説明

W/O型乳化化粧料

【課題】保湿性の高い化粧料を提供する。更には紫外線防御効果に優れる化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)アルキルアルコキシシランで表面処理された板状粉体、
(B)25℃で固体の油、
(C)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油、
(D)水
を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合が、(B)/(A)=0.01〜5であるW/O型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W/O型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を防御するために、紫外線を効率良く吸収する有機系紫外線吸収剤や、紫外線を散乱させる紫外線防御粉体が用いられている。紫外線防御粉体としては、酸化チタンや酸化亜鉛が良く用いられているが、紫外線を防御するためには、化粧料中に多量に含有しなければならない。このため、肌に塗布した際に白くなるという問題や、粉体特有のぱさつき感が生じ、感触が悪くなるという問題があった。
【0003】
このような肌に塗布したときのぱさつき感を抑えるため、例えば、顔料を表面処理して吸油量を低く抑え、肌からの皮脂の脱脂を最小限にし、それによって、肌の負担を少なくしながら、化粧持続性、耐水性、耐皮脂性、感触、転写防止効果、発色を改善した化粧料が検討されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、このような表面処理した顔料を用いても、ぱさつき感を十分に抑えることはできず、高い保湿性を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−2076号公報
【特許文献2】特開2005−2077号公報
【特許文献3】特開2005−2078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ぱさつき感がなく、保湿性に優れる化粧料を提供することにある。更には、紫外線防御効果の高い化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アルキルアルコキシシランで表面処理された板状粉体と、25℃で固体の油を特定の割合で用いることにより、皮膚表面に閉塞性の高い皮膜が形成され、保湿性に優れ、使用感も良好であるとともに、紫外線防御効果の高いW/O型乳化化粧料が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)アルキルアルコキシシランで表面処理された板状粉体、
(B)25℃で固体の油、
(C)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油、
(D)水
を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合が、(B)/(A)=0.01〜5であるW/O型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のW/O型乳化化粧料は、均一で滑らかで、閉塞性の高い皮膜が得られ、保湿性に優れ、使用感も良好である。更には、紫外線防御効果の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)は、アルキルアルコキシシランで表面処理された板状粉体であり、平均粒子径が0.1〜10μmであり、板状比(平均粒子径/厚さ)が3以上である薄片状の粉体が好ましい。平均粒子径は、板状の平滑面の長径と短径の相加平均で表され、透過型電子顕微鏡写真中、任意の視野の任意の粒子20個について、測定した結果より算出する。同様に、平均粒子厚さは、透過型電子顕微鏡写真の同視野中の任意の視野の任意の粒子20個について、測定した結果より算出する。
【0010】
成分(A)において、処理される板状粉体としては、例えば、板状酸化亜鉛、板状酸化チタン、板状酸化セリウム、板状硫酸バリウム、タルク、マイカ、板状カオリン、セリサイト、白雲母、板状合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、板状無水ケイ酸、板状ヒドロキシアパタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、板状セラミックスパウダー、板状アルミナ、板状窒化ホウ素、板状ポリメチルメタクリレートパウダー、ラウロイルリジン、板状酸化鉄、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、アルミニウム等が挙げられる。特に、紫外線防御効果の観点から、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムが好ましい。
【0011】
このような板状粉体を処理するのに用いられるアルキルアルコキシシランとしては、炭素数6〜20の分岐又は直鎖のアルキル基を有するものが好ましく、特に、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランが好ましい。
【0012】
板状粉体をアルキルアルコキシシランで処理する方法は、特に制限されず、例えば、湿式法、乾式法、蒸着法(プラズマなどを用いて顔料に処理剤を蒸着させる方法)、気相法(空気、窒素ガスなどの気体中で表面処理を行う方法)、メカノケミカル法(ボールミル、オングミル(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械製作所製)などの機器を用いてメカノケミカル的に表面処理を行う方法)等により、行うことができる。
これらのうち、湿式法とは、板状粉体とアルキルアルコキシシランとを、低級アルコール、ヘキサン、アセトン、トルエン、シクロヘキサン、キシレン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、二酸化炭素、テルペン類等の有機溶媒中で混合し、均一に混合した後、有機溶媒を加熱や減圧により除去し、好ましくは80〜250℃で加熱処理する方法をいい、より均一な処理が可能である。
【0013】
アルキルアルコキシシランの処理量は、板状粉体の質量に対して、2〜10質量%であるのが好ましい。
【0014】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、後述する成分(B)25℃で固体の油との組み合わせで均質な皮膜を形成する観点から、全組成中に1〜20質量%、特に3〜15質量%含有するのが、好ましい。
【0015】
本発明で用いる成分(B)は、25℃で固体の油であり、例えば、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族アミド誘導体、脂肪族アミン誘導体等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等、炭素数12〜24の飽和脂肪族アルコールが好ましい。また、脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等、炭素数12〜24の飽和脂肪酸が好ましい。脂肪族アミド誘導体としては、タイプI〜タイプVIの天然セラミド、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルデカナミド等のセラミド類及びその類似物質等が好ましい。脂肪族アミン誘導体としては、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン及びこれらのN−メチル体又はN,N−ジメチル体等のスフィンゴシン類、1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール等が好ましい。また、コレステロール、硫酸コレステロール、ポリオキシエチレンコレステロール、スチグマステロール、エルゴステロール等のステロール類も使用することができる。
【0016】
また、炭化水素系、エステル系、シリコーン等の天然系及び合成系のワックスを用いることができる。例えば、ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、木ロウ等の植物性ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、ペトロラタム、マイクロクリスタリンワックス等の鉱物性ワックス;ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、硬化ひまし油、水素添加ホホバ油、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、シリコーンワックス等の合成ワックスなどが挙げられる。
【0017】
成分(B)は、成分(A)を粘結して皮膚表面に均質な皮膜を形成させることができる。成分(B)は、1種以上を用いることができ、皮膜形成性の観点から、全組成中に0.1〜10質量%、特に0.1〜5質量%含有するのが好ましい。
【0018】
また、本発明において、成分(A)と成分(B)の質量割合は、(B)/(A)=0.01〜5、好ましくは0.02〜1である。
成分(A)と成分(B)の質量割合がこの範囲内であることにより、W/O型乳化化粧料中の水滴の大きさを小さくすることができ、均一で閉塞性の高い皮膜を皮膚上に形成することができるため、高い保湿性を得ることができると考えられる。従来、よく使用されているシリコーン処理粉体や、フッ素処理粉体では、このような閉塞性のある皮膜が形成されず、ぱさつき感等の感触の問題を引き起こしていたと考えられる。
【0019】
成分(C)は、炭化水素油、エステル及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油である。
具体的には、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素油;リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリカプロイン等のエステル油;ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油が挙げられる。
【0020】
成分(C)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜60質量%、特に0.5〜40質量%含有するのが、塗布時の肌へのなじませやすさの点から、好ましい。
【0021】
また、成分(B)と成分(C)の質量割合は、(B)/(C)=0.0025〜2、特に0.01〜1であるのが、成分(B)の溶解性や、成分(B)の結晶化を適度に抑制し、更には成分(A)との粘着性を高め、閉塞感の高い皮膜を形成する点から好ましい。
【0022】
成分(D)の水は、全組成中に10〜60質量%、特に20〜50質量%含有するのが、保湿性と清涼感に優れるので好ましい。
【0023】
更に、本発明においては、成分(C)の液体油とともに、(E)シリコーン油を組み合わせて用いるのが、塗布時のべたつきを抑制する観点から好ましい。
かかるシリコーン油としては、成分(C)と同様、25℃で液体のものが好ましく、例えば、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0024】
成分(E)は、1種以上を用いることができ、全組成中に5〜50質量%、特に10〜40質量%含有するのが、べたつきを抑えた使用感になるため好ましい。
また、成分(C)と成分(E)の合計含有量は、全組成中に10〜80質量%、特に20〜60質量%であるのが、使用感に優れるので好ましい。
更に、成分(C)と成分(E)の質量割合は、(C)/(E)=0.005〜5、特に0.01〜3であるのが、成分(A)及び(B)で構成する皮膜の形成性を向上させ、より高い保湿効果を得ることができるので好ましい。
【0025】
本発明の化粧料は、更に(F)HLB8以下の非イオン界面活性剤を含有することができる。ここで、HLBは、親水性−親油性のバランス(Hydrophile-Lipophile Balance)を示す指標であり、小田・寺村らによる次式により定義される。
HLB = ( Σ無機性値 / Σ有機性値 ) × 10
【0026】
このような非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエートなど)、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノイソステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸など)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸ジグリセリン、トリステアリン酸ヘキサグリセリンなど)、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸ペンタエリスリトールなど)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、POE(4)モノステアレート、POE(2)モノオレエートなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、POE(2)セチルエーテル、POE(5)ベヘニルエーテル、POE(3)オクチルフェニルエーテルなど)、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油(例えば、POE(3)ヒマシ油、POE(5)硬化ヒマシ油など)、変性シリコーンでシリコーン鎖が直鎖、分岐または架橋タイプ(例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、ポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンなど)、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0027】
成分(F)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%含有するのが、乳化化粧料の経時安定性を向上させる他、成分(C)、(E)中での成分(B)の分散性、塗布乾燥過程での成分(A)と(B)との粘着性を向上させる観点から好ましい。
【0028】
更に、本発明の化粧料は、UVA領域に吸収を有する化合物を含有することができ、紫外線防御効果と保湿性をより高めることができる。
かかる化合物としては、油溶性、水溶性のいずれも使用することができるが本発明においてより高い効果を得る上で油溶性の化合物がより好ましい。
【0029】
油溶性のものとしては、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。
【0030】
水溶性の紫外線吸収剤としては、フェニレン−1,4−ビス(2−ベンズイミダジル)−3,3’−5,5’−テトラスルホン酸及びその塩などが挙げられる。
【0031】
このような化合物は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%含有するのが、安定に配合でき、かつ十分な紫外線防御効果を得る上で好ましい。
【0032】
本発明の化粧料は、前記成分のほか、通常の化粧料に用いられるその他の成分を含有することができる。例えば、低級アルコール、保湿剤、水溶性高分子、酸化防止剤、キレート剤、美白剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、前記以外の粉体、前記以外の紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、殺菌剤、色材などが挙げられる。
【0033】
本発明のW/O型乳化化粧料は、通常の方法に従って製造することができる。
【実施例】
【0034】
製造例1(板状酸化亜鉛の製造)
硫酸亜鉛1.6×10-1モル、硫酸ナトリウム3.8×10-2モル及び微量元素の塩として硫酸第一鉄1.6×10-4モルを、5×10-2モル硫酸水溶液315mLに溶解した。次に、この溶液をホモミキサーにより6000r.p.m.で攪拌しながら、2N水酸化ナトリウム水溶液230mLを15秒間で投入し(pH=12.8)、沈殿を生成させたのち、10分間攪拌を継続した。その後、100℃で90分間熟成し、濾過、水洗し、230℃で約10時間乾燥して、板状酸化亜鉛を得た。このようにして得られた粉末を走査型電子顕微鏡で観察し、薄片状粒子であることを確認した。得られた粉末の平均粒子径は、0.25μmで、板状比は13であった。
【0035】
製造例2(オクチルシリル化板状酸化亜鉛の製造)
製造例1で得られた板状酸化亜鉛粉末93質量%とオクチルトリエトキシシラン7質量%と、トルエンからなるスラリーを作成し、ビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、ダイノミル)を用いて粉砕・解砕を行った。次いで、トルエンを減圧下に加熱留去した後、送風気流型乾燥機を用いて150℃にて4時間加熱処理し、オクチルシリル化板状酸化亜鉛粉末を得た。
このようにして得られた粉末を走査型電子顕微鏡で観察し、薄片状粒子であることを確認した。得られた粉末の平均粒子径は、0.20μmで、板状比は10であった。
【0036】
製造例3(シリコーン処理板状酸化亜鉛の製造)
製造例1で得られた板状酸化亜鉛粉末98質量部とメチルハイドロジェンポリシロキサン(KF−99P、信越化学工業社製)2質量部と、イソプロピルアルコールからなるスラリーを作成し、よく攪拌・粉砕した後、溶媒を減圧下に加熱留去し、空気中150℃で4時間加熱処理を行い、シリコーン処理板状酸化亜鉛を得た。
【0037】
製造例4(オクチルシリル化タルクの製造)
タルク粉末(FK−500S、山口雲母工業所社製)98質量%とオクチルトリエトキシシラン2質量%と、トルエンからなるスラリーを作成し、ビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、ダイノミル)を用いて粉砕・解砕を行った。次いで、トルエンを減圧下に加熱留去した後、送風気流型乾燥機を用いて150℃にて4時間加熱処理し、オクチルシリル化タルク粉末を得た。
このようにして得られた粉末を走査型電子顕微鏡で観察し、薄片状粒子であることを確認した。得られた粉末の平均粒子径は、10μmで、板状比は45であった。
【0038】
実施例1〜2、比較例1〜8
表1に示す組成のW/O型乳化化粧料を以下の方法により製造し、得られた化粧料について、紫外線防御効果、水分蒸散率及びぱさつきのなさを評価した。結果を表1に併せて示す。
この結果より、本発明の化粧料は、アルキルアルコキシシランで表面処理された板状粉体と25℃で固体の油を用いることにより、紫外線防御が高く、尚且つ保湿性に優れたものである。
【0039】
(製造方法)
成分(B)固体油、成分(C)液体油、成分(F)非イオン界面活性剤、紫外線吸収剤等を混合し、80℃で溶解し均一にする。得られた油相をアジホモミキサーに移し、室温まで冷却したのち、成分(E)メチルポリシロキサン、N−プロピオニルポリエチレンイミン・メチルポリシロキサン共重合体及びエタノールの混合溶液に成分(A)の粉体を均一に分散させた粉体相を加え撹拌し、更にポリオールを含む水相を加え、アジホモミキサーにて高速攪拌を行い、脱気することによって、W/O型乳化化粧料を得た。
【0040】
(評価方法)
(1)紫外線防御効果:
各化粧料を石英板上に2mg/cm2 になるように塗布し、SPFアナライザー(Optometrics社)を用いて全透過光スペクトルを測定し、それぞれUVB領域での防御を300nm、UVA領域での防御を370nm、可視光の透明性を450nmの波長における透過率として求めた。
【0041】
(2)水分蒸散率(閉塞性):
40mLバイアル瓶に20mLの水を入れる。直径2.2cmのセルロースメンブレンフィルター(A300A142C、Toyo Roshi社製)に各化粧料0.03mLを塗布し、穴(直径1.4cmの円)が開いた蓋に、化粧料を塗布したフィルターをはさみ、バイアル瓶の蓋をする。
30℃、湿度40%の条件で2日保存し、保存前後の重さを量り、水分蒸散量を計算する。フィルターに水のみを塗布したときの水分蒸散量を100とし、以下の式で水分蒸散率を求めた。この値が小さいほど、水分の閉塞性が高く、保湿性に優れていることを示す。
水分蒸散率(%) = (サンプルの水分蒸散量/水の水分蒸散量) ×100
【0042】
(3)ぱさつきのなさ:
専門パネラー5名に、各化粧料1gを手につけてもらい、パネラー毎にぱさつきの度合いを官能評価し、非常にぱさつく場合を1点、ぱさつかない場合を5点とし、1〜5の5段階で判定した。この値を相加平均し、平均点の小数点以下を四捨五入した値をもって評価結果とした。評価点数が高いほうが、ぱさつきが抑えられていることを示す。
【0043】
【表1】

【0044】
処方例1〜5
以下に示す組成のW/O型乳化化粧料を、実施例1〜2と同様の方法により製造した。
得られた化粧料はいずれも、紫外線防御効果に優れ、保湿性の高いものであった。
【0045】
処方例1
N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチル
ヘキサデカナミド(ソフケア セラミドSLE、花王社製) 0.5(質量%)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
(ユビナールMC80、BASF社製) 3.0
t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン
(パルソール 1789、DSMニュートリション ジャパン社製) 0.5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
(チノソーブS、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5
流動イソパラフィン(パールリームEx、日油社製) 0.5
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(シリコーン SH3775M、東レ・ダウコーニング社製;HLB5)
1.5
メチルシクロポリシロキサン
(シリコーン TSF405A、モメンティブ社製) 18.0
メチルポリシロキサン(2cs)
(シリコーン KF−96L−2CS、信越シリコーン社製) 10.0
メチルポリシロキサン(6cs)
(シリコーン KF−96L−6CS、信越シリコーン社製) 5.0
オクチルシリル化板状酸化亜鉛(製造例2) 15.0
シリコーン被覆タルク
(タルクJA−46R(浅田製粉社製)をシリコーン被覆したもの)
3.0
N−プロピオニルポリエチレンイミン・メチルポリシロキサン共重合体
(POLYSILICONE−9;INCI名、花王社製) 0.2
エタノール 3.5
グリセリン 6.0
精製水 バランス
合計 100
((B)/(A)=0.03)
【0046】
処方例2
N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチル
ヘキサデカナミド(ソフケア セラミドSLE、花王社製) 0.5(質量%)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
(ユビナールMC80、BASF社製) 3.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
(ユビナールA Plus、BASF社製) 0.5
流動イソパラフィン(パールリームEx、日油社製) 0.5
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(シリコーン SH3775M、東レ・ダウコーニング社製;HLB5)
1.5
メチルシクロポリシロキサン
(シリコーン TSF405A、モメンティブ社製) 18.3
メチルポリシロキサン(2cs)
(シリコーン KF−96L−2CS、信越シリコーン社製) 10.0
メチルポリシロキサン(6cs)
(シリコーン KF−96L−6CS、信越シリコーン社製) 5.0
オクチルシリル化板状酸化亜鉛(製造例2) 5.0
シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛
(微粒子酸化亜鉛 MZ500(テイカ社製)の表面をシリコーン被覆した粉体)
10.0
シリコーン被覆タルク
(タルクJA−46R(浅田製粉社製)をシリコーン被覆したもの)
3.0
N−プロピオニルポリエチレンイミン・メチルポリシロキサン共重合体
(POLYSILICONE−9;INCI名、花王社製) 0.2
エタノール 3.5
グリセリン 6.0
精製水 バランス
合計 100
((B)/(A)=0.1)
【0047】
処方例3
N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチル
ヘキサデカナミド(ソフケア セラミドSLE、花王社製) 1.0(質量%)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
(ユビナールMC80、BASF社製) 4.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
(ユビナールA Plus、BASF社製) 0.5
スクワラン 10.0
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール
(エステモール N−01、日清オイリオ社製) 5.0
イソノナン酸イソトリデシル(サラコス913、日清オイリオ社製) 5.0
水添ポリイソブテン(IPソルベント2028、出光興産社製) 10.0
ステアリン酸ソルビタン
(レオドール SP−S10V、花王社製;HLB4.7) 0.1
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(シリコーン SH3775M、東レ・ダウコーニング社製;HLB5)
3.0
メチルポリシロキサン(2cs)
(シリコーン KF−96L−2CS、信越シリコーン社製) 10.0
メチルポリシロキサン(6cs)
(シリコーン KF−96L−6CS、信越シリコーン社製) 3.0
オクチルシリル化板状酸化亜鉛(製造例2) 10.0
シリコーン被覆タルク
(タルクJA−46R(浅田製粉社製)をシリコーン被覆したもの)
3.0
N−プロピオニルポリエチレンイミン・メチルポリシロキサン共重合体
(POLYSILICONE−9;INCI名、花王社製) 0.6
エタノール 1.4
グリセリン 13.0
精製水 バランス
合計 100
((B)/(A)=0.1)
【0048】
処方例4
N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチル
ヘキサデカナミド(ソフケア セラミドSLE、花王社製) 0.5(質量%)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
(ユビナールMC80、BASF社製) 3.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
(ユビナールA Plus、BASF社製) 1.0
流動イソパラフィン(パールリームEx、日油社製) 0.5
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(シリコーン SH3775M、東レ・ダウコーニング社製;HLB5)
1.0
メチルシクロポリシロキサン
(シリコーン TSF405A、モメンティブ社製) 18.3
メチルポリシロキサン(2cs)
(シリコーン KF−96L−2CS、信越シリコーン社製) 10.0
メチルポリシロキサン(6cs)
(シリコーン KF−96L−6CS、信越シリコーン社製) 5.0
シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛
(微粒子酸化亜鉛 MZ500(テイカ社製)の表面をシリコーン被覆した粉体)
3.0
オクチルシリル化タルク(製造例4) 10.0
N−プロピオニルポリエチレンイミン・メチルポリシロキサン共重合体
(POLYSILICONE−9;INCI名、花王社製) 0.2
エタノール 0.5
グリセリン 6.0
精製水 バランス
合計 100
((B)/(A)=0.05)
【0049】
処方例5
N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチル
ヘキサデカナミド(ソフケア セラミドSLE、花王社製) 3.0(質量%)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
(ユビナールMC80、BASF社製) 3.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
(ユビナールA Plus、BASF社製) 0.5
イソステアリン酸コレステリル
(エキセパール IS−CE−A、花王社製) 0.2
パルミチン酸デキストリン(レオパールKL2、千葉製粉社製) 0.3
流動イソパラフィン(パールリームEx、日油社製) 0.5
スクワラン 0.5
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール
(エステモール N−01、日清オイリオ社製) 2.0
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体
(シリコーン SH3775M、東レ・ダウコーニング社製;HLB5)
2.5
メチルシクロポリシロキサン
(シリコーン TSF405A、モメンティブ社製) 17.6
メチルポリシロキサン(6cs)
(シリコーン KF−96L−6CS、信越シリコーン社製) 9.0
オクチルシリル化板状酸化亜鉛(製造例2) 4.0
シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛
(微粒子酸化亜鉛 MZ500(テイカ社製)の表面をシリコーン被覆した粉体)
6.0
N−プロピオニルポリエチレンイミン・メチルポリシロキサン共重合体
(POLYSILICONE−9;INCI名、花王社製) 0.9
硫酸マグネシウム 1.0
エタノール 4.5
グリセリン 17.0
精製水 バランス
合計 100
((B)/(A)=0.75)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)アルキルアルコキシシランで表面処理された板状粉体、
(B)25℃で固体の油、
(C)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油、
(D)水
を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合が、(B)/(A)=0.01〜5であるW/O型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(A)の板状粉体が、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウムから選ばれるものである請求項1記載のW/O型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(B)及び(C)の質量割合が、(B)/(C)=0.0025〜2である請求項1又は2記載のW/O型乳化化粧料。
【請求項4】
更に、(E)シリコーン油を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のW/O型乳化化粧料。
【請求項5】
更に、(F)HLB8以下の非イオン界面活性剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載のW/O型乳化化粧料。
【請求項6】
更に、UVA領域に吸収を有する化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載のW/O型乳化化粧料。

【公開番号】特開2011−111401(P2011−111401A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267496(P2009−267496)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】