説明

X線分析装置

【課題】試料や試料の所望位置に、X線を、短時間で精度良く照射させることができるX線分析装置を提供する。
【解決手段】X線分析装置100は、X線マイクロビーム3を形成する集光装置2と、X線マイクロビームが照射された微小照射点を含んだ試料表面観察する観察用カメラ10と、微小照射点から発生したX線マイクロビームを検出するX線検出器9と、試料を搭載している回転ステージ4と、回転ステージに載置されている第1並進駆動ステージ6と、回転ステージを上方に載置している第2並進駆動ステージ5と、観察用カメラを搭載している第1位置調整装置と、X線検出器を搭載している第2位置調整装置とを備えたX線分析装置であって、微小照射点が表面に位置するように配置されており、測定用試料の仮試料である基板7を備え、基板が、表面上に、基板の密度と異なる密度を有する微細な線模様を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小結晶構造解析等を行うためのX線分析装置に関するものであり、特に、X線マイクロビームが照射された試料から発生した散乱X線あるいは回折X線を分析するX線分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、材料の構造解析原子レベルにおいて行う装置として、X線回折装置が用いられている。例えば、下記特許文献1の装置では、試料にX線を照射するとともにX線光軸と異なる光軸を有する可視光線(レーザー光)を試料に照射し、これを肉眼で観察することによってX線の照射位置を確認し、X線の照射位置の位置合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−329944号公報
【0004】
しかし、上記特許文献1に係る装置では、異なる2つの光軸間で位置合わせを行うため、位置合わせの精度が十分でない。また、可視光を肉眼で観察するため観察精度が十分でなく、これらの影響が重なって、X線マイクロビームほど微小な大きさの位置決めに必要な分解能を十分に得ることができない。
【0005】
また、集光装置を用いてX線ビームを集光させ、集光したX線の集光点を試料の所望の位置(領域)に一致させ、分析精度を高くするX線分析装置がある。このような装置では、一般的に試料を搭載する回転ステージが用いられる。そして、測定の際には、試料の所望位置(微小な測定領域)と、X線の集光点と、回転ステージの中心軸とを一致させる必要がある。このため、試料表面上の分析点(試料の所望位置)がきわめて微小である場合、回転ステージの中心軸と試料の所望位置(微小な測定領域)とX線の集光点とを一致させるための位置合わせに高い精度が必要になる。
【0006】
ここで、回転ステージを有する上記X線分析装置における位置合わせの操作を説明する。まず、回転ステージの上方に載置されている試料位置調整用ステージ(ここでは、回転軸方向をZ方向、Z方向に対して垂直な平面上において、X線照射方向をX方向、該平面上においてX方向に対して垂直な方向をY方向とし、試料位置調整用ステージは、この互いに直交するX、Y、Z方向へ可動自在なステージとする)の上に、細いピンを直立させ、このピンをX線照射方向に配置されたカメラで観察することにより位置合わせを行う。以下に、具体的に説明する。まず、回転ステージを走査させ、回転ステージの回転角度によって生じるピンの中心軸(長手方向の軸)と回転ステージの回転軸とのずれが小さくなるように調整する。なお、通常は、回転ステージの回転角として幾つかの角度を設定しておき、この中から選択した角度位置においてピン先端と回転ステージの回転軸とが一致するように回転ステージ上の試料位置調整用ステージを操作して調整する。この操作は、従来はマニュアル(手動)操作によって行われており、ピン先端部を撮影したカメラ画像を確認しながら行われる。そして、上記操作が完了した時点で、回転ステージの軸とピン先端とがある程度の精度で一致したものとする。
【0007】
次に、X線マイクロビームを試料位置に照射し、回転ステージの下方の回転ステージが載置された回転ステージ位置調整用の並進ステージ(ここでは、回転ステージ位置調整用の並進ステージが、上記試料位置調整用ステージと同様な互いに直交する3方向(X、Y、Z方向)に可動自在なものとする)を操作させて、ピン先端部の位置とX線の光軸とを一致させる位置合わせを行う。この位置合わせは、ピンから発せられた特性X線の強度変化又は透過X線像をみながら、回転ステージ位置調整用並進ステージを走査することによって行う。この操作も、従来はマニュアル操作によって行われることが多い。そして、この位置合わせの調整が完了した状態において、回転ステージの回転軸とX線の光軸とが一致したことする。この時のピン先端の位置を試料観察用カメラで撮像したものを記録し、試料の分析位置を該ピン先端位置に移動させ、試料の測定を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記X線分析装置における位置合わせの調整では、回転ステージの設定角度ごとに回転軸自体が移動してしまうことがあり、調整時に採用した設定角度でない角度では、X線マイクロビーム照射位置が試料の分析点から外れやすいことがある。特に精密な結晶構造解析を行う場合などでは、ブラッグ角の異なる複数の回折信号を計測する必要があり、この測定では、測定角度ごとに生じる上記回転軸のぶれを考慮した補正を試料の測定前に行う必要があった。また、この補正は、回折角度ごとにマニュアル(手動)操作によって行われるので、操作が複雑になるとともに、準備作業に時間がかかりやく、容易に精密な構造解析を行いにくい。さらに、上記X線分析装置においては、ピンなどのピン形状を有するものを用いて調整を行っており、ピン等の切削加工において、μm単位の精度を有する精密形状が容易に得られにくい。このため、μm単位又はそれに近い精度が必要となる微細な位置合わせの調整は容易に行いにくい。
【0009】
そこで、本発明は、容易に、短時間で、回転ステージの回転軸とX線マイクロビームとの位置合わせの調整を行うことができ、試料や試料の所望位置に、X線を、短時間で精度良く照射させることができるX線分析装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のX線分析装置は、X線源から発せられるX線ビームを整形しX線マイクロビームを形成する集光装置と、前記集光装置で形成されたX線マイクロビームが照射される試料における微小照射点を含む前記試料表面を拡大観察する顕微鏡型レンズを有する観察用カメラと、前記微小照射点から発生した信号X線を検出するX線検出器と、前記試料を搭載しており、前記試料の回折角度の設定および走査を行う回転ステージと、前記回転ステージの上に載置され且つ前記試料が載置されており、前記試料の位置を調整する第1並進駆動ステージと、前記回転ステージが載置されており、前記回転ステージの位置を調整する第2並進駆動ステージと、前記観察用カメラを搭載しており、前記観察用カメラの位置を調整する第1位置調整装置と、前記X線検出器を搭載しており、前記X線検出器の位置を調整する第2位置調整装置とを備えたX線分析装置であり、前記X線分析装置は、測定用試料の仮試料である基板をさらに備えており、前記基板は、前記基板の平面に前記微小照射点が位置するように配置されており、且つ、前記基板の平面上に、前記基板の密度と異なる密度を有した微細な線模様を有している。
【0011】
上記構成によれば、測定用試料を測定する前に、仮試料である基板の表面上の微細な線模様と回転ステージの回転軸とを一致させることによって、X線マイクロビームの微小照射点と試料位置との位置合わせの調整を予め行うことができるので、試料や試料の所望位置に、X線を短時間で精度良く照射させることができる。また、線模様が微細なもののため、X線マイクロビームに相当するミクロン単位又はサブミクロン単位の精度でX線マイクロビームの照射位置の位置合わせを行うことができる。これによって、位置合わせの精度が高まる。
【0012】
また、本発明のX線分析装置は、前記X線検出器から送られた信号を電気信号へ処理する第1処理装置と、前記観察用カメラで撮影された映像を信号へ処理する第2処理装置と、前記第1処理装置によって処理された電気信号と前記第2処理装置によって処理された信号とを記録する記録部と、前記電気信号と前記第2処理装置によって処理された信号とに基づいて前記回転ステージの回転量、前記第1並進駆動ステージの駆動量及び前記第2並進駆動ステージの駆動量を計算する計算部とを備えた計算装置と、前記計算部において計算された回転量と駆動量とに基づいて、前記回転ステージの回転と第1並進駆動ステージの駆動と第2並進駆動ステージの駆動とを制御する制御部を有していることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、試料又は試料の所望位置とX線照射点とが一致するように、X線検出器によって検出された結果及び試料表面が撮影された画像に基づいて、回転ステージの回転量、第1並進駆動ステージの駆動量及び第2並進駆動ステージとの駆動量が計算装置によって計算され、この計算された回転量及び駆動量に基づいて制御装置が回転ステージと第1並進駆動ステージと第2並進駆動ステージとの操作を制御して、試料を自動的にX線照射点へ位置するように移動させる。これによって、試料や試料の所望位置にX線をより高精度に照射させることができる。また、位置合わせの調整を自動的に行うことができるので、測定用試料の分析を行う前の位置合わせを短時間で行うことができるとともに、試料表面上のX線の回折角度領域ごとに迅速な調整を行うことができる。
【0014】
また、本発明のX線分析装置において、前記制御装置が、前記仮試料である基板を用いて前記回転ステージの回転軸と前記基板における線模様とX線照射点とを一致させる位置合わせの調整を行った後、前記計算装置において計算された回転量および駆動量に基づいて、前記回転ステージの回転と第1並進駆動ステージの駆動と第2並進駆動ステージの駆動とを調整する調整部をさらに備えていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、測定用試料を用いて行った位置合わせの調整によって得られた制御情報、すなわち、測定用試料位置および測定用試料の回折条件に基づいて計算された回転ステージの回転量と第1並進駆動ステージ及び第2並進駆動ステージの駆動量とによって試料又は試料の所望位置とX線照射位置とを一致させる制御情報に基づいて、試料位置に配置された測定用試料が自動的に回転ステージ、第1並進駆動ステージ及び第2並進駆動ステージによって移動する。これによって、試料や試料の所望位置に、X線をより高精度に照射させることができる。
【0016】
また、本発明のX線分析装置において、前記基板の線模様が、線幅の広いものから狭いものへと順に複数配列されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、線幅の広いものから狭いものへと順にX線を照射させて、最終的にX線サイズの微少な線幅の線模様を利用することによって試料位置を調整することができるので、試料や試料の所望位置により高精度にX線を照射させることができる。
【0018】
また、本発明のX線分析装置において、前記基板の線模様が、前記回転ステージの回転軸方向と前記回転軸方向に対して垂直な方向とに形成された線模様を有していることが好ましい。さらに、前記基板の線模様は、L字型のものであることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、線模様に沿って、第1並進駆動ステージの駆動、第2並進駆動ステージの駆動及び回転ステージの回転による基板の位置調整が行いやすくなるので、試料や試料の所望位置に、より容易に且つ高精度にX線を照射させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、容易に、短時間で、回転ステージの回転軸とX線マイクロビームとの位置合わせの調整を行うことができる。また、試料や試料の所望位置にX線を短時間で精度良く照射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るX線分析装置の模式構成図である。
【図2】図1に示す仮試料である基板の模式図である。
【図3】(a)の左図は、本発明の実施形態に係るX線分析装置において、回転ステージをθ角回転させたときの観察用カメラと仮試料である基板とを上方からみた断面模式図であり、(a)の右図は、基板の線模様を観察用カメラで撮影した画像の模式図である。(b)の左図は、本発明の実施形態に係るX線分析装置において、回転ステージをθ+Δθ角回転させたときの観察用カメラと仮試料である基板とを上方からみた断面模式図であり、(b)の右図は、基板の線模様を観察用カメラで撮影した画像の模式図である。
【図4】左図は、本発明の実施形態に係るX線分析装置において、回転ステージをθ角回転させ、最小線幅を有する線模様と回転ステージの回転軸とが一致したときの観察用カメラと仮試料である基板とを上方からみた断面模式図であり、右図は、最小線幅を有する線模様を観察用カメラで撮影した画像の模式図である。
【図5】図1における仮試料である基板と透過X線検出装置とを示す拡大模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る回転ステージの回転軸と基板の線模様との位置合わせの調整を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の実施形態に係るX線マイクロビームと基板の線模様との位置合わせの調整を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るX線分析装置の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るX線分析装置の模式構成図である。図2は、図1の仮試料である基板の模式である。図3(a)は、図1における回転ステージをθ角回転させたときの観察用カメラと仮試料である基板とを上方からみた断面模式図および基板の線模様を観察用カメラで撮影した画像の模式図であり、図3(b)は回転ステージをθ+Δθ角回転させたときの観察用カメラと仮試料である基板とを上方からみた断面模式図および基板の線模様を観察用カメラで撮影した画像の模式図である。図4は、図1における回転ステージをθ角回転させ、最小線幅を有する線模様と回転ステージの回転軸とが一致したときの観察用カメラと仮試料である基板とを上方からみた断面模式図および最小線幅を有する線模様を観察用カメラで撮影した画像の模式図である。図5は、図1のX線分析装置における仮試料である基板と透過X線検出装置とを示す模式構成図である。
【0023】
図1において、X線分析装置100は、(図示しない)X線源と、X線源から発せられたX線ビーム1を整形してX線マイクロビーム3を形成する集光装置2と、集光装置2で形成されたX線マイクロビームが照射される測定用試料の仮試料である基板7における微小照射点を含んだ基板7の表面を拡大観察する顕微鏡型レンズを有する観察用カメラ(撮影装置)10と、測定用試料の微小照射点から発生した信号X線の回折信号8を計測するX線検出器9と、基板7を通過した透過X線を測定する透過X線検出装置11と、仮試料である基板7を搭載しており、試料の回折角度の設定および走査を行う回転ステージ4と、回転ステージ4に載置されており、仮試料である基板7の位置を調整する第1並進駆動ステージ6と、回転ステージ4が載置されており、回転ステージ4を支持するとともにX線の光軸に対して回転ステージ4の位置調整を行う第2並進駆動ステージ5と、回転ステージ4と第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5とのそれぞれの位置を正確に検出する図示しない位置読み取り装置と、観察用カメラ(撮影装置)10を搭載しており、試料の周辺において、観察用カメラ10の位置を調整する第1位置調整装置(図示せず)と、X線検出器9を搭載しており、X線検出器9の位置を調整する第2位置調整装置(図示せず)とを備えているものである。さらに、観察用カメラ(撮影装置)10と図示しない配線で接続されている第1信号処理装置12と、X線検出器9と図示しない配線で接続されている第2信号処理装置13と、回転ステージ4と第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5とに図示しない配線で接続されている制御装置14と、第1信号処理装置12と第2信号処理装置13と制御装置14とに図示しない配線で接続されている計算装置15とをさらに備えている。
【0024】
集光装置2は、図示しないX線源から発せられたX線ビーム1を整形して、X線マイクロビーム3を形成する。X線マイクロビーム3は、測定用試料又は基板7へと導かれる。
【0025】
基板7は、測定用試料を分析する前に、X線マイクロビームの照射点と試料位置との位置を合わせるために用いられる仮試料である。基板7は、第1並進駆動ステージ6に載置されており、集光装置2とX線検出器9との間のX線光路上に配置される。ここで、本実施形態に係る基板7を、図2を用いて詳細に説明する。基板7は、シリコン基板18からなり、シリコン基板18の表面(平面)に金が用いられた微細な線模様17が形成されている。なお、シリコン(密度2.33g/cm)と金(密度19.3g/cm)とは密度が約10倍異なる。この線模様17は、回転ステージ4の軸方向(図1におけるZ方向)及び回転ステージ4の軸方向に対して垂直な方向(図1においてX方向又はY方向)に形成されたL字型のものである。L字型の模様は、基板7の中心側(内側)へ向けて線幅が順に小さくなるように複数配列されており、X線マイクロビーム3よりも大きい線幅を有するものからX線マイクロビーム3と同程度の線幅を有するものまでが配列されている。なお、線模様の線幅は、線幅の広いものから狭いものへと順に配列されていることが好ましく、X線マイクロビームと同程度の線幅を有していないもの、例えば、X線マイクロビームとより大きい線幅や小さい線幅のものを用いてもよい。この微細な線模様17は、半導体製造工程における微細加工手段を利用してシリコン基板18に形成されており、この方法を用いると微細な模様へ形成することができる。なお、線模様17は、基板7の密度と異なる密度を有していればよく、本実施形態に係る、シリコンや金からなるものに限られない。透過X線を利用する場合、X線の吸収の違いを利用してコントラストを得るため、模様17と基板7との密度差およびX線透過方向における厚さで決まるX線透過率が、微細な模様のある領域と無い領域との間で10倍以上異なることが好ましい。例えば、光子エネルギが10 keV のX線に対して、シリコン基板(厚さ500μm)の上に形成された金(厚さ50μm)を利用した場合、金のある基板領域で透過率は5×10−7であるのに対して、金の無い基板領域では2×10−2であることから、透過像上でのコントラストが形成されやすい。また、線模様17とシリコン基板18との間に段差があるように形成されていることが好ましい。段差が生じることにより、段のエッジ部に明瞭なコントラスト像が得られ、観察用カメラ(撮影装置)10で撮影したX線照射点が線模様17上に位置するかの判断が行いやすくなる。なお、基板7に照射されたX線マイクロビーム3は、図示しない半導体検出器を用いて特性X線測定が行われ、線模様17に対する強度分布として計測されたり、透過X線検出装置11により2次元透過像として観察されたりする。
【0026】
観察用カメラ(撮影装置)10は、基板7におけるX線マイクロビーム3の微小照射点を撮影することができるように基板7の周囲に配置されている。そして、観察用カメラ(撮影装置)10は、図示しない第1位置調整装置に搭載されており、第1位置調整装置によって微小照射点を含めた領域をいつでも撮影できるように位置が調整される。また、観察用カメラ(撮影装置)10は、基板(試料)7における微小照射点を拡大観察することができるように顕微鏡型レンズを有している。なお、観察用カメラ(撮影装置)10は、仮試料である基板7にX線マイクロビーム3を照射する際に用いられ、測定用試料の分析を行う際には使用されない。このときは、第1位置調整装置(図示せず)によって測定用試料の分析に関係しない場所へ移動される。
【0027】
X線検出器9は、測定用試料に照射されたX線マイクロビーム3の回折信号を受信する検出器であり、第2位置調整装置(図示せず)に搭載されている。本実施形態においては、X線検出器9に2次元検出器が用いられている。また、透過X線検出装置11(X線検出器)は、基板7に照射されたX線の透過X線を受信する装置である。なお、X線検出器9及び透過X線検出装置11を配置する位置を示すため、図1では、両方の装置を図示しているが、測定用試料にX線マイクロビーム3を照射するとき(測定用試料を分析するとき)は、透過X線検出装置11を測定用試料の分析に関係しない場所へ移動させ、X線検出器9を図1に示す位置に設置する。また、基板7にX線マイクロビーム3を照射するとき(位置合わせをするとき)は、X線検出器9を位置合わせに関係しない場所へ移動させ、透過X線検出装置11を図1に示す位置に設置する。
【0028】
回転ステージ4には、第1並進駆動ステージ6を介して、基板7が搭載されている。回転ステージ4を回転させることによって、試料の回折角度の設定や走査、試料の表面におけるX線照射点の位置調整を行うことができる。第1並進駆動ステージ6は、回転ステージ4の上方に載置されており、回転ステージ4の軸方向(図1におけるZ方向)及び軸方向に垂直な2方向(図1におけるX方向及びY方向)の合計3方向(X、Y、Z方向)へ並進駆動可能な装置である。なお、X、Y、Z方向は互い直交している。第1並進駆動ステージ6を駆動させることによって、基板7の位置調整を行う。また、第2並進駆動ステージ5には回転ステージ4が載置されており、第2並進駆動ステージ5が回転ステージ4を支持している。第2並進駆動ステージ5は、第1並進駆動ステージ6と同様に、回転ステージ4の軸方向(図1におけるZ方向)、軸方向に垂直な2方向(図1におけるX方向及びY方向)の合計3方向(X、Y、Z方向)へ並進駆動可能な装置である。第2並進駆動ステージ5を駆動させることによって、X線の光軸に対する回転ステージ4の回転軸20の位置調整を行う。図示しない位置読み取り装置は、回転ステージ4と第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5との位置を正確に検出し、後述する位置決めの制御に用いられる。ここで、位置読み取り装置には、例えば、エンコーダ装置等を用いることができる。
【0029】
信号処理装置(第2処理装置)12は、観察用カメラ(撮影装置)10で撮影された映像を電気信号へ処理する装置であり、図示しない配線により観察用カメラ(撮影装置)10と接続されている。信号処理装置(第1処理装置)13は、X線検出器9から送られた回折信号を電気信号へ処理する装置である。信号処理装置(第1処理装置)13は、測定用試料を測定するときに図示しない配線によりX線検出器9に接続されており、基板7にX線を照射するとき(試料測定前の位置合わせを行うとき)は図示しない配線により透過X線検出装置11に接続されている。また、制御装置14は、回転ステージ4と第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5との各々に図示しない配線によって接続されており、記録部15aと計算部15bとを有している。制御部は、回転ステージ4の回転角度、第1並進駆動ステージ6の駆動量及び第2並進駆動ステージ5の駆動量を制御する。具体的には、計算装置15によって計算された回転量及び駆動量に基づいて回転ステージ4を回転させるとともに第1並進駆動ステージ6及び第2並進駆動ステージ5を駆動させる。調整部は、測定用試料の分析点とX線マイクロビームとを一致させるために回転ステージ4を回転させるとともに第1並進駆動ステージ6及び第2並進駆動ステージ5を駆動させて、分析点とX線マイクロビームとの位置を調整する。なお、この調整部は、仮試料である基板7を用いて位置合わせを行った際に後述する計算装置15において計算された回転量および駆動量に基づいて、回転ステージ4の回転及び第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5との駆動を調整する。計算装置15は、第1信号処理装置12と第2信号処理装置13と制御装置14との各々に図示しない配線で接続されており、第1信号処理装置12によって処理された電気信号と第2信号処理装置13により処理された電気信号とを受信して記録する記録部15aと、記録された電気信号に基づいて、回転ステージの回転角度、第1並進駆動ステージの駆動量及び第2並進駆動ステージの駆動量を計算する計算部15bとを有し、この計算された回転角度及び駆動量を制御装置14へ伝達する装置である。
【0030】
次に、本実施形態のX線分析装置100における試料位置とX線の照射位置の位置合わせ(試料と回転ステージ4の回転軸20とX線マイクロビーム3との位置合わせ)の操作について、図6、7を用いて説明する。図6は、仮試料である基板の線模様とX線マイクロビームとの位置合わせを示すフローチャート図である。図7は、仮試料である基板の線模様と回転軸20との位置合わせを示すフローチャート図である。
【0031】
測定用試料を試料位置に配置する前に、仮試料である基板7を試料位置に配置し、基板の線模様17と回転軸20とX線マイクロビーム3の照射位置との位置合わせを行う。なお、この位置あわせは、回転軸20と基板の線模様17との位置合わせを行い、その後、基板7の線模様17とX線マイクロビーム3との位置合わせを行い、これらの位置合わせを終了した時点において、基板7の縞模様17(試料位置)と回転軸20とX線マイクロビーム3の照射位置とが一致したものとする。
【0032】
まず、回転軸20と基板7の線模様17との位置合わせについて図6を用いて説明する(S1)。なお、下記の位置合わせの操作は、一部の初期設定を除いて、予め計算装置15に記憶されたプログラムにより自動的に行われる。仮試料である基板7を試料位置に配置(S2)し、回転ステージを測定範囲のある角度位置に移動させる(S3)。そして、観察用カメラ(撮影装置)10を、回転ステージの角度位置に応じて、基板の表面の法線方向とカメラの視野方向とが一致するように(図3(a)参照)第1位置調整装置によって移動させる(S4)。ここで、マニュアル調整により、予め、最初に使用する線模様17aを、回転軸20の近くに移動させておき、この線模様17aが観察用カメラ10の視野範囲内にあるように設定しておくことが好ましい。さらに、観察用カメラ10の拡大率も1本の線模様17aのみを撮影できるように設定されていることが好ましい。
【0033】
そして、第1並進駆動ステージ6を回転ステージ4の回転軸20に対して垂直な方向(X、Y方向)へ駆動させることによって、基板7の位置を調整する(S5)。ここで、各駆動位置において、回転ステージ4を現在の角度位置の周りに微小角度(Δθ)回転させて走査する(S6)。このとき、観察用カメラ10によって1本の線模様17aを画像(観察用カメラ10の画像)に撮影できるように撮影し、この画像をみながら、回転ステージ4の回転軸20と画像上の線模様17aとが一致しているか確認する。線模様17aが画像上で左右にドリフトし、回転軸20と画像上の線模様17aとが一致しない場合(S7、NO)、第1並進駆動ステージ6を回転ステージ4の回転軸20に対して垂直な方向(X方向、Y方向)へ駆動させて(S5)、基板7の位置を再度調整する。そして、回転ステージ4を現在の角度位置の周りに微小角度(Δθ)回転させて(S6)、画像に映った線模様17aを左右方向にずらし、線模様17aと回転軸20とを一致させる。そして、線模様17aが画像上で左右にドリフトしなくなると(S7、YES)、回転軸20と画像上の線模様17aとが一致する。この線模様17aの線幅が基板7に形成された線模様17の中の一番狭い線幅を有した線模様17cでない場合(S8、NO)、隣接する次に線幅の狭い線模様17bと回転軸20を一致させる操作を行う。具体的には、観察用カメラ10で次に線幅の狭い線模様17bを撮影し(S9)、上述の第1並進駆動ステージ6の駆動及び回転ステージ4の回転により行う(S5〜S7)。ここで、線模様17aを用いたときの第1並進駆動ステージ6と回転ステージ4との走査(S6、S7)について説明する。観察用カメラ10で撮影した画像のおける線模様17aが画像21上の中心線21aに位置しているか確認する(図3(a))。観察用カメラ10で撮影した画像21において、線模様17aが画像21上の中心線21aに位置していない場合(S7、NO)、第1並進駆動ステージ6の駆動及び回転ステージ4の回転を繰り返し行い(S5、S6)、線模様17aを左右方向にずらす(図3(b)参照)。ここで、線模様がこの画像21上の中心線21aに一致しているかの評価は、計算装置15において、観察用カメラ10によって撮影した線模様の画像21の輪郭を画像解析して中心位置を算出し、各回転位置及び各駆動位置における相互の画像間で位置を比較することによって評価する。なお、線模様17aが画像21上の中心線に位置し、線模様17aの中心線21aからのぶれが起こらなくなったときに、計算装置15で算出された画像21の中心位置(線模様)を、観察用カメラ10で撮影した画像の中心位置又は画像上で基準とするピクセル位置に一致させて、この時点での第1並進駆動ステージ6のパルス数を計算装置15の記録部15aへ記録する。上述の各線幅の線模様による、観察用カメラ10の移動、調整部(第1並進駆動ステージ6)の座標、回転ステージ4の角度、第1並進駆動ステージ6の位置、観察用カメラ10の画像上における最小線幅である基準線(線模様17a)パターンの位置座標を画像処理で算出(回転軸位置に相当するもの)は、記録部15aに保存(データベース化)される。そして、画像21において、線模様のぶれが起こらない位置に第1並進駆動ステージ6があるときに、観察用カメラ10の視野方向において、線模様17aと回転軸20とが一致した状態になる。
【0034】
線幅の異なる線模様17bへ順にかえていき、回転軸20と最小線幅を有する線模様17cとが一致した場合(S8、YES)、観察用カメラ10の視野方向において回転軸20と最小線幅を有する線模様17cとが一致し(図4)、基板7の線模様17cと回転軸20とが一致することになる。なお、上記と同様に、各線模様と回転軸20とを一致させ、各線幅を有する線模様17が画像21上の中心線に位置し、線模様17aの中心線21aからのぶれが起こらなくなったときに、各線幅において、第1並進駆動ステージ6のパルス数が計算装置15の記録部15aへ記録される。
【0035】
ここで、最小線幅を有する線模様17cにおける位置合わせの調整について詳細に説明する。観察用カメラ10の視野方向において、最小線幅を有する線模様17cの位置調整が行われる。このとき、第1並進駆動ステージ6の駆動を観察用カメラ10の視野方向およびこれに直交する水平方向に対して行いながら、回転ステージ4の微小角度走査を繰り返す。ここで、回転ステージ4を、画像上で線模様17cが画像21上の中心線からぶれを生じない位置を探しながら走査する。このぶれが無くなった状態において、最小線幅の線模様17cの表面が完全に回転軸20と一致したことになる(図4)。このときの画像21が、第1信号処理装置12において信号へ処理され、この信号が計算装置15へ伝達され、計算装置15において、線模様17cの中央の位置が画像21上におけるピクセル座標として画像処理により算出される。
【0036】
次に、上記操作により、回転ステージ4の回転軸20と一致した最小線幅を有する線模様17cとX線マイクロビーム3との位置合わせの調整について説明する。なお、下記の位置合わせの操作は、一部の初期設定を除いて、予め計算装置15に記憶されたプログラムにより自動的に行われるものである。
【0037】
回転軸20に垂直な方向(X、Y方向)へ第2並進駆動ステージ5を駆動させる(S101)。なお、第2並進駆動ステージ5の駆動は、回転ステージ4における現在の設定角度をから計算装置15において算出された駆動量に基づいて、制御装置14によって制御される。ここで、X方向における各位置において、Y方向へ駆動させ、透過X線検出装置11においてY方向へ第2並進駆動ステージ5駆動させたときの線模様の透過像を検出する(図5参照)。そして、この透過像が計算装置15へ伝達され、計算装置15において、この透過像における線模様の線幅が演算処理され算出される。この操作を、X方向の異なる複数の位置において行い、X方向の各位置における線幅を比較して、最小線幅となるX位置およびY位置を探す。最小線幅となるX位置およびY位置に到達しない場合(S102、NO)、第2並進駆動ステージ5をX、Y方向へ駆動させて最小線幅となる位置を探す(S101)。そして、最小線幅となるX位置およびY位置に到達した場合(S102、YES)には、最小線幅の線模様とX線マイクロビーム3の集光点位置とが水平方向において(X方向及びY方向の存在する平面において)一致したことになる(S103)。この一致したときの線模様の位置を、画像21上のピクセル座標として計算装置15の記録部15aへ記憶する。次に、第2並進駆動ステージ5を、回転ステージ4の回転軸20方向(Z方向)へ駆動(S104)させることによりZ方向の位置合わせを行う。このとき、回転軸20に対して垂直な方向に形成されている線模様17の配列を用いて、回転軸20と同方向におけるX線マイクロビーム3の集光点位置を確認しながら、最小線幅となるZ位置を探す。最小線幅となるZ位置に到達しない場合(S105、NO)は、第2並進駆動ステージ5をZ方向へ駆動させ(S104)、最小線幅となるZ位置を探す。そして、最小線幅となるZ位置に到達すると(S105、YES)、回転軸20とX線マイクロビーム3の集光位置とが一致する(S106)。この状態において、試料表面の線模様17に観察用カメラ10の焦点を固定する。そして、上記回転ステージ4の角度位置及び第2並進駆動ステージ5の位置座標(X方向、Y方向、Z方向)を記録装置に保存(データベース化)する(S107)そして、回転ステージにより走査する全ての角度走査範囲で回転軸とX線マイクロビームの集光位置とが一致するかを確認する(S108)。一致しない場合は(S108、NO)、次の角度に回転ステージ4を駆動させ、第2並進駆動ステージ5をX方向、Y方向、Z方向へ駆動させる(S101〜S107)。そして、全ての角度走査範囲で回転軸とX線マイクロビームの集光位置とが一致すると(S108、YES)、回転ステージ4の角度毎のデータベースに基づいて第2並進駆動ステージ5の駆動により回転軸20とX線マイクロビームの集光位置とが一致したことになる(S109)。
【0038】
上記操作により、仮試料である基板7を用いて、回転軸20とX線の照射位置との位置合わせの調整が終了する。上記調整後、試料位置に配置されている基板7を移動させて、測定用試料を第1並進駆動ステージ6上に搭載する。なお、この測定用試料の表面における分析点は、観察用カメラ10で確認できる分析点であったり、測定用の試料表面に設けられた基準点が試料表面上にあり、この基準点からの距離によって分析点が予めわかっているものであったりすることが好ましい。
【0039】
次に、測定用試料の分析点とX線照射位置との位置合わせの調整について説明する。
【0040】
まず第1並進駆動ステージ6をマニュアル操作により駆動させて、観察用カメラ10の画像の視野範囲に試料の分析点があるように設定する。この最初の位置決め(マニュアル)操作は精度を要しないため、図示しないレーザマーカ等を用いて行うことができる。レーザマーカの調整としては、予め調整されている線模様を基準にして、線模様にレーザ照射位置を合わせておく。そして、分析点の形状、あるいは基準点(線模様)を、観察用カメラ10で撮影し、第1信号処理装置12において撮影された画像21を信号へ処理し、この処理された信号が計算装置15へ伝達されて、計算装置15の記録部15aにおいて記録し、画像認識させる。この画像と上述した仮試料である基板による位置合わせの調整で得られ記録部15aで記録された位置合わせの調整の情報とに基づいて、測定用試料の分析点にX線が照射されるように制御する。すなわち、この画像と、上述した仮試料である基板による位置合わせの調整で得られ記録部15aで記録された位置合わせの情報とに基づいて、X線マイクロビーム3の照射位置に試料を移動させるための移動量及び回転軸20に試料を移動させるための移動量が、計算装置15の計算部15bに画像21上のピクセルサイズで算出され、これが実際の第1並進駆動ステージ6の駆動量に変換される。そして、この駆動量が、制御装置14の調整部へ伝達され、伝達された駆動量に基づいて、調整部が、回転ステージ4の回転及び第1並進駆動ステージ6と第1並進駆動ステージ6との駆動を制御、調整して、分析点の位置合わせ調整を行う。なお、観察用カメラ10は、観察用カメラ10の視野方向(試料表面の法線方向)に、観察用カメラ10のピントが合うように第1位置調整装置(図示せず)により位置調整が行われる。この操作も計算装置15により自動的に制御されることが好ましい。これによって、X線マイクロビームと試料表面上の分析点との位置合わせを、精度良く行うことができる。
【0041】
本実施形態によると、測定用試料を測定する前に、仮試料である基板7の表面上の微細な線模様17と回転ステージ4の回転軸20とを一致させることによって、X線マイクロビーム3の微小照射点と試料位置との位置合わせの調整を予め行うことができるので、試料や試料の所望位置に、X線を短時間で精度良く照射させることができるX線分析装置100を提供することができる。また、線模様が微細なものであるので、X線マイクロビーム3に相当するミクロン単位又はサブミクロン単位の精度において、X線マイクロビーム3の照射位置の位置合わせを行うことができる。
【0042】
また、試料又は試料の所望位置とX線照射点とが一致するように、X線検出器9によって検出された結果及び試料表面が撮影された画像に基づいて、回転ステージ4の回転量、第1並進駆動ステージ6の駆動量及び第2並進駆動ステージ7の駆動量が計算装置15において計算され、該回転量及び駆動量に基づいて、制御装置14が回転ステージ4と第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5との操作を制御して、試料を自動的にX線照射点へ位置するように移動させることができるので、試料や試料の所望位置に、X線をより高精度に照射させることができる。また、位置合わせの調整を自動的に行うことができるので、測定用試料の分析を行う前の位置合わせを短時間で行うことができるとともに、試料表面上における回折角度領域ごとに迅速な調整を行うことができる。
【0043】
また、測定用試料を用いて行われた位置合わせの調整において得られた制御情報、すなわち、試料位置および試料の回折条件に基づいて計算された、回転ステージ4の回転量と、第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5との駆動量によって、試料又は試料の所望位置とX線照射位置とを一致させる制御情報に基づいて、測定用試料を試料位置に配置させると、配置位置に応じて、自動的に回転ステージ4と第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5との作動を制御して、試料又は試料の所望位置とX線マイクロビーム3の照射位置との位置合わせの調整が行われるので、試料や試料の所望位置に、X線をより高精度に照射させることができるX線分析装置100を提供することができる。
【0044】
また、仮試料である基板の表面における線模様17が、線幅の広いものから狭いものへと順に、複数配列して形成されているので、線幅の広いものから狭いものへと順にX線を照射させて、最終的にX線サイズの微少な線幅において試料位置を調整することができる。これによって、試料や試料の所望位置に、より高精度にX線を照射させることができる。
【0045】
また、基板7の線模様17が、回転ステージ4の回転軸20方向と回転軸20方向(Z方向)に対して垂直な方向(Y方向)とに形成されているL字型の縞模様であるので、回転ステージ4の回転軸と直交する方向にある第1並進駆動ステージ6の2つの軸(X方向及びY方向)を走査させながら、回転ステージ4を微小角度だけ走査を行っても、回転軸方向と一致する方向の線模様がずれることなく同じ位置に留まる状態となった段階で、回転軸と縞模様とが一致したこととなる。続いて、第2並進駆動ステージ5を駆動走査させながら透過像を観察することにより、両方向の縞模様について幅方向の中心とX線マイクロビームの位置とを一致させることができる。以上のように第1並進駆動ステージ6と第2並進駆動ステージ5との駆動及び回転ステージ4の回転による基板7の位置調整が行いやすくなる。これにより、試料や試料の所望位置に、容易に、より高精度にX線を照射させることができる。
【0046】
基板7上に線幅の異なる線模様17が複数設けられているので、線幅の大きいものから位置調整を行うと、調整を迅速に行える。特に、数ミクロンのX線ビームを精密に位置決めするためには同程度の線幅で調整することが必要となる場合でも、位置合わせを始める手順が容易になる。
【0047】
以上、本発明の実施形態の表面処理装置について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態において、基板の線模様は、回転ステージの軸方向にのみ形成されているものや、該軸方向に垂直な方向のみに形成されているものでもよい。また、回転ステージの軸方向及び該軸方向に対して垂直方向に形成されているものとして、L字型のものに限られず、十字型に形成されているものでもよい。
【0048】
また、本実施形態において、位置合わせの調整は、試料に応じた測定角度領域ごとに自動的に行われて該角度ごとに自動的に補正されるように設定されているものでもよい。これにより、常時、試料表面上の一定の分析点にX線マイクロビームを照射することが可能となるとともに、同じ分析点の構造を反映した複数の回折信号を測定することができる。この結果、信頼性の高い局所構造解析結果が保たれる。
【0049】
また、本実施形態において、試料の基準位置(仮試料である基板の線模様の位置)に対する複数の所望位置の相対位置を予め観察用カメラで撮影した画像によって確認し、第1信号処理装置においてこの画像が処理された信号に基づいて、計算装置および制御装置により自動的に制御できるようにされているものでよい。これにより、複数個の試料に連続してX線マイクロビームを照射させて分析できるとともに、各試料の所望位置にX線マイクロビームを照射させて分析を行うことができるので、複数の分析を短時間で精度のよい分析を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 X線ビーム
2 X線集光装置
3 X線マイクロビーム
4 回転ステージ
5 第2並進駆動ステージ系
6 第1並進駆動ステージ系
7 仮試料である基板
8 回折信号
9 X線検出装置
10 観察用カメラ(撮影装置)
11 透過X線検出装置
12 第1信号処理装置
13 第2信号処理装置
14 制御装置
15 計算装置
17 線模様
18 基板
19 線模様
20 回転軸
21 画像
21a 中心線
100 X線分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源から発せられるX線ビームを整形しX線マイクロビームを形成する集光装置と、
前記集光装置で形成されたX線マイクロビームが照射される試料における微小照射点を含む前記試料表面を拡大観察する顕微鏡型レンズを有する観察用カメラと、
前記微小照射点から発生した信号X線を検出するX線検出器と、
前記試料を搭載しており、前記試料の回折角度の設定および走査を行う回転ステージと、
前記回転ステージの上に載置され且つ前記試料が載置されており、前記試料の位置を調整する第1並進駆動ステージと、
前記回転ステージが載置されており、前記回転ステージの位置を調整する第2並進駆動ステージと、
前記観察用カメラを搭載しており、前記観察用カメラの位置を調整する第1位置調整装置と、
前記X線検出器を搭載しており、前記X線検出器の位置を調整する第2位置調整装置とを備えたX線分析装置であり、
前記X線分析装置は、測定用試料の仮試料である基板をさらに備えており、
前記基板は、前記基板の平面に前記微小照射点が位置するように配置されており、且つ、前記基板の平面上に、前記基板の密度と異なる密度を有した微細な線模様を有していることを特徴とするX線分析装置。
【請求項2】
前記X線検出器から送られた信号を電気信号へ処理する第1処理装置と、
前記観察用カメラで撮影された映像を信号へ処理する第2処理装置と、
前記第1処理装置によって処理された電気信号と前記第2処理装置によって処理された信号とを記録する記録部と、前記電気信号と前記第2処理装置によって処理された信号とに基づいて前記回転ステージの回転量、前記第1並進駆動ステージの駆動量及び前記第2並進駆動ステージの駆動量を計算する計算部とを備えた計算装置と、
前記計算部において計算された回転量と駆動量とに基づいて、前記回転ステージの回転と第1並進駆動ステージの駆動と第2並進駆動ステージの駆動とを制御する制御部を備えた制御装置をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載のX線分析装置。
【請求項3】
前記制御装置が、前記仮試料である基板を用いて前記回転ステージの回転軸と前記基板における線模様とX線照射点とを一致させる位置合わせの調整を行った後、前記計算装置において計算された回転量および駆動量に基づいて、前記回転ステージの回転と第1並進駆動ステージの駆動と第2並進駆動ステージの駆動とを調整する調整部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載のX線分析装置。
【請求項4】
前記調整部が、
前記第1並進駆動ステージを駆動させて、前記基板に形成された微細な線模様と前記回転ステージの回転軸との位置合わせ調整を行う第1調整部と、
前記第2並進駆動ステージを駆動させて、前記X線マイクロビームと前記回転軸との位置合わせ調整を行う第2調整部とを有することを特徴とする請求項3に記載のX線分析装置。
【請求項5】
前記基板の線模様が、線幅の広いものから狭いものへと順に複数配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線分析装置。
【請求項6】
前記基板の線模様が、前記回転ステージの回転軸方向と前記回転軸方向に対して垂直な方向とに形成された線模様を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のX線分析装置。
【請求項7】
前記基板の線模様が、L字型に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のX線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−256103(P2010−256103A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104744(P2009−104744)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(502249769)財団法人ひょうご科学技術協会 (1)
【Fターム(参考)】