説明

とりわけ(I.A.)炭酸水素ナトリウムを含む、ナトリウムナプロキセンの非発泡形態

錠剤コア及び、所望であれば、糖衣又はフィルムコートを含むナトリウムナプロキセンの非発泡錠であって、錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、30〜99重量%のナトリウムナプロキセン及び70〜1重量%の補助剤成分からなり、少なくとも1つの塩基性補助剤を含み、十分な硬度を有する錠は、比較的小さく、血中濃度のとりわけ素早い上昇をもたらし、それにより、鎮痛効果の開始を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムナプロキセンの経口投与用非発泡錠製剤及びその製造方法に関する。
【0002】
ナプロキセン、すなわち、(S)−2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸は、鎮痛性、消炎性及び解熱性の薬剤として既知であり、特に、リウマチ性疾患、頭痛、片頭痛、歯痛、背痛、筋肉痛、術後疼痛などのような、炎症性疾患の処置及び疼痛に対する処置として用いられる。遷延性(protracted)頭痛及び進行中の、筋肉及び肢痛への、ナプロキセンの長期効果が特に有益である。
【0003】
特に、疼痛処置において、更にきわめて重要な点は、効果の速やかな発現の達成である。これを達成するために、活性成分は、速やかに放出及び吸収されなければならず、固体投与形態の場合には、これらが胃腸管で速やかに崩壊することがさらに必要である。一方、固体投与形態は、その上、問題なく、飲み込むまれ得るように十分に小型であるべきである。
【0004】
しかし、製剤は、適切な補助剤を十分な量で含有しなければならず、これにより、製剤は、通常の錠剤成形機械で圧縮され得、錠剤成形器具に付着せず、十分な硬度をもつ、速やかに崩壊することになる。更に、効果の速やかな発現の達成は、ナプロキセンが酸性媒質、特に、胃液でほとんど不溶であり、それによって、活性成分の溶解及び吸収が著しく遅れらされ得るとの事実により、更に難しくなる。
【0005】
したがって、ナプロキセン酸の溶解性を改善する試みがなされてきた。
【0006】
そのため、WO97/18245では、ナプロキセン(酸性形態)とβ−シクロデキストリンの錯体が製造された。しかし、活性成分とβ−シクロデキストリンの比率が極めて都合が悪いため、飲み込み可能な錠剤がそれから製造され得ない。加えて、ナプロキセンがインビボでβ−シクロデキストリン錯体から十分に素早く溶解し、吸収されるかどうかが確かではない。どのような場合でも、錯体からのナプロキセンの放出は、胃腸管における、pH条件、イオン濃度などに依存して、相当な不安定に付されることが推定されなければならない。
【0007】
DE4410470では、それぞれナプロキセン1molに基づき、0.8〜1.5molのアルギニン及び0〜0.7molの塩基性補助剤のナプロキセン組成物が記載されている。好ましい薬剤形態は、摂取される前に水に溶解する粒状体で構成される。溶液の塩基性pHによって、対応する塩がナプロキセンから徐々に形成される。この溶解プロセスは、胃酸の存在下、胃の中にある対応する錠剤では、全くこのようには起こらない。補助剤は、極めて水溶性であるので、好ましくは、難溶性のナプロキセンを溶液に入れる前に、胃酸に対して緩衝される。加えて、そのような製剤は、非常に大型になり、錠剤を飲み込むことが難しくなり、0.8〜1.5mol当量のアルギニン添加の結果、非常に高価になる。
【0008】
そのため、フィルム錠剤が既に市場で入手可能であり、それは、錠剤コア中に、微晶質セルロース、崩壊剤及びステアリン酸マグネシウムのような、慣用の補助剤の存在下、ナプロキセンのナトリウム塩を含有する。しかし、活性成分の放出は、pH1.2では非常に乏しい(図2及び実施例27を参照)。
【0009】
加えて、ナプロキセン又はナトリウムナプロキセンの噴霧乾燥により、ナプロキセンの圧縮性及び溶解性を更に改善することが試みられてきた(US 5470580)。しかし、ナトリウムナプロキセン及び噴霧乾燥の錠剤も作られ(CA 2363528)、そこでは、噴霧乾燥マンニトールも同様に、多分活性成分の溶解プロセスを改善する。
【0010】
US 2002/187195では、軟質ゼラチンカプセル剤が記載され、これは、ポリエチレングリコール、プロピオン酸ナトリウム及び共溶媒、例えば、ジメチルイソソルビドを含有する。アスピリン又はナプロキセンは、好ましい活性成分として、指名される。
【0011】
上記で記載される全ての製剤は既に述べた不利な点に加えて、胃の生理学的条件での溶解プロセスの依存性及び再現性のある溶解性の達成がほとんど着目されてこなかったことの、主要な不利な点を有する。したがって、例えば、ナトリウムナプロキセンは酸の存在下で、疎水性の脂肪塊として直ちに沈殿し、錠剤コアの、更なる崩壊プロセスを、その外に活性成分の溶解プロセスを遅らせる。それどころか、ナプロキセンの、脂肪酸の、沈殿性の疎水性酸形態は、徐々にナプロキセン結晶を形成し、これは、しかし、十二指腸へ移動する溶液の中にゆっくりと入り、結果的に、そこでpHが上がる。ナプロキセンは、塩形成により、pH7.4で速やかに溶液の中に入るが、しかし、pH値7は十二指腸では達成されない。これは、ナプロキセンが腸のより深い領域でしか徐々に溶解せず、それにより、活性成分濃度の速やかな構築(build up)が不可能になるという事実をもたらす。
【0012】
したがって、本発明の目的は、活性成分の、速やかな放出及び吸収を可能にし、それにもかかわらず、比較的に小さい錠剤のサイズを可能にする、技術的に実行可能に製造し得る錠剤製剤を提供することである。
【0013】
この目的は、錠剤コア及び、所望であれば、錠剤コア上の糖衣又はフィルムコートを含む、ナトリウムナプロキセンの経口投与用の非発泡錠であって、錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、30〜99重量%のナトリウムナプロキセン及び70〜1重量%の補助剤成分からなり、少なくとも1つの塩基性補助剤を含む、非発泡錠により達成される。
【0014】
一般に、錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、30〜95重量%のナトリウムナプロキセン及び70〜5重量%の補助剤成分からなる、錠剤製剤が好ましい。ナプロキセンのナトリウム塩は、本発明の錠剤製剤において、実質的に水分のない形態であるか又は水和の形態、例えば、二水和物で存在することができ、典型的には、ナプロキセンのナトリウム塩の含水量は、水和物の重量に基づき、約0.05〜14重量%であることができる。補助剤成分は、1つ以上の塩基性補助剤を含み得、好ましくは、それらの総量は、錠剤コアの重量に基づき、少なくとも約5重量%である。
【0015】
驚くべきことに、錠剤成形されるナトリウムナプロキセンの能力は含水量に依存することが見出され、現在の見解と異なり、ナトリウムナプロキセンが0.05〜14重量%、好ましくは、6〜12.5重量%の含水量で使用され、含水量が正確に制御される場合、ナトリウムナプロキセンに加えて、低い割合の塩基性補助剤を含有しなければならない、十分な硬度及び短い崩壊時間を持つ錠剤を製造することが可能である。乏しい圧縮性の性質及びロウ状性のため、当業者は、多くの補助剤を含まない錠剤の製造を通常は試みることはないが、しかし、有用な圧縮及び崩壊特性を得るために、比較的多量の圧縮性賦形剤及び崩壊剤を添加するであろう。したがって、適切な含水量を用いることにより、ほぼ唯一、ナトリウムナプロキセンから構成され、非常に低い割合の塩基性佐補助しか含有しない錠剤を製造可能にすることは、全く予想外のことであった。
グラフィカルな形態において、図1は、錠剤化工程に使用される圧縮力との関係において、本発明の錠剤の、硬度と崩壊時間を示す。
図2は、50rpmでのパディル法(Paddle-Method)による、0.1M塩酸(pH 1.2)における、本発明の製剤及び比較製剤の溶解プロファイルを示す。
【0016】
原則的に、ナトリウムナプロキセンは実質的に水分がないか、または一水和物若しくは二水和物として、又はこれらの形態の混合物として存在し得る。水分のない形態及び一水和物は吸湿性であり、水を吸収し、その結果として、二水和物を形成する。例えば、水分のないナトリウムナプロキセンは、既に、43%RHの相対湿度レベルで、約12.5重量%までの水分を自発的に吸収する。したがって、無水物又は一水和物が使用される場合は、吸湿性の錠剤となり、非常に厚い包装材料が必要となる。驚くべきことに、本発明の錠剤の硬度及び崩壊時間は、典型的な崩壊剤の不在下においても、錠剤化で使用される圧縮圧力にほぼ依存しないことが更に判明した。図1は、251.4mg(220mgの水分のないナトリウムナプロキセンに相当)のナトリウムナプロキセン二水和物(dihydrate)(12.5〜14重量%の含水量)、50mgのポリビニルピロリドンK25及び50mgの炭酸水素ナトリウムからなる、本発明の錠剤に使用される圧縮力に関して、Schleuniger Hardness Tester を用いて測定される硬度及び37℃の水で測定される崩壊時間を、グラフの形態で例証する。明らかなように、使用される圧縮力の、20から50kNへの増加は、硬度及び崩壊時間に僅かな増加しかもたらしていない。この予想外の知見によって、硬すぎて、弱められる、崩壊及び放出特性をもつ錠剤が、過度の圧力使用から結果として生じることを実質的に排除することができ、そのことが、加えて、本発明の錠剤の製造を促進させる。
【0017】
更に、予想外であるが、本発明の錠剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、脂肪トリグリセリドなどにような内部滑択剤を添加することなく、製造され得ることが判明した。知られているように、滑択剤は、通常錠剤混合物に添加されなければならず、これにより、錠剤化機に付着がなく、錠剤が排出されるときに、摩擦が大き過ぎることにならない。滑択剤を使用しないと、通常、錠剤化プロセスに相当な障害が結果とし生じ、それは、錠剤プレスを停止させなければならなくなり、機械からの排出により損傷を受けるから、錠剤が使い物にならなくなるとういう結果になる。したがって、本発明の錠剤の製造において、滑択剤を消散させられ(dispenced)得、慣用の錠剤プレスを使用して、数百万の錠剤が内部滑択剤を加えることなくプレスされ得ることは、全くの驚きであった。更に、慣用の滑択剤は疎水性であり、圧縮性及び崩壊特性を低減する。したがって、本発明の錠剤製剤は、好ましくは、錠剤コアにかなりな量の滑択剤を含有せず(すなわち、0.1重量%未満)、有利には、内部滑択剤を全く含まない。
【0018】
しかし、ナトリウムナプロキセンが非常に低い含水量(例えば、約1重量%未満)のみを有する場合、錠剤コアの重量に基づき、約0.1〜5重量%の滑択剤(lubricant)及び/又は滑剤(glidant)を添加することが勧められる。典型的には、そのような場合には、滑択剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、脂肪トリグリセリドのステアリン酸)の割合は、0.5〜1.0重量%であり得、滑剤(例えば、タルク)の割合は、約2〜3重量%であり得る。
【0019】
更に、内部滑択剤を省くと、錠剤混合物に崩壊剤を加える必要もないことになる。これにより、補助剤の割合を更に低減することができるか、又は賦形剤(filler)を完全に省くことさえできる。ナトリウムナプロキセンの水溶性は、実際には大変大きいため、錠剤の崩壊は、慣用の崩壊剤の添加によるか又は微晶質セルロースのような賦形剤と崩壊剤の組み合わせによって、とても、更に改善され得ない。したがって、本発明の錠剤製剤は、好ましくは、崩壊剤又は崩壊剤の特性のある賦形剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、微晶質セルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロースデンプンナトリウムなどのかなりな量(すなわち、0.1重量%未満)を含まず、有利には、このような物質を全く含まない。
【0020】
ナトリウムナプロキセンが非常に低い含水量を有する場合、滑択剤及び/又は滑剤に加えて、微晶質セルロースのような、錠剤の圧縮性を改善する補助剤を使用することも勧められる。
【0021】
本発明の錠剤の崩壊時間は、一般に、10分よりかなり短く、典型的には、約2〜7分の範囲である。ナトリウムナプロキセンの高い水溶性及び内部滑択剤の排除によって、本発明の錠剤は、活性成分の特に素早い放出及び吸収を可能にし、それが、血中レベル及び作用部位での濃度の急上昇に至る。更に、少なくとも約5重量%の塩基性成分を含有する、本発明の錠剤は、酸性媒質において、かなり過飽和される溶液に至り得、それが、素早い吸収を付加的に助ける。したがって、既知のナプロキセン医薬と比較すると、本発明は、より速やかに効果的な血中レベルを達成し、それにより、鎮痛効果の加速される開始を達成する。それにより、鎮痛効果の、遅すぎる開始の結果として、患者が早まって別の錠剤を摂取する危険性を少なくする。
【0022】
本発明の錠剤製剤において、滑択剤及び崩壊剤の排除、及び更なる補助剤の低減又は排除は、錠剤の重さ及び大きさをかなり減少することができる。200mgのナプロキセンと等価のナトリウムナプロキセンの量は僅か220mgであるから、より良好な圧縮性の観点から、約12.5重量%の水を有するナトリウムナプロキセン(ナトリウムナプロキセン二水和物)が利用される場合でさえも、不溶性ナプロキセンとの重量の差はそれほど大きくない。この場合、200mgのナプロキセンと等価のナトリウムナプロキセン二水和物の量は、僅か250mgである。したがって、本発明の錠剤は、速やかに吸収され、同時に比較的小型である。
【0023】
表現「錠剤コア」は、本発明の文脈において、糖衣又はフィルムコートのない錠剤を示す。
【0024】
本発明の文脈において、ナトリウムナプロキセンの記載される含水量は、それぞれの場合、105℃での乾燥減量として測定された。それにより、水分の結晶化と更なる吸着水が完全に失われる。
【0025】
本発明の錠剤製剤における、ナトリウムナプロキセンの割合は、錠剤コアの重量に基づき、好ましくは、約30〜95重量%、特に好ましくは、約60〜95重量%、典型的には、約70〜93重量%、とりわけ、約70〜85重量%である。同様に、錠剤コアにおいける補助剤の割合は、好ましくは、約70〜5重量%、特に好ましくは、約40〜5重量%、典型的には、約30〜7重量%、とりわけ、約30〜15重量%である。
【0026】
本発明の一つの実施態様によると、錠剤コアは、実質的に、ナトリウムナプロキセン及び塩基性補助剤からなる。本明細書において、好ましくは、塩基性補助剤の割合は、錠剤コアの重量に基づき、少なくとも約5重量%である。更に、この実施態様における、ナトリウムナプロキセンの含水量は、好ましくは、約10〜14重量%であり、約11〜13重量%、とりわけ、約11.5〜12.5重量%の含水量が特に好ましいであろう。加えて、錠剤は、好ましくは、少なくとも約30N、特に好ましくは、少なくとも約40Nの錠剤硬度(Schleuniger Hardness試験機により測定される)を有するであろう。
【0027】
しかし、一般に、1つ以上の塩基性補助剤に加えて、少なくとも約0.1重量%の低い割合の、1つ以上の更なる補助剤を錠剤コアに用いることが好ましく、これは、好ましくは、錠剤コアの重量に基づき、総量で、少なくとも約5重量%で存在し得る。この場合、ナトリウムナプロキセンの割合は、錠剤コアの重量に基づき、好ましくは、多くて、約94.9重量%である。
【0028】
原則として、錠剤コアに使用できる補助剤は、水溶性の、又は水難溶性の、又は水不溶性の物質であり得る。例えば、時折、錠剤混合物中に、不溶性結合剤又は不溶性賦形剤、天然及び微晶質セルロース、デンプン、加工デンプン、リン酸カルシウム及び酸化ケイ素、及び/又は、クロスカルメロース、クロスポビドン及び架橋カルボキシメチルデンプンナトリウムのような崩壊剤を使用することが望ましいことがある。しかし、一般に、錠剤コアには、主に又は唯一水溶性補助剤を使用することが好ましい。本発明の文脈において、「水溶性」は、25℃で、少なくとも約1重量%の濃度において、水に溶解する物質を記載する。塩基性補助剤に加えて、更なる補助剤として、水溶性補助剤ポビドンの使用が特に好ましい。
【0029】
塩基性補助剤を含む、そのような補助剤(好ましくは、水溶性であり得る)の全体的な割合は、錠剤コアの重量に基づき、好ましくは、約7〜70重量%、特に好ましくは、約20〜40重量%、そしてとりわけ、約25〜35重量%であり得る。それにより、錠剤コアにおけるナトリウムナプロキセンの割合は、好ましくは、約30〜93重量%、特に好ましくは、約60〜80重量%、そしてとりわけ、約65〜75重量%であり得る。
【0030】
好ましくは、塩基性補助剤の他に、錠剤コアにおいて、補助剤として適切なものは賦形剤である。更に、所望であれば、錠剤コアは、1つ以上のイオン性又は非イオン性界面活性剤(tensides)、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリソルベート又はサッカロースモノパルミテートを含み得る。存在する場合、界面活性剤の割合は、錠剤コアの重量に基づき、例えば、約0.1〜10重量%であることができるが、しかし、好ましくは、それは約5重量%を超えない。
【0031】
好ましくは、適切な塩基性補助剤は、25℃で、水中1重量%の濃度において、少なくとも、7.5のpH値の、水溶液又は水性懸濁液を与えるような物質である。 好ましく適切な塩基性補助剤の例は、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酸化物、水酸化物、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩又はプロピオン酸塩の形態の、塩基性アルカリ金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩及び塩基性アンモニウム塩であり、とりわけ、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、酒石酸二カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウムなどのような、塩基性ナトリウム塩、塩基性カリウム塩及び塩基性アンモニウム塩;リシン及びアルギニンなどのような塩基性アミノ酸等である。一般に、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸三ナトリウム及びリン酸三ナトリウムのような、水溶性で塩基性の補助剤が好ましい。特に好ましく使用されるものは、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、又は両方の混合物、とりわけ、炭酸水素ナトリウムである。
【0032】
塩基性補助剤は、錠剤の表面の塩基性のミクロ環境を形成することを助け、それにより、酸性の胃の中で、酸性ナプロキセンの急速な沈殿を多分減殺する。錠剤コアにおける塩基性補助剤の割合は、錠剤コアの重量に基づき、好ましくは、5〜70重量%、とりわけ、約10〜30重量%であり得る。典型的には、約15〜25重量%の塩基性補助剤が最も使用され、例えば、約18〜22重量%である。
【0033】
錠剤コアにおける賦形剤として、一般に、圧縮性を改善する補助剤が適している。しかし、好ましいものは、一般に、圧縮性を改善する、中性から弱酸性の賦形剤、好ましくは、緩衝効果を持たないものである。本発明の文脈において、表現「中性から弱酸性の賦形剤」は、特に、25℃で、水中1重量%の濃度において、4〜7.5のpH値を持つ、水溶液又は水性懸濁液に結果としてなる賦形剤を含む。好ましくは、水溶性賦形剤が使用される。好ましく適切な賦形剤の例は、サッカロース、グルコース、フルクトース及び乳糖のような糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール及びソルビトールのようなヘキソース類、マルトデキストリンのような、加水分解又は酵素的に分裂するデンプン、β−及びγ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン類、非架橋(水溶性)ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、有機又は無機酸の、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩、とりわけ、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、二クエン酸三マグネシウム、二クエン酸三カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどのような、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウム塩である。特に好ましい賦形剤は、ソルビトール及びマンニトールのようなヘキソース類、非架橋ポリビニルピロリドン、マルトデキストリン及び塩化ナトリウムであり、とりわけ、水溶性で非架橋のポリビニルピロリドンであり、これは、胃の中で、ナプロキセンの沈殿を遅くらせることにも、明らかに適している。ポビドンK25及びポビドンK29〜K32のようなポビドンK25〜K90(BASF、ドイツ)は、例えば、水溶性で、非架橋のポリビニルピロリドンとして適している。
【0034】
存在する場合、錠剤コアにおける賦形剤の割合は、錠剤コアの重量に基づき、一般に、約1〜50重量%の量であり得る。好ましくは、一般に、約3〜30重量%、とりわけ、約10〜25重量%、そして典型的には、約15〜20重量%である。
【0035】
本発明の錠剤製剤は、賦形剤及び塩基性補助剤を、又は塩基性補助剤のみを含み得る。錠剤コアが賦形剤を、その外に塩基性補助剤を含有する場合、最適量は、時折、上記の量よりも少し少なくなり得る。更に、賦形剤と塩基性補助剤の総量は、錠剤コアの重量に基づき、便宜上、多くて約70重量%、好ましくは、多くて約40重量%、特に好ましくは、多くて約30重量%に達する。
【0036】
特に好ましい実施態様によると、本発明の錠剤製剤は、塩基性成分として、炭酸水素ナトリウム及び/又は炭酸水素カリウム及び、水溶性賦形剤として、非架橋ポリビニルピロリドンを含有する。好ましくは、製剤は、錠剤コアの重量に基づき、約5〜20重量%、とりわけ、約7〜15重量%の非架橋ポリビニルピロリドン及び約5〜20重量%、とりわけ、約12〜18重量%の、炭酸水素ナトリウム及び/又は炭酸水素カリウムを含有し得る。好ましくは、錠剤コアは、加えて、サッカロースパルミテートを、例えば、約2.5重量%の量で含有し得る。好ましくは、錠剤コアは、ナトリウムナプロキセン、非架橋ポリビニルピロリドン、炭酸水素ナトリウム及び/又は炭酸水素カリウム、及び所望であれば、サッカロースパルミテートからなり得る。
【0037】
この好ましい実施態様によって、酸性の胃における錠剤コアの崩壊は、錠剤が発泡錠のように反応するので、炭酸水素により促進される。結晶化を防ぐ補助剤として、ポリビニルピロリドンは、ナプロキセンの過飽和溶液の形成を支援し、その結晶化を遅らせる。界面活性剤の存在下での発泡作用は、大きな表面積を持つ発泡体に至る。これにより、沈殿するナプロキセンの大きい塊から、より大きい難溶性のナプロキセン結晶塊の形成が回避され、したがって、十二指腸に達して、その再溶解が促進される。
【0038】
したがって、所望であれば、錠剤混合物は、補助剤として、ドデシル硫酸ナトリウムのような界面活性剤を含有し得る。しかし、存在する場合、界面活性剤の割合は、錠剤コアの重量に基づき、一般に、約5重量%を超えず、例えば、約0.1重量%〜5重量%、好ましくは、約0.1〜3重量%、典型的には、約2重量%であり得る。しかし、界面活性剤の添加は必須ではなく、このことは、本発明の錠剤コアが好ましくは界面活性剤を含まなくてもよい理由である。ナトリウムナプロキセンの含水量が0.05〜6重量%の範囲である場合、ナトリウムナプロキセンの錠剤化特性の低減を和らげるために、一般に、比較的高い割合の補助剤が示される。したがって、この場合には、錠剤コアの重量に基づき、一般に、約30〜50重量%の割合の補助剤、とりわけ、賦形剤及び塩基性補助剤が好ましい。
【0039】
本発明の錠剤は、活性成分ナトリウムナプロキセンを、慣用の投与量で含有することができ、補助剤の低割合により、高用量も可能である。したがって、本発明の錠剤は、例えば、約110mg〜660mgのナトリウムナプロキセン(水分を含まないナトリウムナプロキセンに基づく;100mg〜600mgのナプロキセンに相当)を含有することができ、ここで、約220mg〜440mgの範囲の投与量が好ましい。
【0040】
一つの実施態様において、本発明は、ナトリウムナプロキセン、炭酸水素ナトリウム、微晶質セルロース、クロスカルメロース、タルク、及びステアリン酸マグネシウムを含む錠剤を提供する。別の実施態様において、本発明は、50〜60重量%のナトリウムナプロキセン、15〜25重量%の炭酸水素ナトリウム、15〜25重量%微晶質セルロース、2〜6重量%のクロスカルメロース、1〜5重量%のタルク、及び0.5〜2.2重量%のステアリン酸マグネシウムを含む錠剤を提供する。別の実施態様において、本発明は、55〜65重量%のナトリウムナプロキセン、10〜25重量%の炭酸水素ナトリウム、2〜15重量%微晶質セルロース、2〜6重量%のクロスカルメロース、1〜5重量%のタルク、及び0.5〜2.2重量%のステアリン酸マグネシウムを含む錠剤を提供する。さらに別の実施態様において、本発明は、55〜65重量%のナトリウムナプロキセン、10〜25重量%の炭酸水素ナトリウム、5〜10重量%のヒドロキシルプロピルセルロース、2〜15重量%微晶質セルロース、2〜6重量%のクロスカルメロース、1〜5重量%のタルク、及び0.5〜2.2重量%のステアリン酸マグネシウムを含む錠剤を提供する。
【0041】
本発明の錠剤製剤は、好ましくは、糖衣又はフィルムコートで被覆されることができ、ここで、全ての慣用の糖及びフィルムコート材料が、被覆材料として、原則的に適している。皮膜の厚さは重大ではないが、一般に、皮膜の割合は、錠剤コアの重量に基づき、僅か、約1〜10重量%、好ましくは、約3〜6重量%である。
【0042】
本発明の錠剤は、ナトリウムナプロキセンと補助剤成分の混合物を錠剤コアに圧縮し、所望であれば、錠剤コアを糖衣又はフィルムコートで被覆することによって製造できる。錠剤化は、慣用の錠剤プレスにより、それ自体既知の方法で実施できる。同様に、糖衣及びフィルムコートは、従来の方法により、それ自体既知の方法で適用できる。一般に、錠剤化の前に、ナトリウムナプロキセンを、場合により補助剤又は補助剤の一部と一緒に、乾燥形態で粒状化する。錠剤化にとって好ましくは、約0.25〜1.24mm、とりわけ、約0.4〜1.0mmの粒経の粒状体が使用され得、又は本発明の錠剤の錠剤コアが、この粒経の粒状体から構成し得る。ナトリウムナプロキセンが少なくとも0.4ml/gの嵩容量を有する場合、所望であれば、粒状化を免ずることができる。嵩容量を決定するために、250mlのメスシリンダーは、振とうしないで、正確に計量される物質で、注意深くゆっくりと満される。最後に、物質中の注がれるものが平らにされ、必要であれば、シリンダー内の物質の表面がヘアブラシを用いて平らにされ、物質の容量が読み取られる。嵩容量は、読み取り容量及び導入される物質の質量の比率である。
【0043】
塩基性補助剤、及び場合により使用され得る賦形剤が、粒状化の前に混合され得るが、又は錠剤化前に、最終混合に直接混合され得る、或いは両方の成分の一部分が粒状化に用いられ、残りの部分が最終混合で加えられ得る。しかし、錠剤が、塩基性補助剤のみならず、賦形剤を含有する場合、一般に、賦形剤を粒状化で既に添加し、塩基性補助剤を最終混合でのみ加えることが好ましい。
【0044】
本発明は、また、鎮痛効果の、促進される開始を達成する方法であって、本発明による錠剤の製造及び疼痛を受ける患者にその錠剤の投与を含む方法に関する。
【0045】
下記の実施例によって、本発明が更に例証される。実施例において、Kollidon CL(Hoescht、ドイツ)は、水不溶性の非架橋ポリビニルピロリドンを示し、ポビドンK25〜K90(BASF、ドイツ)は、水溶性の非架橋ポリビニルピロリドンを示し、Hypromellose 2910、6及び15mPas(シンエツ、日本)は、水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、Magrogol 4000 及び Magrogol 6000(Hoechst、ドイツ)は、それぞれ、平均分子量4000〜6000を持つ、高重合で、ロウ状の水溶性ポリエチレングリコールであり、二酸化チタン((Schweizerhalle、スイス)は、水不溶性白色顔料である。
【0046】
実施例1
a)ナトリウムナプロキセン231.0kgをポビドンK25 30.0kg及びラウリル硫酸ナトリウム3.0kgと、慣用の混合機中で、10分間均一に混合した。この混合物をローラー密集機で密集し、密集された物質を、メッシュ幅1.0mmの篩で壊した。0.4mmより小さい粒径の部分を、もう一度密集し、壊した。
【0047】
メッシュ幅0.71mmの篩で篩われた、炭酸水素ナトリウム50.0kg及びステアリン酸マグネシウム2.0kgを、密集された物質と、慣用の混合機中で、10分間混合した。得られた最終混合物を、ロータリープレス上で、1時間当たり50,000錠の平均出力で,16プレスにより圧縮した。得られた楕円形で両凸の錠剤は、重量316mg、長さ11.5mm、幅7.5mm及び高さ4.5mmを有した。
【0048】
錠剤の硬度を決定するために、Schleuniger Hardness Testerのモーター付きあご形物(jaws)の間で、錠剤を破砕するのに必要な力を測定した。平均硬度(10回の測定値の平均)は58Nであった。
【0049】
錠剤の崩壊時間を、崩壊媒質として、水(pH約7)を使用する、ヨーロッパ薬局方、第4版、2.9.1章、191頁で記載されている崩壊方法を用いて測定した。錠剤の平均崩壊時間(6回の測定値の平均)は5.2分であった。
【0050】
b)得られた錠剤316kgをGlatt Coaterに装填し、水10kg及びエタノール(96%)40kg中の、Hypromellose 2910 3.5kg、乳糖一水和物0.75kg及びMagrogol 6000 0.75kgの溶液で、生成物温度35℃〜42℃で、噴霧し、単離した。同じ条件下で、単離されたフィルム錠剤コアを、水56kg及びエタノール(96%)24kg中の、Hypromellose 2910 2.8kg、乳糖一水和物3.6kg、Magrogol 4000 1.0kg及び二酸化チタン2.6kgの懸濁液で噴霧した。乾燥フィルム錠剤をMagrogol 6000 2kg及び水17kgの艶出溶液で処理した。フィルム錠剤の最終重量は333mgであった。フィルム錠剤は、220mgの、水分のないナトリウムナプロキセンを含有し、それは200mgのナプロキセンに相当した。
【0051】
同様の方法により、フィルムコート物が成功裏に実施され、それは、皮膜形成剤として、カラギーナン、ポリビニルアルコール及びヒドロキシメチルセルロースを、その外に、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル及びトリアセチンのような慣用の軟化剤を含有した。
【0052】
実施例2
実施例1で記載されたように、錠剤化の最終混合物316kgを製造した。実施例1と同様にして、これを圧縮して、片面に切断切込線のある長円形で両凸の錠剤を形成し、実施例1で記載したように、得られた錠剤を加工してフィルム錠剤とした。錠剤コアは、重量632mg、長さ17.0mm、幅8.0mm、高さ5.0mm及び水分のないナトリウムナプロキセンの含有量440mg(400mgのナプロキセンに相当)を有し、平均硬度は、78Nであり、平均崩壊時間は、5.7分間であった。フィルム錠剤の最終重量は666mgであった。
【0053】
実施例3〜28
a)表1で提示された錠剤製剤を実施例1aと同様にして製造した。
【0054】
粒状体を製造するために、(異なる含水量の)ナトリウムナプロキセンを、もし、ある場合には、乾式粒化で使用される賦形剤(補助剤A)と、慣用の混合機で10分間混合し、得られた混合物を又は場合によっては補助剤なしに使用されるナトリウムナプロキセンを、ローラー密集機で密集し、密集された物質を、メッシュ幅1.0mmの篩で壊し、0.4mm以下の粒径部分をもう一度密集して、壊した。実施例25において、平均粒径0.1〜0.2mm及び嵩容量0.4g/mlのナトリウムナプロキセンを使用し、先に密集しないで、これを直接錠剤化に使用した。実施例20〜22では、粒径0.4〜1.25mm(実施例20)、0〜0.25mm(実施例21)又は0〜1.25mm(実施例22)の粒状体を製造し、錠剤化に使用した。
【0055】
得られた粒状体(granulate)(特に指示のない限り、粒径0.4〜1.0mmの範囲)を、もしある場合には、補助剤(補助剤B)と、慣用の混合機中で、10分間混合した。得られた最終混合物をロータリープレス上において、1時間当たり40,000〜60,000錠の平均出力で16プレスにより圧縮した。得られた楕円形で両凸の錠剤は、重量285〜345mg、長さ11.5mm、幅7.5mm及び高さ約4.0〜5.0mmを有した。
【0056】
使用されるナトリウムナプロキセンの含水量、錠剤製剤中のナトリウムナプロキセンの割合を、その外に使用される補助剤(佐剤)A及びB、及び錠剤製剤中のそれらの割合を表1に編集する。錠剤の硬度(破砕強度)を決定するために、Schleuniger Hardness Testerのモーター付きあご形物(jaws)の間で錠剤を破砕するのに必要な力を測定した。表1で報告されている値は、それぞれの場合に、10回の測定値の平均である。
【0057】
【表1】






a)ナトリウムナプロキセンの含水量、105℃での乾燥減量として測定される
b)ナトリウムナプロキセン粒状体における佐剤(補助剤)
c)錠剤化佐剤(補助剤)
d)0.40〜1.25mmの範囲の粒状体(granulate)の粒径
e)0〜0.25mmの範囲の粒状体(granulate)の粒径
f)0〜1.25mmの範囲の粒状体(granulate)の粒径
g)密集なし(ナトリウムナプロキセン、嵩容量0.4g/ml)
h)ナトリウムナプロキセンの重量%がそれぞれの場合に示される含水量を有する活性成分に言及する例:13.2重量%の水分を持つ、70重量%のナトリウムナプロキセン=水を含まない、60.76重量%のナトリウムナプロキセン)
i)ヨーロッパ市場のナトリウムナプロキセンフィルム錠剤
【0058】
錠剤の崩壊時間は、崩壊媒質として、水(pH約7)を使用する、ヨーロッパ薬局方、第4版、2.9.1章、191頁で記載されている崩壊方法を用いて測定された。表1で示されている崩壊時間は、それぞれの場合、6回の測定値の平均である。
【0059】
実施例3の本発明の錠剤は、低速運転の錠剤プレスで製造され得る。錠剤は僅か36Nの硬度しかなく、キャッピングの、散発的な傾向を示す。興味深いことは、実施例27と28の比較において、pH1.2でのこれらの活性物質の放出である(図2)。実施例27及び28は、錠剤が塩基性補助剤(佐剤)を含有しないという事実で実施例3と異なる。本発明の製剤の優位性は、とりわけ、過飽和が好ましい、人工胃液での溶解試験(図2)において、13.4から3.2分間への崩壊時間の低減に表われている。溶解するナプロキセンの約15倍高い濃度(過飽和形態、2.5%の代わりに約39%)が生じる。この結果は実施例27で同様に確認される。微晶質セルロース及びポビドンK25の添加により、より高い破断強度及び僅かに改善される崩壊が達成されることは明白であるが、血中レベルの上昇に必須である過飽和は、実施例3と比較すると明確に低減している。
【0060】
実施例3〜6の錠剤は、種々の乾燥減量のナトリウムナプロキセンを含有する。高い乾燥減量では、滑択剤の添加は必要がない。多すぎるステアリン酸マグネシウムが添加されると(実施例6)、錠剤硬度は30Nより低くなる。実施例7の錠剤も、ナトリウムナプロキセンの低い含水量のため、十分な硬度で製造することができない。
【0061】
実施例8〜16の錠剤は、全ての場合において、十分な錠剤硬度及び好ましい崩壊時間に結果としてなる。塩基性成分は、ナトリウムナプロキセンと共に密集され得、また、同様に、最終混合物に加えられ得る。全ての塩基性補助剤(佐剤)が適切であることが示されている。しかし、好ましいものは、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムのような塩基性補助剤(佐剤)である。十分に硬く、摩耗抵抗な錠剤に対するポビドンK25の肯定的な影響は、明白である。
【0062】
実施例17、20〜23及び26の錠剤は、塩基性補助剤(佐剤)を、その外に微晶質セルロースのような不溶性賦形剤及び、クロスポビドン、トウモロコシデンプン及びクロスカルメロースのような崩壊剤を含有する。ポビドンK25の他に、ソルビトールも、ナトリウムナプロキセンと共に密集されるために、適切であることが判明した。硬度及び崩壊時間に関する結果は、微晶質セルロースが、より硬い錠剤を達成するために、些細な貢献しか与えず、それと典型的な崩壊剤との組み合わせは、予想と比べると、崩壊を著しく助長しないことを示す。これは、過剰に存在する、極めて水溶性のナトリウムナプロキセンに関連する。
【0063】
有利なことは、ラウリル硫酸ナトリウム及びサッカロースモノパルミテートのような界面活性剤、又は両界面活性剤の組み合わせの利用である。人工胃液において、逃散する二酸化炭素と界面活性剤との相互作用から、極微細孔発泡体が生じ、これは沈殿するナプロキセンの凝集を防ぐ。したがって、実施例18(図2)は、ほぼ70%の溶解するナプロキセンで最高の過飽和を達成した。
【0064】
実施例19は、31%の比較的低い活性成分含有量の錠剤を例証する。ポリビニルピロリドン及び活性成分は、好ましくは、この場合には、炭酸水素ナトリウムの画分と一緒に密集され、残りの塩基性成分は最終混合物に添加される。
【0065】
実施例25では、マンニトール及びポビドンが、ナトリウムナプロキセン混合物の形成を助け、これが良好に錠剤化され得、更に、これが炭酸水素ナトリウム及びタルクと混合され、プレスされ錠剤となる。しかし、ナトリウムナプロキセンを直接プレスして錠剤にする必要条件は、少なくとも0.4g/mlの嵩密度である。
【0066】
実施例29(溶解試験)
前記実施例で得られた錠剤からの活性成分の放出を、ヨーロッパ薬局方、第4版、2.9.3章、194頁(パドル形装置)で記載されている方法を用いて、1000mlの0.1M塩酸(人工胃液、pH1.2)中で試験した。
【0067】
幾つかの製剤の溶解プロフィールが例証のために、図2に図示される。図2は、実施例1、3、18、26、27及び28の非コーティング錠(錠剤コア)を、0.1M塩酸中、50rpmでパドル法によって測定された溶解プロフィールを示す。ナプロキセンは強いpH依存性溶解度を持つ有機酸である。1〜5の範囲のpHでは、溶解度は、明らかに0.1g/lより低い。pH6を超えると、塩形成の結果、溶解性が著しく上昇し、pH7.4で、約20g/lの値に達する。インビトロ放出がpH7.4で測定される場合、全ての錠剤において、急速な活性成分の放出が観察されることは驚くべきことではない。しかし、錠剤は最初に酸性の胃に到達し、小腸の上部でさえもpH値の7.4は異常に高いので、pH7.4でのインビトロ試験は、インビボでの挙動に関して実質的になにも明らかにしていない。したがって、薬局方に対応するpH7.4での放出の結果は、報告されていない。
【0068】
驚くべきことに、本発明の錠剤によると、実施例1、18及び26が例証しているように、pH1.2で、約70%までの溶解されるナプロキセンの過飽和が達成され得る。その上、それぞれの場合における溶解媒質のpH値は、塩基性補助剤(佐剤)で実質的に変らず、pH1.3未満を維持していたことは、明確に言及されるべきである。
【0069】
約10〜20分後から始まる曲線の下降は、インビトロ条件下でのナプロキセンの漸進的結晶化の結果であり、それにより、過飽和が徐々に弱まっていく。過飽和現象がインビボ吸収に重要な役割を果たすこと、並びに胃液と腸液の複雑な組成によって、過飽和がインビトロ条件下より、明らかに、より良好に安定化されることは、確実である。
【0070】
加えて、インビボ条件下、胃の過飽和現象は、いずれかといえば、酸性緩衝塩基性補助剤と、その外にポリビニルピロリドンのような、可能な結晶化遅延佐剤と共に、ナトリウムナプロキセンを本発明に従って使用することにより強められることが考慮されなければならない。加えて、吸収は、CO2形成塩基性補助剤と界面活性剤との組み合わせにより、更に促進され得、それにより微細発泡体が発生し、それが、沈殿する可能性がある無定形のナプロキセンを、その大きい表面によって、微粉化し、十二指腸における、より高いpH値で、速やかに、再び、溶液に入り、それにより、直ちに吸収可能となる。
【0071】
実施例30
ナトリウムナプロキセン116.504kg、クロスカルメロースナトリウム8.473kg、タルク2.118kg、炭酸水素ナトリウム39.717kg及び微晶質セルロース37.811kgを計量し、メッシュ寸法1.5mmの振動篩を通して、1200Lのタンクにこの順番で充填する。成分を6rpmの速度で、20分間ブレンドする。
【0072】
ステアリン酸マグネシウム2.915kgを計量し、1mmの篩により篩う。これを上記の予備ブレンドに加える。ステアリン酸マグネシウムの添加後、予備ブレンドを同じブレンド速度で更に5分間ブレンドする。
【0073】
ブレンドした後、予備ブレンドを固定間隔の工業規模のローラー密集機で密集化する(is compacted)。密集力は、適切な顆粒構造を得るために、35〜40kNに調節する。造粒機のスクリーンサイズは1.0mmの篩である。100μmよりも細かい粒子を振動篩により分離し、密集機の投入ホッパーへの真空移動により直接再循環させ、再び密集化する。
【0074】
密集化工程の後、顆粒を5分間ブレンドして、均一にする。この後、残りのタルク(4.1kg)及びステアリン酸マグネシウム(1.538kg)を顆粒に加え、更に5分間ブレンドする。
【0075】
最終ブレンドを回転錠剤化機による錠剤化に使用する。最終重量400mg及び硬度80〜12Nの錠剤を得る。
【0076】
錠剤化の後、Opadry Blue HP 6.144kgを精製水24.576kgに分散して、被覆溶液を製造する。この溶液を、使用前に、2時間撹拌する。コーティングパンの中で、錠剤質量が410mgになるまで、この溶液をコアに噴霧する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、錠剤化プロセスで使用される圧縮力に関する、本発明の錠剤の硬度及び崩壊時間を示す。
【図2】図2は、50rpmでのパドル法による、0.1M塩酸(pH1.2)中での、本発明の錠剤と比較製剤の溶解プロフィールを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤コア及び、所望であれば、錠剤コア上の糖衣又はフィルムコートを含む、ナトリウムナプロキセンの経口投与用の非発泡錠であって、ここで、錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、30〜99重量%のナトリウムナプロキセン及び70〜1重量%の補助剤成分からなり、少なくとも1つの塩基性補助剤を含む、非発泡錠。
【請求項2】
錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、30〜95重量%のナトリウムナプロキセン及び70〜5重量%の補助剤成分からなる、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、60〜95重量%のナトリウムナプロキセン及び40〜5重量%の補助剤成分からなる、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、70〜93重量%のナトリウムナプロキセン及び30〜7重量%の補助剤成分からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項5】
ナトリウムナプロキセンが、0.05〜14重量%の含水量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項6】
ナトリウムナプロキセンが、6〜12.5重量%の含水量を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項7】
補助剤成分が、1つ以上の塩基性補助剤を、錠剤コアの重量に基づき、総量で少なくとも5重量%含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項8】
補助剤成分が、1つ以上の塩基性補助剤を、錠剤コアの重量に基づき、総量で10〜30重量%含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項9】
補助剤成分が、1つ以上の塩基性補助剤を、錠剤コアの重量に基づき、総量で15〜25重量%含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項10】
塩基性補助剤が水溶性である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項11】
塩基性補助剤が、塩基性アルカリ金属塩、塩基性アルカリ土類金属塩、塩基性アンモニウム塩及び塩基性アミノ酸から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項12】
塩基性補助剤が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸三ナトリウム及びリン酸三ナトリウムから選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項13】
塩基性補助剤が、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項14】
補助剤成分が、圧縮性を改善する、1つ以上の中性から弱酸性の賦形剤を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項15】
補助剤成分が、圧縮性を改善する、1つ以上の水溶性で、中性から弱酸性の賦形剤を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項16】
補助剤成分が、糖、ヘキソース、加水分解又は酵素的に分裂するデンプン、シクロデキストリン、非架橋ポリビニルピロリドン、中性から弱酸性のアルカリ金属塩、中性から弱酸性のアルカリ土類金属塩及び中性から弱酸性のアンモニウム塩から選択される、1つ以上の賦形剤を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項17】
補助剤成分が、ヘキソース、非架橋ポリビニルピロリドン、マルトデキストリン及び塩化ナトリウムから選択される、1つ以上の賦形剤を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項18】
補助剤成分が、賦形剤として、非架橋ポリビニルピロリドンを含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項19】
補助剤成分が、圧縮性及び錠剤崩壊を改善する、1つ以上の非水溶性の賦形剤を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項20】
補助剤成分が、天然及び微晶質セルロース、デンプン、加工デンプン、リン酸カルシウム、及び酸化ケイ素から選択される、1つ以上の賦形剤を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項21】
賦形剤の割合が、錠剤コアの重量に基づき、1〜50重量%である、請求項14〜20のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項22】
賦形剤の割合が、錠剤コアの重量に基づき、3〜30重量%である、請求項14〜21のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項23】
賦形剤の割合が、錠剤コアの重量に基づき、10〜25重量%である、請求項14〜22のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項24】
補助剤成分が、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選択される、少なくとも1つの塩基性補助剤及び賦形剤として、非架橋ポリビニルピロリドンを含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項25】
補助剤成分が、錠剤コアの重量に基づき、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選択される、塩基性補助剤5〜20重量%、及び賦形剤として、非架橋ポリビニルピロリドン5〜20重量%を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項26】
補助剤成分が、崩壊剤を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項27】
補助剤成分が、クロスカルメロース、クロスポビドン及び架橋ナトリウムカルボキシメチルデンプンから選択される崩壊剤を含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項28】
補助剤成分が、1つ以上の、滑択剤及び/又は滑剤を含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項29】
錠剤コアが、あらゆる滑択剤を含有せず、そしてあらゆる滑剤を含有しない、請求項1〜25のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項30】
補助剤成分が、1つ以上の、イオン性又は非イオン性界面活性剤(tenside)を含有する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項31】
補助剤成分が、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリソルベート及びサッカロースモノパルミテートから選択される、1つ以上の界面活性剤を含有する、請求項1〜30のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項32】
界面活性剤の割合が、錠剤コアの重量に基づき、0.1〜5重量%である、請求項30又は31に記載の錠剤。
【請求項33】
錠剤コアが、0.25〜1.25mmの粒径分布の粒状体(granulate)からなる、請求項1〜32のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項34】
錠剤コアの硬度が、少なくとも30Nである、請求項1〜33のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項35】
水分のないナトリウムナプロキセンに基づいて、110〜660mgのナトリウムナプロキセンの含有量である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項36】
錠剤コアが、ナトリウムナプロキセン及び塩基性補助剤からなる、請求項1〜13及び33〜35のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項37】
ナトリウムナプロキセン、炭酸水素ナトリウム、微晶質セルロース、クロスカルメロース、タルク及びステアリン酸マグネシウムを含む、請求項1に記載の錠剤。
【請求項38】
50〜60重量%のナトリウムナプロキセン、15〜25重量%の炭酸水素ナトリウム、15〜25重量%の微晶質セルロース、2〜6重量%のクロスカルメロース、1〜5重量%のタルク及び0.5〜2.2重量%のステアリン酸マグネシウムを含む、請求項37に記載の錠剤。
【請求項39】
55〜65重量%のナトリウムナプロキセン、10〜25重量%の炭酸水素ナトリウム、2〜15重量%の微晶質セルロース、2〜6重量%のクロスカルメロース、1〜5重量%のタルク及び0.5〜2.2重量%のステアリン酸マグネシウムを含む、請求項37に記載の錠剤。
【請求項40】
55〜65重量%のナトリウムナプロキセン、10〜25重量%の炭酸水素ナトリウム、5〜10重量%のヒドロキシルプロピルセルロース、2〜15重量%の微晶質セルロース、2〜6重量%のクロスカルメロース、1〜5重量%のタルク及び0.5〜2.2重量%のステアリン酸マグネシウムを含む、請求項39に記載の錠剤。
【請求項41】
錠剤コア及び、所望であれば、錠剤コア上の糖衣又はフィルムコートを含む、ナトリウムナプロキセンの経口投与用の非発泡錠の製造方法であって、ここで、錠剤コアが、錠剤コアの重量に基づき、30〜99重量%のナトリウムナプロキセン及び70〜1重量%の補助剤成分からなり、少なくとも1つの塩基性補助剤を含み、ナトリウムナプロキセン及び補助剤成分の混合物を錠剤コアに圧縮し、所望であれば、錠剤コアを糖衣又はフィルムコートで被覆することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−509862(P2007−509862A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537031(P2006−537031)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000655
【国際公開番号】WO2005/041938
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】