説明

X線回折測定装置及びイメージングプレートの管理方法

【課題】 X線回折測定装置において、誤ったイメージングプレートの使用を避ける。
【解決手段】 コントローラCTは、測定対象物にて回折したX線による回折環をイメージングプレート28に記録して、回折環を記録したイメージングプレート28にレーザ光を照射して回折環を測定する。新たなイメージングプレート28には、製造日を含む識別データがX線により記録されており、新たなイメージングプレート28への交換後には、識別データが読取られ、その後、識別データがイメージングプレート28から消去される。これにより、新たなイメージングプレート28への交換後に識別コードが読取れなかった場合には、コントローラCTは、使い古しのイメージングプレート28がセットされたと判定する。また、コントローラCTは、製造日を用いて使用期限の切れたイメージングプレート28のセットも判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物にて回折したX線によりイメージングプレートの表面に形成された回折環の形状や強度分布に基づいて測定対象物の特性を評価するX線回折測定装置、及びX線回折測定装置におけるイメージングプレートの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物の残留応力や特定の相の割合をX線回折により測定することはよく行われている。X線回折測定装置において、装置を小型化できX線の照射時間を短くすることが可能な方法として、下記特許文献1に示された装置がある。この装置は、X線を所定の角度で測定対象物に照射し、測定対象物にて回折したX線(以下、回折X線という)を、感光性を有するイメージングプレートで受光し、イメージングプレートに形成された環状のX線回折像(以下、回折環という)の形状を分析するcosα法により、測定対象物の残留応力を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−241308号公報
【発明の概要】
【0004】
イメージングプレートに形成された回折環は所定波長の光を照射することにより消すことができるため、イメージングプレートを繰り返して使用できる。しかし、イメージングプレートを繰り返して使用していくと、イメージングプレートが次第に劣化して感光性が落ちていく。感光性が落ちたイメージングプレートに回折環を形成すると、回折環の形状や強度分布を精度よく求めることができず、残留応力などの測定対象物の特性を精度よく評価することができない。よって、イメージングプレートは、回折環を形成するごとに回数をカウントし、回折環形成回数が予め設定した回数を越えたときには、新しいものに交換する必要がある。また、イメージングプレートは、製造されてから年月が経過すると感光性が落ちていくので、新たにセットするイメージングプレートは、製造されてからの経過日数が期限内のものである必要がある。
【0005】
そして、イメージングプレートに識別番号を付与して正しく管理していれば、常に、未使用であり製造日からの経過日数が期限内のイメージングプレートをセットすることができるが、正しく管理していないと、次のような問題が生じる可能性がある。すなわち、作業者が誤って、既に回折環を設定回数を越えて多数回形成したイメージングプレートをセットしてしまったり、製造日からの経過日数が期限を越えたイメージングプレートをセットしてしまったりする。
【0006】
本発明はこの問題を解消するためになされたもので、その目的は、作業者が誤っても、常に未使用であり製造日からの経過日数が期限内のイメージングプレートを使用することができるX線回折測定装置、及びイメージングプレートの管理方法を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明の特徴は、測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器(13)と、中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブル(27)と、テーブルに固定されて、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録するイメージングプレート(28)と、レーザ光をイメージングプレートの受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によってイメージングプレートから出射された光を受光して受光強度を表す受光信号を出力するレーザ検出装置(PUH)と、テーブルを、貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段(24,25)と、テーブルを、イメージングプレートの受光面に平行な方向に、レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段(15,17,18,22)と、移動手段を制御してイメージングプレートを移動し、X線出射器から測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によってイメージングプレートに回折環を撮像する回折環撮像手段(CT,S202〜S212,S218〜S224)と、回転手段及び移動手段を制御して回折環が記録されたイメージングプレートを回転及び移動させて、レーザ検出装置から出射されるレーザ光のイメージングプレートにおける照射位置をイメージングプレートの中心周りに回転させるとともに半径方向に変化させながら、レーザ検出装置から出力される受光信号をそれぞれ入力して、前記入力した受光信号によって表された受光強度を表す受光強度データをレーザ光のイメージングプレートにおける照射位置と関連付けて順次読取るデータ読取り手段(CT,S408,S416,S422〜S428)と、データ読取り手段による受光強度データの読取り後、移動手段を制御してイメージングプレートを移動し、イメージングプレートに撮像された回折環に所定の波長の光を照射して回折環を消去する回折環消去手段(CT,S602〜S620)とを備えたX線回折測定装置において、イメージングプレートのテーブルへの固定後、移動手段を制御してイメージングプレートを移動し、イメージングプレート上にX線の照射によって形成した識別データの記録部分にレーザ検出装置から出射されるレーザ光を照射するとともに、レーザ検出装置から出力される受光信号によって表された識別データを取得する識別データ取得手段(52,CT,S102〜S116)と、識別データ取得手段によって識別データが取得されなかったとき、イメージングプレートの使用不能を判定する第1判定手段(CT,S118)と、識別データ取得手段による識別データの取得後、移動手段を制御してイメージングプレートを移動し、イメージングプレートに形成された識別データの記録部分に所定の波長の光を照射して識別データを消去する識別データ消去手段(CT,S130〜S142)とを設けたことにある。
【0008】
前記のように構成した第1の発明においては、新たなイメージングプレートがテーブルに固定された場合、識別コード取得手段を機能させることにより、新たなイメージングプレートに記録されている識別データが取得される。そして、この識別データの取得後、識別データ消去手段は、イメージングプレートに記録されている識別データを消去する。そして、第1判定手段は、識別データ取得手段によって識別データが取得されなかったとき、イメージングプレートの使用不能を判定するので、識別データが記録されていない誤ったイメージングプレート、例えば、既に使用されて前記識別データ消去手段によって識別データが消去されている使い古しのイメージングプレートが新たなイメージングプレートとしてテーブルに固定されたことを作業者に認識させることができる。
【0009】
また、第2の発明は、前記識別データは、前記イメージングプレートの製造日又は使用期限日を表すデータを含み、さらに、イメージングプレートの製造日又は使用期限日を表すデータを用いてイメージングプレートの使用不能を判定する第2判定手段(CT,S122,S124)を設けたことにある。これによれば、未使用の新たなイメージングプレートがテーブルに固定された場合でも、使用期限の過ぎたイメージングプレートがテーブルに固定された場合には、第2判定手段がイメージングプレートの使用不能を判定する。その結果、使用期限の切れたイメージングプレートのテーブルへのセットを作業者に認識させることができる。
【0010】
また、第3の発明は、さらに、回折環撮像手段によってイメージングプレートに回折環を撮像するごとに、又は回折環消去手段によってイメージングプレートに撮像された回折環を消去するごとに、回折環の作成回数を表す回折環作成回数をカウントアップする回折環作成回数計算手段(CT,S226)と、回折環作成回数によって表された回折環の作成回数が回折環の作成の限度内かを判定する作成回数判定手段(CT,S302)とを設けたことにある。これによれば、イメージングプレートに対する回折環の撮像及び消去を何回も行った結果、イメージングプレートが劣化した場合には、作成回数判定手段により、回折環作成回数によって表された回折環の作成回数が回折環の作成の限度内であるか否かが判定されるので、イメージングプレートの劣化を作業者に認識させることができる。
【0011】
さらに、本発明の実施にあたっては、本発明は、X線回折測定装置の発明に限定されることなく、X線回折測定装置におけるイメージングプレートの管理方法の発明としても実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の全体概略図である。
【図2】図1のX線回折測定装置の本体部分を拡大した拡大図である。
【図3】イメージングプレートから測定対象物までの距離と、受光センサにおける受光位置との関係を説明するための説明図である。
【図4A】図1のコントローラによって実行される識別コード読取りプログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図4B】前記識別コード読取りプログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図5】図1のコントローラによって実行される回折環撮像プログラムを示すフローチャートである。
【図6】図1のコントローラによって実行されるイメージングプレート管理プログラムを示すフローチャートである。
【図7A】図1のコントローラによって実行される回折環読取りプログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図7B】前記回折環読取りプログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図8】図1のコントローラによって実行されるピーク検出プログラムを示すフローチャートである。
【図9】図1のコントローラによって実行される回折環消去プログラムを示すフローチャートである。
【図10】イメージングプレートへのバーコードの記録例を示す図である。
【図11】バーコード記録装置の概略図である。
【図12】図11の円板の平面図である。
【図13】イメージングプレートに撮像された回折環を説明する説明図である。
【図14】イメージングプレートの移動限界位置からの移動距離と、イメージングプレートにおけるレーザ光の照射位置の半径方向距離(半径値)との関係を説明するための図である。
【図15】読取りポイントの軌跡を説明する説明図である。
【図16】信号強度のピークを説明するために、受光曲線の一例を示したグラフである。
【図17】半径位置に対する信号強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置の構成について図1乃至図3を用いて説明する。このX線回折測定装置は、測定対象物OBの特性を評価するために、X線を測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの回折X線により形成される回折環の形状及び回折環ごとの回折X線の強度を読取る。このX線回折測定装置は、箱状に形成されたフレームFRを有し、フレームFRの底面の角部から下方へ支持脚11が延設されている。すなわち、フレームFRの底面は、X線回折測定装置の設置面FLよりも上方に位置する。フレームFRの下方には、昇降機12が設けられている。昇降機12は、測定対象物OBを固定するための昇降ステージ12aを有する。昇降ステージ12aは、上下に昇降可能となっている。フレームFRの底面であって、昇降機12の上方に位置する部分には開口部が設けられていて、昇降ステージ12aを上昇させることにより、固定した測定対象物OBをフレームFRの内部へ搬入することができる。
【0014】
フレームFR内の上部には、X線制御回路14によって制御されて、X線を出射するX線出射器13が固定されている。X線出射器13から出射されたX線の光軸と、測定対象物OBの法線とが所定の角度θ(例えば、30°)をなすように、X線出射器13の出射口の向きが設定されている。
【0015】
X線制御回路14は、後述するコントローラCTによって制御され、X線出射器13から一定強度のX線が出射されるように、X線出射器13に供給する駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器13は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路14は、この冷却装置に供給する駆動信号も制御する。これにより、X線出射器13の温度が一定に保たれる。
【0016】
X線出射器13の下方には、移動ステージ15が設けられている。移動ステージ15は、ステージ送り装置16により、X線出射器13から出射されたX線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。ステージ送り装置16は、移動ステージ15に固定された図示しないナットに螺合するスクリューロッド17と、スクリューロッド17を回転させるフィードモータ18とを備えている。スクリューロッド17は、X線出射器13から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されている。そして、スクリューロッド17の一端部が、フレームFRに固定されたフィードモータ18の出力軸に連結され、他端部が、フレームFRに固定された軸受部19に回転可能に支持される。また、移動ステージ15は、それぞれフレームFRに固定された、対向する1対の板状のガイド20,20により挟まれていて、スクリューロッド17の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ18を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ18の回転運動が移動ステージ15の直線運動に変換される。フィードモータ18内には、エンコーダ18aが組み込まれている。エンコーダ18aは、フィードモータ18が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路21及びフィードモータ制御回路22へ出力する。
【0017】
位置検出回路21及びフィードモータ制御回路22は、コントローラCTからの指令により作動開始する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動して移動ステージ15をフィードモータ18側へ移動させる。位置検出回路21は、エンコーダ18aから出力されるパルス信号が入力されなくなると移動ステージ15が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路22に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21から移動限界位置に達したことを表す信号を入力するとフィードモータ18への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置を移動ステージ15の原点位置とする。したがって、位置検出回路21は、移動ステージ15が図1及び図2にて左上方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す位置信号を出力し、移動ステージ15が移動限界位置から右下方向へ移動するとき、移動限界位置からの移動距離xを表す信号を位置信号として出力する。
【0018】
フィードモータ制御回路22は、コントローラCTから移動ステージ15の移動先の位置を表す設定値を入力すると、その設定値に応じてフィードモータ18を正転又は逆転駆動する。位置検出回路21は、エンコーダ18aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、位置検出回路21は、カウントしたパルス数を用いて移動ステージ15の現在の位置(移動限界位置からの移動距離x)を計算し、コントローラCT及びフィードモータ制御回路22に出力する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21から入力した移動ステージ15の現在の位置が、コントローラCTから入力した移動先の位置と一致するまでフィードモータ18を駆動する。
【0019】
また、フィードモータ制御回路22は、移動ステージ15の移動速度を表す設定値をコントローラCTから入力する。そして、エンコーダ18aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ15の移動速度を計算し、前記計算した移動ステージ15の移動速度がコントローラCTから入力した移動速度になるようにフィードモータ18を駆動する。
【0020】
一対のガイド20,20の上端は、板状の上壁23によって連結されている。上壁23には、貫通孔23aが設けられていて、貫通孔23aには、X線出射器13の出射口の先端部が挿入されている。なお、X線出射器13の出射口の先端が移動ステージ15に当接しないように、X線出射器13及び移動ステージ15の位置が設定されている。
【0021】
また、移動ステージ15には、スピンドルモータ24が組み付けられている。スピンドルモータ24内には、エンコーダ18aと同様のエンコーダ24aが組み込まれている。すなわち、エンコーダ24aは、スピンドルモータ24が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路25及び回転角度検出回路26へ出力する。さらに、エンコーダ24aは、スピンドルモータ24が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラCT及び回転角度検出回路26へ出力する。
【0022】
スピンドルモータ制御回路25及び回転角度検出回路26は、コントローラCTからの指令により作動開始する。スピンドルモータ制御回路25は、コントローラCTから、スピンドルモータ24の回転速度を表す設定値を入力する。そして、エンコーダ24aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ24の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラCTから入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ24に供給する。回転角度検出回路26は、エンコーダ24aから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ24の回転角度すなわちイメージングプレート28の回転角度θpを計算して、コントローラCTに出力する。そして、回転角度検出回路26は、エンコーダ24aから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0°の位置である。
【0023】
スピンドルモータ24の出力軸24bの先端部には、円板状のテーブル27が固定されている。テーブル27の中心軸と、スピンドルモータ24の出力軸24bの中心軸とは一致している。テーブル27は、下面中央部から下方へ突出した突出部27aを有していて、突出部27aの外周面には、ねじ山が形成されている。突出部27aの中心軸は、スピンドルモータ24の出力軸24bの中心軸と一致している。テーブル27の下面には、イメージングプレート28が組み付けられている。イメージングプレート28は、表面に蛍光体が塗布された円形のプラスチックフィルムである。イメージングプレート28の中心部には、貫通孔28aが設けられていて、この貫通孔28aに突出部27aを通し、突出部27aにナット状の固定具29をねじ込むことにより、イメージングプレート28が、固定具29とテーブル27の間に挟まれて固定される。固定具29は、円筒状の部材で、内周面に、突出部27aのねじ山に対応するねじ山が形成されている。イメージングプレート28は、フィードモータ18によって駆動されて、移動ステージ15、スピンドルモータ24及びテーブル27と共に原点位置から回折環を撮像する回折環撮像位置へ移動する。また、イメージングプレート28は、スピンドルモータ24によって駆動されて回転しながら、フィードモータ18によって駆動されて、移動ステージ15、スピンドルモータ24及びテーブル27と共に撮像した回折環を読取る回折環読取り領域内、及び回折環を消去する回折環消去領域内にも移動する。
【0024】
また、移動ステージ15、スピンドルモータ24の出力軸24b、テーブル27及び固定具29には、X線出射器13から出射されたX線を通過させる貫通孔がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔の中心軸と、テーブル27の回転軸は一致している。すなわち、これらの貫通孔の中心軸と、X線出射器13から出射されるX線の光軸とが一致するとき、X線が測定対象物OBに照射される。このように、X線を測定対象物OBに照射するときのイメージングプレート28の位置が、回折環撮像位置である。
【0025】
フィードモータ18の下方には、測定対象物OBにて反射したX線を受光する複数の受光素子からなる受光センサ31(例えば、X線CCD)が組み付けられている。受光センサ31は、測定対象物OB及びイメージングプレート28からフィードモータ18側に十分離れている。これにより、イメージングプレート28が回折環撮像位置にあるとき、受光センサ31は、測定対象物OBにて反射したX線を直接受光できる。受光センサ31の受光面は、測定対象物OBの上面と平行である。受光センサ31の受光面におけるX線の受光位置は、図3に示すように、測定対象物OBの高さに対応している。言い換えれば、イメージングプレート28と測定対象物OBとの距離Lに対応している。受光センサ31は、それぞれの受光素子が受光した受光信号をセンサ信号取出回路32へ出力する。
【0026】
センサ信号取出回路32は、コントローラCTからの指令により作動開始し、受光センサ31から入力した受光信号を用いて受光センサ31の受光面における受光信号のピーク位置を算出して受光位置を表す受光位置信号としてコントローラCTへ出力する。
【0027】
また、受光センサ31の下方には、レーザ検出装置PUHが組み付けられている。レーザ検出装置PUHは、回折環を撮像したイメージングプレート28にレーザ光を照射して、イメージングプレート28から入射した光の強度を検出する。レーザ検出装置PUHは、測定対象物OB及びイメージングプレート28からフィードモータ18側に十分離れている。すなわち、イメージングプレート28が回折環撮像位置にあるとき、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置PUHによって遮られないようになっている。レーザ検出装置PUHは、レーザ光源33と、コリメーティングレンズ35、反射鏡36、偏光ビームスプリッタ37、1/4波長板38及び対物レンズ39を備えている。
【0028】
レーザ光源33は、レーザ駆動回路34によって制御されて、イメージングプレート28に照射するレーザ光を出射する。
【0029】
レーザ駆動回路34は、コントローラCTによって制御され、レーザ光源33から所定の強度のレーザ光が出射されるように、駆動信号を制御して供給する。レーザ駆動回路34は、後述するフォトディテクタ54から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源33に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート28に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。また、レーザ駆動回路34は、コントローラCTによるハイレベルの出力の指示により、ローレベルの直流信号に所定のパルスレベルのパルスを加算した出力信号を所定の短時間だけ出力し、その後に出力信号をローレベルの直流信号に戻す。
【0030】
コリメーティングレンズ35は、レーザ光源33から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡36は、コリメーティングレンズ35にて平行光に変換されたレーザ光を、偏光ビームスプリッタ37に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ37は、反射鏡36から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。1/4波長板38は、偏光ビームスプリッタ37から入射したレーザ光を直線偏光から円偏光に変換する。対物レンズ39は、1/4波長板38から入射したレーザ光をイメージングプレート28の表面に集光させる。
【0031】
対物レンズ39には、フォーカスアクチュエータ40が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ40は、対物レンズ39をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ39は、フォーカスアクチュエータ40が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
【0032】
対物レンズ39によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート28の表面であって、回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折環を撮像した後、イメージングプレート28にレーザ光を照射すると、イメージングプレート28の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート28に照射されて反射したレーザ光の反射光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ39及び1/4波長板38を通過して、偏光ビームスプリッタ37にて反射する。偏光ビームスプリッタ37の反射方向には、集光レンズ41、シリンドリカルレンズ42及びフォトディテクタ43が設けられている。集光レンズ41は、偏光ビームスプリッタ37から入射した光を、シリンドリカルレンズ42に集光する。シリンドリカルレンズ42は、透過した光に非点収差を生じさせる。フォトディテクタ43は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として、増幅回路44へ出力する。
【0033】
増幅回路44は、フォトディテクタ43から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成して、フォーカスエラー信号生成回路45及びSUM信号生成回路48へ出力する。増幅回路44の増幅率は、適切な値に固定設定されている。
【0034】
本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路45は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路45は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路46へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート28の表面からのずれ量を表している。
【0035】
フォーカスサーボ回路46は、コントローラCTにより制御され、フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成して、ドライブ回路47に出力する。ドライブ回路47は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ40を駆動して、対物レンズ39をレーザ光の光軸方向に変位させる。これにより、イメージングプレート28の表面に、レーザ光の焦点を一致させ続けることができる。
【0036】
SUM信号生成回路48は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換回路49に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート28にて反射したレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート28にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート28に入射した回折X線の強度に相当する。A/D変換回路49は、コントローラCTによって制御され、SUM信号生成回路48からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をディジタルデータに変換してコントローラCTに出力する。
【0037】
SUM信号生成回路48には、2値化回路51及び識別データ生成回路52も接続されている。これらの2値化回路51及び識別データ生成回路52は、イメージングプレート28に記録されたバーコードを読取るための回路である。ここで、イメージングプレート28に記録されたバーコードについて説明しておくと、イメージングプレート28には、図10に示すように、X線の照射によって撮像されたバーコードが周方向に沿って記録されている。このバーコードは、バーとバーとの間の複数種類の間隔の組み合わせで構成されている。具体的には、例えば、「1」、「2」、「3」及び「4」がそれぞれ割当てられた4種類のバーとバーとの間隔を用意しておき、この4種類の間隔を組み合わせて符号化されたデータがバーコードとして記録されている。そして、バーコードによって構成されたデータは、イメージングプレート28の製造日、製造元、製造番号などからなる識別データである。
【0038】
前記バーコードの記録されたイメージングプレート28を回転させた状態で、イメージングプレート28にレーザ光を照射すると、前記回折環の場合と同様に、イメージングプレート28からバーコードに対応した強度のレーザ光が反射して、SUM信号生成回路48から反射レーザ光の強度に対応したSUM信号が出力される。2値化回路51は、このSUM信号の波高値と予め決められた基準値とを比較して、SUM信号の波高値が基準値を超えていればハイレベルとなり、基準値以下であればローレベルとなる2値化信号(パルス列信号)を出力する。識別データ生成回路52は、コントローラCTによる指示により、2値化回路51からの2値化信号(パルス列信号)に基づいて、パルス間の間隔から複数個の整数値1〜4の組み合わせからなるデータを作成し、このデータをデコードして元データすなわち識別データを生成してコントローラCTに出力する。また、識別データ生成回路52は、イメージングプレート28にバーコードが形成されておらず、2値化回路51からローレベルの一定信号が入力して、複数個の整数値の組み合わせからなるデータを作成できなかった場合には、バーコードが無いことを意味するデータをコントローラCTに出力する。
【0039】
また、レーザ検出装置PUHは、集光レンズ53及びフォトディテクタ54を備えている。集光レンズ53は、レーザ光源33から出射されたレーザ光の一部であって、偏光ビームスプリッタ37を透過せずに反射したレーザ光をフォトディテクタ54の受光面に集光する。フォトディテクタ54は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。従って、フォトディテクタ54は、レーザ光源33が出射したレーザ光の強度に対応した受光信号をレーザ駆動回路34へ出力する。
【0040】
また、対物レンズ39に隣接して、LED55が設けられている。LED55は、LED駆動回路56によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート28に撮像されたバーコード及び回折環を消去する。LED駆動回路56は、コントローラCTによって制御され、LED55に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
【0041】
コントローラCTは、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された図4A及び図4Bに示す識別コード読取りプログラム、図5に示す回折環撮像プログラム、図6に示すイメージングプレート管理プログラム、図7A及び図7Bに示す回折環読取りプログラム、図8に示すピーク検出プログラム、並びに図9の回折環消去プログラムを実行する。コントローラCTには、作業者が各種パラメータ、作業指示などを入力するための入力装置58と、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせるための表示装置57とが接続されている。コントローラCTは、A/D変換回路49から出力されたSUM信号のディジタルデータを処理することによりイメージングプレート28の蛍光体が発した光の強度を検出する。
【0042】
上記のように構成したX線回折測定装置の作動を説明する前に、イメージングプレート28にX線によってバーコードを記録するバーコード記録装置及び同装置を用いたバーコードの記録方法について説明しておく。図11に示すように、バーコード記録装置は、円板61、電動モータ62及びX線照射器63を備えている。円板61はX線を遮蔽する材料で円盤状に形成されていて、イメージングプレート28に対向するように配置される。この円板61には、図12に示すように、周方向の1箇所にて半径方向に伸びたスリット61aが設けられ、X線照射器63から照射されるX線がこのスリット61aを介してイメージングプレート28に到達して、イメージングプレート28上にスリット61aと同じ形状のバーが撮像されるようになっている。
【0043】
電動モータ62は、イメージングプレート28を回転駆動するもので、その出力軸62aの先端に回転板64がその中心部にて固定されている。イメージングプレート28は、この回転板64上に載置されて固定されるようになっている。電動モータ62は、前述したスピンドルモータ24と同様に構成され、前述したエンコーダ24aと同様なエンコーダ62bを備えている。この電動モータ62にも、前述したスピンドルモータ制御回路25及び回転角度検出回路26と同様な回転制御回路65及び回転角度検出回路66が接続されている。X線照射器63は、前述したX線制御回路14と同様なX線制御回路67により制御されて、円板61のスリット61aを介してイメージングプレート28にX線を照射して、X線による像をイメージングプレート28に形成するものである。これらの回転制御回路65、回転角度検出回路66及びX線制御回路67は、コントローラ68によりプログラム制御される。
【0044】
このように構成したバーコード記録装置においては、コントローラ68は、前述したイメージングプレート28の製造日、製造元、製造番号などの識別データをエンコードして、バーとバーとの間隔が複数の間隔の組み合わせからなるデータに変換する。そして、このデータをもとに、回転角度検出回路66によって検出された回転角を用いて回転制御回路64を介して電動モータ62の回転を制御し、イメージングプレート28上のバーコードを記録すべき位置に、円板61のスリット61aを対向させた状態で、回転板64の回転を止める。そして、コントローラ68は、X線制御回路67を制御することにより、X線照射器63からX線を予め決められた所定時間だけ出射させて、イメージングプレート28上にスリット61aの形状を撮像させる。その後、回転板64を前記変換されたデータに応じた角度だけ順次回転させて停止することによりイメージングプレート28の回転角度を変化させ、X線をスリット61aを介してイメージングプレート28上に照射して撮像する。その結果、イメージングプレート28上には、識別データを表すX線によるバーコードが周方向に沿って記録される(図10参照)。
【0045】
次に、前述したバーコードの記録されたイメージングプレート28を用いて、X線回折測定装置により、測定対象物OBの回折X線による回折環の形状及び回折環ごとの回折X線の強度を測定する手順について順次説明するが、まず交換したイメージングプレート28が適切か否かを判定する処理について説明する。この場合、作業者は、固定具29を用いて前述したバーコードの記録されたイメージングプレート28をテーブル27上に固定する。そして、作業者は、入力装置58を操作して、図4A及び図4Bに示す識別コード読取りプログラムの実行をコントローラCTに指示する。
【0046】
コントローラCTは、識別コード読取りプログラムの実行を図4AのステップS100にて開始し、ステップS101にて、表示装置57に表示されている「回折環作成回数限度超過、イメージングプレート交換」なる表示を消す。この表示は詳しくは後述するプログラム処理で、回折環の作成回数が限度を超えると表示されるもので、作業者にイメージングプレートの交換とイメージングプレートの交換後の識別コード読取りプログラムの実行を喚起させるものである。次に、ステップS102にて、スピンドルモータ制御回路25に対して、所定の一定回転速度でイメージングプレート28を回転させることを指示する。スピンドルモータ制御回路25は、エンコーダ24aからのパルス信号を用いて回転速度を計算しながら、前記指示された一定回転速度でイメージングプレート28が回転するようにスピンドルモータ24の回転を制御する。したがって、イメージングプレート28は前記所定の一定回転速度で回転し始める。次に、コントローラCTは、ステップS104にて、フィードモータ制御回路22に、イメージングプレート28を、対物レンズ39によるレーザ光の集光位置がイメージングプレート28に形成したバーコードに対向する位置(以下、この位置を中央半径位置という)へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を中央半径位置へ移動させる。
【0047】
次に、コントローラCTは、ステップS106にて、レーザ駆動回路34を制御してレーザ光源33によるレーザ光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。この場合、レーザ光の強度は、イメージングプレート28に形成されたバーコードが輝尽発光して、フォトディテクタ43によって受光されて増幅回路44を介してSUM信号生成回路48から出力されるSUM信号からバーコードが読取れる程度に大きな強度である。次に、コントローラCTは、ステップS108にて、フォーカスサーボ回路46に対して、フォーカスサーボ制御の開始を指示する。これにより、フォーカスサーボ回路46は、増幅回路44及びフォーカスエラー信号生成回路45からのフォーカスエラー信号に応じてフォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路47に出力する。ドライブ回路47は、この信号に基づいてフォーカスアクチュエータ40を駆動制御することにより、フォーカスサーボ制御を開始する。これにより、対物レンズ39は、レーザ光の焦点がイメージングプレート28の表面に合うように光軸方向に駆動制御される。
【0048】
前記ステップS108の処理後、コントローラCTは、ステップS110にて識別データ生成回路52に作動開始を指示する。これにより、識別データ生成回路52は作動を開始する。この状態では、フォトディテクタ43によって受光された受光信号が増幅回路44を介してSUM信号生成回路48に供給され、SUM信号生成回路48はイメージングプレート28に形成されたバーコードを表すSUM信号を2値化回路51に供給する。2値化回路51は、SUM信号を2値化信号(パルス列信号)に変換して識別データ生成回路52に供給する。そして、識別データ生成回路52は、2値化信号(パルス列)信号に基づいて識別データを生成してコントローラCTに出力する。また、イメージングプレート28にバーコードが形成されておらず、識別データが生成されない場合には、識別データ生成回路52は、バーコードが無いことを意味するデータをコントローラCTに出力する。
【0049】
そして、コントローラCTは、ステップS112にて、識別データの入力があったかを判定することで、この識別データ生成回路52による識別データのコントローラCTに対する出力まで、コントローラCTはこの識別データの入力を待機し続ける。この識別データは、イメージングプレート28に1周にわたって記録されたバーコードを基に作成した複数の整数値からなるデータをデコードしたデータであるか、前述のバーコードが無いことを意味するデータである。識別データの入力があるまで、コントローラCTはステップS112にて「No」と判定し続けてステップS112の処理を続行する。そして、識別データの入力があると、コントローラCTはステップS112にて「Yes」と判定して、ステップS114以降にプログラムを進める。
【0050】
ステップS114においては、コントローラCTは、フォーカスサーボ回路46に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラCTは、ステップS116にて、レーザ照射停止の指示を出力して、レーザ駆動回路34によるレーザ光源33からのレーザ光の出射を停止させる。
【0051】
前記ステップS116の処理後、コントローラCTは、図4BのステップS118にて、識別データが有るか否かを判定する。この場合、前述のように、バーコードが無いことを意味するデータを入力して、識別データ自体を入力していない場合には、コントローラCTは、ステップS118にて「No」と判定して、ステップS120にて、表示装置57に識別コードの記録が無いこと、及びイメージングプレート28の使用が不可能であることを表示して、ステップS144以降に進む。これは、後述するように、既に回折環を設定回数を越えて多数回形成したイメージングプレート28をテーブル27にセットしてしまった場合、すなわち既に一度使用したイメージングプレート28をテーブル27にセットしてしまった場合を意味し、作業者は、新たなイメージングプレート28をテーブル27にセットする必要がある。
【0052】
一方、識別データ自体を入力した場合には、コントローラCTは、ステップS118にて「Yes」と判定して、ステップS122にて識別データ中に含まれる製造日から現在までの経過日数を計算する。そして、コントローラCTは、ステップS124にて、前記計算した経過日数がイメージングプレート28の使用期限内であるか否かを判定する。経過日数が使用期限内でなければ、コントローラCTは、ステップS124にて「No」と判定して、ステップS126にて、表示装置57に、識別データの内容を表示するとともに、使用期限が超過していること、及びイメージングプレート28の使用が不可能であることを表示して、ステップS144以降に進む。これは、製造日からの経過日数が期限を越えたイメージングプレート28をテーブル27にセットしてしまった場合を意味し、作業者は、新たなイメージングプレート28をテーブル27にセットする必要がある。
【0053】
一方、経過日数が使用期限内であった場合には、コントローラCTは、ステップS124にて「Yes」と判定し、ステップS128にて、表示装置57に、識別データの内容を表示するとともに、イメージングプレート28が使用可能であることを表示して、ステップS130以降の処理を実行する。
【0054】
ステップS130においては、コントローラCTは、回折環消去領域内の位置であって、LEDの照射位置がイメージングプレート28に形成されたバーコードよりも内側位置に対向する位置(以下、最小半径位置という)になるように、イメージングプレート28を移動させることをフィードモータ制御回路22に指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を最小半径位置まで移動させる。
【0055】
前記ステップS130の処理後、コントローラCTは、ステップS132にて、LED駆動回路56を制御してLED55による可視光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。次に、コントローラCTは、ステップS134にて、フィードモータ制御回路22に対して、イメージングプレート28の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を最小半径位置から軸受部19側(図1,2の右下方向)へ一定速度で移動させる。この場合、前記ステップS102の処理によってイメージングプレート28は回転中であるので、LED55による可視光が、イメージングプレート28において、回転しながら、最小半径位置から外側方向に一定速度で移動し始める。
【0056】
前記ステップS134の処理後、コントローラCTは、ステップS136にて位置検出回路21からイメージングプレート28の位置を表す位置信号を入力し、ステップS138にて、LEDの照射位置がイメージングプレート28に形成されたバーコードよりも外側位置に対向する位置(以下、最大半径位置という)を超えているか否かを判定する。そして、イメージングプレート28の現在の位置が最大半径位置を超えるまで、コントローラCTは、ステップS138にて「No」と判定して、ステップS136,S138の処理を繰り返し実行する。これにより、回転するイメージングプレート28に対し、バーコードの内側位置から外側位置まで、LED55による可視光が照射されるので、イメージングプレート28上にX線によって形成されたバーコードが徐々に消去されていく。
【0057】
そして、イメージングプレート28の最大半径位置を超えると、コントローラCTは、ステップS138にて「Yes」と判定して、ステップS140にてフィードモータ制御回路22にイメージングプレート28の移動停止を指示し、ステップS142にてLED駆動回路56にLED55による可視光の照射停止を指示する。これにより、フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18の作動を停止させることによりイメージングプレート28の移動を停止させる。LED駆動回路56は、LED55による可視光の照射を停止させる。この状態では、イメージングプレート28に形成されたバーコードは完全に消去されている。
【0058】
このステップS142の処理後、及び前述したステップS120,S126の処理後、コントローラCTは、ステップS144にて、回折環作成回数をリセットする。この回折環作成回数は、後述する処理によってイメージングプレート28に回折環が作成された回数を表すもので、コントローラCT内の不揮発性メモリに記憶されて保存される。次に、コントローラCTは、ステップS146にて、スピンドルモータ制御回路25に対してイメージングプレート28の回転停止を指示して、ステップS148にてこの識別コード読取りプログラムの実行を終了する。スピンドルモータ制御回路25は、スピンドルモータ24の回転動作を停止させる。
【0059】
次に、X線回折測定装置により、測定対象物OBの回折X線による回折環の形状及び回折環ごとの回折X線の強度を測定する具体的手順について説明する。作業者は、測定対象物OBを昇降機12の昇降ステージ12aに取り付け、昇降ステージ12aを上昇させて、測定対象物OBをフレームFR内にセットする。そして、作業者が、入力装置58を用いて測定対象物OBの材質(例えば、本実施形態の場合には鉄)を入力し、回折環撮像プログラムの実行開始をコントローラCTに指示する。また、鉄のように複数の結晶構造(フェライト及びオーステナイト)を含む場合には、複数の結晶構造の比率を測定するか否かも入力装置58を用いて入力する。なお、本実施形態においては、この比率の測定を行うことも入力するものとする。
【0060】
コントローラCTは、図5に示すように、ステップS200にて、回折環撮像プログラムの実行を開始すると、ステップS202にて、スピンドルモータ制御回路25に対して、イメージングプレート28を低速回転させ、エンコーダ24aからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート28の回転を停止させる。これにより、測定開始時において、イメージングプレート28の回転角度が0°に設定される。なお、回折環撮像プログラムにおける以降の処理においては、イメージングプレート28を回転させない。次に、コントローラCTは、ステップS204にて、フィードモータ制御回路22を制御することにより、フィードモータ18を作動させて、位置検出回路21との協働によりイメージングプレート28を回折環撮像位置へ移動させる。
【0061】
次に、コントローラCTは、ステップS206にて、センサ信号取出回路32の作動を開始させる。次に、コントローラCTは、ステップS208にて、X線制御回路14を制御してX線の出射を開始させる。これにより、X線が測定対象物OBに照射され、測定対象物OBの表面にて反射したX線が受光センサ31に受光される。次に、コントローラCTは、ステップS210にて、センサ信号取出回路32から受光位置信号を入力し、前記入力した受光位置信号を用いてイメージングプレート28と測定対象物OBとの距離Lを算出する。なお、この距離Lは、後述する処理のためにメモリに記憶される。そして、コントローラCTは、ステップS212にて、前記算出した距離Lが所定の基準範囲内にあるか否か判定する。距離Lが基準範囲外であれば、「No」と判定して、ステップS214にて、X線制御回路14を制御して測定対象物OBへのX線の照射を停止させる。
【0062】
そして、コントローラCTは、ステップS216にて、表示装置57に、測定対象物OBの高さ方向の位置が不適切である旨を表示するとともに、昇降機12の昇降ステージ12aの高さ調整に関する情報を表示する。すなわち、昇降ステージ12aを、どの程度上昇又は下降させるべきかを表示する。そして、後述のステップS228にて、回折環撮像プログラムを終了する。この場合、作業者は、昇降ステージ12aの高さを調整した後、入力装置58を用いて、再度、測定開始を指示する。上記のステップS208〜S214までの所要時間は僅かなので、イメージングプレート28には回折環が撮像されない。また、受光センサ31が測定対象物OBにて反射したX線を受光しない場合は、ステップS216にて、測定対象物OBの高さ方向の位置が不適切である旨の表示がなされるのみであって、昇降ステージ12aの高さ調整に関する情報は表示されない。この場合、測定対象物OBの位置は、極めて不適切な位置にあると考えられ、昇降ステージ12aの高さ調整の方向を目視で判断できる。
【0063】
一方、ステップS212の判定処理時に、距離Lが所定の基準範囲内である場合には、コントローラCTは、ステップS212にて「Yes」と判定して、ステップS218に処理を進め、センサ信号取出回路32の作動を停止させる。そして、コントローラCTは、ステップS220にて時間計測を開始し、ステップS222にて所定の設定時間を経過したか否かを判定する。時間計測開始から所定の設定時間を経過していなければ、ステップS222にて「No」と判定して判定処理を実行し続ける。すなわち、コントローラCTは、時間計測開始から所定の設定時間を経過するまで待機する。そして、時間計測開始から所定の設定時間を経過すると、コントローラCTは、ステップS222にて「Yes」と判定して、ステップS224にてX線制御回路14を制御してX線出射器13によるX線の照射を停止させる。
【0064】
このようなステップS202〜S212,S218〜S224の処理により、イメージングプレート28には回折環が撮像される。図13はこのイメージングプレート28に撮像された回折環を示しており、本実施形態のように測定物質が鉄である場合には、内側にフェライトによる回折環が形成され、外側にオーステナイトによる回折環が形成される。なお、フェライトによる回折X線の強度はオーステナイトによる回折X線の強度に比べて大きく、イメージングプレート28上には、フェライトによる回折環がオーステナイトによる回折環に比べて幅広かつ顕著に撮像される。
【0065】
前記ステップS224の処理後、コントローラCTは、ステップS226にて、前述した図4BのステップS144にてリセットした回折環作成回数に「1」を加えて、ステップS228にてこの回折環撮像プログラムの実行を終了する。このステップS144の処理により、回折環作成回数は、回折環撮像プログラムが実行されるごとに、すなわちイメージングプレート28に新たな回折環が形成されるごとに順次「1」ずつ増加する。
【0066】
レーザ照射による回折環の読取りの前に、前記回折環作成回数に基づいて、イメージングプレート28の交換を作業者に知らせるイメージングプレート28の管理について説明しておく。このイメージングプレート28の管理のために、コントローラCTは、電源がオンされている間、他のプログラムと常に並行して、図6のイメージングプレート管理プログラムを実行している。すなわち、このX線回折測定装置の電源がオンされると、コントローラCTは、ステップS300にてこのイメージングプレート管理プログラムの実行を開始し、ステップS302にて、回折環作成回数は限度内であるか否か、すなわち回折環作成回数は予め決められた限度を表す所定値以下であるか否かを判定する。この場合、回折環作成回数が所定値以下であれば、コントローラCTは、ステップS302にて「Yes」と判定して、ステップS306にて、X線回折測定装置の電源がオフされたかを判定する。そして、電源がオフされていなければ、コントローラCTは、ステップS306にて「No」と判定して、ステップS302,S306の判定処理を実行し続ける。
【0067】
一方、回折環作成回数が所定値を超えると、コントローラCTは、ステップS302にて「Yes」と判定し、ステップS304にて、回折環作成回数が限度内にないこと、及びイメージングプレート28の交換が必要であることを表示装置57に表示する。この表示後、コントローラCTは、前述のように、電源がオフされるまで、前記ステップS306,S302の判定処理を実行する。なお、前記表示装置57における表示は、常に表示され続けるとともに、イメージングプレート28の交換の必要性を作業者に警告するものであるので、表示装置57において赤色などの目立つ色彩で表示する。
【0068】
次に、イメージングプレート28に形成された回折環の読取りについて説明する。この場合、作業者は、入力装置58を用いて回折環読取りプログラムの実行をコントローラCTに指示する。この指示に応答して、コントローラCTは、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの実行を開始するとともに、このプログラムに並行して図8のピーク検出プログラムを実行する。回折環読取りプログラムは、イメージングプレート28上にレーザ光を照射して、イメージングプレート28上に撮像された回折環を読取るプログラムである。また、ピーク検出プログラムは、前記SUM信号の回折環の半径方向のピーク位置を検出するプログラムである。
【0069】
回折環読取りプログラムの実行は図7AのステップS400にて開始され、コントローラCTは、ステップS402にて、回折環基準半径Rを算出する。回折環基準半径Rは、測定対象物OBの残留応力が「0」である場合の回折環の半径である。回折環基準半径Rは、測定対象物OBの材質及びイメージングプレート28から測定対象物OBまでの距離Lに依存する。すなわち、残留応力が「0」であるので、回折角θaは材質によって決定される。距離Lと回折環基準半径Rとは比例関係にあるので、予め材質ごとに、回折角θaを記憶しておけば、回折環基準半径Rを、R=L・tan(θa)の演算によって算出できる。なお、測定対象物OBの回折角θaが不明である場合には、その測定対象物OBの粉末を測定対象物OBに一様に付着させ、上記の回折環撮像プログラムを実行して、回折環を撮像すればよい。そして、このときの回折環の半径Rと距離Lからなる上記式を用いて回折角θaを求めればよい。
【0070】
本実施形態の場合には、フェライト及びオーステナイトの2種類の結晶構造を含む鉄を測定対象物OBとしているので、回折角度はフェライト及びオーステナイト用の2種類の回折角度が予め記憶されているか、入力装置58を用いて入力するとよい。したがって、回折環基準半径Rとして前述したフェライト及びオーステナイトによる2つの回折環の回折環基準半径R1,R2が計算される。
【0071】
前記ステップS402の処理後、コントローラCTは、ステップS404にて、位置検出回路21の作動を開始させる。そして、ステップS406にて、フィードモータ制御回路22に、イメージングプレート28を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28が読取り開始位置にある状態では、対物レンズ39の中心すなわちレーザ光の照射位置が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ小さい位置に位置する。なお、所定距離αは、撮像したフェライトによる回折環の半径が回折環基準半径R1からずれる可能性のある距離よりもやや大きい距離である。これにより、後述の処理により、フェライトによる回折環の測定が十分に内側から開始されて、フェライトによる回折環が確実に検出される。
【0072】
ここで、移動ステージ15の移動限界位置から図1〜3の右下方向への移動距離xを表す位置検出回路21からの位置信号と、イメージングプレート28の中心からレーザ光の照射位置(対物レンズ39の中心位置)までの距離(すわちレーザ光の照射位置の半径値r)との関係について説明しておく。移動ステージ15すなわちイメージングプレート28が移動限界位置にある状態において、図14(A)に示すように、イメージングプレート28の中心から対物レンズ39の中心位置までの距離をRoとする。なお、この場合、対物レンズ39は前記イメージングプレート28の中心位置から図1〜3にて左上方向にあり、また前記距離Roは予め測定されてコントローラCTに記憶されている。一方、図14(B)に示すように、イメージングプレート28を移動限界位置から図1〜3の右下方向へ距離xだけ移動させると、レーザ光の照射位置の半径値rは、r=x+Roで表される。この場合、距離xは、前述のように位置検出回路21から出力される位置信号によって示されるので、今後の処理において、レーザ光の照射位置の半径値rは、位置検出回路21から出力される位置信号によって表された距離xに予め記憶されている値Roを加算することになる。
【0073】
そして、前記のように、イメージングプレート28を読取り開始位置へ移動させる場合には、図14(C)に示すように、レーザ光の照射位置は、回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ内側に位置するので、この場合の半径値rは距離R1−αに等しくなるはずである。したがって、イメージングプレート28を駆動限界位置から図1〜3の右下方向へ移動させる距離xは、x=R1−α−Roに等しくなる。すなわち、前記ステップS408における読取り開始位置への移動処理においては、位置検出回路21から出力される位置信号により表される距離x(=R1−α−Ro)だけ、テーブル27を図1〜3の右下方向へ移動させればよい。
【0074】
次に、コントローラCTは、ステップS408にて、スピンドルモータ制御回路25に対して、所定の一定回転速度でイメージングプレート28を回転させることを指示する。スピンドルモータ制御回路25は、エンコーダ24aからのパルス信号を用いて回転速度を計算しながら、前記指示された一定回転速度でイメージングプレート28が回転するようにスピンドルモータ24の回転を制御する。したがって、イメージングプレート28は前記所定の一定回転速度で回転し始める。次に、コントローラCTは、ステップS410にて、レーザ駆動回路34を制御してレーザ光源33によるレーザ光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。この場合、コントローラCTは、レーザ光の強度が低レベルになるように、レーザ駆動回路34が低レベルの直流駆動信号でレーザ光源33を駆動するようにレーザ駆動回路34を制御する。したがって、この状態では、イメージングプレート28には、低レベルの強度でレーザ光が照射されることになる。
【0075】
次に、コントローラCTは、ステップS412にて、フォーカスサーボ回路46に対して、フォーカスサーボ制御の開始を指示する。これにより、フォーカスサーボ回路46は、増幅回路44及びフォーカスエラー信号生成回路45からのフォーカスエラー信号に応じてフォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路47に供給する。ドライブ回路47は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ40を駆動制御することにより、フォーカスサーボ制御を開始する。ステップS412の処理後、コントローラCTは、ステップS414にて、回転角度検出回路26及びA/D変換回路49の作動を開始させる。これにより、回転角度検出回路26は、スピンドルモータ24(イメージングプレート28)の基準位置からの回転角度θpをコントローラCTに出力し始め、A/D変換回路49は、SUM信号の瞬時値のディジタルデータをコントローラCTに出力し始める。
【0076】
次に、コントローラCTは、ステップS416にて、フィードモータ制御回路22に対して、イメージングプレート28の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を読取り開始位置から軸受部19側(図1,2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で相対移動し始める。なお、この状態では、レーザ光の照射位置は、前記ステップS408,S416の処理により、相対的にイメージングプレート28上を螺旋状に回転する。
【0077】
前記ステップS416の処理後、コントローラCTは、ステップS418にて、周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定する。図15に示すように、周方向番号nは、イメージングプレート28の周方向の測定位置(読取りポイントP(n,m))を指定する変数であり、イメージングプレート28が基準回転位置から所定角度θずつ回転するごとに「1」ずつ増加し、イメージングプレート28の1回転の間に1〜Nにわたって変化する。したがって、値Nと所定角度θの関係は、2π=N・θの関係にある。半径方向番号mは、イメージングプレート28の半径方向の読取りポイントP(n,m)を指定する変数であり、イメージングプレート28が1回転するごとに「1」ずつ増加する。なお、読取りポイントP(1,1)は、前述したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ小さい位置に対応している。
【0078】
前記ステップS418の初期設定後、コントローラCTは、ステップS420にて、回転角度検出回路26がエンコーダ24aからのインデックス信号を入力したか否かを判定する。回転角度検出回路26がインデックス信号を入力していなければ、コントローラCTはステップS420にて「No」と判定して、ステップS420の判定処理を繰り返し実行し続ける。回転角度検出回路26がインデックス信号を入力すると、コントローラCTは、ステップS420にて「Yes」と判定して、ステップS422にて、回転角度検出回路26からイメージングプレート28の現在の回転角度θpを取り込む。そして、コントローラCTは、ステップS426にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される所定の回転角度θ(n)(この場合、n=1であるのでθ(1))との差の絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満であるか否か判定する。所定の回転角度θ(1)〜θ(N)は予めコントローラCTに記憶されているもので、0度から所定角度θずつ増加する角度である。
【0079】
前記絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満でなければ、コントローラCTは、ステップS424にて「No」と判定してステップS422,S424の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラCTは、現在の回転角度θpが所定の回転角度θ(n)にほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度θ(n)にほぼ一致すると、コントローラCTは、ステップS424にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−θ(n)|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS426に進む。
【0080】
ステップS426においては、コントローラCTは、レーザ駆動回路34に対して、ハイレベルパルスの出力を指示する。この指示に応答して、レーザ駆動回路34は、前記ステップS410による低レベルの直流駆動信号にハイレベルのパルスを重畳したパルス信号でレーザ光源33を駆動制御する。この場合のパルス信号は、予め決められた所定幅を有する。これにより、レーザ光源33からハイレベルのパルス状のレーザ光が、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m) (この場合、n=1、m=1であるのでP(1,1))で指定される位置に照射される。このハイレベルのパルスは、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)から輝尽発光が充分に得られる程度の強度のレーザ光をレーザ光源33に発光させるものである。
【0081】
次に、コントローラCTは、ステップS428にて、前記パルス状のレーザ光の照射中に、A/D変換回路49からSUM信号を取り込んで、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。また、このステップS428においては、位置検出回路21からの位置信号を取り込んで、位置信号によって表される距離xに所定距離Roを加算して半径値rを計算して、読取りポイントP(n,m)の半径値r(n,m)として前記信号強度S(n,m)に対応させてメモリに記憶する。これにより、レーザ光源33からハイレベルのパルス状のレーザ光による、イメージングプレート28の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対するX線回折光の強度を表す信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径値を表す半径値r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0082】
次に、コントローラCTは、ステップS430にて、前記記憶した信号強度S(n,m)が、所定の基準値以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)が所定の基準値以上であれば、コントローラCTは、ステップS430にて「Yes」と判定して、ステップS434に進む。一方、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、コントローラCTは、ステップS430にて「No」と判定して、ステップS432にて、前記記憶した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を消去した後、ステップS434に進む。この信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)の消去は、所定の基準値より小さな信号強度S(n,m)は回折環の測定に不要であるからである。
【0083】
ステップS434においては、コントローラCTは、周方向番号nに「1」を加算する。そして、コントローラCTは、ステップS436にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Nより大きいか、すなわちイメージングプレート28が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値N以下であるので、コントローラCTは、ステップS436にて「No」と判定して、ステップS422に戻る。
【0084】
そして、前述したステップS422〜S436の処理を、周方向番号nが値Nよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS422〜S436の繰り返し処理により、回転角度θ(1)〜θ(N)にそれぞれ対応した信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに記憶される。このようなステップS422〜S436の循環処理により、周方向番号nが値Nよりも大きくなると、コントローラCTは、ステップS436にて「Yes」と判定して、ステップS438にて、後述のピーク検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラCTは、ステップS438にて「No」と判定し、ステップS440にて周方向番号nを「1」に戻すとともに、半径方向番号mに「1」を加算する(この場合、m=2になる)。そして、コントローラCTは、前述したステップS422〜S436の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をメモリに記憶する。そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS422〜S440の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0085】
そして、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラCTは、ステップS438にて「Yes」と判定し、図7BのステップS442以降に進む。このステップS442以降の処理について説明する前に、回折環読取りプログラムと並行して実行されているピーク検出プログラムについて説明しておく。
【0086】
ピーク検出プログラムの実行は図8のステップS500にて開始され、コントローラCTは、ステップS502にて変数tを「1」に初期設定する。この変数tは、後述するステップS504〜S518からなる実質的なピーク検出処理を2回連続して行わせるための変数であり、ピーク検出処理の回数を表す。次に、コントローラCTは、ステップS504にて、周方向番号nを「1」に初期設定する。なお、この周方向番号nは、回折環読取りプログラムの場合と同様に所定角度θごとの周方向位置を示すものであるが、回折環読取りプログラムに用いられる周方向番号nとは独立したものである。
【0087】
前記ステップS504の処理後、コントローラCTは、ステップS506にて、詳しくは後述するピーク半径rp(t,n)が存在するか、すなわちピーク半径rp(t,n)が検出済みであるかを判定する。この場合、ピーク半径rp(t,n)においては、変数tによって1回目のピーク検出か2回目のピーク検出かが表され、変数nによって検出されたピーク半径の回転角度θ(n)が表される。ピーク半径rp(t,n)が検出済みであれば、コントローラCTは、ステップS506にて「Yes」と判定して、ステップS508にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS510にて周方向番号nが所定数Nより大きいか否かを判定する。周方向番号nが所定数N以下であれば、コントローラCTは、ステップS510にて「No」と判定してステップS506に戻る。周方向番号nが所定数より大きければ、コントローラCTはステップS510にて「Yes」と判定して、周方向番号nを「1」に戻すためにステップS504に戻る。
【0088】
一方、ピーク半径rp(t,n)が未検出であれば、コントローラCTは、ステップS506にて「No」と判定して、ステップS512にて前記図7AのステップS428の処理によって記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)の数が所定数以上でなければ、コントローラCTは、ステップS512にて「No」と判定して、前述したステップS508,S510の処理を実行してステップS506又はステップS504に戻る。このステップS512の判定処理は、信号強度S(n,m)の数が少ない場合には後述するピーク検出処理を実行しても無駄であるからである。なお、前記図7AのステップS432の処理によって消去された信号強度S(n,m)は、記憶した信号強度S(n,m)としてカウントされない。
【0089】
一方、前記記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるときは、コントローラCTは、ステップS512にて「Yes」と判定して、ステップS514にて、ピークの有無を判定する。すなわち、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いて、SUM信号の値のピークの有無を判定する。具体的には、図16に示すように、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径値r(n,m)を横軸に取り、その半径値r(n,m)に対応させて信号強度S(n,m)を縦軸に取った受光曲線において、信号強度S(n,m)にピークが存在するか、すなわち信号強度S(n,m)が増加した後に減少したかを判定するとよい。そして、ピークが存在しなければ、コントローラCTは、ステップS514にて「No」と判定して、前述したステップS508,S510の処理を実行してステップS506又はステップS504に戻る。
【0090】
このように、ステップS504〜S514を繰り返し実行している間に、並行して実行されている回折環読取りプログラムの処理により、さらに半径値r(n,m)及び信号強度S(n,m)が取り込まれてメモリに次々に記憶されていく。このため、ステップS514にてピークが検出されるようになり、検出されると、コントローラCTは、ステップS514にて「Yes」と判定して、ステップS516にて、ピークの半径値r(n,m)をピーク半径rp(t,n)としてメモリに記憶する。次に、コントローラCTは、ステップS518にて、取得したピーク半径rp(t,n)の数が所定数N以上であるか否かを判定する。そして、取得したピーク半径rp(t,n)の数が所定数より小さければ、コントローラCTは、ステップS518にて「No」と判定し、前述したステップS508,S510の処理を実行してステップS506又はステップS504に戻る。
【0091】
このようにステップS504〜S518を繰り返すことで、取得したピーク半径rp(t,n)の数が増えていき所定数Nに達すると、すなわち周方向の全ての読取りポイントP(n,m)にてピーク半径rp(t,n)が取得されると、コントローラCTは、ステップS518にて「Yes」と判定し、ステップS520にて比率測定有りか否かを判定する。ここで、比率測定とは、詳しくは後述する、フェライトの回折積分強度とオーステナイトの回折積分強度との比率の測定を意味する。この場合、比率測定無しならば、コントローラCTは、ステップS520にて「No」と判定して、ステップS524にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。
【0092】
本実施形態の場合、鉄に関する回折環の測定であり、かつフェライトとオーステナイトの比率の測定を含むので、コントローラCTは、ステップS520にて「Yes」と判定して、ステップS522に進む。ステップS522においては、コントローラCTは、位置検出回路21からテーブル27(すなわちイメージングプレート28)の位置を入力して、この入力した位置を用いてイメージングプレート28が読取り終了位置を超えているかを判定する。このイメージングプレート28の読取り終了位置とは、対物レンズ39の中心位置すなわちレーザ光の照射位置が回折環基準半径から前記所定距離αだけ外側にある状態である。具体的には、この場合の測定対象はフェライトの回折環であるので、対物レンズ39の中心位置が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離αだけ外側に位置している状態である。そして、イメージングプレート28が読取り終了位置を超えていなければ、ステップS522にて「No」と判定し続けて、ステップS522の判定処理を繰り返し実行する。
【0093】
したがって、この状態では、次のステップS524の処理による終了指令が出力されない。そのため、コントローラCTは、前述した図7AのステップS438にて「No」と判定して、ステップS440の処理によって周方向番号nを「1」に戻すとともに半径方向番号mを「1」ずつ増加させながら、ステップS420〜S440の循環処理により、信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をさらに蓄積記憶していく。なお、この場合も、ステップS430,S432の処理により、信号強度S(n,m)が基準値より小さければ、信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。このように1周分のピーク半径rp(t,n)が検出された後も信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を蓄積記憶する理由は、回折環(この場合、フェライトの回折環)に関する回折積分強度を計算するために、図17に示すように半径方向に分布する回折環の信号強度Sを取得するためである。
【0094】
そして、イメージングプレート28が読取り終了位置を超えると、コントローラCTは、図8のステップS522にて「Yes」と判定して、ステップS524にてピーク検出の終了を示す終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは、ステップS526にてレーザ照射の停止が指示されたか否かを判定する。なお、このステップS526の判定処理は、前記終了指令後における所定の短時間内にレーザ照射の停止が指示されたかを判定するもので、短時間内にレーザ照射の停止の指示がなされない場合には、「No」と判定される。言い換えれば、ステップS526の判定処理は、前記ステップS524の終了指令の直後に行われるのではなく、所定の短時間だけ待って、その短時間内にレーザ照射停止の指示があったかを判定するものである。このレーザ照射の停止の指示は、詳しくは後述する、回折環読取りプログラムの図7BのステップS458にて出力されるものであり、この場合、レーザ照射の停止の指示は短時間内に出力されることはない。したがって、この場合、コントローラCTは、ステップS526にて「No」と判定し、ステップS528にて変数tに「1」を加算してステップS504に戻る。したがって、このピーク検出プログラムにおいては、コントローラCTは、ステップS504〜S518からなる2回目のピーク検出処理及びステップS520,S522の測定終了判定処理を実行し始める。
【0095】
前記ステップS524の終了指令の出力により、コントローラCTは、図7AのステップS438にて「Yes」と判定し、図7BのステップS442に進む。ステップS442においては、コントローラCTは、前記ステップS428の処理によって蓄積記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を測定済みの回折環の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)として保存する。なお、この場合の保存される信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)において、変数nは周方向番号nに対応し、変数mは半径方向番号mに対応する。そして、最初の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)(例えば、S1(n,m)及び半径値r1(n,m))はフェライトの回折環に関するデータである。
【0096】
次に、コントローラCTは、ステップS444にて全ての回折環の読取りが終了したかを判定する。この場合、1つの回折環(フェライトの回折環)の読取りが終了しただけで、他の回折環(オーステナイトの回折環)が残っているので、コントローラCTは、ステップS444にて「No」と判定し、ステップS446以降の処理を実行する。ステップS446においては、コントローラCTは、既に保存した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)をクリアする。
【0097】
次に、コントローラCTは、ステップS448にてフィードモータ制御回路22にイメージングプレート28の移動停止を指示する。これに応答して、フィードモータ制御回路22はフィードモータ18の作動を停止させて、イメージングプレート28の移動を停止させる。前記ステップS448の処理後、コントローラCTは、ステップS450にてフォーカスサーボ回路46にフォーカスサーボ制御の停止を指示する。これに応答して、フォーカスサーボ回路46は、フォーカスサーボ信号の出力を停止して、対物レンズ39のフォーカスサーボ制御を停止する。
【0098】
次に、コントローラCTは、ステップS452にて、フィードモータ制御回路22にイメージングプレート28を次の読取り開始位置へ移動することを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を制御して、イメージングプレート28を次の読取り開始位置まで移動する。このイメージングプレート28の次の読取り開始位置とは、対物レンズ39の中心位置が次の回折環基準半径R2(本実施形態ではオーステナイトの回折基準半径R2)から所定距離αだけ内側にある位置である。前記ステップS452の処理後、コントローラCTは、前記ステップS412と同様なステップS454の処理により、フォーカスサーボ制御を開始させる。
【0099】
このステップS454のフォーカスサーボ制御の開始後、コントローラCTは、図7AのステップS416に戻り、前述のように、イメージングプレート28を図1及び図2の右下方向に一定速度で移動させ始める。これにより、レーザ光がイメージングプレート28上にフォーカスサーボ制御された状態で、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート28において、回転しながら、オーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。そして、前述したフェライトの回折環の場合と同様に、ステップS418による周方向番号n及び半径方向番号mの「1」への初期設定後、ピーク検出プログラムの実行によって終了指令が出力されるまで、ステップS420〜S440の循環処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度θ(1)〜θ(N)に対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)は消去される。
【0100】
この状態では、前述したように、コントローラCTは、図6の制御パラメータ設定プログラムも並行して実行しているとともに、図8のピーク検出プログラムのステップS504〜S518からなる2回目のピーク検出処理及びステップS520,S522の測定終了判定処理を並行して実行している。なお、この場合の、ステップS522による測定終了判定処理は、2つ目の回折環(本実施形態ではオーステナイトの回折環)に関する判定処理であり、読取り終了位置は、レーザ照射位置(すなわち測定位置)がオーステナイトの回折環基準半径R2よりも所定距離αだけ外側に移動した位置である。
【0101】
そして、ピークが検出され、かつレーザ光の照射位置が読取り終了位置を超えると、コントローラCTは、ステップS522にて「Yes」と判定して、ステップS524にて終了指令を出力する。この終了指令の出力後、コントローラCTは前記場合と同様に、ステップS526にてレーザ照射停止が指示された否かを判定するが、この場合には、後述する図7BのステップS458の処理によってレーザ照射停止の指示が前記所定の短時間内に出力されるので、その時点で、ステップS526にて「Yes」と判定して、ステップS530にてピーク検出プログラムの実行を終了する。
【0102】
ふたたび、図7A及び図7Bの回折環読取りプログラムの説明に戻ると、前記ピーク検出プログラムによる終了指令の指示があって、コントローラCTが、ステップS438にて「Yes」と判定して、ステップS442に進むと、ステップS442においては、前記ステップS428の処理によりって蓄積記憶した全ての信号強度S(n,m)及び半径値r(n,m)を測定済みの回折環の信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)として保存する。なお、この場合の保存される信号強度St(n,m)及び半径値rt(n,m)は、オーステナイトの回折環に関する信号強度S2(n,m)及び半径値r2(n,m)である。
【0103】
次に、コントローラCTは、前述のように、ステップS444にて全ての回折環の読取りが終了したかを判定する。この場合、2つ目の回折環の測定が終了したので、すなわち本実施形態におけるオーステナイトの回折環の測定が終了したので、コントローラCTは、ステップS444にて「Yes」と判定し、ステップS456以降の処理を実行する。
【0104】
そして、コントローラCTは、ステップS456にて、フォーカスサーボ回路46に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラCTは、ステップS458にて、レーザ照射停止の指示を出力して、レーザ駆動回路34によるレーザ光源33によるレーザ光の照射を停止させる。このレーザ照射停止の指示の出力により、前述のように図8のピーク検出プログラムの実行が終了される。さらに、コントローラCTは、ステップS460にて、A/D変換回路49及び回転角度検出回路26の作動を停止させ、ステップS462にて、フィードモータ制御回路22を制御してフィードモータ18の作動を停止させることにより、イメージングプレート28を停止させて、ステップS464にて回折環読取りプログラムの最実行を終了する。なお、位置検出回路21の作動及びイメージングプレート28の回転は、以前と同様のまま継続されている。
【0105】
なお、上記説明では、複数の結晶構造(本実施形態ではフェライトとオーステナイト)の比率の測定を行うことを入力したので、図8のピーク検出プログラムのステップS506〜S518からなる1周分のピーク半径rp(t,n)の検出後も、ステップS520にて「Yes」との判定のもとに、ステップS522にてレーザ光の照射位置(測定位置)が読取り終了位置を超えたか否かを判定するようにした。しかし、複数の結晶構造の比率の測定が不要であって、前記比率を測定することを入力しなければ、コントローラCTは、ステップS520にて「No」と判定して、1周分のピーク半径rp(t,n)の検出直後に、ステップS524に進む。
【0106】
前記回折環読取りプログラムの実行が終了すると、コントローラCTは、イメージングプレート28に撮像された回折環を消去する図9の回折環消去プログラムを実行する。回折環消去プログラムの実行はステップS600にて開始され、コントローラCTは、ステップS602にて、フィードモータ制御回路22に、イメージングプレート28を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路22は、位置検出回路21と協働してフィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート28が消去開始位置にある状態では、LED55から出力される可視光の中心が前記計算したフェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離γだけ小さい位置に位置する。具体的には、この位置は、イメージングプレート28が駆動限界位置にある状態において、イメージングプレート28の中心からLEDの可視光の中心までの距離をRo’とすると、位置検出回路21から出力される位置がR1−γ−Ro’になる位置である。なお、所定距離γは、前記所定距離αよりも若干大きく、フェライトによって撮像された回折環の半径よりは余裕をもってずれた位置である。これにより、後述の処理により、フェライトによって撮像された回折環が確実に消去される。
【0107】
次に、コントローラCTは、ステップS604にて、LED駆動回路56を制御してLED55による可視光のイメージングプレート28に対する照射を開始させる。次に、コントローラCTは、ステップS606にて、フィードモータ制御回路22に対して、イメージングプレート28の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18を駆動制御して、イメージングプレート28を消去開始位置から軸受部19側(図1,2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、LED55による可視光が、イメージングプレート28において、回転しながら、フェライトの回折環基準半径R1から所定距離γ(γ>α)だけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。
【0108】
前記ステップS606の処理後、コントローラCTは、ステップS608にて位置検出回路21からイメージングプレート28の位置を表す位置信号を入力し、ステップS610にて、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えているか否かを判定する。この終了位置は、フェライトの回折環基準半径R1よりも所定距離γだけ大きな位置である。具体的には、位置検出回路21から出力される位置がR1+γ−Ro’になる位置である。そして、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えるまで、コントローラCTは、ステップS610にて「No」と判定して、ステップS608,S610の処理を繰り返し実行する。これにより、回転するイメージングプレート28に対し、前記回折環基準半径R1から所定距離γだけ内側から所定距離γだけ外側まで、LED55による可視光が照射されるので、フェライトによる回折X線によって形成された回折環は内側から徐々に消去されていく。
【0109】
そして、イメージングプレート28の現在の位置が消去終了位置を超えると、コントローラCTは、ステップS610にて「Yes」と判定して、ステップS612にてフィードモータ制御回路22にイメージングプレート28の移動停止を指示し、ステップS614にてLED駆動回路56にLED55による可視光の照射停止を指示する。これにより、フィードモータ制御回路22は、フィードモータ18の作動を停止させることによりイメージングプレート28の移動を停止させる。LED駆動回路56は、LED55による可視光の照射を停止させる。この状態では、フェライトによって撮像された回折環は完全に消去されている。
【0110】
前記ステップS614の処理後、コントローラCTは、ステップS616にて次の消去位置、すなわちさらに消去する回折環が存在するか否かを判定する。この場合、本実施形態では、イメージングプレート28にはフェライトによる回折環とオーステナイトによる回折環が存在するので、コントローラCTは、ステップS616にて「Yes」と判定して、ステップS602に戻る。そして、前述したステップS602〜S610の処理により、オーステナイトによって撮像された回折環が消去される。なお、この場合のステップS602の消去開始位置はオーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離γだけ内側位置であり、ステップS610の消去終了位置はオーステナイトの回折環基準半径R2から所定距離γだけ外側位置である。具体的には、消去開始位置は位置検出回路21から出力される位置がR2−γ−Ro’になる位置であり、消去終了位置は位置検出回路21から出力される位置がR2+γ−Ro’になる位置である。その後、ステップS612,S614の処理により、イメージングプレート28の移動が停止するとともに、LED55による可視光の照射も停止する。
【0111】
前記ステップS614の処理後、コントローラCTは、ステップS616にて、ふたたび次の消去位置の存在を判定するが、この場合、オーステナイトによる回折X線によって形成された回折環が消去されているので、同ステップS616にて「No」すなわち次の消去位置は存在しないと判定して、ステップS618に進む。ステップS618においては、コントローラCTは、位置検出回路21の作動を停止させる。次に、コントローラCTは、ステップS620にて、スピンドルモータ制御回路25に対してイメージングプレート28の回転停止を指示する。この指示に応答して、スピンドルモータ制御回路25は、スピンドルモータ24の作動を停止させて、イメージングプレート28の回転を停止させる。前記イメージングプレート28の回転停止後、コントローラCTは、ステップS622にて回折環消去プログラムの実行を終了する。
【0112】
前記回折環消去プログラムの実行を終了すると、コントローラCTは、図示しないプログラムの実行により、フェライトの回折環のピーク半径rp(1,n)及びオーステナイトの回折環のピーク半径rp(2,n)を用いて、cosα法により、残留応力を算出して表示装置57に表示する。また、残留応力の計算では、フェライトの回折環のピーク半径rp(1,n)及びオーステナイトの回折環のピーク半径rp(2,n)のうちのいずれか一方のピーク半径を用いるのみでもよい。また、コントローラCTは、ピーク半径rp(1,n),rp(2,n)を用いて、フェライト及びオーステナイトの回折環の画像データを作成して、フェライト及びオーステナイトの回折環を表示装置57に表示する。これにより、回折環の真円からのずれ具合から測定対象物OB(鉄)の残留応力を認識できる。
【0113】
また、コントローラCTは、フェライトに関する全ての強度信号S1(n,m)から全ての強度信号S1(n,m)の中の最小値(すなわち、回折環が形成されていない箇所の信号強度)を減算した値を合計して、合計値を測定時における周方向番号nの最大値Nで除算して、フェライトの回折環に関する回折積分強度(図17の半径R1近傍の斜線領域の面積に対応)を計算する。また、オーステナイトに関する全ての強度信号S2(n,m)から全ての強度信号S2(n,m)の中の最小値(すなわち、回折環が形成されていない箇所の信号強度)を減算した値を合計して、合計値を測定時における周方向番号nの最大値Nで除算して、オーステナイトの回折環に関する回折積分強度(図17の半径R2近傍の斜線領域の面積に対応)を計算する。そして、フェライトの回折積分強度と、オーステナイトの回折積分強度との比により、鉄の中に含まれるフェライトとオーステナイトとの比率を取得する。この場合も、この比率と共に図17に示すようなフェライト及びオーステナイトの信号強度の分布を表示装置57に表示するようにするとよい。これらの残留応力及び比率により、鉄の特性を評価することができる。
【0114】
上記のように動作するX線回折測定装置においては、新たなイメージングプレート28がテーブルに固定された後、図4AのステップS102〜S116の処理により、新たなイメージングプレート28に記録されている識別データが取得される。また、前記識別データの取得処理後、ステップS130〜S142の処理により、前記識別コードがイメージングプレート28から消去される。そして、ステップS118の判定処理により、不適切なイメージングプレート28、例えば既に一度使用したイメージングプレート28がテーブル27にセットされたか否かが判定されて、不適切なイメージングプレート28がステージ27にセットされた場合には、ステップS120の処理により、識別コードの記録が無いこと、及びイメージングプレート28の使用が不可能であることが表示装置57に表示される。その結果、作業者は、不適切なイメージングプレート28がテーブル27にセットされたこと、及び新たなイメージングプレート28をテーブル27にセットする必要があることを認識できる。
【0115】
また、上記実施形態によれば、図4BのステップS122,S124の処理により、識別データに含まれる使用期限日を表すデータを用い、使用期限を過ぎたイメージングプレート28がテーブル27にセットされたか否かが判定される。そして、使用期限の切れたイメージングプレート28がテーブル27にセットされた場合には、ステップS126の処理により、イメージングプレート28の使用期限が超過していること、及びイメージングプレート28の使用が不可能であることが表示装置57に表示される。その結果、作業者は、不適切なイメージングプレート28がテーブル27にセットされたこと、及び新たなイメージングプレート28をテーブル27にセットする必要があることを認識できる。
【0116】
さらに、上記実施形態によれば、図4BのステップS144にて新たにセットされたイメージングプレート28における回折環作成回数がリセットされ、図5のステップS226の処理により、回折環がイメージングプレート28に撮像されるごとに、回折環作成回数がカウントアップされる。そして、図6のステップS302の処理により、回折環作成回数は限度内であるかが判定され、回折環作成回数が限度内でなくなると、ステップS304の処理により、回折環作成回数が限度内にないこと、及びイメージングプレート28の交換が必要であることが表示装置57に表示される。その結果、作業者は、イメージングプレート28が使用によって劣化し、新たなイメージングプレート28をテーブル27にセットする必要があることを認識できる。
【0117】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0118】
上記実施形態では、イメージングプレート28に記録される識別データは、製造日、製造元、製造番号などを表すデータであった。しかし、製造日に代え又は加えて、イメージングプレート28の使用期限の日を表す使用期限日を識別データの中に含ませておいてもよい。これによれば、図9BのステップS122による製造日からの経過日数の計算が不要となり、前記識別データ中に含まれる使用期限日を用いてステップS124の判定処理を行うことができる。
【0119】
また、上記実施形態では、イメージングプレート28の交換後に識別コードが読取れなかった場合には、図4BのステップS120にて、識別コードの記録がないこと、及びイメージングプレート28が使用不能であることを表示装置57に表示して、前記状況を作業者に知らせるようにした。しかし、この表示に代え、又はこの表示に加えて、音声により前記状況を作業者に知らせるようにしてもよい。また、上記実施形態では、交換されたイメージングプレート28の使用期限が切れている場合には、図4BのステップS126にて、使用期限が超過していること、及びイメージングプレート28が使用不能であることを表示装置57に表示して、前記状況を作業者に知らせるようにした。しかし、この場合も、前記表示に代え、又は前記表示に加えて、音声により前記状況を作業者に知らせるようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、回折環作成回数が限度内にない場合、図6のステップS304にて、回折環作成回数が限度内にないこと、及びイメージングプレート28の交換が必要であることを表示装置57に表示して、前記状況を作業者に知らせるようにした。しかし、この場合も、前記表示に代え、又は前記表示に加えて、音声により前記状況を作業者に知らせるようにしてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、イメージングプレート28の回転方向にバーを並べたバーコードを作成した。しかし、X線によりバーコードを形成でき、かつX線回折測定装置がバーコードを読取ることができれば、バーコードがどのようなものでもよい。例えば、X線回折測定装置のフィードモータ18により移動する方向にバーを並べたバーコードでよい。また、イメージングプレート28の製造日又は使用期限日が含まれる識別データであり、X線回折測定装置が読取ることができるならば、バーコードでなくてもよい。例えば、文字、記号などを並べたコードでもよいし、丸、三角、四角などの特定の模様を並べたコードでもよい。
【0121】
上記実施形態では、イメージングプレート28の交換後、作業者が入力装置58を操作することにより、図4A及び図4Bの識別コード読取りプログラムをコントローラCTに実行させて、イメージングプレート28が使用可能か否かの判定、及び使用可能な場合には回折環作成回数のリセットを行うようにした。しかし、これに代えて、フレームFR内にイメージングプレート28をテーブル27から取り外したことを検出するセンサ、及びフレームFRを開閉したことを検出するセンサを設けて、これらのセンサによりイメージングプレート28の取り外し及びフレームFRの開口後の閉止を検出して、図4A及び図4Bの識別コード読取りプログラムをコントローラCTに自動的に実行させて、イメージングプレート28が使用可能か否かの判定、及び使用可能な場合には回折環作成回数のリセットを行うようにしてもよい。この場合、イメージングプレート28の取り外しに関するセンサとしては、固定具29への光の反射を利用して固定具29が外されたことを検出するものであるとよい。また、フレームFRの開閉に関するセンサとしては、フレームFRの図示しない開閉口に取付けた開閉口の開閉を検出するものであるとよい。これらのセンサは、このX線回折測定装置の電源オフ後にも機能するように電池内蔵であるとよい。そして、前記検出時には、コントローラCTに検出信号を出力し続けて、コントローラCTに図4A及び図4Bの識別コード読取りプログラムを実行させるとよい。
【0122】
また、前記イメージングプレート28の取り外しを検出するセンサは設けずに、フレームFRの開閉のみを検出するセンサを設けて、フレームFRの開閉の検出時には、コントローラCTを制御することにより、表示装置57にイメージングプレート28の交換を行ったか否かの問い合わせを表示させる。そして、作業者による回答に応じて、コントローラCTに図4A及び図4Bの識別コード読取りプログラムを自動的に実行させたり、させなかったりするようにしてもよい。すなわち、作業者がイメージングプレート28の交換を行ったと回答した場合には、前記識別コード読取りプログラムをコントローラCTに自動的に実行させ、それ以外のときには、前記識別コード読取りプログラムをコントローラCTに実行させないようにするとよい。
【0123】
また、上記実施形態においては、図5のステップS226の処理により、回折環を撮像するごとに回折環作成回数をカウントアップして回折環の作成回数を計算するようにした。しかし、これに代えて、回折環を消去するごとに回折環作成回数をカウントアップして回折環の作成回数を計算するようにしてもよい。この場合、図9のステップS620の回折環の消去処理の終了後に、前記ステップS226と同様な処理を実行して、回折環作成回数をカウントアップするようにすればよい。なお、この場合も、X線回折測定装置の電源オン時に、図6のイメージングプレート管理プログラムを繰り返し実行する点は、上記実施形態と同じである。
【0124】
また、上記実施形態においては、受光センサ31によって受光した反射光の受光位置を用いて、測定対象物OBの高さ方向の位置が、所定の範囲内にあるか否かを判定し、所定の範囲内になければ、作業者が昇降ステージ12aの高さを調整するようにした。しかし、受光センサ31の受光位置が表す測定対象物OBの高さ方向の位置が所定の範囲内にあるように、昇降ステージ12aの高さが自動的に調整されるように構成してもよい。これによれば、作業者がセットした測定対象物OBの高さ方向の位置が、受光センサ31が反射光を受光できる範囲にありさえすれば、作業者が昇降ステージ12aの高さを調整する必要が無いので、作業効率を向上させることができる。なお、例えば上記従来のX線検出装置のように、イメージングプレート28と測定対象物OBとの距離が常に一定になるように構成されていれば、受光センサ31は不要である。
【0125】
また、上記実施形態においては、受光センサ31の受光位置を用いて、回折環基準半径Rを算出し、撮像した回折環の半径が回折環基準半径Rからずれる可能性のある領域を想定して、読取り開始位置を決定するようにした。しかし、回折環基準半径Rを算出することなく、常に一定の領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート28の全領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。また、LED53による可視光の照射についても同様に、常に一定の領域にLED53から発せられた可視光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート28の全領域にLED53からの可視光を照射するようにしてもよい。ただし、この場合、上記実施形態よりも測定時間が長くなる。
【符号の説明】
【0126】
12…昇降機、13…X線出射器、15…移動ステージ、18…フィードモータ、21…位置検出回路、22…フィードモータ制御回路、24…スピンドルモータ、25…スピンドルモータ制御回路、26…回転角度検出回路、27…テーブル、28…イメージングプレート、31…受光センサ、33…レーザ光源、34…レーザ駆動回路、39…対物レンズ、43…フォトディテクタ、48…SUM信号生成回路、51…2値化回路、52…識別データ生成回路、57…表示装置、58…入力装置、CT…コントローラ、PUH…光ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録するイメージングプレートと、
前記レーザ光を前記イメージングプレートの受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記イメージングプレートから出射された光を受光して受光強度を表す受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記テーブルを、前記イメージングプレートの受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、前記測定対象物で回折したX線によって前記イメージングプレートに回折環を撮像する回折環撮像手段と、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記イメージングプレートを回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記イメージングプレートにおける照射位置を前記イメージングプレートの中心周りに回転させるとともに半径方向に変化させながら、前記レーザ検出装置から出力される受光信号をそれぞれ入力して、前記入力した受光信号によって表された受光強度を表す受光強度データを前記レーザ光のイメージングプレートにおける照射位置と関連付けて順次読取るデータ読取り手段と、
前記データ読取り手段による受光強度データの読取り後、前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記イメージングプレートに撮像された回折環に所定の波長の光を照射して前記回折環を消去する回折環消去手段とを備えたX線回折測定装置において、
前記イメージングプレートの前記テーブルへの固定後、前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記イメージングプレート上にX線の照射によって形成した識別データの記録部分に前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光を照射するとともに、前記レーザ検出装置から出力される受光信号によって表された識別データを取得する識別データ取得手段と、
前記識別データ取得手段によって前記識別データが取得されなかったとき、前記イメージングプレートの使用不能を判定する第1判定手段と、
前記識別データ取得手段による識別データの取得後、前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記イメージングプレートに形成された識別データの記録部分に所定の波長の光を照射して前記識別データを消去する識別データ消去手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線回折測定装置において、
前記識別データは、前記イメージングプレートの製造日又は使用期限日を表すデータを含み、さらに、
前記イメージングプレートの製造日又は使用期限日を表すデータを用いて前記イメージングプレートの使用不能を判定する第2判定手段
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線回折測定装置において、さらに、
前記回折環撮像手段によって前記イメージングプレートに回折環を撮像するごとに、又は前記回折環消去手段によって前記イメージングプレートに撮像された回折環を消去するごとに、回折環の作成回数を表す回折環作成回数をカウントアップする回折環作成回数計算手段と、
前記回折環作成回数によって表された回折環の作成回数が回折環の作成の限度内かを判定する作成回数判定手段と
を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項4】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央に前記X線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに固定されて、前記測定対象物にて回折した前記X線の回折光を受光する受光面を有し、前記回折光の像である回折環を記録するイメージングプレートと、
前記レーザ光を前記イメージングプレートの受光面に照射するとともに、前記レーザ光の照射によって前記イメージングプレートから出射された光を受光して受光強度を表す受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを、前記貫通孔の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記テーブルを、前記イメージングプレートの受光面に平行な方向に、前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記X線出射器から測定対象物にX線を照射し、前記測定対象物で回折したX線によって前記イメージングプレートに回折環を撮像する回折環撮像手段と、
前記回転手段及び前記移動手段を制御して前記回折環が記録された前記イメージングプレートを回転及び移動させて、前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光の前記イメージングプレートにおける照射位置を前記イメージングプレートの中心周りに回転させるとともに半径方向に変化させながら、前記レーザ検出装置から出力される受光信号をそれぞれ入力して、前記入力した受光信号によって表された受光強度を表す受光強度データを前記レーザ光のイメージングプレートにおける照射位置と関連付けて順次読取るデータ読取り手段と、
前記データ読取り手段による受光強度データの読取り後、前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記イメージングプレートに撮像された回折環に所定の波長の光を照射して前記回折環を消去する回折環消去手段とを備えたX線回折測定装置におけるイメージングプレートの管理方法において、
前記イメージングプレートの前記テーブルへの固定後、前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記イメージングプレート上にX線の照射によって形成した識別データの記録部分に前記レーザ検出装置から出射されるレーザ光を照射するとともに、前記レーザ検出装置から出力される受光信号によって表された識別データを取得する識別データ取得ステップと、
前記識別データ取得ステップによって前記識別データが取得されなかったとき、前記イメージングプレートの使用不能を判定する第1判定ステップと、
前記識別データ取得ステップによる識別データの取得後、前記移動手段を制御して前記イメージングプレートを移動し、前記イメージングプレートに形成された識別データの記録部分に所定の波長の光を照射して前記識別データを消去する識別データ消去ステップと
を含むことを特徴とするイメージングプレートの管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載のイメージングプレートの管理方法において、
前記識別データは、前記イメージングプレートの製造日又は使用期限日を表すデータを含み、さらに、
前記イメージングプレートの製造日又は使用期限日を表すデータを用いて前記イメージングプレートの使用不能を判定する第2判定ステップ
を含むことを特徴とするイメージングプレートの管理方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のイメージングプレートの管理方法において、さらに、
前記回折環撮像手段によって前記イメージングプレートに回折環を撮像するごとに、又は前記回折環消去手段によって前記イメージングプレートに撮像された回折環を消去するごとに、回折環の作成回数を表す回折環作成回数をカウントアップする回折環作成回数計算ステップと、
前記回折環作成回数によって表された回折環の作成回数が回折環の作成の限度内かを判定する作成回数判定ステップと
を含むことを特徴とするイメージングプレートの管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−15415(P2013−15415A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148589(P2011−148589)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】