説明

π電子共役系有機シラン化合物を用いた機能性有機薄膜及びその製造方法

【課題】 溶液プロセスを用いた簡便な方法により形成できるとともに、基板表面に強固に吸着でき、かつ、高い秩序性(結晶性)および高密パッキング特性を有する機能性有機薄膜およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 式;A−B−C−SiX(Aは炭素数1〜15の1価脂肪族炭化水素基;Bは酸素原子または硫黄原子;Cはπ電子共役を示す2価の有機基;X〜Xは加水分解により水酸基を与える基)の有機シラン化合物を用いた機能性有機薄膜。上記有機シラン化合物のシリル基を加水分解して基板表面と反応させ、該基板に直接吸着した単分子膜を形成した後、該単分子膜上の未反応の有機シラン化合物を非水系有機溶剤を用いて洗浄除去する機能性有機薄膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はπ電子共役系有機シラン化合物、特に、電気材料として有用なπ電子共役系有機シラン化合物を用いた機能性有機薄膜及びその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、膜中の分子配列を分子化学構造により制御し、その結果導電特性を制御可能なπ電子共役系有機シラン化合物を用いた機能性有機薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無機材料を用いた半導体に対し、製造が簡単で加工しやすく、デバイスの大型化にも対応でき、かつ量産によるコスト低下が見込め、無機材料よりも多様な機能を有した有機化合物を合成できることから、有機化合物を用いた半導体(有機半導体)の研究開発が行われ、その成果が報告されている。
【0003】
なかでも、π電子共役系分子を含有する有機化合物を利用することにより、大きな移動度を有するTFT(有機薄膜トランジスタ)を作製できることが知られている。この有機化合物としては、代表例としてペンタセンが報告されている(例えば、非特許文献1)。ここでは、ペンタセンを用いて有機半導体層を作製し、この有機半導体層でTFTを形成すると、電界効果移動度が1.5cm/Vsとなり、アモルファスシリコンよりも大きな移動度を有するTFTを構築することが可能であるとの報告がなされている。しかし、上記に示すような有機半導体層を作製する場合、抵抗加熱蒸着法や分子線蒸着法などの真空プロセスを必要とするため、製造工程が煩雑となるとともに、ある特定の条件下でしか結晶性を有する膜が得られない。また、基板上への有機化合物膜の吸着が物理吸着であるため、膜の基板への吸着強度が低く、容易に剥がれるという問題がある。更に、膜中での有機化合物の分子の配向をある程度制御するために、通常、膜を形成する基板に予めラビング処理等による配向制御が行われているが、物理吸着による成膜では、物理吸着した有機化合物と基板との界面での化合物の分子の整合性や配向性を制御できるとの報告は未だなされていない。
【0004】
一方、TFTの特性の代表的な指針となる電界効果移動度に大きな影響を及ぼす膜の規則性(すなわち結晶性)については、近年、その製造が簡便なことから、有機化合物を用いた自己組織化膜が着目され、その膜を利用する研究がなされている。自己組織化膜とは、有機化合物の一部を、基板表面の官能基と結合させたものであり、きわめて欠陥が少なく、高い秩序性(結晶性)を有した膜である。この自己組織化膜は、製造方法がきわめて簡便であるため、基板への成膜を容易に行うことができる。通常、自己組織化膜として、金基板上に形成されたチオール膜や、親水化処理により表面に水酸基を突出可能な基板(例えば、シリコン基板)上に形成されたケイ素系化合物膜が知られている。なかでも、耐久性が高い点で、ケイ素系化合物膜が注目されている。ケイ素系化合物膜は、従来から撥水コーティングとして使用されており、撥水効果の高いアルキル基や、フルオロアルキル基を有機官能基として有するシランカップリング剤が用いて成膜されていた。
【0005】
しかし、自己組織化膜の導電性は、膜に含まれるケイ素系化合物中の有機官能基によって決定されるが、市販のシランカップリング剤には、有機官能基にπ電子共役系分子が含まれる化合物はなく、そのため自己組織化膜に導電性を付与することが困難である。したがって、TFTのようなデバイスに適した、π電子共役系分子が有機官能基として含まれるケイ素系化合物が求められている。
【0006】
そのようなケイ素系化合物として、分子の末端に官能基としてチオフェン環を1つ有し、チオフェン環が直鎖炭化水素基を介してSiと結合した化合物が提案されている(例えば、特許文献1)。更に、ポリアセチレン膜として、化学吸着法により、基板上に−Si−O−ネットワークを形成して、アセチレン基の部分を重合させるものが提案されている(例えば、特許文献2)。また更に、有機材料として、チオフェン環の2、5位に直鎖炭化水素基がそれぞれ結合し、直鎖炭化水素の末端とシラノール基とが結合したケイ素化合物を用い、これを基板上に自己組織化させ、更に電界重合等により分子同士を重合させて導電性薄膜を形成し、この導電性薄膜を半導体層として使用した有機デバイスが提案されている(例えば、特許文献3)。更にまた、ポリチオフェンに含まれるチオフェン環にシラノール基を有するケイ素化合物を主成分とした半導体薄膜を利用した電界効果トランジスタが提案されている(例えば、特許文献4)。
【0007】
しかしながら、上記に提案されている化合物は、基板との化学吸着可能な自己組織化膜は作製可能であるが、TFTなどの電子デバイスに使用できる高い秩序性(結晶性)および電気伝導特性を有する膜を必ずしも作製できなかった。更に、上記に提案されている化合物を有機TFTの半導体層に使用した場合、オフ電流が大きくなる問題点を有していた。これは、提案されている化合物が、いずれも分子に垂直な方向に結合を有するためであると考えられる。
【0008】
高い秩序性(結晶性)を得るためには、分子間に高い引力相互作用が働く必要がある。分子間力とは、引力項と反発項により構成されており、前者は分子間距離の6乗に、後者は分子間距離の12乗に反比例する。したがって、引力項と反発項を足し合わせた分子間力は図4に示す関係を有する。ここで、図4での極小点(図中の矢印部分)が、引力項と反発項との兼ね合いから最も分子間に高い引力が作用するときの分子間距離である。すなわち、より高い結晶性を得るためには、分子間距離を極小点にできる限り近づけることが重要である。したがって、本来、抵抗加熱蒸着法や分子線蒸着法等の真空プロセスにおいては、ある特定の条件下においてのみ、π電子共役系分子同士の分子間相互作用をうまく制御することで、高い秩序性(結晶性)が得られている。このように分子間相互作用により構築される結晶性でのみ、高い電気伝導特性を発現することが可能となる。
【0009】
一方、上記化合物は、Si−O−Siの2次元ネットワークを形成することで基板と化学吸着し、かつ、特定の長鎖アルキル同士の分子間相互作用による秩序性が得られる可能性はあるが、例えば、官能基である1つのチオフェン分子がπ電子共役系に寄与するのみであるため、分子間の相互作用が弱く、また電気伝導性に不可欠なπ電子共役系の広がりが非常に小さいという問題があった。仮に、上記官能基であるチオフェン分子の分子数を増やすことができたとしても、膜の秩序性を形成する因子が、長鎖アルキル部とチオフェン部との間で、分子間相互作用を整合一致させることは困難である。
【0010】
更に、電気伝導特性としては、官能基である1つのチオフェン分子では、HOMO−LUMOエネルギーギャップが大きく、有機半導体層としてTFT等に使用しても、十分なキャリア移動度が得られないという課題が存在していた。
【0011】
π電子共役系ユニットの分子間相互作用を増大させて、かつ十分なキャリア移動度を得る手法として、π電子共役系ユニットの共役長を増大させることが挙げられる。前述のペンタセン、環数の多いオリゴチオフェン等の構造である。しかしながら、これらのπ電子共役系ユニットを有する化合物は溶媒に対する溶解性が乏しく、特定の条件下でのみでしか高い秩序性(結晶性)を有する膜を得ることができない。また、真空プロセスでは、プロセスとして煩雑及び高コストとなるという欠点がある。
【0012】
有機分子の配列を制御し、かつ成膜するプロセスとして、スピンコート法及び化学吸着を利用する溶液プロセスがある。溶液プロセスでは装置の小型化、低コストが実現できる。しかしながら、溶液プロセスを用いて成膜可能な材料とするためには、材料に対して溶解性が求められる。今日、有機デバイス材料として研究・開発に用いられている材料は、π電子共役系化合物、たとえばオリゴチオフェン系、ペンタセン等の、単環及び複素環の芳香族および複素環系等が挙げられるが、これらの材料は溶媒に対する溶解性及び溶媒の選択性が非常に乏しい。
【0013】
これらの性質を改善するために、単環及び複素環の芳香族および複素環系化合物に、ハロゲン原子による置換または無置換のアルキル基等の直鎖状炭化水素基を直接的に導入した系が多く合成されている。疎水性の置換基または末端基を導入することで溶媒に対する溶解性を向上させることが可能となる。
【非特許文献1】IEEE Electron Device Lett.,18,606-608(1997)
【特許文献1】特許第2889768号公報
【特許文献2】特公平6−27140号公報
【特許文献3】特許第2507153号公報
【特許文献4】特許第2725587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記炭化水素基を化合物に直接的に導入した場合、当該炭化水素基部分の配列が電気特性を支配するπ電子共役系部分の配列や隣接分子間距離に影響を及ぼす。
例えば、炭素数が約15以下の炭化水素基を導入した場合には、当該炭化水素基部分が凝集を起こしたり、または比較的ランダムに配列して、アモルファス性を示すようになる。炭化水素基部分がアモルファス構造をとると、当該炭化水素基部分の分子運動性が高くなり、並進、回転、振動等を起こすため、炭化水素基部分が直接結合しているπ電子共役系部分の秩序性を低下させる。その結果、隣接分子間距離が比較的大きくなり、得られる膜の電気伝導特性が低下する。
【0015】
また例えば、炭素数が約16以上の炭化水素基を導入した場合には、当該炭化水素基部分およびπ電子共役系部分の秩序性はある程度改善されるが、π電子共役系部分は炭化水素基部分の秩序性に影響を受け、当該炭化水素基部分の秩序性に対応した秩序性しか有さない。その結果、やはり隣接分子間距離が比較的大きくなり、得られる膜の電気伝導特性が低下する。
【0016】
このようにπ電子共役系部分を、電気伝導に適した構造、すなわち秩序性(結晶性)がより高く、かつ隣接分子間距離がより小さい構造とするためには、導入された置換基によってπ電子共役系部分の構造が乱されないことが要求される。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、溶液プロセスを用いた簡便な製造方法により容易に形成できるとともに、基板表面に強固に吸着させて、物理的な剥がれを防止でき、かつ、高い秩序性(結晶性)および高密パッキング特性を有する機能性有機薄膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
本発明はまた、TFTのような半導体電子デバイスに用いた場合に、十分なキャリア移動度を確保できる機能性有機薄膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
本明細書中、高密パッキング特性とは、膜形成時において隣接分子間距離、特にπ電子共役系部分間の距離をより小さくすることができ、結果として化合物分子が比較的高密度で配列し得る特性をいう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、一般式(I);
A−B−C−SiX (I)
(式中、Aは水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい炭素数1〜15の1価脂肪族炭化水素基である;Bは酸素原子または硫黄原子である;Cはπ電子共役を示す2価の有機基である;X〜Xは加水分解により水酸基を与える基である)で表されるπ電子共役系有機シラン化合物を用いて形成された単分子膜を有する機能性有機薄膜に関する。
【0021】
本発明はまた、一般式(I);A−B−C−SiX (I)
(式中、Aは水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい炭素数1〜15の1価脂肪族炭化水素基である;Bは酸素原子または硫黄原子である;Cはπ電子共役を示す2価の有機基である;X〜Xは加水分解により水酸基を与える基である)で表されるπ電子共役系有機シラン化合物におけるシリル基を加水分解して基板表面と反応させ、基板に直接吸着した単分子膜を形成した後、該単分子膜上の未反応の有機シラン化合物を非水系有機溶剤を用いて洗浄除去する機能性有機薄膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のπ電子共役系有機シラン化合物は、脂肪族炭化水素基をエーテル結合またはチオエーテル結合を介してπ電子共役系分子に結合させることで、結合の配向方向を広げることができる。そのため、膜中において、脂肪族炭化水素基の導入によって、π電子共役系部分の結晶構造が破壊されることがなく、キャリア移動に最適なπ電子共役系部分の秩序性(結晶性)および高密パッキング特性を確保できる。
【0023】
本発明の有機シラン化合物は、当該化合物分子間で形成されるシリル基由来のSi−O−Siの2次元ネットワーク化により、基板に化学吸着すると共に、膜の高結晶化および高密パッキング化に必要な分子間相互作用(分子を近距離化させる力)が、効率的に働くため、非常に高い安定性を有し、且つ、高度な結晶化および高密なパッキング化がなされた薄膜を構成できる。そのため、化合物分子間での良好まホッピング伝導により、キャリアの移動がスムーズに行われる。また、分子軸方向へも高い導電性が得られる。よって、導電性材料として、有機薄膜トランジスタ材料のみならず、太陽電池、燃料電池、センサー等のデバイスに広く応用することが可能となる。さらに、基板に物理吸着により作製した膜と比較して、膜を強固に基板表面に吸着させて、物理的な剥がれを防止できる。
【0024】
本発明の有機シラン化合物は、疎水基として脂肪族炭化水素基を有しているため、非水系溶媒に比較的高い溶解性をもつ。従って、例えば薄膜を形成する場合に、比較的簡便な手法である溶液プロセスを適用できる。しかも、本発明の有機シラン化合物は簡便に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(有機シラン化合物)
本発明のπ電子共役系有機シラン化合物は一般式(I);
A−B−C−SiX (I)
で表されるものである。以下、当該化合物を有機シラン化合物(I)という。
【0026】
式(I)中、Aは炭素数1〜15、好ましくは1〜10の1価脂肪族炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基Aは直鎖状または分枝鎖状であってよく、膜の秩序性および高密パッキング性の観点から好ましくは直鎖状である。
また脂肪族炭化水素基Aは水素原子がハロゲン原子、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、好ましくはフッ素原子によって置換されていてもよい。脂肪族炭化水素基Aがハロゲン原子によって置換されている場合、当該基の炭素数は1〜12が好ましい。
また脂肪族炭化水素基Aは不飽和または飽和であってよく、好ましくは飽和脂肪族炭化水素基である。
【0027】
好ましい脂肪族炭化水素基Aは上記炭素数を有するアルキル基である。好ましい具体例として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基、ならびにそれらの基の1またはそれ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたものが挙げられる。
【0028】
式(I)中、Bは酸素原子または硫黄原子である。本発明の有機シラン化合物(I)(B=酸素原子)を用いて得られた薄膜における当該化合物分子の配向を示す模式図(図1(A))に示されるように、B基(酸素原子(エーテル結合)または硫黄原子(チオエーテル結合))を介して上記炭化水素基Aを導入することで、炭化水素基Aに対する有機基C(π電子共役系部分)の結合角(α)を大きくできる。すなわち、C−O−C結合またはC−S−C結合の方がC−C−C結合よりも結合角が大きい。よって、有機基Cの配列が炭化水素基Aの配列によって比較的影響を受け難い。
そのため、たとえ炭化水素基Aがアモルファス状態で凝集し、ランダムに配列しても、有機基Cの配列構造における隣接分子間距離をより小さくすることができるので、高密パッキング性が向上し、当該構造における乱れを抑制できる。
一方、B基を介することなく、炭化水素基Aを直接的に有機基Cに導入すると、図1(B)に示すように、炭化水素基Aに対する有機基Cの結合角(β)が比較的小さいので、有機基Cの配列が炭化水素基Aの配列によって影響を受けやすい。その結果、有機基Cの配列構造における隣接分子間距離が比較的大きくなるので、高密パッキング性が低下し、当該構造における乱れが生じやすいと考えられる。
【0029】
式(I)中、Cはπ電子共役を示す2価の有機基であれば特に制限されず、すなわちπ電子共役を示す骨格(π電子共役性骨格)を含有する分子から2個の水素原子を除いた残基である。π電子共役とは、1つのσ結合及び1つのπ結合により形成された結合を有し、π結合をつかさどるπ電子が非局在化することを意味する。π電子が非局在化する分子が大きくなることはπ電子の移動距離が増大することとなるので、得られる薄膜の電気伝導特性が向上し、TFTのような半導体電子デバイスに用いた場合にキャリア移動度が向上する。
【0030】
そのような有機基Cは、単環系芳香族環ユニット、縮合系芳香族環ユニット、単環系芳香族複素環ユニット、縮合系芳香族複素環ユニット、および不飽和脂肪族ユニットからなる群から選択される1またはそれ以上のユニットより構成され、直鎖状または分枝鎖状であってよい。膜の秩序性および高密パッキング性の観点から好ましくは有機基Cは直鎖状である。
【0031】
上記各ユニットの具体例について、以下、説明するが、各ユニットの結合位置、すなわち他のユニット、前記B基またはシリル基(−SiX)に対する結合位置は特に制限されるものではない。例えば、ユニットが単環系芳香族複素5員環ユニットである場合には、2,5−位、3,4−位、2,3−位、2,4−位等のいずれでもよく、なかでも膜の秩序性および高密パッキング性のさらなる向上の観点からは2,5−位が好ましい。また例えば、ユニットが単環系芳香族環ユニットまたは単環系芳香族複素環ユニットであって6員環の場合には、1,4−位、1,2−位、1,3−位等のいずれでもよく、なかでも膜の秩序性および高密パッキング性のさらなる向上の観点からは1,4−位が好ましい。なお、結合位置を示す上記値は、環が1個のヘテロ原子を有する場合は当該ヘテロ原子を基準に、環が2個以上のヘテロ原子を有する場合は分子量が最も大きいヘテロ原子を基準に、環がヘテロ原子を有しない場合は任意の炭素原子を基準にした値である。また例えば、ユニットが縮合系芳香族環ユニットまたは縮合系芳香族複素環ユニットであって点対称性を有する場合には、2つの結合位置を結んだ線が点対称性の基準となる中心点を通るような結合位置であることが好ましい。また例えば、ユニットが縮合系芳香族環ユニットまたは縮合系芳香族複素環ユニットであって線対称性を有する場合には、2つの結合位置を結んだ線が線対称性の基準となる中心線の中点を通るような結合位置であることが好ましい。なお、上記ではユニットが結合位置を2つ有する場合について記載しているが、ユニットが3つ以上の結合位置を有する場合においても、そのうちの2つの結合位置は上記と同様の結合位置が好ましく、この場合残りの1つの以上の結合位置は特に制限されるものではない。
【0032】
単環系芳香族環ユニットの具体例として、例えば、ベンゼンが挙げられる。
【0033】
縮合系芳香族環ユニットの具体例として、例えば、一般式(II);
【化1】

(式中、mは0〜10の整数である)で表されるアセン系列化合物類、フェン系列化合物類、ペリ縮環化合物類、アズレン、フルオレン、アントラキノン、アセナフチレン等が挙げられる。アセン系列化合物類として、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、ペンタセン等が挙げられる。フェン系列化合物類として、フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、等が挙げられる。ペリ縮環化合物類として、ペリレン等が挙げられる。好ましい縮合系芳香族環ユニットはアセン系列化合物類、である。
【0034】
単環系芳香族複素環ユニットの具体例として、例えば、以下のユニットが挙げられる。
【化2】

【0035】
【化3】

【0036】
上記具体例中、Yは共通して4A族および4B族元素で表されるヘテロ原子であり、例えば、Si、Ge、Sn、TiまたはZrである。
IIは共通して5B族元素で表されるヘテロ原子であり、例えば、N、Pである。
IIIは共通して6B族元素で表されるヘテロ原子であり、例えば、O、S、SeまたはTeである。
、YIIおよびYIIIのうちの1種のY基が1のユニットに2個以上含まれる場合、それらのY基はそれぞれ独立して上記範囲内で選択されればよい。
【0037】
単環系芳香族複素環ユニットの好ましい具体例として、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、オキサゾール、イミダゾール、シロール、セレノフェン、ピリジン、ピリミジン等が挙げられる。特に好ましい単環系芳香族複素環ユニットはチオフェンである。
【0038】
縮合系芳香族複素環ユニットは、上記単環系芳香族複素環ユニット同士の縮合系化合物、および上記単環系芳香族複素環ユニットと上記単環系芳香族ユニットとの縮合系化合物である。縮合系芳香族複素環ユニットの具体例として、例えば、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサジン等が挙げられる。
【0039】
不飽和脂肪族ユニットとして、アルケン類、アルカジエン類、及びアルカトリエン類が挙げられる。アルケン類は炭素数2〜4のものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等が挙げられる。アルカジエン類は炭素数4〜6のものが好ましく、例えば、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等が挙げられる。アルカトリエン類は炭素数6〜8のものが好ましく、例えば、ヘキサトリエン、ヘプタトリエン、オクタトリエン等が挙げられる。
【0040】
上記各ユニットは、有機基Cが直鎖状である場合には2個の水素原子を除かれた2価の基となって直鎖状に結合されて有機基Cを構成するが、有機基Cが分枝鎖状であって当該ユニットが分枝鎖状有機基Cの分岐点となる場合には3個以上の水素原子を除かれた3価以上の基となって有機基Cを構成する。
【0041】
有機基Cは有機基C自体の相互作用性の観点から単環系芳香族環ユニット、縮合系芳香族環ユニットおよび単環系芳香族複素環ユニットからなる群から選択される1またはそれ以上のユニットより構成されることが好ましい。
【0042】
有機基Cは本発明の有効性の観点から縮合系芳香族環ユニット、単環系芳香族複素5員環ユニットまたは縮合系芳香族複素環ユニットを含むことが好ましい。それらのユニットは5員環または縮合環であって分子の対称性が崩れ易いので、従来のように炭化水素基Aを直接的に有機基Cに導入すると、薄膜における有機基Cの配列構造において高密パッキング性の低下や配列の乱れがより一層生じやすくなるが、本発明においては有機基Cがそのようなユニットを含んでもエーテル結合またはチオエーテル結合の導入によって高密パッキング性の低下や配列の乱れを有効に防止できるためである。
【0043】
有機基Cを構成するユニット数は特に制限されるものではないが、収率の観点から1〜30個、特に1〜10個が好ましい。経済性および量産化の観点からは1〜8個が好ましい。
【0044】
有機基Cを構成するユニット数が2以上のとき、全てのユニットが同一であってもよいし、または一部または全部のユニットが異なっていてもよい。
【0045】
有機基Cが複数種類のユニットからなる場合、複数種類のユニットは規則的な繰り返し単位で配列されて結合していてもよいし、またはランダムに配列されて結合していてもよい。
【0046】
有機基Cは、得られる膜の秩序性(結晶性)および高密パッキング特性が阻害されない範囲内であれば、置換基を有していてもよい。そのような置換基として、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又は、カルボキシル基等が挙げられる。これらの置換基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子等のハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0047】
アルキル基は炭素数1〜3のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
アルケニル基は炭素数2〜3のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
アラルキル基は炭素数7〜8のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0048】
式(I)中、X〜Xは加水分解により水酸基を与える基である。加水分解により水酸基を与える基としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン原子又は低級アルコキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素原子が挙げられる。低級アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられ、その一部が更に別の官能基(トリアルキルシリル基、他のアルコキシ基等)で置換されたものでもよい。X、X及びXは同一であっても、または一部または全部が異なっていてもよいが、全てが同一であることが好ましい。
【0049】
以上のような有機シラン化合物(I)の具体例として、例えば、以下の一般式(1)〜(14)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
一般式(1)〜(14)において以下に示す共通する番号の基および記号は同様の意味内容を有するものとする。
A、BおよびX〜Xはそれぞれ式(I)においてと同様である。
Rは水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜3のアルケニル基、炭素数7〜8のアラルキル基、又は、カルボキシル基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基である。各一般式において複数のRがある場合、それらのRはそれぞれ独立して上記範囲内から選択されればよい。
【0054】
他の基および記号については以下、各式において個別に説明する。
一般式(1)中、YはN,O,S,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrであり、好ましくはSである。詳しくはYがSi,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y(R−、YがN,Pのときは−Y(R)−であり、YがO,S,Se、Teのときは−Y−である。ただし、Rは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基であり、好ましくは水素原子、メチル基である。n1は1〜30、好ましくは1〜8の整数である。
【0055】
一般式(2)中、YはO,S,SeまたはTeであり、好ましくはSである。詳しくはYがO,S,Se、Teのときは−Y−である。n1は1〜30、好ましくは1〜8の整数である。
【0056】
一般式(3)中、YはC,N,Si,Ge,P,Sn,TiまたはZrであり、好ましくはCである。詳しくはYがC,Si,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y(R)=、YがN,Pのときは−Y=である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
n1は1〜30、好ましくは1〜8の整数である。
【0057】
一般式(4)中、YおよびYはそれぞれ独立してC,Si,Ge,Sn,TiまたはZrであり、好ましくはSi、Geである(ただし、YおよびYが同時にCである場合を除く)。n1は1〜30、好ましくは1〜8の整数である。
【0058】
一般式(5)中、Y〜Yはそれぞれ独立してS,N,O,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrである(但し、Y〜Yが同じ原子である場合を除く)。詳しくはYがC,Si,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y(R−、YがN,Pのときは−Y(R)−であり、YがS、O、Se、Teのときは−Y−である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。詳しいYおよびYは上記詳しいYに準じるものとする。
n2+n3+n4は3〜30の整数である。但し、n2は1以上、n3は1以上、n4は1以上である。
【0059】
一般式(6)中、Y10はN,O,S,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY10がSi,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y10(R−、Y10がN,Pのときは−Y10(R)−であり、Y10がO,S,Se、Teのときは−Y10−である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
およびY11はそれぞれ独立してN,C,Si,Ge,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはYがC,Si,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y(R)=、YがN、Pのときは−Y=である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。詳しいY11は上記詳しいYに準じるものとする。
n2+n3+n4は3〜30の整数である。但し、n2は1以上、n3は1以上、n4は1以上である。
【0060】
一般式(7)中、Y12〜Y13はそれぞれ独立してS,N,O,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY12がSi,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y12(R−、Y12がN,Pのときは−Y12(R)−であり、Y12がS、O、Se、Teのときは−Y12−である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。詳しいY13は上記詳しいY12に準じるものとする。
n5+n6は2〜30、好ましくは2〜8の整数である。但し、n5は1以上、n6は1以上である。
【0061】
一般式(8)中、Y14はS,N,O,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY14がSi,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y14(R−、Y14がN,Pのときは−Y14(R)−であり、Y14がS,O,Se、Teのときは−Y14−である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
15はN,C,Si,Ge,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY15がC,Si,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y15(R)=、Y15がN、Pのときは−Y15=である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
n5+n6は2〜30、好ましくは2〜8の整数である。但し、n5は1以上、n6は1以上である。
【0062】
一般式(9)中、Y16はS,N,O,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY16がSi,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y16(R−、Y16がN,Pのときは−Y16(R)−であり、Y16がS,O,Se、Teのときは−Y16−である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
17はN,C,Si,Ge,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY17がC,Si,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y17(R)=、Y17がN、Pのときは−Y17=である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
n5+n6は2〜30、好ましくは2〜8の整数である。但し、n5は1以上、n6は1以上である。
【0063】
一般式(10)中、Y18〜Y19はそれぞれ独立してS,N,O,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY18がSi,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y18(R−、Y18がN,Pのときは−Y18(R)−であり、Y18がS、O、Se、Teのときは−Y18−である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。詳しいY19は上記詳しいY18に準じるものとする。
n5+n6は2〜30、好ましくは2〜8の整数である。但し、n5は1以上、n6は1以上である。
【0064】
一般式(11)中、Y20はS,N,O,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY20がSi,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y20(R−、Y20がN,Pのときは−Y20(R)−であり、Y20がS,O,Se、Teのときは−Y20−である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
21はN,C,Si,Ge,P,Sn,TiまたはZrである。詳しくはY21がC,Si,Ge,Sn,Ti,Zrのときは−Y21(R)=、Y21がN、Pのときは−Y21=である。ただし、Rは式(1)においてと同様であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
n5+n6は2〜30、好ましくは2〜8の整数である。但し、n5は1以上、n6は1以上である。
【0065】
一般式(12)中、n7は1〜28、好ましくは1〜8の整数である。
【0066】
(合成方法)
以下、本発明の有機シラン化合物(I)の合成方法を後述の具体例(合成ルート1〜2)を参照しながら説明する
まず、一般式(III);H−C−H (III)
(式中、Cは前記式(I)の有機基Cと同義である)で表されるπ電子共役性骨格含有分子に対して、ウィリアムソン反応によりエーテル結合(−O−))またはチオエーテル結合(−S−)を介して1価脂肪族炭化水素基Aを導入する。
【0067】
ウィリアムソン反応では、予め、π電子共役性骨格含有分子の所定部位にヒドロキシル基を導入しておき、該ヒドロキシル化合物を、水酸化ナトリウム、純水等の存在下で、所定の1価脂肪族炭化水素基Aを含有するモノハロゲン化アルカンまたはスルホン酸アルキルエステルと反応させることで、結果としてπ電子共役性骨格含有分子に1価脂肪族炭化水素基Aをエーテル結合を介して導入する(例えば、合成ルート1;第1〜第3反応式参照)。例えば、n−クロロサクシンイミド、クロロホルム、酢酸溶液中にπ電子共役性骨格含有分子を溶解させて反応させることで末端水素のクロロ化を行い、窒素雰囲気下、フラスコ中に入れた溶液を攪拌して、π電子共役性骨格含有分子のクロロ化合物を得る。該クロロ化合物を、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解させ、過剰の純水と混合させる。この溶液を100℃で反応させることで、クロロ化した末端をヒドロキシル化する。該ヒドロキシル化合物をn−アルキルブロミド、水酸化ナトリウム、THF、純水中に混合し反応させることで、ヒドロキシル基をウィリアムソン合成法によりエーテル化する。
【0068】
チオエーテル化は、前述のエーテル化反応と同様の方法で行うことができる。アルキルチオールを水酸化ナトリウムのような水酸化物イオンの塩基共存下でアルキル化することにより合成される。塩基によって、アルカンチオラートイオンが発生して、これがハロアルカンと反応する。本発明においては、例えば、n−クロロサクシンイミド、クロロホルム、酢酸溶液中にπ電子共役性骨格含有分子を溶解させて反応させることで末端水素のクロロ化を行い、窒素雰囲気下、フラスコ中に入れた溶液を攪拌して、π電子共役性骨格含有分子のクロロ化合物を得る。該クロロ化合物を、アルカンチオール、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解させる。この溶液を110℃で反応させることで、クロロ化した末端をチオエーテル化することができる。
【0069】
次いで、一般式(IV);X−SiX (IV)
(式中、X、XおよびXは前記式(I)においてと同義である;Xは水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素原子)又は低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)であるで表されるシラン化合物との反応によりシリル基を導入する。
【0070】
この反応では、上記反応で得られたエーテル化物の所定部位を予めハロゲン化しておき、該ハロゲン化物を、n−BuLiの存在下で、所定のシラン化合物と反応させることでシリル基を導入し、結果として有機シラン化合物(I)を得る(例えば、合成ルート1;第4〜第5反応式、合成ルート2;第3〜第4反応式参照)。
【0071】
本発明の有機シラン化合物(I)の合成方法の具体例を以下に示す。なお、以下では特定のπ電子共役性骨格含有分子を用いた場合の合成ルートが示されているが、他のπ電子共役性骨格含有分子を用いる場合もまた以下の合成ルートに準じて1価脂肪族炭化水素基Aのエーテル結合またはチオエーテル結合を介した導入およびシリル基の導入が可能であることは明らかである。
【0072】
【化7】

【0073】
【化8】

【0074】
以上のようにして得られる有機シラン化合物(I)は、公知の手段、例えば転溶、濃縮、溶媒抽出、分留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等により反応溶液から単離、精製することができる。
【0075】
本発明の有機シラン化合物(I)の合成で使用される前記一般式(III)のπ電子共役性骨格含有分子は市販品として入手されてもよいし、または以下に示すような公知の方法によって合成されてもよい。
【0076】
アセン骨格含有分子
アセン骨格含有分子の合成方法としては、例えば方法(1);原料化合物の所定位置の2つの炭素原子に結合する水素原子をエチニル基で置換した後に、エチニル基同士を閉環反応させ工程を繰り返す方法、方法(2);原料化合物の所定位置の炭素原子に結合する水素原子をトリフラート基で置換し、フラン又はその誘導体と反応させ、続いて酸化させる工程を繰り返す方法等が挙げられる。これらの方法を用いたアセン骨格の合成法の一例を以下に示す。
【0077】
【化9】

【0078】
【化10】

【0079】
また、上記方法(2)では、アセン骨格のベンゼン環を一つずつ増やす方法であるため、例えば原料化合物の所定部分に反応性の小さな官能基あるいは保護基が含まれていても同様にアセン骨格を合成できる。この場合の例を以下に示す。
【0080】
【化11】

【0081】
なお、Ra、Rbは、炭化水素基やエーテル基等の反応性の小さな官能基あるいは保護基であることが好ましい。
また、上記方法(2)の反応式中、2つのアセトニトリル基及びトリメチルシリル基を有する出発化合物を、これら基が全てトリメチルシリル基である化合物に変更してもよい。また、上記反応式中、フラン誘導体を使用した反応後、反応物をヨウ化リチウム及びDBU(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)下で、還流させることで、出発化合物よりベンゼン環数が1つ多く、かつヒドロキシル基が2つ置換した化合物を得ることができる。
【0082】
アセナフテン骨格含有分子及びペリレン骨格含有分子
アセナフテン骨格含有分子及びペリレン骨格含有分子も、上記アセン骨格の製法の方法(1)に準じて合成できる(方法(3))。製法の一例を下記する。
【0083】
【化12】

【0084】
一般式(1)(Y=S,O,N)の有機シラン化合物を合成するときに使用されるπ電子共役性骨格含有分子
以下では、チオフェン骨格含有分子の合成例を示す。ただし、チオフェン骨格含有分子と同様の方法を用いれば、O、Nを含む複素環骨格含有分子についても合成できる。
チオフェン骨格含有分子の合成方法としては、まず、チオフェンの反応部位をハロゲン化させた後に、グリニヤール反応を利用する方法が有効である。この方法を使用すれば、チオフェン環の数を制御できる。また、グリニヤール試薬を適用する方法以外にも、適当な金属触媒(Cu、Al、Zn、Zr、Sn等)を利用したカップリングによっても合成することができる。
【0085】
更に、チオフェン骨格含有分子については、グリニヤール試薬を利用する方法以外に、下記合成方法を利用することができる。
すなわち、まず、チオフェンの2’位あるいは5’位をハロゲン化(例えば、クロロ化)させる。ハロゲン化させる方法としては、例えば、1当量のN−クロロスクシンイミド(N-Chlorosuccinimide:NCS)処理や、オキシ塩化燐(phosphorus oxychloride:POCl3)処理が挙げられる。このときの溶媒としては、例えばクロロホルム・酢酸(AcOH)混合液やDMFが使用できる。また、ハロゲン化したチオフェン同士を、DMF溶媒中でトリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(tris(triphenylphosphine)Nickel:(PPh3Ni)を触媒として反応させることによって、結果的にハロゲン化させた部分でチオフェン同士を直接結合できる。
【0086】
更に、ハロゲン化したチオフェンに対して、ジビニルスルホンを加え、カップリングさせることにより1,4−ジケトン体を形成させる。続いて、乾燥トルエン溶液中で、ローウェッソン剤(Lawesson Regent:LR)あるいはP410を加え、前者の場合一晩、後者の場合3時間程度還流させることによって、閉環反応を起こさせる。その結果、カップリングしたチオフェンの合計数よりもひとつチオフェンの数が多いチオフェン骨格含有分子を合成できる。
チオフェンの上記反応を利用して、チオフェン環の数を増加させることができる。
【0087】
一例として、チオフェン骨格含有分子の合成方法を以下に示す。なお、下記合成例では、チオフェンの2量体から4量体への反応、およびチオフェンの3量体から6あるいは7量体への反応のみを示した。しかし、ユニット数の異なるチオフェンと反応させれば、前記4,6あるいは7量体以外のチオフェン骨格含有分子を形成できる。例えば、2−クロロチオフェンをカップリングした後にNCSによりクロロ化させた2−クロロビチオフェンに、チオフェン3量体の2−クロロ体を反応させることによって、チオフェン5量体を形成できる。更には、チオフェン4量体をNCSによりクロロ化させれば更にチオフェン8あるいは9量体も形成することができる。
【0088】
【化13】

【0089】
一般式(1)(Y=Si,Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zr)の有機シラン化合物を合成するときに使用されるπ電子共役性骨格含有分子
以下では、セレノフェン骨格含有分子およびシロール骨格含有分子の合成例を示す。ただし、これらの分子と同様の方法を用いれば、Ge,Te,P,Sn,TiまたはZrを含む複素環骨格含有分子についても合成できる。
【0090】
セレノフェン骨格含有分子の合成方法としては、「Polymer (2003,44,5597-5603)」で報告がなされており、本発明においても、前記報告での方法に基づいて合成可能である。
また、シロール骨格含有分子の合成方法としては、「Journal of Organometallic Chemistry(2002,653,223-228)」、「Journal of Organometallic Chemistry (1998,559,73-80)」、「Coordination Chemistry Reviews (2003,244,1-44)」の報告がなされており、本発明においても、前記報告での方法に基づいて合成である。
【0091】
これらの方法において、特に、単環式複素環(セレノフェン環、シロール環)ユニットの数は、出発原料として予め用意した当該複素環ユニットを含有する化合物の所定部位をハロゲン化し、得られたハロゲン化物と該ユニット含有グリニヤール試薬を用いてグリニヤール反応を行う操作を繰り返すことによって制御可能である。
【0092】
【化14】

【0093】
上記方法では、セレノフェンの1量体から2あるいは3量体を合成する反応が示されている。この手法によりセレノフェン環の数を一つずつ増やすことが可能であるため、4量体以上のセレノフェン骨格含有分子についても同様の反応を繰り返すことによって合成可能である。
【0094】
【化15】

【0095】
上記方法では、シロールの1量体から2あるいは4〜6量体を合成する反応が示されている。この手法においても、シロール環の数を一つずつ増やすことが可能であるため、3量体あるいは7量体以上の前駆体についても同様の反応を繰り返すことによって合成可能である。なお、当該方法においてはブロモ化反応を省略している。ブロモ化は前記セレノフェン骨格含有分子の合成方法におけるブロモ化と同様の方法によって達成可能である。
【0096】
また、セレノフェン骨格含有分子およびシロール骨格含有分子は、上記のようにグリニヤール試薬を適用する方法以外にも、適当な金属触媒(Cu、Al、Zn、Zr、Sn等)を利用したカップリングによっても単環式複素環ユニットの数を制御しつつ合成できる。
【0097】
一般式(3)(Y=C,N,Si,Ge,P,Sn,TiまたはZr)の有機シラン化合物を合成するときに使用されるπ電子共役性骨格含有分子
以下では、ベンゼン骨格含有分子の合成例を示す。ただし、ベンゼン骨格含有分子と同様の方法を用いれば、N,Si,Ge,P,Sn,TiまたはZrを含む複素環骨格含有分子についても合成できる。
ベンゼン骨格含有分子の合成方法としては、まず、ベンゼンの反応部位をハロゲン化させた後に、グリニヤール反応を利用する方法が有効である。この方法を使用すれば、ベンゼン環の数を制御できる。また、グリニヤール試薬を適用する方法以外にも、適当な金属触媒(Cu、Al、Zn、Zr、Sn等)を利用したカップリングによっても合成することができる。
【0098】
一例として、ベンゼン骨格含有分子の合成方法を以下に示す。なお、下記合成例では、ベンゼンの3量体から(3+m)量体への反応のみを示した。しかし、ユニット数の異なる出発原料を反応させれば、前記4〜7量体以外のベンゼン骨格含有分子を形成できる。
【0099】
【化16】

【0100】
一般式(5)(Y=Y=Y=S,N,O,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zr)の有機シラン化合物を合成するときに使用されるπ電子共役性骨格含有分子
前記一般式(5)の有機シラン化合物を誘導し得るブロック型π電子共役性骨格含有分子(前記一般式(5)の化合物においてシリル基およびA−B−基がHに置換されたもの)は、各ブロックユニットを含有する化合物を合成し、それらを結合させることにより合成可能である。その結合方法としては、例えば、Suzukiカップリングを使用する方法、あるいはグリニヤール反応を使用する方法がある。
【0101】
例えば、シロール環を有する化合物の両末端に、チオフェン由来のユニットをそれぞれ結合させる方法としては、まず、シロール環を有する化合物にn−BuLi、B(O−iPr)を付与することによって脱ブロモ化及びホウ素化させる。このときの溶媒は、エーテルが好ましい。また、ホウ素化させる場合の反応は、2段階であり、初期は反応を安定化させるために1段階目は−78℃で行い、2段階目は−78℃から室温に徐々に温度を上昇させることが好ましい。続いて、末端にハロゲン基(例えば、ブロモ基)を有する単純チオフェン系化合物と上記のホウ素化された化合物を、例えばトルエン溶媒中に展開させ、Pd(PPh、NaCOの存在下、85℃の反応温度にて、反応を完全に進行させれば、カップリングを起こさせることが可能である。なお、シロール環を有する化合物を用いる場合について説明したが、ヘテロ原子としてS,N,O,Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zrを含有する単環式複素環化合物についても、2,5−位の反応性はシロールと同様である。したがって、上記と同様の合成方法により、S,N,O,Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zrをヘテロ原子として含有する単環式複素環化合物の両末端に、チオフェン由来のユニットをそれぞれ結合させることができる。また、上記ではチオフェン由来のユニットを結合させる場合について説明したが、チオフェン由来のユニット部分が、前記N,O,Si、Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zrをヘテロ原子として含む単環式複素5員環化合物に由来するユニットであってもかまわない。
【0102】
【化17】

【0103】
一般式(6)(Y10=N,O,S,Si,Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zr、Y=Y11=N,C,Si,Ge,P,Sn,Ti,Zr)の有機シラン化合物を合成するときに使用されるπ電子共役性骨格含有分子
前記一般式(6)の有機シラン化合物を誘導し得るブロック型π電子共役性骨格含有分子(前記一般式(6)の化合物においてシリル基およびA−B−基がHに置換されたもの)は、上記一般式(5)の有機シラン化合物を誘導し得るブロック型π電子共役性骨格含有分子と同様の方法により合成可能である。
【0104】
すなわち、シロール環を有する化合物の両末端に、ベンゼン由来のユニットをそれぞれ結合させる方法としては、まず、シロール環を有する化合物にn−BuLi、B(O−iPr)を付与することによって脱ブロモ化及びホウ素化させる。このときの溶媒は、エーテルが好ましい。また、ホウ素化させる場合の反応は、2段階であり、初期は反応を安定化させるために1段階目は−78℃で行い、2段階目は−78℃から室温に徐々に温度を上昇させることが好ましい。続いて、末端にハロゲン基(例えば、ブロモ基)を有する単純ベンゼン系化合物と上記のホウ素化された化合物を、例えばトルエン溶媒中に展開させ、Pd(PPh、NaCOの存在下、85℃の反応温度にて、反応を完全に進行させれば、カップリングを起こさせることが可能である。なお、シロール環を有する化合物を用いる場合について説明したが、ヘテロ原子としてS,N,O,Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zrを含有する単環式複素環化合物についても、2,5−位の反応性はシロールと同様である。したがって、上記と同様の合成方法により、S,N,O,Ge,Se,Te,P,Sn,Ti,Zrをヘテロ原子として含有する単環式複素環化合物の両末端に、ベンゼン由来のユニットをそれぞれ結合させることができる。また、上記ではベンゼン由来のユニットを結合させる場合について説明したが、ベンゼン由来のユニット部分が、前記N,Si、Ge,P,Sn,Ti,Zrをヘテロ原子として含む単環式複素6員環化合物に由来するユニットであってもかまわない。
【0105】
【化18】

【0106】
(有機薄膜およびその形成方法)
本発明の有機薄膜は、有機シラン化合物(I)を用いて形成された単分子膜を有するものであり、好ましくは当該単分子膜を基板上に有してなっている。
【0107】
有機シラン化合物(I)はエーテル結合またはチオエーテル結合を介して炭化水素基Aを有し、シリル基によって化学結合(特にシラノール結合(−Si−O−))を介して基板と吸着(結合)可能である。そのため、当該有機シラン化合物(I)からなる単分子膜中、該有機シラン化合物(I)分子は、例えば図1(A)に示すように、有機基Cの配列が炭化水素基Aの配列によってあまり影響を受けることがなく、かつ、基板側にシリル基、膜表面側に炭化水素A基が位置するように配列する。その結果、そのような単分子膜は、当該化合物分子の高密パッキング特性および高い秩序性(結晶性)ならびに優れた耐剥離性を有し、溶液プロセスによる簡便な方法での形成が可能となる。しかも有機シラン化合物(I)はπ電子共役を示す有機基Cを含有するので、得られる単分子膜は、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子、および有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機デバイスにおける有機層(薄膜)として用いた場合におけるキャリア移動特性などのような電気的特性が優れている。本発明において、そのような電気的特性は、単分子膜が有機基Cのπ電子共役性だけでなく、分子の高密パッキング特性および高い秩序性(結晶性)も有することに起因して、顕著に向上する。
【0108】
基板は、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、ガリウムヒ素、亜鉛化セレン等の化合物半導体材料、石英ガラス、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子材料が使用可能である。また基板は半導体デバイスの電極として使用される無機物質からなっていてもよく、さらにその表面に有機物質からなる膜が形成されていてもよい。本発明において基板表面には水酸基やカルボキシル基等の親水基、特に水酸基を有し、有しない場合には、基板に親水化処理を施すことによって、親水基を基板表面に付与すればよい。基板の親水化処理は、過酸化水素水−硫酸混合溶液への浸漬、紫外光の照射等により行うことができる。
【0109】
以下、有機シラン化合物(I)を用いた有機薄膜の形成方法を説明する。
有機薄膜の形成に際しては、まず、有機シラン化合物(I)のシリル基を加水分解して基板表面と反応させ、基板に直接吸着(結合)した単分子膜を形成する。具体的には、例えば、いわゆるLB法(Langmuir Blodget法)法、ディッピング法、コート法等の方法を採用できる。
【0110】
詳しくは、例えば、LB法では、有機シラン化合物(I)を非水系有機溶剤に溶解し、得られた溶液をpHが調整された水面上に滴下し、水面上に薄膜を形成する。このとき、有機シラン化合物(I)のシリル基におけるX〜X基が加水分解によって水酸基に変換される。次いで、その状態で水面上に圧力を加え、親水基(特に水酸基)を表面に有する基板を引き上げることによって、有機シラン化合物(I)におけるシリル基と基板とが反応して化学結合(特にシラノール結合)が形成され、図1(A)に示すような単分子膜が得られる。溶液が滴下される水のpHはX〜X基が加水分解されるように適宜調整されればよい。
【0111】
また例えば、ディッピング法、コート法では、有機シラン化合物(I)を非水系有機溶剤に溶解し、得られた溶液中に、親水基(特に水酸基)を表面に有する基板を浸漬して、引き上げる。あるいは、得られた溶液を基体表面にコートする。このとき、非水系有機溶剤中の微量の水によって、有機シラン化合物(I)のシリル基におけるX〜X基が加水分解され、水酸基に変換される。次いで、所定時間、保持することによって、有機シラン化合物(I)におけるシリル基と基板とが反応して化学結合(特にシラノール結合)が形成され、図1(A)に示すような単分子膜が得られる。X〜X基が加水分解されない場合は、溶液中に、pHが調整された水を少量混合すればよい。
【0112】
非水系有機溶剤は、水と相溶せず、かつ有機シラン化合物(I)を溶解可能な限り特に制限されず、例えば、ヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素等が使用可能である。
【0113】
単分子膜を形成した後は、通常、非水系有機溶剤を用いて単分子膜から未反応の有機シラン化合物を洗浄除去する。さらには水洗し、放置するか加熱することにより乾燥する。
【0114】
本発明の単分子膜において前記一般式(I)のA基は、該A基以外の分子部分を保護する保護膜として機能し得る。すなわち当該単分子膜において最上層(すなわち式(I)中、Aで示される脂肪族炭化水素基が配列されてなる層状部分)は、当該層の下の部分の酸化および光劣化を防止する保護膜として機能し得る。
A基は、それぞれの分子間相互作用性によって結晶化することができるので、気体透過性の面でアモルファス材料よりも優れている。
【実施例】
【0115】
(実験例1)
合成例1
前記一般式(3)(A=n−オクチル基、B=酸素原子、Y=炭素原子、R=水素原子、n1=3、X=X=X=エトキシ基)で表されるテルフェニル誘導体(以下、テルフェニル誘導体1A(合成ルート1参照)という)の合成
市販のテルフェニルを出発物質として用い前記合成ルート1に従った。
テルフェニル(cas No:92−94−4;東京化成社製)をn-クロロサクシンイミド、クロロホルム、酢酸溶液中に溶解させ、末端水素のクロロ化を行った。窒素雰囲気下、フラスコ中に入れた溶液を攪拌して、4−クロロ−テルフェニルを得た。4−クロロ−テルフェニルを、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解させ、過剰の純水と混合させた。この溶液を100℃で反応させることで、クロロ化した末端をヒドロキシル化した。4−ヒドロキシル−テルフェニルをn−オクチルブロミド(111−25−1)、水酸化ナトリウム、THF、純水中に混合し反応させることで、ヒドロキシル基をウィリアムソン合成法によりエーテル化した。
4−オクトキシ−テルフェニルを前記反応と同様にしてクロロ化を行った。生成物をグリニヤール反応を用いて末端トリエトキシシリル化した。トリエトキシシリル化した目的とする生成物をクロロホルム抽出する。硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を除去した後、メタノール溶媒で再結晶化した。さらにシリカゲルでクロロホルム溶媒下精製した。
生成物の確認を行うために、H−NMR測定を行った。以下にその結果を示す。
7.5〜7.3(10H、m、フェニレン)、6.8(2H、m、フェニレン)、3.9(2H、m、オクチル基)、3.8(6H、m、エトキシ基)、1.7〜1.3(12H、m、オクチル基)、1.2(9H、m、エトキシ基)、1.0(3H、m、オクチル基)
また、生成物の確認を行うために、IR測定を行った。以下にその結果を示す。
Si−C結合(690cm−1)、CO結合(1110cm−1
これより、生成物は標題化合物であることが判明した。
【0116】
比較合成例1
一般式(1B)で表されるテルフェニル誘導体(以下、テルフェニル誘導体1Bという)の合成
【化19】

【0117】
比較のためにオクチル基がエーテル結合を介していないテルフェニル誘導体1Bを合成した。
合成方法は、ウィリアムソン合成法を省き、グリニヤール反応を用いること以外、合成例1の方法と同様である。
【0118】
実施例1
分子軌道法によりテルフェニル誘導体1Aおよび1Bの一分子シミュレーションを行ったところ、テルフェニル骨格とオクチル基の結合の配向角はそれぞれ161度及び140度であった。エーテル結合を介することで、上記結合の配向角を大きくすることが可能であり、これにより膜状態でのオクチル基の配向方向を拡大させることが可能であることを確認した。
【0119】
実施例2
テルフェニル誘導体1Aおよび1Bを用いて、それぞれの単分子膜をラングミュアー・ブロジェット(LB)法により成膜した。基板として親水化処理を行ったSiウエハーを用いた。図2は、下層水のpHは2で行ったときの表面圧−分子占有面積の測定結果である。傾きから概算される分子占有面積は、テルフェニル誘導体1Aは0.34nm・mol−1であったのに対し、テルフェニル誘導体1Bは0.47nm・mol−1とテルフェニル誘導体1Aと比べて0.13nm・mol−1程度大きい値をとった。エーテル結合を介したことで、分子体積が減少した。これによりエーテル結合を介してオクチル基を結合させたものは、単分子膜中の隣接分子間距離が近づけることができることがわかる。
【0120】
実施例3
調製したそれぞれの単分子膜のX線回折測定を対称反射法を用いて行った。測定結果として、テルフェニル誘導体1Aの単分子膜では面間隔0.454nm、0.386nm、0.309nmの明瞭な回折が観測されたのに対し、テルフェニル誘導体1Bの単分子膜では0.457nm、0.386nmのブロードな回折が観測された。回折強度は、対応する面間隔の存在する割合に依存することから、テルフェニル誘導体1Aの単分子膜では、周期構造が規則的に形成されていることがわかる。
以上より、エーテル結合を介してオクチル基が導入することで、密にパッキングした配向性の高い結晶構造を有する膜を調製可能であることが判明した。
【0121】
比較合成例2
一般式(1C)で表されるテルフェニル誘導体(以下、テルフェニル誘導体1Cという)の合成
【化20】

【0122】
比較のためにオクチル基及びエーテル基を有していないテルフェニル誘導体1Cを合成した。
合成方法は、合成例1のグリニヤール反応を用いた。
【0123】
実施例4
テルフェニル誘導体1A及び1Cの単分子膜の構造安定性を、電気測定から評価した。テルフェニル誘導体1Cの膜調整は、実施例2と同様の方法で行った。測定は光導電率測定を行った。それぞれ金/クロムを30及び20nmスパッタして作製した200μm幅の櫛歯型電極上に単分子膜を実施例2と同様に調製した。500WのXeランプを照射(明)及び未照射(暗)のときの電圧―電流特性を評価し、50V印可したときの電流値を測定した。膜を調製した直後に測定した明電流及び暗電流は、テルフェニル誘導体1A及び1Cでともに24nA(明電流)、140pA(暗電流)であった。調製した膜を、大気中で30日間保管した後に再び測定したところ、テルフェニル誘導体1Aでは21nA(明電流)、320pA(暗電流)であったが、テルフェニル誘導体1Cでは1nA(明電流)、340pA(暗電流)であった。これらの明電流の大きさの違いは、大気中でのテルフェニル骨格の酸化の影響を受けたためと考えられる。保護基としてオクチル基を有しているテルフェニル誘導体1Aは特性の劣化の影響を受けにくいといえる。
【0124】
シリル基による基板との膜の密着性を評価するために、以下に示す異なる製膜方法での膜調製を行った。実施例2と同様の方法で調製したテルフェニル誘導体1Aの単分子膜及び蒸着法で膜厚約10nmで調製したテルフェニル誘導体1Cの膜について密着性を評価した。膜をクロスカッタで10μm角の格子状に切削し、次に市販のカプトンテープを貼り付けて、はがした後に、膜の形状をAFMにより評価した。テルフェニル誘導体1A膜の形状はカプトンテープ処理前と変わらず、ドメイン形成が確認されたが、テルフェニル誘導体1C蒸着膜では、カプトン処理後は処理前に観察されたドメインが観察されなかった。これはカプトン処理により膜が剥がれたためと考えられる。これにより、テルフェニル誘導体1A膜は密着強度が向上しているといえる。テルフェニル誘導体1Aは溶液形態で使用されて、トリエトキシシリル基の加水分解反応が進行することにより、基板表面のヒドロキシル基との反応が進行することで膜が形成されるので、シリル基と基板との間でより有効にシラノール結合が形成されるためと考えられる。
【0125】
(実験例2)
合成例2
前記一般式(1)(A=n−ヘキシル基、B=硫黄原子、Y=硫黄原子、R=水素原子、n1=4、X=X=X=塩素原子)で表されるクォーターチオフェン誘導体(以下、クォーターチオフェン誘導体2A(合成ルート2参照)という)の合成
市販の2,2’−ビチオフェンを出発物質として用いた。
2,2’−ビチオフェン(492−97−7;東京化成社製)をクロロ化させるために、N−クロロサクシンイミド(NCS)処理を、溶媒としてDMFを用いて行った。得られたクロロビチオフェン同士を、DMF溶媒中でトリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(tris(triphenylphosphine)Nickel:(PPhNi)を触媒として反応させることによって、クロロ化させた部分でビチオフェン同士を直接結合させて、クォーターチオフェンを合成した。
【0126】
以下、前記合成ルート2に従った。
クォーターチオフェンをn-クロロサクシンイミド、クロロホルム、酢酸溶液中に溶解させ、末端水素のクロロ化を行った。窒素雰囲気下、フラスコ中に入れた溶液を攪拌して、2−クロロ−クォーターチオフェンを得た。得られた2−クロロ−クォーターチオフェンを、n−ブチルリチウム(109−72−8)、チオキサントン(492−22−8)、n−ヘキシルブロミド、THFに溶解させて、フラスコ中、−78℃で反応させることで、2−ヘキシルチオ−クォーターチオフェンを調製した。
2−ヘキシルチオ−クォーターチオフェンを合成例1で示した反応と同様にしてクロロ化を行った。生成物をグリニヤール反応により末端トリクロロシリル化した。トリクロロシリル化した目的とする生成物をクロロホルムで抽出する。硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を除去した後、メタノール溶媒で再結晶化した。さらにシリカゲルでクロロホルム溶媒下精製した。
生成物の確認を行うために、H−NMR測定を行った。以下にその結果を示す。
7.0(6H、m、チオフェン環)、6、9(1H、m、チオフェン環)、6、8(1H、m、チオフェン環)、2.9(2H、m、ヘキシル基)、1.6(2H、m、ヘキシル基)、1.3(6H、m、ヘキシル基)、1.0(3H、m、ヘキシル基)
また、生成物の確認を行うために、IR測定を行った。以下にその結果を示す。
Si−C結合(690cm−1)、CO結合(1110cm−1
これより、生成物は標題化合物であることが判明した。
【0127】
比較合成例3
一般式(2B)で表されるクォーターチオフェン誘導体(以下、クォーターチオフェン誘導体2Bという)の合成
【化21】

【0128】
比較のためにヘキシル基がチオエーテル結合を介していないクォーターチオフェン誘導体2Bを合成した。
合成方法は、ヘキシルチオ化を省略して、グリニヤール試薬を用いたヘキシル基のカップリング反応を行うこと以外、合成例2の方法と同様である。
【0129】
実施例5
分子軌道法によりクォーターチオフェン誘導体2Aおよび2Bの一分子シュミレーションを行った。その結果、クォーターチオフェン骨格とヘキシル基の結合の配向角はそれぞれ177度及び138度であった。チオエーテル結合を介することで、上記結合の配向角を大きくすることが可能であり、これにより膜状態でのヘキシル基の配向方向を拡大させることが可能であることを確認した。
【0130】
実施例6
クォーターチオフェン誘導体2Aおよび2Bを用いて、それぞれの単分子膜を実施例2と同様の方法により成膜した。図3は、下層水のpHは2で行ったときの表面圧−分子占有面積の測定結果である。傾きから概算される分子占有面積は、クォーターチオフェン誘導体2Aは、クォーターチオフェン誘導体2Bの0.28nm・mol−1よりも0.06nm・mol−1小さい、0.22nm・mol−1であった。チオエーテル結合を介してヘキシル基を結合させたものは、膜面内の分子占有面積を小さくすることができた。
【0131】
実施例7
電子線回折(ED)測定を行うために、クォーターチオフェン誘導体2Aおよび2Bの単分子膜の成膜を行った。基板は、銅メッシュシートにホルムバール支持膜を固定化して、その上にSiOを蒸着させて親水化処理したものを用いた。調製した基板を用いて、表面圧25mN・m−1で成膜を行った。成膜後の膜を透過電子顕微鏡によりED測定を行った。結果、クォーターチオフェン誘導体2A単分子膜では、0.44nm、0.37nm及び0.31nmの面間隔に対応する回折スポットが得られた。一方、クォーターチオフェン誘導体2B単分子膜のED像では、0.45nm、0.38nm及び0.32nmの面間隔に対応する回折リングが得られた。回折現象がスポットまたはリングで観測された違いから、面内方向の配向秩序性がクォーターチオフェン誘導体2A単分子膜の方がクォーターチオフェン誘導体2B単分子膜よりも高いことがわかる。これは、チオエーテル結合による効果である。
以上から、分子シミュレーション及び結晶構造解析からのアプローチにより、チオエーテル結合を導入することで脂肪族炭化水素基Aと有機基C(π電子共役系ユニット部分)との結合の角度が広がり、結果、膜構造はπ電子共役系に最適な構造を形成することが確認できた。
【0132】
比較合成例4
一般式(2C)で表されるクォーターチオフェン誘導体(以下、クォーターチオフェン誘導体2Cという)の合成
【化22】

【0133】
比較のためにオクチル基及びエーテル基を有していないクォーターチオフェン誘導体2Cを合成した。
合成方法は、合成例2のグリニヤール反応を用いた。
【0134】
実施例8
クォーターチオフェン誘導体2A及び2C単分子膜の構造安定性を、電気測定から評価した。クォーターチオフェン誘導体2C単分子膜の調整は、実施例2と同様の方法で行った。測定は光導電率測定を行った。それぞれ金/クロムを30及び20nmスパッタして作製した200μm幅の櫛歯型電極上に単分子膜を実施例2と同様に調製した。500WのXeランプを照射(明)及び未照射(暗)のときの電圧―電流特性を評価し、50V印可したときの電流値を測定した。膜を調製した直後に測定した明電流及び暗電流は、クォーターチオフェン誘導体2A及び2Cでともに48nA(明電流)、330pA(暗電流)であった。調製した膜を、大気中で45日間保管した後に再び測定したところ、クォーターチオフェン誘導体2Aでは44nA(明電流)、380pA(暗電流)であったが、クォーターチオフェン誘導体2Cでは10nA(明電流)、490pA(暗電流)であった。これらの明電流の大きさの違いは、大気中でのクォーターチオフェン骨格の酸化の影響を受けたためと考えられる。保護基としてヘキシル基を有しているクォーターチオフェン誘導体2Aは特性の劣化の影響を受けにくいといえる。
【0135】
実施例2と同様の方法で調製したクォーターチオフェン誘導体2Aの単分子膜及び蒸着法で膜厚約10nmで調製したクォーターチオフェン2Cの膜について密着性を評価した。膜をクロスカッタで10μm角の格子状に切削し、次に市販のカプトンテープを貼り付けて、はがした後に、膜の形状をAFMにより評価した。クォーターチオフェン誘導体2A膜の形状はカプトンテープ処理前と変わらず、数十μmφのドメインが形成していることが確認されたが、クォーターチオフェン2C蒸着膜では、カプトン処理後は処理前に観察されたドメインが観察されなかった。これはカプトン処理により膜が剥がれたためと考えられる。これにより、クォーターチオフェン誘導体2A膜は密着強度が向上しているといえる。クォーターチオフェン誘導体2Aは溶液形態で使用されて、トリエトキシシリル基の加水分解反応が進行することにより、基板表面のヒドロキシル基との反応が進行し膜が形成されるので、シリル基と基板との間でより有効にシラノール結合が形成されるためと考えられる。
【0136】
(実験例3)
合成例3
前記一般式(3)(A=パーフルオロ−n−オクチル基、B=酸素原子、Y=炭素原子、R=水素原子、n1=3、X=X=X=エトキシ基)で表されるテルフェニル誘導体(以下、テルフェニル誘導体3Aという)の合成
n−オクチルブロミドの代わりにパーフルオロ−n−オクチルブロミドを用いたこと、ヒドロキシル基をウィリアムソン合成法によりエーテル化するに際してTHFの代わりに四塩化炭素を用いたこと以外、合成例1と同様の方法により、テルフェニル誘導体3Aを得た。
生成物の確認を行うために、H−NMR測定を行った。以下にその結果を示す。
7.5〜7.3(10H、m、フェニレン)、6.8(2H、m、フェニレン)、3.8(6H、m、エトキシ基)、1.2(9H、m、エトキシ基)
また、生成物の確認を行うために、IR測定を行った。以下にその結果を示す。
Si−C結合(690cm−1)、CO結合(1110cm−1
これより、生成物は標題化合物であることが判明した。
【0137】
比較合成例5
一般式(3B)で表されるテルフェニル誘導体(以下、テルフェニル誘導体3Bという)の合成
【化23】

【0138】
比較のためにパーフルオロオクチル基がエーテル結合を介していないテルフェニル誘導体3Bを合成した。
合成方法は、ウィリアムソン合成法を省き、グリニヤール反応を用いること以外、合成例3の方法と同様である。
【0139】
実施例9
分子軌道法によりテルフェニル誘導体3Aおよび3Bの一分子シミュレーションを行ったところ、テルフェニル骨格とパーフルオロオクチル基の結合の配向角はそれぞれ159度及び133度であった。エーテル結合を介することで、上記結合の配向角を大きくすることが可能であり、これにより膜状態でのパーフルオロオクチル基の配向方向を拡大させることが可能であることを確認した。
【0140】
実施例10
テルフェニル誘導体3Aおよび3Bを用いたこと以外、実施例2と同様の方法で分子占有面積を求めた。分子占有面積は、テルフェニル誘導体3Aは0.37nm・mol−1であったのに対し、テルフェニル誘導体3Bは0.55nm・mol−1とテルフェニル誘導体3Aと比べて0.18nm・mol−1程度大きい値をとった。エーテル結合を介したことで、分子体積が減少した。これによりエーテル結合を介してパーフルオロオクチル基を結合させたものは、単分子膜中の隣接分子間距離が近づけることができることがわかる。
【0141】
実施例11
調製したそれぞれの単分子膜のX線回折測定を対称反射法を用いて行った。測定結果として、テルフェニル誘導体3Aの単分子膜では面間隔0.455nm、0.386nm、0.309nmの明瞭な回折が観測されたのに対し、テルフェニル誘導体3Bの単分子膜では0.461nm、0.389nmのブロードな回折が観測された。回折強度は、対応する面間隔の存在する割合に依存することから、テルフェニル誘導体3Aの単分子膜では、周期構造が規則的に形成されていることがわかる。
以上より、エーテル結合を介してパーフルオロオクチル基を導入することで、密にパッキングした配向性の高い結晶構造を有する膜を調製可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の有機シラン化合物(I)を用いた有機薄膜はTFT、太陽電池、燃料電池、センサー等の半導体電子デバイスの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】(A)は本発明のπ電子共役系有機シラン化合物(B=酸素原子)を用いて得られた薄膜における当該化合物分子の配向を示す模式図であり、(B)は従来のπ電子共役系有機シラン化合物(B=酸素原子)を用いて得られた薄膜における当該化合物分子の配向を示す模式図である。
【図2】合成例1で得られたテルフェニル誘導体1Aおよび比較合成例1で得られたテルフェニル誘導体1Bの表面圧−分子占有面積曲線を示す。
【図3】合成例2で得られたクォーターチオフェン誘導体2Aおよび比較合成例3で得られたクォーターチオフェン誘導体2Bの表面圧−分子占有面積曲線を示す。
【図4】分子間距離−ポテンシャルエネルギーの相関図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I);A−B−C−SiX (I)
(式中、Aは水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい炭素数1〜15の1価脂肪族炭化水素基である;Bは酸素原子または硫黄原子である;Cはπ電子共役を示す2価の有機基である;X〜Xは加水分解により水酸基を与える基である)で表されるπ電子共役系有機シラン化合物を用いて形成された単分子膜を有する機能性有機薄膜。
【請求項2】
前記単分子膜が基板上に形成され、該単分子膜中、一般式(I)の有機シラン化合物が、基板側にシリル基、膜表面側にA基が位置するように、配列している請求項1に記載の機能性有機薄膜。
【請求項3】
前記一般式(I)のA基が、該A基以外の分子部分を保護する保護膜として機能することを特徴とする請求項1または2に記載の機能性有機薄膜。
【請求項4】
脂肪族炭化水素基Aが直鎖状である請求項1〜3のいずれかに記載の機能性有機薄膜。
【請求項5】
有機基Cが、単環系芳香族環ユニット、縮合系芳香族環ユニット、単環系芳香族複素環ユニット、縮合系芳香族複素環ユニット、および不飽和脂肪族ユニットからなる群から選択される1またはそれ以上のユニットより構成される請求項1〜4のいずれかに記載の機能性有機薄膜。
【請求項6】
有機基Cが、ベンゼン環ユニット、チオフェン環ユニット、およびアセン環ユニットからなる群から選択される1またはそれ以上のユニットより構成される請求項1〜5のいずれかに記載の機能性有機薄膜。
【請求項7】
有機基Cが、1〜8個のユニットを直鎖状に連結してなる請求項5または6に記載の機能性有機薄膜。
【請求項8】
一般式(I);A−B−C−SiX (I)
(式中、Aは水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい炭素数1〜15の1価脂肪族炭化水素基である;Bは酸素原子または硫黄原子である;Cはπ電子共役を示す2価の有機基である;X〜Xは加水分解により水酸基を与える基である)で表されるπ電子共役系有機シラン化合物におけるシリル基を加水分解して基板表面と反応させ、基板に直接吸着した単分子膜を形成した後、該単分子膜上の未反応の有機シラン化合物を非水系有機溶剤を用いて洗浄除去する機能性有機薄膜の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−49235(P2006−49235A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232038(P2004−232038)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】