説明

X線異物検出装置

【課題】 蓄積した検査データを固有識別情報の判読の難易に関わらず確実に抽出することができるX線異物検出装置を提供する。
【解決手段】 被検査物の各部X線透過量に基づいて被検査物中における異物の有無を判定する検査を実行するとともに、X線透過量に対応する濃度のX線画像を作成するX線異物検出装置であって、被検査物の検査毎に、各被検査物の目視可能な固有識別情報を含む検査時の外観可視画像と被検査物の検査に伴い作成されるX線画像とを単一画像ファイルに結合した合成検査画像を作成する合成検査画像作成手段30と、合成検査画像作成手段30で合成された各被検査物の合成検査画像を、被検査物の固有識別情報に対応するファイル名で識別および読出し可能に蓄積記録する蓄積記録手段33とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の被検査物に向けてX線を照射し、その被検査物のX線透過量に基づいて被検査物中の異物の有無を判定するX線異物検出装置、特に、検査済み製品の検査データを、蓄積し抽出できるようにしたX線異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線異物検出装置においては、被検査物を搬送しながら被検査物の全体にX線を透過させることで、被検査物の各部のX線吸収量の相違を把握して異物判定するものが知られており、被検査物の相対位置毎のX線透過量に対応する濃度のX線画像を表示するものが多い。
【0003】
また、近時、消費者保護のため流通商品の品質向上がより一層希求されており、例えばHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point;危害分析重要管理点)に適合した食品衛生管理体制の強化が高度に要求されるとともに、各製品についてのトレーサビリティの確保が要求されている。
【0004】
このような要求に対し、従来のX線異物検出装置では、例えば、X線画像をX線異物検出装置外の蓄積メモリに蓄積できるようにし、後日の問合せに際し、被検査物製品のバーコード情報を基にその製品のX線画像を抽出して、製品検査時の検査データとするようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この装置では、検査対象の製品の包装材にバーコードを予め付加し、X線異物検査の際にそのバーコードを読み取って識別情報とし、X線画像の検査データを蓄積していた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−28821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のX線異物検出装置にあっては、被検査物の固有識別情報としてバーコードを使用し、そのバーコードの読み取り情報を基に、検査データの管理を行なっていたため、外光や包装材の変形によってバーコードは判読し難くなり、特にバーコードを包装袋に印字したりした場合に、異物検査を正常に終了したにも拘わらず、バーコードの誤読や読み取り不能によって製品が選別排出されてしまい、製造歩留まりが低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、製品が最終消費者やエンドユーザに渡った段階でバーコード(これに併記された番号を含む)の印字品質が悪くなっていると、バーコードの誤読や読み取り不能という事態が生じ、その検査済み製品に対応する検査データの遡及が途絶えることもあった。
【0009】
本発明は、このような従来のX線異物検出装置の問題点に鑑みてなされたものであり、蓄積した検査データを確実に抽出することができるX線異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的達成のため、(1)被検査物の各部X線透過量に基づいて該被検査物中における異物の有無を判定する検査を実行するとともに、前記X線透過量に対応する濃度のX線画像を作成するX線異物検出装置であって、前記被検査物の検査毎に、各被検査物の目視可能な固有識別情報を含む検査時の外観可視画像と該被検査物の検査で作成される前記X線画像とを単一画像ファイルに結合した合成検査画像を作成する合成検査画像作成手段と、該合成検査画像作成手段で合成された各被検査物の合成検査画像を、該被検査物の固有識別情報に対応するファイル名で識別および読出し可能に蓄積記録する蓄積記録手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
この構成により、被検査物の検査毎に、各被検査物の目視可能な固有識別情報を含む検査時の外観可視画像とその被検査物の検査で作成されるX線画像とを単一画像ファイルに結合した合成検査画像が作成され、その合成検査画像が、被検査物の固有識別情報に対応するファイル名で識別および読出し可能に蓄積記録される。したがって、エンドユーザに渡るまでの間に被検査物の目視可能な固有識別情報が多少読み取り難くなっても、固有識別情報を含む可視画像を基に、被検査物の検査データを蓄積記録情報から確実に特定し抽出することが可能となる。
【0012】
また、本発明のX線異物検出装置においては、(2)前記被検査物の検査毎に、各被検査物の検査条件又は検査結果に関連する目視可能な検査値画像を生成する検査値画像生成手段を設け、各被検査物について、前記外観可視画像および前記X線画像と、前記検査値画像生成手段で生成された検査値画像とを、前記合成検査画像作成手段により単一の合成検査画像に結合するようにしたようにするのがより好ましい。
【0013】
この構成により、各被検査物の判定閾値やX線画像の画素数、判定結果(OK/NG)等の検査値情報が、固有識別情報を含む外観可視画像およびX線画像と共に、単一画像ファイルに結合される。したがって、より詳細な検査データが抽出可能になる。
【0014】
本発明のX線異物検出装置においては、好ましくは、(3)前記外観可視画像が、前記目視可能な固有識別情報を含む前記被検査物の少なくとも一部の外観を撮影した画像である。このようにすると、合成検査画像を参照することで、被検査物の固有識別情報が視覚的に確実に把握可能となり、検査データの確実な抽出が可能となる。
【0015】
また、(4)前記外観可視画像が、前記被検査物の全体像を撮影した画像であるのがより望ましい。これにより、固有識別情報の位置が多少ずれていたり、他の情報との組合せで固有識別情報となる簡単で明確な識別情報等を採用することができる。
【0016】
あるいは、(5)前記外観可視画像が、前記目視可能な固有識別情報の視認方向からの前記被検査物の撮影画像と、該所定方向とは異なる他方向からの撮影画像とを含む複数の画像であってもよい。この構成によれば、合成検査画像により詳細な外観可視画像が含まれることになり、より詳細な検査データが抽出可能になる。
【0017】
本発明のX線異物検出装置においては、また、(6)前記被検査物毎に前記目視可能な固有識別情報を所定条件で変化させながら順次付加する識別情報付加手段を設け、前記合成検査画像作成手段が、前記識別情報付加手段によって前記被検査物に前記固有識別情報を付加した時刻情報に基づいて、前記目視可能な固有識別情報を含む検査時の外観可視画像と前記X線画像とを被検査物毎に関連付け、前記合成検査画像を作成するようにするのがよい。
【0018】
このように構成すると、被検査物に固有識別情報を付加した時刻情報に基づいて、固有識別情報を含む外観可視画像とX線画像とを被検査物毎に関連付けた合成検査画像が作成されるから、搬送ピッチが狭く、単位時間当たりに多数の被検査物が検査される場合でも、外観可視画像と固有識別情報が確実に対応した被検査物毎の合成検査画像が確実に作成されることになる。
【0019】
本発明のX線異物検出装置においては、さらに、(7)前記被検査物毎に前記目視可能な固有識別情報を所定条件で変化させながら順次付加する識別情報付加手段を設け、前記蓄積記録手段が、前記識別情報付加手段によって前記被検査物に前記固有識別情報を付加した時刻情報若しくは手順情報に基づいて複数の被検査物についての前記合成検査画像をグループ化し、該グループ化した複数の被検査物の合成検査画像を前記目視可能な固有識別情報の一部又は全部に基づいてグループ間で識別し、対応するグループの複数の前記合成検査画像を参照することで、特定の固有識別情報を持つ合成検査画像を特定できるようにしてもよい。
【0020】
この構成により、時刻情報若しくはグループ化のための手順情報に基づいて複数の被検査物についての合成検査画像がグループ化される。したがって、目視可能な固有識別情報を含む外観可視情報に基づいて合成検査画像のグループを特定できれば、固有識別情報を含む外観可視情報に基づいて、そのグループの複数の被検査物の合成検査画像を参照することで、特定の固有識別情報を持つ合成検査画像を抽出可能となる。すなわち、固有識別情報が判読し難いような場合でも、それを基に蓋然性の高いグループを特定し、更に固有識別情報のみならず個々の外観可視情報を総合して、特定の固有識別情報を持つ被検査物を容易に特定することができることになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被検査物の固有識別情報を画像化しX線画像と結合して蓄積記録するので、エンドユーザに渡るまでの間に被検査物の目視可能な固有識別情報が読み取り難くなったような場合でも、固有識別情報を含む可視画像を基に、被検査物の検査データを蓄積記録情報から確実に特定することができ、蓄積した検査データを固有識別情報の判読の難易に関わらず確実に抽出することができるX線異物検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を用いながら説明する。
[第1の実施の形態]
図1〜図5は、本発明のX線異物検出装置の第1の実施の形態を示す図である。
まず、その構成について説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、本実施形態のX線異物検出装置10は、被検査物Wを搬送する無端の搬送ベルト11を備えており、搬送ベルト11は、図示しない搬送駆動モータにより所定速度で駆動され、被検査物Wを装置内である所定の検査領域を通して上流側から下流側へと搬送するようになっている。
【0024】
この搬送ベルト11の上流側(図1の左方側)又はその上流側の搬送ベルトの近傍には、搬送される被検査物Wに目視可能な固有識別情報であるシリアル番号を印字するプリンタ12が配置されており、プリンタ12より下流側には、被検査物Wが検査領域内に進入したときその被検査物Wを検知する例えば投受光器からなる進入検知センサ13が設置されている。なお、被検査物Wの目視可能な固有識別情報は、賞味期限、製造日、ロット、品種、製造番号等を特定する他の文字や記号等と共に全体として固有識別情報を構成する識別子の類であってもよい。
【0025】
検査領域内には、被検査物Wに向けて図1中では下向きにX線を照射するX線源14と、搬送ベルト11の上走面部より下方側に配置されて被検査物Wの各部X線透過量を測定するX線ラインセンサ15と、被検査物Wの外観可視画像を撮像するカメラやイメージセンサ等の撮像手段、例えばCCDカメラ16が設けられている。さらに、検査領域より下流側には、搬送ベルト11上の被検査物Wを選択的に搬送路外に排出することが可能な選別機17が設置されている。
【0026】
前記外観可視画像は、シリアル番号又はこれを含む被検査物Wの目視可能な固有識別情報を視認できる所定方向から、その固有識別情報を含むように被検査物Wの少なくとも一部の外観を撮影した画像であり、本実施形態においては被検査物Wの全体像を前記所定方向から撮像したものである。この外観可視画像は、目視可能な固有識別情報の視認方向からの撮影画像と、その所定の撮影方向とは異なる他方向からの撮影画像とを含む複数の画像であってもよく、その場合、例えば、固有識別情報が被検査物Wの包装材上に分散配置された複数の識別子等から構成されていてもよい。
【0027】
前記搬送ベルト11、プリンタ12、進入検知センサ13、X線源14、X線ラインセンサ15、CCDカメラ16および選別機17は、制御ユニット20によってそれぞれ動作を制御されるようになっており、制御ユニット20は、X線ラインセンサ15の測定情報に基づいて被検査物W中における異物の有無を判定するとともに、その判定結果に応じて異物有りと判定した被検査物Wの排出動作を選別機17に実行させるようになっている。
【0028】
この制御ユニット20は、例えばCPU、ROM、RAMおよびI/Oインターフェースを有するマイクロコンピュータ構成と、画像処理プロセッサ、タイマー、ビデオメモリ、画像ミクスチャ等とを含んで構成されており、ROMに格納された制御プログラムに従って、CPUがRAMとの間でデータを授受しながら所定の演算処理を実行することで、後述する検査値画像生成手段、合成検査画像作成手段および蓄積記録手段等の機能を実現できるようになっている。
【0029】
より具体的には、X線源14は、搬送ベルト11上の被検査物Wが検査領域を通過するとき、その中間位置付近で搬送ベルト11の幅(幅員)方向全体に及ぶ範囲でX線を照射することができる。このX線源14は、例えば陰極フィラメントからの熱電子をその陰極と陽極の間の高電圧により陽極ターゲットに衝突させてX線を発生させるX線管であり、X線を下方のX線ラインセンサ15に向けて不図示のスリットにより略三角形のスクリーン状にして照射するようになっている。
【0030】
X線ラインセンサ15は、搬送ベルト11上の被検査物Wが検査領域に達するとき、被検査物のX線透過量を検出するようになっており、具体的には、例えば複数のX線検出素子を搬送ベルト11の幅方向に並設し所定解像度でのX線検出を行なうように構成され、画像処理可能な所定ビット数の検出信号を出力するようになっている。また、搬送方向について、X線ラインセンサ15の素子列ライン上でのX線量のサンプリングピッチに対応するサンプリングピッチで被検査物のX線透過量が順次サンプリングされるように、搬送ベルト11の搬送速度が設定されており、X線ラインセンサ15の複数の検出素子からのX線透過量検出信号を被検査物の搬送方向全域について濃度データとして蓄積記憶することで、X線画像の元データが取得できるようになっている。
【0031】
また、CCDカメラ16は、X線照射の指向する方向(反射方向を含む)から外れた位置に設置されており、かつ、X線源14からのX線が被検査物Wの固有識別情報部分に照射される時点又はその直前若しくは直後に被検査物Wの外観を撮像するようになっている。このCCDカメラ16の設置姿勢は、図1に示すように光軸(視線軸)方向が搬送方向に傾斜していてもよいし、搬送方向と直交する前後方向に傾斜していてもよい。また、固有識別情報の印刷位置と被検査物Wの搬送姿勢に応じて、CCDカメラ16又はそれに代わるイメージセンサを水平方向に設置したり、X線ラインセンサ15に近接して配置することもできる。勿論、その場合に撮像用の光透過経路を確保するために、搬送ベルト11を搬送方向又は前後方向で隣り合う複数の搬送ベルトとしたり、搬送ベルト11に光透過部分(例えば可撓性の透明窓部)を設けたりすることができる。
【0032】
制御ユニット20は、図3に示すように、進入検知センサ13により被検査物Wが検知される度にこれをトリガーとして異物判定や画像処理等を実行させる搬送・検出制御回路21と、X線ラインセンサ15からのX線透過量のライン検出信号を順次蓄積して被検査物W全体についてのX線透過量データを記憶保持することができる透過量データメモリ22と、透過量データメモリ22の記憶データを基に被検査物W中における異物の有無を判定する異物判定部23と、透過量データメモリ22の記憶データを基にX線透過量に対応する濃度分布を有するX線画像を作成する画像処理部24と、画像処理部24で作成されたX線画像および異物判定部23での判定結果を表示出力することができる表示部25とを含んで構成されている。
【0033】
異物判定部23は、例えば対数変換や微分処理を行なって物質によるX線吸収量の急峻な変化を抽出し、異物を判定するようになっている。また、画像処理部24は、例えば画像処理プロセッサを有している。
制御ユニット20には、更に、各被検査物Wについての外観可視画像およびX線画像を同期させて入力するよう、進入検知センサ13からの検知信号に応じてCCDカメラ16からの外観可視画像と画像処理部24からのX線画像との入力タイミングを調整する同期入力部31と、同期入力部31を介して入力した外観可視画像およびX線画像をディジタル合成し、これらを複数の構成画像として単一に結合した画像を作成する画像合成部32と、画像合成部32で作成された合成画像を蓄積記録する蓄積記録部33とが設けられている。
【0034】
ここで、同期入力部31および画像合成部32は、進入検知センサ13からの検知信号をトリガーとして、各被検査物WについてのCCDカメラ16からの外観可視画像と画像処理部24からのX線画像とを所定形式の単一画像ファイル(ミクスチャ画像ファイル)に結合した合成検査画像を作成する合成検査画像作成手段30を構成しており、蓄積記録部33は、この合成検査画像作成手段30で合成された各被検査物Wの合成検査画像を、被検査物Wの固有識別情報に対応するファイル名で識別および読出し可能に蓄積記録する蓄積記録手段となっている。
【0035】
蓄積記録部33は、具体的には、例えば内蔵のハードディスクドライブに、例えばリムーバブルなディスク状記録媒体等への格納に適したJPEG等の画像ファイル形式で、合成検査画像の画像ファイルを記録保存することができる。蓄積記録部33に、リムーバブルな記録媒体、例えばDVD(Digital Versatile Disk)や半導体メモリカード等に書込みおよび読出しが可能なディスクドライブやリーダライタを装備できるのは勿論である。もっとも、比較的大容量のストレージデバイスを内蔵する場合には、データ通信ポートが付設されているだけでもよい。
【0036】
蓄積記録部33は、また、複数の被検査物Wの合成検査画像を、その検査時刻に被検査物Wのシリアル番号を関連付けた時刻情報テーブルと共に記録保存するようになっており、蓄積情報を検査時刻順に読み出したり検査時刻を指定して特定の合成検査画像を読み出したりすることができ、あるいは更に、シリアル番号および製造時刻等により特定される所定の製造期間やロット単位でグループ化をなす所定の手順情報に従って蓄積情報を読み出すことができる。ここでの記録情報の検索用のコードは、製造時間とシリアル番号を組み合わせて作成され、例えば2005年12月1日8時の製造時間で製造された1234番目の被検査物Wの合成検査画像であれば、051201081234といった形で特定される。
【0037】
図4に示すように、読み出した合成検査画像M1〜M3は、例えばシリアル番号に対応するシーケンシャルな見出し番号Nおよび日時表示(時刻を含んでいてもよい)Tを含む目視によるファイル識別用の情報画像欄F1と、画像処理部24からのX線画像Pxを含む検査結果表示画面の検査結果画像欄F2と、被検査物Wの外観可視画像Paを示す外観画像欄F3とで構成されている。さらに、検査結果画像欄F2は、X線画像Pxを作成した検査時の検査値情報Piを表示する表示部F2aを含んでいる。
【0038】
ここにいう検査値情報Piとは、各被検査物Wの検査条件又は検査結果に関連する情報であり、例えば画素数(又は画素ピッチ)、異物判定に用いた閾値、異物有無の判定結果を表わす判定値(OK/NG)、検査時にX検査画像と共に画面表示された測定値のすべて又はいずれか等である。
【0039】
すなわち、画像処理部24は、被検査物Wの検査毎に、異物判定部23から検査値情報を入力し、その入力情報に対応する目視可能な検査値画像を生成する検査値画像生成手段ともなっており、生成した検査値画像Piを検査値情報表示部F2aに組み込んだ検査結果画像を作成するようになっている。そして、合成検査画像作成手段30は、各被検査物Wについて、外観可視画像と、画像処理部24で生成された検査結果画像(画像Pi,Pxを含む)とを、単一の合成検査画像に結合するようになっている。
【0040】
一方、プリンタ12は、制御ユニット20と協働し、被検査物W毎に目視可能な固有識別情報としてのシリアル番号、又はそれに対応する被検査物W毎の複数の識別情報(例えば賞味期限、製造番号、ロット番号、製造時刻等のいずれか複数で固有識別情報を構成する識別子)を所定条件で変化させながら順次付加する識別情報付加手段となっており、合成検査画像作成手段30は、この識別情報付加手段によって被検査物Wに固有識別情報が付加された時の時刻情報に基づいて、所定のタイミングで上述の合成機能を発揮するようになっている。
【0041】
さらに、蓄積記録部33は、識別情報付加手段としてのプリンタ12により被検査物Wに固有識別情報が付加された時の時刻情報に基づいて、複数の被検査物Wについての合成検査画像を一定時間間隔の時間帯毎の検査データ群としてグループ化し、そのグループ化した複数の被検査物Wの合成検査画像を、シリアル番号等の固有識別情報(一部が読み取れない場合は残りの部分の情報)に基づいてグループ間で識別し、対応するグループの複数の合成検査画像を参照しかつ特定固有識別情報を持つ合成検査画像を目視選別することができるように、すなわち最終的には外観可視情報に基づき目視判断できるよう表示するようになっている。
【0042】
なお、図1、図2において、蓄積記録部33には少なくともディスプレイ51およびキーボード52を有するコンピュータ50が、公知のネットワーク接続技術、例えばイーサネット(登録商標)接続(無線LAN等でもよい)によりデータ通信可能に接続されており、コンピュータ50からキーボード52の操作に基づいて蓄積記録部33にアクセスし、蓄積記録部33内の蓄積情報を、シリアル番号(一部ワイルドカード(任意の文字を意味する記号)を含んでもよい)、あるいは検査期間や被検査物Wの品種等を指定して、抽出し、そのデータを蓄積記録部33からコンピュータ50に出力させることができるようになっている。また、その抽出情報には、その中に含まれるシリアル番号とその印刷時刻とを対応付けた印刷時刻情報テーブルが添付され、上述した検索コードによる検索が蓄積記録部33側(装置本体)とコンピュータ50側でそれぞれ実行可能となっている。勿論、抽出情報にそのようなシリアル番号および時刻情報を画像ファイル名等の形で入れ込んでおいてもよい。
【0043】
次に、動作について説明する。
【0044】
図5は、本実施形態における合成検査画像の蓄積および検索の手順を示すフローチャートであり、同図(a)は検査結果の蓄積記録を行なうための処理手順を、同図(b)は蓄積記録された情報から特定の固有識別情報を持つ検査データを抽出する際の手順を、それぞれ示している。
【0045】
まず、図5(a)においては、まず、搬送ベルト11の上流側において、被検査物Wにシリアル番号(又は他の識別子)が印刷され、この印刷を行なった時刻の情報と関連付けて、印刷済みの最新のシリアル番号が印刷時刻情報テーブルに書き込まれる(ステップS11)。
【0046】
次いで、被検査物Wが検査領域に達するまでの搬送時間だけ待機し(ステップS12)、進入検知センサ13により被検査物Wの検査領域への進入が確認されると(ステップS13)、CCDカメラ16によって被検査物Wの外観可視画像Paが撮像され(ステップS14)、これとほぼ同時に、X線ラインセンサ15によるX線透過量の検知が開始され、X線ラインセンサ15によるそのX線透過量の検知情報に基づいて、異物判定部23での異物混入判定が実行されるとともに、画像処理部24において、X線画像Pxの作成がなされ、更に、削検査値情報Piを含む検査結果画像の作成が実行される(ステップS15)。すなわち、被検査物W毎の検査が実行される。
【0047】
作成された外観可視画像Paおよび検査結果画像は、同期入力部31により、進入検知センサ13からの検知信号をトリガーとして、同一のシリアル番号を持つもの同士が同期して画像合成部32に取り込まれるように転送タイミングを調整され、画像合成部32にて、次いで、これらの画像を複数の構成画像として単一に結合した合成検査画像がディジタル合成により作成される(ステップS16)。
【0048】
次いで、この合成検査画像が、プリンタ12でのシリアル番号の印刷時刻情報と関連つけて、蓄積記録部33により蓄積記録される(ステップS17)。
一方、この間、プリンタ12により被検査物Wにシリアル番号が印刷される度に上述した一連の処理が順次並行して実行され、被検査物W毎の合成検査画像が蓄積記録部33に順次蓄積されることになる(ステップS11〜S17)。
【0049】
この状態においては、蓄積記録部33に蓄積された被検査物W毎の合成検査画像は、リムーバブルな記録媒体への格納に適した圧縮画像ファイル形式(例えばJPEG)となっており、かつ、シリアル番号等の固有識別情報が印刷された時刻の情報に対応付けて記録保存されている。
【0050】
本実施形態においては、上述のようにして、蓄積記録部33には被検査物W毎の合成検査画像が短い時間間隔(例えば1秒の数分の一の時間から数秒の時間間隔)でも順次確実に蓄積されることになる。すなわち、従来のようにバーコード読み取り情報を基準としないので、その誤読といった問題は生じない。
また、蓄積記録部33にネットワーク接続された外部のコンピュータ50から蓄積記録部33にアクセスし、蓄積記録部33内の蓄積情報を適宜コンピュータ50に出力させることができ、しかも、そのデータはDVD等のリムーバブルなディスク状記録媒体あるいは公知の各種のストレージデバイスに記録保存することができる。
【0051】
したがって、製品の検査時の状態について後日問合せがあったような場合には、比較的新しいものであれば蓄積記録部33内の蓄積情報から、古いものであれば、他の記憶媒体に記録保存された蓄積情報の中から、容易に検索し、抽出することができる。
【0052】
すなわち、図5(b)に概略手順を示すように、問合せのあった製品のシリアル番号を入力すると(ステップS21)、抽出情報に付随する印刷時刻情報テーブルを参照することで、大量に製造された被検査物Wであっても、その中から特定の被検査物Wの検査データを含むある時間帯の合成検査画像群の蓄積情報が読み出され(ステップS22)、表示部25に例えば同時にあるいはスクロール可能に表示される(ステップS23)。そして、その合成検査画像群を参照し、特定のシリアル番号や固有識別情報を持つ製品を表示画像群の中から選択して、あるいは看過された外観上の不具合を持つ製品を目視で探し出すことができる(ステップS24)。したがって、そのX線画像、検査時の外観可視画像および検査値情報をそれぞれ参照することで、検査時の状態を客観的に評価可能となる。
【0053】
ところで、被検査物Wが製品として最終消費者やエンドユーザまで渡る間に、その製品が輸送その他の取り扱い中に傷付く等してしまい、被検査物Wの目視可能な固有識別情報が多少読み取り難くなる場合が生じ得る。
本実施形態においては、このような場合でも、判読可能な固有識別情報を基に、判読不能な部分は例えばワイルドカードにして検索入力を行い(ステップS21)、被検査物Wの検査データを含む蓋然性荷の高い時間帯の合成検査画像群の蓄積情報を読み出し(ステップS22)、表示部25に合成検査画像群を表示させて(ステップS23)、外観可視画像を基に被検査物Wを特定することで(ステップS24)、その検査データを確実に抽出することが可能となる。
【0054】
すなわち、蓄積記録部33で、被検査物Wに固有識別情報を付加した時刻の情報に基づいて、複数の被検査物Wについての合成検査画像がグループ化して蓄積され、グループ化した複数の被検査物Wの合成検査画像群は、目視可能な固有識別情報の一部又は全部に対応する検索入力に基づいてグループ間で識別できるので、対応するグループの複数の合成検査画像群を容易に参照することができる。したがって、固有識別情報が判読し難いような場合でも、それを基に蓋然性の高いグループを特定し、更に固有識別情報のみならず個々の外観可視情報を総合して、特定の固有識別情報を持つ被検査物を容易に特定することができることになる。
【0055】
また、各被検査物Wの判定閾値やX線画像の画素数、判定結果(OK/NG)等の検査値情報が、固有識別情報を含む外観可視画像およびX線画像と共に、単一画像ファイルに結合されているので、より詳細な検査データが抽出できる。
【0056】
さらに、被検査物Wの外観可視画像が、シリアル番号等の固有識別情報を含む被検査物Wの少なくとも一部を撮影した画像であるので、合成検査画像を参照することで、被検査物Wの固有識別情報が視覚的に確実に把握可能となり、検査データの確実な抽出が可能でかつ容易となる。
【0057】
また、本実施形態では、被検査物Wに固有識別情報を付加した時刻情報若しくは手順情報に基づいて、固有識別情報を含む外観可視画像とX線画像とを被検査物毎に関連付けた合成検査画像が作成されるので、搬送ピッチが狭く、単位時間当たりに多数の被検査物が検査される場合、例えば秒単位の同一時刻内に複数の被検査物が検査されるような場合でも、外観可視画像と固有識別情報が確実に対応した被検査物毎の合成検査画像が確実に作成されることになる。
【0058】
また、本実施形態では、被検査物Wの外観可視画像が、被検査物Wの全体像を撮影した画像であるので、固有識別情報の位置が多少ずれていたり、他の情報との組合せで固有識別情報となる簡単で明確な識別情報等を採用することができる。
【0059】
なお、上述の実施形態においては、被検査物Wの外観可視画像が、固有識別情報を視認できる所定方向からの被検査物の少なくとも一部の撮影画像となっていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記所定方向とは異なる他方向からの撮影画像を含む複数の画像であってもよい。そのようにすれば、例えば、固有識別情報が分散配置された複数の識別子等で構成されていてもよいし、合成検査画像中により詳細な外観可視画像が含まれることになり、より詳細な検査データが抽出可能になる。
【0060】
また、上述の実施形態においては、検査値情報PiをX線画像Pxおよび外観可視画像Paと一体に結合した合成検査画像を作成するものとしたが、検査値情報Piが専ら目視による選別・割り出しに寄与しない情報である場合が多いので、この検査値情報PiをX線画像Pxおよび外観可視画像Paを結合した合成検査画像とは別個のデータファイルとし、被検査物Wの固有識別情報で合成検査画像と対応付けられた管理データとすることもでき、このようにしても、本発明の効果が十分に期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、固有識別情報の誤読という不具合が無く、エンドユーザに渡るまでの間に被検査物の目視可能な固有識別情報が読み取り難くなった場合でも、固有識別情報を含む可視画像を基に、被検査物の検査データを蓄積記録情報から確実に特定することができ、抽出することができるX線異物検出装置を提供することができるという効果を奏するものであり、搬送中の被検査物に向けてX線を照射し、その被検査物のX線透過量に基づいて被検査物中の異物の有無を判定するX線異物検出装置、特に、検査済み製品の検査データを、後日、蓄積情報から特定し抽出できるようにしたX線異物検出装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の概略正面図を含むシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の要部概略平面図を含むシステム構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の制御ユニットの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の蓄積記録部における蓄積情報の一部抽出画像の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置における合成検査画像の蓄積記録および検索読出し処理手順を示すフローチャートで、(a)はその合成検査画像の蓄積記録の処理手順を、(b)はその蓄積情報からの検索読出しの処理手順を、それぞれ示している。
【符号の説明】
【0063】
10 X線異物検出装置
11 搬送ベルト
12 プリンタ(識別情報付加手段)
13 進入検知センサ
14 X線源(X線発生手段)
15 X線ラインセンサ(X線検出手段)
16 CCDカメラ(外観可視画像の撮像手段)
20 制御ユニット(識別情報付加手段)
22 透過量データメモリ
23 異物判定部
24 画像処理部(X線画像の作成手段、検査値画像作成手段)
25 表示部
30 合成検査画像作成手段
31 同期入力部
32 画像合成部
33 蓄積記録部(蓄積記録手段)
50 外部のコンピュータ
Px X線画像
Pa 外観可視画像
Pi 検査値情報画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)の各部X線透過量に基づいて該被検査物中における異物の有無を判定する検査を実行するとともに、前記X線透過量に対応する濃度のX線画像(Px)を作成するX線異物検出装置であって、
前記被検査物の検査毎に、各被検査物の目視可能な固有識別情報を含む検査時の外観可視画像(Pa)と該被検査物の検査で作成される前記X線画像とを単一画像ファイルに結合した合成検査画像(M1、M2、M3)を作成する合成検査画像作成手段(30)と、
該合成検査画像作成手段で合成された各被検査物の合成検査画像を、該被検査物の固有識別情報に対応するファイル名で識別および読出し可能に蓄積記録する蓄積記録手段(33)と、を備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記被検査物の検査毎に、各被検査物の検査条件又は検査結果に関連する目視可能な検査値画像(Pi)を生成する検査値画像生成手段(24)を設け、
各被検査物について、前記外観可視画像および前記X線画像と、前記検査値画像生成手段で生成された検査値画像とを、前記合成検査画像作成手段により単一の合成検査画像に結合するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記外観可視画像が、前記目視可能な固有識別情報を含む前記被検査物の少なくとも一部の外観を撮影した画像であることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
前記外観可視画像が、前記被検査物の全体像を撮影した画像であることを特徴とする請求項3に記載のX線異物検出装置。
【請求項5】
前記外観可視画像が、前記目視可能な固有識別情報の視認方向からの前記被検査物の撮影画像と、該所定方向とは異なる他方向からの撮影画像とを含む複数の画像であることを特徴とする請求項3に記載のX線異物検出装置。
【請求項6】
前記被検査物毎に前記目視可能な固有識別情報を所定条件で変化させながら順次付加する識別情報付加手段(12)を設け、
前記合成検査画像作成手段が、前記識別情報付加手段によって前記被検査物に前記固有識別情報を付加した時刻情報に基づいて、前記目視可能な固有識別情報を含む検査時の外観可視画像と前記X線画像とを被検査物毎に関連付け、前記合成検査画像を作成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のX線異物検出装置。
【請求項7】
前記被検査物毎に前記目視可能な固有識別情報を所定条件で変化させながら順次付加する識別情報付加手段を設け、
前記蓄積記録手段が、前記識別情報付加手段によって前記被検査物に前記固有識別情報を付加した時刻情報若しくは手順情報に基づいて複数の被検査物についての前記合成検査画像をグループ化し、該グループ化した複数の被検査物の合成検査画像を前記目視可能な固有識別情報の一部又は全部に基づいてグループ間で識別し、対応するグループの複数の前記合成検査画像を参照することで、特定の固有識別情報を持つ合成検査画像を特定できるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−208098(P2006−208098A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18567(P2005−18567)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】