説明

[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)アルキル]ホスホン酸および誘導体の鼻腔内投与用医薬組成物およびその使用法

式(I)の少なくとも1つの化合物またはその医薬上許容される塩;および鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤を含有する鼻腔内投与用医薬組成物が提供される。また、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を哺乳動物に鼻腔内投与することを含む、グルタメート異常に関連する哺乳動物における1以上の病態を治療する方法が提供される。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)アルキル]ホスホン酸およびその誘導体を投与するための鼻腔内組成物、およびその使用法に関する。
グルタメートおよびアスパルテートは、中枢神経系において、必須アミノ酸として、および重要な興奮性神経伝達物質として、二重の役割を果たす。興奮性アミノ酸受容体には、少なくとも4つのクラス:NMDA、AMPA(2−アミノ−3−(メチル−3−ヒドロキシイソオキサゾール−4−イル)プロパン酸)、カイニン酸および代謝調節型受容体がある。これらの興奮性アミノ酸受容体は、生理的脳機能に強い衝撃を与える幅広い範囲のシグナル伝達事象を調節する。例えば、NMDA受容体の活性化は、多くの病態において興奮毒性および神経死に導く中心的事象であること、ならびに頭部外傷、卒中および心停止後の低酸素症および虚血の結果であることが示されている。また、NMDA受容体が、記憶および学習のような多くの高度な認知機能の根底にあるシナプス可塑性、ある特定の侵害受容経路、および疼痛の認知において重大な役割を果たすことも知られている。さらに、NMDA受容体のある特定の性質は、それらが意識自体の根底にある脳における情報−処理に関与しうることを示唆する。
【0002】
NMDA受容体は、中枢神経系中のいたるところに存在する。NMDA受容体は、グリシンと共同したグルタメートによって活性化されたときに、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムイオン流動を調節するリガンド−依存性カチオンチャネルである。構造的に、NMDA受容体は、NR1およびNR2と称される2つの主要なサブユニットを含有するヘテロ多重合チャネルからなると考えられる。これらのサブユニットは、グリシン結合部位、グルタメート結合部位およびポリアミン結合部位を含有する。NR1サブユニットの場合、複数のスプライス変種が同定されているが、NR2サブユニットの場合、4つの個別のサブユニット型(NR2A、NR2B、NR2CおよびNR2D)が同定されている。NMDA受容体は、また、NMDA受容体/チャネル複合体のイオノフォアの小孔内部にあるMg++結合部位を含有し、それがイオンの流れを遮断する。
【0003】
実質的な臨床前および臨床的証拠は、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体の阻害剤が多くの障害を治療するための治療的可能性を有することを示す。NMDA受容体の阻害に応答すると考えられる障害は、血栓塞栓症または出血性卒中などの様々な病態をもたらす脳虚血(例えば、卒中)または脳梗塞あるいは脳血管痙攣などの脳血管障害;脳外傷;筋肉痙攣;および癲癇または癲癇重積症などの痙攣性障害を包含する。NMDA受容体アンタゴニストは、また、麻薬性痛覚脱失に対する耐性を予防するために、または中毒性薬物からの離脱症状の抑制を助けるために使用されうる。
【0004】
近年、化合物のスクリーニングは、種々の障害の治療構想の実証を示すための動物研究および臨床的なヒト研究において使用される多くのNMDA受容体アンタゴニストを同定してきた。NMDA受容体アンタゴニストの臨床的有用性を証明することが困難なのは、一般に、該アンタゴニストのNMDA受容体サブタイプ選択性の欠落および/または経口投与時の生物学的活性の欠落にある。本発明は、[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)アルキル]ホスホン酸またはその誘導体を含有する鼻腔内組成物およびその使用法を提供する。本発明において有用な化合物は、NMDAアンタゴニストであり、本明細書中においてさらに詳細に記載されるように、鼻腔内投与した場合、経口投与と比べて改善されたバイオアベイラビリティを有する。
【0005】
発明の概要
1の具体例において、本発明は、
a)式(I):
【化1】

【0006】
[式中:
は、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアシル基、C〜Cアルカンスルホニル基、またはC〜C14アロイル基であり;
Aは、1〜4個の炭素原子のアルキレンまたは2〜4個の炭素原子のアルケニレンであり;
およびRは、独立して、水素、または
【0007】
【化2】

【0008】
から選択され;
およびRは、独立して、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアリール基、アリール環に5〜7個の炭素原子を有するC〜C15アルキルアリール基、C〜Cアルケニル基、またはC〜Cアルキニル基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、スピロC〜C炭素環式環を形成していてもよく;
は、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基;5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基、C〜Cシクロアルキル基、シクロアルキル環に4〜8個の炭素原子を有するC〜C16アルキルシクロアルキル基であり;
およびRは、独立して、水素、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基、5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、環に4〜8個の炭素原子を有し、窒素、酸素または硫黄から選択される1〜2個の原子を有していてもよいシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基を形成していてもよく;
ここに、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分を有するいずれのR〜R基も、ハロゲン原子、シアノ、ニトロまたはヒドロキシル基、C−Cアルキル基、またはC−Cアルコキシ基から独立して選択される1〜約5個の置換基で置換されていてもよい]
で示される少なくとも1つの化合物またはその医薬上許容される塩の治療上有効量;および
b)鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤
を含有する鼻腔内投与用医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明の別の具体例において、式(I)の少なくとも1つの化合物の鼻腔内投与のための治療上有効な単位投与量または複数回投与量、および鼻腔内投与用組成物を形成するための医薬上許容される添加剤を含む単位投与または複数回投与形態における鼻腔内投与用医薬組成物が提供される。
【0010】
また別の具体例において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を治療の必要な哺乳動物に投与する(好ましくは鼻腔内投与する)ことを含む、哺乳動物における1以上の病態を治療する方法を提供する。本発明の方法にしたがって治療されうる病態の例は、脳虚血または脳梗塞などの脳血管障害;脳外傷;筋肉痙攣;癲癇または癲癇重積症などの痙攣性障害;緑内障;疼痛;不安障害;気分障害;統合失調症;統合失調症様障害;統合失調性感情障害;認識障害;パーキンソン病、ハンティングトン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症または慢性痴呆などの慢性神経変性障害;炎症性疾患;低血糖症;糖尿病性終末器官合併症;心停止;窒息無酸素症;脊髄損傷;線維筋痛;帯状疱疹(shingles)由来の合併症、例えば、ヘルペス後神経痛の予防;麻薬性痛覚脱失に対する耐性の予防;または中毒性薬物からの離脱症状、あるいはその組み合わせを包含する。
【0011】
発明の詳細な記載
1の具体例において、本発明は、鼻腔内投与用医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、鼻腔内投与に適当ないずれの形態であってもよい。適当な形態の例は、溶液、ゲル、懸濁液、分散液、またはエマルジョンなどの液体形態、および粉末などの固体形態を包含する。本発明の医薬組成物は、3〜9、より好ましくは、約4〜8、最も好ましくは、約6.5〜7.5の範囲のpHを有する。
【0012】
本発明の医薬組成物は、式I:
【化3】

で示される少なくとも1つの化合物またはその医薬上許容される塩の治療上有効量、および鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤を含有する。
【0013】
上記式(I)中、
は、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアシル基、C〜Cアルカンスルホニル基、またはC〜C14アロイル基であり;
Aは、1〜4個の炭素原子のアルキレンまたは2〜4個の炭素原子のアルケニレンであり;
およびRは、独立して、水素、または
【0014】
【化4】

【0015】
から選択され;
およびRは、独立して、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアリール基、アリール環に5〜7個の炭素原子を有するC〜C15アルキルアリール基、C〜Cアルケニル基、またはC〜Cアルキニル基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、スピロC〜C炭素環式環を形成していてもよく;
は、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基;5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基、C〜Cシクロアルキル基、シクロアルキル環に4〜8個の炭素原子を有するC〜C16アルキルシクロアルキル基であり;
およびRは、独立して、水素、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基、5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、環に4〜8個の炭素原子を有し、窒素、酸素または硫黄から選択される1〜2個の原子を有していてもよいシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基を形成していてもよい。
【0016】
別記しないかぎり:
アルキルまたはアルキレンは、本明細書中で使用される場合、1〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素をいい、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、およびイソヘキシルなどの直鎖または分枝鎖を包含する。低級アルキルは、1〜3個の炭素原子を有するアルキルをいう。本発明のいくつかの具体例において、アルキルは、好ましくは、C〜Cであり、より好ましくは、C〜Cである。
【0017】
アルケニルまたはアルケニレンは、1〜3個の二重結合を含有していてもよい2〜7個の炭素原子を有する脂肪族直鎖または分枝鎖炭化水素をいう。Aのアルケニレンの例は、直鎖または分枝鎖モノ−、ジ−またはポリ不飽和基、例えば、ビニル、プロプ−1−エニル、アリル、メタリル、ブト−1−エニル、ブト−2−エニルまたはブト−3−エニルである。
アルキニルは、1〜3個の三重結合を含有していてもよい2〜7個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。
【0018】
本明細書中で使用される場合、アシルは、基R−C(=O)−をいい、ここに、Rは、1〜6個の炭素原子からなるアルキル基である。例えば、C〜Cアシル基は、基R−C(=O)−をいい、ここに、Rは、1〜6個の炭素原子からなるアルキル基である。
本明細書中で使用される場合、アルカンスルホニルは、基R−S(O)−をいい、ここに、Rは、1〜6個の炭素原子からなるアルキル基である。
本明細書中で使用される場合、アリールは、芳香族5〜13員の単環式または二環式の炭素環式環、例えば、フェニルまたはナフチルをいう。好ましくは、アリール部分を含有する基は、環に5〜7個の炭素原子を有する単環である。ヘテロアリールは、独立して、窒素、酸素または硫黄であってもよい1〜5個のヘテロ原子を有する5〜13員の炭素含有単環または二環を意味する。好ましくは、ヘテロアリール部分を含有する基は、環(ここに、該環メンバーの1〜2個が独立して、窒素、酸素または硫黄から選択される)において5〜7員を有する単環である。アリールまたはヘテロアリール部分を含有する基は、下記のように置換されていてもよく、または非置換であってもよい。
【0019】
本明細書中で使用される場合、アロイルは、基Ar−C(=O)−をいい、ここに、Arは上記のとおりのアリールである。例えば、C〜C14アロイル部分は、基Ar−C(=O)−をいい、ここに、Arは芳香族5〜13員の炭素環である。
本明細書中で使用される場合、アルキルアリールは、基−R−Arをいい、ここに、Arは上記のとおりのアリールであり、Rは、1〜8個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分である。アルキルアリール基の例は、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、および4−フェニルブチルを包含する。本明細書中で使用される場合、アルキルヘテロアリールは、基−R−hetArをいい、ここに、hetArは上記のとおりのヘテロアリールであり、Rは、1〜8個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分である。
【0020】
本明細書中で使用される場合、シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有するモノ炭素環式環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルをいう。ヘテロシクロアルキルは、1〜2個の環原子が独立して、窒素、酸素または硫黄から選択される3〜8個の環メンバーを有する炭素含有単環をいう。シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分を含有する基は、下記のように置換されていてもよく、または非置換であってもよい。
本明細書中で使用される場合、アルキルシクロアルキルは、基−R−cycloalkをいい、ここに、cycloalkは上記のとおりのシクロアルキル基であり、Rは、1〜8個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分である。
【0021】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
本明細書中で使用される場合、「医薬上許容される」なる語は、毒物学的観点から、医薬用途における使用が許容され、活性成分と不利に相互作用しない物質を意味する。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「置換された」なる語は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分などの部分が、ハロゲン原子、シアノ、ニトロまたはヒドロキシル基、C−Cアルキル基、またはC−Cアルコキシ基から独立して選択される1〜約5個の置換基、より好ましくは1〜約3個の置換基を有することをいう。好ましい置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはC−Cアルキル基である。
【0023】
本発明の1の具体例において、式IのRは、好ましくは、HまたはC〜Cアルキル基、より好ましくは、Hである。
本発明の別の具体例において、式IのAは、好ましくは、アルキレン基、−(CH−であり、ここに、nは1〜3、より好ましくは、1〜2、最も好ましくは、2である。
【0024】
別の具体例において、[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)アルキル]ホスホン酸の誘導体を形成することが望ましい場合、好ましくは、RおよびRの少なくとも1つはHではない。
【0025】
他の具体例において、RおよびRは、好ましくは、独立して、Hまたは:
【化5】

から選択される。
【0026】
本発明の別の具体例において、式(I)のRおよびRは、Hまたは(B)または(D)基:
【化6】

であり、より好ましくは、Hまたは(B)基であり、最も好ましくは、どちらも(B)基であり、ここに、R、RおよびRは上記のとおりである。RおよびRの両方が水素ではない場合、それらは同一であることが好ましい。
【0027】
本発明のまた別の好ましい具体例において、RおよびRの両方は、好ましくは、水素である。RおよびRの両方が水素である場合、Rが水素であり、Aがエチレン(すなわち、−(CH−)であって、化合物[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)エチル]ホスホン酸を形成することが最も好ましい。
【0028】
(B)、(C)および(D)基に関し、RおよびRは好ましくは、HまたはC〜Cアルキル基から選択され、より好ましくは、Hまたはメチルから選択される。Rは、好ましくは、C〜C10直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜Cアリール基、5〜7員ヘテロアリール基、または環に5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基から選択される。好ましい具体例において、RはC〜Cアリール基である。
【0029】
本発明のまた別の好ましい具体例において、RはHまたはC〜Cアルキル基であり;Aは式−(CH−を有するアルキレン基であり、ここに、nは1〜3であり;RおよびRは独立して、Hまたは:
【化7】

から選択され、RおよびRは、独立して、HまたはC〜Cアルキル基から選択され;およびRは、C〜C10直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜Cアリール基、5〜7員のヘテロアリール基、または環に5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基から選択される。さらなる具体例において、Rは、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘプタ−4−イル、シクロヘキシルおよびフェニルから選択される。またさらなる具体例において、RおよびRはどちらもメチルである。
【0030】
本発明において有用な化合物の特別な例は、下記の化合物:
[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)エチル]ホスホン酸;
安息香酸3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−3−オキシド−7−オキソ−7−フェニル−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファヘプタ−1−イル;
2−プロピルペンタン酸3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−3−オキシド−7−オキソ−8−プロピル−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファウンデカ−1−イル;
2,2−ジメチル−プロピオン酸(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシメトキシ)−[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)−エチル]−ホスフィノイルオキシメチルエステル;
シクロヘキサンカルボン酸7−シクロヘキシル−3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−1,5−ジメチル−3−オキシド−7−オキソ−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファヘプタ−1−イル;
シクロヘキサンカルボン酸7−シクロヘキシル−3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−3−オキシド−7−オキソ−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファヘプタ−1−イル;
[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1−(7)−エン−2−イル)−エチル]−ホスホン酸ジイソプロポキシカルボニルオキシメチルエステル;
[2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル]−ホスホン酸ビス[1−(ベンゾイルオキシ)エチル]エステル;
安息香酸[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)−エチル]−ヒドロキシ−ホスフィノイルオキシメチルエステル;およびその医薬上許容される塩;および
[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)−エチル]−ホスホン酸ジ−ジメチルカルバモイルオキシメチルエステル;およびその医薬上許容される塩を包含する。
【0031】
本発明において有用な化合物は、不斉炭素原子および/またはリン原子を含有していてもよく、かくして、光学異性体およびジアステレオマーを生じることができる。式(I)において立体化学に関して示さないが、本発明は、かかる光学異性体およびジアステレオマー;ならびにラセミ体および分割した鏡像異性的に純粋なRおよびS立体異性体;ならびにRおよびS立体異性体の他の混合物およびその医薬上許容される塩を包含する。
【0032】
鏡像異性体が好ましい場合、いくつかの具体例において、それは、対応する鏡像異性体を実質的に含まずに提供されうる。かくして、対応する鏡像異性体を実質的に含まない鏡像異性体は、分離技術によって単離または分離された化合物、または対応する鏡像異性体とは別に調製された化合物をいう。「実質的に含まない」なる語は、本明細書中で使用される場合、該化合物が有意に大きな割合の一方の鏡像異性体からなることを意味する。好ましい具体例において、該化合物は、少なくとも約90重量%の好ましい鏡像異性体からなる。本発明の他の具体例において、該化合物は、少なくとも約99重量%の好ましい鏡像異性体からなる。好ましい鏡像異性体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ならびにキラル塩の形成および結晶化を包含する当業者に既知のいずれかの方法によって、ラセミ混合物から単離されてもよく、または本明細書に記載の方法によって調製されてもよい。例えば、Jacques, et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen, S.H., et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E.L. Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); Wilen, S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照のこと。
【0033】
当業者は、また、式(I)の互変体が存在する可能性を認識するであろう。式(I)には示さなくとも、本発明は、全てのかかる互変体を包含する。
【0034】
本発明において有用な化合物は、また、式(I)の化合物の医薬上許容される塩も包含する。「医薬上許容される塩」なる語によって、医薬上許容される塩基および式(I)の化合物の添加により対応する塩を形成することによって形成されるいずれの化合物も意味される。「医薬上許容される」なる語によって、毒物学的観点から、医薬用途における使用が許容され、活性成分と不利に相互作用しない物質が意味される。好ましくは、医薬上許容される塩は、式(I)の化合物のアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム)またはアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム)塩、あるいは式(I)の化合物とアンモニアまたは塩基性アミンから由来する医薬上許容されるカチオンとの塩である。後者の例は、限定するものではないが、アンモニウム、モノ−、ジ−、またはトリメチルアンモニウム、モノ−、ジ−またはトリエチルアンモニウム、モノ−、ジ−、またはトリプロピルアンモニウム(イソおよびノーマル)、エチルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、ジベンジル−アンモニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピロリジニウム、ピペラジニウム、1−メチル−ピペリジニウム、1−イソプロピルピロリジニウム、1,4−ジメチルピペラジニウム、1−n−ブチル−ピペリジニウム、2−メチルピペリジニウム、1−エチル−2−メチルピペリジニウム、モノ−、ジ−、またはトリエタノールアンモニウム、トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウム、またはフェニルモノエタノールアンモニウムを包含する。好ましくは、塩は、RまたはRの一方が水素であるとき形成されうる。
【0035】
本発明において有用な化合物は、式(II):
【化8】

[式中、AおよびRは式(I)で定義されるとおりである]
で示される化合物を米国特許第5,168,103号、第5,240,946号、第5,990,307号および第6,011,168号(その内容は全体として、出典明示により、本明細書の一部とされる)に記載の方法にしたがって合成することによって調製できる。好ましい合成経路は、米国特許第5,990,307号および第6,011,168号の実施例5に記載される。
【0036】
式(I)中、RまたはRの少なくとも1つが水素ではない化合物を形成するためには、得られた式(II)の化合物を適当な溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド中に溶解する。「適当な溶媒」なる語によって、式(II)の化合物が溶解でき、かつ、非反応性である溶媒が意味される。好ましくは、アミンのような酸スカベンジャー(反応副産物である酸ハロゲン化物と反応させるために)を、好ましくは周囲の温度で、反応混合物に加える。該アミンは、好ましくは、立体障害のある第2または第3アミンであり、より好ましくは、ジイソプロピルエチルアミンなどの第3アミンである。式:
【化9】


[式中、R、RおよびRは、式(I)で定義されたとおりであり、Yは脱離基である]
で示される適当に置換されたエステルを該反応混合物に加える。本明細書中で使用される場合、「脱離基」なる語は、化学反応の間に、別の基によって選択的に置き換えることができる基、例えば、求核性置換または脱離によって置き換えることのできる基をいう。典型的には、脱離基は、求核性置換または脱離によって除去される場合、アニオン形態において比較的安定な基を包含する。脱離基は、当該分野においてよく知られており、例えば、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物)ならびにアルキル−およびアリールスルホネート、例えば、メシラート、トシラート、ブロシラート、ノシラート、トリフラートなどを包含する。好ましい具体例において、Yはハロゲン原子である。
【0037】
反応混合物は、約50℃〜約80℃、より好ましくは、約65℃〜約75℃にて、ハロエステルが式(II)の化合物と反応して式(I)の化合物を形成するように十分な反応時間加熱する。典型的には、好ましい収率のためには、反応時間は、約20時間〜約40時間、より好ましくは、約25時間〜約35時間である。反応完了後、好ましくは、反応混合物を周囲の温度に冷却し、当業者に既知の標準的な技術を用いて、式(I)の化合物を単離する。好ましい単離方法は、反応混合物を弱塩基、例えば、水性重炭酸ナトリウムと有機溶媒、例えば、酢酸エチルとの間に分配することである。水相は、好ましくは、該有機溶媒で数回再抽出し、合わせた有機層を弱塩基で再び洗浄する。次いで、有機層を、例えば、ブラインおよび硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させる。次いで、残渣を好ましくは、標準的な技術を用いるシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付して、該化合物を単離する。該化合物およびその合成(ここに、式(I)中、RまたはRの少なくとも1つは水素ではない)に関するさらなる詳細は、米国仮出願番号第60/461,490号(2003年4月9日出願)および本出願と同時に出願された米国出願番号がまだ付与されていない出願、発明の名称「[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)アルキル]ホスホン酸の誘導体およびその使用法」(その開示は、出典明示により、全体として、本明細書の一部とされる)を参照のこと。
【0038】
式(I)の化合物は、鼻腔内投与のための治療上有効量で鼻腔内組成物中に配合される。本明細書中で使用される場合、「治療上有効量」なる語は、哺乳動物において目的の病態を治療する式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩形態の少なくとも最少量である。治療上有効量は、使用される特定の組成物、症状の重篤度、および治療している特定の患者などの変数に依存するであろう。投与されるべき化合物の治療上有効量を決定するために、内科医は、例えば、所望の症状軽減レベルが達成されるまで、投与量を徐々に増やすことによって、患者における所定の式(I)の化合物の効果を評価してもよい。次いで、継続的投与計画を所望の結果を達成するように修飾すればよい。鼻腔内投与の場合、好ましくは、所望の症状軽減レベルが達成されるまで、本発明の化合物を患者において、1mg/kgから10mg/kgの量に徐々に増加させる。次いで、継続的投与計画を所望の結果を達成するように修飾すればよく、鼻腔内投与量の範囲は、好ましくは、約200mg/日〜約600mg/日である。
【0039】
本発明の鼻腔内医薬組成物は、治療上有効量の式(I)の少なくとも1つの化合物を含有するほかに、鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤を含有する。「鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤」なる語によって、式(I)の化合物の鼻腔内投与による送達を容易にする1以上の物質が意味される。鼻腔内投与用組成物を形成するための医薬上許容される添加剤の例は、液体または固体担体;吸収促進剤;pH調整剤;バッファー;金属キレート化剤;増粘剤;湿潤剤;または生体接着剤(bioadhesive)またはその組み合わせを包含する。好ましくは、これらの添加剤は全部で、組成物の全重量に基づいて、組成物の少なくとも約0.25重量%、より好ましくは、約0.25重量%〜約95重量%を構成するであろう。
【0040】
該組成物が液体である場合、該組成物は、組成物の全重量に基づいて、好ましくは、約50〜約95重量%、より好ましくは、約70〜約95重量%の1以上の液体担体を含有するであろう。液体担体の例は、水、水および1以上の他の医薬上許容される溶媒、例えば、アルコール、プロピレングリコール、グリシンまたはその組み合わせの混合物を包含する。好ましい具体例において、液体担体は、水性ベースであり(好ましくは、液体担体の全重量に基づいて、少なくとも約70重量%が水、より好ましくは、少なくとも約85重量%が水)、最も好ましくは、水である。
【0041】
該組成物が粉末である場合、該組成物は、組成物の全重量に基づいて、所望により、0〜約50重量%、より好ましくは、約0.10重量%〜約20重量%の1以上の固体担体を含有していてもよい。固体担体の例は、水溶性ポリマー、例えば、ポビドン、ポリビニルアルコールまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、または水不溶性ポリマー、例えば、微結晶セルロースまたは砂糖、例えば、シュークロース、マンニトール、デキストロースまたはラクトースを包含する。
【0042】
吸収促進剤は、式(I)の化合物の吸収度を上げる添加剤である。好ましくは、1以上の吸収促進剤は、所望により、組成物中、組成物の全重量に基づいて、約0.2重量%〜約2重量%、より好ましくは、約0.5重量%〜約1重量%の量で配合されていてもよい。吸収促進剤の例は、界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムまたはポリソルベート;胆汁酸塩、例えば、コール酸塩またはグリココール酸塩;フシジン酸誘導体;脂肪酸および塩、例えば、オレイン酸またはカプリン酸ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはこれらの成分の組み合わせを包含する。
【0043】
pHを調整するための1以上の剤、例えば、無機塩基または有機塩基は、所望により、組成物中、組成物のpHが3〜9、より好ましくは、約4〜約8、最も好ましくは、約6.5〜約7.5の範囲になるように配合してもよい。適当な無機塩基の例は、水酸化アンモニウム、または水酸化アルカリもしくはアルカリ土類金属、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを包含する。使用されうる適当な有機塩基の例は、エタノールアミンまたはトリエタノールアミンを包含する。
【0044】
pH調整剤のほかに、本発明の組成物は、所望により、1以上の医薬上許容されるバッファー、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、またはトロラミンまたはその組み合わせを含有していてもよい。
該医薬組成物は、また、所望により、金属キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有していてもよい。好ましくは、金属キレート化剤は、所望により、組成物の全重量に基づいて、約0.005重量%〜約0.5重量%、より好ましくは、約0.05重量%〜約0.2重量%の量で配合される。
【0045】
鼻腔中での滞留時間を増加するために、1以上の増粘剤を組み込むことによって、医薬組成物の粘性を上げてもよい。適当な増粘剤の例は、セルロースベースのポリマー、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロース;キトサン;キサンタンガム;またはポビドンまたはその組み合わせを包含する。増粘剤の濃度は、使用される増粘剤および所望の粘性にもよるが、好ましくは、組成物中における1以上の増粘剤の量は、組成物の全重量に基づいて、0〜約5重量%、より好ましくは、約0.1〜約2重量%の範囲である。
【0046】
該組成物は、また、粘膜を湿ったままに維持するために、および刺激を減少させるために、所望により、1以上の湿潤剤を含有していてもよい。本発明において有用な適当な湿潤剤の例は、ソルビトール、プロピレングリコール、またはグリセロール、またはその組み合わせを包含する。組成物中における湿潤剤の濃度は、使用される剤にもよるが、もし組成物中に配合するならば、好ましくは、湿潤剤の全量が組成物の全重量に基づいて、約0.1重量%〜約20重量%、より好ましくは、約1重量%〜約5重量%の範囲である。
【0047】
該組成物は、また、鼻腔中での滞留時間を増加するために、1以上の生体接着剤を含有していてもよい。本発明において有用な生体接着剤の例は、メチルセルロース、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒアルロン酸塩、およびキトサンを包含する。組成物中における生体接着剤の濃度は、使用される剤にもよるが、もし組成物中に配合するならば、好ましくは、生体接着剤の全量が組成物の全重量に基づいて、約0.1重量%〜約5重量%の範囲である。
【0048】
本発明の鼻腔内医薬組成物は、また、所望により、貯蔵および複数回投与で使用する間、微生物増殖を防ぐために、1以上の抗菌性保存料含有していてもよい。適当な保存料の例は、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、またはパラベン、またはその組み合わせである。組成物中の保存料の濃度は、使用される保存料にもよるが、好ましくは、該組成物中に配合される保存料の全量が、組成物の全重量に基づいて、約0.1重量%〜約2重量%の範囲である。
【0049】
他の液体担体または固体担体;吸収促進剤、pH調整剤、バッファー、増粘剤、湿潤剤、生体接着剤または抗菌性保存料、またはその組み合わせの例は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 18th Edition, ed. Alfonoso R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA (1995); およびKibbe, A. R. (Ed.), Hand Book of Pharmaceutical Excipients. American Pharmaceutical Association, 3rd Edition (2000)のような当業者に既知の教本において見出してもよい。さらに、鼻腔内投与のための他の医薬上許容される添加剤および特定の液体または固体担体;吸収促進剤、pH調整剤、バッファー、増粘剤、湿潤剤、生体接着剤または抗菌性保存料は、Behl, C.R.ら、Optimization of Systemic Nasal Drug Delivery With Pharmaceutical Excipients, Advabced Drug Delivery Reviews, 29, 117-133, (1998); およびZia, H.ら、Intranasal Drug Delivery. Clinical Research and Regulatory Affairs, 10(2), 99-135 (1993)(その開示は、出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に見出してもよい。
【0050】
本発明の1の好ましい具体例において、医薬組成物は液体形態である。該液体組成物は、好ましくは、溶液形態である。液体組成物の場合、式Iの化合物の量は、好ましくは、約10mg/ml〜約500mg/ml、より好ましくは、約50mg/ml〜約300mg/mlの量で配合される。該液体組成物は、また、好ましくは、水性ベースである。好ましくは、液体組成物中に配合される水の量は、好ましくは、組成物の全重量に基づいて、好ましくは、約50重量%〜約99重量%、より好ましくは、約70重量%〜約90重量%である。該液体組成物はまた、好ましくは、pHを約3〜約9、より好ましくは、約4〜約8に調整するための1以上のpH調整剤を含有するであろう。該液体処方の粘性は、Oswald粘度計によって測定した場合、好ましくは、約2cps〜約8cps、より好ましくは、約4〜約6cpsの範囲である。
【0051】
本発明の別の具体例において、医薬組成物は粉末形態である。好ましくは、該粉末は、篩分析によって測定した場合、約250ミクロン未満(例えば、全ての粒子が250ミクロンスクリーンを通過する)、より好ましくは、約180ミクロン未満の粒径を有する。粉末処方中の式Iの化合物の量は、処方の全重量に基づいて、好ましくは、約50重量%〜約99.75重量%、より好ましくは、約70重量%〜約90重量%である。組成物が粉末である場合、それは、約3〜約9、より好ましくは、約4〜約8、最も好ましくは、約6.5〜約7.5のpHを有する溶液を形成することができる。
【0052】
本発明の別の具体例において、医薬組成物は、1以上の他の医薬上活性な薬剤、例えば、哺乳動物に存在するいずれか他の病状を治療するために使用されている薬剤を含有していてもよい。かかる医薬上活性な薬剤の例は、疼痛軽減剤、抗−血管新生剤、抗−新生物剤、抗−糖尿病剤、抗−感染剤、または胃腸剤、またはその組み合わせを包含する。
【0053】
医薬上活性な薬剤のより完全なリストは、Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJによって出版されたthe Physician's Desk Reference, 55 Edition, 2001に見出すことができる。これらの薬剤の各々は、当該分野で知られた治療上有効な投与量および計画にしたがって投与すればよく、例えば、Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJによって出版されたthe Physicians' Desk Reference, 55 Edition, 2001において、その製品について記載されているものにしたがって投与すればよい。
【0054】
本発明の別の具体例において、医薬組成物は、単位投与形態または複数回投与形態である。かかる形態において、該組成物は、適量の活性成分を含有する単位または複数回投与量に細分される。該投与形態は、パッケージされた組成物、例えば、パックされた粉末、バイアル、アンプル、または液体を含有するサッシェであることができる。かくして、本発明は、また、式(I)の少なくとも1つの化合物の鼻腔内投与のための治療上有効な単位または複数回投与量および鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤を含有する単位投与形態または複数回投与形態における医薬組成物を提供する。
【0055】
当業者が理解するように、好ましい有効な単位または複数回投与量は、例えば、治療されている病態および式Iについて選択された特定の化合物に依存するであろう。しかしながら、好ましくは、鼻腔内投与のための投与量(単位または複数回投与形態)は、本発明において有用な式Iの化合物の約100mg〜約700mg、より好ましくは、約200mg〜約600mgの範囲である。
【0056】
本発明の別の具体例において、本発明は、式(I)の少なくとも1つの化合物の治療上有効量を治療の必要のある哺乳動物に鼻腔内投与することを含むグルタメート異常に関連する病態を治療する方法を提供する。本明細書中で使用される場合、「関連する」なる語は、グルタメート異常によって直接または間接的に引き起こされる病態をいう。「グルタメート異常」なる語は、グルタメートが(典型的には増加した量で)寄与因子として関与する疾患または障害によって生じるいずれかの病態をいう。グルタメート異常に関連すると考えられる病態は、限定するものではないが、血栓塞栓性もしくは出血性卒中などの様々な状態をもたらす脳虚血(例えば、卒中)または脳梗塞、または脳血管痙攣などの脳血管障害;脳外傷;筋肉痙攣;痙攣性障害、例えば、癲癇または癲癇重積症;緑内障;疼痛;不安障害、例えば、パニック発作、広場恐怖症、パニック障害、特定恐怖症、社会恐怖症、強迫障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、分離不安障害、または物質誘発性不安障害;気分障害、例えば、双極性障害(例えば、双極性I障害、双極性II障害、および気分循環性障害)、抑鬱障害(例えば、大鬱病性障害、気分変調障害、または物質誘発性気分障害)、気分性エピソード(例えば、大鬱病性エピソード、躁病性エピソード、混合性エピソード、および軽躁病性エピソード);統合失調症;統合失調症様障害;統合失調性感情障害;認識障害、例えば、記憶喪失;および慢性神経変性障害、例えば、パーキンソン病、ハンティングトン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、または例えば、レヴィー小体病、アルツハイマー病、前頭側頭型またはAIDSに関連する慢性痴呆症を包含する。上記の精神障害、例えば、統合失調症、気分障害および不安障害に関し、該精神障害の各々のより完全な記載は、the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition, Washington, DC, American Psychiatric Association (1994)を参照のこと。
【0057】
グルタメート異常に関連すると考えられるさらなる病態は、炎症性疾患;低血糖症;糖尿病性終末器官合併症;心停止;窒息無酸素症、例えば、溺水、肺手術および脳外傷に由来するような窒息無酸素症;および脊髄損傷を包含する。本発明の化合物は、また、線維筋痛、および帯状疱疹(shingles)由来の合併症の治療、例えば、ヘルペス後神経痛の予防にも使用されうる。本発明において有用な化合物は、また、麻薬性痛覚脱失に対する耐性を予防するために、または中毒性薬物からの離脱症状の抑制を助けるために使用されうる。かくして、本発明は、式(I)の少なくとも1つの化合物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを含む、上記の病態の各々を治療する方法を提供する。
【0058】
1の好ましい具体例において、本発明において有用な化合物は、疼痛の治療に使用される。疼痛は、例えば、急性疼痛(短期間)または慢性疼痛(規則的再発性、または持続性)であってもよい。疼痛はまた、中枢性であっても、末梢性であってもよい。
【0059】
急性または慢性であることができ、かつ、本発明の方法にしたがって治療できる疼痛の例は、炎症性疼痛、筋骨格系疼痛、骨痛、仙腰痛、頸または上背痛、内臓痛、体性痛、神経障害性疼痛、癌痛、傷害または手術によって引き起こされる疼痛、例えば、火傷痛または歯痛、または頭痛、例えば、偏頭痛または緊張性頭痛、またはこれらの疼痛の組み合わせを包含する。当業者は、これらの疼痛が互いに重複しうることを理解するであろう。例えば、炎症によって引き起こされる疼痛は、また、事実上、内臓痛または筋骨格系疼痛でもある。
【0060】
本発明の好ましい具体例において、例えば、末梢または中枢神経系に対する損傷または該神経系における病理学的変化に関連する神経障害性疼痛;癌痛;例えば、腹部、骨盤、および/または会陰領域あるいは膵炎に関連する内臓痛;例えば、下背または上背、脊椎、線維筋痛、顎関節、または筋筋膜疼痛症候群に関連する筋骨格系疼痛;例えば、骨関節症、慢性関節リウマチまたは脊髄狭窄などの骨または関節変性障害に関連する骨痛;頭痛、例えば、偏頭痛または緊張性頭痛;またはHIVなどの感染、鎌状赤血球貧血、自己免疫障害、多発性硬化症、または骨関節症もしくは慢性関節リウマチなどの炎症に関連する疼痛などの慢性疼痛を治療するために、本発明において有用な化合物を哺乳動物に投与する。
【0061】
より好ましい具体例において、本発明において有用な化合物は、神経障害性疼痛、内臓痛、筋骨格系疼痛、骨痛、癌痛または炎症性疼痛またはその組み合わせである慢性疼痛の治療のために、本明細書中に記載の方法にしたがって使用される。炎症性疼痛は、種々の病状、例えば、骨関節症、慢性関節リウマチ、手術または外傷に関連することができる。神経障害性疼痛は、例えば、糖尿病性神経障害、末梢神経障害、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、腰椎または子宮頚神経根障害、線維筋痛、舌咽神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、灼熱痛、視床症候群、神経根剥離、あるいは幻肢痛、反射性交感神経性ジストロフィーまたは開胸術後疼痛などの末梢および/または中枢性感作をもたらす傷害、癌、化学傷害、毒素、栄養不足またはウイルスもしくは細菌感染、例えば、帯状疱疹(shingles)もしくはHIV、またはその組み合わせによって引き起こされる神経損傷に関連しうる。本発明の化合物に有用な方法は、さらに、神経障害性疼痛が移行性浸潤、有痛性脂肪症(adiposis dolorosa)、火傷または視床疾患に関連する中枢性疼痛状態の二次的状態である治療を包含する。
【0062】
上記のように、本発明の方法は、現実に体および/または内臓にある疼痛を治療するのに使用してもよい。例えば、本発明の方法にしたがって治療されることのできる体性痛は、手術、歯科処置、火傷、または外傷性体性傷害の間に経験される構造組織傷害または軟組織傷害に関連する疼痛を包含する。本発明の方法にしたがって治療されることのできる内臓痛の例は、内臓の疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、過敏性膀胱、クローン病、リウマチ(関節痛)、腫瘍、胃炎、膵炎、器官の感染、または胆道障害、またはその組み合わせに関連するか、またはそれらに起因する種類の疼痛を包含する。当業者は、また、本発明の方法にしたがって治療される疼痛が、痛覚過敏、異痛、またはその両方の状態にも関連しうることを理解するであろう。さらに、慢性疼痛は、末梢性または中枢性感作を伴っても、伴わなくてもよい。
【0063】
本発明において有用な化合物は、また、婦人病に関連した急性および/または慢性疼痛(女性特有の痛みともいう)を治療するために使用してもよい。かかる群の疼痛は、女性だけに起こるもの、または主に女性に起こるものを包含し、月経、排卵、妊娠または出産、流産、子宮外妊娠、逆行性月経、卵胞または黄体嚢胞の破壊、骨盤内蔵器の刺激、子宮筋腫、腺筋症、子宮内膜症、感染および炎症、骨盤内器官虚血、閉塞、腹腔内癒着、骨盤内蔵器の解剖学的歪曲、卵巣膿瘍、骨盤支持の喪失、腫瘍、骨盤鬱血に関連する痛み、または婦人科以外の原因由来の関連痛を包含する。
【0064】
本発明の化合物は、ニート(neat)(すなわち、そのまま)で、または本明細書中で上記したような鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加物を含有する鼻腔内医薬組成物において投与してもよい。好ましい具体例において、本発明において有用な化合物は、本明細書中に上記されるような鼻腔内医薬組成物の形態で投与される。
【0065】
本発明の別の具体例において、本発明において有用な化合物は、単位投与定量(pre-measured unit dosage)ディスペンサーを用いて投与される。当業者は、使用されうる種々の単位または複数回投与量ディスペンサーが存在すること、およびその選択が例えば、投薬される化合物および医薬組成物に依存するであろうことを理解するであろう。例えば、液体組成物の場合、点滴器(dropper)またはスプレー装置を用いてもよく;粉末組成物の場合、乾燥粉末吸入器を用いてもよい。
【0066】
本発明の別の具体例において、本発明において有用な化合物を、1以上の他の医薬上活性な薬剤、例えば、哺乳動物において存在するいずれか他の病状を治療するために使用されている薬剤と共に、哺乳動物に投与してもよい。かかる医薬上活性な薬剤の例は、疼痛軽減剤、抗−血管新生剤、抗−新生物剤、抗−糖尿病剤、抗−感染剤、または胃腸剤、またはその組み合わせを包含する。
【0067】
1以上の他の医薬上活性な薬剤は、治療上有効量において、1以上の本発明の化合物と同時に(例えば、同じ時に個別に、または1の医薬組成物中において一緒に)、および/または連続的に投与してもよい。
【0068】
他の医薬上活性な薬剤の投与方法は、本発明の化合物のために使用される投与経路と同じであっても、異なっていてもよい。例えば、他の医薬上活性な薬剤は、経口または非経口投与によって、例えば、筋内、腹腔内、硬膜外、髄膜内、静脈内、鼻腔内もしくは舌下などの粘膜内、皮下または経皮投与によって投与されてもよい。好ましい投与経路は、選択された特定の医薬活性剤および当業者に既知のその推奨される投与経路に依存するであろう。
【0069】
医薬上活性な薬剤のより完全なリストは、Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJによって出版されたthe Physician's Desk Reference, 55 Edition, 2001に見出すことができる。これらの薬剤の各々は、当該分野で知られた治療上有効な投与量および計画にしたがって投与すればよく、例えば、Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJによって出版されたthe Physicians' Desk Reference, 55 Edition, 2001において、その製品について記載されているものにしたがって投与すればよい。
【0070】
本発明の好ましい具体例において、本発明において有用な化合物を1以上の他の疼痛軽減剤と共に哺乳動物に投与して、哺乳動物における疼痛を治療してもよい。「疼痛軽減剤」なる語によって、疼痛症状を直接または間接的に治療するいずれかの薬剤が意味される。間接的な疼痛軽減剤の例は、例えば、抗炎症剤、例えば、抗−リウマチ剤を包含する。
1以上の他の疼痛軽減剤は、本発明の化合物と同時に(例えば、同じ時に個別に、または1の医薬組成物中において一緒に)、および/または連続的に投与すればよい。好ましくは、本発明の化合物および1以上の他の疼痛軽減剤は、両方が哺乳動物の体内にある一定の期間存在して疼痛を治療するような方法で投与される。
【0071】
他の疼痛軽減剤の投与方法は、本発明の化合物のために使用される投与経路と同じであっても、異なっていてもよい。例えば、オピオイドは、好ましくは、経口、静脈内、鼻腔内または筋内投与経路によって投与される。
当業者は、哺乳動物に投与される他の疼痛軽減剤の投与量が、その問題の特定の疼痛軽減剤および所望の投与経路に依存することを理解するであろう。したがって、他の疼痛軽減剤は、当業者に既知の慣習にしたがって、例えば、Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJによって出版されたthe Physician's Desk Reference, 55 Edition, 2001などの引用文献に開示されるものにしたがって、調薬され、投与されうる。
【0072】
本発明の化合物と共に投与されうる疼痛軽減剤の例は、非麻薬性鎮痛剤または麻薬性鎮痛剤などの鎮痛剤;抗炎症剤、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、ステロイドまたは抗リウマチ剤;偏頭痛製剤、例えば、ベータアドレナリン遮断剤、麦角誘導体、またはイソメテプテン;三環系抗鬱剤、例えば、アミトリプチリン(amitryptyline)、デシプラミン(desipramine)、またはイミプラミン(imipramine);抗−癲癇剤、例えば、ガバペンチン(gabapentin)、カルバマゼピン(carbamazepine)、トピラマート(topiramate)、バルプロ酸ナトリウムまたはフェニトイン(phenytoin);αアゴニスト;または選択的セロトニン再取込阻害剤/選択的ノルエピネフェリン取込阻害剤、またはその組み合わせを包含する。当業者は、下記の薬剤には、疼痛および炎症などの複数の症状を軽減するように作用するものもあり、一方、疼痛などの1の症状だけを軽減しうるものもあることを理解するであろう。複数の特性を有する薬剤の特別の例は、アスピリンであり、ここに、アスピリンは高投与量で服用したとき、抗炎症性であるが、低投与量では、単なる鎮痛剤である。疼痛軽減剤は、上記の薬剤のいずれかの組み合わせを包含していてもよく、例えば、疼痛軽減剤は、麻薬性鎮痛剤と組み合わせた非麻薬性鎮痛剤であってもよい。
【0073】
本発明の好ましい具体例において、本発明の少なくとも1つの化合物を少なくとも1つのオピオイド鎮痛剤と共に、本明細書中に上記される方法にしたがって投与して疼痛を治療する。本発明の化合物は、少なくとも1つのオピオイド鎮痛剤、例えば、モルヒネと共に投与された場合、疼痛知覚を共同作用的に減少させる、疼痛軽減期間を増加する、および/または有害な副作用を減少させるというような有益な効果を有する。
【実施例】
【0074】
本発明において有用な式(I)の化合物は、鼻腔内投与した場合のそれらの効力について評価された。
疼痛を評価するために本明細書において使用されたイン・ビボ試験法は、疼痛を軽減する化合物の効力を評価するために当業者によって使用されてきたものである。例えば、Bennett GJ および Xie TK, 「ラットにおける末梢性単ニューロパシーは、ヒトに見られるような痛覚障害をもたらす(A peripheral mononeuropathy in rat produces disorders of pain sensation like those seen in man)」, Pain 33: 87-107 (1988);Chaplan SR, Bach RW, Pogrel JW, Chung JM および Yaksh TL, 「ラットの足における接触性アロディニアの定量的評価(Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw)」, J. Neurosci. Methods 53: 55-63 (1994);および Mosconi T および Kruger L, 「ラット座骨神経に当てた固定直径のポリエチレンカフスは有痛性ニューロパシーを誘導する(Fixed-diameter polyethylene cuffs applied to the rat sciatic nerve induce a painful neuropathy): 軸索変化の微細構造形態計測解析(ultrastructural morphometric analysis of axonal alterations)」 Pain 64: 37-57 (1996) を参照のこと。
【0075】
実施例で使用される化合物の合成
化合物A−[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)エチル]ホスホン酸
化合物Aは、米国特許第5,990,307号、実施例番号5に記載の手法にしたがって調製した。
【0076】
化合物B−安息香酸3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−3−オキシド−7−オキソ−7−フェニル−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファヘプタ−1−イル
上記の手法にしたがって調製された[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)エチル]ホスホン酸(20.16mmol,5.25g)の乾燥DMF(120mL)中溶液を周囲温度にて、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(80.64mmol,14ml)で半時間処理した。安息香酸クロロメチルエステル(60.49mmol,10.32g,下記のように合成)を周囲温度にて、防湿下で加えた。反応混合物を65℃で20時間加熱した。次いで、温度を72℃に上げ、72℃で16時間攪拌し、その後、反応を完了した。混合物を室温に冷却し、10%重炭酸ナトリウムと酢酸エチルとの間に分配した。層の分離後、水相中に生産物がなくなるまで(シリカゲルTLC、7%メタノール中2Mアンモニアおよび93%クロロホルムによる)、水相を再び酢酸エチルで抽出した(6x)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固した。残渣を、1%メタノール中の2Mアンモニアおよび99%クロロホルムの溶媒混合物を用いる400gのシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付した。徐々に、メタノール中のアンモニアの割合を7%に増やし、93%クロロホルムにした。溶媒を真空下で蒸発させて、所望の生産物を得た(10.5g,99%;ガラス様物質)。
MS (ES-): m/e 527 (M-H)
【0077】
反応物安息香酸クロロメチルエステルの調製
パラ−ホルムアルデヒド(4.5g)および塩化亜鉛(触媒量)を0℃で一緒に混合した。塩化ベンゾイル(0.142mol,20g)を1時間にわたり滴下した。反応物を周囲温度に温め、次いで、55℃に10時間加熱した。反応の進行をTLC(シリカゲル,5/95,酢酸エチル/ヘキサン)によって追跡した。出発材料がまだ見えたので、さらに1gのパラ−ホルムアルデヒドを加えた。55℃で攪拌しながら、さらに10時間反応を続け、冷却し、500gシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付し、2%酢酸エチルおよび98%ヘキサンの混合溶媒で溶出した。溶媒を真空下で蒸発させた。生産物が低融点を有していたので、ロータリーエバポレーター(rotovapor)浴温度は35℃以下にした。所望の生産物を透明油として得た(11.82g,49%)。
MS (ES+): m/e 171 (M+H)
【0078】
本発明の医薬組成物の調製
実施例1:化合物A 鼻腔用溶液300mg/ml
下記の組成物を下記に示すように調製した。
【表1】

エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を50mlの脱イオン水に攪拌しながら溶解した。化合物Aを加え、攪拌しながら、5N水酸化ナトリウム溶液を加えることによって溶解した。化合物Aを完全に溶解し、pH7に達した後、さらに脱イオン水を加えて容量を100mlにし、水酸化ナトリウム溶液でpHを7.01に調整した。得られた溶液の10mlを、各作動で100μlの鼻腔噴霧を投与するように設計された定量鼻腔用スプレーポンプを備えた高密度ポリエチレン(HDPE)瓶に充填した。
【0079】
実施例2:化合物A 鼻腔用溶液50mg/ml
下記の組成物を下記に示すように調製した。
【表2】

実施例1の300mg/ml溶液10mlを45mlの脱イオン水で希釈した。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC C15LV,Dow Chemicalsによって供給された)を該溶液に攪拌しながらゆっくりと加えた。さらに水を加えて容量を60mlにした。該溶液のpHは、7.00であった。得られた溶液の10mlを、各作動で100μlの鼻腔噴霧を投与するように設計された定量鼻腔用スプレーポンプを備えた高HDPE瓶に充填した。
【0080】
実施例3:化合物A ナトリウム粉末730mg/gm
下記の組成物を下記に示すように調製した。
【表3】

化合物A鼻腔用溶液300mg/mlを実施例1に記載のように調製した。該溶液10mlを50mlの丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーター(浴温度30℃)を用いて真空下で水分を蒸発させた。さらに乾燥させるために、浴温度を50℃に上昇させた。15mlの冷無水アルコールをフラスコ中の粉末に加え、15分間攪拌した。粉末をろ過によって分離し、風乾してアルコールを除去し、次いで、真空下、乾燥機中で2時間乾燥させた。乾燥時の最終的な減量は、3.52%であった。脱イオン水中に溶解したとき(100mg/5ml)、該粉末のpHは7.4であり、該粉末の化合物A含量は73.17%であった。41mg(遊離酸形態の化合物A60mgに相当する)の該粉末を、粉末の鼻腔内投与用装置中に充填した。
【0081】
実施例4−8 鼻腔内医薬組成物の評価
実施例4〜7:サルにおける鼻腔内吸収研究
雌カニクイザルを一晩絶食させた。実施例1〜3の組成物を表1に示すように投与した。
【表4】

化合物A遊離酸含量として
【0082】
血液試料を種々の間隔で収集し、活性成分含量(すなわち、化合物A)について分析した。血中の化合物A濃度対時間を図1に示す。薬物動力学パラメーターを表2に示す。ここに、AUCは、EAA−090血中濃度対時間(0−24時間)曲線下の面積であり、Cmaxは最大濃度であり、tmaxは、最大濃度が生じた時間である。
【表5】

**括弧内の数字は、標準偏差である。試料サイズは4であった。
【0083】
より初期の研究の場合、1.1mg/kg IV投与後のサルにおけるAUCは、1.67μghr/mlであった。20mg/kg経口投与後のAUCは、1.74μg*hr/mlであり、Cmaxは147ng/mlであった。かくして、化合物Aは、サルにおける100mg/kgの投与にて、約2.5%の経口アベイラビリティを有する。該範囲におけるバイオアベイラビリティは、投与量の増加および生産物のコスト増加の可能性を有する。
これらのIVおよび経口データに基づいて、溶液および粉末組成物の鼻腔内投与由来の絶対的なバイオアベイラビリティは、各々、約14%および22%である。該溶液の鼻腔内投与由来の全曝露量は、経口投与由来の量の5倍多く、該粉末では、10倍多い。鼻腔内用溶液および粉末由来のCmax値は、経口投与由来の値より、約20および50倍高い。
【0084】
実施例8:ラットにおけるイン・ビボでの効力:プロスタグランジンE−誘発性熱過敏性
対象:
個別に収容したSpraque−Dawleyラットは、ラット餌および水を自由に摂取できた。12時間明/12時間暗サイクルを実施した(6:00amから6:00pmまで明所)。動物維持および調査は、the National Institutes of Health Committee on Laboratory Animal Resourcesによって提供されたガイドラインにしたがって行った。これらの対象は、下記の試験に用いた。
方法:
尾の末端10cmを、38、42、46、50または54℃に温めた水を入れた魔法瓶中に入れた。動物が尾を水から出すまでの潜時(秒)を、侵害受容の測定値として用いた。動物が20秒以内に尾を出さなかった場合、該実験動物の尾を取り出し、20秒の最大潜時を記録した。
【0085】
ベースライン熱感受性の評価後、熱過敏性を、0.1mgプロスタグランジンE(PGE)の50μL注射液を尾の末端1cmに注射することによってもたらした。PGE注射前(ベースライン)、およびPGE注射後(15、30、60、90および120分)に、温度−効果曲線を作成した。他の種(例えば、サル;Brandt et al., J. Pharmacol. Exper. Ther. 296:939, 2001)における以前の研究および今回の研究の結果は、PGEが、注射後15分でピークに達し、2時間後に消散する用量−および時間−依存性熱過敏性を生じることを明らかにする。
【0086】
化合物のPGE−誘発性熱過敏性を逆転させる能力は、単回投与経時的手法を用いて評価された。該手法下で、試験されるべき化合物の単回投与量は、PGE注射の30分前に、腹腔内(IP)、経口(PO)または鼻腔内(IN)投与された。触覚感度は、PGE注射の30分後に評価された。IPおよびPO投与の場合、化合物は、mg/kgとして計算された投与量を有する1ml/kg容量で投与された。IN投与の場合、ラットをO中における3.5%ハロセインで軽く麻酔し、化合物またはビヒクルを、絶対mg量の投与量を有する各鼻孔中に滴下される25μL容量の溶液中において投与した。
【0087】
データ分析:
尾−逃避反応(tail-withdrawal)潜時における半最大増加量をもたらした温度(すなわち、T10)は、各温度−効果曲線から計算された。T10は、温度−効果曲線上の10秒より上のポイントと下のポイントとの間に引かれた線から内挿法によって決定された。これらの研究の場合、熱過敏性は、温度−効果曲線における左方向のシフトおよびT10値の減少として定義された。熱過敏性の逆転は、温度−効果曲線およびT10値のベースラインへの復帰として定義され、下記の等式にしたがって計算された。

%MPE={[(T10薬物+PGE2)−(T10PGE2)]/[(T10ベースライン)−(T10PGE2)]} x 100

式中、T10薬物+PGE2は、薬物をPGEと組み合わせた後のT10であり、T10PGE2は、PGE単独後のT10であり、T10ベースラインは、対照条件下でのT10である。%MPE値100は、PGE注射を用いないで観察されたベースライン熱感受性への完全な復帰を示す。100%より大きい値は、試験された化合物が熱感受性をPGE注射を用いないベースライン熱感受性よりも減少させたことを示す。
【0088】
結果:
ベースライン条件下で、最大の尾−逃避反応(tail-withdrawal)潜時(すなわち、20秒)は、典型的に、38、42および46℃を用いて得られた。水温が50℃に上昇したとき、個々のラットの尾−逃避反応潜時は、典型的には5〜15秒であった。54℃の最高温度は、全ラットにおいて、10秒より短い尾−逃避反応潜時をもたらした。平均ベースラインT10値(10秒以内の逃避反応(withdrawal))は、49℃〜51℃であった。
0.1mg PGEの投与量は、温度−効果曲線における左方向へのシフトおよびT10値の減少として明らかにされた用量−および時間−依存性熱過敏性をもたらした。尾−逃避反応潜時における最大の減少は、投与の15分後に起き、注射後120分で、潜時はベースラインに復帰した。
【0089】
下記の表3は、[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)エチル]ホスホン酸(化合物A)と組み合わせたPGEの効果を示す。化合物Aは、10mg/kgでのIP投与(比較例1)後、79%の逆転、および100mg/kgでのPO投与(比較例2)後、87%の逆転をもたらした。IN投与後、0.3mg、1mgおよび3mgの投与量は、各々、13%、37%および79%の逆転をもたらした。mg/kg計算に基づき、これは、0.78(±0.02)、2.59(±0.08)および7.6(±0.28)mg/kgの投与量(±SEM)を示す(実施例8)。
【0090】
【表6】

近似値についてカラムに示した;実際の平均投与量は0.8mg/kgである。
**近似値についてカラムに示した;実際の平均投与量は2.6mg/kgである。
***近似値についてカラムに示した;実際の平均投与量は7.6mg/kgである。
【0091】
ラットプロスタグランジンE−誘発性熱過敏性モデルにおいて、鼻腔内および腹腔内投与のイン・ビボでの効力は、類似しており、化合物Aの経口投与由来の効果より10倍高いことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の組成物を鼻腔内投与した後の時間に対する、サル血中(試料サイズ=4)における[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)エチル]ホスホン酸(化合物A)の平均濃度レベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I):
【化1】

[式中:
は、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアシル基、C〜Cアルカンスルホニル基、またはC〜C14アロイル基であり;
Aは、1〜4個の炭素原子のアルキレンまたは2〜4個の炭素原子のアルケニレンであり;
およびRは、独立して、水素、または
【化2】


から選択され、但し、RおよびRの少なくとも1つは水素ではなく;
およびRは、独立して、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアリール基、アリール環に5〜7個の炭素原子を有するC〜C15アルキルアリール基、C〜Cアルケニル基、またはC〜Cアルキニル基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、スピロC〜C炭素環式環を形成していてもよく;
は、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基;5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基、C〜Cシクロアルキル基、シクロアルキル環に4〜8個の炭素原子を有するC〜C16アルキルシクロアルキル基であり;
およびRは、独立して、水素、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基、5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、環に4〜8個の炭素原子を有し、窒素、酸素または硫黄から選択される1〜2個の原子を有していてもよいシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基を形成していてもよく;
ここに、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分を有するいずれのR〜R基も、該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分において、ハロゲン原子、シアノ、ニトロまたはヒドロキシル基、C−Cアルキル基、またはC−Cアルコキシ基から独立して選択される1〜約5個の置換基で置換されていてもよい]
で示される少なくとも1つの化合物またはその医薬上許容される塩の治療上有効量;および
b)鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤
を含んでなる鼻腔内投与用医薬組成物。
【請求項2】
がHである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
Aが式−(CH−を有するアルキレン基であり、ここに、nは1〜3である請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項4】
nが2である請求項4記載の組成物。
【請求項5】
およびRが独立して、HまたはC〜Cアルキル基から選択され、RがC〜C10直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜Cアリール基、5〜7員ヘテロアリール基、または環に5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基から選択される請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
がC〜Cアリール基である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
a)安息香酸3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−3−オキシド−7−オキソ−7−フェニル−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファヘプタ−1−イル;
b)2−プロピルペンタン酸3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−3−オキシド−7−オキソ−8−プロピル−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファウンデカ−1−イル;
c)2,2−ジメチル−プロピオン酸(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシメトキシ)−[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)−エチル]−ホスフィノイルオキシメチルエステル;
d)シクロヘキサンカルボン酸7−シクロヘキシル−3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−1,5−ジメチル−3−オキシド−7−オキソ−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファヘプタ−1−イル;
e)シクロヘキサンカルボン酸7−シクロヘキシル−3−{2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル}−3−オキシド−7−オキソ−2,4,6−トリオキサ−3−ホスファヘプタ−1−イル;
f)[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1−(7)−エン−2−イル)−エチル]−ホスホン酸ジイソプロポキシカルボニルオキシメチルエステル;
g)[2−[8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル]エチル]−ホスホン酸ビス[1−(ベンゾイルオキシ)エチル]エステル;
h)安息香酸[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)−エチル]−ヒドロキシ−ホスフィノイルオキシメチルエステル;または
i)[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザ−ビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)−エチル]−ホスホン酸ジ−ジメチルカルバモイルオキシメチルエステル;
およびこれらの各々の医薬上許容される塩から選択される式(I)の少なくとも1つの化合物を含んでなる請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
a)式(I)
【化3】

[式中:
は水素であり;
Aは−(CH−であり、ここに、nは2であり;および
およびRは水素である]
で示される少なくとも1つの化合物またはその医薬上許容される塩の治療上有効量;および
b)鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤
を含んでなる鼻腔内投与用医薬組成物。
【請求項9】
a)式(I):
【化4】

[式中:
は、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアシル基、C〜Cアルカンスルホニル基、またはC〜C14アロイル基であり;
Aは、1〜4個の炭素原子のアルキレンまたは2〜4個の炭素原子のアルケニレンであり;
およびRは、独立して、水素、または
【化5】

から選択され、但し、RおよびRの少なくとも1つは水素ではなく;
およびRは、独立して、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアリール基、アリール環に5〜7個の炭素原子を有するC〜C15アルキルアリール基、C〜Cアルケニル基、またはC〜Cアルキニル基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、スピロC〜C炭素環式環を形成していてもよく;
は、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基;5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基、C〜Cシクロアルキル基、シクロアルキル環に4〜8個の炭素原子を有するC〜C16アルキルシクロアルキル基であり;
およびRは、独立して、水素、C〜C12直鎖または分枝鎖アルキル基、C〜C直鎖または分枝鎖アルケニルもしくはアルキニル基、C〜C13アリール基、アリール部分に5〜13個の炭素原子を有するC〜C21アルキルアリール基、5〜13員のヘテロアリール基、ヘテロアリール部分に5〜13員を有する6〜21員のアルキルヘテロアリール基から選択されるか、またはRおよびRは一緒になって、環に4〜8個の炭素原子を有し、窒素、酸素または硫黄から選択される1〜2個の原子を有していてもよいシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基を形成していてもよく;
ここに、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分を有するいずれのR〜R基も、該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル部分において、ハロゲン原子、シアノ、ニトロまたはヒドロキシル基、C−Cアルキル基、またはC−Cアルコキシ基から独立して選択される1〜約5個の置換基で置換されていてもよい]
で示される少なくとも1つの化合物またはその医薬上許容される塩の鼻腔内投与のための治療上有効な単位投与量または複数回投与量;および
b)鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤
を含んでなる、単位投与または複数回投与形態における鼻腔内投与用医薬組成物。
【請求項10】
a)[2−(8,9−ジオキソ−2,6−ジアザビシクロ[5.2.0]ノナ−1(7)−エン−2−イル)エチル]ホスホン酸の鼻腔内投与のための治療上有効な単位投与量または複数回投与量;および
b)鼻腔内投与用組成物を形成するための1以上の医薬上許容される添加剤
を含んでなる、単位投与または複数回投与形態における鼻腔内投与用医薬組成物。
【請求項11】
組成物が約3〜約9の範囲のpHを有する請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
組成物が約4〜約8の範囲のpHを有する請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
医薬上許容される添加剤が、液体または固体担体;吸収促進剤;pH調整剤;金属キレート化剤;バッファー;増粘剤;湿潤剤;または生体接着剤またはその組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤を含む請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
医薬上許容される添加剤が組成物中、組成物の全重量に基づいて、約0.25〜約95重量%の量で配合される請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
組成物が溶液、ゲル、懸濁液、分散液またはエマルジョンから選択される液体形態である請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
式(I)の化合物が組成物中、約50mg/ml〜約300mg/mlの量で配合される請求項15記載の組成物。
【請求項17】
組成物が粉末形態である請求項16記載の組成物。
【請求項18】
粉末が約20ミクロン未満の粒径を有する請求項17記載の組成物。
【請求項19】
粉末が約180ミクロン未満の粒径を有する請求項17記載の組成物。
【請求項20】
脳虚血、脳梗塞または脳血管痙攣から選択される脳血管障害;脳外傷;筋肉痙攣;癲癇または癲癇重積症から選択される痙攣性障害;低血糖症;心停止;窒息無酸素症;または脊髄損傷から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態を治療する方法であって、請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを特徴とする方法。
【請求項21】
緑内障または糖尿病性終末器官合併症から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態を治療する方法であって、請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを特徴とする方法。
【請求項22】
不安障害;気分障害;統合失調症;統合失調症様障害;または統合失調性感情障害から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態を治療する方法であって、請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを特徴とする方法。
【請求項23】
不安障害がパニック発作、広場恐怖症、パニック障害、特定恐怖症、社会恐怖症、強迫障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、分離不安障害、または物質誘発性不安障害から選択されるか;あるいは気分障害が双極性障害、大鬱病性障害、気分変調障害もしくは物質誘発性気分障害から選択される抑鬱障害、または大鬱病性エピソード、躁病性エピソード、混合性エピソードもしくは軽躁病性エピソードから選択される気分性エピソードから選択される請求項22記載の方法。
【請求項24】
ハンティングトン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、慢性痴呆または認識障害から選択される少なくとも1つの哺乳動物における慢性神経変性障害を治療する方法であって、請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを特徴とするパーキンソン病の治療法。
【請求項26】
炎症性疾患;線維筋痛;帯状疱疹由来の合併症;麻薬性痛覚脱失に対する耐性の予防;または中毒性薬物からの離脱症状から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態を治療する方法であって、請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の治療上有効量を治療の必要な哺乳動物に鼻腔内投与することを特徴とする哺乳動物における疼痛の治療法。
【請求項28】
疼痛が神経障害性疼痛;癌痛;膵炎または腹部、骨盤もしくは会陰領域に関連する内臓痛;下背または上背、脊椎、線維筋痛、顎関節、または筋筋膜疼痛症候群に関連する筋骨格痛;骨または関節変性障害に関連する骨性疼痛;頭痛;あるいは感染、鎌状赤血球貧血、自己免疫障害、多発性硬化症、歯科処置、火傷または炎症に関連する疼痛の少なくとも1つである請求項27記載の方法。
【請求項29】
疼痛が神経障害性疼痛からなり、かつ、糖尿病性神経障害、末梢神経障害、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、腰椎または子宮頚神経根障害、線維筋痛、舌咽神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、灼熱痛、視床症候群、神経根剥離、あるいは幻肢痛、反射性交感神経性ジストロフィーもしくは開胸術後疼痛から選択される傷害、癌、化学傷害、毒素、栄養不足またはウイルスもしくは細菌感染によって引き起こされる神経損傷の少なくとも1つに関連する請求項27記載の方法。
【請求項30】
さらに、少なくとも1つの疼痛軽減剤の治療上有効量を投与することを特徴とする請求項27〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物がヒトである請求項20〜30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
脳虚血、脳梗塞または脳血管痙攣から選択される脳血管障害;脳外傷;筋肉痙攣;癲癇または癲癇重積症から選択される痙攣性障害;低血糖症;心停止;窒息無酸素症;または脊髄損傷から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいは緑内障または糖尿病性終末器官合併症から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいは不安障害;気分障害;統合失調症;統合失調症様障害;または統合失調性感情障害から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいはハンティングトン病、アルツハイマー病、慢性痴呆、または認識障害またはパーキンソン病または筋萎縮性側索硬化症から選択される少なくとも1つの哺乳動物における神経変性障害、あるいは炎症性疾患;線維筋痛;帯状疱疹由来の合併症;麻薬性痛覚脱失に対する耐性の予防;または中毒性薬物からの離脱症状から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいは哺乳動物における疼痛の鼻腔内治療のための、請求項1〜19のいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項33】
脳虚血、脳梗塞または脳血管痙攣から選択される脳血管障害;脳外傷;筋肉痙攣;癲癇または癲癇重積症から選択される痙攣性障害;低血糖症;心停止;窒息無酸素症;または脊髄損傷から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいは緑内障または糖尿病性終末器官合併症から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいは不安障害;気分障害;統合失調症;統合失調症様障害;または統合失調性感情障害から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいはハンティングトン病、アルツハイマー病、慢性痴呆、または認識障害またはパーキンソン病または筋萎縮性側索硬化症から選択される少なくとも1つの哺乳動物における神経変性障害、あるいは炎症性疾患;線維筋痛;帯状疱疹由来の合併症;麻薬性痛覚脱失に対する耐性の予防;または中毒性薬物からの離脱症状から選択される少なくとも1つの哺乳動物における病態、あるいは哺乳動物における疼痛の治療のための鼻腔内医薬の製造における、請求項1〜19のいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。


【図1】
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【公表番号】特表2006−522834(P2006−522834A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510082(P2006−510082)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/011668
【国際公開番号】WO2004/091633
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】