はんだ材料及びその製造方法
【課題】250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】真空容器1内にるつぼ2、3、4が配置され、それぞれのるつぼ内にSn5、Ag6、Al7が設けられている。真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に達した後、各るつぼを所定の温度まで加熱すると、Sn、Ag、Alが固体から液体へと変化し、やがて蒸発しはじめる。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながら蒸着を行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。次に基板15を真空容器1から取り出し、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末状のはんだ材料として得ることができた。
【解決手段】真空容器1内にるつぼ2、3、4が配置され、それぞれのるつぼ内にSn5、Ag6、Al7が設けられている。真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に達した後、各るつぼを所定の温度まで加熱すると、Sn、Ag、Alが固体から液体へと変化し、やがて蒸発しはじめる。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながら蒸着を行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。次に基板15を真空容器1から取り出し、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末状のはんだ材料として得ることができた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装等で用いられる従来のはんだは、Sn(錫)とPb(鉛)とによる共晶はんだで、その共晶点が183℃であり、多くの熱硬化性樹脂がガス化を始める温度よりも低い。このため、錫−鉛共晶はんだは、基板等の接合に用いられた時にプリント基板等を熱によって損傷しなくてもすむという特徴を有している。したがって、錫―鉛共晶はんだは、電子機器の製造における部品の接合、組立てにおいて重要な材料である。
【0003】
一方でPAモジュール等の高周波を扱う実装部品では、図12に示すようにモジュール部品の内部において、モジュール基板41と電子部品42の接合にはんだ材料43が用いられている。このようにして生産されたモジュール部品はマザー基板に実装して使用されるが、その際にモジュール部品内部のはんだ材料43が溶融して形状が変化すると高周波特性が変化するため、マザー基板への実装時に溶融しないように溶融温度250〜300℃の高温はんだ材料(例えばPb−40%Sn等)が使用されている。
【0004】
また、パワートランジスタ等の高電圧、高電流が負荷され大きな発熱を伴う半導体実装部品では、図13に示すような部品の内部において、フラットリード44と金属箔45の接合に高温はんだ46が用いられ、これらの内部接合において接合の耐熱性を確保するため、溶融温度300〜350℃の高温はんだ材料(例えばPb−5%Sn等)が使用されている。
【0005】
しかしながら近年、地球環境保護の関心が高まる中、廃棄物によって環境問題が生じることが危ぶまれており、はんだ材料においても、廃棄された電子機器等から鉛(Pb)が土壌に溶出することが懸念されている。これを解決するために鉛を含まないはんだ材料が必要とされており、溶融温度200〜250℃のSn−Pbはんだ材料については、Sn−Ag系、Sn−Cu系のはんだを使用して、鉛を含まないはんだ材料の実用化が進んでいる。
【0006】
一方で、高耐熱が求められる高温はんだ材料については、代替材料が見当たらず、実用化には、程遠いのが現状である。溶融温度250〜300℃を実現する高温はんだ材料としては、ビスマスを90重量%以上含有するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−353590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の高温はんだ材料は、ガラスのような脆い基板上に形成された導体にはんだ付けするためのものであり、凝固時の応力緩和を目的として、多量のBiを含有している。その組成比率はBiからなる90重量%以上の第1金属元素と、90重量部以上の第1金属元素と9.9重量部以下で2元共晶し得る第2金属元素と、さらに合計0.1〜3.0重量%の第3金属元素である。このように耐衝撃性に劣るBiを90重量%以上含有していたため信頼性が十分ではない。すなわち、このようなはんだ材料は、接合強度が弱く、また、接合強度の経時的な劣化も大きい。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料とその製造方法、無鉛で高耐熱の電子部品、無鉛で高耐熱の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1発明のはんだ材料は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されていることを特徴とする。このような構成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0010】
本願の第2発明のはんだ材料は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されていることを特徴とする。このような構成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0011】
本願の第3発明のはんだ材料は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれていることを特徴とする。このような構成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0012】
本願の第4発明のはんだ材料の製造方法は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金を各々るつぼ内で加熱して蒸発させ、各るつぼに対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とする。このような組成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0013】
本願の第5発明のはんだ材料の製造方法は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングまたは蒸気化し、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とする。このような組成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0014】
本願の第4または第5発明のはんだ材料の製造方法において、好適には、堆積物と回収材とを分離して堆積物をはんだ材料として得るに際して、回収材に振動を与えることが望ましい。このような構成により、はんだ材料としての堆積物と回収材とを低コストで簡単に分離することができる。あるいは、好適には、堆積物と回収材とを分離して堆積物をはんだ材料として得るに際して、回収材を堆積物に対して選択的に溶解させることが望ましい。このような構成により、はんだ材料としての堆積物と回収材とを低コストで簡単に分離することができる。
【0015】
あるいは、好適には、堆積物と回収材とを分離して得た堆積物からなる粉体を、樹脂ペーストに混合することが望ましい。このような構成により、低コストで簡単に高温はんだペーストを製造することができる。
【0016】
あるいは、好適には、回収材がテープ状であり、テープ状回収材から堆積物を分離してはんだリボンを得ることが望ましい。このような構成により、低コストで簡単に高温はんだリボンを製造することができる。
【0017】
あるいは、好適には、回収材が高融点材料からなるワイヤーであることが望ましい。このような構成により、低コストで簡単に糸はんだ状の高温はんだを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本願発明のはんだ材料によれば、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を提供することが可能となる。また、本願発明のはんだ材料の製造方法によれば、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1〜図5を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図である。図1において、真空容器1内に第1るつぼ2、第2るつぼ3、第3るつぼ4が配置され、それぞれのるつぼ内にSnからなる第1材料5、Agからなる第2材料6、Alからなる第3材料7が設けられている。それぞれのるつぼは、第1ヒーター8、第2ヒーター9、第3ヒーター10により加熱できるよう構成されており、各ヒーターは、第1温調器11、第2温調器12、第3温調器13により温度調節される。各るつぼに対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に達した後、各るつぼを所定の温度まで加熱すると、Sn、Ag、Alが固体から液体へと変化し、やがて蒸発しはじめる。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながら蒸着を行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、図示しないるつぼシャッター(各るつぼに設けられている)の開口を調整することにより、蒸発量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のるつぼのみを加熱したときの蒸着速度をるつぼ温度の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各るつぼの温度に差をもたせるようにした。なお、各るつぼの加熱開始から蒸発が始まるまでの間は、るつぼシャッターは全閉状態とした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0022】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15に水中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0023】
こうして得られた粉末においては、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていることが判明した。すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されていることがわかった(図2の各円は1個1個の原子を指す)。以下、このことについて詳しく説明する。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態1において得られた堆積物について、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法を用いて示差走査熱量分析曲線を取得したものである。図3より、約330℃を中心とした比較的ブロードな吸熱特性が得られ、この堆積物が融点250℃〜350℃の高温はんだとして利用可能であることがわかった。一方、Sn、Ag、Alを、含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるように液相で混合させた場合、すなわち、Sn、Ag、Alを粉末などを原料として準備し上記の重量比で一つのるつぼ内に入れ、これを加熱して液化させて混合させた場合、冷却後に得られた合金は、図4のように、Sn96.5%重量比−Ag3.5%重量比からなるSn−3.5Ag合金と、Sn98%重量比−Al2%重量比からなるSn−2Al合金と、Ag37%重量比−Al63%重量比からなるAg−63Al合金とが混在する様相を呈する。これは、このような状態が化学的に安定であるためである。このことは、図5に示す、液相で混合させることによって得た合金の示差走査熱量分析曲線において、約225℃と約556℃に急峻な吸収が見られることから推察できる。すなわち、Sn96.5%重量比−Ag3.5%重量比からなるSn−3.5Ag合金の融点221℃と、Sn98%重量比−Al2%重量比からなるSn−2Al合金の融点228℃が近いため、これらは分離されずに225℃付近のピークとなって現れ、Ag37%重量比−Al63%重量比からなるAg−63Al合金の融点566℃にピークが現れている。このように、液相で混合させた場合には平衡状態で混合され、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルでは混合されないため、このようなはんだ材料は220℃程度で一部が溶解しはじめることになり、高温はんだとしては使えない。なお、図4の各楕円は、数十〜数万程度の原子群からなるものと考えている。
【0025】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.4倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0026】
なお、蒸着を行う際にるつぼシャッターを操作して、Sn薄膜、Ag薄膜、Al薄膜を積層させた場合においても、図3のようなDSC特性が得られることが確認できた。この場合、各薄膜の厚さは、最大で100nm以下となるようにすることが好ましいこともわかった。これは、あまりに各膜の厚さが厚いと、はんだとして用いる際の加熱時に十分な溶融が行えなかったためである。同様に、Sn−Ag薄膜、Sn−Al薄膜、Ag−Al薄膜を積層させてもよいことがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料を得るに際して、全ての主成分を含まない複数種類の薄膜が積層されていてもよいことがわかった。
【0027】
同様に、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれている薄膜も、融点250℃〜350℃の高温はんだとして利用可能であることがわかった。この場合も、各薄膜の厚さは、最大で100nm以下となるようにすることが好ましかった。
【0028】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態2において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図である。図6において、真空容器1内に第1るつぼ2、第2るつぼ3が配置され、それぞれのるつぼ内にSn−Ag合金からなる第1材料5、Ag−Al合金からなる第2材料6が設けられている。それぞれのるつぼは、第1ヒーター8、第2ヒーター9により加熱できるよう構成されており、各ヒーターは、第1温調器11、第2温調器12により温度調節される。各るつぼに対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に達した後、各るつぼを所定の温度まで加熱すると、第1材料及び第2材料が固体から液体へと変化し、やがて蒸発しはじめる。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながら蒸着を行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、図示しないるつぼシャッター(各るつぼに設けられている)の開口を調整することにより、蒸発量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のるつぼのみを加熱したときの蒸着速度をるつぼ温度の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各るつぼの温度に差をもたせるようにした。なお、各るつぼの加熱開始から蒸発が始まるまでの間は、るつぼシャッターは全閉状態とした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0029】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15に水中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0030】
こうして得られた粉末においても、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されており、図3のようなブロードな吸熱特性が得られることがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法において、少なくとも2種類の単一金属または合金を各々るつぼ内で加熱して蒸発させ、各るつぼに対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることによっても、良好な特性を示す高温はんだが得られることが判明した。これは、第1及び第2材料が合金であっても、蒸発した際に気相中で原子レベルにまでバラバラになるためであると考えられる。
【0031】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.3倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0032】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態3において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図である。図7において、真空容器1内にSn製第1ターゲット材19、Ag製第2ターゲット材20、Al製第3ターゲット材21が配置されている。それぞれのターゲットには、第1バッキングプレート22、第2バッキングプレート23、第3バッキングプレート24が設けられ、各々第1DC電源25、第2DC電源26、第3DC電源27が接続されている。各ターゲット材に対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内にガス供給装置28からアルゴンガスを供給しつつ、真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に制御しながら、各DC電源を操作して第1、第2、第3ターゲットに直流の高電圧を印加すると、真空容器1内にプラズマが発生し、高エネルギー粒子としてのアルゴンイオンが各ターゲット材に衝突し、第1ターゲット材19、第2ターゲット材20、第3ターゲット材21からそれぞれSn、Ag、Al原子がスパッタリングされて飛び出す。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながらスパッタリングを行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、DC電源から供給されるDC電流を調整することにより、スパッタリング量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のターゲットのみをスパッタリングしたときの堆積速度をDC電流の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各ターゲットに供給するDC電流に差をもたせるようにした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0033】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15に水中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0034】
こうして得られた粉末においても、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されており、図3のようなブロードな吸熱特性が得られることがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法において、各元素からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングし、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることによっても、良好な特性を示す高温はんだが得られることが判明した。これは、スパッタリングにおいても、蒸着の場合と同様、ターゲット材から飛び出した原料粒子は気相中で原子レベルにまでバラバラになっているためであると考えられる。
【0035】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.5倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0036】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態4において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図である。図8において、真空容器1内にSn−Ag製第1ターゲット材19、Ag−Al製第2ターゲット材20が配置されている。それぞれのターゲットには、第1バッキングプレート22、第2バッキングプレート23が設けられ、各々第1DC電源25、第2DC電源26が接続されている。各ターゲット材に対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内にガス供給装置28からアルゴンガスを供給しつつ、真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に制御しながら、各DC電源を操作して第1、第2、第3ターゲットに直流の高電圧を印加すると、真空容器1内にプラズマが発生し、高エネルギー粒子としてのアルゴンイオンが各ターゲット材に衝突し、第1ターゲット材19、第2ターゲット材20からそれぞれSnおよびAg原子、Ag及びAl原子がスパッタリングされて飛び出す。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながらスパッタリングを行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、DC電源から供給されるDC電流を調整することにより、スパッタリング量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のターゲットのみをスパッタリングしたときの堆積速度をDC電流の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各ターゲットに供給するDC電流に差をもたせるようにした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0037】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15にエタノール中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0038】
こうして得られた粉末においても、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されており、図3のようなブロードな吸熱特性が得られることがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、少なくとも2種類の単一金属または合金からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングし、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることによっても、良好な特性を示す高温はんだが得られることが判明した。これは、スパッタリングにおいても、蒸着の場合と同様、ターゲット材から飛び出した原料粒子は気相中で原子レベルにまでバラバラになっているためであると考えられる。
【0039】
以上本願発明の実施の形態1、2、3及び4においては、回収材に振動を与えることにより、回収材に堆積させた堆積物を粉末として得る場合を例示したが、回収材を堆積物に対して選択的に溶解させることによって、回収材に堆積させた堆積物を粉末またはシートとして得ることもできる。この場合、有機溶剤に容易に溶ける樹脂を回収材としての基板に用いることができる。
【0040】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.3倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0041】
また、少なくとも3種類の金属元素を主成分とする合金をるつぼ内で加熱するか、または、少なくとも3種類の金属元素を主成分とする合金製のターゲットに高エネルギー粒子を衝突させることにより、回収材の表面にはんだ材料を堆積させてもよい。この場合においても、蒸着源(るつぼ)またはターゲット材から飛び出した原料粒子は、気相中で原子レベルにまでバラバラになるため、回収材の表面において、非平衡状態で混合、原子レベルで混合される。
【0042】
また、堆積物と回収材とを分離して得た堆積物からなる粉体を、樹脂ペーストに混合して、鉛フリー(無鉛)高温はんだペーストとしても利用可能である。すなわち、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されている粉末がペースト化されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されている粉末がペースト化されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする全ての金属元素は含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には全ての元素が主成分として含まれている薄膜からなる粉末がペースト化されているものを、鉛フリー(無鉛)高温はんだペーストとして利用することができる。ここで、「薄膜からなる粉末」とは、粉末の集合全体としては粉末様でありながら、個々の粉体の構造が薄膜状であるものを指す。また、「粉末がペースト化されている」とは、粉末が有機系の溶媒に混合され、塗布しやすく液状になっているものを指す。ペースト化されているものは、印刷、ディスペンス、塗布及びリフローを組み合わせて、広く実装分野に応用可能である。すなわち、これをペーストはんだとして用いて2つの端子間を接合することにより、無鉛で高耐熱の接合方法を実現することができる。
【0043】
また、回収材が基板である場合を例示したが、回収材がテープ状であり、テープ状回収材から堆積物を分離してはんだリボンを得ることも可能である。すなわち、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合され、リボン状に成形されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合され、リボン状に成形されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には全ての元素が主成分として含まれている薄膜が、リボン状に成形されているものを、無鉛の高温はんだリボンとして利用することができる。ここで、「リボン状に成形されている」とは、厚さが概ね0.01mm以上0.5mm以下、幅が概ね0.1mm以上10mm以下の薄板状に成形されたもので、粘着テープのようにボビンに巻かれた状態で保管できるような帯状のものを指す。また、「薄膜が積層され、リボン状に成形されている」とは、全体としてはリボン状でありながら、リボン(薄板)の断面構造を詳細に観察すると、異種の薄膜が積層されているようなものを指す。このようなリボン状のはんだ材料をパンチして第1の端子に転写し、はんだ材料が転写された第1の端子と第2の端子を接触させた状態で加熱することによりはんだ材料を溶融させた後冷却し、第1の端子と第2の端子を接合することが可能である。
【0044】
また、回収材が高融点材料からなるワイヤーであってもよく、この場合、糸はんだ様の無鉛高温はんだを実現することができる。すなわち、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合され、高融点材料からなるワイヤーの表面に形成されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合され、高融点材料からなるワイヤーの表面に形成されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には全ての元素が主成分として含まれている薄膜が、高融点材料からなるワイヤーの表面に形成されているものを、糸はんだのように使用することが可能である。つまり、第1の端子と第2の端子を接触させた状態で加熱し、第1の端子と第2の端子が接触した部分の近傍に、糸はんだ様のはんだ材料を接触させ、はんだ材料を溶融させた後冷却し、第1の端子と第2の端子を接合することができる。ワイヤーの材質としては、W(タングステン)、Ta(タンタル)などの高融点材料はもちろん、合金はんだの主成分金属のいずれよりも融点が高ければ、これを用いることができる。
【0045】
また、本願発明により得られた無鉛の高温はんだ材料により接合された接合構造体からなる電子部品は、無鉛で高耐熱という優れた特徴を備える。
【0046】
また、図9に示すように、3種類の金属元素を主成分とする合金製のターゲットに高エネルギー粒子を衝突させるに際して、各々のターゲットの間についたて29を設けることにより、単一組成に近い薄膜を積層することも可能である。なお、ついたて29を設けたことのほかは、図9の構成は図7の構成と同じであるので、詳細は省略する。
【0047】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について、図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態5における、基板と電子部品とを接合する方法を示す断面図である。図10(a)において、基板30上に配線やランドなどの導体パターン31が形成されている。次に、図10(b)のように、基板に感光性材料32を形成し、露光、現像を経て図10(c)のようにパターニングする。ここで、露出した導体部分は電子部品を実装するためのランド33である。次に、基板を図1に示した蒸着装置に設置し、図10(d)のように、基板表面にはんだ材料34を形成する。次いで、図10(e)のように、感光性材料からなるパターンをエッチングしてはんだ材料をリフトオフすることにより基板上にはんだ材料からなるパターンを形成する。そして、図10(f)のように、基板に電子部品35をマウントする。次に、基板をリフローしてはんだ材料を溶融させて基板と電子部品を接合する。このような接合方法により、無鉛で耐熱性に優れた接合方法が実現できた。
【0048】
感光性材料を用いなくても、次のような方法によっても、基板に電子部品を接合することができる。すなわち、基板に、所定のパターニングが施されたマスクを近接または接触させた状態で、本願発明の実施の形態1、2、3または4で述べたはんだ材料の製造方法を用いて基板表面の所定の位置にはんだ材料を形成することにより、所望の位置(ランド)にはんだ材料を堆積させることができる。次いで、基板に電子部品をマウントし、基板をリフローしてはんだ材料を溶融させて基板と電子部品を接合する。
【0049】
また、2つの電子部品を接合する際にも、本願発明は適用可能である。つまり、第1の電子部品に、所定のパターニングが施されたマスクを近接または接触させた状態で、本願発明の実施の形態1、2、3または4で述べたはんだ材料の製造方法を用いて第1の電子部品の表面の所定の位置にはんだ材料を形成するステップと、第1の電子部品に第2の電子部品を接触させるステップと、これをリフローしてはんだ材料を溶融させて第1の電子部品と第2の電子部品を接合するステップを順次行うことにより、2つの電子部品を接合することができる。
【0050】
以上述べた本願発明の実施の形態においては、はんだ材料中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)である場合を例示したが、主成分たる少なくとも3種類の金属元素として、Sn、Ag及びAlを用いる場合、Snが最も多く、Agの含有率が1重量%以上21重量%以下、Alの含有率が4重量%以上24重量%以下であることが好ましい。この組成範囲において、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0051】
また、主成分たる少なくとも3種類の金属元素として、Bi、Ag及びCuを用いることも可能であり、この場合、Biが最も多く、Agの含有率が1重量%以上15重量%以下、Cuの含有率が30重量%以上40重量%以下であることが好ましい。この組成範囲において、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0052】
また、主成分たる少なくとも3種類の金属元素として、Sn、Cu及びAlを用いることも可能であり、この場合、Snが最も多く、Cuの含有率が1重量%以上14重量%以下、Alの含有率が9重量%以上29重量%以下であることが好ましい。この組成範囲において、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0053】
また、3種類以上の金属元素を用いることも可能である。例えば、Niを添加することにより、融点を高めることが可能である。あるいは、Auを添加することにより、展性を高めることが可能である。また、Agの含有率を減らし、その分をZnで置き換えることにより、はんだ材料のコストダウンを図ることが可能である。
【0054】
また、回収材上に薄膜状のはんだ材料を堆積させ、回収材と堆積物を分離して用いる場合には、できるだけ多くの堆積物を1枚の回収材上に堆積させる方がコスト面で有利である。一方、堆積後の分離を考えると、テフロン(登録商標)など剥離性に優れた材料を用いることが望ましい。しかし、このことは、堆積中の膜剥がれの危険性が増すことを意味する。
【0055】
蒸着法では、回収材が上方、蒸着源(るつぼ)が下方となる。万一、回収材から堆積物が剥がれ落ちた場合には、原子レベルで混合された合金膜がその原料に混入することになるため、好ましくない。よって、堆積膜の膜厚は、膜剥がれが確実に防止できるように定められるべきであり、Snが最も多い組成の場合には最大で1mm、Biが最も多い場合には最大で100μmに抑えるべきである。
【0056】
スパッタリング法では、回収材とターゲット材の配置には自由度が高く、どちらが上方・下方であってもよく、ともに側方であってもよい。回収材が上方である場合を除き、膜剥がれが生じてもターゲット材への不純物混入によるダメージは小さいため、蒸着法よりも大きい膜厚まで堆積を続けることも可能であるが、やはり膜剥がれは好ましいことではなく、Snが最も多い組成の場合には最大で1mm、Biが最も多い場合には最大で100μmに抑えるべきである。
【0057】
また、回収材にはんだ材料を堆積させている間は、回収材の温度を低温に保つことが好ましい。とくに、200℃以下に保つことが好ましく、120℃以下に保つことが、さらに好ましい。これは、回収材の温度が高すぎると、堆積膜中で各原子がマイグレーションを起こし、平衡状態に近い構成のものとなりやすいためである。120℃以下であれば、回収材として用いる樹脂の変形も最小限に抑えられる。
【0058】
また、蒸着法においてはるつぼシャッターを、スパッタリング法においてはDC電源をそれぞれ操作することにより、単一組成の薄膜を順繰りに積層させることも可能である。
【0059】
また、回収材と堆積物とを分離する際に超音波洗浄器を用いる場合を例示したが、超音波洗浄器中に水または有機溶剤を用いることができる。あるいは、空気中で振動を与えることによっても、分離が促進される。あるいは、振動を与えずにナイフ様のものではぎ取ることも可能である。
【0060】
また、高エネルギー粒子をターゲット材に衝突させる方法として、スパッタリング法を例示したが、電子ビーム蒸着法、レーザー蒸着法などを用いることも可能である。
【0061】
また、基板を回転させながら回収材上に薄膜を堆積させる場合を例示したが、基板の回転速度は、堆積物中で各原子が十分に混ざり合うように設定すべきである。そのためには、概ね5rpm〜1000rpm程度の速度であることが好ましい。回転速度が遅すぎると、原子レベルでの混合状態が完全には実現できない。回転速度が速すぎると、堆積中の膜剥がれが生じる場合がある。
【0062】
また、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されていること、あるいは、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されていること、を確認するには、DSC法を用いて示差走査熱量分析曲線を取得して判断するのが簡便である。我々の研究により得られた判断方法を以下で説明する。図11は、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法において、各元素からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングし、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物の示差走査熱量分析曲線である。Aはこの堆積物において、各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、原子レベルで混合されていることを示すピークである。このピークは、少なくとも3種類の金属元素を液相で混合させた場合、すなわち、主成分である金属の粉末などを原料として準備し、所定の重量比で一つのるつぼ内に入れ、これを加熱して液化させて混合させた場合、冷却後に得られた合金の示差走査熱量分析曲線には見られないピークである。B及びCは、少なくとも3種類の金属元素を液相で混合させた場合、すなわち、主成分である金属の粉末などを原料として準備し、所定の重量比で一つのるつぼ内に入れ、これを加熱して液化させて混合させた場合、冷却後に得られた合金の示差走査熱量分析曲線に見られるピークと同じ温度に見られるピークである。ここで、A、B、Cの絶対値は、それぞれ18mW、2mW、3mWであった。我々の研究によれば、Aと、A以外のピークの中で最大のピーク(図11の例ではC)との比(A/C)が1.0より大きい場合に高温はんだとしての特性が向上し、接合強度が高く、接合強度の経時的な劣化が小さいということを見いだした。また、2より大きいと接合強度の従来比が1.1倍以上となり、顕著な特性向上が見られた。図11の例においては、ピークの比A/Cが6であり、接合強度は従来比で1.4倍であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明のはんだ材料及びその製造方法によれば、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料とその製造方法を提供することが可能となる。そして、これを電気、電子機器に適用すると、従来のマザー基板上のみならず、モジュール部品さらには電子部品の内部まで無鉛化することになり、電気、電子機器の完全な無鉛化を実現することができる。そのため、世界的な広がりを見せている鉛を対象とした法規制の制約を受けることなく、地球環境に対する負荷の小さい電気、電子機器を生産することが可能となる利点を有し、人体に対して有害である鉛を含まない高温はんだ材料、その接合構造体からなる製品等の生産の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図
【図2】各元素が原子レベルで混合されている様子を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における示差走査熱量分析曲線を示す図
【図4】3種類の合金が混在する様子を示す模式図
【図5】3種類の合金が混在する場合の示差走査熱量分析曲線を示す図
【図6】本発明の実施の形態2において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態3において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図
【図8】本発明の実施の形態4において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図
【図9】本発明の他の実施の形態において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図
【図10】本発明の実施の形態5における、基板と電子部品とを接合する方法を示す断面図
【図11】示差走査熱量分析曲線の例を示す図
【図12】従来のモジュール部品の概略構成図
【図13】従来のパワートランジスタの概略構成図
【符号の説明】
【0065】
1 真空容器
2 第1るつぼ
3 第2るつぼ
4 第3るつぼ
5 第1材料
6 第2材料
7 第3材料
8 第1ヒーター
9 第2ヒーター
10 第3ヒーター
11 第1温調器
12 第2温調器
13 第3温調器
14 基板ホルダー
15 基板
16 ポンプ
17 支柱
18 モーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装等で用いられる従来のはんだは、Sn(錫)とPb(鉛)とによる共晶はんだで、その共晶点が183℃であり、多くの熱硬化性樹脂がガス化を始める温度よりも低い。このため、錫−鉛共晶はんだは、基板等の接合に用いられた時にプリント基板等を熱によって損傷しなくてもすむという特徴を有している。したがって、錫―鉛共晶はんだは、電子機器の製造における部品の接合、組立てにおいて重要な材料である。
【0003】
一方でPAモジュール等の高周波を扱う実装部品では、図12に示すようにモジュール部品の内部において、モジュール基板41と電子部品42の接合にはんだ材料43が用いられている。このようにして生産されたモジュール部品はマザー基板に実装して使用されるが、その際にモジュール部品内部のはんだ材料43が溶融して形状が変化すると高周波特性が変化するため、マザー基板への実装時に溶融しないように溶融温度250〜300℃の高温はんだ材料(例えばPb−40%Sn等)が使用されている。
【0004】
また、パワートランジスタ等の高電圧、高電流が負荷され大きな発熱を伴う半導体実装部品では、図13に示すような部品の内部において、フラットリード44と金属箔45の接合に高温はんだ46が用いられ、これらの内部接合において接合の耐熱性を確保するため、溶融温度300〜350℃の高温はんだ材料(例えばPb−5%Sn等)が使用されている。
【0005】
しかしながら近年、地球環境保護の関心が高まる中、廃棄物によって環境問題が生じることが危ぶまれており、はんだ材料においても、廃棄された電子機器等から鉛(Pb)が土壌に溶出することが懸念されている。これを解決するために鉛を含まないはんだ材料が必要とされており、溶融温度200〜250℃のSn−Pbはんだ材料については、Sn−Ag系、Sn−Cu系のはんだを使用して、鉛を含まないはんだ材料の実用化が進んでいる。
【0006】
一方で、高耐熱が求められる高温はんだ材料については、代替材料が見当たらず、実用化には、程遠いのが現状である。溶融温度250〜300℃を実現する高温はんだ材料としては、ビスマスを90重量%以上含有するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−353590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の高温はんだ材料は、ガラスのような脆い基板上に形成された導体にはんだ付けするためのものであり、凝固時の応力緩和を目的として、多量のBiを含有している。その組成比率はBiからなる90重量%以上の第1金属元素と、90重量部以上の第1金属元素と9.9重量部以下で2元共晶し得る第2金属元素と、さらに合計0.1〜3.0重量%の第3金属元素である。このように耐衝撃性に劣るBiを90重量%以上含有していたため信頼性が十分ではない。すなわち、このようなはんだ材料は、接合強度が弱く、また、接合強度の経時的な劣化も大きい。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料とその製造方法、無鉛で高耐熱の電子部品、無鉛で高耐熱の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1発明のはんだ材料は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されていることを特徴とする。このような構成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0010】
本願の第2発明のはんだ材料は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されていることを特徴とする。このような構成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0011】
本願の第3発明のはんだ材料は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれていることを特徴とする。このような構成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0012】
本願の第4発明のはんだ材料の製造方法は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金を各々るつぼ内で加熱して蒸発させ、各るつぼに対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とする。このような組成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0013】
本願の第5発明のはんだ材料の製造方法は、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングまたは蒸気化し、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とする。このような組成により、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0014】
本願の第4または第5発明のはんだ材料の製造方法において、好適には、堆積物と回収材とを分離して堆積物をはんだ材料として得るに際して、回収材に振動を与えることが望ましい。このような構成により、はんだ材料としての堆積物と回収材とを低コストで簡単に分離することができる。あるいは、好適には、堆積物と回収材とを分離して堆積物をはんだ材料として得るに際して、回収材を堆積物に対して選択的に溶解させることが望ましい。このような構成により、はんだ材料としての堆積物と回収材とを低コストで簡単に分離することができる。
【0015】
あるいは、好適には、堆積物と回収材とを分離して得た堆積物からなる粉体を、樹脂ペーストに混合することが望ましい。このような構成により、低コストで簡単に高温はんだペーストを製造することができる。
【0016】
あるいは、好適には、回収材がテープ状であり、テープ状回収材から堆積物を分離してはんだリボンを得ることが望ましい。このような構成により、低コストで簡単に高温はんだリボンを製造することができる。
【0017】
あるいは、好適には、回収材が高融点材料からなるワイヤーであることが望ましい。このような構成により、低コストで簡単に糸はんだ状の高温はんだを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本願発明のはんだ材料によれば、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を提供することが可能となる。また、本願発明のはんだ材料の製造方法によれば、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1〜図5を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図である。図1において、真空容器1内に第1るつぼ2、第2るつぼ3、第3るつぼ4が配置され、それぞれのるつぼ内にSnからなる第1材料5、Agからなる第2材料6、Alからなる第3材料7が設けられている。それぞれのるつぼは、第1ヒーター8、第2ヒーター9、第3ヒーター10により加熱できるよう構成されており、各ヒーターは、第1温調器11、第2温調器12、第3温調器13により温度調節される。各るつぼに対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に達した後、各るつぼを所定の温度まで加熱すると、Sn、Ag、Alが固体から液体へと変化し、やがて蒸発しはじめる。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながら蒸着を行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、図示しないるつぼシャッター(各るつぼに設けられている)の開口を調整することにより、蒸発量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のるつぼのみを加熱したときの蒸着速度をるつぼ温度の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各るつぼの温度に差をもたせるようにした。なお、各るつぼの加熱開始から蒸発が始まるまでの間は、るつぼシャッターは全閉状態とした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0022】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15に水中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0023】
こうして得られた粉末においては、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていることが判明した。すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されていることがわかった(図2の各円は1個1個の原子を指す)。以下、このことについて詳しく説明する。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態1において得られた堆積物について、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法を用いて示差走査熱量分析曲線を取得したものである。図3より、約330℃を中心とした比較的ブロードな吸熱特性が得られ、この堆積物が融点250℃〜350℃の高温はんだとして利用可能であることがわかった。一方、Sn、Ag、Alを、含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるように液相で混合させた場合、すなわち、Sn、Ag、Alを粉末などを原料として準備し上記の重量比で一つのるつぼ内に入れ、これを加熱して液化させて混合させた場合、冷却後に得られた合金は、図4のように、Sn96.5%重量比−Ag3.5%重量比からなるSn−3.5Ag合金と、Sn98%重量比−Al2%重量比からなるSn−2Al合金と、Ag37%重量比−Al63%重量比からなるAg−63Al合金とが混在する様相を呈する。これは、このような状態が化学的に安定であるためである。このことは、図5に示す、液相で混合させることによって得た合金の示差走査熱量分析曲線において、約225℃と約556℃に急峻な吸収が見られることから推察できる。すなわち、Sn96.5%重量比−Ag3.5%重量比からなるSn−3.5Ag合金の融点221℃と、Sn98%重量比−Al2%重量比からなるSn−2Al合金の融点228℃が近いため、これらは分離されずに225℃付近のピークとなって現れ、Ag37%重量比−Al63%重量比からなるAg−63Al合金の融点566℃にピークが現れている。このように、液相で混合させた場合には平衡状態で混合され、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルでは混合されないため、このようなはんだ材料は220℃程度で一部が溶解しはじめることになり、高温はんだとしては使えない。なお、図4の各楕円は、数十〜数万程度の原子群からなるものと考えている。
【0025】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.4倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0026】
なお、蒸着を行う際にるつぼシャッターを操作して、Sn薄膜、Ag薄膜、Al薄膜を積層させた場合においても、図3のようなDSC特性が得られることが確認できた。この場合、各薄膜の厚さは、最大で100nm以下となるようにすることが好ましいこともわかった。これは、あまりに各膜の厚さが厚いと、はんだとして用いる際の加熱時に十分な溶融が行えなかったためである。同様に、Sn−Ag薄膜、Sn−Al薄膜、Ag−Al薄膜を積層させてもよいことがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料を得るに際して、全ての主成分を含まない複数種類の薄膜が積層されていてもよいことがわかった。
【0027】
同様に、Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれている薄膜も、融点250℃〜350℃の高温はんだとして利用可能であることがわかった。この場合も、各薄膜の厚さは、最大で100nm以下となるようにすることが好ましかった。
【0028】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態2において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図である。図6において、真空容器1内に第1るつぼ2、第2るつぼ3が配置され、それぞれのるつぼ内にSn−Ag合金からなる第1材料5、Ag−Al合金からなる第2材料6が設けられている。それぞれのるつぼは、第1ヒーター8、第2ヒーター9により加熱できるよう構成されており、各ヒーターは、第1温調器11、第2温調器12により温度調節される。各るつぼに対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に達した後、各るつぼを所定の温度まで加熱すると、第1材料及び第2材料が固体から液体へと変化し、やがて蒸発しはじめる。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながら蒸着を行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、図示しないるつぼシャッター(各るつぼに設けられている)の開口を調整することにより、蒸発量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のるつぼのみを加熱したときの蒸着速度をるつぼ温度の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各るつぼの温度に差をもたせるようにした。なお、各るつぼの加熱開始から蒸発が始まるまでの間は、るつぼシャッターは全閉状態とした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0029】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15に水中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0030】
こうして得られた粉末においても、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されており、図3のようなブロードな吸熱特性が得られることがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法において、少なくとも2種類の単一金属または合金を各々るつぼ内で加熱して蒸発させ、各るつぼに対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることによっても、良好な特性を示す高温はんだが得られることが判明した。これは、第1及び第2材料が合金であっても、蒸発した際に気相中で原子レベルにまでバラバラになるためであると考えられる。
【0031】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.3倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0032】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態3において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図である。図7において、真空容器1内にSn製第1ターゲット材19、Ag製第2ターゲット材20、Al製第3ターゲット材21が配置されている。それぞれのターゲットには、第1バッキングプレート22、第2バッキングプレート23、第3バッキングプレート24が設けられ、各々第1DC電源25、第2DC電源26、第3DC電源27が接続されている。各ターゲット材に対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内にガス供給装置28からアルゴンガスを供給しつつ、真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に制御しながら、各DC電源を操作して第1、第2、第3ターゲットに直流の高電圧を印加すると、真空容器1内にプラズマが発生し、高エネルギー粒子としてのアルゴンイオンが各ターゲット材に衝突し、第1ターゲット材19、第2ターゲット材20、第3ターゲット材21からそれぞれSn、Ag、Al原子がスパッタリングされて飛び出す。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながらスパッタリングを行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、DC電源から供給されるDC電流を調整することにより、スパッタリング量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のターゲットのみをスパッタリングしたときの堆積速度をDC電流の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各ターゲットに供給するDC電流に差をもたせるようにした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0033】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15に水中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0034】
こうして得られた粉末においても、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されており、図3のようなブロードな吸熱特性が得られることがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法において、各元素からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングし、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることによっても、良好な特性を示す高温はんだが得られることが判明した。これは、スパッタリングにおいても、蒸着の場合と同様、ターゲット材から飛び出した原料粒子は気相中で原子レベルにまでバラバラになっているためであると考えられる。
【0035】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.5倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0036】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態4において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図である。図8において、真空容器1内にSn−Ag製第1ターゲット材19、Ag−Al製第2ターゲット材20が配置されている。それぞれのターゲットには、第1バッキングプレート22、第2バッキングプレート23が設けられ、各々第1DC電源25、第2DC電源26が接続されている。各ターゲット材に対向して設けられた基板ホルダー14に回収材としての基板15が載置されている。真空容器1内にガス供給装置28からアルゴンガスを供給しつつ、真空容器1内をポンプ16により排気し、所定の圧力に制御しながら、各DC電源を操作して第1、第2、第3ターゲットに直流の高電圧を印加すると、真空容器1内にプラズマが発生し、高エネルギー粒子としてのアルゴンイオンが各ターゲット材に衝突し、第1ターゲット材19、第2ターゲット材20からそれぞれSnおよびAg原子、Ag及びAl原子がスパッタリングされて飛び出す。基板ホルダー14と支柱17を介して接続されたモーター18を動作させることにより基板15を回転させながらスパッタリングを行い、基板15の表面に薄膜状の堆積物を形成した。このとき、DC電源から供給されるDC電流を調整することにより、スパッタリング量の比、及び、堆積物中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)となるようにした。含有量の比を所望の値にするため、事前に個々のターゲットのみをスパッタリングしたときの堆積速度をDC電流の関数として求めておき、実際にはんだ材料を得る際に所望の比になるように各ターゲットに供給するDC電流に差をもたせるようにした。また、基板15の材質はテフロン(登録商標)とした。
【0037】
次に基板15を真空容器1から取り出し、基板15を超音波洗浄器にかけ、基板15にエタノール中で超音波振動を与えることにより、堆積物と回収材としての基板15とを分離し、堆積物を粉末として得ることができた。
【0038】
こうして得られた粉末においても、Sn、Ag、Alの各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、図2のように、Sn、Ag、Alの各元素が原子レベルで混合されており、図3のようなブロードな吸熱特性が得られることがわかった。つまり、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、少なくとも2種類の単一金属または合金からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングし、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることによっても、良好な特性を示す高温はんだが得られることが判明した。これは、スパッタリングにおいても、蒸着の場合と同様、ターゲット材から飛び出した原料粒子は気相中で原子レベルにまでバラバラになっているためであると考えられる。
【0039】
以上本願発明の実施の形態1、2、3及び4においては、回収材に振動を与えることにより、回収材に堆積させた堆積物を粉末として得る場合を例示したが、回収材を堆積物に対して選択的に溶解させることによって、回収材に堆積させた堆積物を粉末またはシートとして得ることもできる。この場合、有機溶剤に容易に溶ける樹脂を回収材としての基板に用いることができる。
【0040】
こうして得られたはんだ材料について、接合強度を測定したところ、従来例と比較して1.3倍接合強度が強かった。また、接合強度の経時的な劣化も小さいことが確かめられた。
【0041】
また、少なくとも3種類の金属元素を主成分とする合金をるつぼ内で加熱するか、または、少なくとも3種類の金属元素を主成分とする合金製のターゲットに高エネルギー粒子を衝突させることにより、回収材の表面にはんだ材料を堆積させてもよい。この場合においても、蒸着源(るつぼ)またはターゲット材から飛び出した原料粒子は、気相中で原子レベルにまでバラバラになるため、回収材の表面において、非平衡状態で混合、原子レベルで混合される。
【0042】
また、堆積物と回収材とを分離して得た堆積物からなる粉体を、樹脂ペーストに混合して、鉛フリー(無鉛)高温はんだペーストとしても利用可能である。すなわち、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されている粉末がペースト化されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されている粉末がペースト化されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする全ての金属元素は含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には全ての元素が主成分として含まれている薄膜からなる粉末がペースト化されているものを、鉛フリー(無鉛)高温はんだペーストとして利用することができる。ここで、「薄膜からなる粉末」とは、粉末の集合全体としては粉末様でありながら、個々の粉体の構造が薄膜状であるものを指す。また、「粉末がペースト化されている」とは、粉末が有機系の溶媒に混合され、塗布しやすく液状になっているものを指す。ペースト化されているものは、印刷、ディスペンス、塗布及びリフローを組み合わせて、広く実装分野に応用可能である。すなわち、これをペーストはんだとして用いて2つの端子間を接合することにより、無鉛で高耐熱の接合方法を実現することができる。
【0043】
また、回収材が基板である場合を例示したが、回収材がテープ状であり、テープ状回収材から堆積物を分離してはんだリボンを得ることも可能である。すなわち、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合され、リボン状に成形されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合され、リボン状に成形されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には全ての元素が主成分として含まれている薄膜が、リボン状に成形されているものを、無鉛の高温はんだリボンとして利用することができる。ここで、「リボン状に成形されている」とは、厚さが概ね0.01mm以上0.5mm以下、幅が概ね0.1mm以上10mm以下の薄板状に成形されたもので、粘着テープのようにボビンに巻かれた状態で保管できるような帯状のものを指す。また、「薄膜が積層され、リボン状に成形されている」とは、全体としてはリボン状でありながら、リボン(薄板)の断面構造を詳細に観察すると、異種の薄膜が積層されているようなものを指す。このようなリボン状のはんだ材料をパンチして第1の端子に転写し、はんだ材料が転写された第1の端子と第2の端子を接触させた状態で加熱することによりはんだ材料を溶融させた後冷却し、第1の端子と第2の端子を接合することが可能である。
【0044】
また、回収材が高融点材料からなるワイヤーであってもよく、この場合、糸はんだ様の無鉛高温はんだを実現することができる。すなわち、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合され、高融点材料からなるワイヤーの表面に形成されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合され、高融点材料からなるワイヤーの表面に形成されているもの、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には全ての元素が主成分として含まれている薄膜が、高融点材料からなるワイヤーの表面に形成されているものを、糸はんだのように使用することが可能である。つまり、第1の端子と第2の端子を接触させた状態で加熱し、第1の端子と第2の端子が接触した部分の近傍に、糸はんだ様のはんだ材料を接触させ、はんだ材料を溶融させた後冷却し、第1の端子と第2の端子を接合することができる。ワイヤーの材質としては、W(タングステン)、Ta(タンタル)などの高融点材料はもちろん、合金はんだの主成分金属のいずれよりも融点が高ければ、これを用いることができる。
【0045】
また、本願発明により得られた無鉛の高温はんだ材料により接合された接合構造体からなる電子部品は、無鉛で高耐熱という優れた特徴を備える。
【0046】
また、図9に示すように、3種類の金属元素を主成分とする合金製のターゲットに高エネルギー粒子を衝突させるに際して、各々のターゲットの間についたて29を設けることにより、単一組成に近い薄膜を積層することも可能である。なお、ついたて29を設けたことのほかは、図9の構成は図7の構成と同じであるので、詳細は省略する。
【0047】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について、図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態5における、基板と電子部品とを接合する方法を示す断面図である。図10(a)において、基板30上に配線やランドなどの導体パターン31が形成されている。次に、図10(b)のように、基板に感光性材料32を形成し、露光、現像を経て図10(c)のようにパターニングする。ここで、露出した導体部分は電子部品を実装するためのランド33である。次に、基板を図1に示した蒸着装置に設置し、図10(d)のように、基板表面にはんだ材料34を形成する。次いで、図10(e)のように、感光性材料からなるパターンをエッチングしてはんだ材料をリフトオフすることにより基板上にはんだ材料からなるパターンを形成する。そして、図10(f)のように、基板に電子部品35をマウントする。次に、基板をリフローしてはんだ材料を溶融させて基板と電子部品を接合する。このような接合方法により、無鉛で耐熱性に優れた接合方法が実現できた。
【0048】
感光性材料を用いなくても、次のような方法によっても、基板に電子部品を接合することができる。すなわち、基板に、所定のパターニングが施されたマスクを近接または接触させた状態で、本願発明の実施の形態1、2、3または4で述べたはんだ材料の製造方法を用いて基板表面の所定の位置にはんだ材料を形成することにより、所望の位置(ランド)にはんだ材料を堆積させることができる。次いで、基板に電子部品をマウントし、基板をリフローしてはんだ材料を溶融させて基板と電子部品を接合する。
【0049】
また、2つの電子部品を接合する際にも、本願発明は適用可能である。つまり、第1の電子部品に、所定のパターニングが施されたマスクを近接または接触させた状態で、本願発明の実施の形態1、2、3または4で述べたはんだ材料の製造方法を用いて第1の電子部品の表面の所定の位置にはんだ材料を形成するステップと、第1の電子部品に第2の電子部品を接触させるステップと、これをリフローしてはんだ材料を溶融させて第1の電子部品と第2の電子部品を接合するステップを順次行うことにより、2つの電子部品を接合することができる。
【0050】
以上述べた本願発明の実施の形態においては、はんだ材料中の含有量の比がSn:Ag:Al=75:11:14(重量比)である場合を例示したが、主成分たる少なくとも3種類の金属元素として、Sn、Ag及びAlを用いる場合、Snが最も多く、Agの含有率が1重量%以上21重量%以下、Alの含有率が4重量%以上24重量%以下であることが好ましい。この組成範囲において、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0051】
また、主成分たる少なくとも3種類の金属元素として、Bi、Ag及びCuを用いることも可能であり、この場合、Biが最も多く、Agの含有率が1重量%以上15重量%以下、Cuの含有率が30重量%以上40重量%以下であることが好ましい。この組成範囲において、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0052】
また、主成分たる少なくとも3種類の金属元素として、Sn、Cu及びAlを用いることも可能であり、この場合、Snが最も多く、Cuの含有率が1重量%以上14重量%以下、Alの含有率が9重量%以上29重量%以下であることが好ましい。この組成範囲において、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料を実現することができる。
【0053】
また、3種類以上の金属元素を用いることも可能である。例えば、Niを添加することにより、融点を高めることが可能である。あるいは、Auを添加することにより、展性を高めることが可能である。また、Agの含有率を減らし、その分をZnで置き換えることにより、はんだ材料のコストダウンを図ることが可能である。
【0054】
また、回収材上に薄膜状のはんだ材料を堆積させ、回収材と堆積物を分離して用いる場合には、できるだけ多くの堆積物を1枚の回収材上に堆積させる方がコスト面で有利である。一方、堆積後の分離を考えると、テフロン(登録商標)など剥離性に優れた材料を用いることが望ましい。しかし、このことは、堆積中の膜剥がれの危険性が増すことを意味する。
【0055】
蒸着法では、回収材が上方、蒸着源(るつぼ)が下方となる。万一、回収材から堆積物が剥がれ落ちた場合には、原子レベルで混合された合金膜がその原料に混入することになるため、好ましくない。よって、堆積膜の膜厚は、膜剥がれが確実に防止できるように定められるべきであり、Snが最も多い組成の場合には最大で1mm、Biが最も多い場合には最大で100μmに抑えるべきである。
【0056】
スパッタリング法では、回収材とターゲット材の配置には自由度が高く、どちらが上方・下方であってもよく、ともに側方であってもよい。回収材が上方である場合を除き、膜剥がれが生じてもターゲット材への不純物混入によるダメージは小さいため、蒸着法よりも大きい膜厚まで堆積を続けることも可能であるが、やはり膜剥がれは好ましいことではなく、Snが最も多い組成の場合には最大で1mm、Biが最も多い場合には最大で100μmに抑えるべきである。
【0057】
また、回収材にはんだ材料を堆積させている間は、回収材の温度を低温に保つことが好ましい。とくに、200℃以下に保つことが好ましく、120℃以下に保つことが、さらに好ましい。これは、回収材の温度が高すぎると、堆積膜中で各原子がマイグレーションを起こし、平衡状態に近い構成のものとなりやすいためである。120℃以下であれば、回収材として用いる樹脂の変形も最小限に抑えられる。
【0058】
また、蒸着法においてはるつぼシャッターを、スパッタリング法においてはDC電源をそれぞれ操作することにより、単一組成の薄膜を順繰りに積層させることも可能である。
【0059】
また、回収材と堆積物とを分離する際に超音波洗浄器を用いる場合を例示したが、超音波洗浄器中に水または有機溶剤を用いることができる。あるいは、空気中で振動を与えることによっても、分離が促進される。あるいは、振動を与えずにナイフ様のものではぎ取ることも可能である。
【0060】
また、高エネルギー粒子をターゲット材に衝突させる方法として、スパッタリング法を例示したが、電子ビーム蒸着法、レーザー蒸着法などを用いることも可能である。
【0061】
また、基板を回転させながら回収材上に薄膜を堆積させる場合を例示したが、基板の回転速度は、堆積物中で各原子が十分に混ざり合うように設定すべきである。そのためには、概ね5rpm〜1000rpm程度の速度であることが好ましい。回転速度が遅すぎると、原子レベルでの混合状態が完全には実現できない。回転速度が速すぎると、堆積中の膜剥がれが生じる場合がある。
【0062】
また、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されていること、あるいは、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されていること、を確認するには、DSC法を用いて示差走査熱量分析曲線を取得して判断するのが簡便である。我々の研究により得られた判断方法を以下で説明する。図11は、少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法において、各元素からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングし、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物の示差走査熱量分析曲線である。Aはこの堆積物において、各元素が非平衡状態で混合されていること、すなわち、原子レベルで混合されていることを示すピークである。このピークは、少なくとも3種類の金属元素を液相で混合させた場合、すなわち、主成分である金属の粉末などを原料として準備し、所定の重量比で一つのるつぼ内に入れ、これを加熱して液化させて混合させた場合、冷却後に得られた合金の示差走査熱量分析曲線には見られないピークである。B及びCは、少なくとも3種類の金属元素を液相で混合させた場合、すなわち、主成分である金属の粉末などを原料として準備し、所定の重量比で一つのるつぼ内に入れ、これを加熱して液化させて混合させた場合、冷却後に得られた合金の示差走査熱量分析曲線に見られるピークと同じ温度に見られるピークである。ここで、A、B、Cの絶対値は、それぞれ18mW、2mW、3mWであった。我々の研究によれば、Aと、A以外のピークの中で最大のピーク(図11の例ではC)との比(A/C)が1.0より大きい場合に高温はんだとしての特性が向上し、接合強度が高く、接合強度の経時的な劣化が小さいということを見いだした。また、2より大きいと接合強度の従来比が1.1倍以上となり、顕著な特性向上が見られた。図11の例においては、ピークの比A/Cが6であり、接合強度は従来比で1.4倍であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明のはんだ材料及びその製造方法によれば、250〜350℃の高温域でのはんだ付けに使用可能な、無鉛の高温はんだ材料とその製造方法を提供することが可能となる。そして、これを電気、電子機器に適用すると、従来のマザー基板上のみならず、モジュール部品さらには電子部品の内部まで無鉛化することになり、電気、電子機器の完全な無鉛化を実現することができる。そのため、世界的な広がりを見せている鉛を対象とした法規制の制約を受けることなく、地球環境に対する負荷の小さい電気、電子機器を生産することが可能となる利点を有し、人体に対して有害である鉛を含まない高温はんだ材料、その接合構造体からなる製品等の生産の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図
【図2】各元素が原子レベルで混合されている様子を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における示差走査熱量分析曲線を示す図
【図4】3種類の合金が混在する様子を示す模式図
【図5】3種類の合金が混在する場合の示差走査熱量分析曲線を示す図
【図6】本発明の実施の形態2において用いた蒸着装置の概略構成を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態3において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図
【図8】本発明の実施の形態4において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図
【図9】本発明の他の実施の形態において用いたスパッタリング装置の概略構成を示す断面図
【図10】本発明の実施の形態5における、基板と電子部品とを接合する方法を示す断面図
【図11】示差走査熱量分析曲線の例を示す図
【図12】従来のモジュール部品の概略構成図
【図13】従来のパワートランジスタの概略構成図
【符号の説明】
【0065】
1 真空容器
2 第1るつぼ
3 第2るつぼ
4 第3るつぼ
5 第1材料
6 第2材料
7 第3材料
8 第1ヒーター
9 第2ヒーター
10 第3ヒーター
11 第1温調器
12 第2温調器
13 第3温調器
14 基板ホルダー
15 基板
16 ポンプ
17 支柱
18 モーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されていることを特徴とするはんだ材料。
【請求項2】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されていることを特徴とするはんだ材料。
【請求項3】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれていることを特徴とするはんだ材料。
【請求項4】
各金属元素が非平衡状態で混合されているはんだ材料は、粉末がペースト化されている、あるいはリボン状に成形されている、あるいは高融点材料からなるワイヤー表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のはんだ材料。
【請求項5】
各金属元素が原子レベルで混合されているはんだ材料は、粉末がペースト化されている、あるいはリボン状に成形されている、あるいは高融点材料からなるワイヤー表面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のはんだ材料。
【請求項6】
主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれているはんだ材料は、粉末がペースト化されている、あるいはリボン状に成形されている、あるいは高融点材料からなるワイヤー表面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のはんだ材料。
【請求項7】
金属元素が、Sn、Ag、Alであり、Snが最も多く、Agの含有率が1重量%以上21重量%以下、Alの含有率が4重量%以上24重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のはんだ材料。
【請求項8】
金属元素が、Bi、Ag、Cuであり、Biが最も多く、Agの含有率が1重量%以上15重量%以下、Cuの含有率が30重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のはんだ材料。
【請求項9】
金属元素が、Sn、Cu、Alであり、Snが最も多く、Cuの含有率が1重量%以上14重量%以下、Alの含有率が9重量%以上29重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のはんだ材料。
【請求項10】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金を各々るつぼ内で加熱して蒸発させ、各るつぼに対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とするはんだ材料の製造方法。
【請求項11】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングまたは蒸気化し、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とするはんだ材料の製造方法。
【請求項12】
堆積物と回収材とを分離して堆積物をはんだ材料として得るに際して、回収材に振動を与える、あるいは回収材を堆積物に対して選択的に溶解させることを特徴とする、請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【請求項13】
堆積物と回収材とを分離して得た堆積物からなる粉体を、樹脂ペーストに混合することを特徴とする請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【請求項14】
回収材がテープ状であり、テープ状回収材から堆積物を分離してはんだリボンを得ることを特徴とする請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【請求項15】
回収材が高融点材料からなるワイヤーであることを特徴とする請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【請求項1】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が非平衡状態で混合されていることを特徴とするはんだ材料。
【請求項2】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、各元素が原子レベルで混合されていることを特徴とするはんだ材料。
【請求項3】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料であって、主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれていることを特徴とするはんだ材料。
【請求項4】
各金属元素が非平衡状態で混合されているはんだ材料は、粉末がペースト化されている、あるいはリボン状に成形されている、あるいは高融点材料からなるワイヤー表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のはんだ材料。
【請求項5】
各金属元素が原子レベルで混合されているはんだ材料は、粉末がペースト化されている、あるいはリボン状に成形されている、あるいは高融点材料からなるワイヤー表面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のはんだ材料。
【請求項6】
主成分とする金属元素の全ては含まず、かつ、いずれか1つまたは複数の金属元素を主成分とする複数種類の薄膜が積層され、かつ、積層された複数種類の薄膜全体には主成分とする金属元素の全てが含まれているはんだ材料は、粉末がペースト化されている、あるいはリボン状に成形されている、あるいは高融点材料からなるワイヤー表面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のはんだ材料。
【請求項7】
金属元素が、Sn、Ag、Alであり、Snが最も多く、Agの含有率が1重量%以上21重量%以下、Alの含有率が4重量%以上24重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のはんだ材料。
【請求項8】
金属元素が、Bi、Ag、Cuであり、Biが最も多く、Agの含有率が1重量%以上15重量%以下、Cuの含有率が30重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のはんだ材料。
【請求項9】
金属元素が、Sn、Cu、Alであり、Snが最も多く、Cuの含有率が1重量%以上14重量%以下、Alの含有率が9重量%以上29重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のはんだ材料。
【請求項10】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金を各々るつぼ内で加熱して蒸発させ、各るつぼに対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とするはんだ材料の製造方法。
【請求項11】
Sn、Ag、Al、Bi、Cuのうち少なくとも3種類の金属元素を主成分とするはんだ材料の製造方法であって、各元素、あるいは少なくとも2種類の単一金属、あるいは合金からなるターゲット材に高エネルギー粒子を衝突させてスパッタリングまたは蒸気化し、各ターゲット材に対向して設けられた回収材上に形成された薄膜状の堆積物をはんだ材料として得ることを特徴とするはんだ材料の製造方法。
【請求項12】
堆積物と回収材とを分離して堆積物をはんだ材料として得るに際して、回収材に振動を与える、あるいは回収材を堆積物に対して選択的に溶解させることを特徴とする、請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【請求項13】
堆積物と回収材とを分離して得た堆積物からなる粉体を、樹脂ペーストに混合することを特徴とする請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【請求項14】
回収材がテープ状であり、テープ状回収材から堆積物を分離してはんだリボンを得ることを特徴とする請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【請求項15】
回収材が高融点材料からなるワイヤーであることを特徴とする請求項10または11記載のはんだ材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−205198(P2006−205198A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19400(P2005−19400)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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