説明

TLR7およびTLR8に対する安定化免疫調節RNA(SIMRA)化合物

本発明は、安定化オリゴリボヌクレオチドの、免疫治療の適用に対する免疫調節剤としての免疫治療的使用に関する。とくに本発明は、改善したヌクレアーゼおよびRNase安定性およびTLR7および/またはTLR8を介した免疫調節活性を有するRNAをベースとしたオリゴリボヌクレオチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般に、オリゴリボヌクレオチドを免疫調節剤として用いる免疫学および免疫治療の適用の分野に関する。とくに本発明は、安定化免疫調節RNA(SIMRA)組成物およびその使用方法に関する。かかる組成物および方法は、Toll様レセプター8(TLR8)、TLR7およびTLR8、並びにTLR7(TLR7)を介した免疫反応を調節するのに効果的である。
【0002】
関連技術の概要
免疫応答には、該応答に係わる細胞のサブセットに基づく生得的応答および順応的応答の両方が含まれる。例えば、遅延型過敏性および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の活性化などの古典的な細胞媒介機能に係わるTヘルパー(Th)細胞はTh1細胞であり、一方、B細胞の活性化に対してヘルパー細胞として係わる細胞はTh2細胞である。免疫応答のタイプは、抗原への暴露に対する応答において産生されるサイトカインおよびケモカインによって影響を受ける。サイトカインは、生じる免疫応答のタイプに直接的に影響するTヘルパー1(Th1)細胞とTヘルパー2(Th2)細胞とのバランスに影響することによって、免疫応答を制御する手段を提供する。バランスがTh1の数がより高い方へ向くと、細胞傷害性T細胞(CTL)の活性化を含む細胞媒介免疫応答が生じる。バランスがTh2の数がより高い方へ向くと、体液性または抗体免疫反応が生じる。これらの免疫応答のそれぞれは、Th1細胞およびTh2細胞から分泌されるサイトカインの異なる組み合わせをもたらす。Th1細胞およびTh2細胞によって分泌されるサイトカインの差異は、これら2つのサブセットの異なる生体機能の結果であるかもしれない。
【0003】
Th1細胞は、抗原への身体の先天性応答に関与する(例えばウィルス感染、細胞内病原体、および腫瘍細胞)。抗原に対する最初の応答は、抗原提示細胞(例えば、活性化マクロファージおよび樹状細胞)からのIL−12の分泌およびTh1細胞の同時活性化である可能性がある。Th1細胞の活性化の結果は、あるサイトカイン(例えば、IL−2、IFN−ガンマおよび他のサイトカイン)の分泌および抗原特異的CTLの同時活性化である。Th2細胞は、細菌、寄生動物、抗原およびアレルゲンに応答して活性化されることが知られており、あるサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−10、IL−13および他のサイトカイン)およびケモカインの分泌を介して、身体の順応免疫応答(例えば、IgE産生および好酸球の活性化)を媒介し得る。これらのあるサイトカインの分泌によって、B細胞増殖および抗体産生の増加をもたらし得る。さらに、これらのあるサイトカインは、他のサイトカインの遊離を惹起するか、阻害し得る(例えば、IL−10は、Th1細胞からのIFN−γおよび樹状細胞からのIL−12の分泌を阻害する)。最終的に、Th1細胞およびTh2細胞の間のバランス並びに選択された刺激に応じて遊離したサイトカインおよびケモカインは、身体の免疫系が疾病にどのように応答するかにおける重要な役割を有する可能性がある。例えば、IFN−αはC型肝炎を阻害し、MIP−1αおよびMIP−1β(夫々、CCL3およびCCL4としても知られる)は、HIV−1の感染を阻害し得る。Th1/Th2免疫応答の最適なバランスは、種々の疾病を処置および予防するために免疫系を用いる機会を提示する。
【0004】
Th1免疫応答は、例えば、非メチル化CpGジヌクレオチドを含む細菌のまたは合成DNAの導入によって、哺乳動物において誘導されることができ、免疫応答は、パターン認識レセプター(pattern recognition receptors;PRR)として知られるある免疫細胞のレセプターに対する特異的なオリゴヌクレオチド配列(例えば、非メチル化CpG)の提示をもたらす。これらのうち、あるPRRは、Toll様レセプター(TLR)である。
【0005】
Toll様受容体(TLR)は、微生物感染に対する応答における先天性免疫応答の誘導に密接に関与する。脊椎動物において、Toll様受容体と呼ばれる10種のタンパク質のファミリー(TLR1〜TLR10)が、病原体関連分子パターンを認識することが知られている。10種のうち、TLR3、7、8および9は、細胞内のエンドソーム内に限局化し、核酸(DNAおよびRNA)ならびにヌクレオシドおよび核酸代謝産物などの小分子を認識することが知られている。TLR3およびTLR9は、それぞれウィルスおよび細菌ならびに合成DNAに存在するdsRNAおよび非メチル化CpGジヌクレオチドなどの核酸を認識することが知られている。細菌DNAは、免疫システムおよび抗腫瘍活性を活性化することが示されている(Tokunaga T et al., J. Natl. Cancer Inst. (1984) 72:955-962; Shimada S, et al., Jpn. H cancer Res, 1986, 77, 808-816; Yamamoto S, et al., Jpn. J. Cancer Res., 1986, 79, 866-73; Messina, J, et al., J. Immunolo. (1991) 147:1759-1764)。CpGジヌクレオチドを含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する他の研究では、免疫応答の刺激が示された(Zhao Q, et al., Biochem.Pharmacol. 1996, 26, 173-82)。続く研究により、TLR9が細菌および合成DNAに存在する非メチル化CpGモチーフを認識することが示された(Hemmi H, et al., Nature. (2000) 408:740-5)。CpG含有ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの他の修飾はまた、TLR9を介する免疫応答のモジュレータとして作用するその能力に影響を及ぼすことができる(例えば、Zhao et al., Biochem. Pharmacol. (1996) 51:173-182; Zhao et al., Biochem Pharmacol. (1996) 52:1537-1544; Zhao et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev. (1997) 7:495-502; Zhao et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (1999) 9:3453-3458; Zhao et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2000) 10:1051-1054; Yu et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2000) 10:2585-2588; Yu et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2001) 11:2263-2267; and Kandimalla et al., Bioorg. Med. Chem. (2001) 9:807-813参照)。加えて、構造活性相関研究により、合成モチーフおよび非メチル化CpGジヌクレオチドから生じるものとは明白に異なる、特異的免疫応答プロフィールを誘発する新規のDNAに基づく化合物の同定を可能にしてきた(Kandimalla ER, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2005) 102:6925-30. Kandimalla ER, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) 100:14303-8. Cong YP, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 310:1133-9. Kandimalla ER, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 306:948-53. Kandimalla ER, et al., Nucleic Acids Res. (2003) 31:2393-400. Yu D, et al., Bioorg Med Chem. (2003) 11:459-64. Bhagat L, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 300:853-61. Yu D, et al., Nucleic Acids Res. (2002) 30:4460-9. Yu D, et al., J Med Chem. (2002) 45:4540-8. Yu D, et al., Biochem Biophys Res Commun. (2002) 297:83-90. Kandimalla ER, et al., Bioconjug Chem. (2002) 13:966-74. Yu D, K et al., Nucleic Acids Res. (2002) 30:1613-9. Yu D, et al., Bioorg Med Chem. (2001) 9:2803-8. Yu D, et al., Bioorg Med Chem Lett. (2001) 11:2263-7. Kandimalla ER, et al., Bioorg Med Chem.( 2001) 9:807-13. Yu D, et al., Bioorg Med Chem Lett. (2000) 10:2585-8, Putta MR, et al., Nucleic Acids Res. (2006) 34:3231-8)。しかしながら、最近まで、TLR7およびTLR8に対する天然のリガンドは知られていなかった。
【0006】
TLR7およびTLR8が、ウイルスおよび合成の一本鎖RNA、および多くのヌクレオシドを含む、小さな分子を認識することが示されてきた(Diebold, S.S., et al., Science v: 303, 1529-1531 (2004))。Diebold et al. (Science, v303: 1529-1531 (2004))には、インフルエンザウイルスに対するIFN−α応答が、インフルエンザのゲノムRNAのエンドソーム認識およびTLR7およびMyD88によるシグナリングを要求することが示されていて、ssRNAをTLR7に対するリガンドであると同定している。ヒトの場合、ssRNAはTLR7ではなくTLR8によって認識され、一方で、マウスのTLR7はssRNAを認識することができる(Lund JM, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Apr 13; 101(15):5598-603; Heil F, et al. Science. 2004 ;303:1526-9; Diebold SS, et al., Science. 2004; 30:1529-31; Triantafilou K, et al., Eur J Immunol. 2005 Aug; 35(8):2416-23)。ある合成化合物、イミダゾキノロンイミキモド(R−837)およびレシキモド(R−848)は、TLR7およびTLR8のリガンドである(Hemmi H et al., (2002) Nat Immunol 3:196-200; Jurk M et al., (2002) Nat Immunol 3:499)。加えて、7−デアザ−G、7−チア−8−オキソ−G(TOG)および7−アリル−8−オキソ−G(ロキソリビン)などのグアノシン類縁体は、高濃度において、TLR7を活性化することが示されている[Lee J et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2003, 100:6646-51]。しかしながら、例えば、イミキモドなどのこれら小分子はまた、他のレセプターを介して作用することが知られている(Schon MP, et al., J. Invest Dermatol., 2006, 126, 1338-47)。
【0007】
TLR7またはTLR8の認識のための既知の特異的ssRNAモチーフの欠損並びに潜在的に広い範囲の刺激性ssRNAによって、TLR7およびTLR8が自己のおよびウイルスのRNAの両方を認識し得ることが示唆されている。近年、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)または他の脂質剤と複合された場合、あるGU−リッチなオリゴリボヌクレオチドが、免疫刺激性であり、TLR7およびTLR8を介して作用することが示されてきた(Heil et al. Science, 303: 1526-1529 (2004); Lipford et al. WO03/086280; Wagner et al. WO98/32462)。しかしながら、RNA分子は長年、例えば、リボザイムおよびsiRNAとして使用され、リボザイムおよびsiRNAとして用いられたRNAは、GUジヌクレオチドを含む。さらに、多くのこれらRNA分子は、脂質の存在下で、TLRの刺激を介して免疫応答を誘発することが示されてきた[Kariko et al., Immunity (2005) 23:165-75; Ma Z et al., Biochem Biophys Res Commun., (2005) 330, 755-9]。しかしながら、これらのRNA分子の不安定さによって、多くの領域(例えば、ヒトの疾病の予防や処置など)において、これらの分子を用いることおよび適用することの発展が妨げられた。
【0008】
リボースまたはデオキシリボースの糖を含むオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチドは、様々な分野で使用されており、診断精査、PCRプライミング、遺伝子発現のアンチセンス阻害、siRNA、アプタマー、リボザイム、およびトール様受容体(TLR)をベースとした免疫療法剤が含まれるがこれらに限定されない。より最近では、多くの刊行物は、オリゴデオキシヌクレオチドの免疫調節剤としての使用や、アレルギー、喘息、自己免疫、癌、および感染症などの多くの疾病への免疫療法用途におけるそれらの単独でのまたはアジュバントとしての使用を実証している。
【0009】
DNAオリゴヌクレオチドがTLR9によって認識され、一方でRNAオリゴヌクレオチドがTLR7および/またはTLR8によって認識されているという事実は、DNAおよびRNAの間の構造的な配座の差によるものであろう。しかしながら、DNAおよびRNAの間の化学的な差にもよって、DNAは化学的および酵素的にRNAよりもはるかに安定である。
【0010】
RNAは、遍在する細胞外リボヌクレアーゼ(RNase)によって急速に分解し、このことが、殆どの(あったとしても)自己のssRNAが抗原提示細胞に辿り着かないことを保証する。核酸のエキソヌクレアーゼ分解は、圧倒的に3’−ヌクレアーゼの消化であり、よりわずかな割合で5’−エキソヌクレアーゼ作用を介する。エキソヌクレアーゼの消化に加えて、RNAはRNaseのエンドヌクレアーゼ作用によっても分解し得る。RNAをベースとする分子は、ヌクレアーゼ安定性を提供するために、脂質と複合化しなければならなかった。
【0011】
しかしながら、自己免疫反応を防ぐ本質的な機能を提供している間、これらのリボヌクレアーゼはまた、合成および天然の両方のssRNAを急速に分解するから、免疫療法のために開発されるべく意図された任意の合成ssRNA分子の本質的な問題を示す。このハードルを克服するため、ssRNA分子の分解からの保護は、ssRNAのリポソームでのカプセル化、ポリエチレンイミンでの凝集、または、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)などの分子との複合化が試みられてきた。しかしながら、これらの保護手段は、まだ不安定なssRNAに適用された二次的な手段であり、ssRNA(天然または合成)のインビボでのこれらの保護手段の効能および免疫調節作用の影響は、不明なままである。
【0012】
したがって、TLR7および/またはTLR8に対するリガンドとして認識され続けるように、一方で、インビボで有用な分子となり得るように安定性を改善されるように、裸のRNAをそのままにしておくことが挑戦されている。理想的には、新しい免疫治療剤として作用することができる本質的に安定なRNAをベースとした分子の設計を介して、この挑戦に対峙するかもしれず、かかる剤は、併用時のワクチンの効果を改善すること、または、免疫応答を引き起こすことや増強することが有益である場合に、例えば、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体による疾病などの疾患を処置および/または予防することのように、多くの臨床的に関連ある適用における使用を見出すであろう。
【0013】
本発明の概要
第一の面において、本発明は、
新規なクラスの安定化免疫調節RNA(SIMRA)化合物、さらに以下に定義するもの、およびそれらの免疫応答の誘導および/または増強への使用を提供することにより、前記の要求を満たす。本発明による新規な化学物質は、免疫応答を誘導することに実質的により効果的であり、分解に対して実質的により感受性が低い免疫反応誘導および/または増強化合物を提供する。本発明による方法は、免疫治療の適用に対し、SIMRAによって産生するサイトカインプロフィールを改変することができる。
【0014】
第一の面の1つの態様において、本発明は、TLR8に対するアゴニストとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0015】
第一の面の他の態様において、本発明は、TLR7およびTLR8に対するアゴニストとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0016】
第一の面のさらなる態様において、本発明は、TLR7に対するアゴニストとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0017】
第一の面のさらなる態様において、本発明は、アジュバントとしてのSIMRA化合物を提供する。
【0018】
第二の面において、本発明は医薬組成物を提供する。これらの組成物は、本発明の第一の最初の3つの面に開示した組成物の任意のものおよび薬学的に許容し得る担体を含む。
【0019】
第三の面において、本発明は、脊椎動物において免疫応答を惹起する方法を提供し、該方法は、本発明のSIMRA化合物を薬学的に有効な量で脊椎動物に投与することを含む。
【0020】
第四の面において、本発明は、例えば、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体による疾病などの免疫応答を誘導することおよび/または増強することが有益である疾病または障害を治療的に処置する方法を提供し、かかる方法は、このような疾病または障害を有する患者に、薬学的に有効な量で本発明のSIMRA化合物を投与することを含む。
【0021】
第五の面において、本発明は、例えば、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原体による疾病などの免疫応答を誘導することおよび/または増強することが有益である脊椎動物における疾病または障害を予防する方法を提供し、かかる方法は、このような障害または疾病に感受性である脊椎動物に本発明のSIMRA化合物を薬学的に有効な量を投与することを含む。
【0022】
第六の面において、本発明は、サイトカインまたはケモカインを産生することができる細胞(例えば、免疫細胞、PBMC)を単離する方法、かかる細胞を標準の細胞培養条件下で培養する方法、かかる細胞を、単離細胞が増大したレベルのサイトカインまたはケモカインを産生または分泌するようにSIMRAとエクスビボで処置する方法、および疾病の予防または処置のため、処置した細胞をサイトカインまたはケモカイン治療の必要な患者に投与または再投与する方法を提供する。
【0023】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、免疫治療の適用のための免疫調節剤としてのオリゴヌクレオチドの治療的使用に関する。とくに、本発明は、TLR7のみ、TLR7およびTLR8、またはTLR8のみを介した免疫応答を調節する改善されたインビボでの安定性を有するRNAをベースとしたオリゴヌクレオチド(SIMRA化合物)を提供する。例えば、TLR7および/またはTLR8の安定したアゴニスト、またはSIMRA化合物による樹状細胞および他の抗原提示細胞の活性化を介し、様々な先天性および獲得免疫応答メカニズムを始めることによって、もたらされるサイトカインプロフィールは、病原体、感染細胞または腫瘍細胞の破壊、および抗原特異的抗体およびCTL応答の発生を導き得る。各々が参照として組み込まれるべく詳細かつ個別に示されているように、ここに言及する発行された特許、特許出願および文献は、同じ範囲で参照によってここに組み込まれる。ここに言及された任意の参照の任意の教示および本明細書との間に矛盾がある場合、後者が本発明の目的のために優先する。
【0024】
本発明は、限定されないが、成人および小児科のヒトおよび獣医の適用における癌、自己免疫疾患、喘息、呼吸アレルギー、食物アレルギー、皮膚アレルギーおよび細菌、寄生生物およびウイルスの感染の処置などの免疫治療の適用のために用いるSIMRA化合物によって引き起こされた免疫を増強する方法を提供する。したがって、本発明はさらに、免疫治療ための免疫調節効果の最適なレベルを有するSIMRA化合物およびかかる化合物を製造および使用する方法を提供する。さらに、本発明のSIMRA化合物は、疾病の予防および処置のためのSIMRA化合物の免疫調節効果を減らさない疾病または症状を処置するのに有用な剤と組み合わせるアジュバントとして有用である。
【0025】
定義
用語「2’−置換リボヌクレオシド」または「2’−置換アラビノシド」は、一般に、ペントース部位の2’位の水酸基が置換して2’−置換または2’−O−置換リボヌクレオシドであるリボヌクレオシドまたはアラビノヌクレオシドを含む。ある態様において、かかる置換は、1〜6個の飽和または不飽和の炭素原子を含む低級ヒドロカルビル基、ハロゲン原子、または、6〜10個の炭素原子を有するアリール基によるものであり、ここでかかるヒドロカルビル基またはアリール基は、置換していなくても、あるいは、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、カルボキシル、カルボアルコキシまたはアミノ基で置換していてもよい。2’−O−置換リボヌクレオシドまたは2’−O−置換アラビノシドの例には、限定されないが、2’−アミノ、2’−フルオロ、2’−アリル、2’−O−アルキルおよび2’−プロパルギルリボヌクレオシドまたはアラビノシド、2’−O−メチルリボヌクレオシドまたは2’−O−メチルアラビノシドおよび2’−O−メトキシエトキシリボヌクレオシドまたは2’−O−メトキシエトキシアラビノシドがある。
【0026】
用語「3’」は、方向性に用いる場合、一般に、同一のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの他の領域または位置からポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの3’(糖の3’位の方へ)の領域または位置を意味する。
【0027】
用語「5’」は、方向性に用いる場合、一般に、同一のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの他の領域または位置からポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’(糖の5’位の方へ)の領域または位置を意味する。
【0028】
用語「約」は、一般に、正確な数字が臨界的でないことを意味する。したがって、オリゴリボヌクレオチドのリボヌクレオシド残基の数が臨界的であり、1つまたは2つのより少数のリボヌクレオシド残基を有するオリゴリボヌクレオチド、または1つから数個の付加的なリボヌクレオシド残基は、上記の各態様の相当物として考慮される。
【0029】
用語「アジュバント」は、一般に、ワクチンまたは抗原などの免疫原の剤に加えられた場合、混合物にさらすと受け手のホストにおける剤の免疫応答を増強または強化する物質をいう。
【0030】
用語「気道炎症」は、一般に、限定されず、喘息を含む感染性アレルゲンによって引き起こされた呼吸管の炎症を含む。
【0031】
用語「アレルゲン」は、一般に、対象にさらすとアレルギー反応を誘発する分子(通常、タンパク質)の抗原または抗原部分をいう。典型的な対象は、例えば、ホイール・アンド・フレイア試験(wheal and flare test)または当該分野で知られる任意の方法によって示されるように抗原に対しアレルギー性である。分子は、分子にさらすと対象の小さな小集団だけがアレルギーの(例えば、IgE)免疫反応を示しても、アレルゲンであるといわれる。
【0032】
用語「アレルギー」は、一般に、限定されないが、食品アレルギー、呼吸アレルギーおよび皮膚アレルギーを含む。
【0033】
用語「抗原」は、一般に、抗体によって、または、T細胞抗原レセプターによって、認識され、選択的に結合する物質をいう。抗原は、限定されないが、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの組み合わせを含み得る。抗原は、天然または合成であってよく、一般に、当該抗原に特異的な免疫応答を誘導する。
【0034】
用語「自己免疫疾患」は、一般に、「自己」の抗原が免疫系によって攻撃を受ける疾患をいう。
【0035】
3’または5’分解を阻止することまたは「キャップ(cap)」または「キャッピング(capping)」は、オリゴヌクレオチドの3’または5’末端が、ヌクレアーゼの分解(例えば、3’エキソヌクレアーゼの分解)を十分に阻害する他の分子(例えば、リンカーまたは他の非RNAヌクレオチド)と付着することを意味する。
【0036】
用語「担体」は、一般に、任意の賦形剤、希釈剤、増量剤、塩、バッファー、安定化剤、可溶化剤、オイル、脂質、脂質含有ベシクル、ミクロスフェア、リポソームカプセル剤または医薬の処方において用いるための当該分野でよく知られた他の材料を包含する。担体、賦形剤または希釈剤の特性が特定の適用に対する投与ルートに依存するであろうことは理解されるであろう。これらの材料を含む薬学的に許容し得る処方の製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に記載されている。
【0037】
用語「共投与(co-administration)」は、一般に、免疫応答を調節するために十分に時間的に近接した少なくとも2つの異なる物質の投与をいう。好ましくは、共投与は、少なくとも2つの異なる物質の同時の投与をいう。
【0038】
用語「相補的」は、一般に、核酸とハイブリダイズする能力を有することを意味する。かかるハイブリダイゼーションは、通常、相補鎖の間の水素結合の結果であり、他のモードの水素結合ならびに塩基のスタッキングもまたハイブリダイゼーションを導き得るが、好ましくは、ワトソン−クリック(Watson-Crick)またはフーグスティーン(Hoogsteen)塩基対を形成する。
【0039】
用語「有効な量」または「十分な量」は、一般に、有益な結果などの所望の生体効果に影響するのに十分な量をいう。したがって、「有効な量」または「十分な量」は、投与される状況に依存するであろう。有効な量は、1回または2回以上の投与において投与され得る。
【0040】
用語「免疫調節オリゴリボヌクレオチド」は、一般に、魚、家禽または哺乳動物などの脊椎動物に投与したとき、免疫応答を誘導または抑制するオリゴリボヌクレオチドをいう。
【0041】
用語「組み合わせて」は、一般に、同じ患者における同じ疾病を処置する過程を意味し、SIMRA化合物およびSIMRA化合物の免疫調節効果を減らさない疾病または症状を処置するのに有用な剤を、同時投与ならびに数秒から数日間隔の時間的に間隔の開いた手順を含む任意の手順で投与すること含む。かかる組み合わせ処置は、さらにSIMRA化合物(および/または独立した剤)の単独を超えた投与を含み得る。SIMRA化合物および剤の投与は、同一または異なるルートによってもよい。
【0042】
用語「個体」または「対象」は、一般に、ヒトなどの哺乳動物をいう。哺乳動物は、一般に、限定されないが、ヒト、ヒトでない霊長動物、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、雌ウシ、ブタ、ヒツジおよびウサギを含む。
【0043】
用語「リニア合成」は、一般に、免疫調節オリゴリボヌクレオチドの一端から始まり、他端まで直線的に進行する合成をいう。リニア合成は、同一または非同一(長さ、塩基組成および/または組み込まれた化学修飾の点で)のモノマー単位を免疫調節オリゴリボヌクレオチドへの組み込みを許容する。
【0044】
用語「修飾されたヌクレオシド」は、一般に、修飾された複素環塩基、修飾された糖部分またはそれらの任意の組み合わせを含むヌクレオシドである。ある態様において、修飾されたヌクレオシドは、ここに記載されているように、非天然のピリミジンまたはプリンのヌクレオシドである。本発明の目的のため、修飾されたヌクレオシド、ピリミジンまたはプリン類縁体または非天然に生じたピリミジンまたはプリンは、交換可能に用いることができ、非天然に生じた塩基および/または非天然に生じた糖部分を含むヌクレオシドをいう。本発明の目的のため、塩基は、グアニン、シトシン、アデニンまたはウラシルでない場合、非天然であるとみなされる。ある態様において、修飾されたヌクレオシドは、TLR7またはTLR8の活性を妨害することのない安定性を改善したオリゴリボヌクレオチドの選択された位置が置換され得る2’−置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシドまたは2’−デオキシ−2’−置換アラビノシドである。
【0045】
用語「調節」または「刺激」は、一般に、応答の誘発および/または増強から生じ得る、応答の増加または応答の質の差などの変化をいう。
【0046】
用語「リンカー」は、一般に、糖、塩基または骨格(back bone)を介して共有結合または非共有結合によって、オリゴリボヌクレオチドに付着させることができる任意の部分をいう。リンカーは、2つまたは3つ以上のヌクレオシドに付着するように用いられるか、または、オリゴリボヌクレオチドの5’および/または3’末端のヌクレオチドに付着され得る。かかるリンカーは、非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオチドリンカーであり得る。
【0047】
用語「非ヌクレオチドリンカー」は、一般に、共有結合または非共有結合によってオリゴリボヌクレオチドに付着することができるヌクレオチド結合以外の化学部分をいう。好ましくは、かかる非ヌクレオチドリンカーは、約2オングストロームから約200オングストロームの長さであり、シスまたはトランス配置であり得る。
【0048】
用語「ヌクレオチド結合」は、一般に、隣接するヌクレオシドの間のホスフェート、非ホスフェート、荷電したまたは中和した基(例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートなど)からなるそれらの糖を介して(例えば、3’−3’、2’−3’、2’−5’、3’−5’)、2つのヌクレオシドを合わせる化学結合をいう。
【0049】
用語「パリンドローム配列」は、一般に、自己相補的または反転した繰り返し(すなわち、ABCDEE’D’C’B’A’などの配列で、AおよびA’、BおよびB’など)が、通常のワトソン−クリック塩基対を形成することができる塩基であることを意味する。インビボでは、かかる配列は、分子内または分子間の二本鎖構造を形成し得る。
【0050】
用語「ペプチド」は、一般に、十分な長さのポリペプチドおよび例えば、ペプチドがハプテンであってもなくても、抗体産生またはサイトカイン活性などの生体反応に影響を与える組成物をいう。用語「ぺプチド」は、修飾したアミノ酸(天然または非天然に生じたのであってもなくても)を含んでもよく、かかる修飾には、限定されないが、リン酸化、糖鎖化、ペグ化、脂質化およびメチル化が含まれる。
【0051】
用語「PBMC」は、一般に、末梢血単核細胞をいう。
【0052】
用語「生理学的に許容し得る」は、一般に、SIMRA化合物の有効性を妨害することなく、細胞、細胞培養物、組織または器官などの生体システムと適合的である物質をいう。好ましくは、生体システムは、脊椎動物などの生物である。
【0053】
用語「SIMRA」は、一般に、TLR7および/またはTLR8によってリガンドとして認識される安定化免疫調節RNA化合物をいい、該化合物は、一本鎖RNA(ssRNA)および/または二本鎖RNA(dsRNA)を含むことができ、その3’末端を保護(安定化)するための修飾によって(例えば、3’分解を阻止することによって、または、3’末端をキャッピングすることによって、または、2つまたは3つ以上のオリゴリボヌクレオチドの3’末端を結合することによって)、SIMRAが、修飾していないオリゴリボヌクレオチドよりもインビボでより安定であることを提供し、したがって、その免疫調節能力に影響する。SIMRAは、修飾オリゴリボヌクレオチドを含み得る。SIMRA化合物は、オリゴリボヌクレオチドの安定性をさらに改善するために、その5’末端を保護するための修飾(例えば、5’分解を阻止することによって、または5’末端をキャッピングすることによって)を含んでいてもよい。SIMRAは、直鎖状または分枝状であってよく、例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエートまたは代替の結合などを介して結合するリボヌクレオシドのポリマーである核酸を有し得る。SIMRAは、リボース糖残基に共有結合するプリン(アデニン(A)またはグアニン(G)またはそれらの誘導体(例えば、7−デアザ−Gおよびアラ−G)またはピリミジン(シトシン(C)またはウラシル(U)またはそれらの誘導体)塩基またはそれらの誘導体からなり得る。
【0054】
用語「処置」は、一般に、症状の緩和、または疾病の進行を遅らせることまたは改善することを含み得る、有益さまたは所望の結果を得ようとするアプローチをいう。
【0055】
用語「ウイルス性疾患」は、一般に、その病原としてウイルスを有する疾患をいい、限定されないが、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、後天性免疫不全症候群(AIDS)および帯状疱疹を含む。
【0056】
第一の面において、本発明はSIMRA化合物を提供する。本発明者らは、その3’末端を保護するための免疫調節オリゴリボヌクレオチドの修飾によって(例えば、3’分解を阻止することによって、または3’末端をキャッピングすることによって、または2つまたは3つ以上のオリゴリボヌクレオチドの3’末端を結合することによって)、驚くべきことに、その免疫調節能力に影響を与えることを発見した。加えて、この保護によって、驚くべきことに、脂質集合または他の保護手段の必要性をなくし、オリゴリボヌクレオチドの安定化を改善することを決定した。さらに、5’分解または5’末端のキャッピングによって、さらにオリゴリボヌクレオチドの安定性を改善することができる。
【0057】
本発明において、新規SIMRA化合物によるTLR8の活性化および免疫応答(例えば、サイトカインプロフィールの変化)が示されている。さらに、ヒトTLR8活性RNAにある化学修飾を組み込むことによって、TLR7を活性化することもでき、免疫応答およびサイトカイン/ケモカインプロフィールにおける変化をもたらす。したがって、本発明者らは、驚くべきことに、TLR8および/またはTLR7の活性化を介して、それに関連するサイトカイン/ケモカインプロフィールは、免疫調節オリゴリボヌクレオチドの一部として、修飾した塩基、修飾した糖、骨格、リンカー、結合および/またはキャップを含む修飾した化学構造を用いることによって調節することができる。
【0058】
1つの態様において、本発明は、非ヌクレオチドリンカーに、3’末端で結合された少なくとも2つのRNAをベースとしたオリゴヌクレオチドまたはヌクレオシド間結合または官能化した核酸塩基または糖を含む免疫調節化合物を提供する。本発明のかかる態様は、少なくとも1つの利用可能な5’末端を有し得る。この構造は、脂質集合または他の保護の必要なしに、SIMRA化合物に対するさらなる安定性(例えば、エキソヌクレアーゼ活性の阻害)を提供することを決定した。SIMRAの5’末端は、SIMRA化合物がTLR7および/またはTLR8を介して免疫応答を調節することを防ぐようには修飾されない。
【0059】
この面の他の態様において、本発明は、少なくとも2つのオリゴリボヌクレオチドを含み、免疫調節化合物は、限定されないが、表1の式I−Xに示すものを含む構造を有する。
【0060】
【表1】

【0061】
ドメインA、B、CおよびDは、独立して、長さ約2個〜約35個のリボヌクレオチドであってもよく、いくつかの態様において、約2個〜約20個、または約2個〜約12個、または約2個〜約11個、または約2個〜約8個のリボヌクレオチドである。ドメインA、B、Cおよび/またはDは同一であっても、同一でなくてもよい。ドメインA、B、CおよびDは、独立して、自己相補的ドメイン、ホモまたはヘテロリボヌクレオチド配列またはリンカーを有していてるかまたは有していない5’−3’または2’−5’RNAであってもよい。「n」は、1から無制限の数であり得る。
【0062】
「X」は、3’または5’結合、リン酸基、非RNAヌクレオチドを介し得るドメインA、B、Cおよび/またはDを連結またはキャッピングするリンカー、または脂肪族、芳香族、アリール、環状、キラル、アキラル、ペプチド、炭水化物、脂質、脂肪酸、モノ−、トリ−またはヘキサポリエチレングリコール、または複素環部分、またはこれらの組み合わせであり得る非ヌクレオチドリンカーである。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、非ヌクレオチドリンカーによって結合した少なくとも2つのオリゴリボヌクレオチドを含むSIMRA化合物を提供し、ここで免疫調節オリゴリボヌクレオチドの配列は、少なくとも部分的に自己相補的であり得る。当業者に認識されるであろうように、オリゴリボヌクレオチドの相補的な配列は、オリゴリボヌクレオチドの二次構造を与える分子間の水素結合を許容する。付加的なオリゴリボヌクレオチドは、互いに結合することができ、それにより本発明のオリゴリボヌクレオチドの鎖またはマルチマーが作られる。
【0064】
同様の考察は、異なる塩基配列の免疫調節オリゴリボヌクレオチドの間で対になる分子間の塩基に適用される。したがって、複数の免疫調節オリゴリボヌクレオチドがともに使用される場合、複数の免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、必要ではないが、互いに少なくとも部分的に相補的な配列を含み得る。1つの態様において、複数の免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、第一の配列を有する免疫調節オリゴリボヌクレオチドおよび第二の配列を有する免疫調節オリゴリボヌクレオチドを含み、ここで第一の配列および第二の配列は少なくとも50%相補的である。例えば、少なくとも50%の相補性である2つの8マーの間で、それらが4、5、6、7または8つのG−C、A−Uおよび/またはG−Uの揺らぎの塩基対を形成し得る。かかる塩基対は、必要ではないが、相補的な免疫調節オリゴリボヌクレオチドの一端に位置する塩基を含む。相補性の程度は、免疫調節オリゴリボヌクレオチドの間のアライメントに依存する可能性があり、かかるアライメントは、単一または複数のヌクレオシド突出を含んでいても、含んでいなくてもよい。他の態様において、相補性の程度は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%でさえある。
【0065】
当業者が認識するであろうとおり、示した免疫調節化合物は、ドメインの配列が分子間水素結合を許容するような相補的であるから、二次構造を有し得る。さらに、式Iから式Xに描かれるように、付加的に結合したRNAをベースとしたオリゴヌクレオチドは、分子間水素結合を介して結合することができ、これにより鎖またはマルチマーが作られ、ここで任意の数の結合したRNAをベースとしたオリゴヌクレオチドが組み込まれ得る。
【0066】
他の態様において、本発明は、3’または5’末端で、またはヌクレオシド間結合または官能化された核酸塩基または糖を介して、非ヌクレオチドリンカーに結合した少なくとも2つのRNAをベースとしたオリゴヌクレオチドを提供し、ここでリンカー(例えば、キャップ)は少なくとも1つの5’末端で付着している。この構造がSIMRA化合物にさらなる安定性(例えば、エキソヌクレアーゼ活性の阻害)を供給することが決定される。SIMRAの5’末端は、TLR7および/またはTLR8を介して免疫応答を調節することからSIMRA化合物を阻害するようには修飾されない。
【0067】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは夫々独立して、約2個〜約35個のリボヌクレオシド残基を有する。したがって、ある態様において、オリゴリボヌクレオチドは、独立して、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個または35個のヌクレオチド長である。好ましくは、オリゴリボヌクレオチドは、約4個〜約30個のリボヌクレオシド残基であり、より好ましくは、約4個〜約20個のリボヌクレオシド残基または約4個〜約11個のリボヌクレオシド残基である。いくつかの態様において、免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、約1個〜約18個、または約1個〜約11個、または約5個〜約14個のリボヌクレオシド残基を有するオリゴリボヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、オリゴリボヌクレオチドの1つまたは2つ以上は、11個のヌクレオチドを有する。免疫調節オリゴリボヌクレオチドとの関連で、好ましい態様は、約1個〜約35個のリボヌクレオチド、好ましくは、約5個〜約26個のヌクレオチド、より好ましくは、約13個〜約26個のリボヌクレオチドを有する。好ましくは、免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホジエステル、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート、リボヌクレオシド間結合を含む。
【0068】
好ましい態様において、それぞれのリボヌクレオシドユニットは、複素環の塩基およびペントフラノシル、トレハロース、アラビノース、2’−デオキシ−2’−置換アラビノース、2’−O−置換アラビノースまたはヘキソース糖基を含む。リボヌクレオシド残基は、多数の既知のリボヌクレオシド間結合の任意のものによって互いに結合できる。かかるリボヌクレオシド間結合は、限定されないが、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホルアミダイト、シロキサン、カルボネート、カルボアルコキシ、アセトアミダイト、カーバメイト、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、ホスホルアミダイト、架橋ホスホルアミダイト、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエートおよびスルホンリボヌクレオシド間結合を含む。リボヌクレオチドに対する結合の可能な部位は、以下の式XIに示され、式中、Bは複素環の塩基を示す。
【0069】
【化1】

【0070】
本発明のSIMRA化合物は、自然に生じるリボヌクレオシド、修飾したリボヌクレオシドまたはそれらの混合物を含み得る。
【0071】
本発明において、新規のSIMRA化合物は、ヒトTLR8によって認識され、かかるヒトTLR8活性化RNAにおけるある化学修飾の組み込みによって、ヒトTLR7により認識されるようになり、免疫応答を誘導する。かかる化学修飾には、限定されないが、7−デアザ−G、アラ−G、6−チオ−G、イノシン、イソ−G、ロキソリビン、TOG(7−チオ−8−オキソ)−G、8−ブロモ−G、8−ヒドロキシ−G、5−アミノホルマイシンB、オキソホルマイシン、7−メチル−G、9−p−クロロフェニル−8−アザ−G、9−フェニル−G、9−ヘキシル−グアニン、7−デアザ−9−ベンジル−G、6−クロロ−7−デアザグアニン、6−メトキシ−7−デアザグアニン、8−アザ−7−デアザ−G(PPG)、2−(ジメチルアミノ)グアノシン、7−メチル−6−チオグアノシン、8−ベンジルオキシグアノシン、9−デアザグアノシンおよび1−(B−D−リボフラノシル)−2−オキソ−7−デアザ−8−メチル−プリンなどのグアニン誘導体が含まれる。化学修飾にはまた、限定されないが、9−ベンジル−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)アデニン、2−アミノ−N2−O−、メチルアデノシン、8−アザ−7−デアザ−A、7−デアザ−A、ビダラビン、2−アミノアデノシン、N1−メチルアデノシン、8−アザアデノシン、5−ヨードツベルサイジンなどのアデニン誘導体が含まれる。化学修飾にはまた、限定されないが、シトシン誘導体が含まれる。化学修飾にはまた、限定されないが、4−チオ−Uなどのウラシル誘導体が含まれる。
【0072】
本発明の「免疫調節オリゴリボヌクレオチド」は、非ヌクレオチドまたはヌクレオチドリンカーを介して、3’−または2’−末端または官能化されたリボースまたは官能化されたリボ核酸塩基で結合する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含むSIMRA化合物である。リンカーのいくつかの例を以下に示す。非共有結合は、限定されないが、静電的相互作用、疎水的相互作用、π−スタッキング相互作用および水素結合を含む。
【0073】
さらに他の態様において、非ヌクレオチドリンカーは、オリゴリボヌクレオチドの付着を可能にする官能基を有する有機部分である。かかる付着は、好ましくは、安定した共有結合による。非限定的な例として、リンカーは、ヌクレオチドの任意の好適な位置で付着され得る。いくつかの好ましい態様において、リンカーは、3’−ヒドロキシルで付着している。かかる態様において、リンカーは、好ましくは、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートなどのホスフェートに基づく結合または非ホスフェートに基づく結合によって、好ましくは3’−ヒドロキシルと付着するヒドロキシル官能基を含む。
【0074】
いくつかの態様において、非ヌクレオチドリンカーは、限定されないが、ポリペプチド、抗体、脂質、抗原、アレルゲンおよびオリゴ糖を含む小分子、マクロ分子または生体分子である。いくつかの他の態様において、非ヌクレオチドリンカーは小分子である。本発明の目的のため、小分子は、1000Daよりも小さな分子量を有する有機部分である。いくつかの態様において、小分子は、750Daよりも小さな分子量を有する。
【0075】
いくつかの態様において、小分子は、脂肪族または芳香族の炭化水素であり、オリゴリボヌクレオチドに接続する直鎖か、それに追加される、限定されないが、ヒドロキシ、アミノ、チオール、チオエーテル、エーテル、アミド、チオアミド、エステル、ウレアまたはチオウレアを含む1つまたは2つ以上の官能基を任意に含み得る。小分子は、環状または非環状であり得る。小分子リンカーの例は、限定されないが、アミノ酸、炭化水素、シクロデキストラン、アダマンタン、コレステロール、ハプテンおよび抗生物質を含む。しかしながら、非ヌクレオチドリンカーを記載する目的のため、用語「小分子」はヌクレオシドを含むことを意図しない。
【0076】
いくつかの態様において、非ヌクレオチドリンカーは、アルキルリンカーまたはアミノリンカーである。アルキルリンカーは、分枝状または非分枝状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和、キラル、アキラルまたはラセミ混合物であってもよい。アルキルリンカーは、約2個〜約18個の炭素原子を有し得る。いくつかの態様において、かかるアルキルリンカーは、約3個〜約9個の炭素原子を有する。いくつかのアルキルリンカーは、限定されないが、ヒドロキシ、アミノ、チオール、チオエーテル、エーテル、アミド、チオアミド、エステル、ウレアおよびチオウレアを含む1つまたは2つ以上の官能基を含む。かかるアルキルリンカーは、限定されないが、1−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ポリエチレングリコールリンカー(例えば、[−O−CH2−CH2−](n=1〜9))、メチルリンカー、エチルリンカー、プロピルリンカー、ブチルリンカーまたはヘキシルリンカーを含み得る。いくつかの態様において、かかるアルキルリンカーは、ペプチドまたはアミノ酸を含み得る。
【0077】
いくつかの態様において、非ヌクレオチドリンカーは、限定されないが、表2にリストされているものを含み得る。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
いくつかの態様において、小分子リンカーは、グリセロールまたは式HO−(CH−CH(OH)−(CH−OHのグリセロール類似体であり、式中、oおよびpは、独立して、1〜約6、1〜約4、または1〜約3の整数である。いくつかの態様において、小分子リンカーは、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンの誘導体である。いくつかのかかる誘導体は、式HO−(CH−C(O)NH−CH−CH(OH)−CH−NHC(O)−(CH−OHを有し、式中、mは、0〜約10、0〜約6、2〜約6、または2〜約4である。
【0084】
本発明のいくつかの非ヌクレオチドリンカーは、表1に記載したように2つを超えるオリゴヌクレオチドの付着を許容する。例えば、小分子リンカーグリセロールは、オリゴリボヌクレオチドが共有結合し得る3つの水酸基を有する。したがって、本発明のいくつかの免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、3’末端で非ヌクレオチドリンカーと結合する2つを超えるオリゴリボヌクレオチド(例えば、ドメインCなど、付加的なドメインがドメインA、B、CおよびDについて前記に定義したようなオリゴリボヌクレオチドを含む)を含む。
【0085】
本発明のこの面のさらなる態様において、SIMRAは、3’または5’末端で、または、ヌクレオシド間結合または官能化核酸塩基または糖を介して、表1に示した2つまたは3つ以上のリンカーと結合した3つまたは4つ以上のオリゴリボヌクレオチドを含み得る。本発明のこの面のオリゴリボヌクレオチドは、同一または異なる配列を有し得る。本発明のこの面のリンカーは、同一または異なっていてもよい。
【0086】
本発明の免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、自動合成および図1および2に概略的に示し、さらに例を示すようなホスホルアミダイトアプローチを用いて簡便に合成され得る。いくつかの態様において、免疫調節オリゴリボヌクレオチドはリニア合成アプローチによって合成される(図1参照)。
【0087】
合成の代替的方法は、「パラレル合成」であり、該合成は、中央のリンカー部分から外側へ進行する(図2参照)。リンカーが付着した固体支持体は、米国特許第5,912,332号に記載されているようなパラレル合成のために用いることができる。代替的に、汎用固体支持体(ホスフェート付着制御多孔ガラス支持体など)を用いることができる。
【0088】
免疫調節オリゴリボヌクレオチドのパラレル合成は、リニア合成に対していくつかの利点を有する:(1)パラレル合成は、同一のモノマーユニットの組み込みを許容する;(2)リニア合成と異なり、両方(または全て)のモノマーユニットは、同時に合成され、それにより合成工程の数および合成に必要な時間がモノマーユニットのそれと同じである;および(3)合成工程の低減は、最終的な免疫調節オリゴリボヌクレオチド産物の純度および収率を改善する。
【0089】
リニア合成またはパラレル合成プロトコルのいずれかによる合成の終わりに、免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、修飾ヌクレオシドが組み込まれる場合、濃縮アンモニア溶液により、またはホスホルアミダイト供給者が推奨するとおりに、簡便に脱保護され得る。免疫調節オリゴリボヌクレオチド産物は、好ましくは、逆相HPLC、脱トリチル化(detritylated)、脱塩および透析によって精製される。
【0090】
表3aは、非限定的な、本発明の代表的なRNAをベースとした免疫調節オリゴリボヌクレオチドを示す。
【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

I=イノシン;U=dU;T=リボT;G=7−デアザ−G;G=アラ−G;G=6−チオ−G;G=1−(β−D−リボフラノシル)−2−オキソ−7−デアザ−8−メチル−プリン;O=ロキソリビン;X=グリセロール;X=1,3,5−ペンタントリオール;X=X=C3リンカーまたはプロパンジオール;X=トリ(エチレングリコール);X=1,5−ペンタンジオール;X=2’−デオキシ−アビシック;X=C3アミノリンカー;X=シス,シス−シクロヘキサントリオール;X=シス,トランス−シクロヘキサントリオール;下線付き=2’−O−Me−リボヌクレオチド;P=ホスホロチオエート;小文字=ホスホジエステル骨格。
【0096】
表3bは、限定されないが、本発明のオリゴリボヌクレオチドのいくつかが形成し得る代表的な二次構造を示す。
【0097】
【表12】

【0098】
第二の面において、本発明は、本発明のSIMRA化合物および生理学的に許容し得る担体を含む薬学的処方を提供する。
【0099】
第三の面において、本発明は、脊椎動物の免疫応答を調節するTLR7および/またはTLR8を発生する方法を提供し、かかる方法は、脊椎動物に本発明のSIMRA化合物を投与することを含む。いくつかの態様において、脊椎動物は哺乳動物である。好ましい態様において、SIMRA化合物は、免疫刺激の必要な脊椎動物に投与される。
【0100】
第四の面において、本発明は、疾病または障害を有する患者を治療的に処置する方法を提供し、かかる方法は、患者に本発明のSIMRA化合物を投与することを含む。種々の態様において、処置すべき疾病または障害は、癌、自己免疫疾患、感染症、気道炎症、炎症性障害、アレルギー、喘息または病原によって引き起こされた疾病である。病原は、細菌、寄生生物、糸状菌、ウイルス、ウイロイドおよびプリオンを含む。
【0101】
第五の面において、本発明は、疾病または障害を予防する方法を提供し、かかる方法は、本発明のSIMRA化合物を患者へ投与することを含む。種々の態様において、予防すべき疾病または障害は、癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性障害、感染症、アレルギー、喘息または病原によって引き起こされた疾病である。病原は、細菌、寄生生物、糸状菌、ウイルス、ウイロイドおよびプリオンを含む。
【0102】
第六の面において、本発明は、障害を予防または処置する方法を提供し、かかる方法は、限定されないが、免疫細胞、制御性T細胞、B細胞、PBMC、pDCおよびリンパ球様細胞を含む、サイトカインまたはケモカインを産生できる細胞を単離すること、かかる細胞を標準の細胞培養条件下で培養すること、単離細胞がサイトカインまたはケモカインの増大したレベルを産生または分泌するために、かかる細胞をエクスビボでSIMRAで処置すること、および、障害を予防または処置するためにサイトカインまたはケモカイン治療の必要な患者に処置した細胞を投与または再投与することを含む。本発明のこの面は、活性化された免疫細胞を産生するための標準の養子細胞免疫治療法である。
【0103】
本発明のこの面のいくつかの態様において、サイトカインまたはケモカインを産生することができる細胞は、疾病または障害を有するまたは有しない対象から単離され得る。かかる単離は、同定および選択を含んでもよく、以下の具体例に記載のものを含む標準の細胞単離方法を用いることを行うことができる。かかる単離された細胞は、以下の具体例に記載の培養方法および条件を含んでもよい標準の細胞培養方法に従い、標準の細胞培養条件を用いて培養される。本発明のこの態様のさらなる面において、単離細胞は、少なくとも1つのSIMRAの存在下で、かかる1つまたは2つ以上のSIMRAが存在せずに培養された単離細胞と比較して、サイトカインおよび/またはケモカインの産生および/または分泌を誘導、増大または増強に十分な量および時間で培養される。かかる時間は、数分から数時間、数日であってもよい。かかる単離されたSIMRA処置細胞は、ドナーへの再投与または第二の患者への投与に続く使用を見出すことができ、ここでかかるドナーまたは第二の患者はサイトカインおよび/またはケモカインの産生および/または分泌を誘導、増大または増強する必要がある。例えば、ドナーへの再投与または癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性疾患、感染症、アレルギー、喘息または病原による疾病を有する第二の患者への投与である。かかる再投与または投与は、カテーテルまたは注射投与または任意の他の効果的なルートを含む種々の方法を用いて遂行され得る。本発明のこの面は、免疫反応を高める制限または不完全な能力を有し得るまたは免疫が弱化している患者(例えば、HIVに感染した患者および骨髄移植患者)における使用をも見出し得る。
【0104】
本発明による任意の方法において、SIMRA化合物は、直接の免疫調節効果を単独でおよび/または疾病またはSIMRA化合物の免疫調節効果を減じない疾病または症状を処置または予防するのに有益な任意の他の剤との組み合わせにおいて作用する。本発明の任意の方法において、疾病または症状を処置または予防するのに有用な剤は、限定されないが、ワクチン、抗原、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、細胞傷害性の剤、アレルゲン、抗生物質、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TLRアゴニスト(例えば、TLR9のアゴニストおよび/またはTLR3のアゴニスト)、化学療法剤(伝統的な化学療法および現代の標的治療の両方)、標的治療剤、活性化細胞、ペプチド、タンパク質、遺伝子治療ベクター、ペプチドワクチン、タンパク質ワクチン、DNAワクチン、アジュバントおよび共刺激分子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、タンパク質リガンド、転写活性因子、ペプチドまたは修飾アミノ酸を含むペプチド)、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、癌の処置において、SIMRA化合物は、1つまたは2つ以上の化学療法化合物、標的治療剤および/またはモノクローナル抗体との組み合わせで投与され得ることが意図される。代替的に、剤は、抗原またはアレルゲンをコードするDNAベクターを含むことができる。代替的に、SIMRA化合物は、SIMRA化合物への免疫応答の特異性または大きさを増強するために他のアジュバントと組み合わせて投与できる。
【0105】
本発明による任意の方法において、単独または他の任意の剤との組み合わせでのSIMRA化合物の投与は、限定されないが、非経口的、粘膜送達、経口、舌下、経皮、局所、吸入、経鼻、エアゾール、眼内、気管内、直腸内、膣、遺伝子銃によって、経皮パッチまたは点眼または口腔洗浄の形態を含む任意の好適なルートによって可能である。SIMRA化合物の治療組成物の投与は、疾病の病徴または代理マーカーの低減に効果的な有効量および期間で、既知の手法を用いて行うことができる。例えば、疾病および/または障害の処置のためのSIMRA化合物の有効量は、病徴を緩和または低減するか、または、腫瘍、癌または細菌、ウイルスまたは糸状菌の感染を遅らせるか改善するために必要な量であることができる。ワクチンアジュバントとして使用する有効な量は、ワクチンまたは抗原に対する対象の免疫応答を強化することに有益な量であり得る。抗原の共投与に対する免疫応答を調節する組成物の投与の状況において、SIMRA化合物および抗原の有効な量は、抗原を単独で投与した場合に得られる免疫応答に比較して所望の調節を達成するのに十分な量である。任意の特定の適用のための有効な量は、標的の疾病または症状、投与する特定のオリゴヌクレオチド、対象のサイズ、または疾病または症状の重篤さなどの因子に依存して変化する可能性がある。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定のオリゴヌクレオチドの有効な量を経験的に決定することができる。
【0106】
全身に投与する場合、治療組成物は、好ましくは、SIMRA化合物の血中レベルが、約0.0001マイクロモル〜約10マイクロモルになるような十分な投与量で投与される。局所投与のためには、これよりもより低い濃度で効果がある可能性があり、より高い濃度で耐性となり得る。好ましくは、SIMRA化合物の総投与量は、患者1日あたり約0.001mgから、体重1kg1日あたり200mgである。単一の処置エピソードとして、個体へ本発明の1つまたは2つ以上の治療組成物の治療的に有効な量を同時または連続して投与することが望まれ得る。
【0107】
SIMRA化合物は、任意に、1つまたは2つ以上のアレルゲンおよび/または抗原(自己または外来)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、コレラ毒素Bサブユニットなどの免疫原性タンパク質、または任意の他の免疫原性担体タンパク質と結合し得る。SIMRAはまた、限定されないが、TLRアゴニスト(例えば、TLR2アゴニストおよびTLR9アゴニスト)、フロイント不完全アジュバント、KLH、モノホスホリル脂質A(MPL)、ミョウバンおよび、QS−21を含むサポニン、イミキモドまたはそれらの組み合わせを含む他の化合物との組み合わせで用いることができる。
【0108】
本発明のこの面による方法は、免疫系のモデル研究に有用である。該方法はまた、ヒトまたは動物の疾病の予防または治療的処置に有用である。例えば、該方法は、小児および獣医のワクチンの適用に有用である。
【0109】
以下の例は、本発明の好ましい実施例をさらに示すことを意図し、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0110】

免疫調節オリゴリボヌクレオチド合成
免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、自動DNA/RNA合成でホスホルアミダイト化学を用いて化学的に合成される。TAC保護された(U以外の)2’−O−TBDMS RNAモノマー、A、G、CおよびUは、Sigma-Aldrichから購入した。7−デアザ−G、イノシンおよびロキソリビンモノマーは、ChemGenes Corporationから購入した。0.25Mの5−エチルチオ−1H−テトラゾール、PAC−無水物Cap AおよびCap Bは、Glen Researchから購入した。ジクロロメタン(DCM)中3%のトリクロロ酢酸(TCA)および5%の3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(Beaucage試薬)は自社製であった。
【0111】
免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、標準のRNA合成プロトコールを用いて、1〜2μMのスケールで合成した。
【0112】
開裂および塩基脱保護
免疫調節オリゴリボヌクレオチドを固体支持体から開裂し、溶液をさらに65℃に加熱し、エキソ環状アミンの保護基を除去した。得られた溶液をSpeedVacで完全に乾燥した。
【0113】
IE HPLC 精製
免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、イオン交換HPLCで精製した。
カラム:Dionex DNAPac 100 カラム(22X250)
カラムヒーター:ChromTech TL-105 HPLC カラムヒーター、温度は80℃に設定した。
バッファーA:20mM Tris−HCl、pH7.0、20%アセトニトリル
バッファーB:3.0M NaCl、20mM Tris−HCl、pH7.0、20%アセトニトリル
流速:10ml/min
勾配:
0−2min:0%B
2−11min:0%Bから35%B
11−41min:35%Bから90%B
41−45min:100%B
【0114】
粗製免疫調節オリゴリボヌクレオチド溶液をHPLCに注入した。上記の勾配を行い、フラクションを集めた。90%を超える所望の産物を含有する全てのフラクションを混合し、次いで、溶液をRotoVapによってほとんど乾燥し濃縮した。RNaseフリーの水を加え、終体積を10mlにした。
【0115】
C−18逆相脱塩
Watersから購入したCC-18 Sep-Pakカートリッジを最初に10mlのアセトニトリル、続いて10mlの0.5M酢酸ナトリウムで調整した。10mlの免疫調節オリゴリボヌクレオチド溶液を装填した。次いで、15mlの水を塩の洗浄に用いた。免疫調節オリゴリボヌクレオチドは、最終的に、1mlの水中50%アセトニトリルによって溶出した。
【0116】
溶液は、30分間SpeedVacに入れた。残りの溶液を0.2マイクロフィルターを介してろ過し、次いで凍結乾燥して乾燥した。次いで、溶液を水に再溶解し、所望の濃度にした。
最終溶液を0℃以下で貯蔵した。
【0117】
キャピラリー電気泳動
装置:Beckman 5010
キャピラリー:62cm ssDNAキャピラリー
サンプル調製:0.2ODのSIMRA化合物を200μlのRNaseフリーの水に溶解した。
注入:5KVで5秒間の動電注入
実行条件:30℃、14KVで50分間
イオン交換HPLC分析
カラム:Dionex DNAPacガードカラム(22X250)
カラムヒーター:ChromTech TL-105 HPLCカラムヒーター、温度は80℃に設定した。
バッファーA:100mM Tris−HCl、pH8.0、20%アセトニトリル
バッファーB:2.0M LiCl、100mM Tris−HCl、pH8.0、20%アセトニトリル
流速:2ml/min 勾配:
0−2min:0%B
2−10min:0%Bから100%B
10−15min:100%B
【0118】
PAGE分析
0.3ODの免疫調節オリゴリボヌクレオチドを20%ポリアクリルアミドゲルにロードし、4ワットの定電力でおよそ5時間で実行した。ゲルを短波長のUV光下で見た。
【0119】
ヒト細胞培養プロトコール
ヒトPBMCの単離
新鮮に取られた健康なボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll密度勾配遠心分離法(Histopaque-1077, Sigma)によって単離した。
【0120】
ヒトpDC単離
新鮮に取られた健康なボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll密度勾配遠心分離法(Histopaque-1077, Sigma)によって単離した。pDCは、製造者の指示に従い、BDCA4細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を用いてポジティブ選択によってPBMCから単離した。
【0121】
サイトカインELISA
ヒトPBMCを5x10細胞/mlを用いて48ウェルプレートに静置した。pDCを1X10細胞/mlを用いて96ウェルディッシュに静置した。DPBS(pH7.4;Mediatech)に溶解したSIMRAを細胞培養物に終濃度100.0μg/mlで添加した。次いで、細胞を37℃、24時間インキュベートし、懸濁液をluminex multiplexまたはELISAアッセイのために集めた。実験は三連のウェルで行った。IFN−α、IL−6またはTNF−αのレベルは、サンドウィッチELISAで測定した。サイトカイン抗体および標品を含む必要な試薬は、PharMingenから購入した。
【0122】
Luminexマルチプレックスアッセイを、Luminex 100装置上でBiosourceヒトマルチプレックスサイトカイン分析キットを使って行い、データを、Applied Cytometry Systems(Sacramento, CA)によって供給されたStarStationソフトウェアを使用して分析した。
【0123】
TLR発現HEK293細胞でのアッセイのためのプロトコール
HEK293/ヒトTLR7またはHEK293/ヒトTLR8細胞(Invivogen, San Diego, CA)を5%COインキュベーター中、250μl/ウェルの10%熱不活性化FBS添加DMEMで48ウェルプレートで培養した。
【0124】
レポーター遺伝子の形質転換
マウスTLR9またはヒトTLR3、7または8を安定的に発現するHEK293細胞(Invivogen, San Diego, CA)を5%COインキュベーター中、250μl/ウェルの10%熱不活性化FBS添加DMEMで48ウェルプレートで培養した。80%のコンフルエンスで、培養物は、培養培地中、4μl/mlのlipofectamine(Invitrogen, Carlsbad, CA)の存在下、400ng/mlのSEAP(ヒト胚性アルカリホスファターゼの分泌型)レポータープラスミド(pNifty2-Seap)(Invivogen)で一過性にトランスフェクトした。プラスミドDNAおよびlipofectamineを無血清培地で分けて希釈して、5分間室温でインキュベートした。インキュベーションの後、希釈したDNAおよびlipofectamineを混合し、混合物を20分間室温でインキュベートした。100ngのプラスミドDNAおよび1μlのlipofectamineを含むDNA/lipofectamine混合物の25μlのアリコートを細胞培養プレートの各ウェルに添加し、培養を4時間継続した。
【0125】
IMO−処置
トランスフェクションの後、培地をフレッシュな培養培地に置き換え、SIMRAを培養物に添加し、そして培養を18時間継続した。SIMRA処置の終わりに、30μlの培養上清を各処置から取り、製造者のプロトコール(Invivogen)に従ってSEAPアッセイに用いた。
【0126】
SEAPアッセイ
簡単に、培養上清をp−ニトロフィニルホスフェート基材でインキュベートし、発生した黄色の色を405nmでプレートリーダーで測定した。データをPBS対照に対するNF−κB活性の倍数増加として示す。(Putta MR et al, Nucleic Acids Res., 2006, 34:3231-8)
【0127】
【表13】

【0128】
【表14】

【0129】
【表15】

【0130】
【表16】

【0131】
【表17】

【0132】
【表18】

【0133】
【表19】

【0134】
【表20】

【0135】
【表21】

【0136】
【表22】

【0137】
【表23】

【0138】
【表24】

【0139】
【表25】

【0140】
マウスモデルにおけるインビボでのRNAベースのオリゴヌクレオチドの抗癌活性
BALB/cマウスを3つのマウスのグループに分けた。培養したCT26.CL25細胞を静注(i.v.)した(4x10細胞/マウス)。次いで、本発明によるRNAをベースとしたオリゴヌクレオチド(SIMRA化合物)または対照を50mg/kgの投与量でマウスに皮下投与(s.c.)した。最初の用量の投与から4時間後、血清はマウスから得られ、IL−12レベルをELISAで測定した。結果を図9に示す。マウスは、CT26.CL25細胞の静注後、24時間、72時間および144時間に皮下投与を受けた。14日目にマウスを屠し、肺を採取した。図10は、多数の腫瘍小塊が肺に見られた。
【0141】
非ヒト霊長動物におけるインビボでのRNAベースのオリゴヌクレオチドの免疫応答
カニクイザルを、1グループあたり4匹のサルで3グループに分けた(2つは生理食塩水のグループ)。次いで、本発明によるRNAをベースとしたオリゴヌクレオチド(SIMRA化合物)または対照を5mg/kgの投与量でサルに皮下投与(s.c.)した。他の用量(例えば、1mg/kg)もまた所望の効果を有し得る。投与の8、16および24時間後、サルから血清を採取し、免疫応答におけるサイトカインおよびケモカインのレベルおよび変化を測定した。結果を図12〜15に示す。
【0142】
同等物
前述の発明が、明確化および理解を目的として詳細に記載されている一方、当然のことながら、当業者であれば、本発明の開示を読むことにより、形態および詳細のさまざまな変形を、本発明の真の範囲および特許請求の範囲から逸脱することなく想到することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、本発明のSIMRA化合物のリニア合成の合成スキームである。DMTr=4,4’−ジメトキシトリチル;CE=シアノエチル。
【図2】図2は、本発明のSIMRA化合物のパラレル合成の合成スキームである。DMTr=4,4’−ジメトキシトリチル;CE=シアノエチル。
【図3】図3は、本発明のSIMRA化合物のリニア合成に好適な代表的なアルキルリンカーのグループを図示する。
【図4】図4は、本発明のSIMRA化合物のパラレル合成に好適な代表的な小分子リンカーのグループを図示する。
【図5】図5Aは、天然のホスホジエステルRNA20マーが1%ヒト血清で10分以内に完全に分解されたことを示す。 図5Bは、同一の配列のホスホロチオエート骨格修飾RNAが、同じ条件下で相対的に安定しており、完全なオリゴの約50%が10分の終わりに存在していることを示す。 図5Cは、3’末端を介して付着する2つのホスホロチオエート骨格修飾RNAは、もっと安定しており、完全なRNAの約78%またはそれ以上が10分後に残っており、ヌクレアーゼ分解に対する該分子の増大した安定性を示している。 図5Dは、3’−3’結合ホスホロチオエート骨格修飾RNAの5’末端でリンカーまたはキャップを付着していることが、5’結合またはキャップのないRNAのものと比較して、安定性を適度に増大し、大部分の分解が3’末端から生じていることを示している。
【図5E】図5Eは、付加的なホスホロチオエート骨格を修飾した本発明の免疫調節化合物の安定性を示す。
【0144】
【図6】図6は、本発明のSIMRA化合物の皮下投与の2時間後のC57BL/6マウスからの血清においてELISAで測定したIL−12のレベルを図示し、SIMRA化合物(例えば、配列番号11)がインビボでIL−12の分泌を誘導できることを示している。
【図7】図7は、100mg/kgの用量の本発明のSIMRA化合物を投与したマウスからの血清におけるサイトカインプロフィールを図示し、SIMRA化合物(例えば、配列番号11)がインビボ投与に続くサイトカインの産生を誘導することを示す。
【図8A】図8Aおよび図8Bは、本発明のSIMRA化合物で処置したヒトPBMCからのサイトカイン/ケモカインプロフィールを図示し、SIMRA化合物(例えば、配列番号11)がヒトPBMCにおいてサイトカインの分泌を誘導することを示す。
【図8B】図8Aおよび図8Bは、本発明のSIMRA化合物で処置したヒトPBMCからのサイトカイン/ケモカインプロフィールを図示し、SIMRA化合物(例えば、配列番号11)がヒトPBMCにおいてサイトカインの分泌を誘導することを示す。
【図9】図9は、本発明のSIMRA化合物の投与4時間後の注射したマウスの腫瘍細胞におけるELISAで測定した血清IL−12濃度を図示し、SIMRA化合物の腫瘍保持哺乳動物への投与に続くIL−12の増大した量を示す。
【図10】図10は、本発明のSIMRA化合物の投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍小塊の数を図示し、SIMRA化合物が、インビボでの投与に続いて、腫瘍小塊の数を低減したことを示す。
【0145】
【図11A】図11Aから図11Dは、本発明のSIMRA化合物で処理したヒトPBMCおよびpDCからのサイトカイン/ケモカインプロフィールを図示する。図11Aから図11Dは、SIMRA化合物が、ロキソリビンまたは7−デアザ−Gより強くはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することを示す。図11Aから図11Dは、さらに、SIMRA化合物の骨格、リンカー、結合および/またはキャップに対する修飾が、SIMRAが独特およびはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することをもたらすことを示す。
【図11B】図11Aから図11Dは、本発明のSIMRA化合物で処理したヒトPBMCおよびpDCからのサイトカイン/ケモカインプロフィールを図示する。図11Aから図11Dは、SIMRA化合物が、ロキソリビンまたは7−デアザ−Gより強くはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することを示す。図11Aから図11Dは、さらに、SIMRA化合物の骨格、リンカー、結合および/またはキャップに対する修飾が、SIMRAが独特およびはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することをもたらすことを示す。
【図11C】図11Aから図11Dは、本発明のSIMRA化合物で処理したヒトPBMCおよびpDCからのサイトカイン/ケモカインプロフィールを図示する。図11Aから図11Dは、SIMRA化合物が、ロキソリビンまたは7−デアザ−Gより強くはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することを示す。図11Aから図11Dは、さらに、SIMRA化合物の骨格、リンカー、結合および/またはキャップに対する修飾が、SIMRAが独特およびはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することをもたらすことを示す。
【図11D】図11Aから図11Dは、本発明のSIMRA化合物で処理したヒトPBMCおよびpDCからのサイトカイン/ケモカインプロフィールを図示する。図11Aから図11Dは、SIMRA化合物が、ロキソリビンまたは7−デアザ−Gより強くはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することを示す。図11Aから図11Dは、さらに、SIMRA化合物の骨格、リンカー、結合および/またはキャップに対する修飾が、SIMRAが独特およびはっきりしたサイトカイン/ケモカインプロフィールを産生することをもたらすことを示す。
【0146】
【図12】図12は、SIMRA化合物の投与24時間後、カニクイザルの血液プロフィールにおける変化を図示し、SIMRA化合物が選択した免疫剤棒の効果を誘導できることを示す。
【図13A】図13Aおよび図13Bは、SIMRA化合物の投与24時間後のELISAで測定したカニクイザルの血漿サイトカイン/ケモカイン濃度を図示し、SIMRA化合物(例えば、配列番号11および配列番号30)が、インビボでサイトカイン/ケモカインプロフィールに影響を与えることができることを示す。
【図13B】図13Aおよび図13Bは、SIMRA化合物の投与24時間後のELISAで測定したカニクイザルの血漿サイトカイン/ケモカイン濃度を図示し、SIMRA化合物(例えば、配列番号11および配列番号30)が、インビボでサイトカイン/ケモカインプロフィールに影響を与えることができることを示す。
【図14】図14は、0時間と比較した投与後24時間のカニクイザルのフローサイトメトリーで計測した制御性T細胞数、総T細胞数、単球数、NK細胞数およびB細胞数の変化を図示し、SIMRA化合物はインビボでの免疫応答を調節することにおいて効果的であることを示す。より具体的には、これらのデータは、SIMRA化合物が免疫細胞を選択する効果を誘導できることを示す。
【図15】図15は、0時間と比較した投与後24時間のカニクイザルのフローサイトメトリーで計測した免疫細胞の活性化マーカーCD69の変化を図示する。図15は、SIMRA化合物はインビボで種々の免疫細胞のポピュレーションを活性化するのに効果的であることを示す。より具体的には、これらのデータは、SIMRA化合物が免疫細胞を選択する効果を誘導できることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化免疫調節RNA(SIMRA)化合物を含む、TLR8、TLR7およびTLR8、またはTLR7に対するアゴニスト。
【請求項2】
SIMRAが、3’または5’付着またはこれらの組み合わせを介して結合するRNAベースのオリゴヌクレオチドの少なくとも2つを含む、請求項1に記載のアゴニスト。
【請求項3】
RNAベースのオリゴヌクレオチドが、3’末端または5’末端で互いに直接結合する、請求項2に記載のアゴニスト。
【請求項4】
RNAベースのオリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端が、非ヌクレオチドリンカーと結合する、請求項2に記載のアゴニスト。
【請求項5】
非ヌクレオチドリンカーが、アルキルリンカーまたはアミノリンカーであり、ここでアルキルまたはアミノシンカーは、選択的に、分枝または非分枝、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和、キラル、アキラルまたはラセミ混合物であってもよい、請求項4に記載のアゴニスト。
【請求項6】
アルキルリンカーが、約2〜約18個の炭素原子を有し得る、請求項5に記載のアゴニスト。
【請求項7】
アルキルリンカーが、約3〜約9個の炭素原子を有し得る、請求項5に記載のアゴニスト。
【請求項8】
アルキルリンカーが、1,2,3−プロパントリオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)プロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,3,5−ヘキサントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、2−(ヒドロキシメチル)1,4−ブタンジオール、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)フェノール、1,3,5−トリ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ジ(ヒドロキシエトキシ)−2−ヒドロキシ−プロパン、1,3−ジ(ヒドロキシプロポキシ)−2−ヒドロキシ−プロパン、D−ガラクタール、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌル酸または1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンから選択される、請求項5に記載のアゴニスト。
【請求項9】
RNAベースのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つが、修飾オリゴリボヌクレオチドを含む、請求項1に記載のアゴニスト。
【請求項10】
修飾オリゴリボヌクレオチドが、7−デアザ−G、アラ−G、6−チオ−G、イノシン、イソ−G、ロキソリビン、TOG(7−チオ−8−オキソ)−G、8−ブロモ−G、8−ヒドロキシ−G、5−アミノホルマイシンB、オキソホルマイシン、7−メチル−G、9−p−クロロフェニル−8−アザ−G、9−フェニル−G、9−ヘキシル−グアニン、7−デアザ−9−ベンジル−G、6−クロロ−7−デアザグアニン、6−メトキシ−7−デアザグアニン、8−アザ−7−デアザ−G(PPG)、2−(ジメチルアミノ)グアノシン、7−メチル−6−チオグアノシン、8−ベンジルオキシグアノシン、9−デアザグアノシン、9−ベンジル−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)アデニン、2−アミノ−N2−O−、メチルアデノシン、8−アザ−7−デアザ−A、7−デアザ−A、ビダラビン、2−アミノアデノシン、N1−メチルアデノシン、8−アザアデノシン、5−ヨードツベルサイジン、1−(B−D−リボフラノシル)−2−オキソ−7−デアザ−8−メチル−プリンおよび4−チオ−Uまたはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載のアゴニスト。
【請求項11】
RNAベースの化合物が、さらに5’キャップを含む、請求項1〜10のいずれかに記載のアゴニスト。
【請求項12】
5’キャップが、非ヌクレオチドリンカーである、請求項11に記載のアゴニスト。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のアゴニストおよび薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
脊椎動物において免疫応答を惹起する方法であって、該脊椎動物に薬学的に有効な量の請求項1〜10のいずれかに記載のSIMRA化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性障害、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原によって引き起こされた疾病を有する脊椎動物を治療的に処置する方法であって、かかる方法が、薬学的に有効な量の請求項1〜10のいずれかに記載のSIMRA化合物を患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
さらに、1または2以上の化学療法化合物を投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、標的治療剤を投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
さらに、抗体を投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
さらに、DNAワクチンを投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
さらに、ワクチンを投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
さらに、抗原を投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
脊椎動物における癌、自己免疫疾患、気道炎症、炎症性障害、感染症、皮膚病、アレルギー、喘息または病原によって引き起こされた疾病を予防する方法であって、かかる方法が、薬学的に有効な量の請求項1〜10のいずれかに記載のSIMRA化合物を脊椎動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
さらに、1または2以上の化学療法化合物を投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
さらに、標的治療剤を投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
さらに、抗体を投与することを含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−533348(P2009−533348A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504348(P2009−504348)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/008739
【国際公開番号】WO2007/117686
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(398032717)イデラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】Idera Pharmaceuticals, Inc.
【Fターム(参考)】