説明

はんだ付け治具

【課題】回路基板にリード部品を短時間で容易に、かつ、高い信頼性ではんだ付けができるはんだ付け治具を提供する。
【解決手段】はんだ付け治具本体3に、はんだ付け治具本体3を加熱するためのヒータ9を設けると共に、はんだ付け治具本体3の温度を検出するための温度センサ10を設け、温度センサ10とヒータ9に、温度センサ10で検出される温度が所定温度となるようにヒータ9を制御する温度コントローラ11を接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の回路基板にリード部品をはんだ付けするとき回路基板を保持するはんだ付け治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3及び図4に示すように、はんだ付け治具20は、回路基板2にリード部品(図示せず)をはんだ付けするとき回路基板2を保持するものであり、金属または樹脂等にてブロック状に形成されたはんだ付け治具本体21を有する。はんだ付け治具本体21の上面には、回路基板2を挿入して収容するための凹部7が形成されており、凹部7内に回路基板2を収容し、回路基板2の縁部をワーク押え板4で押さえたのち、手はんだ付けやロボット等のはんだコテ(図示せず)を用いてリード部品のリードをはんだ付けするようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−87905号公報
【特許文献2】特開2005−72441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、はんだ付け治具本体21に保持された回路基板2にリード部品をはんだ付けするとき、回路基板2ははんだ付け治具20に熱を奪われてはんだ付け部の熱が上がり難く、はんだ付けが難しくなり、かつ、はんだ付け性も悪く、信頼性の低いはんだ付けになり易いという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、回路基板にリード部品を短時間で容易に、かつ、高い信頼性ではんだ付けができるはんだ付け治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、回路基板を収容するはんだ付け治具本体を有し回路基板にリード部品をはんだ付けするとき回路基板を保持するはんだ付け治具において、上記はんだ付け治具本体に、はんだ付け治具本体を加熱するためのヒータを設けると共に、はんだ付け治具本体の温度を検出するための温度センサを設け、上記温度センサとヒータに、温度センサで検出される温度が所定温度となるようにヒータを制御する温度コントローラを接続したものである。
【0007】
上記所定温度は、上記回路基板のはんだ付け部がはんだ付けを行う作業室の室温以上、かつ、回路基板に用いられたはんだの融点未満となるように設定されるとよい。
【0008】
上記はんだ付け治具本体には、回路基板を挿入するための凹部が形成され、上記ヒータは上記凹部の両側のはんだ付け治具本体内に内蔵され、上記温度センサは上記凹部と上記ヒータの間のはんだ付け治具本体内に内蔵されるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路基板にリード部品を短時間で容易に、かつ、高い信頼性ではんだ付けができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、はんだ付け治具1は、プリント基板等の回路基板2を収容するはんだ付け治具本体3と、はんだ付け治具本体3上に載置され回路基板2を押さえるためのワーク押え板4と、はんだ付け治具本体3にシャフト5を介して回動自在に設けられワーク押え板4を着脱可能にロックするためのフック6とを備えて構成される。
【0012】
はんだ付け治具本体3は、金属または樹脂等にてブロック状に形成されており、上面に回路基板2を挿入するための凹部7を有する。凹部7は、回路基板2に対応した形状に形成されており、回路基板2の水平方向の移動を規制するようになっている。凹部7の下方のはんだ付け治具本体3には、回路基板2に実装されたリード部品等の部品(図示せず)を逃がすための実装部品逃げ用掘り込み8a、8bが形成されており、実装部品逃げ用掘り込み8a、8b内に実装部品を収容するようになっている。
【0013】
また、はんだ付け治具本体3には、はんだ付け治具本体3を加熱するためのヒータ9が設けられると共に、はんだ付け治具本体3の温度を検出するための温度センサ10が設けられている。具体的には、ヒータ9は、電熱線からなり、凹部7の両側に沿って延びるようにはんだ付け治具本体3内に内蔵されている。温度センサ10は、熱電対からなり、凹部7とヒータ9との間のはんだ付け治具本体3内にそれぞれ内蔵されている。
【0014】
また、温度センサ10とヒータ9には、温度センサ10で検出される温度が所定温度となるようにヒータ9を制御する温度コントローラ11が接続されている。温度コントローラ11は、温度センサ10たる熱電対からの信号(電流)をもとにヒータ温度をコントロールするようになっている。所定温度は、信頼性や安全性の面から、作業周囲温度(はんだ付けを行う作業室の室温)以上、かつ、回路基板2に用いられたはんだの融点未満で作業性の良い温度に設定されている。
【0015】
ワーク押え板4は、回路基板2のはんだ付け部を露出させるための窓孔12を有する。窓孔12は、回路基板2より若干小さく形成されており、窓孔12外周のワーク押え板4で回路基板2の外縁部を押さえるようになっている。また、ワーク押え板4の隅部には、はんだ付け治具本体3に上方に突出して形成された大小のピン13、14に嵌合されるピン孔15、16が形成されており、これらピン13、14とピン孔15、16とが嵌合することでワーク押え板4が位置合わせされるようになっている。
【0016】
フック6は、はんだ付け治具本体3の両側にシャフト5を介して水平軸回り回動自在に設けられ上方に延びるアーム部17と、アーム部17の上端に水平方向に延びて設けられワーク押え板4を押さえて固定するための爪部18とを有する。また、アーム部17とはんだ付け治具本体3との間には、爪部18をワーク押え板4に向けて弾発付勢するためのスプリング19が設けられている。
【0017】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0018】
図1及び図2に示すように、はんだ付け治具1を用いて回路基板2に光電変換部品等のリード部品をはんだ付けする場合、はんだ付け治具本体3の凹部7内に、予めリード部品を配置した回路基板2を挿入・配置し、回路基板2上にワーク押え板4を載置する。このとき、フック6の爪部18ははんだ付け治具本体3の上面に臨む位置にあるため、フック6の爪部18を外側に移動させるようにフック6を回動させながらワーク押え板4を載置する。フック6はスプリング19で弾発付勢されているため、フック6から手を放すことでワーク押え板4を上方から押さえて固定する。
【0019】
この後、手はんだ付けやロボット等のはんだコテ(図示せず)を用いて回路基板2にリード部品のリードをはんだ付けする。このとき、はんだ付け治具本体3は、ヒータ9によって少なくとも室温より高い所定温度に加熱されているため、回路基板2のはんだ付け部を迅速にはんだの融点まで加熱することができ、信頼性の高いはんだ付けを容易に行うことができる。また特に、ヒータ9と温度センサ10が凹部7の両側のはんだ付け治具本体3にそれぞれ内蔵され、はんだ付け治具本体3内の温度が均一に保温されていることから、回路基板2の熱が部分的に低くなるようなこともなく、安定してはんだ付けを行うことができる。
【0020】
また、はんだ付け治具1は、主に、鉛入りはんだ付けと、鉛フリーはんだ付けに用いる。鉛入りはんだは、共晶はんだ(Sn61.9%、Pb38.1%近辺のもの)が多く使用され、鉛フリーはんだは、Sn96.5%、Ag3.0%、Cu0.5%が多く使用される。上記鉛入り共晶はんだの融点は、約183℃であり、上記鉛フリーはんだの融点は、約216℃である。また、はんだ付け治具1の設定温度は、信頼性の面から治具に固定された回路基板2に用いられたはんだが融けない程度の温度にする必要がある。はんだ付け治具1の下限温度は、はんだ付け作業性が良い温度となる。これらから、上記鉛入り共晶はんだではんだ付けを行う場合の設定温度は、作業周囲温度から鉛入り共晶はんだの融点の183℃未満が好ましい。また、上記鉛フリーはんだではんだ付けを行う場合の設定温度は、作業周囲温度から、鉛フリーはんだの融点の216℃未満が好ましい。
【0021】
ただし、回路基板2に実装された部品やはんだ付け部は、はんだ付け治具本体3やワーク押え板4に触れないようになっていると共に、これらと接触する回路基板2の外縁部から離れており、はんだ付け治具本体3やワーク押え板4ほど高温になることはない。このため、はんだ付け治具1の設定温度の上限は、必ずしもはんだの融点に限られず、はんだ付け治具1に固定した回路基板2のはんだ付け部がはんだの融点に達しない範囲ではんだの融点を超えてもよい。回路基板2の材質や構造、回路基板2の外縁部とはんだ付け部との距離にもよるが、回路基板2の外縁部とはんだ付け部との間には5℃程度から数十℃(たとえば、30℃)の温度差が生じるものと考えられる。この場合、はんだ付け治具1の設定温度の上限は、はんだの融点を5℃から数十℃超えてもよい。
【0022】
このように、はんだ付け治具本体3に、はんだ付け治具本体3を加熱するためのヒータ9を設けると共に、はんだ付け治具本体3の温度を検出するための温度センサ10を設け、温度センサ10とヒータ9に、温度センサ10で検出される温度が所定温度となるようにヒータ9を制御する温度コントローラ11を接続したため、回路基板2やリード部品で、熱衝撃に弱い部分のはんだ付けが容易になり、理想に近いはんだ付けが可能となり、高信頼性が得られる。また、はんだ付け時、はんだ付け部の温度上昇時間を短縮させることができ、作業時間を短縮できる。そして、はんだ付けの難度が下がるため、熟練者以外の者でも高信頼性のはんだ付けができる。
【0023】
上記所定温度を、上記回路基板のはんだ付け部がはんだ付けを行う作業室の室温以上、かつ、回路基板に用いられたはんだの融点未満となるように設定したため、回路基板2の熱がはんだ付け治具本体3に奪われるのを防ぐことができると共に、リード部品のリードに付けたはんだを固化させることができ、効率よくはんだ付けできる。
【0024】
また、はんだ付け治具本体3には、回路基板2を挿入するための凹部7が形成され、ヒータ9は凹部7の両側のはんだ付け治具本体3内に内蔵され、温度センサ10は凹部7とヒータ9の間のはんだ付け治具本体3内に内蔵されるものとしたため、はんだ付け治具本体3を均一に所定温度にできる。
【0025】
なお、はんだ付け治具本体3内の温度をできるだけ均一にするため、はんだ付け治具本体3にヒータ9と温度センサ10たる熱電対をそれぞれ二個ずつ内蔵するものとしたが、これに限るものではない。ヒータ9と熱電対はそれぞれ単数又は三個以上の複数であってもよい。また、ヒータ9の個数と熱電対の個数の組み合わせは、はんだ付け治具本体3の形状や材質等に応じて自由に決定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好適実施の形態を示すはんだ付け治具の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】従来のはんだ付け治具の平面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 はんだ付け治具
2 回路基板
3 はんだ付け治具本体
7 凹部
9 ヒータ
10 温度センサ
11 温度コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を収容するはんだ付け治具本体を有し回路基板にリード部品をはんだ付けするとき回路基板を保持するはんだ付け治具において、上記はんだ付け治具本体に、はんだ付け治具本体を加熱するためのヒータを設けると共に、はんだ付け治具本体の温度を検出するための温度センサを設け、上記温度センサとヒータに、温度センサで検出される温度が所定温度となるようにヒータを制御する温度コントローラを接続したことを特徴とするはんだ付け治具。
【請求項2】
上記所定温度は、上記回路基板のはんだ付け部がはんだ付けを行う作業室の室温以上、かつ、回路基板に用いられたはんだの融点未満となるように設定された請求項1記載のはんだ付け治具。
【請求項3】
上記はんだ付け治具本体には、回路基板を挿入するための凹部が形成され、上記ヒータは上記凹部の両側のはんだ付け治具本体内に内蔵され、上記温度センサは上記凹部と上記ヒータの間のはんだ付け治具本体内に内蔵された請求項1又は2記載のはんだ付け治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−302292(P2009−302292A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155190(P2008−155190)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】