説明

VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物

X線粉末回折および/または固体状態NMRにより特徴づけられるVI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物、ならびにその製造方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物、およびその製造方法に関する。特に、本発明は、アトルバスタチンカルシウムの新規な結晶型に関する。
【発明の背景】
【0002】
アトルバスタチンはスタチン系と呼ばれる薬剤の種類のメンバーである。スタチン系薬剤は、心血管疾患のリスクがある患者の低密度リポタンパク質 (LDL) 粒子の血液中の濃度を減少させるために用いることのできる、現在治療学的に最も有効な薬剤である。この薬剤はまた、総グリセリドおよび総コレステロールも減少させるようである。血液中の高濃度のLDLは、血液の流れを妨害し、破裂させ、血栓症を進行させ得る冠状動脈病変の形成と関連付けられてきた。Goodman and Gilman. The Pharmacological Basis of Therapeutics 879(9th ed. 1996)。血漿LDL濃度を減少させることにより、心血管疾患患者、および心血管疾患はないが高コレステロール血症の患者の臨床徴候のリスクが低下することが示されている。[Scandinavian Simvastatin Survival Study Group, 1994;Lipid Research Clinics Program, 1984a, 1984b]。
【0003】
スタチン系薬剤の作用機構は詳細に解明されている。それらは3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルアリール−コエンザイムA還元酵素(HMG−CoA還元酵素)を競合的に阻害することにより、肝臓におけるコレステロールおよび他のステロール類の合成を妨害する。HMG−CoA還元酵素は、コレステロールの生合成における律速段階であるHMG−CoAからメバロン酸塩への変換を触媒し、そのため、その阻害が肝臓におけるコレステロール濃度の減少をもたらす。超低密度リポタンパク質(VLDL)は、肝臓から末梢細胞へコレステロールおよびトリグリセリドを輸送するための生物学的ビヒクルである。VLDLは末梢細胞で異化されて脂肪酸を放出し、それは含脂肪細胞に貯蔵されるか、筋肉により酸化され得る。このVLDLは中密度リポタンパク質(IDL)に変換され、これはLDL受容体により除去されるか、またはLDLに変換される。コレステロール産生の低下は、LDL受容体数の増加、および相当するIDL代謝によるLDL粒子の産生の減少を引き起こす。
【0004】
アトルバスタチンは、[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸の一般化学名である。遊離酸はラクトン化されやすい。このラクトンの分子構造を式(I)で表す。
【0005】
アトルバスタチンは、ヘミカルシウム塩−三水和物として、LIPITORという名でWarner-Lambert Co.により市販されている。それは合成HMG−CoA還元酵素阻害剤であり、高脂血症および高コレステロール血症の治療に用いられる。アトルバスタチンカルシウムの実験式は(C3334FNCaであり、その分子量は1155.42である。
【0006】
その構造式は以下の通りである:
【化1】

【0007】
アトルバスタチンカルシウムは、白色〜灰白色の非晶質または結晶粉末であり、pHが4およびそれより低い水溶液に不溶性である。蒸留水、pH7.4のリン酸バッファー、およびアセトニトリルにはごく僅かに溶け、エタノールには僅かに溶け、そしてメタノールには大量に溶ける。
【0008】
アトルバスタチンラクトンは、米国特許第4,681,893号明細書において初めて開示され、該特許の対象とされている。式(II)に表されるヘミカルシウム塩(以下「アトルバスタチンカルシウム」という)は、R型の開環酸を有する鏡像異性体であり、米国特許第5,273,995号明細書に開示されている。この特許明細書には、このカルシウム塩が、ナトリウム塩がCaClと転位した結果得られるブライン溶液からの結晶化により得られ、さらに酢酸エチルおよびヘキサン5:3の混合物からの再結晶化により精製されることが開示されている。これら双方の米国特許明細書は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0009】
引用することにより本明細書の一部とされる、米国特許第5,003,080号明細書;同第5,097,045号明細書;同第5,103,024号明細書;同第5,124,482号明細書;同第5,149,837号明細書;同第5,155,251号明細書;同第5,216,174号明細書;同第5,248,793号明細書;同第5,280,132号明細書;同第5,342,952号明細書;同第5,007,080号明細書;同第6,274,740号明細書には、アトルバスタチンカルシウムを調製するための種々の方法および重要な中間体について記載されている。これらすべての方法では、結晶および非晶質型の混合物が得られる。
【0010】
アトルバスタチンは、カルシウム塩として調製される。このカルシウム塩は、アトルバスタチンの投与を目的として便宜に調剤できるため、望ましいものである。さらに、厳しい医薬品としての必要条件および規格に適合するために、純粋で結晶型のアトルバスタチンを調製する必要がある。
【0011】
しかも、アトルバスタチンを製造する方法は、大規模生産を可能にするものでなければならない。その上、その生成物は既に単離されている形態であることが望ましい。最後に、その生成物が特別の貯蔵条件を必要とせず、貯蔵期間が長いことが経済的に望ましい。
【0012】
前記の米国特許明細書に記載の方法では、大規模生産には不適な濾過特性および乾燥特性を有し、熱、光、酸素および湿気から保護しなければならない非晶質アトルバスタチンが開示されている。
【0013】
米国特許第5,969,156号明細書には、それらの型の発明者によりI、IIおよびIV型と表されるアトルバスタチンの3つの多形体が開示されている。該発明者らは、非晶質アトルバスタチンカルシウムに優る、それらの型の特定の加工法および治療学的な利点を特許の対象としているものの、その利点は、これまでに発明されていない他の型のアトルバスタチンカルシウムにより実現している可能性がある。
【0014】
PCT出願WO97/03960公報およびPCT出願WO00/71116公報には、非晶質アトルバスタチンカルシウムの製造法が記載されている。
【0015】
PCT出願WO97/03958公報および米国特許第6,121,461号明細書には、III型結晶アトルバスタチンカルシウムの調製法が記載され、一方で、PCT出願WO97/03959公報では、I、IIおよびIV型結晶アトルバスタチンカルシウムの調製法について教示されている。
【0016】
PCT出願WO01/36384公報には、V型アトルバスタチンカルシウムが開示されている。これらすべての特許では、いずれにせよ、既存の特許よりも優れた利点が特許の対象とされている。
【0017】
本発明は、水和および無水状態の双方の新規結晶型アトルバスタチンカルシウムを包含する。多形性は、固体状態において1以上の結晶型または非晶質型をとる、ある分子および分子複合体の特性である。式(I)のアトルバスタチンのような単一分子、または式(II)のような塩複合体は、溶解性、安定性、純度、X線回折パターンおよび固体13C−NMRスペクトルのような、異なる物理特性を有するさまざまな固体を生じ得る。このような多形体の物理特性の差異は、バルク固体中で隣接する分子(複合体)の幾何学的配置および分子間相互作用に起因する。従って、多形体とは、同じ分子式を共有する異なる固体であり、金属学における単位格子に類似するものと考えられ、さらに、多形体ファミリー中の他の型と比較して、異なる有利なおよび/または不利な物理特性を有していると考えることが可能である。医薬品の多形体の最も重要な物理特性の一つは、それらの水溶液中での溶解性、特に患者の胃液中でのそれらの溶解性である。例えば、消化管からの吸収が遅い場合、患者の胃または小腸中で不安定な薬剤については、有害な環境下に蓄積しないように、ゆっくりと溶解することが望まれる。一方、薬剤の有効性が薬剤のピーク血液レベルと相関する場合(スタチン系薬剤に共通の特性)、および薬剤が迅速に消化管系により吸収されると仮定した場合、よりすばやく溶解するものの方が、同量のゆっくり溶解するものよりも高い有効性を示す可能性が高い。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、純度、安定性、溶解性がより高いという利点を有する、無水および水和状態の、VI型と称される新規結晶多形アトルバスタチンカルシウムを提供する。
【0019】
本発明はさらに、純度、収率および安定性とは関係なく、単離および結晶化が簡単で迅速であるというメリットを有する、新規VI型アトルバスタチンカルシウムを調製するための、簡便でコスト効率の良い方法を提供する。必要となる工程数は非常に少ない。
【0020】
また、本発明によれば、収率が高く、残留溶媒量が非常に少ない。
【0021】
従って、本発明は、無水および水和状態の双方の結晶多形VI型アトルバスタチンカルシウムにかかるものである。
【0022】
この新規結晶多形VI型アトルバスタチンカルシウムは、λ1.5406Åの銅K線を用いるShimadzu XRD-6000により測定される、2θ、格子面間隔(d-spacing)、および15%を超える値の相対強度で表される以下のX線粉末回折パターンにより特徴づけられる。
【0023】
【表1】

【0024】
さらに、2θが3.7、8.6、10.2、および20.9度の位置にX線粉末回折ピークを有し、かつ、2θが19.5度の位置に一つの広いピークを有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物が提供される。
【0025】
さらに、本発明は、化学シフトがVarian分光光度計で測定された100万分の1(PPM)で表される、以下の固体C13核磁気共鳴スペクトル(NMR)により特徴づけられる結晶VI型アトルバスタチンおよびその水和物にかかるものである。
【0026】
【表2】

【0027】
固体C13NMRシグナルを、約162.689ppm、169.066ppm、179.54ppm、186.89ppm、および190.64ppmの位置に有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物が提供される。
【0028】
本発明の好ましい実施態様において、結晶VI型アトルバスタチンカルシウムは、アトルバスタチンカルシウム1モルあたり、8モルまでの水を含有する。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施態様において、結晶VI型アトルバスタチンカルシウムは、三水和物である。
【0030】
さらに、本発明によれば、水和物および無水状態の双方の新規結晶多形VI型アトルバスタチンカルシウム、すなわち、本明細書に添付の図1に示す式を有する[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸ヘミカルシウム塩(2:1)を製造する方法であって:
a)任意の型のアトルバスタチンのカルシウム塩を、脂肪族ケトンなどの有機溶媒に溶解させてアトルバスタチン塩の透明な溶液を得る工程、
b)所望により、不純物を除去する工程、
c)脱塩水を加える工程、
d)結晶化させた多形VI型アトルバスタチンカルシウムを単離し、所望により乾燥させて必要な結晶水を得る工程
を含んでなる方法が提供される。
【0031】
さらに、本発明によれば、新規な結晶多形VI型アトルバスタチンカルシウム、すなわち、図1の式を有する[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)を製造する方法であって:
a)ラクトン型のアトルバスタチンを有機溶媒、好ましくは脂肪族ケトンに溶解させて透明な溶液を得る工程、
b)土類金属水酸化物のアルカリ性水溶液、および脱塩水を、攪拌しながら加える工程、
c)結晶化させた多形VI型アトルバスタチンカルシウムを単離し、所望により乾燥させて必要な結晶水を得る工程
を含んでなる方法も提供される。
【0032】
本発明の一つの実施態様において、用いるアトルバスタチンカルシウムは、非晶質または結晶I、II、III、IVおよびV型のアトルバスタチンカルシウム、またはその混合物とすることができる。
【0033】
さらなる実施態様において、用いるアトルバスタチンカルシウムは、無水状態または9個までの水分子を含む水和状態のものとすることができる。
【0034】
さらなる実施態様において、用いる有機溶媒は、1〜3個の炭素原子を有する脂肪族ケトンから選択されるものとすることができる。用いる脂肪族ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、好ましくはアセトンとすることができる。
【0035】
さらに別の実施態様において、用いる有機溶媒は、開始化合物の100倍、好ましくは15倍、より好ましくは10倍とすることができる。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、溶解は、有機溶媒中のアトルバスタチンカルシウム懸濁液を、用いる溶媒の還流温度、好ましくは40℃を超え、80℃より低い温度、より好ましくは40〜50℃まで加熱することにより行なうことができる。
【0037】
さらなる実施態様において、不純物は濾過により除去することができる。
【0038】
さらに別の実施態様において、用いる脱塩(DM)水は、開始化合物の100倍、好ましくは10倍、より好ましくは5倍とすることができる。
【0039】
他の実施態様では、温度を維持しながらDM水を滴下することができる。
【0040】
さらに、用いるアルカリ土類金属水酸化物は、水酸化カルシウムとすることができる。土類金属水酸化物の水溶液は、好ましくは高温、好ましくは40℃を超え、80℃より低い温度、より好ましくは40〜50℃の温度で添加することができる。
【0041】
アルカリ土類金属水酸化物は、開始化合物の50倍、好ましくは10倍、より好ましくは1:1の比で添加することができる。
【0042】
さらに別の実施態様において、結晶化を行なうために、−20℃ 〜20℃(室温)の範囲、 好ましくは15〜20℃の範囲の温度まで、ゆっくりと冷却することができる。この冷却は2〜3℃で行ってよい。
【0043】
単離は、濾過、真空濾過、デカンテーション、遠心分離などの従来の方法により行なうことができる。
【0044】
乾燥は、真空トレードライヤー、ロータコン(Rotacon)真空ドライヤーなどの公知の方法により、分子の水を調整するために、50℃より高く、80℃より低い温度、好ましくは55℃で、12〜30時間行なうことができる。当業者ならば、これらの工程の温度と時間を調節することにより、所望の生成物の収率を最適化し得ることを理解するであろう。
【0045】
新規結晶VI型アトルバスタチンカルシウムは、高脂血症、高コレステロール血症、低コレステロール血症、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、黄色腫の治療のための使用、および他の薬剤との相乗作用によるフィトステロール血症、リパーゼ欠損症などの治療のための使用の可能性を有する。
【発明の具体的説明】
【0046】
新規結晶多形VI型のX線粉末ディフラクトグラム(図2)は、2θが3.7±0.2、8.6±0.2、10.2±0.2、および20.9±0.2度の位置に中程度のピークを有し、かつ、2θが19.5±0.2度の位置に一つの大きなピークを有する。
【0047】
このX線パターンは、2θが8〜14度の範囲および2θが15〜26度の範囲における2つの広い丘状のピークを特徴とする非晶質のX線パターンならびに既知の結晶I、II、III、IVおよびV型のX線パターンとは明確に区別される。
【0048】
図2のX線粉末ディフラクトグラム(diffractogram)は、λ=1.5406Åの銅放射線を用いるShimadzu XRD-6000を用いた公知の方法によって得られたものである。測定範囲は、2θが3〜40度の範囲であった。表1に、2θ、格子面間隔および15%を超える値の相対強度を示した。
【0049】
【表3】

【0050】
新規多形型の固体C13NMRスペクトルは、以下の化学シフトにより特徴づけられる。
【0051】
【表4】

【0052】
この固体C13NMRスペクトルは、図1の式の化合物のC12またはC25炭素に相当する162.698ppm、169.066 ppm、179.54、186.89ppmおよび190.64ppmにより規定される新規多形VI型のスペクトルと比較して顕著に異なるシフトを有する異なるパターンを示す既知の結晶I、II、III、IVおよびV型、ならびに非結晶型のスペクトルとは、明確に区別される。図3のスペクトルは、Varian分光光度計を300MHzで作動させて得られたものである。この装置は13Ccpマスプローブヘッドを備えており、サンプルは、回転速度7.0KHzで回転させた。マジック角およびプロトンデカップリング効率は、データ収集前に最適化した。
【0053】
XRDおよびNMRは、摩砕していないサンプルについて行った。
【0054】
この新規多形型は、無水の形態、ならびに水和物の形態で存在する。これは、9個までの水分子を包含する。しかし、三水和物が好ましい。
【0055】
本発明は、以下の実施例によりさらに例示されるが、これは特許請求される有効な範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1:
室温にて、アトルバスタチンカルシウム(100.0g)をアセトン(1.0Ltr.)に加えた。透明な溶液を得るために、この混合物を50℃にて30分間加熱した。50℃にて、この溶液にDM水(500ml)を滴下した。この溶液を2℃/分の速度で室温までゆっくりと冷却し、その間に新規多形型のアトルバスタチンカルシウムが結晶化した。この生成物を真空濾過により濾過し、次いで真空トレードライヤー中、50〜55℃で24時間乾燥させる。
【0057】
【表5】

【0058】
実施例2:
室温にて、アトルバスタチンカルシウム(100.0g)をアセトン(100.0ml)に加えた。透明な溶液を得るために、この混合物を50℃にて30分間加熱した。50℃にて、この溶液にDM水(100ml)を滴下した。この溶液を2℃/分の速度で室温までゆっくりと冷却し、その間に新規多形型のアトルバスタチンカルシウムが結晶化した。この生成物を真空濾過により濾過し、次いで真空トレードライヤー中、55〜60℃で28時間乾燥させる。
【0059】
【表6】

【0060】
実施例3:
室温にて、アトルバスタチンカルシウム(10.0g)をアセトン(1.0Ltr.)に加えた。透明な溶液を得るために、この混合物を45℃にて20分間加熱した。45℃にて、この溶液にDM水(1.0Ltr.)を滴下した。この溶液を2℃/分の速度で室温までゆっくりと冷却し、その間に新規多形型のアトルバスタチンカルシウムが結晶化した。この生成物を真空濾過により濾過し、次いで真空トレードライヤー中、55〜60℃で24時間乾燥させる。
【0061】
【表7】

【0062】
実施例4:
室温にて、ラクトン型アトルバスタチンカルシウム(100.0g)をアセトン(1.0Ltr.)に加えた。これに、1つのロットにおいて(in one lot)DM水(100ml)に懸濁させた水酸化カルシウム(10.0g)を加えた。この反応物を、ラクトン型アトルバスタチンカルシウムが消失するまで(TLC、2.0時間)45〜46℃にて攪拌した。45℃にてDM水(400ml)を滴下した。この溶液を2℃/分の速度で室温までゆっくりと冷却し、その間に新規多形型のアトルバスタチンカルシウムが結晶化した。この生成物を真空濾過により濾過し、次いで真空トレードライヤー中、50〜55℃で20時間乾燥させる。
【0063】
【表8】

【0064】
実施例5:
室温にて、ラクトン型アトルバスタチンカルシウム(10.0g)をアセトン(10.0ml)に加えた。これに、1つのロットにおいて(in one lot)DM水(5ml)に懸濁させた水酸化カルシウム(1.0g)を加えた。この反応物を、ラクトン型アトルバスタチンカルシウムが消失するまで(TLC、2.0時間)50℃にて攪拌した。50℃にてDM水(5ml)を滴下した。この溶液を2℃/分の速度で室温までゆっくりと冷却し、その間に新規多形型のアトルバスタチンカルシウムが結晶化した。この生成物を真空濾過により濾過し、次いで真空トレードライヤー中、55〜60℃で24時間乾燥させる。
【0065】
【表9】

【0066】
実施例6:
室温にて、ラクトン型アトルバスタチンカルシウム(10.0g)をアセトン(1.0Ltr.)に加えた。これに、1つのロットにおいて(in one lot)DM水(100ml)に懸濁させた水酸化カルシウム(1.0g)を加えた。この反応物を、ラクトン型アトルバスタチンカルシウムが消失するまで(TLC、2.0時間)45〜46℃で攪拌した。45〜46℃にてDM水(900ml)を滴下した。この溶液を2℃/分の速度で室温までゆっくりと冷却し、その間に新規多形型のアトルバスタチンカルシウムが結晶化した。この生成物を真空濾過により濾過し、次いで真空トレードライヤー中、55〜60℃で24時間乾燥させる。
【0067】
【表10】

【0068】
本発明は、その特定の実施態様について記載されているが、一部の変形および同等物は当業者に明らかであり、本発明の範囲内に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の新規結晶多形VI型アトルバスタチンカルシウムの構造式を表す。
【図2】VI型アトルバスタチンカルシウムのX線粉末ディフラクトグラムである。
【図3】VI型アトルバスタチンカルシウムの固体C13NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項2】
λ1.5406Åの銅K線を用いるShimadzu XRD-6000により測定される、2θ、格子面間隔、および15%を超える値の相対強度で表される以下のX線粉末回折パターン:
【表1】

を示す、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項3】
2−θが約3.7、8.6、10.2、18.0および20.9度の位置にX線粉末回折ピークを有し、かつ、2−θが19.5度の位置に一つの大きなピークを有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項4】
化学シフトが100万分の1(PPM)で表される以下の固体C13核磁気共鳴スペクトル(NMR):
【表2】

を示す、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項5】
固体C13NMRシグナルを、約162.689ppm、169.066ppm、179.54ppm、186.89ppm、および190.64ppmの位置に有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項6】
アトルバスタチンカルシウム1モルあたり、8モルまでの水を含有する、結晶VI型アトルバスタチンカルシウム。
【請求項7】
三水和物である、結晶VI型アトルバスタチンカルシウム。
【請求項8】
水和物および無水状態の双方の結晶VI型アトルバスタチンカルシウム、すなわち本明細書に添付の図1に示す式を有する[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸ヘミカルシウム塩(2:1)を製造する方法であって、
a)任意の型のアトルバスタチンのカルシウム塩を、脂肪族ケトンなどの有機溶媒に溶解させてアトルバスタチン塩の透明な溶液を得る工程、
b)所望により、不純物を除去する工程、
c)脱塩水を加える工程、
d)結晶化させた多形VI型アトルバスタチンカルシウムを単離し、所望により乾燥させて必要な結晶水を得る工程
を含んでなる、方法。
【請求項9】
新規な結晶多形VI型アトルバスタチンカルシウム、すなわち図1の式を有する[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)を製造する方法であって、
a)ラクトン型のアトルバスタチンを有機溶媒、好ましくは脂肪族ケトンに溶解させて透明な溶液を得る工程、
b)土類金属水酸化物のアルカリ性水溶液、および脱塩水を、攪拌しながら加える工程、
c)結晶化させた多形VI型アトルバスタチンカルシウムを単離し、所望により乾燥させて必要な結晶水を得る工程
を含んでなる、方法。
【請求項10】
用いるアトルバスタチンカルシウムが、非晶質もしくは結晶I、II、III、IVおよびV型のアトルバスタチンカルシウム、またはその混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
用いるアトルバスタチンカルシウムが、無水状態または9個までの水分子を含む水和状態のものである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
用いる有機溶媒が、1〜3個の炭素原子を有する脂肪族ケトンから選択されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
用いる脂肪族ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、好ましくはアセトンである、請求項8または10に記載の方法。
【請求項14】
用いる有機溶媒が、開始化合物の100倍、好ましくは15倍、より好ましくは10倍である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
溶解が、有機溶媒中のアトルバスタチンカルシウム懸濁液を、用いる溶媒の還流温度、好ましくは40℃を超え、80℃より低い温度、より好ましくは40〜50℃まで加熱することにより行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
不純物が濾過により除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
用いる脱塩(DM)水が、開始化合物の100倍、好ましくは10倍、より好ましくは5倍である、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
温度を維持しながらDM水が滴下される、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
用いるアルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
土類金属水酸化物の水溶液が、好ましくは、高温度、好ましくは40℃を超え、80℃より低い温度、より好ましくは40〜50℃の温度で添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
添加されるアルカリ土類金属水酸化物が、開始化合物の50倍、好ましくは10倍、より好ましくは1:1の比である、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
−20℃ 〜20℃(室温)の範囲、好ましくは15〜20℃の範囲の温度までゆっくりと冷却されて結晶化が行なわれる、請求項8または9に記載の方法。この冷却は2〜3℃で行ってよい。
【請求項23】
単離が、濾過、真空濾過、デカンテーション、遠心分離などの従来の方法により行われる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項24】
乾燥が、真空トレードライヤー、ロータコン真空ドライヤーなどの既知の手段により、50℃より高く、80℃より低い温度、好ましくは55℃で、12〜30時間行われる、請求項8または9に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
λ1.5406Åの銅K線を用いるShimadzu XRD-6000により測定される、15%を超える相対強度を有するX線粉末回折パターン2θ値:3.7365、7.7200、8.6985、10.2185、12.5933、17.9103、18.3600、19.4031、20.2800、20.8200、22.5122、および25.5848により特徴づけられる、結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項2】
2θが約3.7、18.0および20.9度の位置にX線粉末回折ピークを有し、かつ、2θが8.6、10.2および19.5度の位置に大きなピークを有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項3】
化学シフトが100万分の1(PPM)で表される以下の固体C13核磁気共鳴スペクトル(NMR):
【表1】

を示す、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項4】
固体C13NMRシグナルを、約162.689ppm、169.066ppm、179.54ppm、186.89ppm、および190.64ppmの位置に有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウムまたはその水和物。
【請求項5】
アトルバスタチンカルシウム1モルあたり、8モルまでの水を含有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウム。
【請求項6】
アトルバスタチンカルシウム1モルあたり、3モルまでの水を含有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウム。
【請求項7】
177〜182℃の融点を有する、請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウム。
【請求項8】
水和物および無水状態の双方の請求項1に記載の結晶VI型アトルバスタチンカルシウム、すなわち本明細書に添付の図1に示す式を有する[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸ヘミカルシウム塩(2:1)を製造する方法であって、
a)任意の型のアトルバスタチンのカルシウム塩を、脂肪族ケトンなどの有機溶媒に、好ましくは周囲温度から還流温度までの範囲の温度で溶解させてアトルバスタチン塩の透明な溶液を得る工程、
b)所望により、不純物を除去する工程、
c)同じ温度を維持しながら脱塩水を加える工程、
d)結晶化させた多型VI型アトルバスタチンカルシウムを単離し、所望により乾燥させて必要な結晶水を得る工程
を含んでなる、方法。
【請求項9】
新規な結晶多形VI型アトルバスタチンカルシウム、すなわち図1の式を有する[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)を製造する方法であって、
a)ラクトン型のアトルバスタチンを有機溶媒、好ましくは脂肪族ケトンに、周囲温度から還流温度までの範囲の温度で溶解させて透明な溶液を得る工程、
b)土類金属水酸化物のアルカリ性水溶液、および脱塩水を、同じ温度で攪拌しながら加える工程、
c)結晶化させた多形VI型アトルバスタチンカルシウムを単離し、所望により乾燥させて必要な結晶水を得る工程
を含んでなる、方法。
【請求項10】
用いるアトルバスタチンカルシウムが、非晶質もしくは結晶I、II、III、IVおよびV型のアトルバスタチンカルシウム、またはその混合物である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
用いるアトルバスタチンカルシウムが、無水状態または9個までの水分子を含む水和状態のものである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
用いる有機溶媒が、1〜3個の炭素原子を有する脂肪族ケトンから選択されるものである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
用いる脂肪族ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、好ましくはアセトンである、請求項8、9または12に記載の方法。
【請求項14】
用いる有機溶媒が、開始化合物の100倍、好ましくは15倍、より好ましくは10倍である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項15】
溶解が、有機溶媒中のアトルバスタチンカルシウム懸濁液を、40℃を超え、80℃より低い温度、より好ましくは40〜50℃まで加熱することにより行われる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項16】
不純物が濾過により除去される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項17】
用いる脱塩(DM)水が、開始化合物の100倍、好ましくは10倍、より好ましくは5倍である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項18】
用いるアルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
添加されるアルカリ土類金属水酸化物が、開始化合物の50倍、好ましくは10倍、より好ましくは1:1の比である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
−20℃ 〜20℃(室温)の範囲、好ましくは15〜20℃の範囲の温度までゆっくりと冷却されて結晶化が行なわれる、請求項8または9に記載の方法。この冷却は2〜3℃で行ってよい。
【請求項21】
単離が、濾過、真空濾過、デカンテーション、遠心分離などの従来の方法により行われる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項22】
乾燥が、真空トレードライヤー、ロータコン真空ドライヤーなどの既知の手段により、50℃より高く、80℃より低い温度、好ましくは55℃で、12〜30時間行われる、請求項8または9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−503024(P2006−503024A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534017(P2004−534017)
【出願日】平成14年9月3日(2002.9.3)
【国際出願番号】PCT/IN2002/000180
【国際公開番号】WO2004/022053
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(505079224)モレペン、ラボラトリーズ、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MOREPEN LABOLATORIES LIMITED
【Fターム(参考)】