説明

車体前部構造

【課題】サスペンションアームの前輪支持部に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能と、車両に前面衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能とをより効果的に両立させる。
【解決手段】車体前部構造10は、サブフレーム18の後部に設けられたリアクロスメンバ36と、サブフレーム18の側部に設けられたサイドレール38とを備えている。サイドレール38は、車両前後方向に延在されてロアアーム16(サスペンションアーム)の前側固定部30及び後側固定部32が固定されたサイドレール一般部40と、サイドレール一般部40の後端部から車両幅方向内側且つ車両後側に延びると共に、ロアアーム16の前輪支持部28と後側固定部32とを結ぶ線Lの延長線L1上に設けられ、且つ、リアクロスメンバ36との間に車両前後方向の隙間48を有するサブフレーム後側取付部42とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体には、サスペンションアームを支持するためのサブフレームが設けられている。このサブフレームの車体への取付構造としては、サブフレームをダッシュサイドメンバにボルトを用いて固定し、車両の前面衝突時には、このボルトを破断させることでサブフレームを脱落させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−256052公報
【特許文献2】特開2004−130827号公報
【特許文献3】特開2004−203274号公報
【特許文献4】特開平6−298121号公報
【特許文献5】特開2009−220754号公報
【特許文献6】特開2002−240739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の構造において、サスペンションアームに設けられた前輪支持部に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能と、車両に前面衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能とをより効果的に両立させるためには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、サスペンションアームの前輪支持部に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能と、車両に前面衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能とをより効果的に両立させることができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車体前部構造は、前輪を支持するための前輪支持部と、前記前輪支持部の車両幅方向内側に設けられた前側固定部と、前記前輪支持部の車両幅方向内側且つ車両後側に設けられた後側固定部とを有するサスペンションアームと、車両幅方向に延在され、前記サスペンションアームを支持するサブフレームの後部に設けられたリアクロスメンバと、車両前後方向に延在されて前記前側固定部及び前記後側固定部が固定されると共に、後部に前記リアクロスメンバにおける車両幅方向外側の端部が結合され、且つ、前記サブフレームの側部に設けられたサイドレールにおける一般部を構成するサイドレール一般部と、前記サイドレール一般部の後端部から車両幅方向内側且つ車両後側に延びて前記サイドレールの後部を構成すると共に、前記前輪支持部と前記後側固定部とを結ぶ線の延長線上に設けられて車体に固定され、且つ、前記リアクロスメンバとの間に車両前後方向の隙間を有するサブフレーム後側取付部と、を備えている。
【0007】
この車体前部構造によれば、サブフレームを車体に固定するためのサブフレーム後側取付部は、前輪支持部と後側固定部とを結ぶ線の延長線上に設けられている。従って、サスペンションアームの前輪支持部に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合でも、この荷重の分力が前輪支持部と後側固定部とを結ぶ線の延長線に沿ってサブフレーム後側取付部に入力される。これにより、サブフレーム後側取付部の車体への取付点を中心としてサブフレーム後側取付部に曲げモーメントが生じることを抑制することができる。この結果、サスペンションアームの前輪支持部に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能を確保することができる。
【0008】
また、サブフレーム後側取付部は、サイドレール一般部の後端部から車両幅方向内側且つ車両後側に延びてサイドレールの後部を構成すると共に、リアクロスメンバとの間に車両前後方向の隙間を有している。従って、車両に前面衝突が生じた場合には、サブフレーム後側取付部におけるサイドレール一般部との接続部を起点として、サブフレーム後側取付部がリアクロスメンバに当接するまで折れ曲がることにより、前面衝突時のエネルギを吸収することができる。この結果、車両に前面衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能を確保することができる。
【0009】
このように、この車体前部構造によれば、サスペンションアームの前輪支持部に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能と、車両に前面衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能とをより効果的に両立させることができる。
【0010】
請求項2に記載の車体前部構造は、請求項1に記載の車体前部構造において、前記サブフレーム後側取付部における前記サイドレール一般部との接続部に脆弱部が形成されたものである。
【0011】
この車体前部構造によれば、サブフレーム後側取付部におけるサイドレール一般部との接続部には、脆弱部が形成されている。従って、上述のように、車両に前面衝突が生じた場合には、この脆弱部を起点として、サブフレーム後側取付部をリアクロスメンバに当接するまで円滑に折り曲げることができる。これにより、前面衝突時のエネルギをより効果的に吸収することができる。
【0012】
請求項3に記載の車体前部構造は、請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造において、前記サブフレーム後側取付部の車両後側に、前記サブフレーム後側取付部と車両前後方向に対向し、車体に支持された対向壁部が設けられたものである。
【0013】
この車体前部構造によれば、サブフレーム後側取付部の車両後側には、サブフレーム後側取付部と車両前後方向に対向し、車体に支持された対向壁部が設けられている。従って、前面衝突時に車体前部により大きな荷重が入力された場合でも、サブフレーム後側取付部を車両後側から対向壁部によって支持することができる。これにより、衝突体に対して、より大きな荷重を発生させることができるので、衝突体の車室側への進入をより一層効果的に抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の車体前部構造は、請求項3に記載の車体前部構造において、車体前部の側部に設けられ、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバと、車両幅方向に延在し、車両幅方向外側の端部が前記フロントサイドメンバに結合されたクロスメンバと、前記対向壁部を有し、前記フロントサイドメンバと前記クロスメンバとに結合された荷重受けブラケットと、をさらに備えている。
【0015】
この車体前部構造によれば、対向壁部を有する荷重受けブラケットは、フロントサイドメンバとクロスメンバとに結合されている。これにより、フロントサイドメンバとクロスメンバとの結合剛性を向上させることができる。
【0016】
請求項5に記載の車体前部構造は、請求項3に記載の車体前部構造において、車体前部の側部に設けられ、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバと、車両幅方向に延在し、車両幅方向外側の端部が前記フロントサイドメンバに結合されると共に、前記対向壁部が一体に形成されたクロスメンバと、をさらに備えている。
【0017】
この車体前部構造によれば、対向壁部は、クロスメンバに一体に形成されているので、部品点数の増加を抑制して、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、本発明によれば、サスペンションアームの前輪支持部に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能と、車両に前面衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能とをより効果的に両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体前部構造の平面図である。
【図2】図1に示されるサブフレームの斜視図である。
【図3】図1に示されるサブフレーム後側取付部の周辺部を車両側方から見た断面図である。
【図4】図1に示される荷重受けブラケットの周辺部の斜視図である。
【図5】図1に示される車体前部構造においてフルラップ衝突が生じた状態を示す平面図である。
【図6】図1に示される車体前部構造の変形例を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
なお、各図において示される矢印FR、矢印OUT、矢印UPは、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)、車両上下方向上側をそれぞれ示している。
【0022】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車体前部構造10は、一対のフロントサイドメンバ12と、クロスメンバ14と、本発明におけるサスペンションアームの一例である一対のロアアーム16と、サブフレーム18と、一対の荷重受けブラケット20とを備えている。この車体前部構造10は、左右対称に構成されている。
【0023】
フロントサイドメンバ12は、車体前部の側部に設けられており、車両前後方向に延在されている。このフロントサイドメンバ12の前端部には、車両幅方向に延在するフロントバンパリインフォースメント13が固定されている。クロスメンバ14は、車両幅方向に延在されており、その車両幅方向外側の端部14Aは、フロントサイドメンバ12における車両前後方向の中間部と結合されている。
【0024】
ロアアーム16は、例えば、ストラット式のフロントサスペンション装置を構成するものである。このロアアーム16は、車両前側且つ車両幅方向内側に向けて凸を成し、車両前側に向かうに従って車両幅方向外側に向かうように湾曲して形成されている。このロアアーム16における車両幅方向外側且つ車両前側の端部には、タイヤ22及びホイール24を備えた前輪26を支持するための前輪支持部28が設けられている。
【0025】
前輪支持部28は、車両上下方向を軸方向として配置されたボールジョイントとされており、図示しないナックル等を介して前輪26を支持している。また、このロアアーム16における車両前後方向の中間部、つまり、前輪支持部28の車両幅方向内側には、前側固定部30が設けられている。さらに、このロアアーム16における車両幅方向内側且つ車両後側の端部、つまり、前輪支持部28の車両幅方向内側且つ車両後側には、後側固定部32が設けられている。
【0026】
前側固定部30は、例えば、車両前後方向を軸方向として配置された図示しないブッシュを備えており、後側固定部32は、例えば、車両上下方向を軸方向として配置された図示しないブッシュを備えている。
【0027】
サブフレーム18は、上述のロアアーム16等を支持するものである。このサブフレーム18は、平面視にて枠状に形成されており、フロントクロスメンバ34と、リアクロスメンバ36と、一対のサイドレール38とを備えている(図2も参照)。
【0028】
フロントクロスメンバ34及びリアクロスメンバ36は、それぞれ車両幅方向に延在されており、互いに車両前後方向に並んで配置されている。フロントクロスメンバ34は、サブフレーム18の前部に設けられており、リアクロスメンバ36は、サブフレーム18の後部に設けられている。
【0029】
サイドレール38は、サブフレーム18の側部に設けられており、サイドレール一般部40と、サブフレーム後側取付部42とを有している。
【0030】
サイドレール一般部40は、車両前後方向に延在されており、後述するサブフレーム後側取付部42を除くサイドレール38における一般部を構成している。このサイドレール一般部40の前部には、フロントクロスメンバ34における車両幅方向外側の端部34Aが結合されており、サイドレール一般部40の後部には、リアクロスメンバ36における車両幅方向外側の端部36Aが結合されている。
【0031】
また、このサイドレール一般部40における車両前後方向の中間部には、前側取付部44が設けられており、サイドレール一般部40の後部には、後側取付部46が設けられている。そして、前側取付部44には、上述の図示しないブッシュを介して前側固定部30が固定されており、後側取付部46には、同じく上述の図示しないブッシュを介して後側固定部32が固定されている。
【0032】
サブフレーム後側取付部42は、上述のサイドレール一般部40の後端部から車両幅方向内側且つ車両後側に延びており、サイドレール38の後部を構成している。このサブフレーム後側取付部42は、前輪支持部28と後側固定部32とを結ぶ線Lの延長線L1上に設けられており、リアクロスメンバ36との間に車両前後方向の隙間48を有している。上述の線Lは、より具体的には、前輪支持部28とされたボールジョイントの軸心部と、後側固定部32に備えられたブッシュの軸心部とを結んだものである。
【0033】
また、このサブフレーム後側取付部42におけるサイドレール一般部40との接続部には、脆弱部50が形成されている、この脆弱部50は、一例として、サブフレーム後側取付部42における車両幅方向内側面42Aに形成された屈曲部とされている。
【0034】
また、このサブフレーム後側取付部42には、図3に示されるように、その上壁部52及び下壁部54にそれぞれサブフレーム後側取付孔56,58が形成されている。そして、このサブフレーム後側取付部42は、マウント部材60、ボルト62、及び、ナット64により、車体の一部を構成するクロスメンバ14における車両幅方向外側の端部14Aに固定されている。
【0035】
つまり、サブフレーム後側取付部42は、クロスメンバ14における車両幅方向外側の端部14Aの車両下側に配置されている。このクロスメンバ14の下壁部66には、上述のサブフレーム後側取付孔56,58と同軸上に貫通孔68が形成されている(図4も参照)。
【0036】
マウント部材60は、ホルダ70、カラー72、内側ゴム74、外側ゴム76、上側ステイ78、及び、下側ステイ80を有している。ホルダ70は、筒状に形成されており、上述のサブフレーム後側取付孔58に車両下側から挿入されている。カラー72は、筒状に形成されており、ホルダ70の内側に挿入されている。
【0037】
また、内側ゴム74は、カラー72とホルダ70との間に介在されており、外側ゴム76は、カラー72の上部の外周面に装着されると共に、サブフレーム後側取付部42の上壁部52とクロスメンバ14の下壁部66との間に介在されている。上側ステイ78は、外側ゴム76とクロスメンバ14の下壁部66との間に設けられており、下側ステイ80は、内側ゴム74の車両下側に設けられている。また、これらカラー72、上側ステイ78、及び、下側ステイ80には、上述の貫通孔68と同軸上に貫通孔82,84,86がそれぞれ形成されている。
【0038】
そして、下側ステイ80、カラー72、上側ステイ78、及び、クロスメンバ14の下壁部66のそれぞれに形成された貫通孔82,84,86,68には、車両下側からボルト62の軸部62Aが挿通されている。また、この軸部62Aの先端にクロスメンバ14の下壁部66の車両上側からナット64が螺合されることにより、サブフレーム後側取付部42は、クロスメンバ14における車両幅方向外側の端部14Aに固定されている。
【0039】
なお、図1に示されるように、上述のサイドレール一般部40の前部には、サブフレーム前側取付孔88が形成されている。このサブフレーム前側取付孔88を有するサイドレール一般部40の前部は、サブフレーム前側取付部として構成されており、上述のサブフレーム後側取付部42と同様に、マウント部材、ボルト、及び、ナット等により、車体の一部であるフロントサイドメンバ12の前部に固定されている。
【0040】
荷重受けブラケット20は、図4に示されるように、下壁部90、傾斜壁部92、及び、対向壁部94を有している。下壁部90は、車両前後方向に延在されており、この下壁部90における車両幅方向外側の端部には、車両幅方向外側に向けて延出するフランジ96が形成されている。このフランジ96は、上述のフロントサイドメンバ12の下壁部98に例えばスポット溶接等により結合されている。
【0041】
傾斜壁部92は、下壁部90における車両幅方向内側の端部から車両上側に向けて延出されている。この傾斜壁部92は、車両前側に向かうに従って車両幅方向内側に向かうように車両前後方向に対して傾斜されている。この傾斜壁部92における車両後側の端部には、車両後側に向けて延出するフランジ100が形成されており、このフランジ100は、上述のフロントサイドメンバ12における車両幅方向内側の側壁部102に例えばスポット溶接等により結合されている。また、このフランジ100における車両下側の端部は、上述のフランジ96における車両後側の端部と接続されている。
【0042】
また、この傾斜壁部92の車両上側の端部には、車両幅方向内側に向けて延出されたフランジ104が形成されている。このフランジ104は、フランジ100と、後述する対向壁部94に形成されたフランジ106とを連結している。
【0043】
対向壁部94は、下壁部90における車両前側の端部から車両上側に向けて延出されており、車両幅方向に延在されている。この対向壁部94における車両幅方向内側の端部は、上述の傾斜壁部92における車両前側の端部と接続されている。
【0044】
この対向壁部94における車両上側の端部には、車両前側に向けて延出されたフランジ106が形成されている。このフランジ106は、上述のクロスメンバ14の下壁部66と車両前後方向に離間されているが、この下壁部66における車両幅方向外側の端部に例えばスポット溶接等により結合されていると好適である(図3も参照)。
【0045】
また、この対向壁部94における車両幅方向外側の端部には、車両前側に向けて延出されたフランジ108が形成されており、このフランジ108は、上述のフロントサイドメンバ12における車両幅方向内側の側壁部102に例えばスポット溶接等により結合されている。このフランジ108における車両上側の端部は、フランジ106における車両幅方向外側の端部と接続されており、このフランジ108における車両下側の端部は、フランジ96における車両前側の端部と接続されている。
【0046】
また、図1,図3に示されるように、この対向壁部94は、サブフレーム後側取付部42の車両後側に設けられており、このサブフレーム後側取付部42と車両前後方向に対向している。この対向壁部94は、上述の如く、荷重受けブラケット20が車体の一部を構成するフロントサイドメンバ12及びクロスメンバ14に結合されることにより、このフロントサイドメンバ12及びクロスメンバ14によって支持されている
【0047】
なお、図3に示されるように、クロスメンバ14における車両後側の端部には、車両後側に向けて延出するフランジ110が形成されており、このフランジ110は、クロスメンバ14の車両上側に設けられたダッシュパネル112の後部に結合されている。また、クロスメンバ14における車両前側の端部には、車両前側に向けて延出するフランジ114が形成されており、このフランジ114は、ダッシュパネル112の前部に結合されている。
【0048】
また、図1に示されるように、上述のサブフレーム18には、ミッション等を備えたエンジン116が取り付けられている。
【0049】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0050】
本発明の一実施形態に係る車体前部構造10によれば、図1に示されるように、サブフレーム18をクロスメンバ14に固定するためのサブフレーム後側取付部42は、前輪支持部28と後側固定部32とを結ぶ線Lの延長線L1上に設けられている。従って、ロアアーム16の前輪支持部28に対して通常走行時に車両前側から荷重F1が入力された場合でも、この荷重F1の分力F2が上述の前輪支持部28と後側固定部32とを結ぶ線Lの延長線L1に沿ってサブフレーム後側取付部42に入力される。
【0051】
これにより、サブフレーム後側取付部42の車体への取付点(つまり、サブフレーム後側取付孔56,58の中心点)を中心としてサブフレーム後側取付部42に曲げモーメントが生じることを抑制することができる。この結果、ロアアーム16の前輪支持部28に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能を確保することができる。
【0052】
また、サブフレーム後側取付部42は、サイドレール一般部40の後端部から車両幅方向内側且つ車両後側に延びてサイドレール38の後部を構成すると共に、リアクロスメンバ36との間に車両前後方向の隙間48を有している。
【0053】
従って、図5に示されるように、衝突体200が車両の前面に車両幅方向の全体に亘って衝突するフルラップ衝突が生じた場合には、サブフレーム後側取付部42におけるサイドレール一般部40との接続部を起点として、車両幅方向両側のサブフレーム後側取付部42がリアクロスメンバ36に当接するまで折れ曲がる。そして、これにより、フルラップ衝突時のエネルギが吸収される。この結果、車両にフルラップ衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能を確保することができる。
【0054】
特に、サブフレーム後側取付部42が、リアクロスメンバ36との間に、曲げ変形時の変形代となる車両前後方向の隙間48を有しているので、エネルギ吸収性能をより高めることができる。
【0055】
なお、ここでは、前面衝突の一例としてフルラップ衝突の場合について説明したが、衝突体200が車両の前面における車両幅方向一方側に衝突するオフセット衝突の場合にも、車両幅方向一方側に位置するサブフレーム後側取付部42がリアクロスメンバ36に当接するまで折れ曲がることにより、オフセット衝突時のエネルギを吸収することができる。この結果、車両にオフセット衝突が生じた場合のエネルギ吸収性能も確保することができる。
【0056】
このように、この車体前部構造10によれば、ロアアーム16の前輪支持部28に対して通常走行時に車両前側から荷重が入力された場合の耐衝撃性能と、車両に前面衝突(フルラップ衝突及びオフセット衝突)が生じた場合のエネルギ吸収性能とをより効果的に両立させることができる。
【0057】
つまり、サブフレーム後側取付部42は、通常走行時には強靭だが、車両に前面衝突が生じた場合には、比較的低い荷重で折れ曲がることができ、衝撃を和らげることができる。
【0058】
また、この車体前部構造10によれば、サブフレーム後側取付部42におけるサイドレール一般部40との接続部には、脆弱部50が形成されている。従って、上述のように、車両に前面衝突が生じた場合には、この脆弱部50を起点として、サブフレーム後側取付部42をリアクロスメンバ36に当接するまで円滑に折り曲げることができる。これにより、前面衝突時のエネルギをより効果的に吸収することができる。
【0059】
また、サブフレーム後側取付部42の車両後側には、サブフレーム後側取付部42と車両前後方向に対向し、フロントサイドメンバ12及びクロスメンバ14によって支持された対向壁部94が設けられている。従って、前面衝突時に車体前部により大きな荷重が入力された場合でも、サブフレーム後側取付部42が車両後側から対向壁部94によって支持される。つまり、サイドレール一般部40との接続部を起点として折れ曲がることでリアクロスメンバ36に当接されたサブフレーム後側取付部42が対向壁部94にも当接される。これにより、衝突体に対して、より大きな荷重を発生させることができるので、衝突体の車室側への進入をより一層効果的に抑制することができる。
【0060】
なお、前面衝突時だけでなく、オフセット衝突時に車体前部により大きな荷重が入力された場合にも、サブフレーム後側取付部42が車両後側から対向壁部94によって支持されるので、衝突体の車室側への進入をより一層効果的に抑制することができる。
【0061】
また、この対向壁部94を有する荷重受けブラケット20は、フロントサイドメンバ12とクロスメンバ14とに結合されている。これにより、フロントサイドメンバ12とクロスメンバ14との結合剛性を向上させることができる。
【0062】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0063】
本発明の一実施形態において、対向壁部94は、フロントサイドメンバ12及びクロスメンバ14に結合された荷重受けブラケット20に形成されていたが、図6に示されるように、上述のクロスメンバ14に対向壁部134が一体に形成されていても良い。
【0064】
つまり、この図6に示される変形例において、クロスメンバ14は、車両前後方向に延在する前側下壁部130と、この前側下壁部130における車両前側の端部から車両上側に向けて延出する前壁部132と、前側下壁部130における車両後側の端部から車両下側に向けて延出する対向壁部134と、この対向壁部134における車両下側の端部から車両後側に向けて延出する後側下壁部136とを有している。
【0065】
対向壁部134は、上述の対向壁部94と同様に、上述のサブフレーム後側取付部42(図1,図3参照)の車両後側に設けられ、このサブフレーム後側取付部42と車両前後方向に対向している。また、この対向壁部134は、車体の一部を構成するクロスメンバ14に一体に形成されることにより、車体に支持されている。
【0066】
また、前壁部132の車両上側の端部には、車両前側に向けて延出するフランジ138が形成されており、前壁部132の車両幅方向外側の端部には、車両前側に向けて延出するフランジ140が形成されている。また、前側下壁部130における車両幅方向外側に端部には、車両下側に向けて延出するフランジ142が形成されており、対向壁部134における車両幅方向外側の端部には、車両前側に向けて延出するフランジ144が形成されている。さらに、後側下壁部136における車両幅方向外側の端部には、車両幅方向外側に延出するフランジ146が形成されている。
【0067】
フランジ138における車両幅方向外側の端部は、フランジ140における車両上側の端部と接続されており、フランジ140における車両下側の端部は、フランジ142における車両前側の端部と接続されている。また、フランジ142における車両後側の端部は、フランジ144における車両上側の端部と接続されており、フランジ144における車両下側の端部は、フランジ146における車両前側の端部と接続されている。
【0068】
また、フランジ138は、ダッシュパネル112の下面に結合されており、フランジ140,142,144は、フロントサイドメンバ12における車両内側の側壁部102に結合されている。また、フランジ146は、フロントサイドメンバ12の下壁部98に結合されている。
【0069】
このように構成されていても、前面衝突時に車体前部により大きな荷重が入力された場合には、サブフレーム後側取付部42(図1,図3参照)を車両後側から対向壁部134によって支持することができる。また、このように、対向壁部134がクロスメンバ14に一体に形成されていると、部品点数の増加を抑制して、コストダウンを図ることができる。
【0070】
また、本発明の一実施形態では、図1に示されるように、脆弱部50は、一例として、サブフレーム後側取付部42における車両幅方向内側面42Aに形成された屈曲部とされていたが、サブフレーム後側取付部42におけるサイドレール一般部40との接続部に脆弱性を付与する構成であれば、例えば、切欠きや孔部など、その他の構成とされていても良い。
【0071】
また、本発明の一実施形態において、車体前部構造10は、一例として、ストラット式のフロントサスペンション装置を構成するロアアーム16を備えていたが、その他の形式のフロントサスペンション装置を構成するサスペンションアームを備えていても良い。
【0072】
また、ロアアーム16は、前輪支持部28、前側固定部30、及び、後側固定部32を有する構成であれば、どのような形状でも良い。
【0073】
また、車体前部構造10は、エンジン116を備えない例えば電気自動車等の車両に適用されても良い。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
10 車体前部構造
12 フロントサイドメンバ
14 クロスメンバ
14A 車両幅方向外側の端部
16 ロアアーム(サスペンションアーム)
18 サブフレーム
20 荷重受けブラケット
26 前輪
28 前輪支持部
30 前側固定部
32 後側固定部
36 リアクロスメンバ
36A 車両幅方向外側の端部
38 サイドレール
40 サイドレール一般部
42 サブフレーム後側取付部
48 隙間
50 脆弱部
94,134 対向壁部
L 前輪支持部と後側固定部とを結ぶ線
L1 延長線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を支持するための前輪支持部と、前記前輪支持部の車両幅方向内側に設けられた前側固定部と、前記前輪支持部の車両幅方向内側且つ車両後側に設けられた後側固定部とを有するサスペンションアームと、
車両幅方向に延在され、前記サスペンションアームを支持するサブフレームの後部に設けられたリアクロスメンバと、
車両前後方向に延在されて前記前側固定部及び前記後側固定部が固定されると共に、後部に前記リアクロスメンバにおける車両幅方向外側の端部が結合され、且つ、前記サブフレームの側部に設けられたサイドレールにおける一般部を構成するサイドレール一般部と、
前記サイドレール一般部の後端部から車両幅方向内側且つ車両後側に延びて前記サイドレールの後部を構成すると共に、前記前輪支持部と前記後側固定部とを結ぶ線の延長線上に設けられて車体に固定され、且つ、前記リアクロスメンバとの間に車両前後方向の隙間を有するサブフレーム後側取付部と、
を備えた車体前部構造。
【請求項2】
前記サブフレーム後側取付部における前記サイドレール一般部との接続部には、脆弱部が形成されている、
請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記サブフレーム後側取付部の車両後側には、前記サブフレーム後側取付部と車両前後方向に対向し、車体に支持された対向壁部が設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
車体前部の側部に設けられ、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバと、
車両幅方向に延在し、車両幅方向外側の端部が前記フロントサイドメンバに結合されたクロスメンバと、
前記対向壁部を有し、前記フロントサイドメンバと前記クロスメンバとに結合された荷重受けブラケットと、
を備えた請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
車体前部の側部に設けられ、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバと、
車両幅方向に延在し、車両幅方向外側の端部が前記フロントサイドメンバに結合されると共に、前記対向壁部が一体に形成されたクロスメンバと、
を備えた請求項3に記載の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−49321(P2013−49321A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187641(P2011−187641)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】