説明

α−オレフィン重合用固体触媒成分及びその製造方法、α−オレフィン重合用触媒、α−オレフィン重合体の製造方法

【課題】高活性触媒を使用して、立体規則性の高いα―オレフイン重合体を収率よく製造する。
【解決手段】マグネシウム化合物とチタン化合物、及びカルボン酸誘導体からなる均一な溶解液をポリマーケイ素化合物で析出し、更にハロゲン化合物で処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)、その固体触媒成分(A)と有機アルミニウム化合物(B)を併用する触媒系、および該触媒系を使用したα―オレフイン系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン重合用固体触媒成分及びその製造方法、α−オレフィン重合用触媒、それを用いたα−オレフィン重合体の製造方法に関するものである。更に詳しくは、立体規則性などの基本性能を高レベルにて維持したまま、極めて高い触媒活性を有するα−オレフィン重合用固体触媒成分に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンは、産業資材として最も重要なプラスチック材料であり、フィルムやシートとして包装材料及び電気材料などに、成形品として自動車部材や家電製品などの工業材料に、さらに繊維材料や建築材料などの各種の用途に広範に汎用されている。
このように利用用途が非常に広く多岐にわたるために、ポリオレフィンにおいては、それらの用途面から、多種の性質においての改良向上が求め続けられ、それらの要望に応じるために、主として重合触媒の改良による技術開発が展開されてきた。
遷移金属化合物と有機金属化合物を利用したチーグラー系の触媒により、オレフィンの重合活性が非常に高められて工業生産が実現化されたが、その後に分子量分布による重合体の物性の改善やα−オレフィンの立体規則性の向上をはじめ、多種の性能の改良がなされている。
【0003】
具体的には、マグネシウム化合物を触媒担体としてチタン及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分を使用した触媒が開発され、さらに電子供与性化合物を使用して触媒活性と立体規則性を高めた触媒(特許文献1〜3を参照)、その後には、特定の有機ケイ素化合物を新たに触媒成分に付加して、さらに触媒活性や立体規則性の向上をはかる提案もなされている(特許文献4、5を参照)。また特定の有機ケイ素化合物の他に、ビニル基やアリル基のようなアルケニル基を有する特殊な構造のケイ素化合物を併用することで、触媒活性や立体規則性がさらに向上し、分子量調節剤として用いられる水素のレスポンスが良化するなどの性能向上も提案されている(特許文献6〜8を参照)。更にはケイ素化合物以外の電子供与体を利用する提案としてフラン化合物及びその誘導体を共存させ、水素応答性や活性を改良したり(特許文献9及び10を参照)、特定の触媒系に対してエーテル化合物を電子供与体として用いることで触媒活性を向上させる(特許文献11及び12を参照)など、多くの改良技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、本発明者等が知る限りでは、これらのいずれの触媒系においても生成するα−オレフィン重合体の立体規則性、触媒活性などの触媒性能の全てにおいて充分な性能を示すものはなく、更なる改良技術の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−138706号公報
【特許文献2】特開昭57−59909号公報
【特許文献3】特開平3−149204公報
【特許文献4】特開昭62−187707号公報
【特許文献5】特開昭61−171715号公報
【特許文献6】特開平03−2234707号公報
【特許文献7】特開平07−2923号公報
【特許文献8】特開2006−169283号公報
【特許文献9】特開2002−249507号公報
【特許文献10】特願2005−309453号公報
【特許文献11】特開2003−105019号公報
【特許文献12】特開2003−261612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の状況において、立体規則性、触媒活性などの触媒性能の全てにおいて充分な性能を示す触媒及びその様な触媒成分を用いたα−オレフィン重合体の製造方法の実現を発明の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記の課題を受けて、チーグラー系触媒における基本的かつ普遍的な上記の問題を解決するために、チーグラー触媒における各種の触媒成分の性質や化学的構造などについて全般的な思考及び探索を行い、多種の触媒成分および製造条件について検討を重ね、触媒の活性点に関して立体規則性やモノマーの関与にかかわる触媒成分および製造条件を探索した。
その結果として、特定のカルボン酸誘導体をマグネシウム化合物とチタン化合物の均一な溶解液中に存在させ、ポリマーケイ素化合物で析出させた固体成分を使用することにより、触媒活性が著しく向上することが判明した。すなわち、本手法により、カルボン酸誘導体が触媒担体中に取り込まれながら析出することにより、触媒担体の構造が規制され、活性点となるチタンが高分散化し、規則性を維持したまま、活性が著しく高い、非常にバランスの取れた触媒を得ることができ、上記課題を解決し得たものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1の特徴は、
マグネシウム化合物とチタン化合物、及びカルボン酸誘導体からなる均一な溶解液をポリマーケイ素化合物で析出し、更にハロゲン化合物で処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)、にある。
この均一溶解液にカルボン酸誘導体を共存させ、ポリマーケイ素化合物で析出することにより固体触媒成分の活性度、およびその持続性を非常に高く保つことができる理由の一つである。
本発明の第2の特徴は、
前記第1の特徴のカルボン酸誘導体がカルボン酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドまたはカルボン酸化合物から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)、にある。
【0009】
本発明の第3の特徴は、
本発明の第1の特徴のポリマーケイ素化合物が下記の式で表されることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)にある。
[−Si(H)(R)−O−]q …(1)
(ここで、Rは炭素数1から10程度の炭化水素基であり、qはこのポリマーケイ素化合物の粘度が1から100センチストークス程度となるような重合度を示す。)
【0010】
本発明の第4の特徴は、
本発明の第1の特徴のハロゲン化合物がハロゲン化ケイ素化合物類及びハロゲン化チタン化合物類から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)、にある。
本発明の第5の特徴は、
本発明の第1の特徴のマグネシウム化合物がハロゲン化マグネシウムであることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)、にある。
【0011】
本発明の第6の特徴は、
本発明の第1〜5の特徴に、固体成分(A1)に、下記成分(A2)、(A3)、及び(A4)を接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)、にある。
成分(A2)アルケニル基を有するケイ素化合物
成分(A3)下記の式で表されるケイ素化合物
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
成分(A4)有機アルミニウム化合物、
本発明の第7の特徴は、
成分(A2)アルケニル基を有するケイ素化合物がビニルシラン化合物であることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)、にある。
本発明の第8の特徴は、
本発明の第1〜7の特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)又は(A)、及び下記成分(B)からなるα−オレフィン重合用触媒、にある。
(B)有機アルミニウム化合物
本発明の第9の特徴は、
本発明の第8の特徴とするα−オレフィン重合用触媒及び下記成分(C)からなるα−オレフィン重合用触媒、にある。
(C)有機ケイ素化合物
【0012】
本発明の第10の特徴は、
マグネシウム化合物とチタン化合物、及びカルボン酸誘導体を不活性溶媒中に均一に溶解させた後、ポリマーケイ素化合物を攪拌により接触させ固体成分を析出し、更に固体成分を不活性溶媒でスラリー状態としハロゲン化合物で接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)の製造方法、にある。
本発明の第11の特徴は、
本発明の第10の特徴による製造方法で得られた固体触媒成分(A1)を不活性溶媒でスラリー状態とし、下記成分(A2)、(A3)、及び(A4)を攪拌により接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法、にある。
成分(A2)アルケニル基を有するケイ素化合物
成分(A3)下記の式で表されるケイ素化合物
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
成分(A4)有機アルミニウム化合物
本発明の第12の特徴は、
本発明の前記第8の特徴または第9の特徴とするα−オレフィン重合用触媒を用いて、α−オレフィンを単独重合又は共重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法、にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、立体規則性を高レベルに維持したまま、従来の触媒よりポリマーの収率を非常に高くすることができる。従って、触媒活性が非常に高いので、製造コストも低減することが可能である。加えて、得られるポリマーの立体規則性が高く維持できるため、剛性と耐衝撃強度のバランスに優れた高品質な製品を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
I.α−オレフィン重合用触媒
本発明においてはα−オレフィン用重合触媒として、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)または(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を用いる。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)などの任意成分を用いることが出来る。
【0015】
1.α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)
本発明で用いる固体触媒成分(A1)は マグネシウム化合物とチタン化合物、及びカルボン酸誘導体からなる均一な溶解液をポリマーケイ素化合物で析出し、更にハロゲン化合物で処理してなるものである。また本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでも良い。以下に各構成成分を詳述する。
【0016】
マグネシウム化合物(A1a)
本発明で用いられるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることが出来る。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機金属マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物類、及びそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)Cl2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いる事が出来る。この中で好ましいのはハロゲン化マグネシウム化合物類であり、特に好ましくは塩化マグネシウムである。
【0017】
チタン化合物(A1b)
本発明で用いられるチタン化合物としては、任意のものを用いることが出来る。代表的な例としては特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることが出来るが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いる事が望ましい。
【0018】
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)Ti−O−Ti(OBu)に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることが出来る。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類を挙げることが出来る。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型、など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることが出来る。
【0019】
上記のチタン化合物類は単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用する事も可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)Cl4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COBu)・TiClなどの化合物)、などを用いる事が出来る。
チタン化合物(A1b)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。チタン化合物(A1b)の使用量は使用するマグネシウム化合物(A1a)の使用量に対してモル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001から1,000の範囲内であり、より好ましくは0.001〜100の範囲であり、特に好ましくは0.01から50の範囲内が望ましい。
【0020】
カルボン酸誘導体(A1c)
本発明で用いられるカルボン酸誘導体としては一般的にカルボン酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドなどが挙げられる。またカルボン酸誘導体とはカルボン酸化合物であってもよい。
カルボン酸誘導体として用いる事の出来るカルボン酸化合物としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物類、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類などを例示する事が出来る。これらのカルボン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
カルボン酸誘導体としては、上記カルボン酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドなどを例示する事が出来る。
【0021】
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることが出来る。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1から20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2から12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いる事も出来る。
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いる事が出来る。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。
【0022】
アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることが出来る。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示する事が出来る。
また、カルボン酸誘導体として用いることの出来る化合物として、複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることも出来る。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類などを挙げることが出来る。
【0023】
これらのカルボン酸誘導体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類などである。
【0024】
カルボン酸誘導体(A1c)使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。カルボン酸誘導体(A1c)使用量は、使用するマグネシウム化合物(A1a)の量に対してモル比(カルボン酸誘導体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001から1の範囲内であり、特に好ましくは0.01から0.1の範囲内が望ましい。
本発明で用いられるカルボン酸誘導体は、マグネシウム化合物とチタン化合物と共に均一に溶解しており、ポリマーケイ素化合物で析出する際に、触媒担体中に取り込まれる。その結果として、触媒担体の構造が規制され、活性点となるチタンが高分散化され、触媒活性が向上する。
【0025】
ポリマーケイ素化合物(A1d)
本発明で用いられるポリマーケイ素化合物としては、下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
[−Si(H)(R)−O−]q ・・・・・(1)
(ここで、Rは炭素数1から10程度の炭化水素基であり、qはこのポリマーケイ素化合物の粘度が1から100センチストークス程度となるような重合度を示す。)
具体的な化合物の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、シクロヘキシルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9‐ペンタメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることが出来る。この中で特にメチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7‐テトラメチルシクロテトラシロキサン等が好ましい。
【0026】
ポリマーケイ素化合物(A1d)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。ポリマーケイ素化合物(A1d)の使用量は、使用するマグネシウム化合物(A1a)の使用量に対してモル比(ポリマーケイ素化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001から100の範囲内であり、特に好ましくは0.01から10の範囲内が望ましい。
本発明で用いられるポリマーケイ素化合物(A1d)は、ハロゲン化チタン化合物類のような一般的な析出剤に比べて粘性が高いため、固体成分の析出時にカルボン酸誘導体を触媒担体中に取り込まれやすくしている。その結果として、触媒担体の構造が規制され、活性点となるチタンが高分散化され、触媒活性が向上する。
【0027】
ハロゲン化合物(A1e)
本発明で用いられるハロゲン化合物としては、任意のものを用いることが出来る。具体的な例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることが出来る。これらの化合物は単独で用いるだけでなく、併用する事も可能である。この中で特に、四塩化ケイ素、四塩化チタン等が好ましい。
ハロゲン化合物(A1e)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。ハロゲン化合物(A1e)の使用量は、使用するマグネシウム化合物(A1a)の使用量に対してモル比(ハロゲン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
【0028】
電子供与体(A1f)
固体成分(A1)は、任意成分として電子供与体(A1f)を本発明の効果を損なわない範囲で任意の形態で含有してもよい。この際、電子供与体(A1f)はカルボン酸誘導体(A1c)と同様の化合物を使用することもできる。電子供与体(A1f)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類などを用いることが望ましい。
【0029】
次にカルボン酸誘導体(A1c)で示した化合物以外の電子供与体(A1f)の例に示す。
電子供与体(A1f)として用いる事の出来る有機酸化合物としては、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物類であり、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
電子供与体(A1f)として用いることの出来る有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示する事が出来る。
電子供与体(A1f)として用いることの出来る無機酸化合物としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することが出来る。これらの無機酸の誘導体化合物としては、エステルを用いることが望ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、などを具体例として挙げることが出来る。
電子供与体(A1f)として用いることの出来るエーテル化合物としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、に代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などを例示する事が出来る。多価エーテル化合物類の好ましい例は、本明細書中の少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の例示からから選ぶことが出来る。
【0030】
電子供与体(A1f)として用いることの出来るケトン化合物としては、メチルエチルケトンに代表される脂肪族ケトン化合物類、アセトフェノンに代表される芳香族ケトン化合物類、2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオンに代表される多価ケトン化合物類、などを例示することが出来る。
電子供与体(A1f)として用いることの出来るアルデヒド化合物としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物類、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物類、などを例示する事が出来る。
電子供与体(A1f)として用いることの出来るアルコール化合物としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノール、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビ−2−ナフトールに代表される脂肪族若しくは芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することが出来る。
【0031】
電子供与体(A1f)として用いることの出来るアミン化合物としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物類、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物類、アニリンに代表される芳香族アミン化合物類、ピリジンに代表される窒素原子含有芳香族化合物類、1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2,2−ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物類、などを例示することが出来る。
また、電子供与体(A1f)として用いることの出来る化合物として、上記の複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることも出来る。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類、(1−t−ブチル−2−メトキシエチル)メチルケトンに代表されるケトエーテル化合物類、N,N−ジメチル−2,2−ジメチル−3−メトキシプロピルアミンに代表されるアミノエーテル化合物類、エポキシクロロプロパンに代表されるハロゲノエーテル化合物類、などを挙げることが出来る。
これらの電子供与体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
任意成分として電子供与体(A1f)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。電子供与体(A1f)使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対してモル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001から10の範囲内であり、特に好ましくは0.01から5の範囲内が望ましい。
【0032】
α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)の調製方法
本発明で用いる固体触媒成分(A1)はマグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)、及びカルボン酸誘導体(A1c)からなる均一な溶解液をポリマーケイ素化合物(A1d)で析出し、更にハロゲン化合物(A1e)で処理してなるものである。この際、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分(A1f)を任意の形態で含んでも良い。
マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)、及びカルボン酸誘導体(A1c)からなる均一な溶解液を調整する条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、次の条件が好ましい。
溶解方法としては、溶媒として不活性溶媒を用いても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することが出来る。また溶媒の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。溶媒に対するマグネシウム化合物の量が1.0から500g/Lの範囲内であり、特に好ましくは20から300g/Lの範囲内が望ましい。また溶解温度は、−50から200℃程度であり、好ましくは0から100℃である。
マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)、及びカルボン酸誘導体(A1c)の溶解順序に関しては、任意の順序を用いることが出来る。
【0033】
上記の均一な溶解液をポリマーケイ素化合物(A1d)により析出する条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、次の条件が好ましい。
析出方法としては、不活性溶媒の存在下で均一な溶解液とポリマーケイ素化合物(A1d)を攪拌により接触させることが好ましい。またポリマーケイ素化合物は粘度が1から100センチストークス程度の液状化合物であることから、粘度が高い場合は不活性溶媒に希釈して使用してもよい。析出温度は、−50から100℃程度であり、好ましくは0から60℃である。また均一な溶解液とポリマーケイ素化合物(A1d)の接触順序に関しては、任意の順序を用いることが出来る。つまり均一な溶解液にポリマーケイ素化合物(A1d)を加えてもよいし、ポリマーケイ素化合物(A1d)に均一な溶解液を加えてもよい。
上記の析出した固体成分とハロゲン化合物(A1e)や任意の成分(A1f)の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、次の条件が好ましい。
固体成分とハロゲン化合物(A1e)や任意の成分(A1f)の接触方法として以下の方法が挙げられる。
【0034】
(1)固体成分と固体化合物の接触方法
ハロゲン化合物(A1e)や任意の成分(A1f)が固体化合物である場合、固体成分との接触方法として、回転ボールミルや振動ミルのような機械的な接触をさせることができる。
【0035】
(2)固体成分と液状化合物の接触方法
ハロゲン化合物(A1e)や任意の成分(A1f)が液状化合物である場合、及び固体化合物を不活性溶媒に溶解させ液状化させた場合、固体成分との接触方法として、(1)固体成分と固体化合物の接触方法で挙げた方法と同様に、回転ボールミルや振動ミルのような機械的な接触をさせることができる。
また固体成分を不活性溶媒に均一溶解、若しくはスラリー状態のとして、液状化合物を滴下若しくは一括で導入し、攪拌により接触させることもできる。この際、好ましい不活性溶媒としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することが出来き、その使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。溶媒に対する固体成分の量が0.1から500g/Lの範囲内であり、特に好ましくは1.0から250g/Lの範囲内が望ましい。
この中で好ましい接触方法としては、固体成分を不活性溶媒でスラリー化し、撹拌により接触させる方法が最も望ましい。
いずれの接触方法においても、接触温度は−50から200℃程度、好ましくは−10から100℃、更に好ましくは0から70℃、とりわけ好ましくは10℃から60℃である。
【0036】
固体成分とハロゲン化合物(A1e)や任意の成分(A1f)の接触順序に関しては、任意の順序を用いることが出来る。
さらに固体成分に対して、ハロゲン化合物(A1e)、任意の成分(A1f)はいずれも、任意の回数接触させる事も出来る。この際、ハロゲン化合物(A1e)、任意の成分(A1f)のいずれも複数回の接触で用いる化合物がお互いに同一であっても異なっても良い。
また、先に各成分の使用量の範囲を示したが、これは1回当たりに接触させる使用量であり、複数回使用するときは、1回の使用量が前述した使用量の範囲内であれば、何回接触させても良い。
固体触媒成分(A1)の調製の際には、中間及び/又は最後に不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することが出来る。
【0037】
2.α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)
本発明で用いる重合用固体触媒成分(A)は前述の成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させてなるものである。また本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでも良い。以下に各構成成分を詳述する。
【0038】
(1)アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)
本発明に用いられるアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)としては、特開平2−34707号公報、特開2003−292522号公報、並びに特開2006−169283に開示された化合物等を用いることが出来る。これらのアルケニル基を有する化合物はモノシラン(SiH)の水素原子の少なくとも一つがアルケニル基に、そして残りの水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくはCl)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
【0039】
より具体的には、ビニルシラン、メチルビニルシラン、ジメチルビニルシラン、トリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、クロロジメチルビニルシラン、クロロメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、ジクロロエチルビニルシラン、ジメチルエチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、トリペンチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、CH=CH−Si(CH(CCH)、(CH=CH)(CHSi−O−Si(CH(CH=CH)、ジビニルシラン、ジクロロジビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルメチルビニルシラン、ジアリルメチルクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリアリルエチルシラン、トリアリルビニルシラン、トリアリルクロロシラン、トリアリルブロモシラン、テトラアリルシラン、ジ−3−ブテニルシランジメチルシラン、ジ−3−ブテニルシランジエチルシラン、ジ−3−ブテニルシランジビニルシラン、ジ−3−ブテニルシランメチルヴィニルシラン、ジ−3−ブテニルシランメチルクロロシラン、ジ−3−ブテニルシランジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリ−3−ブテニルシランエチルシラン、トリ−3−ブテニルシランビニルシラン、トリ−3−ブテニルシランクロロシラン、トリ−3−ブテニルシランブロモシラン、テトラ−3−ブテニルシランシランなどを例示することができる。
これらの中でもビニルシラン化合物類が好ましく、とりわけトリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジメチルジビニルシランが好ましい。
【0040】
アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01から100の範囲内が望ましい。
本発明で用いられるアルケニル基を有するケイ素化合物は、活性点となりうるチタン原子にアルケニル基で配位しており、有機アルミ化合物によるチタン原子の過還元や不純物などによる活性点の失活を防ぐ目的として用いられる。
【0041】
(2)有機ケイ素化合物(A3)
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(A3)としては、特開2004−124090号に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
として脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表わし、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、などを挙げる事が出来る。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いる事が望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれる事が望ましく、とりわけ、窒素又は酸素である事が望ましい。Rのヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
【0042】
式中、Rは脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素を表す。
として用いることの出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示する事が出来る。Rが炭化水素基である場合は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、などを挙げる事が出来る。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
mの値が1の場合、二つあるRは同一であっても異なっても良い。また、mの値に関わらず、RはRと同一であっても異なっても良い。
式中、Rは炭化水素基を表す。Rとして用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることが出来る。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。mの値が2以上である場合、複数存在するRは同一であっても異なっても良い。
【0043】
本発明で用いる事の出来る有機ケイ素化合物(A3)の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、 i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)
【化1】

などを挙げることが出来る。
これらの有機ケイ素化合物類は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
【0044】
有機ケイ素化合物(A3)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。有機ケイ素化合物(A3)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比で(有機ケイ素化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(A3)は、活性点となりうるチタン原子に近傍に配位し、活性点の触媒活性やポリマーの規則性といった触媒性能を制御していると考えられている。
【0045】
(3)有機アルミニウム化合物(A4)
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物(A4)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
AlX(OR
(式中、Rは炭化水素基を表す。Xはハロゲン若しくは水素を表す。Rは炭化水素基若しくはAlによる架橋基を表す。a≧1、0≦b≦2、0≦c≦2、a+b+c=3である。)
式中、Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8、特に好ましくは炭素数1から6、のものを用いることが望ましい。Rの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることが出来る。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基が最も好ましい。
式中、Xはハロゲン若しくは水素である。Xとして用いる事の出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素などを例示することが出来る。この中で、塩素が特に好ましい。
式中、Rは炭化水素基若しくはAlによる架橋基である。Rが炭化水素基である場合には、Rの炭化水素基の例示と同じ群からRを選択することが出来る。また、有機アルミニウム化合物(A4)としてメチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合RはAlによる架橋基を表す。
【0046】
有機アルミニウム化合物(A4)として用いる事の出来る化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることが出来る。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
【0047】
有機アルミニウム化合物(A4)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。有機アルミニウム化合物(A4)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するアルミニウムの原子比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1から100の範囲内であり、特に好ましくは1から50の範囲内が望ましい。
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(A4)は、固体触媒成分中に有機ケイ素化合物(A3)を効率よく担持させることを目的として用いられる。従って、本重合時に助触媒として用いられる有機アルミニウム化合物(B)とは使用目的が異なり、区別される。
【0048】
(4)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)
本発明で用いる重合用固体触媒成分(A)は前述の成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させてなるものであるが、この際本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)を任意成分として接触させても良い。
本発明で用いる事の出来る少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)としては、特開平3−294302号及び特開平8−333413号に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記式にて表される化合物を用いることが望ましい。
O−C(R−C(R−C(R)−OR
(ここで、R及びRは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
式中、Rは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。
【0049】
として用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げる事が出来る。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いる事が望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
二つのRは結合して一つ以上の環を形成しても良い。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取る事も出来る。また、他の環式構造と縮合していても良い。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していても良い。環上の置換基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げる事が出来る。
【0050】
式中、Rは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。具体的には、RはRの例示から選ぶ事が出来る。好ましくは水素である。
式中、Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、RはRが炭化水素基である場合の例示から選ぶ事が出来る。好ましくは、炭素数1から6の炭化水素基である事が望ましく、更に好ましくはアルキル基である事が望ましい。最も好ましくはメチル基である。
からRがヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれる事が望ましい。また、RからRが炭化水素基であるかヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。RからRがヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は炭化水素基である場合の例示から選ばれる事が望ましい。また、RからRの八個の置換基はお互いに同一であっても異なっても良い。
【0051】
本発明で用いる事の出来る少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げる事が出来る。中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが特に好ましい。
【0052】
これらの少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。また、固体成分(A1)中の任意成分である電子供与体(A1f)として用いられる多価エーテル化合物と同一であっても異なっても良い。また少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5から500の範囲内が望ましい。
【0053】
(5)α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)の調製方法
本発明におけるα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させてなるものである。この際、本発明の効果を損なわない範囲で少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)等の他の任意成分を任意の方法で接触させても良い。
固体触媒成分(A)の各構成成分の接触条件は、酸素を存在させない事が必要であるが、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、次の条件が好ましい。
【0054】
固体触媒成分(A)と各構成成分の接触方法として、固体触媒成分(A)の調整において固体成分とハロゲン化合物(A1e)や任意の成分(A1f)の接触方法で例示した方法を挙げることができる。この中で好ましい接触方法としては、固体触媒成分(A)を不活性溶媒でスラリー化し、撹拌により接触させる方法が最も望ましい。不活性溶媒を用いる場合の好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することが出来き、その使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。溶媒に対する固体触媒成分(A)の量が1.0から500g/Lの範囲内であり、特に好ましくは20から250g/Lの範囲内が望ましい。
接触温度は、−50から200℃程度、好ましくは−10から100℃、更に好ましくは0から70℃、とりわけ好ましくは10℃から60℃である。
【0055】
固体触媒成分(A1)、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)の接触手順に関しては、任意の手順を用いることが出来る。具体的な例としては、下記の手順(i)〜手順(iv)が挙げられる。
手順(i):固体触媒成分(A1)にアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)を接触させ、次いで有機ケイ素化合物(A3)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法
手順(ii):固体触媒成分(A1)にアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)及び有機ケイ素化合物(A3)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法
手順(iii):固体触媒成分(A1)に有機ケイ素化合物(A3)を接触させ、次いでアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法
手順(iv):全ての化合物を同時に接触させる方法
などを例示することが出来る。この中でも、手順(i)及び手順(ii)が好ましい。
任意成分として、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)を用いる場合も、上記と同様に任意の順序で接触させる事が出来る。
【0056】
さらに固体触媒成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)のいずれも、任意の回数接触させる事も出来る。この際、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)のいずれも複数回の接触で用いる化合物がお互いに同一であっても異なっても良い。また、先に各成分の使用量の範囲を示したが、これは1回当たりに接触させる使用量であり、複数回使用するときは、1回の使用量が前述した使用量の範囲内であれば、何回接触させても良い。
固体触媒成分(A)の調製の際には、中間及び/又は最後に不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することが出来る。
【0057】
3.有機アルミニウム化合物(B)
本発明においては触媒としてα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)または(A)及び、有機アルミニウム化合物(B)を用いることが必須要件であるが、本発明において用いる事の出来る有機アルミニウム化合物(B)としては、特開2004−124090号に開示された化合物等を用いることが出来る。好ましくは、固体触媒成分(A)を調製する際の成分である有機アルミニウム化合物(A4)における例示と同じ群から選択する事が出来る。固体触媒成分(A)を調製する際に用いる事の出来る有機アルミニウム化合物(A4)と触媒成分として用いる事の出来る有機アルミニウム化合物(B)が同一であっても異なっても良い。
有機アルミニウム化合物(B)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1から5,000の範囲内であり、特に好ましくは10から500の範囲内が望ましい。
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(B)は、本重合中に助触媒として用いられる。従って、固体触媒成分(A)を調製する際の成分である有機アルミニウム化合物(A4)とは使用目的が異なり、区別される。
【0058】
4.有機ケイ素化合物(C)
本発明においてはα−オレフィン用重合触媒として、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)または(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を用いる。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)などの任意成分を用いることが出来る。
本発明の触媒において任意成分として用いられる有機ケイ素化合物(C)としては、 特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。好ましくは、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を調製する際の成分である有機ケイ素化合物(A3)における例示と同じ群から選択する事が出来る。
またここで使用される有機ケイ素化合物(C)は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)に含まれる有機ケイ素化合物(A3)と同一であっても異なってもよい。
有機ケイ素化合物(C)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機ケイ素化合物(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5から500の範囲内が望ましい。
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(C)は、固体触媒成分(A)を調製する際の成分である有機ケイ素化合物(A3)と同様に活性点に作用し触媒性能を制御する働きがあると考えられている。本発明のように固体触媒成分(A)中だけでなく、本重合時にも有機ケイ素化合物(C)を作用させることで、触媒性能が更に向上させることができる。
【0059】
5.少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)
本発明の触媒において任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。好ましくは、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)において用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)における例示と同じ群から選択する事が出来る。この際、固体触媒成分(A)を調製する際に任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)と触媒の任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)が同一であっても異なっても良い。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)を用いる場合の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5から500の範囲内が望ましい。
【0060】
6.その他の化合物
本発明の効果を損なわない限り、上記の有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)以外の成分を触媒の任意成分として用いる事が出来る。例えば、特開2004−124090号公報に開示されている分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)や特開2006−225449号公報に開示されている亜硫酸エステル化合物(F)を用いることにより、CXSの様な非晶性成分の生成を抑制することが出来る。この場合、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチルなどを好まし例として挙げることが出来る。また、ジエチル亜鉛の様なAl以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることも出来る。
分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)及び亜硫酸エステル化合物(F)を用いる場合の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(任意成分(E)、(F)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.05から500の範囲内が望ましい。
本発明で用いられるこれらの任意成分は、有機ケイ素化合物(C)と同様に活性点となりうるチタン原子の近傍に配位し触媒性能を制御したり、非晶性成分を生成するような活性点に直接的に配位し選択的に被毒するなどの作用があり、触媒性能の向上を目的として用いられる。
【0061】
7. 予備重合
本発明における固体触媒成分(A1)または(A)は、本重合で使用する前に予備重合されていても良い。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げる事が出来る。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
【0062】
固体触媒成分(A)として予備重合されたものを用いる場合には、固体触媒成分(A)の調製手順において任意の手順で予備重合を行うことが出来る。例えば、固体触媒成分(A1)を予備重合した後に、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、及び、有機ケイ素化合物(A3)を接触させる事が出来る。また、固体触媒成分(A1)、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、及び、有機ケイ素化合物(A3)を接触させた後に予備重合を行うことも出来る。更に、固体触媒成分(A1)、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、及び、有機ケイ素化合物(A3)を接触させる際に同時に予備重合を行っても良い。
固体触媒成分(A)または(A1)と上記のモノマーとの反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、以下の範囲内が好ましい。
【0063】
固体触媒成分(A)または(A1)1グラムあたりの基準で、予備重合量は0.001から100gの範囲内であり、好ましくは0.1から50g、更に好ましくは0.5から10gの範囲内が望ましい。予備重合時の反応温度は−150から150℃、好ましくは0から100℃である。そして、予備重合時の反応温度は本重合のときの重合温度よりも低くする事が望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は複数回行っても良く、この際用いるモノマーは同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行う事も出来る。
【0064】
II. α−オレフィン重合
本発明の新規な触媒を使用する、α−オレフィン重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合又は気相重合に適用される。スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒が用いられる。採用される重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合等いかなる方法でもよい。重合温度は、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃であり、そのとき分子量調節剤として水素を用いることができる。
本発明の触媒系で重合するα−オレフィンは、一般式R−CH=CH (ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、分枝基を有してもよい。)で表されるものである。具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィン類である。これらのα−オレフィンの単独重合のほかに、α−オレフィンと共重合可能なモノマー(例えば、エチレン、α−オレフィン、ジエン類、スチレン類等)との共重合も行うことができる。これらの共重合性モノマーは、ランダム共重合においては15重量%まで、ブロック共重合(インパクトコポリマー)においては50重量%まで使用することができる。
【0065】
III. α−オレフィン重合体
本発明により重合されるα−オレフィン重合体のインデックスについては特に制限はなく、各種用途に合わせて適宜調節する事が出来る。一般的には、α−オレフィン重合体のMFRは0.01から10,000g/10分の範囲内である事が好ましく、特に好ましくは0.1から1,000g/10分の範囲内である。非晶性成分である冷キシレン可溶分(CXS)の量は、用途によって好ましい範囲が異なるのが一般的である。射出成形用途などの高い剛性が好まれる用途に対しては、CXSの量は0.01から3.0重量%の範囲内である事が好ましく、特に好ましくは0.05から1.5重量%の範囲内、とりわけ好ましくは0.1から1.0重量%の範囲内が望ましい。ここで、CXSの値は下記実施例の中で定められた手法により測定した値である。
また、本発明により得られるポリマー粒子は優れた粒子性状を示す。一般的に、ポリマー粒子の粒子性状は、ポリマー嵩密度、粒径分布、粒子外観、などにより評価される。本発明により得られるポリマー粒子は、ポリマー嵩密度が、0.35から0.55g/mlの範囲内、好ましくは、0.40から0.50g/mlの範囲内である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
【0067】
(1)MFR:タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS−K6921に基づき、230℃、21.18Nの条件で評価した。
【0068】
(2)ポリマー嵩密度:パウダー試料の嵩密度をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し測定した。
【0069】
(3)ポリマー平均粒径
パウダー試料の粒径分布をJIS−Z8801に準拠して篩い分け法により測定した。得られた粒径分布において、重量基準で積算50wt%となる粒径を平均粒径とした。
【0070】
(4)CXS:試料(約5g)を140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させた。その後23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させた。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥した。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%としてCXSの値を得た。
【0071】
(5)密度:MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS−K7112 D法に準拠して密度勾配管法で行った。
【0072】
(6)チタン含量:試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
【0073】
(7)ケイ素化合物含量:試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較する事により、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
【0074】
(実施例1)
[固体触媒成分(A1)の調製]
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したn−ヘプタン2.4Lを導入した。更に、MgClを300g、Ti(O−n−Bu)を1.8L添加して、90℃で1.5hr反応させ均一な溶解液とした。次いで均一な溶解液を40℃に冷却し、フタル酸ジ−n−ブチルを20ml導入し1hr処理を行った。40℃に保持したままメチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を500ml添加し、5hr析出反応を行った。析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が200g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを300ml添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が100g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。フタル酸ジクロライド30mlを精製したn−ヘプタン270mlに混合した液を事前に調製しておき、その混合液をオートクレーブへ添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が200g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、TiClを1L添加し、95℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が200g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、SiClを370ml添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A1)のチタン含量は1.7wt%であった。
【0075】
[固体触媒成分(A)の調製]
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A1)のスラリーを固体成分(A1)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A1)の濃度が60g/Lとなる様に調整した。ここに、成分(A2)としてジメチルジビニルシランを25ml、成分(A3)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を20ml、成分(A4)としてEtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして40g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを6Lに調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、150gのプロピレンを3hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に20分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行ってα−オレフィン用重合触媒成分(A)を得た。このα‐オレフィン用重合触媒成分(A)は、固体成分1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、チタン含量が0.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が4.9wt%含まれていた。
【0076】
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(B)としてEtAlを550ミリグラム、及び水素を2000ミリリットル導入し、次いで液体プロピレンを1000グラム導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、上記のα−オレフィン用重合触媒成分(A)を7ミリグラム圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例2)
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、フタル酸ジ−n−ブチルの代わりにフタル酸ジエチルを使用した以外は全く同様に行った。このα−オレフィン用重合触媒成分(A)は、固体成分1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでおり、このα−オレフィン用重合成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、チタン含量が0.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が4.7wt%含まれていた。また重合は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例3)
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、フタル酸ジ−n−ブチルの代わりにフタル酸ジへプチルを使用した以外は全く同様に行った。このα−オレフィン用重合触媒成分(A)は、固体成分1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでおり、このα−オレフィン用重合成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、チタン含量が1.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.0wt%含まれていた。また重合は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例4)
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、フタル酸ジ−n−ブチルの代わりにコハク酸ジブチルを使用し、さらに固体触媒成分(A)の調製において、成分(A3)t−Bu(Me)Si(OMe)の代わりにc−Hex(Me)Si(OMe)を使用した以外は全く同様に行った。このα‐オレフィン用重合触媒成分(A)は、固体成分1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでおり、このα−オレフィン用重合成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、チタン含量が0.9wt%、c−Hex(Me)Si(OMe)が4.4wt%含まれていた。また重合は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例5)
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、フタル酸ジ−n−ブチルの代わりにフタル酸ジクロライドを使用し、さらに固体触媒成分(A)の調製において、成分(A3)t−Bu(Me)Si(OMe)の代わりに(i−Pr)Si(OMe)を使用した以外は全く同様に行った。このα‐オレフィン用重合触媒成分(A)は、固体成分1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでおり、このα−オレフィン用重合成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、チタン含量が0.8wt%、(i−Pr)Si(OMe)が3.5wt%含まれていた。また重合は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例6)
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、フタル酸ジ−n−ブチルの使用量を40mlとし、さらに固体触媒成分(A)の調製において、成分(A2)ジメチルジビニルシランの代わりにジアリルジメチルシランを使用した以外は全く同様に行った。このα‐オレフィン用重合触媒成分(A)は、固体成分1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでおり、このα‐オレフィン用重合成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、チタン含量が1.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が4.5wt%含まれていた。また重合は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例7)
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(C)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を57.0mg、成分(B)としてEtAlを550ミリグラム、及び水素を2000ミリリットル導入し、次いで液体プロピレンを1000グラム導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、実施例1で調整した固体触媒成分(A)を7ミリグラム圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例1)
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、フタル酸ジ−n−ブチルを使用しなかった以外は全く同様に行った。このα‐オレフィン用重合触媒成分(A)は、固体成分1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでおり、このα‐オレフィン用重合成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、チタン含量が0.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.5wt%含まれていた。また重合は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例2)
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(C)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を57.0mg、成分(B)としてEtAlを550ミリグラム、及び水素を2000ミリリットル導入し、次いで液体プロピレンを1000グラム導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、比較例1で調整した固体触媒成分(A)を7ミリグラム圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
(実施例8)
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(C)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を57.0mg、成分(B)としてEtAlを550ミリグラム、及び水素を2000ミリリットル導入し、次いで液体プロピレンを1000グラム導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、実施例1で調整した固体触媒成分(A1)を7ミリグラム圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表2に示す。
【0087】
(比較例3)
実施例8において、固体触媒成分(A1)の調製時にフタル酸ジ−n−ブチルを使用しなかった以外は全く同様に行った。結果を表2に示す。
【0088】
(比較例4)
[固体触媒成分(A1)の調製]
撹拌装置を備えた容量1.0Lの丸底フラスコを充分に窒素で置換し、無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを導入した。130℃で2hr加熱して均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに、130℃にて1hr攪拌混合を行ない、無水フタル酸を溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中にこの均一溶液の75mlを1hrにわたって滴下した。滴下終了後、この混合液の温度を4hrかけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル5.22gを添加し、これより2hr同温度にて攪拌保持した。反応終了後、析出した固体生成物を熱濾過にて採取し、さらに275mlの四塩化チタンで再懸濁させた後、得られた懸濁液を再び110℃で2hr、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体生成物を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄し、固体触媒成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところチタン含量は2.4wt%であった。
【0089】
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(C)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を57.0mg、成分(B)としてEtAlを550ミリグラム、及び水素を2000ミリリットル導入し、次いで液体プロピレンを1000グラム導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、上記で調整した固体触媒成分(A1)を7ミリグラム圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表2に示す。
【0090】
(比較例5)
[固体触媒成分(A1)の調製]
撹拌機装置を備えた容量500mlのフラスコを充分に窒素で置換し、精製したヘキサン290ml、テトラブトキシチタン2.4ml、フタル酸ジイソブチル2.5mlおよびテトラエトキシシラン76.4mlを導入し、均一な溶解液とした。次に、n−ブチルマグネシウムクロライドのジ−n−ブチルエーテル溶液(有機合成薬品社製、n−ブチルマグネシウムクロライド濃度2.1mmol/ml)181mlを、フラスコ内の温度を5℃に保ちながら、滴下ロートから3.3hrかけて徐々に滴下した。滴下終了後、室温でさらに1hr攪拌し固体生成物を得た。その後、固体生成物を分離し、トルエン180mlで3回洗浄を繰り返した後トルエン155mlを加えた。
次に撹拌装置を備えた容量50mlのフラスコを充分に窒素で置換したのち、上記で得られた固体生成物を含むスラリーを30ml投入し、更にトルエンを4.2ml加え105℃まで昇温しそのまま30分間攪拌した。ついで、フタル酸ジイソブチル5.0mlを加え、105℃で30分反応を行った。反応後、固体生成物を分離し、トルエン30mlで2回洗浄を行った。
次にフラスコにトルエン7.4ml、フタル酸ジイソブチル0.33ml、ブチルエーテル0.59ml、および四塩化チタン9.4mlを加え、105℃で3hr反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、105℃でトルエン30mlで2回洗浄を行った。次いでトルエン7.4ml、ブチルエーテル0.59ml、および四塩化チタン4.7mlを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン30mlで3回洗浄を行ったのち、ヘキサン30mlで3回洗浄し、固体触媒成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところチタン含量は1.6wt%であった。
【0091】
[プロピレンの重合]
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(C)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を57.0mg、成分(B)としてEtAlを550ミリグラム、及び水素を2000ミリリットル導入し、次いで液体プロピレンを1000グラム導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、上記で調整した固体触媒成分(A1)を7ミリグラム圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
表1、2から明らかなように、実施例1〜8及び比較例1〜5を対照検討することで、本発明の重合活性が全般にわたり比較例に対して優れ、さらに立体規則性や粒子正常も高レベルに維持された結果を示しており、非常にバランスの優れた触媒であると言える。
具体的には実施例1と比較例1を比較することで、均一な溶解液中にカルボン酸誘導体(A1c)としてフタル酸ジ−n−ブチルを存在させることにより、立体規則性や粒子正常を維持されたまま、重合活性が向上していることが分かる。実施例2〜5はカルボン酸誘導体(A1c)を異なる構造の化合物に変えたものであるが、実施例1の結果と同様に重合活性の向上がみられた。さらに実施例6ではカルボン酸誘導体(A1c)の使用量を増やし、さらにアルケニル基を有するケイ素化合物(A4)の構造を変えたものであるが、こちらも実施例1の結果と同様に重合活性の向上がみられた。実施例7では重合時にケイ素化合物(C)を用いて評価している。比較例2と比較することにより、規則性を高レベルに維持しながら、活性が向上していることが分かる。
また比較例4,5では析出剤や溶解物質が異なる製造法の触媒を示している。実施例8との比較により、マグネシウム化合物とチタン化合物及びカルボン酸誘導体の均一な溶解液をポリマーケイ素化合物で析出した固体成分を用いることが、重合活性の向上に繋がっていると理解される。
従って、実施例は、立体規則性などの基本性能を高レベルにて維持したまま、極めて高い触媒活性を有する触媒であり、比較例に比して優れた結果が得られていると言える。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の触媒成分は、α−オレフィン重合用触媒として、高度な活性を有するものであり、製造コストも低減することが可能であり、非常に立体体規則性を高にポリマーの収率良く製造できる。この為に、α−オレフイン重合体の、触媒の技術分野、重合体の製造分野、および重合体の成形分野を開発する産業分野に貢献するものである。さらに、特に剛性と耐衝撃強度のバランスにおいて優れた高品質な製品を得ることが出来る。プラスチック産業分野に好ましい重合体からなる材料を提供することになる。したがって、農業資材、農業フイルムのような農業用材料、パイプ、暗渠多孔パイプ、コルゲート管、工業・土木建築部材、包装材料分野、自動車の外装内装材料、タンク、バンパー、ホース、ケース、部品のような自動車関連材料、浴槽、浴室などの建築資材、容器、フイルム、ボトルのような日常製品、多孔中空膜、人工肺、のような医用材料、積層フイルム、袋、バック、電気・家電のハウジングなど各種の工業材料の産業分野に、好ましい特性を有する資材を提供することになる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の触媒についての理解を助け明確にするためのフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム化合物とチタン化合物、及びカルボン酸誘導体からなる均一な溶解液をポリマーケイ素化合物で析出し、更にハロゲン化合物で処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)。
【請求項2】
カルボン酸誘導体がカルボン酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドまたはカルボン酸化合物から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)。
【請求項3】
ポリマーケイ素化合物が下記の式で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)。
[−Si(H)(R)−O−]q …(1)
(ここで、Rは炭素数1から10程度の炭化水素基であり、qはこのポリマーケイ素化合物の粘度が1から100センチストークス程度となるような重合度を示す。)
【請求項4】
ハロゲン化合物がハロゲン化ケイ素化合物類及びハロゲン化チタン化合物類から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)。
【請求項5】
マグネシウム化合物がハロゲン化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の固体成分(A1)に、下記成分(A2)、(A3)、及び(A4)を接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)。
成分(A2)アルケニル基を有するケイ素化合物
成分(A3)下記の式で表されるケイ素化合物
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
成分(A4)有機アルミニウム化合物
【請求項7】
成分(A2)アルケニル基を有するケイ素化合物がビニルシラン化合物であることを特徴とする請求項6に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)又は(A)、及び下記成分(B)からなるα−オレフィン重合用触媒。
(B)有機アルミニウム化合物
【請求項9】
請求項8に記載のα−オレフィン重合用触媒及び下記成分(C)からなるα−オレフィン重合用触媒。
(C)有機ケイ素化合物
【請求項10】
マグネシウム化合物とチタン化合物、及びカルボン酸誘導体を不活性溶媒中に均一に溶解させた後、ポリマーケイ素化合物を攪拌により接触させ固体成分を析出し、更に固体成分を不活性溶媒でスラリー状態としハロゲン化合物で接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法で得られた固体触媒成分(A1)を不活性溶媒でスラリー状態とし、下記成分(A2)、(A3)、及び(A4)を攪拌により接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法。
成分(A2)アルケニル基を有するケイ素化合物
成分(A3)下記の式で表されるケイ素化合物
3−mSi(OR
(ここで、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
成分(A4)有機アルミニウム化合物
【請求項12】
請求項8または請求項9に記載のα−オレフィン重合用触媒を用いて、α−オレフィンを単独重合又は共重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−308558(P2008−308558A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156789(P2007−156789)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】