説明

VAP−1/SSAO阻害剤としての使用のためのアミノグリコシド系抗生物質

本発明は、アミンオキシダーゼ酵素活性に影響を与えることができる、より詳しくは、VAP−1/SSAO活性を阻害することができる薬剤として有用な医薬製剤の製造のための、1つ以上の糖部分(該糖部分は、任意選択でアミノ置換基を有する)および場合によっては他の部分を含有する化合物の使用であって、該化合物は少なくとも2個のアミノ置換基を含有する分子であり、前記アミノ置換基は、一級、二級または三級アミノ基であり、また、該アミノ置換基は、該分子のある1つの単一の糖部分に結合しているか、またはいくつかの糖部分もしくは他の部分に結合しているかのいずれか、または2つの部分を連結する鎖もしくは該分子の置換基である鎖に結合している化合物の使用に関する。好ましい化合物は、アミノグリコシド系抗生物質、たとえば、ストレプトマイシン、ネチルマイシン、ゲネチシン、ゲンタマイシン、ピューロマイシン、トブラマイシンおよびアミカシンである。好ましい治療対象の状態は、炎症性疾患または状態、炭水化物代謝と関連する疾患;脂肪細胞の分化もしくは機能または平滑筋細胞の機能の異常と関連する疾患、および血管系の疾患である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有アミンオキシダーゼ(一般的に、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)として知られ、血管接着蛋白質−I(VAP−1)として知られるヒトSSAOを含む)に影響を与えることができるポリアミノ置換糖類に関する。このようなポリアミノ置換糖類は、炭水化物代謝や脂肪細胞の分化もしくは機能または平滑筋細胞の機能の異常と関連するいくつかの炎症性状態および疾患ならびに血管系の疾患などの状態および疾患を治療または予防するための薬物としての治療上の有用性を有するSSAO阻害剤である。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を明らかにするために本明細書で使用する刊行物および他の資料、特に、実施に関するさらなる詳細を提供するための事例は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
VAP−1は、ヒト内皮細胞接着分子であり、他の炎症関連接着分子と明確に区別されるいくつかの特有の特性を有する。これは、特有で制限された発現パターンを有し、血管内皮へのリンパ球の結合を媒介する(Salmi, M. and Jalkanen, S., Science 257: 1407-1409 (1992))。炎症は、皮膚、腸および炎症した滑膜への白血球の進入を媒介する血管内皮細胞の表面へのVAP−1の上方調節を誘導する(Salmi, M. and Jalkanen, S., Science 257: 1407-1409 (1992); Salmi, M. et al., J. Exp. Med 178: 2255-2260 (1993); Arvillommi, A et al., Eur. J. Immunol 26:825-833 (1996); Salmi, M. et al., J. Clin. Invest. 99: 2165-2172 (1997): Salmi, M. and Jalkanen, S., J. Exp. Med. 183: 569-579 (1996); J. Exp. Med. 186: 589-600 (1997))。VAP−1の最も興味深い特徴の1つは、モノアミンオキシダーゼ活性を含む触媒性細胞外ドメインである(Smith, D. J. et al., J. Exp. Med 188: 17-27 (1998))。
【0004】
ヒトVAP−1 cDNAのクローニングおよび配列決定により、これが、銅含有アミンオキシダーゼ(E.C.1.4.3.6)と呼ばれる酵素のクラスへの相同性を有する膜貫通タンパク質をコードすることが明らかとなった。酵素アッセイにより、VAP−1が、該タンパク質の細胞外ドメインに存在するモノアミンオキシダーゼ(MAO)活性を有することが示された(Smith, D. J.ら, J. Exp. Med 188: 17-27 (1998))。したがって、VAP−1は、エクト酵素である。VAP−1 MAO活性の解析により、VAP−1は、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)と称する膜結合型MAOのクラスに属することが示された。これらは、広く分布するミトコンドリアMAO−AおよびBフラボタンパク質とは、アミノ酸配列、補因子、基質特異性およびある種の阻害剤に対する感受性により明確に区別される。しかしながら、ある種の基質および阻害剤は、SSAO活性およびMAO活性の両方に共通する。哺乳動物のSSAOは、内生的に生じたか、または食餌もしくは生体異物として吸収された種々のモノアミンを代謝し得る。これらは、主に、脂肪族または芳香族の第一級モノアミン(メチルアミンまたはベンジルアミンなど)に作用する(Lyles G. A., Int. J. Biochem. Cell Biol, 28: 259-274 (1996))。したがって、血管内皮細胞表面上に位置するVAP−1は、循環している一級モノアミンに対し、下記の反応経路にしたがって作用し得る。
RNH2+O2+H2O -----→ RCHO+H22+NH3
【0005】
ヒトにおけるVAP−1 SSAOの生理的基質は明確に同定されていない。しかしながら、メチルアミンは、VAP−1 SSAOの良好な基質である。メチルアミンは、クレアチニン、サルコシンおよびアドレナリンの分解のための種々のヒト生化学的経路の産物であり、種々の哺乳動物の組織内および血中に見られる。また、これは、飲食物の(dietary)前駆物質の腸細菌分解によって飲食物にも由来し得る。血中のメチルアミン濃度は、ある一定の生理学的状況および病理学的状況(たとえば、糖尿病など)において増加し得る。別の潜在的な生理的基質はアミノアセトンである。
【0006】
VAP−1 SSAO活性は、白血球の表面上に発現されるVAP−1リガンド上に提示されるアミン基質との直接相互作用を伴う新規な機序による内皮細胞への白血球接着の経路に直接関与することが提案されている(Salmi et al., Immunity,(2001))。この刊行物には、内皮に対する白血球の接着のプロセスにおけるVAP−1 SSAO活性の直接関与が記載されている。したがって、VAP−1 SSAO活性の阻害剤は、炎症の領域における白血球接着を低減し、それにより炎症領域内への白血球輸送が低減され、したがって炎症プロセス自体が低減されることが期待され得る。
【0007】
ヒト臨床組織試料では、VAP−1の発現が炎症部位において誘導される。このVAP−1レベルの増加は、血中に存在するモノアミンに対するVAP−1 SSAO細胞外ドメインの作用によって生じるH22生成の増加をもたらし得る。この内皮細胞の局所環境内でのH22生成は、他の細胞内事象を開始し得る。H22は、他の接着分子を上方調節し得る既知のシグナル伝達分子であり、この接着分子発現の増加は、VAP−1が発現される領域内への白血球輸送の増強をもたらし得る。また、VAP−1 SSAO反応の他の生成物が、炎症プロセスにも寄与する生物学的効果を有し得ることもあり得る。したがって、VAP−1 SSAO活性の生成物は、炎症プロセスの段階的拡大に関与し得、これは、特異的SSAO阻害剤によりブロックされ得る。
【0008】
VAP−1 SSAOは、VAP−1 SSAOの循環しているアミン基質レベルの増加と関連する多くの他の病理学的状態に関与し得る。これらの基質の酸化的脱アミン化は、内皮細胞の局所環境における毒性のアルデヒドおよび酸素ラジカルのレベルの増加をもたらし得、これは該細胞を損傷し得、血管系の損傷をもたらし得る。メチルアミンおよびアミノアセトンのレベルの増加は、I型糖尿病およびII型糖尿病の患者において報告されており、末期の糖尿病に見られる網膜症、神経障害および腎症などの血管障害は、SSAO活性の特異的阻害剤により治療され得ることが提案されている。
【0009】
Takahashi, H. et al., Yakugaku Zasshi 101 (12): 1154-1156 (1981)には、多くのN−アルキルアミノエフェドリン(たとえば、N−(イソプロピリデンアミノ)−エフェドリンまたはR,S−(+)−(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル)メチルヒドラゾン−2−プロパノンなど)の合成が報告されている。これらのヒドラゾン化合物は、気管支の筋組織に対するその効果を評価するために合成されたが、なんら有意な活性は示さないことがわかった。
【0010】
Grifantini, M. et al., Farmaco, Ed. Sci. 23 (3): 197-203 (1968)には、抗欝特性およびモノアミンオキシダーゼ阻害特性を有する、N−アミノ−1−エフェドリンおよびN−アミノ−d−シュードエフェドリンのいくつかのアルキル誘導体およびアシル誘導体の合成が報告されている。
【0011】
Jeffrey O’Sullivan et al., Biochimica et Biophysica Acta 1647 (2003) 367-371には、ある種のアミノヘキソース、すなわちグルコサミン、ガラクトサミンおよびマンノサミンによるセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼの阻害が報告されている。これらの化合物はすべて、モノアミノ置換されている。
【0012】
国際公開第02/020290号パンフレットおよび同03/006003号パンフレットには、VAP−1活性を調節する特異的VAP−1 SSAO阻害剤として有用なある種のヒドラジノ化合物が開示されている。これらの化合物は、急性および慢性の炎症性の状態または疾患ならびに炭水化物代謝、脂肪細胞の分化もしくは機能および平滑筋細胞の機能の異常と関連する疾患ならびに種々の血管系の疾患の治療に有用であると記載されている。
【発明の開示】
【0013】
VAP−1/SSAOは、反応においてアミンの酸化的脱アミン化を触媒し、結果として対応するアルデヒド、過酸化水素およびアンモニウムの生成をもたらす。この反応生成物は、炎症促進性(pro-inflammatory)化合物である。したがって、VAP−1の酵素活性の阻害は、これらの炎症促進性物質の生成の減退をもたらし、したがって、抗炎症効果を有する。
【0014】
本発明の目的は、アミンオキシダーゼ活性を阻害することができる薬剤としてのポリアミノ置換糖類の使用を提供することである。
【0015】
したがって、本発明は、アミンオキシダーゼ酵素活性に影響を与えることができる薬剤として有用な医薬製剤の製造のための、アミノ置換基を任意に有する1つ以上の糖部分および場合によっては他の部分を含有する化合物の使用であって、該化合物は少なくとも2個のアミノ置換基を含有する分子であり、該アミノ置換基は、一級、二級または三級アミノ基であり、また、該アミノ置換基は、分子のある1つの単一の糖部分に結合しているか、またはいくつかの糖部分もしくは他の部分に結合しているかのいずれか、または2つの部分を連結する鎖もしくは分子の置換基である鎖に結合している化合物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
定義
用語「治療」または「治療する」は、疾患または状態の完全な治癒、および該疾患または状態の改善または軽減を含むことを理解されたい。
【0017】
用語「予防」は、完全な予防(prevention)、防御(prophylaxis)、および個体が前記疾患または状態を伴う病気になるリスクの低下を含むことを理解されたい。
【0018】
用語「個体」は、ヒトまたは動物の被験体をいう。
【0019】
用語「化合物」は、本明細書において、任意の幾何異性体、立体異性体、ジアステレオマー異性体、ラセミ化合物または異性体の任意の混合物および該化合物の任意の薬学的に許容され得る塩を包含することを理解されたい。
【0020】
「部分」は、環または環系であると理解されたい。
【0021】
本発明による使用のためのポリアミノ置換化合物は、ある実施態様によれば、1つの糖単位(部分)より成る化合物である。しかし化合物は、ただ高度にアミノ置換された化合物を提供するために、分子内に他の環単位および追加の糖単位を有することが好ましい。
【0022】
糖単位は、ブドウ糖、マンノース、ガラクトース、果糖もしくはソルボースなどの六炭糖、またはアラビノース、キシロース、リボース、ラムノースもしくはフコースなどの五炭糖が好ましい。
【0023】
分子がいくつかの糖単位で構成される場合、それは同じ糖でも違う糖でもよい。
【0024】
好ましい実施態様によれば、アミノ置換基は、1つの単一の糖部分に結合しているか、またはいくつかの糖部分、もしくは分子内の他の部分に結合しているかのいずれかの一級アミノ置換基(NH2群)である。
【0025】
ある好ましい側面によれば、分子はオリゴ糖、好ましくは蔗糖、麦芽糖、乳糖などの二糖類が好ましい。
【0026】
分子の糖単位は、アミノ置換基に加え、他の置換基で置換されていてもよい。
【0027】
他の側面によれば、分子はグリコシド、すなわち糖単位の水酸基と非糖化合物などの他の化合物の水酸基との反応で形成される化合物であり、そのような非糖化合物は、好ましくは1つ以上の環を含む化合物である。
【0028】
特に好ましい実施態様によれば、化合物はアミノグリコシド、とりわけアミノグリコシド系抗生物質である。
【0029】
アミノグリコシド系抗生物質は感染症の治療に広く用いられている。しかしこの群の化合物の非感染性炎症状態の治療や予防への使用は、この技術分野において報告も提案もなされていない。
【0030】
好ましいアミンオキシダーゼ酵素阻害剤:
強力な阻害剤の例としては、スキーム1に示す化合物などのアミノグリコシド系抗生物質がある。
【0031】
1つの重要な側面によれば、本発明は、アミンオキシダーゼ酵素を阻害することにより恩恵を被る任意の疾患または状態の治療または予防用医薬製剤の製造のための、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤として活性な化合物の使用に関する。
【0032】
アミンオキシダーゼ阻害剤に反応する疾患や状態:
アミンオキシダーゼ酵素を阻害することにより治療または予防に恩恵を被り得る疾患または状態の群の例としては、炎症性疾患または状態;炭水化物代謝に関係する疾患;脂肪細胞の分化や機能もしくは平滑筋細胞機能の異常、および脈管系疾患などである。しかしながら、疾患または状態はこれらの群に限らない。
【0033】
ある実施態様によれば、炎症性疾患または状態は、強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節炎、変形性関節症または退行性関節疾患、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、ベーチェット症候群、再発性多発性軟骨炎、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、全身性硬化症、好酸球性筋膜炎、多発性筋炎や皮膚筋炎、リウマチ性多発性筋痛症、脈管炎、側頭動脈炎、結節性多発性動脈炎、ウェグナー肉芽腫症、混合性結合組織病、または若年性関節リウマチなどの結合組織の炎症性疾患または状態であり得るが、それらに限定されるものではない。
【0034】
もう1つの実施態様によれば、前記炎症性疾患または状態は、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性結腸症候群(痙攣性結腸)、肝線維症、口腔内膜炎(口内炎)、または再発性アフタ性口内炎などの消化器系の炎症であるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
第三の実施態様によれば、前記炎症性疾患または状態は、多発性硬化症、アルツハイマー病または虚血性脳卒中による虚血―再灌流障害などの中枢神経系の炎症であるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
第四の実施態様によれば、前記炎症性疾患または状態は、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患または成人呼吸窮迫症候群など肺の炎症であるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
第五の実施態様によれば、炎症性疾患または状態は、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、ばら色ひこう疹、扁平苔癬または毛孔性紅色ひこう疹などの皮膚の炎症であるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
第七の実施態様によれば、炎症性の状態は、組織外傷に関連するか、または臓器移植もしくは他の外科手術に起因する。
【0039】
第八の実施態様によれば、炭水化物代謝に関連する疾患は、糖尿病、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、血管性網膜症、網膜症、腎症、ネフローゼ症候群、多発性ニューロパチー、単発性ニューロパチー、自律神経障害、足底潰瘍または関節障害などであるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
第十の実施態様によれば、脂肪細胞の分化もしくは機能、または平滑筋細胞の機能の異常に関連する前記疾患は、アテローム性硬化症(atherosclerosis)や肥満などであるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
第十一の実施態様によれば、血管系疾患は、アテローム性動脈硬化症(atheromatous atherosclerosis)、非アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、末梢動脈閉塞、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)またはレイノー病もしくはレイノー現象などであるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明の目的のために、本発明で開示される化合物またはその異性体、異性体混合物、またはそれらの薬学的に許容され得る塩は、様々な経路で投与することができる。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、関節内、髄腔内、筋肉内、腹腔内注もしくは皮内注射、または経皮、経頬側粘膜、経口腔粘膜、経眼経路または吸入によってなされ得る。あるいは、または併用して、経口投与も可能である。特に好ましいのは経口投与である。好適な経口製剤としては、たとえば従来のもしくは徐放性の錠剤およびゼラチンカプセルがあげられる。
【0043】
化合物の必要投与量は、治療される特定の疾患または状態、状態の重症度、治療期間、投与経路および使用される特定の化合物により変化し得る。
【0044】
したがって、典型的な用量は、体重に対し、約0.1μg/kgから約300mg/kgの投与量範囲、好ましくは1.0μg/kgから10mg/kgのあいだである。本発明の化合物は、1日1回で投与されてもよく、または全1日投与量が1日に2回、3回または4回の分割用量で投与されても良い。
【0045】
本発明は、以下の非限定的な実験項により説明される。
【実施例】
【0046】
実験項
酵素アッセイ
モノアミンオキシダーゼ活性の放射化学的測定
アミンオキシダーゼ活性を [7−14C]−ベンジルアミンヒドロクロライド(特異活性 57mCi/mmol、アマシャム(Amersham))を基質として放射化学的にアッセイした。まず細胞(VAP−1がトランスフェクトされたAx内皮細胞またはVAP−1がトランスフェクトされたCHO細胞およびそれらのモックトランスフェクト対照)をゼラチンコート24ウェル細胞培養プレートに播種し、コンフルエントにさせた。実験の前に、細胞をRPMI1640で2回洗浄し、アミカシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシンまたはジェネチシン(1mg/ml)を含む0.3mlのRPMI1640培地で37℃、30分間前培養した。反応を6μmol/Lの[14C]−ベンジルアミン(40000dpm)の添加により開始し、1時間後、クエン酸により終結した。アルデヒドを、ジフェニルオキサゾールを含むトルエン中に抽出し、[14C]標識ベンジルアルデヒドの形成をシンチレーションカウンターで定量化した。
【0047】
SSAOによる過酸化水素形成の蛍光測定
細胞のSSAO活性も、高感受性で安定したH22のプローブであるアンプレックスレッド試薬(10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン;モレキュラー プローブ(Molecular Probes)、ヨーロッパ、BV)を用いて独立して測定した。培養細胞(VAP−1がトランスフェクトされたAx内皮細胞またはVAP−1がトランスフェクトされたCHO細胞およびそれらのモックトランスフェクト対照)を、クレブスリンゲルリン酸ブドウ糖液(KRPG;145mM NaCl、5.7mMリン酸ナトリウム、4.86mM KCl、0.54mM CaCl2、1.22mM MgSO4、5.5mMブドウ糖、pH7.35)ですすぎ、アミカシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、ジェネチシン、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミンまたはピューロマイシン(1mg/mlおよび100μg/ml)を含む200μlのKRPGで37℃、30分間前培養した。触媒反応は基質であるベンジルアミンと、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(最終濃度0.8U/ml)とアンプレックスレッド試薬(60μM)を含むH22測定液を加えることにより開始した。プレートを250μlの最終容量で、37℃、1〜2時間培養し、培養液を遠心により浄化し、白色の非燐光マイクロプレート(Cliniplate)に分取(200μl)した。試料の蛍光強度を測定し(励起545nm、発光590nm; Tecan ULTRA fluoropolarometer)、H22濃度を、標準H22の段階希釈液もしくはアンプレックスレッド反応産物であるレゾルフィン(モレキュラー プローブ)の段階希釈液のいずれかによって得られた較正曲線をもとに算出した。
【0048】
結果
2〜5回の実験で得られた種々の薬剤の代表的な阻害率を下表に示す。モノアミン化合物であるグルコサミン、ガラクトサミンおよびマンノサミンは基準化合物として使用した。
【0049】
【表1】

【0050】
細胞のSSAO活性は、トランスフェクトされたVAP−1に完全に依存した。酵素活性はネチルマイシン、ゲンタマイシン、ジェネチシン、ピューロマイシン、トブラマイシンおよびアミカシンで各々の範囲で減少した。反対にモノアミン六炭糖(すなわち基準化合物のグルコサミン、ガラクトサミンおよびマンノサミン)ならびにその他の被験薬剤ではVAP−1活性を有意に阻害しなかった(表I)。
【0051】
アミノグリコシドはインビボにおいてもVAP−1に結合する
mTIEhVAP−1トランスジェニック/VAP−1ノックアウトマウス(VAP KO+TG)の産生およびインビボでヒトVAP−1がアミノグリコシドに結合するかどうかの試験へのそれらの使用
脈管系にヒトVAP−1を発現しているmTIEhVAP−1系列E35マウスを、事前に従来の遺伝子標的化技術を用いてマウスVAP−1遺伝子を非機能的変異対立遺伝子に置換することにより作製されたVAP−1ノックアウトマウスと掛け合わせた。mTIEhVAP−1導入遺伝子、マウスVAP−1の変異対立遺伝子および内因性のマウスVAP−1対立遺伝子は、すべて特異的プライマーによる精製ゲノムDNAのPCRスクリーニングによって同定され、ヒトおよびマウスVAP−1抗体を用いて免疫組織化学的に確認された。
【0052】
これらのマウスおよび対照としてのVAP−1KOマウスに経静脈的に3mg/kgのトブラマイシンを投与し、血清トブラマイシン濃度を注射後30分、1時間、2時間および3時間後に蛍光偏向免疫測定法によって測定した。
【0053】
結果
結果を、3mg/kgのトブラマイシン静脈内注射後のトブラマイシン濃度を示す図1において説明する。VAP−1+は、VAP KO+TGマウスを、そしてVAP−1−はVAP KOマウスを表す。トブラマイシンの濃度は、両群の血清において徐々に減少したが、より後の時点(2時間および3時間)でVAP KO+VAP−1の方がVAP KOマウスより血清ドブラマイシン濃度は低かった。3時間では、その差は2倍であった(図1)。これらの知見は、トブラマイシンはインビボでもヒトVAP−1に結合すること、および脈管におけるドブラマイシンの内皮VAP−1への結合が循環血中の濃度の減少の原因であることが強く示唆される。
【0054】
本発明の方法は様々な実施態様の形態で組み込まれ得、本明細書にはほんの数例が開示されているに過ぎないことは認識されよう。当業者には、他の実施態様が存在し、それが本発明の精神から逸脱しないことは自明である。したがって、記載された実施態様は例示であり、制限的なものと解釈されるべきではない。
【0055】
【化1】

【0056】
【化2】

【0057】
【化3】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】3mg/kgのトブラマイシン静脈内注射後のトブラマイシン濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンオキシダーゼ酵素活性に影響を与えることができる薬剤として有用な医薬製剤の製造のための、アミノ置換基を任意に有する1つ以上の糖部分および場合によっては他の部分を含有する化合物の使用であって、該化合物は少なくとも2個のアミノ置換基を含有する分子であり、該アミノ置換基は、一級、二級または三級アミノ基であり、また、該アミノ置換基は、該分子のある1つの単一の糖部分に結合しているか、またはいくつかの糖部分もしくは他の部分に結合しているかのいずれか、または2つの部分を連結する鎖もしくは該分子の置換基である鎖に結合している化合物の使用。
【請求項2】
アミノ置換基が、分子のある1つの単一の糖部分に結合しているか、またはいくつかの糖部分もしくは他の部分に結合しているかのいずれかである第一級アミノ置換基(NH2基)である請求項1記載の使用。
【請求項3】
分子がいくつかの糖部分および/または他の部分を含有する請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
化合物が、アミノグリコシド、特にアミノグリコシド系抗生物質である請求項1、2または3記載の使用。
【請求項5】
アミンオキシダーゼ酵素の阻害の恩恵を被る疾患または状態の治療または予防用の医薬製剤の製造のための請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、該疾患または状態が、炎症性疾患または状態;炭水化物代謝と関連する疾患;脂肪細胞の分化もしくは機能または平滑筋細胞の機能の異常と関連する疾患;または脈管系の疾患である使用。
【請求項6】
前記炎症性疾患または状態が、結合組織の炎症性疾患または状態である請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記結合組織の炎症性疾患または状態が、強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節炎、変形性関節症または退行性関節疾患、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、ベーチェット症候群、再発性多発性軟骨炎、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、全身性硬化症、好酸球性筋膜炎、多発性筋炎および皮膚筋炎、リウマチ性多発性筋痛症、脈管炎、側頭動脈炎、結節性多発性動脈炎、ヴェグナー肉芽腫症、混合結合組織病、ならびに若年性関節リウマチからなる群より選択される請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記炎症性疾患または状態が消化器系の炎症性疾患または状態である請求項5記載の使用。
【請求項9】
消化器系の炎症性疾患または状態が、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群(痙攣性結腸)、肝線維症、口腔粘膜炎(口内炎)、および再発性アフタ性口内炎からなる群より選択される請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記炎症性疾患または状態が中枢神経系の炎症性疾患または状態である請求項5記載の使用。
【請求項11】
前記中枢神経系の炎症性疾患または状態が、多発性硬化症、アルツハイマー病、および虚血性脳卒中に伴う虚血再灌流障害からなる群より選択される請求項11記載の使用。
【請求項12】
前記炎症性疾患または状態が肺の炎症性疾患または状態である請求項5記載の使用。
【請求項13】
前記肺の炎症性疾患または状態が、喘息、慢性閉塞性肺疾患および成人呼吸窮迫症候群からなる群より選択される請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記炎症性疾患または状態が皮膚の炎症性疾患または状態である請求項5記載の使用。
【請求項15】
前記皮膚の炎症性疾患または状態が、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、ばら色ひこう疹、扁平苔癬および毛孔性紅色ひこう疹からなる群より選択される請求項14記載の使用。
【請求項16】
炎症性状態が、組織外傷と関連するか、または臓器移植もしくは他の外科手術に起因する請求項5記載の使用。
【請求項17】
前記炭水化物代謝と関連する疾患が、糖尿病、アテローム性動脈硬化、血管性網膜症、網膜症、腎症、ネフローゼ症候群、多発性ニューロパチー、単発性ニューロパチー、自律神経障害、足底潰瘍または関節障害からなる群より選択される請求項5記載の使用。
【請求項18】
前記脂肪細胞の分化もしくは機能または平滑筋細胞の機能の異常と関連する疾患が、アテローム性動脈硬化症および肥満からなる群より選択される請求項5記載の使用。
【請求項19】
前記脈管系の疾患が、アテローム性動脈硬化症、非アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、末梢動脈閉塞、閉塞性血栓性血管炎(バーガー病)、ならびにレイノー病およびレイノー現象からなる群より選択される請求項5記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517004(P2007−517004A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546208(P2006−546208)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000772
【国際公開番号】WO2005/063261
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(504459559)ファロン ファーマシューティカルズ オサケ ユキチュア (9)
【Fターム(参考)】