説明

pHSP20様活性を有する非ペプチジル剤、およびその使用

本発明は、平滑筋細胞を調節するための組成物および方法を提供する。また本発明は、平滑筋を調節するための小分子候補治療剤の同定方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年2月23日に出願された米国仮出願第60/547,157号の利益を主張する。上記出願の全教示は、本明細書中に参照として援用される。
【0002】
(発明の背景)
血管痙攣/血管収縮および気管支痙攣/気管支収縮は、疾病(morbidity)および死の有意に予防可能な原因を表す。平滑筋(血管平滑筋(VSM)および気道平滑筋(ASM))は、低いエネルギーコストで長時間緊張を維持し得る。これは器官に至る血流、呼吸等の自律的および持続的調節に必要不可欠である。しかしながら血管痙攣/血管収縮に関連する疾患において、減少した弛緩させる能力を有する血管と結合する血管床に、血管の異常な収縮がある。これは血流を制限し、その結果酸素供給を制限する。心臓、腸間膜、胎盤、子宮および大脳の血管床を含む種々の血管床は、結果として生じる深刻な臨床的な関わり、例えば器官損傷、脳卒中、死または流産等によって影響を受け得る(Rajaniら, 1991, Postgrad. Medical Journal 67:78-80; GewertzおよびZarins, 1991, J. Vasc. Surg. 14:382-385)。気管支痙攣/気管支収縮に関連する疾患において、肺内の気道の異常な収縮があり、それが呼吸困難を導き得る。
【0003】
本発明の目的は、方法および組成物に、平滑筋の緊張の異常な調節に関連する臨床状態、特に、限定しないが血管痙攣/血管収縮および気管支痙攣/気管支収縮の処置効果を提供することである。
【0004】
(発明の概要)
本発明は、14-3-3タンパク質、例えば14-3-3γまたは14-3-3ηで媒介される1つ以上の生物学的活性を調節するための、非ペプチジル小分子(本明細書中では「薬剤」とも言う)を提供する。本発明の組成物は、14-3-3タンパク質によりリン酸化されたHSP20(本明細書中ではpHSP20)等のリン酸化HSPタンパク質の結合により媒介される細胞効果、および/または14-3-3タンパク質によるリン酸化コフィリン(本明細書中ではpコフィリン)の結合により媒介される生物学的効果もしくは細胞効果、および/または14-3-3タンパク質に関係なく平滑筋の弛緩を導くpHSP20の細胞効果を誘導するかまたは抑制するために使用され得る。本発明の組成物は、平滑筋の緊張を変化させるための方法の一部として使用され得る。ある態様において、本組成物は、場合によっては、平滑筋の内腔を有する管状組織構造の収縮または拡張を誘導するために使用され得る。
【0005】
一例として、本発明の方法および組成物は、血管緊張(血管収縮または血管弛緩を誘導する)を改変するための処置の一部として使用され得、これは14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質に結合する非ペプチジル小分子剤を含む。ある例において、これらの薬剤は、pHSP20等のリン酸化HSPタンパク質(pHSP)を含む複合体の形成を抑制し得るか、または安定性を低下させ得、それによりHSPのリン酸化という生物学的意義を妨げる。他の場合、該薬剤は14-3-3タンパク質に結合するpHSP20の効果を模倣し、HSPのリン酸化によって誘導される少なくともいくつかの同一の生物学的変化を引き起こす。
【0006】
本発明の方法および組成物はまた、例えば気管支収縮または気管支弛緩を誘導する気管支の緊張の変化を誘導するために使用され得る。上記のように、限定されないが14-3-3γまたは14-3-3ηを含む14-3-3タンパク質に結合する非ペプチジル小分子剤を使用することで,これは達成される。気管支弛緩はpHSP20結合の効果を模倣する薬剤で誘導され得る。
【0007】
本発明の別の局面において、pHSP20またはその模倣剤、例えば断片、誘導体(例えばPTD-HSP20ペプチド)もしくはその機能的変異体(好適なペプチドは、これらのカテゴリー、例えば誘導化され得る断片、の2種以上に分類され得る)は、気管支の緊張の変化、例えば気管支収縮または気管支弛緩を誘導するために使用され得る。これは典型的に、限定されないが14-3-3γまたは14-3-3ηを含む14-3-3タンパク質に結合し、および/またはpHSP20/14-3-3および/または14-3-3/pコフィリン複合体形成を調節するペプチドを使用して達成される。気管支弛緩はpHSP20結合の効果を模倣する薬剤で誘導され得る。
【0008】
ある態様において、ペプチジル剤または非ペプチジル剤は、リン酸化HSP20もしくはリン酸化コフィリンを含む複合体の形成および/または安定性を改変させるか、または細胞骨格ダイナミクスに結合するpHSP20の効果(例えば14-3-3γおよび/または14-3-3ηに結合するpHSP20によって引き起こされる効果)を模倣する。該薬剤が14-3-3と結合する場合、結合は1μM以下等の10μM以下、例えば100nMまたはさらに10nM以下のKdを有し得る。
【0009】
ある態様において、該薬剤は、少なくとも2つの要因によって、他の14-3-3タンパク質と比較して14-3-3γおよび/または14-3-3ηに選択的に結合する。ある好ましい態様において、該薬剤は、他の14-3-3タンパク質(例えば14-3-3γまたは14-3-3ηより少なくとも5倍未満のKdで、より好ましくは少なくとも10、50、100、またはさらに1000倍未満のKdで14-3-3γおよび/または14-3-3ηに結合する。特定の14-3-3に対する選択性はまた、または二者択一的に、薬剤の組織局在化送達または組織指向化送達によって提供され得る。例えば、本発明の好ましい薬剤は、ニューロン等の非平滑筋組織におけるアクチンまたは他の細胞骨格の構造に影響を与えない。
【0010】
ある態様において、非ペプチジル剤は2000amu未満の分子量を有し、さらにより好ましくは1500未満またはさらに1000amu未満である。好ましくは、薬剤は細胞透過性である。
【0011】
ある態様において、薬剤はそれ自体細胞透過性である。
【0012】
ある態様において、薬剤は経口的に活性である。
【0013】
ある態様において、薬剤は非ペプチジル有機分子である。
【0014】
ある態様において、非ペプチジル剤は血管拡張を誘導する。例えば薬剤は、コフィリンのアクチン脱重合活性を促進させ得る。ある場合において、薬剤は平滑筋(例えば血管)組織中の14-3-3γ等の14-3-3タンパク質およびコフィリンを含む複合体の形成または安定性をアンタゴナイズする。
【0015】
他の態様において、非ペプチジル剤は血管収縮を誘導する。例えば薬剤は、平滑筋(例えば血管)組織中の14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質およびコフィリンを含む複合体のHSP20抑制を「解除」する。あるいは薬剤は、コフィリンのアクチン脱重合活性を抑制する。
【0016】
さらに他の態様において、非ペプチジル剤は気管支拡張を誘導する。例えば薬剤は、気管支組織中のコフィリンのアクチン脱重合活性を促進し得る。ある場合において、薬剤は14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質およびコフィリンを含む複合体の形成または安定性をアンタゴナイズする。特定の態様において、薬剤は前もって投与される、後に投与されるおよび/または1種以上の抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、タンパク質、酵素、ホルモン、非ステロイド系抗炎症薬、サイトカインおよびステロイドと共に投与される。
【0017】
本発明の組成物はまた、免疫抑制剤、抗増殖薬、コルチコステロイド、アンジオスタティックステロイド(angiostatic steroid)、抗寄生虫薬、抗緑内障薬、抗生物質、RNAiおよびアンチセンス化合物、分化調節物質、抗ウイルス薬、抗癌薬、ならびに抗炎症薬等の1種以上の医薬剤を含み得る。
【0018】
本発明の別の局面は、上記したような本発明の組成物による標的血管の処置を含む、血管の拡張特性を改変する方法を提供する。
【0019】
本発明の別の局面は、上記したような本発明の組成物を投与することを含む、血管収縮の影響または制限された血流に苦しむ患者を処置する方法を提供し、ここで薬剤は血管拡張を高める。
【0020】
本発明の別の局面は、上記したような本組成物を投与することを含む、血管収縮応答もしくは血管収縮状態を処置するためにまたは予防するために血管拡張を誘導する方法を提供し、ここで薬剤は血管拡張を高める。任意に、血管収縮応答または血管収縮状態は、腎血管収縮障害(糸球体疾患および慢性腎疾患を含む);および心血管疾患(高血圧、心筋梗塞、および心筋虚血を含む)からなる群より選択される。ある場合において、血管収縮応答は、例えば喘息、アナフィラキシー反応、アレルギー反応、ショック、炎症、慢性関節リウマチ、痛風、乾癬、アレルギー性鼻炎、成人呼吸窮迫症候群、クローン病、エンドトキシンショック、外傷性ショック、出血性ショック(hemmorrhagic shock)、腸虚血性ショック、良性前立腺肥大、炎症性腸疾患、循環ショック、脳損傷、および全身性エリテマトーデスからなる群より選択される医学障害と関連があるロイコトリエンの産生の結果である。特定の態様において、血管収縮応答は、例えばシクロスポリンA(CSA)による薬物の誘導性である。
【0021】
本発明の別の局面は、上記したような組成物を被験体に投与することを含む、血管痙攣に苦しむ患者を処置する方法を提供し、ここで薬剤は血管拡張を高める。
【0022】
本発明の別の局面は、血管拡張を誘導するのに効果的な本組成物の量を哺乳類に投与することを含む、該哺乳類の循環系において血流を増大させる方法を提供する。
【0023】
本発明の別の局面は、本組成物を投与することを含む、勃起性機能不全を処置する方法を提供し、ここで薬剤は血管拡張を高める。
【0024】
本発明の別の局面は、本組成物を投与することを含む、血管拡張を誘導する方法を提供し、ここで薬剤は血管拡張を高める。
【0025】
本発明の別の局面は、本組成物を投与することを含む、血管拡張の影響に苦しむ患者の血管収縮を誘導する方法、または血管拡張を抑制する/妨げる方法を提供する。例えば、薬剤は収縮性アゴニストに対する耐性を低減するために使用される。ある場合において、薬剤は、血管拡張ショックで現れる高熱および/またはセプシスの処置の一部である。
【0026】
ある態様において、本発明の組成物は静脈的、経口的、経鼻的、口腔的、非経口的、吸入により、局所適用により、または経皮的に投与される。あるいは、薬剤は局所投与を介して投与される。例えば、組成物の局所投与は、縫合、血管移植、ステント、心臓弁、薬物ポンプ、薬物送達カテーテル、注入カテーテル、薬物送達ガイドワイヤまたは移植可能な医療用機器を介するものである。
【0027】
ある態様において、本発明の方法は、平滑筋細胞の異常な増殖または移動を特徴とする疾患を処置するために使用される。特定の態様において、本発明の方法は、リン酸化HSP20の増加したレベルを特徴とする疾患を処置するために使用される。別の特定の態様において、本発明の方法は、リン酸化HSP20の減少したレベルまたは14-3-3の増加したレベルを特徴とする疾患を処置するために使用される。
【0028】
ある態様において、本発明の方法は、血管形成術、血管ステント配置、動脈内膜切除、アセレクトミー、バイパス手術、血管移植、器官移植、人工移植の設置(prosthetic implant emplacement)(例えば心臓弁交換)、微小血管再構成、形成外科的弁構成(plastic surgical flap construction)、カテーテルの設置(catheter emplacement)からなる群より選択される手法を受けた、受けている、または受けるであろうという患者を処置するために使用される。
【0029】
ある態様において、本発明の方法は、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化、高血圧、アンギナ、虚血性疾患、内膜増殖、冠動脈攣縮、冠虚血、うっ血性心不全もしくは急性心筋梗塞に関連する肺水腫、血栓症、脳卒中、血小板粘着、血小板凝集、平滑筋細胞増殖、医療用機器の使用に関連する血管合併症、医療用機器の使用に関連する創傷、心筋梗塞、肺血栓塞栓症、大脳血栓塞栓症、血栓静脈炎、血小板減少症もしくは出血性障害、除脈、喘息(気管支痙攣)、妊娠中毒症、早期分娩、子癇前症/子癇、レーノー病、レーノー現象、溶血性尿毒症、非閉塞性腸管膜虚血、肛門裂傷、アカラシア、性的不能、偏頭痛、平滑筋痙攣に関連する虚血性筋障害、および血管症からなる群より選択される疾患を処置するために使用される。
【0030】
本発明の別の局面は、14-3-3タンパク質に結合し、リン酸化熱ショックタンパク質20(pHSP20)を含む複合体の形成および/もしくは安定性を改変するか、または14-3-3タンパク質に結合するpHSP20の効果を模倣する小有機非ペプチジル剤を含む呼吸製剤を提供し、薬剤は2000amu未満の分子量、および14-3-3-γへの結合に対して2.5nM以下等の10μM以下のKdを有する。
【0031】
本発明の別の局面は、ポリマー中に分散されるポリマーマトリックスおよび本組成物を含む持続的放出製剤を提供する。任意に、ポリマーマトリックスからの薬剤の放出時間は、少なくとも24時間である。特定の態様において、ポリマーは非生体内分解性である。非生体内分解性ポリマーの例として、ポリウレタン、ポリシリコーン、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの誘導体およびそれらのコポリマーが挙げられる。あるいは、ポリマーは生体内分解性である。生体内分解性ポリマーの例として、ポリアンヒドライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、ならびにそれらの誘導体およびそれらのコポリマーが挙げられる。ある場合において、系は体内に注入または埋め込まれるために適合する。
【0032】
本発明の別の局面は、(i)表面を有する基板;および(ii)表面に接着した被覆剤を含んでなる医療用機器を提供し、該被覆剤は、生理学的条件下で、薬剤がマトリックスから抽出されるのを可能とするようにポリマーマトリックス中に分散される本組成物を有するポリマーマトリックスを含む。例えば基板は、スクリュー、板、洗浄機器(washer)、縫合、人工アンカー(prosthesis anchor)、鋲(tack)、ステープル(staple)、導線、弁および膜から選択される外科用道具である。実例で説明するために、本発明の機器として、限定されないが、カテーテル、移植可能な導管投与口、血液貯蔵バッグ、血液回路(blood tubing)、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管移植、大動脈内バルーンポンプ、心臓弁、心臓血管縫合、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、体外機器、血液フィルター、血液透析ユニット、血液かん流ユニット、血漿瀉血ユニット、および血管内の配置に適合したフィルターが挙げられる。特定の態様において、機器は血管ステントである。任意に、機器は拡張可能なステントであり、該被覆剤は可撓性であるので、該拡張可能なステントの圧縮された状態および拡張された状態を提供する。
【0033】
本発明の別の局面は、患者の体内に移植するための医療用機器を含み、患者に移植する場合、該医療用機器は、期間にわたり被覆された表面が薬剤を放出するのを可能とする方法により、本組成物を含むポリマー製剤で被覆された1つ以上の表面を有する、被覆された機器の組み合わせを提供する。
【0034】
ある態様において、本発明は、ポリマー中に散在する生物学的に耐性のあるポリマーおよび本組成物を含む持続的放出系で被覆された管腔内の医療用機器を提供し、該機器は内表面および外表面を有し;該機器が内表面、外側表面、または双方の少なくとも一部に塗布される系を有する。
【0035】
本発明の別の局面は、インビボに設置された医療用機器の表面から薬物を送達するための被覆組成物を提供し、該組成物は、リン酸化熱ショックタンパク質20(pHSP20)および14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質を含む複合体の形成もしくは安定性を改変するか、または14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質に結合するpHSP20の効果を模倣する薬剤を有するポリマーマトリックスを含み、被覆組成物は、噴霧および/もしくは機器を該組成物にディッピング(dipping)することで、該医療用機器の表面に塗布するために液状形態または懸濁形態で提供される。
【0036】
本発明の別の局面は、インビトロで外植された組織と本組成物とを接触させることを含む、外植された血管組織の収縮および/または緊張を調節する方法を提供する。
【0037】
本発明の別の局面は、(a)試験剤のない場合に、14-3-3およびリン酸化HSP20ポリペプチドの相互作用が可能となる条件の下で、試験剤、14-3-3ポリペプチドおよびリン酸化HSP20ポリペプチドを混ぜること;(b)試験剤が14-3-3およびリン酸化HSP20ポリペプチドの相互作用を改変するかどうか決定すること;ならびに(c)試験剤が14-3-3およびリン酸化HSP20ポリペプチドの相互作用を改変する場合、試験剤と平滑筋(例えば血管のまたは気管支の)組織を(インビボまたはインビトロで)接触させ、試験剤が組織の収縮および/または緊張を改変するかどうか決定することを含む、平滑筋(例えば血管のおよび/または気管支の)緊張を調節するための候補非ペプチジル治療剤を同定する方法を提供する。
【0038】
本発明の別の局面は、(a)試験剤のない場合に、14-3-3およびコフィリンポリペプチドの相互作用が可能となる条件の下で、試験剤、14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3ポリペプチドおよびコフィリンポリペプチドを混ぜること;(b)試験剤が14-3-3およびコフィリンポリペプチドの相互作用を改変するかどうか決定すること;ならびに(c)試験剤が14-3-3およびコフィリンポリペプチドの相互作用を改変する場合、試験剤と平滑筋(例えば血管のまたは気管支の)組織を(インビボまたはインビトロで)接触させ、試験剤が平滑筋組織の収縮および/または緊張を改変するかどうか決定することを含む、平滑筋(例えば血管のおよび/または気管支の)緊張を調節するための候補非ペプチジル治療剤を同定する方法を提供する。
【0039】
ある態様において、本方法の試験剤は小有機分子である。他の態様において、本方法の試験剤は炭水化物または核酸である。本方法の特定の態様において、ポリペプチドの相互作用における試験剤の効果が、競合結合アッセイで検出される。ある態様において、ポリペプチドまたは試験剤は、検出可能なマーカーで標識される。例えば、検出可能なマーカーは、ビオチン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アイソトープ、ポリヒスチジン、磁性ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、およびフルオレセイン、DTAF、およびBodipy−FL等の蛍光物質からなる群より選択される。任意に、本発明の方法は、異なる試験剤のライブラリーに対して繰り返される。本方法の好ましい態様において、相互作用は、蛍光偏光アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイ、またはELISAで検出される。
【0040】
医療処置(例えば喘息および異常な血管収縮に関連する疾患)に使用され得る本発明の小分子平滑筋活性化合物の例を、以下に図示する。
【0041】
例として、本発明の小分子平滑筋活性化合物は、一般式I:
【化1】


式中、
aはアルキル、アルケニル、ヘテロアリールまたはアリール基であり;
bはアルキル、アルケニル、ヘテロアリールまたはアリール基であり;
R3は、C1〜6アルキル、アリールアルキル、フェニル、ヘテロアリール、アシル、およびスルホニルから選択され;
R4は、H、C1〜6アルキル、アリールアルキル、フェニルおよびヘテロアリールから選択され;ならびに
はアニオンのカウンターイオンであり、好ましくは医薬製剤に好適である
で表される。
【0042】
一般式Iによって包含される化合物の好ましい群は、一般式II:
【化2】


式中、
R1およびR2は独立して、H、C1〜6アルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル、および任意に置換されたアミノ基から選択され;
R3は、C1〜6アルキル、アリールアルキル、フェニル、ヘテロアリール、アシル、およびスルホニルから選択され;ならびに
はアニオンのカウンターイオンであり、好ましくは医薬製剤に好適である
で表される。
【0043】
別の例として、本発明の小分子平滑筋活性化合物は、一般式III:
【化3】


式中、
各R1およびR3は独立して、ハロゲン、CF3、C1〜6アルキル、シクロアルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシエステル、カルボキサミド、およびスルホンアミドから選択され、典型的に各R1およびR3は独立してハロゲン(例えば臭素または塩素)であり;
R2は、ニトロ、カルボキシ、カルボキシエステル、置換カルボキサミド、およびC1〜6アルキルから選択され;
Xは、NHおよびOから選択され;
mは0〜4の整数であり、典型的には1または2、より典型的には2であり;ならびに
nは0〜5の整数であり、典型的には1または2、より典型的には2である
で表されるか、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0044】
さらなる例として、本発明の小分子平滑筋活性化合物は、一般式IV:
【化4】


式中、
各R1およびR2は独立して、ヒドロキシル、C1〜3アルコキシ、C4〜6シクロアルコキシ、ニトロ、アミノ、アシル、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミド、およびスルホンアミドから選択され、典型的にR1はハロゲン(例えば臭素または塩素)であり、R2はヒドロキシルまたはC1〜3アルコキシであり;
X、Y、Z、P、QおよびWは独立して、CHおよびNから選択され、典型的にX、YおよびZの1つはNで残りはCHであり、ならびにP、QおよびWは全てCHであり;
pは0〜5の整数であり、典型的には0または1、より典型的には0であり;ならびに
qは0〜5の整数であり、典型的には1〜3である
で表されるか、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【0045】
(本発明の詳細な説明)
1.概観
本発明は、HSP20のリン酸化が平滑筋細胞の緊張の調節において重要な役割を果たすという事実、およびpHSP20の効果を模倣する化合物が平滑筋組織の緊張に影響を与えるために使用され得るという発見に一部基づくものである。したがって本発明は、pHSP20の増加したまたは減少したレベルに関連する状態の処置を提供する。
【0046】
さらに本発明は、14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質とリン酸化形態の熱ショックタンパク質20(pHSP20)の相互作用が、平滑筋の緊張の調節において役割を果たすという発見に一部基づくものである。それを促進するもしくは模倣するか、またはpHSP20自体の効果を模倣すること、あるいは14-3-3タンパク質に対するpHSP20の効果を抑制する(本明細書中では「活性化するpHSP20阻害」)ことのいずれかによるこの相互作用における指向薬物(directing drug)は、血管緊張、気管支緊張または他の平滑筋組織の調節におけるような平滑筋組織を調節するために使用され得る。したがって本発明は、14-3-3の増加したレベルに関連する状態の処置を提供する。
【0047】
本発見はまた、セリン16に対するHSP20のリン酸化が血管弛緩を導くような、あり得そうな機構の洞察を提供する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、リン酸化HSP20の14-3-3タンパク質への結合が、順番にこれらのタンパク質のリン酸化コフィリンへの結合およびその安定化を妨げること、ならびに/または遊離pHSP20の細胞骨格ダイナミクスの他の局面に影響を与え得ることを妨げることが可能である。平滑筋の緊張は、線維状アクチンとモノマーアクチンの動的平衡の改変によって影響され得る。非リン酸化コフィリンはアクチン線維の効果的な脱重合化に必要不可欠であるのに対して、リン酸化はコフィリンを不活性化し、アクチン線維の蓄積を導く。pコフィリンへの結合によって、14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質は細胞ホスホコフィリンプールを維持し得、ならびにアクチン線維の蓄積を促進し、平滑筋収縮(例えば血管収縮)を促進し得る。しかしながらリン酸化HSP20は、14-3-3γまたは14-3-3η等の14-3-3タンパク質と結合するためにコフィリンと競合し得、その結果ホスホコフィリンのレベルが減少するが、順番にコフィリンはアクチンの脱重合化を促進し、平滑筋の弛緩(例えば、血管弛緩または気管支弛緩)を導く。したがって、本発明によって提供される薬物介入の別の標的は、コフィリン/14-3-3γおよびコフィリン/14-3-3η相互作用である。
【0048】
解釈を容易にするために、本出願ではHSP20およびコフィリンを「14-3-3リガンド」と言う。用語「14-3-3ポリペプチド」とは、全長タンパク質、ならびにpHSP20またはpコフィリンへ結合する(必要に応じて)能力を維持する断片または変異体、加えて全長タンパク質、断片または変異体を含む融合タンパク質を含む。同様にして、用語「HSP20ポリペプチド」とは全長タンパク質、ならびに14-3-3ポリペプチドに結合する、例えばホスホセリン−16残基を含む断片またはその変異体を言う。用語「コフィリンポリペプチド」とは、全長タンパク質、ならびに14-3-3ポリペプチドに結合する、例えばホスホセリン−3残基および/またはホスホセリン−23残基を含む断片またはその変異体を言う。用語「HSP20/コフィリンポリペプチド」とは、文脈から必要に応じて、HSP20ポリペプチドかまたはコフィリンポリペプチドのどちらかを言う。
【0049】
以下に詳細に記載されるように、出願者は、平滑筋の緊張(例えば血管弛緩、血管収縮、気管支弛緩等)を調節するのに有用であり得る平滑筋活性(sm-活性)治療剤を同定するスクリーニング方法を開発した。本発明のある態様において、14-3-3ポリペプチド/リガンド相互作用を模倣するまたは干渉するような14-3-3γおよび/または14-3-3ηを調節する薬物は、インビボまたはインビトロのどちらかで、血管の平滑筋細胞弛緩を改変するために使用され得る。かかる薬物は、それらが14-3-3タンパク質に対するpHSP20の効果をアゴナイズもしくは模倣するか、または14-3-3タンパク質に対するpHSP20の抑制活性を弱めるかどうかに依存しながら、動物中でもしくは培養中に用意された血管組織の血管収縮または血管弛緩を誘導するために使用され得る。これらの相互作用を変更する能力について、および最終的に、1ヵ所以上における血管緊張、気道平滑筋の緊張または一般的な平滑筋の緊張への効果について試験剤を評価するために使用され得る、インビボおよびインビトロアッセイの両方が提供される。
【0050】
2.さらなる定義
本明細書中で使用される場合、用語「14-3-3タンパク質」とは14-3-3タンパク質ファミリーのメンバーを言う。14-3-3は、独立した遺伝子でコードされた高度に相同なタンパク質のファミリーである。7つの公知の哺乳類14-3-3イソフォームが存在する(Ichimuraら, 1988, PNAS 85:7084-7088; Martinら, 1993, FEBS Lett. 331:296-303)。14-3-3タンパク質は、主としておよそ30kDのモノマー分子量を有するダイマーとして存在する。14-3-3ポリペプチドの一般特性は、さらにFuら(2000)Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 40:617-647; Takahashi, 2003, Neurochem Res. 28:1265-73;ならびにTzivionおよびAvruch, 2002, J Biol Chem. 277:3061-4中に見い出すことができる。種々の14-3-3ファミリーメンバーの核酸配列およびアミノ酸配列は、例えばLefferら, (1993) J. Mol. Biol. 231:982-998中に見い出すことができる。14-3-3タンパク質の相同体も、広範囲の真核生物体に見出された。
【0051】
本発明の好ましい14-3-3イソフォームは14-3-3γである。14-3-3γは血管組織中で発現されることが示されており(AutieriおよびCarbone, 1999, DNA Cell Biol. 18:555; Autieriら, 1996, Cell Growth Differ. 7:1453)、付随の実施例に記載されるように、pHSP20に結合する。
【0052】
14-3-3タンパク質は、多くの細胞機能と関連があり、かつレセプター、キナーゼ、ホスファターゼ、およびドッキング(docking)分子等の広範囲のリガンドを有するので、一般的な生化学的調節物と考えられる。シグナルタンパク質(signaling protein)の活性およびコンホメーションを安定させることで構造的な役割を果たすのに加えて、14-3-3タンパク質はまた、リン酸化モチーフとの相互作用およびリン酸化モチーフを局在化させることによって骨格タンパク質として作用する(Yaffeら, 1997, Cell 91:961)。
【0053】
熱ショックタンパク質20(当該分野でHSP20またはP20としても公知である)は、熱ショックタンパク質スーパーファミリーのメンバーである。HSP20は血管緊張の調節と関連があることが示されている(Beallら, 1999, J Biol Chem. 274:11344; Beallら, 1997, J Biol Chem. 272:11283; Brophyら, 2002, World J Surg. 26:779; Brophyら, 1997, Biol Reprod. 57:1354; Brophyら, 1999, J Biol Chem. 274:6324; Brophyら, 1999, J Vasc Surg. 29:326; Fuchsら, 2000, Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 279:R492; Remboldら, 2000, J. Physiol. 524 Pt 3:865; Tessierら, 2003, J Surg Res. 111:152; Macomsonら, 2002, Neurosurgery. 51:204; Pipkinら, 2003, Circulation. 107:469; Woodrumら, 2003, J Vasc Surg. 37:874)。関連組織におけるサイクリックヌクレオチド依存シグナル経路の活性化は、セリン16に対するHSP20のリン酸化、および血管平滑筋等の平滑筋の弛緩を導く。HSP20はさらに、種々の血管組織に局在化することが示されている。近年、HSP20ホスホペプチド断片が血管弛緩を誘導することが示された(Flynnら, 2003, FASEB J. 17:1358)。
【0054】
用語「薬学的に活性のある」とは、好ましくは1mM以下、より好ましくは100μM未満、さらにより好ましくは10μM未満のED50を有し、処置を受けた動物、例えばヒト患者において所望の局所的または全身的効果を生じる、任意の生理学的または薬理学的に活性な化学物質体を意味する。
【0055】
「患者」または「被験体」は、ヒトかまたは非ヒト動物のどちらかを意味し得る。
【0056】
用語「ヒト患者の使用に好適な」とは、目的の調製物および投与経路についての発熱性汚染物質に対してFDA閾値以下である薬学的に活性な組成物を意味する。
【0057】
「プロドラッグ」は薬理学的に活性であり得ない化合物であるが、少なくともその代謝産物よりも活性は低い。すなわち、プロドラッグの生物学的活性に対するED50は、通常1つ以上のその代謝産物に対してよりも大きい。しかしながらインビボで代謝的(酵素的等)もしくは非酵素的加水分解、または還元開裂(例えばジスルフィド結合の)によって活性化される場合、プロドラッグは薬学的に活性な構成成分に変換される。プロドラッグは典型的に、薬学的に活性な部分の化学的変形によって形成される。
【0058】
用語「ED50」とは、その最大応答または最大効果の50%を生じる薬物の用量を意味する。あるいは、ED50とは、テスト被験体または調製物の50%の予定応答を生じる用量を意味する。
【0059】
3.薬物スクリーニングアッセイ
例えば血管緊張および気管支緊張における14-3-3γおよび/または14-3-3ηの役割を標的することによって、平滑筋弛緩を調節する治療剤をスクリーニングするアプローチが非常に多く存在する。解釈を容易にするために、以下の議論は、14-3-3γに影響を与える薬剤に指向されるように誘導されたアッセイについて言及する。しかしながら当業者は、pHSP20を模倣する化合物を見出すために、14-3-3とpHSP20もしくはpコフィリンの相互作用を調節するために、平滑筋細胞中のHSP20リン酸化を調節するために、平滑筋細胞中のコフィリン脱リン酸化を調節するために、または通常平滑筋細胞の細胞骨格ダイナミクスを調節するために、必要に応じて、14-3-3ηもしくは他の14-3-3イソフォームを使用することで、同様のアッセイが誘導され得ることを容易に認めるであろう。
【0060】
例えば、化合物の高度なスループットスクリーニング(throughput screening)が、14-3-3γに対するpHSP20媒介効果および/またはコフィリンに対する14-3-3η媒介効果に影響を与えるような血管弛緩に対する14-3-3γ媒介効果を乱す薬剤を同定するために実行され得る。ある態様において、アッセイは、14-3-3γのその結合パートナー(例えばpHSP20またはpコフィリン)への結合を特異的に抑制するかまたは減少させる化合物をスクリーニングし、同定するために実行される。あるいはアッセイは、14-3-3γのその結合タンパク質(例えばpHSP20またはpコフィリン)への結合を高める化合物を同定するために使用され得る。このスクリーニングによって同定された化合物は、インビトロで平滑筋弛緩(例えば血管弛緩または気管支弛緩)を調節する能力を評価するために、血管組織中で試験され得る。任意に、これらの化合物はさらに、インビボで血管緊張を調節する能力を評価するために動物モデル中で試験され得る。
【0061】
種々のアッセイ形式は十分に満足させるであろうし、本開示に鑑みて、本明細書中には明白に記載されていないにもかかわらず当業者に完全に理解されるであろう。14-3-3γが媒介した平滑筋緊張の調節物として作用する能力を試験される薬剤は、例えばバクテリア、酵母、植物もしくは他の生物(例えば天産物)によって産生され得、化学的に産生され得(例えば、ペプチド模倣剤を含む小分子)、または組み合わされて産生され得る。本発明によって企図された試験剤としては、非ペプチジル有機分子、糖類、ホルモン類、および核酸分子(例えばアンチセンスまたはRNAi核酸分子)が挙げられる。好ましい態様において、試験剤は約2,000ダルトン未満の分子量を有する小有機分子である。
【0062】
試験剤は単一で、独立した物質として提供され得るか、または組み合わせられた化学的性質によって作られたもの等のより大きな複雑性のライブラリー中に提供され得る。これらのライブラリーは、例えばアルコール、アルキルハロゲン化物、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび有機化合物の他の種類を含み得る。試験系に対する試験化合物の提示は、特に最初のスクリーニング工程において、単離した形態かまたは化合物の混合物としてのどちらかであり得る。
【0063】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、高度なスループットアッセイが、所与の時間内に調査される化合物の数を最大にするために望ましい。精製タンパク質または半精製タンパク質で誘導され得るような細胞不含系中で実行されるアッセイは、それらが試験化合物で媒介される分子標的の改変の急速な開発および比較的容易な検出を可能とするために作り出され得るという点で、しばしば「一次」スクリーニングとして好まれる。さらに、試験化合物の細胞毒性および/または生物学的利用能の効果はインビトロ系において一般に無視することができるが、代わりに14-3-3γと他のタンパク質との結合親和性の変化、または14-3-3γ結合に対する分子標的の特性(例えばコフィリンのリン酸化、または遊離(すなわち結合していない)pHSP20の数の調節)の変化において明らかにされる際に、該アッセイは分子標的における薬物の効果において第一に焦点が当てられる。
【0064】
単に実例で説明するために、本発明の具体的なスクリーニングアッセイにおいて、目的の化合物を、アッセイの目的に応じて、通常pHSP20またはpコフィリンポリペプチドに結合可能な単離かつ精製された14-3-3γポリペプチドと接触させる。次いでpHSP20またはpコフィリンポリペプチドを含有する組成物を、該化合物および14-3-3γポリペプチドの混合物に添加する。14-3-3γ複合体の検出および定量化は、14-3-3γとpHSP20/pコフィリンポリペプチド複合体形成の阻害(または強化)における化合物の効力を測定する手段を提供する。該化合物の効力は、種々の濃度の試験化合物を使用して得られるデータからの、用量応答曲線を作ることによって評価され得る。さらに、比較対象に対するベースラインを提供するために、対照アッセイも実行され得る。対照アッセイにおいて、単離かつ精製されたpHSP20またはpコフィリンを14-3-3γポリペプチドを含有する組成物に添加し、14-3-3γ複合体の形成を試験化合物の非存在化で定量化する。一般的に、反応物が混合され得る順序は変更することができ、同時に混合し得ることを理解されたい。さらに精製タンパク質の代わりに、細胞抽出物および細胞溶解物が、好適な細胞不含アッセイ系を提供するために使用され得る。
【0065】
14-3-3γポリペプチドと標的ポリペプチドの複合体形成は、種々の技術で検出され得る。一例として、複合体の形成の調節は、例えば放射性元素で標識された(例えば32P、35S、14Cもしくは3H)、蛍光標識された(例えばFITC)、または酵素によって標識された14-3-3γもしくはpHSP20/pコフィリンポリペプチド等の検出可能に標識されたタンパク質を使用して、イムノアッセイによって、またはクロマトグラフィー検出法によって定量化され得る。
【0066】
ある態様において、1つまたは両方のタンパク質の複合していない形態からタンパク質複合体の分離を容易にするために、ならびにアッセイの自動化を調節するために、14-3-3γまたはpHSP20/pコフィリンポリペプチドのどちらかを固定することが望ましい。pHSP20/pコフィリンポリペプチドの14-3-3γへの結合は、候補薬剤のある場合およびない場合、反応物を含有するのに好適な任意の容器中で達成され得る。例として、マイクロタイタープレート、試験チューブ、およびマイクロ遠心分離チューブが挙げられる。1つの態様において、タンパク質がマトリックスに結合されるのを可能とするドメインを含む融合タンパク質が調製される。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/14-3-3γ(GST/14-3-3γ)融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, Mo.)またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレート上に吸着され得、次いでそれらは、pHSP20/pコフィリンポリペプチド、例えば35S標識化pHSP20/pコフィリンポリペプチド、および試験化合物と合わせられ、もう少しより厳密な条件が望ましいが、複合体形成に資する条件下、例えば塩およびpHの生理学的条件において混合物はインキュベートされる。インキュベーション後、ビーズを洗浄して任意の未結合のpHSP20/pコフィリンポリペプチドを取り除き、マトリックスに結合した放射性元素標識を直接的に(例えばシンチラント(scintilant)に配置されたビーズ)測定し、またはタンパク質複合体が続いて解離した後の上澄み液中で測定した。あるいは、複合体はマトリックスから解離され得、SDS-PAGEによって分離され得、およびpHSP20/pコフィリンポリペプチドのレベルは、標準的な電気泳動技術を使用してゲルから定量化したビーズ画分中で見出され得る。
【0067】
マトリックス上のタンパク質固定化の他の技術はまた、本アッセイを使用するために利用可能である。一例として、14-3-3γまたはpHSP20/pコフィリンポリペプチドのどちらかは、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を利用して固定され得る。一例として、ビオチン化14-3-3γ分子は、当該分野で周知の手法(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)を用いてビオチン−NHS(N-ヒドロキシ-スクシニミド)から調製され得、ストレプトアビジンで被覆された96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中で固定され得る。あるいは、14-3-3γと反応性があるがpHSP20/pコフィリン結合を阻害しない抗体は、プレートのウェルへ誘導され得、14-3-3γは抗体結合によりウェル中でトラップされ得る。上記のように、pHSP20/pコフィリンポリペプチドの調製物および試験化合物は、プレートの14-3-3γが存在するウェル中でインキュベートされ、ウェル中でトラップされたタンパク質複合体の量は定量化され得る。GST−固定化複合体について上記されたものに加えて、かかる複合体を検出する具体的な方法は、pHSP20/pコフィリンポリペプチドと反応的かまたは14-3-3γタンパク質と反応的で、pHSP20/pコフィリンポリペプチドと結合するために競合する抗体を使用する複合体の免疫検出法;ならびにpHSP20/pコフィリンポリペプチドと関連がある酵素活性を確かに検出する酵素連結アッセイを含む。後半の例において、該酵素はpHSP20/pコフィリンポリペプチドを有する融解タンパク質として化学的に結合され得るか、または提供され得る。実例で説明するために、pHSP20/pコフィリンポリペプチドは化学的に架橋され得るか、または遺伝的にホースラディッシュペルオキシダーゼと融合され得、複合体にトラップされたpHSP20/pコフィリンポリペプチドの量は、酵素の色素基質、例えば、3,3’-ジアミノ-ベンザジンテラヒドロクロライド、または4-クロロ-1-ナフトール(napthol)で評価され得る。同様に、pHSP20/pコフィリンポリペプチドおよびグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む融合タンパク質が提供され得、複合体形成が1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンを使用するGST活性を検出することで定量化され得る(Habigら (1974) J Biol Chem 249:7130)。
【0068】
ある態様において、アッセイは、標識化14-3-3タンパク質またはその断片の固定された14-3-3結合タンパク質(例えばpHSP20またはpコフィリン)への結合の抑制により、14-3-3γのその結合パートナー(例えばpHSP20またはpコフィリン)への結合を特異的に抑制するかまたは減少させる化合物をスクリーニングし同定するために実行される。あるいは、かかるライブラリーは14-3-3のその結合タンパク質(例えばpHSP20またはpコフィリン)への結合を高めるメンバーを同定するために、同様にスクリーニングされ得る。このスクリーニングによって同定された化合物は、インビトロでの血管弛緩を調節する能力を評価するために、血管組織中で試験され得る。任意にこれらの化合物は、インビボで血管緊張または他の平滑筋の緊張を調節する能力を評価するために、動物モデル中でさらに試験され得る。
【0069】
別の態様において、蛍光偏光アッセイが本発明の方法に使用される。実例で説明するために、14-3-3リガンド(例えば、pHSP20ペプチドまたはpコフィリンペプチド)は、フルオレセインまたはオレゴングリーン等の小分子フルオロフォアに結合される。タグ付加14-3-3リガンドの精製14-3-3ポリペプチドへの結合は、14-3-3リガンドの移動性を減少させ、かくしてフルオロフォアから放射された光の偏光が増加する原因になる。その結果この手法により、直接的かまたは間接的かのどちらかで、試験剤があるまたはなしで、14-3-3タンパク質と14-3-3リガンド(例えば、pHSP20ペプチドまたはpコフィリンペプチド)の相互作用の程度を測定することが可能となる。したがって、14-3-3/リガンド相互作用を調節する(増加または減少)薬剤が同定され得る。
【0070】
別の具体的な態様において、本発明の方法で、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイが用いられる。これらのアッセイには、二つの蛍光標識種が利用され、ここでより短い波長標識の放出スペクトラムがより長い波長標識の励起スペクトラムと重なる。短波長標識が励起される際に、結合により誘導される二分子の接近により、長波長標識の非放射性励起が可能となる。例示するために、14-3-3ポリペプチドおよび14-3-3リガンドをコードする二つのDNA発現コンストラクトそれぞれを、ECFP(シアン)およびEYFP(黄)で標識する。インビボでの発現において、細胞溶解物でのエネルギー転移が観察され得る。かかるアッセイがインビトロ形式に適用され得ることが認識される。よって、この技術により、試験剤の存在下または非存在下において、14-3-3タンパク質と14-3-3リガンド(例えば、pHSP20またはpコフィリン)との相互作用の程度が、直接的にかまたは間接的に測定可能となる。従って、14-3-3/リガンド相互作用を調節(増加または減少)する薬剤が同定され得る。
【0071】
また、光学導波路(PCT公開公報WO96/26432号および米国特許第5,677,196号)、表面プラスモン共鳴(SPR)、表面電荷センサーおよび表面力価センサーに基づくもの等の検出の他の様式が、本発明の多くの態様において互換性がある。
【0072】
さらに、主題のポリペプチドを用いて、「ツーハイブリッドアッセイ」としても公知である、14-3-3γのpHSP20またはpコフィリンへの結合を妨害するかまたは増強する薬剤を同定するための、相互作用トラップアッセイ(interaction trap assay)を生じ得る。例えば、米国特許第5,283,317; Zervosら, (1993)Cell 72:223-232; Maduraら, (1993)J Biol Chem 268:12046-12054; Bartelら, (1993)Biotechniques 14:920-924; およびIwabuchiら, (1993)Oncogene 8:1693-1696参照)。具体的な態様において、本発明は、14-3-3γおよびそのリガンド(例えば、pHSP20またはpコフィリン)間の相互作用を解離する化合物(例えば小分子またはペプチド)を同定するための逆ツーハイブリッド系の使用を意図する。例えば、VidalおよびLegrain,(1999)Nucleic Acids Res 27:919-29; VidalおよびLegrain,(1999)Trends Biotechnol 17:374-81; および米国特許第5,525,490号;第5,955,280号;第5,965,368号参照。
【0073】
相互作用トラップアッセイは、二つの別々の融合タンパク質由来の機能的な転写アクチベータータンパク質の再構築に依存しており、この一つは14-3-3γポリペプチドと融合する転写アクチベーターのDNA結合ドメインを含む。第二の融合タンパク質は、pHSP20またはpコフィリンポリペプチドと融合する転写活性化ドメイン(例えば、RNAポリメラーゼ転写を開始し得る)を含む。各融合タンパク質の14-3-3γおよびpHSP20/pコフィリンドメインが相互作用する場合、転写アクチベータータンパク質の二つのドメインが、レポーター遺伝子の転写を生じさせるように十分に近接に誘導される。レポーターの転写のレベルを検出することによって、14-3-3γのpHSP20またはpコフィリンへの結合を抑制する(または増強する)試験剤の能力が増大し得る。
【0074】
例証となる態様において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YPB2細胞は、GAL4bd-14-3-3γ融合体をコードするプラスミド、およびpHSP20またはpコフィリンと融合するGAL4adドメインをコードするプラスミドが同時に形質転換される。さらに該株は、GAL4反応性プロモーターが表現型マーカーの発現を制御するように形質導入される。例えば、ヒスチジン非存在下で生育するための能力は、HIS3遺伝子の発現に依存する。HIS3遺伝子が、GAL4反応性プロモーターの制御下にある場合、この栄養要求性表現型の除去により、機能的なGAL4アクチベーターが14-3-3γ、およびpHSP20またはpコフィリンの相互作用を介して、再構成されたことが示される。従って、14-3-3γによるこの相互作用を抑制し得る試験剤は、ヒスチジン非存在下では生育できない酵母細胞を生じる。あるいは、表現型マーカー(例えば、HIS3遺伝子の代わりに)は、14-3-3γ相互作用を妨害する薬剤が細胞についての正の生育選別に寄与するように発現した場合、負の選別を提供する(例えば細胞毒性である)ものであり得る。他の相互作用の相手を有する酵母細胞により、所定のタンパク質-タンパク質相互作用インヒビターの特異性を評価し得る。
【0075】
細胞不含系を用いて、薬剤または14-3-3γ媒介活性に影響すると思われる他の任意の薬剤を同定した後、全細胞または組織中で、インビボまたはインビトロで、主題の試験剤を試験して、血管の緊張を調節するその能力について確認し得る。当該分野で公知の種々の方法を利用して、候補薬剤の血管弛緩活性または血管の収縮活性を試験し得る。例えば、Tessierら, 2003, J Surg Res. 111:152-7; Woodrumら, 2003, J Vasc Surg. 37:874-81; およびBrophyら, 2002, J Vasc Res. 39:95-103参照。
【0076】
具体的な態様において、本発明の方法は血管平滑筋の完全な細片で行なわれる。内皮を剥いだウシ頚動脈平滑筋の横切断細片を、95%O2/5%CO2で平衡化した重炭酸バッファー(120mM NaCl、4.7mM KCl、1.0mM MgSO4、1.0mM NaH2PO4、10mMグルコース、1.5mM CaCl2、および25mM Na2HCO3、pH7.4)を含む筋肉浴(muscle bath)中で37℃、1gの張力で、2時間懸濁する。セロトニン(1μM、10分間)により筋肉を前もって収縮させ、累積量の試験剤を加える。その力は最大のセロトニン収縮のパーセンテージで示される(試験剤無添加と比較してn=5、*=p<0.05)。試験剤がセロトニンにより前もって収縮させた大動脈平滑筋の収縮力を減少させる場合には、試験剤は血管平滑筋を弛緩させ得、痙攣を防ぎ得る。あるいは、試験剤がセロトニンにより前もって収縮させた大動脈平滑筋における収縮力を増加させる場合には、試験剤は血管平滑筋を収縮させ得、弛緩を防ぎ得る。この方法が他の種類の平滑筋組織、例えば気道平滑筋に応用し得ることは当業者に理解されよう。
【0077】
別の具体的な態様において、本発明の方法は培養ラット大動脈平滑筋細胞で行なわれる。収縮機能はシリコンポリマーリンクルアッセイ(silicon polymer wrinkle assay)により観察され、培養メサンギウム細胞における収縮性が決定される。血清存在下で、細胞はポリマー上にしわを形成し、収縮を示す。試験剤が血清に反応してポリマー上のしわの形成を減少させる場合には、試験剤は血管平滑筋を弛緩させ得、痙攣を防ぎ得る。あるいは、試験剤が血清に反応してポリマー上のしわの形成を増加させる場合には、試験剤は血管平滑筋を収縮させ得、弛緩を防ぎ得る。この方法が他の種類の平滑筋組織、例えば気道平滑筋に応用し得ることは当業者に理解されよう。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、一旦候補治療化合物が上記の方法により同定されたら、候補治療化合物の構造を最適化させる方法を意図する。好ましくは、該候補治療化合物は、小分子であり、14-3-3タンパク質への結合、またはpHSP20もしくはpコフィリンへの結合により、14-3-3/リガンド相互作用を調節する。例えば、pHSP20およびその標的14-3-3タンパク質の血管作用断片の共結晶構造により得られた情報を用いて、同定された小分子の構造を最適化して、HSP20の血管作用特性を調節する、小分子の効率を増加し得る。
【0079】
他の態様において、他のアッセイを用いて14-3-3γタンパク質またはHSP20もしくはコフィリンの発現レベル(タンパク質または核酸)を減少させるか、あるいは14-3-3γタンパク質またはHSP20もしくはコフィリンの発現レベル(タンパク質または核酸)を増加させる化合物を選定し得る。タンパク質の検出方法および任意に計量する方法は、抗体ベースの検出アッセイ等の技術によりなされ得る。これらの場合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、およびウエスタンブロットを含む種々の検出技術に、抗体は用いられ得る。一方で、核酸の検出方法および任意に計量する方法は、一般的に精製された核酸を調製すること、および直接検出アッセイ、または後で検出アッセイを行なう増幅過程に核酸をかけることを含む。増幅は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)、および一緒になったRT-PCRによりなされ得る。核酸の検出は一般的に、関心のある核酸にハイブリダイズするプローブで、精製された核酸を探査することによりなされ、多くの場合において、検出には増幅も含まれる。ノーザンブロット、ドットブロット、マイクロアレイ、定量的PCR、および定量的RT-PCRは全て、核酸の検出法として周知である。
【0080】
ある場合において、一つ以上の化合物が同時に試験され得る。化合物の混合物が試験される場合、前述の過程により選択された化合物は分離され(適切に)、適切な方法(例えば、PCR、シークエンシング、クロマトグラフィー)により同定され得る。組み合わせられた化学合成または他の方法により生成された、化合物の大きな組み合わせのライブラリー(例えば、有機化合物、ペプチド、核酸)が試験され得る(例えば、標識された化合物に関するOhlmeyer, M.H.Jら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926 (1993)およびDeWitt, S.Hら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909-6913 (1993)参照;また、Rutter, W.Jら, 米国特許第5,010,175号;Huebner, V.D.ら, 米国特許第5,182,366号;およびGeysen, H.M.米国特許第4,833,092号参照)。本方法により組み合わせのライブラリーから選択された化合物が特有の標識を有する場合、クロマトグラフィー法による個々の化合物の同定が可能である。化合物が標識を有さない場合、後に大量分光測光法を行なうクロマトグラフィー分離を用いて、例えば該方法により選ばれた個々の化合物を同定し得る。
【0081】
IV. 本発明の組成物および平滑筋活性化剤
上述のアッセイによるなどして、14-3-3γ媒介、14-3-3η媒介、および/または(p)HSP20平滑筋細胞活性(本明細書中において、集合的に、血管作用性薬剤および気管支作用性薬剤を含む「平滑筋活性化剤」または「sm-活性剤」)における効果を有すると見なされた薬剤を用いて、例えばヒト患者における使用に適するような血管の緊張、気管支の緊張または他の平滑筋組織を調節するような、組成物を生成し得る。例えば、血管作用薬剤は血管拡張を高め得るか、血管収縮を高め得るか、または血流を増大させ得る。気管支作用薬剤は、適切に、気管支拡張を高め得るか、または気管支収縮を高め得る。ある場合において、これらの薬剤は、血管、気管支または平滑筋を弛緩または収縮することができる。
【0082】
ある態様において、sm-活性剤は小有機分子であり、例えば2000amu未満の分子量を有し、さらにより好ましくは1500またはさらには1000amu未満である。好ましくは、該薬剤は細胞透過性である。ある好ましい態様において、薬剤はまた経口活性でもある。候補薬剤は、タンパク質との構造的な相互作用、特に水素結合のために官能基を含み、典型的に少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基またはカルボキシル基を含む。候補小分子化合物は、合成または天然化合物のライブラリーを含む種々の供給源から得ることができる。例えば、種々の有機化合物および生物分子のランダムで直接的な合成のために、無作為化されたオリゴヌクレオチドの発現を含む無数の手段が利用可能である。あるいは、細菌性、菌性、植物性および動物性抽出物の形状の天然化合物のライブラリーが利用可能であるかまたは容易に作製される。また、天然に、または人工的に作製されたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生化学的手段を介して修飾され得る。公知の薬理剤は、構造的アナログを生成するために直接的にまたはランダムに、アシル化、アルキル化、エステル化およびアミド化等の化学的修飾にかけられる。
【0083】
例として、本発明の小分子血管作用化合物は一般式Iで表される:
【化5】


式中:
aは、アルキル、アルケニル、ヘテロアリールまたはアリール基であり;
bは、アルキル、アルケニル、ヘテロアリールまたはアリール基であり;
R3は、C1〜6のアルキル、アリールアルキル、フェニル、ヘテロアリール、アシルおよびスルホニルより選択され;
R4、は水素、C1〜6のアルキル、アリールアルキル、フェニルおよびヘテロアリールより選択され;ならびに
-は、好ましくは医薬製剤に適したアニオンのカウンターイオンである。
【0084】
ある態様において、Raはアルケニル基である。
【0085】
ある態様において、Rbはアルキル基である。具体的な態様において、Rbはアルキル基であり、Raはアルケニル基である。
【0086】
別の態様において、Raはアルキル基である。具体的な態様において、Raはアルキル基であり、Rbはアリール基である。適切なアルキル基としては、フェニルアルキル基およびフェニルスルホニルアルキル基が挙げられる。
【0087】
好ましい態様において、Raはアリール基で、好ましくはフェニル基である。特に好ましい態様において、Raはアリール基で、好ましくはフェニル基であり、Rbはアリール基で、好ましくはフェニル基である。
【0088】
この態様により包含される化合物の特に好ましい群は、一般式IIで表わされる:
【化6】


式中:
R1およびR2は独立して、水素、C1〜6のアルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテルおよび任意に置換されたアミノ基より選択され;
R3は、C1〜6のアルキル、アリールアルキル、フェニル、ヘテロアリール、アシルおよびスルホニルより選択され;ならびに
-は、好ましくは医薬製剤に適したアニオンのカウンターイオンである。
【0089】
ある態様において、R1およびR2は各々水素である。
【0090】
-の例としては、塩化物、臭化物、過塩素酸塩、シュウ酸塩、メシレートおよび硫酸塩が挙げられる。典型的に、Q-は塩化物または臭化物である。
【0091】
一般式Iに包含される具体的な化合物は、以下の式で表される:
【化7】






化合物(a)〜(k)についてのカウンターイオンは、先に規定されたようにQ-である。
【0092】
別の例として、本発明の小分子血管作用化合物は一般式IIIで表される:
【化8】


またはその薬学的に許容され得る塩であり、ここで:
R1およびR3は各々、独立してCF3、C1〜6のアルキル、シクロアルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシエステル、カルボキシアミドおよびスルホンアミドであり、典型的にR1およびR3は各々、臭素または塩素等のハロゲンであり;
R2は、ニトロ、カルボキシ、カルボキシエステル、置換カルボキシアミドおよびC1〜6のアルキルより選択され;
Xは、NHおよびOから選択され;
mは、0〜4の整数で、典型的には1または2で、より典型的には2であり;ならびに
nは、0〜5の整数で、典型的には1または2で、より典型的には2である。
【0093】
一般式IIIに包含される化合物の一つは、以下の構造式で表される:
【化9】

【0094】
さらなる例として、本発明の小分子血管作用化合物は一般式IVで表される:
【化10】


またはその薬学的に許容され得る塩であり、ここで:
R1およびR2は各々、独立してヒドロキシル、C1〜3のアルコキシ、C4〜6のシクロアルコキシ、ニトロ、アミノ、アシル、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキシアミドおよびスルホンアミドであり、典型的にはR1は臭素もしくは塩素等のハロゲンで、および/またはR2はヒドロキシルもしくはC1〜3のアルコキシであり;
X、Y、Z、P、QおよびWは独立してCHおよびNから選択され、典型的にはX、YおよびZのいずれかはNで、残りはCHで、P、QおよびWは全てCHであり;
pは0〜5の整数で、典型的には0または1で、より典型的には0であり;ならびに
qは0〜5の整数で、典型的には1〜3である。
【0095】
イミン結合についてのコンホメーションはシスまたはトランスのいずれでも良いが、好ましくはトランスである。
【0096】
一般式IVに包含される化合物は、以下の構造式で表される:
【化11】

【0097】
本発明の全ての態様が、本発明の異なる側面下で記載されたものでさえも、他の一つ以上の他の態様と組み合わせられ得ることが意図される。
【0098】
本発明で用いられる場合、用語「アシル」は一般式:
【化12】


で表されるような、かかる機能基を含み、ここで適切なR基が、水素、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、ヘテロアリールオキシ基およびシクロアルキル基を含むが、限定されず、これらの基のいずれかが任意にさらに適切に置換され得る。
【0099】
用語「Cx〜yアルキル」は、置換または非置換の飽和された炭化水素基について言い、それは鎖中にx〜y個の炭素を含む直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含み、さらにトリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチル等のハロアルキル基を含む。C0アルキルは該基が末端に位置する場合は水素を示し、内部であるならば結合を示す。用語「C2〜yアルケニル」および「C2〜yアルキニル」は、前記アルキルに長さおよび可能な置換において類似する、置換または非置換の飽和脂肪族基について言うが、少なくとも一つの二重または三重結合をそれぞれ含む。
【0100】
用語「アルコキシ」は、酸素に結合するアルキル基を有する酸素に関する。典型的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。「エーテル」は、酸素により共有結合する二つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするようなアルキルの置換は、アルコキシであるか、またはアルコキシに似ている。
【0101】
本明細書中で用いる場合、用語「アラルキル」は、アリール基により置換されたアルキル基について言う。
【0102】
本明細書中で用いる場合、用語「カルボサイクリック」としては、3個〜8個の分岐を有する置換または非置換の、単環状で飽和または不飽和である環状脂肪族基が挙げられ、該環の各原子が炭素である。
【0103】
本明細書中で用いる場合、用語「ヘテロサイクリック」としては、3個〜8個の分岐を有し、好ましくは4個〜8個の分岐を有する置換または非置換の、単環状である環状基が挙げられ、ここで該環が1個〜3個のヘテロ原子を含む。
【0104】
本明細書で用いられる場合、用語「アリール」としては5個、6個および7個の分岐を有する置換または非置換の単環芳香族基が挙げられ、ここで該環の各原子が炭素である。用語「アリール」としてはまた、二つ以上の環を有する多環式の環系が挙げられ、ここで二つ以上の炭素が二つの隣接した環に共有され、環の少なくとも一つが芳香族であり、例えば他方の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリン等が挙げられる。
【0105】
用語「ヘテロアリール」としては、置換または非置換で、芳香性の5個〜7個の分岐を有する環状構造で、より好ましくは5個〜6個の分岐を有し、該環状構造が1個〜4個のヘテロ原子を含む環が挙げられる。用語「ヘテロアリール」としてはまた、二つ以上の環を有する多環式の環系が挙げられ、環中で二つ以上の炭素が二つの隣接した環に共有され、環の少なくとも一つがヘテロ芳香族であり、例えば他方の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロアリール基としては、例えばピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジン等が挙げられる。
【0106】
本明細書中で用いられる場合、用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、リンおよび硫黄である。
【0107】
用語「多環」または「多環式」は、二つ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリル)について言い、ここで二つ以上の炭素が隣接する二つの環に共有され、例えば該環は「融合環」である。多環の各々の環は、置換され得るか、または非置換であり得る。
【0108】
用語「置換された」は、主鎖の一つ以上の炭素上で水素を置き換える置換基を有する機能基について言う。「置換」または「〜に置換された」は、かかる置換が置換された原子および置換基の許容される原子価によること、ならびに置換の結果として安定な化合物が生じること、例えば再配列、環化、除去等によるなどして変形が自発的には生じないことを示す但し書きを含むということが理解されよう。本明細書で用いる場合、用語「置換された」には、全ての有機化合物の許容可能な置換基が含まれよう。広い側面において、許容可能な置換基としては、非環式および環式、分岐および非分岐、カルボサイクリックおよびヘテロサイクリック、芳香性および非芳香性の有機化合物の置換基が挙げられよう。許容可能な置換基は適切な有機化合物について、一つ以上であり得、同一であるかまたは異なり得る。本発明の目的のために、窒素等のヘテロ原子は水素置換基、および/またはヘテロ原子価に応じて化合する、本明細書中の所望の有機化合物の任意の許容可能な置換基を有し得る。置換基としては、例えばハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル等)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオギ酸塩等)、アルコキシル、ホスホリル、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、メルカプト基、アルキルチオ、硫酸塩、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族の機能基が挙げられ得る。炭化水素鎖上で置換される機能基は、適切ならばそれ自身を置換し得ることが当業者に理解されよう。
【0109】
用語「非ペプチジル」は、アミド結合により連結される二つ以下のαアミノ酸を有する化合物に関する。アミド結合により直鎖状に連結される三つ以上のαアミノ酸を有する化合物は、本発明の目的に関して「ペプチジル」である。
【0110】
特定の他の態様において、本発明の血管作用薬剤はアンチセンス核酸を含む。ある態様において、本発明はHSP20、14-3-3γ、14-3-3ηもしくはコフィリンのポリペプチド、またはそれらのバリアントの発現を抑制するアンチセンス核酸の、これらのポリペプチドの一つ以上の発現を減少させるための使用に関する。かかるアンチセンス核酸は、例えば、細胞内で転写される場合、HSP20、14-3-3γ、14-3-3ηもしくはコフィリンのポリペプチドをコードする細胞内mRNAの少なくとも特有の領域に相補的であるRNAを生成する発現プラスミドとして、送達され得る。あるいは、コンストラクトは、生体外で生成され、細胞内に導入された際に、HSP20、14-3-3γもしくはコフィリンのポリペプチドをコードするmRNAおよび/またはゲノム配列とハイブリダイズすることにより、発現の抑制を生じさせるようなオリゴヌクレオチドである。かかるオリゴヌクレオチドプローブは、内在性のヌクレアーゼ、例えばエクソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに対して耐性を示し、従ってインビボで安定な、任意に修飾されたオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとしての使用のための具体的な核酸は、DNAのホスホラミデート、ホスホチオエートおよびメチルホスホネートアナログである(米国特許第5,176,996号; 第5,264,564号; 第5,256,775号も参照)。さらに、核酸治療に有用なオリゴマーを構築する一般的なアプローチが、例えば、van der Krolら, 1998, Biotechniques 6:958-976;およびSteinら, 1988, Cancer Res 48:2659-2668によりまとめられている。
【0111】
別の態様において、本発明は、HSP20、14-3-3γ、14-3-3ηもしくはコフィリンの発現を減少させるためのRNA干渉(RNAi)の使用に関する。RNAiコンストラクトは、標的遺伝子の発現を特異的に阻害し得る二重鎖RNAを含む。「RNA干渉」または「RNAi」は、植物およびセンチュウにおいて観察された現象に対して最初に用いられた用語であり、二重鎖RNA(dsRNA)は、特異的および転写後の様式で遺伝子発現を阻害する。RNAiは、インビトロまたはインビボにおける、有用な遺伝子発現の抑制方法を提供する。RNAiコンストラクトは、標的核酸配列に対して同一であるかもしくは実質的に同一であるdsRNAの長い範囲、または標的核酸配列の領域のみに対して同一であるかもしくは実質的に同一であるdsRNAの短い範囲を含み得る。
【0112】
本明細書中で用いる場合、用語「RNAiコンストラクト」は、小干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、およびインビボで切断されてsiRNAを形成し得る他のRNA種を含む、包括的な用語である。本明細書において、RNAiコンストラクトはまた、細胞内でdsRNAまたはヘアピンRNAを形成する転写産物、および/またはインビボでsiRNAを生成する転写産物を生じ得る発現ベクター(RNAi発現ベクターともいう)も含む。
【0113】
任意に、RNAiコンストラクトは、細胞の生理的条件下で、抑制される遺伝子(すなわち「標的」遺伝子)についてのmRNA転写産物の少なくとも一部のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。二重鎖RNAは、RNAiを仲介する能力を有する、天然のRNAと実質的に同様であることだけを必要とする。従って、本発明は、遺伝的な変異、系統多型または進化的な多様性のためであると予想され得る配列の変化を許容し得るという利点を有する。標的配列とRNAiコンストラクト配列との間の許容されるヌクレオチドミスマッチの数は、5塩基対中1塩基対以下であるか、または10塩基対中1塩基対以下であるか、または20塩基対中1塩基対以下であるか、または50塩基対中1塩基対以下である。siRNA二重鎖の中心におけるミスマッチは、最も重要であり、本質的に標的RNAの切断が起こらなくなり得る。対照的に、標的RNAに相補的であるsiRNA鎖の3’末端のヌクレオチドは、標的認識の特異性に有意に寄与しない。配列の同一性は、当該分野に公知の配列比較およびアラインメントアルゴリズム(alignment algorithm)により最適化され(GribskovおよびDevereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991、ならびに本明細書中に引用される文献を参照)、ヌクレオチド配列間の差異のパーセントが、例えば、デフォルトパラメーターを用いたBESTFITソフトウェアプログラムにおいて実行されるようなSmith-Watermanアルゴリズムにより算出される。90%より高いかまたは100%よりも高い、抑制性RNAと標的遺伝子の一部との間の配列同一性が好ましい。あるいは、RNAの二重鎖領域は、標的遺伝子転写産物の一部とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列として、機能的に定義され得る(例えば、400mM NaCl, 40mM PIPES pH6.4, 1mMEDTA、50℃または70℃で12〜16時間ハイブリダイゼーション;その後洗浄を行なう)。
【0114】
単一の自己相補的RNA鎖、または二本の相補的RNA鎖により、二重鎖構造が形成され得る。RNA二重鎖の形成は細胞の内部または外部のいずれかで開始され得る。該RNAは、細胞あたり少なくとも一コピーの送達が可能となる量で導入され得る。より多量(例えば、少なくとも細胞あたり5、10、100、500または1000コピー)の二重鎖物質によって、より効果的な抑制が生じ得るが、より少量でも、特異的な応用に有用であり得る。RNAの二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝学的抑制の標的となるように抑制は配列特異的である。
【0115】
主題のRNAiコンストラクトは、「小干渉RNA」または「RNAi」であり得る。これらの核酸はおよそ19〜30ヌクレオチド長であり、さらにより好ましくは21〜23ヌクレオチド長である。siRNAは、ヌクレアーゼ複合体と会合し、特異的な配列と対をなすことにより、該複合体を標的mRNAに誘導すると理解される。結果として、標的mRNAはタンパク質複合体中のヌクレアーゼにより分解される。特定の態様として、21〜23ヌクレオチドsiRNA分子は3’ヒドロキシル基を含む。特定の態様において、siRNAコンストラクトは、例えば酵素ダイサー(dicer)の存在下で、より長い二重鎖RNAのプロセッシングにより生成される。ある態様において、インビトロ系でショウジョウバエ(Drosophila)が用いられる。この態様において、dsRNAはショウジョウバエ胚由来の可溶性抽出物と組み合わせられ、これにより組み合わせを生じる。dsRNAが約21〜約23ヌクレオチドのRNA分子にプロセッシングされる条件下で、該組み合わせは維持される。siRNA分子は、当業者に公知の多くの技術を用いて精製され得る。例えば、ゲル電気泳動によりsiRNAを精製し得る。あるいは、非変性カラムクロマトグラフィー等の非変性方法によりsiRNAを精製し得る。また、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール濃度勾配遠心分離、抗体を用いた親和性精製によりsiRNAを精製し得る。
【0116】
あるいは、RNAiコンストラクトはヘアピン構造の形状である(ヘアピンRNAと名付けられる)。ヘアピンRNAは外因的に合成され得るか、またはインビボでRNAポリメラーゼIIIプロモーターからの転写により形成され得る。哺乳類細胞における遺伝子サイレンシングのためのかかるヘアピンRNAの作製および使用例は、例えばPaddisonら, Genes Dev, 2002, 16:948-58; McCaffreyら, Nature, 2002, 418:38-9; McManusら, RNA, 2002, 8:842-50; Yuら, Proc Natl Acad Sci USA, 2002, 99:6047-52)に記載される。好ましくは、かかるヘアピンRNAは細胞中または動物中で作り変えられて、継続的で安定な所望の遺伝子の抑制を保証する。siRNAは細胞中でヘアピンRNAをプロセッシングすることにより精製され得ることが、当該分野で公知である。
【0117】
別の態様において、本発明は、mRNAの翻訳を阻害するために触媒作用によりmRNA転写産物を分解するよう設計された、リボザイム分子の使用に関する(例えば、1990年10月4日に公表されたPCT公開公報WO90/11364;Sarverら, 1990, Science 247:1222-1225;および米国特許第5,093,246号参照)。部位特異的な配列認識によりmRNAを切断するリボザイムを用いて特定のmRNAが破壊され得る際に、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的RNAと相補的な塩基対を形成するフランキング領域が指示する位置で、mRNAを切断する。標的mRNAが以下の2塩基の配列:5’-UG-3’を有することが唯一の要件である。ハンマーヘッドリボザイムの構築および生成は、当該分野に公知であり、HaseloffおよびGerlach, 1988, Nature, 334:585-591により十分に記載される。本発明のリボザイムもまた、テトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)中に天然に存在し(IVSまたはL-19IVS RNAとして公知)、広く記述されているもの等のRNAエンドエンドリボヌクレアーゼ(後述、「Cech型リボザイム」)を含む(例えば、Zaugら, 1984, Science, 224:574-578; ZaugおよびCech, 1986, Science, 231:470−475; Zaugら, 1986, Nature, 324:429-433; University Patent Inc.により公表された国際特許出願WO88/04300; BeenおよびCech, 1986, Cell, 47:207-216参照)。
【0118】
さらなる態様において、本発明はHSP20、14-3-3γ、14-3-3ηまたはコフィリンの遺伝子の発現を抑制するためのDNA酵素の使用に関する。DNA酵素はアンチセンスおよびリボザイム技術の両方のいくつかの機構的な特徴を含む。DNA酵素は、アンチセンスオリゴヌクレオチドのように、それが特定の標的核酸配列を認識するが、リボザイムのように、触媒的であり、特異的に標的核酸を切断するように設計される。簡潔に、標的配列を特異的に認識して、切断する理想的なDNA酵素を設計するために、当業者はまず、特有の標的配列を同定しなければならない。好ましくは、特有であるか、または実質的に特有な配列はおよそ18〜22ヌクレオチドのG/Cに富んだ領域である。高G/C含量は、DNA酵素と標的配列の間のより強い相互作用を保証することを補助する。DNA酵素を合成する際に、特異的なアンチセンス認識配列が、DNA酵素の二本のアームを含み、DNA酵素ループが二本の特異的なアーム間に配置されるように、酵素をメッセージに向けて導く特異的なアンチセンス認識配列が分割される。DNA酵素の作製および投与方法は、例えば米国特許第6,110,462号に見られ得る。
【0119】
V. 処置方法
sm活性化合物を用いて、平滑筋の欠損もしくは望ましくない収縮により生じるかもしくはそれらに関係する異常生理学的状態、または平滑筋を弛緩させるかもしくは弛緩を抑制するための治療的介入を要する異常生理学的状態を、処置または予防し得る。
【0120】
本発明のある態様は、気道平滑筋を弛緩させるための治療的有効量(mount)のsm活性化合物の動物への投与に関する。用語「気道平滑筋」とは、気管支または気管領域に並んだ平滑筋について言う。結果として、これらの化合物は、呼吸障害の処置または予防のための治療剤として投与され得る。用語「呼吸障害」とは、気道の収縮および血液ガスレベルまたは肺機能の変化に関与する、肺機能の何らかの障害について言う。例えば、気道の閉塞は、急性肺障害または閉塞性肺疾患の結果により生じる呼吸障害の構成要素となる。いくつかの気道閉塞は、最終的に生命を脅かす呼吸器機能不全を生じ得る。気道の閉塞は、肺気腫および気管支炎等の慢性の閉塞性肺疾患を患う患者に生じる。これらの患者は、しばしば重篤な気道閉塞の結果として、再発性の呼吸器機能不全の発症を経験する。肺気腫は、呼吸困難、身体的活動性の極端な制限、および死亡率のために重大な障害を生じ得る。
【0121】
また、気道の閉塞は、種々の刺激に対する気管気管支の増大した反応性を特徴とする障害である、喘息によっても生じ、呼吸困難、咳およびぜえぜえという息遣いにより示される気道の収縮を引き起こす。喘息患者は、しばしば生命を脅かし得る急性の気管支収縮の悪化を経験する。
【0122】
別の閉塞性の肺の疾患である線維症は、外分泌腺機能の異常により生じる。臨床的な症候としては、気道で閉塞および通気灌流不均等を生じる、過度の粘液の分泌、気管支腺の肥大、感染ならびに炎症性および構造的な変化が挙げられる。
【0123】
急性呼吸器機能不全は、閉塞性疾患のみでなく、肺炎、血栓塞栓症、左心室機能不全および気胸症の二次的な気道収縮の結果としても生じ得る(my)。急性呼吸器機能不全はまた、通気灌流不均等によっても生じ得る。
【0124】
呼吸障害の処置または予防に加えて、sm活性化合物はまた、診断的で、治療的な気管支鏡検査法も容易にし得る。用語「気管支鏡検査法」とは、柔軟な光ファイバー、または固い気管支鏡が、気管支の可視化、肺の生検またはブラッシング、分泌物の吸引、および薬理剤の送達のために気管気管支内に導入される手法について言う。
【0125】
気管支鏡検査法の複雑化、およびこれによる手法の完遂の障害物が、気管支痙攣である。以前に気管支痙攣の病歴を有する患者は、特に急性の痙攣の増加の危険性がある。従って、sm活性化合物を用いて気道平滑筋を弛緩し得、気管支鏡法により引き起こされる気管支痙攣をなくし得る。
【0126】
本発明の別の態様は、胃腸内平滑筋を弛緩するための治療的有効量(mount)のsm活性化合物の動物への投与に関する。用語「胃腸内平滑筋」とは、胃腸管の全領域に含まれる平滑筋について言う。かかる領域としては、限定されないが、食道、十二指腸、オッディ括約筋、胆汁管、回腸、S字結腸、膵管および総胆管が挙げられる。sm活性化合物は、胃腸内障害の処置または予防に用いられ得る。胃腸管の障害としては、アカラシア(下方食道括約筋の痙攣)、下痢、ダンピング症候群、過敏性腸が挙げられる。
【0127】
本発明のさらなる態様は、胃腸内平滑筋の収縮または痙攣を緩和するためのsm活性化合物の投与、およびこれにより内視鏡検査法の良好な完遂を容易にすることに関する。胃腸内平滑筋の収縮または痙攣は、臨床医が内視鏡検査法を首尾よく行なうことを可能にするためにしばしば克服しなければならない技術的な障害を課す。
【0128】
用語「内視鏡検査法」とは、検査および治療目的のために胃腸管内の直接的な可視化をもたらす胃腸管内に導入する器具を利用する診断的手法に関して言う。かかる目的としては直接的な可視化、生検、総胆管への接近、体液の吸引ならびに異物、ポリープおよび他の病変の除去が挙げられる。具体的な内視鏡検査法の例は、食道の内腔、胃および十二指腸の検査に利用される、食道胃-十二指腸鏡検査法である。別の例において、内視鏡的逆行性胆道膵管造影撮影法(ERCP)により、膵管、胆嚢を含む総胆管および全胆道の可視化が可能となる。内視鏡検査法のさらなる例は、結腸鏡検査法およびS字状結腸鏡検査法である。
【0129】
本発明の別の態様は、陰茎海綿体平滑筋を弛緩させるための治療的有効量(mount)のsm活性化合物の投与に関する。用語「陰茎海綿体」とは、拡張性の組織を構成し、尿道の周囲に位置する尿道海綿体と共に、陰茎の背側面に並んで位置する二つの平滑筋の領域について言う。この勃起性の組織は、動脈と静脈との間に散在する血管の不規則な海面様の系を構成する。勃起は、平滑筋の弛緩により、動脈抵抗の減少が生じ、結果として動脈中の陰茎への血流の増加が生じる際に起こる。
【0130】
平滑筋は勃起機能に重大な役割を担う。従って本発明の別の態様は、性的不能の処置のための治療的有効量(mount)のsm活性化合物の投与に関する。「性的不能」とは、勃起を獲得することまたは維持することができないことを特徴とする、男性の性的機能不全の状態について言う。
【0131】
生物の勃起の不能の原因としては、内分泌、薬物誘導性、局所的傷害、神経性および血管性が挙げられ得る。特に、性的不能は、抗ヒスタミン、抗高血圧、心因性剤および抗コリン作用等の薬物により生じる神経阻害の結果として生じ得る。性的不能はまた、内部側頭葉損傷、脊椎障害、および糖尿病性神経障害の結果生じる感覚器インプットの機能不全等の神経障害によっても生じる。性的不能のさらなる原因は、内因性の欠陥、または陰茎の外傷により生じる血管網への不十分な血流である。
【0132】
請求項にかかる本発明の別の態様は、膀胱平滑筋の弛緩のための治療的有効量のsm活性化合物の投与に関する。膀胱平滑筋としては、膀胱基底、膀胱体および近位尿道の膀胱平滑筋が挙げられる。また、sm活性化合物は、膀胱平滑筋の弛緩を含む、膀胱機能不全障害の処置に用いられ得る。かかる障害には、限定されないが、膀胱充填、体積および自制に関する問題が挙げられる。
【0133】
さらに、sm活性化合物を投与して、尿道および膀胱基底平滑筋の弛緩を引き起し得、これにより尿路の膀胱鏡検査を容易にする。用語「膀胱鏡検査」とは、診断的および治療的な目的で、尿道および膀胱の内部を可視化するための、光ファイバー性の機器の尿道および膀胱内への導入について言う。
【0134】
本発明の別の態様は、子宮平滑筋を弛緩するための治療的有効量のsm活性化合物の投与に関する。増加した子宮平滑筋の収縮により、早期分娩が促進される。従って、本発明のさらなる態様は、早期分娩の処置または予防のためのsm活性化合物の投与に関する。
【0135】
また、sm活性化合物を用いてファローピウス管平滑筋を弛緩し得る。ファローピウス管平滑筋は、子宮への卵の輸送における役割を担う。従って、sm活性化合物を用いて、卵輸送を調節し得るか、またはファローピウス管の腹腔鏡検査を容易にし得るか、または受精方法を容易にし得る。
【0136】
先に挙げられたものに加えて、本発明の方法および組成物は、例えば、心臓血管障害(例えば、高血圧、慢性心臓機能不全、左心室機能不全、脳卒中、クモ膜下傷害後の大脳血管痙攣、アテローム硬化症心臓疾患および網膜出血)、腎臓障害(例えば、腎静脈血栓症、腎臓インフラクション(kidney infraction)、腎動脈塞栓症、腎動脈狭窄および水腫、水腎炎)、増殖性疾患または障害(例えば、血管狭窄、心筋肥大、導管および/または耐性管(resistance vessel)の肥大および/または過形成、筋細胞肥大、ならびに線維芽細胞増殖性疾患)、炎症性疾患(例えば、SIRS(全身性炎症反応症候群)、敗血症、複数の外傷、炎症性腸(bowl)疾患、急性および慢性痛、慢性関節リウマチならびに変形性関節症)、アレルギー性障害(例えば、喘息、成人呼吸窮迫症候群、傷の治癒および瘢痕形成)、ならびにいくつかの他の障害および/または疾患(例えば、歯周病、月経困難症、早期分娩、病巣損傷後の脳水腫、散在性軸索損傷、再灌流傷害)の処置に医学的な有用性が見られる。
【0137】
ある特定の態様では、本発明は、個体に治療有効量の前記の血管作用性治療剤を投与することにより、血管緊張低下(vasorexalation)に関連する疾患(障害または状態)に苦しむ個体の処置方法を提供する。他の態様では、本発明は、個体に有効量の本発明の血管作用性治療剤を投与することにより、個体において血管緊張低下関連疾患の発症の予防または低減方法を提供する。これらの方法は、動物、より特別にはヒトの治療的および予防的処置を特に目指すものである。
【0138】
ある特定の態様では、本発明の方法および組成物は、血管形成術、血管ステント配置、動脈内膜切除、アテレクトミー、バイパス術(冠状動脈バイパス術;末梢血管バイパス術など)、血管移植術、器官移植、人工補装具埋没、微細血管再構成、整形外科的皮弁構成およびカテーテル定置からなる群より選択される施術を受けた、受けている、または受ける被験体において施される。
【0139】
具体的な態様では、本発明の方法および組成物は、気道の疾患または状態の処置または予防において使用され得る。本出願書類に開示した薬剤は、これらの気道特異的14-3-3イソフォームを特異的に標的化し、気道において気管支弛緩(bronchorelaxation)をもたらすことで確認できる。例示的な気道の疾患および状態としては、限定されないが、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症(CF)、呼吸困難(dispnea)、気腫、喘鳴、肺高血圧、肺線維症、過剰応答性気道、慢性気管支炎、気管支収縮、呼吸困難(difficult breathing)、肺気道障害または肺気道閉塞、肺血管収縮、呼吸障害、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、乳児呼吸促迫症候群(乳児RDS)および肺界面活性物質減少が挙げられる。持論(theory)に拘束されることを望まないが、本明細書に開示した薬剤は、気道特異的14-3-3イソフォーム(QiおよびMartinez, 2003, Radiat Res. 2003, 160 (2): 217-23)を特異的に標的化することにより、気道における弛緩を媒介し得る。
【0140】
喘息は、気道、主に、肺内外に空気を運ぶ小気管が冒される病気である。喘息に苦しむ人は、ほぼ常に炎症した(赤色)傷つきやすい気道を有する。本発明の化合物は、アトピー性および非アトピー性喘息の両方の処置に有用であり得る。用語「アトピー」は、一般的な環境性抗原に対するI型(即時型)過敏症反応の発現の遺伝的疾病素質をいう。したがって、表現「アトピー性喘息」は、本明細書で使用する場合、「アレルギー性喘息」(例えば、感作された人におけるアレルギー症状発現である気管支喘息)と同義であることを意図する。用語「非アトピー性喘息」は、本明細書で使用する場合、他のすべての喘息、特に、多様な要因、例えば、激しい運動、刺激物粒子、および心理的ストレスなどによって誘発される本質的または「真性(true)」喘息を指すことを意図する。
【0141】
COPDは、喘息の場合と同様、気道の炎症を特徴とするが、患者の気管支肺胞洗浄液および痰において見られる炎症細胞は、好酸球ではなく好中球であり、不可逆的で進行性の気道閉塞をもたらす。COPDはまた、障害のない単純な慢性気管支炎から、慢性呼吸不全を伴う重症な障害状態の患者に及ぶ広範なバリエーションを伴って臨床的に現れる。慢性気管支炎は、大軟骨性気道(large cartilaginous airway)内の粘膜下組織の粘液分泌腺の過形成および肥厚と関連している。杯細胞過形成、粘膜および粘膜下の炎症細胞浸潤、浮腫、線維症、粘液栓ならびに平滑筋増加は、すべて終末および呼吸細気管支において見られるものである。小気道は、主な気道閉塞部位であることが知られている。気腫は、肺胞壁の崩壊および肺弾性の低下を特徴とする。
【0142】
かかる方法のある特定の態様では、1種類以上の血管作用性治療剤が一緒に(同時に)または異なる時点で(逐次)投与され得る。また、血管作用性治療剤は、別の型の血管緊張低下関連疾患の処置のための血管作用性化合物とともに投与され得る(後述の「医薬製剤」を参照)。2つの型の化合物を同時に、または逐次投与してもよい。
【0143】
ある特定の態様では、遺伝子療法は、治療用ポリペプチド(例えば、14-3-3、HSP20またはコフィリンの断片)をコードする核酸を用いて適用され得る。あるいは、アンチセンス核酸またはRNAi構築物を、血管緊張低下に関与する標的遺伝子の発現(例えば、14-3-3、HSP20またはコフィリン)を低減または阻害するために使用し得る。好ましくは、かかる遺伝子療法は、心血管組織に特異的である。
【0144】
本発明のある特定の態様は、傷害または損傷された組織の処置のための、該傷害または損傷された組織部位(例えば、損傷された血管)への本発明の血管作用剤の局所(local)投与に関する。かかる損傷は、侵襲的手法での医療用機器の使用に起因し得る。例えば、例えば血管形成術による詰まった血管構造の処置では、損傷は血管に生じ得る。かかる損傷は、本明細書に記載した主題の血管作用性化合物の使用により処置され得る。損傷された組織の修復に加え、かかる処置はまた、再閉塞(例えば、再狭窄)を軽減および/または遅延させるために使用され得る。主題の化合物および組成物は、限定されないが、薬物送達カテーテル、注入カテーテル、薬物送達ガイドワイヤ、移植可能な医療用機器などが挙げられる当業者に知られた任意の方法を用い、局所に送達することができる。一態様では、損傷された領域のすべてまたはほとんどを、本明細書に記載の血管作用剤それ自体で、またはコーティングマトリックスの機能を果たす薬学的に許容され得る担体または賦形剤にてコートする。このコーティングマトリックスは、液体、ゲルまたは半固体の粘稠性のものであり得る。
【0145】
心血管の疾患および障害を処置する具体的な一態様では、本発明の血管作用剤は、所望の位置への化合物の送達に適した動脈内または静脈内カテーテルを用いることにより、損傷された血管表面または非血管表面に直接静脈内投与され得る。損傷された動脈表面の位置は、当業者が利用可能な常套的で周知の方法を用いて行なわれるX線血管造影法などの従来の診断方法によって決定され得る。また、動脈内または静脈内カテーテルを用いた血管作用性治療剤の投与は、当業者に周知の常套的な方法を用いて行なわれる。典型的には、該化合物または組成物は、通常、血管形成術バルーン膨張のときに頚動脈または冠状動脈に導入される一次施術に使用したのと同じカテーテルによって血管形成術の部位に送達される。
【0146】
疾患(状態)および治療の性質に応じて、その他の治療を施術(administer)している間および/またはその後に、本発明の血管作用剤の投与を継続し得る。血管作用剤の投与は、単回投薬または複数回投薬で行ない得る。ある場合では、血管作用剤の投与は、従来治療の少なくとも数日前に開始され、一方、別のある場合では、投与は、従来治療の施術の直前または同時のいずれかに開始される。
【0147】
VI. 医薬製剤
ある特定の態様では、本発明の治療剤は、薬学的に許容され得る担体とともに製剤化される。かかる治療剤は、単独で、または医薬製剤(組成物)の一成分として投与され得る。該化合物は、任意の簡便な様式でのヒト医学または獣医学における使用のための投与のために製剤化され得る。ある特定の態様では、医薬用調製物に含まれる化合物は、それ自体が活性であってもよく、プロドラッグであってもよい。
【0148】
加湿剤(wetting agent)、乳化剤およびラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの滑剤ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた該組成物中に存在し得る。
【0149】
sm-活性剤(化合物)の製剤としては、経口、肺(鼻を含む)、局所(topical)、非経口、経皮的心膜内送達および/または膣内投与に適したものが挙げられる。製剤は、単位投薬形態にて簡便に提示され得、調剤の技術分野でよく知られた任意の方法によって調製され得る。単一の投薬形態を作製するために担体材料と組合せ得る活性成分の量は、処置対象の宿主、具体的な投与様式に応じて異なる。単一の投薬形態を作製するために担体材料と組合せ得る活性成分の量は、一般的に、治療効果をもたらす化合物の量である。
【0150】
このような製剤または組成物の調製方法は、本発明の治療剤および担体ならびに、任意に1種類以上の副成分を合わせることを含む。一般に、製剤は、液体担体もしくは微細に細分化された固体担体、またはその両方を用いて調製し、次いで、必要であれば、製品を成形し得る。
【0151】
ある特定の態様では、本明細書に開示したsm-活性化合物は、被験体の吸入、呼吸、鼻腔内投与または肺内滴注(肺の内部)のいずれかによって、任意の適当な手段により呼吸器系内に投与され得る。気道は、口腔咽頭部および喉頭を含む上気道、それに続く気管、続いて分岐部、さらに内部の気管支および細気管支を含む下気道を含む。上気道および下気道は、誘導気管支と呼ばれる。次いで、終末細気管支は呼吸細気管支に分かれ、次いで最終の呼吸ゾーンである肺胞または深肺に至る。本発明において、吸入による投与は、経口および/または鼻腔内であり得る。エーロゾル送達のための医薬用機器の例としては、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)および空気噴射型ネブライザーが挙げられる。主題のsm-活性剤の送達に容易に適合され得る例示的な吸入による核酸送達系は、例えば、米国特許第5,756,353号;同第5,858,784号およびPCT特許出願W098/31346;W098/10796;WO00/27359;WO01/54664;W002/060412に開示されている。sm-活性剤の送達に使用され得る他のエーロゾル製剤は、米国特許第6,294,153号;同第6,344,194号;同第6,071,497号、およびPCT特許出願W002/066078;W002/053190;WO01/60420;WO00/66206に開示されている。さらに、sm-活性剤の送達方法は、吸入により他の低分子を送達する際に使用されるもの、例えば、Templinら, Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2000, 10:359-68;Sandrasagraら, Expert Opin Biol Ther,2001,1:979-83;Sandrasagraら, Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2002,12:177-81に記載されたものから適合させ得る。
【0152】
好ましくは、これらは、粉末化された、または液体の鼻腔内用、肺内用、呼吸用または吸入用粒子から構成されるエーロゾルまたはスプレーを作製することにより投与される。気管作用性化合物を含む呼吸用または吸入用粒子は、被験体により、例えば吸入によって、または鼻腔内投与によって、または気道もしくは肺自体内への滴注によって吸入される。製剤は、本発明にしたがい、吸入時に口および喉頭を通過して気管支および肺の肺胞内へと続くのに充分小さい大きさの呼吸用または吸入用粒子を含む気管作用性化合物の呼吸用または吸入用の液体または固体粒子を含み得る。一般に、約0.05、約0.1、約0.5、約1または約2〜約4、約6、約8または約10μmの大きさの範囲の粒子。より特別には、約0.5〜約5μm未満の大きさが呼吸用または吸入用である。エーロゾルまたはスプレー内に含まれる呼吸用でない大きさの粒子は、咽喉内に沈着し、嚥下される傾向にある。したがって、エーロゾル内の呼吸用でない粒子の量は、好ましくは最小限に抑える。鼻腔内投与または肺内滴注では、約8、約10、約20または約25〜約35、約50、約100、約150、約250または約500μmの範囲の粒径が、鼻腔内での保持を確保するため、または肺内への滴注および直接沈着のために好ましい。任意で、鼻腔内エーロゾルまたは吸入による投与は、ネブライザー(例えば、空気噴射型ネブライザー)、乾燥粉末吸入器(DPI)または定量吸入器(MDI)の使用により行なわれ得る。液体製剤は、特に、新生児および幼児に投与する場合、気道(鼻)および肺内に噴出させるのがよい。
【0153】
エーロゾルを作製するための気管作用性化合物の液状医薬用組成物は、気管作用性化合物を滅菌された発熱物質無含有水などの安定なビヒクルと合わせることにより調製し得る。微粉化された活性化合物の呼吸用乾燥粒子を含有する固体微粒状組成物は、乾燥活性化合物を乳鉢と乳棒によって磨砕し、次いで、微粉化された組成物を400メッシュふるいに通し、大集塊を分解または分離させることにより調製され得る。血管作用性化合物から構成される固体微粒状組成物は、任意に、エーロゾルの形成を容易にするのに役立つ分散剤を含み得る。好適な分散剤はラクトースであり、これは、活性化合物と、任意の適当な比(例えば、重量基準で1対1の比)でブレンドしてもよい。気管作用性化合物を含む液体粒子のエーロゾルは、任意の適当な手段によって、例えばネブライザー(例えば、米国特許第4,501,729号を参照)を用いて作製され得る。ネブライザーは、狭いベンチュリオリフィスを介した圧縮ガス、典型的には、空気または酸素の加速、または超音波攪拌のいずれかによって、活性成分の溶液または懸濁液を治療用エーロゾルミストに変換する市販の機器である。ネブライザーにおける使用のための好適な組成物は、液体担体中に含まれる活性成分からなり、活性成分が組成物の40%w/wまでを構成するが、好ましくは、20%w/w未満の担体が、典型的には水または希釈アルコール水溶液、好ましくは、例えば塩化ナトリウムの添加によって体液と等張性にしたものである。任意の添加剤としては、保存剤、組成物が滅菌的に調製されたものでない場合、例えばメチルヒドロキシベンゾアート、抗酸化剤、香味剤、揮発性油、緩衝剤および界面活性剤が挙げられる。気管作用性化合物を含む固体粒子のエーロゾルも同様に、任意の販売されている微粒状医薬エーロゾル発生器を用いて作製され得る。固体微粒状医薬を被験体に投与するためのエーロゾル発生器は、先に説明した呼吸用である粒子を生成させ、所定の定量医薬を含有するある容量のエーロゾルをヒト投与に適した速度で発生させる。かかるエーロゾル発生器の例としては、定量吸入器および注入器が挙げられる。
【0154】
ある特定の態様では、全身性投与もまた、活性成分を含有する粉末、すなわち、微粒状組成物の吸入または注入によってなされ得る。例えば、粉末形態の活性成分は、微粒状製剤のエーロゾル化のための従来の機器を用い、肺内に吸入され得る。また、微粒状製剤としての活性成分は、通気法によって投与され得る、すなわち息を吹き込むか、あるいはまた、単純な散布によって、もしくは微粒状製剤のエーロゾル化のための従来の機器を用い、適当な身体組織または腔内に分散され得る。また、このような微粒状組成物は、よく理解された原理およびよく知られた材料に従い、活性成分の遅延放出、持続放出および/または制御放出を提供するために製剤化され得る。ヒト肺は、数分から数時間の範囲の期間で、加水分解により切断され得る沈着エーロゾルを除去または速やかに分解し得る。上気道では、繊毛上皮は、粒子を気道から口に向かって一掃する「粘膜線毛エクスカレーター(excalator)」に寄与する。Pavia, D., "Lung Mucociliary Clearance," in Aerosols and the Lung: Clinical and Experimental Aspects, Clarke, S. W. および Pavia, D.編, Butterworths, London, 1984。深肺では、肺胞のマクロファージが沈着直後の粒子に食作用し得る。深肺すなわち肺胞は、吸入された全身送達用の治療用エーロゾルの主な標的である。全身送達が所望される状況では、主題のsm-活性化合物を、任意に微細粒子として製剤化する。
【0155】
ある好ましい態様では、エーロゾル化されたsm-活性剤を微細粒子として製剤化する。0.5〜10μmの間の直径を有する微細粒子は肺を貫通し得、天然バリアのほとんどを通過し得る。咽喉を迂回するためには、典型的には10μm未満の直径が必要とされ、吐き出されるのを回避するためには、典型的には0.5μm以上の直径が必要とされる。したがって、一態様において、本発明の微細粒子は20μm未満の平均直径を有する。
【0156】
ある好ましい態様では、主題のsm-活性剤は、例えば、0.5〜10μmの間の直径を有する粒子に凝集し得る、例えば、0.5〜10μmの間の直径を有する超分子複合体に製剤化される。
【0157】
他の態様では、主題のsm-活性剤は、肺送達のために適切に製剤化されたリポソームまたは超分子複合体にて提供される。
【0158】
(i). 超分子複合体
ある特定の態様では、主題のsm-活性剤は、「超分子複合体」の一部として製剤化される。さらに例示するため、sm-活性剤を、少なくとも1種類のポリマーと接触させて複合体を形成し、次いで、複合体のポリマーを、sm-活性剤および多次元ポリマーネットワーク(multi-dimensional polymer netwok)を含有する超分子複合体が形成されるのに充分な条件下で処理し得る。ポリマー分子は、直鎖または分枝鎖であり得る。したがって、2つ以上のポリマー分子の群は、直鎖、分枝鎖または直鎖と分枝鎖ポリマーの混合物であり得る。複合体は、当該技術分野で知られた任意の適当な手段によって調製され得る。例えば、複合体は、sm-活性剤をポリマー(例えば、シクロデキストリン修飾ポリマー)と、単に接触、混合または分散させることにより形成され得る。また、複合体は、直鎖または分枝ポリマーを形成し得る、同じであっても異なっていてもよいモノマーを、sm-活性剤の存在下で重合することにより調製され得る。複合体は、例えば、sm-活性剤の細胞取込みに向けるため、あるいはまたsm-活性剤のインビボ組織または細胞分布に影響を与えるために、少なくとも1つの配位子でさらに修飾してもよい。複合体は任意の適当な形態をとり得、好ましくは、粒子の形態である。
【0159】
ある好ましい態様では、主題のsm-活性剤は、β-シクロデキストリン含有ポリマー(βCD-ポリマー)を用いて製剤化される。βCD-ポリマーは、ある種の低分子有機系薬剤とともにポリプレックスを形成することができる。βCD-ポリマーは、例えば、ジアミノシクロデキストリンモノマーAとジイミデートコモノマーBとの縮合によって合成され得る。シクロデキストリンは、α-(1,4)結合した天然に存在するD(+)-グルコピラノース単位を含有する環状多糖である。最も一般的なシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンであり、それぞれ、6、7または8個のグルコピラノース単位を含有する。主題のsm-活性剤の送達に容易に適合させ得る例示的なシクロデキストリン送達系は、例えば、GonzalezらのPCT特許出願WO00/01734およびDavisのPCT特許出願WO00/33885に記載されている。
【0160】
ある特定の態様では、超分子複合体は、粒子、例えば、20〜500ナノメートル(nm)の間、さらにより好ましくは20〜200nmの間の平均直径を有する粒子の製剤に凝集している。
【0161】
(ii). 微細粒子を形成するためのポリマー
上記の超分子複合体の他、微細粒子を形成するのに、いくつかの他のポリマーが使用され得る。本明細書で使用する場合、用語「微細粒子」は、ミクロスフェア(一様な球形)、マイクロカプセル(芯およびポリマーの外側層を有する)、および不定形状の粒子を含む。
【0162】
ポリマーは、好ましくは、sm-活性剤の放出が所望される時間内で、またはその後比較的早くに、一般的には1年、より典型的には数ヶ月、さらにより典型的には数日〜数週間の範囲内で生分解され得る。生分解は、微細粒子の分解、すなわち微細粒子を形成するポリマーの崩壊および/またはポリマー自体の崩壊のいずれかを指し得る。これは、ジケトピペラジンの場合は、粒子がその中に入って投与される担体のpHから放出部位でのpHまでの変化の結果起こり得、ポリ(ヒドロキシ酸)の場合は加水分解の結果起こり得、アルギン酸塩などのポリマーのイオン結合によって形成される微細粒子の場合は、微細粒子からのカルシウムなどのイオンの拡散の結果起こり得、多くの多糖類およびタンパク質の場合は酵素作用の結果起こり得る。ある場合では、線形放出が最も有用であり得るが、別のある場合では、パルス放出または「バルク(bulk)放出」が、より有効な結果がもたらされ得る(may provided)。
【0163】
代表的な合成材料は、ジケトピペラジン、ポリ(ヒドロキシ酸)、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびそのコポリマー、ポリ無水物、ポリエステル、例えばポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニル化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニルおよびポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリシロキサン、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマー、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリウレタンおよびそのコポリマー、セルロース(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、および硫酸セルロースナトリウム塩(cellulose sulphate sodium salt)が挙げられる)、ポリ酪酸(butic acid)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)である。
【0164】
天然ポリマーとしては、アルギン酸塩ならびに他の多糖類、例えばデキストランおよびセルロース、コラーゲン、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインならびに他のプロラミンおよび疎水性タンパク質、そのコポリマーおよび混合物が挙げられる。本明細書で使用する場合、その化学的誘導体は、当業者によって常套的に作製される置換体、化学的基、例えばアルキル、アルキレンの付加物、ヒドロキシル化物、酸化物、および他の修飾体をいう。
【0165】
生体接着性(bioadhesive)ポリマーとしては、H. S. Sawhney, C. P. Pathak および J. A. Hubell in Macromolecules, 1993, 26, 581-587に記載された生体内分解性(bioerodible)ヒドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、およびポリアクリレートが挙げられる。
【0166】
さらに例示するため、マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出および当業者に知られた他の方法によって、ポリマーで形成し得る。薬物送達用ミクロスフェアを作製するために開発された方法は、文献に記載されており、例えば、Mathiowitz および Langer, J. Controlled Release 5, 13-22 (1987);Mathiowitzら, Reactive Polymers 6, 275-283 (1987);ならびにMathiowitzら, J. Appl. Polymer Sci. 35, 755-774 (1988)に記載されている。方法の選択は、例えば、Mathiowitzら, Scanning Microscopy 4, 329-340 (1990);Mathiowitzら, J. Appl. Polymer Sci. 45,125-134 (1992);およびBenitaら, J. Pharm. Sci. 73,1721-1724 (1984)に記載されている、ポリマーの選択、大きさ、外形および所望される結晶性に依存する。
【0167】
例えば、Mathiowitzら, (1990)、Benita、およびJaffeに対する米国特許第4,272,398号に記載された溶媒蒸発では、ポリマーを揮発性有機溶媒に溶解する。可溶性形態または微細粒子として分散されたもののいずれかのsm-活性剤、ポリマー溶液に添加し、混合物を、ポリ(ビニルアルコール)などの表面活性剤を含有する水相中に懸濁する。得られたエマルジョンを、有機溶媒の大部分が蒸発し、固体ミクロスフェアが残留するまで攪拌する。
【0168】
一般に、ポリマーは塩化メチレンに溶解され得る。数種類の異なるポリマー濃度、例えば0.05〜0.20 g/mlの間が使用され得る。溶液に薬物を負荷した後、溶液を、1%(w/v)ポリ(ビニルアルコール)(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)を含有する、激しく攪拌されている蒸留水200 mlに懸濁する。4時間の攪拌後、有機溶媒はポリマーから蒸発され、得られたミクロスフェアを水で洗浄し、凍結乾燥器内で一晩乾燥するか、または単純乾燥する。
【0169】
異なる大きさ(1〜1000μm、しかしエーロゾル適用の場合は、10μm未満)および形態を有するミクロスフェアが、この方法によって得られ得、この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンなどの比較的安定なポリマーのために有用である。しかしながら、ポリ無水物などの不安定性ポリマーは、水への曝露により崩壊され得る。このようなポリマーには、ホットメルトカプセル化(hot melt capsulation)および溶媒除去が好ましかろう。
【0170】
ホットメルトカプセル化では、ポリマーをまず溶融し、次いで、sm-活性剤の固体粒子、好ましくは、適切な大きさに篩い分けしたものと混合する。混合物をシリコーン(silicone)油)などの非混和性溶媒中に連続的に攪拌しながら懸濁し、該ポリマーの融点の5℃上に加熱する。いったんエマルジョンが安定化したら、これを、ポリマー粒子が固化するまで冷却する。得られたミクロスフェアを石油エーテルでのデカンテーションによって洗浄し、自由に流動する粉末を得る。この方法により、1〜1000μmの間の直径を有するミクロスフェアが得られ得る。この手法によって調製される球の外側表面は、通常、平滑で密である。この手順は、水不安定性ポリマーの場合に有用であるが、1000〜50000の間の分子量を有するポリマーでの使用に限定される。
【0171】
噴霧乾燥では、ポリマーを塩化メチレン(0.04 g/ml)などの有機溶媒に溶解する。既知量のsm-活性剤をポリマー溶液に懸濁(不溶性の場合)または共溶解(可溶性の場合)する。次いで、溶液または分散液を噴霧乾燥する。ポリマーの選択に依存する形態を有する1〜10μmの間の範囲の直径のミクロスフェアが得られ得る。
【0172】
アルギン酸塩もしくはポリホスファジンまたは他のジカルボキシル酸ポリマーなどのゲル型ポリマーで構成されるヒドロゲルミクロスフェアは、ポリマーを水溶液に溶解し、該物質を懸濁して混合物中に組み込み、ポリマー混合物を、窒素ガス噴出器を備えた微細液滴形成機器を通して押出し成形することにより調製され得る。得られたミクロスフェアは、例えば、Salibら, Pharmazeutische Industrie 40-111A, 1230 (1978)に記載のようなゆっくりと攪拌されているイオン硬化浴(ionic hardening bath)中に落下する。この系の利点は、例えば、Limら, J. Pharm. Sci. 70, 351-354 (1981)に記載のようにして、ミクロスフェアの表面を、製作後に、ポリリシンなどのポリカチオン系ポリマーでコーティングすることにより、さらに修飾するのが可能なことである。例えば、アルギン酸塩の場合、アルギン酸塩をカルシウムイオンでイオン的に架橋し、次いで、製作後に微細粒子の外表面をポリリシンなどのポリカチオンで架橋することにより、ヒドロゲルを形成することができる。ミクロスフェアの粒径は、種々の大きさの押出機、ポリマー流速およびガス流速を用いて制御する。
【0173】
キトサンミクロスフェアは、ポリマーを酸性溶液に溶解し、トリポリリン酸塩で架橋することにより調製され得る。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)ミクロスフェアは、ポリマーを酸溶液に溶解し、ミクロスフェアを鉛イオンで沈殿させることにより調製される。アルギン酸塩/ポリエチレンイミン(PEI)は、アルギン酸塩マイクロカプセル上のカルボキシル基の量を低下させるために調製され得る。経口投与のための製剤は、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(フレーバー基剤、通常、スクロースおよびアカシアもしくはトラガカントを用いる)、粉剤、顆粒剤の形態で、または溶液または水性もしくは非水性液中の懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の液体エマルジョンとして、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどと用いる)としておよび/またはマウスウォッシュとして存在し得、各々、所定の量の薬剤を活性成分として含有する。薬剤はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与され得る。
【0174】
経口投与のための固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤、顆粒剤など)では、1種類以上の本発明の治療剤を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1種類以上の薬学的に許容され得る担体および/または以下: (1) デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2) カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤;(3) グリセロールなどの湿潤剤(humectant);(4) 寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5) パラフィンなどの溶解遅延剤;(6) 第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7) 例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの加潤剤;(8) カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤;(9) タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの滑剤;ならびに(10) 着色剤のいずれかと混合してもよい。カプセル、錠剤および丸剤の場合、医薬用組成物は、緩衝剤もまた含み得る。また、同様の型の固体組成物は、ラクトースすなわち乳糖などの賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールなどを用い、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。
【0175】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられる。活性成分に加え、液体投薬形態は、当該技術分野で一般的に使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物を含有し得る。不活性希釈剤の他に、経口用組成物は、アジュバント、例えば加湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、着色剤、芳香剤、および保存剤もまた含み得る。
【0176】
懸濁液は、活性化合物に加え、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにその混合物などの懸濁剤を含有し得る。
【0177】
特に、本発明の組成物は、皮膚または粘膜のいずれかに局所投与され得る。局所用製剤は、皮膚または角質層への浸透向上剤として有効であることが知られた多種多様な薬剤の1種類以上をさらに含み得る。これらの例は、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。さらなる薬剤は、製剤を化粧用として許容可能にするためにさらに含めてもよい。これらの例は、脂肪、ワックス、油、染料、香料、保存剤、安定剤、および表面活性剤である。また、当該技術分野で知られたものなどの角質溶解剤を含めてもよい。例は、サリチル酸および硫黄である。
【0178】
局所または経皮投与のための投薬形態としては、粉剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、貼付剤、および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容され得る担体、および必要であり得る任意の保存剤、緩衝剤または噴射剤と混合され得る。軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、血管作用剤に加え、賦形剤、例えば動物脂肪および植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはその混合物などを含有し得る。
【0179】
粉剤およびスプレーは、治療剤に加え、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などを含有し得る。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素などの通例の噴射剤およびブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素をさらに含有し得る。
【0180】
非経口投与に好適な医薬組成物は、1種類以上の治療剤を、1種類以上の薬学的に許容され得る滅菌された等張性の水性または非水溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用直前に滅菌された注射用溶液または分散液に再構成され得る滅菌された粉剤であって、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を対象とするレシピエントの血液と等張性にする溶質または懸濁剤または増粘剤を含有し得るものとの組合せで含み得る。本発明の医薬組成物において使用され得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適当なその混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機系エステルが挙げられる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合は必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。
【0181】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば保存剤、加湿剤、乳化剤および分散剤を含有し得る。微生物による作用の抑制は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸(phenol sorbic acid)などを含めることによって確保され得る。また、等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを組成物に含めることが望ましい場合もある。また、注射用医薬用形態の長期間の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらされ得る。
【0182】
注射用形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの1種類以上の治療剤を生分解性ポリマーのマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製され得る。ポリマーに対する薬物の比、および用いる具体的なポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御し得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。また、蓄積注射用製剤も、薬物を、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン内に封入することにより調製される。
【0183】
ある特定の態様では、本発明の主題の方法は単独で使用され得る。あるいは、主題の方法は、平滑筋の正常な緊張を調節するため、および再狭窄およびアテローム性動脈硬化などの血管緊張低下関連疾患ならびに喘息などの気管支弛緩関連疾患を処置するために向けられる他の従来の治療用アプローチとの組合せで使用され得る。例えば、かかる方法は、他の従来のsm-活性化合物との組合せで使用され得る。本発明により、従来のsm-活性化合物の有効性が、本発明のsm-活性治療剤(前述)の使用により増強され得ることが認識される。
【0184】
多様な従来の化合物で、sm-活性 (例えば、血管作用性または気管作用性)活性を有することが示されている。これらの化合物は、平滑筋の正常な緊張を調節する(例えば、血管を弛緩または収縮させる)ための医薬用薬剤として使用されている。2種類以上の異なる処置を組み合わせた場合、その処置は、相乗的に功を奏し、処置の各々の投薬の低減を可能にし得、それにより高投与量で各化合物によってもたらされる、起こり得る有害な副作用が低減されることが示されている。本発明の治療剤を別の従来のsm-活性化合物との組合せで、同時または逐次投与する場合、かかる治療剤は、主題の薬剤の治療効果を増強すること、またはかかる薬剤に対する細胞の耐性を克服することが示されている。これにより、sm-活性剤の投薬量の減少が可能になり、それにより、望ましくない副作用が低減されるか、または耐性細胞におけるsm-活性剤の有効性が回復する。
【0185】
かかる同席療法に使用され得る好適な従来の医薬用化合物としては、限定されないが、カリウムチャネル活性化剤、カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬、長期および短期作用性αアドレナリン作用性受容体アンタゴニスト、プロスタグランジン、ホスホジエステラーゼ阻害薬、アデノシン、麦角アルカロイド類、血管作用性腸ペプチド、ドーパミンアゴニスト、オピオイド拮抗薬、エンドセリンアンタゴニスト、トロンボキサン阻害薬などが挙げられる。
【0186】
例えば、従来の医薬用化合物としては、限定されないが、一酸化窒素供与体;抗血栓剤(例えば、ヘパリン、共有結合ヘパリン(covalent heparin)、ヒルジン、ヒルログ、クーマジン、プロタミン、アルガトロバン、D-フェニルアラニル-L-ポリ-L-アルギニルクロロメチルケトンなど);血栓溶解剤(例えば、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化剤など);フィブリン溶解剤;血管痙攣阻害薬;カリウムチャネル活性化剤(例えば、ニコランジル、ピナシジル、クロマカリム、ミノキシジル、アプリルカリム(aprilkalim)、ロプラゾラムなど);カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、ガロパミル(gallopamil)、ニルジピン(niludipine)、ニモジピン、ニカルジピンなど);降圧剤(例えば、HYTRIN(登録商標)など);抗菌剤または抗生物質(例えば、アドリアマイシンなど);抗血小板剤(例えば、アスピリン、チクロピジン(ticlopidine)、糖蛋白IIb/IIIa阻害薬、表面糖蛋白受容体など);抗有糸分裂剤、抗増殖剤または微小管阻害薬(例えば、タキサン類、コルヒチン、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、フルオロウラシル、アドリアマイシン、ムタマイシン、ツベルシジン(tubercidin)、エポチロン(epothilone)AまたはB、ディスコデルモリド(discodermolide)など);抗分泌剤(例えば、レチノイドなど);リモデリング阻害薬;アンチセンスヌクレオチド(例えば、デオキシリボ核酸など);抗癌剤(例えば、クエン酸タモキシフェン、アシビシン(acivicin)、ビゼレシン(bizelesin)、ダウノルビシン、エピルビシン(epirubicin)、ミトザントロンなど);ステロイド類(例えば、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン、β-エストラジオールなど);非ステロイド系抗炎症剤(NSAID);COX-2阻害薬;5-リポキシゲナーゼ(5-LO) 阻害薬;ロイコトリエンB4(LTB4)受容体アンタゴニスト;ロイコトリエンA4(LTA4)加水分解酵素阻害薬;5-HTアゴニスト;HMG-CoA阻害薬;H2受容体アンタゴニスト;抗腫瘍剤、トロンボキサン阻害薬;うっ血除去薬;利尿薬;鎮静性または非鎮静性の抗ヒスタミン薬;誘導性一酸化窒素シンターゼ阻害薬;オピオイド、鎮痛薬;プロトンポンプ阻害薬;イソプロスタン(isoprostane)阻害薬;血管作用剤;B-アゴニスト;抗コリン作用薬;マスト細胞安定剤;免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、エベロリマス(everolimus)、アクチノマイシンDなど);成長因子アンタゴニストまたは抗体(例えば、トラピジル(trapidal)(PDGFアンタゴニスト)、アンギオペプチン(angiopeptin)(成長ホルモンアンタゴニスト)、アンギオジェニンなど);ドーパミンアゴニスト(例えば、アポモルフィン、ブロモクリプチン、テストステロン、コカイン、ストリキニンなど);生物学的薬剤(例えば、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、細胞性成分など);アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬;アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト;レニン阻害薬;フリーラジカル捕捉剤、鉄キレート化剤または抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、αトコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキサミン、21-アミノステロイドなど);性ホルモン(例えば、エストロゲンなど);抗ポリメラーゼ(antipolymerases)(例えば、AZTなど);抗ウイルス剤(例えば、アシクロビル、ファムシクロビル(famciclovir)、塩酸リマンタジン(rimantadine)、ガンシクロビルナトリウム、Norvir(登録商標)、Crixivan(登録商標)など);光ダイナミック療法剤(例えば、5-アミノレブリン酸、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン、ヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラメチルヘルナトポルフィリン(hernatoporphyrin)、ローダミン123など);抗体標的化治療剤;ならびに遺伝子療法剤が挙げられる。
【0187】
別の例として、従来の医薬用化合物は、他の生物活性剤、例えば、喘息、COPD、およびアレルギー性鼻炎のために現在処方される薬物を含む。これらとしては、β-2アドレナリン作用性アゴニスト、例えばエフェドリン、イソプロテレノール、イソエタリン、エピネフリン、メタプロテレノール、テルブタリン、フェノテロール、プロカテロール、アルブテロール、サルブタモール、ピルブテロール、フォルモテロール、ビロテロール(biloterol)、バムブテロール(bambuterol)、サラメテロール(salameterol)およびセレチド(seretide)、とりわけ、他の抗コリン作用剤;抗ヒスタミン剤;アデノシンAl、A2bおよびA3受容体アンタゴニスト、例えばアンチセンスオリゴ、とりわけ、アデノシンA2aアゴニスト;ならびにグルココルチコステロイドが挙げられる。
【0188】
さらなる態様において、本発明の組成物は、免疫応答調節剤、抗増殖剤、コルチコステロイド、血管形成抑制(angiostatic)ステロイド、抗寄生虫薬、抗緑内障薬、抗生物質、アンチセンス化合物、分化調節剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、および非ステロイド系抗炎症薬から選択される1種類以上の薬剤をさらに含む。
【0189】
VII. 医療用機器のコーティング
本発明の別の局面は、コートされた医療用機器に関する。例えば、ある特定の態様では、主題の本発明は、少なくとも1つの表面に付着させたコーティングを有する医療用機器であって、コーティングが主題のポリマーマトリックスおよび本発明のsm-活性剤を含む医療用機器を提供する。かかるコーティングは、外科用器具、例えば、ねじ、プレート、ワッシャー、縫合糸、プロテーゼ固定具、鋲、ステープル、導線、弁、膜に適用され得る。該機器は、カテーテル、移植可能な血管アクセスポート、血液貯蔵バッグ、血液用チューブ(tubing)、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管の移植片、大動脈内バルーンポンプ、心臓弁、心血管縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、体外機器、血液フィルター、血液透析ユニット、血液灌流ユニット、血漿瀉血ユニット、および血管における配置に適合させたフィルターであり得る。
【0190】
本発明によるいくつかの態様では、ポリマーを形成するためのモノマーを、sm-活性剤と合わせて混合し、モノマー溶液中でsm-活性剤の均一な分散液を作製する。次いで、分散液をステントまたは他の機器に、従来のコーティング方法に従って塗布し、その後、架橋プロセスを、UV光などの従来の開始剤によって開始する。本発明による他の態様では、ポリマー組成物をsm-活性剤と合わせ、分散液を形成する。次いで、分散液を医療用機器の表面に塗布し、ポリマーを架橋させて固体コーティングを形成する。本発明による他の態様では、ポリマーおよびsm-活性剤を適当な溶媒と合わせて分散液を形成し、次いで、これを、慣用の様式でステントに塗布する。次いで、溶媒を加熱蒸発などの従来法によって除去すると、ポリマーおよびsm-活性剤(一緒に持続放出薬物送達系を形成する)がステント上にコーティングとして残存するという結果がもたらされる。sm-活性剤をポリマー組成物に溶解する同様の方法を用いてもよい。
【0191】
本発明によるいくつかの態様では、該系は、比較的硬質であるポリマーを含む。他の態様では、該系は、軟質で展性のポリマーを含む。さらに他の態様では、該系は、接着特性を有するポリマーを含む。ポリマーの硬度、弾性、接着性(adhesive)および他の特性は、以下により詳細に記述する系の具体的な最終物理形態に応じて多種多様である。
【0192】
本発明による系の態様は、多くの異なる形態をとる。いくつかの態様では、系は、ポリマー中に懸濁または分散されたsm-活性剤からなる。他のある特定の態様では、系は、sm-活性剤および半固体またはゲルのポリマーからなり、これを、シリンジを介して身体内に注射するのに適合させる。本発明による他の態様では、系は、sm-活性剤および軟質で可撓性のポリマーからなり、これを、適当な外科的方法によって身体内に挿入または埋込むのに適合させる。本発明によるなおさらなる態様では、系は、硬質で固体のポリマーを含み、これを、適当な外科的方法によって身体内に挿入または埋込むのに適合させる。さらなる態様では、系は、内部に懸濁または分散されたsm-活性剤を有するポリマーを含み、ここで、sm-活性剤およびポリマー混合物は、ねじ、ステント、ペースメーカーなどの外科用器具上にコーティングを形成する。本発明による特定の態様では、機器は、硬質の固体ポリマーからなり、外科用ねじ、金属板、ステント、またはその一部などの外科用器具の形態に成形される。本発明による他の態様では、系は、内部に分散または懸濁されたsm-活性剤を有する縫合糸の形態であるポリマーを含む。
【0193】
本発明によるいくつかの態様では、表面、例えば血管の組織と接触または近接している外側表面を有する基材、および該外側表面上にコーティングを含む医療用機器が提供される。コーティングはポリマーおよび該ポリマー中に分散されたsm-活性剤を含み、ここで、ポリマーは、sm-活性剤に対して浸透性であるか、または生分解されてsm-活性剤を放出する。本発明によるある特定の態様では、機器は、適当なポリマー中に懸濁または分散されたsm-活性剤を含み、ここで、sm-活性剤およびポリマーは、外科用器具などの基材全面上にコートされる。かかるコーティングは、スプレーコーティングまたはディップコーティングによってなされ得る。
【0194】
本発明による他の態様では、機器は、sm-活性剤およびポリマー懸濁液または分散液を含み、ここで、ポリマーは硬質であり、例えば、機器の該部品が血管の組織と接触または近接している場合、身体内に挿入または埋没される機器の構成部品を形成する。例えば、本発明による特定の態様では、機器は、ポリマー中に懸濁または分散されたsm-活性剤でコートされた外科用ねじ、ステント、ペースメーカーなどである。本発明による他の特定の態様では、sm-活性剤が懸濁されたポリマーが、先端もしくは頭部またはその一部を形成する。本発明による他の態様では、sm-活性剤が懸濁または分散されたポリマーが、外科用器具、例えば外科用チューブ(人工肛門形成術、腹腔洗浄法、カテーテルおよび静脈内チューブなど)上にコートされる。本発明によるなおさらなる態様では、機器は、ポリマーおよび上面いコートされたsm-活性剤を有する静脈内ニードルである。
【0195】
上記のように、本発明によるコーティングは、生体内分解性または非生体内分解性であるポリマーを含む。生体内分解性対非生体内分解性ポリマーの選択は、系または機器の意図される最終用途に基づいてなされる。本発明によるいくつかの態様では、ポリマーは、有利には生体内分解性である。例えば、系がねじ、ステント、ペースメーカーなどの外科用移植可能な機器上のコーティングである場合、ポリマーは、有利には生体内分解性である。ポリマーが有利には生体内分解性である本発明による他の態様は、埋込み可能である機器、吸入可能または注射用のポリマー中のsm-活性剤の懸濁液または分散液を含み、ここで、さらなる要素(例えば、ねじまたは固定具)は利用されない。
【0196】
ポリマーがあまり浸透性および生体内分解性でない本発明によるいくつかの態様では、ポリマーの生体内分解速度は、有利には、ポリマーが、sm-活性剤が放出された後、所定の位置に相当な期間留まるが、最終的に生体内分解されて周囲組織内に再吸収されるように、sm-活性剤の放出速度よりも充分小さい。例えば、機器が、生体内分解性ポリマー内に懸濁または分散されたsm-活性剤を含む生体内分解性縫合糸である場合、ポリマーの生体内分解速度は、有利には、sm-活性剤は線形的に約3〜約14日間の期間にわたって放出されるが、縫合糸は、約3週間〜約6ヶ月の期間、存在し続けるように充分小さい。本発明による同様の機器としては、生体内分解性ポリマー中に懸濁または分散されたsm-活性剤を含む外科用ステープルが挙げられる。
【0197】
本発明による他の態様では、ポリマーの生体内分解速度は、有利には、sm-活性剤の放出速度と同じ次数である。例えば、系が、整形外科用ねじ、ステント、ペースメーカーなどの外科用器具または非生体内分解性縫合糸上にコートされたポリマー中に懸濁または分散された血管作用剤を含む場合、ポリマーは、有利には、周囲身体組織に直接曝露された血管作用剤の表面積が経時的に実質的に一定のままである速度で生体内分解する。
【0198】
本発明による他の態様では、ポリマービヒクルが、周囲組織、例えば、血漿の水分に対して浸透性である。かかる場合では、水の溶液がポリマーに浸透し、それにより、sm-活性剤と接触し得る。溶解速度は、変量の複雑な組、例えば、ポリマーの浸透性、sm-活性剤の溶解性、生理学的液体のpH、イオン強度およびタンパク質組成などに支配され得る。本発明によるいくつかの態様では、ポリマーは非生体内分解性である。非生体内分解性ポリマーは、系が、身体内に永続的または半永続的に挿入または埋没されるように適合される外科用器具上にコートされるか、またはその構成部品を形成することが意図されるポリマーを含む場合、特に有用である。ポリマーが有利には永続的なコーティングを外科用器具上に形成する例示的な機器としては、整形外科用ねじ、ステント、人工関節、人工弁、永続的な縫合糸、ペースメーカーなどが挙げられる。
【0199】
経皮経管腔冠状血管形成術に従って用いられ得る種々のステントは多様である。任意の数のステントを本発明にしたがって用い得るが、簡単にするため、限定数のステントを本発明の例示的な態様において記載する。当業者には、任意の数のステントが本発明に関して用いられ得ることが認識されよう。また、上記のように、他の医療用機器を使用してもよい。
【0200】
ステントは一般に、閉塞を軽減するために導管の管腔内に配置される管状構造物として用いられる。一般に、ステントは管腔の中に非拡張形態で挿入され、その後自律的に、またはもう一つの機器の補助によりインサイチュで拡張される。拡張の典型的な方法は、血管壁成分と関連する閉塞を剪断変形させ、崩壊させるために、および拡張した管腔を得るために、狭窄した血管内でまたは身体の通路内で膨張させられる、カテーテルを装備した血管形成術用バルーンの使用を通じて生じる。
【0201】
本発明のステントは、いくつもの方法を利用して製造し得る。例えばステントは、レーザー、放電摩砕(milling)、化学エッチング、または他の手段を用いて機械加工し得る、中空のまたは定形の(formed)ステンレス鋼管から製作し得る。ステントは非拡張形態で、身体に挿入され、所望の部位に置かれる。一つの典型的な態様において、拡張は血管内でバルーンカテーテルにより引き起こされ得、そこではステントの最終的な直径は用いられるバルーンカテーテルの直径の関数である。
【0202】
本発明によるステントは、例えばニッケルおよびチタンまたはステンレス鋼の適切な合金を含む形状記憶材料で現わされ得ることを理解されるべきである。
【0203】
ステンレス鋼から形成される構造物は、予め決定された方法でステンレス鋼を配置することにより、例えばそれをより合わせて網目状に配置することにより、自己拡張し得る。この態様において、ステントが形成された後、それは挿入手段によって血管内への、または他の組織内へのその挿入を可能にするために十分に小さい空間を占めるように圧縮され得、ここで挿入手段は適切なカテーテルまたは可撓性の棒を含む。
【0204】
カテーテルから現れるとすぐに、ステントは配置されて所望の形状に拡張され得、そこで拡張は自然に起こるか、または圧力、温度、もしくは電気的な刺激における変化により誘発される。
【0205】
ステントの設計にかかわらず、障害領域において効果的な投薬量を与えるために十分な特異性および十分な濃度で適用されるsm-活性剤を有することが好ましい。この点で、被覆物中の「貯蔵器の大きさ」は、好ましくは所望の位置に、および所望の量でsm-活性剤を十分に適用するための大きさにされる。
【0206】
別の典型的な態様では、ステントの全内表面および全外表面は、治療投薬量のsm-活性剤で被覆され得る。しかし、被覆技術はsm-活性剤により変化し得ることに注意することは重要である。さらに、被覆技術は、ステントまたは他の管腔内医療機器を構成する材料により変化し得る。
【0207】
管腔内の医療機器は持続的放出薬物送達被覆物を含む。sm-活性剤の被覆は、含浸被覆、噴霧被覆、および浸漬被覆などの従来の被覆方法によりステントに適用され得る。
【0208】
一態様において、管腔内の医療機器は、縦のステント軸に沿って広がる内側の管腔表面および反対側の外表面を有する、引き伸ばされた放射状に拡張し得る管状ステントを含む。ステントは、永久的な埋め込み可能なステント、埋め込み可能な移植されたステント、または一時的なステントを含み得、ここで一時的なステントは血管の内側で拡張し得、その後血管から引き戻し得る(retractable)ステントと定義される。ステントの形状は、コイル状ステント、記憶コイル状ステント、ニチノールステント、網状ステント、骨格(scaffold)ステント、袖状ステント、透過性ステント、温度センサーを有するステント、多孔性ステントなどを含み得る。ステントは、膨張させ得るバルーンカテーテルによって、(カテーテルからの放出後の)自然配置機構によって、または他の適切な手段によって、など従来の方法論によって配置され得る。引き伸ばされた(elongate)放射状に拡張し得る管状ステントは、移植片の内側に、または外側にステントを有する複合機器である、移植されたステントであり得る。移植片は、延伸PTFE移植片、生体の移植片、または織物移植片などの血管移植片であり得る。
【0209】
sm-活性剤は、いくつかの方法でステント上に組み込まれ得るか、またはステントに添付され得る。典型的な態様において、sm-活性剤は、直接ポリマー基質に組み込まれ、ステントの外表面に噴霧される。sm-活性剤は、時間とともにポリマー基質から溶離し、周囲の組織に入る。sm-活性剤は、好ましくは、少なくとも3日間、およそ6ヶ月までの間、より好ましくは7〜30日間ステントに残存する。
【0210】
ある態様では、本発明によるポリマーは、sm-活性剤に対して透過性であるが、ポリマーからのsm-活性剤の放出の速度において主要な律速因子ではない透過性を有する、任意の生物学的に許容されるポリマーを含む。
【0211】
本発明によるいくつかの態様において、ポリマーは非生体内分解性である。本発明において有用な非生体内分解性ポリマーの例としては、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)(EVA)、ポリビニルアルコール、およびポリカーボネートを基材とするポリウレタンなどのポリウレタンが挙げられる。本発明の他の態様において、ポリマーは生体内分解性である。本発明において有用な生体内分解性ポリマーの例としては、高分子酸無水物、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、またはその誘導体およびコポリマーが挙げられる。当業者は、ポリマーの生体内分解性および非生体内分解性の選択は、以下により詳細に記載するように、系の最終的な物理的形状によることを理解するであろう。他の典型的なポリマーとしては、ポリシリコーンおよびヒアルロン酸から誘導されるポリマーが挙げられる。当業者は、本発明によるポリマーは、ポリマーからのsm-活性剤の放出において主要な律速因子ではない透過性を付与するのに適切な条件の下で調製されることを理解するであろう。
【0212】
さらに、適切なポリマーとしては、天然由来の物質(コラーゲン、ヒアルロン酸など)、または体液および哺乳動物組織と生物学的に適合し、ポリマーが接触し得る体液に本質的に不溶性である合成物質が挙げられる。加えるに、適切なポリマーは、ポリマー中に分散/懸濁されたsm-活性剤と体液中のタンパク質成分との間の相互作用を本質的に妨げる。ポリマーの溶解、またはタンパク質成分との相互作用が薬物放出の定常性に影響を及ぼし得るため、ある場合には、体液に急速に溶解するポリマーもしくは非常に可溶性のポリマー、またはsm-活性剤とタンパク質成分との間の相互作用を可能にするポリマーの使用は、避けられるべきである。
【0213】
他の適切なポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン酢酸ビニル(PVAまたはEVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリカルボン酸、ポリアルキルアクリレート、セルロースエーテル、シリコーン、ポリ(dl-ラクチド-コ-グリコリド)、種々のEudragrit(例えばNE30D、RS POおよびRL PO)、ポリアルキル-アルキルアクリレートコポリマー、ポリエステル-ポリウレタンブロックコポリマー、ポリエーテル-ポリウレタンブロックコポリマー、ポリジオキサノン、ポリ-(-ヒドロキシブチラート)(poly-(-hydroxybutyrate))、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、およびPEO-PLAコポリマーが挙げられる。
【0214】
本発明の被覆物は、一つ以上の適切な単量体と適切なsm-活性剤とを混合し、次いで単量体を重合させ、ポリマー系を形成させることにより、形成され得る。このように、sm-活性剤は、ポリマー中に溶解されるか、または分散させられる。他の態様において、sm-活性剤は、液体ポリマー中に、またはポリマー分散系中に混合され、次いでポリマーはさらに処理され、本発明の被覆物を形成する。適切なさらなる処理としては、適切な架橋するsm-活性剤との架橋、液体ポリマーまたはポリマー分散系のさらなる重合、適切な単量体との共重合、適切なポリマーブロックとのブロック共重合などが挙げられ得る。さらなる処理はsm-活性剤をポリマー中に捕捉し、その結果sm-活性剤はポリマービヒクル中に懸濁されるか、または分散される。
【0215】
いくつもの非分解性ポリマーがsm-活性剤と共に利用され得る。この応用(application)において被覆に用いられ得る膜形成ポリマーは、吸収性であり得るか、または非吸収性であり得、脈間壁への刺激を最小限にするために生体適合性でなければならない。ポリマーは、所望の放出速度またはポリマー安定性の所望の程度により、生体安定性(biostable)、または生体吸収性のいずれかであり得るが、生体吸収性ポリマーは、生体安定性ポリマーとは異なり、埋め込みの後、長く存在してなんら不都合な慢性局所反応を生じ得ないため、好適であり得る。さらに、生体吸収性ポリマーは、長期間にわたると、ステントが組織に封じ込まれた後でさえ、被覆物を取り除き、さらなる問題を導き得る生物学的環境の圧力により引き起こされる、ステントと被覆物との間の粘着力の損失があり得るという危険性を示さない。
【0216】
用いられ得る適切な膜形成生体吸収性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、ポリアルキレンオキサラート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミド基を含有するポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、生体分子、およびその混合物からなる群より選択されるポリマーが挙げられる。本発明の目的のために、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸のd-ラクチド、l-ラクチド、およびmesoラクチドを含む)、カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、パラジオキサノン、炭酸トリメチレン(およびそのアルキル誘導体)、1,4-ジオキセパン-2-オン、1,5-ジオキセパン-2-オン、6,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2-オン、およびそのポリマー混合物のホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。本発明の目的のためのポリ(イミノカーボネート)は、Handbook of Biodegradable Polymers, Domb、KostおよびWisemen編, Hardwood Academic Press, 1997, 251〜272ページにおいて、KemnitzerおよびKohnにより記載されたものを含む(include as described)。本発明の目的のためのコポリ(エーテル-エステル)は、CohnおよびYounes著、Journal of Biomaterials Research, 22:993〜1009, 1988、ならびにCohn, Polymer Preprints (高分子化学のACS部分(ACS Division of Polymer Chemistry))30 (1) : 498, 1989に記載のコポリエステル-エーテル(例えばPEO/PLA)を含む。本発明の目的のためのポリアルキレンオキサラートとしては、米国特許第4,208,511号; 第4,141,087号; 第4,130,639号; 第4,140,678号; 第4,105,034号; および第4,205,399号(本明細書中に参照によって援用される)が挙げられる。ポリホスファゼン、コモノマー、ter-単量体、および高次(higher order)混合単量体からつくられ、L-ラクチド、D,L-ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラジオキサノン、炭酸トリメチレン、およびカプロラクトンからつくられる、ポリマーは、The Encyclopedia of Polymer Science, 13巻, 31〜41ページ, Wiley Intersciences, John Wiley & Sons, 1988においてAllcockによって、ならびにHandbook of Biodegradable Polymers, Domb、KostおよびWisemen編, Hardwood Academic Press, 1997, 161〜182ページにおいてVandorpe、Schacht、DejardinおよびLemmouchiによって(これにより本明細書中に参照によって援用される)記載されている。高分子酸無水物は、mが2〜8の範囲の整数であるHOOC-C6H4-0-(CH2)m-0-C6H4-COOHのかたちの二塩基酸からのもの(from)、およびその炭素数12までの脂肪族α〜ω二塩基酸とのコポリマーである。ポリオキサエステル、ポリオキサアミド、ならびにアミン基および/またはアミド基を含有するポリオキサエステルは、米国特許第5,464,929号; 第5,595,751号; 第5,597,579号; 第5,607,687号; 第5,618,552号; 第5,620,698号; 第5,645,850号; 第5,648,088号; 第5,698,213号および第5,700,583号(これらは本明細書中に参照によって援用される)の一つ以上に記載されている。ポリオルトエステルは、Handbook of Biodegradable Polymers, Domb、KostおよびWisemen編, Hardwood Academic Press, 1997, 99〜118ページにおいて、Hellerにより記載されたもの(これにより本明細書中に参照によって援用される)などである(such as)。本発明の目的のための膜形成ポリマーの生体分子としては、フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、エラスチン、およびキトサン、デンプンなどの吸収性生体適合性多糖、脂肪酸(およびそのエステル)、グルコソグリカン(glucoso-glycans)、ならびにヒアルロン酸などのヒトの身体内で酵素により分解され得るか、またはヒトの身体内で加水分解により不安定である、天然由来の物質が挙げられる。
【0217】
ポリウレタン、シリコーン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアルキルオキシド(ポリエチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドン、ならびに架橋ポリビニルピロリジノンから形成されるものなどのヒドロゲル、ならびにポリエステルなどの比較的弱い慢性組織反応を有する適切な膜形成生体安定性ポリマーもまた用いられ得る。他のポリマーもまた、それが溶解され得るか、ステント上で硬化させられ得るか、またはステント上で重合され得るのであれば、用いられ得る。これらとしては、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、およびエチレン-αオレフィンコポリマー;アクリルポリマー(メタクリレートおよびコポリマーを含む)((including methacrylate) and copolymers)、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー;ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル;ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン;ポリスチレンなどのポリビニル芳香族化合物;ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル;エチレン(etheylene)-メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、ABS樹脂、およびエチレン-酢酸ビニルコポリマーなどのビニル単量体同士の、およびビニル単量体とオレフィンとのコポリマー;ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエステル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;トレアセテートレーヨン、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース;セロハン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル(すなわちカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース);ならびにその組み合わせが挙げられる。この応用(application)の目的のためのポリアミドもまた、式中nは好ましくは6〜13の整数であり、xは6〜12の範囲の整数であり、yは4〜16の範囲の整数である-NH-(CH2)n-CO-およびNH-(CH2)x-NH-CO-(CH2)y-COのかたちのポリアミドを含み得る。上に与えたリストは例示するものであり、限定的ではない。
【0218】
被覆に用いられるポリマーは、蝋質、または粘着性にならないくらいに十分高い分子量を有する膜形成ポリマーであり得る。ポリマーはまた、血流力学的圧力により移動され得るため、ステントに接着するべきであり、ステントに沈積した後、容易に変形しないものであるべきである。ポリマーの分子量は、十分に高くて、ポリマーがステントの取り扱いまたは配置の間にこすれ落ちないように、かつステントの拡張の間に割れないように、十分な硬さを与えるべきである。ある態様において、ポリマーは、40℃を越える、好ましくは約45℃を超える、より好ましくは50℃を超える、最も好ましくは55℃を超える融解温度を有する。被覆物は、一つ以上のsm-活性剤と被覆ポリマーとを被覆混合物中で混合することにより調剤され得る。sm-活性剤は、液体、細かく分割された固体、または任意の他の適切な物理的形態として存在し得る。任意に、混合物は一つ以上の添加物、例えば希釈剤、担体、賦形剤、安定剤などの非毒性の補助物質を含み得る。他の適切な添加物は、ポリマーおよびsm-活性剤とともに調剤され得る。例えば、生体適合性膜形成ポリマーの先に記載したリストから選択される親水性ポリマーは、生体適合性疎水性被覆物に加えられ、放出プロフィールを改変し得る(または疎水性ポリマーは、親水性被覆物に加えられ、放出プロフィールを改変し得る)。一つの例は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびその組み合わせからなる群より選択される親水性ポリマーを脂肪族ポリエステル被覆物に加え、放出プロフィールを改変することであり得る。適切な相対量は、治療用のsm-活性剤のインビトロおよび/またはインビボ放出プロフィールを監視することにより決定し得る。
【0219】
被覆物の厚みで、sm-活性剤が基質から溶出する速度を決定し得る。本質的には、sm-活性剤は、ポリマー基質を通って拡散により基質から溶出する。ポリマーは透過性であり、それにより固体、液体、および気体をそこから逃散させる。ポリマー基質の総計の厚みは、約1μmから約20μm以上の範囲である。ポリマー基質が医療機器に付けられる前に、プライマー層および金属表面処理が利用され得ることに注意することは重要である。例えば、酸洗浄、アルカリ(塩基)洗浄、塩処理、およびパリレン沈着を記載した全処理の一部として用い得る。
【0220】
さらに例示するために、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリブチルメタクリレート、およびsm-活性剤の溶液をいくつかの方法で、ステントの中に、またはステント上に組み込み得る。例えば、溶液はステントに噴霧され得るか、またはステントは溶液に浸漬され得る。他の方法としては、スピンコーティングおよびRFプラズマ重合が挙げられる。一つの典型的な態様では、溶液はステントに噴霧され、次いで乾燥させられる。別の典型的な態様において、溶液はある極性に帯電させられ、ステントは逆の極性に帯電させられ得る。このように、溶液およびステントは、互いに引かれ得る。この種類の噴霧処理を用いることにおいて、廃物は減少され得、被膜の厚みのより正確な制御が達成され得る。
【0221】
別の典型的な態様において、sm-活性剤は、重合したポリフッ化ビニリデンおよび重合したテトラフルオロエチレンからなる群より選択される第一の部分の量、ならびに硬さまたはエラストマーの性質をポリフルオロ(polyfluoro)コポリマーに与え得る、第一の部分以外であり、第一の部分と共重合し、それによりポリフルオロコポリマーを生成させる第二の部分の量を含む、膜形成ポリフルオロコポリマーに組み込まれ得、ここで第一の部分および第二の部分の相対的な量は、埋め込み得る医療機器の処理における使用に効果的である性質を有する被覆物およびそれから生成される膜を与えるために効果的である。
【0222】
本発明による一つの態様において、本発明の管腔内医療機器の拡張し得る管状ステントの外表面は、本発明による被覆物を含む。被覆物を有するステントの外表面は、組織に接触する表面であり、生体適合性である。「持続的放出sm-活性剤の送達系被覆表面」は、表面が本発明による持続的放出sm-活性剤の送達系で被覆された、包まれた、またはこれを含浸された「被覆表面」と同義である。
【0223】
別の態様では、本発明の管腔内医療機器の引き伸ばされた放射状に拡張し得る管状ステントの内側の管腔表面または全表面(すなわち内側表面および外側表面の双方)は、被覆された表面を有する。本発明の持続的放出sm-活性剤の送達系被覆を有する内側の管腔表面はまた、体液に接触する表面であり、生体適合性、かつ血液適合性である。
【0224】
VIII.実施例
これまでに一般的に記載されている本発明、それは、ただ本発明のある態様および態様の例示のためだけに含まれており、本発明を限定しないものとする、次の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【0225】
実施例1:熱ショックタンパク質(HSP20)のリンペプチド(Phosphopeptides)の形質導入は細胞骨格のダイナミックスを変える
先に、HSP20の形質導入可能なリンペプチド類似体は、ブタ冠状動脈(Flynnら, 2003, FASEB J. 17:1358)およびウシ頚動脈(Woodrumら, 2003, J. Vasc. Surg. 37:74)を含む種々の組織において、平滑筋を弛緩させる生理作用を有することを示した。また、HSP20を過剰に発現するラットメサンギウム細胞は、シリコーンポリマー基質上でのしわ形成により示されるように、血清誘導収縮に対して免疫があった(Woodrumら, 2003, J. Vasc. Surg. 37:74)。
【0226】
14-3-3タンパク質は、それが多くの細胞機能と関係しており、受容体、キナーゼ、ホスファターゼ、およびドッキング分子などの広範囲のリガンドを有するため、全般的な生化学の制御因子であると考えられている(Fuら, 2000, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 40:617)。例えば、リン酸化コフィリンは、14-3-3タンパク質に結合することにより安定化する(GohlaおよびBokoch, 2002, Curr. Biol. 12:1704; Birkenfeldら, 2003, Biochem. J. 369:45)。リン酸化コフィリンは不活性であるが、ホスファターゼのスリングショット(slingshot)ファミリーにより脱リン酸化された場合、コフィリンはアクチンの解重合を触媒し(Niwaら, 2002, Cell 108:233)、次いで細胞骨格リモデリングを引き起こす。
【0227】
pHSP20ペプチドが14-3-3に結合するかどうかを決定するために、NHS活性化Affigel 10ビーズに結合した、pHSP20ならびにその類似体であるaHSP20およびscrHSP20でプルダウン実験を行った。さらなる対照として、活性化ビーズをまたエタノールアミンと反応させた。次いで、ビーズに結合したペプチド試料の各々およびエタノールアミンの対照を、HEK293細胞に由来する完全な細胞溶解物とともに、1.5時間、4℃で別々にインキュベートした。ビーズを完全に洗浄した後、ビーズの4組の各々をビーズに固定されたペプチドに対応する遊離ペプチドの100 μMの溶液で溶出し、エタノールアミン対照ビーズはpHSP20で溶出した。約15%の溶出液の容積をSDS-PAGEゲルに流し、一方溶出液の残りをエタノールで沈殿させ、次いで2D-LCショットガンMS法(Washburnら, 2001, Nat. Biotechnol. 19:242)により解析した。
【0228】
固定したpHSP20のレーン(図2)は、約30 kDaで拡散のひとまとまりのバンドを示しており、かかるバンドはいずれの対照においても明らかではない。種々のプルダウン試料のMS分析は、pHSP20プルダウンにおいて高い信頼で同定したタンパク質のみが14-3-3の種々の異性体であったことを示した(表1)。かかる14-3-3の異性体は、非リン酸化ペプチド類似体または混ざったペプチド類似体と関連していなかった。
【0229】
【表1】

【0230】
全体をまとめてみると、かかるデータは、リン酸化部位を取り巻いている短い配列またはモチーフを含有する小さなペプチドが、細胞生物学に関する深い影響を有し得ることを示唆する。かかるペプチドは、ほとんど、または全く予測される三次構造を有さないため、かかるペプチドのモチーフは、おそらくタンパク質-タンパク質相互作用における変化を通じて細胞機能を変えている。リン酸化HSP20の場合において、かかるデータは、リン酸化部位を取り巻いているモチーフが14-3-3タンパク質に結合することを示唆する。かかる結合は、非結合コフィリンのたまりを増大させ、その脱リン酸化およびアクチン解重合タンパク質のような活性化をもたらし得る。
【0231】
物質および方法
1.ペプチドの合成および精製
ペプチドは標準的なf-moc化学作用を用いて合成し、Bio-Synthesis(Lewisville, TX)により、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製した。β-アラニンをリンカーとして用い、N末端上で標識されたフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で蛍光ペプチドを合成した。
【0232】
2.ペプチドのAffigel 10ビーズへの固定
ペプチドのN-末端アミノ基を、N-ヒドロキシスクシニミド活性化Affi-Gel 10ビーズ(Biorad, Hercules, CA)への固定のために利用した。固定のために、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた60 μgの各ペプチドを100 μlのビーズおよび0.14 μmolのトリエチルアミン(Sigma, St. Louis, MO)とともに4時間インキュベートした。固定の間の最終の容積は400 μlであった。インキュベーションの後、ビーズをDMFで徹底的に洗浄し、残存活性基を1 Mのエタノールアミン(Sigma, St. Louis, MO)との一晩のインキュベーションにより阻害した。ペプチド合成の間、リシンのεアミノ基をivDde保護基で保護した。固定の後、ペプチドをDMF中の2%ヒドラジンとの5分間のインキュベーションにより3回脱保護した。ivDde基の解離を290 nmで吸収を測定することにより監視した。次いでビーズをDMFで徹底的に洗浄し、4℃で保管した。
【0233】
3.プルダウンアッセイ
プルダウンアッセイをPeltierら, Int. J. Mass Spectrometry, 2004, 238 : 119〜130に記載されたように行った。手短に言えば、ペプチドが固定されていたビーズの各組(10 μl)を2 mgのHEK-293細胞溶解物とともに別々にインキュベートした。細胞溶解物におけるタンパク質の濃度は、インキュベーションの間、約5 mg/mlであった。ビーズを溶解物とともに1.5時間、4℃でインキュベートし、次いで1 mlの洗浄緩衝液(20 mM HEPES, 10%グリセロール, 0.1% NP40, 250 mM NaCl, pH 7.0)で5回洗浄した。特異的に結合したタンパク質を、ビーズに固定されたペプチドに対応する100 μMの遊離ペプチドを含有する50 μlの洗浄緩衝液で溶出した。溶出液の試料(7 μl)をSDS-PAGEによる分析に用い、一方残りの溶出液を3倍の容積のエタノールと混合することにより沈殿させ、-20℃で12時間インキュベートした(incubation)。次いで沈殿させた試料を2D LC-MS/MS分析(Zhenら, 2004, J. Am. Soc. Mass Spectrometry 15:803〜822)へ付託した。
【0234】
4.溶液内トリプシン消化
プルダウン試料におけるタンパク質を、8 M尿素/0.2 M NH4HC03で変性させ、次いで7.5 mMのジチオトレイトールで60℃で還元し、最後に15 mMのヨードアセトアミドでアルキル化した。溶液を希釈液として脱イオン水(Milli-Q, Millipore, Bedford, MA)を用いて2 Mの尿素の最終的な濃度に希釈し、トリプシン(Promega, Madison, WI)を20:1のタンパク質/酵素の重量比で試料に加えた。消化を37℃で少なくとも2時間進行させた。消化された試料をLC-MALDI-MS/MSおよびESI-LC-MS/MSによる分析のために二等分した。
【0235】
5.強陽イオン交換分画
トリプシンペプチドをペプチドMicroTrapカートリッジ(Michrom BioSciences, Auburn, CA)で脱塩し、次いでVydac 400VHPシリーズの強陽イオン交換(CEX)カラム(0.3 x 50 mm)(Grace Vydac, Hesperia, CA)に載せた。Agilent 1100シリーズの二部構成ポンプを用いて、緩衝液Aとしての0.5%酢酸/20%アセトニトリル(ACN)および緩衝液Bとしての0.5%酢酸/20%ACN中の250 mM酢酸アンモニウムで分離を行った。CEX流出液をProbotマイクロ画分捕集器(Probot micro fraction collector)(LC-Packings, Sunnyvale, CA)を用いて収集した。LC-MALDI-MS/MSにより分析する試料を2つのCEX画分に分け、一方LC-ESI-MS/MSのための試料を6つのCEX画分に分けた。
【0236】
6.LC-MALDI-MS/MS
MALDI-MS/MSにより分析するかかる試料について、CEX画分中のペプチドを75 μm x 150 mmの逆相HPLCカラム(Dionex, Sunnyvale, CA)にてさらに分離した。試料をFamous自動サンプル注入器およびSwitchos IIシステム(Dionex)を用いて注入し、HPLCグラジエントをUltimateシステム(Dionex)により制御した。溶媒Aは0.1% TFAであり、溶媒Bは0.1% TFA/100% ACNであった。流量は250 nl/分であった。800 nl/分の流量で、HPLC溶離液とMALDIマトリックスとを直接混合し、その後Probot(Dionex)マイクロ画分捕集器を用いて、バーコードのある(bar-coded)空のMALDIプレート(Applied Biosystems)に堆積させた。MALDIマトリックスは、70%ACN中のα-シアノ-4-ヒドロキシ-ケイ皮酸(cinnaminic acid)(CHCA)の3 mg/mlの濃度で調合した。20秒ごとにスポットを堆積させ、各HPLCの実行について12 x 12の配列で総計144のスポットを集めた。MALDIプレート上の試料を4700プロテオミクス分析計(4700 Proteomics Analyzer)MALDI-TOF/TOF(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて分析した。MSスペクトルを各スポットについて記録し、MS/MSスペクトルを特定の限界基準を超えたイオンについて記録した。
【0237】
7.LC-ESI-MS/MS
注文製のESI源を備えたLCQ Deca XP機器(ThermoFinnigan, San Jose, CA)を用いてESI-MS/MSを行った。LC-MALDIの構成について上に記載したように同一の逆相HPLCシステムをまた用い、LC-ESI-MS/MS実験を行った。溶媒Aは0.5% 酢酸/2% ACNであり、溶媒Bは0.5% 酢酸/100% ACNであった。各MSスキャンにおいて、1回のMSスキャン、それに続く3つの最も存在率の高いピークの3回のMS/MSスキャンを用いて、それらが3分間の動的除外時間枠により除かれなければ、データ依存モードでデータを取得した。
【0238】
8.MSデータ分析
TOF/TOFおよびLCQから得られたデータは、NCBInrタンパク質配列データベース(10/10/03のデータベースバージョン)におけるヒトのタンパク質サブセットに対する検索エンジンとしてのMascot(Matrix Sciences, London, UK)を用いて検索した。別々に分析されたCEX画分から生じたピークリストをMascotサーバーに供する前に合わせた。同じ試料についてTOF/TOFおよびLCQ分析から生じた2つの結果ファイルを社内で開発した特注ソフトウェアを用いてさらに1つのファイルに合わせた。種々の対照に由来するプルダウン試料において同定されたタンパク質を合わせ、pHSP20ペプチドプルダウンについてのバックグラウンド減算リストとして用いた。減算後に残存したタンパク質だけが結果において報告される。一般に多数のペプチドから識別された、かつ100を超えるMascotタンパク質スコアを有するタンパク質は、同定された結果であると自信をもって考えられる。
【0239】
実施例2 種々の切断型のpHSP20(リン酸化HSP20)ペプチドと14-3-3γイソフォームとの間の結合の判定
種々の切断型のpHSP20(リン酸化HSP20)ペプチドと14-3-3γイソフォームとの間の相対的な結合親和性を判定するために、出願人らはBiacore結合アッセイを用い、次のように実験を計画した。最初の実験において用いたpHSP20ペプチド(例えばWLRRApSAPLPGLSK)をBiacoreチップに固定し、種々のpHSP20切断変異体の存在するチップ上に14-3-3γイソフォームタンパク質を流すことにより競合実験を行った。pHSP20切断変異体としては、a)pHSP20(陽性対照)、b)HSP20(非リン酸化pHSP20、陰性対照)、c)RRApSAP(最小の14-3-3コンセンサス結合配列)、d)WLRRApSAP、e)RRApSAPLP、f)RRApSAPLPGLS、g)WLRRApSAPLPが挙げられる。
【0240】
競合実験を行い、それにより実験の間で変化し得るものだけが競合ペプチドの個性である。したがって、最初のpHSP20ペプチドと競合する各ペプチドの相対的能力は、14-3-3γに対する各ペプチドの結合定数と逆の相関があるはずである。
【0241】
結果を図3〜図6に示す。最小のコンセンサス14-3-3γ結合配列はRRApSAPであり、それは14-3-3γに対する結合について、最初のpHSP20配列(WLRRApSAPLPGLSK)よりも有利に競合した。したがって、14-3-3γと最小のコンセンサス配列との間の結合定数は、最初のpHSP20ペプチド配列についての結合定数より低かった(Biacore 実験により測定されたKDはほぼ6 nM)。また、14-3-3γに結合するコンセンサス配列のpHSP20に対するこのしっかりした結合は、さらなるN末端残基(WL-)により影響を受けなかったが、さらなるC末端残基(例えば-LPまたは-LPGLS)により激しく低減した。しかし、C末端残基のこの負の効果は、N末端残基を後ろに(back)加えると、除かれた。このデータは、蛍光偏光(Fluorescence Polarization)実験に用いた場合、ペプチドのN末端に発蛍光団が加えられ得ることを示唆する。
【0242】
全体をまとめてみると、ペプチドRRApSAPおよびペプチドWLRRApSAPは、最初のpHSP20ペプチドよりも、14-3-3γに対する高い結合親和性を有するペプチドを代表する。種々の14-3-3イソフォームに対して、各ペプチドがいかなる特異性を有するかを決定することが残っている。14-3-3γイソフォームとの結合の選択性は、最小のコンセンサス結合配列に隣接するアミノ酸にコードされていることがあり得る。
【0243】
実施例3 pHSP20ペプチドと、14-3-3の種々の型およびイソフォームとの間の結合の判定
各14-3-3のイソフォームに対するpHSP20ペプチドの結合特異性をさらに判定するために、類似の結合実験を各14-3-3イソフォームを用いて行った。種々の14-3-3イソフォームをGST-His(「E23」と称する)、またはビオチン-His(「E25」と称する)のいずれかで標識した。かかるE23で標識された、またはE25で標識された14-3-3タンパク質を図2、図3、図4、図7、および図8に示されるBiacore実験において用いた。E23の14-3-3タンパク質(GST-Hisで標識)は、E25の14-3-3タンパク質(ビオチン-Hisで標識)よりもずっと有利に結合した。タンパク質分解によりGST標識が除かれた型のYWHAG(14-3-3γとも称される)を用いて、類似の効果を見つけた。しかし、双方の標識系は、pHSP20ペプチドに対して同一のイソフォーム特異性を示した(YWHAG > YWHAH > YWHAE = YWAHB = YWHAZ)。GST は、YWHAGに対してシャペロン効果もしくは安定化効果を有するか、またはpHSP20に対する種々の結合特性を有し得るYWHAGの二量体の形成を促進すると考えられる。さらなる実験を計画し、この不一致を解明する。
【0244】
pHSP20ペプチドの結合定数を測定するために、E23およびE25の14-3-3タンパク質をBiacore 実験において用いた。E25のYWHAGについては、25 nM〜1.3 μMのKdをいくつかの実験において測定した。しかし、E23のYWHAGと比較して、E25のYWHAGの低いシグナルのために、適合度の特質はよくなく、そのため見積もられたKdがそのように大きく変化することは驚くべきではない。E23のYWAGについては、5〜50 nMのずっとしっかりしたKdをいくつかの実験において測定した。ある実験条件はKdの絶対値を変え得る。例えば、チップ上のペプチドの高い固定の濃度は、再結合効果を生じ得る。そのため、pHSP20/14-3-3γ相互作用のキネティクスは、高いnMの範囲にあり得る。
【0245】
要するに、かかる研究の目的の一つは、最初のpHSP20ペプチド配列と同様によく結合するか、またはこれよりもよく結合するだけでなく、14-3-3の特定のイソフォーム(例えば14-3-3γイソフォーム)に対する結合特異性も有する最小のペプチドを見出すことである。さらに、同様の結合実験をBiacore機器を用いて行い、結合定数を測定し得る。かかる実験は、実施例2に上記したような競合実験から測定された、暗示された相対的親和性を確証するために用いられ得る。
【0246】
実施例4 蛍光偏光アッセイにおける一般式Iにより表される化合物の用量反応
14-3-3γとpHSP20との間の相互作用を阻害する化合物(a)〜(k)の能力を蛍光偏光(FP)アッセイにより測定した。蛍光偏光測定を黒色の384ウェルプレート(Greiner Bio-One)の中に配列した試料について、Envisionプレートリーダー(Perkin-Elmer、励起波長480 nm、観測した発光波長535 nm)を用いることにより行い、14-3-3γタンパク質と、N末端の6-カルボキシフルオレセインで標識した、アミノ酸配列WLRRApSAPを有するpHSP20ペプチドとの間の相互作用を監視した。阻害剤についての最初のスクリーニング(screen)で、DiverSetライブラリー(ChemBridge, San Diego)における約50,000個の化合物を調べた。最初の化合物スクリーニングをペプチドおよび個々の化合物を最初に混合することにより、続いて最終容積の15 μl(ul)にタンパク質を添加することにより行った。各成分の最終濃度は:57.4 nMのペプチド、10 μM(uM)の化合物、5% DMSO、1.5 μM(uM)14-3-3γ、0.01 M HEPES pH7.4、0.15 M NaCl、3 mM EDTA、0.005% Tween20、10mM MnCl2、9.33 mM Tris(7.5)、および0.0093% NaN3であった。いくつかの化合物、特に(a)、(f)、および(j)は、用量反応様式で、14-3-3γとpHSP20との間の相互作用を大いに阻害し得た。アッセイの結果を図9に示す。14-3-3γと標識されていないリン酸化pHSP20ペプチドにより生じたpHSP20との間の相互作用の競合的阻害を対照として示す。
【0247】
実施例5 蛍光偏光アッセイにおける一般式IIIにより表される化合物の用量反応
14-3-3γとpHSP20との間の相互作用を阻害する化合物(l)および化合物(m)の能力を、化合物を多数の濃度で測定したことを除き、実施例4に記載される通りに、蛍光偏光(FP)アッセイにより測定した。
【0248】
アッセイの結果を図10に示す。化合物(l)は、約32 μMのIC50を有することがわかった。化合物(m)は、約13.5 μMのIC50を有することがわかったが、対照ペプチドpHSP20は約2 μMのIC50を有した。
【0249】
実施例6 一般式IVにより表される化合物がウシ冠状動脈環(rings)の拡張を引き起こす
ウシ冠状動脈環を、シクロデキストリンだけを含有する組成物、またはpHSP20ペプチド、化合物(m)、もしくは化合物(n)を併用したシクロデキストリンの製剤で処理した。セロトニンおよび上の製剤の一つでの処理の後に、環の収縮を経時的に測定した。pHSP20ペプチドを除き、製剤の各々をいくつかの濃度で試験した。
【0250】
処理の30分(pHSP20ペプチドについては10分)後の環の収縮率を図1に示す。化合物(m)および化合物(n)の双方は、環に対する血管拡張効果を有した。処理の40分後に血管拡張効果の有意な減少は見られなかったが、化合物(m)および化合物(n)の効果は、添加の約20〜25分後に徐々に消え始めた。化合物(m)および化合物(n)の血管拡張効果は、このモデルにおいてpHSP20ペプチドの効果よりも長い。
【0251】
実施例7 一次ヒト気道平滑筋細胞により引き起こされる自然に起こるビーズの動き
一次ヒト気道平滑筋細胞を健康な個体から単離し、3〜6回の継代まで培養した。細胞を合流点まで培養し、次いで24時間血清を奪った。血清を奪われた細胞をコラーゲンで被覆されたプラスチックのウェルで平板培養した。
【0252】
細胞を平板培養した後、RGD被覆マイクロビーズを加えた。Wangら Science 260:1124〜1127, 1993に記載されたように、マイクロビーズを細胞の細胞骨格にしっかりと固定する。その結果として、細胞の動きはマイクロビーズの動きを監視することにより判定され得る。このアッセイにおいて、自然に起こるビーズの動き(すなわち細胞の動き)の速度はアクチン細胞骨格リモデリングの速度による。ビーズの動きの減少は細胞骨格の安定を示すが、ビーズの動きの増加はアクチンの解重合の増加を示す(Anら, J. Appl. Physiol. 96:1701〜1713, 2004)。
【0253】
ビデオ顕微鏡法を用いて各ビーズの位置を記録した。ビーズの動きの二次元の軌道を時間の関数としての平均二乗変位(MSD):


式中ri(t)は、i番目のビーズの、時間0におけるその位置に対する時間tにおける距離である、
として表す。
【0254】
細胞の各試料における自然に起こるビーズの動きを最初に5分間測定した。試験化合物(時間の対照については無し)を次いで添加し、試料を30分(本発明の非ペプチジル化合物については10〜15分)間インキュベートした。次いで自然に起こるビーズの動きをもう5分間測定した。
【0255】
3つの対照の実行を、無し(時間の対照)、亜ヒ酸ナトリウム(陰性対照、HSP27のリン酸化を促進する)、およびジブチルサイクリックアデノシン一リン酸(陽性対照、細胞骨格を不安定にする)で行った。時間の対照、ならびに200 μM亜ヒ酸ナトリウムで処理した試料、および1 mMジブチル-cAMPで処理した試料のMSDプロットを、それぞれ図12A〜Cに示す。予測したように、時間の対照は変化を示さないが、亜ヒ酸はビーズの動きの減少を引き起こし、ジブチル-cAMPはビーズの動きを増大させた。
【0256】
細胞をまた、種々の濃度のリン酸化PTD-HSP20ペプチドおよび非リン酸化PTD-HSP20ペプチドで処理した。MSDプロットを、図13A〜Dに示す(are shown Figures 13A-D)。非リン酸化PTD-HSP20は50 μMでほとんど効果を有さなかったが、リン酸化ペプチドは、同じ濃度でビーズの動きの増大を引き起こした。100 μMの増大させた濃度で、リン酸化PTD-HSP20ペプチドおよび非リン酸化PTD-HSP20ペプチドの双方は、ビーズの動きの量を減少させた。この現象の一つの説明は、立証されてはいないが、ペプチドが細胞に対して100 μMの濃度で毒性であることである。
【0257】
本発明の非ペプチジル化合物は、それらの低い水溶解度のために、4%のシクロデキストリンとともに調剤しなければならなかった。シクロデキストリン対照のMSDプロットを図14に示す。非ペプチジル化合物(o)、(m)、(n)、および(f)のMSDプロットを図15A〜Dにそれぞれ示す。シクロデキストリン対照は、ビーズの動きに対する効果を有した、すなわちその動きは減少した。結果として、非ペプチジル化合物の効果は、シクロデキストリンによりやや遮断されている。化合物(f)は明らかにビーズの動きを増大させるが、他の3つの化合物がいかなる効果を有するかについての結果は決定的ではない。
【0258】
実施例8 磁性回転血球計算(Magnetic twisting cytometry)
一次ヒト気道平滑筋細胞を健康な個体から単離し、3〜6回の継代まで培養した。細胞を合流点まで培養し、次いで24時間血清を奪った。血清を奪われた細胞をコラーゲンで被覆されたプラスチックのウェルで平板培養した。細胞を平板培養した後、RGD被覆マイクロビーズを加えた。Wangら Science 260:1124〜1127, 1993に記載されたように、マイクロビーズを細胞の細胞骨格にしっかりと固定する。その結果として、細胞の動きはマイクロビーズの動きを監視することにより判定され得る。
【0259】
一度細胞をマイクロビーズに付着させ、ビーズを励磁コイルを用いて磁化させ、らせん状コイルを用いて回転させると(twisted)、0.7 Hzの振動磁場を生じる。83 msの間隔でビデオ顕微鏡法を用いてビーズの変位を測定する。ビーズの変位の大きさは、いくつかの要因によるが、一般に変位は細胞の剛性に正比例する。細胞の剛性は時間の経過による貯蔵弾性率(G’)の変化として表される(Maksymら, J. Appl. Physiol. 89:1619〜1632, 2000)。
【0260】
対照実験およびペプチドを用いた実験のための細胞の剛性を10分間にわたって測定した。ペプチドは、実験の開始の1分後に加えた。本発明の非ペプチジル化合物の細胞の剛性を1分間測定し、中止し、化合物を添加し、剛性をもう10分間測定した。
【0261】
対照の時間の経過による貯蔵弾性率(細胞の剛性)の変化を図16に示す。対照において、ヒスタミン(陽性対照)は細胞の剛性を増大させたが、イソプロテレノールおよびジブチル-cAMP(陰性対照)は剛性を減少させた。濃度試験において、非リン酸化PTD-HSP20ペプチドは、ベースラインからの統計的に有意な差異を示さない。対照的に、リン酸化ペプチドは、10分の時点付近の剛性において、統計的に有意な減少を示した。
【0262】
実施例7におけるように、本発明の非ペプチジル化合物を可溶性にするためにシクロデキストリンを必要とした。図17は、シクロデキストリン対照が細胞の剛性を増大させたが、本発明のすべての化合物は、シクロデキストリン対照と比較して、細胞の剛性を減少させたことを示す。化合物(f)の効果は、特に顕著であった。
【0263】
参照による援用
本明細書中で言及されたあらゆる刊行物および特許は、各々の個々の刊行物または特許が参照によって援用されるために具体的におよび個々に示されるように、本明細書によりその全体において参照によって援用される。
【0264】
本対象の発明の特定の態様を論じてきたが、上記明細事項は例示的であり、限定的ではない。本発明の多数の変形形態は、本明細書および下記の特許請求の範囲を検討すると当業者に対して明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、その均等物の全範囲とともに参照することにより、および明細書をかかる変形形態とともに参照することにより、決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】図1は、pHSP20が平滑筋細胞サイクリックヌクレオチドシグナル経路(signaling pathway)の活性化によって誘導されると、pコフィリンをその14-3-3タンパク質(例えば14-3-3ガンマまたはイータ)との相互作用から遊離させ得、その結果、脱リン酸化によるpコフィリンの活性化が導かれ、その後のアクチン細胞骨格の脱重合化を導くことを示す。過剰な未結合のpHSP20はまた、細胞骨格を直接的に不安定にし得る。pHSP20模倣剤は、pコフィリンを14-3-3から放出させるpHSP20の代用となり得る。模倣剤はさらに、pHSP20自体を14-3-3から放出させるために作用し得、その結果、細胞骨格と相互作用する内因性遊離pHSP20のプールを増大させる。最終的にpHSP20模倣剤は、細胞骨格を不安定化させるpHSP20の役割において、直接的にpHSP20の代用となり得る。
【図2】図2は、pHSP20ペプチドが14-3-3タンパク質に結合することを示す。銀染色したSDS-PAGE分析が、対照エタノールアミンビーズ(レーン1)、HSP20ペプチド(レーン2および5)、pHSP20ペプチド(レーン3および6)、ならびにscrHSP20ペプチド(レーン4および7)を用いたプルダウン(pull-down)実験の2回の実験について示される。
【図3】図3は、遊離pHSP20が表面プラスモン共鳴に基づく(Biacore)実験において競合物として使用される場合、14-3-3のpHSP20リガンドへの結合が減少することを示す。この競合実験において、該リガンドはバイアコアチップ(Biacore chip)に固定されたpHSP20断片(WLRRApSAPLPGLK)の誘導体である。競合物pHSP20を種々の濃度(0、340、680、1352、5402nM)で添加する。14-3-3タンパク質は14-3-3γイソフォーム(YWHAGとも言う)である。対照実験において、リガンドはバイアコアチップに固定された非リン酸化ペプチド(HSP20)である。14-3-3のリガンドへの結合は何一つ検出されない。
【図4】図4は、非リン酸化ペプチド(HSP20ペプチド)を競合物として使用する場合、検出され得る競合がないことを示す。
【図5】図5は、pHSP20の最小14-3-3コンセンサス結合配列(RRApSAP)を競合物として使用する場合、強い競合を示す。実施例2に記載されるように、試験される各々の濃度において、最小14-3-3結合コンセンサス配列は、14-3-3への結合において、もともとのpHSP20ペプチド配列(WLRRApSAPLPGLK)に勝る(out compete)。
【図6】図6は、pHSP20の代替(alternative)14-3-3結合配列(WLRRApSAP)を競合物として使用する場合、強い競合を示す。実施例2に記載されるように、試験される各々の濃度において、代替14-3-3結合配列は、14-3-3への結合において、もともとのpHSP20ペプチド配列(WLRRApSAPLPGLK)に勝る。
【図7】図7は、E25-14-3-3タンパク質が、バイアコア実験において固定されたpHSP20ペプチドに結合することを示す。E25はビオチン−Hisタグ付加タンパク質(Biotin-His tagged protein)と言う。14-3-3γ(YWHAG)および14-3-3η(YWHAH)は、実施例3に記載されるように、他の14-3-3イソフォームよりも強く結合する。
【図8】図8は、E23-14-3-3γ(E23-YWHAGとも言う;E23はGST−Hisタグ付加タンパク質と言う)とpHSP20ペプチドの相互作用に対する反応速度を示す。
【図9】図9は、実施例4に記載されるように、蛍光偏光アッセイにおいて14-3-3γとpHSP20ペプチド(WLRRApSAP)の相互作用を抑制する化合物(a)〜(k)に対する用量応答曲線を示す。
【図10】図10は、実施例5に記載されるように、蛍光偏光アッセイにおいて14-3-3γとpHSP20の相互作用を抑制する化合物(l)、(m)およびpHSP20ペプチド(WLRRApSAPLPGLK)に対する用量応答曲線を示す。
【図11】図11は、実施例6に記載されるように、pHSP20ペプチド(PTD-20)、シクロデキストリン対照(CD)、化合物(m)および化合物(n)に対して曝露された場合の、ウシ冠動脈輪の収縮/拡張を示す。
【図12】図12A〜Cは、実施例7に記載されるように、時間対照ならびに200μM亜硝酸ナトリウムおよび1mM db-cAMPそれぞれで処理された試料に対する平均二乗変位(MSD)プロットである。
【図13】図13A〜Dは、種々の濃度のリン酸化および非リン酸化PTD-HSP20ペプチドで処理した細胞に対するMSDプロットである。
【図14】図14は、4%シクロデキストリン対照で処理した細胞のMSDプロットである。
【図15】図15A〜Dは、非ペプチジル化合物(o)、(m)、(n)、および(f)それぞれのMSDプロットである。
【図16】図16は、実施例8に記載される対照に対し、時間にわたる細胞剛性の変化を示す。
【図17】図17は、シクロデキストリン対照と比較して、本発明の化合物によって引き起こされる細胞剛性の変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑筋の収縮性を調節するための組成物であって、14-3-3タンパク質に結合し、かつリン酸化熱ショックタンパク質20(pHSP20)もしくはリン酸化コフィリンを含む複合体の形成および/または安定性を改変するか、または細胞骨格ダイナミクスに対し14-3-3タンパク質に結合するHSP20の効果を模倣する非ペプチジル剤を含み、該薬剤が2000amu未満の分子量を有する、組成物。
【請求項2】
薬剤が、他の14-3-3タンパク質と比較して14-3-3γおよび/または14-3-3ηに選択的に結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
薬剤が、14-3-3タンパク質結合に対して10μM以下のKdを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
薬剤が、14-3-3タンパク質結合に対して1μM以下のKdを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
薬剤が、14-3-3タンパク質結合に対して100μM以下のKdを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
薬剤が血管の緊張を調節する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
薬剤が気管支の緊張を調節する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
血管拡張を誘導する組成物であって、14-3-3γタンパク質に結合し、かつ血管拡張に関して熱ショックタンパク質20(pHSP20)のリン酸化と同様の効果を有する非ペプチジル剤を含み、該薬剤が2000amu未満の分子量を有する、組成物。
【請求項9】
薬剤が、コフィリンのアクチン脱重合活性を促進させる、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
薬剤が、14-3-3γタンパク質およびコフィリンを含む複合体の形成または安定性をアンタゴナイズする、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
薬剤が、細胞骨格ダイナミクスにおけるリン酸化HSP20の役割を模倣する、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
薬剤が細胞骨格リモデリングを促進する、請求項8記載の組成物。
【請求項13】
血管収縮を誘導する組成物であって、14-3-3γタンパク質に結合し、かつ熱ショックタンパク質20のリン酸化の効果を活性化する非ペプチジル剤を含み、該薬剤が2000amu未満の分子量を有する、組成物。
【請求項14】
薬剤が、コフィリンのアクチン脱重合活性を抑制する、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
薬剤が経口送達用に製剤化される、請求項1〜14いずれか記載の組成物。
【請求項16】
薬剤が肺送達または経鼻送達用に製剤化される、請求項1〜14いずれか記載の組成物。
【請求項17】
薬剤が式I
【化1】


(式中、
aはアルキル、アルケニル、ヘテロアリールまたはアリール基であり;
bはアルキル、アルケニル、ヘテロアリールまたはアリール基であり;
R3はC1〜6アルキル、アリールアルキル、フェニル、ヘテロアリール、アシル、およびスルホニルから選択され;
R4はH、C1〜6アルキル、アリールアルキル、フェニル、およびヘテロアリールから選択され;ならびに
-はアニオンのカウンターイオンである)
の構造を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
薬剤が式II
【化2】


(式中、
R1およびR2は独立して、H、C1〜6アルキル、アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル、および任意に置換されるアミノ基であり;
R3はC1〜6アルキル、アリールアルキル、フェニル、ヘテロアリール、アシル、およびスルホニルから選択され;ならびに
-はアニオンのカウンターイオンである)
の構造を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
薬剤が式III
【化3】


(式中、
各R1およびR3は独立して、ハロゲン、CF3、C1〜6アルキル、シクロアルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシエステル、カルボキサミド、およびスルホンアミドから選択され;
R2は、ニトロ、カルボキシ、カルボキシエステル、置換カルボキサミド、およびC1〜6アルキルから選択され;
Xは、NHおよびOから選択され;
mは0〜4の整数であり;ならびに
nは0〜5の整数である)
の構造、またはその薬学的に許容され得る塩を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
薬剤が式IV
【化4】


(式中、
各R1およびR2が独立して、ヒドロキシル、C1〜3のアルコキシ、C4〜6のシクロアルコキシ、ニトロ、アミノ、アシル、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキシアミドおよびスルホンアミドから選択され;
X、Y、Z、P、QおよびWが独立してCHおよびNから選択され;
pが0〜5の整数であり;ならびに
qが0〜5の整数である)
構造、またはその薬学的に許容され得る塩を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
14-3-3タンパク質に結合し、リン酸化された熱ショックタンパク質20(pHSP20)を含む複合体の形式および/または安定性を変更するか、または14-3-3タンパク質に結合するpHSP20の効果を模倣する、小有機非ペプチジル剤を含む、呼吸製剤であって、薬剤が2000amu未満の分子量および10μM以下の14-3-3γに結合するKdを有する、呼吸製剤。
【請求項22】
前記薬剤が20μm未満の平均直径を有する微細粒子として製剤化される、請求項21記載の製剤。
【請求項23】
前記微細粒子が生物分解性ポリマーより形成される、請求項22記載の製剤。
【請求項24】
前記微細粒子が多糖類、ジケトピペラジン、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリビニル化合物、ポリシロキサン、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマー、ポリウレタン、セルロース、ポリ(酪酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、またはそのコポリマーからなる群より選択される一つ以上のポリマーから形成される、請求項22記載の製剤。
【請求項25】
前記微細粒子が溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出またはホットメルトカプセル化により形成される、請求項22記載の製剤。
【請求項26】
前記微細粒子が乾燥状または凍結乾燥状である、請求項22記載の製剤。
【請求項27】
前記薬剤が多次元ポリマーネットワークを含む超分子複合体として形成される、請求項21記載の製剤。
【請求項28】
前記超分子複合体がシクロデキストリンを修飾したポリマーから形成される、請求項27記載の製剤。
【請求項29】
前記薬剤がリポソーム中に製剤化される、請求項21記載の製剤。
【請求項30】
さらに噴射剤を含む、請求項21記載の製剤。
【請求項31】
定量吸入器、乾燥粉末状吸入器または空気噴射型ネブライザーに含まれる、請求項21記載の製剤。
【請求項32】
前記薬剤が1〜10回分の定量の治療的有効量を提供する量で製剤化される、請求項21記載の製剤。
【請求項33】
請求項1〜14および17〜20いずれか記載の組成物を含む、肺または鼻腔の送達のためのエーロゾル医薬組成物を含む、測定量エーロゾルディスペンサー。
【請求項34】
請求項1〜14および17〜20いずれか記載の組成物を投与することを含む、平滑筋収縮を調節する方法。
【請求項35】
請求項1〜6いずれか記載の組成物を投与することを含む、血管収縮、血管痙攣または制限された血流の影響に苦しむ患者を処置する方法であって、該薬剤が血管拡張を促進する、方法。
【請求項36】
請求項1〜5および7いずれか記載の組成物を投与することを含む、気管支収縮または気管支痙攣に苦しむ患者を処置する方法であって、薬剤が気管支拡張を促進する、方法。
【請求項37】
請求項1〜5および7いずれか記載の組成物を投与することを含む、患者の気管支を拡張する方法であって、薬剤が気管支拡張を促進する、方法。
【請求項38】
組成物が静脈内に、経口的に、鼻腔内に、口内に、非経口的に、肺から、鼻腔内に、局所的にまたは経皮的に投与される、請求項34〜37記載の方法。
【請求項39】
組成物が局所的に投与される、請求項34記載の方法。
【請求項40】
組成物が縫合、血管移植、ステント、心臓弁、薬物ポンプ、薬物送達カテーテル、注入カテーテル、薬物送達ガイドワイヤ、または移植可能な医療用機器を介して投与される、請求項34記載の方法。
【請求項41】
14-3-3γタンパク質に結合し、血管拡張に関する熱ショックタンパク質20のリン酸化と同様の効果を有する非ペプチジル薬剤を患者に投与することを含む、血管収縮性の反応または状態を処置または予防するための血管拡張を含む方法であって、薬剤が2000amu未満の分子量を有する、方法。
【請求項42】
血管収縮性の応答または状態が腎臓の血管収縮性の障害;および心臓血管疾患からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
血管収縮応答がロイコトリエンの産生の結果である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
血管収縮応答が薬物により誘導される、請求項41記載の方法。
【請求項45】
血管収縮性応答がシクロスポリンA(CSA) によって誘導される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
患者が、14-3-3のレベルの増大と関連する状態を有する、請求項41記載の方法。
【請求項47】
患者が、リン酸化HSP20のレベルの減少と関連する状態を有する、請求項41記載の方法。
【請求項48】
患者が、血管形成術、血管ステント配置、動脈内膜切除、アセレクトミー、バイパス手術、血管移植、器官移植、人工移植の設置、微細血管再構成、整形外科的皮弁構成およびカテーテルの設置からなる群より選択される施術を受けた、受けている、または受ける、請求項41記載の方法。
【請求項49】
該薬剤が縫合、血管移植、ステント、心臓弁、薬物ポンプ、薬物送達カテーテル、注入カテーテル、薬物送達ガイドワイヤまたは移植可能な医療用機器により投与される、請求項41記載の方法。
【請求項50】
哺乳動物に、14-3-3γタンパク質に結合し、熱ショックタンパク質20のリン酸化としての効果を抑制解除し、かつ2000amu未満の分子量を有する非ペプチジル剤のある量を投与することを含む、哺乳動物の循環系の血流を増加させる方法。
【請求項51】
該薬剤が、収縮作用薬に対する抵抗性を低下させるために使用される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
該薬剤が、高体温および/または血管拡張性ショック(vasodilatory shock)を伴って現れる敗血症の処置の一部である、請求項50記載の方法。
【請求項53】
組成物が縫合、血管移植、ステント、心臓弁、薬物ポンプ、薬物送達カテーテル、注入カテーテル、薬物送達ガイドワイヤまたは移植可能な医療用機器により投与される、請求項50記載の方法。
【請求項54】
個体が、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化、高血圧、アンギナ、虚血性疾患、内膜増殖、冠動脈攣縮、冠虚血、急性心筋梗塞と関連するうっ血性心不全または肺水腫、血栓症、脳卒中、血小板粘着、血小板凝集、平滑筋細胞増殖、医療用機器の使用に関連する血管合併症、医療用機器の使用に関連する創傷、心筋梗塞、肺血栓塞栓症、大脳血栓塞栓症、血栓静脈炎、血小板減少症または出血性障害、徐脈、妊娠中毒症、早期分娩、子癇前症、子癇、レーノー病、レーノー現象、溶血性尿毒症、非閉塞性腸間膜虚血、肛門裂傷、アカラシア、性的不能症、偏頭痛、平滑筋痙攣と関連する虚血性筋傷害、血管症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症(CF)、呼吸困難、気腫、喘鳴、肺高血圧、肺線維症、過剰応答性気道、慢性気管支炎、気管支収縮、呼吸困難、肺気道障害または肺気道閉塞、肺血管収縮、呼吸障害、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、乳児呼吸促迫症候群(乳児RDS)および肺界面活性物質減少からなる群より選択される疾患に苦しむ、請求項35記載の方法。
【請求項55】
個体が勃起機能不全に苦しむ、請求項35記載の方法。
【請求項56】
気道の疾患または状態が、喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症(CF)、呼吸困難、気腫、喘鳴、肺高血圧、肺線維症、過剰応答性気道、慢性気管支炎、気管支収縮、呼吸困難、肺気道障害または肺気道閉塞、肺血管収縮、呼吸障害、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、乳児呼吸促迫症候群(乳児 RDS)および肺界面活性物質減少から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項57】
該薬剤が、1種類以上の抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、タンパク質、酵素、ホルモン、非ステロイド系抗炎症薬、サイトカインおよびステロイド類の前、後および/または一緒に投与される、請求項37記載の方法。
【請求項58】
ポリマーマトリックスならびに該ポリマー中に分散された請求項1〜14および17〜20いずれか記載の組成物を含む持続放出製剤。
【請求項59】
ポリマーマトリックスからの該薬剤の放出の持続期間が少なくとも24時間である、請求項58記載の持続放出製剤。
【請求項60】
ポリマーが非生体内分解性である、請求項58記載の持続放出製剤。
【請求項61】
ポリマーが生体内分解性である、請求項58記載の持続放出製剤。
【請求項62】
系が身体内への注射または埋込みに適合される、請求項58記載の持続放出製剤。
【請求項63】
(i) 表面を有する基材;および
(ii) 該表面に付着させたコーティングであって、薬剤が生理学的条件下でマトリックスから溶出されるのを可能にする様式で分散された請求項1〜14および17〜20いずれか記載の組成物を内部に含むポリマーマトリックスを含む前記コーティング
を含む、医療用機器。
【請求項64】
基材が、ねじ、プレート、ワッシャー、縫合糸、プロテーゼ固定具、鋲、ステープル、導線、弁、および膜から選択される外科用器具である、請求項63記載の機器。
【請求項65】
前記機器が、カテーテル、移植可能な血管アクセスポート、血液貯蔵バッグ、血液用チューブ、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管の移植片、大動脈内バルーンポンプ、心臓弁、心血管縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、体外機器、血液フィルター、血液透析ユニット、血液灌流ユニット、血漿瀉血ユニット、および血管における配置に適合させたフィルターからなる群より選択される、請求項63記載の機器。
【請求項66】
血管ステントである、請求項63記載の機器。
【請求項67】
拡張し得るステントであって、前記被覆が圧縮された状態および拡張した状態の前記拡張し得るステントを収容するために可撓性である、請求項66記載の機器。
【請求項68】
患者に埋め込まれた場合、被覆された表面がある期間にわたって薬剤を放出できるように、請求項1〜14および請求項17〜20いずれか記載の組成物を含むポリマー製剤で被覆された1つ以上の表面を有する患者の身体内への埋め込みのための医療機器を含む、被覆された機器の組み合わせ。
【請求項69】
生物学的に許容されるポリマー、ならびにポリマー中に分散された請求項1〜14および請求項17〜20いずれか記載の組成物を含む持続的放出系で被覆された管腔内医療機器であって、内表面および外表面を有し、内表面、外表面、または双方の少なくとも一部に塗布された前記系を有する、機器。
【請求項70】
インビボに位置する医療機器の表面から医薬を送達することに使用するための被覆組成物であって、リン酸化熱ショックタンパク質20(HSP20)および14-3-3γタンパク質を含む複合体の形成または安定性を変えるか、または14-3-3γタンパク質に結合するHSP20の効果を模倣する非ペプチジル剤を有するポリマー基質を含み、噴霧および/または組成物中への機器の浸漬による医療機器の表面への適用のために液体形態または懸濁液形態で提供される、被覆組成物。
【請求項71】
インビトロの外植された組織と、請求項1〜14および請求項17〜20いずれか記載の組成物とを接触させることを含む、外植された血管組織の収縮性および/または緊張状態を制御する方法。
【請求項72】
(a)検査薬、14-3-3ポリペプチド、およびリン酸化HSP20ポリペプチドを、検査薬の非存在下で14-3-3ポリペプチドとリン酸化HSP20ポリペプチドとの相互作用を可能にし得る条件下で混合すること、
(b)検査薬が14-3-3ポリペプチドとリン酸化HSP20ポリペプチドとの相互作用を変えるかどうかを決定すること、ならびに
(c)検査薬が14-3-3ポリペプチドとリン酸化HSP20ポリペプチドとの相互作用を変えるのであれば、検査薬と平滑筋組織とを接触させること、および検査薬が平滑筋組織の収縮性および/または緊張状態を変えるかどうかを決定すること
を含む、平滑筋の緊張状態を調節するための候補の非ペプチジル治療剤を識別する方法。
【請求項73】
(a)検査薬、14-3-3γポリペプチド、およびコフィリンポリペプチドを、検査薬の非存在下で14-3-3γポリペプチドとコフィリンポリペプチドとの相互作用を可能にし得る条件下で混合すること、
(b)検査薬が14-3-3γポリペプチドとコフィリンポリペプチドとの相互作用を変えるかどうかを決定すること、ならびに
(c)検査薬が14-3-3γポリペプチドとコフィリンポリペプチドとの相互作用を変えるのであれば、検査薬と平滑筋組織とを接触させること、および検査薬が平滑筋組織の収縮性および/または緊張状態を変えるかどうかを決定すること
を含む、平滑筋の緊張状態を調節するための候補の非ペプチジル治療剤を識別する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−523197(P2007−523197A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554338(P2006−554338)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/006126
【国際公開番号】WO2005/082341
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506285068)プロレキシーズ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】