説明

X線検出器及びそれを用いた産業用X線CT装置

【課題】産業用X線CT装置のCT画像の空間分解能を高めること、及びそれに寄与するX線検出器を提供する。
【解決手段】X線を被検体に照射するX線源と、被検体を透過したX線を検出する複数のX線検出器2がアレイ化配置されて構成されたリニアアレイセンサと、そのX線源とそのX線検出器2の間に配置された被検体を水平回転させるターンテーブルと、X線検出器2で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路とこれらの信号を元に画像を再構成する演算装置からなるX線CT装置において、そのX線検出器2は、X線を検出するための半導体部材12と、これを埋設したベース板18と、その半導体部材12の面であって、アレイ化配置方向側の片側面に限定して装着されて漏れ電子を遮蔽する遮蔽板14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を透過するX線の透過量を計測することにより、非破壊でその被検体内部の状況を画像化する産業用X線CT装置とそれに用いるに好適なX線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、医療用の人体内部計測装置としての活用が広く普及しているが、工業用途においても被検体を切断することなく非破壊で内部状態が計測できるため、鋳造部品の内部欠陥計測、など非破壊検査として多くの用途に用いられている。
【0003】
X線CT装置では、X線源と検出器の間に撮像被検体を設置し、X線源から照射されるX線が被検体を透過し減衰した後のX線透過量を検出器で計測し、このX線の透過量分布から被検体内部の画像を再構成する。そのため、X線検出器サイズが画像の空間分解能に強く影響する。
【0004】
医療用と異なり工業用途の産業用X線CT装置では、被検体が金属物の工業製品の場合が多く人体に比較して透過能力の強いX線エネルギーが必要となる。X線を発生させるX線源としては、800kvまではX線管が使用可能であり、MV領域のエネルギーレベルでは線形加速器によるX線源が必要となる。
【0005】
X線管では、エネルギーレベルの低い領域(〜225kV)では焦点サイズがミクロンオーダーのX線源が存在するが、透過能力が低いため厚い金属物の被検体は撮像不能となる。
【0006】
また、エネルギーレベルが比較的高い領域(320kV〜800kV)のX線管では、透過能力は増加するがX線発生源の焦点サイズはサブミリからミリオーダーに大きくなる。
【0007】
MV領域のX線エネルギーレベルが得られる線形加速器では、透過能力がさらに増加し、エネルギーレベルが比較的高い領域(320kV〜800kV)のX線管と同様、X線発生源の焦点サイズはサブミリからミリオーダーに大きくなる。
【0008】
これらのX線管、線形加速器からは通常、コーン状に、またX線発生直後にコリメートされファン状にX線が照射される。
【0009】
X線源から照射され撮像被検体内部で減衰したX線の減衰量を計測するX線検出器には、シンチレータや化合物半導体、等の放射線検出器が用いられる。これらの検出器は、撮像対象の被検体を挟んでX線源と相対する位置に設置される。
【0010】
X線検出器は、一定間隔で離散的に配置されX線源から各X線検出器素子中心を結んだ直線上のX線透過量積算値を計測する。
【0011】
被検体全体を撮像するには、X線源とX線検出器の間に設置された被検体をターンテーブルに乗せ回転させて、全体画像を再構成するために必要な投影データを取得する。または、撮像被検体はターンテーブル上に固定し、X線源とX線検出器を被検体周囲に回転させ必要な投影データを取得する。
【0012】
このようにX線源とX線検出器に対して被検体を相対的に回転させて各回転角度ピッチ毎に全てのX線検出器で入射X線の放射線量を計測し、画像再構成のための投影データとする。これらの撮像時の各回転角毎の投影データを用いて代表的なFBP法などにより画像再構成を実施する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Miyai H, Satoh K, Kitaguchi H, Izumi S. A high energy X-ray computed tomography using silicon semiconductor detectors. In: 1996 Nuclear Science Symposium Conference Record, vol.2, 1997. p.81621.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した既存の産業用X線CT装置を用いた工業製品の非破壊検査における内部計測では、被検体である工業製品の構造強度や性能特性に影響を与えるサイズの欠陥を検出する必要がある。
【0015】
工業製品の鋳造物を対象とした場合は、これらの致命的な鋳造欠陥は既存のCT装置で検出可能であるが、さらに、これらの欠陥の周辺に存在するより小さい欠陥を検出するには、さらなる分解能の向上が必要となる。
【0016】
従来の産業用X線CT装置では、X線検出器には、シンチレータや化合物半導体、等の放射線検出器が用いられてきたが、特に、非特許文献1に示されたように、半導体化合物材料を用いたX線検出器は、高エネルギーX線に対する感度が高く、シンチレータに比較して厚みを薄くすることが可能である。
【0017】
そのため、半導体化合物材料を用いたX線検出器を用いて、検出器アレイを構築した場合には、検出器間隔を狭く設定することが可能である。検出器間隔の狭隘化により画像生成のための投影データのサンプリング間隔が小さくなり、高分解能画像が得られる。
【0018】
その一方、非特許文献1に示された半導体化合物材料を用いたX線検出器では、透過したX線を検出するための半導体部材の他に、検出器間の漏れ電子(クロストーク)を抑制するための遮蔽板が設置されていた。そのため、検出器厚みを薄くし検出器アレイの稠密化に限界があり、X線CT装置としての分解能の向上にも限界があった。
【0019】
現状以上に検出器アレイ内のX線検出器を稠密化するには、X線受感部を薄くするか、遮蔽板を取り除く必要がある。X線受感部を薄くした場合は、入射X線量が薄くする前より減少するため、SN比が低下し画像分解能が悪化する。
【0020】
一方、遮蔽板を取り除いた場合は、着目検出器に入射したX線のコンプトン散乱、電子対生成により着目検出器に隣接するX線検出器に漏れ放射線が発生する。これらの漏れ放射線量は、隣接検出器に対しては、本来のX線計測値に対するノイズ信号として作用し、既存の画像再構成手法を用いて画像化した場合、撮像被検体の境界がボケ、画像分解能が低下する。
【0021】
従って、本発明の第1の目的は、稠密配置と同時に隣接検出器に漏れる放射線量を低減させることが可能なX線検出器を提供することにある。第2の目的は、X線検出器の配置を稠密化し、さらに隣接検出器に漏れる放射線量を低減させノイズを抑制して空間分解能の向上した撮像が可能な産業用X線CT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の第1の目的を達成するための手段は、X線を受ける半導体部材と、その半導体部材の電極が装着された基板と、その半導体部材からの漏れ電子を遮蔽する遮蔽部材とを備えたX線検出器において、その半導体部材が埋設されたベース板にその基板とその遮蔽部材とを装着して成るX線検出器である。
【0023】
そして好ましくは、その基板が、その遮蔽部材の周囲に配置されてそのベース板に装着されていることが好ましい。
【0024】
さらに好ましくは、そのベース板は、検出すべきX線を前記半導体部材へ入射させる部位に開口部が形成され、前記開口部に前記半導体部材が面していることが好ましい。
【0025】
さらに一層好ましくは、その遮蔽部材は、X線検出器のアレイ化配列方向の片側の面に限定して覆うように配置されていることが好ましい。
【0026】
その上好ましくは、その遮蔽部材は、その半導体部位表面に蒸着乃至は接合により設けた金属であることが好ましい。
【0027】
上記第2の目的を達成するための手段は、X線を照射するX線源と、被検体を透過したX線を検出するように並べて配列されてアレイ化された複数個のX線検出器と、そのX線源とそのX線検出器とに対してその被検体の相対的位置を変更する駆動機構と、そのX線検出器で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路と、その信号処理回路からの信号に基づいて画像を再構成する演算装置とからなる産業用X線CT装置において、そのX線検出器として前述の第1の目的を達成するための手段として記載のいずれかのX線検出器を備えている産業用X線CT装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のX線検出器によれば、ベース板に半導体部材を埋設して遮蔽部材を備えるにもかかわらず薄くX線検出器を構成することができるので、そのX線検出器を並べてアレイ化して用いる際にはそのX線検出器の稠密配置が可能となると共に隣接X線検出器に漏れる放射線量を遮蔽板で遮蔽して低減させることが可能となるので、分解能の高いX線撮像に貢献できるX線検出器を提供することができる。
【0029】
また、本発明の産業用X線CT装置によれば、産業用X線CT装置のX線検出器の配置を稠密化し、さらに隣接検出器に漏れる放射線量を低減させノイズを抑制することにより空間分解能の向上したX線撮像結果が得られる産業用X線CT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例による産業用X線CT装置を表した図である。
【図2】従来のX線CT装置に用いられているX線検出器の構造の一例を表した図にして、(a)図は、X線検出器の全体斜視図、(b)図は、(a)図のX線検出器を並べてアレイ化したものをX線入射方向から見た図である。
【図3】図1のX線CT装置に用いられているX線検出器の構造の一例を表した図にして、(a)図は、X線検出器の一部分分解して表した図、(b)図は、(a)図のX線検出器の組立て後の全体を表した斜視図であり、(c)図は、(b)図のX線検出器を並べてアレイ化したものをX線入射方向から見た図である。
【図4】図1のX線CT装置に用いられているX線検出器の構造の他の一例を表した図にして、(a)図は、X線検出器の一部分分解して表した図、(b)図は、(a)図のX線検出器の組立て後の全体を表した斜視図であり、(c)図は、(b)図のX線検出器を並べてアレイ化したものをX線入射方向から見た図である。
【図5】図1のX線CT装置における画像再構成システムの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施例では、X線7を照射するX線源1と、撮像対象の被検体8を透過したX線を検出するX線検出器2と、X線源1とX線検出器2の間に配置された撮像対象の被検体8を回転・並進させる駆動機構(ターンテーブル6)と、X線検出器2で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路3とこれらの信号を元に画像を再構成する演算装置を有する画像再構成装置4を有し、X線検出器2に透過してきたX線を検出するための半導体部材12とこれを内側に装備して支持するベース板18と放射線の遮蔽板14との一体構造からなる薄型のX線検出器2を複数個並べて断層画像を取得する水平面方向に一定間隔で並べてアレイ化した産業用X線CT装置と、それに用いられる薄型のX線検出器2の構造が示されている。
【0032】
本発明の他の実施例では、X線7を照射するX線源1と、撮像対象の被検体8を透過したX線を検出するX線検出器2と、X線源1とX線検出器2の間に配置された撮像対象の被検体8を回転・並進させる駆動機構(ターンテーブル6)と、X線検出器2で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路3とこれらの信号を元に画像を再構成する演算装置を有する画像再構成装置4を有し、X線検出器2に透過してきたX線を検出するための半導体部材12とこれを内側に装備して支持するベース板18と半導体部材12の表面に蒸着又は接合された放射線の遮蔽機能を持つ金属部を設けてそれらを一体構造として薄型のX線検出器2を構成し、そのX線検出器2を複数個を断層画像を取得する水平面方向に一定間隔で並べてアレイ化して装備した産業用X線CT装置と、それに用いられる薄型のX線検出器2の構造が示されている。
【0033】
本発明の各実施例では、既述の本発明の両実施例のいずれかの産業用X線CT装置における画像再構成処理においては、各撮像断面で各X線検出器で得られる投影データからクロストークによるノイズ成分を除去する処理を、各投影データを各検出器毎に補正する信号処理プロセスを経て実施するX線CT撮像方法を用いて、信号処理においてもノイズの低減による分解能の向上を図っている。
【0034】
以下に、各実施例を各図を参照して説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の一実施例である産業用X線CT装置を図1に示す。図1のように、産業用X線CT装置は、X線源1と複数のX線検出器2とがターンテーブル6の両側に対抗して設置される。
【0036】
ターンテーブル6は、X線源1とX線検出器2とに対して被検体8の相対的位置を変更してX線の照射位置を変更する駆動機構として採用される。
【0037】
X線検出器2には、化合物半導体検出器やシンチレータが用いられる。X線検出器2は、複数個採用され、各X線検出器2は水平方向に一定間隔で各検出器素子を並べて、図1のように、ラインアレイセンサとして、または図示していないが、水平方向と垂直方向の2次元に一定間隔で各検出器素子を並べて平面アレイセンサとしての配列を有する。
【0038】
被検体8は、X線源1と複数のX線検出器2との両者の間に位置するように、ターンテーブル6上に、撮像対象として置かれる。被検体8は、金属製の工業製品である。
【0039】
この産業用X線CT装置においては、X線源1から照射されたX線7が、被検体8を透過して減衰し、対抗する位置のX線検出器2に入射する。これらのX線検出器2に入射したX線は、X線検出器内で入射X線量(X線透過量)に相当する電気信号に変換されて、各検出器素子の電気信号として生成される。
【0040】
このように得られた各検出器素子の電気信号は、検出器ピクセル積算処理機構5へ伝送されて、検出器ピクセル積算処理機構5により指定された各検出器素子数分を加算処理される。
【0041】
加算処理された電気信号は検出器ピクセル積算処理機構5から信号処理回路3に伝送され増幅、ビット変換され、その後に信号処理回路3から画像再構成装置4に伝送される。
【0042】
被検体8の全体の画像を再構成するには、ターンテーブル6を回転させて一定角度ピッチ毎に全X線検出器2で検出されたX線透過量に相当する電気信号(投影データと呼ぶ)を1回転分収集する。
【0043】
一定角度ピッチ毎の投影データは順次、検出器ピクセル積算処理機構5と信号処理回路3とで順次処理されて画像再構成装置4に伝送、格納され、1回転分が得られた時点で、画像再構成装置4内で投影データに基づいて画像再構成演算を実行し、再構成画像のデータが得られる。
【0044】
得られた再構成画像のデータは、CT画像表示装置11に伝送されてCT画像表示装置11のディスプレイ上に表示される。
【0045】
また、本実施例の産業用X線CT装置に用いたX線検出器2を図3に示す。比較のために、従来のX線検出器の構造を図2に示した。従来のX線検出器では、X線を検出する半導体部材12がFPC基板13に装着され、これらに遮蔽板14が設けられている。図2(a)には、1個のX線検出器2を示し、図2(b)には、これらのX線検出器を水平方向に一定間隔で並べたラインアレイセンサ16のX線検出器配列を示した。
【0046】
図3に示した本実施例に採用したX線検出器2では、X線を検出する検出器素子である半導体部材12が、コの字型のベース板18の凹部に差し込まれたように埋め込まれて設けられる。
【0047】
さらに、コの字型FPC基板13の凹部に遮蔽板14が差し込まれたように埋め込まれて設けられる。このため、図3(c)に示すように、遮蔽板14はFPC基板13から、半導体部材12はベース板18から、それぞれX線検出器2の並び方向に突出しないように組み込まれる。
【0048】
その突出については、完全に突出しないようにすることが好ましいが、完全である必要は無く、遮蔽板14の一部分のみがFPC基板13の凹部に、また、半導体部材12の一部分がベース板18の凹部に、埋め込まれる部分埋め込み状態であっても良い。
【0049】
この遮蔽板14が装着されたFPC基板13は、半導体部材12が装着されたベース板18に接着される。このようにして、遮蔽板14とFPC基板13と半導体部材12とベース板18とが一体化されて一つのX線検出器2が構成され、遮蔽板14とFPC基板13と半導体部材12とがベース板18に支持されている。
【0050】
ベース板18にFPC基板13を接着する際には、図3(c)に示すように、遮蔽板14が半導体部材12の片面を覆うように位置決めする。このことにより、隣接するX線検出器との間での散乱放射線等の半導体部材12内外への出入りを遮断できるようにする。
【0051】
図3(a)、(b)には、1個のX線検出器2を示し、図2(c)には、これらのX線検出器2を水平方向に一定間隔で並べたラインアレイセンサ16のX線検出器配列を示した。
【0052】
図3(c)のように、本実施例のX線検出器2の構造では遮蔽板14がFPC基板13に埋め込まれているため、X線検出器2の厚みを配列方向へ薄くすることが可能であり、X線検出器2をアレイ化すべく配列した場合にX線検出器2の配列方向の間隔を稠密化できる。
【実施例2】
【0053】
本発明の第2の実施例では、前述の第1の実施例におけるX線検出器2を変更したものであり、他の内容については、前述の第1の実施例と同じである。そのため、以下では、変更を受けたX線検出器2を説明する。
【0054】
第2の実施例のX線検出器2は、図4に示されている。本実施例では、図4(a)のように、X線検出器2のベース板18とFPC基板13をコの字型とする。ベース板18をコの字型としたことによって生じた凹部内に半導体部材12が埋め込まれるように装着される。
【0055】
また、X線検出器2の半導体部材12の片側の表面、即ち、図4(c)のようにリニアアレイセンサ16のX線検出器2の配列方向の片側の面に、第1実施例の遮蔽板14に相等する金属部17(金、銀、銅、など)を蒸着もしくは接合により装着して一体化させる。
【0056】
FPC基板13は、その凹部に金属部17がはまるようにしてベース板18に装着して一体化する。このようにして、半導体部材12とFPC基板13と遮蔽板17とベース板18とが一体化される。
【0057】
この様に構成したX線検出器2は、第1の実施例と同様に、図4(c)のように、断層画像を取得する水平面内で水平方向へ一定間隔で並べ、アレイ化したX線検出器配列を有するラインアレイセンサ16とした上で産業用X線CT装置に組み込まれて使用される。
【0058】
本実施例のX線検出器2の構造では、半導体部材12とFPC基板13と遮蔽板17とベース板18とが一体化された組立て後の状態にあっては、第1実施例と同様に、放射線等の遮蔽材となる金属部17がFPC基板13に埋め込まれたと同じ状態のレイアウトになるので、X線検出器2の厚みを薄くすることが可能であり、X線検出器2を配列してアレイ化した場合に、X線検出器2の配列間隔を稠密化できる。
【0059】
図4(c)に示すように、金属部17はFPC基板13から、半導体部材12はベース板18から、それぞれX線検出器2の並び方向に突出しないようにされているが、その突出については、完全に突出しないようにすることが好ましいものの、完全である必要は無く、金属部17の一部分のみがFPC基板13の凹部に、また、半導体部材12の一部分がベース板18の凹部に、埋め込まれる部分埋め込み状態であっても良い。
【0060】
上述のいずれの実施例においても、産業用X線CT装置のシステム内では、画像再構成処理において、各撮像断面で各X線検出器2による検出結果で得られる投影データからクロストークによるノイズ成分を除去する処理を実施し、遮蔽板14や金属部17によるX線検出器2間の放射線等のノイズの出入りを遮断することによるノイズの抑制とも合わせて、ノイズの少ない再構成画像が得られる。これらに関するデータの処理プロセスは図5に示されている。
【0061】
第1、第2の各実施例では、図5に示した処理プロセスを採用することによって、X線検出器2を用いた産業用X線CT装置によるCT画撮像を実現させる。
【0062】
その処理プロセスにおいては、入力手段C15より、それぞれの処理プロセスで必要となる条件を、全体撮像条件指定手段C9、ノイズ補正条件指定手段C10、検出器ピクセルサイズ指定手段C11、画像再構成計算条件指定手段C12により各処理プロセスに入力する。
【0063】
全体撮像条件は全体撮像条件記憶手段C2に格納され、ノイズ補正条件設定手段C3で設定されたノイズ補正条件およびX線源照射条件記憶手段C4と、実際の撮像による投影データ記憶手段C6を経て、画像再構成手段C7で画像が作成される。最終的に再構成画像D6が得られ再構成画像記憶手段C8に記録され、表示手段C16で表示される。
【0064】
本発明のいずれの実施例においても、産業用X線CT装置においてX線検出器厚みを薄くしてX線検出器のアレイ化に際して配列の稠密化が達成できると同時に隣接X線検出器に漏れる放射線量を低減するX線検出器構造を用いることにより、高い分解能を持つ産業用X線CT装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のX線検出器は、産業用や医療用のX線CT装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 X線源
2 X線検出器
3 信号処理回路
4 画像再構成装置
5 検出器ピクセル積算処理機構
6 ターンテーブル
7 X線
8 被検体
9 X線源焦点サイズ調整機構
10 信号伝送回路
11 画像表示装置
12 半導体部材
13 FPC基板
14 遮蔽板
15 電極
16 ラインアレイセンサ
17 金属部
18 ベース板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を受ける半導体部材と、前記半導体部材の電極が装着された基板と、前記半導体部材からの漏れ電子を遮蔽する遮蔽部材とを備えたX線検出器において、前記半導体部材が埋設されたベース板に前記基板と前記遮蔽部材とを装着して成るX線検出器。
【請求項2】
前記基板が、前記遮蔽部材の周囲に配置されて前記ベース板に装着されて成る請求項1に記載のX線検出器。
【請求項3】
前記ベース板は、検出すべきX線を前記半導体部材へ入射させる部位に開口部が形成され、前記開口部に前記半導体部材が面している請求項1又は請求項2に記載のX線検出器。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、X線検出器のアレイ化配列方向の片側の面を覆うように配置されている請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のX線検出器。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、前記半導体部位表面に蒸着乃至は接合により設けた金属である請求項4に記載のX線検出器。
【請求項6】
X線を照射するX線源と、被検体を透過したX線を検出するように並べてアレイ化された配置の複数個のX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器とに対して前記被検体の相対的位置を変更する駆動機構と、前記X線検出器で計測されたX線透過量を数値化する信号処理回路と、前記信号処理回路からの信号に基づいて画像を再構成する演算装置とからなる産業用X線CT装置において、前記X線検出器として請求項1から請求項5のいずれかに記載のX線検出器を備えていることを特徴とする産業用X線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108776(P2013−108776A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252184(P2011−252184)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】