説明

cdk阻害剤および抗悪性腫瘍剤を含む治療用組合せ

本発明は、(a)明細書に記載の式(I)の化合物、ならびに(b)アルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を含み、遊離形態または医薬的に許容されるこの塩もしくはこの任意の水和物の形態で活性成分がそれぞれに存在する治療用組合せを提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、癌治療の分野に関し、さらに詳細には、cdk阻害剤、ならびにアルキル化剤もしくはアルキル化様作用剤(alkylating−like agent)および/または代謝拮抗剤および/またはトポイソメラーゼI阻害剤を含み、相乗的または相加的な抗悪性腫瘍効果を含む抗腫瘍組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
細胞周期の進行は、制限点と称されることもある一連のチェックポイント制御により支配され、このチェックポイント制御は、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)として公知である酵素のファミリーにより制御されていることは周知である。さらに、cdk自体は、例えば、サイクリンへの結合などの多くのレベルにおいて制御される。
【0003】
細胞周期の正常な進行には、異なるサイクリン/cdk複合体の協調的な活性化および不活性化が必要である。重要なG1−SおよびG2−M移行の両方が、異なるサイクリン活性/cdk活性の活性化により制御される。G1において、サイクリンD/cdk4およびサイクリンE/cdk2の両方が、S期の開始を仲介すると考えられている。S期の進行はサイクリンA/cdk2の活性を要求する一方、有糸分裂の開始にはサイクリンA/cdc2(cdk1)およびサイクリンB/cdc2の活性化が要求される。サイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼの一般的参考文献として、例えば、Kevin R.Webster et al,in Exp.Opin.Invest.Drugs,1998,Vol.7(6),865−887を参照のこと。
【0004】
チェックポイント制御は、腫瘍細胞において、一部にはcdk活性の調節不全に起因して欠陥を示す。例えば、サイクリンEおよびcdkの発現の変化が腫瘍細胞において観察されており、マウスにおけるcdk阻害物質p27KIP遺伝子の欠失はより高い癌発生率をもたらすことが示されている。
【0005】
証拠の増加により、cdkが細胞周期進行における律速酵素であり、これ自体が治療的介入のための分子標的を表すという考え方が裏付けされている。特に、cdk/サイクリンキナーゼ活性の直接阻害は、腫瘍細胞の無制御の増殖を制限するのに役立つはずである。
【0006】
WO2007090794(Nerviano Medical Sciences)は、cdk阻害剤と、モノクローナル抗体または抗有糸分裂剤、例えば、エポチロンまたはドセタキセルもしくはパクリタキセルのようなタキサンとの治療用組合せを開示している。WO2004110455、WO2004041308およびWO2003077999(Cyclacel Ltd.)は、cdk阻害剤およびCPT−11、ゲムシタビンまたは5−フルオロウラシルの組合せにそれぞれ関する。WO2005094830(Pfizer,Inc.)は、シグナル伝達阻害剤、例えば、cdk阻害剤の組合せを記載しており、WO2003020272(Bristol−Myers Squibb Co.)は、プロテインキナーゼ阻害剤と治療剤との組合せを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/090794号
【特許文献2】国際公開第2004/110455号
【特許文献3】国際公開第2004/041308号
【特許文献4】国際公開第2003/077999号
【特許文献5】国際公開第2005/094830号
【特許文献6】国際公開第2003/020272号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kevin R.Webster et al,in Exp.Opin.Invest.Drugs,1998,Vol.7(6),865−887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
治療的処置を最適化するため、公知の抗癌薬の組合せが継続的に必要とされている。
【0010】
一部のピラゾロキナゾリンは、サイクリン依存性キナーゼ酵素、特にCdk2の強力な阻害剤であることが実証されている。これらの化合物の1種が抗癌剤として現在開発されている。cdk阻害剤は、細胞周期のG2/M期からの細胞の進展を遮断すると解されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、増殖性障害、特に癌の治療に特に好適である、Cdk阻害剤と公知の医薬剤との新規な組合せを提供する。より具体的には、本発明の組合せは抗腫瘍剤として治療において極めて有用であり、毒性および副作用の両方の観点から、現在入手可能な抗腫瘍薬に伴う欠点を示さない。
【0012】
本発明は、第1の態様において、(a)式(I)の化合物:
【0013】
【化1】

ならびに(b)アルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を含み、遊離形態または医薬的に許容されるこの塩もしくはこの任意の水和物の形態で活性成分がそれぞれに存在する治療用組合せを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明はまた、上記組合せの同時、別個または連続使用のための組合せ製剤を提供する。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、増殖性障害の進行を治療または遅延させる方法における本発明による組合せの使用であって、前記方法が、この治療または遅延を必要とする対象に治療用組合せを同時、連続または別個に投与することを含む使用に関する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、本発明による組合せを医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0017】
さらに別の態様は、増殖性障害の治療のための医薬品の調製における上記定義の式(I)の化合物の使用であって、前記治療が、上記定義の式(I)の化合物、ならびにアルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を同時に、連続的に、または別個に対象に投与することを含む使用に関する。
【0018】
別の態様は、増殖性障害を治療するための医薬品の調製における、上記定義の式(I)の化合物、ならびにアルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤の使用に関する。
【0019】
式(I)の化合物は、化学名8−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルアミノ]−1,4,4−トリメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボン酸メチルアミドを有する。この化合物は、WO2004104007(Pharmacia Italia SpA)に記載の通り調製することができ、プロテインキナーゼ阻害活性が賦与され、従って、抗腫瘍剤として治療において有用である。特に、式(I)の化合物の好ましい調製は、上記国際特許出願の実施例58に記載のものである。
【0020】
式(I)の化合物の医薬的に許容される塩として、無機酸または有機酸との酸付加塩、例えば、硝酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸およびサリチル酸などが挙げられる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、アルキル化剤またはアルキル化様作用剤は、ニトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランおよびクロラムブシル)、アジリジン(チオテパ)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン、セムスチン)、トリアゼン(ダカルバジンおよびテモゾロミド)および白金誘導体(シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチンおよびサトラプラチン)からなる群から選択される。オキサリプラチンは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標ELOXATIN(登録商標)のもとで投与することができる。カルボプラチンは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標PARAPLATIN(登録商標)のもとで投与することができる。テモゾロミドは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標TEMODAR(登録商標)のもとで投与することができる。
【0022】
本発明のより好ましい実施形態によれば、アルキル化剤またはアルキル化様作用剤は、テモゾロミド、オキサリプラチンまたはカルボプラチンである。
【0023】
代謝拮抗剤としては、限定されるものではないが、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、メトトレキサートおよびエダトレキサートが挙げられる。カペシタビンは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標XELODA(登録商標)のもとで投与することができる。ゲムシタビンは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標GEMZAR(登録商標)のもとで投与することができる。ペメトレキセドは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標ALIMTA(登録商標)のもとで投与することができる。
【0024】
トポイソメラーゼI阻害剤としては、限定されるものではないが、トポテカン、イリノテカン、SN−38および9−ニトロカンプトテシンが挙げられる。イリノテカンは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標CAMPTOSAR(登録商標)のもとで投与することができる。トポテカンは、例えば、上市されている形態で、例えば、商標HYCAMTIN(登録商標)のもとで投与することができる。
【0025】
本発明において、組合せの活性成分のそれぞれは、相乗的な抗悪性腫瘍効果をもたらすのに有効な量で存在する。
【0026】
本発明はまた、抗悪性腫瘍剤を用いる抗悪性腫瘍療法により引き起こされる副作用の低下を必要とする、ヒトを含む哺乳動物において、抗悪性腫瘍剤を用いる抗悪性腫瘍療法により引き起こされる副作用を低下させる方法であって、上記定義の式(I)の化合物、ならびにアルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を含む組合せ製剤を、相乗的な抗悪性腫瘍効果をもたらす有効量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0027】
本明細書において使用される「相乗的な抗悪性腫瘍効果」という用語は、上記定義の式(I)の化合物、ならびにアルキル化剤もしくはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤またはトポイソメラーゼI阻害剤の組合せの有効量を、ヒトを含む哺乳動物に投与することによる、増殖腫瘍の阻害、好ましくは腫瘍の完全な退行を意味する。
【0028】
本明細書において使用される「組合せ製剤」という用語は、特に、上記定義の組合せ相手(a)および(b)を、独立して、または組合せ相手(a)および(b)の区別された量についての種々の固定された組合せの使用により、即ち、同時に、または異なる時点において投与することができるという意味の「キット・オブ・パーツ」を定義する。この場合、キット・オブ・パーツの構成成分は、同時に、または時間をずらして、即ち、異なる時点において、キット・オブ・パーツの任意の構成成分について等しい、または異なる時間間隔で投与することができる。極めて好ましくは、時間間隔は、構成成分の組合せ使用における治療される疾患に対する効果が、組合せ相手(a)および(b)のいずれか1種のみの使用により得られる効果より大きくなるように選択される。組合せ製剤において投与されるべき組合せ相手(a)と組合せ相手(b)との総量比は、例えば、治療されるべき患者亜群の必要性、または異なる必要性が特定の疾患、患者の年齢、性別、体重などに起因し得る単一患者の必要性に対処するため変動し得る。好ましくは、少なくとも1つの有益な効果、例えば、組合せ相手(a)および(b)の効果の相互向上、特に相乗作用、例えば、相加的効果を超える効果、付加的な有利な効果、より小さい副作用、組合せ相手(a)および(b)の一方または両方の非有効投与量における組合せ治療効果、極めて好ましくは、組合せ相手(a)および(b)の強力な相乗作用が存在する。
【0029】
本明細書において使用される「投与する」または「投与」という用語は、非経口および/または経口投与を意味する。「非経口」は、静脈内、皮下および筋肉内投与を意味する。
【0030】
主題発明の方法において、式(I)の化合物の投与について、一般に使用される治療コースは、5mg/m(体表面積)から1.5g/m(体表面積)の範囲である。より好ましくは、使用される治療コースは、約15mg/m/日(体表面積)から約200mg/m/日(体表面積)である。典型的なレジメンは、以下の投与スケジュールを含む:最大連続21日間毎日;2週間周期の1から7日目について毎日;4週間周期の連続3週間のそれぞれにおける1から4日目について毎日;3週間周期の1から14日目について毎日;4週間周期の1から7日目および15から21日目について毎日。
【0031】
式(I)の化合物は、種々の剤形で、例えば、錠剤、カプセル剤、糖衣錠もしくはフィルムコート錠、液剤、または懸濁液剤の形態で経口的に;坐剤の形態で直腸的に;非経口的に、例えば筋肉内に、または静脈内および/もしくは鞘内および/もしくは脊髄内の注射または注入を介して投与することができる。
【0032】
主題発明の方法において、アルキル化剤、好ましくはテモゾロミドの投与について、一般に使用される治療コースは、1日当たり15mg/mから300mg/mである。より好ましくは、一般に使用される治療コースは、最大連続42日間について1日当たり約50mg/mから150mg/mである。
【0033】
白金誘導体、好ましくは、オキサリプラチンの投与について、一般に使用される治療コースは、2から3週間毎10mg/m/日から100mg/m/日である。より好ましくは、一般に使用される治療コースは、2週間毎に1回1日目について約30mg/mから85mg/mである。
【0034】
白金誘導体、好ましくは、カルボプラチンの投与について、一般に使用される治療コースは、全身曝露(AUC値として表現)、患者の腎機能および投与スケジュールに依存する。通常、2から4週間スケジュールにわたる4から6mg/mL/分のAUCを標的とするレジメンが採用される。より好ましくは、3週間スケジュールにわたる5mg/mL/分のAUCを標的とするレジメンが使用される。
【0035】
代謝拮抗剤、好ましくは、ゲムシタビンまたはペメトレキセドの投与について、一般に使用される治療コースは、週毎の投与として200mg/mから2000mg/mである。より好ましくは、一般に使用される治療コースは、21日周期の1および8日目、または28日周期の1、8および15日目、または21日周期の1日目について約500mg/mから1250mg/mである。
【0036】
トポイソメラーゼI阻害剤、好ましくは、トポテカンの投与について、一般に使用される治療コースは、連続2から10日間について1日当たり0.1mg/mから2mg/mである。より好ましくは、一般に使用される治療コースは、21日周期における連続3から5日間について1日当たり約0.5mg/mから1.5mg/mである。
【0037】
特に好ましい実施形態において、本発明は、上記定義の式(I)の化合物、カルボプラチンおよびペメトレキセドを含む治療用組合せを提供する。このような組合せの投与について、一般に使用される治療コースは以下の通りである。式(I)の化合物は、10から150mg/m/日、好ましくは、45、60または80mg/m/日の範囲の用量で、投与を7日間継続し、7日間中断し;ペメトレキセドは、3週間毎1回、500mg/mの用量において10分間にわたり静脈内投与し;カルボプラチンは、3週間毎1回、各ペメトレキセド注入の終了から30分後、5mg/mL/分のAUCにおいて30分間の静脈内注入として投与する。
【0038】
本発明の抗悪性腫瘍療法は、限定されるものではないが:癌種、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺癌を含む肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、前立腺癌および扁平上皮癌を含む皮膚癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含むリンパ系統の造血器腫瘍;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ならびに前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;中皮腫;星細胞腫 神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘膠腫を含む中枢神経系および末梢神経系の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、角質黄色腫(keratoxanthoma)、甲状腺濾胞癌およびカポジ肉腫を含む他の腫瘍を含む癌の全形態を治療するのに特に好適である。
【0039】
上記の通り、本発明の組合せの効果は、毒性が並行して増加することなく、有意に増加する。言い換えると、本発明の組合せ療法は、本発明の組合せの相手(a)および/または相手(b)の抗腫瘍効果を高め、従って、腫瘍に対して最も有効で毒性の少ない治療をもたらす。
【0040】
本発明による医薬組成物は、抗癌療法において有用である。
【0041】
本発明はさらに、好適な容器手段中に(a)上記定義の式(I)の化合物、ならびに(b)アルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を含み、遊離形態または医薬的に許容されるこの塩もしくはこの任意の水和物の形態で活性成分がそれぞれに存在し、この同時、別個または連続使用のための取扱説明書を一緒に含む市販用包装品を提供する。
【0042】
本発明による包装品において、相手(a)および(b)のそれぞれは、単一の容器手段内に、または区別された容器手段内に存在する。
【0043】
本発明の別の実施形態は、上記の医薬組成物または生成物を含む市販用包装品である。
【0044】
細胞増殖の制御におけるcdkタンパク質の重要な役割に起因して、本発明の組合せは、種々の細胞増殖性障害、例えば、良性前立腺増殖症、家族性大腸腺腫症、ポリポーシス、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に伴う血管平滑筋細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎、ならびに術後狭窄および再狭窄などの治療においても有用である。
【0045】
本発明の組合せは、アポトーシスのモジュレーターとして、癌の治療、ウイルス感染、HIV感染個体におけるAIDS発症の予防、自己免疫疾患および神経変性障害においても有用であり得る。
【0046】
本発明の組合せの活性を、例えば、以下のインビトロおよびインビボ試験により示すが、これらは本発明の説明を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0047】
ゲムシタビンとの組合せのインビトロ細胞毒性活性
指数関数的に増殖するA2780ヒト卵巣癌細胞を播種し、加湿5%CO雰囲気中で37℃において温置した。24時間後、式(I)の化合物のスカラー量を培地に24時間添加し、細胞を洗浄し、ゲムシタビンを1時間添加した。次いで、細胞を洗浄し、最初の処理から72時間後に計数した。細胞アデノシン三リン酸モニタリングシステムにより細胞増殖を求めた。細胞増殖を対照細胞と比較した。細胞増殖を50%阻害する濃度(IC50)を算出した。
【0048】
相互に非排他的な薬物についてのChou−Talalayの式(Adv Enzyme Regul 1984;22:27−55)に基づく多剤効果分析用のコンピュータプログラムを使用して、組合せ指数(C.I.)を算出し、<1のC.I.は、相加的効果を超える効果を示す。
【0049】
薬物を単一薬剤として、および組合せにおいて用いて得られた結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
この結果は、ヒト腫瘍細胞に対して式(I)の化合物を代謝拮抗剤ゲムシタビンと有効に組み合わせることができ、相加的効果を超える(即ち、相乗的)効果をもたらすことを示す。
【実施例2】
【0052】
オキサリプラチンとの組合せのインビトロ細胞毒性活性
指数関数的に増殖するA2780ヒト卵巣癌細胞を播種し、加湿5%CO雰囲気中で37℃において温置した。24時間後、オキサリプラチンのスカラー量を培地に1時間添加し、細胞を洗浄し、式(I)の化合物を24時間添加した。次いで、細胞を洗浄し、最初の処理から72時間後に計数した。細胞アデノシン三リン酸モニタリングシステムにより細胞増殖を求めた。細胞増殖を対照細胞と比較した。細胞増殖を50%阻害する濃度(IC50)を算出した。
【0053】
相互に非排他的な薬物についてのChou−Talalayの式(Adv Enzyme Regul 1984;22:27−55)に基づく多剤効果分析用のコンピュータプログラムを使用して、組合せ指数(C.I.)を算出し、<1のC.I.は、相加的効果を超える効果を示す。
【0054】
薬物を単一薬剤として、および組合せにおいて用いて得られた結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
この結果は、ヒト腫瘍細胞に対して式(I)の化合物を白金含有化合物オキサリプラチンと有効に組み合わせることができ、相加的効果を超える(即ち、相乗的)効果をもたらすことを示す。
【実施例3】
【0057】
SN−38との組合せのインビトロ細胞毒性活性
SN38は、イリノテカンの活性代謝産物であり、イリノテカンから加水分解により得られる。指数関数的に増殖するA2780ヒト卵巣癌細胞を播種し、加湿5%CO雰囲気中で37℃において温置した。24時間後、SN−38のスカラー量を培地に1時間添加し、細胞を洗浄し、式(I)の化合物を24時間添加した。次いで、細胞を洗浄し、最初の処理から72時間後に計数した。細胞アデノシン三リン酸モニタリングシステムにより細胞増殖を求めた。細胞増殖を対照細胞と比較した。細胞増殖を50%阻害する濃度(IC50)を算出した。
【0058】
相互に非排他的な薬物についてのChou−Talalayの式(Adv Enzyme Regul 1984;22:27−55)に基づく多剤効果分析用のコンピュータプログラムを使用して、組合せ指数(C.I.)を算出し、<1のC.I.は、相加的効果を超える効果を示す。
【0059】
薬物を単一薬剤として、および組合せにおいて用いて得られた結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
この結果は、ヒト腫瘍細胞に対して式(I)の化合物をトポイソメラーゼI阻害剤SN−38と有効に組み合わせることができ、相加的効果を超える(即ち、相乗的)効果をもたらすことを示す。
【実施例4】
【0062】
テモゾロミドとの組合せにおけるインビボ抗腫瘍効力
Harlan(伊国)からのBalb Nu/Nu雄性マウスを、ろ紙カバー、飼料および滅菌した床敷、ならびに酸性化した水とともにケージ内で維持した。U87−MGヒト神経膠芽腫の断片を無胸腺マウスに皮下移植した。この腫瘍モデルは、このモデルがテモゾロミドに感受性であることが以前に実証されており、さらにテモゾロミドが神経膠腫の標準的治療であるので選択した。腫瘍が触診可能であるとき、テモゾロミドによる処置を開始した。化合物は、処置直前に調製した。
【0063】
式(I)の化合物を、10ml/kgの容量で、20および40mg/kgの用量において、1日2回(BID)、連続7日間、経口経路により投与した。テモゾロミドを、10ml/kgの容量で、25mg/kgの用量において連続5日間、経口投与した。組み合わせる場合、テモゾロミドを、最初の5日間投与し、次いで式(I)の化合物を後続の7日間投与した。腫瘍増殖および体重を3日毎に測定した。腫瘍増殖を測径器により判断した。2つの直径を記録し、腫瘍重量を次式:長さ(mm)×幅/2に従って算出した。抗腫瘍治療の効果を、腫瘍の指数増殖開始の遅延として評価した(参考として、Anticancer drugs 7:437−60,1996を参照のこと)。この遅延(T−C値)を、処置群(T)および対照群(C)の腫瘍が所定の大きさ(1g)に達するのに必要な時間差(日数)として定義した。毒性を体重減少に基づき評価した。結果を表4に報告した。
【0064】
【表4】

【0065】
アルキル化剤テモゾロミドと組み合わせた式(I)の化合物は、明瞭な相乗効果をもたらした。式(I)の化合物をテモゾロミドと組み合わせた場合に観察されたT−Cは、単一の処置により得られるT−Cを単純に加えることにより予期されるものを上回り、または組合せ群において観察された腫瘍不含マウスの数は単一薬剤を用いて観察されたものより多かった。毒性は、処置群のいずれにおいても観察されなかった。
【実施例5】
【0066】
トポテカンとの組合せにおけるインビボ抗腫瘍効力
Harlan(伊国)からのBalb Nu/Nu雄性マウスを、ろ紙カバー、飼料および滅菌した床敷、ならびに酸性化した水とともにケージ内で維持した。N−592ヒト小細胞肺癌腫瘍の断片を無胸腺マウスに皮下移植した。この腫瘍モデルは、このモデルがトポテカンに感受性であるため、さらにNSCL癌におけるこの薬物の使用に基づき選択した。
【0067】
腫瘍が触診可能であるとき、処置を開始した。化合物は両方とも、処置直前に調製した。
【0068】
式(I)の化合物を、10ml/kgの容量で、20および30mg/kgの用量において、1日2回(BID)、17日間、経口経路により投与した。トポテカンを、10ml/kgの容量で、6mg/kgの用量において1、5、9、13、17日目に静脈内経路により投与した。組み合わせる場合、式(I)の化合物を、1、5、9、13、17日目においてはトポテカン投与直前に投与した。腫瘍増殖および体重を3日毎に測定した。腫瘍増殖を測径器により判断した。2つの直径を記録し、腫瘍重量を次式:長さ(mm)×幅/2に従って算出した。抗腫瘍治療の効果を、腫瘍の指数増殖開始の遅延として評価した(参考として、Anticancer drugs 7:437−60,1996を参照のこと)。この遅延(T−C値)を、処置群(T)および対照群(C)の腫瘍が所定の大きさ(1g)に達するのに必要な時間差(日数)として定義した。毒性を体重減少に基づき評価した。結果を表5に報告する。
【0069】
【表5】

【0070】
トポイソメラーゼI阻害剤トポテカンと組み合わせた式(I)の化合物は、明瞭な相乗効果をもたらした。式(I)の化合物をトポテカンと組み合わせた場合に観察されたT−Cは、単一の処置により得られるT−Cを単純に加えることにより予期されるものをはるかに上回った。毒性は、処置群のいずれにおいても観察されなかった。
【実施例6】
【0071】
5−FUとの組合せにおけるインビボ抗腫瘍効力
Harlan(伊国)からのBalb Nu/Nu雄性マウスを、ろ紙カバー、飼料および滅菌した床敷、ならびに酸性化した水とともにケージ内で維持した。HCT−116ヒト結腸癌の断片を無胸腺マウスに皮下移植した。この腫瘍モデルは、このモデルが5−FUに感受性であるため、さらに結腸癌におけるこの薬物の使用に基づき選択した。
【0072】
腫瘍が触診可能であるとき、処置を開始した。化合物は両方とも、処置直前に調製した。
【0073】
式(I)の化合物を、10ml/kgの容量で、20mg/kgの用量において、1日2回(BID)、6日間の2周期、経口経路により投与した。5−FUを、10ml/kgの容量で、50mg/kgの用量において1、8日目に静脈内経路により投与した。組み合わせる場合、式(I)の化合物を、5−FU処置より後日(2日目から7日目および9日目から14日目から開始して投与した。腫瘍増殖および体重を3日毎に測定した。腫瘍増殖を測径器により判断した。2つの直径を記録し、腫瘍重量を次式:長さ(mm)×幅/2に従って算出した。抗腫瘍治療の効果を、腫瘍の指数増殖開始の遅延として評価した(参考として、Anticancer drugs 7:437−60,1996を参照のこと)。この遅延(T−C値)を、処置群(T)および対照群(C)の腫瘍が所定の大きさ(1g)に達するのに必要な時間差(日数)として定義した。毒性を体重減少に基づき評価した。結果を表6に報告した。
【0074】
【表6】

【0075】
代謝拮抗剤5−FUと組み合わせた式(I)の化合物は、明瞭な相乗効果をもたらした。式(I)の化合物を5−FUと組み合わせた場合に観察されたT−Cは、単一の処置により得られるT−Cを単純に加えることにより予期されるものをはるかに上回った。毒性は、処置群のいずれにおいても観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)の化合物:
【化1】

ならびに(b)アルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を含み、遊離形態または医薬的に許容されるこの塩もしくはこの任意の水和物の形態で活性成分がそれぞれに存在する治療用組合せ。
【請求項2】
アルキル化剤またはアルキル化様作用剤が、ニトロジェンマスタード、アジリジン、ニトロソウレア、トリアゼンおよび白金誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
アルキル化剤またはアルキル化様作用剤が、テモゾロミド、オキサリプラチンまたはカルボプラチンである、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
代謝拮抗剤が、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、メトトレキサートおよびエダトレキサートからなる群から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
代謝拮抗剤が、5−フルオロウラシル、ゲムシタビンまたはペメトレキセドである、請求項4に記載の組合せ。
【請求項6】
トポイソメラーゼI阻害剤が、トポテカン、イリノテカン、SN−38および9−ニトロカンプトテシンからなる群から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項7】
トポイソメラーゼI阻害剤が、イリノテカンまたはトポテカンである、請求項6に記載の組合せ。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)の化合物、カルボプラチンおよびペメトレキセドを含む、請求項1に記載の組合せ。
【請求項9】
同時、別個または連続使用のための組合せ製剤である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項10】
増殖性障害の進行を治療または遅延させる方法における請求項1から8のいずれか一項に記載の組合せであって、前記方法が、この治療または遅延を必要とする対象に治療用組合せを同時、連続または別個に投与することを含む組合せ。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組合せを医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合して含む医薬組成物。
【請求項12】
増殖性障害の治療のための医薬品の調製における請求項1に記載の式(I)の化合物の使用であって、前記治療が、上記定義の式(I)の化合物、およびアルキル化剤もしくはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤またはトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を同時に、連続的に、または別個に対象に投与することを含む使用。
【請求項13】
増殖性障害を治療するための医薬品の調製における、請求項1に記載の式(I)の化合物、およびアルキル化剤もしくはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤またはトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤の使用。
【請求項14】
抗悪性腫瘍剤を用いる抗悪性腫瘍療法により引き起こされる副作用の低下を必要とする、ヒトを含む哺乳動物において、抗悪性腫瘍剤を用いる抗悪性腫瘍療法により引き起こされる副作用を低下させる方法であって、請求項1に記載の式(I)の化合物、ならびにアルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を含む組合せ製剤を、相乗的な抗悪性腫瘍効果をもたらす有効量で前記哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項15】
好適な容器手段中に(a)上記定義の式(I)の化合物、ならびに(b)アルキル化剤またはアルキル化様作用剤、代謝拮抗剤およびトポイソメラーゼI阻害剤からなる群から選択される1種以上の抗悪性腫瘍剤を含み、遊離形態または医薬的に許容されるこの塩もしくはこの任意の水和物の形態で活性成分がそれぞれに存在し、この同時、別個または連続使用のための取扱説明書を一緒に含む市販用包装品。

【公表番号】特表2011−529474(P2011−529474A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520505(P2011−520505)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059815
【国際公開番号】WO2010/012777
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(307012403)ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ (55)
【Fターム(参考)】