α−リポ酸誘導体及び薬物製剤へのそれらの使用
本発明は、式(I)[式中、Xは−NH−R1又は式(V)又は式(VI)であり、R1は、−(CH2)n−R2であり、R2は、直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)から選択されたもの、又は式(V)であり、R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、nは、0〜6の整数である]の化合物の(R)−エナンチオマーに関する。本発明のエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸を遊離でき、したがって、薬理活性成分の体内における耐久性が(R)−α−リポ酸の直接投与によって得られるものよりも確実に長いか、又は(R)−α−リポ酸自体の薬理作用を模倣できるが、はるかに強く且つ持続的な活性を示すことが判明した。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、改良された薬剤学的特性及びα−リポ酸自体より高いバイオアベイラビリティを有するα−リポ酸(α−LA)の新規誘導体に関する。特に、前記誘導体は、糖尿病、糖尿病性神経障害及び肥満の治療に用途がある。
【0002】
[従来技術]
α−リポ酸は、ピルビン酸、α−ケトグルタル酸、分岐鎖α−ケト酸及びグリシンなどのα−ケト酸のいくつかの酸化的脱炭酸反応の補因子である。
【0003】
R−エナンチオマーの形態のα−リポ酸(α−LA又は1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸又は1,2−ジチオラン−3−吉草酸若しくはチオクト酸)(式A)は、α−ケト酸の酸化的脱炭酸酵素である多酵素複合体(α−ケト酸デヒドロゲナーゼ)に結合され、この多酵素複合体がα−LA(式A)をα−ジヒドロリポ酸(α−DHLA)(式B)に酵素的に還元し、α−DHLAを再び酵素的にα−LAへと再酸化することによって、酸化−還元作用を行う。
【化1】
【0004】
α−リポ酸はアセチル残基の輸送体(transporter)としても作用し、実際には、α−リポ酸は、ピルビン酸の酸化的脱炭酸によって形成されたアセチル基を、コエンザイムAに移動させる。補因子としてα−LAを必要とするこの反応は、以下のように図示できる。
【化2】
【0005】
この反応スキームは、酸化剤がNAD+であること、及び反応によって1当量のNADHが生成されることを示している。この反応はミトコンドリア中で起こり、クレブス回路(Krebs Cycle)反応の開始に不可欠である。
【0006】
α―LAは、特にラセミ形のものが、栄養補助食品として広く用いられており、一部の国では糖尿病性多発神経障害の治療薬として用いられている。α−リポ酸の薬理作用の基本原理は依然として不明であるが、この意味では、いくつかの仮説が提起されている。特に、α−リポ酸が神経障害性プロセスにおいて保護効果を有するのは、α−リポ酸が、グルコースのソルビトールへの還元及びソルビトールのフルクトースへの再酸化の結果として糖尿病患者の末梢神経系に発生したフリーラジカルによって引き起こされる障害を少なくとも部分的に除くことができる酸化還元特性を有するためと仮定されている。最近になって、2型糖尿病の薬理学モデルで高用量のα−LA(ラットにおいて30mg/kg)を用いることによって、α−リポ酸が直接的な抗糖尿病作用も有すること、実際には、α−リポ酸が糖尿病ラットにおいて血糖を低下させ、筋細胞へのグルコースの移行を増加させ、肝細胞におけるグルコースの合成を抑制することが示された。
【0007】
しかし、薬物としてのα−LAの使用可能性は、その好ましくない薬物動態特性によって制限されている。この点において、α−LAは、ヒトでは血漿中半減期(t1/2)が28分であり、経口投与後のバイオアベイラビリティが30%未満である。これらの好ましくない薬物動態特性の原因として、α−リポ酸が酸化的方法によって(主にβ−酸化によって)代謝され易いことが考えられる。α−LAのR−エナンチオマーは、対応するラセミ形よりも低毒性で、薬理活性が高いが、それでもなお、ラセミ形α−LAと同じ好ましくない薬物動態特性を示す。したがって、本発明の目的は、バイオアベイラビリティの改善により、α−リポ酸の直接投与によって得られるよりも多い量で体内にとどまり、同時により強く且つ持続的な活性を示すような形で、α−リポ酸を提供することである。
【0008】
[発明の概要]
このような目的は、式I
【化3】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化4】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化5】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーによって達成された。
【0009】
前記エナンチオマーは、α−リポ酸を遊離でき、したがって、薬理活性成分の体内における耐久性がα−リポ酸の直接投与によって得られるものよりも確実に大きいか、又はα−リポ酸自体の同じ薬理作用を模倣できるが、はるかに強く且つ持続的な活性を示す。
【0010】
別の態様において、本発明は、糖尿病、糖尿病性神経障害、肥満及びこれらに関連する病態の治療への前記エナンチオマーの使用に関する。
【0011】
更に別の態様において、本発明は、腫瘍治療における腫瘍細胞のアポトーシスの誘発への前記エナンチオマーの使用に関する。
【0012】
[図面の簡単な説明]
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、非限定的な実例として記載した実施形態、及び添付した図から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】濃度500μMの本発明の化合物での処理後に測定された細胞生存率(cell viability)(%で表す)を示す。
【図2】本発明の(R)−エナンチオマーの一部に関するインビトロ酵素加水分解アッセイの、1時間及び3時間後の結果を示す。
【図3】本発明の(R)−エナンチオマーの一部に関するインビトロ酵素加水分解アッセイの、24時間後の結果を示す。
【図4】濃度1mMの本発明の化合物での処理後に測定された、(R)−α−リポ酸によって誘発された細胞生存率に対する誘発倍率として表した細胞生存率を示す。
【図5】本発明の一部の化合物での処理後に血漿中α−リポ酸の量に関してインビボで得られた結果を示す。
【図6】インビボで経時的に測定された一部の化合物の量を示す。
【図7】本発明の種々の化合物での処理後に血漿中α−リポ酸の量に関してインビボで得られた結果を示す。
【図8】インビボで経時的に測定された一部の化合物の量を示す。
【図9】本発明の2つのエナンチオマーでの処理後に血漿中α−リポ酸の量に関してインビボで得られた結果を示す。
【図10】本発明の一部の化合物を種々の濃度で用いて測定された、対照(DMSO)と比較して「誘発倍率」として表したNADH量を示す。
【図11】本発明の一部の化合物を種々の濃度で用いて測定された、対照(DMSO)と比較して「誘発倍率」として表したNADPH量を示す。
【0014】
[発明の詳細な説明]
したがって、本発明は、(R)−α−LAを遊離できるか又はその薬理作用を模倣できる(R)−α−LA誘導体に関する。特に、本発明は、式I
【化6】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化7】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化8】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーに関する。
【0015】
意外なことに、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーは、α−リポ酸の急速な代謝によって生じる問題を克服することがわかった。これは、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーが、α−リポ酸自体を遊離でき、したがって薬理活性成分の耐久性がα−リポ酸の直接投与によって得られるものよりも確実に長いか、又はα−リポ酸自体の薬理作用を模倣できるが、より強く且つ持続的な活性を示すためであり、このことは、下記に示す例からより明白となるであろう。更に、意外なことに、エナンチオマー形Rは誘導体であっても、対応するラセミ形より著しく毒性が低く、有利なことに薬理活性が高いことがわかったので、式Iの化合物はエナンチオマー形Rを有する。
【0016】
好ましい一実施形態において、これらの化合物の(R)−エナンチオマーは、式III
【化9】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C4脂肪族基であり、
nは、0である]
を持つ。
【0017】
下記に示す例から明らかとなるように、これらの化合物の(R)−エナンチオマーは、意外なことに、投与から3時間を経過しても非常に高い血漿中濃度を示し、また、α−リポ酸自体によって示されるバイオアベイラビリティよりも著しく高いバイオアベイラビリティを示す。
【0018】
前記の好ましい実施形態による(R)−エナンチオマーについては、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、α−LAの遊離を裏付けることができる酵素加水分解試験を行った(それぞれ、実施例30及び31)。
【0019】
特に図2〜3及び5〜9に関する実施例30及び31から明らかなように、本発明の(R)−エナンチオマーから遊離されたα−LAのバイオアベイラビリティ及びt1/2は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、(R)−α−LAの直接投与によって得られた値より著しく大きい。したがって、前記エナンチオマーは、インビボでα−LAを遊離でき且つバイオアベイラビリティ及び体内における耐久性を著しく増加させることができるので、α−LAのプロドラッグとして有利に利用できる。
【0020】
前記の好ましい実施形態によれば、好ましい(R)−エナンチオマーは、式
【化10】
を持つ。
【0021】
より好ましい(R)−エナンチオマーは、式
【化11】
を持つ。
【0022】
最も好ましい(R)−エナンチオマーは、式
【化12】
を持つ。
【0023】
実際、図1、3、4及び7〜9に関連する実施例29〜31において、このエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸の遊離量、遊離時間、バイオアベイラビリティ及び細胞生存率に関して、結果の最良の組合せを示している。
【0024】
別の好ましい実施形態において、化合物の(R)−エナンチオマーは、式III
【化13】
[式中、
R1が−(CH2)n−R2であって、
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、5若しくは6員脂肪族環、5員芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化14】
であってYがCH−(CH2)n−CH3若しくはN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが0〜6の整数であるか、
R2がフェニルであり且つnが2〜6の整数であるか、
R2がモルホリニルであり且つnが3〜6の整数であるか、
R2が−O−(CH2)n−CH3であり且つnが1〜6であるか、或いは
R1が直鎖、分岐鎖又は環状C5〜C10脂肪族基である]
を持つ。
【0025】
前記の別の好ましい実施形態による(R)−エナンチオマーについてもまた、インビトロ及びインビボのいずれにおいてもα−LAの遊離を裏付けることができる酵素加水分解試験を行った(それぞれ、実施例30及び31)。
【0026】
前記の別の好ましい実施形態によれば、好ましい(R)−エナンチオマーは下記式を持つ。
【化15】
【化16】
【0027】
最も好ましい(R)−エナンチオマーは下記式を持つ。
【化17】
【0028】
より好ましくは、前記の別の好ましい実施形態の(R)−エナンチオマーは式IIIを持ち、R1が直鎖、分岐鎖又は環状C7〜C10脂肪族基である。
【0029】
特に好ましいのは下記式
【化18】
を持つ(R)−エナンチオマーである。
【0030】
更なる好ましい実施形態において、前記化合物の(R)−エナンチオマーは式II
【化19】
[式中、R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が少なくとも1つの分岐がα位にある分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
を持つ。
【0031】
下記に示す例から明らかとなるように、これらの化合物の(R)−エナンチオマーは、意外なことに、投与から3時間を経過しても非常に高い血漿中濃度を示し、また、α−リポ酸自体によって示されるバイオアベイラビリティよりも著しく高いバイオアベイラビリティを示す。したがって、これらの(R)−エナンチオマーは有利なことに、α−リポ酸自体とは違って、放出制御製剤に適することがわかった。
【0032】
前記の更に好ましい実施形態によれば、好ましい(R)−エナンチオマーは、下記式を持つ。
【化20】
【0033】
更に好ましい実施形態において、前記化合物の(R)−エナンチオマーは、式IV
【化21】
[式中、Yは−CH−(CH2)n−CH3又は−N(CO)(CH2)n−CH3であり、nは、0〜3の整数である]
を持つ。
【0034】
前記の更に別の好ましい実施形態において、好ましい(R)−エナンチオマーは下記式を持つ。
【化22】
【0035】
別の態様において、本発明は、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーの製造方法であって、(R)−α−リポ酸と試薬とを、不活性ガス雰囲気下で室温において光を遮蔽して反応させるステップを含み、前記試薬がNH2−R1
【化23】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化24】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
Aは、ハロゲンであり、
nは、0〜6の整数である]
からなる群から選択される方法に関する。
【0036】
好ましくは、前記(R)−α−リポ酸及び試薬は等モル量で反応させる。
【0037】
更なる態様において、本発明は、医薬品として使用するための、式I
【化25】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化26】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化27】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーに関する。
【0038】
具体的には、本発明はまた、糖尿病、糖尿病性神経障害、肥満及びこれらに関連する病態の治療用医薬品を製造するための、式I
【化28】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化29】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖C1〜C3脂肪族基であり且つnが0〜2の整数であるか、或いは
R2が分岐鎖又は環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3であり且つnが0〜6の整数であるか、或いは
R2が、ヘテロ原子を任意選択で含む5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、又は1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化30】
であってnが0〜6の整数であり、且つYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が、少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用に関する。
【0039】
前記で定義した(R)−エナンチオマーは、二級アミドであり、これらのうち好ましい(R)−エナンチオマーは、下記式を持つ。
【化31】
【0040】
意外なことに、前記で定義した式Iの化合物の(R)−エナンチオマーは、対応するラセミ形よりも著しく低毒性で且つ有利なことに薬理活性が高い上、α−リポ酸の急速な代謝によって生じる問題を克服することがわかった。これは、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーが、α−リポ酸自体を遊離でき、したがって薬理活性成分の耐久性がα−リポ酸の直接投与によって得られるものよりも確実に長いか、又はα−リポ酸自体の薬理作用を模倣できるが、より強く且つ持続的な活性を示すためである。これに関連して、この第1の場合には、(R)−エナンチオマーはプロドラッグとして成功裏に使用できる。他方、第2の場合には、(R)−エナンチオマーは2型糖尿病、糖尿病性神経障害及び肥満の治療において(R)−α―LA自体よりも著しく強く且つ持続的な薬理活性を有することが示されたので、(R)−エナンチオマーは、加水分解性でないか又は加水分解性であったとしても過度に遅い場合には、(R)−α−LA類似薬として有利に使用できる。
【0041】
前記用途に特に好ましいのは、式I
【化32】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化33】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C3脂肪族基であり且つnが1であるか、或いは
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、−O−(CH2)n−CH3、5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化34】
であってYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが1〜6の整数であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
の化合物の(R)−エナンチオマーである。
【0042】
具体的には、R1が−(CH2)n−R2である場合には、本発明の(R)−エナンチオマーは二級アミドであり、nは常に少なくとも1を示すので、アミド窒素に対してα位に少なくとも1つのメチレン基が存在する。本発明者らは、意外なことに、自然界でピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体中のE2酵素のリジンのNH2残基とα−LAとの結合を加水分解する酵素であるリポアミダーゼが、これらの特殊な二級アミドを加水分解し、その結果として(R)−α−リポ酸が有利なことにゆっくりと遊離されることを発見した。実際に、これらの(R)−エナンチオマーは、意外なことに、投与から3時間を経過しても検出可能な血漿中濃度を示すと共に、(R)−α−リポ酸自体によって示されるバイオアベイラビリティよりも著しく高いバイオアベイラビリティを示し、このことは下記に示す例からより明白となるであろう。したがって、前記(R)−エナンチオマーは、インビボで(R)−α−LAを遊離でき且つバイオアベイラビリティ及び体内における耐久性を著しく増加させることができるので、(R)−α−LAのプロドラッグとして有利に使用できる。
【0043】
糖尿病、糖尿病性神経障害及びこれらに関連した病態の治療に関しては、(RS)−α−LA及びまた(R)−α−LAが、糖尿病誘発ラットへの投与時に血漿中グルコース濃度を低下させることが知られている。いくつかの実験から、(RS)−α−LAが、体内の重要なエネルギーホメオスタシス酵素であるAMPKを活性化することが示されている。細胞内AMP濃度が高く且つ細胞内ATP濃度が低い場合に、即ち、細胞がエネルギー欠乏状態である場合に、この酵素は活性化される。AMPKは、インスリン作用に対する筋細胞及び肝細胞の感受性を高めるので、α−LAの抗糖尿病作用は少なくとも部分的には、AMPK活性化能力に帰することができると仮定されている。
【0044】
理論によって拘束するつもりはないが、本発明の発明者らは、α−LAによるAMPKの活性化は、α−LAが筋細胞及び肝細胞中で誘発するNADHの枯渇の結果であると仮定する。この観点では、NADHがATP合成のエネルギーを供給する。本発明者らが実施した試験によれば、NADH濃度の減少は、2つのメカニズムで起こるであろう。第一に、α−LAがNADHを還元剤として利用して、α−DHLAに還元される。第二に、外来性α−LAが高濃度で、集団効果によってピルベートの酸化的脱炭酸反応を阻害し、下記反応:
【化35】
に従ってNAD+のNADHへの還元を引き起こす。
【0045】
高濃度の外来性α−LAの存在は、ピルベートの酸化的脱炭酸を引き起こす反応のプロセスの最後の反応であるこの反応を逆行させる。種々の細胞培養において、外来性α−LAがピルビン酸の酸化的脱炭酸プロセス全体を、低濃度では促進し、高濃度では減速することは既に実証した。外来性α−LAの効果を、種々の細胞モデルで、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体を構成する3つの酵素のそれぞれについて更に研究した。
【0046】
ヒト肝細胞(HepG32)を用いる以下の実施例32からわかるように、細胞内NADH濃度に対する(R)−α−LA及び本発明のエナンチオマーの効果を証明するのに適当な試験を考案した。また、図10及び11からわかるように、加水分解性が全くないか又は弱い本発明の(R)−エナンチオマーは、NADHに対して(R)−α−LAと同じ効果を、(R)−α−LAよりも著しく低い濃度で、したがって好都合なことに(R)−α−LA自体より高い安全域でもたらす。
【0047】
糖尿病性神経障害の薬理学モデルについて行った研究及び比較臨床試験から、α−リポ酸が、その抗酸化能によるものとみなされる保護作用を有することが示されている。同時に、同じ酸化還元活性を有するがα−リポ酸とは異なる構造を有する合成抗酸化薬を使用した場合には、期待された結果は得られていない。糖尿病患者の末梢神経系に存在する過剰のグルコースは、神経細胞蛋白質の非酵素的グリコシル化を引き起こすので、神経細胞蛋白質の機能特性を変える。更に、過剰のグルコースは一部分が、NADPHを還元剤として用いるアルドースレダクターゼ酵素によってソルビトールに還元される。次に、ソルビトールは、酸化剤としてNAD+を用いて、フルクトースに酸化される。前記の2つの酸化還元反応において生成されるフリーラジカルは、神経障害性損傷(neuropathic damage)の主因に含まれる。これらの考察に基づき、本発明の発明者らは、文献中の種々のデータの裏付けを得て、糖尿病性損傷に感受性の細胞(神経系、網膜、腎臓の細胞)においては、高血糖によってNADPHの枯渇とNADHの集積が誘発されると仮定する。その結果、酸化型グルタチオン/還元型グルタチオンのバランスに基づき、NADPHのアベイラビィティに応じて、抗酸化薬系の有効性が低下する。
【0048】
この状況で、α−LA及びその還元生成物α−DHLAは、NADPH/NADH比を再びバランスさせることによって、糖尿病性神経障害の典型的な酸化的損傷をなくすことができると仮定した。この観点では、α−LAは、NADHのみを還元剤として用いるリポアミドデヒドロゲナーゼによってα−DHLAに還元される。α−DHLAは酸化型グルタチオン及び他の酸化生成物を直接的に還元するため、NADPHの生理的濃度への回復に寄与することが示されている。
【0049】
NADH及びNADPHの濃度の分析方法の説明については、(R)−α−LA及び本発明の(R)−エナンチオマーがNADH及びNADPHの濃度を左右する能力を比較する実施例32を参照する。
【0050】
肥満に関しては、空腹メカニズムに対するα−LAの抑制効果が既に証明されている。この関連で、α−LAは、食欲抑制視床下部細胞のAMPK酵素及びAMPKの食欲刺激メカニズムを不活性化することがわかっている。食欲メカニズムに対するα−LA及び同様に(R)−α−LAの限られた効果は、その短い血漿内半減期及び低いバイオアベイラビリティによるので、本発明の式Iの(R)−エナンチオマー、好ましくは二級アミドは、肥満治療にも有利に使用できる。
【0051】
更なる態様において、本発明は、腫瘍治療において腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する医薬品を製造するための、式I
【化36】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化37】
であり、
R1は直鎖C6〜C12脂肪族基であるか、又は少なくとも1つのエチル分岐がα位に存在する分岐鎖C5〜C12脂肪族基であり、
YはO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用に関する。
【0052】
前記定義によって網羅される(R)−エナンチオマーは、長い直鎖又は特異的に分岐された脂肪鎖を有する二級アミド又は三級アミドである。
【0053】
これらの(R)−エナンチオマーのうち、以下のものが好ましい。
【化38】
【0054】
この点において、本発明者らは、意外にも、リポアミダーゼ、即ち、自然界でピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体中のE2酵素のリジンのNH2残基とα−LAとの間の結合を加水分解する酵素が、これらのアミドを加水分解せず、これらのアミドが本質的に変化せずに長時間体内に残ることを発見した。
【0055】
体内における前記アミドの長い耐久性は、これらのアミドがα−LAよりもβ−酸化を受けにくいことを示している。体内においてα−LAの血漿内半減期が短いのは主に、α−LAがβ位において酸化されるためであることを再認識すべきである。ラットに対する経口投与後の試験において見られるその主要代謝体は実際には3−ケトリポ酸であり、これがα−LAよりも高濃度で血中に回収される。下記の実施例29において報告するように、この実施形態の前記R−アミドエナンチオマーが、細胞生存率の試験において細胞毒性があることを発見した。これらのエナンチオマーが細胞中に増大し得るというこの発見は、酸化的ストレスに起因すると考えられる。α−リポ酸自体は、高濃度で存在する場合、細胞中で酸化的ストレスを引き起こし、その結果、数種類の腫瘍細胞ではアポトーシスが誘発される(Simbulaら、「Increased ROS generation and p53 activation in α−lipoic acid−induced apoptosis of hepatoma cells」、Apoptosis 2007、12:113〜123、及びChoiら、「Mechanism of α−lipoic acid−induced apoptosis of lungs cancer cells」、Ann.N.Y.Acad.Sci.2009、1171:149〜155)が、NIH 3T3線維芽細胞のような非形質転換細胞ではアポトーシスが誘発されないことが判明していることに留意すべきである。
【0056】
実際に、前記で定義した(R)−エナンチオマーは、酸化的ストレスを誘発し、したがって、腫瘍細胞においてα−リポ酸自体よりもかなり高い細胞毒性作用を示すことがわかった。
【0057】
本発明の以下の実施例は、非限定的な実例として示すものである。
[実施例]
【0058】
実施例1〜14及び19〜28の化合物の製造
電磁撹拌機を装着した二口丸底フラスコをアルゴン流下で火炎加熱し、次いで銀紙で覆って光への暴露を回避した。次に、(RS)−α−リポ酸(比較例2a、3a、10a)又は(R)−α−リポ酸(実施例1〜14及び19〜28)(1モル)のDMF溶液を調製した。この溶液を撹拌し、アミン(1モル)、続いてEDAC(1.1モル)を加えた。得られた混合物を、約2時間撹拌しながら、アルゴン雰囲気下で室温に保持した。
【0059】
次いで、使用するガラス器具を予め銀紙で覆って、溶液が光に暴露されないように気を付けながら、反応混合物を分液漏斗に移した。生理食塩水で洗浄後、水相をEt2O(4×10ml)で抽出し、プールした有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧蒸発させた。こうして得られた生成物を次に、暗色フラスコに移し、高真空ポンプ下に保持して(24時間)、DMFを除去した。次に、混合物をクロマトグラフィーカラム(SiO2、CHCl3:100%)で精製した。次いで、α−リポ酸誘導体を分離し、GC−MS分析並びに1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトル分析法によって特性決定した。
【0060】
実施例1
(R)−1−モルホリン−4−イル−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン−1−オン
【化39】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:3.66〜3.36(m,9H),3.19〜3.00(m,2H),2.48〜2.35(m,1H),2.27(t,J=7.3,2H),1.94〜1.79(m,1H),1.73〜1.34(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.2,66.7,66.4,56.2,45.8,41.7,40.0,38.3,34.5,32.6,28.9,24.7;IR(CCl4)νc=o 1657cm−1;GC−MS:275 m/z(M+・).
【0061】
実施例2
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチルアミド
【化40】
収率:80%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.70(s,1H),3.57〜3.48(m,1H),3.23〜3.05(m,4H),2.47〜2.37(m,1H),2.16〜1.77(m,3H),1.70〜1.20(m,10H),0.88(t,J=7.20,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,56.3,40.1,39.1,38.4,36.4,34.5,31.6,28.8,25.4,20.0,13.7;IR(CCl4)νN=H 3465cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:261 m/z(M+・).
【0062】
比較例2a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチルアミド
【化41】
収率:75%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.70(s,1H),3.57〜3.48(m,1H),3.23〜3.05(m,4H),2.47〜2.37(m,1H),2.16〜1.77(m,3H),1.70〜1.20(m,10H),0.88(t,J=7.20,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,56.3,40.1,39.1,38.4,36.4,34.5,31.6,28.8,25.4,20.0,13.7;IR(CCl4)νN=H 3465cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:261 m/z(M+・).
【0063】
実施例3
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−モルホリン−4−イル−プロピル)−アミド
【化42】
収率:60%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.27〜6.80(m,1H),6.9(bs,1H),3.8〜3.0(m,7H),2.8〜1.3(m,20H);IR(CHCl3):νN=H 3446,3317cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:332 m/z(M+・).
【0064】
比較例3a
(5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−モルホリン−4−イル−プロピル)−アミド
【化43】
収率:55%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.27〜6.80(m,1H),6.9(bs,1H),3.8〜3.0(m,7H),2.8〜1.3(m,20H);IR(CHCl3):νN=H 3446,3317cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:332 m/z(M+・).
【0065】
実施例4
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(4−モルホリン−4−イル−ブチル)−アミド
【化44】
収率:57%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.93(bs,1H),3.80〜3.05(m,7H),2.83〜1.23(m,22H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,66.9,58.4,56.5,53.7,40.3,39.3,38.5,36.6,34.7,28.9,27.5,25.5,24.0;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1660cm−1;GC−MS:346 m/z(M+・).
【0066】
実施例5
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−メチル−ブチル)−アミド
【化45】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.38(bs,1H),4.01〜3.90(m,1H),3.60〜3.50(sx,J=6.6,1H),3.20〜3.06(m,2H),2.50〜1.81(m,4H),1.78〜1.22(m,10H),1.08(d,J=6.6,3H),0.88(t,J= 7.3,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.9,56.4,44.9,40.2,39.1,38.4,36.6,34.6,28.8,25.4,21.0,19.2,13.9;IR(CHCl3):νN=H 3437cm−1,νC=O 1664cm−1 GC−MS:275 m/z(M+・).
【0067】
実施例6
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸メチルアミド
【化46】
収率:35%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.70(bs,1H),3.56〜3.51(m,1H),3.10〜3.07(m,2H),2.76(d,J=4.6,3H),2.49〜1.83(m,4H),1.75〜1.33(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:173.5,56.4,40.2,38.4,36.3,34.6,28.9,26.3,25.4;IR(CHCl3):νN=H 3464cm−1,νC=O 1666cm−1;GC−MS:219 m/z(M+・).
【0068】
実施例7
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸プロピルアミド
【化47】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.42(bs,1H),3.59〜3.49(m,1H),3.21〜3.01(m,4H),2.47〜2.37(m,1H),2.14(t,J= 7.3,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.70〜1.37(m,8H),0.88(t,J= 7.5,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.7,56.4,41.1,40.2,38.4,36.5,34.6,28.8,25.4,22.8,11.0;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:247 m/z(M+・).
【0069】
実施例8
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸イソプロピルアミド
【化48】
収率:30%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.35(bs,1H),4.11〜3.97(m,1H),3.59〜3.48(sx,J= 6.4,1H),3.20〜3.07(m,2H),2.48〜2.38(m,1H),2.11(t,J= 7.2,2H),1.97〜1.82(m,1H),1.74〜1.33(m,6H),1.11(d,J= 6.4,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.7,56.42,41.2,40.2,38.4,36.6,34.6,28.8,25.4,22.8;IR(CHCl3):νN=H 3439cm−1,νC=O 1658cm−1;GC−MS:247 m/z(M+・).
【0070】
実施例9
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−エトキシ−プロピル)−アミド
【化49】
収率:60%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.20〜6.90(m,1H),3.56〜2.58(m,9H),2.48〜2.30(m,1H),2.09(t,J=7.3,2H),1.92〜1.24(m,9H),1.13(t,J=7.0 ,3H);IR(CHCl3):νN=H 3450,3406 cm−1,νC=O 1660,1661cm−1;GC−MS:291 m/z(M+・).
【0071】
実施例10
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(2−アセチルアミノ−エチル)−アミド
【化50】
収率:55%
1H−NMR(CDCl3 CD3OD)300MHz:3.90〜3.81(m,1H),3.47〜2.91(m,6H),2.37〜2.20(m,1H),2.00(t,J=7.3,2H),1.90〜1.20(m,10H);13C−NMR(CDCl3 CD3OD)75MHz:174.5,172.0,56.1,39.9,39.0,38.9,38.1,35.7,34.2,28.5,25.0,22.2;IR(CHCl3):νN=H 3452cm−1,νC=O 1660cm−1;m.p.:144.6〜145.8°C;GC−MS:290 m/z(M+・).
【0072】
比較例10a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(2−アセチルアミノ−エチル)−アミド
【化51】
収率:50%
1H−NMR(CDCl3 CD3OD)300MHz:3.90〜3.81(m,1H),3.47〜2.91(m,6H),2.37〜2.20(m,1H),2.00(t,J=7.3,2H),1.90〜1.20(m,10H);13C−NMR(CDCl3 CD3OD)75MHz:174.5,172.0,56.1,39.9,39.0,38.9,38.1,35.7,34.2,28.5,25.0,22.2;IR(CHCl3):νN=H 3452cm−1,νC=O 1660cm−1;m.p.:144.6〜145.8°C;GC−MS:290 m/z(M+・).
【0073】
実施例11
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸フェネチル−アミド
【化52】
収率:32%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.32〜7.13(m,5H),5.52(bs,1H),3.56〜3.03(m,5H),2.82〜2.70(m,2H),2.47〜2.35(m,1H),2.10(t,J=7.2,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.68〜1.33(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.7,138.8,128.7,128.6,126.5,56.4,40.5,40.2,38.4,36.4,35.6,34.6,28.8,25.3;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:309 m/z(M+・).
【0074】
実施例12
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−フェニル−プロピル)−アミド
【化53】
収率:35%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.29〜7.12(m,5H),5.61(bs,1H),3.58〜3.47(m,1H),3.28〜3.00(m,4H),2.63(t,J= 7.6,2H),2.47〜2.36(m,1H),2.11(t,J= 7.3,2H),1.91〜1.38(m,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,141.6,128.4,128.2,125.9,56.3,40.1,39.1,38.4,36.4,34.5,33.2,31.1,28.8,25.3;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:323 m/z(M+・).
【0075】
実施例13
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(4−フェニル−ブチル)−アミド
【化54】
収率:30%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.28〜7.10(m,5H),5.65(bs,1H),3.60〜3.48(m,1H),3.29〜3.02(m,4H),2.60(t,J= 7.6,2H),2.43〜2.38(m,1H),2.12(t,J= 7.3,2H),1.91〜1.78(m,1H),1.69〜1.36(m,10H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,142.0,128.3,128.2,125.7,56.3,40.1,39.2,38.4,36.4,35.4,34.5,29.1,28.8,28.6,25.4;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:337 m/z(M+・).
【0076】
実施例14
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸シクロペンチルアミド
【化55】
収率:20%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.72(bs,1H),4.19〜4.06(m,1H),3.59〜3.47(m,1H),3.17〜3.00(m,2H),2.48〜2.33(m,1H),2.09(t,J=7.3,2H),1.99〜1.23(m,15H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.2,56.3,50.9,40.1,38.4,36.4,34.5,33.0,28.8,25.4,23.6;IR(CHCl3):νN−H 3441cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:273 m/z(M+・).
【0077】
実施例19
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸n−ペンチルアミド
【化56】
収率:30%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:.55(bs,1H),3.63〜3.47(m,1H),3.27〜3.06(m,4H),2.52〜2.36(m,1H),2.15(t,J=7.2,2H),1.97〜1.73(m,1H),1.71〜1.20(m,12H),0.86(t,J=6.2,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,56.2,40.0,39.2,38.2,36.3,34.3,29.1,28.8,28.6,25.2,22.1,13.7;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1660cm−1;GC−MS:275 m/z(M+・).
【0078】
実施例20
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸n−ヘプチルアミド
【化57】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.61(bs,1H),3.61〜3.48(m,1H),3.26〜3.04(m,4H),2.51〜2.35(m,1H),2.14(t,J=7.3,2H),1.96〜1.72(m,1H),1.70〜1.15(m,16H),0.85(t,J=6.1,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,56.4,40.2,39.5,38.5,36.6,34.6,31.7,29.7,29.0,28.9,26.9,25.4,22.6,14.0;IR(CHCl3):νN=H 3446cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:303 m/z(M+・).
【0079】
実施例21
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ペンタン−3−イルアミド
【化58】
収率:31%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.40〜5.32(m,1H),3.81〜3.66(m,1H),3.57〜3.46(m,1H),3.02〜3.01(m,2H),2.49− 2.35−(m,1H),2.15(t,J=7.4,2H),1.93〜1.81(m,1H),1.75〜1.22(m,10H),(0.85,t,J=7.4,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.3,56.3,51.7,40.1,38.4,36.7,34.6,28.8,27.4,25.5,10.2;IR(CHCl3):νN=H 3433cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:275 m/z(M+・).
【0080】
実施例22
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−ベンジルアミド
【化59】
収率:32%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.33〜7.23(m,5H),5.97(bs,1H),3.02(d,J=5.9,2H),3.57〜3.48(m,1H),3.19〜3.03(m,2H),2.47〜2.36(m,1H),2.19(t,J=7.3,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.74〜1.35(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.5,138.3,128.6,127.7,127.4,56.3,43.5,40.1,38.4,36.3,34.5,28.8,25.3;IR(CHCl3):νN=H 3444cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:295 m/z(M+・).
【0081】
実施例23
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジル)アミド
【化60】
収率:51%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.88〜6.70(m,3H),6.05〜5.91(m,2H),4.29(d,J=5.5,2H),3.85(s,3H),3.63〜3.47(m,1H),3.22〜3.04(m,2H),2.50〜2.37(m,1H),2.18(t,J=7.7,2H),1.97〜1.80(m,1H),1.77〜1.33(m,7H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,145.9,145.7,131.3,119.3,114.0,110.6,56.2,55.8,43.0,40.0,38.3,36.2,34.4,28.7,25.2;IR(CHCl3):νN=H 3545cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:341 m/z(M+・).
【0082】
実施例24
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(シクロプロピルメチル)アミド
【化61】
収率:42%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.77 (bs,1H),3.63〜3.45(m,1H),3.24〜2.96(m,4H),2.52〜2.34(m,1H),2.16(t,J=7.3,2H),1.93〜1.82(m,1H),1.75〜1.33(m,6H),0.98〜0.84(m,1H),0.53〜0.41(m,2 H),0.21〜0.10(m,2H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,56.2,44.1,40.0,38.3,36.3,34.4,28.7,25.3,10.5,3.2;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1660cm−1;GC−MS:259 m/z(M+・).
【0083】
実施例25
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(ブテン−3−イル)アミド
【化62】
収率:45%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.82〜5.62(m,2H),5.12〜4.98(m,2H),3.60〜3.48(m,1H),3.35〜3.25(m,2H),3.18〜3.01(m,2H),2.49〜2.34(m,1H),2.25〜2.18(m,2H),2.13(t,J=7.3,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.72〜1.33(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.5,135.1,116.9,56.2,40.0,38.3,38.2,36.3,34.4,33.6,28.7,25.2;IR(CHCl3):νN=H 3446cm−1,νC=C 2252cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:259 m/z(M+・).
【0084】
実施例26
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸1−(4−アセチルピペラジン−1−イル)アミド
【化63】
収率:37%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:3.66〜3.40(m,9H),3.21〜3.00(m,2H),2.49〜2.33(m,1H),2.31(t,J=7.7,2H),2.07(s,3H),1.94〜1.79(m,1H),1.74〜1.34(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.3,169.1,56.2,45.8,44.9,41.3,41.2,40.0,38.3,34.5,32.7,28.8,24.6,21.2;IR(CHCl3):νC=O 1637cm−1;GC−MS:316 m/z(M+・).
【0085】
実施例27
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(3−アセトキシ−4−メトキシベンジル)アミド
【化64】
収率:70%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.12〜7.07(m,1H),6.94〜6.88(m,2H),5.89(bs,1H),4.31(d,J=5.9,2H),3.80(s,3H),3.62〜3.48(m,1H),3.22〜3.04(m,2H),2.53〜2.37(m,1H),2.28(s,3H),2.17(t,J=7.3,2H),1.97〜1.31(m,7H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,168.9,150.3,139.5,130.8,136.3,122.3,112.3,56.2,55.8,42.6,40.0,38.3,36.2,34.4,28.7,25.2,20.5;IR(CHCl3):νN=H 3444cm−1,νC=O 1763cm−1,νC=O 1668cm−1;GC−MS:383 m/z(M+・).
【0086】
実施例28
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸1−(4−メチルピペリジン−1−イル)アミド
【化65】
収率:60%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:4.58〜4.52(m,1H),3.81〜3.76(m,1H),3.61〜3.52(m,1H),3.21〜3.05(m,2H),3.01〜2.91(m,1H),2.55〜2.39(m,2H),2.31(t,J=7.5,2H),1.95〜1.84(m,1H),1.78〜1.38(m,9H),1.11〜0.99(m,2H),0.93(d,J=6.4,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:170.9,56.4,45.9,41.9,40.2,38.4,34.7,34.6,33.7,33.1,31.0,29.1,25.0,21.7;IR(CHCl3):νC=O 1643cm−1;GC−MS:287 m/z(M+・).
【0087】
実施例15〜18の化合物の製造
電磁撹拌機を装着した二口丸底フラスコをアルゴン流下で火炎加熱し、次いで銀紙で覆って光への暴露を回避した。次に、(RS)−α−リポ酸(比較例15a、16a)又は(R)−α−リポ酸(実施例15〜18)(1モル)のDMF溶液を調製した。この溶液を撹拌後、K2CO3(1.15モル)を加えた。得られた混合物を、約2時間撹拌しながら、アルゴン雰囲気下で室温に保持した。この時間の後、ハロゲン化物(1.2モル)を加えた。TLC分析(SiO2、MeOH/CHCl3:5/95、Et2O/ヘキサン:1/1)が出発生成物の消失(GC−MS分析によっても確認)を示すまで、反応混合物を撹拌しながら、室温に放置した。
【0088】
次いで、使用するガラス器具を予め銀紙で覆って、溶液が光に暴露されないように気を付けながら、反応混合物を分液漏斗に移した。生理食塩水で洗浄後、水相をEt2O(4×10ml)で抽出し、プールした有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧蒸発させた。こうして得られた生成物を次に、暗色フラスコに移し、高真空吸引ポンプ下に保持して(24時間)、DMFを除去した。次に、混合物をクロマトグラフィーカラム(SiO2、Et2O/n−ヘキサン:1/9)で精製した。次いで、α―リポ酸誘導体を分離し、GC−MS分析並びに1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトル分析法によって特性決定した。
【0089】
実施例15
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸2,2−ジメチル−プロピオニルオキシメチルエステル
【化66】
収率:45%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.73(s,2H),3.60〜3.47(m,1H),3.21〜3.03(m,2H),2.50〜2.37(m,1H),2.35(t,J=7.3,2H),1.95〜1.81(m,1H),1.74〜1.38(m,6H),1.18(s,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:176.9,171.9,79.2,50.0,40.1,38.9,38.3,34.4,33.5,28.4,26.7,24.2;IR(CCl4)νC=O 1757,1749cm−1;GC−MS:320 m/z(M+・).
【0090】
比較例15a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸2,2−ジメチル−プロピオニルオキシメチルエステル
【化67】
収率:73%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.73(s,2H),3.59〜3.50(m,1H),3.20〜3.05(m,2H),2.49〜2.33(m,3H),1.94〜1.83(m,1H),1.68〜1.63(m,4H),1.51〜1.41(m,2H),1.94(s,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.7,172.0,79.3,56.2,40.1,38.7,38.4,34.5,33.7,28.5,26.8,24.3;IR(CCl4)νC=O 1746cm−1;GC−MS:320 m/z(M+・).
【0091】
実施例16
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチリルオキシメチルエステル
【化68】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.72(s,2H),3.62〜3.47(m,1H),3.23〜3.03(m,2H),2.50〜2.28(m,5H),1.95〜1.80(m,1H),1.73〜1.34(m,8H),0.93(t,J=7.3,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.1,171.9,78.9,56.1,40.0,38.3,35.6,34.3,33.5,28.4,24.1,17.9,13.3;IR(CCl4)νC=O 1751cm−1;GC−MS:306 m/z(M+).
【0092】
比較例16a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチリルオキシメチルエステル
【化69】
収率:63%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.69(s,2H),3.55〜3.46(m,1H),3.17〜3.01(m,2H),2.46〜2.26(m,5H),1.91〜1.79(m,1H),1.68〜1.38(m,8H),0.89(t,J=7.4,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.0,171.9,78.8,56.1,40.0,38.3,35.6,34.3,33.5,28.4,24.1,17.9,13.4;IR(CCl4)νC=O 1752cm−1;GC−MS:306 m/z(M+).
【0093】
実施例17
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸1−アセトキシ−エチルエステル
【化70】
収率:35%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.81(q,J=5.4,1H),3.59〜3.47(m,1H),3.20〜3.02(m,2H),2.50〜2.36(m,1H),2.29(t,J=7.2,2H),2.03(s,3H),1.94〜1.80(m,1H),1.74〜1.55(m,6H),1.43(d,J=5.4,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.3,168.8,88.4,56.2,40.1,38.4,34.5,33.7,28.5,24.2,20.8,19.5;IR(CHCl3):νC=O 1751,1751 cm−1;GC−MS:292 m/z(M+・).
【0094】
実施例18
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸2,2−ジメチル−プロピオニルオキシエチルエステル
【化71】
収率:42%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.80(q,J=5.5,1H),3.60〜3.48(m,1H),3.22〜3.03(m,2H),2.50〜2.38(m,1H),2.31(t,J=7.3,2H),1.97〜1.83(m,1H),1.75〜1.46(m,6H),1.44(d,J=5.5,3H),1.18(s,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:176.4,171.4,88.5,56.2,40.2,38.6,38.5. 34.5,33.8,28.5,26.8,24.4,19.4;IR(CHCl3):νC=O 1749cm−1,νC=O 1732cm−1;GC−MS:336 m/z(M+・).
【0095】
実施例29
細胞生存率の評価
細胞生存率に対する効果を評価するために、合成した化合物の用量依存的な濃度の研究をヒト肝細胞癌細胞(HepG2細胞)について行い、対照標準と定義したα−リポ酸の、ヒト肝細胞癌細胞(HepG2細胞)に対する効果と比較した。
【0096】
光学顕微鏡による分析により、脂質小胞の全ての形態学的変化及び集積の測定、並びに細胞増殖又は停止の評価が可能となった。
【0097】
生存細胞の細胞内ATPとの反応に起因する光の生成に基づくルミノメトリックアッセイ(luminometric assay)(ATPlite、パーキンエルマー(Perkin Elmer)社)により、生存指数(viability index)を指標とした化合物の分類が可能となった。
方法
【0098】
・HepG2細胞を滅菌96ウェルプレート中に、培地(10%ウシ胎児血清(FBS)を補充し、2mMグルタミン、200U/mlペニシリン及び200U/mlストレプトマイシンで強化したRPMI)100μl中細胞5×103個/ウェルの濃度で播種した。
【0099】
・こうして得られたプレートを、37℃でCO25%においてインキュベートした。
【0100】
・α−リポ酸を含む本発明の化合物を100mMの初期濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させ、次いで5、10、100、500及び1000μMの濃度に達するまで、培地中で直接希釈した。
【0101】
・播種から16〜24時間後に、培地を、特定濃度の本発明の化合物及び対応する濃度の、対照としてのDMSOを含むRPMI 100μl+10%FBSに更新した。
【0102】
・適当な濃度の本発明の化合物を含む培地を24時間毎に更新し、2つの処理後、研究中の化合物の効果について定性及び定量分析を行った。光学顕微鏡を用いて、付着性細胞の数及び形態(データは示さず)の変化を観察し、パーキンエルマー社によって販売されているATPliteキット中の試薬及び記載された方法を用いることによって生存率を評価した。
【0103】
結果
α―LA、及び、ラセミ形(RS)(比較例2a及び10a)又はエナンチオマー形(R)(実施例2及び10)の本発明の2種の化合物500μMで48時間処理した後に得られた結果を、対照(DMSO 0.5%)と比較した細胞生存率として、図1に示す(図1において、*は、シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)社から購入した(RS)−α―LA及び(R)−α−LAを意味する)。
【0104】
試験した全ての化合物について、(R)−エナンチオマーが、ラセミ形RSよりも大きい細胞生存指数に関与することが観察された。これにより、α−リポ酸自体と同様に、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーが、対応するラセミ形よりも著しく低毒性であり、且つ薬理学的に有利なことにバイオアベイラビリティが高いことを確認できた。
【0105】
図4は、本発明のエナンチオマーによる処理に関する細胞生存率の結果を、1mM濃度の(R)−α―LA及び1mM濃度のリポアミド(シグマ−アルドリッチ社製のリポA.(lipoA.))による処理後に得られた結果と比較して、示す。この濃度を参照パラメーターとして選択したのは、これらの条件下で、(R)−α−LAが対照(1% DMSO)と比較して50%の細胞生存率を示したためである。細胞生存率は、(R)−α−LA投与に対する、本発明の化合物による処理後の細胞内ATPと相関する発光の「誘発倍率」(ユニット値)として示す。
【0106】
対照とは違って、HepG2細胞が、培養プレート全てにコロニー形成できず、60〜70%のコンフルエンス(confluence)に達した(データは示さず)ことから、(R)−α−LAによる処理は細胞増殖を停止させた。
【0107】
生存率及び細胞増殖データを元にして、分析中のエナンチオマーを以下に細分できた。
【0108】
a)増殖性:均等な多層増殖、脂質小胞の生理的集積及び浮遊液中の細胞の非存在と共に、(R)−α−LAより大きい生存指数を示すエナンチオマー。この群に属するエナンチオマーは、図4に従って数値の高いものから順に列挙すると、実施例18、17、16、15のエナンチオマーである。
【0109】
b)細胞増殖抑制性:(R)−α−LAよりも低い生存指数を示すが、同時に強力な細胞増殖停止誘発因子であるエナンチオマー。この群に属するエナンチオマーは、図4に従って数値の高いものから順に列挙すると、実施例2、25、23、24、14、5、7、8、12、13、リポA.(即ち、比較化合物としてのリポアミド)、実施例27、11、6、22、19のエナンチオマーである。
【0110】
c)細胞毒性:細胞死発生の明らかな証拠である浮遊液中細胞数を非常に多くするエナンチオマー。この群に属するエナンチオマーは、図4に従って数値の高いものから順に列挙すると、実施例20、21、26、1、28のエナンチオマーである。
【0111】
実施例30
インビトロでの酵素加水分解の研究
実施例29の結果からの知見を考慮して、どの合成誘導体がα−リポ酸前駆体、即ち、加水分解によってα−リポ酸を遊離できるプロドラッグとして挙動するかを更に明確にする目的で、インビトロ酵素加水分解アッセイを行った。これとは異なり、加水分解を受けなかった誘導体を、潜在的なα−LA類似体とみなした。
【0112】
本発明の化合物の加水分解を促進できる酵素を含む、マウス肝臓から抽出した蛋白質プールを用いて、薬物動態の研究において前述した加水分解活性をインビトロで再び導入した。
【0113】
方法
・野生型マウスの肝臓を取り出し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄することによって過剰の血液を取り除いた。
【0114】
・前記肝臓を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(プロテアーゼインヒビターカクテル(Protease Inhibitor Cocktail)、シグマアルドリッチ社)で強化された、充分な量の溶解バッファー(50mM Tris HCl(pH7.5〜8.0)、150mM NaCl、5mM EGTA(pH7.5〜8.0)、50mM NaF(pH8.0)、10%(v/v)グリセロール、1.5mM MgCl2、1% トリトン(Triton)X−100)を含むホモジナイザー中に移した。均質溶液を得るために、乳棒で15〜20回衝撃を与えた。
【0115】
・混合物全体を、撹拌しながら+4℃に1時間放置し、14000rpmで遠心分離後、抽出された蛋白質を含む上清を回収した。
【0116】
・抽出された蛋白質の量を、ブラッドフォード(Bradford)アッセイを用いて測定した。
【0117】
・酵素加水分解反応を実施した:合成化合物50μg(DMSO中に溶解)を加水分解させるための蛋白質抽出物1mg;25℃において撹拌しながら1、3又は24時間。
【0118】
・(1種又は複数の)消化産物を、薄層クロマトグラフィーを用いて検出した:移動相(60:40:1の酢酸エチル、n−ヘキサン、酢酸);シリカプレート(シグマアルドリッチ社);リンモリブデン酸試薬。
【0119】
・消化産物を分析し、(R)−α−LA(シグマアルドリッチ社)及び本発明の非加水分解化合物と比較した。
【0120】
結果
前述した、薄層クロマトグラフィーの実験条件下で、本発明の合成エナンチオマーは、(R)−α−リポ酸とは異なる「先端比(Ratio frontis)」(Rf)を有するものと確認された。したがって、(R)−α−リポ酸を加水分解物として検出すること、及び(R)−α−リポ酸を本発明のエナンチオマーと差別化することが可能であった。
【0121】
図2及び3は、クロマトグラフィーのラン後に得られた酵素消化産物の画像を示している。分析中のエナンチオマーは、酵素加水分解効率、ひいては(R)−α−LAの遊離量が異なることが判明した。
【0122】
特に、図2は、式IIのエナンチオマー、具体的には式IIに含まれる実施例15〜18のエナンチオマーに関連し、これら4種のエナンチオマー全てに関する1時間後及び3時間後の消化の結果を示している。実施例15及び16のエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸自体のrfに対応するRf=0.7の当該ステインの強度によって観察されるように、1時間後に完全に加水分解されていた。これとは異なり、実施例17及び18のエナンチオマーは、1時間後に部分加水分解を示した。したがって、これら2種のエナンチオマーは実施例15及び16のエナンチオマーよりゆっくり(R)−α−リポ酸を遊離したことが示される。3時間後、実施例17及び18のエナンチオマーも、完全に加水分解された。
【0123】
これらの結果から、実施例15、16、17及び18のエナンチオマーが、(R)−α−リポ酸を遊離できるプロドラッグとして成功裏に使用できること考えることができた。
【0124】
図3は、前記実施例で合成されたエナンチオマーに関連し、25℃における24時間後の消化の結果を示している。この場合でも、ステインの強度は、(R)−α−リポ酸及び当該エナンチオマーの検出量と正比例している。
【0125】
図3のエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸の遊離能に基づいて、したがってそれらを遊離能の高いものから順に列挙したことを留意すべきである。特に、実施例2、23、27、24、25及び22のエナンチオマーは、24間後に完全には加水分解されていなくても、非常に多量の(R)−α−リポ酸を遊離することが判明した。したがって、これらのエナンチオマーは、有利なことに、徐放製剤中にも(R)−α−リポ酸のプロドラッグとして使用できるであろう。
【0126】
実施例7、12、13、11、14、8、19及び6は、24時間後に、部分加水分解を、結果として(R)−α−リポ酸の遊離の減少を示した。したがって、これらのエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸のプロドラッグ又は類似体として成功裏に使用できるであろう。
【0127】
実施例5、20、21、1及び28は、24時間後には本質的に依然として変化していなかった。したがって、これらのエナンチオマーは、好都合なことに(R)−α−リポ酸の類似体として使用できるであろう。実施例29の結果を考慮すると、実施例20、21、1及び28のエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸の類似体として腫瘍治療に非常に顕著な用途を見出すことができることに留意すべきである。
【0128】
実施例31
薬物動態の研究
合成した一部の化合物(比較例1a、実施例2、比較例2a、実施例3、比較例3a、実施例10、比較例15a、比較例16a及び実施例24)のバイオアベイラビリティを、ラットにおいて単回経口投与(48.5μmol/kg)後に研究し、対照(R)−又は(RS)−α―LAと比較した。
【0129】
方法
各処理は、化合物当たり雄ラット(スプラーグドーリー(Sprague−Dawley)SDラット)6匹の群について実施した。定時に採血を行い、血漿中α−LA(図5、7、9)及び投与された残留化合物(図6、8)の濃度をHPLC−MSによって測定した。
【0130】
結果
血漿中α−LA濃度の測定を、比較例1a、2a、15a、16a(図5)、実施例2、実施例3、比較例3a及び実施例10(図7)、並びに実施例2及び24(図9)の化合物について行った。分析は、化合物又は対照の経口投与後の、図示した時間(時間)に行った。この一連の例では、遊離α−LAの最大血漿濃度もまた、30分にあることがわかった。実施例2の(R)−エナンチオマー(図7)は、対応するラセミ化合物(図5)より直線的な加水分解プロフィールを示した。非加水分解化合物の量(<<2ng/ml)に関する図6及び8に示したデータから、実施例2、比較例2a及び実施例10は、α−リポ酸プロドラッグに分類された。最後に、実施例3の(R)−エナンチオマー及び比較例3aの対応するラセミ化合物については、採血時間のいずれについても、遊離α−リポ酸も化合物自体も検出されなかった。
【0131】
薬物動態を更に明確にするために、2種の化合物(実施例2及び24)の経口投与後の血漿中(R)−α−LA濃度の更なる分析を、より短い処理時間(5〜30分)で行った(図9)。実施例2の(R)−エナンチオマーの投与から30分後に、血漿中にかなりの濃度のα−リポ酸が観察されることが確認された。これに対して、実施例24の(R)−エナンチオマー(及び対照として使用した外来性α−リポ酸)については、血漿中(R)−α−LA血漿のピークの検出に、処理はわずか5分で充分であった。
【0132】
実施例32
α−LA及び本発明の化合物の存在下におけるNADH及びNADPH濃度の変動の研究
高血糖状態ではα−LAが肝細胞においてAMPKの活性化を誘発することが知られているが、この生化学プロセスに関与する分子レベルのメカニズムは未だ不明である。本明細書中で予想したように、本発明の発明者らは、α−LAによるAMPKの活性化が、酸化還元プロセスにおけるα−LA及び/又はその類似誘導体の干渉による、細胞中に存在するNADH及びNADHPの量の変化の結果であるという仮説を提起した。この仮説を立証するために、次第に増加する濃度の分析中の化合物の存在下で、総NAD(P)に対するNAD(P)Hの細胞内濃度の変動を分析できる市販キット(Valter Occhiena)を使用した(総NAD=NADH+NAD+、総NADP=NADPH+NADP+)。
【0133】
方法
・HepG2細胞を滅菌プレート(直径60mm)中に、培地(10%ウシ胎児血清(FBS)を補充し、2mMグルタミン、200U/mlペニシリン及び200U/mlストレプトマイシンで強化したRPMI)4ml中細胞2×105個/プレートの濃度で播種した。
【0134】
・プレートを、37℃でCO25%においてインキュベートした。
【0135】
・本発明の(R)−エナンチオマー及び(R)−α−リポ酸を、100mMの初期濃度でDMSO中に溶解させ、次いで5、10、100及び500μMの濃度に達するまで、培地中で直接希釈した。
【0136】
・播種から16〜24時間後に、培地を、特定濃度の分析中の化合物及び対照としての対応する濃度のDMSOを含むRPMI+10%FBSに更新した。
【0137】
・特定濃度の分析中の化合物を含む培地を24時間毎に更新し、3つの処理(本発明の化合物への72時間の暴露に相当する)の後、細胞を冷PBS中に回収した。
【0138】
・それぞれのサンプルの数個のアリコートを用意した(細胞2×105個/アリコート)。
【0139】
・分光光度アッセイを用いて、個別の市販キット(Valter Occhiena)に添付されている使用説明書にしたがって、各アリコートについて総NADH/NAD比及び総NADPH/NADP比を評価した。
【0140】
結果
図10は、種々の化合物((R)−α−LA、比較例3a並びに実施例5、11、7及び8の化合物)での処理後に得られたNADHの量(総NADH/NAD比として評価)に関する結果を、参照対照について得られた値に対する誘発倍率として示したものを図示している。
【0141】
化合物の使用濃度が異なると、NADHの量が異なることがわかった。
【0142】
低濃度の(R)―α−LA(5及び10μM)においては、NADHの量は対照サンプル中で検出される量よりも多かった。これは、これらの条件下では、(R)−α−LAがNAD+からNADHへの還元反応に補因子として関与するという事実を示している。
【0143】
予想通り、濃度を増加させると(100及び500μM)、(R)−α−LAはNADH濃度を減少させた。この効果は、α−LAがNADHを還元剤として用いてα−DHLAに還元され、且つα−LAが集団効果によってリポアミドデヒドロゲナーゼによる反応の逆行を引き起こすために、ピルビン酸の酸化的脱炭酸プロセスを阻害すると仮定することによって、説明できる。生理的条件下では、リポアミドデヒドロゲナーゼは、NAD+を酸化剤として用いて、α−DHLAをα−LAに酸化する。過剰のα−LAの存在下では、この反応は逆行する。次第に増加する濃度の実施例5、11、7及び8の(R)−エナンチオマーで処理すると、(R)−α−LAで得られたのと同様なNADHパターンが示された。しかし、この場合には、高濃度の本発明のエナンチオマーによって起きるNADHの還元は、更に極端であった。
【0144】
比較例3aのラセミ化合物への暴露は、5μMの濃度であっても、対照よりも低いNADH濃度を生じた。
【0145】
図11では、(R)−α−リポ酸並びに比較例3a及び実施例8での処理後のNADPHの量に関する結果を、この場合も、対照と比較した誘発倍率として示す。分析中の化合物はまた、用量依存的にNADPH濃度に影響を与え、NADP+/NADPH酸化還元プロセスにおけるそれらの改善が明らかにされた。
【0146】
前記の詳細な説明及び前記例から、本発明の(R)−エナンチオマーによって達成される利点が明らかである。特に、対応するラセミ形よりも低毒性で且つ薬理活性が高い前記(R)−エナンチオマーは(R)−リポ酸を遊離でき、α−リポ酸自体の直接投与によって得られるよりも大きいバイオアベイラビリティを確実にするか、又はα−リポ酸の薬理作用を模倣できるが、より強く且つ持続的な活性を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、改良された薬剤学的特性及びα−リポ酸自体より高いバイオアベイラビリティを有するα−リポ酸(α−LA)の新規誘導体に関する。特に、前記誘導体は、糖尿病、糖尿病性神経障害及び肥満の治療に用途がある。
【0002】
[従来技術]
α−リポ酸は、ピルビン酸、α−ケトグルタル酸、分岐鎖α−ケト酸及びグリシンなどのα−ケト酸のいくつかの酸化的脱炭酸反応の補因子である。
【0003】
R−エナンチオマーの形態のα−リポ酸(α−LA又は1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸又は1,2−ジチオラン−3−吉草酸若しくはチオクト酸)(式A)は、α−ケト酸の酸化的脱炭酸酵素である多酵素複合体(α−ケト酸デヒドロゲナーゼ)に結合され、この多酵素複合体がα−LA(式A)をα−ジヒドロリポ酸(α−DHLA)(式B)に酵素的に還元し、α−DHLAを再び酵素的にα−LAへと再酸化することによって、酸化−還元作用を行う。
【化1】
【0004】
α−リポ酸はアセチル残基の輸送体(transporter)としても作用し、実際には、α−リポ酸は、ピルビン酸の酸化的脱炭酸によって形成されたアセチル基を、コエンザイムAに移動させる。補因子としてα−LAを必要とするこの反応は、以下のように図示できる。
【化2】
【0005】
この反応スキームは、酸化剤がNAD+であること、及び反応によって1当量のNADHが生成されることを示している。この反応はミトコンドリア中で起こり、クレブス回路(Krebs Cycle)反応の開始に不可欠である。
【0006】
α―LAは、特にラセミ形のものが、栄養補助食品として広く用いられており、一部の国では糖尿病性多発神経障害の治療薬として用いられている。α−リポ酸の薬理作用の基本原理は依然として不明であるが、この意味では、いくつかの仮説が提起されている。特に、α−リポ酸が神経障害性プロセスにおいて保護効果を有するのは、α−リポ酸が、グルコースのソルビトールへの還元及びソルビトールのフルクトースへの再酸化の結果として糖尿病患者の末梢神経系に発生したフリーラジカルによって引き起こされる障害を少なくとも部分的に除くことができる酸化還元特性を有するためと仮定されている。最近になって、2型糖尿病の薬理学モデルで高用量のα−LA(ラットにおいて30mg/kg)を用いることによって、α−リポ酸が直接的な抗糖尿病作用も有すること、実際には、α−リポ酸が糖尿病ラットにおいて血糖を低下させ、筋細胞へのグルコースの移行を増加させ、肝細胞におけるグルコースの合成を抑制することが示された。
【0007】
しかし、薬物としてのα−LAの使用可能性は、その好ましくない薬物動態特性によって制限されている。この点において、α−LAは、ヒトでは血漿中半減期(t1/2)が28分であり、経口投与後のバイオアベイラビリティが30%未満である。これらの好ましくない薬物動態特性の原因として、α−リポ酸が酸化的方法によって(主にβ−酸化によって)代謝され易いことが考えられる。α−LAのR−エナンチオマーは、対応するラセミ形よりも低毒性で、薬理活性が高いが、それでもなお、ラセミ形α−LAと同じ好ましくない薬物動態特性を示す。したがって、本発明の目的は、バイオアベイラビリティの改善により、α−リポ酸の直接投与によって得られるよりも多い量で体内にとどまり、同時により強く且つ持続的な活性を示すような形で、α−リポ酸を提供することである。
【0008】
[発明の概要]
このような目的は、式I
【化3】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化4】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化5】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーによって達成された。
【0009】
前記エナンチオマーは、α−リポ酸を遊離でき、したがって、薬理活性成分の体内における耐久性がα−リポ酸の直接投与によって得られるものよりも確実に大きいか、又はα−リポ酸自体の同じ薬理作用を模倣できるが、はるかに強く且つ持続的な活性を示す。
【0010】
別の態様において、本発明は、糖尿病、糖尿病性神経障害、肥満及びこれらに関連する病態の治療への前記エナンチオマーの使用に関する。
【0011】
更に別の態様において、本発明は、腫瘍治療における腫瘍細胞のアポトーシスの誘発への前記エナンチオマーの使用に関する。
【0012】
[図面の簡単な説明]
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、非限定的な実例として記載した実施形態、及び添付した図から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】濃度500μMの本発明の化合物での処理後に測定された細胞生存率(cell viability)(%で表す)を示す。
【図2】本発明の(R)−エナンチオマーの一部に関するインビトロ酵素加水分解アッセイの、1時間及び3時間後の結果を示す。
【図3】本発明の(R)−エナンチオマーの一部に関するインビトロ酵素加水分解アッセイの、24時間後の結果を示す。
【図4】濃度1mMの本発明の化合物での処理後に測定された、(R)−α−リポ酸によって誘発された細胞生存率に対する誘発倍率として表した細胞生存率を示す。
【図5】本発明の一部の化合物での処理後に血漿中α−リポ酸の量に関してインビボで得られた結果を示す。
【図6】インビボで経時的に測定された一部の化合物の量を示す。
【図7】本発明の種々の化合物での処理後に血漿中α−リポ酸の量に関してインビボで得られた結果を示す。
【図8】インビボで経時的に測定された一部の化合物の量を示す。
【図9】本発明の2つのエナンチオマーでの処理後に血漿中α−リポ酸の量に関してインビボで得られた結果を示す。
【図10】本発明の一部の化合物を種々の濃度で用いて測定された、対照(DMSO)と比較して「誘発倍率」として表したNADH量を示す。
【図11】本発明の一部の化合物を種々の濃度で用いて測定された、対照(DMSO)と比較して「誘発倍率」として表したNADPH量を示す。
【0014】
[発明の詳細な説明]
したがって、本発明は、(R)−α−LAを遊離できるか又はその薬理作用を模倣できる(R)−α−LA誘導体に関する。特に、本発明は、式I
【化6】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化7】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化8】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーに関する。
【0015】
意外なことに、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーは、α−リポ酸の急速な代謝によって生じる問題を克服することがわかった。これは、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーが、α−リポ酸自体を遊離でき、したがって薬理活性成分の耐久性がα−リポ酸の直接投与によって得られるものよりも確実に長いか、又はα−リポ酸自体の薬理作用を模倣できるが、より強く且つ持続的な活性を示すためであり、このことは、下記に示す例からより明白となるであろう。更に、意外なことに、エナンチオマー形Rは誘導体であっても、対応するラセミ形より著しく毒性が低く、有利なことに薬理活性が高いことがわかったので、式Iの化合物はエナンチオマー形Rを有する。
【0016】
好ましい一実施形態において、これらの化合物の(R)−エナンチオマーは、式III
【化9】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C4脂肪族基であり、
nは、0である]
を持つ。
【0017】
下記に示す例から明らかとなるように、これらの化合物の(R)−エナンチオマーは、意外なことに、投与から3時間を経過しても非常に高い血漿中濃度を示し、また、α−リポ酸自体によって示されるバイオアベイラビリティよりも著しく高いバイオアベイラビリティを示す。
【0018】
前記の好ましい実施形態による(R)−エナンチオマーについては、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、α−LAの遊離を裏付けることができる酵素加水分解試験を行った(それぞれ、実施例30及び31)。
【0019】
特に図2〜3及び5〜9に関する実施例30及び31から明らかなように、本発明の(R)−エナンチオマーから遊離されたα−LAのバイオアベイラビリティ及びt1/2は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、(R)−α−LAの直接投与によって得られた値より著しく大きい。したがって、前記エナンチオマーは、インビボでα−LAを遊離でき且つバイオアベイラビリティ及び体内における耐久性を著しく増加させることができるので、α−LAのプロドラッグとして有利に利用できる。
【0020】
前記の好ましい実施形態によれば、好ましい(R)−エナンチオマーは、式
【化10】
を持つ。
【0021】
より好ましい(R)−エナンチオマーは、式
【化11】
を持つ。
【0022】
最も好ましい(R)−エナンチオマーは、式
【化12】
を持つ。
【0023】
実際、図1、3、4及び7〜9に関連する実施例29〜31において、このエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸の遊離量、遊離時間、バイオアベイラビリティ及び細胞生存率に関して、結果の最良の組合せを示している。
【0024】
別の好ましい実施形態において、化合物の(R)−エナンチオマーは、式III
【化13】
[式中、
R1が−(CH2)n−R2であって、
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、5若しくは6員脂肪族環、5員芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化14】
であってYがCH−(CH2)n−CH3若しくはN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが0〜6の整数であるか、
R2がフェニルであり且つnが2〜6の整数であるか、
R2がモルホリニルであり且つnが3〜6の整数であるか、
R2が−O−(CH2)n−CH3であり且つnが1〜6であるか、或いは
R1が直鎖、分岐鎖又は環状C5〜C10脂肪族基である]
を持つ。
【0025】
前記の別の好ましい実施形態による(R)−エナンチオマーについてもまた、インビトロ及びインビボのいずれにおいてもα−LAの遊離を裏付けることができる酵素加水分解試験を行った(それぞれ、実施例30及び31)。
【0026】
前記の別の好ましい実施形態によれば、好ましい(R)−エナンチオマーは下記式を持つ。
【化15】
【化16】
【0027】
最も好ましい(R)−エナンチオマーは下記式を持つ。
【化17】
【0028】
より好ましくは、前記の別の好ましい実施形態の(R)−エナンチオマーは式IIIを持ち、R1が直鎖、分岐鎖又は環状C7〜C10脂肪族基である。
【0029】
特に好ましいのは下記式
【化18】
を持つ(R)−エナンチオマーである。
【0030】
更なる好ましい実施形態において、前記化合物の(R)−エナンチオマーは式II
【化19】
[式中、R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が少なくとも1つの分岐がα位にある分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
を持つ。
【0031】
下記に示す例から明らかとなるように、これらの化合物の(R)−エナンチオマーは、意外なことに、投与から3時間を経過しても非常に高い血漿中濃度を示し、また、α−リポ酸自体によって示されるバイオアベイラビリティよりも著しく高いバイオアベイラビリティを示す。したがって、これらの(R)−エナンチオマーは有利なことに、α−リポ酸自体とは違って、放出制御製剤に適することがわかった。
【0032】
前記の更に好ましい実施形態によれば、好ましい(R)−エナンチオマーは、下記式を持つ。
【化20】
【0033】
更に好ましい実施形態において、前記化合物の(R)−エナンチオマーは、式IV
【化21】
[式中、Yは−CH−(CH2)n−CH3又は−N(CO)(CH2)n−CH3であり、nは、0〜3の整数である]
を持つ。
【0034】
前記の更に別の好ましい実施形態において、好ましい(R)−エナンチオマーは下記式を持つ。
【化22】
【0035】
別の態様において、本発明は、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーの製造方法であって、(R)−α−リポ酸と試薬とを、不活性ガス雰囲気下で室温において光を遮蔽して反応させるステップを含み、前記試薬がNH2−R1
【化23】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化24】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
Aは、ハロゲンであり、
nは、0〜6の整数である]
からなる群から選択される方法に関する。
【0036】
好ましくは、前記(R)−α−リポ酸及び試薬は等モル量で反応させる。
【0037】
更なる態様において、本発明は、医薬品として使用するための、式I
【化25】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化26】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化27】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーに関する。
【0038】
具体的には、本発明はまた、糖尿病、糖尿病性神経障害、肥満及びこれらに関連する病態の治療用医薬品を製造するための、式I
【化28】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化29】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖C1〜C3脂肪族基であり且つnが0〜2の整数であるか、或いは
R2が分岐鎖又は環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3であり且つnが0〜6の整数であるか、或いは
R2が、ヘテロ原子を任意選択で含む5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、又は1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化30】
であってnが0〜6の整数であり、且つYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が、少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用に関する。
【0039】
前記で定義した(R)−エナンチオマーは、二級アミドであり、これらのうち好ましい(R)−エナンチオマーは、下記式を持つ。
【化31】
【0040】
意外なことに、前記で定義した式Iの化合物の(R)−エナンチオマーは、対応するラセミ形よりも著しく低毒性で且つ有利なことに薬理活性が高い上、α−リポ酸の急速な代謝によって生じる問題を克服することがわかった。これは、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーが、α−リポ酸自体を遊離でき、したがって薬理活性成分の耐久性がα−リポ酸の直接投与によって得られるものよりも確実に長いか、又はα−リポ酸自体の薬理作用を模倣できるが、より強く且つ持続的な活性を示すためである。これに関連して、この第1の場合には、(R)−エナンチオマーはプロドラッグとして成功裏に使用できる。他方、第2の場合には、(R)−エナンチオマーは2型糖尿病、糖尿病性神経障害及び肥満の治療において(R)−α―LA自体よりも著しく強く且つ持続的な薬理活性を有することが示されたので、(R)−エナンチオマーは、加水分解性でないか又は加水分解性であったとしても過度に遅い場合には、(R)−α−LA類似薬として有利に使用できる。
【0041】
前記用途に特に好ましいのは、式I
【化32】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化33】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C3脂肪族基であり且つnが1であるか、或いは
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、−O−(CH2)n−CH3、5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化34】
であってYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが1〜6の整数であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
の化合物の(R)−エナンチオマーである。
【0042】
具体的には、R1が−(CH2)n−R2である場合には、本発明の(R)−エナンチオマーは二級アミドであり、nは常に少なくとも1を示すので、アミド窒素に対してα位に少なくとも1つのメチレン基が存在する。本発明者らは、意外なことに、自然界でピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体中のE2酵素のリジンのNH2残基とα−LAとの結合を加水分解する酵素であるリポアミダーゼが、これらの特殊な二級アミドを加水分解し、その結果として(R)−α−リポ酸が有利なことにゆっくりと遊離されることを発見した。実際に、これらの(R)−エナンチオマーは、意外なことに、投与から3時間を経過しても検出可能な血漿中濃度を示すと共に、(R)−α−リポ酸自体によって示されるバイオアベイラビリティよりも著しく高いバイオアベイラビリティを示し、このことは下記に示す例からより明白となるであろう。したがって、前記(R)−エナンチオマーは、インビボで(R)−α−LAを遊離でき且つバイオアベイラビリティ及び体内における耐久性を著しく増加させることができるので、(R)−α−LAのプロドラッグとして有利に使用できる。
【0043】
糖尿病、糖尿病性神経障害及びこれらに関連した病態の治療に関しては、(RS)−α−LA及びまた(R)−α−LAが、糖尿病誘発ラットへの投与時に血漿中グルコース濃度を低下させることが知られている。いくつかの実験から、(RS)−α−LAが、体内の重要なエネルギーホメオスタシス酵素であるAMPKを活性化することが示されている。細胞内AMP濃度が高く且つ細胞内ATP濃度が低い場合に、即ち、細胞がエネルギー欠乏状態である場合に、この酵素は活性化される。AMPKは、インスリン作用に対する筋細胞及び肝細胞の感受性を高めるので、α−LAの抗糖尿病作用は少なくとも部分的には、AMPK活性化能力に帰することができると仮定されている。
【0044】
理論によって拘束するつもりはないが、本発明の発明者らは、α−LAによるAMPKの活性化は、α−LAが筋細胞及び肝細胞中で誘発するNADHの枯渇の結果であると仮定する。この観点では、NADHがATP合成のエネルギーを供給する。本発明者らが実施した試験によれば、NADH濃度の減少は、2つのメカニズムで起こるであろう。第一に、α−LAがNADHを還元剤として利用して、α−DHLAに還元される。第二に、外来性α−LAが高濃度で、集団効果によってピルベートの酸化的脱炭酸反応を阻害し、下記反応:
【化35】
に従ってNAD+のNADHへの還元を引き起こす。
【0045】
高濃度の外来性α−LAの存在は、ピルベートの酸化的脱炭酸を引き起こす反応のプロセスの最後の反応であるこの反応を逆行させる。種々の細胞培養において、外来性α−LAがピルビン酸の酸化的脱炭酸プロセス全体を、低濃度では促進し、高濃度では減速することは既に実証した。外来性α−LAの効果を、種々の細胞モデルで、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体を構成する3つの酵素のそれぞれについて更に研究した。
【0046】
ヒト肝細胞(HepG32)を用いる以下の実施例32からわかるように、細胞内NADH濃度に対する(R)−α−LA及び本発明のエナンチオマーの効果を証明するのに適当な試験を考案した。また、図10及び11からわかるように、加水分解性が全くないか又は弱い本発明の(R)−エナンチオマーは、NADHに対して(R)−α−LAと同じ効果を、(R)−α−LAよりも著しく低い濃度で、したがって好都合なことに(R)−α−LA自体より高い安全域でもたらす。
【0047】
糖尿病性神経障害の薬理学モデルについて行った研究及び比較臨床試験から、α−リポ酸が、その抗酸化能によるものとみなされる保護作用を有することが示されている。同時に、同じ酸化還元活性を有するがα−リポ酸とは異なる構造を有する合成抗酸化薬を使用した場合には、期待された結果は得られていない。糖尿病患者の末梢神経系に存在する過剰のグルコースは、神経細胞蛋白質の非酵素的グリコシル化を引き起こすので、神経細胞蛋白質の機能特性を変える。更に、過剰のグルコースは一部分が、NADPHを還元剤として用いるアルドースレダクターゼ酵素によってソルビトールに還元される。次に、ソルビトールは、酸化剤としてNAD+を用いて、フルクトースに酸化される。前記の2つの酸化還元反応において生成されるフリーラジカルは、神経障害性損傷(neuropathic damage)の主因に含まれる。これらの考察に基づき、本発明の発明者らは、文献中の種々のデータの裏付けを得て、糖尿病性損傷に感受性の細胞(神経系、網膜、腎臓の細胞)においては、高血糖によってNADPHの枯渇とNADHの集積が誘発されると仮定する。その結果、酸化型グルタチオン/還元型グルタチオンのバランスに基づき、NADPHのアベイラビィティに応じて、抗酸化薬系の有効性が低下する。
【0048】
この状況で、α−LA及びその還元生成物α−DHLAは、NADPH/NADH比を再びバランスさせることによって、糖尿病性神経障害の典型的な酸化的損傷をなくすことができると仮定した。この観点では、α−LAは、NADHのみを還元剤として用いるリポアミドデヒドロゲナーゼによってα−DHLAに還元される。α−DHLAは酸化型グルタチオン及び他の酸化生成物を直接的に還元するため、NADPHの生理的濃度への回復に寄与することが示されている。
【0049】
NADH及びNADPHの濃度の分析方法の説明については、(R)−α−LA及び本発明の(R)−エナンチオマーがNADH及びNADPHの濃度を左右する能力を比較する実施例32を参照する。
【0050】
肥満に関しては、空腹メカニズムに対するα−LAの抑制効果が既に証明されている。この関連で、α−LAは、食欲抑制視床下部細胞のAMPK酵素及びAMPKの食欲刺激メカニズムを不活性化することがわかっている。食欲メカニズムに対するα−LA及び同様に(R)−α−LAの限られた効果は、その短い血漿内半減期及び低いバイオアベイラビリティによるので、本発明の式Iの(R)−エナンチオマー、好ましくは二級アミドは、肥満治療にも有利に使用できる。
【0051】
更なる態様において、本発明は、腫瘍治療において腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する医薬品を製造するための、式I
【化36】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化37】
であり、
R1は直鎖C6〜C12脂肪族基であるか、又は少なくとも1つのエチル分岐がα位に存在する分岐鎖C5〜C12脂肪族基であり、
YはO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用に関する。
【0052】
前記定義によって網羅される(R)−エナンチオマーは、長い直鎖又は特異的に分岐された脂肪鎖を有する二級アミド又は三級アミドである。
【0053】
これらの(R)−エナンチオマーのうち、以下のものが好ましい。
【化38】
【0054】
この点において、本発明者らは、意外にも、リポアミダーゼ、即ち、自然界でピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体中のE2酵素のリジンのNH2残基とα−LAとの間の結合を加水分解する酵素が、これらのアミドを加水分解せず、これらのアミドが本質的に変化せずに長時間体内に残ることを発見した。
【0055】
体内における前記アミドの長い耐久性は、これらのアミドがα−LAよりもβ−酸化を受けにくいことを示している。体内においてα−LAの血漿内半減期が短いのは主に、α−LAがβ位において酸化されるためであることを再認識すべきである。ラットに対する経口投与後の試験において見られるその主要代謝体は実際には3−ケトリポ酸であり、これがα−LAよりも高濃度で血中に回収される。下記の実施例29において報告するように、この実施形態の前記R−アミドエナンチオマーが、細胞生存率の試験において細胞毒性があることを発見した。これらのエナンチオマーが細胞中に増大し得るというこの発見は、酸化的ストレスに起因すると考えられる。α−リポ酸自体は、高濃度で存在する場合、細胞中で酸化的ストレスを引き起こし、その結果、数種類の腫瘍細胞ではアポトーシスが誘発される(Simbulaら、「Increased ROS generation and p53 activation in α−lipoic acid−induced apoptosis of hepatoma cells」、Apoptosis 2007、12:113〜123、及びChoiら、「Mechanism of α−lipoic acid−induced apoptosis of lungs cancer cells」、Ann.N.Y.Acad.Sci.2009、1171:149〜155)が、NIH 3T3線維芽細胞のような非形質転換細胞ではアポトーシスが誘発されないことが判明していることに留意すべきである。
【0056】
実際に、前記で定義した(R)−エナンチオマーは、酸化的ストレスを誘発し、したがって、腫瘍細胞においてα−リポ酸自体よりもかなり高い細胞毒性作用を示すことがわかった。
【0057】
本発明の以下の実施例は、非限定的な実例として示すものである。
[実施例]
【0058】
実施例1〜14及び19〜28の化合物の製造
電磁撹拌機を装着した二口丸底フラスコをアルゴン流下で火炎加熱し、次いで銀紙で覆って光への暴露を回避した。次に、(RS)−α−リポ酸(比較例2a、3a、10a)又は(R)−α−リポ酸(実施例1〜14及び19〜28)(1モル)のDMF溶液を調製した。この溶液を撹拌し、アミン(1モル)、続いてEDAC(1.1モル)を加えた。得られた混合物を、約2時間撹拌しながら、アルゴン雰囲気下で室温に保持した。
【0059】
次いで、使用するガラス器具を予め銀紙で覆って、溶液が光に暴露されないように気を付けながら、反応混合物を分液漏斗に移した。生理食塩水で洗浄後、水相をEt2O(4×10ml)で抽出し、プールした有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧蒸発させた。こうして得られた生成物を次に、暗色フラスコに移し、高真空ポンプ下に保持して(24時間)、DMFを除去した。次に、混合物をクロマトグラフィーカラム(SiO2、CHCl3:100%)で精製した。次いで、α−リポ酸誘導体を分離し、GC−MS分析並びに1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトル分析法によって特性決定した。
【0060】
実施例1
(R)−1−モルホリン−4−イル−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン−1−オン
【化39】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:3.66〜3.36(m,9H),3.19〜3.00(m,2H),2.48〜2.35(m,1H),2.27(t,J=7.3,2H),1.94〜1.79(m,1H),1.73〜1.34(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.2,66.7,66.4,56.2,45.8,41.7,40.0,38.3,34.5,32.6,28.9,24.7;IR(CCl4)νc=o 1657cm−1;GC−MS:275 m/z(M+・).
【0061】
実施例2
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチルアミド
【化40】
収率:80%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.70(s,1H),3.57〜3.48(m,1H),3.23〜3.05(m,4H),2.47〜2.37(m,1H),2.16〜1.77(m,3H),1.70〜1.20(m,10H),0.88(t,J=7.20,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,56.3,40.1,39.1,38.4,36.4,34.5,31.6,28.8,25.4,20.0,13.7;IR(CCl4)νN=H 3465cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:261 m/z(M+・).
【0062】
比較例2a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチルアミド
【化41】
収率:75%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.70(s,1H),3.57〜3.48(m,1H),3.23〜3.05(m,4H),2.47〜2.37(m,1H),2.16〜1.77(m,3H),1.70〜1.20(m,10H),0.88(t,J=7.20,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,56.3,40.1,39.1,38.4,36.4,34.5,31.6,28.8,25.4,20.0,13.7;IR(CCl4)νN=H 3465cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:261 m/z(M+・).
【0063】
実施例3
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−モルホリン−4−イル−プロピル)−アミド
【化42】
収率:60%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.27〜6.80(m,1H),6.9(bs,1H),3.8〜3.0(m,7H),2.8〜1.3(m,20H);IR(CHCl3):νN=H 3446,3317cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:332 m/z(M+・).
【0064】
比較例3a
(5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−モルホリン−4−イル−プロピル)−アミド
【化43】
収率:55%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.27〜6.80(m,1H),6.9(bs,1H),3.8〜3.0(m,7H),2.8〜1.3(m,20H);IR(CHCl3):νN=H 3446,3317cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:332 m/z(M+・).
【0065】
実施例4
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(4−モルホリン−4−イル−ブチル)−アミド
【化44】
収率:57%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.93(bs,1H),3.80〜3.05(m,7H),2.83〜1.23(m,22H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,66.9,58.4,56.5,53.7,40.3,39.3,38.5,36.6,34.7,28.9,27.5,25.5,24.0;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1660cm−1;GC−MS:346 m/z(M+・).
【0066】
実施例5
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−メチル−ブチル)−アミド
【化45】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.38(bs,1H),4.01〜3.90(m,1H),3.60〜3.50(sx,J=6.6,1H),3.20〜3.06(m,2H),2.50〜1.81(m,4H),1.78〜1.22(m,10H),1.08(d,J=6.6,3H),0.88(t,J= 7.3,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.9,56.4,44.9,40.2,39.1,38.4,36.6,34.6,28.8,25.4,21.0,19.2,13.9;IR(CHCl3):νN=H 3437cm−1,νC=O 1664cm−1 GC−MS:275 m/z(M+・).
【0067】
実施例6
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸メチルアミド
【化46】
収率:35%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.70(bs,1H),3.56〜3.51(m,1H),3.10〜3.07(m,2H),2.76(d,J=4.6,3H),2.49〜1.83(m,4H),1.75〜1.33(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:173.5,56.4,40.2,38.4,36.3,34.6,28.9,26.3,25.4;IR(CHCl3):νN=H 3464cm−1,νC=O 1666cm−1;GC−MS:219 m/z(M+・).
【0068】
実施例7
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸プロピルアミド
【化47】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.42(bs,1H),3.59〜3.49(m,1H),3.21〜3.01(m,4H),2.47〜2.37(m,1H),2.14(t,J= 7.3,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.70〜1.37(m,8H),0.88(t,J= 7.5,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.7,56.4,41.1,40.2,38.4,36.5,34.6,28.8,25.4,22.8,11.0;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:247 m/z(M+・).
【0069】
実施例8
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸イソプロピルアミド
【化48】
収率:30%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.35(bs,1H),4.11〜3.97(m,1H),3.59〜3.48(sx,J= 6.4,1H),3.20〜3.07(m,2H),2.48〜2.38(m,1H),2.11(t,J= 7.2,2H),1.97〜1.82(m,1H),1.74〜1.33(m,6H),1.11(d,J= 6.4,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.7,56.42,41.2,40.2,38.4,36.6,34.6,28.8,25.4,22.8;IR(CHCl3):νN=H 3439cm−1,νC=O 1658cm−1;GC−MS:247 m/z(M+・).
【0070】
実施例9
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−エトキシ−プロピル)−アミド
【化49】
収率:60%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.20〜6.90(m,1H),3.56〜2.58(m,9H),2.48〜2.30(m,1H),2.09(t,J=7.3,2H),1.92〜1.24(m,9H),1.13(t,J=7.0 ,3H);IR(CHCl3):νN=H 3450,3406 cm−1,νC=O 1660,1661cm−1;GC−MS:291 m/z(M+・).
【0071】
実施例10
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(2−アセチルアミノ−エチル)−アミド
【化50】
収率:55%
1H−NMR(CDCl3 CD3OD)300MHz:3.90〜3.81(m,1H),3.47〜2.91(m,6H),2.37〜2.20(m,1H),2.00(t,J=7.3,2H),1.90〜1.20(m,10H);13C−NMR(CDCl3 CD3OD)75MHz:174.5,172.0,56.1,39.9,39.0,38.9,38.1,35.7,34.2,28.5,25.0,22.2;IR(CHCl3):νN=H 3452cm−1,νC=O 1660cm−1;m.p.:144.6〜145.8°C;GC−MS:290 m/z(M+・).
【0072】
比較例10a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(2−アセチルアミノ−エチル)−アミド
【化51】
収率:50%
1H−NMR(CDCl3 CD3OD)300MHz:3.90〜3.81(m,1H),3.47〜2.91(m,6H),2.37〜2.20(m,1H),2.00(t,J=7.3,2H),1.90〜1.20(m,10H);13C−NMR(CDCl3 CD3OD)75MHz:174.5,172.0,56.1,39.9,39.0,38.9,38.1,35.7,34.2,28.5,25.0,22.2;IR(CHCl3):νN=H 3452cm−1,νC=O 1660cm−1;m.p.:144.6〜145.8°C;GC−MS:290 m/z(M+・).
【0073】
実施例11
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸フェネチル−アミド
【化52】
収率:32%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.32〜7.13(m,5H),5.52(bs,1H),3.56〜3.03(m,5H),2.82〜2.70(m,2H),2.47〜2.35(m,1H),2.10(t,J=7.2,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.68〜1.33(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.7,138.8,128.7,128.6,126.5,56.4,40.5,40.2,38.4,36.4,35.6,34.6,28.8,25.3;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:309 m/z(M+・).
【0074】
実施例12
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(3−フェニル−プロピル)−アミド
【化53】
収率:35%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.29〜7.12(m,5H),5.61(bs,1H),3.58〜3.47(m,1H),3.28〜3.00(m,4H),2.63(t,J= 7.6,2H),2.47〜2.36(m,1H),2.11(t,J= 7.3,2H),1.91〜1.38(m,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,141.6,128.4,128.2,125.9,56.3,40.1,39.1,38.4,36.4,34.5,33.2,31.1,28.8,25.3;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:323 m/z(M+・).
【0075】
実施例13
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸(4−フェニル−ブチル)−アミド
【化54】
収率:30%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.28〜7.10(m,5H),5.65(bs,1H),3.60〜3.48(m,1H),3.29〜3.02(m,4H),2.60(t,J= 7.6,2H),2.43〜2.38(m,1H),2.12(t,J= 7.3,2H),1.91〜1.78(m,1H),1.69〜1.36(m,10H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,142.0,128.3,128.2,125.7,56.3,40.1,39.2,38.4,36.4,35.4,34.5,29.1,28.8,28.6,25.4;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:337 m/z(M+・).
【0076】
実施例14
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸シクロペンチルアミド
【化55】
収率:20%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.72(bs,1H),4.19〜4.06(m,1H),3.59〜3.47(m,1H),3.17〜3.00(m,2H),2.48〜2.33(m,1H),2.09(t,J=7.3,2H),1.99〜1.23(m,15H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.2,56.3,50.9,40.1,38.4,36.4,34.5,33.0,28.8,25.4,23.6;IR(CHCl3):νN−H 3441cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:273 m/z(M+・).
【0077】
実施例19
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸n−ペンチルアミド
【化56】
収率:30%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:.55(bs,1H),3.63〜3.47(m,1H),3.27〜3.06(m,4H),2.52〜2.36(m,1H),2.15(t,J=7.2,2H),1.97〜1.73(m,1H),1.71〜1.20(m,12H),0.86(t,J=6.2,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,56.2,40.0,39.2,38.2,36.3,34.3,29.1,28.8,28.6,25.2,22.1,13.7;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1660cm−1;GC−MS:275 m/z(M+・).
【0078】
実施例20
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸n−ヘプチルアミド
【化57】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.61(bs,1H),3.61〜3.48(m,1H),3.26〜3.04(m,4H),2.51〜2.35(m,1H),2.14(t,J=7.3,2H),1.96〜1.72(m,1H),1.70〜1.15(m,16H),0.85(t,J=6.1,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.6,56.4,40.2,39.5,38.5,36.6,34.6,31.7,29.7,29.0,28.9,26.9,25.4,22.6,14.0;IR(CHCl3):νN=H 3446cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:303 m/z(M+・).
【0079】
実施例21
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ペンタン−3−イルアミド
【化58】
収率:31%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.40〜5.32(m,1H),3.81〜3.66(m,1H),3.57〜3.46(m,1H),3.02〜3.01(m,2H),2.49− 2.35−(m,1H),2.15(t,J=7.4,2H),1.93〜1.81(m,1H),1.75〜1.22(m,10H),(0.85,t,J=7.4,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.3,56.3,51.7,40.1,38.4,36.7,34.6,28.8,27.4,25.5,10.2;IR(CHCl3):νN=H 3433cm−1,νC=O 1654cm−1;GC−MS:275 m/z(M+・).
【0080】
実施例22
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−ベンジルアミド
【化59】
収率:32%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.33〜7.23(m,5H),5.97(bs,1H),3.02(d,J=5.9,2H),3.57〜3.48(m,1H),3.19〜3.03(m,2H),2.47〜2.36(m,1H),2.19(t,J=7.3,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.74〜1.35(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.5,138.3,128.6,127.7,127.4,56.3,43.5,40.1,38.4,36.3,34.5,28.8,25.3;IR(CHCl3):νN=H 3444cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:295 m/z(M+・).
【0081】
実施例23
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジル)アミド
【化60】
収率:51%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.88〜6.70(m,3H),6.05〜5.91(m,2H),4.29(d,J=5.5,2H),3.85(s,3H),3.63〜3.47(m,1H),3.22〜3.04(m,2H),2.50〜2.37(m,1H),2.18(t,J=7.7,2H),1.97〜1.80(m,1H),1.77〜1.33(m,7H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,145.9,145.7,131.3,119.3,114.0,110.6,56.2,55.8,43.0,40.0,38.3,36.2,34.4,28.7,25.2;IR(CHCl3):νN=H 3545cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:341 m/z(M+・).
【0082】
実施例24
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(シクロプロピルメチル)アミド
【化61】
収率:42%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.77 (bs,1H),3.63〜3.45(m,1H),3.24〜2.96(m,4H),2.52〜2.34(m,1H),2.16(t,J=7.3,2H),1.93〜1.82(m,1H),1.75〜1.33(m,6H),0.98〜0.84(m,1H),0.53〜0.41(m,2 H),0.21〜0.10(m,2H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,56.2,44.1,40.0,38.3,36.3,34.4,28.7,25.3,10.5,3.2;IR(CHCl3):νN=H 3448cm−1,νC=O 1660cm−1;GC−MS:259 m/z(M+・).
【0083】
実施例25
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(ブテン−3−イル)アミド
【化62】
収率:45%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.82〜5.62(m,2H),5.12〜4.98(m,2H),3.60〜3.48(m,1H),3.35〜3.25(m,2H),3.18〜3.01(m,2H),2.49〜2.34(m,1H),2.25〜2.18(m,2H),2.13(t,J=7.3,2H),1.92〜1.81(m,1H),1.72〜1.33(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.5,135.1,116.9,56.2,40.0,38.3,38.2,36.3,34.4,33.6,28.7,25.2;IR(CHCl3):νN=H 3446cm−1,νC=C 2252cm−1,νC=O 1662cm−1;GC−MS:259 m/z(M+・).
【0084】
実施例26
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸1−(4−アセチルピペラジン−1−イル)アミド
【化63】
収率:37%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:3.66〜3.40(m,9H),3.21〜3.00(m,2H),2.49〜2.33(m,1H),2.31(t,J=7.7,2H),2.07(s,3H),1.94〜1.79(m,1H),1.74〜1.34(m,6H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.3,169.1,56.2,45.8,44.9,41.3,41.2,40.0,38.3,34.5,32.7,28.8,24.6,21.2;IR(CHCl3):νC=O 1637cm−1;GC−MS:316 m/z(M+・).
【0085】
実施例27
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸N−(3−アセトキシ−4−メトキシベンジル)アミド
【化64】
収率:70%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:7.12〜7.07(m,1H),6.94〜6.88(m,2H),5.89(bs,1H),4.31(d,J=5.9,2H),3.80(s,3H),3.62〜3.48(m,1H),3.22〜3.04(m,2H),2.53〜2.37(m,1H),2.28(s,3H),2.17(t,J=7.3,2H),1.97〜1.31(m,7H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.4,168.9,150.3,139.5,130.8,136.3,122.3,112.3,56.2,55.8,42.6,40.0,38.3,36.2,34.4,28.7,25.2,20.5;IR(CHCl3):νN=H 3444cm−1,νC=O 1763cm−1,νC=O 1668cm−1;GC−MS:383 m/z(M+・).
【0086】
実施例28
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸1−(4−メチルピペリジン−1−イル)アミド
【化65】
収率:60%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:4.58〜4.52(m,1H),3.81〜3.76(m,1H),3.61〜3.52(m,1H),3.21〜3.05(m,2H),3.01〜2.91(m,1H),2.55〜2.39(m,2H),2.31(t,J=7.5,2H),1.95〜1.84(m,1H),1.78〜1.38(m,9H),1.11〜0.99(m,2H),0.93(d,J=6.4,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:170.9,56.4,45.9,41.9,40.2,38.4,34.7,34.6,33.7,33.1,31.0,29.1,25.0,21.7;IR(CHCl3):νC=O 1643cm−1;GC−MS:287 m/z(M+・).
【0087】
実施例15〜18の化合物の製造
電磁撹拌機を装着した二口丸底フラスコをアルゴン流下で火炎加熱し、次いで銀紙で覆って光への暴露を回避した。次に、(RS)−α−リポ酸(比較例15a、16a)又は(R)−α−リポ酸(実施例15〜18)(1モル)のDMF溶液を調製した。この溶液を撹拌後、K2CO3(1.15モル)を加えた。得られた混合物を、約2時間撹拌しながら、アルゴン雰囲気下で室温に保持した。この時間の後、ハロゲン化物(1.2モル)を加えた。TLC分析(SiO2、MeOH/CHCl3:5/95、Et2O/ヘキサン:1/1)が出発生成物の消失(GC−MS分析によっても確認)を示すまで、反応混合物を撹拌しながら、室温に放置した。
【0088】
次いで、使用するガラス器具を予め銀紙で覆って、溶液が光に暴露されないように気を付けながら、反応混合物を分液漏斗に移した。生理食塩水で洗浄後、水相をEt2O(4×10ml)で抽出し、プールした有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧蒸発させた。こうして得られた生成物を次に、暗色フラスコに移し、高真空吸引ポンプ下に保持して(24時間)、DMFを除去した。次に、混合物をクロマトグラフィーカラム(SiO2、Et2O/n−ヘキサン:1/9)で精製した。次いで、α―リポ酸誘導体を分離し、GC−MS分析並びに1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトル分析法によって特性決定した。
【0089】
実施例15
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸2,2−ジメチル−プロピオニルオキシメチルエステル
【化66】
収率:45%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.73(s,2H),3.60〜3.47(m,1H),3.21〜3.03(m,2H),2.50〜2.37(m,1H),2.35(t,J=7.3,2H),1.95〜1.81(m,1H),1.74〜1.38(m,6H),1.18(s,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:176.9,171.9,79.2,50.0,40.1,38.9,38.3,34.4,33.5,28.4,26.7,24.2;IR(CCl4)νC=O 1757,1749cm−1;GC−MS:320 m/z(M+・).
【0090】
比較例15a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸2,2−ジメチル−プロピオニルオキシメチルエステル
【化67】
収率:73%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.73(s,2H),3.59〜3.50(m,1H),3.20〜3.05(m,2H),2.49〜2.33(m,3H),1.94〜1.83(m,1H),1.68〜1.63(m,4H),1.51〜1.41(m,2H),1.94(s,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.7,172.0,79.3,56.2,40.1,38.7,38.4,34.5,33.7,28.5,26.8,24.3;IR(CCl4)νC=O 1746cm−1;GC−MS:320 m/z(M+・).
【0091】
実施例16
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチリルオキシメチルエステル
【化68】
収率:40%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.72(s,2H),3.62〜3.47(m,1H),3.23〜3.03(m,2H),2.50〜2.28(m,5H),1.95〜1.80(m,1H),1.73〜1.34(m,8H),0.93(t,J=7.3,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.1,171.9,78.9,56.1,40.0,38.3,35.6,34.3,33.5,28.4,24.1,17.9,13.3;IR(CCl4)νC=O 1751cm−1;GC−MS:306 m/z(M+).
【0092】
比較例16a
5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸ブチリルオキシメチルエステル
【化69】
収率:63%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:5.69(s,2H),3.55〜3.46(m,1H),3.17〜3.01(m,2H),2.46〜2.26(m,5H),1.91〜1.79(m,1H),1.68〜1.38(m,8H),0.89(t,J=7.4,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:172.0,171.9,78.8,56.1,40.0,38.3,35.6,34.3,33.5,28.4,24.1,17.9,13.4;IR(CCl4)νC=O 1752cm−1;GC−MS:306 m/z(M+).
【0093】
実施例17
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸1−アセトキシ−エチルエステル
【化70】
収率:35%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.81(q,J=5.4,1H),3.59〜3.47(m,1H),3.20〜3.02(m,2H),2.50〜2.36(m,1H),2.29(t,J=7.2,2H),2.03(s,3H),1.94〜1.80(m,1H),1.74〜1.55(m,6H),1.43(d,J=5.4,3H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:171.3,168.8,88.4,56.2,40.1,38.4,34.5,33.7,28.5,24.2,20.8,19.5;IR(CHCl3):νC=O 1751,1751 cm−1;GC−MS:292 m/z(M+・).
【0094】
実施例18
(R)−5−[1,2]ジチオラン−3−イル−ペンタン酸2,2−ジメチル−プロピオニルオキシエチルエステル
【化71】
収率:42%
1H−NMR(CDCl3)300MHz:6.80(q,J=5.5,1H),3.60〜3.48(m,1H),3.22〜3.03(m,2H),2.50〜2.38(m,1H),2.31(t,J=7.3,2H),1.97〜1.83(m,1H),1.75〜1.46(m,6H),1.44(d,J=5.5,3H),1.18(s,9H);13C−NMR(CDCl3)75MHz:176.4,171.4,88.5,56.2,40.2,38.6,38.5. 34.5,33.8,28.5,26.8,24.4,19.4;IR(CHCl3):νC=O 1749cm−1,νC=O 1732cm−1;GC−MS:336 m/z(M+・).
【0095】
実施例29
細胞生存率の評価
細胞生存率に対する効果を評価するために、合成した化合物の用量依存的な濃度の研究をヒト肝細胞癌細胞(HepG2細胞)について行い、対照標準と定義したα−リポ酸の、ヒト肝細胞癌細胞(HepG2細胞)に対する効果と比較した。
【0096】
光学顕微鏡による分析により、脂質小胞の全ての形態学的変化及び集積の測定、並びに細胞増殖又は停止の評価が可能となった。
【0097】
生存細胞の細胞内ATPとの反応に起因する光の生成に基づくルミノメトリックアッセイ(luminometric assay)(ATPlite、パーキンエルマー(Perkin Elmer)社)により、生存指数(viability index)を指標とした化合物の分類が可能となった。
方法
【0098】
・HepG2細胞を滅菌96ウェルプレート中に、培地(10%ウシ胎児血清(FBS)を補充し、2mMグルタミン、200U/mlペニシリン及び200U/mlストレプトマイシンで強化したRPMI)100μl中細胞5×103個/ウェルの濃度で播種した。
【0099】
・こうして得られたプレートを、37℃でCO25%においてインキュベートした。
【0100】
・α−リポ酸を含む本発明の化合物を100mMの初期濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させ、次いで5、10、100、500及び1000μMの濃度に達するまで、培地中で直接希釈した。
【0101】
・播種から16〜24時間後に、培地を、特定濃度の本発明の化合物及び対応する濃度の、対照としてのDMSOを含むRPMI 100μl+10%FBSに更新した。
【0102】
・適当な濃度の本発明の化合物を含む培地を24時間毎に更新し、2つの処理後、研究中の化合物の効果について定性及び定量分析を行った。光学顕微鏡を用いて、付着性細胞の数及び形態(データは示さず)の変化を観察し、パーキンエルマー社によって販売されているATPliteキット中の試薬及び記載された方法を用いることによって生存率を評価した。
【0103】
結果
α―LA、及び、ラセミ形(RS)(比較例2a及び10a)又はエナンチオマー形(R)(実施例2及び10)の本発明の2種の化合物500μMで48時間処理した後に得られた結果を、対照(DMSO 0.5%)と比較した細胞生存率として、図1に示す(図1において、*は、シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)社から購入した(RS)−α―LA及び(R)−α−LAを意味する)。
【0104】
試験した全ての化合物について、(R)−エナンチオマーが、ラセミ形RSよりも大きい細胞生存指数に関与することが観察された。これにより、α−リポ酸自体と同様に、式Iの化合物の(R)−エナンチオマーが、対応するラセミ形よりも著しく低毒性であり、且つ薬理学的に有利なことにバイオアベイラビリティが高いことを確認できた。
【0105】
図4は、本発明のエナンチオマーによる処理に関する細胞生存率の結果を、1mM濃度の(R)−α―LA及び1mM濃度のリポアミド(シグマ−アルドリッチ社製のリポA.(lipoA.))による処理後に得られた結果と比較して、示す。この濃度を参照パラメーターとして選択したのは、これらの条件下で、(R)−α−LAが対照(1% DMSO)と比較して50%の細胞生存率を示したためである。細胞生存率は、(R)−α−LA投与に対する、本発明の化合物による処理後の細胞内ATPと相関する発光の「誘発倍率」(ユニット値)として示す。
【0106】
対照とは違って、HepG2細胞が、培養プレート全てにコロニー形成できず、60〜70%のコンフルエンス(confluence)に達した(データは示さず)ことから、(R)−α−LAによる処理は細胞増殖を停止させた。
【0107】
生存率及び細胞増殖データを元にして、分析中のエナンチオマーを以下に細分できた。
【0108】
a)増殖性:均等な多層増殖、脂質小胞の生理的集積及び浮遊液中の細胞の非存在と共に、(R)−α−LAより大きい生存指数を示すエナンチオマー。この群に属するエナンチオマーは、図4に従って数値の高いものから順に列挙すると、実施例18、17、16、15のエナンチオマーである。
【0109】
b)細胞増殖抑制性:(R)−α−LAよりも低い生存指数を示すが、同時に強力な細胞増殖停止誘発因子であるエナンチオマー。この群に属するエナンチオマーは、図4に従って数値の高いものから順に列挙すると、実施例2、25、23、24、14、5、7、8、12、13、リポA.(即ち、比較化合物としてのリポアミド)、実施例27、11、6、22、19のエナンチオマーである。
【0110】
c)細胞毒性:細胞死発生の明らかな証拠である浮遊液中細胞数を非常に多くするエナンチオマー。この群に属するエナンチオマーは、図4に従って数値の高いものから順に列挙すると、実施例20、21、26、1、28のエナンチオマーである。
【0111】
実施例30
インビトロでの酵素加水分解の研究
実施例29の結果からの知見を考慮して、どの合成誘導体がα−リポ酸前駆体、即ち、加水分解によってα−リポ酸を遊離できるプロドラッグとして挙動するかを更に明確にする目的で、インビトロ酵素加水分解アッセイを行った。これとは異なり、加水分解を受けなかった誘導体を、潜在的なα−LA類似体とみなした。
【0112】
本発明の化合物の加水分解を促進できる酵素を含む、マウス肝臓から抽出した蛋白質プールを用いて、薬物動態の研究において前述した加水分解活性をインビトロで再び導入した。
【0113】
方法
・野生型マウスの肝臓を取り出し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄することによって過剰の血液を取り除いた。
【0114】
・前記肝臓を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(プロテアーゼインヒビターカクテル(Protease Inhibitor Cocktail)、シグマアルドリッチ社)で強化された、充分な量の溶解バッファー(50mM Tris HCl(pH7.5〜8.0)、150mM NaCl、5mM EGTA(pH7.5〜8.0)、50mM NaF(pH8.0)、10%(v/v)グリセロール、1.5mM MgCl2、1% トリトン(Triton)X−100)を含むホモジナイザー中に移した。均質溶液を得るために、乳棒で15〜20回衝撃を与えた。
【0115】
・混合物全体を、撹拌しながら+4℃に1時間放置し、14000rpmで遠心分離後、抽出された蛋白質を含む上清を回収した。
【0116】
・抽出された蛋白質の量を、ブラッドフォード(Bradford)アッセイを用いて測定した。
【0117】
・酵素加水分解反応を実施した:合成化合物50μg(DMSO中に溶解)を加水分解させるための蛋白質抽出物1mg;25℃において撹拌しながら1、3又は24時間。
【0118】
・(1種又は複数の)消化産物を、薄層クロマトグラフィーを用いて検出した:移動相(60:40:1の酢酸エチル、n−ヘキサン、酢酸);シリカプレート(シグマアルドリッチ社);リンモリブデン酸試薬。
【0119】
・消化産物を分析し、(R)−α−LA(シグマアルドリッチ社)及び本発明の非加水分解化合物と比較した。
【0120】
結果
前述した、薄層クロマトグラフィーの実験条件下で、本発明の合成エナンチオマーは、(R)−α−リポ酸とは異なる「先端比(Ratio frontis)」(Rf)を有するものと確認された。したがって、(R)−α−リポ酸を加水分解物として検出すること、及び(R)−α−リポ酸を本発明のエナンチオマーと差別化することが可能であった。
【0121】
図2及び3は、クロマトグラフィーのラン後に得られた酵素消化産物の画像を示している。分析中のエナンチオマーは、酵素加水分解効率、ひいては(R)−α−LAの遊離量が異なることが判明した。
【0122】
特に、図2は、式IIのエナンチオマー、具体的には式IIに含まれる実施例15〜18のエナンチオマーに関連し、これら4種のエナンチオマー全てに関する1時間後及び3時間後の消化の結果を示している。実施例15及び16のエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸自体のrfに対応するRf=0.7の当該ステインの強度によって観察されるように、1時間後に完全に加水分解されていた。これとは異なり、実施例17及び18のエナンチオマーは、1時間後に部分加水分解を示した。したがって、これら2種のエナンチオマーは実施例15及び16のエナンチオマーよりゆっくり(R)−α−リポ酸を遊離したことが示される。3時間後、実施例17及び18のエナンチオマーも、完全に加水分解された。
【0123】
これらの結果から、実施例15、16、17及び18のエナンチオマーが、(R)−α−リポ酸を遊離できるプロドラッグとして成功裏に使用できること考えることができた。
【0124】
図3は、前記実施例で合成されたエナンチオマーに関連し、25℃における24時間後の消化の結果を示している。この場合でも、ステインの強度は、(R)−α−リポ酸及び当該エナンチオマーの検出量と正比例している。
【0125】
図3のエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸の遊離能に基づいて、したがってそれらを遊離能の高いものから順に列挙したことを留意すべきである。特に、実施例2、23、27、24、25及び22のエナンチオマーは、24間後に完全には加水分解されていなくても、非常に多量の(R)−α−リポ酸を遊離することが判明した。したがって、これらのエナンチオマーは、有利なことに、徐放製剤中にも(R)−α−リポ酸のプロドラッグとして使用できるであろう。
【0126】
実施例7、12、13、11、14、8、19及び6は、24時間後に、部分加水分解を、結果として(R)−α−リポ酸の遊離の減少を示した。したがって、これらのエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸のプロドラッグ又は類似体として成功裏に使用できるであろう。
【0127】
実施例5、20、21、1及び28は、24時間後には本質的に依然として変化していなかった。したがって、これらのエナンチオマーは、好都合なことに(R)−α−リポ酸の類似体として使用できるであろう。実施例29の結果を考慮すると、実施例20、21、1及び28のエナンチオマーは、(R)−α−リポ酸の類似体として腫瘍治療に非常に顕著な用途を見出すことができることに留意すべきである。
【0128】
実施例31
薬物動態の研究
合成した一部の化合物(比較例1a、実施例2、比較例2a、実施例3、比較例3a、実施例10、比較例15a、比較例16a及び実施例24)のバイオアベイラビリティを、ラットにおいて単回経口投与(48.5μmol/kg)後に研究し、対照(R)−又は(RS)−α―LAと比較した。
【0129】
方法
各処理は、化合物当たり雄ラット(スプラーグドーリー(Sprague−Dawley)SDラット)6匹の群について実施した。定時に採血を行い、血漿中α−LA(図5、7、9)及び投与された残留化合物(図6、8)の濃度をHPLC−MSによって測定した。
【0130】
結果
血漿中α−LA濃度の測定を、比較例1a、2a、15a、16a(図5)、実施例2、実施例3、比較例3a及び実施例10(図7)、並びに実施例2及び24(図9)の化合物について行った。分析は、化合物又は対照の経口投与後の、図示した時間(時間)に行った。この一連の例では、遊離α−LAの最大血漿濃度もまた、30分にあることがわかった。実施例2の(R)−エナンチオマー(図7)は、対応するラセミ化合物(図5)より直線的な加水分解プロフィールを示した。非加水分解化合物の量(<<2ng/ml)に関する図6及び8に示したデータから、実施例2、比較例2a及び実施例10は、α−リポ酸プロドラッグに分類された。最後に、実施例3の(R)−エナンチオマー及び比較例3aの対応するラセミ化合物については、採血時間のいずれについても、遊離α−リポ酸も化合物自体も検出されなかった。
【0131】
薬物動態を更に明確にするために、2種の化合物(実施例2及び24)の経口投与後の血漿中(R)−α−LA濃度の更なる分析を、より短い処理時間(5〜30分)で行った(図9)。実施例2の(R)−エナンチオマーの投与から30分後に、血漿中にかなりの濃度のα−リポ酸が観察されることが確認された。これに対して、実施例24の(R)−エナンチオマー(及び対照として使用した外来性α−リポ酸)については、血漿中(R)−α−LA血漿のピークの検出に、処理はわずか5分で充分であった。
【0132】
実施例32
α−LA及び本発明の化合物の存在下におけるNADH及びNADPH濃度の変動の研究
高血糖状態ではα−LAが肝細胞においてAMPKの活性化を誘発することが知られているが、この生化学プロセスに関与する分子レベルのメカニズムは未だ不明である。本明細書中で予想したように、本発明の発明者らは、α−LAによるAMPKの活性化が、酸化還元プロセスにおけるα−LA及び/又はその類似誘導体の干渉による、細胞中に存在するNADH及びNADHPの量の変化の結果であるという仮説を提起した。この仮説を立証するために、次第に増加する濃度の分析中の化合物の存在下で、総NAD(P)に対するNAD(P)Hの細胞内濃度の変動を分析できる市販キット(Valter Occhiena)を使用した(総NAD=NADH+NAD+、総NADP=NADPH+NADP+)。
【0133】
方法
・HepG2細胞を滅菌プレート(直径60mm)中に、培地(10%ウシ胎児血清(FBS)を補充し、2mMグルタミン、200U/mlペニシリン及び200U/mlストレプトマイシンで強化したRPMI)4ml中細胞2×105個/プレートの濃度で播種した。
【0134】
・プレートを、37℃でCO25%においてインキュベートした。
【0135】
・本発明の(R)−エナンチオマー及び(R)−α−リポ酸を、100mMの初期濃度でDMSO中に溶解させ、次いで5、10、100及び500μMの濃度に達するまで、培地中で直接希釈した。
【0136】
・播種から16〜24時間後に、培地を、特定濃度の分析中の化合物及び対照としての対応する濃度のDMSOを含むRPMI+10%FBSに更新した。
【0137】
・特定濃度の分析中の化合物を含む培地を24時間毎に更新し、3つの処理(本発明の化合物への72時間の暴露に相当する)の後、細胞を冷PBS中に回収した。
【0138】
・それぞれのサンプルの数個のアリコートを用意した(細胞2×105個/アリコート)。
【0139】
・分光光度アッセイを用いて、個別の市販キット(Valter Occhiena)に添付されている使用説明書にしたがって、各アリコートについて総NADH/NAD比及び総NADPH/NADP比を評価した。
【0140】
結果
図10は、種々の化合物((R)−α−LA、比較例3a並びに実施例5、11、7及び8の化合物)での処理後に得られたNADHの量(総NADH/NAD比として評価)に関する結果を、参照対照について得られた値に対する誘発倍率として示したものを図示している。
【0141】
化合物の使用濃度が異なると、NADHの量が異なることがわかった。
【0142】
低濃度の(R)―α−LA(5及び10μM)においては、NADHの量は対照サンプル中で検出される量よりも多かった。これは、これらの条件下では、(R)−α−LAがNAD+からNADHへの還元反応に補因子として関与するという事実を示している。
【0143】
予想通り、濃度を増加させると(100及び500μM)、(R)−α−LAはNADH濃度を減少させた。この効果は、α−LAがNADHを還元剤として用いてα−DHLAに還元され、且つα−LAが集団効果によってリポアミドデヒドロゲナーゼによる反応の逆行を引き起こすために、ピルビン酸の酸化的脱炭酸プロセスを阻害すると仮定することによって、説明できる。生理的条件下では、リポアミドデヒドロゲナーゼは、NAD+を酸化剤として用いて、α−DHLAをα−LAに酸化する。過剰のα−LAの存在下では、この反応は逆行する。次第に増加する濃度の実施例5、11、7及び8の(R)−エナンチオマーで処理すると、(R)−α−LAで得られたのと同様なNADHパターンが示された。しかし、この場合には、高濃度の本発明のエナンチオマーによって起きるNADHの還元は、更に極端であった。
【0144】
比較例3aのラセミ化合物への暴露は、5μMの濃度であっても、対照よりも低いNADH濃度を生じた。
【0145】
図11では、(R)−α−リポ酸並びに比較例3a及び実施例8での処理後のNADPHの量に関する結果を、この場合も、対照と比較した誘発倍率として示す。分析中の化合物はまた、用量依存的にNADPH濃度に影響を与え、NADP+/NADPH酸化還元プロセスにおけるそれらの改善が明らかにされた。
【0146】
前記の詳細な説明及び前記例から、本発明の(R)−エナンチオマーによって達成される利点が明らかである。特に、対応するラセミ形よりも低毒性で且つ薬理活性が高い前記(R)−エナンチオマーは(R)−リポ酸を遊離でき、α−リポ酸自体の直接投与によって得られるよりも大きいバイオアベイラビリティを確実にするか、又はα−リポ酸の薬理作用を模倣できるが、より強く且つ持続的な活性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化2】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化3】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項2】
式III
【化4】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C4脂肪族基であり、
nは、0である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項3】
式
【化5】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項4】
式
【化6】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項5】
式
【化7】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項6】
式
【化8】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項7】
式
【化9】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項8】
式III
【化10】
[式中、
R1が−(CH2)n−R2であって、
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、5若しくは6員脂肪族環、5員芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化11】
であってYがCH−(CH2)n−CH3若しくはN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが0〜6の整数であるか、
R2がフェニルであり且つnが2〜6の整数であるか、
R2がモルホリニルであり且つnが3〜6の整数であるか、
R2が−O−(CH2)n−CH3であり且つnが1〜6であり、或いは
R1が直鎖、分岐鎖又は環状C5〜C10脂肪族基である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項9】
式
【化12】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項10】
式
【化13】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項11】
式
【化14】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項12】
式
【化15】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項13】
式
【化16】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項14】
式
【化17】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項15】
式
【化18】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項16】
式
【化19】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項17】
式
【化20】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項18】
式
【化21】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項19】
式
【化22】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項20】
式
【化23】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項21】
式
【化24】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項22】
R1が直鎖、分岐鎖又は環状C7〜C10脂肪族基である、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項23】
式II
【化25】
[式中、R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が少なくとも1つの分岐がα位にある分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項24】
式
【化26】
を持つ、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
式
【化27】
を持つ、請求項23に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項26】
式
【化28】
を持つ、請求項23に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項27】
式
【化29】
を持つ、請求項23に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項28】
式IV
【化30】
[式中、Yは、−CH−(CH2)n−CH3又は−N(CO)(CH2)n−CH3であり、nは、0〜3の整数である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項29】
式
【化31】
を持つ、請求項28に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項30】
式
【化32】
を持つ、請求項28に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項31】
請求項1に記載の式Iの化合物の(R)−エナンチオマーの製造方法であって、(R)−α−リポ酸と試薬とを、不活性ガス雰囲気下で室温において光を遮蔽して反応させるステップを含み、前記試薬がNH2−R1、
【化33】
及び
【化34】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化35】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
Aは、ハロゲンであり、
nは、0〜6の整数である]
からなる群から選択される方法。
【請求項32】
前記(R)−α−リポ酸及び試薬が等モル量である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
医薬品として使用するための、式I
【化36】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化37】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化38】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項34】
糖尿病、糖尿病性神経障害、肥満及びこれらに関連する病態の治療用医薬品を製造するための、式I
【化39】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化40】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖C1〜C3脂肪族基であり且つnが0〜2の整数であるか、或いは
R2が分岐鎖又は環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3であり且つnが0〜6の整数であるか、或いは
R2が、ヘテロ原子を任意選択で含む5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、又は1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化41】
であってnが0〜6の整数であり、且つYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が、少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用。
【請求項35】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化42】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化43】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項37】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化44】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項38】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化45】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項39】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化46】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項40】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化47】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項41】
前記(R)−エナンチオマーが式I
【化48】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化49】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C3脂肪族基であり且つnが1であるか、或いは
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、−O−(CH2)n−CH3、5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化50】
であってYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが1〜6の整数であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が、少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項42】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化51】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化52】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化53】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項45】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化54】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項46】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化55】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項47】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化56】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項48】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化57】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項49】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化58】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項50】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化59】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項51】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化60】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項52】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化61】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項53】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化62】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項54】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化63】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項55】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化64】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項56】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化65】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項57】
腫瘍治療において腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する医薬品を製造するための、式I
【化66】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化67】
であり、
R1は、直鎖C6〜C12脂肪族基であるか、又は少なくとも1つのエチル分岐がα位に存在する分岐鎖C5〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用。
【請求項58】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化68】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化69】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項60】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化70】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項61】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化71】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項62】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化72】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項1】
式I
【化1】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化2】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化3】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項2】
式III
【化4】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C4脂肪族基であり、
nは、0である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項3】
式
【化5】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項4】
式
【化6】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項5】
式
【化7】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項6】
式
【化8】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項7】
式
【化9】
を持つ、請求項2に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項8】
式III
【化10】
[式中、
R1が−(CH2)n−R2であって、
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、5若しくは6員脂肪族環、5員芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化11】
であってYがCH−(CH2)n−CH3若しくはN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが0〜6の整数であるか、
R2がフェニルであり且つnが2〜6の整数であるか、
R2がモルホリニルであり且つnが3〜6の整数であるか、
R2が−O−(CH2)n−CH3であり且つnが1〜6であり、或いは
R1が直鎖、分岐鎖又は環状C5〜C10脂肪族基である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項9】
式
【化12】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項10】
式
【化13】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項11】
式
【化14】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項12】
式
【化15】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項13】
式
【化16】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項14】
式
【化17】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項15】
式
【化18】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項16】
式
【化19】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項17】
式
【化20】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項18】
式
【化21】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項19】
式
【化22】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項20】
式
【化23】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項21】
式
【化24】
を持つ、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項22】
R1が直鎖、分岐鎖又は環状C7〜C10脂肪族基である、請求項8に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項23】
式II
【化25】
[式中、R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が少なくとも1つの分岐がα位にある分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項24】
式
【化26】
を持つ、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
式
【化27】
を持つ、請求項23に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項26】
式
【化28】
を持つ、請求項23に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項27】
式
【化29】
を持つ、請求項23に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項28】
式IV
【化30】
[式中、Yは、−CH−(CH2)n−CH3又は−N(CO)(CH2)n−CH3であり、nは、0〜3の整数である]
を持つ、請求項1に記載の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項29】
式
【化31】
を持つ、請求項28に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項30】
式
【化32】
を持つ、請求項28に記載の(R)−エナンチオマー。
【請求項31】
請求項1に記載の式Iの化合物の(R)−エナンチオマーの製造方法であって、(R)−α−リポ酸と試薬とを、不活性ガス雰囲気下で室温において光を遮蔽して反応させるステップを含み、前記試薬がNH2−R1、
【化33】
及び
【化34】
[式中、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化35】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
Aは、ハロゲンであり、
nは、0〜6の整数である]
からなる群から選択される方法。
【請求項32】
前記(R)−α−リポ酸及び試薬が等モル量である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
医薬品として使用するための、式I
【化36】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化37】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2は、直鎖、分岐鎖若しくは環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3、ヘテロ原子を任意選択で含む5若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化38】
であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C3若しくは分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又はR3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマー。
【請求項34】
糖尿病、糖尿病性神経障害、肥満及びこれらに関連する病態の治療用医薬品を製造するための、式I
【化39】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化40】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖C1〜C3脂肪族基であり且つnが0〜2の整数であるか、或いは
R2が分岐鎖又は環状C1〜C6脂肪族基、−O−(CH2)n−CH3、−NH−CO−(CH2)n−CH3であり且つnが0〜6の整数であるか、或いは
R2が、ヘテロ原子を任意選択で含む5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、又は1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化41】
であってnが0〜6の整数であり、且つYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が、少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用。
【請求項35】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化42】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化43】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項37】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化44】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項38】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化45】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項39】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化46】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項40】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化47】
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項41】
前記(R)−エナンチオマーが式I
【化48】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化49】
であり、
R1は、−(CH2)n−R2であり、
R2が直鎖、分岐鎖又は環状C1〜C3脂肪族基であり且つnが1であるか、或いは
R2が−NH−CO−(CH2)n−CH3、−O−(CH2)n−CH3、5員若しくは6員脂肪族環若しくは芳香環、1若しくは2個の置換基で置換されている5員若しくは6員芳香環であって前記置換基が−OH、−O(アルキルC1〜C3)及び−OCO(アルキルC1〜C3)からなる群から選択されたもの、又は
【化50】
であってYがO、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であるものであり、且つnが1〜6の整数であり、
R3がH若しくはC1〜C3脂肪族基であり且つR4が、少なくとも1つの分岐がα位に存在する分岐鎖C3〜C12脂肪族基であるか、又は
R3がC1〜C3脂肪族基であり且つR4が直鎖C1〜C6脂肪族基である]
を持つ、請求項34に記載の使用。
【請求項42】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化51】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化52】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化53】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項45】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化54】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項46】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化55】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項47】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化56】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項48】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化57】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項49】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化58】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項50】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化59】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項51】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化60】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項52】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化61】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項53】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化62】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項54】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化63】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項55】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化64】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項56】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化65】
を持つ、請求項41に記載の使用。
【請求項57】
腫瘍治療において腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する医薬品を製造するための、式I
【化66】
[式中、
Xは、−NH−R1又は
【化67】
であり、
R1は、直鎖C6〜C12脂肪族基であるか、又は少なくとも1つのエチル分岐がα位に存在する分岐鎖C5〜C12脂肪族基であり、
Yは、O、CH−(CH2)n−CH3又はN(CO)(CH2)n−CH3であり、
nは、0〜6の整数である]
の化合物の(R)−エナンチオマーの使用。
【請求項58】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化68】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化69】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項60】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化70】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項61】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化71】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【請求項62】
前記(R)−エナンチオマーが式
【化72】
を持つ、請求項57に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−508165(P2012−508165A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533771(P2011−533771)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064770
【国際公開番号】WO2010/052310
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511109630)イスティテュート ビオキーミコ ナッツィオナーレ サーヴィオ エスアールエル (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064770
【国際公開番号】WO2010/052310
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511109630)イスティテュート ビオキーミコ ナッツィオナーレ サーヴィオ エスアールエル (1)
【Fターム(参考)】
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