説明

X線CT装置

【課題】時間変化を伴う撮影によって取得されたX線投影データに基づいて画像の再構成を行うための条件を、直感的に編集して指定することが可能なX線CT装置を提供する。
【解決手段】タイムチャート作成部61は、撮影条件の時間変化を表すタイムチャートを作成する。表示制御部32は、タイムチャート、撮影条件、及び再構成条件を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いて、表示部71に表示されているタイムチャート上、及び再構成条件を表示している画面上にて、新たな再構成条件を指定する。再構成処理部23は、指定された新たな再構成条件に従ってX線投影データに再構成処理を施すことで画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像の再構成に関する条件の指定を支援する機能を有するX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体を間にして対向配置されたX線管球とX線検出器とを被検体の周囲に回転させて、X線管球からX線を照射し、被検体を透過した量(透過X線量)をX線検出器で検出する。その検出されたデータをデータ収集装置にてX線投影データとして収集し、この収集したX線投影データを、コンピュータを用いて再構成することによって、被検体の画像データを生成する。
【0003】
従来においては、ルーチン検査の流れを予めプログラム化しておき、1回の操作でそのプログラムを読み出してルーチン検査を順次実行することが行われていた。
【0004】
また、従来技術に係るX線CT装置では、複数の撮影条件(スキャン条件)のもとで制御される複数のスキャン動作を順序付けたスキャンシーケンスを作成し、そのスキャンシーケンスの時間変化を表すタイムチャートを表示していた(特許文献1)。例えば、スキャンシーケンスを、X線管球に与える管電流又は他の線量指標の時間変化として表すタイムチャートを表示していた。操作者は、管電流などの時間変化で表わされるスキャンシーケンスを参照して、所望のスキャンシーケンスを指定して撮影を行っていた。
【0005】
ところで、X線検出器の多列化に伴い、被検体の体軸方向に幅を持った一定の範囲を連続的に撮影することが行われている(ダイナミックスキャン)。例えば、パフュージョン検査においては、被検体に造影剤を注入してダイナミックスキャンを行うことで、3次元の領域を連続的に撮影することが行われている。このような撮影で取得されたX線投影データに基づいて画像データを再構成する場合、表示装置の画面に、X線投影データのリストを表示していた。そして、操作者がそのリストから所望のX線投影データを選択すると、そのX線投影データを取得するための撮影条件や初期設定された再構成条件を含む検査情報を、文字情報として表示装置の画面に表示していた。操作者はその文字情報を参照して、再構成条件の変更や入力を行うことで、所望の再構成条件を指定していた。
【0006】
ここで、従来技術に係る検査情報の表示例を図16と図17とに示す。図16と図17は、従来技術に係る検査情報の表示例を示す画面の図である。例えば図16に示すように、撮影スライス厚及び寝台速度などの撮影条件(スキャン条件)と、画像スライス厚及び再構成間隔などの再構成条件とを含む検査情報600を、文字情報として表示装置の画面に表示していた。また別の表示形式として、図17に示すように、撮影スライス厚(Slice Thickness)や撮影時間(Time)などの検査情報700を、文字情報として表示装置の画面に表示していた。操作者は画面に表示された文字情報を参照して、再構成条件の変更や入力を行っていた。
【0007】
【特許文献1】特開2008−48956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術によると、撮影条件や再構成条件を文字情報として表示していたため、画像の再構成を行うときに、X線投影データの選択、及び再構成条件の設定を直感的に行うことができなかった。ダイナミックスキャンなどのように連続的に撮影を行った場合、再構成の対象となる時間帯を決定する必要があるが、従来技術においては、撮影時間に関する情報が十分に提供されていなかった。例えば、全体の撮影時間のうちの一部分の時間情報のみが表示され、検査全体に亘る撮影時間が表示されていなかったため、検査全体を把握することが困難であった。また、複数の撮影を組み合わせて検査を行った場合、各撮影の時間や撮影の順番が文字情報として表示されていたため、それぞれの撮影が全体の検査においてどのタイミングで実行されたのか、直感的に把握することが困難であった。
【0009】
また、ルーチン検査の内容を予めX線CT装置に設定しておき、検査時にその内容を読み込んで実行する機能がX線CT装置に備えられている。ところが、造影剤を被検体に注入して撮影を行う場合、造影剤の染まり方には個人差があるため、被検体ごとに、そのルーチン検査の内容を編集してX線CT装置に設定しておく必要がある。例えば、撮影のタイミングなどを被検体ごとに変えてX線CT装置に設定しておく必要がある。しかしながら、ルーチン検査の内容に含まれる撮影条件と再構成条件とが、文字情報のみで表示されるため、ルーチン検査の内容を直感的に把握して編集することができなかった。そのため、個々の被検体に合わせたルーチン検査の内容を設定することが困難であった。従って、ルーチン検査の内容の編集に対する補助機能の向上が要求されている。
【0010】
この発明は上記の問題を解決するものであり、時間変化を伴う撮影によって取得されたX線投影データに基づいて画像の再構成を行うための条件を、直感的に編集して指定することが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、X線源と、被検体を挟んで前記X線源と対向配置されたX線検出器と、時間とともに変化する撮影条件に従って前記X線源からX線を曝射させて撮影を行うスキャン制御手段と、前記撮影で取得されたX線投影データに対して、予め設定された再構成条件に従って再構成処理を施すことで画像データを生成する再構成処理手段と、前記撮影条件と前記再構成条件とを含む検査情報の時間変化を表すタイムチャートを作成するタイムチャート作成手段と、前記タイムチャート、前記撮影条件、及び前記再構成条件を表示手段に表示させる表示制御手段と、前記表示手段に表示されているタイムチャート上、及び前記再構成条件を表示している画面上にて新たな再構成条件を指定する指定手段と、を有し、前記再構成処理手段は、前記指定された前記新たな再構成条件に従って再構成処理を施すことで新たな画像データを生成することを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、撮影条件と再構成条件とを含む検査情報の時間変化を表すタイムチャートを作成し、そのタイムチャートを表示することで、実際に行われた検査の全体を視覚的に把握することが可能となる。そして、そのタイムチャート上で再構成条件を指定することで、再構成条件を視覚的に把握して、その再構成条件を直感的に指定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施形態に係るX線CT装置について図1を参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係るX線CT装置を示すブロック図である。
【0014】
この実施形態に係るX線CT装置は、架台装置10と、コンソール部20と、寝台装置80とを備えている。架台装置10は、X線管球及びX線検出器を格納した回転架台(ガントリ)を備え、被検体に関するX線投影データを収集する。そのX線投影データはコンソール部20に出力され、再構成処理などの処理に供される。また、寝台装置80は、被検体を載置するための寝台81を備えている。
【0015】
架台装置10には、X線管球12と、そのX線管球12と対になるX線検出器13とが設けられている。X線検出器13は、互いに直交する2方向(スライス方向(体軸方向)とチャンネル方向(円周方向))のそれぞれに配列された複数の検出素子を備え、これにより2次元のX線検出器を構成している。例えば、X線検出器13には、64列又は256列などの多列型のX線検出器が用いられる。高電圧発生部11は、スキャン制御部24からの制御信号に従って、X線を照射させるための高電圧をX線管球12に供給する。
【0016】
データ収集部14は、X線検出器13の各検出素子と同様に配列されたデータ収集素子を有する。データ収集部14は、X線検出器13により検出されたX線(検出信号)を、スキャン制御部24から出力されたデータ収集制御信号に対応させて収集する。この収集されたデータがX線投影データである。そして、データ収集部14は、X線検出器13の各チャンネルの電流信号を電圧に変換し、増幅してデジタル信号に変換する。X線投影データは、図示しないデータ伝送装置を経由してコンソール部20の前処理部21に送られる。
【0017】
X線管球12、図示しないX線コリメータ、X線検出器13、及びデータ収集部14は、図示しない回転架台に固定されている。架台駆動部15は、スキャン制御部24から出力された架台制御信号に基づいて、図示しない回転架台を回転させる。これにより、回転架台は回転中心を中心として回転させられる。
【0018】
そして、X線管球12から曝射されたX線ビームは、所定幅のスリット(開口部)が設けられたX線コリメータを介して被検体に照射される。被検体を透過したX線ビームはX線検出器13で検出され、その検出信号はデータ収集部14で増幅され、デジタル信号に変換されてX線投影データとして収集される。
【0019】
コンソール部20は、前処理部21、データ記憶部22、再構成処理部23、スキャン制御部24、制御部30、管理部40、撮影プロトコル記憶部50、処理部60、及びユーザインターフェース(UI)70を備えている。
【0020】
前処理部21は、データ収集部14にて収集されたX線投影データに、感度補正やX線強度補正などの処理を施す。前処理部21にて感度補正などの処理が施されたX線投影データは、データ記憶部22に記憶される。
【0021】
再構成処理部23は、データ記憶部22からX線投影データを読み込み、そのX線投影データを逆投影処理することにより、断層像データを再構成する。再構成処理部23は、生成した断層像データを表示制御部32に出力する。表示制御部32は、断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。また、再構成処理部23は、生成した断層像データをデータ記憶部22に出力する。データ記憶部22は、断層像データを記憶する。
【0022】
スキャン制御部24は、撮影条件に従って、回転架台を一定の速度で安定的に回転させるために架台駆動部15に回転制御信号を供給する。また、スキャン制御部24は、撮影条件に従って、X線発生を制御するX線発生制御信号を高電圧発生部11に出力し、X線の検出のタイミングを示す検出制御信号をデータ収集部14に出力する。
【0023】
寝台装置80は、寝台81と寝台駆動部82とを備えている。寝台81は、被検体を載置するための寝台天板と、寝台天板を支持する寝台基台とを備えている。寝台天板は、寝台駆動部82により被検体の体軸方向(スライス方向)に移動可能となっている。寝台基台は、寝台駆動部82により寝台天板を上下方向に移動させることが可能となっている。
【0024】
ここで、単一の撮影条件(スキャン条件)のもとで制御されるスキャンの動作単位をスキャンエレメントと称する。一検査は、複数のスキャンエレメントで構成される。一検査を構成する複数のスキャンエレメントは、順番付けされている。複数のスキャンエレメントには複数の撮影条件がそれぞれ対応するが、複数の撮影条件同士は必ずしも相違するわけではなく、同一の撮影条件が含まれていても良い。
【0025】
撮影条件としては、撮影の種類を区別するスキャンモード、X線管球12に供給する管電圧、X線管球12に供給する管電流、寝台速度、撮影視野の直径(S−FOV)、再構成視野の直径(D−FOV)、撮影スライス厚、ヘリカルピッチ、スライス枚数、撮影開始時点からの経過時間を表すスタートタイム、隣り合うスキャンエレメントの時間間隔を表す待ち時間、スキャンエレメント内でのX線発生のインターバルを表す休止時間、撮影対象の部位を示す部位情報などの情報が含まれる。スキャンモードには、1例としてスキャノ撮影、ダイナミックスキャン、及びヘリカルスキャンなどのモードが含まれる。
【0026】
また、再構成条件には、画像スライス厚、再構成間隔、再構成範囲の開始位置、再構成範囲の終了位置などの情報が含まれる。再構成処理部23は、この再構成条件に従って、X線投影データから画像データを再構成する。
【0027】
(撮影プロトコル記憶部50)
撮影プロトコル記憶部50には、様々な検査を実行するための撮影プロトコルが記憶されている。一検査の撮影プロトコルは、一検査を構成する複数のスキャンエレメントを実行するための複数の撮影条件と、再構成条件とを含んでいる。
【0028】
(制御部30)
制御部30は、編集部31と表示制御部32とを備えている。制御部30は、撮影プロトコル記憶部50から撮影プロトコルを読み込んで、複数のスキャンエレメントに対応する複数の撮影条件をスキャン制御部24に出力する。例えば、表示制御部32が、複数の撮影プロトコルの一覧表を作成し、その一覧表を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いて、その一覧表のなかから所望の撮影プロトコルを指定する。制御部30は、その指定を受け付けて、指定された撮影プロトコルを撮影プロトコル記憶部50から読み込んで、撮影条件をスキャン制御部24に出力する。スキャン制御部24は、各スキャンエレメントに対応する各撮影条件に従って、各部を制御することで撮影を実行する。この撮影で取得されたX線投影データは、データ記憶部22に記憶される。
【0029】
また、制御部30は、再構成条件を再構成処理部23に出力し、再構成処理部23に対して再構成の指示を与える。再構成処理部23は、制御部30から出力された再構成条件に従って、X線投影データを逆投影処理することにより、画像データを再構成する。また、制御部30は、撮影条件と再構成条件とを含む検査情報を管理部40に出力する。
【0030】
この実施形態では1例として、ダイナミックスキャンを行う場合について説明する。すなわち、被検体の体軸方向に幅を持った一定の範囲を連続的に撮影することで、撮影された時間が異なるX線投影データを取得する。これにより、再構成処理部23によって、撮影された時間が異なる複数の断層像データが生成される。これら撮影された時間が異なる複数の断層像データは、データ記憶部22に記憶される。
【0031】
(管理部40)
管理部40は、X線投影データ、検査情報、及び検査履歴などの情報を管理する。例えば、管理部40は、撮影条件と再構成条件とを含む情報を、過去の検査情報としてX線投影データに付帯させてデータ記憶部22に記憶させる。さらに、管理部40は、患者を識別するための識別情報である患者IDと、検査を識別するための識別情報である検査IDとをX線投影データに付帯させてデータ記憶部22に記憶させる。このように、管理部40は、患者IDと検査IDと検査情報とをX線投影データに付帯させてデータ記憶部22に記憶させる。これにより、患者IDと検査IDとによって、X線投影データをデータ記憶部22から読み出すことができる。
【0032】
制御部30は、登録されている患者を示す患者IDの一覧表と、過去の検査を示す検査IDの一覧表とを作成する。表示制御部32は、患者IDの一覧表を表示部71に表示させる。操作者が操作部72を用いて、患者IDの一覧表のなかから検査対象となる患者の患者IDを指定すると、表示制御部32は、指定された患者の検査IDの一覧表を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いて、検査IDの一覧表のなかから所望の検査IDを指定する。制御部30は、指定された患者IDと検査IDとを管理部40に出力する。管理部40は、指定された患者IDと検査IDとが付帯された過去の検査情報をデータ記憶部22から読み込み、制御部30と処理部60とに出力する。これにより、過去の撮影条件と再構成条件とが、制御部30と処理部60とに出力される。
【0033】
(処理部60)
処理部60は、タイムチャート作成部61と、撮影条件画面作成部62と、再構成条件画面作成部63と、解析部64とを備えている。処理部60は、撮影条件や再構成条件を表す画面を作成する。
【0034】
(タイムチャート作成部61)
タイムチャート作成部61は、指定された患者IDと検査IDとが付帯された検査情報を管理部40から受けて、過去の検査情報の時間変化を表すタイムチャートを作成する。例えば、タイムチャート作成部61は、撮影条件に含まれる管電流の時間変化を表すタイムチャートを作成する。そして、タイムチャート作成部61は、そのタイムチャートを示すデータを表示制御部32に出力する。表示制御部32は、タイムチャートを示すデータをタイムチャート作成部61から受けて、そのタイムチャートを表示部71に表示させる。例えば、表示制御部32は、管電流の時間変化を表すタイムチャートを表示部71に表示させる。
【0035】
ここで、タイムチャートの1例を図2に示す。図2は、管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。図2に示すように、表示制御部32は、一検査に含まれるスキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100を表示部71に表示させる。タイムチャート100は、横軸が時間、縦軸が管電流(mA)で構成されている。スキャンエレメント110〜140は、タイムチャート100上において、撮影時間の長さに応じた幅と、それぞれの管電流の値に応じた高さとを有するフレーム状の図形によって表わされている。なお、管電流(mA)は、線量を表す他の指標に替えて表示しても良い。他の指標としては、スキャン時間の総管電流値を示す指標、検査計画で設定された管電流と実曝射時間とにより算出される指標(mAs)、単位スライス厚当たりの曝射線量(CTDIw)、又は、総曝射線量(DLP)などを用いても良い。
【0036】
(撮影条件画面作成部62)
撮影条件画面作成部62は、指定された患者IDと検査IDとが付帯された検査情報を管理部40から受けて、過去の撮影条件を表形式(テーブル形式)で表わす撮影条件画面を作成する。具体的には、撮影条件画面作成部62は、一検査に含まれる各スキャンエレメントを表形式(テーブル形式)で表わす撮影条件画面を作成する。そして、撮影条件画面作成部62は、その撮影条件画面を示すデータを表示制御部32に出力する。表示制御部32は、撮影条件画面を示すデータを撮影条件画面作成部62から受けて、スキャンエレメントが表形式で配置された撮影条件画面を表示部71に表示させる。
【0037】
ここで、撮影条件画面の1例を図3に示す。図3は、撮影条件を表形式で表わす撮影条件画面を示す図である。図3に示すように、表示制御部32は、複数のスキャンエレメント201〜205を表形式(テーブル形式)で配列させた撮影条件200を表示部71に表示させる。1例として、各テーブルには、スキャンエレメント番号、撮影開始のトリガ操作がなされてからの各スキャンエレメントの経過時間に相当する開始時間(Start Time)、直前のスキャンエレメントの終了から当該スキャンエレメントの開始までのインターバルとしての待ち時間(Wait)、各スキャンエレメントの撮影開始位置(Start Pos.)、各スキャンエレメントの撮影終了位置(End Pos.)、及び、撮影の種類を区別するスキャンモード(Scan Mode)などの項目が含まれている。各項目は、数値又は記号で表記される。
【0038】
また、表示制御部32は、管電圧(kV)、管電流(mA)、撮影時間(Rot.Time)、再構成視野の直径(D−FOV)、実行mAs(Eff.mAs)、及び撮影総時間(Total Scan Time)などの条件を撮影条件200として表示部71に表示させる。例えば、操作者が操作部72を用いてスキャンエレメント201〜205のいずれかを指定すると、表示制御部32は、指定されたスキャンエレメントにおける管電圧(kV)や管電流(mA)などの条件を別のウィンドウで表示部71に表示させる。図3に示す例では、操作者が操作部72を用いてスキャンエレメント203を指定すると、表示制御部32は、指定されたスキャンエレメント203における管電圧や管電流などの条件を別のウィンドウで表示部71に表示させる。
【0039】
(再構成条件画面作成部63)
再構成条件画面作成部63は、指定された患者IDと検査IDとが付帯された検査情報を管理部40から受けて、過去の再構成条件を表す再構成条件画面を作成する。具体的には、再構成条件画面作成部63は、画像スライス厚、再構成間隔、再構成範囲の開始位置、及び、再構成範囲の終了位置などの情報を表す再構成条件画面を作成する。そして、再構成条件画面作成部63は、その再構成条件画面を示すデータを表示制御部32に出力する。表示制御部32は、再構成条件画面を示すデータを再構成条件画面作成部63から受けて、再構成条件が表された再構成条件画面を表示部71に表示させる。
【0040】
ここで、再構成条件画面の1例を図4に示す。図4は、再構成条件を表す再構成条件画面を示す図である。例えば図4に示すように、表示制御部32は、画像スライス厚(Slice Thickness)、再構成間隔(Slice Interval)、再構成範囲の開始位置(Start Position)、及び、再構成範囲の終了位置(End Position)などの再構成条件310を表示部71に表示させる。表示制御部32は、再構成条件310の各項目の入力欄を表示部71に表示させ、操作者は操作部72を用いて各項目に数値を入力することができる。これにより、画像スライス厚や再構成間隔などの再構成条件を変更することができる。また、表示制御部32は、複数のスキャンエレメント301〜305を表形式(テーブル形式)で配列させた撮影条件300を、再構成条件310と同時に表示部71に表示させても良い。
【0041】
この実施形態では、表示制御部32は、タイムチャート、撮影条件画面、及び再構成条件画面を、それぞれ切り替えて表示部71に表示させる。すなわち、表示制御部32は、図2に示すタイムチャート100、図3に示す撮影条件200、及び図4に示す再構成条件310を、それぞれ切り替えて表示部71に表示させる。例えば、表示制御部32は、表示形式を切り替えるためのボタン101を表示部71に表示させる。操作者が操作部72を用いてその切り替え用のボタン101を操作すると、表示制御部32はその操作に従って、タイムチャートと撮影条件画面とを切り替えて表示部71に表示させる。具体的には、操作者が操作部72を用いてボタン101のタイムシーケンス(Time Sequence)を指定すると、表示制御部32は、図2に示すタイムチャート100を表示部71に表示させる。一方、操作者が操作部72を用いてボタン101のスキャンシーケンス(Scan Sequence)を指定すると、表示制御部32は、図3に示す撮影条件200を表示部71に表示させる。さらに、操作者が操作部72を用いて再構成条件の表示指示を与えると、表示制御部32は、図4に示す再構成条件310を表示部71に表示させる。
【0042】
以上のように、過去の検査情報の時間変化を表示することで、実際に行われた検査の全体を視覚的に把握することが可能となる。例えば図2に示すように、撮影条件の時間変化を表すタイムチャートを表示することで、検査全体を視覚的に把握することできる。また、実際に行われた撮影の時間の長さや、各スキャンエレメントが実行されたタイミングを視覚的に把握することが可能となる。このように、過去の検査情報の視認性を向上させることが可能となる。
【0043】
(再構成条件の指定)
そして、操作者は操作部72を用いて、図2から図4に示す画面に表わされた情報を参照して、再構成条件を指定する。例えば、操作者は操作部72を用いて、撮影条件の時間変化を表すタイムチャート上で、再構成の対象となる時間帯を指定する。再構成の対象となる時間帯を指定することで、再構成の対象となるスキャンエレメントが指定されたことになる。この指定方法について図5を参照して説明する。図5は、管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。図5に示すように、表示制御部32は、一検査に含まれるスキャンエレメント110〜150の時間変化を表すタイムチャート100を表示部71に表示させる。また、表示制御部32は、再構成の対象となる時間帯の開始時間を指定するための第1マーカを示すデータと、再構成の対象となる時間帯の終了時間を指定するための第2マーカを示すデータとを生成する。そして、表示制御部32は、表示部71に対して、第1マーカ102と第2マーカ103とをタイムチャート100が表されている領域内に表示させる。操作者は操作部72を用いて、タイムチャート100上において、第1マーカ102によって再構成の対象となる時間帯の開始時間を指定し、第2マーカ103によって再構成の対象となる時間帯の終了時間を指定する。第1マーカ102と第2マーカ103とで指定された時間帯が、再構成の対象となる時間帯に該当する。すなわち、第1マーカ102と第2マーカ103とで指定された時間帯に含まれるスキャンエレメントが、再構成の対象となるスキャンエレメントに該当する。
【0044】
例えば図5に示すように、操作者は操作部72を用いて、スキャンエレメント110〜140が含まれる時間帯を第1マーカ102と第2マーカ103とで指定する。この指定によって、スキャンエレメント110〜140が、再構成の対象となるスキャンエレメントに指定されたことになる。すなわち、スキャンエレメント110〜140のそれぞれで収集されたX線投影データが、再構成処理の対象データに指定されたことになる。
【0045】
また、開始時間と終了時間との間で、再構成を行う時間の間隔を指定しても良い。例えば図5に示すように、第1マーカ102と第2マーカ103との間において、破線で示すマーカによって再構成を行う時間の間隔を指定する。また、操作者は、画像スライス厚、スライス間隔、再構成を行う範囲などの条件を指定する。例えば図4に示す画面上において、操作者は操作部72を用いて画像スライス厚(Slice Thickness)、スライス間隔(Slice Interval)、開始位置(Start Position)、及び終了位置(End Position)などの再構成条件を入力する。
【0046】
以上のように、再構成処理の対象となる時間帯(開始時間と終了時間)、画像スライス厚、スライス間隔、開始位置、及び終了位置を含む再構成条件が操作者によって指定されると、その再構成条件がユーザインターフェース(UI)70から制御部30に出力される。制御部30は、その再構成条件を再構成処理部23に出力し、再構成処理を再構成処理部23に要求する。例えば図4に示すように、表示制御部32は、再構成処理を要求するためのボタン320を表示部71に表示させ、操作者が操作部72を用いてボタン320を操作すると、再構成処理の要求がユーザインターフェース(UI)70から制御部30に出力される。制御部30は、ユーザインターフェース(UI)70からの要求を受けて、再構成処理を再構成処理部23に要求する。再構成処理部23は、再構成条件に含まれる再構成処理の対象となる時間帯に収集されたX線投影データをデータ記憶部22から読み込み、再構成条件に含まれる画像スライス厚及びスライス間隔などの条件に従って再構成処理を施すことで、断層像データを生成する。すなわち、再構成処理部23は、再構成処理の対象となるスキャンエレメントによって収集されたX線投影データをデータ記憶部22から読み込み、再構成条件に従って再構成処理を施す。そして、再構成処理部23は、再構成した断層像データを表示制御部32に出力する。表示制御部32は、再構成処理部23から断層像データを受けて、その断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。図5に示す例では、スキャンエレメント110〜140が含まれる時間帯が指定されているため、再構成処理部23は、スキャンエレメント110〜140において収集されたX線投影データをデータ記憶部22から読み込み、読み込んだX線投影データに再構成処理を施すことで、断層像データを生成する。
【0047】
(断層像とタイムチャート)
ここで、断層像の表示例を図6に示す。図6は、断層像とタイムチャートとを示す画面の図である。図6に示すように、表示制御部32は、再構成処理によって生成された複数の断層像の一覧400を表示部71に表示させる。複数の断層像は、上述した再構成条件に基づいて生成された画像である。すなわち、複数の断層像は、再構成の対象となる時間帯に収集されたX線投影データに基づいて生成された画像である。さらに、表示制御部32は、過去の検査情報の時間変化を表すタイムチャートを表示部71に表示させる。1例として、表示制御部32は、管電流の時間変化を表すスキャンエレメント110〜140で構成されるタイムチャート100を表示部71に表示させる。そして、表示制御部32は、再構成処理の対象となる時間帯(開始時間と終了時間)を示す情報に基づいて、タイムチャート100において、その時間帯に含まれるスキャンエレメントを他のスキャンエレメントと識別可能にして表示部71に表示させる。例えばスキャンエレメント130にて収集されたX線投影データに基づいて断層像データを再構成した場合、表示制御部32は、スキャンエレメント130を他のスキャンエレメントと識別可能にして表示部71に表示させる。1例として、表示制御部32は、スキャンエレメント130を予め設定された特定の色で表示部71に表示させる。
【0048】
以上のように、撮影条件の時間変化を表すタイムチャート100を表示し、そのタイムチャート100上において再構成処理の対象となる時間帯を指定できるようにすることで、再構成処理の対象となる所望の時間帯を視覚的に把握して、その時間帯を直感的に指定することが可能となる。すなわち、再構成処理の対象となる所望の撮影を視覚的に把握して、その撮影を直感的に指定することが可能となる。また、撮影条件の時間変化を表すタイムチャート100上で、再構成処理の対象となったスキャンエレメント130を他のスキャンエレメントと識別して表示することで、再構成された画像が、全体の検査のうちどの時間帯で取得された画像なのかを、視覚的に把握することが可能となる。換言すると、再構成された画像が、全体の検査のうちどのスキャンエレメントで取得された画像なのかを、視覚的に把握することが可能となる。
【0049】
なお、断層像とタイムチャート100とが表示された画面において、操作者は操作部72を用いて再構成処理の対象となる時間帯を更に指定しても良い。この指定によって、再構成処理の対象となるスキャンエレメントが指定されたことになる。換言すると、その指定によって、再構成処理の対象となるX線投影データが指定されたことになる。そして、操作者が操作部72を用いて再構成処理の指示を与えると、再構成処理部23は、新たに指定された時間帯に収集されたX線投影データをデータ記憶部22から読み込み、読み込んだX線投影データに再構成処理を施すことで、新たに断層像データを生成する。そして、表示制御部32は、新たに生成された断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。
【0050】
(タイムチャートとスキャノグラム像)
また、ダイナミックスキャンやヘリカルスキャンなどの撮影を行う前に、撮影範囲を決めるための位置決めスキャンを行う。この位置決めスキャンでは、被検体が乗っている寝台を被検体の体軸方向に動かしてその移動範囲の全体を撮影する。この位置決めスキャンによって、その移動範囲の全体を表すスキャノグラム像データを取得し、データ記憶部22に予め記憶しておく。この実施形態では、そのスキャノグラム像をタイムチャートとともに表示部71に表示する。この表示例を図7に示す。図7は、スキャノグラム像とタイムチャートとを示す画面の図である。表示制御部32は、スキャンエレメント110〜140で構成されるタイムチャート100を表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、被検体の上面を表すスキャノグラム像410と、被検体の側面を表すスキャノグラム像420とを、タイムチャート100とともに表示部71に表示させる。スキャノグラム像410を表す画像データと、スキャノグラム像420を表す画像データとは、位置決めスキャンによって予め取得された画像データであり、データ記憶部22に記憶されている。表示制御部32は、管理部40を介してデータ記憶部22からスキャノグラム像を表す画像データを読み込み、スキャノグラム像410、420を表示部71に表示させる。
【0051】
さらに、表示制御部32は、再構成処理の対象となる時間帯を示す情報に基づいて、タイムチャート100において、その時間帯に含まれるスキャンエレメント130を他のスキャンエレメントと識別可能にして表示部71に表示させる。また、表示制御部32は、再構成処理の対象となる範囲を示す情報(再構成処理の開始位置と終了位置とを示す情報)に基づいて、再構成処理の対象となる範囲を表すマーカを示すデータを生成する。そして、表示制御部32は、再構成処理の対象となる範囲を示すマーカを、スキャノグラム像410とスキャノグラム像420とに重ねて表示部71に表示させる。1例として、表示制御部32は、再構成処理の対象となる範囲を示す枠状のマーカ411とマーカ421とを生成する。そして、表示制御部32は、スキャノグラム像410において再構成処理の対象となる範囲に、枠状のマーカ411を重ねて表示部71に表示させる。同様に、表示制御部32は、スキャノグラム像420において再構成処理の対象となる範囲に、枠状のマーカ421を重ねて表示部71に表示させる。なお、スキャノグラム像が、この発明の「位置決め用の画像」の1例に相当する。
【0052】
以上のように、スキャノグラム像において、再構成処理の対象となる範囲をマーカによって囲む。また、タイムチャートにおいて、再構成処理の対象となる時間帯を識別可能にして表す。このように、再構成処理の対象となる位置と、再構成処理の対象となる時間帯とを表示することで、再構成された画像が、全体の検査のうちどの時間帯及びどの位置で取得された画像なのかを、視覚的に把握することが可能となる。
【0053】
なお、スキャノグラム像とタイムチャート100とが表示された画面において、操作者は操作部72を用いて、再構成処理の対象となる範囲と時間帯とを更に指定しても良い。すなわち、タイムチャート100上で、再構成処理の対象となる時間帯を指定し、スキャノグラム像410、420上で、再構成処理の対象となる範囲(位置)を指定する。そして、操作者が操作部72を用いて再構成処理の指示を与えると、再構成処理部23は、新たに指定された時間帯と範囲とに含まれるX線投影データに再構成処理を施すことで、新たに断層像データを生成する。表示制御部32は、新たに生成された断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。
【0054】
(撮影条件とスキャノグラム像)
また、撮影条件とスキャノグラム像とを同時に表示部71に表示しても良い。この表示例を図8に示す。図8は、撮影条件とスキャノグラム像とを示す画面の図である。表示制御部32は、被検体の上面を表すスキャノグラム像410と、被検体の側面を表すスキャノグラム像420とを、表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、複数のスキャンエレメント301〜305を表形式(テーブル形式)で配列させた撮影条件300を表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、スキャノグラム像410において再構成処理の対象となる範囲に、枠状のマーカ411を重ねて表示部71に表示させる。同様に、表示制御部32は、スキャノグラム像420において再構成処理の対象となる範囲に、枠状のマーカ421を重ねて表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、再構成処理の対象となったスキャンエレメントを、他のスキャンエレメントと識別可能にして表示部71に表示させる。例えばスキャンエレメント305にて収集されたX線投影データに基づいて断層像データを再構成した場合、表示制御部32は、スキャンエレメント305が表示されている欄を、他のスキャンエレメントが表示されている欄と識別可能にして表示部71に表示させる。1例として、表示制御部32は、スキャンエレメント305が表示されている欄を、予め設定された特定の色で表示部71に表示させる。
【0055】
また、図8に示すように、表示制御部32は、画像スライス厚(Slice Thickness)やスライス間隔(Slice Interval)などの再構成条件310を入力するための入力欄を表示部71に表示させても良い。操作者は操作部72を用いて画像スライス厚(Slice Thickness)、スライス間隔(Slice Interval)、開始位置(Start Position)、及び終了位置(End Position)などの再構成条件を再度、入力しても良い。そして、操作者が操作部72を用いて再構成処理の指示を与えると、再構成処理部23は、新たに指定された再構成条件に従ってX線投影データに再構成処理を施すことで、新たに断層像データを生成する。そして、表示制御部32は、新たに生成された断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。
【0056】
以上のように、この実施形態に係るX線CT装置によると、撮影条件の時間変化をタイムチャートで表示することで、検査全体を視覚的に把握することができ、また、実際に行われた撮影の時間の長さや、各スキャンエレメントが実行されたタイミングを視覚的に把握することが可能となる。さらに、そのタイムチャートにおいて、再構成された画像が収集された時間帯を識別可能にして表示することで、再構成された画像が、検査全体のうちどの時間帯に取得された画像なのかを、視覚的に把握することが可能となる。
【0057】
(編集部31)
編集部31は、過去に実行された検査における撮影条件や再構成条件を、新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる。例えば図9に示すように、表示制御部32は、過去に実行された一検査に含まれるスキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100を表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、保存を要求するためのボタン104を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いてボタン104を操作することで、過去の撮影条件の保存を要求する。編集部31は、保存の要求をユーザインターフェース(UI)70から受けて、スキャンエレメント110〜140に対応する過去の撮影条件を、新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる。また、編集部31は、過去に実行された検査における画像スライス厚やスライス間隔などの再構成条件を、新たな撮影プロトコルに含ませて撮影プロトコル記憶部50に記憶させても良い。
【0058】
(撮影条件の変更)
さらに、編集部31は、過去に実行された検査における撮影条件や再構成条件を変更して、変更後の撮影条件や再構成条件を新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させても良い。編集部31の機能について図10を参照して説明する。図10は、管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。表示制御部32は、過去に実行された一検査に含まれるスキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100を表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、スキャンエレメント単位で、追加(New)、複写(Copy)、貼り付け(Paste)、及び、削除(Delete)の各指示を要求するためのボタン105を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いてボタン105を操作することで、スキャンエレメント110〜140に新たなスキャンエレメントを追加したり、一部のスキャンエレメントを削除したり、スキャンエレメントの順番を変えたりする。編集部31は、ユーザインターフェース(UI)70から変更の指示を受け付けて、編集の対象となっている過去の撮影条件に含まれる各スキャンエレメントに新たなスキャンエレメントを追加したり、一部のスキャンエレメントを削除したり、スキャンエレメントの順番を変えたりして新たな撮影条件を作成する。そして、編集部31は、新たに作成した撮影条件を新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる。例えば、一部のスキャンエレメントを削除する場合、操作者は操作部72を用いて、削除対象のスキャンエレメントを指定し、さらに、削除ボタンを操作する。編集部31は、ユーザインターフェース(UI)70からスキャンエレメントの削除指示を受け付け、編集の対象となっている過去の撮影条件に含まれるスキャンエレメントのうち、指定されたスキャンエレメントを削除する。また、新たなスキャンエレメントを追加する場合、操作者は操作部72を用いて、追加する時間帯を指定し、さらに、管電流の値を指定する。編集部31は、ユーザインターフェース(UI)70から時間帯と管電流の値とを示す情報を受け付け、編集の対象となっている過去の撮影条件に、新たなスキャンエレメントを追加する。
【0059】
また、操作者は操作部72を用いて、各スキャンエレメントに対応する撮影時間や管電流の値を編集しても良い。例えば、操作者は、条件変更の対象となるスキャンエレメントを表すフレーム状の図形に、マウスなどのポインティングデバイス(操作部72)によってポインタを合わせて、撮影時間の長さに対応する幅、及び管電流の値に対応する高さを変更する。編集部31は、ユーザインターフェース(UI)70から変更された撮影時間と管電流の値とを示す情報を受けて、編集の対象となっているスキャンエレメントの撮影時間と管電流の値とを変更する。そして、編集部31は、変更後の撮影条件を新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる。
【0060】
また、編集部31は、編集の結果である撮影条件を処理部60に出力する。タイムチャート作成部61は、その撮影条件に従って、撮影条件の時間変化を表す新たなタイムチャートを作成し、そのタイムチャートを示すデータを表示制御部32に出力する。表示制御部32は、新たなタイムチャートを表示部71に表示させる。
【0061】
さらに、図8に示すように、表示制御部32は、画像スライス厚、スライス間隔、開始位置、及び終了位置などの再構成条件を入力するための入力欄を表示部71に表示させる。そして、操作者が操作部72を用いて、画像スライス厚やスライス間隔などの再構成条件を入力すると、入力された再構成条件を示す情報がユーザインターフェース(UI)70から編集部31に出力される。編集部31は、新たに入力された再構成条件を受け付けて、編集の対象となっている過去の再構成条件を変更する。そして、編集部31は、変更後の再構成条件を新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる。
【0062】
以上のように、撮影条件の時間変化をタイムチャートで表示し、そのタイムチャート上で撮影条件を編集することで、操作者は、撮影条件を視覚的に把握して、直感的に撮影条件を変更することが可能となる。具体的には、操作者は、検査全体を視覚的に把握しながら、各スキャンエレメントが実行されるタイミングを変更することができ、また、各スキャンエレメントにおける撮影時間の長さや管電流の値を変更することが可能となる。また、実際に行われた撮影条件を基にして新たに撮影条件を作成することで、被検体の個人差に対応した撮影条件を作成することが可能となる。
【0063】
また、撮影条件や再構成条件を編集した後に、検査を実行しても良い。例えば、表示制御部32は、検査の実行を要求するためのボタンを表示部71に表示させ、操作者は操作部72を用いてそのボタンによって検査の実行を要求する。制御部30は、ユーザインターフェース(UI)70から検査実行の要求を受け付けて、編集後の撮影プロトコルに従って検査を実行する。具体的には、制御部30は、編集後の撮影条件をスキャン制御部24に出力する。スキャン制御部24は、編集後のタイムチャートが示すスキャンエレメントに対応する撮影条件に従って、各部を制御することで撮影を実行する。また、再構成処理部23は、編集後の再構成条件に従って再構成処理を行うことで、新たな断層像データを生成する。
【0064】
(検査に関わるデータの表示)
また、この実施形態に係るX線CT装置は、検査に関わるデータを作成して、タイムチャート上にそのデータを重ねて表示しても良い。例えば、被検体に流入した造影剤の濃染過程を表す曲線(Time Density Curve(以下、「TDC」と称する))、心電波形、又は呼吸波形を検査に関わるデータとして、タイムチャート上に重ねて表示する。この実施形態では1例として、TDCを作成してタイムチャート上に重ねて表示する場合について説明する。
【0065】
(解析部64)
例えば、被検体に造影剤を注入して連続的に撮影することで、撮影された時間が異なるX線投影データを取得する。そして、再構成処理部23は、撮影された時間が異なる複数の断層像データを作成し、データ記憶部22は、撮影された時間が異なる複数の断層像データを記憶する。解析部64は、撮影された時間が異なる複数の断層像データを、管理部40を介してデータ記憶部22から読み込む。そして、解析部64は、各断層像に対して関心領域(ROI)を設定し、その関心領域内において、造影剤の濃染の時間変化を表す曲線(TDC)を作成する。例えば、輝度値(画素値)の時間変化を表す曲線をTDCとする。TDCにおいては、組織に造影剤が流入した場合に、その組織の輝度値が大きくなる。そのため、輝度値の大きさが造影剤の濃染の状態を表している。従って、各部位における輝度値の時間変化を表すTDCは、各部位における造影剤の濃染の時間変化(造影剤の濃染過程)を表していることになる。なお、関心領域(ROI)は、操作者が操作部72を用いて指定することができる。例えば、表示制御部32は、断層像を表示部71に表示させ、操作者が操作部72を用いてその断層像上で関心領域(ROI)を指定する。断層像上における関心領域(ROI)の位置を示す座標情報が、ユーザインターフェース(UI)70から制御部30を介して解析部64に出力される。解析部64は、その関心領域(ROI)の座標情報を受けて、関心領域(ROI)内におけるTDCを作成する。
【0066】
そして、解析部64は、TDCを示すデータを表示制御部32に出力する。表示制御部32は、タイムチャートの時間とTDCの時間とを合わせて、同じ時間軸上で同時に表示部71に表示させる。この表示例を図11と図12とに示す。図11と図12は、管電流の時間変化を表すタイムチャートと、造影剤の濃染の時間変化を表すTDCとを示す画面の図である。
【0067】
例えば図11に示すように、表示制御部32は、スキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100とTDC500とを同じ時間軸上で同時に表示部71に表示させる。TDC500においては、横軸が時間を表し、縦軸が輝度値を表している。表示制御部32は、タイムチャート100の時間とTDC500の時間とを合わせて、同じ時間軸上で同時に表示部71に表示させる。このようにTDC500を表示することで、操作者は、造影剤の濃染過程を参照しながら、各スキャンエレメントが実行されるタイミングなどの撮影条件を変更することが可能となる。上述したように、操作者は操作部72を用いてボタン105を操作することで、スキャンエレメント110〜140に新たなスキャンエレメントを追加したり、一部のスキャンエレメントを削除したり、スキャンエレメントの順番を変えたりする。このとき、操作者は、TDC500を参照することで、造影剤の濃染過程に合わせて、撮影のタイミングなどを設定することが可能となる。TDC500は、実際の撮影に基づいて作成された造影剤の濃染過程を表す曲線であるため、そのTDC500を参照しながら撮影条件を変更することで、被検体の個人差に対応した撮影条件を作成することが可能となる。そして、上述したように、編集部31は、ユーザインターフェース(UI)70から変更の指示を受け付けて、編集の対象となっている過去の撮影条件に含まれる各スキャンエレメントに新たなスキャンエレメントを追加したり、一部のスキャンエレメントを削除したり、スキャンエレメントの順番を変えたりすることで、新たな撮影条件を作成する。編集部31は、新たに作成した撮影条件を新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる。
【0068】
例えば、TDC500が表す輝度値が低下する直前まで撮影を行いたい場合、操作者は、スキャンエレメントの撮影時間をその直前まで延ばすことで、所望の時間帯を撮影時間に指定することが可能となる。例えば図12に示すように、スキャンエレメント110〜140が実行されるタイミングを変更することで、TDC510が示す造影剤の濃染過程に撮影のタイミングを合わせることが可能となる。
【0069】
また、図12に示すように、表示制御部32は、保存を要求するためのボタン107を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いてボタン107を操作することで、撮影条件の保存を要求する。編集部31は、保存の要求をユーザインターフェース(UI)70から受けて、スキャンエレメント110〜140に対応する各撮影条件を、新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる。また、表示制御部32は、検査の実行を要求するためのボタン106を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いてボタン106を操作することで、検査の実行を要求する。制御部30は、ユーザインターフェース(UI)70から検査実行の要求を受け付けて、編集後の撮影プロトコルに従って検査を実行する。
【0070】
以上のように、実際に取得されたTDCをタイムチャートとともに表示することで、個人差がある情報を参照して撮影条件を作成することが可能となる。例えば、造影のタイミングに撮影のタイミングを合わせることが可能となる。これにより、個々の被検体に合わせた撮影条件を作成することが可能となる。
【0071】
また、この実施形態に係るX線CT装置によると、個人差がある造影剤の濃染過程に合わせて撮影のタイミングを設定することが可能となるため、造影撮影の前に、造影剤の濃染過程を把握するためのテストスキャンを実行しなくても、造影の濃染過程にタイミングを合わせた撮影を行うことが可能となる。そのことにより、被検体の負担を軽減することが可能となる。
【0072】
なお、この実施形態では、TDCを1例にして説明したが、TDCの代わりに、心電波形や呼吸波形をタイムチャートに重ねて表示しても良い。例えば、心電計を用いて被検体の心電波形を取得し、制御部30にその心電波形を入力する。表示制御部32は、タイムチャートの時間と心電波形の時間とを合わせて、同じ時間軸上で同時に表示部71に表示させる。また、呼吸器を用いて被検体の呼吸波形を取得し、制御部30にその呼吸波形を入力する。表示制御部32は、タイムチャートの時間と呼吸波形の時間とを合わせて、同じ時間軸上で同時に表示部71に表示させる。操作者は、心電波形や呼吸波形を参照しながら、撮影条件を編集することが可能となるため、被検体の個人差に対応した撮影条件を作成することが可能となる。
【0073】
(撮影部位の表示)
また、スキャンエレメントの時間変化を表すタイムチャート上に、撮影対象となった部位を示す情報を表示しても良い。この表示例について図13を参照して説明する。図13は、管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。
【0074】
例えば図13に示すように、表示制御部32は、スキャンエレメント110〜150の時間変化を表すタイムチャート100Aを表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、過去の撮影条件に含まれる撮影部位を示す部位情報を、スキャンエレメント110〜150に対応させて表示部71に表示させる。例えば、スキャンエレメント110〜140が、頭部を対象にした撮影である場合、表示制御部32は、スキャンエレメント110〜140を表すフレーム状の図形の上部に、文字情報として「Head」を表示させる。また、スキャンエレメント150が首部を対象とした撮影である場合、表示制御部32は、スキャンエレメント150を表すフレーム状の図形の上部に、文字情報として「Neck」を表示させる。
【0075】
以上のように、タイムチャート上に、撮影対象となって部位を示す情報を表示することで、どの撮影がどの部位を対象にして行われたものなのかを直感的に把握することが可能となる。
【0076】
なお、ユーザインターフェース(UI)70は、表示部71と操作部72とを備えている。表示部71は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。表示部71の画面には、タイムチャート、撮影条件、及び再構成条件などの情報が表示される。操作部72は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチ、各種ボタン、又は、キーボードなどで構成されている。なお、ユーザインターフェース(UI)70が、この発明の「指定手段」の1例に相当する。
【0077】
また、再構成処理部23、スキャン制御部24、制御部30、管理部40、及び処理部60は、それぞれ図示しないCPUと、ROM、RAM、HDDなどの図示しない記憶装置とを備えている。記憶装置には、再構成処理部23の機能を実行する再構成プログラム、スキャン制御部24の機能を実行するスキャン制御プログラム、制御部30の機能を実行するための制御プログラム、管理部40の機能を実行するための管理プログラム、及び、処理部60の機能を実行するための処理プログラムが記憶されている。また、制御プログラムには、編集部31の機能を実行するための編集プログラムと、表示制御部32の機能を実行するための表示制御プログラムとが含まれている。また、処理プログラムには、タイムチャート作成部61の機能を実行するためのタイムチャート作成プログラム、撮影条件画面作成部62の機能を実行するための撮影条件画面作成プログラム、再構成条件画面作成部63の機能を実行するための再構成条件画面作成プログラム、及び、解析部64の機能を実行するための解析プログラムが記憶されている。CPUが記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することで、各部の機能を実行する。
【0078】
(動作)
次に、この実施形態に係るX線CT装置による一連の動作について、図14と図15と参照して説明する。図14と図15とは、この発明の実施形態に係るX線CT装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0079】
まず、再構成条件を指定するための動作について図14を参照して説明する。制御部30は、撮影プロトコル記憶部50から撮影プロトコルを読み込んで、複数のスキャンエレメントに対応する複数の撮影条件をスキャン制御部24に出力する。スキャン制御部24は、各スキャンエレメントに対応する各撮影条件に従って、各部を制御することで撮影を実行する。この実施形態では、ダイナミックスキャンを実行することで、被検体の体軸方向に幅を持った一定の範囲を連続的に撮影する。このダイナミックスキャンによって、撮影された時間が異なるX線投影データを取得し、X線投影データはデータ記憶部22に記憶される。また、管理部40は、撮影条件と再構成条件とを含む情報を、過去の検査情報としてX線投影データに付帯させてデータ記憶部22に記憶させる。また、管理部40は、患者IDと検査IDとをX線投影データに付帯させてデータ記憶部22に記憶させる。このように、管理部40は、患者IDと検査IDと検査情報とをX線投影データに付帯させてデータ記憶部22に記憶させる。
【0080】
(ステップS01)
操作者は操作部72を用いて、検査対象となる患者の患者IDと検査IDとを入力する。患者IDと検査IDとが、ユーザインターフェース(UI)70から制御部30に出力される。制御部30は、入力された患者IDと検査IDとを管理部40に出力する。管理部40は、その患者IDと検査IDとが付帯された検査情報(撮影条件と再構成条件)をデータ記憶部22から読み込み、制御部30と処理部60とに出力する。
【0081】
(ステップS02)
そして、タイムチャート作成部61は、検査情報を管理部40から受けて、過去の検査情報の時間変化を表すタイムチャートを作成する。例えば、タイムチャート作成部61は、過去の一検査に含まれる複数のスキャンエレメントの時間変化を表すタイムチャートを作成する。1例として、タイムチャート作成部61は、撮影条件に含まれる管電流の時間変化を表すタイムチャートを作成する。そして、タイムチャート作成部61は、そのタイムチャートを示すデータを表示制御部32に出力する。
【0082】
(ステップS03)
表示制御部32は、タイムチャートを示すデータをタイムチャート作成部61から受けて、そのタイムチャートを表示部71に表示させる。例えば図2に示すように、表示制御部32は、過去に実行された一検査に含まれるスキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100を表示部71に表示させる。
【0083】
一方、撮影条件画面作成部62は、検査情報を管理部40から受けて、過去の撮影条件を表形式(テーブル形式)で表わす撮影条件画面を作成する。1例として、撮影条件画面作成部62は、過去の一検査に含まれる各スキャンエレメントを表形式(テーブル形式)で表わす撮影条件画面を作成する。そして、撮影条件画面作成部62は、その撮影条件画面を示すデータを表示制御部32に出力する。例えば図3に示すように、表示制御部32は、複数のスキャンエレメント201〜205を表形式(テーブル形式)で配列させた撮影条件200を表示部71に表示させる。また、再構成条件画面作成部63は、検査情報を管理部40から受けて、過去の再構成条件を表す再構成条件画面を作成する。1例として、再構成条件画面作成部63は、画像スライス厚、再構成間隔、再構成範囲の開始位置、及び、再構成範囲の終了位置などの情報を表す再構成条件画面を作成する。そして、再構成条件画面作成部63は、その再構成条件画面を示すデータを表示制御部32に出力する。例えば図4に示すように、表示制御部32は、画像スライス厚(Slice Thickness)、再構成間隔(Slice Interval)、再構成範囲の開始位置(Start Position)、及び、再構成範囲の終了位置(End Position)などの再構成条件310を表示部71に表示させる。
【0084】
(ステップS04、S05)
そして、操作者が操作部72を用いて再構成処理モードへの移行の命令を与え、再構成条件を指定する。例えば、操作者が操作部72を用いて画面の切り替え指示を与えると、表示制御部32は、タイムチャート、撮影条件画面、及び再構成条件画面を、それぞれ切り替えて表示部71に表示させる。操作者は、各画面に表わされた情報を参照して、再構成条件を指定する。例えば図5に示すように、操作者は操作部72を用いて、タイムチャート100上において、第1マーカ102によって再構成処理の対象となる時間帯の開始時間を指定し、第2マーカ103によって再構成処理の対象となる時間帯の終了時間を指定する。このようにして、再構成処理の対象となる時間帯を指定する。また、操作者は操作部72を用いて、画像スライス厚、スライス間隔、開始位置及び終了位置などの条件を入力する。このように再構成条件が指定されると、その再構成条件が、ユーザインターフェース(UI)70から制御部30に出力される。
【0085】
(ステップS06)
制御部30は、操作者によって指定された再構成条件を再構成処理部23に出力し、再構成処理を再構成処理部23に要求する。再構成処理部23は、再構成条件に含まれる再構成処理の対象となる時間帯に収集されたX線投影データをデータ記憶部22から読み込み、再構成条件に含まれる画像スライス厚及びスライス間隔などの条件に従って再構成処理を施すことで、断層像データを生成する。そして、再構成処理部23は、再構成した断層像データを表示制御部32に出力する。
【0086】
(ステップS07)
表示制御部32は、再構成処理部23から断層像データを受けて、その断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。例えば図6に示すように、表示制御部32は、再構成処理によって生成された複数の断層像の一覧400を表示部71に表示させる。さらに、表示制御部32は、管電流の時間変化を表すスキャンエレメント110〜140で構成されるタイムチャート100を表示部71に表示させる。そして、表示制御部32は、再構成処理の対象となった時間帯を示す情報に基づいて、タイムチャート100において、その時間帯に含まれるスキャンエレメントを他のスキャンエレメントと識別可能にして表示部71に表示させる。例えばスキャンエレメント130にて収集されたX線投影データに基づいて断層像データを再構成した場合、図6に示すように、表示制御部32は、スキャンエレメント130を予め設定された特定の色で表示部71に表示させる。
【0087】
以上のように、撮影条件の時間変化を表すタイムチャート100を表示することで、実際に行われた検査の全体を視覚的に把握することが可能となり、また、各スキャンエレメントが実行されたタイミングを視覚的に把握することが可能となる。また、タイムチャート100上において再構成処理の対象となる時間帯を指定できるようにすることで、所望の時間帯を視覚的に把握して、直感的に指定することが可能となる。さらに、再構成された画像が、全体の検査のうちどのスキャンエレメントで取得された画像なのかを、視覚的に把握することが可能となる。
【0088】
次に、過去に実行された検査の検査条件を、新たな撮影プロトコルとして登録するための処理について、図15を参照して説明する。
【0089】
(ステップS10)
上述したステップS01と同様に、操作者は操作部72を用いて、検査対象となる患者の患者IDと検査IDとを入力する。管理部40は、その患者IDと検査IDとが付帯された検査情報(撮影条件と再構成条件)をデータ記憶部22から読み込み、制御部30と処理部60とに出力する。
【0090】
(ステップS11)
上述したステップS02と同様に、タイムチャート作成部61は、過去の検査情報の時間変化を表すタイムチャートを作成する。例えば、タイムチャート作成部61は、過去の一検査に含まれる複数のスキャンエレメントの時間変化を表すタイムチャートを作成する。1例として、タイムチャート作成部61は、管電流の時間変化を表すタイムチャートを作成する。
【0091】
(ステップS12)
上述したステップS03と同様に、図2に示すように、表示制御部32は、過去に実行された一検査に含まれるスキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100を表示部71に表示させる。また、撮影条件画面作成部62は、過去の撮影条件を表形式(テーブル形式)で表わす撮影条件画面を作成する。また、再構成条件画面作成部63は、過去の再構成条件を表す再構成条件画面を作成する。表示制御部32は、ユーザインターフェース(UI)70からの切り替え指示に従って、タイムチャート、撮影条件画面、及び再構成条件画面を切り替えて表示部71に表示させる。
【0092】
(ステップS13、S14、S15)
そして、操作者が操作部72を用いて再構成処理モードへの移行の命令を与える(ステップS13)。さらに、操作者が操作部72を用いて編集モードへの移行を要求した場合(ステップS14)、制御部30は、処理モードを編集モードに切り替える(ステップS15)。一方、操作者が操作部72を用いて処理の終了を要求すると、制御部30は処理を終了する。
【0093】
(ステップS16、S17)
編集モードに移行すると、制御部30は、ユーザインターフェース(UI)70からの入力を待ち、入力を受けると、その入力に応じた処理を実行する。
【0094】
(ステップS18、S20)
例えば、操作者が操作部72を用いて、TDCの取り込みを指示すると、制御部30は、処理部60に対してTDCの作成の指示を与える。解析部64は、制御部30からその指示を受けると、撮影された時間が異なる複数の断層像データを、管理部40を介してデータ記憶部22から読み込む。そして、解析部64は、各断層像に対して関心領域(ROI)を設定し、その関心領域内において、造影剤の濃染の時間変化を表す曲線(TDC)を作成する(ステップS18)。1例として、解析部64は、輝度値の時間変化を表す曲線をTDCとして作成する。そして、表示制御部32は、タイムチャートとTDCとを同じ時間軸上で同時に表示部71に表示させる(ステップS20)。例えば図11に示すように、表示制御部32は、スキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100とTDC500とを同じ時間軸上で同時に表示部71に表示させる。また、表示制御部32は、TDCの代わりに、被検体の心電波形や呼吸波形をタイムチャートに重ねて表示しても良い。例えば、表示制御部32は、検査に関わるデータを操作者に選択させるための選択画面を表示部71に表示させる。1例として、表示制御部32は、TDC、心電波形、及び呼吸波形を選択させるための選択画面を表示部71に表示させ、操作者は操作部72を用いて、選択画面から所望のデータを指定する。表示制御部32は、選択されたデータを表示部71に表示させる。TDCなどを表示した後は、ステップS16に処理が戻り、制御部30は、ユーザインターフェース(UI)70からの入力を待ち、入力を受けると、その入力に応じた処理を実行する。
【0095】
(ステップS19、S20)
操作者が操作部72を用いて撮影条件や再構成条件などの条件を変更した場合、編集部31は、その変更に従って、過去に実行された検査における撮影条件や再構成条件を変更する(ステップS19)。例えば図10に示すように、表示制御部32は、過去に実行された一検査に含まれるスキャンエレメント110〜140の時間変化を表すタイムチャート100を表示部71に表示させる。操作者は操作部72を用いて、スキャンエレメントの追加、削除、又は順番の変更を指示する。編集部31は、ユーザインターフェース(UI)70から変更の指示を受け付けて、編集の対象となっている過去の撮影条件に含まれるスキャンエレメントを編集することで、新たな撮影条件を作成する。また、操作者は操作部72を用いて、各スキャンエレメントにおける撮影時間や管電流の値を編集しても良い。さらに、図8に示すように、表示制御部32は、画像スライス厚及びスライス間隔などの再構成条件を入力するための入力欄を表示部71に表示させ、操作者は操作部72を用いて、所望の再構成条件を入力しても良い。そして、表示制御部32は、変更後の撮影条件や再構成条件を表示部71に表示させる(ステップS20)。条件を変更した後は、ステップS16に処理が戻り、制御部30は、ユーザインターフェース(UI)70からの入力を待ち、入力を受けると、その入力に応じた処理を実行する。
【0096】
(ステップS21、S22)
また、操作者が操作部72を用いて検査の実行を要求すると、制御部30はユーザインターフェース(UI)70からその要求を受けて、検査の実行モードに移行する(ステップS21)。例えば、制御部30は、編集後の撮影条件をスキャン制御部24に出力し、スキャン制御部24は、編集後のタイムチャートが示すスキャンエレメントに従って各部を制御することで撮影を実行する(ステップS22)。
【0097】
(ステップS23、S24)
また、操作者が操作部72を用いて、編集結果の保存を要求すると、編集部31は、新たに作成した編集後の撮影条件と再構成条件とを、新たな撮影プロトコルとして撮影プロトコル記憶部50に記憶させる(ステップS23)。また、操作者が操作部72を用いて編集モードの終了を要求すると、制御部30はユーザインターフェース(UI)70からその要求を受けて、編集モードを終了して再構成処理モードに移行する(ステップS24、S13)。
【0098】
以上のように、タイムチャート上で撮影条件を編集することで、操作者は、撮影条件を視覚的に把握して、直感的に撮影条件を変更することが可能となる。例えば、操作者は、検査全体を視覚的に把握しながら、個々の撮影のタイミング、撮影時間の長さ、及び管電流の値などを変更することが可能となる。また、実際に行われた撮影条件を基にして新たに撮影条件を作成することで、被検体の個人差に対応した撮影条件を作成することが可能となる。例えば、造影剤の濃染過程や心電波形や呼吸波形をタイムチャート上に表示することで、それらを参照しながら、撮影のタイミングなどを視覚的に編集することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置を示すブロック図である。
【図2】管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。
【図3】撮影条件を表形式で表わす撮影条件画面を示す図である。
【図4】再構成条件を表す再構成条件画面を示す図である。
【図5】管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。
【図6】断層像とタイムチャートとを示す画面の図である。
【図7】スキャノグラム像とタイムチャートとを示す画面の図である。
【図8】撮影条件とスキャノグラム像とを示す画面の図である。
【図9】管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。
【図10】管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。
【図11】管電流の時間変化を表すタイムチャートと、造影剤の濃染の時間変化を表すTDCとを示す画面の図である。
【図12】管電流の時間変化を表すタイムチャートと、造影剤の濃染の時間変化を表すTDCとを示す画面の図である。
【図13】管電流の時間変化を表すタイムチャートを示す画面の図である。
【図14】この発明の実施形態に係るX線CT装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施形態に係るX線CT装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図16】従来技術に係る検査情報の表示例を示す画面の図である。
【図17】従来技術に係る検査情報の表示例を示す画面の図である。
【符号の説明】
【0100】
10 架台装置
20 コンソール部
21 前処理部
22 データ記憶部
23 再構成処理部
24 スキャン制御部
30 制御部
31 編集部
32 表示制御部
40 管理部
50 撮影プロトコル記憶部
60 処理部
61 タイムチャート作成部
62 撮影条件画面作成部
63 再構成条件画面作成部
64 解析部
70 ユーザインターフェース(UI)
71 表示部
72 操作部
80 寝台装置
81 寝台
82 寝台制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、
被検体を挟んで前記X線源と対向配置されたX線検出器と、
時間とともに変化する撮影条件に従って前記X線源からX線を曝射させて撮影を行うスキャン制御手段と、
前記撮影で取得されたX線投影データに対して、予め設定された再構成条件に従って再構成処理を施すことで画像データを生成する再構成処理手段と、
前記撮影条件と前記再構成条件とを含む検査情報の時間変化を表すタイムチャートを作成するタイムチャート作成手段と、
前記タイムチャート、前記撮影条件、及び前記再構成条件を表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記表示手段に表示されているタイムチャート上、及び前記再構成条件を表示している画面上にて新たな再構成条件を指定する指定手段と、
を有し、
前記再構成処理手段は、前記指定された前記新たな再構成条件に従って再構成処理を施すことで新たな画像データを生成することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記検査情報の変更の指示を、前記表示手段に表示されている前記タイムチャート上で受け付けて、前記検査情報を変更する編集手段と、
前記変更された検査情報を記憶する記憶手段と、を更に有し、
前記スキャン制御手段は、前記変更された検査情報に含まれる撮影条件に従って前記撮影を行うことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記被検体に造影剤が注入された状態で前記撮影を行って取得されたX線投影データに基づいて、前記造影剤が前記被検体内で濃染していく過程を表す曲線を生成する解析手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記濃染の過程を表す曲線を、前記タイムチャートと同じ時間軸上で前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記被検体から得られる心電波形又は呼吸波形を受け付けて、前記タイムチャートと同じ時間軸上で前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記再構成処理手段は、前記表示手段に表示されているタイムチャート上において再構成処理の対象となる時間帯が前記指定手段によって指定されると、前記指定された時間帯に取得されたX線投影データに基づいて前記画像データを生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記表示手段に対して、前記新たな再構成条件で生成された画像データに基づく画像を表示させ、さらに、前記タイムチャート上において、前記画像データが生成された時間帯を識別可能にして表示させることを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記タイムチャート作成手段は、複数の撮影条件によって制御される複数のスキャンエレメントが順序付けられたスキャンシーケンスを、前記X線源に供給する管電流の時間変化で表わすことで前記タイムチャートを作成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記タイムチャート作成手段は、複数の撮影条件によって制御される複数のスキャンエレメントが順序付けされたスキャンシーケンスを、前記X線源に供給する管電流の時間変化で表わすことで前記タイムチャートを作成し、
前記指定手段は、前記表示手段に表示されているタイムチャート上において再構成処理の対象となるスキャンエレメントを指定し、
前記再構成処理手段は、前記表示手段に表示されているタイムチャート上において再構成処理の対象となるスキャンエレメントが前記指定手段によって指定されると、前記指定されたスキャンエレメントによって取得されたX線投影データに基づいて前記画像データを生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記表示制御手段は、前記表示手段に対して、前記新たな再構成条件で生成された画像データに基づく画像を表示させ、さらに、前記タイムチャート上において、前記指定されたスキャンエレメントを識別可能にして前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項8に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記表示制御手段は、前記表示手段に対して、予め取得された位置決め用の画像を表示させ、前記位置決め用の画像において、前記再構成処理の対象となった前記被検体の範囲を識別可能にして表示させることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のX線CT装置。

【図1】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−17215(P2010−17215A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177699(P2008−177699)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】