X線CT装置
【課題】 ビューごとのX線管電圧を変えてデュアルエネルギー像を画像再構する装置を提供する。
【解決手段】 X線CT装置(100)は、第1X線管電圧によるX線と第2X線管電圧によるX線とを1ビューごとに切り替えて被検体に照射するX線照射部(30)と、照射されたX線のX線管電圧情報が特定された投影データを収集する投影データ収集部(40)と、X線管電圧情報に基づき第1X線管電圧によるX線の第1エネルギー投影データ、第2X線管電圧によるX線の第2エネルギー投影データ及び第1X線管電圧と第2X線管電圧との切り換えの際に収集される過渡エネルギー投影データを特定し、過渡エネルギー投影データを当該過渡エネルギー投影データを用いた別データに変換する変換処理部(35)を含み、少なくとも変換処理後のデータを用いて画像再構成する画像再構成部(34)と、を備える。
【解決手段】 X線CT装置(100)は、第1X線管電圧によるX線と第2X線管電圧によるX線とを1ビューごとに切り替えて被検体に照射するX線照射部(30)と、照射されたX線のX線管電圧情報が特定された投影データを収集する投影データ収集部(40)と、X線管電圧情報に基づき第1X線管電圧によるX線の第1エネルギー投影データ、第2X線管電圧によるX線の第2エネルギー投影データ及び第1X線管電圧と第2X線管電圧との切り換えの際に収集される過渡エネルギー投影データを特定し、過渡エネルギー投影データを当該過渡エネルギー投影データを用いた別データに変換する変換処理部(35)を含み、少なくとも変換処理後のデータを用いて画像再構成する画像再構成部(34)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置におけるデュアルエネルギー撮影(Dual Energy Scan)技術に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのX線管と1つの多列X線検出器とで構成するX線CT装置におけるデュアルエネルギー撮影の技術は、例えば特許文献1に開示されている。このような従来のX線CT装置でのデュアルエネルギー撮影は、まず低いX線管電圧で撮影し、次にX線管電圧を上げて高いX線管電圧で撮影していた。この方法ではスキャンとスキャンとの間にX線管電圧を上げるための時間差ができる。このため、この撮影では被検体の体動、心拍、脈動、呼吸、蠕動などで位置ずれアーチファクト(miss registration artifact)が発生し、画質を劣化させてしまうことが考えられる。
【特許文献1】特開2003−37778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、1つのX線管と1つの多列X線検出器とで構成するX線CT装置におけるデュアルエネルギー撮影においては、位置ずれアーチファクトを低減するために、ビューごと又は複数ビューごとで高速にX線管電圧を切り換えるX線CT装置が考えられている。
しかし、X線CT装置は高速でX線管電圧を変化させるほど、低いX線管電圧から高いX線管電圧に移る間の過渡状態のX線管電圧(以下は過渡管電圧とする)の割合が増えるために画像再構成に用いられない過渡管電圧のX線投影データが増えX線利用効率が落ち、画質劣化と無駄被曝とを増加させる原因となっていた。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ビューごと又は複数ビューごとのデュアルエネルギー撮影時において、X線利用効率を改善することで、被曝低減と画質改善とを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点のX線CT装置は、第1X線管電圧によるX線と、第1X線管電圧とは異なる第2X線管電圧によるX線とを少なくとも1ビューごとに切り替えて被検体に照射するX線照射部と、被検体に照射したX線の投影データであって、照射されたX線のX線管電圧情報が特定された投影データを収集する投影データ収集部と、X線管電圧情報に基づき、第1X線管電圧によるX線の第1エネルギー投影データ、第2X線管電圧によるX線の第2エネルギー投影データ、及び第1X線管電圧と第2X線管電圧との切り換えの際に収集される過渡エネルギー投影データを特定し、少なくとも過渡エネルギー投影データを、当該過渡エネルギー投影データを用いた別データに変換する変換処理部を含み、少なくとも変換処理後のデータを用いて画像再構成する画像再構成部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
第2の観点のX線CT装置は、第1の観点のX線CT装置において、変換処理部が、過渡エネルギー投影データを、所望のX線管電圧相当の投影データに補正するためのX線管電圧補正係数を用いたX線管電圧補正処理を行うことを特徴とする。
【0007】
第3の観点のX線CT装置は、第2の観点のX線CT装置において、X線管電圧補正処理が、過渡エネルギー投影データに対して被検体における物質を特定し、物質に応じたX線管線圧補正係数を用いることを特徴とする。
【0008】
第4の観点のX線CT装置は、第2又は第3の観点のX線CT装置において、過渡エネルギー投影データに対する被検体における物質の特定が、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データとの加重加算に基づくデュアルエネルギー断層像、又は第1X線投影データに基づく第1断層像と第2X線投影データに基づく第2断層像とを加重加算して得られたデュアルエネルギー断層像を、再投影処理して得られた投影データに基づき特定されることを特徴とする。
【0009】
第5の観点のX線CT装置は、第4の観点のX線CT装置において、デュアルエネルギー断層像が、水等価画像、脂肪等価画像、骨等価画像、又は造影剤等価画像のうち少なくとも1つの等価画像を含むことを特徴とする。
【0010】
第6の観点のX線CT装置は、第3の観点のX線CT装置において、X線管電圧補正処理が、第1エネルギー投影データ、第2エネルギー投影データ、及び過渡エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含むことを特徴とする。
【0011】
第7の観点のX線CT装置は、第3の観点のX線CT装置において、画像再構成手段が、補正後の第1エネルギー投影データ、第2エネルギー投影データ、及び過渡エネルギー投影データに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成することを特徴とする。
【0012】
第8の観点のX線CT装置は、第6の観点のX線CT装置において、X線管電圧補正処理が、過渡エネルギー投影データの補正が適正かを検証する処理を含むことを特徴とする。
【0013】
第9の観点のX線CT装置は、第1の観点のX線CT装置において、変換処理部が、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データとに基づく補間処理により過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データを算出及び過渡エネルギー投影データからノイズ変動成分を抽出を行い、過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データに対し、ノイズ変動成分を用いたノイズ低減処理を行うことを特徴とする。
【0014】
第10の観点のX線CT装置は、第9の観点のX線CT装置において、変換処理部が、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含むことを特徴とする。
第11の観点のX線CT装置は、第10の観点のX線CT装置において、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データとに基づく補間処理が、補正後の第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データを用いた補間処理であることを特徴とする。
【0015】
第12の観点のX線CT装置は、第10又は第11の観点のX線CT装置において、画像再構成手段が、補正後の第1エネルギー投影データ、及び第2エネルギー投影データ、並びに、ノイズ低減処理を行ったデータに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成することを特徴とする。
【0016】
第13の観点のX線CT装置は、第1ないし第12のいずれかの観点のX線CT装置において、X線照射部が、360度フルスキャンを2スキャン分又は180度+ファン角のハーフスキャンを2スキャン分のいずれかを行うことを特徴とする。
【0017】
第14の観点のX線CT装置は、第13の観点のX線CT装置において、X線照射部が、第1X線管電圧と第2X線管電圧とを1スキャン目と2スキャン目とで入れ替えることを特徴とする。
【0018】
第15の観点のX線CT装置は、第1ないし第12のいずれかのX線CT装置において、 画像再構成部が、第1X線管電圧のX線投影データを360度フルスキャン分、又は180度+ファン角分収集するのに足りないビュー方向の第1又は第2エネルギー投影データを、補間処理により算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のX線CT装置によれば、X線管電圧を少なくとも1ビューごとに切り換える撮影において、前記過渡エネルギー投影データに対し、異なるデータに変換させる変換処理を施し、少なくとも前記変換処理後のデータを画像再構成に用いることにより、被曝を低減し、さらに画質を改善するX線CT装置を実現できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<X線CT装置100の全体構成>
図1は、本発明の実施例にかかるX線CT装置100の構成ブロック図である。このX線CT装置100は、操作コンソール1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを具備している。
【0021】
操作コンソール1は、操作者の入力を受け付けるキーボード又はマウスなどの入力装置2と、前処理、画像再構成処理、後処理などを実行する中央処理装置3と、走査ガントリ20で収集したX線検出器データを収集するデータ収集部5とを具備している。さらに、操作コンソール1は、X線検出器データを前処理して求められた投影データから画像再構成した断層像を表示するモニタ6と、プログラムやX線検出器データや投影データやX線断層像を記憶する記憶装置7とを具備している。撮影条件の入力はこの入力装置2から入力され、記憶装置7に記憶する。撮影テーブル10は、被検体HBを乗せて走査ガントリ20の開口部に出し入れするクレードル12を具備している。クレードル12は撮影テーブル10に内蔵するモータで昇降及びz方向に直線移動する。
【0022】
走査ガントリ20は、X線管21と、X線制御部22と、多列X線検出器24と、データ収集装置25(DAS:Data Acquisition System)とを具備している。X線管21と被検体HBとの間には、コリメータ23、ビーム形成X線フィルタ28及びX線フィルタ31が配置されている。さらに、走査ガントリ20は、被検体HBの体軸の回りに回転するX線管21など有する回転部15の回転制御を行う回転制御部26と、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10とやり取りするガントリ制御部29とを具備している。X線制御部22はX線管21へのX線管電圧やX線管電流mAを制御する。尚、X線照射部30は、X線管21とX線制御部22とを含む。また、投影データ収集部40は、多列X線検出器24とデータ収集装置(DAS)25を含む。なお、X線投影データ収集中はX線管電圧情報をX線制御部22又は多列X線検出器24などに設置したX線管電圧レファレンスチャネルにより得ることができる。X線制御部22から得る場合は、X線管電圧情報をX線制御部22からデータ収集装置25へ転送し、X線投影データの各ビューにX線管電圧情報を付けられる。又は、各ビューのX線管電圧情報は別ファイルにしてX線制御部22からデータ収集装置25に送られ、データ収集装置25よりデータ収集バッファ5経由で中央処理装置3に送られた後、X線投影データと対応付けることもできる。尚、データの経路は、上記に限定されるものではない。
【0023】
ビーム形成X線フィルタ28は撮影中心である回転中心に向かうX線を多くし、周辺部でX線量を少なくするフィルタである。このため、円形又は楕円形に近い被検体HBの体表面の被曝を少なくできるようになっている。
【0024】
中央処理装置3は、前処理部33及び画像再構成部34を有している。
前処理部33は、データ収集装置25で収集された生データに対して、チャネル間の感度不均一を補正し、またX線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正するX線量補正等の前処理を実行する。また、ビームハードニング処理を行う。
【0025】
画像再構成部34は、前処理部33で前処理された投影データを受け、その投影データに基づいて画像を再構成する。投影データは、周波数領域に変換する高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)がなされて、それに再構成関数Kernel(j)を重畳し、逆フーリエ変換する。そして、画像再構成部34は、再構成関数Kernel(j)を重畳処理した投影データに対して、三次元逆投影処理を行い、被検体HBの体軸方向(Z軸方向)ごとに断層像(xy平面)を求める。画像再構成部34は、この断層像を記憶装置7に記憶させる。
【0026】
また、画像再構成部34は、低いX線管電圧kV1の投影データRE1及び高いX線管電圧kV2の投影データRE2から、所定物質(原子)の分布に関連したX線管電圧依存情報の二次元分布断層像、いわゆるデュアルエネルギー撮影の断層像を画像再構成する。デュアルエネルギー撮影の断層像として、水等価画像、脂肪等価画像、造影剤等価画像及び骨等価画像などを得ることができる。
【0027】
また、画像再構成部34は、少なくとも過渡エネルギー投影データに対し、異なるデータに変換させる変換処理部35を含む。この過渡エネルギー投影データについての説明は、後述する。この変換処理部35において変換されたデータは、上述の画像再構成に用いられる。
【0028】
次に、本実施形態に係るX線CT装置100を用いたデュアルエネルギー撮影について説明する。
【0029】
デュアルエネルギー撮影としては1つデュアルエネルギー断層像を得るために、2回転分のスキャンを必要とする方法と、1回転分のスキャンで済む方法とが考えられる。2回転分のスキャンを必要とする方法は低いX線管電圧kV1での1回転分のスキャンと高いX線管電圧kV2の1回転分のスキャンとを利用する方法と、X線間電圧をビューごと又は複数ビューごとで切り換える方法とがある。また、1回転分のスキャンで済む方法はX線管電圧をビューごと又は複数ビューごとで切り換えて撮影し、足りないビューを補間することで低いX線管電圧kV1と高いX線管電圧kV2とのX線投影データを得ることができる。
【0030】
2回転分のスキャンを用いるデュアルエネルギー撮影は、図2(a)に示すような360度フルスキャンF−Scanの場合と、図2(b)に示すような180度+ファン角のハーフスキャンH−Scanの場合とに分けることができる。
【0031】
フルスキャンF−Scanの場合は、図2(a)に示すように各X線間電圧の開始ビューを奇数回目と偶数回目とでずらすことで、各X線管電圧でビューの欠く事のない360度分のX線投影データの収集を行うことができる。
【0032】
また、同様に180度+ファン角のハーフスキャンH−Scanの場合、図2(b)に示すように2回スキャンすることで、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2との180度+ファン角分のX線データ収集を行うことができる。
また、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とは、図5に示すように組み合わせることで、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とに分けて収集することができる。尚、組み合わせた結果、ビューの欠けたビューがあった場合は、隣り合ったビューのX線投影データの補間処理によりビューデータを得る。
【0033】
例えば、kビューとk+nビューのX線投影データD(k,row,ch),…D(k+n,row,ch)が存在し、k+1ビューからk+n−1ビューまでのX線投影データD(k+1,row,ch),…D(k+n−1,row,ch)が存在しないとする。ただし、row,chは多列X線検出器24の列,チャネルの番号を表し、また1≦i≦n−1とする。この場合のk+1ビューからk+n−1ビューまでのX線投影データは、線型補間処理を用いて補間又は加重加算を行うと以下の(数式01)のようになる。
【数01】
...(数式01)
【0034】
ビューごと又は数ビューごとでのX線管電圧の切り換えは、切り替え時間なしで切り替わるのが理想的であるが、実際は切り替えに時間を要する。この切り替え時間は、1回転のスキャン時間が高速になるにつれ無視できなくり、切り替え時間に印加される過渡電圧の割合も増加してくる。尚、切り換え時間は高圧発生装置、及びX線コントローラ22の性能によっても左右される。
【0035】
例えば、図3のX線データ収集は、1周期で低エネルギー投影データRE1を5ビュー収集し、過渡エネルギー投影データREtを2ビュー収集し、高エネルギー投影データRE2を5ビュー収集し、もう一度過渡エネルギー投影データREtを2ビュー収集した場合を示している。
【0036】
この場合に、過渡エネルギー投影データREtを用いないとすると、X線投影データの利用効率は、約10/14=約70%になる。一般的に図3の時間方向のX線利用効率eは、以下の(数式02)の通りとなる。
【数02】
...(数式02)
このため、被検体の被曝を考え、X線利用効率eを100%にするために、本実施形態では過渡エネルギー投影データREtも画像再構成に利用することを考える。
【0037】
以下、実施例を用いて、本実施形態のX線CT装置の動作を説明しながら、過渡X線投影データを画像再構成に利用する例について説明する。
<実施例1>
図4はデュアルエネルギー撮影の2回スキャン法において過渡エネルギー投影データREtの補正をするフローチャートを示す。
ステップD1において、多列X線検出器24は、低いX線管電圧kV1によるX線と高いX線管電圧kV2によるX線とを切り換えてX線データ収集を行う。X線データ収集中は各ビュー毎にX線管電圧情報をX線コントローラ22や、多列X線検出器24などに設置したX線管電圧レファレンスチャネルにより得ておく。尚、X線管電圧の過渡区間に対応するビューについては、実測又は予測に基づくX線管電圧情報を得ておく。また、低いX線管電圧kV1のX線投影データを低エネルギー投影データRE1とし高いX線管電圧kV2のX線投影データを高エネルギー投影データRE2とする。
【0038】
ステップD2において、画像再構成部34は低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とのビューを各々分けて、X線投影データを組み合わせ、必要に応じて、欠けたビューを隣り合ったビューのX線投影データにより補間処理にて補充する。尚、ここでは過渡エネルギー投影データREtは、含まない。
【0039】
ステップD3において、デュアルエネルギー画像再構成を行い、水等価画像、脂肪等価画像、造影剤等価画像及び骨等価画像を画像再構成する。
この各種類の等価画像を得るためのデュアルエネルギー画像再構成は、以下のようになる。
図6は投影データ空間におけるデュアルエネルギー画像再構成方法の概要を示す。
【0040】
まず、低エネルギー投影データRE1に加重加算係数w1を乗算し、同様に高エネルギー投影データRE2に加重加算係数w2を乗算し、定数C1とともに加重加算処理し、デュアルエネルギー断層像M−CSIを作成する。
【0041】
これら加重加算係数w1,w2及び定数C1は、抽出したい原子、強調したい原子、表示上で消したい原子又は部位により定まる。例えば加重加算処理部はCT値の近い骨、石灰化を構成するカルシウム成分(Ca成分)と、ヨウ素を主成分とする造影剤(Iodine成分)とを分離するために、カルシウム成分を表示上で消すと、つまり画素値を0にすると造影剤成分が抽出され、強調して表示することができる。また反対に、加重加算処理部は造影剤成分を表示上で消すと、つまり画素値を0にするとカルシウム成分が抽出され、骨や石灰化の部分を強調して表示することができる。
【0042】
この時に用いるX線投影データは、前処理部33が前処理及びビームハードニング補正したX線投影データを用いる。特にビームハードニング補正では、各X線管電圧において水等価でない物質の部分を水等価なX線透過経路長にすることにより、水以外の物質のX線管電圧依存性をより正しく評価することができる。
【0043】
また、断層像空間においても、前処理部33により前処理及びビームハードニング補正が補正済であるとすると、デュアルエネルギー画像再構成部35は断層像空間でも、デュアルエネルギー断層像を画像再構成することができる。
【0044】
図4に戻り、ステップD4において、画像再構成部34は、水等価画像、脂肪等価画像、造影剤等価画像及び骨等価画像の再投影処理RPを行うことにより、各透過画像の再投影データを得る。この再投影データにより、ステップD1で収集した各X線投影データについての物質情報が得られる。
一方、各物質の各X線エネルギーにおけるX線吸収係数、つまり、各物質毎の各X線管電圧におけるX線吸収係数の違いに基づき、X線管電圧補正係数を求めることができる。従って、ステップD4においては、ステップD1で収集した各X線投影データについて、各ビュー毎のX線管電圧情報及び補正X線管電圧に基づき、各X線投影データのX線管電圧補正係数を求める。尚、再投影処理RPとしては、θ方向に回転して再投影処理RPする方法と、シフト処理して再投影処理RPする方法とがある。
【0045】
図7は、θ方向に回転して再投影処理RPする方法の概念図である。
この再投影処理は断層像の(x,y)座標の画素値をg(x,y)とし、θ方向に回転させ断層像(X,Y)を得る。この座標変換であるアフィン変換は以下の(数式03)のようになる。
【数03】
...(数式03)
θ方向の再投影プロファイルデータPθ(x)は、以下の(数式04)のように求めることができる。ただし、断層像のマトリクス数はN×N画素としている。
【数04】
...(数式04)
【0046】
尚、θ方向に回転した断層像g(X,Y)を作成しなくても、元の断層像のg(x,y)をθ方向に再投影処理RPすることで、同様にプロファイルデータPθ(x)を作成することもできる。この処理はメモリアクセス時間が掛かるが、余計な処理を行わない分、単純なアルゴリズムで済む。
【0047】
図8は、シフト処理して再投影処理RPする方法の概念図である。シフト処理は、任意のθ方向の平行ビームによる再投影処理RPを行うことができる。この処理は回転方式に比べ、処理時間が短いという利点がある。
【0048】
この再投影処理は、断層像g(x,y)の各y座標位置におけるx方向の1ラインデータに対してシフト処理を行う。
再投影処理は、図8に示すように、y=y1のy座標位置におけるx方向の1ラインデータに対して、x方向に−y1・tanθ分だけずらしてシフト処理を行い、これを全y座標値において行う。
【0049】
この時の座標変換の式は以下の(数式05),(数式06)のようになる。
ただし、(X,Y)は座標変換後の座標、(x,y)は座標変換前の座標とする。
【数05】
...(数式05)
【数06】
...(数式06)
【0050】
図4に戻り、ステップD5において、変換処理部35は各X線管電圧の各ビューを所定のX線管電圧相当kVaに補正する。本実施例においては、低エネルギー投影データRE1も高エネルギー投影データRE2もその過渡エネルギー投影データREtも、所定のX線管電圧相当kVaのX線投影データになるように補正を行う。
【0051】
ステップD6において、画像再構成部34はX線管電圧補正したX線投影データを画像再構成する。
ステップD7において、画像表示部は所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示する。
ステップD8において、操作者は他のX線管電圧相当kVaの断層像を表示するかを判断し、YESであればステップD9へ行き、NOであれば終了する。
ステップD9において、求めるX線管電圧の変更を行う。
【0052】
次に、本実施例において、X線管電圧補正が適正に行われたか否かを検証する方法について説明する。尚、過渡区間のX線電圧補正が適正に行われなかった場合、X線投影データの不連続性が発生し、断層像においてアーチファクトを発生する可能性がある。
【0053】
図9は、X線管電圧補正が適正に行われたか否かを検証する処理及び不適正であった場合のアーチファクト低減処理の一例のフローチャートを示す。
【0054】
ステップD41において、変換処理部35は各X線管電圧のX線投影データをX線管電圧補正して、所定のX線管電圧相当kVaにする。
ステップD42において、画像再構成部34は所定のX線管電圧相当kVaを画像再構成する。
ステップD43において、画像表示部は所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示する。
【0055】
ステップD44において、空気部分の関心領域ROIの標準偏差値SDは小さいかを判断し、YESであればステップD45へ行き、NOであればステップD47へ行く。
【0056】
例えば、図10は空気部分の関心領域ROIの1例を示す。その設定位置は被検体と撮影テーブル10のクレードル12を避けて、周辺部に8個の空気部分の関心領域ROIを設定している。この関心領域ROIは、必ずしも8個でなく、4個でも1個の領域でも構わない。また、関心領域ROIは被検体やクレードル12に当たらなければ周辺領域でなくても良い。X線管電圧補正部38はその関心領域ROIの値がその撮影条件から定まる空気の標準偏差値SDよりも高い値を出していた場合、アーチファクトが発生していると予想をすることができる。
【0057】
ステップD45において、操作者は他の所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示するかを判断し、YESであればステップD46へ行き、NOであれば終了する。
ステップD46において、X線管電圧補正部38は求めるX線管電圧を変更する。その後、ステップD41へ戻る。
【0058】
ステップD47において、X線管電圧補正部38は空気領域の低エネルギー投影データRE1の平均値、高エネルギー投影データRE2の平均値、過渡エネルギー投影データREtの平均値を求める。
【0059】
ステップD48において、過渡エネルギー投影データREtの平均値は低エネルギー投影データRE1の平均値と、高エネルギー投影データRE2との平均値の間にあるかを判断し、YESであればステップD45へ行き、NOであればステップD49へ行く。
【0060】
ステップD49において、X線管電圧補正部38は、隣り合うX線管電圧80kVの低エネルギー投影データRE1とX線管電圧140kVの高エネルギー投影データRE2とでビュー方向の補間処理を行う。
【0061】
このようにして、画像再構成部34は過渡エネルギー投影データREtを含む全ビューを使用するため無駄被曝なく、S/Nのよい断層像を得ることができる。
尚、上記実施例においては、低エネルギー投影データRE1も高エネルギー投影データRE2もその過渡エネルギー投影データREtも、所定のX線管電圧相当kVaのX線投影データになるように補正を行ったが、過渡エネルギー投影データREtのみを、例えば低エネルギーを得るためのX線管電圧相当又は高エネルギーを得るためのX線管電圧相当に補正してもよい。
【0062】
<実施例2>
本実施例においては、主要なX線投影データである低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とを所定のX線管電圧相当kVaにX線管電圧補正を行う。また、過渡エネルギー投影データREtは、ビュー方向に補間処理して求めたX線投影データを用いる。このビュー方向に補間処理したX線投影データに対し、過渡エネルギー投影データREtのノイズ成分に基づくノイズ低減処理を行う。このようにして、X線投影データの全ビューを用いて無駄被曝なく、S/Nのよい断層像を得ることができる。
【0063】
図11はその処理のフローチャートを示す。
ステップE7までの処理は実施例1において説明した、図4のステップD1からステップD4までの等価画像の再投影処理RPと同様である。
【0064】
ステップE7において、画像再構成部34は低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とを、ステップD4で求めたX線管電圧補正係数により所定のX線管電圧相当kVaに補正する。この時に過渡エネルギー投影データREtのX線管電圧補正は行わない。
【0065】
ステップE8において、画像再構成部34は過渡エネルギー投影データREtを低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とで補間処理又は加重加算処理して補間する。
【0066】
ステップE9において、変換処理部35は過渡エネルギー投影データREtのノイズ変動成分を抽出して、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とで求められたX線投影データに対してノイズを打ち消す方向に加えることによって過渡エネルギー投影データの変換処理を行う。
【0067】
図12はこのノイズ低減処理の概要を示す。
低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とより、ビュー方向に補間処理又は加重加算処理したX線投影データをDcor(view,row,ch)とすると、ノイズ変動成分Ncor(view,row,ch)は以下の(数式07)により求めることができる。
【数07】
...(数式07)
ただし、Low Pass Filter(row,ch)はチャネル方向のローパスフィルタ、又は列方向とチャネル方向のローパスフィルタとする。“*”は重畳処理(convolution)を表す。
【0068】
また、過渡エネルギー投影データREtをD(view,row,ch)とし、そのノイズ変動成分をN(view,row,ch)とすると、ノイズ変動成分は以下の(数式08)により求めることができる。
【数08】
...(数式08)
なお、この時のLow Pass Filter(row,ch)は(数式09)のものと同じもので良い。
【0069】
今、ある数値の正負の符号を求める関数をsgn(n)とすると、例えばn≧0においてはsgn(n)=1、n<0においてはsgn(n)=−1とする。
この時に、ノイズ変動成分N(view,row,ch)とし、ノイズ低減処理した結果をNcor2(view,row,ch)とすると(数式09)の関係式になる。
【数09】
...(数式09)
【0070】
ステップE10において、画像再構成部34は、X線管電圧補正した低エネルギー投影データRE1、高エネルギー投影データRE2及び変換処理部35において過渡エネルギー投影データから抽出したノイズ成分を用いてノイズ低減処理を行った後の低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とで求められたX線投影データを用いて画像再構成する。
ステップE11において、画像表示部は所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示する。
ステップE12において、操作者は他のX線管電圧相当kVaの断層像を表示するかを判断し、YESであればステップE13へ行き、NOであれば終了する。
ステップE13において、操作者は求めるX線管電圧を変更する。
【0071】
尚、実施例1と実施例2とで得た各X線管電圧相当kVaの断層像を連続表示(シネ表示)することにより、操作者は被検体の組成情報を視覚的に把握しやすくすることができる。
【0072】
シネ表示するために、X線管電圧補正部38はあらかじめ撮影条件設定でX線管電圧の範囲内を設定し、そのX線管電圧相当kVaの断層像を全て作成しておく。画像表示部は作成した断層像を用い、シネ表示処理することで各部分のX線管電圧依存性を連続的に表示させる。これにより、操作者は組成の違いを視覚的に認識しやすくすることができる。
【0073】
また、本実施例1,本実施例2においては、画像空間処理のデュアルエネルギー撮影の画像再構成を中心に書いているが、投影データ空間のデュアルエネルギー撮影の画像再構成でも同様な効果を出すことができる。また、本実施例1,本実施例2においては、低エネルギー投影データRE1に80kVを高エネルギー投影データRE2に140kVを用いているが、他のX線管電圧においても同様なデュアルエネルギー撮影が行うことができ、同様の効果を出すことができる。
【0074】
また、本実施形態では、X線CT装置100のX線自動露出機構を用いていない場合について記載しているが、X線CT装置100のX線自動露出機構を用いた場合についても同様に効果を出すことができる。
【0075】
また、本実施形態は、生体信号にX線データ収集が同期しない場合について記載しているが、生体信号、特に、心拍信号に同期させても同様な効果を出すことができる。また、本実施例では、多列X線検出器又は、フラットパネルX線検出器に代表するマトリクス構造の二次元X線エリア検出器を持ったX線CT装置100について書かれているが、1列のX線検出器のX線CT装置100においても同様の効果を出せる。さらに、本実施例では、本実施例では、X線CT装置100を元について記載されているが、他の装置と組み合わせたX線CT−PET装置,X線CT−SPECT装置などにおいても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例にかかるX線CT装置100を示すブロック図である。
【図2】(a)X線管電圧を切り換えた360度フルスキャンの2スキャン分を示す図である。 (b)X線管電圧を切り換えた180度+ファン角ハーフスキャンの2スキャン分を示す図である。
【図3】デュアルエネルギー撮影におけるデータ収集タイミングを示した図である。
【図4】過渡エネルギー投影データREtのX線管電圧補間処理のフローチャートである。
【図5】低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2との組み合わせを示した図である。
【図6】投影データ空間におけるX線吸収係数の断層像を求めるイメージ図である。
【図7】断層像をθ方向に回転して再投影処理RPする方法を示す図である。
【図8】断層像をシフト処理して再投影処理RPする方法を示す図である。
【図9】アーチファクト低減処理のフローチャートである。
【図10】空気部分の関心領域ROIを示す図である。
【図11】過渡エネルギー投影データREtによるノイズ低減処理のフローチャートである。
【図12】X線投影データのノイズ低減処理の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 … 操作コンソール
2 … 入力装置
3 … 中央処理装置 (33 … 前処理部,34 … 画像再構成部,35 … 変換処理部)
5 … データ収集バッファ
6 … モニタ
7 … 記憶装置
10 … 撮影テーブル
12 … クレードル
15 … 回転部
20 … 走査ガントリ
21 … X線管
22 … X線制御部
23 … コリメータ
24 … 多列X線検出器
25 … データ収集装置(DAS)
26 … 回転制御部
28 … ビーム形成X線フィルタ
29 … ガントリ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置におけるデュアルエネルギー撮影(Dual Energy Scan)技術に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのX線管と1つの多列X線検出器とで構成するX線CT装置におけるデュアルエネルギー撮影の技術は、例えば特許文献1に開示されている。このような従来のX線CT装置でのデュアルエネルギー撮影は、まず低いX線管電圧で撮影し、次にX線管電圧を上げて高いX線管電圧で撮影していた。この方法ではスキャンとスキャンとの間にX線管電圧を上げるための時間差ができる。このため、この撮影では被検体の体動、心拍、脈動、呼吸、蠕動などで位置ずれアーチファクト(miss registration artifact)が発生し、画質を劣化させてしまうことが考えられる。
【特許文献1】特開2003−37778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、1つのX線管と1つの多列X線検出器とで構成するX線CT装置におけるデュアルエネルギー撮影においては、位置ずれアーチファクトを低減するために、ビューごと又は複数ビューごとで高速にX線管電圧を切り換えるX線CT装置が考えられている。
しかし、X線CT装置は高速でX線管電圧を変化させるほど、低いX線管電圧から高いX線管電圧に移る間の過渡状態のX線管電圧(以下は過渡管電圧とする)の割合が増えるために画像再構成に用いられない過渡管電圧のX線投影データが増えX線利用効率が落ち、画質劣化と無駄被曝とを増加させる原因となっていた。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ビューごと又は複数ビューごとのデュアルエネルギー撮影時において、X線利用効率を改善することで、被曝低減と画質改善とを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点のX線CT装置は、第1X線管電圧によるX線と、第1X線管電圧とは異なる第2X線管電圧によるX線とを少なくとも1ビューごとに切り替えて被検体に照射するX線照射部と、被検体に照射したX線の投影データであって、照射されたX線のX線管電圧情報が特定された投影データを収集する投影データ収集部と、X線管電圧情報に基づき、第1X線管電圧によるX線の第1エネルギー投影データ、第2X線管電圧によるX線の第2エネルギー投影データ、及び第1X線管電圧と第2X線管電圧との切り換えの際に収集される過渡エネルギー投影データを特定し、少なくとも過渡エネルギー投影データを、当該過渡エネルギー投影データを用いた別データに変換する変換処理部を含み、少なくとも変換処理後のデータを用いて画像再構成する画像再構成部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
第2の観点のX線CT装置は、第1の観点のX線CT装置において、変換処理部が、過渡エネルギー投影データを、所望のX線管電圧相当の投影データに補正するためのX線管電圧補正係数を用いたX線管電圧補正処理を行うことを特徴とする。
【0007】
第3の観点のX線CT装置は、第2の観点のX線CT装置において、X線管電圧補正処理が、過渡エネルギー投影データに対して被検体における物質を特定し、物質に応じたX線管線圧補正係数を用いることを特徴とする。
【0008】
第4の観点のX線CT装置は、第2又は第3の観点のX線CT装置において、過渡エネルギー投影データに対する被検体における物質の特定が、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データとの加重加算に基づくデュアルエネルギー断層像、又は第1X線投影データに基づく第1断層像と第2X線投影データに基づく第2断層像とを加重加算して得られたデュアルエネルギー断層像を、再投影処理して得られた投影データに基づき特定されることを特徴とする。
【0009】
第5の観点のX線CT装置は、第4の観点のX線CT装置において、デュアルエネルギー断層像が、水等価画像、脂肪等価画像、骨等価画像、又は造影剤等価画像のうち少なくとも1つの等価画像を含むことを特徴とする。
【0010】
第6の観点のX線CT装置は、第3の観点のX線CT装置において、X線管電圧補正処理が、第1エネルギー投影データ、第2エネルギー投影データ、及び過渡エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含むことを特徴とする。
【0011】
第7の観点のX線CT装置は、第3の観点のX線CT装置において、画像再構成手段が、補正後の第1エネルギー投影データ、第2エネルギー投影データ、及び過渡エネルギー投影データに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成することを特徴とする。
【0012】
第8の観点のX線CT装置は、第6の観点のX線CT装置において、X線管電圧補正処理が、過渡エネルギー投影データの補正が適正かを検証する処理を含むことを特徴とする。
【0013】
第9の観点のX線CT装置は、第1の観点のX線CT装置において、変換処理部が、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データとに基づく補間処理により過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データを算出及び過渡エネルギー投影データからノイズ変動成分を抽出を行い、過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データに対し、ノイズ変動成分を用いたノイズ低減処理を行うことを特徴とする。
【0014】
第10の観点のX線CT装置は、第9の観点のX線CT装置において、変換処理部が、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含むことを特徴とする。
第11の観点のX線CT装置は、第10の観点のX線CT装置において、第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データとに基づく補間処理が、補正後の第1エネルギー投影データと第2エネルギー投影データを用いた補間処理であることを特徴とする。
【0015】
第12の観点のX線CT装置は、第10又は第11の観点のX線CT装置において、画像再構成手段が、補正後の第1エネルギー投影データ、及び第2エネルギー投影データ、並びに、ノイズ低減処理を行ったデータに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成することを特徴とする。
【0016】
第13の観点のX線CT装置は、第1ないし第12のいずれかの観点のX線CT装置において、X線照射部が、360度フルスキャンを2スキャン分又は180度+ファン角のハーフスキャンを2スキャン分のいずれかを行うことを特徴とする。
【0017】
第14の観点のX線CT装置は、第13の観点のX線CT装置において、X線照射部が、第1X線管電圧と第2X線管電圧とを1スキャン目と2スキャン目とで入れ替えることを特徴とする。
【0018】
第15の観点のX線CT装置は、第1ないし第12のいずれかのX線CT装置において、 画像再構成部が、第1X線管電圧のX線投影データを360度フルスキャン分、又は180度+ファン角分収集するのに足りないビュー方向の第1又は第2エネルギー投影データを、補間処理により算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のX線CT装置によれば、X線管電圧を少なくとも1ビューごとに切り換える撮影において、前記過渡エネルギー投影データに対し、異なるデータに変換させる変換処理を施し、少なくとも前記変換処理後のデータを画像再構成に用いることにより、被曝を低減し、さらに画質を改善するX線CT装置を実現できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<X線CT装置100の全体構成>
図1は、本発明の実施例にかかるX線CT装置100の構成ブロック図である。このX線CT装置100は、操作コンソール1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを具備している。
【0021】
操作コンソール1は、操作者の入力を受け付けるキーボード又はマウスなどの入力装置2と、前処理、画像再構成処理、後処理などを実行する中央処理装置3と、走査ガントリ20で収集したX線検出器データを収集するデータ収集部5とを具備している。さらに、操作コンソール1は、X線検出器データを前処理して求められた投影データから画像再構成した断層像を表示するモニタ6と、プログラムやX線検出器データや投影データやX線断層像を記憶する記憶装置7とを具備している。撮影条件の入力はこの入力装置2から入力され、記憶装置7に記憶する。撮影テーブル10は、被検体HBを乗せて走査ガントリ20の開口部に出し入れするクレードル12を具備している。クレードル12は撮影テーブル10に内蔵するモータで昇降及びz方向に直線移動する。
【0022】
走査ガントリ20は、X線管21と、X線制御部22と、多列X線検出器24と、データ収集装置25(DAS:Data Acquisition System)とを具備している。X線管21と被検体HBとの間には、コリメータ23、ビーム形成X線フィルタ28及びX線フィルタ31が配置されている。さらに、走査ガントリ20は、被検体HBの体軸の回りに回転するX線管21など有する回転部15の回転制御を行う回転制御部26と、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10とやり取りするガントリ制御部29とを具備している。X線制御部22はX線管21へのX線管電圧やX線管電流mAを制御する。尚、X線照射部30は、X線管21とX線制御部22とを含む。また、投影データ収集部40は、多列X線検出器24とデータ収集装置(DAS)25を含む。なお、X線投影データ収集中はX線管電圧情報をX線制御部22又は多列X線検出器24などに設置したX線管電圧レファレンスチャネルにより得ることができる。X線制御部22から得る場合は、X線管電圧情報をX線制御部22からデータ収集装置25へ転送し、X線投影データの各ビューにX線管電圧情報を付けられる。又は、各ビューのX線管電圧情報は別ファイルにしてX線制御部22からデータ収集装置25に送られ、データ収集装置25よりデータ収集バッファ5経由で中央処理装置3に送られた後、X線投影データと対応付けることもできる。尚、データの経路は、上記に限定されるものではない。
【0023】
ビーム形成X線フィルタ28は撮影中心である回転中心に向かうX線を多くし、周辺部でX線量を少なくするフィルタである。このため、円形又は楕円形に近い被検体HBの体表面の被曝を少なくできるようになっている。
【0024】
中央処理装置3は、前処理部33及び画像再構成部34を有している。
前処理部33は、データ収集装置25で収集された生データに対して、チャネル間の感度不均一を補正し、またX線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正するX線量補正等の前処理を実行する。また、ビームハードニング処理を行う。
【0025】
画像再構成部34は、前処理部33で前処理された投影データを受け、その投影データに基づいて画像を再構成する。投影データは、周波数領域に変換する高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)がなされて、それに再構成関数Kernel(j)を重畳し、逆フーリエ変換する。そして、画像再構成部34は、再構成関数Kernel(j)を重畳処理した投影データに対して、三次元逆投影処理を行い、被検体HBの体軸方向(Z軸方向)ごとに断層像(xy平面)を求める。画像再構成部34は、この断層像を記憶装置7に記憶させる。
【0026】
また、画像再構成部34は、低いX線管電圧kV1の投影データRE1及び高いX線管電圧kV2の投影データRE2から、所定物質(原子)の分布に関連したX線管電圧依存情報の二次元分布断層像、いわゆるデュアルエネルギー撮影の断層像を画像再構成する。デュアルエネルギー撮影の断層像として、水等価画像、脂肪等価画像、造影剤等価画像及び骨等価画像などを得ることができる。
【0027】
また、画像再構成部34は、少なくとも過渡エネルギー投影データに対し、異なるデータに変換させる変換処理部35を含む。この過渡エネルギー投影データについての説明は、後述する。この変換処理部35において変換されたデータは、上述の画像再構成に用いられる。
【0028】
次に、本実施形態に係るX線CT装置100を用いたデュアルエネルギー撮影について説明する。
【0029】
デュアルエネルギー撮影としては1つデュアルエネルギー断層像を得るために、2回転分のスキャンを必要とする方法と、1回転分のスキャンで済む方法とが考えられる。2回転分のスキャンを必要とする方法は低いX線管電圧kV1での1回転分のスキャンと高いX線管電圧kV2の1回転分のスキャンとを利用する方法と、X線間電圧をビューごと又は複数ビューごとで切り換える方法とがある。また、1回転分のスキャンで済む方法はX線管電圧をビューごと又は複数ビューごとで切り換えて撮影し、足りないビューを補間することで低いX線管電圧kV1と高いX線管電圧kV2とのX線投影データを得ることができる。
【0030】
2回転分のスキャンを用いるデュアルエネルギー撮影は、図2(a)に示すような360度フルスキャンF−Scanの場合と、図2(b)に示すような180度+ファン角のハーフスキャンH−Scanの場合とに分けることができる。
【0031】
フルスキャンF−Scanの場合は、図2(a)に示すように各X線間電圧の開始ビューを奇数回目と偶数回目とでずらすことで、各X線管電圧でビューの欠く事のない360度分のX線投影データの収集を行うことができる。
【0032】
また、同様に180度+ファン角のハーフスキャンH−Scanの場合、図2(b)に示すように2回スキャンすることで、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2との180度+ファン角分のX線データ収集を行うことができる。
また、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とは、図5に示すように組み合わせることで、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とに分けて収集することができる。尚、組み合わせた結果、ビューの欠けたビューがあった場合は、隣り合ったビューのX線投影データの補間処理によりビューデータを得る。
【0033】
例えば、kビューとk+nビューのX線投影データD(k,row,ch),…D(k+n,row,ch)が存在し、k+1ビューからk+n−1ビューまでのX線投影データD(k+1,row,ch),…D(k+n−1,row,ch)が存在しないとする。ただし、row,chは多列X線検出器24の列,チャネルの番号を表し、また1≦i≦n−1とする。この場合のk+1ビューからk+n−1ビューまでのX線投影データは、線型補間処理を用いて補間又は加重加算を行うと以下の(数式01)のようになる。
【数01】
...(数式01)
【0034】
ビューごと又は数ビューごとでのX線管電圧の切り換えは、切り替え時間なしで切り替わるのが理想的であるが、実際は切り替えに時間を要する。この切り替え時間は、1回転のスキャン時間が高速になるにつれ無視できなくり、切り替え時間に印加される過渡電圧の割合も増加してくる。尚、切り換え時間は高圧発生装置、及びX線コントローラ22の性能によっても左右される。
【0035】
例えば、図3のX線データ収集は、1周期で低エネルギー投影データRE1を5ビュー収集し、過渡エネルギー投影データREtを2ビュー収集し、高エネルギー投影データRE2を5ビュー収集し、もう一度過渡エネルギー投影データREtを2ビュー収集した場合を示している。
【0036】
この場合に、過渡エネルギー投影データREtを用いないとすると、X線投影データの利用効率は、約10/14=約70%になる。一般的に図3の時間方向のX線利用効率eは、以下の(数式02)の通りとなる。
【数02】
...(数式02)
このため、被検体の被曝を考え、X線利用効率eを100%にするために、本実施形態では過渡エネルギー投影データREtも画像再構成に利用することを考える。
【0037】
以下、実施例を用いて、本実施形態のX線CT装置の動作を説明しながら、過渡X線投影データを画像再構成に利用する例について説明する。
<実施例1>
図4はデュアルエネルギー撮影の2回スキャン法において過渡エネルギー投影データREtの補正をするフローチャートを示す。
ステップD1において、多列X線検出器24は、低いX線管電圧kV1によるX線と高いX線管電圧kV2によるX線とを切り換えてX線データ収集を行う。X線データ収集中は各ビュー毎にX線管電圧情報をX線コントローラ22や、多列X線検出器24などに設置したX線管電圧レファレンスチャネルにより得ておく。尚、X線管電圧の過渡区間に対応するビューについては、実測又は予測に基づくX線管電圧情報を得ておく。また、低いX線管電圧kV1のX線投影データを低エネルギー投影データRE1とし高いX線管電圧kV2のX線投影データを高エネルギー投影データRE2とする。
【0038】
ステップD2において、画像再構成部34は低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とのビューを各々分けて、X線投影データを組み合わせ、必要に応じて、欠けたビューを隣り合ったビューのX線投影データにより補間処理にて補充する。尚、ここでは過渡エネルギー投影データREtは、含まない。
【0039】
ステップD3において、デュアルエネルギー画像再構成を行い、水等価画像、脂肪等価画像、造影剤等価画像及び骨等価画像を画像再構成する。
この各種類の等価画像を得るためのデュアルエネルギー画像再構成は、以下のようになる。
図6は投影データ空間におけるデュアルエネルギー画像再構成方法の概要を示す。
【0040】
まず、低エネルギー投影データRE1に加重加算係数w1を乗算し、同様に高エネルギー投影データRE2に加重加算係数w2を乗算し、定数C1とともに加重加算処理し、デュアルエネルギー断層像M−CSIを作成する。
【0041】
これら加重加算係数w1,w2及び定数C1は、抽出したい原子、強調したい原子、表示上で消したい原子又は部位により定まる。例えば加重加算処理部はCT値の近い骨、石灰化を構成するカルシウム成分(Ca成分)と、ヨウ素を主成分とする造影剤(Iodine成分)とを分離するために、カルシウム成分を表示上で消すと、つまり画素値を0にすると造影剤成分が抽出され、強調して表示することができる。また反対に、加重加算処理部は造影剤成分を表示上で消すと、つまり画素値を0にするとカルシウム成分が抽出され、骨や石灰化の部分を強調して表示することができる。
【0042】
この時に用いるX線投影データは、前処理部33が前処理及びビームハードニング補正したX線投影データを用いる。特にビームハードニング補正では、各X線管電圧において水等価でない物質の部分を水等価なX線透過経路長にすることにより、水以外の物質のX線管電圧依存性をより正しく評価することができる。
【0043】
また、断層像空間においても、前処理部33により前処理及びビームハードニング補正が補正済であるとすると、デュアルエネルギー画像再構成部35は断層像空間でも、デュアルエネルギー断層像を画像再構成することができる。
【0044】
図4に戻り、ステップD4において、画像再構成部34は、水等価画像、脂肪等価画像、造影剤等価画像及び骨等価画像の再投影処理RPを行うことにより、各透過画像の再投影データを得る。この再投影データにより、ステップD1で収集した各X線投影データについての物質情報が得られる。
一方、各物質の各X線エネルギーにおけるX線吸収係数、つまり、各物質毎の各X線管電圧におけるX線吸収係数の違いに基づき、X線管電圧補正係数を求めることができる。従って、ステップD4においては、ステップD1で収集した各X線投影データについて、各ビュー毎のX線管電圧情報及び補正X線管電圧に基づき、各X線投影データのX線管電圧補正係数を求める。尚、再投影処理RPとしては、θ方向に回転して再投影処理RPする方法と、シフト処理して再投影処理RPする方法とがある。
【0045】
図7は、θ方向に回転して再投影処理RPする方法の概念図である。
この再投影処理は断層像の(x,y)座標の画素値をg(x,y)とし、θ方向に回転させ断層像(X,Y)を得る。この座標変換であるアフィン変換は以下の(数式03)のようになる。
【数03】
...(数式03)
θ方向の再投影プロファイルデータPθ(x)は、以下の(数式04)のように求めることができる。ただし、断層像のマトリクス数はN×N画素としている。
【数04】
...(数式04)
【0046】
尚、θ方向に回転した断層像g(X,Y)を作成しなくても、元の断層像のg(x,y)をθ方向に再投影処理RPすることで、同様にプロファイルデータPθ(x)を作成することもできる。この処理はメモリアクセス時間が掛かるが、余計な処理を行わない分、単純なアルゴリズムで済む。
【0047】
図8は、シフト処理して再投影処理RPする方法の概念図である。シフト処理は、任意のθ方向の平行ビームによる再投影処理RPを行うことができる。この処理は回転方式に比べ、処理時間が短いという利点がある。
【0048】
この再投影処理は、断層像g(x,y)の各y座標位置におけるx方向の1ラインデータに対してシフト処理を行う。
再投影処理は、図8に示すように、y=y1のy座標位置におけるx方向の1ラインデータに対して、x方向に−y1・tanθ分だけずらしてシフト処理を行い、これを全y座標値において行う。
【0049】
この時の座標変換の式は以下の(数式05),(数式06)のようになる。
ただし、(X,Y)は座標変換後の座標、(x,y)は座標変換前の座標とする。
【数05】
...(数式05)
【数06】
...(数式06)
【0050】
図4に戻り、ステップD5において、変換処理部35は各X線管電圧の各ビューを所定のX線管電圧相当kVaに補正する。本実施例においては、低エネルギー投影データRE1も高エネルギー投影データRE2もその過渡エネルギー投影データREtも、所定のX線管電圧相当kVaのX線投影データになるように補正を行う。
【0051】
ステップD6において、画像再構成部34はX線管電圧補正したX線投影データを画像再構成する。
ステップD7において、画像表示部は所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示する。
ステップD8において、操作者は他のX線管電圧相当kVaの断層像を表示するかを判断し、YESであればステップD9へ行き、NOであれば終了する。
ステップD9において、求めるX線管電圧の変更を行う。
【0052】
次に、本実施例において、X線管電圧補正が適正に行われたか否かを検証する方法について説明する。尚、過渡区間のX線電圧補正が適正に行われなかった場合、X線投影データの不連続性が発生し、断層像においてアーチファクトを発生する可能性がある。
【0053】
図9は、X線管電圧補正が適正に行われたか否かを検証する処理及び不適正であった場合のアーチファクト低減処理の一例のフローチャートを示す。
【0054】
ステップD41において、変換処理部35は各X線管電圧のX線投影データをX線管電圧補正して、所定のX線管電圧相当kVaにする。
ステップD42において、画像再構成部34は所定のX線管電圧相当kVaを画像再構成する。
ステップD43において、画像表示部は所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示する。
【0055】
ステップD44において、空気部分の関心領域ROIの標準偏差値SDは小さいかを判断し、YESであればステップD45へ行き、NOであればステップD47へ行く。
【0056】
例えば、図10は空気部分の関心領域ROIの1例を示す。その設定位置は被検体と撮影テーブル10のクレードル12を避けて、周辺部に8個の空気部分の関心領域ROIを設定している。この関心領域ROIは、必ずしも8個でなく、4個でも1個の領域でも構わない。また、関心領域ROIは被検体やクレードル12に当たらなければ周辺領域でなくても良い。X線管電圧補正部38はその関心領域ROIの値がその撮影条件から定まる空気の標準偏差値SDよりも高い値を出していた場合、アーチファクトが発生していると予想をすることができる。
【0057】
ステップD45において、操作者は他の所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示するかを判断し、YESであればステップD46へ行き、NOであれば終了する。
ステップD46において、X線管電圧補正部38は求めるX線管電圧を変更する。その後、ステップD41へ戻る。
【0058】
ステップD47において、X線管電圧補正部38は空気領域の低エネルギー投影データRE1の平均値、高エネルギー投影データRE2の平均値、過渡エネルギー投影データREtの平均値を求める。
【0059】
ステップD48において、過渡エネルギー投影データREtの平均値は低エネルギー投影データRE1の平均値と、高エネルギー投影データRE2との平均値の間にあるかを判断し、YESであればステップD45へ行き、NOであればステップD49へ行く。
【0060】
ステップD49において、X線管電圧補正部38は、隣り合うX線管電圧80kVの低エネルギー投影データRE1とX線管電圧140kVの高エネルギー投影データRE2とでビュー方向の補間処理を行う。
【0061】
このようにして、画像再構成部34は過渡エネルギー投影データREtを含む全ビューを使用するため無駄被曝なく、S/Nのよい断層像を得ることができる。
尚、上記実施例においては、低エネルギー投影データRE1も高エネルギー投影データRE2もその過渡エネルギー投影データREtも、所定のX線管電圧相当kVaのX線投影データになるように補正を行ったが、過渡エネルギー投影データREtのみを、例えば低エネルギーを得るためのX線管電圧相当又は高エネルギーを得るためのX線管電圧相当に補正してもよい。
【0062】
<実施例2>
本実施例においては、主要なX線投影データである低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とを所定のX線管電圧相当kVaにX線管電圧補正を行う。また、過渡エネルギー投影データREtは、ビュー方向に補間処理して求めたX線投影データを用いる。このビュー方向に補間処理したX線投影データに対し、過渡エネルギー投影データREtのノイズ成分に基づくノイズ低減処理を行う。このようにして、X線投影データの全ビューを用いて無駄被曝なく、S/Nのよい断層像を得ることができる。
【0063】
図11はその処理のフローチャートを示す。
ステップE7までの処理は実施例1において説明した、図4のステップD1からステップD4までの等価画像の再投影処理RPと同様である。
【0064】
ステップE7において、画像再構成部34は低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とを、ステップD4で求めたX線管電圧補正係数により所定のX線管電圧相当kVaに補正する。この時に過渡エネルギー投影データREtのX線管電圧補正は行わない。
【0065】
ステップE8において、画像再構成部34は過渡エネルギー投影データREtを低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とで補間処理又は加重加算処理して補間する。
【0066】
ステップE9において、変換処理部35は過渡エネルギー投影データREtのノイズ変動成分を抽出して、低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とで求められたX線投影データに対してノイズを打ち消す方向に加えることによって過渡エネルギー投影データの変換処理を行う。
【0067】
図12はこのノイズ低減処理の概要を示す。
低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とより、ビュー方向に補間処理又は加重加算処理したX線投影データをDcor(view,row,ch)とすると、ノイズ変動成分Ncor(view,row,ch)は以下の(数式07)により求めることができる。
【数07】
...(数式07)
ただし、Low Pass Filter(row,ch)はチャネル方向のローパスフィルタ、又は列方向とチャネル方向のローパスフィルタとする。“*”は重畳処理(convolution)を表す。
【0068】
また、過渡エネルギー投影データREtをD(view,row,ch)とし、そのノイズ変動成分をN(view,row,ch)とすると、ノイズ変動成分は以下の(数式08)により求めることができる。
【数08】
...(数式08)
なお、この時のLow Pass Filter(row,ch)は(数式09)のものと同じもので良い。
【0069】
今、ある数値の正負の符号を求める関数をsgn(n)とすると、例えばn≧0においてはsgn(n)=1、n<0においてはsgn(n)=−1とする。
この時に、ノイズ変動成分N(view,row,ch)とし、ノイズ低減処理した結果をNcor2(view,row,ch)とすると(数式09)の関係式になる。
【数09】
...(数式09)
【0070】
ステップE10において、画像再構成部34は、X線管電圧補正した低エネルギー投影データRE1、高エネルギー投影データRE2及び変換処理部35において過渡エネルギー投影データから抽出したノイズ成分を用いてノイズ低減処理を行った後の低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2とで求められたX線投影データを用いて画像再構成する。
ステップE11において、画像表示部は所定のX線管電圧相当kVaの断層像を表示する。
ステップE12において、操作者は他のX線管電圧相当kVaの断層像を表示するかを判断し、YESであればステップE13へ行き、NOであれば終了する。
ステップE13において、操作者は求めるX線管電圧を変更する。
【0071】
尚、実施例1と実施例2とで得た各X線管電圧相当kVaの断層像を連続表示(シネ表示)することにより、操作者は被検体の組成情報を視覚的に把握しやすくすることができる。
【0072】
シネ表示するために、X線管電圧補正部38はあらかじめ撮影条件設定でX線管電圧の範囲内を設定し、そのX線管電圧相当kVaの断層像を全て作成しておく。画像表示部は作成した断層像を用い、シネ表示処理することで各部分のX線管電圧依存性を連続的に表示させる。これにより、操作者は組成の違いを視覚的に認識しやすくすることができる。
【0073】
また、本実施例1,本実施例2においては、画像空間処理のデュアルエネルギー撮影の画像再構成を中心に書いているが、投影データ空間のデュアルエネルギー撮影の画像再構成でも同様な効果を出すことができる。また、本実施例1,本実施例2においては、低エネルギー投影データRE1に80kVを高エネルギー投影データRE2に140kVを用いているが、他のX線管電圧においても同様なデュアルエネルギー撮影が行うことができ、同様の効果を出すことができる。
【0074】
また、本実施形態では、X線CT装置100のX線自動露出機構を用いていない場合について記載しているが、X線CT装置100のX線自動露出機構を用いた場合についても同様に効果を出すことができる。
【0075】
また、本実施形態は、生体信号にX線データ収集が同期しない場合について記載しているが、生体信号、特に、心拍信号に同期させても同様な効果を出すことができる。また、本実施例では、多列X線検出器又は、フラットパネルX線検出器に代表するマトリクス構造の二次元X線エリア検出器を持ったX線CT装置100について書かれているが、1列のX線検出器のX線CT装置100においても同様の効果を出せる。さらに、本実施例では、本実施例では、X線CT装置100を元について記載されているが、他の装置と組み合わせたX線CT−PET装置,X線CT−SPECT装置などにおいても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例にかかるX線CT装置100を示すブロック図である。
【図2】(a)X線管電圧を切り換えた360度フルスキャンの2スキャン分を示す図である。 (b)X線管電圧を切り換えた180度+ファン角ハーフスキャンの2スキャン分を示す図である。
【図3】デュアルエネルギー撮影におけるデータ収集タイミングを示した図である。
【図4】過渡エネルギー投影データREtのX線管電圧補間処理のフローチャートである。
【図5】低エネルギー投影データRE1と高エネルギー投影データRE2との組み合わせを示した図である。
【図6】投影データ空間におけるX線吸収係数の断層像を求めるイメージ図である。
【図7】断層像をθ方向に回転して再投影処理RPする方法を示す図である。
【図8】断層像をシフト処理して再投影処理RPする方法を示す図である。
【図9】アーチファクト低減処理のフローチャートである。
【図10】空気部分の関心領域ROIを示す図である。
【図11】過渡エネルギー投影データREtによるノイズ低減処理のフローチャートである。
【図12】X線投影データのノイズ低減処理の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 … 操作コンソール
2 … 入力装置
3 … 中央処理装置 (33 … 前処理部,34 … 画像再構成部,35 … 変換処理部)
5 … データ収集バッファ
6 … モニタ
7 … 記憶装置
10 … 撮影テーブル
12 … クレードル
15 … 回転部
20 … 走査ガントリ
21 … X線管
22 … X線制御部
23 … コリメータ
24 … 多列X線検出器
25 … データ収集装置(DAS)
26 … 回転制御部
28 … ビーム形成X線フィルタ
29 … ガントリ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1X線管電圧によるX線と、前記第1X線管電圧とは異なる第2X線管電圧によるX線とを少なくとも1ビューごとに切り替えて被検体に照射するX線照射部と、
前記被検体に照射したX線の投影データであって、照射されたX線のX線管電圧情報が特定された投影データを収集する投影データ収集部と、
前記X線管電圧情報に基づき、前記第1X線管電圧によるX線の第1エネルギー投影データ、前記第2X線管電圧によるX線の第2エネルギー投影データ、及び前記第1X線管電圧と前記第2X線管電圧との切り換えの際に収集される過渡エネルギー投影データを特定し、少なくとも前記過渡エネルギー投影データを、当該過渡エネルギー投影データを用いた別データに変換する変換処理部を含み、少なくとも前記変換処理後のデータを用いて画像再構成する画像再構成部と、
を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記変換処理部は、前記過渡エネルギー投影データを、所望のX線管電圧相当の投影データに補正するためのX線管電圧補正係数を用いたX線管電圧補正処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記X線管電圧補正処理は、前記過渡エネルギー投影データに対して被検体における物質を特定し、前記物質に応じたX線管線圧補正係数を用いる
ことを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記過渡エネルギー投影データに対する被検体における物質の特定は、前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データとの加重加算に基づくデュアルエネルギー断層像、又は前記第1X線投影データに基づく第1断層像と前記第2X線投影データに基づく第2断層像とを加重加算して得られたデュアルエネルギー断層像を、再投影処理して得られた投影データに基づき特定される
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記デュアルエネルギー断層像は、水等価画像、脂肪等価画像、骨等価画像、又は造影剤等価画像のうち少なくとも1つの等価画像を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記X線管電圧補正処理は、前記第1エネルギー投影データ、前記第2エネルギー投影データ、及び前記過渡エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含む
ことを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記画像再構成手段は、補正後の前記第1エネルギー投影データ、前記第2エネルギー投影データ、及び前記過渡エネルギー投影データに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成すること
ことを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記X線管電圧補正処理は、前記過渡エネルギー投影データの補正が適正かを検証する処理を含む
ことを特徴とする請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記変換処理部は、前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データとに基づく補間処理により前記過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データを算出及び前記過渡エネルギー投影データからノイズ変動成分を抽出を行い、前記過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データに対し、前記ノイズ変動成分を用いたノイズ低減処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記変換処理部は、前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含む
ことを特徴とする請求項9に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データとに基づく補間処理は、前記補正後の前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データを用いた補間処理である
ことを特徴とする請求項10に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記画像再構成手段は、補正後の前記第1エネルギー投影データ、及び前記第2エネルギー投影データ、並びに、前記ノイズ低減処理を行ったデータに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のX線CT装置。
【請求項13】
前記X線照射部は、360度フルスキャンを2スキャン分又は180度+ファン角のハーフスキャンを2スキャン分のいずれかを行う
ことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項14】
前記X線照射部は、前記第1X線管電圧と前記第2X線管電圧とを1スキャン目と2スキャン目とで入れ替える
ことを特徴とする請求項13に記載のX線CT装置。
【請求項15】
前記画像再構成部は、第1X線管電圧のX線投影データを360度フルスキャン分、又は180度+ファン角分収集するのに足りないビュー方向の第1又は第2エネルギー投影データを、補間処理により算出する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項1】
第1X線管電圧によるX線と、前記第1X線管電圧とは異なる第2X線管電圧によるX線とを少なくとも1ビューごとに切り替えて被検体に照射するX線照射部と、
前記被検体に照射したX線の投影データであって、照射されたX線のX線管電圧情報が特定された投影データを収集する投影データ収集部と、
前記X線管電圧情報に基づき、前記第1X線管電圧によるX線の第1エネルギー投影データ、前記第2X線管電圧によるX線の第2エネルギー投影データ、及び前記第1X線管電圧と前記第2X線管電圧との切り換えの際に収集される過渡エネルギー投影データを特定し、少なくとも前記過渡エネルギー投影データを、当該過渡エネルギー投影データを用いた別データに変換する変換処理部を含み、少なくとも前記変換処理後のデータを用いて画像再構成する画像再構成部と、
を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記変換処理部は、前記過渡エネルギー投影データを、所望のX線管電圧相当の投影データに補正するためのX線管電圧補正係数を用いたX線管電圧補正処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記X線管電圧補正処理は、前記過渡エネルギー投影データに対して被検体における物質を特定し、前記物質に応じたX線管線圧補正係数を用いる
ことを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記過渡エネルギー投影データに対する被検体における物質の特定は、前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データとの加重加算に基づくデュアルエネルギー断層像、又は前記第1X線投影データに基づく第1断層像と前記第2X線投影データに基づく第2断層像とを加重加算して得られたデュアルエネルギー断層像を、再投影処理して得られた投影データに基づき特定される
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記デュアルエネルギー断層像は、水等価画像、脂肪等価画像、骨等価画像、又は造影剤等価画像のうち少なくとも1つの等価画像を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記X線管電圧補正処理は、前記第1エネルギー投影データ、前記第2エネルギー投影データ、及び前記過渡エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含む
ことを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記画像再構成手段は、補正後の前記第1エネルギー投影データ、前記第2エネルギー投影データ、及び前記過渡エネルギー投影データに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成すること
ことを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記X線管電圧補正処理は、前記過渡エネルギー投影データの補正が適正かを検証する処理を含む
ことを特徴とする請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記変換処理部は、前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データとに基づく補間処理により前記過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データを算出及び前記過渡エネルギー投影データからノイズ変動成分を抽出を行い、前記過渡エネルギー投影データの代替のX線投影データに対し、前記ノイズ変動成分を用いたノイズ低減処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記変換処理部は、前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データを、同じX線管電圧相当の投影データに補正する処理を含む
ことを特徴とする請求項9に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データとに基づく補間処理は、前記補正後の前記第1エネルギー投影データと前記第2エネルギー投影データを用いた補間処理である
ことを特徴とする請求項10に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記画像再構成手段は、補正後の前記第1エネルギー投影データ、及び前記第2エネルギー投影データ、並びに、前記ノイズ低減処理を行ったデータに基づき、所望のX線管電圧相当の断層像を画像再構成する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のX線CT装置。
【請求項13】
前記X線照射部は、360度フルスキャンを2スキャン分又は180度+ファン角のハーフスキャンを2スキャン分のいずれかを行う
ことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項14】
前記X線照射部は、前記第1X線管電圧と前記第2X線管電圧とを1スキャン目と2スキャン目とで入れ替える
ことを特徴とする請求項13に記載のX線CT装置。
【請求項15】
前記画像再構成部は、第1X線管電圧のX線投影データを360度フルスキャン分、又は180度+ファン角分収集するのに足りないビュー方向の第1又は第2エネルギー投影データを、補間処理により算出する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−95405(P2009−95405A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267679(P2007−267679)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
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