TiO2及び他のセラミック材料の粒子の表面修飾方法
(a) TiO2のような基材上にリン酸チタンの薄層を生成させる工程、(b) 引き続き、強塩基で処理する工程、及び(c) 工程(b)の生成物を洗浄する工程を含むことを特徴とする、セラミック材料の表面修飾粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、二酸化チタン及びセラミック材料の表面修飾粒子の製造方法、該方法の1部及び該方法の生成物に関する。上記表面を、無機化合物の層を付与させることによって修飾する。無機化合物の層は、有機化合物又は無機化合物から選択するドーパントによってさらに処理し得る。上記方法は、上記二酸化チタン粒子又はセラミック材料が100nm未満の大きさを有する場合に、とりわけ有効である。そのような粒子は、ナノサイズ粒子と称する。
【0002】
(技術背景)
粒子のコーティーング又は表面修飾は、多くの場合、特定の性質を付与させるのに有用である。表面修飾を頻繁に受ける粒子生成物の例としては、アナターゼ形のTiO2である。アナターゼTiO2は強力な光触媒性である。この光触媒作用は、例えば、有機汚染物の除去において望ましくあり得るが、その作用が有機基体又は支持体の分解をもたらす場合、望ましくないであろう。表面修飾は、光触媒活性及び他の表面特性を調節することを可能にする。
【0003】
表面修飾をセラミック粒子に適用し、それら粒子に特定の特性を付与する多くの種々の方法が存在する。例えば、米国特許第6,440,383号は、超微細TiO2粒子の製造方法を開示している。該方法は、得られるTiO2粒子の諸性質を調節する添加剤の使用を開示している。これらの添加剤は、TiO2粒子上の表面修飾として出現し得る。例えば、リン酸又はリン酸塩添加剤を使用する場合、ピロリン酸チタン又は別のリン酸塩化合物のコーティーングを有する粒子が得られる。
【0004】
また、TiO2上の多層コーティーングのための方法も提案されている。例えば、米国特許第6,291,067号は、粒子をリン酸カルシウムの多孔質層とアニオン性表面活性剤でコーティーングする方法を開示している。その結果は、有機物質の分解に対する良好な光触媒活性を依然として示すと共に粒子を配置した支持体を保護している製品である。他に現存の方法は、二酸化チタン顔料をリン酸アルミニウムと反応させること(米国特許第5,785,748号)、或いはリン酸塩層間にシリカ(又はジルコニア)とアルミナの連続層を付加させること(米国特許第6,342,099号)を含む。
【0005】
(発明の開示)
今回、調整可能な諸性質を有する新規な製品を、米国特許第6,440383号に記載されている方法に従って製造したTiO2を出発物質とすることによって取得し得ることを見出した。また、同様なTiO2又は他のセラミック材料も出発物質として使用し得る。以下、明細書及び特許請求の範囲において使用するときのセラミック材料なる用語は、酸素と結合している1種以上の金属類を含む硬質で脆性のある耐熱性及び耐腐蝕性の化合物を称し、その製造方法は焼成又はカ焼工程を含む。この出発化合物は、有機化合物及び無機化合物からなる群から選択されたドーパントによる一連の表面修飾工程に供し得る。
【0006】
米国特許第6,440,383号に記載された方法によれば、超微細TiO2は、添加剤として導入したリン酸と一緒に製造されている。供給溶液中へのリン酸塩の添加は、カ焼工程において、ナノアナターゼ粒子の表面上に極めて薄いリン酸チタン層をその場で生成させる。
【0007】
米国特許第6,440,383号に従って製造したTiO2は、本発明に従う方法において、出発材料として使用し得る。このTiO2出発材料を、湿式粉砕工程後の水性スラリー中に分散させる。スラリーのpHを、KOHのような強塩基の添加によって上昇させる。上記強塩基は、上記リン酸チタン表面層と反応し、該表面層を水不溶性チタン酸塩からなる構造体へ転換させる。KOHの場合では、上記層は、概算組成K2TiO3を有するであろう。水溶性リン酸イオン(リン酸カリウム)は、上記溶液中に移動する。表面上にK2TiO3層を有する上記方法のこの段階の粒子は、乾燥させてカ焼し得る。
【0008】
K2TiO3層を有するTiO2粒子は、HCl又は他のチタン酸カリウムを分解し得る強酸を添加することによって酸性化し得る。この場合におけるKClのような水溶性カリウム塩は上記溶液中に逆行し、TiO2粒子表面は、概算式Ti(OH)4のゲル状水和物へ転換する。上記方法のこの段階の生成物は、乾燥させて、高表面積を有する酸化チタンとして使用し得る。また、上記乾燥生成物をさらにカ焼して、アナターゼ形の結晶質TiO2を製造してもよい。上記カ焼生成物は、活性化層、好ましくは金属層によりさらに被覆し得る。
【0009】
本発明の方法は、小さい粒子程相対的に大きな表面積を有し、即ち、表面に配置された分子の数が分子の総数と比較して多く、いずれの表面作用も増強されるので、粒子がナノサイズである場合にとりわけ有用である。
【0010】
本発明の別の局面によれば、酸性化及び洗浄後の生成物は、TiO2粒子上の外部ゲルに結合するドーパントによってさらに処理し得る。該ドーパントは、無機化合物及び有機化合物からなる群から選択し得る。無機化合物は、金属類、コロイド金属類、及び金属塩からなる群から選択し得る。金属類は、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sn、W、V、Y及びMnから選択し得る。金属がAg、Au、Cu、Zn又はPtである場合、金属は、好ましくは、コロイド形又は溶解した金属塩として添加する。上記ドーパントがコロイド金属である場合、生成物を乾燥させ、次いで、穏やかにカ焼して、金属/アナターゼ層をアナターゼ粒子上に形成させる。上記ドーパントがSn、W、V、Y又はMnのような熱的に不安定な金属塩である場合は、生成物をカ焼して、TiO2粒子上に酸化物の硬質シェルを形成させる。
【0011】
適切な有機化合物としては、限定するものではないが、カルボン酸類、カルボン酸塩類及びアルコール類のような水溶性有機化合物がある。
【0012】
上記方法は、米国特許第6,440,383号に記載された方法に従って製造したTiO2の使用を意図するが、任意の方法により製造し、リン酸チタンで修飾したTiO2基材も使用し得る。また、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は強酸及び強塩基に対し耐性である同様なセラミック化合物のような、他の化合物の粒子も、リン酸チタン沈着及び上記さらなる工程における基材として使用し得る。
【0013】
(詳細な説明)
以下、図1を参照するに、本発明に従う1つの態様の一般的な概略プロセス工程図を示している。特に図2を参照すると、図1において一般的に示した工程の初期部分が示されている。説明の簡素化のため、上記工程は、表面修飾TiO2粒子の製造を参照して記載している。しかしながら、上記工程は、リン酸チタン又はピロリン酸チタンの層でコーティーングしたアルミナ又はジルコニア粒子のようなセラミック材料で出発することを含み得ることも理解すべきである。
【0014】
表面上のリン酸塩層又はピロリン酸塩層を有するTiO2粒子は、1回以上の工程における任意の適切な方法によって製造し得る。リン酸塩層又はピロリン酸塩層を有するTiO2粒子を製造する1つの適切な工程は、米国特許第6,440,383号に記載されており、該方法において、化学添加剤はリン酸又はリン酸塩である;該米国特許の関連部分は、参照することによって本明細書に取り込まれる。この方法によって製造したピロリン酸チタン層は、2nm以下の厚さである。より厚めの層を製造しようとすれば、その層は、TiO2基材から分離するであろう。この材料を、基材と称する。
【0015】
上記基材は、KOH、LiOH、NaOH、CsOH及びRbOH又は任意の水酸化物のような、TiO2との反応により水不溶性チタン酸塩及び可溶性形のリン酸塩を生成する強塩基溶液中に浸漬することによってさらなる表面修飾に供する。
【0016】
例示を目的として、塩基がKOHである場合、上記反応は、下記の形であると考えられる。
TiP2O7 + 8KOH → K2TiO3 + 2K3PO4 + 4H2O
【0017】
TiO2基材上のリン酸塩層を、TiO2粒子の表面上の強塩基のチタン酸塩によって置換える。セラミック酸化物上の強塩基の作用によって形成されたそのような化合物は、ゲル状であることが一般に知られている。強塩基による同じ処理は、リン酸チタン又はピロリン酸チタンを先ず表面上に沈着させた場合のアルミナ又はジルコニアのような他のコア材料に対しても施し得る。
【0018】
上記ゲル状チタン酸塩層を有する粒子は、水又は上記ゲル状層が可溶性である極性溶媒で洗浄し、約80℃〜約250℃の温度で乾燥させて、アルカリ金属チタン酸塩によって表面修飾したTiO2コアを形成させ得る。乾燥工程の生成物は、約250℃〜約1000℃の温度でカ焼し得る。カ焼から得られる生成物は、表面上の濃密チタン酸塩層である。
【0019】
図3を参照すると、図1に示す一般的プロセスのさらなる工程が示されている。塩基による処理の生成物は、塩酸のような強酸による処理にさらに供し得る。強酸は、強塩基のチタン酸塩層を侵食して、水和水酸化チタンのゲル状層を残存させる。K+/HClの場合の反応は、下記のように示し得る。
K2TiO3 + 2HCl → 2KCl + Ti(OH)4
KClを水又は極性溶媒で洗い出した後、厚さ1〜20nmのチタン水和物層を粒子上に形成される。この工程の生成物は、約80℃〜約150℃の温度で乾燥させて乾燥チタン水和物を生成させ得る。乾燥生成物は、約300℃〜約800℃の温度でさらにカ焼し得る。カ焼は、上記水和物を無水TiO2結晶に形質転換させる。水和水を除去することにより、カ焼工程は、水和チタンのゲル状層を収縮させ、硬化させる。
【0020】
また、KClを洗浄した後、水又は極性溶媒を含む表面上のチタン水和物を有する粒子は、上記表面修飾方法の次の工程における中間体として使用し得る。
【0021】
図4を参照すると、上記表面処理方法におけるさらなる有力な工程が示されている。上記中間体を、望ましくは乾燥又はカ焼することなく、ドーパントによって処理する。ドーパントは、典型的には、基材表面上のゲル層に浸透し得る水溶性化合物である。有力なドーパントは、3つのカテゴリー、即ち、有機化合物、無機化合物及びコロイド類に分類し得る。例えば、ドーパントは、水溶性有機化合物、無機塩、とりわけ金属塩、又はコロイド金属又は複合体であり得る。
【0022】
有力な有機化合物は、例えば、水溶性アミノ酸類、グリセン(glycene)類及びシレン(silene)類であり得る。有力な無機化合物は、金属塩類、即ち、SnCl4、BaNO3及びAlCl3のような任意の水-又は酸溶解性塩である。有力なコロイド類としては、Ag及びPtのような金属類、又はコロイド状複合体がある。ドーパントは、溶液として又はコロイド状懸濁液として添加し得る。溶液中のドーパントの濃度を調整することにより、表面層中の最終ドーパント量及び層厚を調整し得る。
【0023】
ドーピングした材料は、最終製品として使用し得、或いは図5aに示すように、乾燥させ、さらに処理し得る。図5aを参照すると、乾燥チタン水和物中に固定されたドーパントは、調整された雰囲気下に乾燥及びカ焼することによって別の化合物に転化される。表面ドーピングにおいて使用した限られた熱安定性しか有していない化合物は、カ焼によって分解し得、他の化合物に転化し得る。上記表面修飾方法において使用する金属の酸化物は、通常に入手し得る。また、表面修飾層を、還元条件下にカ焼することによって金属層に転化することも可能である。
【0024】
乾燥は、ドーパントを含有するゲル層の収縮を生じさせる。多くの生成物は、この段階に由来し得る。例えば、Ti水和物は、コロイド金属、金属塩、有機化合物又は複合化合物によってコーティーングし得る。
【0025】
生成物は、さらにカ焼して、一般に、粒子表面上のアナターゼ又は酸化塩層上に乾燥塩表面修飾を形成させ得る。金属硝酸塩、塩化物、酢酸塩及び硫酸塩のような幾つかの塩類は、アナターゼ相転化点よりも低い温度で分解し、この目的に使用し得る。図5bは、酸化ジルコニウム層によって表面修飾したナノアナターゼ粒子の最終生成物の走査電子顕微鏡写真である。
【0026】
表面修飾したサンプルの特性決定
以下の方法を使用して表面修飾した生成物の特性を決定した。
【0027】
4-CP光分解
TiO2表面修飾サンプルの光触媒活性を測定するために、60mLの通気光触媒水性懸濁液(1g/L)中での0.1mMの4-クロロフェノールの消失速度を時間の関数としてモニターした。装置は、内壁を被覆するアルミニウムホイルを有するスチールシリンダーの中央に置いた2本の共軸石英管からなる。内側石英管(直径24mm、長さ300mm)に試験懸濁液(60ml)を充填し、磁力撹拌した。冷却用蒸留水を内側と外側の石英管の間に循環させ、20℃の一定温度に保った。単色UV線源(λ= 365nm)は、ガラスフィルター球体内に密閉された中圧水銀灯(RVU、125 W;Tesla Holesovice社、チェコ共和国)であった。装置を、シュウ酸第2鉄アクチノメーターで較正した:容量50〜70mlの照射溶液に入光する平均光度を、I0 = 4.9×10-5アインシュタインL-1s-1として測定した。照射懸濁液のプローブ(0.5mL)を適切な時間で採取した。固形光触媒(溶解分子種の吸収部分と一緒に)を、フィルター408 (多孔率0.45μm)を備えたミリポア(Millipore)シリンジアダプター(直径13nm)による濾過を使用して、液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析前に除去した。
【0028】
紫外線/可視光線/近赤外線拡散反射(UV/可視光線/近IR)
UV/可視光線/近IR拡散反射スペクトルを、積分球を備えたPerkin-Elmer Spectrophotometer Lambda 19において、2500〜250nmで測定した。粉末とその35%水性懸濁液の双方を1cmの分光セル内に入れ、標準としてのBaSO4プレートに対してスキャンした。定量評価を可能にするために、波長に対する反射の測定値をクベルカ・ムンク(Kubelka-Munk)単位対波数座標に変換した。シュースター・クベルカ・ムンク(Schuster-Kubelka-Munk)理論は、吸収(K)対拡散(S)係数の比をK/S = (1-Roo)2/2Rooとして与えており、式中、Rooは、サンプル及び標準(BaSO4)から反射した光の総強度の比として測定した反射である。液体クロマトグラフィー試験は、L-6200 Intelligent Pump、L-3000 Photo Diode Array Detector及びD-2500 Chromato-Integratorを備えたMerck装置において行なった。移動相メタノール/水(2:3(容量/容量))及びLiChrosphere 100RP-18 (5μm)を充填したMerckカラムLiChroCART 125-4を使用し、注入ループは20μLであり、流量1mL min-1及び検出波長280nmを適用した。
【0029】
電気化学試験
相応する表面修飾材料から作成した純TiO2フィルム電極を、1MのLiN(CF3SO2)2電解質溶液中でのサイクリック・ボルタメトリーによって試験した。Li+含有溶液中の暗電気化学特性は、ナノ結晶質アナターゼからの電極の構造及び形態を特性決定する有用な手段であり、痕跡量の電気化学応答性材料を測定し得る。電気化学測定は、GPES-4ソフトウェアで制御するAutolab Pgstat-20 (Ecochemie社)を使用して、1コンパートメント電池内で実施した。参照電極及び補助電極はLi金属由来であり、従って、電位は、Li/Li+ (1M)参照電極として示す。全てのサイクリック・ボルタメトリー試験において、最初の電位流れ方向は、(1)平衡電位、(2)下部頂点電位及び(3)上部頂点電位であった。LiN(CF3SO2)2 (3M社からのFluorad HQ 115)を130℃/1mPaで乾燥させた。炭酸エチレン(EC)及び1,2-ジメトキシエタン(DME)を4A分子篩(Union Carbide社)上で乾燥させた。電解質溶液の1MのLiN(CF3SO2)2+EC/DME(質量で1/1)は、カール・フィッシャー(Karl Fischer)滴定により測定したとき(Metrohm 684電量計)、10〜15ppmのH2Oを含有していた。全ての操作をグローブボックス内で実施した。
【0030】
太陽電池及び光電気化学測定
上記表面処理アナターゼから作成した感作電極を太陽電池として組立てた。試験電池は、反射用Pt対向電極を有する薄層サンドイッチタイプ太陽電池であった。対向電極は、2μm厚Ptミラーであり、SnO2(F)導電性ガラス上に、真空スパッタリングにより蒸着されていた。対向電極は、導電性ガラスシートによって支持されている上記染料コーティーングTiO2フィルムの上に直接置いた。両電極を一緒に堅く固定した。電解質の薄層を内部電極空間に毛管力によって付着させた。全ての試験で同じ電解質のガンマ-3を使用した。電解質ガンマ-3は、γ-ブチロラクトン媒体中のI-/I3-レドックスカップル系である。
【0031】
上記染料コーティーングTiO2フィルムを、導電性ガラス支持体を通して照射した。光源は、試験電池の表面で1000W/m2の光パワーを与えるように焦点付けした450Wのキセノンランプであった。ランプのスペクトル出力を、Schott KG-5日光フィルターを使用して、350〜750nmの波長領域に適合させた。これにより、励起スペクトルと真正太陽スペクトル間の不整合を2%未満に低下させた。種々の強度を中性ワイヤーメッシュ減衰器によって調節した。基本的電池特性を10%日光、50%日光及び100%日光に等価の3通りの異なる光度で測定した。印加電位及び電池電流を、Keithley model 2400デジタル源メーターを使用して測定した。これらの条件下での電池の電流-電位特性を、電池を外側にバイアスさせ生じた光電流を測定することによって測定した。太陽エネルギー変換効率、ηは、下記のとおり定義される:
η= Jpmax・Upmax/PL (1)
【0032】
Jpmaxは、光電流密度(A/m2での(突出電極領域))であり、Upmaxは電池電圧であり、PLは光度(W/m2での)である。PLは、窓の前面において測定した入射光パワーであり、窓、電解質溶液及び電極内での吸収及び反射損失については補正されていない。Jpmax及びUpmaxの実際の値は、電池の電流-電位特性から測定するが、その積Jpmax・Upmax(電池出力)は最高値である。そのように定義した最高出力の最高電流密度(短回路電流密度、JSC)と最高電池電圧(開放回路電圧、UOC)の積に対する比は、電池充填比、f を与える:
f = Jpmax・Upmax/JSC・UOC (2)
同様なデータ収集手順を使用して、単色光により、入射光子-電流変換効率(IPCE)を測定した。300Wキセノンランプからの光を、高処理量モノクロメータにより、試験下の太陽電池上に焦点付けた。
【0033】
一般に、材料毎に数回の光電気化学試験に通し、実験原因誤差を回避し、測定の再現性をチェックした。各々個々に作成して、特性(層厚、質量、多効率等)が同一である10本の電極を得た。1バッチからのこれら電極に対しての一連の並行測定における標準数値偏差は、7%よりも大きくなかった。
【0034】
光電気化学試験終了後、太陽電池を分解し、光電極をアセトニトリルで注意深く洗浄し、風乾させた。そのような電極を、2つのさらなる試験、即ち、(1)アルファ-ステッププロフィロメーターによる層厚のチェック及び(2)吸着染料N-719の量の測定に供した。吸着N-719は、下記のようにして測定した(M-1cm-1での):
【0035】
感作電極を3.00mLのリン酸緩衝液(pH7)中に浸漬し、溶液を約5分間撹拌してN-719の緩衝液中への脱着を完了させた。得られたN-719溶液を、1.00cm石英光学セル(Hellma社)内で分光光度法により分析した。N-719の濃度を、下記の消光係数を使用して算出した:
53 000 (λ= 308nm)、12 700 (λ= 372nm)、13 600 (λ= 500nm)
【0036】
上記消光係数は、N-719の新鮮標準10-5M溶液を使用して決定した。該溶液は、1.55mgの純粋固形N-719を125mLのリン酸緩衝液中に溶解させることによって調製した。(N-719の試験及び参照溶液は、各々の一連の分光光度測定の前に新しく調製することを推奨する。その理由は、光学密度が長期保存においては安定でないことである。28%の低下が、周囲条件でのN-719の10-5M溶液の27日間の保存後に見出された)。
【0037】
染料の表面被覆率、Γdは、各材料に対して与えられたBET表面積を使用することによって測定した。また、表面被覆率は、N-719の1分子当りの相対面積(AM)としても示した。Γd及びAM値の双方は、二通りの簡略化を想定する:(1) N2分子によって“観察”される表面積(BET測定における)はN-719分子によって“観察”される表面積と同一であるが、N-719分子は著しく大きく、従って、N-719分子は極めて狭い孔中には浸透し得ない、(2)粉末プレカーサーのBET表面積は、上記電極の物理的面積に等しい;換言すれば、ナノ粉末の焼結によって生じる表面積の損失は無視する。後者の補正は、とりわけ小ナノ結晶において考慮すべきである:47〜404m2/gを有するナノ結晶質TiO2粉末を電極層として焼結させた場合、約15〜37%の表面積損失があることを見出している。明らかに、上記の概算は、Γdにおける下限推定値とAMにおける上限推定値を提供する。
【0038】
特性決定結果
図7は、種々の表面積処理材料間の光触媒挙動の対比を示す。アナターゼコアは、全てのサンプルにおいて同じであるが、表面を種々の化合物によって処理している。この図においては、サンプルS1は、リン酸チタン又はピロリン酸チタンの薄層でコーティーングしたTiO2アナターゼである。この材料は、他のサンプルに相応する表面修飾に対する基礎として機能する。サンプルS2は、表面積修飾なしのチタン水和物である。サンプルS3、S4及びS5は、それぞれ、SnO2、BaSO4及びBaTiO3による表面積修飾を有するTiO2サンプルである。S6は、参照として提示した純粋ナノアナターゼ標準である。
【0039】
基材表面上に数ナノメートルの薄膜として存在している物質の化学式を特定することは困難である。XRDを使用して可能性ある相分離を測定したが、XRDは、粒子表面上の超薄層の化学組成を同定するための良好な特性決定方法ではない。幾つかのこれら材料の化学組成を、サイクリック・ボルタメトリーによる電気化学特性決定によって判定した。
【0040】
図8a及び図8bは、ナノアナターゼ基材をチタン酸リチウムで表面修飾する前後のナノアナターゼ基材のボルタモグラムを示している。グラフ上で、化合物Li4Ti5O12に相応する明白な電気化学応答が存在している。
【0041】
図9a〜9eは、有意の電気化学応答を示さない化合物による表面修飾を示している。
図10a〜10dは、4種の表面処理材料の入射光子-電流変化効率測定値を示している。グラッチェル電池(Graetxel Cell)設定におけるこれらの材料各々の性能は、極めて異なっており、生成物の全体的性質に対する修飾表面の影響を強調している。
【0042】
以下の例は、例示を意味し、本発明又は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0043】
例1
基材の製造例
方法1
120g/lのTiと400g/lのClを含有する溶液を、塩化チタンを塩酸溶液に注入することによって調製した。リン酸を、この溶液に0.04のリン/チタン質量比に相当する量で添加した。溶液をスプレードライヤーに2.25リットル/分の速度で噴霧ディスクにより供給した。また、空気により550℃へ希釈した天然ガスの燃焼からのガスを上記ディスク周辺に注入した。出口温度は250℃であり、総ガス流量は約800scfmであった。反応器排ガスをバッグフィルターに送ってTiO2生成物を収集した。収集生成物をさらに800℃で8時間カ焼し、次いで湿式粉砕により分散させた。該粉砕操作によって製造したスラリーを、表面修飾用のアナターゼ基材として使用した。図6aは、生成物の走査電気顕微鏡写真を示す。
【0044】
方法2
Al2O3粉末をリン酸チタンとHClとの溶液と混合し、スプレー乾燥させた。スプレードライヤーの流動及び温度条件は、方法1において示した条件と同じであった。スプレー乾燥工程の生成物は、900℃でカ焼し、微粉化した。光触媒活性を上述した方法により測定したところ、低いことが判明した。
【0045】
方法3
ZrO2粉末をリン酸チタンとHClとの溶液と混合し、方法1で説明した条件と同じ条件下でスプレー乾燥した。スプレー乾燥工程の生成物を900℃でカ焼し、湿式粉砕により分散させた。この基材の光触媒活性は、零に近かった。
【0046】
実施例2
例1の方法1により調製したナノアナターゼスラリー生成物を濃水酸化リチウム溶液と混合し、次いで十分に水洗し、150℃で乾燥させた。
この手順により得られた新たな表面の組成は、図8a及び8bに示しているように、サイクリック・ボルタメトリーによって、Li4Ti5O12であると判定した。このLi4Ti5O12表面修飾サンプルを、上述したグラッチェル電池設定において光化学的に特性決定した。アナターゼコアの半導体特性は、Li4Ti5O12コーティーングにより隠蔽されていた。エネルギー変換は、おそらくはアナターゼ表面上の非導電性チタン酸リチウム層を介しての電子移動故に、図10bに示しているように極めて貧弱であった。
例3
実施例1の方法1により製造したナノアナターゼスラリー生成物を濃水酸化カリウム溶液と混合し、次いで十分に洗浄し、150℃で乾燥させ、500℃でカ焼した。
この手順により得られた新たな表面の正確な化学組成は、未知である。概算式K2TiO3のチタン酸カリウムの硬質シェルが形成されたものと想定している。該カリウム表面修飾サンプルを、グラッチェル電池設定において光化学的に特性決定した。図10cは、ナノアナターゼの半導体特性がK2TiO3層によって完全に遮断されていたことを示している。
【0047】
例4
実施例1の方法1により製造したナノアナターゼ生成物をKOH中で浸出処理し、脱イオン水で洗浄し、次いでHCl中に浸漬し、pHが4〜5に達するまで再度脱イオン水で洗浄した。結果は、ゲル状コーティーングであり、これを150℃で乾燥させた。4-CPの分解速度は、未処理アナターゼTiO2で観察された速度と比較して、係数約2でもって低下していた(図7参照)。
【0048】
例5
実施例4の生成物を500℃でさらに2時間カ焼した。4-CPの分解速度は、実施例4と比較して上昇していた。また、この表面処理によるナノアナターゼは、グラッチェル電池の性能を有意に改良していた(図10a参照)。この生成物の電気化学的挙動は、図9bに示している(サンプルSL28として表示)。
【0049】
例6
実施例1の方法1により製造したナノサイズアナターゼをKOH中で浸出処理し、脱イオン水で洗浄し、次いでHCl溶液中に浸漬し、pHが1〜2に達するまで再度脱イオン水で洗浄した。この処理の生成物は、チタン水和物から形成されたゲル様表面を有する。この生成物を塩化スズでさらにドーピングし、スプレー乾燥させ、800℃でカ焼して、ナノサイズアナターゼから形成されたコア表面上にSnO2のシェルを形成させた(図6b参照)。
4-CPの分解速度は、実施例5と比較して(図7においてサンプルS3をサンプルS2と比較して)、上昇しており、この表面処理は、図10dに示すように、グラッチェル電池用途において改良された性能を示している。おそらく硬質シェル表面修飾として存在するSnO2は、サイクリック・ボルタモグラムにおいてさらなるピークを何ら生じさせなかった。従って、このコーティーングは、アナターゼコア内外へのLi+イオン移行に対して実質的に透過性であるようである。
【0050】
例7
実施例1の方法1により調製したナノサイズアナターゼスラリー生成物を高温濃水酸化バリウム溶液と混合し、十分に洗浄し、150℃で乾燥させ、800℃でカ焼した。この手順により得られた新たな表面の正確な化学組成は、未知である。概算式BaTiO3のチタン酸バリウムの硬質シェルが形成されたものと想定している。このサンプルの存在下での4-CPの反応速度定数は、図7においてサンプルS5で示している。4-CP消失は、未処理アナターゼTiO2の参照サンプルにおけるよりも遅かった。また、図11aと11bを比較することによって、4-CPの光分解中に生成する中間生成物の量は、チタン酸バリウム層の場合において、ナノアナターゼ基材の場合におけるよりも遥かに少ないことを理解し得る。
【0051】
例8
方法1により製造した生成物をKOH中で浸出処理し、脱イオン水中で洗浄し、次いでHCl中に浸漬し、pHが4〜5に達するまで再度脱イオン水中で洗浄した。結果は、実施例4及び6において述べたようなチタン水和物のゲル状コーティーングである。このコーティーングを、さらに、コロイド状白金で飽和させ、穏やかに乾燥させた。
【0052】
例9
例4において述べたようにして製造したゲル状表面を有する洗浄ナノアナターゼを、さらに、暗中でアスコルビン酸を飽和させ、穏やかに乾燥させた。乾燥生成物は、日光へ暴露させた後、有機化合物がアナターゼ表面上で光酸化したので、褐色に変色した。
【0053】
例10
例4において述べたようにして製造したゲル状表面を有する洗浄ナノアナターゼを、さらに、KH2PO4水溶液中でスラリー化し、スプレー乾燥させた。得られたスプレードライヤー排出物を、500℃で5時間カ焼した。生成物の走査電子顕微鏡写真は、約10%のKH2PO4がアナターゼ表面上の薄層として存在していることを示した。この層の厚さは、0.5nm未満と推定した。
【0054】
本発明の好ましい態様であると現在信じている態様を説明してきたが、当業者であれば、変更及び修正を、本発明の精神から逸脱することなくなし得るものと理解されたい。従って、本発明の真の範囲に属するそのような変更及び修正は、全て特許請求するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明に従う方法の1つの態様の一般な図式を示す。
【図2】図2は、強塩基がアナターゼ二酸化チタン上のピロリン酸チタン層と反応してチタン酸塩を形成する、本発明方法の1部の図式を示す。
【図3】図3は、HClが図2で示す工程において形成されたチタン酸塩と反応する、本発明に方法の1部の図式を示す。
【図4】図4は、図3に相応する粒子上のコーティーングをドーピング工程にさらに供する、本発明方法の1部の図式を示す。
【図5a】図5aは、図4に相応する粒子を乾燥及びカ焼工程にさらに供する、本発明方法の1部の図式を示す。
【図5b】図5bは、酸化ジルコニウム層によって修飾したナノアナターゼ粒子表面の最終生成物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6a】図6aは、20nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6b】図6bは、SnO2修飾表面を有する20nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6c】図6cは、40nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6d】図6dは、銀による表面修飾後の40nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図7】図7は、本発明の方法に従って製造した種々の表面処理材料を使用して有機物質を光触媒作用により分解したときの、これら材料の速度定数を示す。
【図8a】図8aは、表面修飾前の20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図8b】図8bは、有意の電気化学応答を示すチタン酸リチウム表面修飾後の20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9a】図9aは、注目すべき電気化学応答を示さない、SnO2表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9b】図9bは、注目すべき電気化学応答を示さない、アナターゼ表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9c】図9cは、注目すべき電気化学応答を示さない、Al2O3表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9d】図9dは、注目すべき電気化学応答を示さない、Y2O3表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9e】図9eは、注目すべき電気化学応答を示さない、チタン酸カリウム表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図10a】図10aは、活性化アナターゼ表面修飾に相応する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図10b】図10bは、チタン酸リチウム表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材に相応する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図10c】図10cは、チタン酸カリウム表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材に相当する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図10d】図10dは、二酸化スズ表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材に相応する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図11a】図11aは、チタン酸バリウム層によって修飾した20nmナノアナターゼ上での4-CP光分解の詳細を示す。
【図11b】図11bは、上記リン酸塩層による処理前に行なった、図11aに示した材料と同じ材料上での4-CP光分解の詳細を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、二酸化チタン及びセラミック材料の表面修飾粒子の製造方法、該方法の1部及び該方法の生成物に関する。上記表面を、無機化合物の層を付与させることによって修飾する。無機化合物の層は、有機化合物又は無機化合物から選択するドーパントによってさらに処理し得る。上記方法は、上記二酸化チタン粒子又はセラミック材料が100nm未満の大きさを有する場合に、とりわけ有効である。そのような粒子は、ナノサイズ粒子と称する。
【0002】
(技術背景)
粒子のコーティーング又は表面修飾は、多くの場合、特定の性質を付与させるのに有用である。表面修飾を頻繁に受ける粒子生成物の例としては、アナターゼ形のTiO2である。アナターゼTiO2は強力な光触媒性である。この光触媒作用は、例えば、有機汚染物の除去において望ましくあり得るが、その作用が有機基体又は支持体の分解をもたらす場合、望ましくないであろう。表面修飾は、光触媒活性及び他の表面特性を調節することを可能にする。
【0003】
表面修飾をセラミック粒子に適用し、それら粒子に特定の特性を付与する多くの種々の方法が存在する。例えば、米国特許第6,440,383号は、超微細TiO2粒子の製造方法を開示している。該方法は、得られるTiO2粒子の諸性質を調節する添加剤の使用を開示している。これらの添加剤は、TiO2粒子上の表面修飾として出現し得る。例えば、リン酸又はリン酸塩添加剤を使用する場合、ピロリン酸チタン又は別のリン酸塩化合物のコーティーングを有する粒子が得られる。
【0004】
また、TiO2上の多層コーティーングのための方法も提案されている。例えば、米国特許第6,291,067号は、粒子をリン酸カルシウムの多孔質層とアニオン性表面活性剤でコーティーングする方法を開示している。その結果は、有機物質の分解に対する良好な光触媒活性を依然として示すと共に粒子を配置した支持体を保護している製品である。他に現存の方法は、二酸化チタン顔料をリン酸アルミニウムと反応させること(米国特許第5,785,748号)、或いはリン酸塩層間にシリカ(又はジルコニア)とアルミナの連続層を付加させること(米国特許第6,342,099号)を含む。
【0005】
(発明の開示)
今回、調整可能な諸性質を有する新規な製品を、米国特許第6,440383号に記載されている方法に従って製造したTiO2を出発物質とすることによって取得し得ることを見出した。また、同様なTiO2又は他のセラミック材料も出発物質として使用し得る。以下、明細書及び特許請求の範囲において使用するときのセラミック材料なる用語は、酸素と結合している1種以上の金属類を含む硬質で脆性のある耐熱性及び耐腐蝕性の化合物を称し、その製造方法は焼成又はカ焼工程を含む。この出発化合物は、有機化合物及び無機化合物からなる群から選択されたドーパントによる一連の表面修飾工程に供し得る。
【0006】
米国特許第6,440,383号に記載された方法によれば、超微細TiO2は、添加剤として導入したリン酸と一緒に製造されている。供給溶液中へのリン酸塩の添加は、カ焼工程において、ナノアナターゼ粒子の表面上に極めて薄いリン酸チタン層をその場で生成させる。
【0007】
米国特許第6,440,383号に従って製造したTiO2は、本発明に従う方法において、出発材料として使用し得る。このTiO2出発材料を、湿式粉砕工程後の水性スラリー中に分散させる。スラリーのpHを、KOHのような強塩基の添加によって上昇させる。上記強塩基は、上記リン酸チタン表面層と反応し、該表面層を水不溶性チタン酸塩からなる構造体へ転換させる。KOHの場合では、上記層は、概算組成K2TiO3を有するであろう。水溶性リン酸イオン(リン酸カリウム)は、上記溶液中に移動する。表面上にK2TiO3層を有する上記方法のこの段階の粒子は、乾燥させてカ焼し得る。
【0008】
K2TiO3層を有するTiO2粒子は、HCl又は他のチタン酸カリウムを分解し得る強酸を添加することによって酸性化し得る。この場合におけるKClのような水溶性カリウム塩は上記溶液中に逆行し、TiO2粒子表面は、概算式Ti(OH)4のゲル状水和物へ転換する。上記方法のこの段階の生成物は、乾燥させて、高表面積を有する酸化チタンとして使用し得る。また、上記乾燥生成物をさらにカ焼して、アナターゼ形の結晶質TiO2を製造してもよい。上記カ焼生成物は、活性化層、好ましくは金属層によりさらに被覆し得る。
【0009】
本発明の方法は、小さい粒子程相対的に大きな表面積を有し、即ち、表面に配置された分子の数が分子の総数と比較して多く、いずれの表面作用も増強されるので、粒子がナノサイズである場合にとりわけ有用である。
【0010】
本発明の別の局面によれば、酸性化及び洗浄後の生成物は、TiO2粒子上の外部ゲルに結合するドーパントによってさらに処理し得る。該ドーパントは、無機化合物及び有機化合物からなる群から選択し得る。無機化合物は、金属類、コロイド金属類、及び金属塩からなる群から選択し得る。金属類は、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sn、W、V、Y及びMnから選択し得る。金属がAg、Au、Cu、Zn又はPtである場合、金属は、好ましくは、コロイド形又は溶解した金属塩として添加する。上記ドーパントがコロイド金属である場合、生成物を乾燥させ、次いで、穏やかにカ焼して、金属/アナターゼ層をアナターゼ粒子上に形成させる。上記ドーパントがSn、W、V、Y又はMnのような熱的に不安定な金属塩である場合は、生成物をカ焼して、TiO2粒子上に酸化物の硬質シェルを形成させる。
【0011】
適切な有機化合物としては、限定するものではないが、カルボン酸類、カルボン酸塩類及びアルコール類のような水溶性有機化合物がある。
【0012】
上記方法は、米国特許第6,440,383号に記載された方法に従って製造したTiO2の使用を意図するが、任意の方法により製造し、リン酸チタンで修飾したTiO2基材も使用し得る。また、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は強酸及び強塩基に対し耐性である同様なセラミック化合物のような、他の化合物の粒子も、リン酸チタン沈着及び上記さらなる工程における基材として使用し得る。
【0013】
(詳細な説明)
以下、図1を参照するに、本発明に従う1つの態様の一般的な概略プロセス工程図を示している。特に図2を参照すると、図1において一般的に示した工程の初期部分が示されている。説明の簡素化のため、上記工程は、表面修飾TiO2粒子の製造を参照して記載している。しかしながら、上記工程は、リン酸チタン又はピロリン酸チタンの層でコーティーングしたアルミナ又はジルコニア粒子のようなセラミック材料で出発することを含み得ることも理解すべきである。
【0014】
表面上のリン酸塩層又はピロリン酸塩層を有するTiO2粒子は、1回以上の工程における任意の適切な方法によって製造し得る。リン酸塩層又はピロリン酸塩層を有するTiO2粒子を製造する1つの適切な工程は、米国特許第6,440,383号に記載されており、該方法において、化学添加剤はリン酸又はリン酸塩である;該米国特許の関連部分は、参照することによって本明細書に取り込まれる。この方法によって製造したピロリン酸チタン層は、2nm以下の厚さである。より厚めの層を製造しようとすれば、その層は、TiO2基材から分離するであろう。この材料を、基材と称する。
【0015】
上記基材は、KOH、LiOH、NaOH、CsOH及びRbOH又は任意の水酸化物のような、TiO2との反応により水不溶性チタン酸塩及び可溶性形のリン酸塩を生成する強塩基溶液中に浸漬することによってさらなる表面修飾に供する。
【0016】
例示を目的として、塩基がKOHである場合、上記反応は、下記の形であると考えられる。
TiP2O7 + 8KOH → K2TiO3 + 2K3PO4 + 4H2O
【0017】
TiO2基材上のリン酸塩層を、TiO2粒子の表面上の強塩基のチタン酸塩によって置換える。セラミック酸化物上の強塩基の作用によって形成されたそのような化合物は、ゲル状であることが一般に知られている。強塩基による同じ処理は、リン酸チタン又はピロリン酸チタンを先ず表面上に沈着させた場合のアルミナ又はジルコニアのような他のコア材料に対しても施し得る。
【0018】
上記ゲル状チタン酸塩層を有する粒子は、水又は上記ゲル状層が可溶性である極性溶媒で洗浄し、約80℃〜約250℃の温度で乾燥させて、アルカリ金属チタン酸塩によって表面修飾したTiO2コアを形成させ得る。乾燥工程の生成物は、約250℃〜約1000℃の温度でカ焼し得る。カ焼から得られる生成物は、表面上の濃密チタン酸塩層である。
【0019】
図3を参照すると、図1に示す一般的プロセスのさらなる工程が示されている。塩基による処理の生成物は、塩酸のような強酸による処理にさらに供し得る。強酸は、強塩基のチタン酸塩層を侵食して、水和水酸化チタンのゲル状層を残存させる。K+/HClの場合の反応は、下記のように示し得る。
K2TiO3 + 2HCl → 2KCl + Ti(OH)4
KClを水又は極性溶媒で洗い出した後、厚さ1〜20nmのチタン水和物層を粒子上に形成される。この工程の生成物は、約80℃〜約150℃の温度で乾燥させて乾燥チタン水和物を生成させ得る。乾燥生成物は、約300℃〜約800℃の温度でさらにカ焼し得る。カ焼は、上記水和物を無水TiO2結晶に形質転換させる。水和水を除去することにより、カ焼工程は、水和チタンのゲル状層を収縮させ、硬化させる。
【0020】
また、KClを洗浄した後、水又は極性溶媒を含む表面上のチタン水和物を有する粒子は、上記表面修飾方法の次の工程における中間体として使用し得る。
【0021】
図4を参照すると、上記表面処理方法におけるさらなる有力な工程が示されている。上記中間体を、望ましくは乾燥又はカ焼することなく、ドーパントによって処理する。ドーパントは、典型的には、基材表面上のゲル層に浸透し得る水溶性化合物である。有力なドーパントは、3つのカテゴリー、即ち、有機化合物、無機化合物及びコロイド類に分類し得る。例えば、ドーパントは、水溶性有機化合物、無機塩、とりわけ金属塩、又はコロイド金属又は複合体であり得る。
【0022】
有力な有機化合物は、例えば、水溶性アミノ酸類、グリセン(glycene)類及びシレン(silene)類であり得る。有力な無機化合物は、金属塩類、即ち、SnCl4、BaNO3及びAlCl3のような任意の水-又は酸溶解性塩である。有力なコロイド類としては、Ag及びPtのような金属類、又はコロイド状複合体がある。ドーパントは、溶液として又はコロイド状懸濁液として添加し得る。溶液中のドーパントの濃度を調整することにより、表面層中の最終ドーパント量及び層厚を調整し得る。
【0023】
ドーピングした材料は、最終製品として使用し得、或いは図5aに示すように、乾燥させ、さらに処理し得る。図5aを参照すると、乾燥チタン水和物中に固定されたドーパントは、調整された雰囲気下に乾燥及びカ焼することによって別の化合物に転化される。表面ドーピングにおいて使用した限られた熱安定性しか有していない化合物は、カ焼によって分解し得、他の化合物に転化し得る。上記表面修飾方法において使用する金属の酸化物は、通常に入手し得る。また、表面修飾層を、還元条件下にカ焼することによって金属層に転化することも可能である。
【0024】
乾燥は、ドーパントを含有するゲル層の収縮を生じさせる。多くの生成物は、この段階に由来し得る。例えば、Ti水和物は、コロイド金属、金属塩、有機化合物又は複合化合物によってコーティーングし得る。
【0025】
生成物は、さらにカ焼して、一般に、粒子表面上のアナターゼ又は酸化塩層上に乾燥塩表面修飾を形成させ得る。金属硝酸塩、塩化物、酢酸塩及び硫酸塩のような幾つかの塩類は、アナターゼ相転化点よりも低い温度で分解し、この目的に使用し得る。図5bは、酸化ジルコニウム層によって表面修飾したナノアナターゼ粒子の最終生成物の走査電子顕微鏡写真である。
【0026】
表面修飾したサンプルの特性決定
以下の方法を使用して表面修飾した生成物の特性を決定した。
【0027】
4-CP光分解
TiO2表面修飾サンプルの光触媒活性を測定するために、60mLの通気光触媒水性懸濁液(1g/L)中での0.1mMの4-クロロフェノールの消失速度を時間の関数としてモニターした。装置は、内壁を被覆するアルミニウムホイルを有するスチールシリンダーの中央に置いた2本の共軸石英管からなる。内側石英管(直径24mm、長さ300mm)に試験懸濁液(60ml)を充填し、磁力撹拌した。冷却用蒸留水を内側と外側の石英管の間に循環させ、20℃の一定温度に保った。単色UV線源(λ= 365nm)は、ガラスフィルター球体内に密閉された中圧水銀灯(RVU、125 W;Tesla Holesovice社、チェコ共和国)であった。装置を、シュウ酸第2鉄アクチノメーターで較正した:容量50〜70mlの照射溶液に入光する平均光度を、I0 = 4.9×10-5アインシュタインL-1s-1として測定した。照射懸濁液のプローブ(0.5mL)を適切な時間で採取した。固形光触媒(溶解分子種の吸収部分と一緒に)を、フィルター408 (多孔率0.45μm)を備えたミリポア(Millipore)シリンジアダプター(直径13nm)による濾過を使用して、液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析前に除去した。
【0028】
紫外線/可視光線/近赤外線拡散反射(UV/可視光線/近IR)
UV/可視光線/近IR拡散反射スペクトルを、積分球を備えたPerkin-Elmer Spectrophotometer Lambda 19において、2500〜250nmで測定した。粉末とその35%水性懸濁液の双方を1cmの分光セル内に入れ、標準としてのBaSO4プレートに対してスキャンした。定量評価を可能にするために、波長に対する反射の測定値をクベルカ・ムンク(Kubelka-Munk)単位対波数座標に変換した。シュースター・クベルカ・ムンク(Schuster-Kubelka-Munk)理論は、吸収(K)対拡散(S)係数の比をK/S = (1-Roo)2/2Rooとして与えており、式中、Rooは、サンプル及び標準(BaSO4)から反射した光の総強度の比として測定した反射である。液体クロマトグラフィー試験は、L-6200 Intelligent Pump、L-3000 Photo Diode Array Detector及びD-2500 Chromato-Integratorを備えたMerck装置において行なった。移動相メタノール/水(2:3(容量/容量))及びLiChrosphere 100RP-18 (5μm)を充填したMerckカラムLiChroCART 125-4を使用し、注入ループは20μLであり、流量1mL min-1及び検出波長280nmを適用した。
【0029】
電気化学試験
相応する表面修飾材料から作成した純TiO2フィルム電極を、1MのLiN(CF3SO2)2電解質溶液中でのサイクリック・ボルタメトリーによって試験した。Li+含有溶液中の暗電気化学特性は、ナノ結晶質アナターゼからの電極の構造及び形態を特性決定する有用な手段であり、痕跡量の電気化学応答性材料を測定し得る。電気化学測定は、GPES-4ソフトウェアで制御するAutolab Pgstat-20 (Ecochemie社)を使用して、1コンパートメント電池内で実施した。参照電極及び補助電極はLi金属由来であり、従って、電位は、Li/Li+ (1M)参照電極として示す。全てのサイクリック・ボルタメトリー試験において、最初の電位流れ方向は、(1)平衡電位、(2)下部頂点電位及び(3)上部頂点電位であった。LiN(CF3SO2)2 (3M社からのFluorad HQ 115)を130℃/1mPaで乾燥させた。炭酸エチレン(EC)及び1,2-ジメトキシエタン(DME)を4A分子篩(Union Carbide社)上で乾燥させた。電解質溶液の1MのLiN(CF3SO2)2+EC/DME(質量で1/1)は、カール・フィッシャー(Karl Fischer)滴定により測定したとき(Metrohm 684電量計)、10〜15ppmのH2Oを含有していた。全ての操作をグローブボックス内で実施した。
【0030】
太陽電池及び光電気化学測定
上記表面処理アナターゼから作成した感作電極を太陽電池として組立てた。試験電池は、反射用Pt対向電極を有する薄層サンドイッチタイプ太陽電池であった。対向電極は、2μm厚Ptミラーであり、SnO2(F)導電性ガラス上に、真空スパッタリングにより蒸着されていた。対向電極は、導電性ガラスシートによって支持されている上記染料コーティーングTiO2フィルムの上に直接置いた。両電極を一緒に堅く固定した。電解質の薄層を内部電極空間に毛管力によって付着させた。全ての試験で同じ電解質のガンマ-3を使用した。電解質ガンマ-3は、γ-ブチロラクトン媒体中のI-/I3-レドックスカップル系である。
【0031】
上記染料コーティーングTiO2フィルムを、導電性ガラス支持体を通して照射した。光源は、試験電池の表面で1000W/m2の光パワーを与えるように焦点付けした450Wのキセノンランプであった。ランプのスペクトル出力を、Schott KG-5日光フィルターを使用して、350〜750nmの波長領域に適合させた。これにより、励起スペクトルと真正太陽スペクトル間の不整合を2%未満に低下させた。種々の強度を中性ワイヤーメッシュ減衰器によって調節した。基本的電池特性を10%日光、50%日光及び100%日光に等価の3通りの異なる光度で測定した。印加電位及び電池電流を、Keithley model 2400デジタル源メーターを使用して測定した。これらの条件下での電池の電流-電位特性を、電池を外側にバイアスさせ生じた光電流を測定することによって測定した。太陽エネルギー変換効率、ηは、下記のとおり定義される:
η= Jpmax・Upmax/PL (1)
【0032】
Jpmaxは、光電流密度(A/m2での(突出電極領域))であり、Upmaxは電池電圧であり、PLは光度(W/m2での)である。PLは、窓の前面において測定した入射光パワーであり、窓、電解質溶液及び電極内での吸収及び反射損失については補正されていない。Jpmax及びUpmaxの実際の値は、電池の電流-電位特性から測定するが、その積Jpmax・Upmax(電池出力)は最高値である。そのように定義した最高出力の最高電流密度(短回路電流密度、JSC)と最高電池電圧(開放回路電圧、UOC)の積に対する比は、電池充填比、f を与える:
f = Jpmax・Upmax/JSC・UOC (2)
同様なデータ収集手順を使用して、単色光により、入射光子-電流変換効率(IPCE)を測定した。300Wキセノンランプからの光を、高処理量モノクロメータにより、試験下の太陽電池上に焦点付けた。
【0033】
一般に、材料毎に数回の光電気化学試験に通し、実験原因誤差を回避し、測定の再現性をチェックした。各々個々に作成して、特性(層厚、質量、多効率等)が同一である10本の電極を得た。1バッチからのこれら電極に対しての一連の並行測定における標準数値偏差は、7%よりも大きくなかった。
【0034】
光電気化学試験終了後、太陽電池を分解し、光電極をアセトニトリルで注意深く洗浄し、風乾させた。そのような電極を、2つのさらなる試験、即ち、(1)アルファ-ステッププロフィロメーターによる層厚のチェック及び(2)吸着染料N-719の量の測定に供した。吸着N-719は、下記のようにして測定した(M-1cm-1での):
【0035】
感作電極を3.00mLのリン酸緩衝液(pH7)中に浸漬し、溶液を約5分間撹拌してN-719の緩衝液中への脱着を完了させた。得られたN-719溶液を、1.00cm石英光学セル(Hellma社)内で分光光度法により分析した。N-719の濃度を、下記の消光係数を使用して算出した:
53 000 (λ= 308nm)、12 700 (λ= 372nm)、13 600 (λ= 500nm)
【0036】
上記消光係数は、N-719の新鮮標準10-5M溶液を使用して決定した。該溶液は、1.55mgの純粋固形N-719を125mLのリン酸緩衝液中に溶解させることによって調製した。(N-719の試験及び参照溶液は、各々の一連の分光光度測定の前に新しく調製することを推奨する。その理由は、光学密度が長期保存においては安定でないことである。28%の低下が、周囲条件でのN-719の10-5M溶液の27日間の保存後に見出された)。
【0037】
染料の表面被覆率、Γdは、各材料に対して与えられたBET表面積を使用することによって測定した。また、表面被覆率は、N-719の1分子当りの相対面積(AM)としても示した。Γd及びAM値の双方は、二通りの簡略化を想定する:(1) N2分子によって“観察”される表面積(BET測定における)はN-719分子によって“観察”される表面積と同一であるが、N-719分子は著しく大きく、従って、N-719分子は極めて狭い孔中には浸透し得ない、(2)粉末プレカーサーのBET表面積は、上記電極の物理的面積に等しい;換言すれば、ナノ粉末の焼結によって生じる表面積の損失は無視する。後者の補正は、とりわけ小ナノ結晶において考慮すべきである:47〜404m2/gを有するナノ結晶質TiO2粉末を電極層として焼結させた場合、約15〜37%の表面積損失があることを見出している。明らかに、上記の概算は、Γdにおける下限推定値とAMにおける上限推定値を提供する。
【0038】
特性決定結果
図7は、種々の表面積処理材料間の光触媒挙動の対比を示す。アナターゼコアは、全てのサンプルにおいて同じであるが、表面を種々の化合物によって処理している。この図においては、サンプルS1は、リン酸チタン又はピロリン酸チタンの薄層でコーティーングしたTiO2アナターゼである。この材料は、他のサンプルに相応する表面修飾に対する基礎として機能する。サンプルS2は、表面積修飾なしのチタン水和物である。サンプルS3、S4及びS5は、それぞれ、SnO2、BaSO4及びBaTiO3による表面積修飾を有するTiO2サンプルである。S6は、参照として提示した純粋ナノアナターゼ標準である。
【0039】
基材表面上に数ナノメートルの薄膜として存在している物質の化学式を特定することは困難である。XRDを使用して可能性ある相分離を測定したが、XRDは、粒子表面上の超薄層の化学組成を同定するための良好な特性決定方法ではない。幾つかのこれら材料の化学組成を、サイクリック・ボルタメトリーによる電気化学特性決定によって判定した。
【0040】
図8a及び図8bは、ナノアナターゼ基材をチタン酸リチウムで表面修飾する前後のナノアナターゼ基材のボルタモグラムを示している。グラフ上で、化合物Li4Ti5O12に相応する明白な電気化学応答が存在している。
【0041】
図9a〜9eは、有意の電気化学応答を示さない化合物による表面修飾を示している。
図10a〜10dは、4種の表面処理材料の入射光子-電流変化効率測定値を示している。グラッチェル電池(Graetxel Cell)設定におけるこれらの材料各々の性能は、極めて異なっており、生成物の全体的性質に対する修飾表面の影響を強調している。
【0042】
以下の例は、例示を意味し、本発明又は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0043】
例1
基材の製造例
方法1
120g/lのTiと400g/lのClを含有する溶液を、塩化チタンを塩酸溶液に注入することによって調製した。リン酸を、この溶液に0.04のリン/チタン質量比に相当する量で添加した。溶液をスプレードライヤーに2.25リットル/分の速度で噴霧ディスクにより供給した。また、空気により550℃へ希釈した天然ガスの燃焼からのガスを上記ディスク周辺に注入した。出口温度は250℃であり、総ガス流量は約800scfmであった。反応器排ガスをバッグフィルターに送ってTiO2生成物を収集した。収集生成物をさらに800℃で8時間カ焼し、次いで湿式粉砕により分散させた。該粉砕操作によって製造したスラリーを、表面修飾用のアナターゼ基材として使用した。図6aは、生成物の走査電気顕微鏡写真を示す。
【0044】
方法2
Al2O3粉末をリン酸チタンとHClとの溶液と混合し、スプレー乾燥させた。スプレードライヤーの流動及び温度条件は、方法1において示した条件と同じであった。スプレー乾燥工程の生成物は、900℃でカ焼し、微粉化した。光触媒活性を上述した方法により測定したところ、低いことが判明した。
【0045】
方法3
ZrO2粉末をリン酸チタンとHClとの溶液と混合し、方法1で説明した条件と同じ条件下でスプレー乾燥した。スプレー乾燥工程の生成物を900℃でカ焼し、湿式粉砕により分散させた。この基材の光触媒活性は、零に近かった。
【0046】
実施例2
例1の方法1により調製したナノアナターゼスラリー生成物を濃水酸化リチウム溶液と混合し、次いで十分に水洗し、150℃で乾燥させた。
この手順により得られた新たな表面の組成は、図8a及び8bに示しているように、サイクリック・ボルタメトリーによって、Li4Ti5O12であると判定した。このLi4Ti5O12表面修飾サンプルを、上述したグラッチェル電池設定において光化学的に特性決定した。アナターゼコアの半導体特性は、Li4Ti5O12コーティーングにより隠蔽されていた。エネルギー変換は、おそらくはアナターゼ表面上の非導電性チタン酸リチウム層を介しての電子移動故に、図10bに示しているように極めて貧弱であった。
例3
実施例1の方法1により製造したナノアナターゼスラリー生成物を濃水酸化カリウム溶液と混合し、次いで十分に洗浄し、150℃で乾燥させ、500℃でカ焼した。
この手順により得られた新たな表面の正確な化学組成は、未知である。概算式K2TiO3のチタン酸カリウムの硬質シェルが形成されたものと想定している。該カリウム表面修飾サンプルを、グラッチェル電池設定において光化学的に特性決定した。図10cは、ナノアナターゼの半導体特性がK2TiO3層によって完全に遮断されていたことを示している。
【0047】
例4
実施例1の方法1により製造したナノアナターゼ生成物をKOH中で浸出処理し、脱イオン水で洗浄し、次いでHCl中に浸漬し、pHが4〜5に達するまで再度脱イオン水で洗浄した。結果は、ゲル状コーティーングであり、これを150℃で乾燥させた。4-CPの分解速度は、未処理アナターゼTiO2で観察された速度と比較して、係数約2でもって低下していた(図7参照)。
【0048】
例5
実施例4の生成物を500℃でさらに2時間カ焼した。4-CPの分解速度は、実施例4と比較して上昇していた。また、この表面処理によるナノアナターゼは、グラッチェル電池の性能を有意に改良していた(図10a参照)。この生成物の電気化学的挙動は、図9bに示している(サンプルSL28として表示)。
【0049】
例6
実施例1の方法1により製造したナノサイズアナターゼをKOH中で浸出処理し、脱イオン水で洗浄し、次いでHCl溶液中に浸漬し、pHが1〜2に達するまで再度脱イオン水で洗浄した。この処理の生成物は、チタン水和物から形成されたゲル様表面を有する。この生成物を塩化スズでさらにドーピングし、スプレー乾燥させ、800℃でカ焼して、ナノサイズアナターゼから形成されたコア表面上にSnO2のシェルを形成させた(図6b参照)。
4-CPの分解速度は、実施例5と比較して(図7においてサンプルS3をサンプルS2と比較して)、上昇しており、この表面処理は、図10dに示すように、グラッチェル電池用途において改良された性能を示している。おそらく硬質シェル表面修飾として存在するSnO2は、サイクリック・ボルタモグラムにおいてさらなるピークを何ら生じさせなかった。従って、このコーティーングは、アナターゼコア内外へのLi+イオン移行に対して実質的に透過性であるようである。
【0050】
例7
実施例1の方法1により調製したナノサイズアナターゼスラリー生成物を高温濃水酸化バリウム溶液と混合し、十分に洗浄し、150℃で乾燥させ、800℃でカ焼した。この手順により得られた新たな表面の正確な化学組成は、未知である。概算式BaTiO3のチタン酸バリウムの硬質シェルが形成されたものと想定している。このサンプルの存在下での4-CPの反応速度定数は、図7においてサンプルS5で示している。4-CP消失は、未処理アナターゼTiO2の参照サンプルにおけるよりも遅かった。また、図11aと11bを比較することによって、4-CPの光分解中に生成する中間生成物の量は、チタン酸バリウム層の場合において、ナノアナターゼ基材の場合におけるよりも遥かに少ないことを理解し得る。
【0051】
例8
方法1により製造した生成物をKOH中で浸出処理し、脱イオン水中で洗浄し、次いでHCl中に浸漬し、pHが4〜5に達するまで再度脱イオン水中で洗浄した。結果は、実施例4及び6において述べたようなチタン水和物のゲル状コーティーングである。このコーティーングを、さらに、コロイド状白金で飽和させ、穏やかに乾燥させた。
【0052】
例9
例4において述べたようにして製造したゲル状表面を有する洗浄ナノアナターゼを、さらに、暗中でアスコルビン酸を飽和させ、穏やかに乾燥させた。乾燥生成物は、日光へ暴露させた後、有機化合物がアナターゼ表面上で光酸化したので、褐色に変色した。
【0053】
例10
例4において述べたようにして製造したゲル状表面を有する洗浄ナノアナターゼを、さらに、KH2PO4水溶液中でスラリー化し、スプレー乾燥させた。得られたスプレードライヤー排出物を、500℃で5時間カ焼した。生成物の走査電子顕微鏡写真は、約10%のKH2PO4がアナターゼ表面上の薄層として存在していることを示した。この層の厚さは、0.5nm未満と推定した。
【0054】
本発明の好ましい態様であると現在信じている態様を説明してきたが、当業者であれば、変更及び修正を、本発明の精神から逸脱することなくなし得るものと理解されたい。従って、本発明の真の範囲に属するそのような変更及び修正は、全て特許請求するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明に従う方法の1つの態様の一般な図式を示す。
【図2】図2は、強塩基がアナターゼ二酸化チタン上のピロリン酸チタン層と反応してチタン酸塩を形成する、本発明方法の1部の図式を示す。
【図3】図3は、HClが図2で示す工程において形成されたチタン酸塩と反応する、本発明に方法の1部の図式を示す。
【図4】図4は、図3に相応する粒子上のコーティーングをドーピング工程にさらに供する、本発明方法の1部の図式を示す。
【図5a】図5aは、図4に相応する粒子を乾燥及びカ焼工程にさらに供する、本発明方法の1部の図式を示す。
【図5b】図5bは、酸化ジルコニウム層によって修飾したナノアナターゼ粒子表面の最終生成物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6a】図6aは、20nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6b】図6bは、SnO2修飾表面を有する20nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6c】図6cは、40nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6d】図6dは、銀による表面修飾後の40nmナノアナターゼ基材の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図7】図7は、本発明の方法に従って製造した種々の表面処理材料を使用して有機物質を光触媒作用により分解したときの、これら材料の速度定数を示す。
【図8a】図8aは、表面修飾前の20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図8b】図8bは、有意の電気化学応答を示すチタン酸リチウム表面修飾後の20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9a】図9aは、注目すべき電気化学応答を示さない、SnO2表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9b】図9bは、注目すべき電気化学応答を示さない、アナターゼ表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9c】図9cは、注目すべき電気化学応答を示さない、Al2O3表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9d】図9dは、注目すべき電気化学応答を示さない、Y2O3表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図9e】図9eは、注目すべき電気化学応答を示さない、チタン酸カリウム表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材のサイクリック・ボルタモグラムを示す。
【図10a】図10aは、活性化アナターゼ表面修飾に相応する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図10b】図10bは、チタン酸リチウム表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材に相応する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図10c】図10cは、チタン酸カリウム表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材に相当する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図10d】図10dは、二酸化スズ表面修飾を有する20nmナノアナターゼ基材に相応する、グラッチェル電池設定において使用した表面修飾サンプルの光化学性能を示す。
【図11a】図11aは、チタン酸バリウム層によって修飾した20nmナノアナターゼ上での4-CP光分解の詳細を示す。
【図11b】図11bは、上記リン酸塩層による処理前に行なった、図11aに示した材料と同じ材料上での4-CP光分解の詳細を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含むことを特徴とする、表面修飾セラミック材料の製造方法:
a) リン酸チタンの薄層を基材上に生成させる工程;
b) 引き続き、強塩基で処理する工程;及び、
c) 工程b)の生成物を洗浄する工程。
【請求項2】
洗浄後の生成物を乾燥させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
乾燥させた生成物をカ焼する工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
下記の工程をさらに含む、請求項1記載の方法:
a) 前記洗浄生成物を強酸と接触させる工程;及び、
b) 引き続き、前記生成物を洗浄して、前記基剤上に酸化チタン水和物のゲル状層を形成させる工程。
【請求項5】
前記ゲル状層を有する生成物を乾燥させる工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
乾燥させた生成物をカ焼する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記生成物をドーパントで処理する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥生成物をドーパントで連続処理し、次いで乾燥させる工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
乾燥させた生成物をカ焼する工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記基材が二酸化チタンである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記基材を、セラミック金属酸化物、セラミック混合酸化物、混合金属酸化物、又はこれらの混合物からなる群から選択する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック金属酸化物を、TiO2、ZrO2、Al2O3及びこれらの混合物からなる群から選択する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ドーパントが、強塩基及び強酸に対して耐性である貴金属である、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記セラミック金属酸化物が、20〜100nmの大きさを有するナノサイズ粒子からなる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記強塩基が、KOHである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記強酸が、HClである、請求項4記載の方法。
【請求項17】
前記ドーパントを、コロイド金属、コロイド複合体、有機化合物、無機塩、及びこれらの混合物からなる群から選択する、請求項7記載の方法。
【請求項18】
下記の工程をさらに含む、請求項4記載の方法:
a) 前記表面を水溶性有機又は無機化合物で飽和させる工程;
b) 引き続き、乾燥させる工程;及び、
c) カ焼する工程。
【請求項19】
下記の工程をさらに含む、請求項4記載の方法:
a) 前記表面をコロイド状物質で飽和させる工程;
b) 引き続き、乾燥させる工程;及び、
c) カ焼する工程。
【請求項20】
前記ドーパントがコロイド金属であり、最終生成物が薄い金属酸化物表面層を有する、請求項17記載の方法。
【請求項1】
下記の工程を含むことを特徴とする、表面修飾セラミック材料の製造方法:
a) リン酸チタンの薄層を基材上に生成させる工程;
b) 引き続き、強塩基で処理する工程;及び、
c) 工程b)の生成物を洗浄する工程。
【請求項2】
洗浄後の生成物を乾燥させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
乾燥させた生成物をカ焼する工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
下記の工程をさらに含む、請求項1記載の方法:
a) 前記洗浄生成物を強酸と接触させる工程;及び、
b) 引き続き、前記生成物を洗浄して、前記基剤上に酸化チタン水和物のゲル状層を形成させる工程。
【請求項5】
前記ゲル状層を有する生成物を乾燥させる工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
乾燥させた生成物をカ焼する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記生成物をドーパントで処理する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥生成物をドーパントで連続処理し、次いで乾燥させる工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
乾燥させた生成物をカ焼する工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記基材が二酸化チタンである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記基材を、セラミック金属酸化物、セラミック混合酸化物、混合金属酸化物、又はこれらの混合物からなる群から選択する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック金属酸化物を、TiO2、ZrO2、Al2O3及びこれらの混合物からなる群から選択する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ドーパントが、強塩基及び強酸に対して耐性である貴金属である、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記セラミック金属酸化物が、20〜100nmの大きさを有するナノサイズ粒子からなる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記強塩基が、KOHである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記強酸が、HClである、請求項4記載の方法。
【請求項17】
前記ドーパントを、コロイド金属、コロイド複合体、有機化合物、無機塩、及びこれらの混合物からなる群から選択する、請求項7記載の方法。
【請求項18】
下記の工程をさらに含む、請求項4記載の方法:
a) 前記表面を水溶性有機又は無機化合物で飽和させる工程;
b) 引き続き、乾燥させる工程;及び、
c) カ焼する工程。
【請求項19】
下記の工程をさらに含む、請求項4記載の方法:
a) 前記表面をコロイド状物質で飽和させる工程;
b) 引き続き、乾燥させる工程;及び、
c) カ焼する工程。
【請求項20】
前記ドーパントがコロイド金属であり、最終生成物が薄い金属酸化物表面層を有する、請求項17記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11a】
【図11b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11a】
【図11b】
【公表番号】特表2007−532449(P2007−532449A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505116(P2007−505116)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/009589
【国際公開番号】WO2005/095526
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(501495330)アルテアナノ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/009589
【国際公開番号】WO2005/095526
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(501495330)アルテアナノ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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