説明

おむつ及び排泄検出装置

【課題】被介護者の排泄の有無を知るための、経済的で介護者の作業負担を軽減できるおむつ及び排泄検出装置に関し、おむつ交換時における信号処理装置とセンサとの接続作業などを不要にした、信頼性の高い排泄検知手段を得る。
【解決手段】排泄検出装置のセンサ部2を電源(電池)を有しない使い捨て可能なものとし、このセンサ部2をおむつ1に装着している。好ましくは、センサ部2をおむつ1の通水性内面と非通水性外面との間に封入されている吸水材中に封入する。センサ部2は、ICチップ2bと、このICチップに接続されたセンサ2aと、このセンサの検出信号を送信するアンテナ2cとを備えている。センサ部2には、無線で又はおむつの外表面に貼着される電池から電力を供給している。センサ部2の検出信号を無線で受信してその信号の蓄積、処理、排泄の判定及び報知を行う受信機3bは、センサ部2と切り離して設置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寝たきりの高齢者や障害者の介護を容易にするおむつ及び排泄検出装置に関するもので、被介護者の排泄の有無を知るための、経済的で介護者の作業負担を軽減できるおむつ及び排泄検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの高齢者や障害者等の被介護者の排泄物の処理は、被介護者にとっても介護者にとっても肉体的、精神的ストレスをもたらす。排泄のうち、尿に関しては吸収機能及び消臭機能の優れたおむつの開発により、不快感が軽減されてきている。しかし、排便は、おむつを交換しない限り、被介護者の不快感は解放されない。特に下痢便の場合には、不快感を与えるだけでなく、皮膚かぶれ等の障害を起こす原因となる。そのため、特に下痢便排泄後は速やかにおむつを交換し、皮膚の清潔を保つ必要がある。皮膚障害を起こせば、被介護者に苦痛を与えるばかりでなく、介護者の肉体的、精神的及び経済的負担も増大することになる。また、下痢便でない場合でも、排便の不快感から被介護者が無意識に便を手で触るため、便の汚れをベッド等に広げ、介護者に大きな負担となることから、身体拘束につながることも懸念される。
【0003】
これに対して施設等では、定期的なおむつ交換を行っているが、根本的な解決にはなっていない。そのため、下痢便等の排便を検知するシステムの開発が必要である。必要な時におむつ交換が可能となれば、被介護者だけでなく、介護者の負担も軽減できる。
【0004】
特許文献1には、被介護者のおむつ内の排泄状況を検知し、その検知した情報を看護・介護者などへ速やかに知らせ、把握ができる装置を提供することを目的として、被介護者のおむつ内に水感知センサーおよび温度感知センサーを取り付け、被介護者の排泄があった時には双方のセンサーからの電気信号を温度等の情報に変換し、ナースコールに接続し、ナースステーションにおいて情報(排泄の状況)を把握できるようにする排便検知装置が提案されている。
【特許文献1】特願2001‐107857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来装置では、おむつを交換する際に、新たに装着しようとするおむつに取付けられた水センサや温度センサのリード線をベッド等に設けたターミナルに接続しなければならない。この作業は介護者にとって面倒であると共に、この接続作業を忘れると装置が機能しない。また、被介護者が動いたり無意識にリード線に触れたりして、リード線がターミナルから外れることも起こり、排便検知の信頼性が確保できない。
【0006】
そこでこの発明は、おむつ交換時における信号処理装置とセンサとの接続作業などが不要で、従って接続作業を忘れることにより装置が機能しなくなるおそれがなく、またよほど大きな移動がない限り、被介護者が手足を動かした程度ではセンサと信号処理装置との信号の伝達に障害を生ずることがない、信頼性の高い排泄検知手段を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明では、排泄検出装置のセンサ部2を電源(電池)を有しない使い捨て可能なものとし、このセンサ部2をおむつ1に装着している。センサ部2は、おむつの表面に貼着して装着することもできるが、好ましくは、センサ部2をおむつ1の通水性内面と非通水性外面との間に封入されている吸水材中に封入した状態で装着する。センサ部2は、ICチップ2bと、このICチップに接続されたセンサ2aと、このセンサの検出信号を送信するアンテナ2cとを備えている。センサ部2には、無線で又はおむつの外表面に貼着される電池から電力を供給している。センサ部2の検出信号を無線で受信してその信号の蓄積、処理、排泄の判定及び報知を行う受信機3bは、センサ部2と切り離して設置している。
【0008】
本願の請求項1の発明に係るおむつは、ICチップ2bと、このICチップに接続されたセンサ2aと、このセンサの検出信号を送信するアンテナ2cとを備えている。
【0009】
本願の請求項2の発明に係るおむつは、通水性内面と非通水性外面との間に吸水材が封入されているおむつにおいて、前記内面と外面との間に、ICチップ2bと、このICチップに接続されたセンサ2aと、このセンサの検出信号を送信するアンテナ2cとが封入されている。
【0010】
本願の請求項3の発明に係るおむつは、センサ部2の駆動用電力を無線で供給するようにしたもので、上記請求項1又は2記載のおむつにおいて、アンテナ2cが、ICチップ2bの駆動電力用電波の受信アンテナを兼ねていることを特徴とするものである。センサ部2の駆動電力は、センサ部2の検出信号を受信して信号処理を行う受信機3bから無線で供給される。
【0011】
また本願の請求項4の発明に係るおむつは、センサ部2の駆動用電力をおむつ1の外面に着脱自在に貼着した電池から供給するようにしたもので、上記請求項1又は2記載のおむつにおいて、おむつ1の外面に、電池パッド20を貼着するための面ファスナー11と、この面ファスナーの領域内に臨出した電気接点13とを備え、当該電気接点が、前記ICチップの駆動電力の受入れ接点であることを特徴とするものである。電池パッド20は、被介護者におむつを装着するときに、おむつ外面の面ファスナー11に押し付けて貼着する。この貼着により、電池パッド20に設けた電池21の電極がセンサ部2に接続された電気接点13に接続される。汚れたおむつは、電池パッド20を剥がして廃棄する。
【0012】
センサ2aには、温度センサ、水センサ、湿度センサ、臭気センサなどが使用でき、更にこれらを組合わせて使用できるが、請求項5に記載のように、温度センサを単独で用いるのが好ましく、ICチップ2bに封入することが可能で、使い捨てとしたときの廃棄物の量を極小にできる。
【0013】
センサ部2の駆動電力を無線で供給する場合、供給可能な電力が制限されるためにセンサ部2からの信号電波が弱くなる。そのため、被介護者の動きによりセンサ部2と受信機側アンテナ3aとの距離が大きくなるなど、電波の到達距離の関係で排泄検出が不能になるおそれがあるときは、電池を内蔵した中継器10を介して信号の送受信を行うようにするのが実用的である。中継器10は、おむつ1の外面に面ファスナーなどで貼着すればよい。
【0014】
本願の請求項6の発明に係る排泄検出装置は、受信機3bに設けた受信機側アンテナから所定の時間間隔でICチップ駆動電力波を送信しておむつ1に封入したICチップを駆動し、当該ICチップに接続されたセンサの検出信号を前記受信機で受信し、受信した信号を蓄積し、当該蓄積された検出信号の時間変化パターンが予め登録したパターンに対応したときに報知信号を出力するというものである。
【0015】
また、本願の請求項7の発明に係る排泄検出装置は、電池と中継アンテナとを備えた中継器10から所定の時間間隔でICチップ駆動電力波を送信しておむつ1に封入したICチップ2bを駆動し、当該ICチップに接続されたセンサ2aの検出信号を前記中継アンテナで受信し、前記中継器で当該受信した検出信号を増幅して前記中継アンテナで送信し、この増幅された信号を受信機3bで受信し、当該受信機は、受信した信号を蓄積し、当該蓄積された検出信号の時間変化パターンが予め登録したパターンに対応したときに報知信号を出力するというものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、被介護者におむつを装着するだけで排泄検出装置のセンサ部2が被介護者に装着され、中継器10や受信部3との間の結線を必要としないので、おむつ装脱時に面倒な結線やその取り外し作業を必要としない。またセンサ部2の電源を電池としたものでも、おむつ装脱時に電池パッド11の装脱を行うだけで良く、この発明によれば、電池パッド20をおむつ外面の面ファスナー11に押し当てるだけで電池の接続が行われ、おむつを廃棄するときに電池パッド20を剥離するだけでよいので、おむつの装脱作業は容易である。そしてこの発明によれば、センサ部2と受信部3を接続する結線が外れて装置が機能しなくなることがなく、装置の信頼性を高くできる。
【0017】
センサ部2は、電池を有しておらず、使い捨ておむつに用いても、有害物質を廃棄するおそれがなく、小型の柔軟なシート状のものとすることができるので、装着者に違和感を与えるおそれもない。また、センサ部2をおむつに封入された吸水材の内部に封入することにより、センサとして温度センサや湿度センサを用いた場合の検出精度を向上させることができる。センサ部2には、ICタグの技術を利用することができ、それによって小型で高機能のものを安価に製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の好ましい実施形態を説明する。
通水性内面と非通水性外面との間に吸水材が封入されている公知の使い捨ておむつ1の、装着したときに装着者の臀部に対向する部分に、排便検出装置のセンサ部2が装着されている。このセンサ部2は、おむつ1を縫製するときに、吸水材の厚さ中間部ないし内面よりの位置に封入する。
【0019】
センサ部2は、センサ2a、センス信号を符号化し無線で送信するICチップ2b、おむつ側アンテナ2cからなる。センサ2aとしては、温度センサを単独で用いるのが好適で、センサ2aを温度センサとしたときは、当該センサをICチップ2b内に組み込むことも可能である。おむつ側アンテナ2cは、センサ部2を動作させる電力用電波の受信アンテナを兼用し、ICチップ2bは受信した電力を直流に変換する変換回路を備えている。
【0020】
センサ部2と電力と信号とを無線で授受する受信部3は、図3に示すように、ベッド4の下など、被介護者5に装着したおむつ1の近傍となる位置に設置した受信機側アンテナ3aと、それに接続された受信機3bからなる。受信機3bは、電力用電波を受信機側アンテナ3aを介して送信する電力送信手段を備えている。
【0021】
更に受信機3bは、データ処理機能を有し、データの蓄積部、信号処理部、排便の判定部、報知信号出力部を備えている。
【0022】
次に、上記構成の排便検出装置の作動を説明する。
受信機3bから電力用の電波を受信機側アンテナ3aを介して送信し、おむつ内のおむつ側アンテナ2cで受信する。この電波の電力をICチップ2bで直流電力に変換し、この電力で以下の手順を実行する。
【0023】
おむつ1内に設置したセンサ2aでおむつの状態、例えばおむつ内の温度を計測し、ICチップ2bでAD変換する等してディジタル化する。そのデータを、アンテナ2cから無線で送信する。状態量の検出は、1秒以上1分以下程度の間隔で行う。この時間間隔は、受信機から送出する電力用電波の送信間隔で制御する。
【0024】
センサ2aは、表面に撥水処理をして、センサ表面への尿の滞りを抑制するのが好ましい。また、AD変換する信号範囲を排泄検出に必要とする信号範囲、例えば温度センサを用いるときは、その信号処理範囲を数度以内に限定して符号化する。これによりAD変換のビット数を抑制し、消費電力や製造コストを低減できる。
【0025】
センサ部2から送信された無線信号は、ベッドに設置された受信機側アンテナ3aで受信し、受信機3bで符号を温度値に戻し、蓄積する。
【0026】
受信機3bでは、蓄積された経時データに基づき、検出値の時間変化パターンから、排便の有無を判断する。温度の変化パターンから排尿と排便とを区別して検出する手段は、上記特許文献1で提案されており、その手段を用いることができる。
【0027】
排便を検知した場合には、ネットワーク等を利用し、介護者(看護師、付添者、家族など)に報知する。
【0028】
現在の技術では、電池を備えず、電力用電波を受けて動作するパッシブ形のICチップでは、信号送信距離が数十cm程度である。そこで場合によっては、センサ部2と受信機側アンテナ3aとの間に電池を内蔵した中継器を設置するのが便利である。中継器10は、中継アンテナ、電力用電波送信手段及び信号増幅・転送手段を備えたものとする。図4は、中継器10を設けた実施形態を示した図で、中継器10をおむつ1の外面に粘着テープなどで添着して設置している。
【0029】
このような中継器10を設けたときは、中継器10から電力用の電波を所定の時間間隔で送信し、おむつ1内のセンサ部のおむつ側アンテナ2cで受信する。この電波の電力をICチップ2bで直流電力に変換し、この電力で以下の手順を実行する。
【0030】
おむつ1内に設置したセンサ2aでおむつ内の温度を計測し、ICチップ2bでAD変換し、そのデータを、アンテナ2cから無線送信する。センサ部2aから送信した無線信号は、おむつ外部に設置した中継器10で受信し、受信した信号を増幅して強い電波で送信する。
【0031】
中継器10で送信された電波を、屋内の適宜な箇所に設置した受信部3の受信機側アンテナ3aで受信し、以下、図1で説明した手順を受信機3bが実行して、排便が検出されたときにこれを報知する。なお、中継器10は、汚れたおむつから剥離して繰返し使用する。
【0032】
このような中継器10を設けたときは、複数のセンサ部からの信号処理が可能な受信機を用いることができ、また被介護者が多少移動しても検出が可能なので、多数の被介護者が居る施設などでこの発明の排便検出装置を用いるときに有利である。
【0033】
中継器10を用いる代わりに、おむつ外面に面ファスナー11で貼着される電池パッド20からセンサ部2に駆動電力を供給することもできる。図5はそのような電池パッドの一例を示した図で、11はおむつ外面の適宜な箇所に縫合ないし貼着する面ファスナー、20は電池パッドである。
【0034】
面ファスナー11には、2個の窓が開いており、この窓にICチップ2bの電源端子にケーブル12で接続された電気接点13が設けられている。電池パッド20は、おむつ側面ファスナー11に接合する内面を備えた柔軟なパッド(シート片)に電気接点13に接触する電池接点23と、ボタン電池21とを取付けたもので、パッド20を面ファスナー11に押し付けることで、電池パッド20の装着とICチップ2bへの電池の接続とが同時に行われる。汚れたおむつを捨てるときは、電池パッド20をおむつから剥がして再利用するか、分別廃棄する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態のブロック図
【図2】センサ部のブロック図
【図3】図1の排泄検出装置を設置したベッドの模式的な側面図
【図4】第2実施形態のブロック図
【図5】第3実施形態の電池パッド装着部の斜視図
【符号の説明】
【0036】
1 使い捨ておむつ
2a センサ
2b ICチップ
2c おむつ側アンテナ
3a 受信機側アンテナ
3b 受信機
10 中継器
11 面ファスナー
20 電池パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップ(2b)と、このICチップに接続されたセンサ(2a)と、このセンサの検出信号を送信するアンテナ(2c)とを備えている、おむつ。
【請求項2】
通水性内面と非通水性外面との間に吸水材が封入されているおむつにおいて、前記内面と外面との間に、ICチップ(2b)と、このICチップに接続されたセンサ(2a)と、このセンサの検出信号を送信するアンテナ(2c)とが封入されている、おむつ。
【請求項3】
前記アンテナが、前記ICチップの駆動電力用電波の受信機側アンテナを兼ねていることを特徴とする、請求項1又は2記載のおむつ。
【請求項4】
おむつの外側表面に、電池パッド(20)を貼着するための面ファスナー(11)と、この面ファスナーの領域内に臨出した電気接点(13)とを備え、当該電気接点が、前記ICチップの駆動電力の受入れ接点であることを特徴とする、請求項1又は2記載のおむつ。
【請求項5】
前記センサが温度センサである、請求項1から4のいずれか一記載のおむつ。
【請求項6】
受信機(3b)に設けた受信機側アンテナから所定の時間間隔でICチップ駆動電力波を送信しておむつ(1)に封入したICチップを駆動し、当該ICチップに接続されたセンサの検出信号を前記受信機で受信し、受信した信号を蓄積し、当該蓄積された検出信号の時間変化パターンが予め登録したパターンに対応したときに報知信号を出力する、排泄検出装置。
【請求項7】
電池と中継アンテナとを備えた中継器(10)から所定の時間間隔でICチップ駆動電力波を送信しておむつ(1)に封入したICチップ(2b)を駆動し、当該ICチップに接続されたセンサ(2a)の検出信号を前記中継アンテナで受信し、前記中継器で当該受信した検出信号を増幅して前記中継アンテナで送信し、この増幅された信号を受信機(3b)で受信し、当該受信機は、受信した信号を蓄積し、当該蓄積された検出信号の時間変化パターンが予め登録したパターンに対応したときに報知信号を出力する、排泄検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−296566(P2006−296566A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119838(P2005−119838)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【出願人】(391021710)株式会社インテック (11)
【Fターム(参考)】