説明

W/O/W型エマルション組成物

【課題】
経時安定性に優れ、幅広い製品に応用出来るW/O/W型エマルション組成物を提供する。
【解決手段】
予め25℃で液体の油成分と、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステルを必須としてW/O型エマルション組成物を調製し、得られたW/O型エマルション組成物をさらに水相中に分散させたW/O/W型予備乳化物を調製し、前面開放のハニカム構造体の小室を配置した円盤を、ハニカム室が半分ずれた形で同心的に重合してなる複数の導流単位体からなる流体混合装置に圧入し微細化することにより、経時安定性に優れたW/O/W型エマルション組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時安定性に優れたW/O/W型エマルション組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
W/O/W型エマルション組成物は、水相中に油中水型エマルションを含む多相エマルション組成物である。このエマルション組成物は、W/O/W型エマルションの内水相中に様々な有用成分を内包させることにより、内包する有用成分の酸化防止による安定化や徐放性によるリリースコントロールなどの効果をもつ機能性エマルション組成物として利用でき、化粧品、医薬品、食品など幅広い分野において非常に有用である。しかし、W/O/W型エマルションは、2段乳化による多相構造のため、経時安定性な該エマルションを調製することは難しく、エマルション内相中の有用成分が漏洩してしまう課題があった。
【0003】
それゆえ、安定なW/O/W型エマルション組成物を調製する方法として、様々な取り組みがなされてきている。たとえば、特開昭60−199833号公報には、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸を使用することを特徴とするW/O/W型エマルション組成物が開示されている。しかしながら、W/O/W型エマルションを調製する際の乳化方法は、もっぱらホモミキサーなどの攪拌装置によるものであり、外水相をある程度粘性を持たせないと、化粧品レベルの実用に耐えうるほどの長期安定性をえるまでには至っていない。
【0004】
また、特開平2−95433号公報、特開平2−215881号公報、特開平5−220382号公報、特開2001−179077号公報などに、均一な微細孔を有する多孔質ガラス膜を用いた乳化(以下、膜乳化)によるW/O/W型エマルション組成物の製造方法が開示されており、経時安定性に優れたW/O/W型エマルション組成物が調製できるとある。しかしながら、この多孔質ガラス膜は、乳化の際、油成分を膜に通すと、細孔が非常に細かく入り組んでいるため、細孔内での油成分のつまり、微細孔であるので高粘度の油相の不通過など、製造上制限されることもある。
【0005】
特開2003−275573号公報には、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステル及び陰イオン性界面活性剤を含有させることで、低粘度でありながら経時安定性の良好なW/O/W型エマルション組成物が開示されているが、幅広い分野で適切な剤型を提供するには製造上の課題がある。
【0006】
【特許文献1】 特開昭60−199833号公報
【特許文献2】 特開平2−95433号公報
【特許文献3】 特開平2−215881号公報
【特許文献4】 特開平5−220382号公報
【特許文献5】 特開2001−179077号公報
【特許文献6】 特開2003−275573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、経時安定性に優れ、幅広い製品に応用出来るW/O/W型エマルション組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、25℃で液体の油成分と、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステルを含有するW/O型エマルション組成物を予め調製し、次いで該組成物を、親水性界面活性剤を含有する水相に分散したW/O/W型予備乳化物を、前面開放のハニカム構造体の小室を配置した円盤を有した流体混合装置に圧入、微細化すると経時安定性に優れたW/O/W型エマルション組成物が調製できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の各項に示す発明を提供するものである。
項1 25℃で液体の油成分と、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステルを含有するW/O型エマルション組成物を予め調製し、次いで親水性界面活性剤を含有した水相に該組成物を分散したW/O/W型予備乳化物を、前面開放のハニカム構造体の小室を配置した円盤を、ハニカム室が半分ずれた形で同心的に重合してなる複数の導流単位体からなる流体混合装置に圧入、微細化して製造したW/O/W型エマルション組成物。
項2 モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステルが、ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物のポリグリセリンエステル、ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物のポリエチレングリコールエステル、リシノール酸の自己縮合物のポリグリセリンエステルのいずれかである、請求項1記載のW/O/W型エマルション組成物。
項3 25℃で液体の油成分が、動植物性油、脂肪酸エステル油、シリコーン油であることを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項に記載のW/O/W型エマルション組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧品、医薬品、食品など幅広い分野において用いられる、優れた経日安定性を有したW/O/W型エマルション組成物が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる、前面開放のハニカム構造体の小室を配置した円盤を有する流体混合装置は、特公昭59−39173号公報に開示されており、具体的には、ラモンドミキシングシステム(環境科学工業株式会社製)(別名では、ラモンドミキサーあるいはラモンド・スーパーミキサーとも称せられる。)として商業的に入手し使用することが出来る。
【0012】
ラモンドミキサーは、両端に入口及び出口を備えた円筒状のケーシングと、互いに対向する面に前面開放の多角形の小室をハニカム状に多数配列した大小2枚の円板を、前記大径な円板と小径な円板の小室は互いの小室が対向する他の複数の小室に連通するように位置を違えて配列して同心的に重合し、前記大径な円板はケーシングの内径に合致する直径を有し、かつ中心に流通孔を穿設したものを1導流単位体とし、2個の導流単位体を、小径な円板が合わさるように同心的に重合させたものを1ユニットとしたとき、両端に入口及び出口を備えた円筒状のケーシング内に、複数ユニットを重合配列して、その流通孔をケーシングの入口及び出口に連通させるようにした流体混合装置である。ユニットの数は、適宜設定できるが、3〜10が好ましい。
【0013】
本発明に用いる25℃で液体の油成分は、特に限定するものではなく、動植物性油、脂肪酸エステル、シリコーン油などの25℃で液状を示す油成分であればよい。
【0014】
具体的には、動植物油としては、オリーブ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、菜種油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、アルモンド油、綿実油、やし油、落花生油、魚油、鯨油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。炭化水素油としては、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィンなど、脂肪酸エステルとしては、アジピン酸ジイソブチル、コハク酸ジエチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、トリエチルヘキサノイン、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、オレイン酸エチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、12−ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0015】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン油、エポキシ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルコール変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油等の変性シリコーン油等が挙げられる。
【0016】
本発明に用いる25℃で液体の油成分の配合量は、本発明所期の効果が達成できる発明において適宜設定できるものであるが、通常、本発明の組成物全量に対して、0.01〜45重量%、好ましくは0.1〜40重量%程度、さらに好ましくは0.5〜30重量%である。
【0017】
本発明に用いる、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステルは、特に限定されるものではなく、該エステルを構成するモノヒドロキシカルボン酸の炭素数は8〜24であればよく、さらに炭素数12〜22がより好ましい。中でも炭素数18のリシノール酸、あるいはリシノール酸に水素添加したヒドロキシステアリン酸が最も好ましい。
【0018】
該エステルを構成する多価アルコールは、特に限定されるものでないが、具体的には、グリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのアルキレングリコール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのメチロール化合物類;メチルグルコシドなどのアルキルグルコシド類;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール類;グルコース、サッカロースなどの糖類;グルカミンなどのアミノ糖類等があげられる。特に、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールが好ましく、重合度3〜8のポリグリセリン、重合度20〜50のポリエチレングリコールが最も好ましい。
【0019】
モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステルの好適な例として、ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物のポリグリセリンエステル(DEHYMULS PGPH:コグニス社)、ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物のポリエチレングリコールエステル(ARLACEL P135:ユニケマ社)、リシノール酸の自己縮合物のポリグリセリンエステル(サンソフトNO.818H:太陽化学)などとして商業的に入手できる。
【0020】
本発明では、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステルは、親油性であり、油相に配合し、その配合量は、組成物全量に対して0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
【0021】
本発明のエマルションの外水相には、水、親水性界面活性剤、多価アルコール、エタノールなどの低級アルコール、セチルアルコールなどの高級アルコール、水溶性高分子、植物抽出エキス、防腐剤、金属封鎖剤、酸化防止剤、着色剤、pH調整剤、香料などの成分を、適宜配合することができる。
外水相に配合する親水性界面活性剤は、親水性界面活性剤であれば、特に限定されるものでなく、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から適宜選択することができる。
【0022】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
【0023】
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノアルキルスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル酢酸エステル塩、脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルモノエタノールアミド硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸、アシル化ペプチド、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0024】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
【0025】
本発明のW/O/W型エマルション組成物は、化粧品、医薬品、食品など幅広い分野で用いることができ、化粧品分野においては、化粧水、乳液、スキンクリーム、ヘアトリートメント、ヘアトニック、育毛剤、染毛剤、パーマ剤、入浴剤、制汗剤など、医薬品においては、各種塗布薬、子供用シロップ型経口薬、シップ薬、農薬など、食品においては、ドレッシング、アイスクリーム、健康飲料など、その他に塗料、インキ、水性接着剤、芳香剤、忌避剤などに利用することができる。
【0026】
また、本発明のW/O/W型エマルション組成物の内水相には、外水相と同じく、水などの成分で構成され、特に水溶性の有効成分を配合することができる。この有効成分は水溶性であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、β−グリチルレチン酸、ヨモギエキス等の抗炎症剤;グルコシルルチン等の抗酸化剤;センブリ抽出液、ニコチン酸ベンジル等の血行促進剤;ヒアルロン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヨモギエキス、トウキンセンカエキス、オウゴンエキス、シラカバエキス等の保湿剤;エチニルエストラジオール等のホルモン剤;ビタミンC等のビタミン類;アミノ酸、ペプチド、核酸及びその誘導体等の栄養剤;生理活性ペプチド、各種水溶性抗癌剤、酵素、忌避剤等が挙げられる。
【0027】
またW/O/W型エマルションの内水相量は、通常、組成物全量に対して、0.01〜45重量%、好ましくは0.1〜40重量%程度、さらに好ましくは0.5〜30重量%である。
【0028】
また、本発明におけるW/O/W型エマルションの粒子径は、エマルションの用途に応じて適宜設定されるもので、通常0.3〜30μmである。
【0029】
本発明のエマルション組成物は、上記した成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で化粧品、医薬品、食品などで用いることができる成分を、組成物の用途、形態等に応じて適宜配合することができる。
【0030】
以下に、本発明W/O/W型エマルション組成物の製造方法を説明する。本発明では、先ずW/O型エマルションを調製し、それを外水相に均質に分散後、ラモンドミキサーを用いて微細化することからなる。
i)W/O型エマルションの調製
W/O型エマルションの調製は、常法に従って行うことができ、その方法は特に限定されるものではないが、例えば、ホモジナイザー、高速攪拌機、高圧ホモジナイザー、超音波乳化機等を用いることができる。
【0031】
ii)W/O/W型エマルションの調製
次ぎに、W/O型エマルションを、親水性界面活性剤を含有する水相中に予備分散してW/O/W型予備乳化物となした後、ラモンドミキサー(環境科学工業株式会社製)を用いて、1〜20L/分の流速で、室温又は必要に応じて加熱しながら通過、微細化させW/O/W型エマルションを調製する。
【実施例】
【0032】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らないかぎり〔%〕は〔重量%〕を示す。
【0033】
実施例1〜5、比較例1〜5の調製
(1)W/O型エマルションの調製
表1に従い、内水相を常温にて溶解させ、油相を適宜加熱して溶解させたのち、実施例1〜5、比較例1〜4は、油相と内水相は常温にて、比較例5は油相と内水相をそれぞれ加熱した後、油相に内水相を投入しながら、高速撹拌機[TKホモミキサーHV−M、特殊機化工業社製]を用いて撹拌し、W/O型エマルションを得た。
【0034】
(2)W/O/W型エマルションの調製
均一溶解させた外水相に、上記W/O型エマルションを投入し、プロペラ撹拌機[商品名:MAZELAZ−1200、東京理化機械社製]でS字パドルを用いて、予備分散する。なお、この予備分散は、実施例1〜5、比較例1〜4は常温にて、比較例5は加熱して行なう。予備分散後、表1のW/O/W調製方法に従い、下記のとおり微細化を行ない、調製した。
【0035】
実施例1〜5、比較例3〜5では、W/O/W型予備エマルションを、ラモンドミキサーのケーシング内に通過させ、微細化する。
【0036】
比較例1、2の製造
W/O/W型予備エマルションを、高速撹拌機[商品名:TKホモミキサーHV−M、特殊機化工業社製]を用いて微細化する。
【0037】
実施例1〜5、比較例1〜5のW/O/W型エマルションの評価
実施例1〜5、比較例1〜5のW/O/W型エマルションをサンプルとし、それらの経時安定性の評価として、40℃、3ヶ月後のW/O/W型エマルション状態と内水相成分の漏洩率を評価した。夫々の評価方法及び評価基準を示す。
【0038】
1.W/O/W型エマルション状態
各実施例及び比較例の40℃で3ヶ月経過した後、夫々のW/O/W型エマルション粒子を顕微鏡にて観察評価した。評価基準を示す。
評価基準
◎:W/O/W型エマルションが良好な状態
○:W/O/W型エマルションが一部崩壊
△:W/O/W型エマルションが半分以上崩壊
×:W/O/W型エマルションがほとんど崩壊あるいは完全に油水分離
【0039】
2.内水相成分の漏洩率(40℃、3ヶ月後)
各実施例及び比較例を40℃にて3ヶ月放置後、遠心分離(1,000rpm、5分間)し、外水相を分取し、その480nmにおける吸光度を分光光度計にて測定し、下記式により漏洩率を求めた。漏洩率は、試験を3回繰返し、その平均値で示した。
【0040】
【式1】

【0041】
【表1】

【0042】
本発明品(実施例1〜5)は、W/O/W型予備乳化物を通常の攪拌式分散装置であるホモミキサーで微細化した比較例1、2、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステル以外の界面活性剤を用いた比較例3、4、25℃において固体を呈する油成分を用いた比較例5と比べ、格段に安定性が優れていた。
【0043】
実施例6(美容液)
成分 配合%(重量%)
内水相
グルコシルルチン 0.5
ビタミンC 0.5
塩化ナトリウム 0.03
パラベン 0.03
1,3−ブチレングリコール 1.5
精製水 12.44
油相
オリーブ油 6.0
イソステアリン酸イソステアリル 7.0
ARLACEL P135 2.0
外水相
POE(20モル)オレイルエーテル 0.8
塩化ナトリウム 0.07
カルボキシビニルポリマー 0.3
パラベン 0.2
グリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
トリエタノールアミン 適量(pH6.5)
香料 0.1
精製水 残部
合計 100.0
(製造方法)
内水相、油相を、加熱溶解した後、油相に内水相を投入し、高速撹拌機を用い、撹拌し、W/O型エマルションを得る。次に外水相を溶解させておき、これにW/O型エマルションを投入し、プロペラ撹拌機にて撹拌し予備分散する。予備分散後、ラモンドミキサー(5ユニット)に、10L/分の流速で予備分散W/O/W型エマルションを通過させ微細化し、美容液を調製した。この美容液は、経時安定性に優れた。
【0044】
実施例7(ヘアトリートメント)
成分 配合%(重量%)
内水相
ポリアスパラギン酸ナトリウム 0.5
パラベン 0.03
1,3−ブチレングリコール 1.0
精製水 8.47
油相
高重合メチルポリシロキサン 0.2
メチルポリシロキサン 3.0
オクタン酸セチル 3.0
オリーブ油 2.0
サンソフトNo.818H 0.8
外水相
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.5
セタノール 4.0
パラベン 0.3
プロピレングリコール 5.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.3
香料 0.3
精製水 残部
合計 100.0
(製造方法)
内水相、油相を、加熱溶解した後、油相に内水相を投入し、高速撹拌機を用いて撹拌し、W/O型エマルションを得る。次に外水相を加熱溶解させておき、これにW/O型エマルションを投入し、プロペラ撹拌機にて撹拌し予備分散する。予備分散後、ラモンドミキサー(5ユニット)に、10L/分の流速で予備分散W/O/W型エマルションを通過させ微細化し、ヘアトリートメントを調製した。このヘアトリートメントは、経時安定性に優れた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で液体の油成分と、モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステル化物を含有するW/O型エマルション組成物を予め調製し、次いで親水性界面活性剤を含有した水相に該組成物を分散したW/O/W型予備乳化物を、前面開放のハニカム構造体の小室を配置した円盤を、ハニカム室が半分ずれた形で同心的に重合してなる複数の導流単位体からなる流体混合装置に圧入、微細化して製造したW/O/W型エマルション組成物。
【請求項2】
モノヒドロキシカルボン酸自己縮合物の多価アルコールエステル化物が、ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物のポリグリセリンエステル、ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物のポリエチレングリコールエステル、リシノール酸の自己縮合物のポリグリセリンエステルのいずれかである、請求項1記載のW/O/W型エマルション組成物。
【請求項3】
25℃で液体の油成分が、動植物性油、脂肪酸エステル油、シリコーン油であることを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項に記載のW/O/W型エマルション組成物。

【公開番号】特開2006−281182(P2006−281182A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130349(P2005−130349)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】