説明

VoIPアクセサリ

電子機器12用のアクセサリ24は、当該アクセサリと当該電子機器との間でデータを交換するインタフェースと、ボイス・オーバ・インターネットプロトコル(VoIP)回路82とを含む。VoIP回路82は、VoIPの少なくとも一部を上記電子機器又は上記アクセサリにおいて実現するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音声通信の分野に関し、特に、ボイス・オーバ・インターネットプロトコル(VoIP)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電話ネットワークは、個々の通話の継続時間の間、専用のエンドツーエンド回路をユーザに提供するスイッチドネットワークである。この回路は、被呼者番号に基づいて、発呼側スイッチ、(必要な場合)タンデムスイッチ、着呼側スイッチの間で予約され、エンドツーエンド回路が形成される。
【0003】
近年、電話での通話は、インターネットプロトコル(IPネットワーク)を利用するパケット交換ネットワークを介してデジタルネットワーク上で送信されるようになっている。この送信はボイス・オーバIP(VoIP)送信と命名されている。パケット交換IPネットワークは、ユーザ間で共有されるバーチャルサーキット接続を提供するものである。IPネットワークの両端にわたって送信される音声情報は、デジタルデータに変換され、次いで、複数の個別のパケットに分割される。個々のパケットは、異なるネットワーク経路を経て伝播して最終の宛先に着信することができ、そこでパケットは適当なシーケンスで再構成され、元の音声情報が再構成される。
【0004】
例えば、第1及び第2のユーザ間でのインターネット電話セッションにおいて、これらのユーザのそれぞれのインターネットサービスプロバイダを介して第1のユーザの構内における通信設備と、第2のユーザの構内における通信設備との間でインターネット接続が提供される。電話セッション中、個々のユーザの通信設備はユーザの音声その他の音のサンプルストリームを生成し、このサンプルストリームが解析されて「オーディオフレーム」と呼ばれる一連のグループに変えられる。個々のオーディオフレームは所定の所望の数のサンプルを含み、所望のサンプリング周期に対応する。通信設備は、PCM、ADPCM又はLPCのような適当な音声符号化方式を用いて、シンボルのコンステレーションの形で個々のオーディオフレームにおいてこれらのサンプルの符号化を行う。
【0005】
個々の符号化済みオーディオフレームはリアルタイム転送プロトコルに従って「リアルタイムトランスポートパケット」の形でカプセル化される。ITU−T H323インターネット電話規格の下で、オーディオフレームは、頭字語の「RTP」で呼ばれるリアルタイムプロトコルに従ってRTPパケットの形でカプセル化される。RTPは、Schulzrinne等による「RTP:リアルタイムアプリケーション用トランスポートプロトコル(RTP: A Transport Protocol for Real-Time Applications)」(RFC1889、インターネット技術標準化委員会、1996年1月)において規定されている。
【0006】
RFC1889によれば、本明細書で以下「RTPパケット」と呼ぶリアルタイムトランスポートパケットはオーディオフレームをカプセル化するものであり、このパケットにはシーケンス番号を有するヘッダが含まれている。このシーケンス番号は、通信設備により生成されたオーディオフレームのシーケンス内の別のオーディオフレームに対して相対的な、RTPパケット内のオーディオフレームの時間的順序に対応するものである。次いで、個々のRTPパケットは、インターネットトランスポートプロトコルに従って好適なデータパケットヘッダと共にデータパケットの形で順次パッケージ化される。一般に、「RTP送信」用インターネットトランスポートプロトコルはUDPである。上記データパケットはインターネット上でデータストリームパケットの形で相手方ユーザへ送信される。
【0007】
相手方ユーザがデータストリームパケットを受信すると、相手方ユーザの通信設備はストリーム内の個々のデータパケットと、データパケットのそれぞれのヘッダの密閉されたRTPパケットとを剥ぎ取り、RTPパケット内のオーディオフレーム「ペイロード」の「アンロード」を行う。次いで、通信設備は、オーディオフレームのそれぞれのRTPパケットのシーケンス番号に従って、アンロードされたオーディオフレームを連続して連結する。連結されたオーディオフレームは復号化され、次いで、アナログオーディオ信号に変換されて、データパケットを送信するユーザの音声その他の音を再現する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ボイス・オーバ・インターネットプロトコル(VoIP)送信は信頼性が高く、かつ、効率的な方法であることは検証済みである。この方法では、比較的低価格で長距離にわたって音声通信の交換を行うことができる。現在、PSTN(公衆交換電話網)と、移動電話機と、パーソナルコンピュータとの少なくともいずれかを用いてインターネットを介する音声通信が実現されている。しかし、移動電話機におけるVoIPの実施構成は、技術的には実現可能ではあるものの、ある種の状況においては魅力に欠けてしまう可能性がある。さらに詳細には、モバイルすなわちセルラサービスプロバイダは、このモバイルすなわちセルラ回線交換ネットワークを経由する音声通信の販売によってその収益を得ている。VoIPは、これらのネットワークによって処理される音声トラヒックの量(したがって収益)を大幅に減少させる可能性があるため、セルラサービスプロバイダはVoIP機能を備える電話機の提供を渋ることが考えられる。
【0009】
本発明は、移動電話機等のような移動無線端末を作動可能にする装置及び方法を提供するものであり、これらは、VoIP機能なしで提供され(それによってセルラサービスプロバイダとの潜在的衝突が防止される)、しかも、移動電話機においてVoIP機能を実現するために、例えばヘッドセットのようなアクセサリを介して容易に変更を行うことを可能にするものである。自分の移動電話機においてVoIP機能の実現を望むユーザは、本発明によるVoIP処理回路を含むアクセサリを簡単に利用することができる。VoIP処理回路は移動電話機内のアクセサリにおいて、又は、電話機とアクセサリとを組み合わせた形でVoIP機能を自動的に実現するように構成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、電子機器用アクセサリには、アクセサリと電子機器との間でデータ交換を行うインタフェース、並びに、電子機器又はアクセサリにおいてVoIPの少なくとも一部を実現するように構成されるVoIP回路が含まれる。
【0011】
一実施形態において、アクセサリは、通信用ヘッドセット、バッテリパック、メモリ、又は他の電子機器であってもよく、また、別の実施形態では、電子機器は移動電話機であってもよい。
【0012】
一実施形態において、VoIP回路は、プロセッサと、プロセッサにより実行可能なコードとを含むものであってもよいし、さらに、別の実施形態では、VoIP回路は、メモリ及びメモリ内に記憶されたコードを含むものであってもよい。さらに、コードはアクセサリのファームウェアを備えるものであってもよい。別の実施形態では、VoIP回路はハードウェアにおいて実現することができる。
【0013】
一実施形態において、インタフェースはブルートゥースインタフェース、又は、アクセサリと電子機器間の電気的接続であってもよい。
【0014】
一実施形態において、VoIP回路はクライアント・サーバ構成を形成することができる。別の実施形態では、アクセサリがサーバであり、かつ、電子機器がクライアントであってもよく、あるいは、アクセサリがクライアントであり、かつ、電子機器がサーバであってもよい。
【0015】
一実施形態において、電子機器が少なくとも1つのユーザインタフェースを制御することができ、そして、アクセサリと電子機器の少なくともいずれかがVoIP処理を制御することができる。別の実施形態では、ユーザインタフェースは、電子電話帳、電話番号、着信音、キーパッドエントリ又はデータ表示のうちの少なくとも1つであってもよい。別の実施形態では、電子機器は入力/出力端末として動作するように構成することができる。
【0016】
一実施形態において、VoIPは、電子機器とアクセサリとにおいて実現されるか、電子機器とアクセサリとの間で共有されるものであってもよい。
【0017】
本発明の別の側面によれば、電子機器用のアクセサリはメモリ及びメモリ内に記憶されたコンピュータプログラムを含み、該コンピュータプログラムは、アクセサリと電子機器との間で通信リンクを確立するコードであって、通信リンクを介してVoIPの少なくとも一部を電子機器へ転送するコードを備え、このコードによって、電子機器を用いてVoIP通信の確立を行うことが可能となる。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、電子機器においてVoIPを実現する方法は、電子機器の電子機器とアクセサリとの間でデータリンクを確立するステップと、アクセサリを用いて、電子機器又はアクセサリにおいてVoIP機能の少なくとも一部を実現するように図るステップとを含む。
【0019】
一実施形態において、VoIP機能の少なくとも一部を実現するステップは入力/出力端末として電子機器を構成するステップを含むことができる。
【0020】
一実施形態において、データリンクを確立するステップは無線データリンクを使用するステップを含むことができる。別の実施形態では、無線データリンクを使用するステップはブルートゥースデータリンクを使用するステップを含むことができる。
【0021】
一実施形態において、クライアント・サーバ構成の確立を行うことができる。別の実施形態では、アクセサリをサーバとして構成し、かつ、電子機器をクライアントとして構成することが可能であり、あるいは、アクセサリをクライアントとして構成し、かつ、電子機器をサーバとして構成することが可能である。
【0022】
一実施形態において、アクセサリを使用するステップは、ヘッドセット、メモリ、バッテリパック、又は、第2の電子機器のうちの少なくとも1つを使用するステップを含むことができる。
【0023】
一実施形態において、電子機器とアクセサリとの少なくともいずれかを介して、VoIPゲートウェイへのアクセスを行うことができ、このVoIPゲートウェイへのアクセスは、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、又は、セルラ回線交換ネットワークを介して行うこともできる。
【0024】
一実施形態において、電子機器又はアクセサリにおいてVoIP機能の少なくとも一部を実現するステップは、音声サンプリングとネットワーク制御アルゴリズムとを実現するステップを含むものであってもよい。
【0025】
一実施形態において、デジタルコンピュータの内部メモリの中へ直接ロード可能なコンピュータプログラム製品は、前記製品がコンピュータ上で実行されるとき、電子機器においてVoIPを実現する方法を実施するためのソフトウェアコード部分を含むことができる。
【0026】
本発明の別の側面によれば、電子機器において、電子機器用のアクセサリを介してボイス・オーバ・インターネットプロトコル(VoIP)を実現するための、コンピュータ使用可能記憶媒体に格納されたコンピュータプログラムは、電子機器とアクセサリとの間でデータリンクを確立するコードであって、電子機器又はアクセサリにおいてVoIPの少なくとも一部を実現するコードを含むことができる。
【0027】
次いで、上述の目的及び関連する目的を達成するために、本発明は、本明細書において以下完全に記述され、かつ、請求項において特に指摘されている特徴を備えるものである。以下の説明及び付属図面は、本発明の或る例示の実施形態を詳細に記載するものであり、これらは本発明の原理を適切に採用することができる種々の方法のうちのほんのいくつかの方法を示すものである。
【0028】
以下の図面及び詳細な説明を検証するとき、本発明の別のシステム、方法、特徴、及び利点は当業者には明らかであるか、あるいは明らかになる。すべてのこのような追加システム、方法、特徴、及び利点は上記説明の中に含まれ、本発明の範囲内に属し、さらに、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0029】
本発明は1以上の実施形態に関して図示され、説明されるが、本明細書を読み、理解するとき、当業者であれば均等物及び変更を思いつくであろうことを理解されたい。本発明は、すべてのこのような均等物及び変更を含み、請求項の範囲によってのみ限定されるものである。
【0030】
また、それぞれの図面/実施形態において種々の特徴について説明し、例示するが、本発明の1以上の別の図面又は実施形態において所定の図面又は実施形態の特徴を用いてもよいことは理解できよう。
【0031】
本明細書で使用される場合、「備える/備えている(comprise/comprising)」という用語は、言及された特徴、数値、ステップ又は構成の存在を特定するために用いられるが、これら以外の特徴、数値、ステップ、構成、又はこれらのグループの存在又は追加を排除するものではない、という点を強調しておく。
【0032】
以下の図面を参照しながら、本発明の多くの側面をより良く理解することが可能となる。図面の構成要素は必ずしも縮尺どおりであるとはかぎらない。むしろ本発明の原理を明瞭に例示することが強調されている。同様に、1つの図面に描かれている要素及び特徴は追加の図面に描かれている要素及び特徴と組み合わせることができる。さらに、図面において、同じ参照番号はいくつかの図を通して対応する要素を指すものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
電子機器という用語は携帯無線通信機器を含むものとする。以後、移動体無線端末とする携帯無線通信機器という用語は、移動電話機、コミュニケータ、すなわち、電子手帳、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、スマートフォン等のような機器を含むものとする。
【0034】
本発明は、ユーザが、移動電話機等のような移動無線端末においてボイス・オーバ・インターネットプロトコル(VoIP)機能を迅速かつ容易に実現することを可能にするものである。さらに詳細には、本発明は、移動電話機のアクセサリを介してVoIP機能を作動可能にするものである。本明細書に記載の実施形態において、移動無線端末とは移動電話機であり、アクセサリとはスピーカとマイクロホンを含む通信用ヘッドセットである。しかし、本明細書で使用されているように、アクセサリは、ヘッドセットのみに限定されるわけではなく、追加が可能であり、移動電話機と共に使用できる任意の装置を含むものであってもよい。この装置は、例えばメモリカード、バッテリパック、ヘッドセット、(ブルートゥース互換電話機などの)他の電話機、又は、移動電話機に追加され、移動電話機と通信が可能な他の任意の装置を含むか、メーカーとサービスプロバイダの少なくともいずれかによって提供されるような移動電話機の一部ではない装置を含むかのいずれかであってもよい。
【0035】
アクセサリは(ブルートゥースなどの)無線リンク又は(ケーブルなどの)有線通信リンクのようなインタフェース回路、アクセサリが移動電話機とデータ交換を行うことを可能にするメモリインタフェース等を含む。アクセサリはVoIP処理回路を含み、その場合、VoIP処理回路は、移動電話機とアクセサリとの少なくともいずれかを再構成してVoIP通信を作動可能にする。ひとたび構成されると、VoIP機能は、移動電話機の中や、アクセサリの中に常駐することもできれば、電話機とアクセサリとの間で共有することもできる。例えば、アクセサリがサーバとしての機能を果たし、電話機がクライアントとしての機能を果たすことができる。その場合、アクセサリは、音声データパケットの転送を調整したり、別様にパケット交換ネットワークを介して音声データパケットの転送を処理したりするが、一方、移動電話機は、(キーパッドエントリ及びデータディスプレイ表示などの)I/O装置として使用される。上記とは別に、上記役割を逆にすることが可能であり、電話機がサーバとして機能することも可能である。
【0036】
まず図1を参照すると、例示の通信ネットワーク10が示され、パケット交換IPネットワークを用いる電話による通話が作動可能にされる。図1において、ユーザは、移動電話機12等のような第1の通信装置を使用して、第1の移動電話機タワー14と第1の移動交換網16、第1のVoIPゲートウェイ18、パケット交換IPネットワーク20、第2のVoIPゲートウェイ18、及び第2の移動交換網16とタワー14を経由して、第2の通信装置12への通信を行う。上記とは別に、通信装置12は、例えば、VoIPゲートウェイ18にアクセスするために無線ルータ22等を用いて、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を経由してVoIPゲートウェイ18にアクセスすることも可能である。このような接続は、例えば、802.11a、b、g規格の少なくともいずれかに記載の無線通信プロトコルを使用して、あるいは、他の任意の無線通信プロトコルで実現が可能である。VoIPを利用する音声通信は、移動電話機12を経由して、又は、例えば、ブルートゥースヘッドセットのようなアクセサリ24を介して直接行うことが可能である。
【0037】
例えば、(地上ベースの電話機26用の公衆交換電話網(PSTN)30などの)適当なインフラストラクチャが適切に配置されていれば、地上ベースの電話機26、音声機能が設けられたパーソナルコンピュータ(PC)又はラップトップコンピュータ28、衛星電話機(図示せず)、ハンドヘルド型コンピュータ(図示せず)などの別の装置、あるいは、音声、又は映像付きの音声を送信することが可能な他の任意の装置を用いて、通信ネットワーク10を介して通信を行うことが可能となることは、当業者には理解されよう。音声機能が設けられたPC又はラップトップコンピュータ28が用いられる場合、PC又はラップトップコンピュータは、マイクロホンと、少なくとも1つのスピーカと、サポート用ソフトウェアとを必要とすることになる。さらに、ユーザは、呼を開始するか、呼を受信するかのいずれかを行うことができ、そして、この呼は、(移動電話機12などの)1つのタイプの装置によって開始し、(陸上ベースの電話機26又はPC28などの)別のタイプの装置により受信することができる。また、ユーザは、通話を行うとき、他の人とコンタクトすることのみに限定されるわけではなく、代わりに、コンピュータを含む任意の形の音響再生装置とコンタクトすることも可能である。
【0038】
さらに図1を参照してわかるように、VoIPゲートウェイ18はパケット交換IPネットワーク20とインタフェースされる。このパケット交換IPネットワーク20はインターネット、LAN又はWANであってもよい。パケット交換IPネットワーク20は、呼設定機能及び設定解除機能を別のゲートウェイへ提供する呼処理用サーバ(CPS)32を使用する。このCPS32はまた、呼状態の更新表示及びすべてのゲートウェイポートの物理的位置も維持する。CPS32は、地理的に分散したネットワークを通じて数千の同時発信コールをサポートすることができる。CPS32は、パケット交換IPネットワーク20に接続されたPC、又は、ファームウェアのような複雑な論理回路を実現できる任意の装置に接続されたPC上で機能するソフトウェアの形で実現可能である。
【0039】
次に図2Aへ移ると、本発明と関連して使用できる例示の移動電話機12のブロック図が示されている。移動電話機12は無線回路42と動作可能に結合されたアンテナ40を含む。無線回路42は、アクセサリと通信するための(ブルートゥース又は別の無線通信技術などの)アクセサリ通信回路42a、(セルラタワー又は衛星を介するような)一般的な移動電話ネットワークを介して通信を行うための一般的な移動電話送信機/受信機42b、及び(LAN又はWANと通信を行うためのWiFiとも呼ばれるような)無線ネットワーク通信回路42cを含むものであってもよい。図示されてはいないが、それぞれの無線回路42a、42b及び42cのそれぞれに別個のアンテナを提供できることは理解できよう。移動電話機はまたマイクロホン46及び音声処理回路44も含み、該処理回路は、スピーカ48と協同して、移動電話機12からの音の入出力を可能にする。さらに、I/Oインタフェース50は、(バッテリなどの)電源52から移動電話機12の種々のセクションへ電力を分配し、次いで、I/Oインタフェース50はデータをキーパッド54から受信し、ディスプレイ56へデータを提供する。無線回路42と、音声処理回路44と、I/Oインタフェース50とは、(CPUなどの)プロセッサ58と動作可能に結合し、該プロセッサは、メモリ60及びタイマ62と協同して、メモリ60に記憶されたコードを実行して、例えば、無線音声通信、キーパッドエントリの認識、表示制御、WANインタフェース、アクセサリ通信等の移動電話機機能を実現するようにする。
【0040】
ここで図2Bを参照してわかるように、(無線ヘッドセットなどの)例示のアクセサリのブロック図24が示されている。アクセサリ24は、本例では無線回路62と動作可能に結合されたアンテナ61を含むインタフェース60を含む。無線回路62は、移動電話機12の対応するアクセサリ通信回路42bと通信するように構成される。図示されてはいないが、無線回路62は、(LAN、WAN等の)ローカルな又は広域ネットワークと通信するためのWiFi回路を含むものであってもよい。移動電話機12のようなアクセサリ24は音声処理回路64も含み、該処理回路はマイクロホン66及びスピーカ68と協同して、アクセサリ24からの音の入出力を可能にする。アクセサリは、(バッテリなどの)電源72からアクセサリ24の種々のセクション及びI/Oインタフェース70へ電力を分配するI/Oインタフェース70も含み、I/Oインタフェース70はアクセサリのボタン74からデータを受信する。無線回路62、音声処理回路64及びI/Oインタフェース70はCPU76と動作可能に結合される。CPU76は、メモリ78及びタイマ80と協同して、メモリ78に記憶されたコードを実行する。該コードは、例えば、アクセサリ24と移動電話機12間での音声データの交換のようなアクセサリ機能を実現する。アクセサリは、移動電話機12とアクセサリ24との少なくともいずれかにおいてVoIP機能を実現するVoIP処理回路82も含む。VoIP処理回路82はCPU76内に図示されてはいるが、VoIP処理回路82がCPU76から分離されて実装可能であることは理解できよう。
【0041】
図2Bに例示の構成要素は、すべてのアクセサリに必要なものではなく、単にヘッドセットとして実現されるアクセサリの一般的な又は例示的な構成要素であることを付記しておく。アクセサリが、例えば、メモリカードであれば、このようなアクセサリはアンテナ60、無線受信機62、音声処理回路44、スピーカ48、マイクロホン46等を必要としないことになる。さらに、メモリカードとして実現されたアクセサリ用インタフェース60は、メモリを移動電話機回路と電気的に接続する電気接点を含むようにしてもよい。
【0042】
VoIP処理回路82は、アクセサリ24のCPU76によって、あるいは、移動電話機12のCPU58によって実行されるソフトウェアを介して、あるいは、例えば、専用ハードウェア回路などを介して実現可能である。(例えば、メモリカードとして実現されたアクセサリ上にソフトウェアをプリロードして、カードが電話機にインストールされたとき、プロセッサ58によってソフトウェアを実行することが可能である)。一実施形態において、VoIP処理回路82は移動電話機12をアクセサリ24に検出させ、すなわち移動電話機12と「ペアリング」を行い、それによってそれぞれの装置12と24との間で通信リンクを確立するように構成される(アクセサリは無線装置であると仮定する)。ひとたび通信リンクが確立されると、VoIP処理回路82は、(Java(登録商標)アプリケーション等の)コードを移動電話機にインストールし、次いで、該コードは移動電話機12のCPU58によって実行される。このコードは、インストールの確認、VoIPクライアントの選択及び電話帳の設定を含むVoIPの設定を開始する(但しこれらの設定のみに限定されるわけではない)。さらに、VoIP処理回路82は、移動電話機12とアクセサリ24との少なくともいずれかにおいて音声サンプリングコードを実現する。この音声サンプリングコードは、パケット交換ネットワーク20を介して送信されるデータ量を減らすことができるように、圧縮アルゴリズム等を含むようにしてもよい。VoIP処理回路82はまた、(パスワードなどの)ネットワークセキュリティ機能を含むことができるネットワーク制御アルゴリズム及びダイアル機能も実現する。
【0043】
呼確立が終了したとき、VoIPゲートウェイ18への接続は作動可能にされる。この接続は(例えば、無線ルータ22を経由してVoIPゲートウェイ18にアクセスする移動電話機12の無線ネットワーク通信回路42cを介するように)WANを介して、あるいは、(例えば、移動交換網16を経由してVoIPゲートウェイ18にアクセスする移動電話送信機/受信機42bを介するように)移動サービスプロバイダのネットワークを介して行うようにしてもよい。
【0044】
VoIP処理回路82は移動電話機12内で完全にVoIP機能を実現するか、アクセサリ24内で完全にVoIP機能を実現するか、又は、これら双方においてVoIP機能を実現することができる(例えば、それぞれの装置において機能の適当な一部を実現することができる)。VoIP機能がアクセサリ24内で完全に実現された場合、移動電話機12は(入力/出力端末などの)「ダム端末 (dumb terminal) 」になる。すなわち、移動電話機12は、単にデータエントリ及びデータ表示用として使用され、一方、すべてのVoIP関連機能は、アクセサリ24によって実行される。このような構成では、アクセサリは、VoIPゲートウェイ18にコンタクトし、データ交換を調整するサーバと考えることができ、一方、移動電話機はアクセサリ24とつながるクライアントと考えることができる。
【0045】
一実施形態において、移動電話機12がユーザインタフェースの少なくとも一部を処理するか、制御するのに対して、VoIP機能はアクセサリ24、電話機12又はアクセサリと電話機の双方によって処理されるか、制御される。例えば、移動電話機12は、(キーパッド54を介して行うような)キーストロークエントリ用として使用してもよいし、(ディスプレイ56を介して氏名、番号、設定パラメータ等の表示を行うような)データ表示用として使用してもよいし、(電話機12で又はリモートデータの記憶及び検索の際に行うような)ローカルなデータ記憶及び検索用として使用してもよい。アクセサリ24は、所望のデータを移動電話機12から検索するか、移動電話機12へ送信するかの少なくともいずれかを行って、呼を開始するか、別の機能を実行するようにすることができる。このデータは、例えば、着信又は発信電話番号、IPアドレス、氏名、着信音、あるいは、呼の開始や受信用として使用できる他の任意のデータを含むものであってもよい。このデータを用いて、アクセサリ12は、(例えば、WiFi42c又はセル42b無線機を介して)VoIPゲートウェイ18にアクセスして、VoIP通信を確立することができる。上記とは別に、電話機12は、すべてのVoIP機能を処理するか、このような機能をアクセサリ24と共有することも可能である。
【0046】
ここで図3を参照すると、移動無線端末においてVoIPを実現する方法例を示すフローチャート100が提供される。このフローチャートには、特定の順序に配列された複数の処理ブロックが含まれている。理解すべきことであるが、例示のステップに対する多くの代替ステップ及び均等物の存在が可能であり、このような代替ステップ及び均等物は、本明細書に添付の請求項の範囲に属することが意図される。代替ステップとして含まれ得るものには、具体的記載がないか、図示がないかの少なくともいずれかの追加ステップとアクションを実行するステップと、記載か、図示の少なくともいずれかがある順序とは異なる順序のステップ又はアクションを実行するステップと、記載か、図示の少なくともいずれかがあるステップを省略するステップとがある。代替ステップには、同時に行われるステップやアクション、あるいは、部分的に一致するステップやアクションを実行するステップも含まれる。
【0047】
ステップ102から開始して、アクセサリ24及び移動電話機12はオン状態に置かれる。すなわち、それぞれの装置のスイッチがオンにされるか、あるいは別様にパワーが提供される。ステップ104と106とにおいて、アクセサリ24は移動電話機12を検出する(又は電話機12がアクセサリ24を検出する)。そして、通信リンクがそれぞれの装置間で確立される。この動作は、一般に電話機によるアクセサリ「ペアリング」と呼ばれる。当業者であれば解るように、アクセサリ24と電話機12との間でのペアリングは一般に、アクセサリ24が無線アクセサリである場合に適用される。アクセサリ24が移動電話機と物理的に接続されていれば、検出はアクセサリ24と電話機12との間で電気的接続を介して行われることになる。
【0048】
ペアリング処理が不成功に終わった(すなわち電話機が検知されなかった)場合、ステップ108においてエラーメッセージが報告される。このメッセージは、例えば、アクセサリにより放出されるビープ音コードの形であってもよい。次いで、ステップ114において、設定手順が中断され、そして、電話機12の通常の動作が再開される。
【0049】
ペアリング処理が成功した(すなわち移動電話機が検知された)場合、ステップ110において、Java(登録商標)アプリケーション等がアクセサリ24により移動電話機12へ送信される。アプリケーションは移動電話機12によって実行され、インストールが開始する。ステップ112において、ユーザは、電話機12とアクセサリ24との少なくともいずれかにVoIP機能のインストールを望む旨の確認を行うように促される。ユーザがVoIP機能のインストールを望まなければ、ステップ114において、インストールは中断され、電話機12の通常動作が再開される。ユーザがVoIP機能のインストールを選択すれば、ステップ116において、アプリケーションは、電話機12とアクセサリ24との少なくともいずれかを構成して、VoIP機能を作動可能にするように図るステップへ進む。本構成の一部として、ユーザは、設定についての種々の問い合わせ、ある特定のVoIPクライアントのこのような選択、電話帳の設定、パスワード等に対して応答するように促される場合がある。これらのプロンプトに対する応答に基づいて、ステップ118において示すように、電話機12とアクセサリ24との少なくともいずれかにおいてVoIP機能がインストールされる。このインストールは、音声サンプリングと音声圧縮アルゴリズムとの少なくともいずれかを電話機12とアクセサリ24との少なくともいずれかにおいて実現するステップ、並びに、(セキュリティ、ダイアル機能等などの)ネットワーク制御機能を実現するステップを含むことができる。ステップ120において、電話機12とアクセサリ24との少なくともいずれかはVoIPサーバ18と接続し、次いで、VoIPサーバ18と相互に情報の交換を行って、VoIP通信の開始と受信の少なくともいずれかを行うようにすることができる。
【0050】
以上のとおり、移動無線端末においてVoIP機能を実現する装置及び方法が開示された。本発明は、移動電話機のような移動無線端末を作動可能にして、これらの移動無線端末をセルラサービスプロバイダへ提供する(その後、該サービスプロバイダは、上記移動無線端末をその顧客へ提供する)ようにするという点で利点を有するものである。上記移動無線端末は、VoIP機能を有していないが、アクセサリを介して後でVoIPの容易なインストールを行うことが可能である。
【0051】
本発明の特定の実施形態をここに開示した。当業者であれば、本発明が別の環境において別の用途を有するものであることは直に認識できよう。実際、多くの実施形態及び実施構成が可能である。特許請求の範囲は決して本発明の範囲を前記した特定の実施例に限定するものではない。さらに、「手段 (means for) 」なる記載は構成要素および特許請求の範囲の「ミーンズ・プラス・ファンクション (means-plus-function) 」の表示を喚起するものであるが、「手段 (means for) 」なる記載を特に使用していない構成要素は、たとえ特許請求の範囲が「手段」なる用語を含む場合であってもミーンズ・プラス・ファンクション要素として解釈すべきではない。
【0052】
本発明のコンピュータプログラム要素は、ハードウェアと、ソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード、その他を含む)との少なくともいずれかの中に組み込まれてもよい。本発明はコンピュータプログラム製品の形をとるものであってもよく、該製品は、命令実行システムによりまたは命令実行システムと関連して使用する媒体内において実施されたコンピュータ使用可能またはコンピュータ読取可能プログラム命令、「コード」または「コンピュータプログラム」を有するコンピュータ使用可能またはコンピュータ読取可能記憶媒体により実施することができる。この明細書の文脈では、コンピュータ使用可能なまたはコンピュータ読取り可能な媒体は、命令実行システム、機器、または装置によりまたはこれらに関して用いるためのプログラムを含み、記憶し、通信し、伝播し、または転送することのできる任意の媒体とすることができる。コンピュータ使用可能なまたはコンピュータ読取り可能な媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、半導体のシステム、機器、装置、インターネットなどの伝播媒体でよいが、これらに限定されない。注意すべきであるが、コンピュータ使用可能なまたはコンピュータ読取り可能な媒体は、プログラムを印刷することができる紙や他の適当な媒体でもよい。なぜならプログラムは、例えば紙または他の媒体を光学的に走査することにより電子的に捕捉して、適当な方法で編集し、変換し、またはその他の処理をすることができるからである。ここに述べたコンピュータプログラム製品及び任意のソフトウェアやハードウェアは、例示の実施形態において本発明の機能を実行する種々の手段を形成するものである。
【0053】
好適な実施形態と関連して、本発明を示し、説明したが、本明細書及び添付の図面を読み、理解するとき、均等な変更及び修正が他の当業者の心に浮かぶであろうことは明らかである。上記記載の要素(構成要素、アセンブリ、装置、構成等)により実行される特に種々の機能に関して、このような要素を記述するのに用いる用語(「手段」への言及を含む)は、別段の指示がされていなければ、たとえ、本明細書に例示されている本発明の例示の実施形態において機能を実行する開示された構造と構造的に同等でなくても、記載された要素の指定された(機能的に均等な)機能を実行する任意の要素に対応することを意図するものである。さらに、複数の例示の実施形態のうちの1つだけに関して、本発明の特定の特徴について上述したかもしれないが、このような特徴は、所望のように、及び、所定の用途か、又は特別の用途かのいずれかの用途にとって好都合なものとなるように、その他の実施形態の1以上の別の特徴と組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による例示の通信ネットワークを示すブロック図である。
【図2A】例示のセルラ電話機のブロック図である。
【図2B】本発明による例示のアクセサリのブロック図である。
【図3】本発明によるVoIP機能を実現する例示の方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器(12)用のアクセサリ(24)であって、
前記アクセサリ(24)と前記電子機器(12)との間でデータを交換するためのインタフェース(60)と、
ボイス・オーバ・インターネットプロトコル(VoIP)回路(82)と、
を備え、
前記VoIP回路は、前記電子機器(12)又は前記アクセサリ(24)においてVoIPの少なくとも一部を実現するように構成される
ことを特徴とするアクセサリ(24)。
【請求項2】
前記アクセサリは、通信用ヘッドセット、バッテリパック、メモリ、又はその他の電子機器であることを特徴とする請求項1に記載のアクセサリ。
【請求項3】
前記電子機器は移動電話機であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のアクセサリ。
【請求項4】
前記VoIP回路は、プロセッサ(76)と、該プロセッサによって実行可能なコードと、を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクセサリ。
【請求項5】
前記VoIP回路は、メモリと、該メモリ内に記憶されたコードと、を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアクセサリ。
【請求項6】
前記インタフェースは、ブルートゥースインタフェース、又は、前記アクセサリと前記電子機器との間の電気的接続であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアクセサリ。
【請求項7】
前記VoIP回路は、クライアント・サーバ構成を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアクセサリ。
【請求項8】
前記電子機器が、少なくとも1つのユーザインタフェース(54、56)を制御し、かつ、前記アクセサリ(24)と電子機器(12)の少なくともいずれか一方が、VoIP処理を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアクセサリ。
【請求項9】
電子機器(12)においてボイス・オーバ・インターネットプロトコル(VoIP)を実現する方法であって、
前記電子機器(12)と該電子機器のアクセサリ(24)との間でデータリンク(104)を確立するステップと、
前記アクセサリ(24)を用いて、前記電子機器(12)又は前記アクセサリ(24)においてVoIPの少なくとも一部を実現するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記VoIP機能の少なくとも一部を実現するステップは、前記電子機器を入力/出力端末として構成することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
クライアント・サーバ構成を確立するステップを更に有することを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクセサリが前記サーバとして構成され、かつ、前記電子機器が前記クライアントとして構成されるか、あるいは、前記アクセサリが前記クライアントとして構成され、かつ、前記電子機器が前記サーバとして構成されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電子機器と前記アクセサリとの少なくともいずれか一方を介してVoIPゲートウェイにアクセスするステップを更に有し、前記VoIPゲートウェイへの該アクセスは、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、又はセルラ回線交換ネットワークを介して行われることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記電子機器又は前記アクセサリにおいてVoIP機能の少なくとも一部を実現するステップは、音声のサンプリングとネットワーク制御アルゴリズムとを実現することを含むことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518920(P2009−518920A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543928(P2008−543928)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001499
【国際公開番号】WO2007/066174
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】