pADPRTインヒビターを用いる炎症および炎症性疾患の処置法
【課題】動物または哺乳動物にpADPRT抑制化合物の有効量を投与することからなる、動物または哺乳動物における炎症または炎症性疾患を処置する方法、および動物または哺乳動物におけるグラム陰性およびグラム陽性の両方で誘発される内毒素症状を処置する方法の提供。
【解決手段】6−アミノ−1,2−ベンゾピロン、5−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、7−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、および8−アミノ−1(2H)−イソキノリノン及び式(I)で示される化合物などからなる群から選ばれる有効量のpADPRT抑制化合物。
【解決手段】6−アミノ−1,2−ベンゾピロン、5−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、7−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、および8−アミノ−1(2H)−イソキノリノン及び式(I)で示される化合物などからなる群から選ばれる有効量のpADPRT抑制化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物または哺乳類の炎症および関節炎を含む炎症性疾患の処置法に関する。また本発明は、全身性感染から生じるまたはリポ多糖類によるインフェステーションから生じる、グラム陰性およびグラム陽性内毒素症状の両方を持つ動物または哺乳類の処置法にも関係する。これらの方法には、治療上有効量のpADPRT抑制化合物の使用が必要である。
【背景技術】
【0002】
pADPRT抑制化合物の使用は、癌やウイルス感染の処置用として報告されている。これらの処置法の具体例は、特許文献に記載されている(特許文献1から6)。
【0003】
出版文献において、核酵素ポリ−ADPリボース・ポリメラーゼ(pADPRT)の新規インヒビターである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)は最近になって、Ha−rasトランスフェクション内皮細胞系におけるインビボ腫瘍形成を抑制することが認められている[Bauerらの「Int. J. Oncol.」(8、239−252、1995年),“5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を用いる処置による、ras−形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍形成の、成長関連酵素経路の変異と明らかな喪失”;Bauerらの「Biochimie」(77、347−377、1995年),“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンドである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”](非特許文献1および2)。またINH2BPによる処置は、トポイソメラーゼIおよびIIおよびMAPキナーゼ活性において変化をもたらす[Bauerらの「Int. J. Oncol.」(8、239−252、1995年),“5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を用いる処置による、ras−形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍形成の、成長関連酵素経路の変異と明らかな喪失”;Bauerらの「Biochimie」(77、347−377、1995年),“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンドである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”](非特許文献1および2)。考察効果に基づき、癌治療におけるINH2BPの潜在的使用に関する仮説が提案されている[Bauerらの「Int. J. Oncol.」(8、239−252、1995年),“5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を用いる処置による、ras−形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍形成の、成長関連酵素経路の変異と明らかな喪失”;Bauerらの「Biochimie」(77、347−377、1995年),“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンドである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”](非特許文献1および2)。
【0004】
悪性成長および炎症性経過は、一定の細胞シグナル形質導入経路、たとえばMAPキナーゼの活性化を分配する[Kyriakisらの「J. Biol. Chem.」(271、24313−24316、1996年),“アラームの響き:ストレスや炎症によって活性化されるタンパクキナーゼ・カスケード”;Ferrell J. E.の「TIBS」(21、460−466、1996年),“異様なスイッチの始動:タンパクキナーゼ・カスケードはグレード入力をスイッチ様出力に如何に変換しうるか”](非特許文献3および4)。慢性炎症は、たとえば腸管上皮の場合に証明されるように、発癌性形質転換になることが少なくない[Kawaiらの「Cancer Res.」(53、5172−5175、1993年),“リポ多糖類誘発炎症によるラットの膀胱腫瘍形成の増加”;Rosinらの「Canser Res. 」(54(7Suppl.)、1929s−1933s、1994年),“炎症、染色体の不安定性、および癌:住血吸虫症モデル”;Choiらの「Gut.」(35、950−954、1994年),“Crohn病および潰瘍性大腸(結腸)炎における結腸直腸癌の類似性:発癌と予防に対する暗示”](非特許文献5から7)。慢性炎症と発癌性形質転換の因果関係に基づき、この研究の目的は、INH2BPがインビトロおよびインビボの炎症経過に影響を及ぼすかどうかを調べることであった。我々の研究では、多発性前炎症性メディエイタの産生は、細菌性リポ多糖類(内毒素、LPS)によって誘発された。LPSは、数多くの細胞反応を誘発することが知られ、かつ全身性炎症応答を引き起こす。LPS誘発の前炎症性メディエイタとしては、腫瘍壊死アルファ因子(TNF)、インターロイキン−I、インターフェロン−ガンマが包含され、一方、抗炎症性メディエイタとしては、インターロイキン−10(IL−10)やインターロイキン−13が包含される[Deltenreらの「Acta Gastroenterol Belg.」(58、193−200、1995年),“胃癌:ヘリコバクター幽門跡”;Beutlerの「J. Invest. Med.」(42、227−235、1995年),“TNF、免疫および炎症性疾患:過去10年間のレッスン”;Lilesらの「J. Infect Dis.」(172、1573−1580、1995年),“評論:炎症に必然的に伴なうシトキンの命名と生物学的重要性および宿主免疫応答”;Giroirの「Critical Car. Med.」(21、780−789、1993年),“敗血症性ショック:内因性炎症性カスケードを中断する新しいアプローチ”](非特許文献8から11)。これら炎症性シトキンの産生の結果として、LPSは炎症性遊離ラジカル(酸素が中心、たとえばスーパーオキシド;および窒素が中心のラジカル、たとえば酸化窒素[NO])のおよびプロスタグランジンの産生を起こす[Nathanの「FASEB J.」(6、3051−3064、1992年),“哺乳類細胞の分泌産物としての酸化窒素”;Vane J. R.の「Proc. Roy. Soc. Lond B」(343、225−246、The Croonian Lecture 1993年),“内皮:血液循環のマイストロ(maestro)”;Szabo C.の「New Horizons」(3、3−32、1995年),“種々形態の循環ショックにおける酸化窒素の産生の変化”](非特許文献12から14)。炎症におけるNOの産生は、NOシンターゼの異なるイソフォーム(isoform)(iNOS)の発現に基づくが、炎症性シトキンの産生は、シクロオキシゲナーゼの異なるイソフォーム(シクロオキシゲナーゼ−2、COX−2)の発現によって説明される[Nathanの「FASEB J.」(6、3051−3064、1992年),“哺乳類細胞の分泌産物としての酸化窒素”;Vane J. R.の「Proc. Roy. Soc. Lond B」(343、225−246、The Croonian Lecture 1993年),“内皮:血液循環のマイストロ”;Szabo C.の「New Horizons」(3、3−32、1995年),“種々形態の循環ショックにおける酸化窒素の産生の変化”](非特許文献12から14)。iNOS、COX−2、並びに上述の前炎症性シトキンおよび遊離ラジカルは、LPS誘発の炎症性応答において重要な役割を演じる[Nathanの「FASEB J.」(6、3051−3064、1992年),“哺乳類細胞の分泌産物としての酸化窒素”;Vane J. R.の「Proc. Roy. Soc. Lond B」(343、225−246、The Croonian Lecture 1993年),“内皮:血液循環のマイストロ”;Szabo C.の「New Horizons」(3、3−32、1995年),“種々形態の循環ショックにおける酸化窒素の産生の変化”](非特許文献12から14)。さらに、NO(またはその毒性副生物であるパーオキシニトリット(亜硝酸塩))は、発癌性経過への炎症性応答の形質転換になる基本メディエイタとして意味づけられている[Bartsch らの「Pharmacogenetics」(2、272−277、1994年),“ヒト癌病因学における内因性で形成したN−ニトロソ化合物およびニトロシル化剤”;Liu らの「Carcinogenesis」(15、2875−2877、1992年),“ウッドチャックの肝炎ウイルス表面抗原は、肝細胞でのNO合成を誘発する”;Ohshimaらの「Mutation Res.」(305、253−264、1994年),“慢性感染および癌危険因子としての炎症経過:発癌における酸化窒素の可能な役割”](非特許文献15から17)。最新の研究で、我々は最初に、INH2BPによる処置が、LPS誘発モデルの炎症においてインビボで、炎症性メディエイタの腫瘍壊死アルファ因子[TNF]、インターロイキン−10、インターロイキン−6、NO、およびプロスタグランジンの産生に影響を及ぼすかどうかを調べた。
【0005】
前炎症性メディエイタの産生に先行する数多くの細胞内経過がある。チロシン・キナーゼの活性化[Levitzki A.の「Eur. J. Biochem.」(226、1−13、1994年),“シグナル−形質導入療法 疾病管理への新しいアプローチ”;Novogrodekyらの「Science 264U(Wash)」(1319−1322、1994年),“リポ多糖類誘発の致死毒性のチロシン・キナーゼインヒビターによる予防”;Marczinらの「Am. J. Physiol.」(265、H1014−1018、1993年),“チロシン・キナーゼインヒビターは、大動脈平滑筋細胞における内毒素およびIL−1ベータ誘発のNO合成を抑止する”](非特許文献18から20);ミトゲン−活性化タンパクキナーゼ(MAPキナーゼ)[Matsudaらの「J. Leukocyte Biol.」(56、548−553、1994年),“ミトゲン−活性化タンパク(MAP)キナーゼ/MAPキナーゼ・カスケードによって仲介されるシグナリング経路”;L' Allemain G.の「Progr. Growth Factor Res.」(5、291−334、1994年),“MAPキナーゼ経路の解読”;Cowleyらの「Cells」(77、841−852、1994年),“MAPキナーゼの活性化は、PC12分化およびNIH3T3細胞の形質転換に対して必要十分である”](非特許文献21から23);および核因子カッパB(NF−kB)経路[Baeuerleらの「Ann. Rev. Immunol.」(12、141−179、1994年),“免疫系におけるNF−Bの機能と活性化”;Schreckらの「Free Radical Res. Comm.」(17、221−237、1992年),“核因子カッパB:真核生物細胞の酸化ストレス−応答転写因子(評論)”;Mullerらの「Immunobiol.」(187、233−256、1993年),“リポ多糖類影響のメディエイタである核因子カッパB”](非特許文献24から26)は、炎症性応答の重要な因子として認められ、かつ炎症性メディエイタの発現または産生に寄与する。従って、我々はまた、INH2BPがMAPキナーゼのLPS誘発活性化やLPSによるNF−kBにも影響を及ぼすかどうかをも調べた。最新の研究結果から、INH2BPはLPS誘発炎症性応答の多重成分(multiple components)の調整によって、潜在的な抗炎症性効果を有することが証明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5464871号明細書
【特許文献2】米国特許第5473074号明細書
【特許文献3】米国特許第5482975号明細書
【特許文献4】米国特許第5484951号明細書
【特許文献5】米国特許第5516941号明細書
【特許文献6】米国特許第5583155号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bauer et al., 1995,"Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-l,2-benzopyrone (INH2BP),"Int. J. Oncol. 8: 239-252
【非特許文献2】Bauer et al., 1995,"Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly (ADP-ribose) polymerase,"Biochimie 77: 347-377
【非特許文献3】Kyriakis et al., 1996, "Sounding the alarm: protein kinase cascades activated by stress and inflammation," J. Biol Chem. 271: 24313-24316
【非特許文献4】Ferrell, JE, 1996,"Tripping the switch fantastic: how a protein kinase cascade can convert graded inputs into switch-like outputs," TIBS 21: 460-466
【非特許文献5】Kawai et al., 1993,"Enhancement of rat urinary bladder tumorigenesis by ipopolysaccharide-induced inflammation,"Cancer Res. 53: 5172-5
【非特許文献6】Rosin et al., 1994,"Inflammation, chromosomal instability, and cancer: the schistosomiasis model,"Cancer Res. 54 (7 Suppl): 1929s-1933s
【非特許文献7】Choi et al., 1994,"Similarity of colorectal cancer in Crohn's disease and ulcerative colitis: implications for carcinogenesis and prevention,"Gut 35: 950-4
【非特許文献8】Deltenre et al., 1995,"Gastric carcinoma: the Helicobacter pylori trail,"Acta Gastroenterol Belg. 58: 193-200
【非特許文献9】Beutler, 1995,"TNF, immunity and inflammatory disease: lessons of the past decade,"J. Invest. Med. 42: 227-35
【非特許文献10】Liles et al., 1995,"Review: nomenclature and biologic significance of cytokines involved in inflammation and the host immune response,"J. Infect Dis. 172: 1573-80
【非特許文献11】Giroir, 1993,"Mediators of septic shock: new approaches for interrupting the endogenous inflammatory cascade,"Critical Car. Med. 21: 780-9
【非特許文献12】Nathan, 1992,"Nitric oxide as a secretory product of mammalian cells,"FASEB J. 6: 3051-3064
【非特許文献13】Vane, J. R., The Croonian Lecture 1993,"The endothelium: maestro of the blood circulation,"Proc. Rov. Soc. Lond B 343: 225-246
【非特許文献14】Szabo, C.; 1995,"Alterations in the production of nitric oxide in various forms of circulatory shock,"New Horizons 3: 3-32
【非特許文献15】Bartsch et al., 1994,"Endogenously formed N- nitroso compounds and nitrosating agents in human cancer etiology," Pharmacogenetics 2: 272-7
【非特許文献16】Liu et al., 1992,"Woodchuck hepatitis virus surface antigen induces NO synthesis in hepatocytes: possible role in hepatocarcinogenesis.," Carcinogenesis 15: 2875-7
【非特許文献17】Ohshima et al., 1994,"Chronic infections and inflammatory processes as cancer risk factors: possible role of nitric oxide in carcinogenesis,"Mutation Res. 305: 253-64
【非特許文献18】Levitzki, A., 1994, "Signal-transduction therapy. A novel approach to disease management,"Eur. J. Biochem. 226: 1-13
【非特許文献19】Novogrodeky et al., 1994,"Prevention of lipopolysaccharide- induced lethal toxicity by tyrosine kinase inhibitors,"Science 264U (Wash): 1319-22
【非特許文献20】Marczin et al., 1993,"Tyrosine kinase inhibitors suppress endotoxin-and IL-lbeta- induced NO synthesis in aortic smooth muscle cells,"Am. J. Physiol. 265: H1014- 1018
【非特許文献21】Matsuda et al., 1994, "Signaling pathways mediated by the mitogen-activated protein (MAP) kinase kinase/MAP kinase cascade,"J. Leukocyte Biol. 56: 548-53
【非特許文献22】L'Allemain, G., 1994, "Deciphering the MAP kinase pathway,"Progr. Growth Factor Res. 5: 291-334
【非特許文献23】Cowley et al., 1994,"Activation of MAP kinase kinase is necessary and sufficient for PC12 differentiation and for transformation of NIH 3T3 cells., "Cells 77: 841-52
【非特許文献24】Baeuerle et al., 1994,"Function and activation of NF-B in the immune system,"Ann. Rev. Immunol. 12: 141-79
【非特許文献25】Schreck et al., 1992,"Nuclear factor kappa B: an oxidative stress-responsive transcription factor of eukaryotic cells (a review),"Free Radical Res. Comm. 17: 221-37
【非特許文献26】Muller et al., 1993,"Nuclear factor kappa B, a mediator of lipopolysaccharide effects," Immunobiol. 187: 233-56
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、動物または哺乳類の炎症および関節炎を含む炎症性疾患の処置法を目的とする。また本発明は、全身性感染から生じるまたはリポ多糖類によるインフェステーションから生じる、グラム陰性およびグラム陽性内毒素症状の両方を持つ動物または哺乳類の処置法をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の炎症または炎症性疾患の処置法に関するものであって、ここで、pADPRT抑制化合物は、下記の化合物群から選ばれる。
式:
【化1】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5およびR6はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4,R5およびR6の1つのみがアミノである]の化合物;式:
【化2】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]の化合物;および式:
【化3】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]
の化合物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物は、動物または哺乳類の炎症および関節炎を含む炎症性疾患の処置において効果がある。また、本発明の化合物は、全身性感染から生じるまたはリポ多糖類によるインフェステーションから生じる、グラム陰性およびグラム陽性内毒素症状の両方を持つ動物または哺乳類の処置においても効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、J774細胞におけるLPS誘発の(a)ニトリット(亜硝酸塩)産生、(b)6−ケトプロスタグランジンF1α産生、(c)TNF産生および(d)ミトコンドリア呼吸の抑止に対するINH2BPの効果を示す図面である。TNFは4hで測定し、他の全てのパラメータはLPS後24hで測定した。**は対照(コントロール)(p<0.01)mと比較したときのLPSに対する応答の有意変化を示し;##はLPS単独(p<0.01)と比較したときのLPSの存在下のINH2BPの有意効果を示し;n=6〜12ウェル。
【図2】図2は、INH2BPはJ774およびRAW264.7細胞におけるiNOS発現の抑制を示す図面である。(a)対照条件下(レーン1)、LPS処置の4h後(レーン2)およびINH2BP(100μM)の存在下細胞中のLPS処置の4h後(レーン3)の、J774細胞(A)およびRAW264.7マクロファージ(B)におけるiNOSおよび18s mRNAの代表的ノーザン斑点(Northern blots)、(b)対照条件下(CおよびC+INH2BP)およびLPS処置(LPSおよびLPS+INH2BP)の12h後のJ774細胞のホモジネートにおけるiNOS活性に関するINH2BPの効果、**は対照(p<0.01)と比較したときのLPSの有意効果を示し;##はINH2BP(p<0.01)による有意抑制を示し;n=4、(c)INH2BPの存在または非存在下、対照J774細胞およびLPSの12h後の細胞における代表的iNOSウェスタン斑点(Western blot)。
【図3】図3は、ニトリット蓄積に対するINH2BPの効果を示す図面である。(a)INH2BP(100μM)をLPSの2h前、LPSといっしょに、またはLPSの2,4および6h後に付与したときのニトリット蓄積の時間に依存する抑制損失、(b)LPSとIFNの組合せによって刺激されるJ774細胞におけるニトリット蓄積に対するINH2BPの効果;n=6〜12ウェル。
【図4】図4は、全長(full length)(−1592bp)または欠失(deletional)(−367bp)iNOSプロモータールシフェラーゼ構造(構築物)のいずれかで一時的にトランスフェクションしたRAW264.7細胞における、LPSによるルシフェラーゼ活性の誘発に対するINH2BPの効果を示す図面である。全長構造または欠失構造(黒色バー)のいずれかでトランスフェクションした細胞において、LPS(10μg/ml、4h)による処置は、対照値に対して10〜12倍のルシフェラーゼ活性の誘発になった。INH2BPとの共同処置は、全長構造でトランスフェクションした細胞においてルシフェラーゼ活性のLPS−仲介増加を抑制したが、−367bp欠失構造(灰色バー)でトランスフェクションした細胞では有意効果はなかった。データは対照細胞に対してルシフェラーゼ活性の倍増加で表示し、かつそれぞれのベータ−ガラクトシダーゼ活性に対して修正する。*はLPS単独(p<0.05)と比較したときのLPS存在下のINH2BPの有意効果を示し;n=4それぞれのトランスフェクション。
【図5】図5は、INH2BPによる意識のあるラットにおけるiNOSの誘発の抑止を示す図面である。対照ラット(c)、INH2BP(INH2BP)を注射したラット;LPS(15mg/kg i.p.、6h)を注射したラットにおける肺ホモジネート(a)および血漿(プラズマ)ニトリット−ニトレート濃度(b)のiNOS活性;およびINH2BP(10mg/kg i.p.)をLPSの10分前(INH2BP+LPS)またはLPSの2h後(LPS+INH2BP)に付与して処置した効果。**は対照(p<0.01)と比較したときのLPSの有意効果を示し;##はpADPRTインヒビター(p<0.01)による有意抑制を示し;n=4〜5。
【図6】図6は、LPS投与(4mg/kg i.p.)の90分後のマウスにおけるLPS誘発のTNF、IL−10およびIL−6応答に対するINH2BP(10mg/kg i.p.)の効果を示す図面である。**は対照(p<0.01)と比較したときのLPSの有意効果を示し;##はINH2BP(p<0.01)による応答の有意増加を示し;n=4〜5。
【図7】図7は、INH2BPによる内毒素ショックに付したマウスの生存の改善を示す図面である。マウスにおける内毒素誘発(120mg/kg i.p.)の死亡率に対するINH2BP前処置(0.3〜10mg/kg)の効果;各グループでn=7〜8匹。
【図8】図8は、MAPキナーゼ・アッセイの結果を示す図面である。(a)100μM−PD98059または150μM−INH2BPの存在または非存在下、ビヒクルまたはLPS(10μg/ml)を24h処置したRAW264.7細胞におけるMAPキナーゼ活性、データは典型的な実験で得た値を示し、3つの異なる実験日で類似の結果が認められた。(b)150μM−INH2BPの存在または非存在下、ビヒクルまたはLPS処置の24h後のRAW264.7細胞における代表的なゲルMAPキナーゼ・アッセイ、レーン1〜4はそれぞれ以下のグループを示す:1:ビヒクル処置対照、2:LPS処置、3:150μM−INH2BP存在下のビヒクル処置、4:150μM−INH2BP存在下のLPS処置。
【図9】図9は、LPSに応答する核移行に及ぼすINH2BPの阻害の影響を示す図面である。pADPRTのINH2BPによる抑制は、対照J74細胞の核抽出物のおよびINH2BP(100μM)の存在または非存在下のLPS処置の90分後の細胞におけるNF−kBウェスタン斑点の核転座を変えない。
【図10】図10は、カラゲナン誘発の足浮腫の発生に対するINH2BPの効果を示す図面である。データはカラゲナン注射の1〜4h後の足容積を示す(平均値±S.E.M.、各グループのn=6匹)。1時間の足容積に有意増加があり(p<0.01)、1〜4時間においてINH2BPの足浮腫発生の有意抑制があった(**p<0.02)。
【図11】図11は、コラーゲン誘発関節炎の発病に対するINH2BPの効果を示す図面である。関節炎マウス(マウスが示す関節炎の臨床的スコア>1)の割合(%)を示す。21日目の矢印は、第2コラーゲン免疫処置の時間を示し、25日からの水平バーは、INH2BP(N=6)またはVEHICLE(ビヒクル)(N=10)による処置の開始の時間を示す。
【図12】図12は、コラーゲン誘発関節炎の苛酷に対するINH2BPの効果を示す図面である。コラーゲン誘発関節炎中の平均関節炎スコア。21日目の矢印は、第2コラーゲン免疫処置の時間を示し、25日からの水平バーは、INH2BP(n=6)またはビヒクル(n=10)による処置の開始の時間を示す。26日から関節炎スコアに有意増加があり(Ip<0.01)、26〜35日間でINH2BPによる関節炎スコアの有意抑止があった(#p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1つの態様は、動物または哺乳類の炎症または炎症性疾患の処置法であって、該方法は、上記動物または哺乳類に対して有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る。
【0013】
本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の炎症または炎症性疾患の処置法であって、ここで、pADPRT抑制化合物は、下記の化合物群から選ばれる。
式:
【化4】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5およびR6はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4,R5およびR6の1つのみがアミノである]の化合物;式:
【化5】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]の化合物;および式:
【化6】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]
の化合物。
【0014】
好ましいpADPRT化合物としては、6−アミノ−1,2−ベンゾピラン、3−ニトロソベンズアミド、5−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、7−アミノ−1(2H)−イソキノリノンおよび8−アミノ−1(2H)−イソキノリノンが挙げられる。
【0015】
さらに本発明の他の態様として、動物または哺乳類の両グラム陰性およびグラム陽性誘発症状の処置法が包含され、該方法は、動物または哺乳類に対して治療上有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る。
【0016】
さらにまた本発明の他の態様は、動物または哺乳類に対して治療上有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の両グラム陰性およびグラム陽性誘発の内毒素症状の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は上述の化合物I、化合物II、または化合物IIIの群から選ばれる。
【0017】
さらにまた本発明の他の態様は、動物または哺乳類に対して治療上有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の両グラム陰性およびグラム陽性誘発の内毒素症状の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0018】
さらにまた本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の関節炎の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0019】
さらにまた本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類のクローン(Chron)病の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0020】
さらにまた本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類のバレット(Barrett)病の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0021】
本発明のpADPRT抑制化合物は、U.S.特許No.5464871、5473074、5482975、5484951、5516941および5583155に記載の方法に従って製造することができる。
【0022】
本発明の方法で用いるのに好ましい抑制化合物としては、ハロ基がヨード、R基の1つがアミノであり、R基の1つが上記U.S.特許に記載の如くニトロソまたはニトロであってもよく、しかし好ましいR基がアミノである化合物が含まれる。また、pADPRT抑制活性は、ヨード成分がアミノ成分に隣接するときに著しく示されることが認められた。いずれにせよ、本発明の方法で使用される化合物は、pADPRT抑制活性を有するべきである。
【0023】
かかる化合物は、それ単独でまたは好ましくは、当該分野で公知の医薬的に許容しうる酸付加塩または他の適当な医薬担体といっしょに使用されてよい。
【0024】
(発明の好ましい具体例の説明)
本明細書で用いる定義:
“抗炎症性”疾患とは、体組織の炎症がある疾患あるいは状態を指称する。かかる疾患としては、たとえばクローン(Chron)病、バレット(Barrett)病、関節炎、多発性硬化症、心筋症疾患、大腸炎、感染性髄膜炎、脳炎等が挙げられる。
【0025】
“医薬的に許容しうる酸付加塩”とは、生物学的有効性と遊離塩基の性質を保持し、および塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、サリチル酸等との反応によって得られる塩を指称する。
【0026】
“ADPRT”とは、アデノシンジホスホリボース・トランスフェラーゼを指称し、ADP−リボースの重合を触媒する真核生物の特異的DNA−結合核タンパクである、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(EC2.4.99)としても公知である。該酵素プロセスはDNAに依存する。
【0027】
“アルキル”とは、飽和または不飽和の分枝鎖もしくは直鎖炭化水素基を指称する。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0028】
“アルコキシ”とは、−O−アルキルの基を指称する。典型的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシ等が挙げられる。
【0029】
“シクロアルキル”とは、3〜8個の炭素原子含有の飽和モノ環式炭化水素基を指称し、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
【0030】
“置換フェニル”とは、可能な異性フェニル基の全てを指称し、たとえばアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロの群から選ばれる置換基でモノまたはジ置換したものが挙げられる。
【0031】
“ハロ”とは、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨードを指称し、ヨードが好ましい。
本発明のpADPRT抑制化合物(特に上述の化合物I、IIまたはIIIの如き化合物)は、効力ある、特異的で非毒性の抗炎症性化合物であって、たとえば関節炎、クローン病、バレット病などの炎症に関して公知の状態および疾病に使用することができる。また、これらの化合物は、グラム陰性およびグラム陽性誘発感染に付随する状態、特にグラム陰性感染に付随する状態(およびリポ多糖類状況や敗血症に付随する状態を含む)での処置に有用である。かかる化合物は特に、毒性があっても、極めて少ないという点で有用である。
【0032】
実際に、本発明化合物またはその医薬的に許容しうる塩は、動物または哺乳類において、炎症性状態もしくは疾患の抑制および/または炎症または炎症性疾患の発生の予防において十分な量で投与され、かつかかる使用目的に最適な医薬剤形で使用される。
【0033】
本明細書に記載の活性化合物および塩の投与は、治療作用物質の場合の許容される投与方式のいずれかによって行なうことができる。これらの投与方法としては、経口、非経口、経皮、皮下などの全身もしくは局所投与、あるいは局所的な投与方式が挙げられる。これらの薬物の好ましい投与方法は経口投与である。ある特定の場合、組成物を他の非経口剤形で投与することが必要となりうる。
【0034】
組成物は、意図される投与方式に基づき、固体、半固体または液体投与剤形、たとえば注射剤、錠剤、坐剤、丸剤、時間−放出カプセル剤、粉剤、液剤、懸濁液等の剤形で、好ましくは単位投与剤形であってよい。組成物は、有効量の活性pADPRT抑制化合物またはその医薬的に許容しうる塩を含有し、さらに、該組成物は通常の医薬賦形剤や医学で慣用されている他の薬効のあるもしくは製薬上の薬物または作用物質、担体、佐剤、希釈剤等を含有してもよい。
【0035】
固体組成物の場合の賦形剤としては、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムが包含され、また同類のものも使用しうる。上記の活性pADPRT抑制化合物は、たとえば担体としてポリアルキレングリコール(プロピレングリコールなど)を用いて坐剤として調剤されてもよい。
【0036】
液体、特に注射用組成物はたとえば、水、食塩水、水性ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどの製薬液への活性化合物の溶解、分散等を行なうことにより、注射溶液もしくは懸濁液を形成することによって調製することができる。
【0037】
要すれば、投与される医薬組成物は、最小量の非毒性助剤物質、たとえば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤や、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン・オレエートなどの他の物質を含有してもよい。
【0038】
また要すれば、投与される医薬組成物は、リン脂質、陰荷電リン脂質と、コレステロール、コレステロールの脂肪酸エステルまたは不飽和脂肪酸から選ばれる化合物から成るリポソーム製剤を含有してもよい。典型的な中性リン脂質としては、L−a−ホスファチジルコリン、L−a−ホスファチジルイノシトール、L−a−ホスファチジル−セリン、L−a−ホスファチジルイノソトール、L−a−ホスファチジン酸、L−a−ホスファチジルグリセロール、L−a−リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミセリンおよびカルジオリピンが挙げられる。
【0039】
典型的な陰荷電リン脂質としては、ジアセチルホスフェートまたはホスホジグリセリド、たとえばジラウロイル,ジミリストイルホスフェート、ジパルミトイルホスフェート、ジステロイルホスフェートが挙げられる。
【0040】
典型的なコレステロールおよびコレステロールエーテル類としては、コレステロール、3S−ヒドロキシ−5−コレステン、ポリオキシエタニルコレステリル・セバケート、コレステロール−5,6−エポキシド、コレステリル・アセテート、コレステリル・n−ブチルエーテル、コレステリル・カプレート、コレステリル・ドデカノエート、コレステリル・エチルエーテル、コレステリル・ヘプタデカノエート、コレステリル・メチルエステルが挙げられる。
【0041】
典型的な不飽和脂肪酸としては、アラキドン酸、ドコサヘキサン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、ネルボン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸が挙げられる。ハロニトロ化合物は、カプセル化またはU.S.特許出願No.08/020035[名称:リポソーム製剤並びにその作成および使用法、1993年2月19日出願]の記載に従って、リポソーム製剤の二層リポソームに分配してもよい。
【0042】
第1の具体例において、最初にリポソームを形成し、次いでC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を加える。C−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物は、カプセル化するよりはむしろ、脂質二層のリポソームに分配する(配置する)。この組成物を作成するため、典型例として、ホスファチジルコリン、ジセチルホスフェートおよびコレステロールなどの成分を、クロロホルムなどの溶剤とブレンドする。ブレンド後、クロロホルムを追い出す。次いで、これに水を加える。リポソームに水を加えると、多層板状の(multilamellar)リポソームが作成される(すなわち、該リポソームは多数の層を有するタマネギの皮に類似する)。次工程として、それらを凍結し、解凍する。液体窒素中で急速に凍結させる。急速な凍結および解凍の目的は、リポソームの寸法をより均一にするためである。このときのリポソームの寸法はまちまちであり、1回以上、たとえば5回で取扱う。解凍は、37度の水浴で起る。凍結および解凍前に、混合物を音波破砕する。音波破砕と解凍の組合せは、皮の数を減じる。目標は、単板状系(unilamellar system)を作ることである。このとき、C−ニトロソ化合物を加え、10ミリモル(Mu)濃度を得る。濃度は15ミリモル以上であってもよい。この濃度の脂質で、60mlバッチの場合、総脂質濃度は648mgで、60mlの水を加える。ホスファチジルコリンは500mg、コレステロールは36mg、ジセチルホスフェートは112mgである。
【0043】
混合物のリポソーム濃度の増加は、混合物がより多くのC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を含有するのを可能ならしめる。たとえば、上記混合物の現状濃度を2倍にすることができる。60ミルバッチの場合、上記数値を2倍にすることができ、1000mgのホスファチジルコリン、224mgのジセチルホスフェートおよび72mgのコレステロールを有する。濃度の減少は、そこに入れるC−ニトロソ化合物の量を減じる。仮定の60mlバッチの場合、C−アミノ化合物アプローチの上限は、15ミリモル濃度のC−アミノ化合物である。3−ニトロソベンズアミドの場合、60mlバッチに対して135mgである。
【0044】
次工程として、再水和する。次いでプロセスの次工程は、押出機(カナダ、ブリティッシュ・コロンビア、バンクーバーのリペックス・ビオメンブランズ・Inc.)を用いる押出である。
【0045】
押出プロセスは2つの目的、すなわち、(1)リポソームの寸法の均一化および(2)滅菌に役立つ。
【0046】
押出には典型例として、0.1ミクロンフィルターによる濾過が含まれ、かつその後に通常、混合物を凍結乾燥する(混合物から水を取出し、微粉末とする)。これによって溶解性が改善される結果、約40ミリモル溶液に調合でき、これは凍結乾燥前の濃度の約3倍である。凍結乾燥は粉末脂質と粉末C−アミノ化合物の混合物を生成する。そこで、同量のC−アミノ化合物とより少量の液体を用いて、濃度の高い混合物を作成することができる。たとえば、同重量のC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を有しうるが、元の容量の3分の1以下である。
【0047】
上記プロセスの工程を改変、たとえば凍結乾燥といった工程を削除することができよう。
【0048】
この第1具体例のプロセスは、C−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を有意的にカプセル化するものではない。化合物をリポソームの中間に有する代わりに、化合物は膜自体に存在する。リポソームの膜内に分配されたC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物は、標的細胞に移行し、脂質はC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を細胞膜の中へ運ぶだろう。
【0049】
このプロセスは好ましくは、直径約0.05〜0.45ミクロン、好ましくは約0.1〜0.2ミクロンのリポソームを作成する。単板状または多層板状のリポソームが有効である。
【0050】
押出の第2目的は、混合物を滅菌することである。滅菌するため、リポソームを一般に直径が45ミクロン以下となるように作成する。0.05ミクロン以下の寸法が、理論的に作用するだろう。第1具体例のプロセスは、たとえば水中の3NOBAのみが0.5ミリモル濃度を有するという利点を持つ。かかるリポソーム組成物は15ミリモルの濃度を達成する。
【0051】
さらに、水溶液中の3−NOBAのみとは異なり、NOBA含有リポソーム溶液は、アスコルビン酸に対し耐性である。このことから、該溶液は実験室におけるマウス実験に有用となる。溶液はNOBAモノマーまたはNOBAダイマーを含有してもよい。
【0052】
第2の具体例において、出発物質として脂質成分の被膜を用い、該被膜を薬物の水溶液で水和する。これは自動的に、薬物を閉じ込める(カプセル化する)脂質を形成する。これは、リポソーム膜不透過性の化合物といっしょに生じる。かかる化合物の一例は、U.S.特許No.5262564(1993年11月16日特許)に記載のもの、たとえば3−NOBAのL−シスチン−スルフィン酸アダクトである。
【0053】
皮下投与、筋肉内または静脈内注射および注入の場合、一般に非経口の注射投与が用いられる。注射剤は、注射の前に液体に溶解するのに適当な液状溶液もしくは懸濁液または固体形状などの通常の形状で製造することができる。
【0054】
非経口投与のためより最近に案出されたアプローチでは、遅放出性または持続放出性システムの移植(植込み)が採用され、これは、U.S.特許No.3710795の記載に従って、一定レベルの投与量の維持を確実にする。
【0055】
上記医薬組成物のいずれも、活性成分として、0.1〜99%、好ましくは1〜70%の活性pADPRT抑制化合物、特に上記式I、IIまたはIIIのハロ−C−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を含有しうる。
【0056】
慢性炎症は、各種組織における発癌性形質転換を促進することが知られている。核酵素ポリ−ADPリボース・ポリメラーゼ(pADPRT)の新規インヒビターである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)は最近、種々の細胞シグナル形質導入経路を調節し、かつHa−rasトランスフェクション内皮細胞系によるインビボ腫瘍形成を取消すことが認められた。本発明の1つの側面として、インビトロおよびインビボの、炎症性メディエイタ腫瘍壊死アルファ因子(TNF)、インターロイキン−10(IL−10)およびインターロイキン−6(IL−6)、酸化窒素(NO)およびプロスタグランジンの産生に関して内毒素(細菌性リポ多糖類、LPS)による活性化に対するpADPRT抑制化合物、たとえばINH2BPの効果が証明される。さらに、本発明は、インビトロのミトゲン−活性化タンパクキナーゼ(MAPキナーゼ)および核因子kB(NF−kB)の活性化に対するpADPRT抑制化合物、たとえばINH2BPの効果を示す。培養したJ774およびRAW264.7マクロファージにおいて、LPSは、プロスタグランジン代謝産物の産生、TNFの放出および誘発性イソフォームのNOシンターゼ(iNOS)の発現を誘発した。プロスタグランジンおよびNOの産生は、用量に依存してINH2BPによって抑制され、一方、TNF−アルファの短時間放出の影響はなかった。INH2BPは、全長(−1592bp)ネズミ・マクロファージiNOSプロモータ−ルシフェラーゼ構造で一時的にトランスフェクションしたRAW細胞におけるLPS仲介のルシフェラーゼ活性を顕著に抑止したが、−367bpからなる欠失構造においてはそうではなかった。インビボのINH2BP前処置(ラットのLPSによるiNOSの誘発を抑制)は、LPS誘発のTNFおよびIL−6応答に影響を及ぼさず、かつLPS−誘発IL−10産生を高めた。INH2BP前処置は、致死モデルの内毒素ショックにおけるマウスの生存を顕著に改善した。これらの結果から、pADPRT抑制化合物、たとえばINH2BPはインビトロおよびインビボの効力ある抗炎症性作用を有することが証明される。
【0057】
ポリ−ADPリボース・シンセターゼ(PARS)は、DNA単鎖破壊によって活性化される核酵素である。PARSの大規模な活性化は、過酸化水素−パーオキシニトリットまたは電離線誘発の広範なDNA単鎖破壊に応じて、細胞損傷において頂点に達するエネルギー消耗の無益サイクル(futile cycle)を起こす。パーオキシニトリットの産生は最近、関節炎やカラゲナン誘発の足浮腫を含む種々の炎症において証明された。本発明は、ラットモデルのカラゲナン誘発の足浮腫およびマウスモデルのコラーゲン誘発の足浮腫において1〜4hで、PARS,pADPRT抑制化合物、たとえば5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)の新規で効力のあるインヒビターの効果を示す。雄DMA/1Jマウスにおけるコラーゲン誘発関節炎は、1日目と21日目のタイプIIコラーゲンの2回の注射で誘発した。マウスのINH2BP(1日当り0.5g/kg)による経口処置は、関節炎の発病時(25日)に開始したが、26〜35日目の関節炎の臨床徴候の発生を遅らせた。INH2BP処置動物は、ひざと足で調べたように、関節炎指数の減少(関節炎スコア:ビヒクル処置マウスで見られるスコアの20〜50%)と、組織状態の改善を示した。これらのデータから、PARSインヒビターINH2BPは、インビボINH2BPで抗炎症性効果を示すことが証明され、かつ投与の開始を比較的に遅くしても、コラーゲン誘発関節炎の経過を遅らせることができた。本発明のデータによって、PARS活性化は関節炎、あるいは他種の炎症および炎症性疾患の発生において役割を演じるという見方が支持される。
【0058】
(実施例)
次に挙げる実施例は本発明を例示するのに役立つもので、本発明を狭くしたり、その技術的範囲を制限すると解釈すべきではない。
【実施例1】
【0059】
細胞培養:
マウスマクロファージセルラインJ774およびRAW264.7を、スザボら、1996、「DNA鎖切断、ポリ−ADPリボシルシンセターゼの活性化、および細胞エネルギー消耗はマクロファージ内およびペルオキシ亜硝酸塩(peroxynitrite)に曝された平滑筋細胞における細胞毒性に関与する」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1753−1758;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358に開示のように、ダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)で培養した。別の研究では、腹膜マクロファージは雄性ウィスターラットから得、インビトロで24時間LPSの存在下あるいは非存在下で、INH2BPと共に、あるいは非存在下で培養した。ラットを殺し、腹膜マクロファージを摘出し、DMEMで培養した。細胞をE.Coli LPS(10mg/ml)あるいはLPSおよびINF(50μ/ML)で、様々の濃度(1−150mM)のINH2BPあるいは他の薬理学的インヒビターの存在下あるいは非存在下で、種々の時間処理した。
【0060】
MAPキナーゼ関連アッセイ:
未処理の細胞をPBSで洗浄し、集め、100万個の細胞あたり100mlの溶解緩衝液(50mMトリス−塩酸、pH7.4、1%NP−40、0.4M NaCl、0.1mM NAVO3、50mM KF、1mM EGTA、2mM PMSF、25nMオカダイックアシッド(okadaic acid)、ロイペプチン、アプロチニン、アルナスタチンおよびアンチパインを各1mg/ml)を用いて溶解した。溶解は20分間氷上で行い、エッペンドルフ(Eppendorf)遠心機を用いて、13000rpmで14分間遠心分離した。上清を集め、そのタンパク含量をバイオ−ラド(Bio−Rad)染料アッセイを用いて測定した。
【0061】
ゲルMAPキナーゼアッセイにおいて:
タンパク試料(50mg/レーン)を固定化ミエリン塩基性タンパク(MBP、250mg/mlゲル)を含有する100%SDS−PAGEゲル内で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを50mMトリス−塩酸、pH7.7緩衝液(25ml、20分間)で1回洗浄し、ついで25%イソプロパノール含有の同緩衝液で30分間ずつ2回インキュベーションした。ゲルをついで該トリス-塩酸緩衝液で洗浄し、50mMトリス−塩酸pH7.7、mM2−メルカプトエタノール、5Mグアニジン塩酸塩(50mL)溶液に、30分後にインキュベーション溶液を替えながら、1時間浸漬した。ゲルを50mMトリス−塩酸pH7.7、Mm2−メルカプトエタノール、0.04%NP−40の溶液を16時間かけて5回替えながらインキュベーションすることにより、タンパクを再度栄養供給した。ゲルを2回洗浄し、50mMトリス−塩酸pH7.7、5mM MgCl2、7mM 2−メルカプトエタノール含有溶液内で半時間プレインキュベーションした。最終インキュベーションは、10mMの32p−g]ATP(50mCi/測定)を補足した同溶液内で1時間行った。インキュベーション終了後、10%TCA(3×25ml)および10%酢酸(3×25ml)を用いて、非結合の放射活性が無くなるまで洗浄し、乾燥し、オートラジオグラフィーに付した;サカキら、1995「成長因子−誘導細胞増殖に対するセラミドの増強効果」、Biochem. J. 311:829−834。
【0062】
MAPキナーゼウェスタンブロッティング:
細胞抽出タンパク100mgを10%SDS−PAGEゲルに賦し、電気泳動し、ニトロセルロース膜上にトランスブロットし、イムノプローブした。第1抗体(抗−MAPキナ−ゼ)をUBIから得、第2抗体はアルカリホスファターゼ標識した、NENバイオラボから得た。測定は増強ケミルミネセンス(化学発光)により行った;バウエルら、1995、「成長関連酵素経路の変法とラス−形質変換ウシアンドセリアルセルラインの、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理による発癌性の明白な喪失」、Int. J. Oncol. 8:239−252。
【0063】
細胞核抽出物の調製およびNF−kBウェスタンブロッティング:
細胞をLPSでINH2BPの存在下または非存在下で90分間処理した。ミニ細胞核抽出物を、ハサナインら、1993、「DNA−結合因子の増強ゲル可動性シフトアッセイ」、Anal. Biochem. 213:162−7に開示のように調製した。細胞を暫時スクレープし、暫時遠心分離し、得られたペレットを400mlの冷緩衝液A[ヘペス、pH7.9(10mM)、KCl(10mM)、EDTA(0.1mM)、EGTA(0.1mM)、DTT(1mM)、PMSF(0.5mM)、ペプスタチンA(1mg/ml)、ロイペプチン(10mg/ml)、およびアプロチニン(10mg/ml)]に、25mlの1%NP−40の存在下、氷冷下15分間再懸濁した。ついで、試料を渦巻攪拌し、10,000gで1分間遠心分離し、得られたペレットを100mlの緩衝液B[ヘペス、pH7.9(20mM)、NaCl(400mM)、EDTA(1mM)、EGTA(1mM)、DTT(1mM)、PMSF(0.5mM)、ペプスタチンA(mg/ml)、ロイペプチン(10mg/ml)、およびアプロチニン(10mg/ml)]に再懸濁した。ロッカープラットフォーム上で4℃15分間振とう後、試料を4℃で15 100,100gで15分間遠心分離した。70ml部ずつ150mlのSDS−PAGE試料緩衝液で処理した。ウェスタンブロッティングを、ウサギ抗−マウスNF−kB1次抗体(サンタ・クルズ・バイオテクノロギー、サンタ・クルズ、CA)のツイーンTBS(0.02%)の1:750を用いて上記の如く行った。
【0064】
亜硝酸塩または亜硝酸塩/硝酸塩濃度の測定:
刺激後24時間後の培養上清中の亜硝酸塩を、スザボら、1996、「DNA鎖切断、ポリ−ADPリボシルシンセターゼの活性化、および細胞エネルギー消耗はマクロファージ内およびペルオキシ亜硝酸塩(peroxynitrite)に曝された平滑筋細胞における細胞毒性に関与する」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1753−1758;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358;スザボら、1994、「スペルミンは免疫−刺激J774.2マクロファージにおける酸化窒素の生成を阻害する:血清因子の要求」、Br. J. Pharmacol. 112:355−356に開示の如く、グリース(Griess)試薬(1%スルファニルアミドおよび0.1%ナフチルエチレンジアミンの5%燐酸溶液)を培地100ml試料に加えて、測定した。550nmにおける光学濃度(OD550)をスペクトラマックス(Spectramax)250マイクロプレートリーダー(モレキュラー・デバイシス、サニーベイル、CA)を用いて測定した。血漿試料中の総亜硝酸塩/硝酸塩濃度の測定のため、硝酸塩は硝酸塩還元酵素とインキュベーションすることにより亜硝酸塩に還元した;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358。
【0065】
6−ケトプロスタグランジンF1aの測定:
LPS刺激4時間後の6−ケトプロスタグランジンF1a生成を、細胞培養上清100ml試料内で、特異的放射免疫測定法を用いて測定した;スザボら、1994、「スペルミンは免疫−刺激J774.2マクロファージにおける酸化窒素の生成を阻害する:血清因子の要求」、Br. J. Pharmacol. 112:355−356。
【0066】
サイトカイン測定:
血漿および細胞培養上清中のサイトカインレベルをELISAで測定した。IL−10およびIL−6の血漿レベルは、エンドーゲン(エンドーゲン・インコーポレィテッド、ボストン、MA)のELISAキットを用いて測定した。TNF−αの血漿および細胞培養上清中の濃度は、ゲンザイム(ゲンザイム・コーポレイテッド、ボストン、MA)のELISAキットを用いて測定した;スザボら、1997、「イソプロテレナールは腫瘍壊死因子、インターロイキン−10、インターロイキン−6および酸化窒素の生成を調節し、内毒素血症の血管性低反応性の発生に対して保護する」、Immunology 90:95−100。
【0067】
ミトコンドリア呼吸の測定:
24時間後のミトコンドリア呼吸は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミドのホルマザンへのミトコンドリア−依存還元によって、評価した;スザボら、1996、「DNA鎖切断、ポリ−ADPリボシルシンセターゼの活性化、および細胞エネルギー消耗はマクロファージ内およびペルオキシ亜硝酸塩(peroxynitrite)に曝された平滑筋細胞における細胞毒性に関与する」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1753−1758;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358。
【0068】
iNOSmRNAのノーザンブロッティング
細胞を、INH2BPの存在下または非存在下でLPSに4時間さらしたのち、全RNAを、TRIZOLを用いて記載されているように抽出した。15mgの全RNAを含むアリコートを、3%ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル電気泳動にかけた。RNAをナイロンメンブランにブロッティングして移し、UV自己架橋させた。メンブランを、ランダムプライミング(Pharmacia, Piscataway, NJ)により[32P]dCTP(比活性3,000Ci/mM;NEN)で標識したネズミiNOScDNAプローブ(106cpm/mL)と、42℃にて一晩、記載されているようにしてハイブリダイゼーションした(Lowensteinら,1993, “Macrophage nitric oxide synthase gene: two upstream regions mediate induction by interferon gamma and lipopolysaccharide,”Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 9730-9734)。ハイブリダイゼーションしたフィルターを、53℃にて、2×クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、0.1%SDSおよび2.5mM NaHPO4、1mM EDTA、0.1%SDS溶液で順次に洗浄した。iNOSのプロービングの後、沸騰した5mM EDTAでメンブランから脱離させ、ハウスキーピング遺伝子としての18SリボソームRNAについて[32P]放射能標識オリゴヌクレオチドプローブと再びハイブリダイゼーションした。洗浄したのち、Phosphor Imagerスクリーンを用い、一晩露光した。
【0069】
iNOSウェスタンブロッティング
細胞を、pADPRT阻害剤の存在下および非存在下に、LPSで20時間処理した。次いで、冷却したPBS中で細胞を破壊し、14000Gで30秒間遠心した。上清を除去し、RIPA(500mL)、アプロチン(10mg/mL)およびPMSF(0.5mM)を含む溶解緩衝液を加えた。試料を22ゲージの針に通すことによりDNAをせん断した。タンパク質含量は、Bradford法(BIO-Rad)により測定した。サイトゾルタンパク質(200mg/レーン)をSDS-PAGE緩衝液に加え、5分間煮沸し、7.5%SDS−PAGEで分離し、等速電気泳動緩衝系を使用するSemi-Dry法を用いてニトロセルロース膜(0.2mm)ヘ移した。3%ゼラチン中で1時間ブロッキングしたのち、洗浄し、トゥイーン Tris緩衝塩水(TTBS)および1%ゼラチン中、TTBS中1:1000(0.0%)の一次ウサギ抗マウスiNOS(upstate Biotechnology, Lake Placid, NY)で試料を2.5時間イムノブロッティングした。アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ウサギiGG抗体を二次抗体として使用した。抗体結合を、炭酸緩衝液中のニトロブルー テトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロインドリルホスフェート(NBT/BCIP)(BIO−RAD)によって視覚化した。
【0070】
iNOS活性の測定
細胞を、pADPRT阻害剤の存在下および非存在下に、LPSで12時間処理した。J774細胞のホモジネートまたは肺ホモジネートにおけるL−アルギニンのL−シトルリンへのカルシウム非依存性変換の測定値を、記載されているようにiNOS活性の指標として使用した(Szaboら, 1994, “Spermine inhibits the production of nitric oxide in immuno-stimulated J744.2 macrophages: requirement of a serum factor,”Br. J. Pharmacol. 112:355-356)。細胞を破壊するか、または肺を、50mM Tris HCl、0.1mM EDTA、0.1mM EGTAおよび1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド(pH7.4)からなるホモジネーション緩衝液に入れ、Tissue Tearor 985-370ホモジナイザー(Biospec Products, Racine, WI)を用い、緩衝液中、氷の上でホモジネーションした。次いで、ホモジネート中での[3H]-L-アルギニンの[3H]-L-シトルリンへの変換を測定した。ホモジネート(30mL)を[3H]-L-アルギニン(10mM ,5kBq/チューブ)、NADPH(1mM)、カルモジュリン(30nM)、テトラヒドロビオプテリン(5mM)、およびEGTA(5mM)の存在下に、22℃にて20分間インキュベーションした。EGTA(2mM) とEDTA(2mM)を含有する0.5mLの氷冷HEPES緩衝液(pH5.5)で希釈することにより反応を止めた。反応混合物をDowex 50W(Na+型)カラムに注ぎ、溶出した[3H]-L-シトルリン活性をシンチレーション計測により測定した。
【0071】
iNOSプロモーターの機能アッセイ
我々の実験条件の下では、J774細胞は、リン酸カルシウム、リポフェクチンおよびリポフェクタミン法を使用してそれら細胞を一過性トランスフェクションする我々の試みには耐性であったので、トランスフェクション試験は、RAW264.7細胞で行った。レポーター遺伝子ルシフェラーゼの上流に5’ネズミマクロファージiNOSプロモーター領域を組み込んだリポーター遺伝子構築物でAW264.7細胞を一過性トランスフェクションすることにより、iNOSプロモーター活性を評価した;Lowensteinら, 1993, “Macrophase nitric oxide synthase gene: two upstream regions mediate induction by interferon gamma and lipopolysaccharide,”Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 90:9730-9734;(Dr. Charles J. Lowenstein. Johns Hopkins Universityより提供された)。2種類の構築物を使用した:完全長のプロモーター構築物(約1592bp)と約367bpからなる欠失構築物。細胞を6ウェルのカルチャープレートに集密度約50%で加え、カチオンリポソーム(Lipofectin, Gibco)を用い、等モルの各iNOSプロモータールシフェラーゼ構築物でトランスフェクションした。トランスフェクション効率の違いを調整するために、細胞をpSV40−b−ガラクトシダーセで同時トランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を一晩回復させ、次いで培地単独(コントロール)、LPS(10mg/mL)、またはLPS+INH2BP(100mM)で処理した。4時間処理したのち、細胞をPBS中で1回洗浄し、リポーター溶解緩衝液(Promega)中で溶菌し、ルシフェラーゼ活性を分析し、各粗(raw)-ガラクトシダーゼ活性について較正し、コントロール細胞(トランスフェクション後、培地単独で処理)を越える増加倍数で表示する。
【0072】
インビボ実験
雄性Wisterラットおよび雄性BALB/cマウスをCharles River Laboratories(Wilimington, MA またはBudapest, Hungary)より入手した。動物に餌と水を自由に与え、照明は12時間周期で維持した。ラットに E. coli LPS(15mg/kg)を腹腔内注射し、6時間後に屠殺した。亜硝酸塩/硝酸塩測定のためにプラズマ試料を採取し、iNOS測定のために肺試料を採取した。個々のラット群を、LPS注射の10分前またはLPS注射の2時間後にINH2BP(10mg/kg i.p.)で処理した。
【0073】
LPS誘導性のサイトカイン応答の測定に関する実験では、マウスに、体重10gあたり0.1mLの容量で賦形薬またはINH2BP(10mg/kg)のいずれかを腹腔内注射した。30分後、4mg/kgのLPSを腹腔内投与した。マウスをLPS処置の90分後に屠殺し、血液を、EDTAを含む氷冷したエッペンドルフチューブに採取し、4℃にて10分間遠心した。分析するまでプラズマを−7℃で保存した。
【0074】
マウスを用いるいくつかの実験では、0時間目でマウスにLPS(120mg/kg)を腹腔内注射し、生存をLPS投与後42時間監視した。それぞれの群のマウスには、LPS投与の18時間前、4時間前、0時間後、6時間後、24時間後および30時間後に、賦形薬またはINH2BPによる処置(0.1〜10mg/kg腹腔内)を施した。
【0075】
材料
DMEM、RPMI、TRIZOLおよびウシ胎児血清は、Gibco(Grand Island, NY)から入手した。[3H]NAD+および[32P]NAD+は、DuPont NEN(Boston, MA)より入手した。アルコールデヒドロゲナーゼおよびND+は、Boehringer Mannheim(Indianapolis, IN)より入手した。PD98059は、Cal Biochem(La Jolla, CA)より入手した。その他の試薬はすべてSigma(St. Louis, MO)より入手した。
【0076】
統計学的評価
図面および本文中のすべての値は、n個の観測値(n>4)の平均(S.E.M.)の平均±標準誤差で示す。スチューデント無対(unpaired) t−テストを群間の平均値の比較に使用した。0.05未満のp値は、統計学的有意であるとみなした。
【0077】
結果
INH2BPは、J774マクロファージにおいてLPS誘導性の一酸化窒素およびプロスタグランジンを抑制するが、TNF−a産生は抑制しない。
【0078】
INH2BP処理は、J774マクロファージにおいてLPS誘導性の一酸化窒素形成の用量依存的阻害をもたらした(図1a)。INH2BPは、6−ケトプロスタグランジンF1aのLPS誘導性の産生を同様に抑制した(図1b)が、TNFの産生は抑制せず(図1c)、LPS誘導性のミトコンドリア呼吸の抑制を元の水準に戻した(図1d)。INH2BPは、iNOSmRNAおよびタンパク質発現の著しい阻害をもたらした(図2a〜c)。INH2BPによる亜硝酸塩産生の阻害は、iNOS誘導の刺激の前とは対照的に、薬剤をLPS投与の数時間後に投与した場合に大きく減少した(図3a)。さらに、iNOSに対するINH2BPの阻害効果は、LPSをインターフェロンガンマ(INF−g50μ/mL)と組み合わせて免疫刺激に使用した場合に大きく減少した(図3b)。
【0079】
INH2BPによるiNOSプロモーター誘導の選択的抑制
INH2BPによるiNOSの調節をさらに試験するために、我々は、ネズミマクロファージiNOSプロモーター - ルシフェラーゼ構築物を用いる一過性分析を行った。以前のデータ(Lowensteinら, 1993,“Macrophase nitric oxide synthase gene: two upstream regions mediate induction by interferon gamma and lipopolysaccharide”Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:9730-9734)と一致して、我々は、LPSによるルシフェラーゼ活性の約10倍〜12倍の誘導によって証明されるように、LPSが介在するネズミマクロファージiNOSの転写調節に関係する重要な役割を見い出した。完全長のプロモーター構築物(約1592bp)でトランスフェクトした細胞を、INH2BPで同時処置すると、LPSが介在するルシフェラーゼ活性が完全に阻害された(図4)。しかし、約367bpの欠失構築物でトランスフェクトした細胞を、同じく同時処置すると、LPSが介在するルシフェラーゼ活性に対する有意な影響はなかった(図4)。
【0080】
INH2BPのインビボ抗炎症効果
INH2BPの前処置は、プラズマ亜硝酸塩/硝酸塩のLPS誘導性の増加、および意識のあるラットにおける肺iNOS活性の増加を減少させた(図5)。NO産生に対するINH2BPの阻害効果は、薬物をLPS刺激の数時間後に細胞または動物に投与した場合には減少した(図5)。形質転換した細胞系と同様、100mM INH2BPによる処置は、インビトロでLPS(10mg/mL)により刺激された初代細胞(ラットから得た腹腔マクロファージ)における亜硝酸塩産生を有意に減少させた(56±7%、p<0.01)(n=4)。
【0081】
インビトロでの結果(図1c)と同様に、INH2BPは、マウスにおけるプラズマTNFレベルのLPS誘導性の増加に対して有意な影響は及ぼさなかった(図6a)。INH2BPは、LPS誘導性のIL−6産生にも影響を及ぼさなかった(図6c)。しかし、INH2BPは、LPS誘導性のIL−10プラズマ応答の増大をもたらした(図6b)。
【0082】
INH2BPによるマウスの前処置は、LPSの致死用量投与時の生存率において、有意で用量依存的な改善をもたらした(図7)。
【0083】
INH2BP活性は、MAPキナーゼのLPS誘導性の活性化を破壊するが、NF−κBの活性化と核移行には変化を及ぼさない。
【0084】
iNOSの誘導および他の炎症メディエーターの産生に先立つ複数の細胞内過程が存在する。チロシンキナーゼの活性化は、炎症メディエーターにおける重要な因子であると認識されている(Levitzki, A, 1994,“Signal-transduction therapy. A novel approach to disease management,”Eur. J. Biochem. 226:1-13;Novogrodskyら, 1994,“Prevention of lipopolysaccharide-induced lethal toxicity by tyrosine kinase inhibitors,”Science 264 (Wash):1319-22;Marczinら, 1993,“Tyrosine kinase inhibotors surppress endotoxin- and IL-1-beta-induced NO synthesis in aortic smooth muscle cells,”Am. J. Physiol. 265:H1014-1018, mitogen-activated protein kinase (MAP kinase); Matsudaら, 1994,“Signaling pathways mediated by the mitogen-activated protein (MAP) kinase/MAP kinase cascade,”J. Leukocyte Biol. 56:548-53; L'Allemain, G., 1994,“Deciphering the MAP kinase pathway,”Progr. Growth Factor Res. 5:291-334;Cowleyら, 1994,“Activation of MAP kinase kinase is necessary and significant for PC12 differentiation and for transformation of NIH 3T3 cells,”Cells 77:841-52; and the NF-κB pathway; Baeuerleら, 1994,“Function and activation of NF-κB in the immune system,”Ann. Rev. Immunol. 12:141-79;Schreckら, 1992,“Nuclear factor kappa B: an oxidative stress-response transcription factor of eukaryotic cells (a review),”Free Radical Res. Comm. 17:221-37;Mullerら, 1993, “Nuclear factor kappa B, a mediator of lipopolysaccharide effects,”Immunobiol. 187:233-56)。したがって、我々は、炎症過程のINH2BPによる阻害作用におけるこれらの経路の関与の可能性を解明するために、LPS刺激に応答するMPAキナーゼおよびNF-κBの活性化にINH2BPが影響を及ぼすかどうかについて調べた。
【0085】
刺激していないRAW264.7マクロファージにおいて、かなりの基底MAPキナーゼ活性が存在していた。LPS処置(10mg/mL、24時間)は、ウェスタンブロット(示していない)によって示されるように、免疫反応性のMAPキナーゼ含量に影響を及ぼすことなく、MAPキナーゼ活性の約2.5倍の増加を誘導した(図8)。INH2BP(150mM) による3日間の細胞の前処理は、基底のMAPキナーゼ活性を約50%抑制し、MAPキナーゼのLPS誘導性の増加を破壊した(示していない)。基底のMAPキナーゼ活性は、MAPキナーゼキナーゼ阻害剤(Pangら, 1995,“inhibition of MAP kinase kinase blocks the differentiation of PC-12 cells induced by nerve growth factor,”J. Biol. Chem. 270:13585-8)、PD98059(100mM)によってわずかに抑制され、LPS誘導性のMAPキナーゼ活性化もまた阻害された(図8)。心筋細胞における最近のデータ(Singhら, 1996,“Regulation of cytoline-inducible nitric oxide synthesis in cardiac myocytes and microvascular endothelial cells,”J. Biol. Chem. 271:1111-1117)と一致して、LPS誘導性の亜硝酸塩産生もまたPD 98059によって抑制された(53%、100mM 、n=3)。
【0086】
単核細胞系の領域における最近の観察(Baeuerleら, 1994,“Function and activation of NF-κB in the immune system,”Ann. Rev. immunol. 12:141-79)と同様に、我々は、J774細胞およびRAW264.7細胞における基底(構成性)の核NF−κBを見い出した。LPS刺激は、NF−κBの核移行の増加をもたらし、INH2BPの阻害は、LPSに応答する核移行に影響しなかった(図9)。
【0087】
考察
ポリ(ADP−リボース)シンテターゼ(pADPRT)は、核内に豊富に存在する、タンパク質修飾およびADP重合化酵素である(Uedaら, 1985,“ADP-ribosylation,”Ann. Rev. Biochem. 54:73-100)。pADPRTの生理学的機能は、多くの議論の対象になってきた。pADPRTがDNA修復酵素であるという最初の提案とは対照的に、現在では、pADPRTはDNA修復には直接関与しておらず(Lindahlら, 1995,“Post-translational modification of poly(ADP-ribose)polymerase induced by DNA strand breaks,”Trends Biochem. Sci. 20:405-411)、pADPRT遺伝子を除去したトランジェニックマウス由来の細胞が正常なDNA修復特性を有することが明らかになっている(Bukiら, 1995,“Identification of domains of poly(ADP-ribose)polymerase for protein binding and self association”J. Biol. Chem. 270:3370-3377)。生理学的条件下で、pADPRTは数多くの細胞タンパク質やDNA部位に結合することができ、多面発現的な細胞調節機能を発揮し得る(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzyme pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endotherial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzpyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252;Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377; Bukiら, 1995, “Identification of domains of poly(ADP-ribose)polymerase for protein binding and self association,”J. Biol. Chem. 270:3370-3377)。pADPRT活性化はまた、特に放射線による傷害およびオキシダントストレスの後、細胞死を誘導するメカニズムとしてはたらくと提唱されてきた(Cochrane, 1991, “Mechanisms of oxidant injury of cells,”Molec. Aspects Med. 12:137-147; Berger, 1991, “Oxidant-induced cytotoxicity: a challenge for metabolic modulation,”Am. J. Respir. Cell. Biol. Biol. 4:1-3)。pADPRTの重要な生理学的機能のうちの1つは、酵素の誘導、遺伝子発現および細胞分化の調節であり得る(Bauerら, 1995, “Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252;Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377;Minagaら, 1978,“Induction of cardiac L-ornithine decarboxylase by nicotinamide and its regulation by putrescine,” Eur. J. Biochem. 91:577-85;Griffinら, 1984,“The in vivo effect of benzamide and phenobarbital on liver enzymes:poly(ADP-ribose)polymerase, cytochrome P-450, styrene oxide hydrolase, cholesterol oxide hydrolase, cholesterol oxide hydrolase, glutathione S-transferase and UDP-glucuronyl transferase,”Biochem. Biophys. Res. Comm. 122:770-5)。INH2BPによるアルカリホスファターゼの誘導(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252)は、ある種のリン酸化依存性酵素、たとえばMAPキナーゼ、トポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIの不活化をもたらすようである。Ha-rasでトランスフェクトされたウシ内皮細胞においてINH2BPは発癌性を排除し、細胞増殖を抑制し、トポイソメラーゼI、トポイゾメラーゼII、およびMAPキナーゼ活性を増加させ、DNA-メチル-トランスフェラーゼおよびタンパク質キナーゼCを下方調節し、ODCは、Rbタンパク質の低リン酸化(hypophosphorylation)を増大させ、ras遺伝子の発現を癌遺伝子の損失なしに阻害する(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252; Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377)。
INH2BPの最近記載された抗癌作用(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252; Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377)、および特にNO産生に関係する慢性炎症と癌との関連(緒言を参照)に基づいて、ここで我々は、INH2BPがLPS誘導性の炎症応答をインビトロおよびインビボで調節するかどうかを観察した。我々は、試験した経路とメディエーターのいくつか(MAPキナーゼ、プロスタグランジン、NO)が、INH2BPによって抑制されたが、他のメディエーター(TNF、IL−6、NFκB)は影響されなかったか、あるいは増加した(IL−10)ことを見い出した。概して、本発明のデータは、INH2BPなどのpADPRT阻害化合物は抗炎症作用を発揮し、これらの作用の組み合わせが、このpADPRTの阻害剤で前処理された動物または哺乳類の生存率の改善の基礎となり得ることを示している。
【実施例2】
【0088】
INH2BPはiNOSのLPS誘導性誘導を抑制する
背景技術では、種々の細胞において、前炎症性刺激に応答して、誘導可能な一酸化窒素(NO)シンターゼのイソ体(iNOS)を発現させている。iNOSによるNOの過剰産生は、ショックおよび炎症において重要な役割を演じ[Nathanの(1992)“哺乳類細胞の分泌産物としてのNO”、FASEB J.,6:3051−3064;Vane, J. R.のThe Croonian Lecture“内皮:血液循環の指揮者”、Proc. Rov. Soc. Lond B、343:225−246;Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32]、ガン原性形質転換しやすくする[Bartschらの(1994)“ヒト癌病因学における内因的に形成されたN−ニトロソ化合物およびニトロソ化剤”、Pharmacogenetics、2:272−7;Liuらの(1992)“ウッドチャック肝炎ウイルス表面抗原は肝細胞においてNO合成を誘導する”、Carcinogenesis、1515:2875−7;Ohshimaらの(1994)“ガンの危険因子としての慢性感染および炎症プロセス:ガン原性における一酸化窒素の可能な役割”、Mutation Res.、305:253−64]。マウスiNOS遺伝子のプロモーター領域がクローニングされており、LPSおよびIFNに応答する誘導能力の原因となる別の領域が同定されている。iNOSのLPS媒介性誘導は、NF−kBの可動化および核トランスロケーションに関与するように思われる。iNOSの誘導は、チロシンキナーゼの薬理学的インヒビターおよびNF−kB活性化によっても阻害される[Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32]。
【0089】
iNOS発現におけるINH2BPの阻害効果は、亜硝酸塩の産生の阻害、iNOSmRNAの発現およびiNOSタンパク質の発現によって示される。INH2BPは、iNOS誘導のために刺激後回数を増やしながら適用される場合に、徐々にその効果を失うので、調節はiNOS産生の初期段階で起こる。INH2BPによるiNOS誘導の調節は、インビトロおよび動物の両方において起こる。さらに、我々のデータは、LPS誘導性シクロオキシゲナーゼ代謝物の産生が、iNOSの誘導と同様に、INH2BPによって調節されることを示している。前炎症性サイトカインによるシクロオキシゲナーゼ代謝物の産生は、新規mRNAおよびタンパク質合成およびiNOS誘導のプロセスと類似したプロセスによるCOX−2の発現によるものである[Vaneらの(1995)“抗炎症性薬物の作用のモードへの新規洞察”、Inflamm. Res.、44:1−10]。しかし、LPSによるTNFの誘導は、J774細胞内のこの作用剤によって影響を受けないので、炎症メディエーターのLPS誘導性発現の阻害は非特異的応答ではない。
【0090】
興味深いことに、iNOSにおけるINH2BPの阻害効果は、LPSをINFと組み合わせて免疫刺激に用いた場合、大きく減少した。この効果は、インターフェロン調節因子といったようなIFN誘導性転写因子が、上記作用剤によるiNOS誘導の阻害をバイパスするという事実によるものである[Martinらの(1994)“一酸化炭素シンターゼの誘導におけるインターフェロン調節因子1の役割”、J. Exp. Med.、180:977−84]。
【0091】
これまでのインビトロの研究において、インビトロにおいてiNOSの誘導がマクロファージ内の薬理学的インヒビターpADPRTによって調節されることが示唆されている[Hauschildtらの(1992)“腫瘍壊死α因子によるL929細胞内における一酸化窒素シンターゼの誘導は、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼのインヒビターによって防止される”、Biochem. J.、288:255−260;Pellat-Seceunykらの(1994)“ニコチンアミドは活性化マクロファージ内の一酸化窒素シンターゼmRNA誘導を阻害する”、Biochem. J.、297:53−58]。しかし、これらの研究では、pADPRTインヒビターである30のアミノベンズアミドとニコチンアミドは、高濃度(10−30mM)で用いられて総タンパク質とRNA合成を阻害し、さらにフリーラジカルスカベンジングといったような薬理作用ももっていた[“腫瘍壊死α因子によるL929細胞内における一酸化窒素シンターゼの誘導は、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼのインヒビターによって防止される”、Biochem. J.、288:255−260]。INH2BPを用いる本発明の実験は、iNOSmRNA転写プロセスにおけるpADPRTの多面作用的関わりをさらに示唆するものである。INH2BPによるiNOSプロモーターの調節を研究するために、マウスマクロファージiNOSプロモータールシフェラーゼ構築物を用いる一次的感染アッセイを行った。欠失構築物のこれらのデータは、INH2BPが、1592bpと367bpの間のマウスiNOSプロモーター領域に関与する転写イベントを調節することを示唆する。ヒストンおよびヌクレアーゼのADPリボシル化は、緩んだクロマチン構造の維持に関与している[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252;Bauerらの(1995)“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンド、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”、Biochemie、77:347−377;Uedaらの(1985)“ADP−リボシル化”、Ann. Rev. Biochem.、54:73−100]。Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252;Bauerらの(1995)“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンド、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”、Biochemie、77:347−377といったような先の実験データに基づいて、これらの実験系において、INH2BPなどのpADPRT阻害化合物による前処理によって、pADPRTおよびヒストンの自己ポリ−ADP−リボシル化が阻害されることが示唆されるのは合理的である。このような作用がリラックス型染色質から凝縮染色質への転換の引き金となることが知られており、ヌクレアーゼおよび他のDNA構造調節酵素のアップレギュレーションを介して、プロモーター機能に影響を及ぼす[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252;Bauerらの(1995)“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンド、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”、Biochemie、77:347−377]。
【実施例3】
【0092】
MAPキナーゼにおけるINH2BPの阻害の影響およびNF−kBの活性化
これらの結果から、INH2BP処理がMAPキナーゼのLPS誘導性活性化を阻害することが実証されている。これらのデータは形質転換された内皮細胞に関する発見と類似している[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252]。MAPキナーゼ活性化の阻害は、INH2BPによる多面細胞応答トリガーによって起こると考え得る。MAPキナーゼは、LPSまたは種々の前炎症性サイトカイン(TNF−α、インターロイキン−1、神経成長因子)で処理された種々の細胞型内で活性化されることがわかっている[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Matsudaら(1994)の“マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼ/MAPキナーゼカスケードによって媒介されたシグナル生成経路”、J. Leukocyte Biol.、56:548−53;Cowleyらの(1994)“PC12分化およびNIH3T3細胞の形質転換には、MAPキナーゼの活性化が必要および十分条件である”、Cells、77:841−52;Pangらの(1995)“MAPキナーゼキナーゼの阻害は、神経成長因子によって誘導されるPC−12細胞の分化を遮断する”、J. Biol. Chem.、270:13585−8;Willisらの(1996)“培養された単球およびアストログリア中の細菌性リポ多糖によるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路の分化誘導”Biochem. J.、313:519−524;Saklatvalaらの(1993)“インターロイキン1および腫瘍壊死因子αは、培養細胞中で、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼを活性化する”、FEBS Lett.、334:189−92]。種々の細胞外シグナルは、異なるMAPキナーゼキナーゼ−キナーゼを介してMAPキナーゼキナーゼ/MAPキナーゼカスケードに集まり、細胞応答の欠陥スペクトルを引き出す[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Ferrell, JEの(1996)“スイッチを入れる:タンパク質キナーゼカスケードはどのように類別された入力をスイッチ様出力に変換しうるか”、TIBS、21:460−466]。MAPキナーゼまたはMAPキナーゼキナーゼの封鎖は、多数の細胞内経路を変更し、細胞分化および増殖を阻害する[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Matsudaら(1994)の“マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼ/MAPキナーゼカスケードによって媒介されたシグナル生成経路”、J. Leukocyte Biol.、56:548−53;Cowleyらの(1994)“PC12分化およびNIH3T3細胞の形質転換には、MAPキナーゼの活性化が必要および十分条件である”、Cells、77:841−52;Pangらの(1995)“MAPキナーゼキナーゼの阻害は、神経成長因子によって誘導されるPC−12細胞の分化を遮断する”、J. Biol. Chem.、270:13585−8;Willisらの(1996)“培養された単球およびアストログリア中の細菌性リポ多糖によるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路の分化誘導”Biochem. J.、313:519−524;Saklatvalaらの(1993)“インターロイキン1および腫瘍壊死因子αは、培養細胞中で、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼを活性化する”、FEBS Lett.、334:189−92]。近年、PD98059によるMAPキナーゼキナーゼの阻害が、培養内皮細胞および心臓単球におけるiNOSmRNAの発現を抑制することが明らかにされている[Singhらの(1996)“心臓単球および微小血管内皮細胞における細胞系誘導一酸化炭素の調節”、J. Biol. Chem.、271:1111−1117]。この発見は、PD98059が、RAWマクロファージにおいて、LPSによる亜硝酸塩の産生を目覚しく抑制するという我々の観察と一致している。
【0093】
NF−kBの活性化は炎症応答における主要経路であり、INFではなくてLPSによるiNOSの誘導に関連しているので[Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32;Martinらの(1994)“一酸化炭素シンターゼの誘導におけるインターフェロン調節因子1の役割”、J. Exp. Med.、180:977−84]、我々は、NF−kBにおけるINH2BPの潜在的効果を調査しようとした。我々が得た結果から、INH2BPが、NF−kBの活性化の核トランスロケーション、もしくはINH2BPによるNF−kB媒介細胞内イベントの調節を変更せず、もしあったとしても、多くは、NF−kBの核トランスロケーションから遠い細胞イベントにおいて起こることが実証される。
【実施例4】
【0094】
病態生理学的および治療的関連;INH2BPは複数のレベルで炎症プロセスを調節する
前炎症性遺伝子iNOSおよびCOX−2の発現のpADPRTインヒビターによる抑制およびそれに続くNOおよびプロスタグランジンの形成の減少は、種々の形態の炎症において有益である[Nathanの(1992)“哺乳類細胞の分泌産物としてのNO”、FASEB J.,6:3051−3064;Vane, J. R.のThe Croonian Lecture“内皮:血液循環の指揮者”、Proc. Rov. Soc. Lond B、343:225−246;Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32;Vaneらの(1995)“抗炎症剤の作用のモードへの新規洞察”、Inflamm. Res.、44:1−10]。さらに、IL−10の放出の増加は、さらなる抗炎症作用をもたらす[Lilesらの(1995)“論説:炎症および宿主免疫応答に関連するサイトカインの命名法および生物学的重要性”、J. Infect Dis.、172:1573−80;Giroirらの(1993)“敗血性ショックのメディエーター:内因性炎症カスケードの妨害のための新規アプローチ”、Critical Car. Med.、21:780−9;Szaboらの(1997)“イソプロテレナールは腫瘍壊死因子、インターロイキン10、インターロイキン6および一酸化窒素の産生を調節し、内毒血症における血管の反応減退の進行を防止する”、Immunology、90:95−100]。このような効果は、INH2BP前処理などのpADPRT阻害化合物による改良および致死量の内毒素を投与したマウスの生存率に、有意に寄与するということが考えられる。しかし、INH2BPが、種々の炎症メディエーターのLPS誘導性発現において効果を発揮する正確なメカニズムの概要を得るにはさらに詳細な研究が必要である。一方では、pADPRT活性またはpADPRTタンパク質の結合は、炎症メディエーターの産生および/または炎症プロセスの化合物をコードする遺伝子の発現の調節に関連していると考えられる。他方では、INH2BPによるMAPキナーゼ活性の非直接的ダウンレギュレーション[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252]もまた、他の実験によって予測されたように、観察された効果に寄与することが考えられる[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Ferrell, JEの(1996)“スイッチを入れる:タンパク質キナーゼカスケードはどのように類別された入力をスイッチ様出力に変換しうるか”、TIBS、21:460−466]。本発明は、種々の炎症性疾患におけるINH2BPといったようなpADPRT阻害化合物の治療能力を実証する。
【実施例5】
【0095】
一酸化窒素(NO)の毒性効果のいくつかは、NOとスーパーオキシドの急速反応によって形成される反応性酸化物であるペルオキシ亜硝酸の産生に関連している[Crowらの(1995)“一酸化窒素媒介性毒性におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Current Top Microbiol. Immunol.、196:57−73;Pryorらの(1995)“ペルオキシ亜硝酸の化学:一酸化窒素とスーパーオキシドの反応からの生成物”、Am. J. Physiol.、L699−L772]。ペルオキシ亜硝酸の形成は、内毒素によって引き起こされた全身性炎症などの種々の炎症状況において確認されている[Szaboらの(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32;関節炎;Kaurらの“慢性炎症における一酸化窒素媒介性酸化的ダメージの証拠。リューマチ患者由来の血清および関節液中のニトロチロシン”、FEBS Lett.、1359:9−12;およびカラギーナン誘発性;*Salveminiらの(1996)足(paw)浮腫]。実のところ、NOシンターゼ(NOS)インヒビターおよびスーパーオキシドジスムターゼ類似体を用いた薬理学的実験から、炎症プロセスの進行においてペルオキシ亜硝酸が重要な病原性の役割を演じることが結論づけられた[Stabo C.の(1996)“ショック、炎症および虚血再灌流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Shock、6:79−88;*Salveminら(1996);*Zingarelliら(1977)]。さらに、関節炎の治療に現在使用されているいくつかの作用剤は、実のところ、ペルオキシ亜硝酸のスカベンジャーであることが実証されている[Whitemanらの(1996)“抗炎症剤および抗生物質テトラサイクリンによる、ペルオキシ亜硝酸依存性チロシンのニトロ化およびα1−アンチプロテイナーゼの不活性化”、Annals. of the Rheumatic Diseases、55:383−7]。NO関連細胞毒性の重要な部分が、ペルオキシ亜硝酸の形成によるという現実は、ペルオキシ亜硝酸の形成および作用に基づいた新規な治療的アプローチの発達を必要とするようになってきている。
【0096】
ペルオキシ亜硝酸が引き金となる細胞内経路のひとつは、DNA一本鎖切断およびポリ(ADP−リボース)シンセターゼ(PARS)の活性化に関連がある[Stabo C.の(1996)“ショック、炎症および虚血再灌流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Shock、6:79−88;*Szabo(1996b)]。PARSの顕著な活性化によって、その基質、NAD+の細胞内濃度が急速に激減され、糖質分解、電子輸送および、それにともなうATP形成の速度が遅くなり、最終的に細胞機能不全になる[*Berger(1991);*Cochrane(1991)]。したがって、PARSのインヒビターは、これらの条件下で細胞損傷に対する保護作用を示す。“PARS自殺仮説”として知られるこのメカニズムは、これまでに、H2O2誘導オキシダントダメージおよび放射線損傷との関係において特徴付けられており[*Berger(1991);*Cochrane(1991)]、最近、内毒素ショック、発作、虚血−再灌流損傷および糖尿病におけるNO−およびペルオキシ亜硝酸関連性細胞損傷に関係が有ることが明らかにされている[Stabo C.の(1996)“ショック、炎症および虚血再灌流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Shock、6:79−88;*Zhangら(1994);*Hellerら(1995)]。
【0097】
最近、Krogerらによって、関節炎におけるPARSの潜在的役割が提案されている。ペルオキソクロム酸カリウム誘導モデルにおいて、ニコチンアミド処理によって平均関節炎スコアが25〜35%減少した[*Mieselら(1996)]。しかし、フリーラジカルのスカベンジング活性とニコチンアミドのPARS阻害効果の間に明確な区別を設けることができなかったので、その研究からは、阻害のメカニズムは不明確なままであった[*Mieselら(1995)]。新規の、強力なPARS活性インヒビターである[*Bauerら(1995a);*Bauerら(1995b)]5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)の助けを借りる本発明の実験において、本発明者らは、カラギーナン誘発性足浮腫およびコラーゲン誘発性関節炎の過程におけるPARSの薬理学的阻害効果を研究した。我々の実験の結果は、PARSを阻害することが炎症に抗う可能性のひとつであるという考察を支持するものである。
【実施例6】
【0098】
カラギーナン誘発性足浮腫の誘発および評価
雄性ウィスターラット(250〜300g、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ、ウィルミントン、MA)を用いてこの実験を行った。動物の右の後ろ足に1%カラギーナンを含む食塩水0.1mlを足底下注射を行った。INH2BP処置動物またはビヒクル処置動物のいずれかに、この起炎剤を与えた。カラギーナン注射を行う前に、動物をINH2BP(0.5g/kg p.o.)で24時間および2時間処置した。先行文献の記載にしたがって体積測定機にて足の体積を迅速に測定した[*Sautebinら(1995)]。以後、60分間隔で同じ足の体積を読み取り、開始時の読み取りと比較した。これらの実験には、ビヒクル処置(n=6)およびINH2BP処置(n=6)動物を用いた。
【実施例7】
【0099】
コラーゲン誘発性関節炎の誘発と評価
雄性DBA/1Jマウス(9週齢、ジャクソン・ラボラトリー、バー・ハーバー、ME)を用いて本実験を行った。ニワトリII型コラーゲン(CII)を0.01Mの酢酸に2mg/mlの濃度となるように4℃にて一夜攪拌しながら溶解した。溶解したCIIは使用するまで−70℃にて冷凍した。濃度2mg/mlの結核菌H37raを加えることにより、完全フロイントアジュバント(CFA)を調製した。注射前に、CIIを同量のCFAで乳化した。コラーゲン誘発性関節炎を先行文献の記載に従って誘発した[Hugesらの(1994)“非マイトジェン性抗CD3モノクローナル抗体を用いることによる、自己免疫の実験モデルにおけるヘルパーT細胞低応答性の誘発”、J. Immunol.、153:3319−3325]。第1日に、マウスの尻尾のつけ根に100mlのCIIを皮内注射した。第21日に、第2回目のCII/CFAの注射を行った。第25日から、ビヒクル(n=10)またはINH2BP(n=60(0.5g/kg p.o.))のいずれかで24時間毎に動物を処置した。肉眼で見た0〜4の得点システム[1−膨潤および/または足もしくは一本の指の赤み;2−2つの関節が関節炎;3−2つ以上の関節が関節炎;4−足および指全体の重篤な関節炎]でマウスの関節炎を毎日評価した。個々の足についての4個の得点を加算することによって、各マウスについての関節炎指数を算出した。実験の最終日(第35日)に、動物を麻酔下で屠殺し、足(PAW)と膝を切除して、組織学的審査用に固定した。組織学的審査は処置レジメを知らされていない研究者によって行った。
【0100】
データ分析および発表
カラギーナン誘発性足浮腫に関する実験については、処置および非処置動物の足の体積を、不対スチューデントテストにて比較した。関節炎実験については、マン−ホイットニーUテスト(2テール、独立的)を用いて関節炎指数における統計的差異を試験した。測定の目盛りが序数なので、この非パラメーター的統計量を用いては、平均よりもむしろメジアンを比較した。分散値は、代表的には、非標準的分散であった[Hugesらの(1994)“非マイトジェン性抗CD3モノクローナル抗体を用いることによる、自己免疫の実験モデルにおけるヘルパーT細胞低応答性の誘発”、J. Immunol.、153:3319−3325]。
【0101】
図10の値は、n個の観察の平均±標準誤差を示す(ここで、nはラットの数である。各グループ6匹の動物。)。図11の値は、発生率(%)を示し、図12の値は、メジアンを示す。0.05以下のp値を統計的に有意であるとみなした(I'<0.05;**p<0.02)。
【0102】
物質
5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を以前に記載の通り製造した(*Bauerらによる1995a; * Bauerらによる1995b)。ニワトリ・コラーゲンII型はエラスチン・プロダクト社(Elastin Products Company, Inc.、オーエンスビル、MO)製である。マイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Ra(Mycobacterium tuberculosisH37Ra)はディフコ(Difco、デトロイト、MI)製である。他の化学品は全てシグマ社(Sigma Chemical Co.社、セントルイス、MO)製である。ラットの足へカラギーナンを足底下注射することにより足の大きさが時間に依存して増加し、3時間時に最大応答を示した(図10)。本カラギーナンによって誘発される足の浮腫は、INH2BPを用いて処理することで有意に減少した(図10)。
【0103】
マウスにおけるコラーゲンによって誘発した関節炎のモデルの場合、最初のコラーゲンによる免疫感作後の26〜35日間、関節炎発生率の増加及び関節炎スコアの増加で証明される通り(図11〜12)、動物は徐々に関節炎を発生した。INH2BPを用いて処置することにより、33日目まで関節炎の発生率は減少し、また実験期間全般にわたって該疾患の重度が軽減された。30日目まで、関節炎スコアは10まで増加し、一方INH2BPで処理した動物における中間関節炎スコアはおよそ5を維持した(図12)。35日目まで、賦形薬で処理した全ての動物およびINH2BPで処理したほとんどの動物がある程度の関節炎を有していた(図11)。しかしながら、35日目でさえ中間関節炎スコアはINH2BP処理によって有意に減少した(図12)。
【0104】
35日目では、賦形薬で処理した関節炎の動物における足を組織学的評価したところ、より大きな足首の関節および末端の指への(好中球、マクロファージおよびリンパ球)浸潤が混ざった塊を伴った重度の化膿性関節炎のサインを示した。加えて、滑膜の激しいまたは穏やかな壊死、過形成およびか痂形成が、繊維症を伴った近接筋肉組織への炎症の拡大および粘性産生の増加と併せて見られた。該INH2BP動物において、炎症の程度は有意に減少した。それにもかかわらず、これらの動物において、いくつかのより大きな関節への穏やかな主に好中球の浸潤を伴い、また滑膜の壊死および過形成を緩和するのに適度な大きさの有意な程度の炎症がなお存在した。足における該発見と同様に、ひざにおいても重度の化膿性関節炎のサインが見られたが、これはINH2BPを用いた処置によって軽減された(図示せず)。
【0105】
議論
ペルオキシ亜硝酸塩、オキシラジカルおよび誘導可能なシクロオキシゲナーゼの産物はいずれも独立して、例えば関節炎などの様々な形態の炎症の病原論において重要な因子であると提案されたことはなかった。(以下の文献を参照:序論およびまた、Brahnの報告(1991)、「リウマチ関節炎の動物モデル。病因への糸口と処置(Animal models of rheumatoid arthritis. Clues to etiology and treatment)」Clin. Orthop. Rel. Res. 265: 42-53; Kaurらの報告(1994)、「慢性炎症における一酸化窒素が媒介した酸化的障害の証拠。リウマチ患者からの血清および滑膜液中のニトロチロシン(Evidence for nitric oxide-mediated oxidative damage in chronic inflammation. Nitrotyrosine in serum and synovial fluid from rheumatoid patients)」FEBS Lett. 1359: 9-12; Oyanagui Yらの報告(1994)、「一酸化窒素およびスーパーオキシドラジカルはラットにおける関節炎アジュバントの初期および周囲の両方において含まれる(Nitric oxide and superoxide radical are involved in both initiation and envelopment of adjuvant arthritis in rats)」Life Sci. 54. PL 285-9; Mieselらの報告(1994)、「マウスにおける関節炎のインビボ抑制およびヒト血球全般における酸素ラジカルの食細胞産生の半ビボモジュレーションにおけるアロプリノールの影響(Effects on allupurinol on in vivo suppression of arthritis in mice and ex vivo modulation of phagocytic production of oxygen radicals in whole human blood)」、Inflammation 6: 597-612; Whitemanらの報告(1996)、「ペルオキシ亜硝酸塩に対する保護はいくつかの抗炎症薬および抗生物質テトラサイクリンによるチロシンのニトロ化反応およびアルファ−1−抗タンパク分解酵素の失活に依存する(Protection against peroxynitrite dependent tyrosine nitration and alpha 1-antiproteinase inactivation by some anti-inflammatory drugs and by the antibiotic tetracycline)」Annals. of the Rheumatic Diseases 55: 383-7; Andersonらの報告(1996)、「シクロオキシゲナーゼ(COX)−2を選択的に阻害することにより、ラットアジュバント関節炎における炎症並びにCOX−2およびインターロイキン6の発現が後退する(Selective inhibition of cyclooxygenase(COX)−2 and interleukin 6 in rat adjuvant arthritis)」、J. Clin. Invest. 97: 2672-2679。本研究はカラギーナンが誘発する足浮種モデルにおいておよび該コラーゲンによって誘発される関節炎モデルにおいてINH2BPの抗炎症性効果を示すものであるが、本研究によりPARSは炎症過程の進行に関与し、およびPARSの薬理学的阻害は抗炎症能力を有するという点が支持される。
【0106】
INH2BPの作用の主要な様式は、DNA損傷によって特徴付けられる無益細胞内カスケード(the futile intracellular cascade)の分断に関連しているであろう。様々な細胞型の炎症性関節におけるPARS活性化、ADPリボシル化およびNAD+およびATP消耗。3−アミノベンズアミド、ニコチンアミドおよびINH2BPなどの様々なPARSのインヒビターを用いて本経路を阻害することにより、多くの細胞型を損傷から保護することが示されている;*Cochraneの報告(1991);Szaboらの報告(1996)、「ショック、炎症および虚血性再潅流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸塩の役割(The role of peroxynitrite in the pathophysiology of shock, inflammation and schemiareperfusion injury)」、Schock 6: 79-88; *Szaboの報告(1996b)。
【0107】
炎症性条件におけるNOの過剰生産はNOSの誘導性イソ型(iNOS)の抑制に起因する;Nathanの報告(1992)、「哺乳類細胞の分泌産物としての一酸化窒素(Nitric oxide as a secretory product of mammalian cells)」、FASEB J. 6: 3051-3064; Szaboの報告(1995)、「様々な循環ショックの形態における一酸化窒素の産生の改変(Alterations in nitric oxide production in various forms of circulatory shock)」、New Horizons 3: 2-32; Southanらの報告(1996)、「アミノアルキルグアニジンのメルカプトアルキルグアニジンへの同時転移−誘導性イソ型に対して選択性を有する新規なクラスの一酸化窒素シンターゼインヒビター(Spontaneous rearrangement of aminoalkylguanidines into mercaptoalkylguadidines - a novel class of nitric oxide synthase inhibitors with selectivity toward the inducible isoform)」Br. J. Pharmacol. 117: 619-632。いくつかの証拠の道筋は、関節炎の病原論におけるiNOSおよびNOの過剰産生の役割を提案している(以下の総説を参照:Stenovic-Racicらの報告(1993)、「一酸化窒素と関節炎(Nitric oxide and arthritis)」、Anthr. Rhemat. 36: 1036-1044; *Evansらの報告(1995)。第一に、iNOSの発現および大量のNOの産生が実験動物およびヒトからの軟骨細胞において見られた(Haeselmannらの報告(1994)、“アルギネート培地中でのヒト関節細胞による一酸化窒素およびプロテオグリカンの合成(Nitric oxide and proteoglycan synthesis by human articular chondrocytes in alginate culture)」、FEBS Lett. 352:361- 364 ; Sakuraiらの報告(1995)、「炎症性関節炎における一酸化窒素の産生および誘導性一酸化窒素シンターゼの発現(Nitric oxide production and inducible nitric oxide synthase expression in inflammatory arthritis)」、J. Clin. Invest. 96: 2357-63; Grabowskiらの報告(1996)、「ヒトの関節から誘導された細胞における一酸化窒素の産生(Nitric oxide production in cells derived from the human joint)」、Br. J. Rheumatol. 35: 207-12; Murrellらの報告(1996)、「一酸化窒素:重要な関節のフリーラジカル(Nitric oxide: an important articular free radical)」、J. Bone Joint Sur.-Am. 78: 265-74。第二に、亜硝酸塩/硝酸塩(NOの分解生成物)の循環レベルにおける増加が関節炎を持つ患者において見られた; (Farrellらの報告(1992))、「滑膜液および血清試料中での亜硝酸塩の濃度の増加はリマチ疾患における一酸化窒素合成の増加を支持している(Increased concentrations of nitrite in synovial fluid and serum samples suggest increased nitric oxide synthesis in rheumatic diseases)」Ann. Rhem. Dis. 51: 1219-22; Stichtenothらの報告(1995)、「尿の硝酸塩の排出はリウマチ関節炎を持つ患者において増加しており、およびプレドニソロンによって減少する(Urinary nitrate excretion is increased in patients with rheumatoid arthritis and reduced by predisolone)」、Ann. Rhem. Dis. 54. 820-4。第3に、関節炎の発生はNOSの非イソ型−選択インヒビターによって減少すると示されてきた(*Ialentialらの報告(1993);McCartney-Francisらの報告(1993)、「一酸化窒素シンターゼのインヒビターによる関節炎の抑制(Suppression of arthritis by an inhibitor of nitric oxide synthase)」、J. Exp. Med. 178: 749-753;Weinbergらの報告(1994)、「自発性マウス自己免疫疾患の病原論、MRL−1pr/1prマウスでの一酸化窒素産生および一酸化窒素シンターゼ発現の増加、並びにNG−モノメチル−L−アルギニンの経口投与による自発性糸球体腎炎および関節炎の軽減における一酸化窒素の役割(The role of nitric acid in the pathogenesis of spontaneous murine autoimmune disease, increased nitric oxide production and nitric oxide synthase expression in MRL-1pr/1pr mice, and reduction of spontaneous glomerulonephritis and arthritis by orally administered NG-monomethyl-L-arginine)」、J. Exp. Med. 1979: 651-60; Stefanovic-Racicらの報告(1994)、「N−モノメチルアルギニン、一酸化窒素シンターゼ・インヒビターは、ラットにおけるアジュバント関節炎の発生を抑制する(N-monomethyl arginine, an inhibitor of nitric oxide synthase, suppresses the development of adjuvant arthritis in rats)」Arthr. Rheumat. 37: 1062-9;およびより最近では、iNOSに対する選択性を有するインヒビターによって(Connorらの報告(1995)、「誘導性一酸化窒素シンターゼの選択的阻害によるアジュバントによって誘発された関節炎の抑制(Suppression of adjuvant-induced arthritis by selective inhibition of inducible nitric oxide synthase)」、Eur. J. Phamacol. 273: 15-24。本観点において、免疫刺激の前にPARSインヒビター(INH2BPと同様に3−アミノベンズアミド、ノコチンアミドを含む)を用いた多数の細胞型の前処理はiNOSの代わりにmRNAの発現を抑制し、またNOの産生を減少させる(*Haushildtらの報告(1992)、*Pellat-Seceunykらの報告(1994); Zingarelliらの報告(1996)、“ペルオキシ亜硝酸塩が媒介したDNA鎖の切断はポリADPリボシルシンターゼを活性化し、およびバクテリア性リポポリサッカライドを用いて刺激したマクリオファージ中での細胞エネルギーの消耗を引き起こす(Peroxynitrite-mediated DNA strand breakage activates poly-ADP ribosyl synthetase and causes cellular energy depletion in macrophages stimulated with bacterial lipopolysaccharide)」J. Immunol. 156: 350-358; Szaboらの報告(1997)。これらの実験データから、未だ解明されていない機構によってPARSはまたiNOS発現過程を調節し、および本効果が様々な炎症の形態におけるPARS阻害の更なる有利な作用様式を表していると結論できる。しかしながら、上記の発見を解釈する際には注意を換気すべきである。例えば、上記に引用したインビボ研究において、PARSインヒビター3−アミノベンズアミドおよびニコチンアミドの極端な高濃度(10〜30mM)が、iNOS誘導の抑制を示すために必要となる。これらの試薬のこういった高濃度により、総タンパク質の阻害およびRNA合成および/またはフリーラジカル捕捉作用といった薬理学的作用がさらにもたらされ得る。*Haushildtらの報告(1992)、*Pellat-Seceunykらの報告(1994); Zingarelliらの報告(1996)、“ペルオキシ亜硝酸塩が媒介したDNA鎖の切断はポリADPリボシルシンターゼを活性化し、およびバクテリア性リポポリサッカライドを用いて刺激したマクリオファージ中での細胞エネルギーの消耗を引き起こす(Peroxynitrite-mediated DNA strand breakage activates poly-ADP ribosyl synthetase and causes cellular energy depletion in macrophages stimulated with bacterial lipopolysaccharide)」J. Immunol. 156: 350-358。一方、INH2BPはより低い非細胞毒素の濃度(100〜300mM)でさえも、iNOSの発現を効果的に抑制する。しかしながら、本試薬は細胞応答の二次的、多面モジュレーションを有するアルカリ性ホスファターゼの誘導物質であるので、INH2BPの場合においていくつかの様式の作用を考慮すべきである;*Bauerらの報告(1996)、*Szaboらの報告(1997))。PARS遺伝子の切除を伴う細胞または動物における実験においては、PARS自体の阻害がiNOS誘導の過程を抑制するかどうかといった問題に明確に取り組む必要がある。
【0108】
エールリッヒ(Ehrlich)およびその同僚達の最近の研究において、兎の滑膜の繊維芽細胞の培養において、サイトカインが誘発したコラゲナーゼの発現活性は3−アミノベンズアミドによって抑制される;*Ehrlichらの報告(1995)。薬理学的作用(それにもかかわらず、このものにより関節炎の過程の経過を抑制することが期待される)や、用いた特定のインヒビターの性質または現実にPARSの触媒活性の減少に関連するかどうかを決定することが現在では可能である。本観点において、薬理学的インヒビターを用いた研究に基づくと、PARSが例えば主要組織適合性複合体クラスII遺伝子(*Hiromatsuらの報告(1992);Taniguchiらの報告(1993))、ras c-myc(*Bauerらの報告(1996);*Naganoらの報告(1991))、DNAメチルトランスフェラーゼ(*Bauerらの報告(1996))およびプロテインキナーゼC(*Bauerらの報告(1996))などの様々な遺伝子の調節に関係している。
【0109】
併せて、本研究は局所的炎症性応答の発生の回復およびコラーゲンによって誘発された関節炎の進行のINH2BPによる阻害を示す。最近の10年間PARSの役割はDNAの修復の場合において提案されてきたが、最近の観察によりPARSに対する遺伝の切除がDNA修復を含まないことが示された:PAESノックアウト動物は正常であり、生存可能であるように思われる(*Wangらの報告(1995))。本観察により、PARSの薬理学的インヒビターの抗炎症性能力が強調される。PARS阻害(iNOS阻害に対するものとして)は、侵入する微生物がPARSを含有していないので、NOの重要な抗菌性効果を干渉していないように思われる。一方、PARS阻害は酸化剤で誘発される細胞毒性の一部を阻害することが期待されるだけではなく、他のフリーラジカルスカベンジャーまたは他の免疫抑制剤と併せて用いる場合により有効となることが期待される。本研究の結果は、PARS単独または他の抗炎症剤と組み合わせることで前途有望な新規な抗−炎症性アプローチを表している。
【0110】
上記の例中で見られるのと同様な様式で、式IIおよびIIIの化合物をグラム陰性およびグラム陽性感染の処置と同様に炎症または炎症性疾患を処置するのに使用する。
これまでに記載の明細書は当業者が本発明を実行するのに充分可能であることを考慮すべきである。実際、医薬処方の分野またはその関連分野において当業者にとって明白である、本発明を実行するための上記に記載の様式の様々な改良法は下記の請求の範囲の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のpADPRT抑制化合物は、炎症または炎症性疾患の処置において非常に有益な効果を有する為、工業的利用価値が高い。更に本発明のpADPRT抑制化合物は、グラム陰性およびグラム陽性の両方で誘発される内毒素症状の処置において非常に有益な効果を有する為、工業的利用価値が高い。
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物または哺乳類の炎症および関節炎を含む炎症性疾患の処置法に関する。また本発明は、全身性感染から生じるまたはリポ多糖類によるインフェステーションから生じる、グラム陰性およびグラム陽性内毒素症状の両方を持つ動物または哺乳類の処置法にも関係する。これらの方法には、治療上有効量のpADPRT抑制化合物の使用が必要である。
【背景技術】
【0002】
pADPRT抑制化合物の使用は、癌やウイルス感染の処置用として報告されている。これらの処置法の具体例は、特許文献に記載されている(特許文献1から6)。
【0003】
出版文献において、核酵素ポリ−ADPリボース・ポリメラーゼ(pADPRT)の新規インヒビターである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)は最近になって、Ha−rasトランスフェクション内皮細胞系におけるインビボ腫瘍形成を抑制することが認められている[Bauerらの「Int. J. Oncol.」(8、239−252、1995年),“5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を用いる処置による、ras−形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍形成の、成長関連酵素経路の変異と明らかな喪失”;Bauerらの「Biochimie」(77、347−377、1995年),“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンドである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”](非特許文献1および2)。またINH2BPによる処置は、トポイソメラーゼIおよびIIおよびMAPキナーゼ活性において変化をもたらす[Bauerらの「Int. J. Oncol.」(8、239−252、1995年),“5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を用いる処置による、ras−形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍形成の、成長関連酵素経路の変異と明らかな喪失”;Bauerらの「Biochimie」(77、347−377、1995年),“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンドである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”](非特許文献1および2)。考察効果に基づき、癌治療におけるINH2BPの潜在的使用に関する仮説が提案されている[Bauerらの「Int. J. Oncol.」(8、239−252、1995年),“5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を用いる処置による、ras−形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍形成の、成長関連酵素経路の変異と明らかな喪失”;Bauerらの「Biochimie」(77、347−377、1995年),“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンドである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”](非特許文献1および2)。
【0004】
悪性成長および炎症性経過は、一定の細胞シグナル形質導入経路、たとえばMAPキナーゼの活性化を分配する[Kyriakisらの「J. Biol. Chem.」(271、24313−24316、1996年),“アラームの響き:ストレスや炎症によって活性化されるタンパクキナーゼ・カスケード”;Ferrell J. E.の「TIBS」(21、460−466、1996年),“異様なスイッチの始動:タンパクキナーゼ・カスケードはグレード入力をスイッチ様出力に如何に変換しうるか”](非特許文献3および4)。慢性炎症は、たとえば腸管上皮の場合に証明されるように、発癌性形質転換になることが少なくない[Kawaiらの「Cancer Res.」(53、5172−5175、1993年),“リポ多糖類誘発炎症によるラットの膀胱腫瘍形成の増加”;Rosinらの「Canser Res. 」(54(7Suppl.)、1929s−1933s、1994年),“炎症、染色体の不安定性、および癌:住血吸虫症モデル”;Choiらの「Gut.」(35、950−954、1994年),“Crohn病および潰瘍性大腸(結腸)炎における結腸直腸癌の類似性:発癌と予防に対する暗示”](非特許文献5から7)。慢性炎症と発癌性形質転換の因果関係に基づき、この研究の目的は、INH2BPがインビトロおよびインビボの炎症経過に影響を及ぼすかどうかを調べることであった。我々の研究では、多発性前炎症性メディエイタの産生は、細菌性リポ多糖類(内毒素、LPS)によって誘発された。LPSは、数多くの細胞反応を誘発することが知られ、かつ全身性炎症応答を引き起こす。LPS誘発の前炎症性メディエイタとしては、腫瘍壊死アルファ因子(TNF)、インターロイキン−I、インターフェロン−ガンマが包含され、一方、抗炎症性メディエイタとしては、インターロイキン−10(IL−10)やインターロイキン−13が包含される[Deltenreらの「Acta Gastroenterol Belg.」(58、193−200、1995年),“胃癌:ヘリコバクター幽門跡”;Beutlerの「J. Invest. Med.」(42、227−235、1995年),“TNF、免疫および炎症性疾患:過去10年間のレッスン”;Lilesらの「J. Infect Dis.」(172、1573−1580、1995年),“評論:炎症に必然的に伴なうシトキンの命名と生物学的重要性および宿主免疫応答”;Giroirの「Critical Car. Med.」(21、780−789、1993年),“敗血症性ショック:内因性炎症性カスケードを中断する新しいアプローチ”](非特許文献8から11)。これら炎症性シトキンの産生の結果として、LPSは炎症性遊離ラジカル(酸素が中心、たとえばスーパーオキシド;および窒素が中心のラジカル、たとえば酸化窒素[NO])のおよびプロスタグランジンの産生を起こす[Nathanの「FASEB J.」(6、3051−3064、1992年),“哺乳類細胞の分泌産物としての酸化窒素”;Vane J. R.の「Proc. Roy. Soc. Lond B」(343、225−246、The Croonian Lecture 1993年),“内皮:血液循環のマイストロ(maestro)”;Szabo C.の「New Horizons」(3、3−32、1995年),“種々形態の循環ショックにおける酸化窒素の産生の変化”](非特許文献12から14)。炎症におけるNOの産生は、NOシンターゼの異なるイソフォーム(isoform)(iNOS)の発現に基づくが、炎症性シトキンの産生は、シクロオキシゲナーゼの異なるイソフォーム(シクロオキシゲナーゼ−2、COX−2)の発現によって説明される[Nathanの「FASEB J.」(6、3051−3064、1992年),“哺乳類細胞の分泌産物としての酸化窒素”;Vane J. R.の「Proc. Roy. Soc. Lond B」(343、225−246、The Croonian Lecture 1993年),“内皮:血液循環のマイストロ”;Szabo C.の「New Horizons」(3、3−32、1995年),“種々形態の循環ショックにおける酸化窒素の産生の変化”](非特許文献12から14)。iNOS、COX−2、並びに上述の前炎症性シトキンおよび遊離ラジカルは、LPS誘発の炎症性応答において重要な役割を演じる[Nathanの「FASEB J.」(6、3051−3064、1992年),“哺乳類細胞の分泌産物としての酸化窒素”;Vane J. R.の「Proc. Roy. Soc. Lond B」(343、225−246、The Croonian Lecture 1993年),“内皮:血液循環のマイストロ”;Szabo C.の「New Horizons」(3、3−32、1995年),“種々形態の循環ショックにおける酸化窒素の産生の変化”](非特許文献12から14)。さらに、NO(またはその毒性副生物であるパーオキシニトリット(亜硝酸塩))は、発癌性経過への炎症性応答の形質転換になる基本メディエイタとして意味づけられている[Bartsch らの「Pharmacogenetics」(2、272−277、1994年),“ヒト癌病因学における内因性で形成したN−ニトロソ化合物およびニトロシル化剤”;Liu らの「Carcinogenesis」(15、2875−2877、1992年),“ウッドチャックの肝炎ウイルス表面抗原は、肝細胞でのNO合成を誘発する”;Ohshimaらの「Mutation Res.」(305、253−264、1994年),“慢性感染および癌危険因子としての炎症経過:発癌における酸化窒素の可能な役割”](非特許文献15から17)。最新の研究で、我々は最初に、INH2BPによる処置が、LPS誘発モデルの炎症においてインビボで、炎症性メディエイタの腫瘍壊死アルファ因子[TNF]、インターロイキン−10、インターロイキン−6、NO、およびプロスタグランジンの産生に影響を及ぼすかどうかを調べた。
【0005】
前炎症性メディエイタの産生に先行する数多くの細胞内経過がある。チロシン・キナーゼの活性化[Levitzki A.の「Eur. J. Biochem.」(226、1−13、1994年),“シグナル−形質導入療法 疾病管理への新しいアプローチ”;Novogrodekyらの「Science 264U(Wash)」(1319−1322、1994年),“リポ多糖類誘発の致死毒性のチロシン・キナーゼインヒビターによる予防”;Marczinらの「Am. J. Physiol.」(265、H1014−1018、1993年),“チロシン・キナーゼインヒビターは、大動脈平滑筋細胞における内毒素およびIL−1ベータ誘発のNO合成を抑止する”](非特許文献18から20);ミトゲン−活性化タンパクキナーゼ(MAPキナーゼ)[Matsudaらの「J. Leukocyte Biol.」(56、548−553、1994年),“ミトゲン−活性化タンパク(MAP)キナーゼ/MAPキナーゼ・カスケードによって仲介されるシグナリング経路”;L' Allemain G.の「Progr. Growth Factor Res.」(5、291−334、1994年),“MAPキナーゼ経路の解読”;Cowleyらの「Cells」(77、841−852、1994年),“MAPキナーゼの活性化は、PC12分化およびNIH3T3細胞の形質転換に対して必要十分である”](非特許文献21から23);および核因子カッパB(NF−kB)経路[Baeuerleらの「Ann. Rev. Immunol.」(12、141−179、1994年),“免疫系におけるNF−Bの機能と活性化”;Schreckらの「Free Radical Res. Comm.」(17、221−237、1992年),“核因子カッパB:真核生物細胞の酸化ストレス−応答転写因子(評論)”;Mullerらの「Immunobiol.」(187、233−256、1993年),“リポ多糖類影響のメディエイタである核因子カッパB”](非特許文献24から26)は、炎症性応答の重要な因子として認められ、かつ炎症性メディエイタの発現または産生に寄与する。従って、我々はまた、INH2BPがMAPキナーゼのLPS誘発活性化やLPSによるNF−kBにも影響を及ぼすかどうかをも調べた。最新の研究結果から、INH2BPはLPS誘発炎症性応答の多重成分(multiple components)の調整によって、潜在的な抗炎症性効果を有することが証明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5464871号明細書
【特許文献2】米国特許第5473074号明細書
【特許文献3】米国特許第5482975号明細書
【特許文献4】米国特許第5484951号明細書
【特許文献5】米国特許第5516941号明細書
【特許文献6】米国特許第5583155号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bauer et al., 1995,"Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-l,2-benzopyrone (INH2BP),"Int. J. Oncol. 8: 239-252
【非特許文献2】Bauer et al., 1995,"Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly (ADP-ribose) polymerase,"Biochimie 77: 347-377
【非特許文献3】Kyriakis et al., 1996, "Sounding the alarm: protein kinase cascades activated by stress and inflammation," J. Biol Chem. 271: 24313-24316
【非特許文献4】Ferrell, JE, 1996,"Tripping the switch fantastic: how a protein kinase cascade can convert graded inputs into switch-like outputs," TIBS 21: 460-466
【非特許文献5】Kawai et al., 1993,"Enhancement of rat urinary bladder tumorigenesis by ipopolysaccharide-induced inflammation,"Cancer Res. 53: 5172-5
【非特許文献6】Rosin et al., 1994,"Inflammation, chromosomal instability, and cancer: the schistosomiasis model,"Cancer Res. 54 (7 Suppl): 1929s-1933s
【非特許文献7】Choi et al., 1994,"Similarity of colorectal cancer in Crohn's disease and ulcerative colitis: implications for carcinogenesis and prevention,"Gut 35: 950-4
【非特許文献8】Deltenre et al., 1995,"Gastric carcinoma: the Helicobacter pylori trail,"Acta Gastroenterol Belg. 58: 193-200
【非特許文献9】Beutler, 1995,"TNF, immunity and inflammatory disease: lessons of the past decade,"J. Invest. Med. 42: 227-35
【非特許文献10】Liles et al., 1995,"Review: nomenclature and biologic significance of cytokines involved in inflammation and the host immune response,"J. Infect Dis. 172: 1573-80
【非特許文献11】Giroir, 1993,"Mediators of septic shock: new approaches for interrupting the endogenous inflammatory cascade,"Critical Car. Med. 21: 780-9
【非特許文献12】Nathan, 1992,"Nitric oxide as a secretory product of mammalian cells,"FASEB J. 6: 3051-3064
【非特許文献13】Vane, J. R., The Croonian Lecture 1993,"The endothelium: maestro of the blood circulation,"Proc. Rov. Soc. Lond B 343: 225-246
【非特許文献14】Szabo, C.; 1995,"Alterations in the production of nitric oxide in various forms of circulatory shock,"New Horizons 3: 3-32
【非特許文献15】Bartsch et al., 1994,"Endogenously formed N- nitroso compounds and nitrosating agents in human cancer etiology," Pharmacogenetics 2: 272-7
【非特許文献16】Liu et al., 1992,"Woodchuck hepatitis virus surface antigen induces NO synthesis in hepatocytes: possible role in hepatocarcinogenesis.," Carcinogenesis 15: 2875-7
【非特許文献17】Ohshima et al., 1994,"Chronic infections and inflammatory processes as cancer risk factors: possible role of nitric oxide in carcinogenesis,"Mutation Res. 305: 253-64
【非特許文献18】Levitzki, A., 1994, "Signal-transduction therapy. A novel approach to disease management,"Eur. J. Biochem. 226: 1-13
【非特許文献19】Novogrodeky et al., 1994,"Prevention of lipopolysaccharide- induced lethal toxicity by tyrosine kinase inhibitors,"Science 264U (Wash): 1319-22
【非特許文献20】Marczin et al., 1993,"Tyrosine kinase inhibitors suppress endotoxin-and IL-lbeta- induced NO synthesis in aortic smooth muscle cells,"Am. J. Physiol. 265: H1014- 1018
【非特許文献21】Matsuda et al., 1994, "Signaling pathways mediated by the mitogen-activated protein (MAP) kinase kinase/MAP kinase cascade,"J. Leukocyte Biol. 56: 548-53
【非特許文献22】L'Allemain, G., 1994, "Deciphering the MAP kinase pathway,"Progr. Growth Factor Res. 5: 291-334
【非特許文献23】Cowley et al., 1994,"Activation of MAP kinase kinase is necessary and sufficient for PC12 differentiation and for transformation of NIH 3T3 cells., "Cells 77: 841-52
【非特許文献24】Baeuerle et al., 1994,"Function and activation of NF-B in the immune system,"Ann. Rev. Immunol. 12: 141-79
【非特許文献25】Schreck et al., 1992,"Nuclear factor kappa B: an oxidative stress-responsive transcription factor of eukaryotic cells (a review),"Free Radical Res. Comm. 17: 221-37
【非特許文献26】Muller et al., 1993,"Nuclear factor kappa B, a mediator of lipopolysaccharide effects," Immunobiol. 187: 233-56
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、動物または哺乳類の炎症および関節炎を含む炎症性疾患の処置法を目的とする。また本発明は、全身性感染から生じるまたはリポ多糖類によるインフェステーションから生じる、グラム陰性およびグラム陽性内毒素症状の両方を持つ動物または哺乳類の処置法をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の炎症または炎症性疾患の処置法に関するものであって、ここで、pADPRT抑制化合物は、下記の化合物群から選ばれる。
式:
【化1】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5およびR6はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4,R5およびR6の1つのみがアミノである]の化合物;式:
【化2】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]の化合物;および式:
【化3】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]
の化合物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物は、動物または哺乳類の炎症および関節炎を含む炎症性疾患の処置において効果がある。また、本発明の化合物は、全身性感染から生じるまたはリポ多糖類によるインフェステーションから生じる、グラム陰性およびグラム陽性内毒素症状の両方を持つ動物または哺乳類の処置においても効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、J774細胞におけるLPS誘発の(a)ニトリット(亜硝酸塩)産生、(b)6−ケトプロスタグランジンF1α産生、(c)TNF産生および(d)ミトコンドリア呼吸の抑止に対するINH2BPの効果を示す図面である。TNFは4hで測定し、他の全てのパラメータはLPS後24hで測定した。**は対照(コントロール)(p<0.01)mと比較したときのLPSに対する応答の有意変化を示し;##はLPS単独(p<0.01)と比較したときのLPSの存在下のINH2BPの有意効果を示し;n=6〜12ウェル。
【図2】図2は、INH2BPはJ774およびRAW264.7細胞におけるiNOS発現の抑制を示す図面である。(a)対照条件下(レーン1)、LPS処置の4h後(レーン2)およびINH2BP(100μM)の存在下細胞中のLPS処置の4h後(レーン3)の、J774細胞(A)およびRAW264.7マクロファージ(B)におけるiNOSおよび18s mRNAの代表的ノーザン斑点(Northern blots)、(b)対照条件下(CおよびC+INH2BP)およびLPS処置(LPSおよびLPS+INH2BP)の12h後のJ774細胞のホモジネートにおけるiNOS活性に関するINH2BPの効果、**は対照(p<0.01)と比較したときのLPSの有意効果を示し;##はINH2BP(p<0.01)による有意抑制を示し;n=4、(c)INH2BPの存在または非存在下、対照J774細胞およびLPSの12h後の細胞における代表的iNOSウェスタン斑点(Western blot)。
【図3】図3は、ニトリット蓄積に対するINH2BPの効果を示す図面である。(a)INH2BP(100μM)をLPSの2h前、LPSといっしょに、またはLPSの2,4および6h後に付与したときのニトリット蓄積の時間に依存する抑制損失、(b)LPSとIFNの組合せによって刺激されるJ774細胞におけるニトリット蓄積に対するINH2BPの効果;n=6〜12ウェル。
【図4】図4は、全長(full length)(−1592bp)または欠失(deletional)(−367bp)iNOSプロモータールシフェラーゼ構造(構築物)のいずれかで一時的にトランスフェクションしたRAW264.7細胞における、LPSによるルシフェラーゼ活性の誘発に対するINH2BPの効果を示す図面である。全長構造または欠失構造(黒色バー)のいずれかでトランスフェクションした細胞において、LPS(10μg/ml、4h)による処置は、対照値に対して10〜12倍のルシフェラーゼ活性の誘発になった。INH2BPとの共同処置は、全長構造でトランスフェクションした細胞においてルシフェラーゼ活性のLPS−仲介増加を抑制したが、−367bp欠失構造(灰色バー)でトランスフェクションした細胞では有意効果はなかった。データは対照細胞に対してルシフェラーゼ活性の倍増加で表示し、かつそれぞれのベータ−ガラクトシダーゼ活性に対して修正する。*はLPS単独(p<0.05)と比較したときのLPS存在下のINH2BPの有意効果を示し;n=4それぞれのトランスフェクション。
【図5】図5は、INH2BPによる意識のあるラットにおけるiNOSの誘発の抑止を示す図面である。対照ラット(c)、INH2BP(INH2BP)を注射したラット;LPS(15mg/kg i.p.、6h)を注射したラットにおける肺ホモジネート(a)および血漿(プラズマ)ニトリット−ニトレート濃度(b)のiNOS活性;およびINH2BP(10mg/kg i.p.)をLPSの10分前(INH2BP+LPS)またはLPSの2h後(LPS+INH2BP)に付与して処置した効果。**は対照(p<0.01)と比較したときのLPSの有意効果を示し;##はpADPRTインヒビター(p<0.01)による有意抑制を示し;n=4〜5。
【図6】図6は、LPS投与(4mg/kg i.p.)の90分後のマウスにおけるLPS誘発のTNF、IL−10およびIL−6応答に対するINH2BP(10mg/kg i.p.)の効果を示す図面である。**は対照(p<0.01)と比較したときのLPSの有意効果を示し;##はINH2BP(p<0.01)による応答の有意増加を示し;n=4〜5。
【図7】図7は、INH2BPによる内毒素ショックに付したマウスの生存の改善を示す図面である。マウスにおける内毒素誘発(120mg/kg i.p.)の死亡率に対するINH2BP前処置(0.3〜10mg/kg)の効果;各グループでn=7〜8匹。
【図8】図8は、MAPキナーゼ・アッセイの結果を示す図面である。(a)100μM−PD98059または150μM−INH2BPの存在または非存在下、ビヒクルまたはLPS(10μg/ml)を24h処置したRAW264.7細胞におけるMAPキナーゼ活性、データは典型的な実験で得た値を示し、3つの異なる実験日で類似の結果が認められた。(b)150μM−INH2BPの存在または非存在下、ビヒクルまたはLPS処置の24h後のRAW264.7細胞における代表的なゲルMAPキナーゼ・アッセイ、レーン1〜4はそれぞれ以下のグループを示す:1:ビヒクル処置対照、2:LPS処置、3:150μM−INH2BP存在下のビヒクル処置、4:150μM−INH2BP存在下のLPS処置。
【図9】図9は、LPSに応答する核移行に及ぼすINH2BPの阻害の影響を示す図面である。pADPRTのINH2BPによる抑制は、対照J74細胞の核抽出物のおよびINH2BP(100μM)の存在または非存在下のLPS処置の90分後の細胞におけるNF−kBウェスタン斑点の核転座を変えない。
【図10】図10は、カラゲナン誘発の足浮腫の発生に対するINH2BPの効果を示す図面である。データはカラゲナン注射の1〜4h後の足容積を示す(平均値±S.E.M.、各グループのn=6匹)。1時間の足容積に有意増加があり(p<0.01)、1〜4時間においてINH2BPの足浮腫発生の有意抑制があった(**p<0.02)。
【図11】図11は、コラーゲン誘発関節炎の発病に対するINH2BPの効果を示す図面である。関節炎マウス(マウスが示す関節炎の臨床的スコア>1)の割合(%)を示す。21日目の矢印は、第2コラーゲン免疫処置の時間を示し、25日からの水平バーは、INH2BP(N=6)またはVEHICLE(ビヒクル)(N=10)による処置の開始の時間を示す。
【図12】図12は、コラーゲン誘発関節炎の苛酷に対するINH2BPの効果を示す図面である。コラーゲン誘発関節炎中の平均関節炎スコア。21日目の矢印は、第2コラーゲン免疫処置の時間を示し、25日からの水平バーは、INH2BP(n=6)またはビヒクル(n=10)による処置の開始の時間を示す。26日から関節炎スコアに有意増加があり(Ip<0.01)、26〜35日間でINH2BPによる関節炎スコアの有意抑止があった(#p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1つの態様は、動物または哺乳類の炎症または炎症性疾患の処置法であって、該方法は、上記動物または哺乳類に対して有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る。
【0013】
本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の炎症または炎症性疾患の処置法であって、ここで、pADPRT抑制化合物は、下記の化合物群から選ばれる。
式:
【化4】
[式中、R1,R2,R3,R4,R5およびR6はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4,R5およびR6の1つのみがアミノである]の化合物;式:
【化5】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]の化合物;および式:
【化6】
[式中、R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはフェノールの群から選ばれ、必要に応じてアルキル、アルコキシ、ヒドロキシもしくはハロで置換されてよく、かつR1,R2,R3,R4およびR5の1つのみがアミノである]
の化合物。
【0014】
好ましいpADPRT化合物としては、6−アミノ−1,2−ベンゾピラン、3−ニトロソベンズアミド、5−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、7−アミノ−1(2H)−イソキノリノンおよび8−アミノ−1(2H)−イソキノリノンが挙げられる。
【0015】
さらに本発明の他の態様として、動物または哺乳類の両グラム陰性およびグラム陽性誘発症状の処置法が包含され、該方法は、動物または哺乳類に対して治療上有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る。
【0016】
さらにまた本発明の他の態様は、動物または哺乳類に対して治療上有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の両グラム陰性およびグラム陽性誘発の内毒素症状の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は上述の化合物I、化合物II、または化合物IIIの群から選ばれる。
【0017】
さらにまた本発明の他の態様は、動物または哺乳類に対して治療上有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の両グラム陰性およびグラム陽性誘発の内毒素症状の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0018】
さらにまた本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類の関節炎の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0019】
さらにまた本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類のクローン(Chron)病の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0020】
さらにまた本発明の他の態様は、有効量のpADPRT抑制化合物を投与する工程から成る、動物または哺乳類のバレット(Barrett)病の処置法であって、ここで、上記抑制化合物は化合物I,IIまたはIIIと同様な上記構造式を有する。
【0021】
本発明のpADPRT抑制化合物は、U.S.特許No.5464871、5473074、5482975、5484951、5516941および5583155に記載の方法に従って製造することができる。
【0022】
本発明の方法で用いるのに好ましい抑制化合物としては、ハロ基がヨード、R基の1つがアミノであり、R基の1つが上記U.S.特許に記載の如くニトロソまたはニトロであってもよく、しかし好ましいR基がアミノである化合物が含まれる。また、pADPRT抑制活性は、ヨード成分がアミノ成分に隣接するときに著しく示されることが認められた。いずれにせよ、本発明の方法で使用される化合物は、pADPRT抑制活性を有するべきである。
【0023】
かかる化合物は、それ単独でまたは好ましくは、当該分野で公知の医薬的に許容しうる酸付加塩または他の適当な医薬担体といっしょに使用されてよい。
【0024】
(発明の好ましい具体例の説明)
本明細書で用いる定義:
“抗炎症性”疾患とは、体組織の炎症がある疾患あるいは状態を指称する。かかる疾患としては、たとえばクローン(Chron)病、バレット(Barrett)病、関節炎、多発性硬化症、心筋症疾患、大腸炎、感染性髄膜炎、脳炎等が挙げられる。
【0025】
“医薬的に許容しうる酸付加塩”とは、生物学的有効性と遊離塩基の性質を保持し、および塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、サリチル酸等との反応によって得られる塩を指称する。
【0026】
“ADPRT”とは、アデノシンジホスホリボース・トランスフェラーゼを指称し、ADP−リボースの重合を触媒する真核生物の特異的DNA−結合核タンパクである、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(EC2.4.99)としても公知である。該酵素プロセスはDNAに依存する。
【0027】
“アルキル”とは、飽和または不飽和の分枝鎖もしくは直鎖炭化水素基を指称する。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0028】
“アルコキシ”とは、−O−アルキルの基を指称する。典型的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシ等が挙げられる。
【0029】
“シクロアルキル”とは、3〜8個の炭素原子含有の飽和モノ環式炭化水素基を指称し、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
【0030】
“置換フェニル”とは、可能な異性フェニル基の全てを指称し、たとえばアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロの群から選ばれる置換基でモノまたはジ置換したものが挙げられる。
【0031】
“ハロ”とは、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨードを指称し、ヨードが好ましい。
本発明のpADPRT抑制化合物(特に上述の化合物I、IIまたはIIIの如き化合物)は、効力ある、特異的で非毒性の抗炎症性化合物であって、たとえば関節炎、クローン病、バレット病などの炎症に関して公知の状態および疾病に使用することができる。また、これらの化合物は、グラム陰性およびグラム陽性誘発感染に付随する状態、特にグラム陰性感染に付随する状態(およびリポ多糖類状況や敗血症に付随する状態を含む)での処置に有用である。かかる化合物は特に、毒性があっても、極めて少ないという点で有用である。
【0032】
実際に、本発明化合物またはその医薬的に許容しうる塩は、動物または哺乳類において、炎症性状態もしくは疾患の抑制および/または炎症または炎症性疾患の発生の予防において十分な量で投与され、かつかかる使用目的に最適な医薬剤形で使用される。
【0033】
本明細書に記載の活性化合物および塩の投与は、治療作用物質の場合の許容される投与方式のいずれかによって行なうことができる。これらの投与方法としては、経口、非経口、経皮、皮下などの全身もしくは局所投与、あるいは局所的な投与方式が挙げられる。これらの薬物の好ましい投与方法は経口投与である。ある特定の場合、組成物を他の非経口剤形で投与することが必要となりうる。
【0034】
組成物は、意図される投与方式に基づき、固体、半固体または液体投与剤形、たとえば注射剤、錠剤、坐剤、丸剤、時間−放出カプセル剤、粉剤、液剤、懸濁液等の剤形で、好ましくは単位投与剤形であってよい。組成物は、有効量の活性pADPRT抑制化合物またはその医薬的に許容しうる塩を含有し、さらに、該組成物は通常の医薬賦形剤や医学で慣用されている他の薬効のあるもしくは製薬上の薬物または作用物質、担体、佐剤、希釈剤等を含有してもよい。
【0035】
固体組成物の場合の賦形剤としては、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムが包含され、また同類のものも使用しうる。上記の活性pADPRT抑制化合物は、たとえば担体としてポリアルキレングリコール(プロピレングリコールなど)を用いて坐剤として調剤されてもよい。
【0036】
液体、特に注射用組成物はたとえば、水、食塩水、水性ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどの製薬液への活性化合物の溶解、分散等を行なうことにより、注射溶液もしくは懸濁液を形成することによって調製することができる。
【0037】
要すれば、投与される医薬組成物は、最小量の非毒性助剤物質、たとえば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤や、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン・オレエートなどの他の物質を含有してもよい。
【0038】
また要すれば、投与される医薬組成物は、リン脂質、陰荷電リン脂質と、コレステロール、コレステロールの脂肪酸エステルまたは不飽和脂肪酸から選ばれる化合物から成るリポソーム製剤を含有してもよい。典型的な中性リン脂質としては、L−a−ホスファチジルコリン、L−a−ホスファチジルイノシトール、L−a−ホスファチジル−セリン、L−a−ホスファチジルイノソトール、L−a−ホスファチジン酸、L−a−ホスファチジルグリセロール、L−a−リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミセリンおよびカルジオリピンが挙げられる。
【0039】
典型的な陰荷電リン脂質としては、ジアセチルホスフェートまたはホスホジグリセリド、たとえばジラウロイル,ジミリストイルホスフェート、ジパルミトイルホスフェート、ジステロイルホスフェートが挙げられる。
【0040】
典型的なコレステロールおよびコレステロールエーテル類としては、コレステロール、3S−ヒドロキシ−5−コレステン、ポリオキシエタニルコレステリル・セバケート、コレステロール−5,6−エポキシド、コレステリル・アセテート、コレステリル・n−ブチルエーテル、コレステリル・カプレート、コレステリル・ドデカノエート、コレステリル・エチルエーテル、コレステリル・ヘプタデカノエート、コレステリル・メチルエステルが挙げられる。
【0041】
典型的な不飽和脂肪酸としては、アラキドン酸、ドコサヘキサン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、ネルボン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸が挙げられる。ハロニトロ化合物は、カプセル化またはU.S.特許出願No.08/020035[名称:リポソーム製剤並びにその作成および使用法、1993年2月19日出願]の記載に従って、リポソーム製剤の二層リポソームに分配してもよい。
【0042】
第1の具体例において、最初にリポソームを形成し、次いでC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を加える。C−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物は、カプセル化するよりはむしろ、脂質二層のリポソームに分配する(配置する)。この組成物を作成するため、典型例として、ホスファチジルコリン、ジセチルホスフェートおよびコレステロールなどの成分を、クロロホルムなどの溶剤とブレンドする。ブレンド後、クロロホルムを追い出す。次いで、これに水を加える。リポソームに水を加えると、多層板状の(multilamellar)リポソームが作成される(すなわち、該リポソームは多数の層を有するタマネギの皮に類似する)。次工程として、それらを凍結し、解凍する。液体窒素中で急速に凍結させる。急速な凍結および解凍の目的は、リポソームの寸法をより均一にするためである。このときのリポソームの寸法はまちまちであり、1回以上、たとえば5回で取扱う。解凍は、37度の水浴で起る。凍結および解凍前に、混合物を音波破砕する。音波破砕と解凍の組合せは、皮の数を減じる。目標は、単板状系(unilamellar system)を作ることである。このとき、C−ニトロソ化合物を加え、10ミリモル(Mu)濃度を得る。濃度は15ミリモル以上であってもよい。この濃度の脂質で、60mlバッチの場合、総脂質濃度は648mgで、60mlの水を加える。ホスファチジルコリンは500mg、コレステロールは36mg、ジセチルホスフェートは112mgである。
【0043】
混合物のリポソーム濃度の増加は、混合物がより多くのC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を含有するのを可能ならしめる。たとえば、上記混合物の現状濃度を2倍にすることができる。60ミルバッチの場合、上記数値を2倍にすることができ、1000mgのホスファチジルコリン、224mgのジセチルホスフェートおよび72mgのコレステロールを有する。濃度の減少は、そこに入れるC−ニトロソ化合物の量を減じる。仮定の60mlバッチの場合、C−アミノ化合物アプローチの上限は、15ミリモル濃度のC−アミノ化合物である。3−ニトロソベンズアミドの場合、60mlバッチに対して135mgである。
【0044】
次工程として、再水和する。次いでプロセスの次工程は、押出機(カナダ、ブリティッシュ・コロンビア、バンクーバーのリペックス・ビオメンブランズ・Inc.)を用いる押出である。
【0045】
押出プロセスは2つの目的、すなわち、(1)リポソームの寸法の均一化および(2)滅菌に役立つ。
【0046】
押出には典型例として、0.1ミクロンフィルターによる濾過が含まれ、かつその後に通常、混合物を凍結乾燥する(混合物から水を取出し、微粉末とする)。これによって溶解性が改善される結果、約40ミリモル溶液に調合でき、これは凍結乾燥前の濃度の約3倍である。凍結乾燥は粉末脂質と粉末C−アミノ化合物の混合物を生成する。そこで、同量のC−アミノ化合物とより少量の液体を用いて、濃度の高い混合物を作成することができる。たとえば、同重量のC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を有しうるが、元の容量の3分の1以下である。
【0047】
上記プロセスの工程を改変、たとえば凍結乾燥といった工程を削除することができよう。
【0048】
この第1具体例のプロセスは、C−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を有意的にカプセル化するものではない。化合物をリポソームの中間に有する代わりに、化合物は膜自体に存在する。リポソームの膜内に分配されたC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物は、標的細胞に移行し、脂質はC−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を細胞膜の中へ運ぶだろう。
【0049】
このプロセスは好ましくは、直径約0.05〜0.45ミクロン、好ましくは約0.1〜0.2ミクロンのリポソームを作成する。単板状または多層板状のリポソームが有効である。
【0050】
押出の第2目的は、混合物を滅菌することである。滅菌するため、リポソームを一般に直径が45ミクロン以下となるように作成する。0.05ミクロン以下の寸法が、理論的に作用するだろう。第1具体例のプロセスは、たとえば水中の3NOBAのみが0.5ミリモル濃度を有するという利点を持つ。かかるリポソーム組成物は15ミリモルの濃度を達成する。
【0051】
さらに、水溶液中の3−NOBAのみとは異なり、NOBA含有リポソーム溶液は、アスコルビン酸に対し耐性である。このことから、該溶液は実験室におけるマウス実験に有用となる。溶液はNOBAモノマーまたはNOBAダイマーを含有してもよい。
【0052】
第2の具体例において、出発物質として脂質成分の被膜を用い、該被膜を薬物の水溶液で水和する。これは自動的に、薬物を閉じ込める(カプセル化する)脂質を形成する。これは、リポソーム膜不透過性の化合物といっしょに生じる。かかる化合物の一例は、U.S.特許No.5262564(1993年11月16日特許)に記載のもの、たとえば3−NOBAのL−シスチン−スルフィン酸アダクトである。
【0053】
皮下投与、筋肉内または静脈内注射および注入の場合、一般に非経口の注射投与が用いられる。注射剤は、注射の前に液体に溶解するのに適当な液状溶液もしくは懸濁液または固体形状などの通常の形状で製造することができる。
【0054】
非経口投与のためより最近に案出されたアプローチでは、遅放出性または持続放出性システムの移植(植込み)が採用され、これは、U.S.特許No.3710795の記載に従って、一定レベルの投与量の維持を確実にする。
【0055】
上記医薬組成物のいずれも、活性成分として、0.1〜99%、好ましくは1〜70%の活性pADPRT抑制化合物、特に上記式I、IIまたはIIIのハロ−C−アミノ,ニトロソまたはニトロ化合物を含有しうる。
【0056】
慢性炎症は、各種組織における発癌性形質転換を促進することが知られている。核酵素ポリ−ADPリボース・ポリメラーゼ(pADPRT)の新規インヒビターである5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)は最近、種々の細胞シグナル形質導入経路を調節し、かつHa−rasトランスフェクション内皮細胞系によるインビボ腫瘍形成を取消すことが認められた。本発明の1つの側面として、インビトロおよびインビボの、炎症性メディエイタ腫瘍壊死アルファ因子(TNF)、インターロイキン−10(IL−10)およびインターロイキン−6(IL−6)、酸化窒素(NO)およびプロスタグランジンの産生に関して内毒素(細菌性リポ多糖類、LPS)による活性化に対するpADPRT抑制化合物、たとえばINH2BPの効果が証明される。さらに、本発明は、インビトロのミトゲン−活性化タンパクキナーゼ(MAPキナーゼ)および核因子kB(NF−kB)の活性化に対するpADPRT抑制化合物、たとえばINH2BPの効果を示す。培養したJ774およびRAW264.7マクロファージにおいて、LPSは、プロスタグランジン代謝産物の産生、TNFの放出および誘発性イソフォームのNOシンターゼ(iNOS)の発現を誘発した。プロスタグランジンおよびNOの産生は、用量に依存してINH2BPによって抑制され、一方、TNF−アルファの短時間放出の影響はなかった。INH2BPは、全長(−1592bp)ネズミ・マクロファージiNOSプロモータ−ルシフェラーゼ構造で一時的にトランスフェクションしたRAW細胞におけるLPS仲介のルシフェラーゼ活性を顕著に抑止したが、−367bpからなる欠失構造においてはそうではなかった。インビボのINH2BP前処置(ラットのLPSによるiNOSの誘発を抑制)は、LPS誘発のTNFおよびIL−6応答に影響を及ぼさず、かつLPS−誘発IL−10産生を高めた。INH2BP前処置は、致死モデルの内毒素ショックにおけるマウスの生存を顕著に改善した。これらの結果から、pADPRT抑制化合物、たとえばINH2BPはインビトロおよびインビボの効力ある抗炎症性作用を有することが証明される。
【0057】
ポリ−ADPリボース・シンセターゼ(PARS)は、DNA単鎖破壊によって活性化される核酵素である。PARSの大規模な活性化は、過酸化水素−パーオキシニトリットまたは電離線誘発の広範なDNA単鎖破壊に応じて、細胞損傷において頂点に達するエネルギー消耗の無益サイクル(futile cycle)を起こす。パーオキシニトリットの産生は最近、関節炎やカラゲナン誘発の足浮腫を含む種々の炎症において証明された。本発明は、ラットモデルのカラゲナン誘発の足浮腫およびマウスモデルのコラーゲン誘発の足浮腫において1〜4hで、PARS,pADPRT抑制化合物、たとえば5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)の新規で効力のあるインヒビターの効果を示す。雄DMA/1Jマウスにおけるコラーゲン誘発関節炎は、1日目と21日目のタイプIIコラーゲンの2回の注射で誘発した。マウスのINH2BP(1日当り0.5g/kg)による経口処置は、関節炎の発病時(25日)に開始したが、26〜35日目の関節炎の臨床徴候の発生を遅らせた。INH2BP処置動物は、ひざと足で調べたように、関節炎指数の減少(関節炎スコア:ビヒクル処置マウスで見られるスコアの20〜50%)と、組織状態の改善を示した。これらのデータから、PARSインヒビターINH2BPは、インビボINH2BPで抗炎症性効果を示すことが証明され、かつ投与の開始を比較的に遅くしても、コラーゲン誘発関節炎の経過を遅らせることができた。本発明のデータによって、PARS活性化は関節炎、あるいは他種の炎症および炎症性疾患の発生において役割を演じるという見方が支持される。
【0058】
(実施例)
次に挙げる実施例は本発明を例示するのに役立つもので、本発明を狭くしたり、その技術的範囲を制限すると解釈すべきではない。
【実施例1】
【0059】
細胞培養:
マウスマクロファージセルラインJ774およびRAW264.7を、スザボら、1996、「DNA鎖切断、ポリ−ADPリボシルシンセターゼの活性化、および細胞エネルギー消耗はマクロファージ内およびペルオキシ亜硝酸塩(peroxynitrite)に曝された平滑筋細胞における細胞毒性に関与する」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1753−1758;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358に開示のように、ダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)で培養した。別の研究では、腹膜マクロファージは雄性ウィスターラットから得、インビトロで24時間LPSの存在下あるいは非存在下で、INH2BPと共に、あるいは非存在下で培養した。ラットを殺し、腹膜マクロファージを摘出し、DMEMで培養した。細胞をE.Coli LPS(10mg/ml)あるいはLPSおよびINF(50μ/ML)で、様々の濃度(1−150mM)のINH2BPあるいは他の薬理学的インヒビターの存在下あるいは非存在下で、種々の時間処理した。
【0060】
MAPキナーゼ関連アッセイ:
未処理の細胞をPBSで洗浄し、集め、100万個の細胞あたり100mlの溶解緩衝液(50mMトリス−塩酸、pH7.4、1%NP−40、0.4M NaCl、0.1mM NAVO3、50mM KF、1mM EGTA、2mM PMSF、25nMオカダイックアシッド(okadaic acid)、ロイペプチン、アプロチニン、アルナスタチンおよびアンチパインを各1mg/ml)を用いて溶解した。溶解は20分間氷上で行い、エッペンドルフ(Eppendorf)遠心機を用いて、13000rpmで14分間遠心分離した。上清を集め、そのタンパク含量をバイオ−ラド(Bio−Rad)染料アッセイを用いて測定した。
【0061】
ゲルMAPキナーゼアッセイにおいて:
タンパク試料(50mg/レーン)を固定化ミエリン塩基性タンパク(MBP、250mg/mlゲル)を含有する100%SDS−PAGEゲル内で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを50mMトリス−塩酸、pH7.7緩衝液(25ml、20分間)で1回洗浄し、ついで25%イソプロパノール含有の同緩衝液で30分間ずつ2回インキュベーションした。ゲルをついで該トリス-塩酸緩衝液で洗浄し、50mMトリス−塩酸pH7.7、mM2−メルカプトエタノール、5Mグアニジン塩酸塩(50mL)溶液に、30分後にインキュベーション溶液を替えながら、1時間浸漬した。ゲルを50mMトリス−塩酸pH7.7、Mm2−メルカプトエタノール、0.04%NP−40の溶液を16時間かけて5回替えながらインキュベーションすることにより、タンパクを再度栄養供給した。ゲルを2回洗浄し、50mMトリス−塩酸pH7.7、5mM MgCl2、7mM 2−メルカプトエタノール含有溶液内で半時間プレインキュベーションした。最終インキュベーションは、10mMの32p−g]ATP(50mCi/測定)を補足した同溶液内で1時間行った。インキュベーション終了後、10%TCA(3×25ml)および10%酢酸(3×25ml)を用いて、非結合の放射活性が無くなるまで洗浄し、乾燥し、オートラジオグラフィーに付した;サカキら、1995「成長因子−誘導細胞増殖に対するセラミドの増強効果」、Biochem. J. 311:829−834。
【0062】
MAPキナーゼウェスタンブロッティング:
細胞抽出タンパク100mgを10%SDS−PAGEゲルに賦し、電気泳動し、ニトロセルロース膜上にトランスブロットし、イムノプローブした。第1抗体(抗−MAPキナ−ゼ)をUBIから得、第2抗体はアルカリホスファターゼ標識した、NENバイオラボから得た。測定は増強ケミルミネセンス(化学発光)により行った;バウエルら、1995、「成長関連酵素経路の変法とラス−形質変換ウシアンドセリアルセルラインの、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理による発癌性の明白な喪失」、Int. J. Oncol. 8:239−252。
【0063】
細胞核抽出物の調製およびNF−kBウェスタンブロッティング:
細胞をLPSでINH2BPの存在下または非存在下で90分間処理した。ミニ細胞核抽出物を、ハサナインら、1993、「DNA−結合因子の増強ゲル可動性シフトアッセイ」、Anal. Biochem. 213:162−7に開示のように調製した。細胞を暫時スクレープし、暫時遠心分離し、得られたペレットを400mlの冷緩衝液A[ヘペス、pH7.9(10mM)、KCl(10mM)、EDTA(0.1mM)、EGTA(0.1mM)、DTT(1mM)、PMSF(0.5mM)、ペプスタチンA(1mg/ml)、ロイペプチン(10mg/ml)、およびアプロチニン(10mg/ml)]に、25mlの1%NP−40の存在下、氷冷下15分間再懸濁した。ついで、試料を渦巻攪拌し、10,000gで1分間遠心分離し、得られたペレットを100mlの緩衝液B[ヘペス、pH7.9(20mM)、NaCl(400mM)、EDTA(1mM)、EGTA(1mM)、DTT(1mM)、PMSF(0.5mM)、ペプスタチンA(mg/ml)、ロイペプチン(10mg/ml)、およびアプロチニン(10mg/ml)]に再懸濁した。ロッカープラットフォーム上で4℃15分間振とう後、試料を4℃で15 100,100gで15分間遠心分離した。70ml部ずつ150mlのSDS−PAGE試料緩衝液で処理した。ウェスタンブロッティングを、ウサギ抗−マウスNF−kB1次抗体(サンタ・クルズ・バイオテクノロギー、サンタ・クルズ、CA)のツイーンTBS(0.02%)の1:750を用いて上記の如く行った。
【0064】
亜硝酸塩または亜硝酸塩/硝酸塩濃度の測定:
刺激後24時間後の培養上清中の亜硝酸塩を、スザボら、1996、「DNA鎖切断、ポリ−ADPリボシルシンセターゼの活性化、および細胞エネルギー消耗はマクロファージ内およびペルオキシ亜硝酸塩(peroxynitrite)に曝された平滑筋細胞における細胞毒性に関与する」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1753−1758;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358;スザボら、1994、「スペルミンは免疫−刺激J774.2マクロファージにおける酸化窒素の生成を阻害する:血清因子の要求」、Br. J. Pharmacol. 112:355−356に開示の如く、グリース(Griess)試薬(1%スルファニルアミドおよび0.1%ナフチルエチレンジアミンの5%燐酸溶液)を培地100ml試料に加えて、測定した。550nmにおける光学濃度(OD550)をスペクトラマックス(Spectramax)250マイクロプレートリーダー(モレキュラー・デバイシス、サニーベイル、CA)を用いて測定した。血漿試料中の総亜硝酸塩/硝酸塩濃度の測定のため、硝酸塩は硝酸塩還元酵素とインキュベーションすることにより亜硝酸塩に還元した;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358。
【0065】
6−ケトプロスタグランジンF1aの測定:
LPS刺激4時間後の6−ケトプロスタグランジンF1a生成を、細胞培養上清100ml試料内で、特異的放射免疫測定法を用いて測定した;スザボら、1994、「スペルミンは免疫−刺激J774.2マクロファージにおける酸化窒素の生成を阻害する:血清因子の要求」、Br. J. Pharmacol. 112:355−356。
【0066】
サイトカイン測定:
血漿および細胞培養上清中のサイトカインレベルをELISAで測定した。IL−10およびIL−6の血漿レベルは、エンドーゲン(エンドーゲン・インコーポレィテッド、ボストン、MA)のELISAキットを用いて測定した。TNF−αの血漿および細胞培養上清中の濃度は、ゲンザイム(ゲンザイム・コーポレイテッド、ボストン、MA)のELISAキットを用いて測定した;スザボら、1997、「イソプロテレナールは腫瘍壊死因子、インターロイキン−10、インターロイキン−6および酸化窒素の生成を調節し、内毒素血症の血管性低反応性の発生に対して保護する」、Immunology 90:95−100。
【0067】
ミトコンドリア呼吸の測定:
24時間後のミトコンドリア呼吸は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミドのホルマザンへのミトコンドリア−依存還元によって、評価した;スザボら、1996、「DNA鎖切断、ポリ−ADPリボシルシンセターゼの活性化、および細胞エネルギー消耗はマクロファージ内およびペルオキシ亜硝酸塩(peroxynitrite)に曝された平滑筋細胞における細胞毒性に関与する」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1753−1758;ジンガレリら、1996、「ペルオキシ亜硝酸塩−媒介DNA鎖切断はポリ−ADPリボシルシンセターゼを活性化し、細菌性リポポリサッカライドで刺激されたマクロファージにおける細胞エネルギー消耗を引き起こす」、J. Immunol. 156:350−358。
【0068】
iNOSmRNAのノーザンブロッティング
細胞を、INH2BPの存在下または非存在下でLPSに4時間さらしたのち、全RNAを、TRIZOLを用いて記載されているように抽出した。15mgの全RNAを含むアリコートを、3%ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル電気泳動にかけた。RNAをナイロンメンブランにブロッティングして移し、UV自己架橋させた。メンブランを、ランダムプライミング(Pharmacia, Piscataway, NJ)により[32P]dCTP(比活性3,000Ci/mM;NEN)で標識したネズミiNOScDNAプローブ(106cpm/mL)と、42℃にて一晩、記載されているようにしてハイブリダイゼーションした(Lowensteinら,1993, “Macrophage nitric oxide synthase gene: two upstream regions mediate induction by interferon gamma and lipopolysaccharide,”Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 9730-9734)。ハイブリダイゼーションしたフィルターを、53℃にて、2×クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、0.1%SDSおよび2.5mM NaHPO4、1mM EDTA、0.1%SDS溶液で順次に洗浄した。iNOSのプロービングの後、沸騰した5mM EDTAでメンブランから脱離させ、ハウスキーピング遺伝子としての18SリボソームRNAについて[32P]放射能標識オリゴヌクレオチドプローブと再びハイブリダイゼーションした。洗浄したのち、Phosphor Imagerスクリーンを用い、一晩露光した。
【0069】
iNOSウェスタンブロッティング
細胞を、pADPRT阻害剤の存在下および非存在下に、LPSで20時間処理した。次いで、冷却したPBS中で細胞を破壊し、14000Gで30秒間遠心した。上清を除去し、RIPA(500mL)、アプロチン(10mg/mL)およびPMSF(0.5mM)を含む溶解緩衝液を加えた。試料を22ゲージの針に通すことによりDNAをせん断した。タンパク質含量は、Bradford法(BIO-Rad)により測定した。サイトゾルタンパク質(200mg/レーン)をSDS-PAGE緩衝液に加え、5分間煮沸し、7.5%SDS−PAGEで分離し、等速電気泳動緩衝系を使用するSemi-Dry法を用いてニトロセルロース膜(0.2mm)ヘ移した。3%ゼラチン中で1時間ブロッキングしたのち、洗浄し、トゥイーン Tris緩衝塩水(TTBS)および1%ゼラチン中、TTBS中1:1000(0.0%)の一次ウサギ抗マウスiNOS(upstate Biotechnology, Lake Placid, NY)で試料を2.5時間イムノブロッティングした。アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ウサギiGG抗体を二次抗体として使用した。抗体結合を、炭酸緩衝液中のニトロブルー テトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロインドリルホスフェート(NBT/BCIP)(BIO−RAD)によって視覚化した。
【0070】
iNOS活性の測定
細胞を、pADPRT阻害剤の存在下および非存在下に、LPSで12時間処理した。J774細胞のホモジネートまたは肺ホモジネートにおけるL−アルギニンのL−シトルリンへのカルシウム非依存性変換の測定値を、記載されているようにiNOS活性の指標として使用した(Szaboら, 1994, “Spermine inhibits the production of nitric oxide in immuno-stimulated J744.2 macrophages: requirement of a serum factor,”Br. J. Pharmacol. 112:355-356)。細胞を破壊するか、または肺を、50mM Tris HCl、0.1mM EDTA、0.1mM EGTAおよび1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド(pH7.4)からなるホモジネーション緩衝液に入れ、Tissue Tearor 985-370ホモジナイザー(Biospec Products, Racine, WI)を用い、緩衝液中、氷の上でホモジネーションした。次いで、ホモジネート中での[3H]-L-アルギニンの[3H]-L-シトルリンへの変換を測定した。ホモジネート(30mL)を[3H]-L-アルギニン(10mM ,5kBq/チューブ)、NADPH(1mM)、カルモジュリン(30nM)、テトラヒドロビオプテリン(5mM)、およびEGTA(5mM)の存在下に、22℃にて20分間インキュベーションした。EGTA(2mM) とEDTA(2mM)を含有する0.5mLの氷冷HEPES緩衝液(pH5.5)で希釈することにより反応を止めた。反応混合物をDowex 50W(Na+型)カラムに注ぎ、溶出した[3H]-L-シトルリン活性をシンチレーション計測により測定した。
【0071】
iNOSプロモーターの機能アッセイ
我々の実験条件の下では、J774細胞は、リン酸カルシウム、リポフェクチンおよびリポフェクタミン法を使用してそれら細胞を一過性トランスフェクションする我々の試みには耐性であったので、トランスフェクション試験は、RAW264.7細胞で行った。レポーター遺伝子ルシフェラーゼの上流に5’ネズミマクロファージiNOSプロモーター領域を組み込んだリポーター遺伝子構築物でAW264.7細胞を一過性トランスフェクションすることにより、iNOSプロモーター活性を評価した;Lowensteinら, 1993, “Macrophase nitric oxide synthase gene: two upstream regions mediate induction by interferon gamma and lipopolysaccharide,”Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 90:9730-9734;(Dr. Charles J. Lowenstein. Johns Hopkins Universityより提供された)。2種類の構築物を使用した:完全長のプロモーター構築物(約1592bp)と約367bpからなる欠失構築物。細胞を6ウェルのカルチャープレートに集密度約50%で加え、カチオンリポソーム(Lipofectin, Gibco)を用い、等モルの各iNOSプロモータールシフェラーゼ構築物でトランスフェクションした。トランスフェクション効率の違いを調整するために、細胞をpSV40−b−ガラクトシダーセで同時トランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を一晩回復させ、次いで培地単独(コントロール)、LPS(10mg/mL)、またはLPS+INH2BP(100mM)で処理した。4時間処理したのち、細胞をPBS中で1回洗浄し、リポーター溶解緩衝液(Promega)中で溶菌し、ルシフェラーゼ活性を分析し、各粗(raw)-ガラクトシダーゼ活性について較正し、コントロール細胞(トランスフェクション後、培地単独で処理)を越える増加倍数で表示する。
【0072】
インビボ実験
雄性Wisterラットおよび雄性BALB/cマウスをCharles River Laboratories(Wilimington, MA またはBudapest, Hungary)より入手した。動物に餌と水を自由に与え、照明は12時間周期で維持した。ラットに E. coli LPS(15mg/kg)を腹腔内注射し、6時間後に屠殺した。亜硝酸塩/硝酸塩測定のためにプラズマ試料を採取し、iNOS測定のために肺試料を採取した。個々のラット群を、LPS注射の10分前またはLPS注射の2時間後にINH2BP(10mg/kg i.p.)で処理した。
【0073】
LPS誘導性のサイトカイン応答の測定に関する実験では、マウスに、体重10gあたり0.1mLの容量で賦形薬またはINH2BP(10mg/kg)のいずれかを腹腔内注射した。30分後、4mg/kgのLPSを腹腔内投与した。マウスをLPS処置の90分後に屠殺し、血液を、EDTAを含む氷冷したエッペンドルフチューブに採取し、4℃にて10分間遠心した。分析するまでプラズマを−7℃で保存した。
【0074】
マウスを用いるいくつかの実験では、0時間目でマウスにLPS(120mg/kg)を腹腔内注射し、生存をLPS投与後42時間監視した。それぞれの群のマウスには、LPS投与の18時間前、4時間前、0時間後、6時間後、24時間後および30時間後に、賦形薬またはINH2BPによる処置(0.1〜10mg/kg腹腔内)を施した。
【0075】
材料
DMEM、RPMI、TRIZOLおよびウシ胎児血清は、Gibco(Grand Island, NY)から入手した。[3H]NAD+および[32P]NAD+は、DuPont NEN(Boston, MA)より入手した。アルコールデヒドロゲナーゼおよびND+は、Boehringer Mannheim(Indianapolis, IN)より入手した。PD98059は、Cal Biochem(La Jolla, CA)より入手した。その他の試薬はすべてSigma(St. Louis, MO)より入手した。
【0076】
統計学的評価
図面および本文中のすべての値は、n個の観測値(n>4)の平均(S.E.M.)の平均±標準誤差で示す。スチューデント無対(unpaired) t−テストを群間の平均値の比較に使用した。0.05未満のp値は、統計学的有意であるとみなした。
【0077】
結果
INH2BPは、J774マクロファージにおいてLPS誘導性の一酸化窒素およびプロスタグランジンを抑制するが、TNF−a産生は抑制しない。
【0078】
INH2BP処理は、J774マクロファージにおいてLPS誘導性の一酸化窒素形成の用量依存的阻害をもたらした(図1a)。INH2BPは、6−ケトプロスタグランジンF1aのLPS誘導性の産生を同様に抑制した(図1b)が、TNFの産生は抑制せず(図1c)、LPS誘導性のミトコンドリア呼吸の抑制を元の水準に戻した(図1d)。INH2BPは、iNOSmRNAおよびタンパク質発現の著しい阻害をもたらした(図2a〜c)。INH2BPによる亜硝酸塩産生の阻害は、iNOS誘導の刺激の前とは対照的に、薬剤をLPS投与の数時間後に投与した場合に大きく減少した(図3a)。さらに、iNOSに対するINH2BPの阻害効果は、LPSをインターフェロンガンマ(INF−g50μ/mL)と組み合わせて免疫刺激に使用した場合に大きく減少した(図3b)。
【0079】
INH2BPによるiNOSプロモーター誘導の選択的抑制
INH2BPによるiNOSの調節をさらに試験するために、我々は、ネズミマクロファージiNOSプロモーター - ルシフェラーゼ構築物を用いる一過性分析を行った。以前のデータ(Lowensteinら, 1993,“Macrophase nitric oxide synthase gene: two upstream regions mediate induction by interferon gamma and lipopolysaccharide”Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:9730-9734)と一致して、我々は、LPSによるルシフェラーゼ活性の約10倍〜12倍の誘導によって証明されるように、LPSが介在するネズミマクロファージiNOSの転写調節に関係する重要な役割を見い出した。完全長のプロモーター構築物(約1592bp)でトランスフェクトした細胞を、INH2BPで同時処置すると、LPSが介在するルシフェラーゼ活性が完全に阻害された(図4)。しかし、約367bpの欠失構築物でトランスフェクトした細胞を、同じく同時処置すると、LPSが介在するルシフェラーゼ活性に対する有意な影響はなかった(図4)。
【0080】
INH2BPのインビボ抗炎症効果
INH2BPの前処置は、プラズマ亜硝酸塩/硝酸塩のLPS誘導性の増加、および意識のあるラットにおける肺iNOS活性の増加を減少させた(図5)。NO産生に対するINH2BPの阻害効果は、薬物をLPS刺激の数時間後に細胞または動物に投与した場合には減少した(図5)。形質転換した細胞系と同様、100mM INH2BPによる処置は、インビトロでLPS(10mg/mL)により刺激された初代細胞(ラットから得た腹腔マクロファージ)における亜硝酸塩産生を有意に減少させた(56±7%、p<0.01)(n=4)。
【0081】
インビトロでの結果(図1c)と同様に、INH2BPは、マウスにおけるプラズマTNFレベルのLPS誘導性の増加に対して有意な影響は及ぼさなかった(図6a)。INH2BPは、LPS誘導性のIL−6産生にも影響を及ぼさなかった(図6c)。しかし、INH2BPは、LPS誘導性のIL−10プラズマ応答の増大をもたらした(図6b)。
【0082】
INH2BPによるマウスの前処置は、LPSの致死用量投与時の生存率において、有意で用量依存的な改善をもたらした(図7)。
【0083】
INH2BP活性は、MAPキナーゼのLPS誘導性の活性化を破壊するが、NF−κBの活性化と核移行には変化を及ぼさない。
【0084】
iNOSの誘導および他の炎症メディエーターの産生に先立つ複数の細胞内過程が存在する。チロシンキナーゼの活性化は、炎症メディエーターにおける重要な因子であると認識されている(Levitzki, A, 1994,“Signal-transduction therapy. A novel approach to disease management,”Eur. J. Biochem. 226:1-13;Novogrodskyら, 1994,“Prevention of lipopolysaccharide-induced lethal toxicity by tyrosine kinase inhibitors,”Science 264 (Wash):1319-22;Marczinら, 1993,“Tyrosine kinase inhibotors surppress endotoxin- and IL-1-beta-induced NO synthesis in aortic smooth muscle cells,”Am. J. Physiol. 265:H1014-1018, mitogen-activated protein kinase (MAP kinase); Matsudaら, 1994,“Signaling pathways mediated by the mitogen-activated protein (MAP) kinase/MAP kinase cascade,”J. Leukocyte Biol. 56:548-53; L'Allemain, G., 1994,“Deciphering the MAP kinase pathway,”Progr. Growth Factor Res. 5:291-334;Cowleyら, 1994,“Activation of MAP kinase kinase is necessary and significant for PC12 differentiation and for transformation of NIH 3T3 cells,”Cells 77:841-52; and the NF-κB pathway; Baeuerleら, 1994,“Function and activation of NF-κB in the immune system,”Ann. Rev. Immunol. 12:141-79;Schreckら, 1992,“Nuclear factor kappa B: an oxidative stress-response transcription factor of eukaryotic cells (a review),”Free Radical Res. Comm. 17:221-37;Mullerら, 1993, “Nuclear factor kappa B, a mediator of lipopolysaccharide effects,”Immunobiol. 187:233-56)。したがって、我々は、炎症過程のINH2BPによる阻害作用におけるこれらの経路の関与の可能性を解明するために、LPS刺激に応答するMPAキナーゼおよびNF-κBの活性化にINH2BPが影響を及ぼすかどうかについて調べた。
【0085】
刺激していないRAW264.7マクロファージにおいて、かなりの基底MAPキナーゼ活性が存在していた。LPS処置(10mg/mL、24時間)は、ウェスタンブロット(示していない)によって示されるように、免疫反応性のMAPキナーゼ含量に影響を及ぼすことなく、MAPキナーゼ活性の約2.5倍の増加を誘導した(図8)。INH2BP(150mM) による3日間の細胞の前処理は、基底のMAPキナーゼ活性を約50%抑制し、MAPキナーゼのLPS誘導性の増加を破壊した(示していない)。基底のMAPキナーゼ活性は、MAPキナーゼキナーゼ阻害剤(Pangら, 1995,“inhibition of MAP kinase kinase blocks the differentiation of PC-12 cells induced by nerve growth factor,”J. Biol. Chem. 270:13585-8)、PD98059(100mM)によってわずかに抑制され、LPS誘導性のMAPキナーゼ活性化もまた阻害された(図8)。心筋細胞における最近のデータ(Singhら, 1996,“Regulation of cytoline-inducible nitric oxide synthesis in cardiac myocytes and microvascular endothelial cells,”J. Biol. Chem. 271:1111-1117)と一致して、LPS誘導性の亜硝酸塩産生もまたPD 98059によって抑制された(53%、100mM 、n=3)。
【0086】
単核細胞系の領域における最近の観察(Baeuerleら, 1994,“Function and activation of NF-κB in the immune system,”Ann. Rev. immunol. 12:141-79)と同様に、我々は、J774細胞およびRAW264.7細胞における基底(構成性)の核NF−κBを見い出した。LPS刺激は、NF−κBの核移行の増加をもたらし、INH2BPの阻害は、LPSに応答する核移行に影響しなかった(図9)。
【0087】
考察
ポリ(ADP−リボース)シンテターゼ(pADPRT)は、核内に豊富に存在する、タンパク質修飾およびADP重合化酵素である(Uedaら, 1985,“ADP-ribosylation,”Ann. Rev. Biochem. 54:73-100)。pADPRTの生理学的機能は、多くの議論の対象になってきた。pADPRTがDNA修復酵素であるという最初の提案とは対照的に、現在では、pADPRTはDNA修復には直接関与しておらず(Lindahlら, 1995,“Post-translational modification of poly(ADP-ribose)polymerase induced by DNA strand breaks,”Trends Biochem. Sci. 20:405-411)、pADPRT遺伝子を除去したトランジェニックマウス由来の細胞が正常なDNA修復特性を有することが明らかになっている(Bukiら, 1995,“Identification of domains of poly(ADP-ribose)polymerase for protein binding and self association”J. Biol. Chem. 270:3370-3377)。生理学的条件下で、pADPRTは数多くの細胞タンパク質やDNA部位に結合することができ、多面発現的な細胞調節機能を発揮し得る(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzyme pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endotherial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzpyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252;Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377; Bukiら, 1995, “Identification of domains of poly(ADP-ribose)polymerase for protein binding and self association,”J. Biol. Chem. 270:3370-3377)。pADPRT活性化はまた、特に放射線による傷害およびオキシダントストレスの後、細胞死を誘導するメカニズムとしてはたらくと提唱されてきた(Cochrane, 1991, “Mechanisms of oxidant injury of cells,”Molec. Aspects Med. 12:137-147; Berger, 1991, “Oxidant-induced cytotoxicity: a challenge for metabolic modulation,”Am. J. Respir. Cell. Biol. Biol. 4:1-3)。pADPRTの重要な生理学的機能のうちの1つは、酵素の誘導、遺伝子発現および細胞分化の調節であり得る(Bauerら, 1995, “Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252;Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377;Minagaら, 1978,“Induction of cardiac L-ornithine decarboxylase by nicotinamide and its regulation by putrescine,” Eur. J. Biochem. 91:577-85;Griffinら, 1984,“The in vivo effect of benzamide and phenobarbital on liver enzymes:poly(ADP-ribose)polymerase, cytochrome P-450, styrene oxide hydrolase, cholesterol oxide hydrolase, cholesterol oxide hydrolase, glutathione S-transferase and UDP-glucuronyl transferase,”Biochem. Biophys. Res. Comm. 122:770-5)。INH2BPによるアルカリホスファターゼの誘導(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252)は、ある種のリン酸化依存性酵素、たとえばMAPキナーゼ、トポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIの不活化をもたらすようである。Ha-rasでトランスフェクトされたウシ内皮細胞においてINH2BPは発癌性を排除し、細胞増殖を抑制し、トポイソメラーゼI、トポイゾメラーゼII、およびMAPキナーゼ活性を増加させ、DNA-メチル-トランスフェラーゼおよびタンパク質キナーゼCを下方調節し、ODCは、Rbタンパク質の低リン酸化(hypophosphorylation)を増大させ、ras遺伝子の発現を癌遺伝子の損失なしに阻害する(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252; Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377)。
INH2BPの最近記載された抗癌作用(Bauerら, 1995,“Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP),”Int. J. Oncol. 8:239-252; Bauerら, 1995,“Reversal of malignant phenotype by 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone, a non-covalently binding ligand of poly(ADP-ribose)polymerase,”Biochimie 77:347-377)、および特にNO産生に関係する慢性炎症と癌との関連(緒言を参照)に基づいて、ここで我々は、INH2BPがLPS誘導性の炎症応答をインビトロおよびインビボで調節するかどうかを観察した。我々は、試験した経路とメディエーターのいくつか(MAPキナーゼ、プロスタグランジン、NO)が、INH2BPによって抑制されたが、他のメディエーター(TNF、IL−6、NFκB)は影響されなかったか、あるいは増加した(IL−10)ことを見い出した。概して、本発明のデータは、INH2BPなどのpADPRT阻害化合物は抗炎症作用を発揮し、これらの作用の組み合わせが、このpADPRTの阻害剤で前処理された動物または哺乳類の生存率の改善の基礎となり得ることを示している。
【実施例2】
【0088】
INH2BPはiNOSのLPS誘導性誘導を抑制する
背景技術では、種々の細胞において、前炎症性刺激に応答して、誘導可能な一酸化窒素(NO)シンターゼのイソ体(iNOS)を発現させている。iNOSによるNOの過剰産生は、ショックおよび炎症において重要な役割を演じ[Nathanの(1992)“哺乳類細胞の分泌産物としてのNO”、FASEB J.,6:3051−3064;Vane, J. R.のThe Croonian Lecture“内皮:血液循環の指揮者”、Proc. Rov. Soc. Lond B、343:225−246;Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32]、ガン原性形質転換しやすくする[Bartschらの(1994)“ヒト癌病因学における内因的に形成されたN−ニトロソ化合物およびニトロソ化剤”、Pharmacogenetics、2:272−7;Liuらの(1992)“ウッドチャック肝炎ウイルス表面抗原は肝細胞においてNO合成を誘導する”、Carcinogenesis、1515:2875−7;Ohshimaらの(1994)“ガンの危険因子としての慢性感染および炎症プロセス:ガン原性における一酸化窒素の可能な役割”、Mutation Res.、305:253−64]。マウスiNOS遺伝子のプロモーター領域がクローニングされており、LPSおよびIFNに応答する誘導能力の原因となる別の領域が同定されている。iNOSのLPS媒介性誘導は、NF−kBの可動化および核トランスロケーションに関与するように思われる。iNOSの誘導は、チロシンキナーゼの薬理学的インヒビターおよびNF−kB活性化によっても阻害される[Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32]。
【0089】
iNOS発現におけるINH2BPの阻害効果は、亜硝酸塩の産生の阻害、iNOSmRNAの発現およびiNOSタンパク質の発現によって示される。INH2BPは、iNOS誘導のために刺激後回数を増やしながら適用される場合に、徐々にその効果を失うので、調節はiNOS産生の初期段階で起こる。INH2BPによるiNOS誘導の調節は、インビトロおよび動物の両方において起こる。さらに、我々のデータは、LPS誘導性シクロオキシゲナーゼ代謝物の産生が、iNOSの誘導と同様に、INH2BPによって調節されることを示している。前炎症性サイトカインによるシクロオキシゲナーゼ代謝物の産生は、新規mRNAおよびタンパク質合成およびiNOS誘導のプロセスと類似したプロセスによるCOX−2の発現によるものである[Vaneらの(1995)“抗炎症性薬物の作用のモードへの新規洞察”、Inflamm. Res.、44:1−10]。しかし、LPSによるTNFの誘導は、J774細胞内のこの作用剤によって影響を受けないので、炎症メディエーターのLPS誘導性発現の阻害は非特異的応答ではない。
【0090】
興味深いことに、iNOSにおけるINH2BPの阻害効果は、LPSをINFと組み合わせて免疫刺激に用いた場合、大きく減少した。この効果は、インターフェロン調節因子といったようなIFN誘導性転写因子が、上記作用剤によるiNOS誘導の阻害をバイパスするという事実によるものである[Martinらの(1994)“一酸化炭素シンターゼの誘導におけるインターフェロン調節因子1の役割”、J. Exp. Med.、180:977−84]。
【0091】
これまでのインビトロの研究において、インビトロにおいてiNOSの誘導がマクロファージ内の薬理学的インヒビターpADPRTによって調節されることが示唆されている[Hauschildtらの(1992)“腫瘍壊死α因子によるL929細胞内における一酸化窒素シンターゼの誘導は、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼのインヒビターによって防止される”、Biochem. J.、288:255−260;Pellat-Seceunykらの(1994)“ニコチンアミドは活性化マクロファージ内の一酸化窒素シンターゼmRNA誘導を阻害する”、Biochem. J.、297:53−58]。しかし、これらの研究では、pADPRTインヒビターである30のアミノベンズアミドとニコチンアミドは、高濃度(10−30mM)で用いられて総タンパク質とRNA合成を阻害し、さらにフリーラジカルスカベンジングといったような薬理作用ももっていた[“腫瘍壊死α因子によるL929細胞内における一酸化窒素シンターゼの誘導は、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼのインヒビターによって防止される”、Biochem. J.、288:255−260]。INH2BPを用いる本発明の実験は、iNOSmRNA転写プロセスにおけるpADPRTの多面作用的関わりをさらに示唆するものである。INH2BPによるiNOSプロモーターの調節を研究するために、マウスマクロファージiNOSプロモータールシフェラーゼ構築物を用いる一次的感染アッセイを行った。欠失構築物のこれらのデータは、INH2BPが、1592bpと367bpの間のマウスiNOSプロモーター領域に関与する転写イベントを調節することを示唆する。ヒストンおよびヌクレアーゼのADPリボシル化は、緩んだクロマチン構造の維持に関与している[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252;Bauerらの(1995)“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンド、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”、Biochemie、77:347−377;Uedaらの(1985)“ADP−リボシル化”、Ann. Rev. Biochem.、54:73−100]。Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252;Bauerらの(1995)“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンド、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”、Biochemie、77:347−377といったような先の実験データに基づいて、これらの実験系において、INH2BPなどのpADPRT阻害化合物による前処理によって、pADPRTおよびヒストンの自己ポリ−ADP−リボシル化が阻害されることが示唆されるのは合理的である。このような作用がリラックス型染色質から凝縮染色質への転換の引き金となることが知られており、ヌクレアーゼおよび他のDNA構造調節酵素のアップレギュレーションを介して、プロモーター機能に影響を及ぼす[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252;Bauerらの(1995)“ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼの非共有結合リガンド、5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロンによる悪性表現型の逆転”、Biochemie、77:347−377]。
【実施例3】
【0092】
MAPキナーゼにおけるINH2BPの阻害の影響およびNF−kBの活性化
これらの結果から、INH2BP処理がMAPキナーゼのLPS誘導性活性化を阻害することが実証されている。これらのデータは形質転換された内皮細胞に関する発見と類似している[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252]。MAPキナーゼ活性化の阻害は、INH2BPによる多面細胞応答トリガーによって起こると考え得る。MAPキナーゼは、LPSまたは種々の前炎症性サイトカイン(TNF−α、インターロイキン−1、神経成長因子)で処理された種々の細胞型内で活性化されることがわかっている[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Matsudaら(1994)の“マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼ/MAPキナーゼカスケードによって媒介されたシグナル生成経路”、J. Leukocyte Biol.、56:548−53;Cowleyらの(1994)“PC12分化およびNIH3T3細胞の形質転換には、MAPキナーゼの活性化が必要および十分条件である”、Cells、77:841−52;Pangらの(1995)“MAPキナーゼキナーゼの阻害は、神経成長因子によって誘導されるPC−12細胞の分化を遮断する”、J. Biol. Chem.、270:13585−8;Willisらの(1996)“培養された単球およびアストログリア中の細菌性リポ多糖によるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路の分化誘導”Biochem. J.、313:519−524;Saklatvalaらの(1993)“インターロイキン1および腫瘍壊死因子αは、培養細胞中で、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼを活性化する”、FEBS Lett.、334:189−92]。種々の細胞外シグナルは、異なるMAPキナーゼキナーゼ−キナーゼを介してMAPキナーゼキナーゼ/MAPキナーゼカスケードに集まり、細胞応答の欠陥スペクトルを引き出す[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Ferrell, JEの(1996)“スイッチを入れる:タンパク質キナーゼカスケードはどのように類別された入力をスイッチ様出力に変換しうるか”、TIBS、21:460−466]。MAPキナーゼまたはMAPキナーゼキナーゼの封鎖は、多数の細胞内経路を変更し、細胞分化および増殖を阻害する[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Matsudaら(1994)の“マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼ/MAPキナーゼカスケードによって媒介されたシグナル生成経路”、J. Leukocyte Biol.、56:548−53;Cowleyらの(1994)“PC12分化およびNIH3T3細胞の形質転換には、MAPキナーゼの活性化が必要および十分条件である”、Cells、77:841−52;Pangらの(1995)“MAPキナーゼキナーゼの阻害は、神経成長因子によって誘導されるPC−12細胞の分化を遮断する”、J. Biol. Chem.、270:13585−8;Willisらの(1996)“培養された単球およびアストログリア中の細菌性リポ多糖によるマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路の分化誘導”Biochem. J.、313:519−524;Saklatvalaらの(1993)“インターロイキン1および腫瘍壊死因子αは、培養細胞中で、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼを活性化する”、FEBS Lett.、334:189−92]。近年、PD98059によるMAPキナーゼキナーゼの阻害が、培養内皮細胞および心臓単球におけるiNOSmRNAの発現を抑制することが明らかにされている[Singhらの(1996)“心臓単球および微小血管内皮細胞における細胞系誘導一酸化炭素の調節”、J. Biol. Chem.、271:1111−1117]。この発見は、PD98059が、RAWマクロファージにおいて、LPSによる亜硝酸塩の産生を目覚しく抑制するという我々の観察と一致している。
【0093】
NF−kBの活性化は炎症応答における主要経路であり、INFではなくてLPSによるiNOSの誘導に関連しているので[Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32;Martinらの(1994)“一酸化炭素シンターゼの誘導におけるインターフェロン調節因子1の役割”、J. Exp. Med.、180:977−84]、我々は、NF−kBにおけるINH2BPの潜在的効果を調査しようとした。我々が得た結果から、INH2BPが、NF−kBの活性化の核トランスロケーション、もしくはINH2BPによるNF−kB媒介細胞内イベントの調節を変更せず、もしあったとしても、多くは、NF−kBの核トランスロケーションから遠い細胞イベントにおいて起こることが実証される。
【実施例4】
【0094】
病態生理学的および治療的関連;INH2BPは複数のレベルで炎症プロセスを調節する
前炎症性遺伝子iNOSおよびCOX−2の発現のpADPRTインヒビターによる抑制およびそれに続くNOおよびプロスタグランジンの形成の減少は、種々の形態の炎症において有益である[Nathanの(1992)“哺乳類細胞の分泌産物としてのNO”、FASEB J.,6:3051−3064;Vane, J. R.のThe Croonian Lecture“内皮:血液循環の指揮者”、Proc. Rov. Soc. Lond B、343:225−246;Szabo, C.の(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32;Vaneらの(1995)“抗炎症剤の作用のモードへの新規洞察”、Inflamm. Res.、44:1−10]。さらに、IL−10の放出の増加は、さらなる抗炎症作用をもたらす[Lilesらの(1995)“論説:炎症および宿主免疫応答に関連するサイトカインの命名法および生物学的重要性”、J. Infect Dis.、172:1573−80;Giroirらの(1993)“敗血性ショックのメディエーター:内因性炎症カスケードの妨害のための新規アプローチ”、Critical Car. Med.、21:780−9;Szaboらの(1997)“イソプロテレナールは腫瘍壊死因子、インターロイキン10、インターロイキン6および一酸化窒素の産生を調節し、内毒血症における血管の反応減退の進行を防止する”、Immunology、90:95−100]。このような効果は、INH2BP前処理などのpADPRT阻害化合物による改良および致死量の内毒素を投与したマウスの生存率に、有意に寄与するということが考えられる。しかし、INH2BPが、種々の炎症メディエーターのLPS誘導性発現において効果を発揮する正確なメカニズムの概要を得るにはさらに詳細な研究が必要である。一方では、pADPRT活性またはpADPRTタンパク質の結合は、炎症メディエーターの産生および/または炎症プロセスの化合物をコードする遺伝子の発現の調節に関連していると考えられる。他方では、INH2BPによるMAPキナーゼ活性の非直接的ダウンレギュレーション[Bauerらの(1995)“成長関連酵素反応の修飾および5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)処理によるras形質転換ウシ内皮細胞系の腫瘍原性の明らかな減少”、Int. J. Oncol.、8:239−252]もまた、他の実験によって予測されたように、観察された効果に寄与することが考えられる[Kyriakisらの(1996)“警鐘を鳴らす:ストレスおよび炎症によって活性化されたタンパク質キナーゼカスケード”、J. Biol. Chem.、271:24313−24316;Ferrell, JEの(1996)“スイッチを入れる:タンパク質キナーゼカスケードはどのように類別された入力をスイッチ様出力に変換しうるか”、TIBS、21:460−466]。本発明は、種々の炎症性疾患におけるINH2BPといったようなpADPRT阻害化合物の治療能力を実証する。
【実施例5】
【0095】
一酸化窒素(NO)の毒性効果のいくつかは、NOとスーパーオキシドの急速反応によって形成される反応性酸化物であるペルオキシ亜硝酸の産生に関連している[Crowらの(1995)“一酸化窒素媒介性毒性におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Current Top Microbiol. Immunol.、196:57−73;Pryorらの(1995)“ペルオキシ亜硝酸の化学:一酸化窒素とスーパーオキシドの反応からの生成物”、Am. J. Physiol.、L699−L772]。ペルオキシ亜硝酸の形成は、内毒素によって引き起こされた全身性炎症などの種々の炎症状況において確認されている[Szaboらの(1995)“循環性ショックの種々の形態における一酸化窒素の産生の変更”、New Horizons、3:3−32;関節炎;Kaurらの“慢性炎症における一酸化窒素媒介性酸化的ダメージの証拠。リューマチ患者由来の血清および関節液中のニトロチロシン”、FEBS Lett.、1359:9−12;およびカラギーナン誘発性;*Salveminiらの(1996)足(paw)浮腫]。実のところ、NOシンターゼ(NOS)インヒビターおよびスーパーオキシドジスムターゼ類似体を用いた薬理学的実験から、炎症プロセスの進行においてペルオキシ亜硝酸が重要な病原性の役割を演じることが結論づけられた[Stabo C.の(1996)“ショック、炎症および虚血再灌流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Shock、6:79−88;*Salveminら(1996);*Zingarelliら(1977)]。さらに、関節炎の治療に現在使用されているいくつかの作用剤は、実のところ、ペルオキシ亜硝酸のスカベンジャーであることが実証されている[Whitemanらの(1996)“抗炎症剤および抗生物質テトラサイクリンによる、ペルオキシ亜硝酸依存性チロシンのニトロ化およびα1−アンチプロテイナーゼの不活性化”、Annals. of the Rheumatic Diseases、55:383−7]。NO関連細胞毒性の重要な部分が、ペルオキシ亜硝酸の形成によるという現実は、ペルオキシ亜硝酸の形成および作用に基づいた新規な治療的アプローチの発達を必要とするようになってきている。
【0096】
ペルオキシ亜硝酸が引き金となる細胞内経路のひとつは、DNA一本鎖切断およびポリ(ADP−リボース)シンセターゼ(PARS)の活性化に関連がある[Stabo C.の(1996)“ショック、炎症および虚血再灌流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Shock、6:79−88;*Szabo(1996b)]。PARSの顕著な活性化によって、その基質、NAD+の細胞内濃度が急速に激減され、糖質分解、電子輸送および、それにともなうATP形成の速度が遅くなり、最終的に細胞機能不全になる[*Berger(1991);*Cochrane(1991)]。したがって、PARSのインヒビターは、これらの条件下で細胞損傷に対する保護作用を示す。“PARS自殺仮説”として知られるこのメカニズムは、これまでに、H2O2誘導オキシダントダメージおよび放射線損傷との関係において特徴付けられており[*Berger(1991);*Cochrane(1991)]、最近、内毒素ショック、発作、虚血−再灌流損傷および糖尿病におけるNO−およびペルオキシ亜硝酸関連性細胞損傷に関係が有ることが明らかにされている[Stabo C.の(1996)“ショック、炎症および虚血再灌流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸の役割”、Shock、6:79−88;*Zhangら(1994);*Hellerら(1995)]。
【0097】
最近、Krogerらによって、関節炎におけるPARSの潜在的役割が提案されている。ペルオキソクロム酸カリウム誘導モデルにおいて、ニコチンアミド処理によって平均関節炎スコアが25〜35%減少した[*Mieselら(1996)]。しかし、フリーラジカルのスカベンジング活性とニコチンアミドのPARS阻害効果の間に明確な区別を設けることができなかったので、その研究からは、阻害のメカニズムは不明確なままであった[*Mieselら(1995)]。新規の、強力なPARS活性インヒビターである[*Bauerら(1995a);*Bauerら(1995b)]5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)の助けを借りる本発明の実験において、本発明者らは、カラギーナン誘発性足浮腫およびコラーゲン誘発性関節炎の過程におけるPARSの薬理学的阻害効果を研究した。我々の実験の結果は、PARSを阻害することが炎症に抗う可能性のひとつであるという考察を支持するものである。
【実施例6】
【0098】
カラギーナン誘発性足浮腫の誘発および評価
雄性ウィスターラット(250〜300g、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ、ウィルミントン、MA)を用いてこの実験を行った。動物の右の後ろ足に1%カラギーナンを含む食塩水0.1mlを足底下注射を行った。INH2BP処置動物またはビヒクル処置動物のいずれかに、この起炎剤を与えた。カラギーナン注射を行う前に、動物をINH2BP(0.5g/kg p.o.)で24時間および2時間処置した。先行文献の記載にしたがって体積測定機にて足の体積を迅速に測定した[*Sautebinら(1995)]。以後、60分間隔で同じ足の体積を読み取り、開始時の読み取りと比較した。これらの実験には、ビヒクル処置(n=6)およびINH2BP処置(n=6)動物を用いた。
【実施例7】
【0099】
コラーゲン誘発性関節炎の誘発と評価
雄性DBA/1Jマウス(9週齢、ジャクソン・ラボラトリー、バー・ハーバー、ME)を用いて本実験を行った。ニワトリII型コラーゲン(CII)を0.01Mの酢酸に2mg/mlの濃度となるように4℃にて一夜攪拌しながら溶解した。溶解したCIIは使用するまで−70℃にて冷凍した。濃度2mg/mlの結核菌H37raを加えることにより、完全フロイントアジュバント(CFA)を調製した。注射前に、CIIを同量のCFAで乳化した。コラーゲン誘発性関節炎を先行文献の記載に従って誘発した[Hugesらの(1994)“非マイトジェン性抗CD3モノクローナル抗体を用いることによる、自己免疫の実験モデルにおけるヘルパーT細胞低応答性の誘発”、J. Immunol.、153:3319−3325]。第1日に、マウスの尻尾のつけ根に100mlのCIIを皮内注射した。第21日に、第2回目のCII/CFAの注射を行った。第25日から、ビヒクル(n=10)またはINH2BP(n=60(0.5g/kg p.o.))のいずれかで24時間毎に動物を処置した。肉眼で見た0〜4の得点システム[1−膨潤および/または足もしくは一本の指の赤み;2−2つの関節が関節炎;3−2つ以上の関節が関節炎;4−足および指全体の重篤な関節炎]でマウスの関節炎を毎日評価した。個々の足についての4個の得点を加算することによって、各マウスについての関節炎指数を算出した。実験の最終日(第35日)に、動物を麻酔下で屠殺し、足(PAW)と膝を切除して、組織学的審査用に固定した。組織学的審査は処置レジメを知らされていない研究者によって行った。
【0100】
データ分析および発表
カラギーナン誘発性足浮腫に関する実験については、処置および非処置動物の足の体積を、不対スチューデントテストにて比較した。関節炎実験については、マン−ホイットニーUテスト(2テール、独立的)を用いて関節炎指数における統計的差異を試験した。測定の目盛りが序数なので、この非パラメーター的統計量を用いては、平均よりもむしろメジアンを比較した。分散値は、代表的には、非標準的分散であった[Hugesらの(1994)“非マイトジェン性抗CD3モノクローナル抗体を用いることによる、自己免疫の実験モデルにおけるヘルパーT細胞低応答性の誘発”、J. Immunol.、153:3319−3325]。
【0101】
図10の値は、n個の観察の平均±標準誤差を示す(ここで、nはラットの数である。各グループ6匹の動物。)。図11の値は、発生率(%)を示し、図12の値は、メジアンを示す。0.05以下のp値を統計的に有意であるとみなした(I'<0.05;**p<0.02)。
【0102】
物質
5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH2BP)を以前に記載の通り製造した(*Bauerらによる1995a; * Bauerらによる1995b)。ニワトリ・コラーゲンII型はエラスチン・プロダクト社(Elastin Products Company, Inc.、オーエンスビル、MO)製である。マイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Ra(Mycobacterium tuberculosisH37Ra)はディフコ(Difco、デトロイト、MI)製である。他の化学品は全てシグマ社(Sigma Chemical Co.社、セントルイス、MO)製である。ラットの足へカラギーナンを足底下注射することにより足の大きさが時間に依存して増加し、3時間時に最大応答を示した(図10)。本カラギーナンによって誘発される足の浮腫は、INH2BPを用いて処理することで有意に減少した(図10)。
【0103】
マウスにおけるコラーゲンによって誘発した関節炎のモデルの場合、最初のコラーゲンによる免疫感作後の26〜35日間、関節炎発生率の増加及び関節炎スコアの増加で証明される通り(図11〜12)、動物は徐々に関節炎を発生した。INH2BPを用いて処置することにより、33日目まで関節炎の発生率は減少し、また実験期間全般にわたって該疾患の重度が軽減された。30日目まで、関節炎スコアは10まで増加し、一方INH2BPで処理した動物における中間関節炎スコアはおよそ5を維持した(図12)。35日目まで、賦形薬で処理した全ての動物およびINH2BPで処理したほとんどの動物がある程度の関節炎を有していた(図11)。しかしながら、35日目でさえ中間関節炎スコアはINH2BP処理によって有意に減少した(図12)。
【0104】
35日目では、賦形薬で処理した関節炎の動物における足を組織学的評価したところ、より大きな足首の関節および末端の指への(好中球、マクロファージおよびリンパ球)浸潤が混ざった塊を伴った重度の化膿性関節炎のサインを示した。加えて、滑膜の激しいまたは穏やかな壊死、過形成およびか痂形成が、繊維症を伴った近接筋肉組織への炎症の拡大および粘性産生の増加と併せて見られた。該INH2BP動物において、炎症の程度は有意に減少した。それにもかかわらず、これらの動物において、いくつかのより大きな関節への穏やかな主に好中球の浸潤を伴い、また滑膜の壊死および過形成を緩和するのに適度な大きさの有意な程度の炎症がなお存在した。足における該発見と同様に、ひざにおいても重度の化膿性関節炎のサインが見られたが、これはINH2BPを用いた処置によって軽減された(図示せず)。
【0105】
議論
ペルオキシ亜硝酸塩、オキシラジカルおよび誘導可能なシクロオキシゲナーゼの産物はいずれも独立して、例えば関節炎などの様々な形態の炎症の病原論において重要な因子であると提案されたことはなかった。(以下の文献を参照:序論およびまた、Brahnの報告(1991)、「リウマチ関節炎の動物モデル。病因への糸口と処置(Animal models of rheumatoid arthritis. Clues to etiology and treatment)」Clin. Orthop. Rel. Res. 265: 42-53; Kaurらの報告(1994)、「慢性炎症における一酸化窒素が媒介した酸化的障害の証拠。リウマチ患者からの血清および滑膜液中のニトロチロシン(Evidence for nitric oxide-mediated oxidative damage in chronic inflammation. Nitrotyrosine in serum and synovial fluid from rheumatoid patients)」FEBS Lett. 1359: 9-12; Oyanagui Yらの報告(1994)、「一酸化窒素およびスーパーオキシドラジカルはラットにおける関節炎アジュバントの初期および周囲の両方において含まれる(Nitric oxide and superoxide radical are involved in both initiation and envelopment of adjuvant arthritis in rats)」Life Sci. 54. PL 285-9; Mieselらの報告(1994)、「マウスにおける関節炎のインビボ抑制およびヒト血球全般における酸素ラジカルの食細胞産生の半ビボモジュレーションにおけるアロプリノールの影響(Effects on allupurinol on in vivo suppression of arthritis in mice and ex vivo modulation of phagocytic production of oxygen radicals in whole human blood)」、Inflammation 6: 597-612; Whitemanらの報告(1996)、「ペルオキシ亜硝酸塩に対する保護はいくつかの抗炎症薬および抗生物質テトラサイクリンによるチロシンのニトロ化反応およびアルファ−1−抗タンパク分解酵素の失活に依存する(Protection against peroxynitrite dependent tyrosine nitration and alpha 1-antiproteinase inactivation by some anti-inflammatory drugs and by the antibiotic tetracycline)」Annals. of the Rheumatic Diseases 55: 383-7; Andersonらの報告(1996)、「シクロオキシゲナーゼ(COX)−2を選択的に阻害することにより、ラットアジュバント関節炎における炎症並びにCOX−2およびインターロイキン6の発現が後退する(Selective inhibition of cyclooxygenase(COX)−2 and interleukin 6 in rat adjuvant arthritis)」、J. Clin. Invest. 97: 2672-2679。本研究はカラギーナンが誘発する足浮種モデルにおいておよび該コラーゲンによって誘発される関節炎モデルにおいてINH2BPの抗炎症性効果を示すものであるが、本研究によりPARSは炎症過程の進行に関与し、およびPARSの薬理学的阻害は抗炎症能力を有するという点が支持される。
【0106】
INH2BPの作用の主要な様式は、DNA損傷によって特徴付けられる無益細胞内カスケード(the futile intracellular cascade)の分断に関連しているであろう。様々な細胞型の炎症性関節におけるPARS活性化、ADPリボシル化およびNAD+およびATP消耗。3−アミノベンズアミド、ニコチンアミドおよびINH2BPなどの様々なPARSのインヒビターを用いて本経路を阻害することにより、多くの細胞型を損傷から保護することが示されている;*Cochraneの報告(1991);Szaboらの報告(1996)、「ショック、炎症および虚血性再潅流損傷の病態生理学におけるペルオキシ亜硝酸塩の役割(The role of peroxynitrite in the pathophysiology of shock, inflammation and schemiareperfusion injury)」、Schock 6: 79-88; *Szaboの報告(1996b)。
【0107】
炎症性条件におけるNOの過剰生産はNOSの誘導性イソ型(iNOS)の抑制に起因する;Nathanの報告(1992)、「哺乳類細胞の分泌産物としての一酸化窒素(Nitric oxide as a secretory product of mammalian cells)」、FASEB J. 6: 3051-3064; Szaboの報告(1995)、「様々な循環ショックの形態における一酸化窒素の産生の改変(Alterations in nitric oxide production in various forms of circulatory shock)」、New Horizons 3: 2-32; Southanらの報告(1996)、「アミノアルキルグアニジンのメルカプトアルキルグアニジンへの同時転移−誘導性イソ型に対して選択性を有する新規なクラスの一酸化窒素シンターゼインヒビター(Spontaneous rearrangement of aminoalkylguanidines into mercaptoalkylguadidines - a novel class of nitric oxide synthase inhibitors with selectivity toward the inducible isoform)」Br. J. Pharmacol. 117: 619-632。いくつかの証拠の道筋は、関節炎の病原論におけるiNOSおよびNOの過剰産生の役割を提案している(以下の総説を参照:Stenovic-Racicらの報告(1993)、「一酸化窒素と関節炎(Nitric oxide and arthritis)」、Anthr. Rhemat. 36: 1036-1044; *Evansらの報告(1995)。第一に、iNOSの発現および大量のNOの産生が実験動物およびヒトからの軟骨細胞において見られた(Haeselmannらの報告(1994)、“アルギネート培地中でのヒト関節細胞による一酸化窒素およびプロテオグリカンの合成(Nitric oxide and proteoglycan synthesis by human articular chondrocytes in alginate culture)」、FEBS Lett. 352:361- 364 ; Sakuraiらの報告(1995)、「炎症性関節炎における一酸化窒素の産生および誘導性一酸化窒素シンターゼの発現(Nitric oxide production and inducible nitric oxide synthase expression in inflammatory arthritis)」、J. Clin. Invest. 96: 2357-63; Grabowskiらの報告(1996)、「ヒトの関節から誘導された細胞における一酸化窒素の産生(Nitric oxide production in cells derived from the human joint)」、Br. J. Rheumatol. 35: 207-12; Murrellらの報告(1996)、「一酸化窒素:重要な関節のフリーラジカル(Nitric oxide: an important articular free radical)」、J. Bone Joint Sur.-Am. 78: 265-74。第二に、亜硝酸塩/硝酸塩(NOの分解生成物)の循環レベルにおける増加が関節炎を持つ患者において見られた; (Farrellらの報告(1992))、「滑膜液および血清試料中での亜硝酸塩の濃度の増加はリマチ疾患における一酸化窒素合成の増加を支持している(Increased concentrations of nitrite in synovial fluid and serum samples suggest increased nitric oxide synthesis in rheumatic diseases)」Ann. Rhem. Dis. 51: 1219-22; Stichtenothらの報告(1995)、「尿の硝酸塩の排出はリウマチ関節炎を持つ患者において増加しており、およびプレドニソロンによって減少する(Urinary nitrate excretion is increased in patients with rheumatoid arthritis and reduced by predisolone)」、Ann. Rhem. Dis. 54. 820-4。第3に、関節炎の発生はNOSの非イソ型−選択インヒビターによって減少すると示されてきた(*Ialentialらの報告(1993);McCartney-Francisらの報告(1993)、「一酸化窒素シンターゼのインヒビターによる関節炎の抑制(Suppression of arthritis by an inhibitor of nitric oxide synthase)」、J. Exp. Med. 178: 749-753;Weinbergらの報告(1994)、「自発性マウス自己免疫疾患の病原論、MRL−1pr/1prマウスでの一酸化窒素産生および一酸化窒素シンターゼ発現の増加、並びにNG−モノメチル−L−アルギニンの経口投与による自発性糸球体腎炎および関節炎の軽減における一酸化窒素の役割(The role of nitric acid in the pathogenesis of spontaneous murine autoimmune disease, increased nitric oxide production and nitric oxide synthase expression in MRL-1pr/1pr mice, and reduction of spontaneous glomerulonephritis and arthritis by orally administered NG-monomethyl-L-arginine)」、J. Exp. Med. 1979: 651-60; Stefanovic-Racicらの報告(1994)、「N−モノメチルアルギニン、一酸化窒素シンターゼ・インヒビターは、ラットにおけるアジュバント関節炎の発生を抑制する(N-monomethyl arginine, an inhibitor of nitric oxide synthase, suppresses the development of adjuvant arthritis in rats)」Arthr. Rheumat. 37: 1062-9;およびより最近では、iNOSに対する選択性を有するインヒビターによって(Connorらの報告(1995)、「誘導性一酸化窒素シンターゼの選択的阻害によるアジュバントによって誘発された関節炎の抑制(Suppression of adjuvant-induced arthritis by selective inhibition of inducible nitric oxide synthase)」、Eur. J. Phamacol. 273: 15-24。本観点において、免疫刺激の前にPARSインヒビター(INH2BPと同様に3−アミノベンズアミド、ノコチンアミドを含む)を用いた多数の細胞型の前処理はiNOSの代わりにmRNAの発現を抑制し、またNOの産生を減少させる(*Haushildtらの報告(1992)、*Pellat-Seceunykらの報告(1994); Zingarelliらの報告(1996)、“ペルオキシ亜硝酸塩が媒介したDNA鎖の切断はポリADPリボシルシンターゼを活性化し、およびバクテリア性リポポリサッカライドを用いて刺激したマクリオファージ中での細胞エネルギーの消耗を引き起こす(Peroxynitrite-mediated DNA strand breakage activates poly-ADP ribosyl synthetase and causes cellular energy depletion in macrophages stimulated with bacterial lipopolysaccharide)」J. Immunol. 156: 350-358; Szaboらの報告(1997)。これらの実験データから、未だ解明されていない機構によってPARSはまたiNOS発現過程を調節し、および本効果が様々な炎症の形態におけるPARS阻害の更なる有利な作用様式を表していると結論できる。しかしながら、上記の発見を解釈する際には注意を換気すべきである。例えば、上記に引用したインビボ研究において、PARSインヒビター3−アミノベンズアミドおよびニコチンアミドの極端な高濃度(10〜30mM)が、iNOS誘導の抑制を示すために必要となる。これらの試薬のこういった高濃度により、総タンパク質の阻害およびRNA合成および/またはフリーラジカル捕捉作用といった薬理学的作用がさらにもたらされ得る。*Haushildtらの報告(1992)、*Pellat-Seceunykらの報告(1994); Zingarelliらの報告(1996)、“ペルオキシ亜硝酸塩が媒介したDNA鎖の切断はポリADPリボシルシンターゼを活性化し、およびバクテリア性リポポリサッカライドを用いて刺激したマクリオファージ中での細胞エネルギーの消耗を引き起こす(Peroxynitrite-mediated DNA strand breakage activates poly-ADP ribosyl synthetase and causes cellular energy depletion in macrophages stimulated with bacterial lipopolysaccharide)」J. Immunol. 156: 350-358。一方、INH2BPはより低い非細胞毒素の濃度(100〜300mM)でさえも、iNOSの発現を効果的に抑制する。しかしながら、本試薬は細胞応答の二次的、多面モジュレーションを有するアルカリ性ホスファターゼの誘導物質であるので、INH2BPの場合においていくつかの様式の作用を考慮すべきである;*Bauerらの報告(1996)、*Szaboらの報告(1997))。PARS遺伝子の切除を伴う細胞または動物における実験においては、PARS自体の阻害がiNOS誘導の過程を抑制するかどうかといった問題に明確に取り組む必要がある。
【0108】
エールリッヒ(Ehrlich)およびその同僚達の最近の研究において、兎の滑膜の繊維芽細胞の培養において、サイトカインが誘発したコラゲナーゼの発現活性は3−アミノベンズアミドによって抑制される;*Ehrlichらの報告(1995)。薬理学的作用(それにもかかわらず、このものにより関節炎の過程の経過を抑制することが期待される)や、用いた特定のインヒビターの性質または現実にPARSの触媒活性の減少に関連するかどうかを決定することが現在では可能である。本観点において、薬理学的インヒビターを用いた研究に基づくと、PARSが例えば主要組織適合性複合体クラスII遺伝子(*Hiromatsuらの報告(1992);Taniguchiらの報告(1993))、ras c-myc(*Bauerらの報告(1996);*Naganoらの報告(1991))、DNAメチルトランスフェラーゼ(*Bauerらの報告(1996))およびプロテインキナーゼC(*Bauerらの報告(1996))などの様々な遺伝子の調節に関係している。
【0109】
併せて、本研究は局所的炎症性応答の発生の回復およびコラーゲンによって誘発された関節炎の進行のINH2BPによる阻害を示す。最近の10年間PARSの役割はDNAの修復の場合において提案されてきたが、最近の観察によりPARSに対する遺伝の切除がDNA修復を含まないことが示された:PAESノックアウト動物は正常であり、生存可能であるように思われる(*Wangらの報告(1995))。本観察により、PARSの薬理学的インヒビターの抗炎症性能力が強調される。PARS阻害(iNOS阻害に対するものとして)は、侵入する微生物がPARSを含有していないので、NOの重要な抗菌性効果を干渉していないように思われる。一方、PARS阻害は酸化剤で誘発される細胞毒性の一部を阻害することが期待されるだけではなく、他のフリーラジカルスカベンジャーまたは他の免疫抑制剤と併せて用いる場合により有効となることが期待される。本研究の結果は、PARS単独または他の抗炎症剤と組み合わせることで前途有望な新規な抗−炎症性アプローチを表している。
【0110】
上記の例中で見られるのと同様な様式で、式IIおよびIIIの化合物をグラム陰性およびグラム陽性感染の処置と同様に炎症または炎症性疾患を処置するのに使用する。
これまでに記載の明細書は当業者が本発明を実行するのに充分可能であることを考慮すべきである。実際、医薬処方の分野またはその関連分野において当業者にとって明白である、本発明を実行するための上記に記載の様式の様々な改良法は下記の請求の範囲の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のpADPRT抑制化合物は、炎症または炎症性疾患の処置において非常に有益な効果を有する為、工業的利用価値が高い。更に本発明のpADPRT抑制化合物は、グラム陰性およびグラム陽性の両方で誘発される内毒素症状の処置において非常に有益な効果を有する為、工業的利用価値が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療学的に有効な量のpADPRT抑制化合物またはその医薬的に許容し得る酸付加塩および医薬的に許容し得る担体を含有する、動物または哺乳動物における炎症または炎症性疾患を処置するための医薬組成物であって、
但し、該pADPRT抑制化合物は3−アミノベンズアミドではない、
該医薬組成物。
【請求項2】
pADPRT抑制化合物は、式:
【化1】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5およびR6は各々、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、またはフェノールからなる群から選ばれ、これらは場合によりアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロで置換され、そしてR1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1個だけはアミノである]
で示される化合物、および式:
【化2】
[式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は各々、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、またはフェノールからなる群から選ばれ、これらは場合によりアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロで置換され、そしてR1、R2、R3、R4およびR5のうちの1個だけはアミノ部分である]
で示される化合物、
からなる群から選ばれる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
該化合物は、6−アミノ−1,2−ベンゾピロン、5−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、7−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、および8−アミノ−1(2H)−イソキノリノンからなる群から選ばれる、請求項1または2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
治療学的に有効な量のpADPRT抑制化合物またはその医薬的に許容し得る酸付加塩および医薬的に許容し得る担体を含有する、動物または哺乳動物におけるグラム陰性およびグラム陽性の両方で誘発される内毒素症状を処置するための医薬組成物であって、
但し、該pADPRT抑制化合物は3−アミノベンズアミドではない、
該医薬組成物。
【請求項5】
該化合物は、構造式:
【化3】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5およびR6は互いに独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、(C3−C6)アルコキシ、(C1−C7)シクロアルキル、またはフェニルからなる群から選ばれ、
ここで、該6個のR1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの少なくとも3個は常に水素であり、そして該6個のR1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの少なくとも1個はアミノ部分である]
で示される化合物およびそれらの医薬的に許容し得る塩からなる群から選ばれる、
請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
該化合物は、構造式:
【化4】
で示される、請求項4または5のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項7】
R4はアミノである、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
ハロゲンはヨウ素である、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項1】
治療学的に有効な量のpADPRT抑制化合物またはその医薬的に許容し得る酸付加塩および医薬的に許容し得る担体を含有する、動物または哺乳動物における炎症または炎症性疾患を処置するための医薬組成物であって、
但し、該pADPRT抑制化合物は3−アミノベンズアミドではない、
該医薬組成物。
【請求項2】
pADPRT抑制化合物は、式:
【化1】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5およびR6は各々、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、またはフェノールからなる群から選ばれ、これらは場合によりアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロで置換され、そしてR1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの1個だけはアミノである]
で示される化合物、および式:
【化2】
[式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は各々、水素、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、またはフェノールからなる群から選ばれ、これらは場合によりアルキル、アルコキシ、ヒドロキシまたはハロで置換され、そしてR1、R2、R3、R4およびR5のうちの1個だけはアミノ部分である]
で示される化合物、
からなる群から選ばれる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
該化合物は、6−アミノ−1,2−ベンゾピロン、5−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、7−アミノ−1(2H)−イソキノリノン、および8−アミノ−1(2H)−イソキノリノンからなる群から選ばれる、請求項1または2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
治療学的に有効な量のpADPRT抑制化合物またはその医薬的に許容し得る酸付加塩および医薬的に許容し得る担体を含有する、動物または哺乳動物におけるグラム陰性およびグラム陽性の両方で誘発される内毒素症状を処置するための医薬組成物であって、
但し、該pADPRT抑制化合物は3−アミノベンズアミドではない、
該医薬組成物。
【請求項5】
該化合物は、構造式:
【化3】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5およびR6は互いに独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、(C3−C6)アルコキシ、(C1−C7)シクロアルキル、またはフェニルからなる群から選ばれ、
ここで、該6個のR1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの少なくとも3個は常に水素であり、そして該6個のR1、R2、R3、R4、R5およびR6のうちの少なくとも1個はアミノ部分である]
で示される化合物およびそれらの医薬的に許容し得る塩からなる群から選ばれる、
請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
該化合物は、構造式:
【化4】
で示される、請求項4または5のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項7】
R4はアミノである、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
ハロゲンはヨウ素である、請求項5記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−227681(P2009−227681A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119631(P2009−119631)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願平10−549608の分割
【原出願日】平成10年5月13日(1998.5.13)
【出願人】(509139117)オクテイマー・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】OCTAMER, INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願平10−549608の分割
【原出願日】平成10年5月13日(1998.5.13)
【出願人】(509139117)オクテイマー・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】OCTAMER, INC.
【Fターム(参考)】
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