説明

ras−ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、シクロデキストリンおよびエタノールの複合体

【課題】水溶性と安定性が改良されたras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の複合体の提供。
【解決手段】ras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤若しくはその薬学的に許容される塩、置換シクロデキストリン、およびエタノールを含んでなるras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤複合体は予想できないほどにras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の水溶性が高く、安定性が改善され、また本質的に粒子状物質を有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に粒子状物質を有せず、水溶性と安定性が改良されたras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の複合体に関する。該複合体は抗腫瘍剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンはデンプンから得られる環状のオリゴ糖であって6個のグルコース単位(α-シクロデキストリン)、7個のグルコース単位(β-シクロデキストリン)または8個のグルコース単位(γ-シクロデキストリン)より形成される。これらは、完全にまたは少なくとも部分的には5-8Åのシクロデキストリン内腔にフィットするより小さな分子と包接化合物を形成することが知られている〔Saenger, W.,"研究および産業におけるシクロデキストリン包接化合物", Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 19, 344-362(1980)〕。α-シクロデキストリンは、水、メタノール、ポリヨウ素、ヨウ素、クリプトン、n-プロパノール、p-ヨードアニリン、ジメチルスルホキシド、メタノール、m-ニトロフェノール、メチルオレンジ、プロスタグランディンE、および酢酸カリウムと包接体を形成し;β-シクロデキストリンは、水、n-プロパノール、p-ヨードフェノール、2,5-ジヨード安息香酸、およびp-ニトロアセトアニリドと包接体を形成し;そして、γ-シクロデキストリンはプロパノール/水および水と包接体を形成する。β-シクロデキストリンはまた、ベンゾカイン、プロカイン、アトロピン、アスピリン、ニトログリセリン、アリシン、フェニルブタゾン、サリチル酸、アスカリドール、およびチョールムーグラ酸、リノレイン酸およびインドメタシンのエーテルエステルと包接体を形成する。
【0003】
しかしながら、β-シクロデキストリンは腎毒性および膜不安定化の性質を有している。β-シクロデキストリンに関する安全性の懸念のためこのシクロデキストリンについて多くの化学修飾がなされた。異なるタイプのβ-シクロデキストリンとしては、アルキル化シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、およびスルホアルキルエーテルシクロデキストリンがあり、これには、β-シクロデキストリンの4位、7位の置換度があるスルホブチルエーテル(SBE)β-シクロデキストリンが含まれる。そして、具体的には最後のグループにSBE 7-β-シクロデキストリン(SBE-CD)、Captisol(登録商標)が含まれる。
【0004】
米国特許No.4,596,795号は性ホルモン、特にテストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールと特定のシクロデキストリン誘導体との包接体若しくは複合体の投与を開示する。ここでは、舌下または口腔内投与により、これらホルモンは効果的に全身循環に移行しその後いずれもゆっくりと包接体若しくは複合体から離脱する。
米国特許No.4,727,064号は、それ自体結晶性で水溶性の低い医薬組成物を本質的に非結晶体へと転換させ、薬学的性質を改善する方法を示している。この転換は上記医薬組成物を包接化しシクロデキストリン誘導体の水溶性多成分混合物とすることにより達成される。
【0005】
米国特許No.5,134,127号および5,376,645号は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体、および非水溶性薬物の経口、鼻腔内および非経口投与における可溶化剤としてのそれらの用途を開示する。
米国特許No.5,602,112号に開示された医薬組成物は、抗潰瘍薬としての量の置換シクロデキストリン、もとより水溶性の細胞毒性抗癌剤、およびマンニトールのような糖アルコールを含む。当該薬物はもとより水溶性なので、ここで開示されるシクロデキストリン誘導体は薬物の抗潰瘍効力を改善するために使用されており、水溶性向上の目的で使用されるのではない。糖アルコールは当該細胞毒性薬物の管外遊出毒性(潰瘍)に及ぼす置換シクロデキストリンの改善効果を増強するために添加される。
【0006】
米国特許No.6,218,375号は、式Iの化合物;
【化1】

を含み、例えばスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのような置換シクロデキストリンとを組み合わせたras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の複合体を開示する。この複合体は癌治療に有用であることが分かるが、この技術分野では非経口投与に適し、溶解度、安定性および溶出特性が改良されたFTI製剤が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の要約
本発明は、式Iの阻害剤
【化2】

(式中、nは0または1;RはCl、Br、フェニル、ピリジル、またはシアノ;
はアラルキル;Rは低級アルキル、アリール、置換アリールおよびヘテロシクロから選択され;ZはCO、SO、COまたはSONR;Rは水素、低級アルキル、および置換アルキルから選択される。)
若しくはその薬学的に許容される塩、エタノール、およびスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン若しくは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含み、該阻害剤のシクロデキストリンに対するモル比が約1から2の範囲内にあるras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)の複合体を示す。
【0008】
本発明のある態様は、エタノールが約10%から約40%の範囲内の量で存在する。
本発明のある態様は、エタノールが約15%から約35%の範囲内の量で存在する。
本発明のある態様は、エタノールが約20%から約30%の範囲内の量で存在する。
本発明のある態様は、エタノールが約25%から約30%の範囲内の量で存在する。
本発明の好ましい態様は、エタノールが約30%の量で存在する。
また本発明では、薬学的に許容される担体中に有効量のras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、上記のような置換シクロデキストリン、およびエタノールを含む医薬組成物が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、式Iのras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤
【化3】

(式中、nは0または1;RはCl、Br、フェニル、ピリジル、またはシアノ;
はアラルキル;Rは低級アルキル、アリール、置換アリールまたはヘテロシクロ;ZはCO、SO、COまたはSONR;Rは水素、低級アルキル、または置換アルキル)
【0010】
若しくはその薬学的に許容される塩、例えばスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン若しくは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのような置換シクロデキストリン、およびエタノールを含んでなる医薬製剤若しくは複合体を提供する。本発明の製剤は水溶性および安定性を顕著に改善し、また先行技術よりも早い溶出特性を示す。加えて、該製剤はUSP26−NF21中の注射剤に関する公定書規格で求められるように粒子状物質は含まず、これを参考のために援用する。
定義
【0011】
「アルキル」の語は、直鎖または分枝鎖を有し、無置換で炭素数1から20、好ましくは1から7の炭化水素をいう。「低級アルキル」の表現は、炭素数1から4の無置換炭化水素をいう。
【0012】
「置換アルキル」の語は、例えばハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、ヘテロシクロオキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、二つのアミノ置換基がアルキル、アリールおよびアラルキルから選択される二置換アミノ、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アラルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、スルホンアミド例えばSONH、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル例えばCONH、置換カルバミル例えばCONHアルキル、CONHアリール、CONHアラルキル、またはアルキル、アリールおよびアラルキルから選択される二つの置換基が窒素原子上にある場合;アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノ、およびヘテロシクロ(例えばインドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジル等)のような1個から4個の置換基を有するアルキル基をいう。上記の場合で置換基がさらに置換される場合は、ハロゲン、アルキル、アルコキシまたはアラルキルで置換される。
【0013】
「アリール」の語は、環を構成する炭素数が6個から12個の単環性若しくは二環性の芳香族炭化水素をいい、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、およびジフェニルであっていずれも置換されていてもよい。
「アラルキル」の語は、アルキル基を介して直接結合したアリール基をいい、例えばベンジルである。
「置換アリール」の語は、例えばアルキル、置換アルキル、ハロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、ウレイド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルバミル、アルコキシカルボニル、アルキルチオノ、アリールチオノ、アルキルスルホニルスルホンアミド、アリールオキシ等の1個から4個の置換基で置換されたアリール基をいう。これら置換基はさらに、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール置換アルキルまたはアラルキルで置換されてもよい。
【0014】
「ヘテロシクロ」の語は、任意で置換された、完全飽和若しくは不飽和の芳香族若しくは非芳香族環状基であって、例えば、単環の4員から7員環、二環の7員から11員環、三環の10員から15員環であり、少なくとも1個の炭素原子を含む環内に少なくとも1個のヘテロ原子を有するものをいう。ヘテロ原子を含むヘテロシクロ基の各環は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子より選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含み、窒素および硫黄のヘテロ原子は任意で酸化されていてもよく、また窒素ヘテロ原子は任意で四級化されていてもよい。ヘテロシクロ基はいずれのヘテロ原子または炭素原子上で結合してもよい。ヘテロシクロ基はまたアルキルまたはアリールに関して記載したいずれの置換基で置換されていてもよい。
【0015】
「シクロデキストリン」の語は、スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンおよび2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。
エタノールのパーセントはw/vで表される。
式IのFT阻害剤は、種々の有機および無機の酸と塩を形成し得る。これら塩には、塩酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、臭化水素、メタンスルホン酸(MSA)、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびその他種々の酸と形成する塩が含まれ、例えば、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩等がある。これらの塩は阻害剤Iと当量の酸を塩が析出するような溶媒中または水性溶媒中で反応させてから溶媒の留去をすることにより形成することができる。通常、薬学的および生理学的に許容される塩が好ましいが、その他の塩も例えば本発明の阻害剤(化合物I)またはその塩の単離若しくは精製に用いるなど有用である。
【0016】
好ましいFT阻害剤としては、
(R)-7-シアノ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピン、またはその塩;
(R)-2,3,4,5-テトラヒドロ-l-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-4-フェニルスルホニル)-3-(フェニルメチル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピン-7-カルボニトリル、またはその塩;
(R)-7-ブロモ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-4-(メチルスルホニル)-3-(フェニルメチル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピン、またはその塩;
(R)-7-シアノ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(プロピルスルホニル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピン、またはその塩;および
(R)-7-シアノ-4-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イキダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピン、またはその塩が含まれる。
【0017】
本発明で有用な、これらのそして追加的なFT阻害剤およびそれらを製造する方法は米国特許No.6,011,029号に記載されていて、その全部をここで援用する。
一般的には、本発明の複合体はFTIおよびシクロデキストリンをモル比約1:2若しくはそれ以上でエタノールまたは水の溶液中で含んでなる。該複合体は、シクロデキストリンとエタノールの水溶液を調製しras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の遊離塩基若しくはその塩を撹拌しながら加え、適切な酸若しくは良く知られた緩衝水溶液で所望のpHに調節して得ることができる。
【0018】
本発明の一態様に従うと、クエン酸0.155gおよびクエン酸ナトリウム0.076gを含むpH4の緩衝水溶液を調製して該複合体を製造する。この緩衝液70mLを撹拌しながら、スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン10gを加え、次いでエタノール30gを加えて混合する。この溶液にras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、(R)-7-シアノ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-lH-1,4-ベンゾジアゼピン1gを加え、阻害剤を加えた後、室温下で溶液を30分間追加的に撹拌する。それから溶液を0.22ミクロンのフィルターで濾過する。
【0019】
本発明の製剤は水溶性および安定性を改善し、先行技術に比べて早い溶出特性を有する。例えば、阻害剤、(R)-7-シアノ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-lH-1,4-ベンゾジアゼピンの水溶性は、スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンとエタノールの存在で顕著に改善される。この阻害剤の溶解度はMSA塩として1.7mg/mL(水)であるが、それが13mg/mL(10%w/v SBE-CD)に増加した。該溶解度はさらに14mg/mL(10%w/v SBE-CDおよび25%w/v エタノール)、20mg/mL(10%w/v SBE-CDおよび30%w/v エタノール)、そして28mg/mL(10%w/v SBE-CDおよび40%w/v エタノール)まで増加した。このように、10% w/v SBE-CD溶液中のエタノール濃度に依存して、この阻害剤の水溶性は50%を超えて増加することが分かる。
【0020】
好ましい複合体の増加した溶解度と安定性、希釈可能特性と粒状物質の不存在によりその他の可能な製剤にもましてこの製剤は非経口投与に適したものとなる。例えば、SBE-CDと式Iの化合物および、ツウィーン80、PEG、PVPまたはクレモフォール等の添加物を含む複合体は、本発明の好ましい特性の一部しか有しない。
本発明はまた、式Iのras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤と、例えばスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンのような置換シクロデキストリン、およびエタノールを含み、さらに薬学的に許容される担体および他の任意の治療用若しくは予防用の成分を含んでなる医薬組成物を提供する。医薬組成物の担体成分としては、必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、香料、結合剤、増粘剤、滑沢剤、保存剤等が含まれる。担体は該製剤の他の成分と混合可能なものでなければならず、患者に有害であってはならない。
本発明の複合体の好ましい投与経路は非経口投与であり、皮下注射、静脈内、筋肉内または嚢内注射若しくは注入が含まれる。マウス、ラット、イヌ、ネコ、etcの温血動物の治療に加えて本発明の複合体はヒトの癌治療にも有効である。
以下の実施例は本発明の好ましい態様を示すものであって、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例】
【0021】
特に示さない限り、温度はすべて摂氏で表す。スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBE−CD)はCyDex(商標)社よりCaptisol(登録商標)の商品名で販売されている。
【0022】
実施例1
SBE−CD、エタノール、および化合物1のMSA塩を含む250mL複合体(非緩衝液系)の調製
注射用水140mLをビーカーに入れ、室温で撹拌しながらCaptisol(登録商標)25.0gを加えて溶解させた。撹拌を続けながら、エタノール75.0gを加え、さらに2.97gの化合物Iを加えて混合物を室温でさらに30分間撹拌し化合物Iを完全に溶解させた。得られた溶液のpHは4.0から4.3の間である。注射用水を追加して溶液の体積を250mLとした。該溶液をよく撹拌して0.22μmのフィルターで濾過した。化合物Iを10mg/mL(10%w/v SBE-CDおよび30%w/v エタノール)含む透明な濾液を得た。
【0023】
実施例2
SBE−CD、エタノール、および化合物1のMSA塩を含む100mL複合体(10mM クエン酸緩衝液)の調製
注射用水50mLをビーカーに入れ、室温で撹拌しながらクエン酸0.155gおよびクエン酸ナトリウム0.076gを加えた。撹拌を続けながら、Captisol(登録商標)10.0gを加えて溶解させた。さらに撹拌しながらエタノール30.0gを加え、1.19gの化合物I(MSA塩として)を加えて混合物を室温でさらに30分間撹拌した。得られた溶液のpHは4.0である。その後、注射用水を追加して溶液の体積を100mLとした。該溶液をよく撹拌して0.22μmのフィルターで濾過した。化合物Iを10mg/mL(10mM クエン酸緩衝液中、10%w/v SBE-CDおよび30%w/v エタノール)含む透明な濾液を得た。
【0024】
実施例3
SBE−CD、エタノール、および化合物1のMSA塩を含む500mL複合体(10mM クエン酸緩衝液)の調製
注射用水250mLをビーカーに入れ、室温で撹拌しながらクエン酸一水和物0.775gおよびクエン酸ナトリウム二水和物0.380gを加えた。撹拌を続けながら、Captisol(登録商標)50.0gを加えて溶解させた。さらに撹拌しながら無水エタノール150.0gを加え、さらに5.94gの化合物I(MSA塩として)を加えて混合物を室温でさらに30分間撹拌し化合物Iを完全に溶解させた。得られた溶液のpHは4.0から4.3の間である。注射用水を追加して溶液の体積を500mLに調節した。該溶液をよく撹拌して0.22μmのフィルターで濾過した。化合物Iを10mg/mL(10mM クエン酸緩衝液中、10%w/v SBE-CDおよび30%w/v エタノール)含む透明な濾液を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式I
【化1】

(式中、nは0または1;
はCl、Br、フェニル、ピリジル、またはシアノ;
はアラルキル;
は低級アルキル、アリール、置換アリールおよびヘテロシクロから選択され;
はCO、SO、COおよびSONRから選択され、Rは水素、低級アルキル、および置換アルキルから選択される。)
若しくはその薬学的に許容される塩の阻害剤と、スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン若しくは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、およびエタノールを含み、シクロデキストリンに対する阻害剤のモル比が約1から2若しくはそれ以上の範囲である、ras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤複合体。
【請求項2】
該置換シクロデキストリンがスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンである、請求項1の複合体。
【請求項3】
エタノールが約10% w/v から約40% w/v エタノールの範囲で存在する請求項2の複合体。
【請求項4】
該阻害剤が(R)-7-シアノ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項3の複合体。
【請求項5】
エタノール量が約15%から約35%の範囲にある、請求項4の複合体。
【請求項6】
エタノール量が約20%から約30%の範囲にある、請求項4の複合体。
【請求項7】
エタノール量が約25%から約30%の範囲にある、請求項4の複合体。
【請求項8】
エタノール量が約30%である、請求項3の複合体。
【請求項9】
請求項1の複合体の有効量と薬学的に許容される担体を含んでなる、ras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の組成物。
【請求項10】
液状である、請求項9の組成物。
【請求項11】
担体がクエン酸緩衝液である、請求項9の組成物。
【請求項12】
電解質または非電解質をさらに含む、請求項9の組成物。
【請求項13】
(R)-7-シアノ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-1H-1,4-ベンゾジアゼピンまたはその薬学的に許容される塩、スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン、およびエタノールを含み、スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンに対する阻害剤のモル比が約1から2の範囲である、ras-ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤複合体。
【請求項14】
約10%から約40%のエタノールを含む、請求項13の複合体。
【請求項15】
約20%から約30%のエタノールを含む、請求項13の複合体。
【請求項16】
約30%のエタノールを含む、請求項13の複合体。
【請求項17】
必要とする患者に請求項1の複合体の有効量を投与することを含む、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害に感受性のある腫瘍の治療方法。

【公開番号】特開2012−72161(P2012−72161A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248458(P2011−248458)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2006−513402(P2006−513402)の分割
【原出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】