説明

たこ焼きの凍結乾燥食品及びその製造方法

【課題】
たこ焼きを用いた新規なスナック菓子を提供することを目的としている。
【解決手段】
小麦粉及び米粉の少なくとも一方と、だし汁、卵、砂糖、塩を混合してなるたこ焼き生地からたこ焼きを製造し、焼き上がったたこ焼きを凍結させた後、当該たこ焼きに対し、乾燥時の圧力を0.6〜0.65Torrに設定して、35〜45度の環境下で1.5〜2.5時間乾燥する第一次昇華を行った後、70〜80度の環境下で14〜16時間乾燥する第二次昇華を行い、さらに45〜55度の環境下で23〜25時間乾燥を行う第三次昇華を行うことを特徴とする凍結乾燥方法を施した菓子を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なスナック菓子の製造方法に関する技術であり、特にたこ焼きを凍結乾燥する技術に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
現在市場に流通するスナック菓子は小麦粉等の澱粉を用いて焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱による調理等の処理がなされ、塩、醤油等の調味料で塩辛く味付けされ提供されているが、使用する食材が従来と変わりないので、味や食感において斬新な変化をもたらすことはなく、新規な菓子を提供する点では行き詰まりが生じている。
【0003】
ところでたこ焼きは、関西地方のみならず日本全国において親しまれている軽食である。その風味食感を良くするために、小麦粉の代わりに米粉を用いる技術が特許文献1において開示されている。このように、たこ焼きは国民的な軽食として現在でも味の改良がなされているのである。
【0004】
このように人気のあるたこ焼きに似せてスナック菓子を提供することは昔からなされている。例えばポテトチップ等のスナック菓子において、おたふくソースの味付けにすることにより「たこ焼き風味」としたり、スナック菓子を丸く形成して青海苔を散らし、たこ焼きに似せたりしていた。
【0005】
しかしながら、そのように製造されたスナック食品はたこ焼きの風味が薄れ、外観もたこ焼きとは程遠い物になる。また、タコ自体が入っていないことがほとんどである。そこで本願発明者はたこ焼きそのものを用いたスナック食品を提供することを目的とし、特にたこ焼きを凍結乾燥させてスナック食品を作ることに着想した。
【0006】
尚、従来技術として、たこ焼きに凍結乾燥を施す場合、特許文献2に示すように、細かく切ったタコを食品結着剤で固めたタコの固形物を具材として含むたこ焼きを提供することにより、他のインスタント食品と同様の時間で湯戻しすることができる技術が開示されている(特許文献2)。
【0007】
又、発明者らは菓子及び魚のすり身を用いた練り製品の凍結乾燥方法として特許文献3乃至5の発明を行った。ここに記載の凍結乾燥方法を、菓子及び練り製品のみならず、たこ焼きにも応用できることを発見し、本願発明を行った次第である。
【0008】
【特許文献1】特開2004−100号公報
【特許文献2】特開2001−3400068号公報
【特許文献3】特願2005−127554号特許請求の範囲等
【特許文献4】特願2005−340915号特許請求の範囲等
【特許文献5】特願2005−371241号特許請求の範囲等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術では凍結乾燥した食品は湯戻しすることを前提として作られていたが、発明者は湯戻せずにそのまま凍結乾燥食品として食べた場合に美味となる菓子を提供することを思いついた。そして凍結乾燥食品をそのまま食べた場合に風味・食感がよく、スナック菓子として食用可能な製品を提供するべく改良を重ねた。
【0010】
たこ焼きを通常の凍結乾燥方法で乾燥させると、水分が蒸発し、細胞が破壊されるために、たこ焼きの体積が縮小し、その形もゆがんだので、結果的に歯ざわりが悪くなるといった問題点が生じていた。
【0011】
又、組成中の原料が一部、熱に対して変色したり、澱粉本来の色調が加熱することによってさらに変色してしまうという問題があった。さらに、たこ焼きが輻射熱や原料組成の分子の粒度のバラツキによって、ゆがむという問題があった。
【0012】
加えて、通常のたこ焼きは小麦粉が使用されているが、これを凍結乾燥させると、口どけが悪く、スナック菓子に必要な、後ひく美味しさをもたらすことはできなかった。
【0013】
このようにたこ焼きを単純に凍結乾燥しただけでは商品価値のある製品を提供することはできなかったのである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで本発明では下記の手段により、上記課題を解決する。
【0015】
(1)小麦粉及び米粉の少なくとも一方と、だし汁、卵、砂糖、塩を混合してなるたこ焼き生地からたこ焼きを製造し、焼き上がったたこ焼きを凍結させた後、当該たこ焼きに対し、乾燥時の圧力を0.6〜0.65Torrに設定して、35〜45度の環境下で1.5〜2.5時間乾燥する第一次昇華を行った後、70〜80度の環境下で14〜16時間乾燥する第二次昇華を行い、さらに45〜55度の環境下で23〜25時間乾燥を行う第三次昇華を行うことを特徴とする凍結乾燥方法を提供する。
【0016】
(2)小麦粉及び米粉の少なくとも一方と、だし汁、卵、砂糖、塩を混合してなるたこ焼き生地からたこ焼きを製造し、焼き上がったたこ焼きを凍結させた後、当該たこ焼きに対し、乾燥時の圧力を0.6〜0.65Torrに設定して、35〜45度の環境下で1.5〜2.5時間乾燥する第一次昇華を行った後、70〜80度の環境下で14〜16時間乾燥する第二次昇華を行い、さらに45〜55度の環境下で23〜25時間乾燥を行う第三次昇華を行うことにより得られる凍結乾燥食品を提供する。
【発明の効果】
【0017】
通常の凍結乾燥方法によってたこ焼きに凍結乾燥を施した場合、伸縮率は30%以上となってしまうが、本発明に係る凍結乾燥方法をたこ焼きに施すと、通常の乾燥方法を施したものと比して収縮率が低減される。特に、たこ焼き生地に米粉を加味して製造し、当該製品に本発明に係る凍結乾燥方法を施すならば、伸縮率を5%程度に留めることができ、効果が上がる。
【0018】
そして、通常、たこ焼きの生地には小麦粉が用いられるが、その代わりに米粉を用いた場合、口解けのよく歯ざわりの良い製品が提供される。澱粉と米粉を一定計量し、同一温度の水に入れたとき、澱粉は即水分を吸収し、団子状態になってしまうが、米粉は一定時間分子と分子が結合せず、団子状態にならない利点があるので、歯ごたえの良い商品を製造することができるのである。又、原料の粉砕後の分子は澱粉の方が細かいため、材料が反り、食感を悪くしていると考えられる。そして、澱粉を用いた場合、練る際に空気を均一に抱き込まないので凍結乾燥した場合に食感が偏るが、米粉を用いた練り製品は平均して水分を均一に抱き込むため、乾燥後の食品の食感が均一になる。したがって、米粉を用いることが好ましいのである。
【0019】
さらに本発明では練り製品の水分のみを昇華させ、成分には影響を与えない凍結乾燥方法を提供しているので、本来の菓子の風味や色合いを損なうことなく、新しい食感のスナック系の食品を提供することができる。
【0020】
又、油で揚げたり、油脂分の多い食材を用いていないので、カロリーを抑えることができ、近年の健康志向の需要に応えることができる。
【0021】
そして、残存水分が3〜5%と少ないため、バクテリアの菌繁殖のおそれがなく安全であり、さらに携帯や運搬が便利であり、保存性も良い。そのため旅客機で提供される食事や、保存食、さらには宇宙食としても利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、たこ焼きを凍結真空乾燥することを特徴とする技術であるが、まず、たこ焼きの製法について説明する。たこ焼き生地には、小麦粉あるいは米粉の少なくとも一方と、だし汁、卵、砂糖、塩、さらに牛乳、ベーキングパウダー等が含まれており、その具材としてタコ、天かす、ねぎ、桜海老、紅しょうが、青海苔等が加えられる。
【0023】
たこ焼きの製法については従来から行われている製造方法を用いることができるが、その材料は、小麦粉あるいは米粉を100g〜200g望ましくは150gと、ベーキングパウダーを3〜10g好ましくは7.5gと、砂糖を3〜10g好ましくは6gと、塩を1〜5g好ましくは2.5gと、醤油5〜20g好ましくは12gと、冷ましただし汁350〜450g好ましくは400gと、牛乳40〜60g好ましくは50gと、卵1個(50g)と、を用いることができる。具材については適宜選択される。
【0024】
従来のたこ焼きでは、小麦粉を用いていたが、米粉を用いた方が、たこ焼きの弾力が楽しめる。そこで本発明においては米粉を使用することが好ましいのである。米粉は粒子が細かい程、完成した食品の口どけが良くなるので、150メッシュパス以上(150メッシュパスより細かいもの)を用いることが好ましい。
【0025】
具材のタコ、天かす、ねぎ、桜海老、紅しょうがを適当な大きさに切っておく。そして従来から行われている方法によってたこ焼きを製造する。
【0026】
次に本発明に係る凍結乾燥方法について説明する。当該たこ焼きに対し予備冷凍を18時間以上行い、製品の温度を−18℃以下にして凍結させた後、当該たこ焼きに対し、乾燥時の圧力を0.6〜0.65Torrに設定して、35〜45度、好ましくは40℃の環境下で1.5〜2.5時間乾燥する第一次昇華を行った後、70〜80℃、好ましくは75℃の環境下で14〜16時間乾燥する第二次昇華を行い、さらに45〜55度、好ましくは50℃の環境下で23〜25時間乾燥を行う第三次昇華を行う。
【0027】
表1を用いて従来の乾燥食品の凍結乾燥方法と比較しながら最適な乾燥条件を説明する。まず、真空度は通常では0.54Torr程で行なわれるが、本発明では0.63Torr前後で乾燥を開始することが望ましい。さらには通常の乾燥は初期低温(40度で2時間程度)、中温(80度で27時間程度)、最終温度(50度前後で5時間程度)の3段階で乾燥させ、延べ30時間程度で終了するが、本発明の乾燥加温条件は第一次昇華として、40度を維持しながら1.5〜2.5時間の初期昇華を行い、次に第二次昇華として、温度を75度に上昇させて14時間〜16時間乾燥して中期乾燥を行い、最後に第三次昇華として温度を50度に下げて23〜25時間乾燥を行うことによって、延べ20〜25時間以内で乾燥を終了することが望ましい。
【0028】
【表1】

上記方法で凍結乾燥を施すと、たこ焼きの形状変化や変色を抑制することができる。上記乾燥方法により得られる食品の食感は米菓子のようであるが、口当たりが軽く、歯ごたえがあり、従来のスナック食品とは異なっている。
【0029】
たこ焼きを従来の乾燥方法によって凍結乾燥した場合が図1であり、たこ焼きを本発明に係る凍結乾燥方法により乾燥を行った場合の写真が図2である。左側が凍結乾燥前のもの、右側が後のものである。
【0030】
従来の乾燥方法によって凍結乾燥した場合は、茶色に変色してしまったが、本発明では米粉を加味しているので、凍結乾燥後の製品の変色は抑制されている。さらに従来の乾燥方法によって凍結乾燥したものは収縮率が30%程であるが、本発明に係る製品では収縮率は5%程度に低減されており、従来と比較して効果が高いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の方法でたこ焼きを凍結乾燥した場合の写真
【図2】本願発明によりたこ焼きを凍結乾燥を施した場合の写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉及び米粉の少なくとも一方と、だし汁、卵、砂糖、塩を混合してなるたこ焼き生地からたこ焼きを製造し、焼き上がったたこ焼きを凍結させた後、当該たこ焼きに対し、乾燥時の圧力を0.6〜0.65Torrに設定して、35〜45度の環境下で1.5〜2.5時間乾燥する第一次昇華を行った後、70〜80度の環境下で14〜16時間乾燥する第二次昇華を行い、さらに45〜55度の環境下で23〜25時間乾燥を行う第三次昇華を行うことを特徴とする凍結乾燥方法。
【請求項2】
小麦粉及び米粉の少なくとも一方と、だし汁、卵、砂糖、塩を混合してなるたこ焼き生地からたこ焼きを製造し、焼き上がったたこ焼きを凍結させた後、当該たこ焼きに対し、乾燥時の圧力を0.6〜0.65Torrに設定して、35〜45度の環境下で1.5〜2.5時間乾燥する第一次昇華を行った後、70〜80度の環境下で14〜16時間乾燥する第二次昇華を行い、さらに45〜55度の環境下で23〜25時間乾燥を行う第三次昇華を行うことにより得られる凍結乾燥食品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−222121(P2007−222121A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49689(P2006−49689)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(591169766)群馬製粉株式会社 (9)
【出願人】(501118406)株式会社アーシュ・ツジグチ (7)
【Fターム(参考)】