説明

分析装置

【課題】効果的に試薬の蒸発を防止することができる分析装置を提供する。
【解決手段】試薬を収容した試薬容器300を収納するとともに、冷却された空気によって試薬容器300内の試薬を冷却する試薬庫40を備えた分析装置1である。前記試薬庫40内には、所定の液体を、その液面が冷却空気に触れるように貯留する液体貯留部110が設けられ、前記液体貯留部に前記液体を供給する液体供給部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固分析装置や免疫分析装置等の試薬容器に収容された試薬を用いて検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを混和して調製された測定試料の測定結果を分析する分析装置が知られている。この分析装置において、試薬は、試薬容器に収められた状態で所定の試薬庫内に収容され、この試薬庫内において劣化を防止するために所定の温度に保冷されている。
下記特許文献1には、試薬の冷却機能を有する試薬庫を備えた自動分析装置が開示されている。この自動分析装置の試薬庫は、底壁と外周壁とを有する試薬ケースと、この試薬ケースの上部開口を塞ぐ試薬カバーと、試薬ケース内に設けられ、複数本の試薬容器を保持するラックが載置される試薬テーブルと、試薬ケース内の空気を冷却する冷却部と、試薬ケース内の空気を循環させるファンとを備えている。
そして、この自動分析装置は、冷却部によって冷却された空気をファンにより循環させることによって、試薬庫内の試薬を冷却するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−8611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような自動分析装置では、試薬庫に収容された試薬容器の開口から試薬が蒸発することがある。試薬が蒸発すると、その成分濃度に変化が生じるため、検体の分析結果に悪影響を及ぼす可能性がある。
特許文献1に記載の自動分析装置の場合、試薬ケースの構造や試薬を保持するラックの形状等に工夫を施すことにより、試薬庫内の空気の流れを制御し、試薬容器の開口付近の空気流動を抑制することで、試薬の蒸発を防止している。しかし、試薬庫内の空気の流れを制御するのみでは試薬の蒸発を十分に抑制することは困難であった。
【0005】
本発明は、効果的に試薬の蒸発を抑制することができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、試薬を収容した試薬容器を収納する試薬庫を備えた分析装置であって、前記試薬庫内に、所定の液体を、その液面が空気に触れるように貯留する液体貯留部が設けられ、前記液体貯留部に前記液体を供給する液体供給部を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明は、試薬庫内の液体貯留部に所定の液体を供給して貯留し、この液体を蒸発させることによって試薬庫内の湿度を上げ、試薬の蒸発を抑制するものである。したがって、例えば試薬庫内の空気の流れを制御したり、試薬容器にキャップを取り付けたりしなくても、効果的に試薬の蒸発を防止することができる。
【0008】
前記試薬庫内の空気を冷却するための冷却部をさらに備えていてもよい。
このような構成によって、試薬容器を保冷しつつ、冷却された空気による試薬の蒸発を抑制することができる。
【0009】
前記試薬庫は、実質的に密閉されていることが好ましい。
このような構成によって、試薬庫内に外気が侵入するのを防止して結露の発生を抑制しつつ、試薬庫内の湿度を上昇させることができる。
【0010】
また、前記液体供給部は、前記試薬庫内の空気の温度よりも高温の液体を供給するものであってもよい。
このような構成によって液体貯留部内の液体の蒸発を促進し、試薬の蒸発を抑制することができる。
【0011】
前記分析装置は、前記液体貯留部に貯留された液体を前記試薬庫外へ排出する液体排出部をさらに備えていてもよい。
このような構成によって、液体貯留部に貯留された液体を容易に排出することができる。
【0012】
前記液体排出部は、前記液体貯留部内において所定量を超える液体を排出する定量排出部を含んでいてもよい。
このような構成によって、液体貯留部内の液体の量を所定に維持することができる。また、定量貯留状態の液体貯留部に対して新たな液体の供給を行うことによって、余剰となった古い液体を排出することができ、液体貯留部内の液体を部分的に入れ替えることが可能となる。
【0013】
前記分析装置は、前記液体貯留部に対して液体を供給するように、前記液体供給部を制御する制御部を備えていてもよい。このような構成によって、ユーザの手を介することなく、また、液体排出部の制御を行うことなく、容易に液体貯留部内の液体を入れ替えることができる。
【0014】
前記制御部は、前記液体貯留部に対して所定時間毎に又は継続的に液体を供給するように、前記液体供給部を制御してもよい。
液体が液体貯留部内で長時間滞留していると、試薬庫内の冷却空気によって低温となり、蒸発し難くなるが、このような構成によって所定時間毎に又は継続的に液体貯留部内の液体をより高温の新しい液体と入れ替えることで、当該液体の蒸発を促進することができる。
【0015】
前記液体排出部は、前記液体貯留部内の全ての液体を排出可能な全排出部を含んでいてもよい。
このような構成によって、液体貯留部内の液体を全て排出することが可能となる。
【0016】
前記分析装置は、前記液体貯留部から液体を排出し、さらに前記液体貯留部に液体を供給するように、前記全排出部及び前記液体供給部を制御する制御部を備えていてもよい。
このような構成によって、ユーザの手を介することなく液体貯留部内の液体を入れ替えることができる。
【0017】
前記制御部は、所定時間毎に又は継続的に前記液体貯留部から液体を排出し、さらに前記液体貯留部に液体を供給するように、前記全排出部及び前記液体供給部を制御してもよい。液体が液体貯留部内で長時間滞留していると、試薬庫内の冷却空気によって低温となり、蒸発し難くなるが、このような構成によって所定時間毎に又は継続的に液体貯留部内の液体をより高温の新しい液体と入れ替えることで、当該液体の蒸発を促進することができる。
【0018】
前記分析装置は、前記液体貯留部内の液体の排出指示を受け付ける排出指示受付部と、この排出指示受付部によって受け付けられた排出指示に基づき、前記液体貯留部から液体を排出するように前記全排出部を制御する制御部とをさらに備えていてもよい。
このような構成によって、ユーザの便宜等に応じて容易に液体貯留部内の液体を排出することができる。
【0019】
前記分析装置は、当該分析装置の稼働停止指示を受け付ける稼働停止指示受付部をさらに備え、前記制御部が、この稼働停止指示受付部によって受け付けられた稼働停止指示に基づき、前記液体貯留部から液体を排出するように前記全排出部を制御してもよい。
この構成によれば、分析装置の稼働停止に伴って、液体貯留部内の液体を排出することができる。そのため、稼働停止中、液体貯留部に液体が放置されることによって細菌等が繁殖するのを防止することができる。
【0020】
前記分析装置は、前記冷却部によって冷却される冷却媒体と、この冷却媒体に向けて送風する送風部とを前記試薬庫に備え、前記液体貯留部は、前記冷却媒体の周囲に形成されていてもよい。
この構成によれば、送風部が冷却部によって冷却された冷却媒体に向けて送風することによって効率よく試薬庫内の空気を冷却することができ、しかも、冷却媒体の周囲に形成された液体貯留部内の液体に送風が届きやすくなるため、当該液体の蒸発をより促進することができる。
【0021】
前記送風部は、前記冷却媒体の中心部からずれた位置に送風するものであってもよい。
このような構成によって、送風部から送風された空気が冷却媒体の周囲に形成された液体貯留部内の液体により届きやすくなり、液体の蒸発をより促進することができる。
【0022】
前記試薬庫の内底面に前記冷却媒体が突出状に設けられ、この冷却媒体の外側面と、前記冷却媒体が設けられた領域を除く前記試薬庫の内底面と、前記試薬庫の内側面とから前記液体貯留部が形成されていてもよい。
この構成によれば、試薬庫の内底面に設けた冷却媒体を利用して液体貯留部を形成することができ、液体貯留部を形成するための部材を別途必要としないので、試薬庫内の構成を簡素化することができる。
【0023】
前記分析装置は、前記試薬庫に収納された試薬を吸引する吸引部と、この吸引部の洗浄を行う洗浄部とをさらに備え、前記液体貯留部に貯留される液体として、洗浄部で使用される洗浄液が用いられていてもよい。
このような構成によって、洗浄部で使用する洗浄液と液体貯留部に貯留する液体とを共用することができ、液体貯留部に貯留する液体を別途準備しなくてもよい。
【0024】
前記分析装置は、前記液体貯留部に貯留するための液体を加温するヒータをさらに備えていてもよい。
このような構成によって、液体貯留部に貯留するための液体の温度を上昇させ、その蒸発を促進することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、試薬庫に収納された試薬の蒸発を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る検体分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される検体分析装置の測定装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】測定装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示される検体分析装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示される試薬庫を模式的示す断面図である。
【図7】試薬庫の蓋部を示す平面図である。
【図8】試薬庫の内底面を上方から見た平面断面図である。
【図9】第1試薬容器ラックの一例を示す斜視図である。
【図10】第2試薬容器ラックの一例を示す斜視図である。
【図11】試薬テーブルの一部を拡大して示す平面図である。
【図12】図8のA−A断面図である。
【図13】図8のB−B断面図である。
【図14】液体供給部及び液体排出部の構成を示す模式図である。
【図15】検体分析装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】検体分析装置の稼働時における液体貯留部へ液体供給についての測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図17】図8のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る検体分析装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る検体分析装置1の全体構成を示す斜視図であり、図2はその測定装置の概略構成を示す平面図である。
【0028】
検体分析装置1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、検体としては血漿を用いる。本実施の形態に係る検体分析装置1では、凝固時間法、合成基質法および免疫比濁法を用いて検体の光学的な測定を行っている。本実施の形態で用いる凝固時間法は、検体が凝固する過程を透過光の変化として検出する測定方法である。そして、測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やFbg(フィブリノーゲン量)等がある。また、合成基質法の測定項目としてはATIII等、免疫比濁法の測定項目としてはDダイマー、FDP等がある。
【0029】
検体分析装置1は、図1及び図2に示されるように、測定装置2と、この測定装置2に電気的に接続された制御装置4とにより構成されている。また、測定装置2は、測定機構部5と、測定機構部5の前面側に配置された搬送機構部6とにより構成され、測定機構部5は、筐体5A及びカバー体5Bによって覆われている。カバー体5Bは、筐体5Aの前上部左側に開閉可能に取り付けられている。そして、カバー体5Bを開くことによって測定機構部5の前部側を外部に露出することができる。
【0030】
〔搬送機構部の構成〕
搬送機構部6は、図2に示されるように、測定機構部5に検体を供給するために、検体を収容した複数本の検体容器(試験管)13が保持された検体ラック14を搬送路6a上で左右方向に搬送し、検体容器13を所定の検体吸引位置15a,15bに位置づける機能を有している。また、搬送機構部6は、未処理の検体を収容した検体容器13が収納された検体ラック14をセットするためのラックセット領域6bと、処理済みの検体を収容した検体容器13が収納された検体ラック14を収容するためのラック収容領域6cとを搬送路6aの両端に有している。また、搬送機構部6は、検体容器13に貼付されたバーコードを読み取るための検体バーコードリーダ16を備えている。
【0031】
〔測定機構部の構成〕
測定機構部5は、搬送機構部6から供給された検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的な情報を取得することが可能なように構成されている。本実施の形態では、搬送機構部6の検体ラック14に載置された検体容器13から測定機構部5のキュベット内に分注された検体に対して光学的な測定が行われる。
【0032】
測定機構部5は、第1試薬テーブル21、第2試薬テーブル22、キュベットテーブル23、加温テーブル24、第1検体分注ユニット25、第2検体分注ユニット26、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、第1キャッチャユニット30、第2キャッチャユニット31、第3キャッチャユニット32、試薬バーコードリーダ33、キュベット搬送器34、希釈液搬送器35、ピペット洗浄器36a〜36e、及び検出ユニット37等を備えている。
【0033】
第1試薬テーブル21、第2試薬テーブル22、キュベットテーブル23、及び加温テーブル24は円形状のテーブルであり、それぞれステッピングモータ等の駆動部によって時計回り及び反時計回りの両方に独立して回転駆動される。
また、第1試薬テーブル21及び第2試薬テーブル22は、試薬庫40(試薬保冷部)内に配置され、この第1試薬テーブル21及び第2試薬テーブル22上に試薬が収容された試薬容器300を保持する第1試薬容器ラック310及び第2試薬容器ラック320がセットされる。この試薬庫40の詳細について後述する。
【0034】
第1検体分注ユニット25は、支持部25aと、この支持部25aによって基端部側が支持されるアーム25bと、アーム25bの先端部に設けられた分注部25cとを有している。アーム25bは、ステッピングモータ等の駆動部によって基端部を支点として水平方向に回転駆動されるとともに、上下方向に昇降駆動される。分注部25cにはピペットが取り付けられており、このピペットを用いて検体等が吸引・吐出される。
【0035】
第2検体分注ユニット26、及び第1〜第3試薬分注ユニット(試薬吸引部)27〜29についても、第1検体分注ユニット25と同様の構成を備えている。すなわち、これらユニット27〜29は、それぞれ支持部、アーム、分注部を有し、アームは、駆動部によって回転駆動、昇降駆動される。分注部には、ピペットが取り付けられ、このピペットを用いて検体や試薬が吸引・吐出される。
【0036】
第1キャッチャユニット30は、支持部30aと、この支持部30aによって支持される伸縮可能なアーム30bと、アーム30bの先端部に設けられた把持部30cとで構成されている。アーム30bは、ステッピングモータ等の駆動部によって回転駆動され、把持部30cはキュベットを把持する。第2キャッチャユニット31についても、第1キャッチャユニット30と同様の構成となっており、ステッピングモータ等の駆動部によって駆動される。
【0037】
第3キャッチャユニット32は、支持部32aと、この支持部32aによって支持される伸縮可能なアーム32bと、アーム32bの先端の把持部32cとで構成されている。支持部32aは、左右方向に配置されたレール32dに沿って駆動される。把持部32cはキュベットを把持することができる。
【0038】
試薬バーコードリーダ33は、試薬庫40内に収納された試薬容器300や、この試薬容器300を保持する試薬容器ラック310,320に貼付されたバーコードを読み取る。試薬バーコードリーダ33は、試薬庫40の外側に配置されており、試薬庫40に形成されかつシャッタにより開閉されるスリット46(図6参照)を介して試薬庫40内のバーコードを読み取ることが可能となっている。
【0039】
キュベット搬送器34と、希釈液搬送器35は、それぞれレール34a,35a上を左右方向に駆動する。キュベット搬送器34と希釈液搬送器35には、それぞれ、キュベット及び希釈液容器を保持するための保持孔が形成されている。
【0040】
測定機構部5には、キュベット口49、廃棄口50,51が設けられている。キュベット口49には、常に新しいキュベットが供給される。新しいキュベットは、第1キャッチャユニット30と、第2キャッチャユニット31により、キュベット搬送器34の保持孔とキュベットテーブル23の保持孔にセットされる。廃棄口50,51は、分析が終了し不要となったキュベットを廃棄するための孔である。検体分析装置1の筐体5A内には、廃棄されたキュベットを蓄積するキュベット廃棄部52(図14参照)が設けられている。
【0041】
ピペット洗浄器36a〜36eは、それぞれ第1、第2検体分注ユニット25,26、及び第1〜第3試薬分注ユニット27〜29のピペットを洗浄するために用いられる。ピペット洗浄器36a〜36eには、ピペットが挿入される孔が上下方向に形成され、この孔に供給された洗浄液によってピペットの外面を洗浄する。
【0042】
検出ユニット37は、上面にキュベットを収容する複数個(図示例では20個)の保持孔37aが形成され、下面裏側に検出部(図示略)が配置されている。保持孔37aにキュベットがセットされると、検出部によってキュベット中の測定試料に含まれる成分を反映した光学的情報が検出される。
【0043】
図3は、検体分析装置1の測定装置の構成を示すブロック図、図4は、測定装置の制御部の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、第1,第2試薬テーブル21,22、キュベットテーブル23、加温テーブル24、第1,第2検体分注ユニット25,26、第1〜第3試薬分注ユニット27〜29、第1〜第3キャッチャユニット30〜32、キュベット搬送器34、希釈液搬送器35、ピペット洗浄器36a〜36e、及び検出ユニット37の各駆動部97,98,141〜145や、試薬バーコードリーダ33、検体バーコードリーダ16等は、測定装置2の制御部501に電気的に接続されており、この制御部501によって動作制御される。検出ユニット37は、取得した光学的情報を制御部501に対して送信することが可能なように構成されている。
【0044】
また、図4に示されるように、制御部501は、CPU501aとROM501bと、RAM501cと、通信インタフェース501dとから主として構成されている。CPU501aは、ROM501bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM501cに読み出したコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM501bは、CPUaに実行させるためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータ等を記憶している。RAM501cは、ROM501bに記憶しているコンピュータプログラム等の読み出しに用いられ、このコンピュータプログラムを実行するときの、CPU501aの作業領域として利用される。
【0045】
通信インタフェース501dは、制御装置4に接続されており、検体の光学的情報を制御装置4に送信するとともに、制御装置4の制御部4aからの信号を受信するための機能を有している。また、通信インタフェース501dは、搬送機構部6及び測定機構部5の各部を駆動するためのCPU501aからの指令を送信するための機能を有する。
【0046】
〔制御装置の構成〕
制御装置4は、パーソナルコンピュータ401(PC)等からなり、図1に示されるように、制御部4aと、表示部4bと、情報を入力するためのキーボード4cとを含んでいる。制御部4aは、測定機構部5の制御部501に当該測定機構部5の動作開始信号を送信するとともに、測定機構部5で得られた検体の光学的な情報を分析するための機能を有している。また、表示部4bは、検体中に存在する干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)およびビリルビン)に関する情報と、制御部4aで得られた分析結果とを表示するために設けられている。
【0047】
図5は、制御装置の構成を示すブロック図である。制御部4aは、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0048】
〔測定装置の動作の概要〕
次に、測定装置2における動作の概要について説明する。まず、図2に示されるように、検体容器13を収容した検体ラック14を搬送機構部6のラックセット領域6bにセットすると、この検体ラック14は、ラックセット領域6bにおいて後端(図中上側)まで送られた後、搬送路6a上を左方向に搬送される。そして、検体容器13に貼付されたバーコードラベルが検体バーコードリーダ16によって読み取られ、続いて、検体容器13が所定の検体吸引位置15aに位置づけられる。なお、検体の吸引が全て終了した検体ラック14は、ラック収容領域6cに搬送される。
【0049】
第1検体分注ユニット25は、搬送機構部6によって所定の検体吸引位置15aに位置づけられた検体容器13から検体を吸引する。第1検体分注ユニット25によって吸引された検体は、キュベットテーブル23の前部の検体吐出位置19aに位置づけられたキュベット保持孔55にセットされたキュベットに吐出される。
【0050】
第2検体分注ユニット26は、キュベットテーブル23の前部の検体吸引位置19bにあるキュベット保持孔55にセットされたキュベットに収容されている検体、または、搬送機構部6によって所定の検体吸引位置15bに位置づけられた検体容器13の検体を吸引する。第2検体分注ユニット26によって吸引された検体は、キュベット搬送器34にセットされたキュベットに吐出される。なお、第2検体分注ユニット26は、希釈液搬送器35にセットされた希釈液を吸入することができる。この場合、第2検体分注ユニット26は、検体の吸引前に希釈液吸引位置20にて希釈液を吸引した後、検体吸引位置15bにて検体を吸引する。
【0051】
第1検体分注ユニット25及び第2検体分注ユニット26は、分注作業が終わると、それぞれピペットがピペット洗浄器36a,36bの孔に挿入され、この孔に供給された洗浄液によって洗浄される。
【0052】
キュベット搬送器34は、収容したキュベットに検体が吐出されると、所定のタイミングにて、レール34a上を右方向に駆動される。続いて、第1キャッチャユニット30によりキュベット搬送器34にセットされた検体を収容しているキュベットが把持され、加温テーブル24のキュベット保持孔24aにセットされる。
【0053】
続いて、第2キャッチャユニット31は、保持孔24aにセットされた検体を収容しているキュベットを把持し、ピペット洗浄器36cの真上まで移動させる。ここで、第1試薬分注ユニット27は、第1試薬テーブル21又は第2試薬テーブル22に配置されている所定の試薬容器300内の試薬を吸引し、第2キャッチャユニット31に把持されているキュベットに試薬を吐出する。第2キャッチャユニット31は、試薬が吐出されたキュベットを攪拌し、加温テーブル24のキュベット保持孔24aにセットする。
【0054】
加温テーブル24のキュベット保持孔24aに保持されているキュベットは、第3キャッチャユニット32により把持され、ピペット洗浄器36dの真上領域又はピペット洗浄器36eの真上領域に位置づけられる。ここで、第2試薬分注ユニット28と第3試薬分注ユニット29は、第1試薬テーブル21又は第2試薬テーブル22に配置されている試薬容器300から試薬を吸引し、第3キャッチャユニット32により把持されているキュベットに試薬を吐出する。第3キャッチャユニット32は、試薬が吐出されたキュベットを検出ユニット37の保持孔37aにセットする。その後、検出ユニット37においてキュベットに収容された測定試料から光学的情報が検出される。
【0055】
第1〜第3試薬分注ユニット27〜29は、分注作業が終了すると、それぞれのピペットがピペット洗浄器36c〜36eの孔に挿入され、異なる試薬の分注毎に洗浄される。
【0056】
検出ユニット37による検出が終了し不要となったキュベットは、第3キャッチャユニット32によって把持され、廃棄口50に廃棄される。キュベットテーブル23のキュベット保持孔55に保持されているキュベットについても、分析が終了して不要になると、キュベットテーブル23の回転によって第2キャッチャユニット31に近い場所に位置づけられる。第2キャッチャユニット31は、キュベット保持孔55に保持されている不要となったキュベットを把持し、廃棄口51に廃棄する。
【0057】
〔試薬庫の構成及びその冷却機能〕
試薬庫40は、キュベット内の検体に添加される試薬を収容した試薬容器300を、低温(約10℃)で冷蔵保存するとともに、回転方向に搬送するために設けられている。試薬は、低温で保存されることによって変質が抑制される。また、試薬庫40内には、試薬を収容した試薬容器300を配置するとともに回転搬送を行う試薬配置部59が設けられている。
【0058】
図6は、試薬庫40を模式的に示す側面断面図である。試薬配置部59は、円形状の第1試薬テーブル(第1配置部)21と、この第1試薬テーブル21の径方向外側に、当該第1試薬テーブル21に対して同心円状に配置された円環形状の第2試薬テーブル(第2配置部)22とを含んでいる。また、第1試薬テーブル21および第2試薬テーブル22は、それぞれ、試薬容器300を保持する第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320が着脱可能に配置されるように構成されている。なお、第1試薬テーブル21及び第2試薬テーブル22は、図示しないローラ又は支持板等によって、試薬庫40の底面に対して上方に間隔をあけた位置に回転可能に支持されている。
【0059】
第1試薬テーブル21および第2試薬テーブル22は、それぞれ、時計回り方向および反時計回り方向の両方に回転可能で、かつ、各々のテーブルが互いに独立して回転可能なように構成されている。これにより、試薬が収容された試薬容器300を保持する第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320は、それぞれ、第1試薬テーブル21および第2試薬テーブル22によって回転方向に搬送される。また、試薬容器300を回転方向に搬送することによって、第1〜第3試薬分注ユニット27〜29が試薬を分注する際に、分注対象の試薬を試薬分注ユニット27〜29の近傍に配置させることが可能である。また、試薬容器300は円筒形状に形成され、上部に試薬を吸引するための開口が形成されている。
【0060】
図2に示されるように、第1試薬容器ラック310は、第1試薬テーブル21に5つ配置可能である。この5つの第1試薬容器ラック310に、試薬容器300が円環状に配置される。第1試薬容器ラック310は、図9に示されるように、試薬容器300を保持するための2つの保持部311,312と、保持部311,312の前面側にそれぞれ設けられた切欠部311a,312aと、上方に突出するように設けられた1つの把持部313とを含んでいる。また、保持部311および312は、平面的に見て円形状に形成されており、円筒形状の試薬容器300が差し込まれることにより試薬容器300を保持可能である。また、アダプタ(図示せず)を保持部311,312に取り付けることにより、前記保持部311,312の内径よりも小さい外径を有する試薬容器300を保持部311,312に保持させることが可能である。また、第1試薬容器ラック310は、保持部311,312の内径の組み合わせが異なるように形成された2種類のラックを含んでいる。ユーザは、適宜ラックの種類を変えることによって、様々な大きさの試薬容器300に対応可能である。また、保持部311,312の外側面の前面側には、それぞれ、バーコード311bおよび312bが設けられており、保持部311,312の内側面には、それぞれ、バーコード312c(保持部311のバーコードは不図示)が設けられている。
【0061】
2つの保持部311,312は、検体から測定用試料を調製する際に添加される種々の試薬を収容した複数の試薬容器300を1つずつ保持することが可能である。すなわち、第1試薬テーブル21には、最大10個(2×5=10)の試薬容器300が配置可能である。また、切欠部311a,312aは、それぞれ、保持部311,312の内側面のバーコード312cを試薬バーコードリーダ33によって読み取るために設けられている。また、把持部313は、第1試薬容器ラック310を試薬庫40から取り出すときに把持される。
【0062】
バーコード311b,312bには、それぞれ、保持部311,312の位置を識別するための位置情報(ホルダ番号)が含まれている。また、内側面のバーコード312cには、保持部311,312に保持される試薬容器300は存在しないことを示す情報(試薬容器無し情報)が含まれている。また、試薬容器300のバーコード300aには、試薬容器300に収容されている試薬の詳細情報(試薬名、試薬容器の種類、ロット番号、試薬の有効期限等の情報)を特定するための情報が含まれている。
【0063】
第2試薬容器ラック320は、図2に示されるように、第2試薬テーブル22に5つ配置可能である。この5つの試薬容器ラック320に、試薬容器300が円環状に配置される。また、互いに隣接する第2試薬容器ラック320の5箇所の隙間のうち、1個所は、他の4箇所の隙間の間隔よりも大きい間隔tを有する。この大きい間隔tを有する隙間を介して、試薬庫40の外部に位置する試薬バーコードリーダ33により、第2試薬テーブル22の内側に位置する第1試薬テーブル21に配置される第1試薬容器ラック310のバーコード311b,312bと、第1試薬容器ラック310に保持される試薬容器300のバーコード300aとが読み取られる。また、第2試薬容器ラック320は、図10に示されるように、試薬容器300を保持するための6つの保持部321〜326と、保持部321〜326の前面側にそれぞれ設けられた切欠部321a〜326aと、上方に突出するように設けられた1つの把持部327とを含んでいる。また、第2試薬容器ラック320の保持部321〜326は、第1試薬容器ラック310と同様に、平面的に見て円形状に形成されており、円筒形状の試薬容器300が差し込まれることにより試薬容器300を保持可能である。この第2試薬容器ラック320は、保持部321〜326の内径の組み合わせがそれぞれ異なるように形成された3種類のラックを含んでいる。また、第2試薬容器ラック320には、第1試薬容器ラック310に配置された試薬と同じ試薬を配置することが可能に構成されている。
【0064】
また、前列側の切欠部321aの両側には、バーコード321b,322bが設けられている。また、同様に、切欠部323aの両側および切欠部325aの両側には、それぞれ、バーコード323b,324b、および、バーコード325b,326bが設けられている。また、保持部321〜326の内側面には、それぞれ、バーコード322c,323c(保持部321,324,325,326の内側面のバーコードは不図示)が設けられている。
【0065】
バーコード321b〜326bには、それぞれ、保持部321〜326の位置を識別するための位置情報(ホルダ番号)が含まれている。また、保持部321〜326の内側面のバーコード322c,323cには、保持部321〜326に保持される試薬容器300は存在しないことを示す情報(試薬容器無し情報)が含まれている。
【0066】
また、試薬バーコードリーダ33によって読み取られたバーコード情報を元に、制御装置4の制御部4aは、ハードディスク401dに記憶されている試薬マスタ、試薬ロットマスタおよび容器マスタ等のテーブルを参照して、ホルダ番号、試薬名、ロット番号、試薬容器の種類、試薬の有効期限等の試薬識別情報を取得するように構成されている。そして、取得された試薬識別情報は、ハードディスク401dに記憶されている試薬情報データベース(図示せず)に格納されるように構成されている。試薬情報データベースに格納された情報は、制御装置4の制御部4aにより表示部4bに反映されるように構成されている。
【0067】
図6に示されるように、試薬庫40は、底壁63とこの底壁63の外周から立ち上がる周壁64と備えた有底円筒形状の本体部65と、この本体部65の上部開口を塞ぎ、当該試薬庫40の上壁として機能する蓋部66とを備えており、本体部65と蓋部66によって囲まれた密閉空間が冷却室とされ、この冷却室内に試薬容器300が配置される。蓋部66は、図7に示されるように、本体部65の略後側半分を塞ぐ固定蓋67と、本体部65の略前側半分を塞ぐ開閉可能な可動蓋68とにより構成されている。可動蓋68は、固定蓋67の前縁にヒンジ部材69を介して揺動可能に連結されている。
【0068】
また、試薬庫40の蓋部66には、複数の試薬吸引孔71が形成されており、この試薬吸引孔71に、第1,第2検体分注ユニット25,26や第1〜第3試薬分注ユニット27〜29(試薬吸引部)のピペットが挿入されるとともに、試薬庫40に収納された試薬容器300内の試薬が、試薬容器300の上部開口から吸引されるように構成されている。
【0069】
なお、試薬庫40に対する試薬の交換は、可動蓋68を開き、試薬庫40の前側半分を開放することによってラックごと行うことができる。また、試薬庫40には、可動蓋68の開閉を検出する蓋開閉検出センサ部73が設けられている。そして、蓋開閉検出センサ部73によって可動蓋68を閉じたことが検出されると、検体分析装置1は、自動的に第1試薬容器ラック310又は第2試薬容器ラック320に保持される試薬容器300のバーコードの読み取りを行い、交換後の試薬の識別情報を取得するように構成されている。
【0070】
図6に示されるように、試薬庫40の本体部65の周壁64は、内外2層構造に形成されており、その内側層75は、合成樹脂等の熱伝導性の低い合成樹脂等の材料によって形成されている。また、外側層76は、更に熱伝導性の低い断熱層とされている。本体部65の底壁63も、内外2層構造に形成されており、内側層の外周部77は、周壁64の内側層75から連なるように合成樹脂等の材料によって形成されており、底壁63の内側層の中央部は、アルミ等の熱伝導性の高い材質によって形成された伝熱層78とされ、外周部77よりも上方へ突出している。底壁63の外側層79は、断熱層とされている。また、蓋部66は、熱伝導性の低い合成樹脂等の材料によって形成されている。伝熱層78は、図8に示されるように、平面視で八角形状に形成されている。なお、蓋部66は周壁64の内側層75よりも熱伝導性の低い材質により形成され、周壁64の内側層75は底壁63の伝熱層78よりも熱伝導性の低い材質により形成されている。
【0071】
図6に示されるように、本体部65の底壁63に設けられた伝熱層78は、その下面の一部が下方に露出しており、その露出面には冷却器80が設けられている。本実施の形態では、2個の冷却器80が、試薬庫40の中心軸線O(第1,第2試薬テーブル21,22の回転中心)を中心に対称位置に配置されている。本実施の形態の冷却器80は、ペルチェ素子81を用いたものであり、このペルチェ素子81の下面(排熱側)にはヒートシンク82が設けられ、このヒートシンク82の下面には放熱ファン83が設けられている。冷却器80は、熱伝導性の高い本体部65の伝熱層78を直接的に冷却することによって、この伝熱層78自体を冷却媒体として用い、試薬庫40内の空気を冷却するように構成されている。なお、冷却器80としては、ペルチェ素子81を用いたものに限らず、例えば伝熱層78を空冷または水冷によって冷却する構成であってもよい。
【0072】
試薬庫40の下方には、検体分析装置1外の空気を取り入れることが可能な吸気ダクト85が形成されており、この吸気ダクト85内にヒートシンク82が配置されている。また、吸気ダクト85の下側には、検体分析装置1外へ空気を排出することが可能な排気ダクト86が形成されており、この排気ダクト86に放熱ファン83が接続されている。そして、放熱ファン83の駆動によって吸気ダクト85からヒートシンク82へ外気を取り入れ、このヒートシンク82で熱交換を行った後、排気ダクト86へ温風が排出されるようになっている。吸気ダクト85の吸気口や排気ダクト86の排気口は、検体分析装置1の背面や側面において開口しており、これによって、特に、排気ダクト86から排出された温風が、検体分析装置1を使用するユーザに直接当たらないように配慮されている。
【0073】
試薬庫40において、第1試薬テーブル21及び第2試薬テーブル22と、試薬庫40の底壁63(内底面)との間には、流動ファン(循環部)88が設けられている。本実施の形態では、2つの流動ファン88が、それぞれ冷却器80の上方に対応する位置に配置されている。したがって、この2つの流動ファン88についても、試薬庫40の中心軸線Oを中心に対称配置されている。
【0074】
また、流動ファン88は、上方から吸い込んだ空気を下方へ吹き出すように構成されている。そのため、流動ファン88によって生成された空気流は、伝熱層78における冷却器80によって直接的に冷やされた部分に対して直接的に吹き付けられる。これによって空気流を効率よく冷却することができる。また、図2、図11等に示すように、流動ファン88は、第1試薬テーブル21の外周部と、第2試薬テーブル22の内周部との間に形成された第1の隙間90の下方位置に配置されている。そのため、第1,第2試薬テーブル21,22よりも上方の空気が回転支持部38の開口38aおよび第1の隙間90を介して流動ファン88に吸い込まれる。
【0075】
流動ファン88によって生成された空気流は、伝熱層78に吹き付けられた後、径方向外側へ流れ、試薬庫40の周壁64(内側面)と第2試薬テーブル22との間の第2の隙間92を通って、第2試薬テーブル22の上方へ流れる。その後、この空気流は、第1試薬テーブル21に配置された試薬容器300と、第2試薬テーブル22に配置された試薬容器300との間を通過して、再び、第1の隙間90から下方に流れ、試薬庫40の内部を循環する。第1,第2試薬テーブル21,22に配置された試薬容器300内の試薬は、流動ファン88によって循環された空気によって、所望の温度、例えば約10℃に冷却される。
【0076】
流動ファン88は、第1,第2試薬テーブル21,22の下面と試薬庫40の底壁63との間に配置され、蓋部66から最も離れた位置に配置されている。そのため、蓋部66に形成された試薬吸引孔71(図7参照)から外気が引き込まれ難くなっている。
【0077】
冷却器80及び流動ファン88は、複数設けられるとともに中心軸線Oを中心に対称位置に配置されているので、試薬庫40内で冷却された空気を満遍なく均等に循環させることができる。また、流動ファン88は、冷却器80の上側に対応する位置に配置されているので、冷却器80によって直接冷却された伝熱層78の一部に強い空気流を当て、より冷たい空気を効率よく循環させることができる。そのため、試薬テーブルのどの位置にある試薬容器に対しても容易に冷たい空気を届けることができ、試薬容器の数の増加に伴う試薬テーブルの大型化にも対応可能となる。
なお、冷却器80及び流動ファン88は、2個に限らず、3個以上設けてもよい。この場合、複数の冷却器80及び流動ファン88を、中心軸線Oの周りに等間隔に配置することにより試薬庫40内で冷却された空気を満遍なく均等に循環させることができる。
【0078】
また、試薬庫40の底壁63のみに伝熱層78が設けられ、周壁64は熱伝導性の低い材質により形成されているので、試薬庫40内の冷えすぎを防止することができるとともに、周壁64における結露の発生を防止することができる。
【0079】
図11に示されるように、第2試薬テーブル22の外周部には、径方向に凹む複数の凹部44が周方向に間隔をあけて形成されている。図6に示されるように、試薬バーコードリーダ33は、斜め下方から試薬容器300や第1,第2試薬容器ラック310,320に貼付されたバーコードを読み取るように構成されており、凹部44は、試薬バーコードリーダ33によって試薬容器300や第1,第2試薬容器ラック310,320に貼付されたバーコードを読み取る際に、第2試薬テーブル22の外周部が邪魔にならないように形成されたものである。また、この凹部44によって、第2試薬テーブル22の外周部と試薬庫40の内側面との間の第2の隙間92が部分的に拡大されるので、この第2の隙間92を空気流が通過しやすくなり、より円滑な空気の循環が可能となっている。
【0080】
蓋部66の内部には蓋用ヒータ95(図6参照)が設けられ、この蓋用ヒータ95によって蓋部66が暖められている。このため、例えば試薬吸引孔71から外気が侵入したとしても、その外気に含まれる水分が蓋部66において結露するのを防止することができる。
【0081】
図6及び図8に示されるように、第1,第2試薬テーブル21,22は、ステッピングモータ等からなる第1駆動部97及び第2駆動部98によって回転駆動される。この第1,第2駆動部97,98は、試薬庫40の側方に配置されており、第1,第2試薬テーブル21,22に動力伝達機構99を介して接続されている。この動力伝達機構99は、第1従動プーリ100、第2従動プーリ101、第1駆動プーリ102、第2駆動プーリ103、第1伝動ベルト104、及び第2伝動ベルト105から構成されている。第1従動プーリ100及び第2従動プーリ101は、試薬庫40の中心軸線O上に配置され、それぞれ第1試薬テーブル21の回転軸200と第2試薬テーブル22の回転軸201とに一体回転可能に連結されている。
【0082】
図6に示すように、第2試薬テーブル22の下方には、第2試薬テーブル22を下方から支持する回転支持部38が設けられている。回転支持部38は、第2試薬テーブル22および第2試薬テーブル22の回転軸201に固定され、回転軸201の回転に伴って、第2試薬テーブル22を一体的に回転させるように構成されている。なお、回転支持部38には、周方向に間隔をあけて複数の開口38aが形成されている。これらの開口38aは、第1試薬テーブル21の外周部と、第2試薬テーブル22の内周部との間に形成された第1の隙間90の下方位置に配置されている。
【0083】
第2試薬テーブル22の回転軸201は筒状に形成され、第1試薬テーブル21の回転軸200は、第2試薬テーブル22の回転軸201の内部を貫通して第1試薬テーブル21に固定されている。これにより、回転軸201の回転に伴って、第1試薬テーブル21が回転する。
【0084】
第1駆動プーリ102は、第1駆動部97の出力軸に取り付けられ、第2駆動プーリ103は、第2駆動部98の出力軸に取り付けられている。第1伝動ベルト104は、第1従動プーリ100と第1駆動プーリ102とに巻き掛けられ、第2伝動ベルト105は、第2従動プーリ101と第2駆動プーリ103とに巻き掛けられている。
【0085】
試薬庫40の周壁64には、第1伝動ベルト104と第2伝動ベルト105を通過させるための第1挿通口107と、第2挿通口108とが形成されている。また、試薬庫40の側方には、断熱材で囲まれた断熱室109が形成されており、この断熱室109は第1挿通口107及び第2挿通口108を介して試薬庫40内に連通している。第1駆動プーリ102と第2駆動プーリ103とは、この断熱室109に配置されている。このため、第1,第2挿通口107,108から試薬庫40内の冷却空気が漏れたとしても断熱室内で留まるため、試薬庫40内の冷却効率の悪化を防止することができる。
【0086】
また、第1駆動部97及び第2駆動部98は、試薬庫40の側方に配置されているため、試薬庫40内で発生した結露水や後述する液体貯留部110内の液体が試薬庫40の下方に滲み出た場合等であっても第1駆動部97及び第2駆動部98にかかってしまうことはなく、第1駆動部97及び第2駆動部98の故障を防ぐことができる。
【0087】
また、流動ファン88を試薬配置部59の中央部分に配置していないため、第1,第2試薬テーブル21,22の回転軸の径を大きくすることができる。そのため、第1、第2試薬テーブル21,22を小さい駆動力で回転させることができ、高精度に第1、第2試薬テーブル21,22の位置決めを行うことが可能となる。
【0088】
なお、第1駆動部97及び第2駆動部98は、試薬庫40の側方に限らず、試薬庫40の外側であって下方を除く領域であればどこに配置してもよい。また、動力伝達機構99は、プーリと伝動ベルトとによる巻き掛け伝達機構とされているが、これに限らず、ギヤ伝達機構等の他の動力伝達機構を採用することができる。
【0089】
試薬庫40に対して、試薬容器300の交換や追加等を行う作業は、可動蓋68(図7参照)を開くことによって行うことができる。この際、試薬庫40内に設けられた流動ファン88は作動を停止する。具体的には、可動蓋68が開いたことを蓋開閉検出センサ部73(図3及び図7参照)が検出すると、その検出情報が制御部501に入力され、制御部501は、流動ファン88の動作を停止するように制御する。これによって、試薬庫40内に外気が積極的に取り込まれるのを防止し、この外気に含まれる水分が結露して試薬庫40の内面に付着するのを防止することができる。なお、制御部501は、可動蓋68を開いたときに、流動ファン88だけでなく冷却器80をも停止するように制御してもよい。
【0090】
図8に示されるように、試薬庫40の底壁63の中央部には伝熱層78が設けられており、さらにその径方向外側には、伝熱層78の外周を取り囲むように液体貯留部110が設けられている。具体的には、図6に示すように、試薬庫40の底壁63には、伝熱層78が上方へ突出するように設けられており、この伝熱層78の外周縁と、試薬庫40の周壁64との間には、上方に開放された環状の溝が形成される。そして、この溝が液体貯留部110とされている。
【0091】
この液体貯留部110には、試薬以外の液体、本実施の形態では、ピペット洗浄器36a〜36eに供給するための洗浄液(RO水)が供給されて貯留される。そして、液体貯留部110は上方に開放されているので、貯留された液体の液面には、試薬庫40内で冷却された空気が直接触れるようになっている。ピペットの洗浄液は、試薬庫40の外部の測定装置2内に配置された洗浄液タンク113(図14参照)に貯留されており、そのため、液体貯留部110に貯留される液体(洗浄液)は、試薬庫40内の温度、すなわち試薬の温度よりも高温とされている。
【0092】
試薬庫40内では、冷却器80によって冷却された空気は流動ファン88によって循環しているので、試薬容器300内の試薬に冷却空気が触れると、試薬が蒸発する可能性がある。そして、試薬が蒸発すると、その成分濃度に変化が生じるため、検体の分析結果に悪影響を及ぼすおそれがある。
本実施の形態では、試薬庫40内の比較的広い範囲に形成された液体貯留部110に試薬以外の液体が貯留され、また、この液体は試薬よりも高温とされているので、専ら液体貯留部110内の液体の蒸発が促進され、試薬庫40内の湿度が上昇する。このため、試薬容器300内の試薬の蒸発を抑制することが可能となっている。
【0093】
図6及び図8に示されるように、伝熱層78の外周縁には、断熱部材111が取り付けられており、これによって液体貯留部110内の液体が直接伝熱層78に触れず、伝熱層78によって冷却されないように配慮されている。これにより、液体貯留部110内の液体が蒸発し難くなるのを防止している。
【0094】
また、流動ファン88によって生成された空気流が吹き付けられる伝熱層78のすぐ外側に液体貯留部110が設けられているので、当該空気流が液体貯留部110に貯留された液体に当たりやすくなり、当該液体の蒸発を促進することができる。
【0095】
図8に示されるように、液体貯留部110には、底面に設けられた供給口112から液体が供給される。この供給口112は、図14に示されるように、液体タンク、本実施の形態ではピペット洗浄液を収容した洗浄液タンク113に供給配管114を介して接続されている。洗浄液タンク113と供給口112とを接続する供給配管114にはポンプ115と中継チャンバ116と開閉弁117とが設けられている。そして、ポンプ115の作動によって洗浄液タンク113から吸い上げられた洗浄液は、一旦、中継チャンバ116に貯留され、開閉弁117を開くことによって供給口112へ供給される。
【0096】
図17は、図8のC−C断面図である。供給口112は、液体貯留部110の底面に形成された孔であり、この孔には試薬庫40の底壁63に取り付けられた接続管134に連通し、この接続管134には、供給配管114が接続されている。
【0097】
したがって、ポンプ115、中継チャンバ116、開閉弁117、供給口112等によって液体貯留部110に液体を供給する液体供給部118が構成されている。ポンプ115は、例えば、空圧源によって作動するダイアフラム式のポンプ115を用いることができる。この液体供給部118(ポンプ115、開閉弁117等)は、制御部501によって動作制御される(図3参照)。
【0098】
また、図8に示されるように、液体貯留部110に貯留された液体は、底面に設けられた排液口から排出される。本実施の形態では、2つの排液口が設けられており、一方は液体貯留部110内の液体を全て排出することが可能な全排液口120であり、他方は液体貯留部110内で所定量を超える余剰の液体を排出するための定量排液口121である。
【0099】
図12は、図8のA−A断面図である。定量排液口121の周縁には、液体貯留部110の底面から突出する円筒形の堰部材123が設けられている。この堰部材123は、液体貯留部110の深さ(伝熱層78の厚さ)よりも低く形成されており、液体貯留部110には、堰部材123の高さHまでは液体を貯留することができるが、堰部材123を越えた液体は定量排液口121から排出される。
【0100】
図14に示されるように、定量排液口121は、排液チャンバ125に排液配管126を介して接続され、この排液配管126には、中継チャンバ127と、開閉弁128とが設けられている。そして、定量排液口121から排出された液体は、一旦、中継チャンバ127に貯留され、開閉弁128を開くことによって排液チャンバ125に排出される。また、中継チャンバ127にはオーバーフロー管129が接続され、このオーバーフロー管129は、使用済みのキュベットを廃棄するためのキュベット廃棄部52に接続されている。したがって、中継チャンバ127内で所定以上に貯まった液体は、キュベット廃棄部52に廃棄される。
【0101】
図13は、図8のB−B断面図である。全排液口120は、液体貯留部110の底面に形成された孔であり、この孔には試薬庫40の底壁63に取り付けられた接続管131に連通し、この接続管131には、排液配管132が接続されている。また、図14に示されるように、排液配管132は、排液チャンバ125に接続されている。排液配管132には開閉弁133が設けられており、この開閉弁133を開くことによって液体貯留部110内の液体を全排液口120から排出することができる。
【0102】
したがって、本実施の形態では、定量排液口121、全排液口120、排液配管126,132、中継チャンバ127、排液チャンバ125、開閉弁128,133等によって液体貯留部110内の液体を排出するための液体排出部119が構成されている。この液体排出部119(開閉弁128,133等)は、制御部501によって動作制御される(図3参照)。
【0103】
なお、制御装置4は、液体供給部118による液体の供給指示、及び液体排出部119による液体の排出指示を受け付ける機能を有しており、測定装置2の制御部501は、制御装置4によって受け付けられた各指示に基づいて、液体供給部118及び液体排出部119を動作制御することができる。
【0104】
また、図13に示されるように、伝熱層78の上面には、内側排液口135が形成されている。この内側排液口135は、伝熱層78に付着した結露水を排出するために設けられている。内側排液口135は、試薬庫40の底壁63に取り付けられた接続管136に連通し、この接続管136には排液配管137が接続されている。
【0105】
図14に示されるように、この排液配管137は中継チャンバ127に接続されており、伝熱層78上の液体は、内側排液口135から排液配管137を介して中継チャンバ127に排出され、開閉弁128を開くことによって排液チャンバ125に排出される。
【0106】
本実施の形態の検体分析装置1は、試薬庫40における試薬の冷却に関して2つの動作モードを備えている。この2つの動作モードは、検体分析装置1をシャットダウンしている間も、試薬庫40の冷却(試薬の保冷)を継続して行う保冷モードと、検体分析装置1のシャットダウンに伴い試薬庫40の冷却も停止する通常モードである。
【0107】
図15は、2つの動作モードの選択を含む検体分析装置1の動作を示すフローチャートである。まず、測定装置2の電源をオン状態にすると、ステップS1において、制御部501に記憶されているプログラムの初期化や、各分注ユニット駆動部141や各テーブル駆動部142〜144などの原点復帰動作等が行われる。また、制御装置4の電源をオン状態にすると、ステップS101において、制御部4aに記憶されているプログラムの初期化が行われる。
【0108】
次いで、ステップS2において、測定装置2の制御部501は、当該測定装置2がスタンバイ状態になったか否か、すなわち、測定を開始することができる状態になったか否かを判断する。一方、制御装置4は、ユーザからの測定指示が受け付けられたか否かを判断する。制御装置4は、測定指示が受け付けられたと判断した場合には、ステップS103において測定装置2に対して測定指示を送信する。また、制御装置4は、測定指示が受け付けられなかったと判断した場合には、ステップS104へ処理を進める。
【0109】
ステップS3において、測定装置2の制御部501は、制御装置4からの測定指示が受信されたか否かを判断する。制御部501は、測定指示が受信されたと判断した場合には、ステップS4に処理を進め、測定指示が受信されなかったと判断した場合には、ステップS5に処理を進める。そして、ステップS4において、測定装置2は、測定指示に基づいて所定の測定動作(分析動作)を行う。
【0110】
ステップS104において、制御装置4は、ユーザからシャットダウン指示(稼働停止指示)が受け付けられたか否かを判断する。制御装置4は、シャットダウン指示が受け付けられなかったと判断した場合には、処理をステップS102に戻す。また、制御装置4は、シャットダウン指示が受け付けられたと判断した場合には、処理をステップS105に進め、表示部4bにシャットダウン画面を表示する。このシャットダウン画面には、通常モードと保冷モードとの選択画面が含まれる。
【0111】
次いで、制御装置4は、ステップS106において、通常モードが選択されたか否かを判断する。制御装置4は、通常モードが選択されたと判断した場合には、処理をステップS107に進め、通常モードでのシャットダウン指示を測定装置2に送信する。一方、制御装置4は、通常モードが選択されなかったと判断した場合、すなわち、保冷モードが選択されたと判断した場合には、処理をステップS108に進め、保冷モードでのシャットダウン指示を測定装置2に送信する。
【0112】
測定装置2の制御部501は、ステップS5において、制御装置4からシャットダウン指示が受信されたか否かを判断する。測定装置2の制御部501は、シャットダウン指示が受信されなかったと判断した場合には、処理をステップS3に戻す。また、シャットダウン指示が受信されたと判断した場合には、処理をステップS6に進める。
【0113】
ステップS6において、測定装置2の制御部501は、シャットダウン指示が通常モードであるか否かを判断する。制御部501は、通常モードであると判断した場合には、ステップS7に処理を進め、通常モードでない(保冷モードである)と判断した場合には、ステップS9に処理を進める。
【0114】
ステップS7において、測定装置2の制御部501は、試薬庫40内の液体貯留部110の液体が全て排出されるように液体排出部119を動作制御する。すなわち、図14に示されるように、開閉弁133を開くことによって液体貯留部110内の液体を全て全排液口120から排液チャンバ125に排出する。また、冷却器80や流動ファン88の動作も停止する。そして、ステップS8において、測定装置2のシャットダウンが実行され、処理が終了する。
【0115】
一方、ステップS9では、保冷モードでのシャットダウン動作が行われる。すなわち、液体貯留部110内の液体の排出や、冷却器80及び流動ファン88の動作停止を行うことなく、測定装置2がシャットダウンされ、処理が終了する。この保冷モードにおいては、測定装置2の電源をオフにしていても試薬庫40は作動し、試薬を保冷する。
【0116】
検体分析装置1の稼働時や保冷モードによる停止時には、試薬庫40内の試薬は保冷されているが、この際、液体貯留部110内に貯留された液体が、長時間滞留したままであると、試薬庫40内の冷却空気によって冷やされ、次第に蒸発し難くなって試薬庫40内の湿度を上げる機能が低下する。また、液体貯留部110内に液体を貯留したままであると、貯留された液体に苔や細菌などが発生するおそれがある。そのため、測定装置2の制御部501は、液体供給部118を制御することによって液体貯留部110の液体を入れ替えるように構成されている。
【0117】
図16は、検体分析装置1の稼働時における液体貯留部110へ液体供給(入れ替えも含む)についての測定装置2の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS21において、制御部501は、測定装置2が通常モードのシャットダウン後にスタンバイ状態に移行したか否かを判断する。
【0118】
通常モードのシャットダウン後にスタンバイ状態に移行された場合、液体貯留部110内は空の状態になっているので、ステップS22において、制御部501は、液体供給部118を動作制御し、液体貯留部110に所定量の液体を供給する。
【0119】
次いで、ステップS23において制御部501は、液体供給後の経過時間の計測を開始する。そして、ステップS24において、制御部501は、通常モードでのシャットダウン指示が受信されたか否かを判断し、受信されたと判断した場合には、液体貯留部110に対する液体供給についての処理を終了する。また、ステップS24において、制御部501は、通常モードでのシャットダウン指示が受信されなかったと判断した場合には、さらに、ステップS25において、所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間が経過していないと判断した場合には、ステップS24に処理を戻し、所定時間が経過していると判断した場合には、ステップS22へ処理を戻す。そして、ステップS22において、再度、液体貯留部110に所定量の液体を供給する。
【0120】
したがって、液体貯留部110には、所定時間毎に新たな液体が供給され、余剰の古い液体は定量排液口121から排出される。これにより、液体貯留部110内の液体が試薬庫40内の冷気によって試薬と同じ温度に到達する前に、又は、その低温状態が永続することなく、液体貯留部110内の液体の入れ替えが好適に行われ、当該液体の蒸発が促進される。また液体に苔や細菌が発生することを抑制できる。また、以上のような所定時間毎の液体の供給は、保冷モードにおけるシャットダウン後にも行われる。
なお、液体貯留部110への液体の供給は、所定時間毎ではなく、検体分析装置1の稼働中あるいは保冷モードによるシャットダウン後に、継続的に行うことも可能である。このようにすれば、液体貯留部110内の液体の温度を、常時、試薬よりも高温に保つことができる。
【0121】
以上に説明した液体貯留部110に対する液体の入れ替えは、新たに供給された液体と元から残っている液体とが混ざり合いながら行われるため、液体貯留部110内の液体を完全に入れ替えるのは困難である。
そのため、図16で説明した液体供給動作において、液体貯留部110に対する液体の入れ替えには全排液口120を用いてもよい。この場合、ステップS25を経た後のステップS22において、液体貯留部110内に貯留されている液体を全排液口120から全て排出し、その後、液体供給部118によって所定量の液体を供給すればよい。このようにすれば、液体貯留部110内の液体を完全に入れ替えることができるという利点がある。ただし、この場合、液体供給部118だけでなく液体排出部119(開閉弁133)の動作制御も必要となるため、制御の簡素化の観点では定量排液口121を使用した液体の入れ替えを行う方が好ましい。
【0122】
なお、液体貯留部110へより高温の液体を供給するため、洗浄液タンク113から液体貯留部110へ洗浄液を流す供給配管114をヒータによって暖めてもよい。例えば、図14に示すように、供給配管114の一部に沿ってヒータ122を配置してもよい。また、この供給配管114を排気ダクト86内に通すことによって、冷却器80からの排熱により供給配管114を暖めてもよい。後者の場合、新たな熱源が不要であるため、エネルギー消費の増大はほとんど無く、経済的である。
【0123】
〔液体貯留部による効果の検証〕
本願発明者は、液体貯留部110を設けたことによる効果、すなわち試薬の蒸発抑制効果を検証するために実験を行った。以下の表1は、その実験結果を示すものである。
【0124】
【表1】

【0125】
この実験は、試薬庫40内の液体貯留部110に給水を行った場合と行わなかった場合とで試薬の蒸発量を比較し、液体貯留部に給水を行うことによって試薬の蒸発量がどの程度低減するかを検証したものである。
この実験で使用した試薬容器は、第2試薬テーブル22に配置された6個の第2試薬容器ラック320のうち、1個おきに配置された3個の第2試薬容器ラック320に保持された各6本の試薬容器300と、第1試薬テーブル21に配置された全て(5個)の第1試薬容器ラック310に保持された各1本の試薬容器300である。表1中には、実験に使用した3つの第2試薬容器ラック320をそれぞれA〜Cと表記し、5つの第1試薬容器ラック310をa〜eと表記している。また、試薬容器300には、容量や上部開口の口径が異なった複数の種類(GW15,Cup,IRC5,SLD,SIRC17,GW5,P−FDP)を使用した。試薬にはRO水を代用し、各試薬容器300に対して定められた量だけ収容した。そして、所定の温度及び湿度で平衡状態となった試薬庫40内に試薬容器300をセットし、実験を行った。表1には、容器の種類と容量(液量)とを対応づけて記載している。
【0126】
検証は、液体貯留部110内に給水を行った場合(給水有り)と行わなかった場合(給水無し)とで、24時間の間に蒸発したRO水の量を比較することで行った。具体的には、実験開始時(0時間目)の試薬容器300の重量と、24時間経過後の試薬容器300の重量とそれぞれ計測し、両者の差であるRO水の蒸発量を求め、これを液量(μL)に変換して、給水有りの場合と給水無しの場合とを比較した。表1には、給水有りの場合の、実験開始時(0時間目)および24時間経過後のそれぞれの試薬容器300の重量と、両者の差の重量と、それを液量に変換した値とを記載している。給水無しの場合については、24時間の間に蒸発したRO水の液量のみを記載し、実験開始時(0時間目)および24時間経過後のそれぞれの試薬容器300の重量、並びに、両者の差の重量については記載を省略している。
【0127】
その結果、液体貯留部110に給水を行った場合の蒸発量は、給水を行わなかった場合の蒸発量の約21%〜約88%となり、平均すると約47%となった。すなわち、液体貯留部110に給水を行うことによって、試薬の蒸発量が概ね半減し、試薬の蒸発を効果的に抑制することができた。
【0128】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0129】
例えば、上記実施の形態では、検体分析装置1が稼働している間は、所定時間ごとに液体貯留部110に洗浄液(RO水)を供給するよう、制御部501が液体供給部118を制御し、液体貯留部110内で余剰となった洗浄液が定量排液口121によって排出されているが、本発明はこれに限定されない。所定時間ごとに所定量ずつ液体貯留部110に洗浄液を供給すると同時に、全排液口120から所定量ずつ液体貯留部110内の洗浄液を排出するように、制御部501が液体供給部118および液体排出部119を制御してもよい。また、全排液口120から液体貯留部110内の洗浄液を所定量排出した後に、所定量の洗浄液を液体貯留部110に供給するように、制御部501が液体供給部118および液体排出部119を制御してもよい。このような動作によっても、液体貯留部110内の洗浄液の入れ替えを行うことができる。
【0130】
また、液体貯留部110に貯留される液体として、防腐剤が含まれたRO水を用いてもよい。
【0131】
また、液体供給部118は、洗浄液タンク113から供給配管114および供給口112を介して液体貯留部110に液体を供給しているが、本発明はこれに限定されない。伝熱層78に他の供給口を設け、この他の供給口と洗浄液タンク113とを他の供給配管により接続し、液体供給部118が、洗浄液タンク113から上記他の供給配管および上記他の供給口を介して伝熱層78の上面に洗浄液を供給して、伝熱層78の上面に洗浄液を貯留してもよい。
【0132】
また、流動ファン88は、上方から下方へ流動する空気流を生成しているが、下方から上方へ流動する空気流を生成してもよい。
【0133】
また、試薬庫40内の温度を検知する温度センサを試薬庫に40内に設け、温度センサにより検知された温度に応じて、流動ファン88の回転速度を変更する制御を行ってもよい。例えば、温度センサによって検知された温度が目標温度よりも高ければ、制御部501が流動ファン88の回転速度を大きくしてもよい。これにより、冷却効率を向上させることができる。また、温度センサによって検知された温度が目標温度よりも低ければ、制御部501が流動ファン88の回転速度を小さくしてもよい。これにより、試薬庫40内における結露の発生、試薬の蒸発を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0134】
1: 検体分析装置
2: 測定装置
4: 制御装置
4a:制御部
21: 第1試薬テーブル(第1配置部)
22: 第2試薬テーブル(第2配置部)
40: 試薬庫
44: 凹部
59: 試薬配置部
65: 本体部
66: 蓋部
71: 試薬吸引孔
73: 蓋開閉検出センサ部
78: 伝熱層(冷却媒体)
80: 冷却器
88: 流動ファン(送風部)
90: 第1の隙間
92: 第2の隙間
95: 蓋用ヒータ
97: 第1駆動部
98: 第2駆動部
99: 動力伝達機構
300: 試薬容器
501:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容した試薬容器を収納する試薬庫を備えた分析装置であって
前記試薬庫内に、所定の液体を、その液面が空気に触れるように貯留する液体貯留部が設けられ、
前記液体貯留部に前記液体を供給する液体供給部を備える分析装置。
【請求項2】
前記試薬庫内の空気を冷却するための冷却部をさらに備え、
前記液体貯留部は、前記所定の液体を、その液面が冷却空気に触れるように貯留する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記試薬庫が実質的に密閉されている請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記液体供給部は、前記試薬庫内の空気の温度よりも高温の液体を供給する請求項1〜3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記液体貯留部に貯留された液体を前記試薬庫外へ排出する液体排出部をさらに備えている請求項1〜4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
前記液体排出部が、前記液体貯留部内において所定量を超える液体を排出する定量排出部を含む請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記液体貯留部に対して液体を供給するように、前記液体供給部を制御する制御部を備えている請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記制御部は、液体貯留部に対して所定時間毎に又は継続的に液体を供給するように、前記液体供給部を制御する請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記液体排出部が、前記液体貯留部内の全ての液体を排出可能な全排出部を含む請求項5に記載の分析装置。
【請求項10】
前記液体貯留部から液体を排出し、さらに、前記液体貯留部に液体を供給するように、前記全排出部及び前記液体供給部を制御する制御部を備えている請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
前記制御部は、所定時間毎に又は継続的に前記液体貯留部から液体を排出し、さらに、前記液体貯留部に液体を供給するように、前記全排出部及び前記液体供給部を制御する請求項10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記液体貯留部内の液体の排出指示を受け付ける排出指示受付部と、
この排出指示受付部によって受け付けられた排出指示に基づき、前記液体貯留部から液体を排出するように前記全排出部を制御する制御部と、をさらに備えている請求項9に記載の分析装置。
【請求項13】
当該分析装置の稼働停止指示を受け付ける稼働停止指示受付部をさらに備え、
前記制御部は、この稼働停止指示受付部によって受け付けられた稼働停止指示に基づき、前記液体貯留部から液体を排出するように前記全排出部を制御する、請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記試薬庫内に、
前記冷却部によって冷却される冷却媒体と、この冷却媒体に向けて送風する送風部と、を備え、
前記液体貯留部が前記冷却媒体の周囲に形成されている請求項2に記載の分析装置。
【請求項15】
前記送風部が、前記冷却媒体の中心部からずれた位置に送風する請求項14に記載の分析装置。
【請求項16】
前記試薬庫の内底面に前記冷却媒体が突出状に設けられ、
この冷却媒体の外側面と、前記冷却媒体が設けられた領域を除く前記試薬庫の内底面と、前記試薬庫の内側面とから前記液体貯留部が形成されている請求項14又は15に記載の分析装置。
【請求項17】
前記試薬庫に収納された試薬を吸引する吸引部と、この吸引部の洗浄を行う洗浄部とをさらに備え、
前記液体貯留部に貯留される液体として、洗浄部で使用される洗浄液が用いられている請求項1〜16のいずれかに記載の分析装置。
【請求項18】
前記液体貯留部に貯留するための液体を加温するヒータをさらに備えている請求項1〜17のいずれかに記載の分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−191117(P2011−191117A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55941(P2010−55941)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】