説明

X線高電圧装置及びX線診断装置

【課題】高電圧回路において故障に至らない放電が発生した場合に、誤って故障として装置を停止させずに、放電が終了するまで待機するX線診断装置を提供する。
【解決手段】被検体へX線を曝射するX線管001と、パルスを発生するインバータ101と、高電圧を発生する高圧トランス102と、高圧トランス102が発生する高電圧を計測する電圧計103と、計測された電圧を基に放電の発生及び放電の終了を検出する放電検出部104と、放電の発生を受けてカウントを開始し、放電が発生している時間を計測するタイマー106と、高圧トランス102に対して、X線管001へ高電圧を印加させるとともに、放電が発生している時間が予め記憶している限界時間よりも長い場合、インバータ101の動作を停止させる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管に高電圧をかけることでX線を被検体に向けて照射するX線高電圧装置、及びその照射されたX線を用いて被検体の透視画像を表示・撮影するX線診断装置に係る。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、患者の外部からX線を照射し、患者を透過したX線をX線検出器などにより捕らえて、その透過線量に比例した陰影像である透視画像を生成する。そして、医師や検査技師等の操作者(以下では、単に「操作者」という。)は、X線診断装置で生成される透視画像を観察することで、被検体の診断を行う。
【0003】
X線診断装置のX線発生部は、高電圧の管電圧(±75KV程度)を発生するX線高電圧装置と、このX線高電圧装置によって発生した高電圧を供給することによりX線を発生するX線管とによって構成されている。ここで、管電圧とはX線管に印加される電圧のことである。
【0004】
このX線高電圧装置において、装置が故障に至っていない場合でもX線管や高圧トランスなどの高電圧回路で放電が発生する場合がある。このような放電はX線管の軽度の劣化や高圧トランスに注入されている油の流動性によって発生する場合がある。そして、透視中に前述の放電が発生した場合、X線管の管電圧が低下して適切な輝度の透視画像を生成することが困難になってしまう。
【0005】
そこで従来、故障に至っていない場合でも上述の放電が発生した場合、X線高電圧装置にエラーを発生させて該X線高電圧装置を一時的に停止させている。しかし、X線高電圧装置を停止させてしまうと、画像の生成が止まってしまうため、操作者は一時的に画像観察を中断しなければならない。これでは、X線画像診断に多大な時間がかかってしまい、継続的な手技が行えなくなり、診断が非効率になるとともに、患者にも大きな負担を強いることになる。
【0006】
そこで、高電圧周りの異常を検出し通知することにより、故障でX線高電圧装置が停止する前に検出された異常に対処することで、X線高電圧装置の停止を未然に防ぐ技術(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−100498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、故障に至っていない状態のX線診断装置を使用しているときに高電圧回路において放電が発生した場合、従来と同様にX線高電圧装置を一時的に停止する必要がある。そのため、そのような場合には、やはり継続的な手技が行えず診断の効率の低下や患者の負担を招いてしまう。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高電圧回路において故障に至らない放電が発生した場合に、誤って故障として装置を停止させずに、放電が終了するまで待機するX線診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のX線高電圧装置は、被検体へX線を曝射するX線管と、パルスを発生し、該パルスによって高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段が発生する高電圧を計測する電圧計と、前記計測された電圧を基に放電の発生及び放電の終了を検出する放電検出手段と、前記放電の発生を受けてカウントを開始し、前記放電が発生している時間を計測するタイマーと、前記高電圧発生手段に対して、前記X線管へ前記高電圧を印加させるとともに、前記放電が発生している時間が予め記憶している限界時間よりも長い場合、前記高電圧発生手段の動作を停止させる制御部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項7に記載のX線診断装置は、被検体へX線を曝射するX線管と、パルスを発生し、該パルスによって高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段が出力する電圧を計測する電圧計と、前記計測された電圧を基に放電の発生及び放電の終了を検出する放電検出手段と、前記放電の発生を受けてカウントを開始し、前記放電が発生している時間を計測するタイマーと、前記高電圧発生手段に対して、前記X線管へ前記高電圧を印加させるとともに、前記放電が発生している時間が予め記憶している限界時間よりも長い場合、前記高電圧発生手段の動作を停止させる制御部と、被検体を透過した前記X線を検出するX線検出手段と、前記検出されたX線を基に透視画像を生成する画像生成手段と、前記画像データに基づく画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のX線高電圧装置又は請求項7に記載のX線診断装置は、高電圧回路において放電が発生しても、一定の時間内では高電圧発生手段を停止させず、その時間内のX線データを画像生成に使用しない構成である。これにより、故障には至っていない放電が発生しても、操作者は手技を中断することなく継続して行うことが可能となる。したがって、本発明に係るX線高電圧装置又はX線診断装置は、診断の効率の向上や患者の負担の軽減に寄与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係るX線診断装置について説明する。図1は本実施形態に係るX線診断装置の機能を表すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線診断装置は、X線高電圧装置100、X線管001、X線検出部002、画像生成部003、表示制御部004、表示部005及び入力部006を有するユーザインタフェース007、並びに記憶部008を備えている。
【0014】
X線高電圧装置100は、インバータ101、高圧トランス102、放電検出部104、制御部105、タイマー106、及び抵抗器107を有している。
【0015】
インバータ101は、制御部105によってパルス発生のオンとオフのタイミングなどを制御される。このパルスにおいて、パルス発生区間/パルス周期の式で表わされる値が「デューティ(Duty)」である。インバータ101は、制御部105からの指示に基づいて発生したパルスを駆動パルスとして高圧トランス102に送信する。また、インバータ101は、内部に電圧計103を有する。ただし、この電圧計103はインバータ101の外部に配置されてもよい。
【0016】
電圧計103は、後述する抵抗器107で分圧された高圧トランス102の出力電圧を計測する。電圧計103は、計測した出力電圧を放電検出部104へ出力する。
【0017】
高圧トランス102は、高圧整流器を備えている。高圧トランス102は、インバータ101から受信した駆動パルスを昇圧する。さらに、高圧トランス102は、昇圧した駆動パルスを高電圧整流器で直流に変換して最大±75kVの管電圧をX線管001の陽極・正極間に印加する。
【0018】
このインバータ101及び高圧トランス102が本発明における「高電圧発生手段」にあたる。
【0019】
抵抗器107は、高圧トランス102からの出力電圧を分圧して取り出すための直列接続の抵抗器である。抵抗器107で分圧された電圧はインバータ101内に設けられた電圧計103へ出力する。本実施形態では、抵抗器107は、100,000:10の割合で高圧トランス102からの出力電圧を分圧する。例えば、高圧トランス102から出力される実際の電圧が75kVであれば7.5Vに分圧される。ここで、この分圧の割合は電圧の計測などに使用し易い値に分圧するものであれば他の値でもよく、使用環境に合わせて設定することが好ましい。
【0020】
放電検出部104は、CPU及びメモリ等の記憶領域を有している。そして、放電検出部104は、高圧トランス102の出力電圧の低下による放電の検出のための出力電圧の閾値を内部の記憶領域に記憶している。この閾値は通常のX線照射時に発生する出力電力の低下に比べて低い値である。したがって、この閾値によって通常のX線照射による出力電力の低下か放電による出力電圧の低下かが区別される。ここで、電圧計103から放電検出部104に入力される電圧の値は、分圧された後の電圧のため実際の出力よりも小さい電圧の値である。そこで、実際には放電検出部104は、入力された電圧の値を実際の高圧トランス102における出力値に換算して計算する。そこで、以下では説明の都合上、換算した後の電圧の値で説明する。本実施形態では、放電検出部104は最大の管電圧±75kVの50%である37.5kVを閾値として予め記憶領域に記憶している。経験的に通常のX線照射では最大の管電圧の50%の値を下回ることは少ないため、本実施形態では閾値として50%の値を使用した。
【0021】
放電検出部104は、インバータ101内の電圧計103が計測した電圧の値の入力を受ける。放電検出部104は、入力された電圧の値が37.5kVを下回ったかを検出する。これが本発明における「放電の検出」にあたる。放電検出部104は、入力された電圧の値が37.5kVを下回った場合には、制御部105及びタイマー106へ放電発生の信号を出力する。その後、放電検出部104は、入力された電圧の値が37.5kV以上になった場合、制御部105及びタイマー106へ放電終了の信号を出力する。ここで、この放電終了とは、高圧トランス102からの出力電圧の回復を意味する。この放電検出部104が本発明における「放電検出手段」にあたる。
【0022】
タイマー106は、放電検出部104からの放電発生の信号の入力を受けて、時間のカウントを開始する。そして、タイマー106はカウントしている放電が発生している時間(以下では、単に「放電時間」と言う。)を制御部105へ出力する。その後、タイマー106は、放電検出部104から放電終了の信号の入力を受けて、放電時間のカウントを停止する。カウントを停止した後、タイマー106はカウントをリセットする。
【0023】
制御部105は、CPU及びメモリ等の記憶部を有している。制御部105は、故障による低電圧と判断するための時間の閾値である限界時間を自己の記憶部に記憶している。この限界時間の値は機器によって異なるが経験的に決めることが好ましい。この場合の例として本実施形態では、制御部105は、限界時間を50msecと記憶している。ここで、この限界時間は経験的に低電圧がその時間継続すれば故障と判断できる値であればよく、一般的には数十msecであることが好ましい。
【0024】
制御部105は、放電検出部104から放電発生の入力を受けて、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電検出の信号を出力する。
【0025】
制御部105は、タイマー106がカウントしている放電時間の入力を受信する。そして、制御部105は、タイマー106から入力される放電時間と予め記憶している限界時間を比較する。
【0026】
放電時間が限界時間よりも短い場合、すなわちタイマー106から入力される放電時間が限界時間を超える前に制御部105が放電検出部104から放電の終了の信号の入力を受けた場合、制御部105は、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電終了の信号を出力する。このとき、制御部105は、自己の記憶部に放電発生の情報を記憶する。
【0027】
さらに、放電終了後、すなわち高圧トランス102の出力電圧の回復後、入力部006から透視画像の生成の終了の信号を受信すると、制御部105は、自己の記憶部に放電発生の情報があるか否かを確認する。放電発生の情報がある場合には、制御部105は表示制御部004に対し、放電が発生した旨のメッセージを表示部005に表示するよう命令を送信する。この透視画像の生成の終了の信号は、例えば操作者が入力部006の一つである透視スイッチを離すことで送信される。ここで、本実施形態では、対処の必要がある場合には操作者が対処できるように放電が発生したことを操作者に通知しているが、この通知はなくても本発明に係るX線診断装置は動作可能である。
【0028】
放電時間が限界時間よりも長い場合、すなわち制御部105が記憶している限界時間を超えても放電検出部104から放電の終了の信号の入力がなされない場合、制御部105はインバータ101の動作を停止させる。さらに、制御部105は、表示制御部004に警告の表示命令を送信する。ここで、本実施形態では故障の発生を操作者が迅速に把握できるように警告を表示部005に表示させるが、この警告の通知はなくても本発明に係るX線診断装置は動作可能である。この制御部105が本発明における「制御手段」にあたる。
【0029】
X線管001は、X線高電圧装置100より最大±75kV(中性点方式)の管電圧が印加される。X線管001は、印加された管電圧により、X線を被検体に向けて曝射する。
【0030】
X線検出部002は、被検体を透過しX線検出部002に入射したX線を検出する。そして、X線検出部002は、入射したX線の強度に応じた大きさのX線検出信号に変換して該X線検出信号を画像生成部003へ出力する。例えば、X線検出部002は、17インチ角の直接変換方式のフラットパネルディテクタ(FPD)などが用いられる。このX線検出部002が本発明における「X線検出手段」にあたる。
【0031】
さらに、X線検出部002は、制御部105から放電検出の信号の入力を受けて、X線検出を停止する。ここで、X線検出の停止は検出したX線の信号を破棄するなどにより行われる。(あるいは、X線検出信号に無効を示すフラグなどを立てることにより、それ以降のX線検出信号を無効とする。)その後、X線検出部002は、制御部105から放電終了の信号の入力を受けて、X線検出を再開する。(あるいは、X線検出信号に有効を示すフラグなどを立てることにより、それ以降のX線検出信号を有効とする。)
【0032】
画像生成部003は、X線検出部002より入力されたX線検出信号をデジタル信号に変換する。そして、画像生成部003は、デジタル化されたX線検出信号に対し、エッジ強調やフィルタリング等の必要な画像処理を施すことで透視画像を生成する。画像生成部003は、生成した透視画像のデータを表示制御部004へ出力する。さらに、画像生成部003は、記憶部008に生成した透視画像を記憶させていく。この画像生成部003が本発明における「画像生成手段」にあたる。
【0033】
さらに、画像生成部003は、制御部105から放電検出の信号の入力を受けて、透視画像の生成を停止する。その後、画像生成部003は、制御部105から放電終了の信号の入力を受けて、透視画像の生成を再開する。
【0034】
表示制御部004は、画像生成部003から入力された透視画像を表示部005に表示させる。表示部005は例えばモニタなどである。この表示制御部004が本発明における「表示制御手段」にあたる。
【0035】
さらに、表示制御部004は、制御部105から放電検出の信号の入力を受けて、記憶部008に記憶されている透視画像のうち最も新しい画像(以下では、これを「最終画像」と言う。)を取得する。そして、表示制御部004は、取得した最終画像を表示部005に表示させる。その後、表示制御部004は、制御部105から放電終了の信号の入力を受けて、表示部005に表示させている最終画像の表示を停止し、画像生成部003から送られてきた透視画像を表示する。
【0036】
次に、図2を参照して本実施形態に係るX線診断装置における放電発生時の動作について説明する。図2は本実施形態に係るX線診断装置における放電発生時の動作を表すフローチャートの図である。
【0037】
ステップS001:X線高電圧装置100は、パルスを発生し、X線管001に高電圧の管電圧を印加する。X線管001はX線を被検体に向けて曝射する。X線検出部002は、被検体を透過したX線を検出しX線検出信号を生成する。画像生成部003はX線検出信号を基に透視画像を生成する。さらに、画像生成部003は生成した透視画像を記憶部008に保存する。表示制御部004は表示部005に画像生成部003が生成した透視画像を表示させる。
【0038】
ステップS002:放電検出部104は、電圧計103が計測した高圧トランス102の出力電圧と予め記憶している電圧の閾値を比較する。高圧トランス102の出力電圧が閾値を下回った場合、ステップS006に進む。また、高圧トランス102の出力電圧が閾値以上の場合、ステップS003に進む。
【0039】
ステップS003:制御部105は、ユーザインタフェース007に含まれる入力部006から画像生成終了の信号の入力を受けたか否かを判断する。画像生成終了の信号の入力を受けていない場合は、ステップS001に進む。また、画像生成終了の信号の入力を受けている場合には、ステップS004に進む。
【0040】
ステップS004:制御部105は、自己の記憶部を参照し画像生成中に放電が発生したか否かを判断する。放電が発生している場合は、ステップS005に進む。また、放電が発生していない場合には、透視画像の生成を終了する。
【0041】
ステップS005:表示制御部004は、制御部105からの放電発生の警告の表示命令を受信して、放電発生の警告を表示部005に表示させる。
【0042】
ステップS006:タイマー106は、放電検出部104からの放電発生の信号の入力を受けて、放電時間のカウントを開始する。
【0043】
ステップS007:制御部105は、放電検出部104からの放電発生の信号の入力を受けて、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電検出の信号を出力する。
【0044】
ステップS008:X線検出部002は、制御部105からの放電検出の信号の入力を受けて、X線検出を停止する。
【0045】
ステップS009:画像生成部003は、制御部105から放電検出の信号の入力を受けて、画像生成を停止する。
【0046】
ステップS010:画像生成部003は、制御部105から放電検出の信号の入力を受けて、記憶部008から画像生成部003が生成した画像のうち最新の画像である最終画像を取得し、該最終画像を表示部005に表示させる。
【0047】
ステップS011:制御部105は、タイマー106から入力される放電時間と予め記憶している限界時間とを比較する。放電時間が限界時間を超えた場合、故障と判断してステップS012に進む。放電時間が限界時間を超える前に、制御部105が放電検出部104から放電の終了の信号の入力を受けた場合、ステップS014に進む。
【0048】
ステップS012:ステップS011で故障と判断した場合は、制御部105は、インバータ101を停止させる。
【0049】
ステップS013:制御部105は、故障が発生した旨の警告の表示命令を表示制御部004へ送信する。表示制御部004は、該命令を受信して故障発生の通知を表示部005に表示させる。
【0050】
ステップS014:放電検出部104から放電の終了の信号の入力を受けて、タイマー106は放電時間のカウントを停止する。
【0051】
ステップS015:タイマー106は、放電時間のカウントをリセットする。
【0052】
ステップS016:制御部105は、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電終了の信号を出力する。
【0053】
ステップS017:X線検出部002は、制御部105からの放電終了の信号の入力を受けて、X線検出を再開する。
【0054】
ステップS018:画像生成部003は、制御部105からの放電終了の信号の入力を受けて、画像生成を再開する。
【0055】
ステップS019:表示制御部004は、制御部105からの放電終了の信号の入力を受けて、表示部005から最終画像の表示を停止し、さらに表示部005に画像生成部003から入力された透視画像を表示させる。
【0056】
ここで、本実施形態では、無駄な動作省きエネルギーの消費を抑えるため、放電が発生した時にX線検出部002におけるX線の検出及び画像生成部003の動作を停止している。ただし、これらの両方もしくはいずれかが動作していてもよく、その場合には、放電発生中に生成されている画像を表示部005に表示せずに、放電発生前の最後に生成された透視画像である最終画像を表示部005に表示させる構成にしておけばよい。
【0057】
以上で説明したように、本実施形態に係るX線診断装置では、高電圧回路で放電が発生しても一定時間で高圧トランス102の出力電圧が回復する放電であれば、インバータ101を停止させず、放電終了後自動的に画像生成を再開することができる。これにより、故障に至らないような放電の場合には、操作者は手技を継続することが可能となり、診断の効率を向上させることができるとともに、患者の負担を軽減することも可能となる。
【0058】
〔第2の実施形態〕
以下、この発明の第2の実施形態に係るX線診断装置について説明する。本実施形態に係るX線診断装置は、第1の実施形態と異なり、放電発生後一定の時間内では放電が終了(高圧トランスの出力電圧が回復)しても透視画像の生成を再開させない構成である。そこで、以下の説明では、放電発生後の制御部の動作について主に説明する。本実施形態に係るX線診断装置の構成も第1の実施形態と同様に図1のブロック図であらわされる。そして、本実施形態において、特に説明なく第1の実施形態と同一の符合が付されている機能部は同一の機能を有するものである。
【0059】
本実施形態に係るX線診断装置においても、透視画像の生成に関する構成は第1の実施形態と同様である。
【0060】
放電検出部104は、電圧計103から入力される電圧の値と、予め記憶している電圧の閾値とを比較する。放電検出部104は入力された電圧の値が閾値を下回った場合、制御部105及びタイマー106に放電発生の信号を入力する。また、放電検出部104は、いったん閾値を下回った電圧が閾値以上の値になった場合、すなわち高圧トランス102の出力電圧が回復した場合、制御部105及びタイマー106に放電の終了の信号を入力する。
【0061】
制御部105は、予め限界時間を記憶している。さらに、制御部105は、限界時間より短い時間である待機時間をあらかじめ記憶している。本実施形態では、制御部105は限界時間を50msec、待機時間を20msecとして記憶している。ここで、この待機時間は限界時間より短い値でかつ限界時間までに放電の終了を検知する余裕のある時間であれば他の値でもよく、使用環境に合わせて設定することが好ましい。
【0062】
制御部105は、放電検出部104から放電発生の信号の入力を受けると、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電検出の信号を出力する。
【0063】
制御部105は、タイマー106がカウントしている放電時間の入力を受ける。制御部105は、入力された放電時間と待機時間とを比較し、さらに放電時間と限界時間とを比較する。
【0064】
制御部105は、待機時間前に放電検出部104より放電の終了の信号の入力がなされても、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に対する放電終了の信号の出力を行わずに待機する。
【0065】
制御部105は、待機時間後でかつ限界時間前に放電検出部104より放電終了の信号の入力がなされた場合、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電終了の信号を出力する。
【0066】
制御部105は、限界時間内に放電検出部104より放電の終了の信号の入力がなされなかった場合、インバータ101を停止する。
【0067】
X線検出部002及び画像生成部003は、制御部105からの放電検出の信号の入力を受けて、動作を停止する。また、X線検出部002及び画像生成部003は、制御部105からの放電終了の信号の入力を受けて、動作を再開する。
【0068】
表示制御部004は、制御部105からの放電検出の信号の入力を受けて、記憶部008から最終画像を取得し表示部005に表示させる。また、表示制御部004は、制御部105からの放電終了の信号の入力を受けて、表示部005から最終画像を停止し、さらに表示部005に画像生成部003から入力された透視画像を表示させる。
【0069】
以上のX線高電圧装置100の動作を図3を参照して説明する。図3は本実施形態に係るX線診断装置における出力電圧の変化のグラフの図である。図3のグラフは縦軸に出力電圧、横軸に時間を表している。この説明ではX線管001に±75kVの管電圧を印加するものとして説明する。また、この説明における出力電圧の閾値は37.5kVである。
【0070】
最大電圧の75kVになった後、電圧が37.5kVを下回った時、すなわち図3における点301で表わされる時間、に放電検出部104は放電を検知し、制御部105及びタイマー106に放電発生の信号を入力する。点301の時間から待機時間の20mmsecの間、制御部105は動作再開の命令などを出さずに待機する。すなわち、点302の時間まで制御部105は待機する。その間図3のように閾値を出力電圧が上回り放電検出部104が放電の終了を検知しても、制御部105はX線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に対する放電終了の信号の出力を行わない。さらに、点302の時間を超えた後に点303が示す時間に放電が終了した場合、放電検出部104は制御部105に放電の終了の信号を入力する。点303は点301から限界時間である50mmsec後の点304までの間の時間にあたるため、制御部105はX線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に対して放電終了の信号を出力。
【0071】
次に、図4を参照して本実施形態における放電発生時のX線高電圧装置100の動作の流れを説明する。図4は本実施形態における放電発生時のX線高電圧装置100の動作を表すフローチャートの図である。
【0072】
ステップS101:放電検出部104が放電の発生を検知する。
【0073】
ステップS102:タイマー106が放電時間のカウントを開始する。
【0074】
ステップS103:制御部105は、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004へ放電検出の信号を出力する。
【0075】
ステップS104:放電検出部104は、電圧計103から入力される電圧と閾値を比較し、放電が終了したか否かを判断する。放電が終了していない場合、ステップS104を繰り返す。放電が終了した場合、ステップS105に進む。
【0076】
ステップS105:制御部105は、タイマー106から入力された放電時間が待機時間を超えているか否かを判断する。放電時間が待機時間を超えていない場合、ステップS104に進む。放電時間が待機時間を超えていない場合、ステップS106に進む。
【0077】
ステップS106:制御部105は、放電時間が限界時間を超えているか否かを判断する。限界時間を超えていない場合、ステップS107に進む。放電時間が限界時間を超えている場合、ステップS109に進む。
【0078】
ステップS107:タイマー106は、放電時間のカウントを停止し、カウンタをリセットする。
【0079】
ステップS108:制御部105は、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電終了の信号を出力する。
【0080】
ステップS109:制御部105は、インバータ101を停止する。
【0081】
このフローでは説明を省いているが、X線検出部002及び画像生成部003は、放電検出の信号の入力を受けて動作を停止し、放電終了の信号の入力を受けて動作を再開する。また、表示制御部004は、放電検出の信号の入力を受けて、記憶部008より最終画像を取得し表示部005に表示させ、放電終了の信号の入力を受けて、表示部005に対し最終画像の表示を停止させ、さらに表示部005に画像生成部003より入力された透視画像を表示させる。
【0082】
以上で説明したように、本実施形態におけるX線診断装置においては、待機時間内に放電が終了しても、X線検出の再開、画像生成の再開、及び最終画像に変えて画像生成部003が動作再開後生成した画像の表示が行われない構成である。これにより、放電特有の乱れた管電圧波形においても、短時間でのX線検出、画像生成、及び最終画像の表示のオンオフを繰り返すことを軽減することができる。したがって、短時間にオンオフを繰り返すことによる装置の故障を軽減することが可能である。
【0083】
〔第3の実施形態〕
以下、この発明の第3の実施形態に係るX線診断装置について説明する。本実施形態に係るX線診断装置は、第1の実施形態と異なり、放電発生後にインバータのデューティを短くし徐々にデューティを高くしていく構成である。そこで、以下の説明では、放電発生後の制御部及びインバータの動作について主に説明する。本実施形態に係るX線診断装置の構成も第1の実施形態と同様に図1のブロック図で表わされる。そして、本実施形態において、特に説明なく第1の実施形態と同一の符合が付されている機能部は同一の機能を有するものである。
【0084】
図5(A)は本実施形態に係るX線診断装置における放電時の高圧トランス102の出力電圧の変化を表したグラフの図である。図5(B)は図5(A)の時間に対応するインバータ101の駆動パルスの状態を表した図である。図5(A)のグラフは縦軸に出力電圧、横軸に時間を表している。
【0085】
制御部105は、放電検出部104より放電発生の信号の入力を受ける。これは、図5(A)における点501の時点にあたる。このとき、制御部105は、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電検出の信号を出力する。
【0086】
制御部105は、放電発生の信号の入力を受けて、インバータ101のDutyを低くする。このDutyを低くされたインバータ101の駆動パルスが図5(B)における502である。そして、制御部105は徐々にDutyを高くしていき、放電発生前のインバータ101の駆動パルスにDutyを復帰させる。この放電発生前のインバータ101の駆動パルスにDutyを復帰させた状態が503である。
【0087】
制御部105は、限界時間前に放電検出部104より放電の終了の信号を受けた場合、すなわち、図5(A)における点504の時点で、X線検出部002、画像生成部003、表示制御部004に放電終了の信号を出力する。
【0088】
ここで、本実施形態ではデューティの復帰が放電の終了(すなわち、高圧トランス102の出力電圧の回復)よりも早い場合で説明したが、放電の終了が早く、デューティの復帰が放電の終了よりも遅れる場合がある。この場合、制御部105は、放電の終了時点ではX線検出部002、画像生成部、及び表示制御部004に対し放電終了の信号の出力を行わない。その後、デューティが復帰した時点で、制御部105は、X線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電終了の信号を出力する。このように、制御部105は、デューティの復帰か放電の終了かの何れか遅い方のタイミングでX線検出部002、画像生成部003、及び表示制御部004に放電終了の信号を出力することが好ましい。
【0089】
以上で説明したように、本実施形態に係るX線診断装置においては、放電発生直後はインバータ101の駆動パルスのデューティを低くし、徐々に放電発生前のデューティにインバータ101の駆動パルスを復帰させることができる。放電発生後に通常のデューティでインバータ101を駆動させると、放電の規模を拡大させる恐れがある。そのため、本実施形態に係るX線診断装置では、放電の規模の拡大を防ぎ、一過性の放電を継続的な放電にしてしまうことを防止することができ、さらにインバータ101内部のデバイスにダメージを与える危険を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係るX線診断装置のブロック図
【図2】第1の実施形態に係るX線診断装置における放電発生時の動作を表すフローチャート
【図3】第2の実施形態に係るX線診断装置における管電圧の変化のグラフ
【図4】第2の実施形態における放電時のX線高電圧装置の動作を表すフローチャート
【図5】(A)本実施形態に係るX線診断装置における放電時の高圧トランスの出力電圧の変化を表したグラフ、(B)(A)の時間に対応するインバータの駆動パルスの状態を表した図
【符号の説明】
【0091】
001 X線管
002 X線検出部
003 画像生成部
004 表示制御部
005 表示部
006 入力部
007 ユーザインタフェース
008 記憶部
100 X線高電圧装置
101 インバータ
102 高圧トランス
103 電圧計
104 放電検出部
105 制御部
106 タイマー
107 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体へX線を曝射するX線管と、
パルスを発生し、該パルスによって高電圧を発生する高電圧発生手段と、
前記高電圧発生手段が発生する高電圧を計測する電圧計と、
前記計測された電圧を基に放電の発生及び放電の終了を検出する放電検出手段と、
前記放電の発生を受けてカウントを開始し、前記放電が発生している時間を計測するタイマーと、
前記高電圧発生手段に対して、前記X線管へ前記高電圧を印加させるとともに、前記放電が発生している時間が予め記憶している限界時間よりも長い場合、前記高電圧発生手段の動作を停止させる制御部と、
を備えたことを特徴とするX線高電圧装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記放電の発生が検出されると放電検出の信号を出力し、前記回復時間以内に前記放電の終了が検出された場合、前記放電終了の信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のX線高電圧装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記限界時間よりも短い待機時間をさらに記憶しており、前記待機時間より後であって前記限界時間内に前記放電の終了が検出された場合に、前記放電終了の信号を出力することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のX線高電圧装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記放電の発生が検出されると前記高電圧発生手段の前記パルスのデューティを低くし、徐々に前記デューティを高くしていくことで、前記放電の発生前の前記デューティに復帰させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のX線高電圧装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記デューティが前記放電の発生前の前記デューティに復帰した時又は前記高電圧の回復のいずれか遅い方を前記放電の終了とすることを特徴とする請求項4に記載のX線高電圧装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記放電が発生している時間が前記回復時間よりも長い場合、警告を通知することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のX線高電圧装置。
【請求項7】
被検体へX線を曝射するX線管と、
パルスを発生し、該パルスによって高電圧を発生する高電圧発生手段と、
前記高電圧発生手段が出力する電圧を計測する電圧計と、
前記計測された電圧を基に放電の発生及び放電の終了を検出する放電検出手段と、
前記放電の発生を受けてカウントを開始し、前記放電が発生している時間を計測するタイマーと、
前記高電圧発生手段に対して、前記X線管へ前記高電圧を印加させるとともに、前記放電が発生している時間が予め記憶している限界時間よりも長い場合、前記高電圧発生手段の動作を停止させる制御部と、
被検体を透過した前記X線を検出するX線検出手段と、
前記検出されたX線を基に透視画像を生成する画像生成手段と、
前記画像データに基づく画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とするX線診断装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記放電の発生が検出されると放電検出の信号を出力し、前記限界時間以内に前記放電の終了が検出された場合、前記放電終了の信号を出力し、
前記表示制御手段は、
前記放電検出の信号の入力を受けて、前記放電直前に生成された前記透視画像を前記表示手段に表示させ、前記放電終了の信号の入力を受けて、前記放電直前に生成された前記透視画像に変えて、前記放電終了後に前記画像生成手段により生成された透視画像を前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項7に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記限界時間よりも短い待機時間をさらに記憶しており、前記待機時間より後であって前記限界時間内に前記放電の終了が検出された場合に、前記放電終了の信号を出力することを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記放電の発生が検出されると前記高電圧発生手段の前記パルスのデューティを低くし、徐々に前記デューティを高くしていくことで、前記放電の発生前の前記デューティに復帰させることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一つに記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記デューティが前記放電の発生前の前記デューティに復帰した時又は前記高電圧の回復のいずれか遅い方を前記放電の終了とすることを特徴とする請求項10に記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記放電が発生している時間が前記回復時間よりも長い場合、警告を通知することを特徴とする、請求項7乃至請求項11のいずれか一つに記載のX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−33822(P2010−33822A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193603(P2008−193603)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】