説明

Ti粒又はTi合金粒の製造方法並びに金属Ti又はTi合金の製造方法及び装置

【課題】溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒の製造方法、並びにこの製造方法を適用した金属Ti又はTi合金の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒同士を接触させることにより造粒し、又は更に濃縮する。造粒には、浴の攪拌、邪魔板の設置などが有効であり、濃縮には、液体サイクロン、濾過分離などが効果的である。金属Ti又はTi合金の製造方法は、CaCl2を含み且つCaが溶解した溶融塩中にTiCl4を含む金属塩化物を連続的に供給してTi粒又はTi合金粒を生成させる還元工程と、生成したTi粒又はTi合金粒を造粒する工程と、分離する工程と、分離後のTi粒又はTi合金粒を連続的に溶解して金属Ti又はTi合金のインゴットとする工程を含み、生産性が高く、安価な製造が可能である。この製造方法は、本発明の製造装置により容易に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒を造粒することを特徴とするTi粒又はTi合金粒の製造方法、並びにこのTi粒又はTi合金粒の製造方法を適用した金属Ti又はTi合金の製造方法及びそれに用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属Tiの工業的な製法としては、TiCl4をMgにより還元するクロール法が一般的であり、高純度の製品を製造することが可能である。しかし、生成したTi粉が凝集した状態で沈降し、反応容器外へ回収することが困難であるため、操業をバッチ式で行わざるを得ない。また、TiCl4が反応容器内の溶融Mg液の液面に上方から液体状で供給され、溶融Mg液の液面近傍だけで反応が行われるので、TiCl4の利用効率の低下を回避し、反応に伴う局所的な発熱を避けるため、TiCl4の供給速度が制限される。その結果、製造コストが嵩み、製品価格が非常に高くなる。
【0003】
そのため、クロール法以外の金属Tiの製造方法に関して多くの研究開発がなされてきた。例えば、特許文献1には、反応容器内にCaCl2の溶融塩を保持し、その溶融塩中に上方から金属Ca粉末を供給して、溶融塩中にCaを溶け込ませると共に、下方からTiCl4ガスを供給して、CaCl2の溶融塩中で溶解CaとTiCl4を反応させる方法が記載されている。しかし、金属Caの粉末が極めて高価であり、加えて、反応性が強いCaは取り扱いが非常に難しく、この方法は工業的なTi製造法としては成立し得ない。
【0004】
そこで、本発明者らは、Ca還元による金属Tiの製造方法を工業的に確立するためには、TiCl4のCaによる還元が不可欠であり、還元反応で消費される溶融塩中のCaを経済的に補充する必要があると考え、溶融CaCl2の電気分解により生成するCaを利用すると共に、このCaを循環使用する方法、即ち「OYIK法(オーイック法)」を提案した(特許文献2、特許文献3参照)。特許文献2では、電気分解によりCaが生成、補充され、Caリッチとなった溶融CaCl2を反応容器に導入し、Ca還元によるTi粒の生成に使用する方法が記載され、特許文献3では、更に、陰極として合金電極(例えば、Mg−Ca合金電極)を用いることにより、電解に伴うバックリアクションを効果的に抑制する方法が示されている。
【0005】
これら特許文献2、3に記載された方法においては、いずれもTiCl4とCaとの反応により生成したTi粒又はTi合金粒を溶融塩から分離する工程が含まれている。即ち、溶融CaCl2の電気分解によるCaの生成と、このCaによるTiCl4の還元(Ti粒又はTi合金粒の生成)を連続して行うと同時に、生成したTi粒又はTi合金粒の溶融CaCl2からの分離を連続的に且つ速やかに行うことが、前記OYIK法により連続的に金属Tiを製造するに際し極めて重要である。
【0006】
OYIK法を適用したCa還元による金属Ti又はTi合金の製造プロセスでは、前記の分離の工程は重力を利用した沈降分離により行われる。Ca還元により生成した直後のTi粒はサブミクロンの微粒子であるが、生成時の熱(還元熱)で粒同士の結合が促進され合体するとともに、ブラウン運動によっても粒の凝集が進行するので、沈降分離が可能となる。
【0007】
しかし、このような粒同士の合体、凝集が起こるにしてもTi粒又はTi合金粒は非常に細かく、回収率が低下する。また、Ti粒又はTi合金粒は浴塩と混合した状態で生成し、しかもその濃度が低いため、例えば、Ti粒又はTi合金粒を溶解して液相とし、上層の浴塩を除去する溶解分離等の方法を使用すると、多量のエネルギーを要し、製造コストの上昇は避けられない。
【0008】
生成したTi粒の粒径を大きくできれば(この粒径を大きくする操作又は処理を、ここでは「造粒」と記す)、粒子は沈降しやすく、前述の問題の解決に向けた大きな改善につながると考えられる。しかしながら、そのような試みは、従来なされていない。
【0009】
造粒という操作は、古くから種々の目的で様々な方法により行われてきた。例えば、医薬の顆粒や錠剤、農薬や化学肥料などの粒状品を得るために、あるいは生産プロセスにおいて、ハンドリング性、焼結性などの良好なペレット、ブリケット等の造粒物を得るために、粉状物(微粒子)から種々の形状を持った成形物とする造粒操作が行われている。また、造粒方法としては、一般に、湿らせた粉状物を、回転パンや回転ドラムを用いた転動、攪拌、振動などの作用により凝集現象を利用して顆粒や粒状物とする方法、乾燥した(又は湿らせた)粉状物をロール間圧縮その他の機械的成形により粒状物等とする方法などが用いられている。
【0010】
しかし、これら造粒操作の目的、方法はいずれも粉状物(微粒子)を大気中で所定の形状の成形物とするもので、溶融塩のような液体中で微粒子を凝集させ、造粒するものではない。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4820339号明細書
【特許文献2】特開2005−133195号公報
【特許文献3】特開2005−133196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のとおり、本発明者らが提案した前記OYIK法では、生成したTi粒又はTi合金粒の浴塩からの分離を連続的に且つ速やかに行うことが極めて重要である。しかし、分離操作を行う前のTi粒又はTi合金粒は非常に細かく、回収率を高めることは困難で、生産速度が低下し製造コストが上昇する。
【0013】
また、Ti粒又はTi合金粒は浴塩と混合した状態で生成し、しかもその濃度が低い。そのため、前記の溶解分離により浴塩を除去する方法、あるいは水洗により浴塩を除去する方法などを使用すると、多量のエネルギーを要するので、製造コストの上昇は避けられない。
【0014】
更に、粉末状の金属Ti又はTi合金を製造する場合、得られる金属Ti、Ti合金のサイズが小さく、粒度、品質調整が難しいという問題もある。
【0015】
これらの問題は、生成したTi粒又はTi合金粒を溶融塩から分離する前に造粒し、粒子の沈降を促進して分離の効率を高めることにより解決することが可能と考えられる。
【0016】
本発明の目的は、溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒同士を当該溶融塩中で造粒してTi粒又はTi合金粒を製造する方法、並びにこのTi粒又はTi合金粒の製造方法をCa還元による金属Ti又はTi合金の製造プロセスにおいて生成Ti粒又はTi合金粒の溶融塩からの分離工程で適用し、生産性を向上させて、金属Ti又はTi合金を安価に製造する方法、及びその方法の実施に用いられる製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、溶融塩(溶融CaCl2)中でCa還元により生成したTi粒同士の当該溶融塩中での造粒について検討した。その結果、溶融CaCl2中にTiCl4を添加し、Ti粒が生成した時点における溶融塩の流れ(以下、溶融塩を「浴塩」又は「浴」ともいい、溶融塩の流れを「浴流れ」ともいう)の状態を粒同士の接触が起こりやすいように変えることにより、Ti粒同士を結合させ、浴塩中で造粒できることを見出した。浴流れを変えるには、浴を攪拌する、浴中に案内板(邪魔板)を設ける、などの方法が有効である。
【0018】
更に、このように造粒したTi粒が含まれる浴塩を例えば液体サイクロン等で濃縮し、Ti粒の濃度(含有率)を高め得ることを確認した。
【0019】
そして、この溶融塩中での造粒をCa還元による金属Ti又はTi合金の製造プロセスにおいて生成Ti粒又はTi合金粒の溶融塩からの分離工程で適用すれば、生産性を向上させて金属Ti又はTi合金を安価に製造することが可能となる。その場合、前記の濃縮を伴う造粒を適用することによって、生産性の向上効果は一層増大する。
【0020】
本発明はこれらの知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記(1)又は(2)のTi粒又はTi合金粒の製造方法、並びに(3)の金属Ti又はTi合金の製造方法及びその方法の実施に用いる(4)の製造装置にある。
【0021】
(1)溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒同士を接触させることにより造粒することを特徴とするTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【0022】
(2)前記(1)に記載の製造方法で造粒したTi粒又はTi合金粒を含む溶融塩中のTi粒又はTi合金粒を濃縮することを特徴とするTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【0023】
ここで、「溶融塩」とは、常温で固体の塩や酸化物を加熱融解して液体の状態にした物質、又はそれらの混合物をいう。例えば、溶融CaCl2のみからなる溶融塩、溶融CaCl2にCaF2等を加えた、CaCl2を含有する溶融塩などが挙げられる。
【0024】
また、ここでいう「接触させる」には、近づけふれさせるという本来の意味に加え、衝突させることも含まれる。
【0025】
前記(1)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、粒同士の接触による造粒を、浴流れを変えることにより行うこととすれば、造粒を著しく促進させることが可能である。
【0026】
「浴流れを変える」とは、Ti粒又はTi合金粒が生成した時点における浴塩の流れの状態(ここでは、静止状態も含む)を変化させることを意味する。接触させることにより造粒するという目的から、浴塩の動きを粒同士の接触が起こりやすいように変えるということが前提である。例えば、Ti粒又はTi合金粒が生成した時点で浴が静止状態にある場合は、浴を流動状態に、また、浴流れが層流又はそれに近い状態である場合は、乱流状態等に変えることを意味する。
【0027】
この「浴流れを変える」ことは、浴を静止状態から流動状態にしたり、浴の流れを乱流にする他に、浴を攪拌する、浴中に案内板(邪魔板)を設ける、浴流れの速度を変化させる、又は浴流れを回転させることによっても行うことができる。
【0028】
前記(1)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、造粒後の粒の平均粒径を1μm以上とすれば、粒子の沈降を促進して分離の効率を高めることができる。また、造粒後の粒の平均粒径を100μm以上とすれば、粒子の分離効率が著しく向上するので、望ましい。なお、「平均粒径」とは、質量基準で表した粒径分布(積算分布)において、篩上又は篩下の粒子が50%となる粒径(D50)をいう。
【0029】
更に、前記平均粒径が1μm以上となるように造粒したTi粒又はTi合金粒の構成粒子の粒径が0.05μm以上10μm以下であれば、このTi粒又はTi合金粒は前記(1)又は(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法で製造したTi粒又はTi合金粒であるとみなすことができる。なお、ここでいう「構成粒子の粒径」とは、SEM(走査電子顕微鏡)で観察した画像において、粒の長径と短径を測定し、粒を楕円とみなしてその面積を求め、それと同面積の円の直径を求める操作を、サンプル数50個以上の粒について行って得られる前記円の直径の平均値である。
【0030】
前記(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、「造粒後のTi粒又はTi合金粒を含む溶融塩中のTi粒又はTi合金粒の濃縮」は、液体サイクロン、遠心分離、濾過分離、又は機械的圧縮により行うことができる。
【0031】
(3)溶融塩中でのCa還元による金属Ti又はTi合金の製造方法であって、CaCl2を含み且つCaが溶解した溶融塩中にTiCl4を含む金属塩化物を連続的に供給して溶融塩中にTi粒又はTi合金粒を生成させる還元工程と、生成直後のTi粒又はTi合金粒をブラウン運動により合体させた後、更に粒同士を接触させることにより造粒する造粒工程と、前記造粒後のTi粒又はTi合金粒を溶融塩から分離する分離工程と、前記分離後のTi粒又はTi合金粒を連続的に溶解して金属Ti又はTi合金のインゴットとする溶解工程を含む金属Ti又はTi合金の製造方法。
【0032】
前記(3)に記載の製造方法において、更に、造粒後のTi粒又はTi合金粒を濃縮する濃縮工程を含むこととすれば、分離の効率を一層高めることができる。
【0033】
(4)CaCl2を含み且つCaが溶解した溶融塩を保持し、前記溶融塩中に連続的に供給されるTiCl4を含む金属塩化物をCaと反応させてTi粒又はTi合金粒を生成させるための反応容器と、前記溶融塩中に生成されたTi粒又はTi合金粒をブラウン運動により合体させた後、更に粒同士を接触させて造粒する造粒手段と、前記造粒手段で造粒した後のTi粒又はTi合金粒を溶融塩から分離するための分離手段と、前記分離手段で分離した後のTi粒又はTi合金粒を連続的に溶解して金属Ti又はTi合金のインゴットとする溶解手段とを有する金属Ti又はTi合金の製造装置。
【0034】
前記(4)に記載の製造方法において、更に、造粒手段で造粒した後のTi粒又はTi合金粒を濃縮するための濃縮手段を有することとすれば、分離の効率を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法によれば、溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒を造粒し、粒子の沈降を促進して分離の効率を著しく高めることができる。造粒後に濃縮すれば、分離効率の向上効果を一層高めることができる。
【0036】
また、このTi粒又はTi合金粒の製造方法をCa還元による金属Ti又はTi合金の製造プロセスにおいて生成Ti粒又はTi合金粒の溶融塩からの分離工程で適用すれば、生産性を向上させて金属Ti又はTi合金を安価に製造することが可能である。その場合、前記の造粒した後濃縮するTi粒又はTi合金粒の製造方法を適用すれば、生産性の向上効果は一層増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
最初に、前記(1)又は(2)に記載の本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法について、溶融塩としてCaCl2を含有し且つCaが溶解している溶融塩を対象とする場合を想定して具体的に説明する。
【0038】
前記(1)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法は、溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒同士を接触させることにより造粒してTi粒又はTi合金粒を製造する方法である。
【0039】
Caが溶解したCaCl2含有溶融塩中にTiCl4を添加すると、TiCl4がCaにより還元されてTi粒が生成する。TiCl4を含む金属塩化物(V、Al、Cr等、Tiの合金成分となり得る金属の塩化物)を添加すると、これら金属塩化物もTiCl4の還元と同時にCaにより還元されるので、Ti合金粒が生成する。
【0040】
このように溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒は、サブミクロン(例えば、粒径150nm以下)の微細な粒子であるが、還元反応の際に生じる熱(還元熱)で合体する。更に、これら微細粒子は、溶融塩構成成分(分子)の粒子への衝突に起因するブラウン運動により粒同士が接触(衝突)し、凝集する。なお、凝集により粒径が増すに伴いブラウン運動は緩慢になるので、それ以上の粒径の増大は期待できない。
【0041】
溶融塩(浴)が静止状態又は緩やかな流動状態であれば、Ti粒又はTi合金粒の粒径の増大はブラウン運動による凝集で達せられる粒径(最大でも1〜3μm程度)にとどまるが、前記(1)に記載の本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法では、更に「造粒」という操作を加えて粒径の増大を図るのである。
【0042】
図1は、本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、Ti粒又はTi合金粒の生成から造粒を経て分離するまでの過程を模式的に示す図である。図中に付記した粒径は、途中段階における粒径の大まかな目安として示したものである。
【0043】
図1に示すように、生成したTi粒は、還元熱やブラウン運動により合体、凝集し、その後、凝集した各粒子が浴流れに伴い運動する間における衝突による合体(これを、「慣性力合体」という)が進行し、分離に必要な粒径(望ましくは、20〜100μm)まで造粒が行われる。特に、造粒過程においては、衝突した粒子間で浴塩が保有している熱による焼結が起こるので、慣性力合体が進行し易い。
【0044】
本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法で、Ti粒又はTi合金粒同士を接触させることにより造粒するのは、前記の還元熱による合体、ブラウン運動による衝突・凝集、及び慣性力による合体が生じやすい条件をつくり、特に造粒効果が大きい慣性力合体を進行させるためである。
【0045】
この浴塩中での造粒過程に影響を及ぼす要因(影響因子)とその制御性ついて以下に考察する。
【0046】
通常は、「造粒」といえば、顆粒その他の粒状品や、ペレット、ブリケット、その他特定の形態の造粒物をつくる操作を指すが、本発明でいう「造粒」とは、浴塩中で微細な粒子を合体(固着)させて粒径を増大させることを意味する。微細粒子を集合させて粒を粗大化するという点で両者間に差はないので、本発明でも「造粒」という用語を使用している。
【0047】
浴塩中での造粒は、単純化すると、
「造粒」=「粒子同士の固着」−「固着粒子の分離」
と表される。即ち、固着した粒子のうち、粒子が分離して崩壊した分を差し引いた残りが固着粒子として存続する。「固着粒子の分離」は主として固着粒子に作用する剪断力による崩壊に起因するものである。
【0048】
前記「粒子同士の固着」に影響を及ぼす因子として、粒子の凝集力と浴塩の顕熱による焼結作用とがある。ここでいう凝集力とは、主に、粒子間に作用するファンデルワールス力と粒子表面に形成される電気二重層に起因する力である。前者は引力として、後者は反発力として作用し、これらの力の総和が凝集力として発現する。なお、溶融塩中での造粒では、浴の濡れ性の影響も考慮する必要があるが、CaCl2を主体とする溶融塩の場合はその影響は無視できる。
【0049】
前記の焼結作用はCaCl2を含有する溶融塩中でのTi粒又はTi合金粒の造粒の場合、850℃以上で顕著になり、焼結効果が得られる。焼結効果は高温になるほど大きいが、あまり高温にすると多量のエネルギーが必要となり、設備の耐久性にも支障が生じるので、上限温度は1050℃とするのが望ましい。
【0050】
この凝集力と焼結作用は、「粒子同士の固着」、即ち「造粒」に対し相乗的に働くと考えられるが、単純化して表すと、下記(i)式のようになる。なお、(i)式中の(A)〜(D)は説明の便宜上付した符号である。
【0051】
「造粒」=(A)「ファンデルワールス力、電気二重層に起因する力による凝集力」
+(B)「粒子の衝突(接触)」
+(C)「衝突(接触)後の合体」
−(D)「剪断力による崩壊」 ・・・(i)
(i)式における(C)「衝突(接触)後の合体」は、主として浴塩の顕熱による焼結作用によるものである。これらの影響因子を制御することによって、融塩中でのTi粒又はTi合金粒の造粒における固着粒子径の増大、造粒速度の向上が可能となる。
【0052】
前記(i)式において、造粒過程に影響を及ぼす因子の制御性という観点からみた場合、(A)は、系が決まっているので(上記説明では、CaCl2を含有する溶融塩)、制御することは難しい。また、(C)は焼結作用で、溶融塩の温度とその中での造粒を行う時間との関数になるが、造粒時間をいくらか延長できる程度で、高い制御性は望めない。(D)は個々の粒子に作用する剪断力の大きさと個々の粒子の強度が関係するが、焼結作用が働く溶融塩中での造粒においてはそれ程大きな影響因子とは考えられない。
【0053】
結局、制御可能で、しかも効果が大きいと考えられるのは、(B)の「粒子の衝突(接触)」で、粒子同士の衝突(接触)の確率を高めることが造粒の進行(固着粒子径の増大、造粒速度の向上)に大きく寄与すると推測される。
【0054】
溶融塩(つまり、液相)中での粒子の衝突については、媒体の影響が大きく、理論的な考察は難しい。しかし、気固系のモデルにおける固体粒子の衝突については理論的な取り扱いがなされており、それを参考にすると、溶融塩中での造粒に影響を及ぼす主要な因子(造粒factor)としては、各粒子の相対速度、粒子密度(系内における粒子の存在割合)、滞留時間(造粒時間)及び衝突粒子径が考えられる。
【0055】
これら影響因子(造粒factor)のうち、各粒子の相対速度、粒子密度、滞留時間(造粒時間)を変化させて造粒テストを行った結果、これらいずれの因子も造粒を進行させる効果があることを確認した。
【0056】
前記(1)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、Ti粒又はTi合金粒同士の接触による造粒を、浴流れを変えることにより行うのが望ましい。浴流れを変えることにより、前記(B)の浴塩中における粒子の衝突(接触)の確率を高めることができるので、造粒を著しく促進させることが可能となる。
【0057】
浴流れを変えるための具体的な方法の一つとして、浴を攪拌する方法が挙げられる。
【0058】
通常、固液攪拌などに用いられる種々の形態の攪拌翼による攪拌方法が適用できる。これによって浴塩中のTi粒又はTi合金粒の衝突(接触)頻度が高まり、造粒が促進される。攪拌翼の形状、攪拌速度等、攪拌の条件は、造粒が好適に行われるように適宜選定すればよい。
【0059】
前記の浴の攪拌は、特定のミキサー用いることによっても行うことができる。本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法により得られるTi粒又はTi合金粒の利用目的によっては、このミキサーの適用が特に効果的である。
【0060】
図2は、スタティックミキサーにより浴を攪拌する方法の説明図で、(a)はスタティックミキサーの要部の構造、(b)はこのミキサーを用いた浴の攪拌状況をそれぞれ模式的に示す図である。
【0061】
スタティックミキサー1は、円筒状の管内に挿入して使用される。その要部は、図2(a)に示すように、流体を右方向へ回転させる右エレメント2と左方向へ回転させる左エレメント3をミキサー1の軸周りに互いに90°ずらした状態で順次接続させた構造を有している。
【0062】
この図2(a)に示した状態で管内に挿入されたスタティックミキサー1にTi又はTi合金の微細粒子を含む溶融塩を供給すると、該溶融塩は右エレメント2で手前側とその反対側(奥側と記す)に2分割される。前記手前側の溶融塩は右エレメント2内のねじれ面に沿って管の中央部から壁側へ右回転しながら奥側へ移行し、前記奥側の溶融塩は、同じく右回転しながら手前側へ移行する。続いて、溶融塩は左エレメント3で上下に2分割され、それぞれ左回転しながら移行し、上下位置が逆になる。次の右エレメント2で手前側と奥側に2分割され、以下、上記と同様の作用をうける。
【0063】
このように、Ti又はTi合金の微細粒子を含む溶融塩は、各エレメントを通過するごとに回転方向が変わるので、急激な反転作用により激しく攪拌され、造粒が著しく促進される。
【0064】
図2(b)は、このスタティックミキサー1をTi又はTi合金の微細粒子を含む溶融塩が通過する配管4の途中に取り付けたときの攪拌状況を示している。なお、この例では、スタティックミキサー1の出側に、造粒後の粒子を濃縮・分離するための液体サイクロン5が取り付けられており、スタティックミキサー1を通過して粒径が3〜100μm程度となったTi粒又はTi合金粒を含む溶融塩は、液体サイクロン5で処理される間に粒子の衝突(接触)が生じるため、さらに造粒が進行し、粒子全体の粒径が100μm程度となる。即ち、液体サイクロンは、後述するように造粒後の粒子を濃縮するために用いられるが、造粒機能も併せ備えている。
【0065】
浴流れを変えるには、浴塩が通過する配管内に案内板(邪魔板)を設ける方法も簡便で且つ有効である。邪魔板の形状や設置箇所を適切に選定することにより浴流れを変えて造粒を促進することができる。
【0066】
浴流れの速度を変化させることも浴流れを変えるのに有効である。例えば、配管内を通過する浴塩の速度を間欠的に速めたり、遅くしたりすることにより、流れは乱流状態となるので、粒子同士の衝突(接触)の確率が高められ、造粒が促進される。
【0067】
浴流れを変えるのに効果的な方法は、浴流れを乱流にすることである。そのためには様々な方法があり、前記の浴の攪拌、邪魔板の設置、浴流れ速度の変化などはいずれも乱流状態の流れを生じさせる。
【0068】
浴流れを回転させることも、浴流れを変えるのに効果的である。回転により引き起こされる乱流により粒子同士が激しく衝突するので、造粒が促進される。
【0069】
前記(1)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、造粒後の粒の平均粒径を1μm以上とすれば、粒子の沈降を促進して分離の効率を高めることができる。粒径が大きいほど分離し易いので、平均粒径を20μm以上とし、粒径範囲で20〜100μmとするのが望ましい。
【0070】
造粒後の粒の平均粒径を100μm以上とすれば、粒子の分離効率が著しく向上するので、一層望ましい。造粒後の粒径は、CaCl2を含有する溶融塩中でのTi粒又はTi合金粒の造粒の場合、通常は、平均粒径で100μm程度であるが、後に詳述する(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法を適用すれば、平均粒径を100μm以上とすることが可能である。
【0071】
前記の平均粒径が1μm以上となるように造粒したTi粒又はTi合金粒の構成粒子の粒径が0.05μm以上10μm以下であれば、以下に述べるように、このTi粒又はTi合金粒は前記(1)又は(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法で製造したTi粒又はTi合金粒であるとみなすことができる。
【0072】
前記(1)又は(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、溶融塩中で造粒が進行するには、Ti粒又はTi合金粒同士が接触し、合体することが必要である。即ち、造粒によって得られる造粒粒子は、合体する前のTi粒又はTi合金粒(これを、造粒粒子を構成する粒子という意味で、「構成粒子」という)同士が接触し、合体したもので、本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法で合体させ得る構成粒子の粒径は10μm程度以下である。この粒径を超える粒子は、それ自身が独立した造粒粒子として存在し易く、構成粒子にはなり難い。
【0073】
一方、粒径が小さい粒子を造粒させて(このとき、粒径が小さい粒子は造粒粒子中に構成粒子として存在することになる)粒径1μm以上にするには、接触(衝突)回数を短時間で極端に増加させる必要がある。本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法ではこのような衝突回数の極端な増加は期待できないので、0.05μm未満の粒子を造粒させ、造粒粒子中に0.05μm未満の構成粒子として存在させることは困難である。
【0074】
したがって、平均粒径が1μm以上となるように造粒したTi粒又はTi合金粒の構成粒子の粒径が0.05μm以上10μm以下であれば、このTi粒又はTi合金粒は前記(1)又は(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法で製造したTi粒又はTi合金粒であるとみなすことができる。なお、造粒の観点から、構成粒子の望ましい粒径範囲は0.15μm〜3.0μmであり、この程度の粒径のものを造粒すると、比較的容易に造粒を行える。
【0075】
前記(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法は、前記(1)に記載の製造方法で造粒したTi粒又はTi合金粒を濃縮するTi粒又はTi合金粒の製造方法である。
【0076】
濃縮することによって、前述した溶融塩中での造粒に影響を及ぼす主要な因子(造粒factor)としての粒子密度(系内における粒子の存在割合)を高めることができ、粒子同士の衝突(接触)の確率を高めて造粒を促進するとともに、造粒したTi粒又はTi合金粒の分離を容易にすることができる。
【0077】
前記(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法において、造粒後のTi粒又はTi合金粒の濃縮を、液体サイクロンにより行うのが望ましい。液体サイクロンは前述のように造粒機能も有しているので、他の濃縮手段等と併用することにより効果的な造粒、濃縮を行うことが可能である。
【0078】
造粒後のTi粒又はTi合金粒の濃縮は、遠心分離によっても行うことができる。遠心分離では、Ti粒又はTi合金粒を含む溶融塩を高速回転場に置いて、遠心力を加えることにより造粒後の粒子を濃縮、分離する。各粒子は分離器の外周へ向けて一様に移動するので、液体サイクロンを用いた場合のような造粒効果は期待できないが、効率の良い濃縮が行える。
【0079】
濾過分離により、造粒後のTi粒又はTi合金粒を濃縮することも有効である。造粒により粒子の平均粒径が増大しているので、目の細かい金網を用いることが可能であり、濾過分離を簡便に行える。また、他の濃縮手段と併用するなどして効果的な濃縮を行うことも可能である。
【0080】
図3は、液体サイクロンと濾過分離器を併用して造粒後のTi粒又はTi合金粒を濃縮する場合の装置の構成例を模式的に示す図である。液体サイクロンとしては前記図2(b)に示したものと同タイプのサイクロンを、濾過分離には金網を用いた濾過分離器を使用している。
【0081】
濾過分離器7は円筒状で、筒(管)の内壁にらせん状のひれ8が取り付けられ、更に、該内壁の内側近傍に目の細かい金網(図示せず)が張られている。濾過分離器7は、出側が入側に対して若干上向きに傾斜し、軸Cを中心に回転可能に構成されている。
【0082】
造粒後のTi粒又はTi合金粒を含有する溶融塩が液体サイクロン6に供給されると、粒子の衝突(接触)により更に粒の造粒が進行するとともに、溶融塩の一部が分離して流体出口6aから排出され、造粒後のTi粒又はTi合金粒は濃縮される。一方、濃縮後のTi粒又はTi合金粒は残りの溶融塩とともに固体出口6bから排出され、濾過分離器7に供給される。
【0083】
供給された濃縮後のTi粒又はTi合金粒を含有する溶融塩の殆どは、濾過分離器7で処理される間に金網を通過して濾過分離器7の入側へ移行し、排出され、金網上のTi粒又はTi合金粒は濾過分離器7の回転に伴いらせん状のひれ8により押し上げられ、出側から排出される。排出後のTi粒又はTi合金粒には付着溶融塩が同伴しているのみで、極めて効果的な濃縮を行える。
【0084】
機械的圧縮による濃縮も用い方によっては有効である。機械的に圧縮脱水(即ち、圧搾)するので、溶融塩を極力排除し、Ti粒又はTi合金粒のみを分離したい場合等においては効果を発揮する。
【0085】
次に、前記(3)に記載の金属Ti又はTi合金の製造方法、及び(4)に記載の製造装置について、図面を参照して説明する。
【0086】
図4は、前記(3)に記載のTi又はTi合金の製造方法を実施する際に用いられる装置((4)に記載の装置)の概略構成例を示す図である。
【0087】
なお、この装置は、基本的な構成はOYIK法に立脚し、更に、工業的規模で、効率よく、安定した操業を行い得る製造プロセスとして本発明者らが開発した方法を実施できる装置の一例である。
【0088】
図4に示すように、この装置は、CaCl2を含有し且つCaが溶解した溶融塩を保持し、この溶融塩中に供給されるTiCl4を前記Caと反応させてTi粒を生成させるための反応容器9と、前記溶融塩中に生成されたTi粒を造粒し、溶融塩から分離するための分離手段10と、分離後のTi粒を連続的に溶解して金属Tiのインゴットとする溶解手段11と、前記Ti粒が分離された後の溶融塩を電気分解してCaを生成させるための電解槽12と、電気分解により生成されたCaの濃度を一定とするための調整槽13と、前記分離手段10で分離され前記電解槽12へ送られる溶融塩中に溶解しているCaを除去、回収するためのCa濃縮除去装置14とを有している。なお、この装置は、分離手段10に造粒手段及び分離手段が含まれており、(4)に記載の装置が有する反応容器、造粒手段、分離手段、溶解手段の全てを備えている。
【0089】
前述した(1)または(2)に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法は、この装置の分離手段10を用いて行う分離工程に適用されており、前記図3に示した液体サイクロン6が造粒及び濃縮に、金網を用いた濾過分離器7が濃縮、分離に使用されている。
【0090】
図4に示した装置を使用して金属Tiを製造するには、先ず、電解槽12から調整槽13を介して連続的に供給される溶融塩を、反応容器9内に保持し、その溶融塩中のCaに、TiCl4供給口15から供給したTiCl4を反応させ、前記溶融塩中にTi粒を生成させる(還元工程)。
【0091】
前記還元工程で溶融塩中に生成した微細なTi粒は、分離工程で前記の液体サイクロン6により造粒が行われ、同時に溶融塩の一部が上方へ分離され、濃縮される。造粒後のTi粒は液体サイクロン6の下方から残りの溶融塩とともに排出される。排出されたTi粒は、濾過分離器7で溶融塩が除去され、濃縮、分離される。
【0092】
分離後のTi粒は、分離槽23内でプラズマトーチ24から照射されるプラズマにより連続的に加熱溶融され、鋳型25に流し込まれ、Tiインゴット26となる。
【0093】
分離工程において、液体サイクロン6で分離された溶融塩、濾過分離器7で除去された溶融塩、及びプラズマトーチ24による加熱溶融により上層として分離された溶融塩は、それぞれ経路La、Lb、Lcを経てCa濃縮除去装置14を用いて行うCa回収工程へ送られる。Ca濃縮除去装置14は、溶融塩が隔壁16によりCa濃縮領域17とCa除去領域18に隔てられた状態で保持され、その上に保持された溶融Mg−Ca合金電極19を利用して溶融塩を電解することにより溶融塩中のCaを除去し、又は高濃度化する機能を有している。
【0094】
Ca回収工程で電解に悪影響を及ぼすCaが除去、回収された溶融塩は電解工程へ送られ、電気分解されてCaが生成され、溶融塩のCa濃度が高められる。なお、電解槽12は、溶融塩を保持する円筒状の電解槽容器12aと、同じく円筒形状の陽極20及び円柱状の陰極21を、隔膜22を隔てて有しており、電解槽12の下端から陽極20と陰極21の間に連続的に供給された溶融塩を電気分解して、Caが濃化した溶融塩を抜き出すことができるように構成されている。
【0095】
電解工程で電気分解により生成されたCaは、溶融塩とともに、Ca供給源を有する調整槽13へ導入され、溶融塩のCa濃度が一定とされた後、前記反応容器9へ投入され、金属Tiの製造が連続的に行われる。
【0096】
このように、図4に例示した装置では、造粒手段として液体サイクロン6が、また、濃縮、分離手段として金網を用いた濾過分離器7が使用され、Ti粒の造粒と、濃縮及び分離が行われる。
【0097】
従来は、溶融塩中で生成したTi粒を造粒し、あるいは更に濃縮するという技術は開発されておらず、そのため、前述のように、分離操作を行う前のTi粒は非常に細かく、回収率を高めることが困難で、生産速度が低下し製造コストが上昇するという問題があった。
【0098】
これに対し、前記(3)に記載の製造方法によれば、金属Tiの分離・回収を効率よく行えるので、生産性を向上させて金属Tiを安価に製造することができる。また、この製造方法は、前記(4)に記載の製造装置により容易に実施することができる。
【0099】
なお、前記図4に例示した装置では、生成したTi粒を液体サイクロンで造粒し、更に濾過分離器7で濃縮、分離する。即ち、前述した(2)に記載の造粒したTi粒又はTi合金粒の濃縮を伴うTi粒又はTi合金粒の製造方法を実施する装置を組み込んだ製造装置であるが、前記(1)のTi粒又はTi合金粒の製造方法を実施する装置のみを適用した場合でも、Ti粒の分離効率が向上するので、生産性の向上効果が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法は、溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒同士を接触させ、又は、更にこれを濃縮する方法で、粒子の沈降を促進して分離の効率を著しく高めることができる。造粒後の濃縮によりTi粒又はTi合金粒の分離効率の向上効果を一層高めることができる。
【0101】
また、このTi粒又はTi合金粒の製造方法をCa還元による金属Ti又はTi合金の製造プロセスにおいて生成Ti粒又はTi合金粒の溶融塩からの分離工程で適用すれば、生産性を向上させて金属Ti又はTi合金を安価に製造することが可能である。
【0102】
したがって、本発明のTi粒又はTi合金粒の製造方法、並びに金属Ti又はTi合金の製造方法及び装置は、Ca還元による金属Ti又はTi合金の製造において有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】Ca還元により生成するTi粒又はTi合金粒の生成から造粒を経て分離するまでの過程を模式的に示す図である。
【図2】スタティックミキサーによりTi粒又はTi合金粒を含有する溶融塩を攪拌する方法の説明図で、(a)はスタティックミキサーの要部の構造、(b)はこのミキサーを用いた溶融塩の攪拌状況をそれぞれ模式的に示す図である。
【図3】液体サイクロンと濾過分離器を併用してTi粒又はTi合金粒を濃縮する場合の装置の構成例を模式的に示す図である。
【図4】本発明のTi又はTi合金の製造方法の実施に用いられる装置の概略構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1:スタティックミキサー
2:右エレメント
3:左エレメント
4:配管
5、6:液体サイクロン
6a:流体出口
6b:固体出口
7:濾過分離器
8:ひれ
9:反応容器
10:分離手段
11:溶解手段
12:電解槽
12a:電解槽容器
13:調整槽
14:Ca濃縮除去装置
15:TiCl4供給口
16:隔壁
17:Ca濃縮領域
18:Ca除去領域
19:溶融Mg−Ca合金電極
20:陽極
21:陰極
22:隔膜
23:分離槽
24:プラズマトーチ
25:鋳型
26:インゴット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩中で還元により生成したTi粒又はTi合金粒同士を接触させることにより造粒することを特徴とするTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項2】
更に、前記造粒したTi粒又はTi合金粒を含む溶融塩中のTi粒又はTi合金粒を濃縮することを特徴とする請求項1に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項3】
前記粒同士の接触による造粒を、浴流れを変えることにより行うことを特徴とする請求項1に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項4】
前記浴流れを変えるために浴を攪拌することを特徴とする請求項3に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項5】
前記浴流れを変えるために浴中に案内板を設けることを特徴とする請求項3に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項6】
前記浴流れを変えるために浴流れの速度を変化させることを特徴とする請求項3に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項7】
前記浴流れを変えるために浴流れを乱流にすることを特徴とする請求項3に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項8】
前記浴流れを変えるために浴流れを回転させることを特徴とする請求項3に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項9】
前記粒同士の接触による造粒に際し、造粒後の粒の平均粒径を1μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項10】
前記粒同士の接触による造粒に際し、造粒後の粒の平均粒径を100μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項11】
前記平均粒径が1μm以上となるように造粒したTi粒又はTi合金粒の構成粒子の粒径が0.05μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項9に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項12】
前記造粒したTi粒又はTi合金粒の濃縮を液体サイクロンにより行うことを特徴とする請求項2に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項13】
前記造粒したTi粒又はTi合金粒の濃縮を遠心分離により行うことを特徴とする請求項2に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項14】
前記造粒したTi粒又はTi合金粒の濃縮を濾過分離により行うことを特徴とする請求項2に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項15】
前記造粒したTi粒又はTi合金粒の濃縮を機械的圧縮により行うことを特徴とする請求項2に記載のTi粒又はTi合金粒の製造方法。
【請求項16】
溶融塩中でのCa還元による金属Ti又はTi合金の製造方法であって、
CaCl2を含み且つCaが溶解した溶融塩中にTiCl4を含む金属塩化物を連続的に供給して溶融塩中にTi粒又はTi合金粒を生成させる還元工程と、
生成直後のTi粒又はTi合金粒をブラウン運動により合体させた後、更に粒同士を接触させることにより造粒する造粒工程と、
前記造粒後のTi粒又はTi合金粒を溶融塩から分離する分離工程と、
前記分離後のTi粒又はTi合金粒を連続的に溶解して金属Ti又はTi合金のインゴットとする溶解工程を含むことを特徴とする金属Ti又はTi合金の製造方法。
【請求項17】
更に、前記造粒後のTi粒又はTi合金粒を濃縮する濃縮工程を含むことを特徴とする請求項16に記載の金属Ti又はTi合金の製造方法。
【請求項18】
CaCl2を含み且つCaが溶解した溶融塩を保持し、前記溶融塩中に連続的に供給されるTiCl4を含む金属塩化物をCaと反応させてTi粒又はTi合金粒を生成させるための反応容器と、
前記溶融塩中に生成されたTi粒又はTi合金粒をブラウン運動により合体させた後、更に粒同士を接触させて造粒する造粒手段と、
前記造粒手段で造粒した後のTi粒又はTi合金粒を溶融塩から分離するための分離手段と、
前記分離手段で分離した後のTi粒又はTi合金粒を連続的に溶解して金属Ti又はTi合金のインゴットとする溶解手段とを有することを特徴とする金属Ti又はTi合金の製造装置。
【請求項19】
更に、前記造粒手段で造粒した後のTi粒又はTi合金粒を濃縮するための濃縮手段を有することを特徴とする請求項18に記載の金属Ti又はTi合金の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−88513(P2008−88513A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271787(P2006−271787)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(397064944)株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ (133)
【Fターム(参考)】