説明

XYステージ機構

【課題】X軸搬送機構の両端側に駆動力を作用させることができ、部品点数を少なくすることができるXYステージ機構を提供する。
【解決手段】移動テーブル20を互いに直交する2方向に移動させるXYステージ機構であって、前記2方向のうち何れか一方の方向に沿って延在し、互いに平行に並べて設けた2つのラックギア30と、2つのラックギアの間に前記2方向のうち他方の方向に沿って延在して設けられ、かつ外周面に移動テーブルと係合する螺子溝を形成した棒状の部材であって、自身の中心軸回りに回転する場合に、移動テーブルの前記他方の方向に沿って移動させる送り部材40と、送り部材と平行に設けた棒状の部材であって、各々のラックギアと噛合うピニオンギア52,53を有して成り、自身の中心軸回りに回転する場合に、送り部材と一体的に前記一方の方向に沿って移動して移動テーブルを前記一方の方向に沿って移動させるガイド部材50とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動テーブルを互いに直交する2方向に移動させるXYステージ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動テーブルを互いに直交する2方向(以下、X軸方向、Y軸方向という。)に移動させるXYステージ機構が知られている。このXYステージ機構は、例えば図8に示すように、移動テーブル100をX軸方向に沿って移動させるX軸搬送機構110と、このX軸搬送機構110を含む移動テーブル100をY軸方向に沿って移動させるY軸搬送機構120とを備えている。
【0003】
X軸搬送機構110は、第1送り部材111と、スプライン軸112と、軸受部材113と、第1モータ114とを備えている。第1送り部材111は、外周面に移動テーブル100と係合する螺子溝を形成した棒状の部材であって、移動テーブル100を貫通する態様でX軸方向に沿って設けられている。第1送り部材111は、自身の中心軸回りに回転可能に支持されており、回転した場合に移動テーブル100をX軸方向に沿って移動させる。スプライン軸112は、Y軸方向に沿って設けた棒状の部材であり、第1送り部材111の一端部とスライド歯車115及び傘歯車116を介して連結してある。スプライン軸112は、自身の中心軸回りに回転可能に支持されており、回転した場合にスライド歯車115及び傘歯車116を介して第1送り部材111がその中心軸回りに回転する。軸受部材113は、第1送り部材111の両端部に設けてあり、第1送り部材111を回転可能に支持している。スプライン軸112側に設けた一方の軸受部材113は、スプライン軸112に沿ってY軸方向に移動可能に構成してある。第1モータ114は、スプライン軸112の一端部に設けてあり、スプライン軸112及び第1送り部材111をその中心軸回りに回転させるものである。
【0004】
Y軸搬送機構120は、第2送り部材121と、伝達部材123と、第2モータ125とを備えている。第2送り部材121は、各々の軸受部材113に対して設けてある。第2送り部材121は、外周面に軸受部材113と係合する螺子溝を形成した棒状の部材であって、軸受部材113を貫通する態様でY軸方向に沿って設けられている。第2送り部材121は、自身の中心軸回りに回転可能に支持されており、回転した場合に軸受部材113をY軸方向に沿って移動させる。伝達部材123は、各々の第2送り部材121と直交する態様で一方の第2送り部材121aから他方の第2送り部材121bに亘って設けた棒状の部材である。伝達部材123は、一方の端部が一方の第2送り部材121aの端部と傘歯車124を介して連結してあり、他方の端部が他方の第2送り部材121bの端部と傘歯車124を介して連結してある。第2モータ125は、第2送り部材121をその中心軸回りに回転させるものである。
【0005】
このようなXYステージ機構では、第1モータ114によって第1送り部材111が回転すると、移動テーブル100がX軸方向に移動する。また、第2モータ125によって第2送り部材121が回転すると、第1送り部材111とガイド部材112とが一体的にY軸方向に移動し、これにより移動テーブル100がY軸方向に移動することになる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−116937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したXYステージ機構では、2つの第2送り部材121a,121bの間にスプライン軸112と、第1送り部材111とを配設し、スプライン軸112を介して第1送り部材111を回転させることで、第1送り部材111と、第2送り部材121とがX軸方向及びY軸方向に直交する方向に重なって配置されることを防止している。これにより、移動テーブル100をX軸方向に移動させる第1送り部材111と、移動テーブル100をY軸方向に移動させる第2送り部材121とを同一平面上に配置可能にして、XYステージ機構の高さ(X軸方向及びY軸方向に直交する方向の長さ)を低くし、XYステージ機構の小型化を図っている。また、伝達部材123によって2つの第2送り部材121a,121bを連結し、2つの第2送り部材121a,121bによって第1送り部材111の両側に駆動力を作用させることで、移動テーブル100のY軸方向の移動をスムーズにしている。しかしながら、XYステージ機構の高さを低くし、かつ第1送り部材111の両側に駆動力を作用させるためには、2つの第2送り部材121a,121bの間に、スプライン軸112と、第1送り部材111と、伝達部材123とを設ける必要があるため、部品点数が多くなり、製造コストが増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部品点数を削減することで製造コストの低減化を図ることができるXYステージ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るXYステージ機構は、移動テーブルを互いに直交する2方向に移動させるXYステージ機構であって、前記2方向のうち何れか一方の方向に沿って延在し、互いに平行に並べて設けた2つのラックギアと、2つのラックギアの間に前記2方向のうち他方の方向に沿って延在して設けられ、かつ外周面に前記移動テーブルと係合する螺子溝を形成した棒状の部材であって、自身の中心軸回りに回転する場合に、前記移動テーブルを前記他方の方向に沿って移動させる送り部材と、前記送り部材と平行に設けた棒状の部材であって、各々のラックギアと噛合うピニオンギアを有して成り、自身の中心軸回りに回転する場合に、前記送り部材と一体的に前記一方の方向に沿って移動して前記移動テーブルを前記一方の方向に沿って移動させるガイド部材とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係るXYステージ機構は、上述した請求項1において、前記送り部材をその中心軸回りに回転させる第1モータと、前記ガイド部材をその中心軸回りに回転させる第2モータとを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係るXYステージ機構は、上述した請求項1において、前記送り部材及び前記ガイド部材をその中心軸回りに回転させるモータと、前記モータからの動力を前記送り部材及び前記ガイド部材の何れか一方に択一的に伝達するクラッチ機構とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に係るXYステージ機構は、上述した請求項1〜3において、前記送り部材及び前記ガイド部材を支持するベースを備え、前記ラックギアは、前記ベースと一体的に形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に係るXYステージ機構は、上述した請求項4において、前記送り部材と前記ガイド部材とを連結する連結部材と、前記ベースに前記連結部材の少なくとも一部を覆う態様で設けられ、前記連結部材が前記ベースから離れる方向へ移動することを防止する規制部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるXYステージ機構は、直交する2方向のうち何れか一方の方向に沿って延在し、互いに平行に並べて設けた2つのラックギアと、2つのラックギアの間に2方向のうち他方の方向に沿って延在して設けられ、かつ外周面に移動テーブルと係合する螺子溝を形成した棒状の部材であって、自身の中心軸回りに回転する場合に、移動テーブルを他方の方向に沿って移動させる送り部材と、送り部材と平行に設けた棒状の部材であって、各々のラックギアと噛合うピニオンギアを有して成り、自身の中心軸回りに回転する場合に、送り部材と一体的に一方の方向に沿って移動して移動テーブルを前記一方の方向に沿って移動させるガイド部材とを備えたものであるため、移動テーブルを一方の方向に沿って移動させるガイド部材と、移動テーブルを他方の方向に沿って移動させる送り部材とを同一平面上に配置してXYステージ機構の高さを低くすることができるとともに、ガイド部材のピニオンギアが各々のラックギアと噛合いながら送り部材と一体的に一方の方向へ移動するため、送り部材の両側に駆動力を作用させて移動テーブルの一方の方向の移動をスムーズに行うことができる。また、2つのラックギアの間に送り部材と、ガイド部材とを設けた構成であるため、部品点数を削減して製造コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1であるXYステージ機構を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示したXYステージ機構の要部を拡大した斜視図である。
【図3】図3は、図1に示したXYステージ機構の要部を拡大した斜視図である。
【図4】図4は、図1に示したXYステージ機構に上ケースを装着した状態を示す平面図である。
【図5−1】図5−1は、図1に示したXYステージ機構の動作を説明する平面図である。
【図5−2】図5−2は、図1に示したXYステージ機構の動作を説明する平面図である。
【図5−3】図5−3は、図1に示したXYステージ機構の動作を説明する平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2であるXYステージ機構を示す平面図である。
【図7】図7は、図6に示したXYステージ機構の要部を拡大した斜視図である。
【図8】図8は、従来のXYステージ機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかるXYステージ機構の実施の形態を詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1であるXYステージ機構を示す平面図である。XYステージ機構1は、ベース10と、ラックギア30と、送り部材40と、ガイド部材50と、第1モータ70と、第2モータ72と、ギアケース(連結部材)80と、軸受部材(連結部材)90とを備えて構成してある。
【0018】
ベース10は、XYステージ機構1の基盤となるものである。ベース10は、ベース本体11と、規制部材12とを備えて構成してある。ベース本体11は、平面を有する板状の部材であり、ラックギア30、送り部材40、ガイド部材50、第1モータ70、第2モータ72、ギアケース80及び軸受部材90を支持している。規制部材12は、ベース本体11の平面上にベース本体11と一体的に形成され、図1のY軸方向に沿って延在する長尺状の部材である。規制部材12は、図2及び図3に示すように、ベース本体11より上方に向けて突出する突出片12aと、突出片12aの上端部分から突出片12aと直交する方向に向けて延在する規制片12bとを備えて構成してある。規制部材12は、各々の規制片12bを対向させる態様で左右一対に設けてある。
【0019】
ラックギア30は、直線状を成す歯車からなり、一対の規制部材12の間にY軸方向に沿って延在して設けてある。本実施の形態では2つのラックギア30a,30bを平行に並べて設けている。ラックギア30は図3に示すように、歯がベース本体11の平面内に収容される態様でベース10と一体的に形成してある。
【0020】
送り部材40は、外周面に螺子溝を形成した棒状の部材であり、2つのラックギア30a,30bの間に図1のX軸方向に沿って設けてある。送り部材40には移動テーブル20が取付けてある。送り部材40の一端部は、ギアケース80に回転可能に支持されており、送り部材40の他端部は、軸受部材90に回転可能に支持されている。これにより、送り部材40は自身の中心軸回りに回転可能に構成されている。
【0021】
移動テーブル20は、箱型に形成してある。図2に示すように、移動テーブル20には対向する一方の面から他方の面に亘って貫通する2つの孔21,22が形成してある。一方の孔21には、内周面に螺子溝が形成してある。送り部材40は、一方の孔21を貫通しており、互いに螺子溝を噛合わせて移動テーブル20と係合している。
【0022】
ガイド部材50は、送り部材40と平行に並べて設けてあり、ガイド部本体51と、ピニオンギア52,53とからなる。ガイド部本体51は、円柱状を成す棒状の部材である。ガイド部本体51の直径は、移動テーブル20の他方の孔22の内径より僅かに小さく形成してある。ガイド部本体51は当該孔22を貫通し、移動テーブル20がガイド部本体51に沿ってスライド移動することを許容している。ピニオンギア52,53は、図2及び図3に示すように、ラックギア30a,30bと噛合うギアであり、各々のラックギア30a,30bに対して個別に設けられ、ガイド部本体51に固定してある。本実施の形態では、ガイド部本体51の両端部にピニオンギア52,53が固定してある。ガイド部本体51の一端側は、ピニオンギア52をギアケース80の内部に収容させる態様でギアケース80に回転可能に支持されており、ガイド部本体51の他端側は、軸受部材90に回転可能に支持されている。本実施の形態では、ガイド部本体51の他端がピニオンギア53から僅かに突出しており、この突出部が軸受部材90に支持されている。これにより、ガイド部材50は自身の中心軸回りに回転可能に構成されている。
【0023】
第1モータ70は、第1減速機構71を介して送り部材40に駆動力を付与するものである。図2に示すように第1モータ70は、出力軸701と、第1モータギア702とを備えている。第1モータギア702は、出力軸701を回転軸として回転するギアである。第1モータ70は、正転、逆転が可能に構成してある。
【0024】
第1減速機構71は、第1減速ギア711と、出力ギア712とを備えて構成してある。第1減速ギア711は、X軸方向に沿って延在する回転軸と、当該回転軸に固定した大径ギア及び小径ギアとからなる。回転軸と、大径ギアと、小径ギアとは、同一材料で一体的に形成してある。第1減速ギア711の大径ギアは第1モータギア702と係合している。出力ギア712は、第1モータ70からの動力を送り部材40に出力するためのギアであり、送り部材40の一端部に固定してあり、送り部材40を回転軸として回転する。出力ギア712は第1減速ギア711の小径ギアと係合している。第1減速機構71は、ギアケース80に収容されており、第1減速ギア711の回転軸は、ギアケース80に回転可能に支持されている。尚、第1減速ギア711は、必要に応じて複数設けることが可能である。
【0025】
第2モータ72は、第2減速機構73を介してガイド部材50に駆動力を付与するものである。第2モータ72は、出力軸721と、第2モータギア722とを備えている。第2モータギア722は、出力軸721を回転軸として回転するギアである。第2モータ72は、正転、逆転が可能に構成してある。
【0026】
第2減速機構73は、複数の第2減速ギア731を備えて構成してある。第2減速ギア731は、X軸方向に沿って延在する回転軸と、当該回転軸に固定した大径ギア及び小径ギアとからなる。回転軸と、大径ギアと、小径ギアとは、同一材料で一体的に形成してある。本実施の形態では2つの第2減速ギア731a,731bを設けている。一方の第2減速ギア731aの大径ギアは第2モータギア722と係合しており、一方の第2減速ギア731aの小径ギアは他方の第2減速ギア731bの大径ギアと係合している。他方の第2減速ギア731bの小径ギアはガイド部材50の一方のピニオンギア52と係合している。第2減速機構72は、ギアケース80に収容されており、第2減速ギア731の回転軸は、ギアケース80に回転可能に支持されている。尚、第2減速ギア731の数は1以上であればよく、必要に応じて適宜設けることが可能である。
【0027】
ギアケース80は、上ケース81と、下ケース82とからなる。図1に示すXYステージ機構1は上ケース81を取外した状態を示しており、図4に上ケース81を装着した状態を示す。上ケース81は一面が開口した箱型に形成してある。下ケース82は、上方から見た視図が上ケース81と同形の長方形状の枠821と、枠821の内部に配設される軸受台(図示せず)と、規制板822とを備えている。枠821及び軸受台には、U字型に窪んだ軸受溝821aが複数形成してある。各々の軸受溝821aには、第1減速ギア711の回転軸、第2減速ギア731の回転軸、又は送り部材40の一端部が回転可能に支持されている。また、枠821には、ガイド部本体51の一端部を挿通させて回転可能に支持する貫通孔821bと、第1モータ70及び第2モータ72の出力軸701,721を個別に挿通させる凹部821cとが形成してある。第1モータ70と第2モータ72とは枠821に固定して設けられた保持フレーム83によって保持されている。規制板822は、図2に示すように、枠821から一方の規制部材12に向かって延在する板状の部材である。規制板822の端部は、ベース本体11と、一方の規制部材12とによって形成された溝に挿入されており、この溝に沿ってY軸方向に移動可能に構成してある。上ケース81と下ケース82とは、接着、超音波溶着又は熱圧着によって接合してある。
【0028】
軸受部材90は、軸受部901と、移動規制部902とを備えて構成してある。図3に示すように、軸受部901は、Y軸方向に沿って長尺状に形成した板状の部材であり、送り部材40の他端部と、ガイド部材50の他端部とを各々個別に回転可能に支持する軸受孔901aを有している。移動規制部902は、軸受部901の下端部分から他方の規制部材12に向かってベース本体11と平行に延在する板状の部材である。移動規制部902は、ベース本体11と、他方の規制部材12とによって形成されたY軸方向に沿って延在する溝に挿入されており、この溝に沿ってY軸方向に移動可能に構成してある。軸受部材90は、接続部材91を介して下ケース82と連結してある。接続部材91は長尺状の部材であり、送り部材40及びガイド部材50と平行に設けてある。本実施の形態では、軸受部材90と接続部材91と下ケース82とが一体的に形成してある。
【0029】
実施の形態1では、送り部材40と、ガイド部材50と、第1モータ70と、ギアケース80と、軸受部材90とによって、移動テーブル20をX軸方向に移動させるX軸搬送機構を構成している。また、ラックギア30と、ガイド部材50と、第2モータ72とによって、X軸搬送機構を含む移動テーブル20をY軸方向に移動させるY軸搬送機構を構成している。
【0030】
次に、上述したXYステージ機構1の動作について説明する。図5−1〜図5−3は、図1に示したXYステージ機構1の動作を説明する平面図である。ここでは、図5−1に示すように移動テーブル20がXYステージ機構1において、最上方、かつ最右方に位置する状態を初期状態とする。
【0031】
初期状態において第1モータ70を正転駆動すると、第1モータ70の回転は、第1減速機構71によって必要な回転速度に変換されて送り部材40に伝達される。これにより送り部材40が回転駆動すると、図5−2に示すように移動テーブル20はガイド部材50に案内されて送り部材40に沿って左方に移動する。
【0032】
第1モータ70を逆転駆動すると、第1モータ70の回転は、第1減速機構71によって必要な回転速度に変換されて送り部材40に伝達される。これにより送り部材40が回転駆動すると、移動テーブル20はガイド部材50に案内されて送り部材40に沿って図5−2の右方に移動する。これにより、移動テーブル20はX軸方向に移動することになる。
【0033】
初期状態において第2モータ72を正転駆動すると、第2モータ72の回転は、第2減速機構73によって必要な回転速度に変換されてガイド部材50に伝達される。これにより、ガイド部材50が回転駆動すると、図5−3に示すように、ピニオンギア52,53とラックギア30a,30bとが噛合って、ガイド部材50が下方に移動し、同時に、移動テーブル20、送り部材40、ガイド部材50、第1モータ70、第2モータ72、ギアケース80及び軸受部材90が下方に移動する。
【0034】
第2モータ72を逆転駆動すると、第2モータ72の回転は、第2減速機構73によって必要な回転速度に変換されてガイド部材50に伝達される。これにより、ガイド部材50が回転駆動すると、ピニオンギア52,53とラックギア30a,30bとが噛合って、ガイド部材50が図5−3の上方に移動し、同時に、移動テーブル20、送り部材40、ガイド部材50、第1モータ70、第2モータ72、ギアケース80及び軸受部材90が上方に移動する。これにより、移動テーブル20はY軸方向に移動することになる。
【0035】
本実施の形態におけるXYステージ機構1は、Y軸方向に沿って延在し、互いに平行に並べて設けた2つのラックギア30と、2つのラックギア30の間にX軸方向に沿って延在して設けられ、かつ外周面に移動テーブルと係合する螺子溝を形成した棒状の部材であって、自身の中心軸回りに回転する場合に、移動テーブル20をX軸方向に沿って移動させる送り部材40と、送り部材40と平行に設けた棒状の部材であって、各々のラックギア30と噛合うピニオンギア52,53を有して成り、自身の中心軸回りに回転する場合に、送り部材40と一体的にY軸方向に沿って移動して移動テーブル20をY軸方向に沿って移動させるガイド部材50とを備えたものであるため、移動テーブル20をY軸方向に沿って移動させるガイド部材50と、移動テーブル20をX軸方向に沿って移動させる送り部材40とを同一平面上に配置してXYステージ機構1の高さ(ベース10の平面に直交する方向の長さ)を低くすることができるとともに、ガイド部材50のピニオンギア52,53が各々のラックギア30と噛合いながら送り部材40と一体的にY軸方向へ移動するため、送り部材40の両側に駆動力を作用させて移動テーブル20のY軸方向の移動をスムーズに行うことができる。また、2つのラックギア30の間に送り部材40と、ガイド部材50とを設けた構成であるため、部品点数を削減して製造コストの低減化を図ることができる。
【0036】
また、ラックギア30が、ベース10と一体的に形成されているため、部品点数を削減して製造コストの低減化を図ることができるとともに、XYステージ機構1の高さを一層低くすることができる。
【0037】
また、規制部材12によって、ギアケース80及び軸受部材90がベース10から離れる方向へ移動することを規制しているため、送り部材40、ガイド部材50、ギアケース80及び軸受部材90がベース10の上方への浮き上がることを防止することができる。
【0038】
尚、本実施の形態では、第1減速機構71と第2減速機構73とを同一のギアケース80に収容し、第1モータ70及び第1減速機構71と、第2モータ72及び第2減速機構73とを送り部材40及びガイド部材50の一方の端部に設ける構成としているが、配置位置はこれに限られるものではない。例えば、第1減速機構71と第2減速機構73とを各々異なるケースに収容し、第1モータ70及び第1減速機構71と、第2モータ72及び第2減速機構73とを送り部材40及びガイド部材50の異なる端部側に設ける構成としてもよい。
【0039】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2であるXYステージ機構を示す平面図である。本発明の実施の形態2であるXYステージ機構2は、実施の形態1の第1モータ70、第1減速機構71、第2モータ72、第2減速機構73及びギアケース80に替えて、モータ61、減速機構62、クラッチ機構63及びギアケース64を設けている。実施の形態2において、実施の形態1と同一の符号は同一の構成を示し、ここではその詳細を省略する。
【0040】
モータ61は、減速機構62及びクラッチ機構63を介して送り部材40及びガイド部材50に駆動力を付与するものである。モータ61は、出力軸611と、モータギア612とを備えている。モータギア612は、出力軸611を回転軸として回転するギアである。モータ61は、正転、逆転が可能に構成してある。
【0041】
減速機構62は、図7に示すように、複数の第3減速ギア622を備えて構成してある。第3減速ギア622は、X軸方向に沿って延在する回転軸と、当該回転軸に固定された大径ギア及び小径ギアとからなる。回転軸と、大径ギアと、小径ギアとは、同一材料で一体的に形成してある。本実施の形態では3つの第3減速ギア622a,622b,622cを設けている。第3減速ギア622aは、大径ギアがモータギア612と係合しており、小径ギアが第3減速ギア622bの大径ギアと係合している。第3減速ギア622bの小径ギアは、第3減速ギア622cの大径ギアと係合している。第3減速ギア622の回転軸は、ギアケース64に回転可能に支持されている。尚、第3減速ギア622の数は1以上であればよく、必要に応じて適宜設けることが可能である。
【0042】
クラッチ機構63は、モータ61からの動力を送り部材40又はガイド部材50に伝達するように切り替えるものである。クラッチ機構63は、駆動部631と、出力ギア632と、接合部633とを備えて構成してある。駆動部631は、通電により電磁石を形成するコイル(図示せず)と、コイルに挿通してあってコイルの励磁状態に応じてコイルの内部又は外部に向かって直進移動するプランジャ631aとを備えて構成してある。出力ギア632は、プランジャ631aの先端に回転可能に装着されるギアであり、ギアケース64の内部に収容されて第3減速ギア622cの小径ギアと係合している。接合部633は、プランジャ631aがコイルの外部に移動した場合に出力ギア632の円盤面と接合して出力ギア632と一体的に回転するものであり、出力ギア632と略同一形状の円形盤であって送り部材40の一端部に固定してある。接合部633はギアケース64の内部に収容されている。
【0043】
本実施の形態では、プランジャ631aがコイルの内部に移動すると、出力ギア632と一方のピニオンギア52とが係合してクラッチ機構63とガイド部材50とが伝達状態となる一方、出力ギア632と接合部633との接合が遮断されてクラッチ機構63と送り部材40とが遮断状態になる。また、プランジャ631aがコイルの外部へ移動すると、出力ギア632と一方のピニオンギア52との係合が解除されてクラッチ機構63とガイド部材50とが遮断状態となる一方、出力ギア632と接合部633とが接合してクラッチ機構63と送り部材40とが伝達状態になる。
【0044】
ギアケース64は、減速機構62を内部に収容するケースであるとともに、送り部材40と、ガイド部材50とを回転可能に支持して、送り部材40の一端部と、ガイド部材50の一端部とを連結するものである。ギアケース64は、上ケース(図示せず)と、下ケース642とからなる。上ケースは一面が開口した箱型に形成してある。下ケース642は、上方から見た視図が上ケースと同形の長方形状の枠642aと、枠642aの内部に配設される軸受台(図示せず)と、規制板644とを備えている。枠642a及び軸受台には、U字型に窪んだ軸受溝642bが複数形成してある。各々の軸受溝642bは、第3減速ギア622の回転軸又は送り部材40を回転可能に支持している。また、枠642aには、ガイド部材50を挿通させて回転可能に支持する貫通孔642cと、モータ61の出力軸611を挿通させる凹部が形成してある。モータ61は枠642aに固定して設けられた保持フレーム643によって保持されている。規制板644は図7に示すように、枠642aから一方の規制部材12に向かって延在する板状の部材である。規制板642の端部は、ベース本体11と、一方の規制部材12とによって形成された溝に挿入されている。規制板642は、この溝に沿ってY軸方向に移動可能に構成してある。上ケースと下ケース642とは、接着、超音波溶着又は熱圧着によって接合してある。
【0045】
実施の形態2では、送り部材40と、ガイド部材50と、モータ61と、クラッチ機構63と、ギアケース64と、軸受部材90とによって、移動テーブル20をX軸方向に移動させるX軸搬送機構70を構成している。また、ラックギア30と、ガイド部材50と、モータ61と、クラッチ機構63とによって、X軸搬送機構を含む移動テーブル20をY軸方向に移動させるY軸搬送機構を構成している。
【0046】
次に、実施の形態2におけるXYステージ機構2の動作について説明する。ここでは、移動テーブル20が図6に示すXYステージ機構2において、最上方、かつ最右方に位置する状態を初期状態とする。
【0047】
初期状態にある移動テーブル20をX軸方向に移動する場合、クラッチ機構63を送り部材40と伝達状態とし、クラッチ機構63をガイド部材50と遮断状態とする。その後、モータ61を正転駆動すると、モータ61の回転は、第3減速機62によって必要な回転速度に変換され、クラッチ機構63を介して送り部材40に伝達される。これにより送り部材40が回転駆動すると、移動テーブル20はガイド部材50に案内されて送り部材40に沿って図6の左方に移動する。
【0048】
モータ61を逆転駆動すると、モータ61の回転は、第3減速機62によって必要な回転速度に変換され、クラッチ機構63を介して送り部材40に伝達される。これにより送り部材40が回転駆動すると、移動テーブル20はガイド部材50に案内されて送り部材40に沿って図6の右方に移動する。これにより移動テーブル20はX軸方向に移動することになる。
【0049】
初期状態にある移動テーブル20をY軸方向に移動する場合、クラッチ機構63を送り部材40と遮断状態とし、クラッチ機構63をガイド部材50と伝達状態とする。その後、モータ61を正転駆動すると、モータ61の回転は、第3減速機62によって必要な回転速度に変換され、クラッチ機構63を介してガイド部材50に伝達される。これによりガイド部材50が回転駆動すると、ピニオンギア52,53とラックギア30a,30bとが噛合って、ガイド部材50が図6の下方に移動し、同時に、移動テーブル20、送り部材40、モータ61、第クラッチ機構63、ギアケース64及び軸受部材90が、図6の下方に移動する。
【0050】
モータ61を逆転駆動すると、モータ61の回転は、第3減速機62によって必要な回転速度に変換され、クラッチ機構63を介してガイド部材50に伝達される。これによりガイド部材50が回転駆動すると、ピニオンギア52,53とラックギア30a,30bとが噛合って、ガイド部材50が図6の上方に移動し、同時に、移動テーブル20、送り部材40、モータ61、第クラッチ機構63、ギアケース64及び軸受部材90が、図6の上方に移動する。これにより移動テーブル20はY軸方向に移動することになる。
【0051】
実施の形態2におけるXYステージ機構2では、実施の形態1の効果に加え、クラッチ機構63によってモータ61からの動力を送り部材40及びガイド部材50の何れか一方に選択的に伝達するものであるため、1つのモータによってX軸方向の移動とY軸方向の移動とを行うことができ、高価なモータの数を少なくすることで製造コストを低減することができる。
【0052】
尚、上述した実施の形態1及び2では、X軸方向に沿った移動テーブル20の移動をガイド部材50によって案内しているが、この構成に限られるものではない。例えば、X軸方向に沿った移動テーブル20の移動の案内をガイド部材50ではなく、接続部材91によって行う構成とすることが可能である。また、X軸方向に沿った移動テーブル20の移動の案内を接続部材91及びガイド部材50によって行う構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,2 XYステージ機構
10 ベース
11 ベース本体
12 規制部材
20 移動テーブル
30 ラックギア
40 送り部材
50 ガイド部材
51 ガイド部本体
52,53 ピニオンギア
61 モータ
62 減速機構
63 クラッチ機構
64,80 ギアケース
70 第1モータ
71 第1減速機構
72 第2モータ
73 第2減速機構
90 軸受部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動テーブルを互いに直交する2方向に移動させるXYステージ機構であって、
前記2方向のうち何れか一方の方向に沿って延在し、互いに平行に並べて設けた2つのラックギアと、
2つのラックギアの間に前記2方向のうち他方の方向に沿って延在して設けられ、かつ外周面に前記移動テーブルと係合する螺子溝を形成した棒状の部材であって、自身の中心軸回りに回転する場合に、前記移動テーブルを前記他方の方向に沿って移動させる送り部材と、
前記送り部材と平行に設けた棒状の部材であって、各々のラックギアと噛合うピニオンギアを有して成り、自身の中心軸回りに回転する場合に、前記送り部材と一体的に前記一方の方向に沿って移動して前記移動テーブルを前記一方の方向に沿って移動させるガイド部材と
を備えたことを特徴とするXYステージ機構。
【請求項2】
前記送り部材をその中心軸回りに回転させる第1モータと、
前記ガイド部材をその中心軸回りに回転させる第2モータと
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のXYステージ機構。
【請求項3】
前記送り部材及び前記ガイド部材をその中心軸回りに回転させるモータと、
前記モータからの動力を前記送り部材及び前記ガイド部材の何れか一方に択一的に伝達するクラッチ機構と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のXYステージ機構。
【請求項4】
前記送り部材及び前記ガイド部材を支持するベースを備え、前記ラックギアは、前記ベースと一体的に形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のXYステージ機構。
【請求項5】
前記送り部材と前記ガイド部材とを連結する連結部材と、
前記ベースに前記連結部材の少なくとも一部を覆う態様で設けられ、前記連結部材が前記ベースから離れる方向へ移動することを規制する規制部材と
を備えたことを特徴とする請求項4に記載のXYステージ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86237(P2013−86237A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231106(P2011−231106)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(503366841)株式会社アイカムス・ラボ (27)
【Fターム(参考)】