使用と比較した場合のさらなる利点は、本発明の薬剤が、既知局所麻酔薬の投与の結果として通常的に発生する血管収縮を惹起しないことである。このような血管収縮(局所麻酔薬の事前投与によって特に引き起こされ得る)は、血管内注射の投与を困難にする場合がある。この不都合は、本発明により製造される薬剤によって回避される。実際、血管内注射に関連した注射痛の予防または低減における本発明により製造される薬剤の使用は、本発明の好ましい実施形態を構成する。
【0147】
本発明により製造される薬剤は、また、注射痛を低減する著しく費用対効果の高い方法を構成する。注射痛を低減するように設計された現行の戦略で使用される高価な局所麻酔、冷却剤などとは対照的に、本発明により製造される薬剤は、相対的に安価な糖類を利用する。従って、本発明により製造される薬剤は、それらの低い製造コストによって従来技術に優る注目すべき利点を提供する。
【0148】
本発明により製造される薬剤は、注射の反復投与を必要とする個体にとって特に利点がある。例えば、本発明の薬剤は、糖尿病患者が使用するのに特に適しているかもしれない。糖尿病に罹患している個体が使用する場合、本発明の第7態様により製造される薬剤を使用して、インスリンまたはグルカゴンの注射など、糖尿病を制御または調節するのに要求される注射と関連した注射痛を低減できる。TGF−βなどのTGF−βスーパーファミリーメンバーを組み込んだ本発明の薬剤は、創傷治癒の部位に対する反復注射を必要とする患者が使用するのに特に好ましいかもしれない。特に、これらの薬剤は、慢性創傷または病理学的瘢痕に苦しむなど、異常創傷治癒の状態に苦しむ患者にとって有用であり得る。
【0149】
前に言及したように、本発明者らは、本発明による医薬組成物によって付与される有益な効果は、これまで試験した任意の糖を使用して得られることを見出した。実際、本発明者らは、糖の塩または誘導体を、本発明による薬剤の製造で効果的に使用できることを見出した。しかし、本発明による医薬組成物が、マルトース、スクロース、グルコースおよびマンノースを含む群から選択される糖を含むことが好ましいかもしれない。より好ましくは、本発明による医薬組成物中で利用される糖は、マルトースおよびスクロースを含む群から選択することができ、最も好ましくは、糖はマルトースである。マルトースの使用は、それが、注射痛を予防することのみならず、さもなければ注射と関連し得る紅斑の影響を小さくすることにおいて、最も大きな効力を示すという特別な利点を提供する。
【0150】
文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、注射痛を低減するための薬剤の文脈での糖類に対する言及は、薬学上許容される糖類の塩、誘導体およびバリアントをも包含すると解釈すべきである。このような塩、誘導体およびバリアントは、好ましくは、マルトース、マンノース、スクロースおよびグルコースを含む群から選択される糖類の、最も好ましくはマルトースの塩、誘導体またはバリアントでよい。
【0151】
本発明により製造される薬剤は、50mg/mLを超える濃度で提供される糖を含有できることが好ましい場合がある。このような薬剤は、糖を51〜200mg/mLの濃度で、好ましくは60〜150mg/mLの濃度で、より好ましくは70〜100mg/mLの濃度で、さらにより好ましくは80〜95mg/mLの濃度で、最も好ましくは85〜90mg/mLの濃度で含有できる。
【0152】
別法として、または追加的に、本発明により製造される薬剤は、0.001〜5Mの、または0.005〜2Mの濃度で提供される糖を含有できる。好ましくは、糖は、0.01〜1Mの濃度で、より好ましくは0.1〜0.5の濃度で、さらにより好ましくは0.2〜0.4の濃度で、最も好ましくは約0.25Mの濃度で提供される。
【0153】
本発明により製造される薬剤は、例えば、皮内または皮下注射による皮膚への投与に特に適合している。しかし、薬剤は、その他の身体部位での注射、例えば、眼に投与される注射、口および消化器系に投与される注射、神経系に投与される注射、尿道−生殖器系での注射、あるいは呼吸器系、腎臓、腱、靭帯、心臓または循環器系での投与に関連した注射痛の予防または低減で効果的に使用することもできる。
【0154】
本発明の薬剤は、現存する炎症が、さもなければ、注射を受けている患者によって知覚される注射痛の程度を増大させ得る部位での注射で使用するのに特に適している。従って、本発明の薬剤は、炎症を起こした部位への注射に際しての注射痛を予防または低減するのに好ましく使用できる。このような炎症を起こした部位としては、創傷または擦過傷の部位、関節炎にかかった部位(骨関節炎、リウマチ様関節炎、および脊椎関節症にかかった注射部位を含む)、多発性硬化症と関連した炎症を起こした部位、アレルギー反応(アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎、蕁麻疹/蕁麻疹性丘疹を始めとする皮膚アレルギー、血管浮腫、異所性皮膚炎、食物アレルギーと関連した炎症、薬物アレルギーまたは昆虫アレルギーと関連した炎症、または肥満細胞過剰増殖などのその他の特殊なアレルギー障害と関連した炎症)にさらされた部位、自己免疫状態(全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎および多発性筋炎を始めとする)、ギランバレー症候群および炎症性多発性神経炎などの炎症性神経障害、ヴェーグナー肉芽腫または多発性動脈周囲炎などの脈管炎、ならびにリウマチ性多発性筋炎、側頭動脈炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、チャ−グ−ストラウス症候群および高安動脈炎などのその他の自己免疫状態を挙げることができる。
【0155】
本発明の薬剤は、心血管炎症、胃腸炎症、感染の部位での、あるいは免疫反応、神経炎症性障害を伴うその他の部位、ならびに移植部位での注射の場合にも利益がある。
【0156】
炎症を起こした、負傷したまたは感染した区域中に見出されるような破壊された皮膚上で使用した場合、麻酔薬の破壊された皮膚を通した取込みの増加により、局所性よりも全身性反応の発生につながる傾向のあることが、従来からの局所麻酔薬を使用することの危険であることが認められている。このことは、局所で適用された局所麻酔薬の場合に特に著しい。
【0157】
対照的に、本発明により製造される薬剤は、全身性取込みの発生においてさえ、それらの調製に使用される糖類が、どんな有害な効果とも関連していないので、それらの安全性の向上に関する顕著な利点を付与する。従って、該薬剤を、破壊された皮膚の部位での注射と関連した注射痛の予防または低減で使用することは、本発明の好ましい実施形態である。本発明により製造される薬剤を、炎症部位、創傷部位(移植部位を含む)、または感染した区域での注射と関連した注射痛の予防または低減で使用することは、他の場所で言及するように特に好ましい。
【0158】
本発明により製造される薬剤は、負傷区域の治療および/または管理で有益である有効薬物を組み込むことができる。創傷部位での注射によって投与される予定の薬剤中に有利に組み込むことのできる有効薬物の例には、次の薬物が含まれる。
i)治療活性剤、詳細には、創傷治癒または瘢痕形成に対して有益な効果を有する薬物。適切な治療活性剤は、創傷治癒応答を促進または加速できる、かつ/または瘢痕形成を予防または抑制できるかもしれない。このような適切な治療活性剤の例には、TGF−βスーパーファミリーメンバー(後により詳細に考察されるような)、および線維形成増殖因子類の機能を中和できる薬物が含まれる。
ii)麻酔活性剤、例えば創傷の洗浄、閉鎖または包帯を容易にするために、負傷区域に麻酔活性剤を投与することが有利であり得るいくつかの状況が存在する。
【0159】
本発明により製造される薬剤中に組み込むのに適した、創傷治癒に対して有益な効果を有する治療活性剤は、創傷治癒に対して有益な効果を有する任意の物質を包含すると解釈すべきである。創傷治癒に対して有益な効果を有する物質としては、例えば、自然に発生する創傷治癒応答を開始または刺激する能力のある物質、ならびに創傷治癒応答を加速する能力のあるそれらの物質を挙げることができる。
【0160】
本発明の第9態様では、創傷部位での注射の投与と関連した注射痛の予防または低減方法が提供され、該方法は、このような注射痛の予防または低減を必要とする患者に対して、創傷部位での注射によって、糖を含有する治療有効量の薬剤を投与することを含む。本発明のこの態様に関する治療有効量は、薬剤を投与された患者によって知覚される注射痛を予防または低減するのに十分な薬剤の量である。本発明のこの態様により投与される予定の薬剤は、好ましくは、創傷治癒の促進および/または瘢痕形成の予防に適した有効薬物をさらに含むことができる。このような有効薬物の好ましい例としては、TGF−βスーパーファミリーメンバーを挙げることができ、より好ましくはTGF−βを挙げることができる。
【0161】
当業者は、本発明により製造され、創傷治癒の過程に対して利益を有する有効薬物を含有する薬剤は、負傷に先立って患者に投与することもできることを認識するであろう。適切な有効薬物としては、TGF−βスーパーファミリーメンバーなどの、治癒を促進しかつ/または瘢痕形成を予防もしくは抑制する能力のある薬物を挙げることができる。別法としてまたは追加的に、本発明により製造される薬剤は、形成されるはずの創傷によってさもなければ引き起こされ得る疼痛を予防するのに有用な麻酔薬を含有することができる。
【0162】
注射痛を引き起こすより通常的な医療処置の1つが、注射による麻酔性薬物の投与である。このような薬物は、いったん、それらが投与され、かつ、薬物がそれらの麻酔活性をもたらすことを可能にするのに十分な時間が経過すると、疼痛を効果的に低減できる可能性があるが、薬物を投与する注射は、受容者にとってかなりの疼痛の原因であることが多い。
【0163】
特に、既知麻酔薬の使用が、好ましくないかつ/または危険な副作用を生じさせる可能性がある状況において、既知麻酔薬の使用を回避または低減するための手段を提供することは本発明の特定の実施形態における目標であるが、当業者は、本発明により製造される薬剤が、麻酔活性剤(注射可能な麻酔薬など)のための適切な「担体」として使用できることを認識するであろう。この方式で使用する場合、本発明により製造される薬剤は、さもなければ、麻酔活性剤の投与と関連するであろう注射痛を予防または低減するのに役立つ。従って、代わりの好ましい実施形態において、本発明により製造される薬剤は、麻酔活性剤をさらに含有することができる。本発明の目的の場合、本発明により製造される薬剤中に組み込むのに適した麻酔活性剤は、麻酔特性を有する任意の物質であると解釈できる。本発明により製造される薬剤中に組み込むのに適した麻酔活性剤は、注射可能な局所麻酔薬でよい。本発明の特に好ましい実施形態において、麻酔活性剤は、局所麻酔薬リグノカインである。
【0164】
本発明のこの実施形態により製造される薬剤は、麻酔薬を注射によって投与するすべての状況で使用するのに適している。このような状況の例は、当業者に周知であり、本明細書の別の箇所で考慮される。
【0165】
しかし、本発明により製造される薬剤が、局所麻酔薬の注射と関連した注射痛を予防または低減するのに特に有益に使用されるいくつかの状況がある。
【0166】
従って、1つの好ましい例において、本発明により製造される薬剤は、口内での局所麻酔薬の注射と関連した注射痛を予防または低減するのに使用できる。口内での局所麻酔薬の注射と関連した注射痛は、患者にとって特にトラウマ的であることがわかっており、このトラウマの増大は、疼痛が患者の頭部と結びついた場合に知覚されるという事実の結果として生じると考えられる。この場所は、患者によって知覚される注射痛の度合いを高め、さらには、このような疼痛の不快感を増幅する。さらに、患者による疼痛知覚の増大は、また、このような注射を投与する医療または歯科従事者が経験するトラウマを激化させる。
【0167】
本発明により製造される薬剤は、また、患者の頭部の表面または内部のその他の部位での麻酔薬の注射と、特に患者の顔面上の部位での麻酔薬の注射と関連した注射痛を予防または低減するのに使用できる。
【0168】
前に述べたように、本発明の薬剤は、また、診断活性剤のための「担体」として使用することができ、それによって、さもなければ、診断活性剤の投与と関連し得る注射痛を低減または予防できる。注射によって投与できる、それ故、本発明により製造される薬剤中に有利に組み込むことのできる診断活性剤の例には、放射線不透過性薬物が含まれる。このような診断活性剤は、注射(例えば、血管または脳脊髄液中への)の手段によって患者に投与され、X線を吸収するそれらの能力が、診断に対する補助として使用される。本発明により製造される薬剤中に組み込むことのできる適切な診断活性剤の例には、ジアトリゾ酸塩、イオへキソール、イオパミドール、イオタラメート、イオベルソール、イオキサグレート、およびメトリザミドが含まれる。これらの診断上有効な放射線不透過性薬物は、胆管の問題、血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、脳の疾患および腫瘍、胸部病変、心臓疾患、脳中の脳脊髄液流の減少、腎臓疾患、関節疾患、肝臓疾患、膵臓疾患、脊椎板疾患などの脊椎疾患、脾臓疾患、胃および腸の問題、または尿路の問題などの疾患または状態の診断で使用できる。
【0169】
本発明により製造される薬剤は、有利には、化粧活性剤を組み込むことができる。典型的には注射によって患者に投与される化粧上有効な多くの薬物がある。例えば、ボツリヌス毒素注射(より一般的には「ボトックス」注射として知られている)は、患者の必要とする部位での毒素の経皮注射によって投与されるのが通常である。ボツリヌス毒素注射は、治療されている患者の顔または首の部位に投与されることが多く、この投与は、本発明により製造される薬剤中にボツリヌス毒素を組み込むことによって軽減できる注射痛と関連しているのが通常である。
【0170】
注射による化粧活性剤の投与を含み、それ故、注射痛と関連するもう1つの化粧的処置が、化粧用充填剤の注射である。これらの有効薬物(典型的には、コラーゲン、ヒアルロン酸、脂肪およびその他の関連物質が含まれる)は、皮膚を「より完全にする」こと、例えば、加齢に関連したシワを埋めること、唇のプロフィールを強化すること、またはざ瘡によって引き起こされたような瘢痕を埋めることが所望される部位での注射によって投与できる。化粧用充填剤の投与と関連した注射痛は、本発明により製造される薬剤中に適切な化粧用充填剤を組み込むことによって予防または低減できる。
【0171】
本発明者らは、注射痛の予防または低減が、調査したすべての注射経路に関して本発明により製造される薬剤によって提供されることを見出した。
【0172】
例を挙げれば、本発明者らは、本発明による薬剤が、皮内注射と関連した注射痛を予防または低減するのに使用できることを見出した。従って、本発明の好ましい実施形態において、適切な薬剤は、皮内注射と関連した注射痛を予防または低減するための、皮内で注射可能な薬剤でよい。
【0173】
本発明者らは、また、本発明による薬剤が、皮下注射と関連した注射痛を予防または低減するのに使用できることを見出した。従って、本発明のもう1つの好ましい実施形態において、適切な薬剤は、皮下注射と関連した注射痛を予防または低減するための、皮下で注射可能な薬剤でよい。
【0174】
さらに、本発明者らは、本発明による薬剤が、静脈内注射と関連した注射痛を予防または低減するのに使用できることを見出した。前に言及したように、本発明により製造される薬剤は、血管収縮の一因とならないで注射痛を予防または低減できるので、血管内注射で有利に使用できる。従って、本発明のさらに好ましい実施形態において、適切な薬剤は、静脈内注射と関連した注射痛を予防または低減するための、静脈内で注射可能な薬剤でよい。
【0175】
よりさらに、本発明者らは、本発明による薬剤が、筋内注射と関連した注射痛を予防または低減するのに使用できることを見出した。従って、本発明のよりさらに好ましい実施形態において、適切な薬剤は、筋内注射と関連した注射痛を予防または低減するための、筋内で注射可能な薬剤でよい。
【0176】
よりさらに、本発明者らは、本発明による薬剤が、腹腔内注射と関連した注射痛を予防または低減するのに使用できることを見出した。従って、本発明のよりさらに好ましい実施形態において、適切な薬剤は、腹腔内注射と関連した注射痛を予防または低減するための、筋内で注射可能な薬剤でよい。
【0177】
本発明により製造される薬剤は、皮内注射用に製剤できること、または皮下注射用に製剤できることが特に好ましい。皮内注射および/または皮下注射に適した典型的な製剤は、当業者に周知であろう。
【0178】
本発明の医薬組成物および治療方法は、ヒトで使用するのに特に適切であり、主として、このような使用に関して記載されているが、それらの組成物および方法は、非ヒト動物で、特に家庭内または農業用動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマなどで使用することもできる。
【実施例】
【0179】
付随の実験結果および図を参照し、例を挙げて、本発明をさらに説明する。
(実験結果)
TGF−βバルク材料
TGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βは、20mM酢酸および20%(v/v)イソプロピルアルコール中9.1mg/mLの濃度の原液で供給した。この原液を逐次的に希釈して、TGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βを組み込んだ組成物を調製した。以下の実験で使用する組成物中に組み込まれたTGF−βの濃度は、後記の通りとした。
【0180】
A.医薬組成物を含有する事前充填シリンジからのTGF−βの回収率
以下の実験では、本発明によるまたは従来技術による組成物を含有する事前充填シリンジからのTGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βの回収率を調べた。
【0181】
A1.事前充填シリンジの作製
TGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βを1μg/100μLの濃度で組み込んだ組成物を、上記バルク材料から逐次無菌希釈により調製した。本発明による試験組成物を調製するのに使用した希釈剤は、次の通りである。すなわち、
i)0.25Mマルトース(90mg/mLに相当)、
ii)0.25Mグルコース(45mg/mLに相当)、
iii)0.25Mスクロース(86mg/mLに相当)、および
iv)0.25Mマンノース(45mg/mLに相当)。
【0182】
比較の目的で、従来技術による好ましい組成物を代表する組成物を、原液の希釈によって、DS11(リン酸緩衝化生理食塩水PBSおよび5%(w/v)マンニトールを含有する希釈液)中、1μg/100μLのTGF−β溶液が得られるように調製した。
【0183】
形成された各組成物のサンプル750μLを、滅菌された個々の1mLのシリンジ中に吸い上げた。従って、各シリンジは、既知量のTGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βを組み込んだ規定量の実験組成物または比較組成物を含む。本発明の組成物を含むシリンジ、および従来技術による組成物を含むシリンジを、次いで、4℃で1週間貯蔵した。これらの実験的貯蔵条件は、医薬組成物をそれらの治療的使用に先立って冷蔵して貯蔵する典型的な方式のモデルを提供した。
【0184】
本発明の組成物および従来技術による組成物から回収可能なTGF−βの量を評価するため、シリンジの内容物を回収し(シリンジから排除して)、後記のようにELISAによって回収可能なTGF−βタンパク質の量を評価した。
【0185】
A2.ELISAによるTGF−βの回収率の評価
次のアッセイを使用して、本発明による医薬組成物からのTGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βの回収率を、従来技術による組成物から回収可能なTGF−βの量と比較した。アッセイは、捕捉および検出抗体の適切な置換および標準曲線の適切な使用によって容易に構成することができ、注目の医薬組成物(例えば、本発明によるその他の組成物、または従来技術から周知のその他の対照組成物)からのその他のTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率を評価できるようになる。
【0186】
A2.1.ELISA用プレートの調製
96ウェルのプレート(Falcon353912)を、PBSで2μg/mLの濃度に希釈したモノクロナール抗−TGF−β捕捉抗体(R&D Systems MAB643)を100μL/ウェルで被覆した。次いで、プレートを、密閉し、室温で一夜インキュベートし、抗体をウェルに固着させた。インキュベート後、各ウェルを吸引し、300μL/ウェル(洗浄毎に)の洗浄緩衝液(PBS中に0.05%(v/v)Tween 20を含む、pH7.4)で3回洗浄した。1%(w/v)BSA、5%(w/v)スクロースおよび0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含む150μL/ウェルのPBSを添加して、非特異的なタンパク質結合部位をブロックした。この液を含むウェルを室温で1時間インキュベートした。
【0187】
A2.2.TGF−β標準曲線の準備
標準およびサンプルの希釈は、すべて、0.25M糖溶液(すなわち、マルトース、グルコース、マンノースまたはスクロース)またはELISA希釈液(Tris緩衝化生理食塩水中、0.1%(w/v)BSA、0.05%(v/v)Tween 20、pH7.3)で希釈した。
【0188】
ヒト組換えTGF−β(R&D Systems 243−B3)、またはTGF−β(20mM酢酸および20%(v/v)イソプロピルアルコール中で9.1mg/mLの濃度の原液から)を使用する、31.25pg/mLから2000pg/mLの範囲に及ぶTGF−β標準系列を調製した。
【0189】
A2.3.回収率のアッセイ
容積100μLのサンプル溶液または標準溶液を各ウェルに添加した。次いで、プレートを密閉し、室温で1.5時間インキュベートした。次いで、ウェルを、吸引し、各ウェルに対して300μL/ウェルの水緩衝液を用いて全部で3回洗浄した。
【0190】
ウェルを吸引、洗浄したら、ELISA希釈液(前記と同様)で100ng/mLに希釈した容積100μLのビオチン化抗TGF−β検出抗体(R&D Systems BAF243)を各ウェルに添加した。次いで、プレートを密閉し、室温で1.5時間インキュベートした。次いで、各ウェルを吸引し、各洗浄に対して300μL/ウェルの洗浄緩衝液(前と同様)を用いて全部で3回洗浄した。次いで、各ウェルに、ELISA希釈液で1:5000に希釈した容積100μL/ウェルのストレプトアビジンHRP(Dako P0397)を添加し、プレートを、密閉し、室温で30分間インキュベートした。次いで、ウェルを、吸引し、各ウェルに対して300μL/ウェルの洗浄緩衝液を用いて全部で3回洗浄した。次いで、容積100μLの基質溶液(R&D Systems DY999)を各ウェルに添加し、プレートを覆い、室温で20分間インキュベートした。次いで、容積50μLの停止溶液(0.5M HSO)を各ウェルに添加した。次いで、各ウェルの内容物の光学密度を、マイクロプレートリーダーを使用し、450nm(570nmまで波長補正を設定)の波長で30分以内に測定した。次いで、組成物から回収可能なTGF−βを意味する、サンプル中に存在するTGF−βの量を、標準曲線と対照して判定した。結果を、シリンジから回収される材料の、従来技術で周知の好ましい組成物を代表するDS11(マンニトール)製剤と対比した増加倍率として、下表1に示す。
【0191】
A3.回収率のアッセイ結果
PBS/マンニトール(DS11)製剤中で検出される回収可能なTGF−βは、284.8(±0.03)ng/100μLであった。
【0192】
4℃で1週間貯蔵した後の本発明による組成物を含有するシリンジからのTGF−β回収率の増加倍率(同一貯蔵条件に付したDS11製剤を含有するシリンジからのTGF−β回収率と比較した)を、下表1に示す。
【0193】
結果は、明らかに、本発明による医薬組成物が、その中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの、従来技術から周知の好ましい組成物を使用した場合に可能な回収レベルに比較して、回収率の著しい増加を可能にすることを示している。
【0194】
【表1】

【0195】
表1では、本発明の医薬組成物から回収可能なTGF−βスーパーファミリーメンバーの量を、従来技術による既知組成物から回収可能な量と比較している。
【0196】
B.本発明の第1態様による医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性
本発明の組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βの本来の生物学的活性は、TGF−βスーパーファミリーメンバーがミンク肺上皮細胞の増殖を阻止する能力を利用する次のアッセイにより測定される。次いで、組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性を、そのIC50値(細胞の増殖応答の50%阻害が観察される濃度)を判定することによって評価できる。
【0197】
このアッセイは、本発明の組成物中に、または比較の目的に使用される既知組成物中に組み込まれたその他のTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性を測定できる適切な手段を代表する。
【0198】
B1.生物学的活性のアッセイに関する実験の詳細
簡潔には、本発明の第1態様による組成物中に組み込まれたTGF−βの生物学的活性を、TGF−βスーパーファミリーメンバーによってもたらされるミンク肺上皮細胞(Mv−1−Lu)(ATCC Cat No CCL−64)の増殖阻害を測定することによって判定した。増殖の阻害は、MTT試薬(Sigma Cat No M2279)を使用して評価した。MTTは、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド、細胞の代謝活性(ミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ)によって不溶性ホルマザン体に変換される可溶性テトラゾリウム塩である。不溶性ホルマザンの結晶を、酸性化されたイソプロパノールで可溶化し、得られる溶液の強度を、570nmの波長で比色的に測定する。
【0199】
簡潔には、1×10/mLのミンク肺上皮細胞を、ウェル毎に100μLの培養培地(DMEM+10%(v/v)ウシ胎児血清、20mMグルタミン、0.1M Hepes)を含む96ウェルプレートに接種した。細胞を、5%(v/v)CO中、37℃でインキュベートし、24時間取り付けたままにした。使用直前に(すなわち、貯蔵なしで)、5%(w/v)マンニトール、または0.25Mマルトースを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含有するDS11で希釈し、最終アッセイ濃度の10倍の1.9〜500pg/mLで標準曲線を作成した。次いで、サンプルを細胞培養培地で1:5にさらに希釈し、その後、これらのサンプル100μLを、100μLの細胞培養培地を含有する各ウェルに添加した。(ウェル中でのさらなる1:2希釈、従って、1.9〜500pg/mLの最終アッセイ濃度が得られる)。次いで、各ウェルの細胞を5%(v/v)CO中、37℃で5日間サンプルに暴露した。次いで、暴露の終末に、各ウェルに50μLのMTT試薬(PBSで希釈された2mg/mLの原液)を添加した。次いで、プレートを、5%(v/v)CO中、37℃でさらに4時間インキュベートした。この期間の後、各ウェルからの上清液を除去し、沈殿したホルマザンの結晶を100μL/ウェルの酸性化イソプロパノールを添加して溶解した。次いで、96ウェルプレートリーダーを使用して570nmの波長で、各ウェル中の可溶化されたMTTを定量した。XLFit3を使用してデータをプロットし、各製剤に対する5つのそれぞれ異なった曲線についてIC50値を計算した。次いで、各製剤に対するIC50値をこれらのそれぞれ異なる標準曲線の平均(±標準偏差)として表した。
【0200】
B2.生物学的活性アッセイの結果
従来技術による既知組成物(図3Aから3E)および本発明の組成物(図3Fから3J)の双方を使用する生物学的活性アッセイの5回反復の結果を図3に示す。図3に示したそれぞれ異なる曲線の平均値(±標準偏差)を表2に示す。
【0201】
結果は、本発明による医薬組成物中に組み込まれたTGF−βのIC50値(ミンク肺上皮細胞の増殖の抑制に対する)は、従来技術による好ましい組成物中に組み込まれたTGF−βについて得られた値と比較して、大きく低下していることを明白に示している。IC50値のこの低下は、サイトカインによって発揮される生物学的活性の50%を達成するのに必要とされるTGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βの量が、本発明の医薬組成物中に組み込まれた場合に、低減されることを示している。従って、本発明の組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性は、従来技術による組成物を使用して達成できる活性を超えてより増大すると考えることができる。
【0202】
【表2】

【0203】
表2では、本発明による医薬組成物から回収されたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性を、従来技術による既知組成物から回収されたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性と比較している。
【0204】
D.研究AおよびBの要約
本発明による医薬組成物は、従来技術に記載の好ましい組成物と比較して、組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの驚くほど高いレベルの回収を可能にする。
【0205】
さらに、組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性は、従来技術による組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーに比較して、驚くほど増加した。
【0206】
E.製剤の皮内注射と関連した局所化疼痛および紅斑の評価
研究は、本発明により製造される薬剤の皮内注射と関連した局所化疼痛および紅斑、ならびに従来技術による組成物の対照注射と関連した疼痛および紅斑を評価するために実施した。
【0207】
実験用の注射可能な溶液は、前述の通り調製した。
【0208】
簡潔には、容積100μLの前述の各製剤を、志願者の上腕の内側に皮内で注射した。前述のDS11対照に加えて、既知の局所麻酔薬リグノカインの溶液もさらなる対照として使用した。注射の際の疼痛および紅斑を志願者および臨床医が分類した。
【0209】
表3に示した溶液のそれぞれと関連した局所疼痛および紅斑の別々の評価に着手した。志願者および臨床医の双方が、これらの評価を担当した。使用した種々の製剤と関連した疼痛または紅斑の程度を、次の分類(重症度が高まる順に列挙)、すなわち、
i)なし
ii)極小
iii)軽微
iv)顕著
に基づいて評価した。
【0210】
評価結果を表3に示し、これらを表4でさらに要約する。
【0211】
結果は、本発明により製造された薬剤が、従来技術から周知である注射可能な組成物に比較して、一貫して注射痛の低減を生じさせることを示している。
【0212】
結果は、その他の物質の注射とさもなければ関連するであろう注射痛を低減できる担体として使用するための、本発明により製造される薬剤の適合性を明瞭に示している。このことは、マンニトールを組み込んだ本発明による薬剤が、マンニトールをベースにした組成物単独の注射が引き起こすよりもより少ない注射痛を生じさせることの発見によって特に示される。
【0213】
F.研究Eの要約
本発明により製造される薬剤は、注射痛を予防または低減する、驚くべき能力を所持する。この能力は、既知の麻酔性薬物(リグノカインなど)との比較、および現行の好ましい注射可能薬剤(マンニトールをベースにした製剤DS11など)との比較の双方において示される。本発明により製造される薬剤の有益な特性は、これまで試験されたすべての糖類で示されるが、糖アルコールであるマンニトールからなる製剤では示されない。
【0214】
【表3】

【0215】
表3は、本発明により製造された薬剤を使用して達成された結果を、従来技術による組成物を使用して得られた結果と比較した、注射痛の評価結果を示す。
【0216】
【表4】

【0217】
表4では、表3に示した結果を要約している。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】TGF−βスーパーファミリーのメンバー、およびスーパーファミリーメンバー間の関連を示す図である。
【図2】TGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−β(配列ID番号1)、TGF−β(配列ID番号2)およびTGF−β(配列ID番号3)のアミノ酸配列を示す図である。
【図3】パネル3A〜3Jに、本発明による医薬組成物中に、または従来技術による医薬組成物中に組み込まれた場合の、TGF−βスーパーファミリーメンバーTGF−βの本来の生物学的活性を比較するための実験の結果を示す図である。図3Aは、従来技術による製剤DS11を使用して得られた第1標準曲線を示し、その中でTGF−βは、34.793pg/mLのIC50を有する。図3Bは、従来技術による製剤DS11を使用して得られた第2標準曲線を示し、その中でTGF−βは、24.136pg/mLのIC50を有する。図3Cは、従来技術による製剤DS11を使用して得られた第3標準曲線を示し、その中でTGF−βは、22.055pg/mLのIC50を有する。図3Dは、従来技術による製剤DS11を使用して得られた第4標準曲線を示し、その中でTGF−βは、30.562pg/mLのIC50を有する。図3Eは、従来技術による製剤DS11を使用して得られた第5標準曲線を示し、その中でTGF−βは、39.973pg/mLのIC50を有する。図3Fは、本発明によるマルトース製剤を使用して得られた第1標準曲線を示し、その中でTGF−βは、8.758pg/mLのIC50を有する。図3Gは、本発明によるマルトース製剤を使用して得られた第2標準曲線を示し、その中でTGF−βは、5.957pg/mLのIC50を有する。図3Hは、本発明によるマルトース製剤を使用して得られた第3標準曲線を示し、その中でTGF−βは、7.72pg/mLのIC50を有する。図3Iは、本発明によるマルトース製剤を使用して得られた第4標準曲線を示し、その中でTGF−βは、7.31pg/mLのIC50を有する。図3Jは、本発明によるマルトース製剤を使用して得られた第5標準曲線を示し、その中でTGF−βは、6.798pg/mLのIC50を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または生物学的活性の増大を可能にするのに十分な濃度で提供されるTGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
糖は、マルトース、スクロース、グルコースおよびマンノースを含む群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
糖は、マルトースであることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
糖は、グルコースおよびマンノースを含む群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
糖は、50mg/mLを超える濃度で存在することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
糖は、51から200mg/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
糖は、60から150mg/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
糖は、70から100mg/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
糖は、80から95mg/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
糖は、85から90mg/mLの濃度で存在することを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項11】
TGF−βスーパーファミリーメンバーおよび糖を含有する可溶性医薬組成物であって、糖は、該組成物を溶解して生理学的溶液にする際に、糖がTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または生物学的活性の増大を可能にするのに十分な濃度で提供されるような比率で提供されることを特徴とする可溶性医薬組成物。
【請求項12】
糖は、組成物を溶解して生理学的溶液にする際に、糖の濃度が50mg/mLを超えるような比率で提供されることを特徴とする請求項11に記載の可溶性組成物。
【請求項13】
TGF−βスーパーファミリーメンバー、ナトリウムイオンの供給源、および糖を含有する可溶性医薬組成物であって、ナトリウムイオンの供給源および糖の量は、130から160mEq/Lのナトリウム濃度を生成するように該組成物を溶解する際に、糖の濃度がTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率の向上および/または生物学的活性の増大を可能にするのに十分であるような量であることを特徴とする可溶性医薬組成物。
【請求項14】
ナトリウムイオンの供給源および糖の量は、130から160mEq/Lのナトリウム濃度を生成するように該組成物を溶解する際に、糖の濃度が50mg/mLを超えるような濃度であるような量であることを特徴とする請求項13に記載の可溶性組成物。
【請求項15】
TGF−βスーパーファミリーメンバーは、TGF−β、TGF−βおよびTGF−βを含む群から選択されることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
TGF−βスーパーファミリーメンバーは、TGF−βであることを特徴とする請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
創傷治癒に使用するためのものであることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
創傷治癒を促進し、かつ/または瘢痕形成を予防または抑制するのに使用するためのものであることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
注射による投与のために製剤されることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
皮内注射による投与のために製剤されることを特徴とする請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
皮下注射による投与のために製剤されることを特徴とする請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
静脈内注射による投与のために製剤されることを特徴とする請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
筋内注射による投与のために製剤されることを特徴とする請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項24】
腹腔内点滴剤としての投与のために製剤されることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
点眼薬としての投与のために製剤されることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ステントを介しての投与のために製剤されることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
徐放性ビヒクルによる投与のために製剤されることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
増粘剤を含有することを特徴とする請求項1から27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
チキソトロピー剤を含有することを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有することを特徴とする事前充填容器。
【請求項31】
容器は、シリンジであることを特徴とする請求項30に記載の事前充填容器。
【請求項32】
容器は、バイアルであることを特徴とする請求項30に記載の事前充填容器。
【請求項33】
TGF−βスーパーファミリーメンバーの治療活性を必要とする個体に対して、治療量の請求項1から29のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
【請求項34】
創傷治癒を促進しかつ/または瘢痕形成を抑制する方法であって、このような促進および/または抑制を必要とする患者に対して、治療有効量の請求項1から29のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
医薬組成物中に組み込まれたTGF−βスーパーファミリーメンバーの回収率を向上しかつ/または生物学的活性を増大させることを特徴とする糖の使用。
【請求項36】
糖は、マルトース、スクロース、グルコースおよびマンノースからなる群から選択されることを特徴とする請求項35に記載の使用。
【請求項37】
糖は、マルトースであることを特徴とする請求項36に記載の使用。
【請求項38】
糖は、50mg/mLを超える濃度で存在することを特徴とする請求項35から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
TGF−βスーパーファミリーメンバーは、TGF−β、TGF−βおよびTGF−βからなる群から選択されることを特徴とする請求項35から38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
TGF−βスーパーファミリーメンバーは、TGF−βであることを特徴とする請求項39に記載の使用。
【請求項41】
注射痛を予防または低減するための薬剤の製造における糖の使用。
【請求項42】
糖は、マルトース、スクロース、グルコースおよびマンノースを含む群から選択されることを特徴とする請求項41に記載の使用。
【請求項43】
糖は、マルトースであることを特徴とする請求項42に記載の使用。
【請求項44】
糖は、50mg/mLを超える濃度で提供されることを特徴とする請求項41から43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
注射可能な薬剤を製造するための請求項41から44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
薬剤は、治療活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項41から45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
薬剤は、創傷治癒を促進できる治療活性剤を含有することを特徴とする請求項46に記載の使用。
【請求項48】
薬剤は、瘢痕化を低減できる治療活性剤を含有することを特徴とする請求項46または請求項47に記載の使用。
【請求項49】
治療活性剤は、TGF−βスーパーファミリーメンバーを含有することを特徴とする請求項46から48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
TGF−βスーパーファミリーメンバーは、TGF−β、TGF−βおよびTGF−βを含む群から選択されることを特徴とする請求項49に記載の使用。
【請求項51】
TGF−βスーパーファミリーメンバーは、TGF−βであることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項52】
薬剤は、麻酔活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項41から51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
麻酔活性剤は、注射可能な局所麻酔薬であることを特徴とする請求項52に記載の使用。
【請求項54】
薬剤は、リグノカインをさらに含有することを特徴とする請求項53に記載の使用。
【請求項55】
薬剤は、化粧活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項41から54のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
薬剤は、診断活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項41から55のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−501200(P2009−501200A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520947(P2008−520947)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002574
【国際公開番号】WO2007/007095
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(500588178)レノボ・リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】RENOVO LTD.
【Fターム(参考)】