説明

α−アルミナ焼成体およびサファイア単結晶の生産方法

【課題】費用が安く純度の高いα−アルミナを得るための手段を提供する。
【解決手段】α−アルミナ焼成体を生産する方法のフロー1は、ベーマイトに加水するステップ101、混練するステップ102、脱気するステップ103、押出成形するステップ104、および焼くステップ105を備えている。前記ステップ103およびステップ104において、ベーマイトを脱気し、高圧で押出成形することによりベーマイト内部の気体を排除することができるので、ステップ105において、1回の焼成のみでサファイア単結晶の原料として要求される高い嵩密度を備えたα−アルミナ焼成体を生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−アルミナ焼成体およびサファイア単結晶の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(light emitting diode)に注目が集まり、その電子回路の基板として人造サファイアのサファイア単結晶が利用されることが多くなっている。サファイア単結晶は、光学的に透明で化学的安定性、機械的強度が高く絶縁性、熱伝導性に優れているため、電子回路に利用される場合、ヒートシンク(heat sink)として有効であり、LEDチップとして高いチップ耐久性を与える。
【0003】
ところで、サファイア単結晶は、アルミニウムの酸化物であるα−アルミナからできている。このα−アルミナを生産する手段については、従来から様々な方法が提案されてきている。
【0004】
その一つとして、ベーマイトを焼くことによってα−アルミナを生産する技術は、公知である。ここで、本明細書中において記述される原料としてのベーマイトの製造方法について簡単に説明する。
【0005】
ベーマイトの製造方法の一例として、ベーマイトは、アルコキシド法と呼ばれるα−アルミナを製造する方法の過程において製造される。
【0006】
より具体的には、先ず、高純度のアルミニウム金属(99.99パーセント以上)をアルコールと反応させ、アルミニウム・アルコキシド(溶液)を製造する。次に、アルミニウム・アルコキシドを蒸留し、精製しアルコキシドを製造する。さらに、アルコキシドに水を加え加水分解し、ベーマイトAlO(OH)を製造する。
【0007】
従来技術(アルコキシド法)においては、このベーマイトを焼成しα−アルミナ粉末とし、当該α−アルミナ粉末を成形などの加工処理をして再焼成し焼結(密度を高くする)させ、サファイア単結晶の原料としている。すなわち、従来技術においては、材料を2回焼く工程が必要とされていた。
【0008】
なお、材料を2回焼く必要があるのは、サファイア単結晶の原料となるα−アルミナの嵩密度を高くして、サファイア単結晶の生産の歩留まりを高くするためである。
【0009】
また、特許文献1に開示される技術は、擬ベーマイトを高圧で成形後摂氏1500度で2時間焼くことにより、比較的純度の高いα−アルミナ焼成体が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−55114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述したアルコキシド法において材料を焼く工程が2回入るということは、生産費用が高くなることを意味する。また、硬く磨耗性の強いα−アルミナ粉末を用いて成形などの加工処理をするため、その工程で装置などの磨耗により、α−アルミナに不揮発性不純物が混ざり込んでしまうという問題がある。
【0012】
また、上述した特許文献1において開示される技術により得られるα−アルミナは、やはり擬ベーマイトを高圧で成形する過程で、周りの容器の表面を削り取ってしまい不揮発性不純物の含有量が多いという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、費用が安く純度の高い高密度のα−アルミナ焼成体を得られる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の目的に鑑みて想到されたものであり、
ベーマイトに加水するステップと、
前記加水するステップにおいて加水されたベーマイトを混練するステップと、
前記混練するステップの後、もしくは前記混練するステップにおいて、前記加水され混練されたベーマイトに所定以上の圧力で加圧するステップと、
前記加水され混練され加圧されたベーマイトを摂氏1300度以上の温度において1回だけ焼くステップと
を備えるα−アルミナ焼成体を生産する方法を提供する(第1の実施態様)。
【0015】
また、上記の第1の実施態様において、
前記加圧するステップは、前記加水され混練されたベーマイトを押出成形するステップを含む
構成を採用してもよい(第2の実施態様)。
【0016】
また、上記の第2の実施態様において、
前記混練するステップの開始から前記押出成形するステップの終了までの間におけるいずれかのタイミングで、前記ベーマイトを所定気圧以下の環境下において脱気するステップを備える
構成を採用してもよい(第3の実施態様)。
【0017】
また、本発明は、
チョコラルスキー法、キロプロス法、およびEFG法のうちのいずれかに従ったサファイア単結晶を生産する方法であって、
容器中で上記の第1乃至3のいずれかの実施態様にかかる方法により生産されたα−アルミナ焼成体を溶融するステップを備える
サファイア単結晶を生産する方法を提供する(第4の実施態様)。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の実施態様にかかるα−アルミナ焼成体を生産する方法によれば、加水し混練されたベーマイトに加圧することにより、1回の焼成のみでサファイア単結晶の原料として要求される高い嵩密度を備えたα−アルミナ焼成体を生産することができる。そのため、2回焼く工程を要する従来技術により生産されるα−アルミナ焼成体と比較し、生産コストが安い。また、本発明の第1の実施態様にかかるα−アルミナ焼成体を生産する方法によれば、比較的柔らかいベーマイトの加水混練物を成形するため、比較的硬いα−アルミナの加水混練物の成形工程を要する従来技術により生産されるα−アルミナ焼成体と比較し、その成形の過程での汚染(コンタミネーション)が少なく、純度の高いα−アルミナを得ることができる。
【0019】
また、本発明の第2の実施態様にかかるα−アルミナ焼成体を生産する方法によれば、加水され混練されたベーマイトを押出成形するステップを備えるので、生産されるα−アルミナ焼成体の嵩密度を効率的に高めることができる。
【0020】
また、本発明の第3の実施態様にかかるα−アルミナ焼成体を生産する方法によれば、脱気するステップを備えるので、脱気を行わない場合と比較して、より高い嵩密度のα−アルミナ焼成体を得ることができる。その結果として、サファイア単結晶の生産の歩留まりを高めることができる。
【0021】
また、本発明の第4の実施態様にかかるサファイア単結晶を生産する方法によれば、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様にかかるα−アルミナ焼成体を原料としてサファイア単結晶を生産するので、従来技術により生産されるα−アルミナ焼成体を原料として生産されるサファイア単結晶と比較し、純度の高いサファイア単結晶を低コストで生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一具体例である本実施例にかかるα−アルミナ焼成体を生産する方法のフローを示す図である。
【図2】図2は、本発明の一具体例である実施例にかかるα−アルミナ焼成体のペレットの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施例)
以下、本発明の一具体例である実施例を、図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、本実施例にかかるα−アルミナ焼成体を生産する方法のフロー1を示す図である。なお、α−アルミナ焼成体の嵩密度を高くすることは、そのα−アルミナを原料とするサファイア単結晶の生産の歩留まりを高くすることにつながり、非常に重要である。フロー1は、ステップ101乃至105によって構成されるが、ステップ104の押出成形するステップが嵩密度を高める上で最も重要なステップであり、このステップによりサファイア単結晶の生産の原料として要求される嵩密度が得られる。さらに、ステップ103の脱気するステップにより、さらに嵩密度が向上される。
【0025】
以下、フロー1のステップの各々について説明する。なお、以下の説明において、「S」はステップを略したものである。
【0026】
S101は、ベーマイトに加水するステップである。ベーマイトに水を加えて粘土状に柔らかくするために行なわれる。なぜならば、粘土状に柔らかくすればその後の押し出し成形加工が容易になるからである。
【0027】
S102は、加水されたベーマイトを混練し粘土状のベーマイトとするステップである。混練することにより、押出し成形が容易になり、密度のばらつきなどを抑制することができる。
【0028】
S103は、(混練された)ベーマイトを脱気するステップである。脱気することにより本実施例の最終製品であるα−アルミナ焼成体の嵩密度を高くすることができる。既述のとおり、当該嵩密度が低いとサファイア単結晶の原料となるインゴットとしては不都合なので、当該嵩密度を高めることが非常に重要である。なお、S103は、上述のS102もしくは後述のS104の中に含まれていることが一般的である。
【0029】
S104は、脱気したベーマイトを押出成形するステップである。より具体的には、脱気したベーマイトをダイスと呼ばれる容器に入れてできるだけ高圧(例えば、600バール)で一定断面形状のわずかな隙間からところてんのように押し出して成形する。既述のように、このステップが、本実施例の最終製品であるα−アルミナ焼成体の嵩密度を高める上で最も重要である。上述のステップ103とステップ104の工程は、例えば、特許文献(特開平7−32335号公報)に示される押出成形装置によって行なわれることが可能である。
【0030】
ここで、本来明記されるべき加圧するステップは、S103およびS104の中に含まれてしまっている。
【0031】
S105は、押出成形されたベーマイトを(1回だけ)摂氏1500度で約1時間以上かつ約2時間以下焼くステップである。これにより本実施例の最終製品であるα−アルミナ焼成体が生産される。なお、この温度と時間は、製造コストおよび精度において優れたα−アルミナ焼成体が生産されるか否かを考慮して、決定されたものである。
【0032】
この場合、得られるα−アルミナ焼成体の嵩密度は、約2.5g/cc以上かつ約3.5g/cc以下である。
【0033】
また、ベーマイトを焼いて脱水する場合の化学式は、
2AlO(OH) → Al + H
である。
【0034】
以上の構成を有するフロー1によって生産されたα−アルミナ焼成体は、嵩密度が高く、非常に純度の高いものであり(99.99パーセント以上)、サファイア単結晶の原料となるインゴットとして用いられる。
【0035】
なお、α−アルミナ焼成体は、1cc程度の大きさに折り分けてペレット状にすると、サファイア単結晶の生産工程において原料として投入する際に便利である。
【0036】
図2は、本実施例にかかるα−アルミナ焼成体のペレットの実物であり、右側の写真は、本実施例にかかるα−アルミナ焼成体のペレットの微細構造を顕微鏡で見たものである。
【0037】
(第2実施例)
以下、本発明の別の一具体例である実施例について説明を行なう。
より具体的には、第1実施例にかかるα−アルミナ焼成体を用いたサファイア単結晶(すなわち、本実施例の最終製品)の製造方法(育成方法)の例について説明する。
【0038】
サファイア単結晶の生産方法としては、キロプロス(Kyropoulos、Ky)法、チョコラルスキー(Czochralski、Cz)法、EFG(Edge−defined、Film−fed Growth)法が広く実用化されている方法として知られている。なお、キロプロス法は、回転を伴わないチョコラルスキー法とされることもあり、チョコラルスキー法との混乱も生じている。
【0039】
キロプロス法は、種子結晶をα−アルミナの融液に浸し、融液を徐冷し、坩堝全体まで固化する前に結晶を引き上げることによりサファイア単結晶を生産する方法である。以下、キロプロス法に従った本実施例にかかるサファイア単結晶の生産のフローについて簡単に説明する。
【0040】
S201において、上述の第1実施例において生産されたα−アルミナ焼成体を坩堝の中に入れて加熱し溶融させる。
【0041】
S202において、α−アルミナ焼成体の種子結晶を上述の融液に浸す。
【0042】
S203において、上述の融液を徐々に冷却していく。
【0043】
S204において、上述の融液が坩堝全体まで固化する前に結晶を引き上げる。これにより、サファイア単結晶を得る。
【0044】
チョコラルスキー法は、坩堝の中のα−アルミナの融液に種子結晶を漬けて結晶(もしくは坩堝)を回転させながら引き上げることによりサファイア単結晶を生産する方法である。工業的にも一般的な方法である。
【0045】
以下、チョコラルスキー法に従った本実施例にかかるサファイア単結晶の生産のフローについて簡単に説明する。
【0046】
S301において、上述の第1実施例において生産されたα−アルミナ焼成体を坩堝の中に入れて加熱し溶融させる。
【0047】
S302において、α−アルミナ焼成体の種子結晶を上述の融液に浸す。
【0048】
S303において、上述の融液を徐々に冷却していく。
【0049】
S304において、上述の融液が坩堝全体まで固化する前に結晶を引き上げる。この際、結晶(もしくは坩堝)を回転させながら引き上げる。これにより、サファイア単結晶を得る。
【0050】
EFG法は、毛細管現象を利用して結晶の形状を制御する方法で、所定の形状の空隙をもつ型(ダイ)をα−アルミナの融液に浮かべ、融液の毛細管現象を利用して結晶を引き上げることにより、サファイア単結晶を生産する方法である。EFG法によれば、型の形状によって棒状、板状、管状などに形状制御した結晶を得ることができる。
【0051】
以下、EFG法に従った本実施例にかかるサファイア単結晶の生産のフローについて簡単に説明する。
【0052】
S401において、上述の第1実施例において生産されたα−アルミナ焼成体を細かく裁断もしくは破砕する。
【0053】
S402において、細かく裁断もしくは破砕したα−アルミナ焼成体を坩堝の中に入れて加熱し溶融させる。
【0054】
S403において、所定の形状の空隙をもつ型(ダイ)を融液に浮かべる。
【0055】
S404において、融液の毛細管現象を利用して結晶を引き上げる。これにより、サファイア単結晶を得る。なお、型の形状が管状になっていれば、管状に形状が制御されたサファイア単結晶が得られる。
【0056】
第1実施例にかかるα−アルミナ焼成体のインゴットは、主としてキロプロス法およびチョコラルスキー法の原料となる。また、上述のように、第1実施例にかかるα−アルミナ焼成体のインゴットを細かく成形すれば、EFG法に用いることも可能である。
【0057】
以上のような方法により生産されたサファイア単結晶は、光学的に透明で化学的安定性、機械的強度が高く絶縁性、熱伝導性に優れているため、電子回路に利用される場合、ヒートシンク(heat sink)として有効であり、LEDチップとして高いチップ耐久性を与える。
【0058】
以上のようなサファイア単結晶の特性を活かせば、当該サファイア単結晶はSOS基板、半導体ディバイス、切削工具、腕時計のガラスなどの材料として適している。
【0059】
(変形例)
上述した実施例は、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形が可能である。以下にそれらの変形の例を示す。
【0060】
例えば、S104の押出成形するステップは、特に問題がなければ設けられなくてもよい。ただし、第1実施例の最終製品であるα−アルミナ焼成体の嵩密度を高めることが重要であるから、S104を割愛するならばS102の混練するステップの後もしくは混練するステップと同時にベーマイトに高い圧力で加圧することが必要である。
【0061】
また、S104の押出成形するステップは、射出成形するステップによって代替されてもよい。
【0062】
また、S103の脱気するステップは、S102の混練するステップの開始からS104の押出し成形するステップの終了までの間におけるいずれかのタイミングで行なわれればよい。より具体的には、脱気は混練するステップの際もしくは押出成形ステップにおいて有効に行なわれることができる。
【0063】
また、S103の脱気するステップおよびS104の押出成形するステップは、上述した特許文献(特開平7−32335号公報)により示される方法で行なわれるものとしたが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0064】
したがって、S103の脱気するステップは、S101で加水されS102で混練されたベーマイトを、ポンプなどの機器を用いて実現される所定気圧以下の環境下において脱気することにより行なわれればよい。
【0065】
また、S104の押出成形するステップにおいては、例えば600バールの圧力でベーマイトを押し出すものとしたが、本発明はこれによって限定されるものではなく、特に問題がなければ他のいかなる圧力によってベーマイトを押し出してもよい。
【0066】
また、S105の焼くステップは、ベーマイトを摂氏1500度で約1時間以上かつ約2時間以下焼くものとしたが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0067】
したがって、ベーマイトを焼く温度は摂氏1400度以上かつ摂氏1600度以下であれば好適であり、特に問題がなければそれ以外かつ摂氏1300度以上の温度であってもよい。ベーマイトを焼く温度および時間などは、上述のS101乃至105とそれらのステップが実行される環境条件との組み合わせによって、最適化され変化するのである。すなわち、ベーマイトを焼く時間も適宜決定され、例えば2時間以上であってもよい。
【0068】
また、サファイア単結晶を生産する方法は、チョコラルスキー法、キロプロス法、およびEFG法のうちのいずれかであるものとしたが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0069】
すなわち、本発明にかかるサファイア単結晶は、上述のα−アルミナ焼成体を原料とする限り、他のいかなる方法によって生産されてもよい。
【0070】
また、第1実施例において生産されるα−アルミナ焼成体の嵩密度は、約2.5g/cc以上かつ約3.5g/cc以下であるものとしたが、本発明はこれによって限定されるものではない。したがって、第1実施例において生産されるα−アルミナ焼成体の嵩密度は、上述した値以外の値であってもよい。
【0071】
(実験結果)
以下、本発明の一具体例である実施例およびその変形例に従って行なわれた実験について、説明を行なう。後述する実験1は、押出成形機を真空に引かない場合の実験例であり、後述する実験2は、押出成形機を真空に引いた場合の実験例である。両者の結果を比較することにより真空で引いた場合の優位性が認められる。
【0072】
先ず実験1について説明する。アルミニウム・アルコキシドを加水分解し製造したベーマイトAlO(OH)を2リットルの撹拌式混練機に投入し、撹拌して920gの純水を加えた。この状態で、15分間混練りして粘土状のベーマイトを得た。
【0073】
この粘土状のベーマイトを、宮崎鉄工製押出成形機FM−30に投入し、2.5Mpa(メガパスカル)の加圧圧力で押出成形して、5ミリメートル径の棒状体を得た。
【0074】
上述の棒状体である成形品を摂氏110度で乾燥し、電気炉の中において摂氏1500度で2時間焼成して、焼結体を得た。その結果については、後述する。
【0075】
次に実験2について説明する。実験1の場合と同様に、アルミニウム・アルコキシドを加水分解し製造したベーマイトAlO(OH)を2リットルの撹拌式混練機に投入し、撹拌して920gの純水を加えた。この状態で、15分間混練りして粘土状のベーマイトを得た。
【0076】
この粘土状のベーマイトを、宮崎鉄工製押出成形機FM−30に投入し、真空度を−0.1Mpa(メガパスカル)として押出成形機内を真空に引いて、2.5Mpa(メガパスカル)の加圧圧力で押出成形して、5ミリメートル径の棒状体を得た。
【0077】
上述の棒状体である成形品を摂氏110度で乾燥し、電気炉の中において摂氏1500度で2時間焼成して、焼結体を得た。その結果は、上述の実験1の結果とともに以下の表1に示される。
【0078】
【表1】

【0079】
表1を見ると、押出成形機を真空に引くことによって、α−アルミナ焼成体の嵩密度が、2.21g/ccから2.85g/ccまで上昇している。これは、サファイア単結晶の生産の歩留まりを高める上で重要な数値である。
【0080】
また、表1に見られるように、押出成形機を真空に引くことによっては、α−アルミナ焼成体の純度は、変わらなかった。すなわち、α−アルミナ焼成体の純度は、原料のベーマイトと同じであり、汚染(コンタミネーション)の無いことが分かった。
【0081】
今後の方針としては、上述の加圧圧力、真空度、加水の量などを最適化することにより、α−アルミナ焼結体の嵩密度をさらに高めることができると考えられる。
【0082】
なお、表1の密度はアルキメデス法により測定し、不純物はICP−OES法により測定した。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のα−アルミナ焼成体の生産方法は、低コストで汚染(コンタミネーション)の少ないα−アルミナを生産することができ、また本発明のサファイア単結晶の生産方法は低コストかつ高い歩留まりでサファイア単結晶を生産することができるので、半導体の電気回路の基板を始めとする多くの分野において有効である。そのため、いわゆる製造業において利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…フロー、S101…加水するステップ、S102…混練するステップ、S103…脱気するステップ、S104…押出成形するステップ、S105…焼くステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーマイトに加水するステップと、
前記加水するステップにおいて加水されたベーマイトを混練するステップと、
前記混練するステップの後、もしくは前記混練するステップにおいて、前記加水され混練されたベーマイトに所定以上の圧力で加圧するステップと、
前記加水され混練され加圧されたベーマイトを摂氏1300度以上の温度において1回だけ焼くステップと
を備えるα−アルミナ焼成体を生産する方法。
【請求項2】
前記加圧するステップは、前記加水され混練されたベーマイトを押出成形するステップを含む
請求項1に記載のα−アルミナ焼成体を生産する方法。
【請求項3】
前記混練するステップの開始から前記押出成形するステップの終了までの間におけるいずれかのタイミングで、前記ベーマイトを所定気圧以下の環境下において脱気するステップを備える
請求項2に記載のα−アルミナ焼成体を生産する方法。
【請求項4】
チョコラルスキー法、キロプロス法、およびEFG法のうちのいずれかに従ったサファイア単結晶を生産する方法であって、
容器中で請求項1乃至3のいずれかに記載の方法により生産されたα−アルミナ焼成体を溶融するステップを備える
サファイア単結晶を生産する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−103868(P2013−103868A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250451(P2011−250451)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(504003905)日の本研磨材株式会社 (1)
【Fターム(参考)】