説明

UVA/UVB線に対する皮膚光保護剤

本発明は、UVA線(IとII)およびUVB線耐性の新規な皮膚光保護剤に関し、該皮膚光保護剤は、南極大陸原産の草科の植物(Deschampsia Antarctica)から得られた水性抽出物を含み、過度のUV光を拡散する抗酸化特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UVA線(IとII)、UVB線および可視太陽光線の有害な影響から人間の皮膚を保護する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽は根源的なエネルギー源であり、エネルギー源自体は、主に光および熱の形態で現れ、波動および粒子の形態で空間を移動する電磁放射線を発する。波動は、それらの周波数(ν)またはそれらの波長(λ)で表される。以下の表は、太陽の電磁放射線(日射)のスペクトルを示している。
【0003】
【表1】

【0004】
地球は、日射をフィルタリングして減衰させる大気ガス層によって保護されているので、これらの日射の部分が反射されるか、吸収されるかまたは拡散されるため、日射の全てが地球に達するとは限らない。290〜1,800nmの放射線(UVB線、UVA線(IとII)、可視光および近赤外線)は地面の表面に達する。この波長領域に関連して、UVB線およびUVA線(IとII)は、オゾン層によってフィルタリングされるので表面に最も少なく達するものであるが、人類を含む生物圏に最も影響を与えるものでもある。他方、日射の有害な影響に関して、特に、日射に対するフィルタリング効果を減少させるオゾン層破壊の現象に関して、ますます関心が寄せられている(Environmental Medicine;L.Moeller Ed.のM.J.MolinaおよびLuisa T.MilinaによるOzone Depletion and Human Health Effects(2002年9月24日)ENVIMED参照)。
【0005】
UVB線に対する露光過多は、短期間において皮膚に有害な影響を与え、皮膚の赤みを伴う周知の炎症プロセスである紅斑を生じさせる。他方、UVA線に対する露光過多は、長期間において有害な影響を与える。公表されているグラフから、太陽スペクトルが、波長、紅斑作用スペクトル、および図1における波長と紅斑作用スペクトルとの関係に関連して地球に達していることを認識することができる。このグラフは、上記のこと、すなわち、紅斑は主にUVB線の入射によって皮膚に発生するが、これに対して、UVA線のIとII(320〜400nm)はこのような皮膚反応を生じさせないことを示している。しかし、UVA線のIとIIは、光老化および光発癌等のはるかに有害な他の影響を長期間にわたってもたらす(Skin Pharmacol.Appl.Physiol.のFr.R.de GrujilによるPhotocarcinogenesis:UVA vs UVB Radiation(2002年)15:316〜320ページ参照)。
【0006】
皮膚に対するUVB線とUVA線の有害な影響の主な違いを以下の表に示す。
【0007】
【表2】

【0008】
皮膚は、核酸およびタンパク質芳香残基に加えて、UVA線を吸収することができる発色団、主にメラニンおよびウロカニン酸を有する。
【0009】
より強い皮膚侵入の故に、UVA線は、そのより高い光力学作用に関連して長期間にわたり皮膚変質の影響をもたらす。UVA線によって生じる光力学作用は、UVA線(IとII)のエネルギー(hν)と、皮膚の光感作物質、または空気中に酸素が存在する環境との反応によるものである。これにより、遊離基および一重項酸素として知られている反応性酸素種(ROS)が発生する(Free Radical Biology & MedicineのFerry M.Hansonらによる「Sunscreen enhancement of UV−induced reactive oxygen species in the skin」(2006年)41の1205〜1212ページ参照)。当然、遊離基は反応性化学種であり、それらは、それらのそれぞれの軌道関数において不対電子を含み、中性であるか、負帯電するかまたは正帯電し得る。それらの遊離基は、非常に不安定であり、したがって、反応を起こして細胞成分を変質させる傾向がある。したがって、それらの遊離基は、他の疾患の中のものである光老化、黒色腫および皮膚癌と関係している(J.Invest.Dermatol.による「Free Radicals in Cutaneous Biology」(1994年)102:671〜675ページ、およびJ.Am.Acad.Dermatol.による「Cutaneous Photodamage,Oxidative Stress and Topical Antioxidant Protection」(2003年)48:1〜19ページ、1997年のTedescoACらのものを参照)。
【0010】
J.Am.Acad.Dermatol.のP.KullavanijayaおよびH.W.Limによる「Photoprotection」(2005年)52:937〜58ページ、ならびにBiol.Rev.による「Ultraviolet Radiation Screening Compounds」(1999年)74、311〜345ページ等の、皮膚に対するこれらの有害な影響を回避することに焦点が当てられた化学フィルターおよび物理的フィルターについて多くの研究が行われており、その目的は、UVB線およびUVA線を吸収してフィルタリングする物体(化学フィルター)、皮膚に形成される反応性酸素種(遊離基および一重項酸素)を抗酸化剤によって不活性化または破壊する物体、あるいはTiOまたはZnO等の物理的フィルターによる拡散によって放射線を反射する物体で局所光保護を行うことである。実際に、野菜抽出物が、TiOによって生じる酸化の影響を相殺することができる抗酸化特性を有することが認識されている(Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biologyの「Plypodium Leucotomos Extract Inhibits Trans−Urocanic Acid Photoisomerization and Photodecomposition」(2006年)82の173〜179ページ参照)。
【0011】
他方、UVB紫外線およびUVA紫外線の影響は植物にも影響を与え(Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biology(2004年10月25日)の第76号の第1章〜第3章の61〜68ページ参照)、人間が元々メラニン等の光保護物質を生成するように、植物もそれら自体の防御機構を有する。さらに、非常に強い日射が続く中、超低温下で成長するDeschampsia Antarctica等の植物は、それら自体の防御を行う。これにより、上記植物は、有効な防御機構を形成して、これらの極限状態に対処する。放射しないように過度のUV放射線を少量の熱として処理する大きな能力と共に、抗酸化能力を向上させることによって、反応性酸素種(ROS)を拡散することができる。この植物は、南極大陸で成長しかつ問題なくその生息地の極限状態に耐えるという点で特有である。数種類の植物の1つはこのような極限の気候状態に耐えることができるので、南極の冬の間における氷および雪にさらされても、年中、緑化していることができる。(Functional Plant Biologyの「The Role of Photochemical Quenching and Antioxidants in Photoprotection of Deschampsia Antarctica」(2004年)31、731〜741ページ参照)。
【0012】
UVA線およびUVB線によって生じる悪影響に対して永続的に皮膚を保護する製品を実現することが、今日、極めて必要である。抗酸化剤が、反応性酸素種(ROS)によって生じる光力学作用を中和することが知られているが、どの抗酸化剤が適切であるかを見出すことおよびそれらの抗酸化の効果を確認することが必要である。なぜなら、それらの抗酸化剤が、連鎖伝播を生じさせて、より悪い他の結果をもたらすことがあるので、それらの抗酸化剤の全てが有益であるとは限らないからである。さらに、皮膚親和性等の種々の生物学的因子を考慮しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】波長と紅斑作用スペクトルとの関係を示す図。
【図2】50μg/mlのフェルラ酸を有する500μg/mlのAEDAの相対的なスペクトル吸収を示す図。
【発明の詳細な説明】
【0014】
本発明は、Gramineae科に属する植物、Deschampsia Antarctica(又は、以下にDAと称す)の水性抽出物の抗酸化特性および過度のUV光を拡散する特性を用いて、これらの特性を有する光保護剤を実現することに基づく。以下でAEDA(Aqueous Extract of Deschampsia Antarctica:Deschampsia Antarctica水性抽出物)と呼ばれる、上記特性を有する水性抽出物が、UVB線およびUVA線(IとII)に対して光保護特性を有することが確認された。その理由は以下のことによる。
【0015】
i) 一方では、UVA線のIIが光感作物質および酸素の存在下で皮膚を照射するときに、上記水性抽出物の抗酸化が、UVA線のIIの光力学作用の結果として主にUVA線のIIによって生じる遊離基の形成によってもたらされる負の効果を相殺することを含むことであり、
ii) 他方では、最も重要な皮膚のクロモフォレと、それとは異なる機構を用いるDAの両方のメラニンが過度の放射エネルギーを排除することができることが重要である。メラニンの場合、過度の放射エネルギーが小さな熱パルスの形態で排除され(「超段階内部変換」)、DAの場合、「光化学抑制」が用いられ、いずれにしろ、生物学的光阻害をブロックすることができることである。
【0016】
この技術分野において、抗酸化剤の全てが光保護剤になるとは限らないことを考慮しつつ、光保護に対する、特定の植物の抗酸化特性を用いることと、それらの抗酸化特性の可能な適用を行うことに関連する本発明は、水性抽出物を得て、皮膚光保護剤として使用するためのこの植物の抗酸化特性および過度のUV光を拡散する特性について言及する。
【0017】
本発明によるAEDAは、その自然環境由来の植物から、または人工環境で繁殖させた植物から抽出され得る。植物は、その保護目的のために厳しい規制に従う地方である南極大陸で自然に成長するものであり、この植物を利用すること、したがって、Deschampsia Antarcticaを商業目的で利用することは不可能である。したがって、Deschampsia Antarcticaの実際の生息地以外の人工的な手段によってAEDAを得る必要がある。
【0018】
Deschampsia Antarcticaの水性抽出物(AEDA)は、著者が予め確立した水性方法を用いる手順によって得られる。これにより、汚染問題と、抽出物から排除することが困難である残基とをもたらす有機溶剤の使用が回避される。
【0019】
このようにして得られたAEDAを使用して、UVA線(IとII)およびUVB線用の皮膚光保護剤を得ることが可能である。活性化するこの光保護剤と従来の賦形剤および添加剤とを混合して、その配合物を、局所皮膚塗布用のローション、オイル、懸濁液または軟膏におけるクリーム、ゲルまたは液体として得ることが可能である。
【0020】
このようにして得られたAEDAは、その物理化学的特性および薬理学的特性を確認するために試験された。
【0021】
以下のものはこれらの試験の概要である。
<薄層クロマトグラフィー(TLC)>
TLC技術が、混合物の部分を形成する化合物を分離するために利用された(添付文書1)。得られたAEDAは、以下のような溶剤を使用してシリカゲル60 F254プレート(MERCK)に滴下(spot)された。
【0022】
●N−ヘキサン:エチルアセテート(50対50)
●エチルアセテート:メタノール(80対20)
●エチルアセテート:ギ酸:氷酢酸:蒸留水(67対6.4対6.4対18.2)
AEDAに存在するUV吸収特性を有する化合物の吸収性のピークを決定するために、AEDAが200〜400nmのUV/VISのスペクトル分析にかけられた。可視スペクトルが得られるまで、サンプルがエタノールで希釈された状態でSHIMADZU(島津製) UV−160分光光度計が上記目的のために使用された。
<AEDAの抗酸化作用の定量化>
Folinの比色分析試験を行って、AEDAのポリフェノールの量を測定した。この反応は、ヒドロキシル基がベンゼンリングに付着した上記化合物の特性である。Folin−Ciocalteau試薬は、フェノールが存在する場合に黄色から青色に変化した。青色の強度は、765nmの波長の分光光度計によって測定される(添付文書3)。AEDAの抗酸化特性はABTS比色分析法によって評価された。このABTS比色分析法は安定基ABTS+カチオンの連続発生に基づいており、その存在は、734nmの波長(このカチオンが、抗酸化物質との相互作用によって、カチオンの最大吸収ピークの1つとカチオンの変質またはキレート化とを生じさせる波長)においてシステムの吸収性が減少することによって検出される。
【0023】
分析されたAEDAのケルセチンインデックスを決定して、フェノール化合物インデックスの指標を得ているが、その理由は、このAEDAが、炭素2と3の二重結合部と位置3の遊離OH基と位置4のカルボニル基とによる、化合物の抗酸化強度を向上させるフラボノイドであるからである。0.2mg/ml〜0.8mg/mlの範囲の濃度でケルセチンによる校正曲線を準備し、次に、350nmの波長スペクトルおよび0.5mg/mlの濃度で、異なるAEDAの吸収性を測定した。
<水性AEDAのHPLC基準>
UV検出器によるHPLC分析を実行して、得られたAEDAに存在し得る化合物の基準を得た。HPLCのために、RP−18.5μm 25cmのカラムを有するShimadzu(島津製) SPD−M10AVPダイオードアレイ検出器が使用されており、ここで、メタノール:水の混合物が溶剤として使用されており、サンプルが、0.7〜0.8ml/minの流れ勾配を有するプログラムで動作した。
【0024】
AEDAを吸収したテンジクネズミを用いて、異なる試験を行って、これらの齧歯類の皮膚におけるUVB線およびUVA線(IとII)に対するAEDAの光保護効果を実証した。
<Deschampsia Antarcticaの水性抽出物(AEDA)の細胞生存性の調査(細胞サイクル)>
Deschampsia Antarcticaの水性抽出物である(AEDA)の細胞生存性の調査(細胞サイクル)が、HaCaT細胞に紫外線が存在する状態において10mg/mlの投与量で行われた。人間のHaCaTケラチノサイトラインが、10%のウシ胎仔血清を有するDMEM媒体で培養された。
【0025】
【表3】

【0026】
制御グループ(AEDAを有しない)およびAEDA M2を有するグループがこの最初の試験で使用された。この最初の試験では、実験を開始した後に、9.75J/cmのUVA線+0.75J/cmのUVB線の投与量のシミュレートされた太陽紫外線によって4時間照射が行われた。
【0027】
添加剤を使用せずに、培養を24時間続けた。その後、細胞が、トリプシンで分離され、60%のエタノールに浸され、ヨウ化プロピジウム、TritonX−100およびRNAseの緩衝液で培養された。ヨウ化プロピジウムは、DNAに付着して、フローサイトメータによって測定される蛍光を発する。これによって、細胞の総数と、休止/老化段階(G0/G1)における、合成(S)におけるまたは有糸分裂(M/G2)における割合と、アポトーシス(Sub−G0)の細胞とが決定された。この手法により、AEDAが有毒物または有糸分裂促進物質であるかどうかを決定すること、およびAEDAの能力により、太陽紫外線の損傷を回復させることが可能になる。
【0028】
実験を比較することができるように、および容易に理解可能な値を得ることができるように、添加剤なしの制御グループに対する細胞数の変化が計算された。合計3,000〜5,000個の細胞が評価されて、各実験で100個に標準化された。このようにして、細胞の41%が段階G0/G1にあり、39%が、添加剤なしの制御の段階G2/Sにあることが確認された場合に、AEDAで観察された変化が、制御グループに対する結果と比較された。
【0029】
得られた結果が以下の表4に示され、負の値は、制御グループと比較された細胞数の減少を示し、正の値は、制御グループと比較された増加を示す。
【0030】
【表4】

【0031】
M2が、照射されていない細胞の増殖を増加させ、照射下でも増加が記録されたことが理解できる。
【0032】
この実験の繰り返しにより、同様の効果、すなわち、UV光照射後の増殖効果とアポトーシスに対する耐性とが示された。この新しい調査では、以前の調査(以前の調査では5%のG2/S細胞対39%のG2/S細胞)のより多くの増殖状態と比較して、細胞が主に休止/老化状態にあるということが重要である。その結果が以下の表5に示される。
【0033】
【表5】

【0034】
両方の実験の結果を平均化すると、M2がG2/S段階で細胞数をほとんど変化させなかったこと、およびUV光の照射後に、M2のアポトーシスにおける細胞数が7%減少したことが結論付けられる。
<UVB線下におけるネズミの皮膚に対するDeschampsia Antarcticaの水性抽出物(AEDA)の効果>
a)月曜日から金曜日にかけて、300mg/mlの濃度のDeschampsia Antarcticaを準備して、0.1mlを1日1回投与しつつ、3匹の雄ネズミに対するUVB線の影響を評価するような最初の試験が行われた。中央領域が周辺領域と比較され、その結果、各動物はそれ自体が制御を行っていた。290〜350nmの(広帯域とみなされる)領域において主に313nmで照射を行う、UVC紫外線がフィルタリングされた640Wの光源から8cmの部分に動物達を置いた状態で、Zinderと共編者、および他の著者によって示された方法に従って、UVB線(290〜350nm)に曝露した後、形成された紅斑が×印で主観的に評価され、周辺領域(未処理)と中央領域(処理)とを区別して、曝露後に24時間撮影された。結果は以下のようなものであった。
【0035】
【表6】

【0036】
これらの結果から、300mg/mlのAEDAが、UVB線によって生じた紅斑の強度を減少させたことを結論付けることが可能であった。
【0037】
b)皮膚紅斑の形成、およびUV光スペクトル内の290〜320nmの強い照射源へのネズミの皮膚の曝露による「日焼けした」細胞と呼ばれる焼けた細胞の出現に対するAEDAの効果が、第2の試験で調査された。
【0038】
その結果がフェルラ酸の効果と比較されており、このフェルラ酸は、基準物質として使用されており、植物界で非常に広く普及している非常に毒性の低い抗酸化剤であり、細胞膜を脂質酸化から保護し、細胞ゲノムを突然変異誘発および酸化損傷から保護する(3)。
<材料および方法>
20グラムよりも多い重量の40匹の雄ネズミが使用された。40匹の雄ネズミは、収容した後に7日間試験が行われた位置に順応させられた。動物達は、制御温度が22℃であり、相対湿度が50%〜75%であり、新鮮な空気が約10時間毎に取り入れられ、そして12時間毎に明るくなり、暗くなる(7:00から19:00までが明るくなり、19:00から7:00までが暗くなる)サイクルの部屋に置かれた。この期間中およびその実験期間中に、動物達には、標準的な齧歯類用食餌および水道水が任意量与えられた。
【0039】
【表7】

【0040】
●蒸留水(WDA)またはエタノール(フェルラ酸)に溶解され、媒介物として不活性カルボポールゲルに懸濁されている。
【0041】
動物達は、表10に示されているように、10匹の動物の4つの実験グループにそれぞれランダムにグループ化された。試験すべき製品がゲルとして皮膚に直接塗布された。試験は、Arch.Int PharmacodynのWinderらによる「A Study of Pharmacological Influences of Ultraviolet Erythema in Guinea Pigs」(1958年)116:261〜292ページと、Br.J.PharmacolのWendy,Jら等の他の著者による「The Local Antinociceptive and Topical Anti−inflammatory Effects of Propyl Gallate in Rodents」(1976年)58:573〜581ページと、J.Natl.Cancer Inst.のKatiyar,S.K.らによる「Protective Effects of Silymarin Against Photocarcinogenesis in a Mouse Skin Model」(1997年)89:556〜65ページとに示された方法に従いつつ、僅かな修正を加えて行われた。
【0042】
試験前に動物達を6日間にわたってきれいに剃毛して、体毛の全ての跡を排除し、動物達の皮膚から全てのものを取り除いて裸にした。
【0043】
試験すべき物質のためにまたは基準のために午前(10:00h)および午後(20:00h)に投与する方式で、最初の日の試験が開始され、ランダムに適当に3日間にわたって続けられた。3日目、対応する午前の処理を適用した後に、動物達は機器の曝露プラットフォームに置かれて固定された。ここで、動物達は、313nmの基本周波数で照射を行いおよび約290〜350nmの領域の、抗UVCフィルターを有する440Wの紫外線源から8cmの部分に置かれた。
【0044】
全ての動物が、紫外線検出器によって決定された照射量である約2.5kJ/mの総投与量を受けるまで、曝露が続けられた。動物達の背中が曝露後に24時間撮影され、それらの動物達が頸部転位を被っていた。組織学的調査のためのパラフィン含有物の処理および準備を開始する前に、背中の皮膚が剥がされ、試験すべき物質が塗布された領域の2x2cmの断片が、タンポン挿入された10%のホルマリンを有するジャーに置かれて6時間保持された。
【0045】
それらの準備は光学顕微鏡下で観察され、準備する毎に、表皮と皮膚との空間が5つの異なる位置においてx100倍率で撮影された。細胞が、その隣接物の核とは異なる小さくて黒ずんだ不規則な密集核を有する超好酸性細胞質を有した場合に、細胞が日焼けしているとみなして、日焼けした細胞の計数が各写真に対して行われた。
【0046】
紅斑の評価を陽画/陰画に基づいて行って、保護された動物達の割合を得た。
【0047】
(日焼けした)ピクノティック核を有する超好酸性細胞の数は、各組織準備において、5つの異なるセクタ毎の写真領域で計数された。5回の計数の和が各動物に関する値とみなされた。ここで、各実験グループの個々の結果に関する平均±s.e.m.が得られ、割合の変化が、試験すべき物質に曝露されて処理されたグループのために計算され、制御グループと比較され、さらには、曝露されていない制御グループと比較された。
<結果>
i)UVB線に曝露されなかった「ブランクの媒介物」(グループ1)のネズミの皮膚の様子は、完全に正常であり、ピンクがかっており、紅斑なしと示された。正常な皮膚組織は組織準備中に観察され、この皮膚組織は、(きめの細かい)正常な角質層、薄い顆粒層および有棘層からなり、細胞の結合が強く、機能的ケラチノサイトの基底細胞層(基底層)には、完全に規則正しい細胞が支持され、1つの細胞において、表皮と皮膚との間の分離部をはっきりとおよび明らかに区切る深い層がグループ化されている。「日焼けした」という用語の定義に適合する細胞の存在はこれらの準備のいずれにおいても観察されなかった。
【0048】
ii)「能動的な制御媒介物」(グループ2)における全ての動物は、曝露後、小さな点状出血からはっきりと出血を伴う外傷までの範囲にある変化する赤血球の溢出領域を有する明らかな炎症症状、ときには非常に強い炎症症状を伴う強度の紅斑を24時間にわたって示した。表皮の細胞組織の重大な変化は、細胞組織の層の構造が損なわれたときに、顕微写真で観察された。顆粒層も有棘層も見分けることができなかった。
【0049】
基底層が一群のピクノティック細胞に置き換えられ、この間に、「日焼けした」細胞はかなりの数に達した。
【0050】
0.5%のフェルラ酸による処理(グループ4)は動物達を70%の紅斑から効果的に保護し、皮膚は常態に一致するバラ色の様子を示した。これにもかかわらず、影響を受けた動物達の小さな紅斑点および点状出血はそれほど重大でないことが明らかになった。組織の画像は、UVB線が皮膚をほんの僅かに変化させたことを示している。表皮と皮膚とを分離する基底層はほぼ一体的に保持された。顆粒層および有棘層は薄くなり、角質層は厚くなった。日焼けした細胞の数は少ないが、多数のピクノティック核が観察され、表皮の組織が、ある程度損傷したことを示している。
【0051】
iii)同様に、300mg/mlのAEDAで処理されたグループ(グループ3)において、ほぼ正常な有棘層と角質層の肥厚部とを有する正常な基底層が観察されている。日焼けした細胞の数は極めて少なかった。したがって、動物達の背中には赤みがなく、全ての動物達が紅斑を有していないことが示された。UVB線によってネズミに生じる紅斑に対する300mg/mlのAEDAのおよび0.5%のフェルラ酸の光保護剤の効果は、表11に示される。その結果は、処理された領域において、紅斑が存在するか(+)または存在しないか(−)あるいはその発現が生じたかについて述べている。「保護された」という用語は、曝露領域で徴候がないか、または徴候があった場合には稀であり重要であるそれらの動物達を指し、「抑制」という用語は、紅斑および他の発現が生じた(主観的な基準)能動的な制御媒介物と比較して、紅斑および他の発現の強度が低下したことを指す。
【0052】
【表8】

【0053】
【表9】

【0054】
差の統計的有意性は、フィッシャー試験またはΧ2(カイ二乗)等の非パラメトリック試験によって評価された。表12は、UVB線によってネズミに生じている「日焼けした」細胞の存在を示しており、その結果は、処理領域における組織準備時の細胞の数に関連して表されている。
【0055】
図2は、50μg/mlのフェルラ酸を有する500μg/mlのAEDAの相対的なスペクトル吸収を示している。AEDAの吸収スペクトルは240nmの波長の最大吸収を示している。約250nm〜350nmの帯域において、AEDAは、UVC線、UVB線のかなりの量とUVA線のより強力な部分とをブロックする0.75〜1.5UAの安定した吸収性を提供する。したがって、その効果の部分は、皮膚に達する光照射を防止するスクリーン効果によるものであり得る。
【0056】
比較してみると、フェルラ酸は、比較図2に見られ得る3つの吸収ピークを示している。最初の2つの吸収ピークはUVC域の前に配置され、3つ目の吸収ピークは285nmよりも上に見られ、約340nmに及ぶ。この作用は、多数の植物内に存在するポリフェノールの代表的なものであり、これらのポリフェノールは、植物を太陽光から保護する有効なスクリーン効果を提供する。同様の吸収性に達するのに必要な濃度を比較すると、フェルラ酸が、50μg/mlでその有効なブロック能力をもたらし、これに対して、AEDAでは、500μg/mlで、50μg/mlのフェルラ酸により得られるブロックの50%に等しいブロックがもたらされることを確認することができる。同様のブロック強度を得るには、AEDAの必要な濃度を、フェルラ酸よりも10〜50倍高くしなければならない。
【0057】
要約すると、以下のように示すことが可能である。
a)300mg/mlのAEDAを局所的に塗布することにより、UVB線によって生じた紅斑が効果的に減少される。
b)300mg/mlのAEDAを局所的に塗布することにより、日焼けした細胞の出現が95.11%抑制される。
c)この試験で準備されたDeschampsiaの強度は、0.5%のフェルラ酸によって示された強度よりも僅かに優れている。
d)UV光をブロックするのに必要なDeschampsia Antarcticaの濃度は、フェルラ酸よりも10〜50倍高くしなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UVA線およびUVB線に対する皮膚光保護剤において、
研究所で成長させられるかまたは南極地方自体で収集された南極大陸原産のGramineae科の植物から得られた水性抽出物のある含有量を有することを特徴とするUVA線およびUVB線に対する皮膚光保護剤。
【請求項2】
前記水性抽出物が、Deschampsia Antarcticaという植物由来であることを特徴とする請求項1に記載のUVA線およびUVB線に対する皮膚光保護剤。
【請求項3】
水性抽出物の300mg/mlの含有量を有することを特徴とする請求項1または2に記載のUVA線およびUVB線に対する皮膚光保護剤。
【請求項4】
皮膚塗布用のクリーム、ゲル、オイルまたはローションの形態の固体または液体の光保護組成物において、請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚光保護剤を含むことを特徴とする固体または液体の光保護組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の皮膚光保護剤を得るためのDeschampsia Antarcticaという植物の使用法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−516311(P2012−516311A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546879(P2011−546879)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/ES2009/000050
【国際公開番号】WO2010/086464
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511148282)ビトロヘン株式会社 (1)
【出願人】(511148293)アポテクノス・パラ・ラ・ピエル有限会社 (1)
【Fターム(参考)】