説明

X線検査装置

【課題】簡単な操作により、所要の領域のパノラマ透視像を確実に得ることのできるX線検査装置を提供する。
【解決手段】複数の部分画像を合成してパノラマ透視像を得る機能を備えるとともに、ステージ3上の被検査物Wを撮影する光学カメラ5を設け、その光学カメラ5による被検査物Wの外観像を表示器15に表示し、その外観像上に、得るべきパノラマ透視像の領域を枠で指定することにより、ステージ3とX線発生装置1およびX線検出器2の相対位置を移動させる移動機構4を自動的に駆動し、所定の透視倍率にしたうえで指定された枠内の領域を順次撮影して複数の部分画像を取得し、これらを合成して指定された領域のパノラマ透視像を構築することで、パノラマ透視像の撮影のための設定操作を容易化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種工業製品等の被検査物にX線を照射して得られるX線画像を用いて、被検査物内部の欠陥の有無等を非破壊のもとに検査するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工業製品の内部欠陥の有無等を非破壊のもとに検査するX線検査装置においては、一般に、X線発生装置とX線検出器の間に被検査物を搭載するステージが配置された構造を有し、通常、ステージはX線光軸方向(X線発生装置とX線検出を結ぶ方向)を含む3次元方向に移動可能となっている。このステージをX線光軸方向に移動させることによって透視倍率が変化し、それに直交する平面上で移動させることによって視野中心を変化させることができる。ステージに代えて、あるいはステージとともに、X線発生装置とX線検出器を移動させる装置もある。
【0003】
回路基板上に実装されている部品や半田ボールなどの検査に用いられるX線検査装置においては、通常、被検査物である回路基板上の細部を拡大透視して観察することが行われる。そのため、現在透視している部位が被検査物上のどの位置であるのかが判別しにくいという問題がある。このような問題の対策として、従来、比較的低倍率で、従って広い視野で被検査物の透視像を撮影して記憶しておき、その透視像を表示器に表示し、その透視像上に拡大透視すべき位置と大きさを指定することにより、ステージを自動的に移動させて拡大像を表示する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、この種の用途に用いられるX線検査装置においては、高拡大率の透視像を得るための装置構成を採用しているため、回路基板等の被検査物の全体のX線透視像を得ることはできず、そのために、ステージ上の被検査物を撮影する光学カメラを設け、その光学カメラにより、X線の透視方向と略同方向から撮影し、その外観像をマップのように用い、その外観像上に刻々の透視位置を重畳表示し、あるいはこの外観像上に拡大表示すべき位置と大きさを指定することにより、ステージを自動的に移動させて拡大透視像を表示する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
更に、X線検査装置においては、原理上、検出器サイズ以上の視野サイズでX線透像を表示することができないため、広い視野のX線透視像を得るために、ステージを移動させながら複数のX線透視像を撮影し、これらの画像を繋ぎ合わせて1枚の広視野画像とする、いわゆるパノラマ機能を有する装置も知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−255286号公報
【特許文献2】特開2006−343193号公報
【特許文献3】特開2004−037386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、複数のX線透視像を繋ぎ合わせて1枚の広視野の透視像を得るパノラマ機能を備えた装置においては、被検査物の全体像を得る場合には前記した特許文献3の技術のように、自動的に被検査物のエッジを検出して部分画像の撮影を行う機能が知られているものの、被検査物の一部の広視野透視像を得る場合には、撮影範囲を指定する操作が複雑である場合が多い。例えば、現在の位置から縦横方向にそれぞれ何枚の画像を撮影するのかを設定する方法が実用化されているが、この場合、どの範囲が撮影されるのかを直感的に把握しにくいという問題がある。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、簡単な操作により、所要の領域のパノラマ透視像を確実に得ることのできるX線検査装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のX線検査装置は、互いに対向配置されたX線発生装置とX線検出器の間に、被検査物を搭載するステージが設けられているとともに、そのステージとX線発生装置およびX線検出器を相対的にX線光軸方向を含む3軸方向に移動させる移動機構を備え、上記ステージの相対位置に応じた撮影倍率および撮影視野のもとに撮影した被検査物のX線透視画像を表示器に表示する表示器を備えたX線検査装置において、複数回の撮影により得られた複数の部分透視像を合成することにより、当該装置による最低倍率での画像の視野よりも広い領域の透視像を合成するパノラマ画像合成手段と、上記ステージ上の被検査物を撮影する光学カメラと、その光学カメラによる被検査物の外観像を表示する外観像表示手段と、その外観像上に上記パノラマ画像合成手段により合成すべき領域を枠で指定するパノラマ撮影領域指定手段と、そのパノラマ撮影領域指定手段による指定があったとき、上記移動機構を自動的に駆動して、撮影倍率を規定倍率とした状態で、指定された枠内の領域を順次撮影して上記パノラマ画像合成手段に部分画像として供給する部分画像自動撮影手段を備えていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0010】
ここで、本発明のX線検査装置においては、上記外観像表示手段により表示された被検査物の外観像上で、当該装置で設定可能な撮影倍率の範囲内の領域を透視領域として枠で指定する透視領域指定手段と、その透視領域指定手段による指定があったとき、指定された枠内の領域と透視領域とが一致するように上記移動機構を自動的に位置決めする透視視野自動設定手段を備えるとともに、上記外観像上で指定された枠の大きさから、当該指定された枠が上記パノラマ撮影領域指定手段と透視領域指定手段とのいずれの指定であるかを判別する判別手段を備えた構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0011】
本発明は、光学カメラで撮影した被検査物の外観像をマップとして用い、その外観像上で、パノラマ撮影すべき領域を枠で指定することで、得られるパノラマ透視像の範囲をオペレータが直感的に把握することを可能とするものである。
【0012】
すなわち、光学カメラで撮影した被検査物の外観像が表示器に表示され、その画像上で枠を指定することにより、撮影倍率を規定倍率(通常は最低倍率。ただし、最低倍率に限定されるものではない)としたうえでその枠内の領域をカバーするように、移動機構を駆動して規定の撮影倍率のもとに部分画像が自動的に撮影される。
【0013】
また、請求項2に係る発明では、パノラマ撮影機能以外の通常の撮影、すなわち当該装置による設定可能な撮影倍率の範囲の撮影についても、外観像上で枠で指定する透視領域指定手段を備えるとともに、枠の指定があったとき、それがパノラマ撮影領域の指定であるのか、単なる透視領域の指定であるのかを枠の大きさから自動的に判別し、その判別結果に応じた動作のもとに移動機構を駆動制御する。従ってオペレータは、パノラマ撮影であるのか拡大透視等であるのかを指定する必要がない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一度の透視ないしは撮影では得られない広い領域のパノラマ透視像を得るに際し、被検査物の外観像上で枠で指定するだけで、自動的に部分画像の撮影動作に移行するので、オペレータは従来のように部分画像撮影のための初期位置を設定したり、縦横の撮影枚数を設定する等の操作を行う必要がなく、操作を簡略化することができると同時に、パノラマ撮影をすべき領域を直感的に把握することができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明のように、拡大透視像等の透視領域を被検査物の外観像上で枠で指定する機能を併せ持たせる場合、外観像上で指定した枠の大きさによって自動的にパノラマ撮影か拡大透視かを判別し、判別結果に応じた動作を実行するように構成すると、単に枠を設定するだけで所要の動作が自動的に行われるため、オペレータの設定操作をより簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態による透視観察の視野指定並びにパノラマ透視像の撮影範囲の指定と、その指定に基づく装置動作を示すフローチャートである
【図3】本発明の実施の形態により通常の透視観察を行う場合の外観像上への枠の指定の例(A)と、その指定により得られる透視像の例(B)を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態によりパノラマ透視像を得る場合の外観像上への枠の指定の例(A)と、その指定により得られるパノラマ透視像の例(B)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の構成図で、装置の概略構造を表す模式図と制御装置の主要な機能的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【0018】
X線発生装置1はコーンビーム状の広がりを持つX線を鉛直上方に向けて発生し、そのX線発生装置1の上方に2次元のX線検出器2が対向配置されている。X線発生装置1とX線検出器2の間に、被検査物Wを搭載するためのステージ3が配置されており、このステージ3は、移動機構4の駆動によりX線発生装置1とX線検出器2とを結ぶ方向(z軸方向)と、それに直交する平面上で互いに直交する方向(x,y軸方向)の計3軸方向に移動可能である。このステージ3の移動により、観察位置の変更や透視倍率の変更を行うことができる。
【0019】
X線発生装置1から発生したX線はステージ3上の被検査物Wを透過してX線検出器2に入射して検出され、その検出出力は画像データ取り込み回路10を介して一旦透視像記憶部11に送られる。
【0020】
ステージ3の上方には、X線検出器2に隣接して光学カメラ5が配置されている。この光学カメラ5は、ステージ3上の被検査物Wの全体像を撮影できるようになっており、その撮影に際しては、光学カメラ5に対して一定の位置にステージ3が位置決めされる。この光学カメラ5からの被検査物Wの撮影出力は、画像データ取り込み回路12を介して外観像記憶部13に格納される。
【0021】
以上の透視像記憶部11および外観像記憶部13の記憶内容は、表示制御部14からの指令により後述するように適宜に呼び出され、表示器15に表示される。透視像記憶部11の記憶内容は、通常の透視作業、つまり後述するパノラマ撮影以外の透視作業にあっては、画像データ取り込み回路10を通じて取り込んだ透視データに基づく透視像がそのまま表示器15に実質的にリアルタイム画像で表示される。また、表示器15には、このような透視像の表示エリアのほかに、画像データ取り込み回路12を介して取り込んで外観像記憶部13に記憶している被検査物Wの外観像を表示するエリアが設定されており、この外観像は表示器15に常時表示される。
【0022】
後述するパノラマ撮影に際しては、逐次撮影される部分画像がそれぞれ透視像記憶部11に記憶されていき、部分画像の撮影の終了後、各部分画像は画像合成部18に取り込まれて接合され、1枚のパノラマ透視像が構築される。その合成後のパノラマ透視像は、表示制御部14を通じて表示器15に表示される。
【0023】
表示制御部14は制御部16の制御下に置かれ、この制御部16は前記した移動機構4も制御下においているとともに、マウス、キーボード、ジョイスティック等からなる操作部17が接続されている。この操作部17を操作することにより、移動機構4を駆動してステージ3を随意の方向並びに距離だけ移動させることができる。
【0024】
また、操作部17のマウスをドラッグ操作する等により、表示器15に表示されている外観像上に矩形の枠を任意の位置並びに大きさのもとに指定して表示させることができる。この枠の設定により、制御部15は後述する手順のもとに移動機構4に駆動制御指令を与え、自動的に枠内の透視像を取得する。
【0025】
ここで、以上の画像データ取り込み回路10と12、透視像記憶部11と外観像記憶部13、表示制御部14、表示器15、制御部16、操作部17および画像合成部18は、実際にはコンピュータとその周辺機器によって構成され、インストールされているプログラムに書き込まれている機能を実現するのであるが、図1では説明の便宜上、主要な機能ごとにブロック図で表している。
【0026】
次に、以上の本発明の実施の形態の作用を説明する。図2は本発明の実施の形態による透視観察の視野指定並びにパノラマ透視像の撮影範囲の指定と、その指定に基づく装置動作を示すフローチャートである。
【0027】
オペレータが被検査物Wをステージ3上にセットして外観像を取得した後、表示器15に表示された外観像上で枠により範囲を指定する。この枠の指定により、その指定が通常の透視観察を行うためのものか、あるいはパノラマ撮影を行うためのものかを自動的に判定する。例えば、指定された枠の範囲が、当該装置による最低倍率時の視野サイズより小さい場合は、通常の透視観察と判断し、指定された枠の範囲が最低倍率時の視野サイズよりも大きい場合にはパノラマ撮影を行うものと判断する。
【0028】
通常の透視観察と判断した場合には、指定された枠とX線検出器2の視野の範囲が一致するようにステージ3をx,y,z軸方向に移動させて自動的に位置決めする。その例を図3に示す。同図(A)に示すように、外観像C上に、最低倍率時の視野サイズよりも小さい枠fを指定したとき、通常の透視観察と判断してその枠fと視野とが一致するようにステージ3を自動的に位置決めし、これにより同図(B)に示すような透視像Tを得て表示器15に表示する。
【0029】
一方、パノラマ撮影と判断した場合には、最低倍率となるようにステージ3をz軸方向に移動させ、指定された枠をカバーするように複数の部分画像を撮影していく。その例を図4に示す。同図(A)に示すように、外観像C上に、最低倍率時の視野サイズよりも大きい枠Fを指定したとき、パノラマ撮影と判断して、最低倍率の位置にステージ3をz軸方向に移動した後、枠Fをカバーするように、同図(B)に示すように、例えば枠Fの左上の位置を撮影するようにステージ3をx,y方向に移動して部分画像P1を撮影し、順次P2,P3・・と部分画像の撮影を行う。これらの部分画像P1,P2,・・は透視像記憶部11に格納されていく。そして、枠Fをカバーする全ての部分画像の撮影を終了した後、各部分画像P1,P2,・・を画像合成部18において繋ぎ合わせ、1枚のパノラマ画像P0を構築して表示器15に表示する。部分画像P1.P 2・・の撮影に際しては、互いに隣接する部分を重複させるなどの公知の手法を採用することができる。
【0030】
以上の本発明の実施の形態によると、オペレータは拡大透視等の通常の透視観察であるのか、パノラマ撮影であるのかを前以って指定する必要がなく、見たい領域に合わせて枠を指定するだけで、後は装置が自動的に動作を実行するので、従来のこの種の装置に比してその操作がより簡単となる。
【0031】
ここで、以上の実施の形態では、倍率の変更並びに視野位置の変更にステージ3のみを各方向に移動させたが、X線発生装置1ないしはX線検出器2を各方向に移動させるよ うに構成することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 X線発生装置
2 X線検出器
3 ステージ
4 移動機構
5 光学カメラ
10,12 画像データ取り込み回路
11 透視像記憶部
13 外観像記憶部
14 表示制御部
15 表示器
16 制御部
17 操作部
18 画像合成部
C 外観像
f,F 枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置されたX線発生装置とX線検出器の間に、被検査物を搭載するステージが設けられているとともに、そのステージとX線発生装置およびX線検出器を相対的にX線光軸方向を含む3軸方向に移動させる移動機構を備え、上記ステージの相対位置に応じた撮影倍率および撮影視野のもとに撮影した被検査物のX線透視画像を表示器に表示する表示器を備えたX線検査装置において、
複数回の撮影により得られた複数の部分透視像を合成することにより、当該装置による最低倍率での画像の視野よりも広い領域の透視像を合成するパノラマ画像合成手段と、上記ステージ上の被検査物を撮影する光学カメラと、その光学カメラによる被検査物の外観像を表示する外観像表示手段と、その外観像上に上記パノラマ画像合成手段により合成すべき領域を枠で指定するパノラマ撮影領域指定手段と、そのパノラマ撮影領域指定手段による指定があったとき、上記移動機構を自動的に駆動して、撮影倍率を規定倍率とした状態で、指定された枠内の領域を順次撮影して上記パノラマ画像合成手段に部分画像として供給する部分画像自動撮影手段を備えていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
上記外観像表示手段により表示された被検査物の外観像上で、当該装置で設定可能な撮影倍率の範囲内の領域を透視領域として枠で指定する透視領域指定手段と、その透視領域指定手段による指定があったとき、指定された枠内の領域と透視領域とが一致するように上記移動機構を自動的に位置決めする透視視野自動設定手段を備えるとともに、上記外観像上で指定された枠の大きさから、当該指定された枠が上記パノラマ撮影領域指定手段と透視領域指定手段とのいずれの指定であるかを判別する判別手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2696(P2012−2696A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138546(P2010−138546)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】