説明

はんだ滓の削減及び熱効率改善の方法とその用具

【課題】半田槽の溶融はんだ噴流部、流下部及び水平面部を空気から遮断することのできるドロス削減方法及びその用具を提供する。さらに同方法及び用具を援用して、溶融半田面からの熱流出の防止方法及びその用具を提供する。
【解決手段】特にドロス発生量の多い噴流部4・噴流後の流下部7、及び半田槽での貯留部1の溶融はんだ表面を、耐はんだ腐食素材による遮蔽部材9,11によって空気中の酸素と遮断することによって、従来方式以上のはんだドロス抑制効果を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子基板はんだ付け用はんだ槽でのはんだ滓発生量抑制および熱効率改善の方法と用具に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板のスルーホールに電子部品の電極リードを挿入してはんだ付けを行なう場合、上向きのノズルから溶融はんだを噴流させ、その上方を通過する基板底部に溶融はんだを接触させて、基板のスルーホールから下向きに突出するリード電極と、そのスルーホール周辺を取り巻くパッドとをはんだ付けする、いわゆる「フローはんだ付け法」が多く用いられる。
【0003】
この溶融はんだの表面は常時空気に触れているため次第に酸化し、酸化皮膜として薄く溶融はんだ表面を覆い、次第に酸化物の団塊や、それが粉砕された粉末となっていく。これらのはんだが酸化物の滓になったものを総称して「はんだドロス」というが、このようなドロスは、はんだを噴流させるためにはんだ槽底部に設置された噴流ファンによって溶融はんだ内に巻き込まれ、はんだに混入した状態で噴流ノズルから噴出することがある。この結果、はんだ付け部分にドロスが付着してはんだ付け不良を発生させたり、噴流ノズルに目詰まりして噴流量や噴流高さが不安定化する原因となる。そのため、作業者による煩雑で頻繁なドロス除去作業が必要となる。
【0004】
このようなドロスに関する問題を解決するため「窒素はんだ槽」または「N2はんだ槽」と呼ばれるはんだ槽が登場した。これは、はんだ槽装置内に不活性な窒素ガス雰囲気を充満させて溶融はんだと酸素の接触を遮断しようとするものであるが、装置の高額化や窒素ガス消費による高コスト化の問題によって、充分に普及するに至っていない。
【0005】
一方、酸素を含んだ大気内でのはんだ付けを前提として、いくつもの溶融はんだの酸化防止法が考案されてきた。実際に使用されたのは、溶融はんだ表面を覆うための酸化防止用油や、特許文献1に示す、はんだ表面に浮かべて使用するセラミックボールなどであるが、酸化防止用油は独特のなじみにくい匂いやメンテナンス時の作業者や装置への汚れ付着があって嫌われ、セラミックボールは、ドロス除去作業時のボールとはんだの分離作業が煩雑で作業性が悪く、しかもドロス抑止効果が小さい、などの点で次第に使われなくなってきている。
【0006】
また、従来のドロス削減法は、もっぱら溶融はんだの水平面表面と空気との接触を遮断することにのみ力点が置かれていたが、詳細な観察の結果、むしろ噴流部分において、より多くのドロスが発生していることが分かってきた。
【0007】
はんだ水平面で発生した酸化皮膜は、発生直後から溶融はんだの上面を覆って空気との遮断効果を持つ。これに対し噴流部分のはんだは、はんだ槽底部からファンでノズル部に押し上げられて噴出してくるため、その表面は常に酸化皮膜の少ない状態で激しくノズルから噴流して空気と触れ合うことになり、最も酸化が進行しやすい部分となる。しかも、はんだ水平面上のよどみ易い空気に比べ、噴流ノズル周辺の空気は常に流動させられ、かつ上昇気流を伴って新鮮な空気との入れ替えが進みやすく、これも噴流部と水平面部分のドロス発生量に大きな差が発生する原因となる。
【0008】
このように、はんだ水平面のはんだ表面を空気と遮断しようとする酸化防止用油やセラミックボールを使った従来のドロス防止方法では、噴流部での酸化の進行を防止することはできず、ドロス発生の抑制効果は限られている。
【0009】
溶融はんだ表面を遮蔽物で空気から遮断する方法以外のものとして、はんだ組成そのものをドロス抑制効果のある合金成分にして対応しようとする提案が繰り返されてきた。しかし、特許文献2乃至特許文献8に示すこれらの方法は、本来優先されるべきはんだ接合部分の信頼性やその他の要件を犠牲にする恐れがあり、実用化に至っているものが極めて少ない。
【0010】
また、溶融はんだにドロス除去剤を添加するものも考案されている。しかし、特許文献9に示す方法も、本来優先されるべきはんだ接合部分の信頼性やその他の要件を犠牲にする恐れがある点では、上記の案と同様である。
【0011】
このような、はんだ組成そのものの変更または組成に変化を与える恐れのある物質の混合などの方法に頼らず、はんだ接合部分の信頼性を確認できているはんだをそのまま使える方法として、特許文献10及び特許文献11のような提案がなされている。これらはいずれも噴流ノズルから吹き上がったあと流下してくる溶融はんだの流れを整流用案内板で制御し、噴流に混入しにくい位置に誘導したり、整流用案内板で流下の勢いを緩やかに制御し、液面に流れ落ちる際の外気の巻き込みを抑制しようとするものである。
【0012】
これらの考案は、はんだ組成そのものに影響を与えないため、はんだ接合部分の信頼性の再評価などの必要からは免除されるが、溶融はんだ表面と空気との接触面積は逆に増加してしまう問題がある。その対策となりうるのが、前述した、溶融はんだ水平面と空気との接触を表面に浮かべたセラミックボールによって遮断する特許文献1の考案や、さらに特許文献12のような、溶融はんだを噴流ノズルまで押し上げるファンの回転軸による、溶融半田内への空気巻き込み対策としてのフロート部材の考案である。
【0013】
しかし、特許文献1の考案のような遮蔽部材に間隙の多い方法では、半田槽内の溶融はんだ水平面を覆い尽くすことができず、明細書に記載の効果には遠く及ばない成果しか得られなかった。
【0014】
さらに特許文献12の考案に対しても、実際の観察を通じた半田ドロスの発生メカニズムを検証したが、はんだの噴流を中断した状態で溶融はんだの静止液面でのドロスの増加状況を観察したところ、液面に薄くドロスの膜が発生してから以降は、ドロス発生速度は急速に低下した。これは、薄いドロス膜が溶融半田と空気との接触を遮断するようになるため、それ以上の酸化が進行ににくくなった結果であると考えられる。
【0015】
続いて、噴流を中断したまま、溶融はんだ中にあってモータからの回転軸と連結されているファンを取り外し、回転軸のみで回転させてみたところ、噴流時には回転軸周辺に盛り上がるほどのドロスの発生があったのに対し、噴流を中断し、ファンもない状態で軸だけ回転させた場合は、回転軸周辺に発生する黒色粉体状のドロス量ははるかに少量で、特許文献12に記載の「回転軸が空気を巻き込んで大量のドロスを発生させる」というほどのメカニズムは確認できなかった。
【0016】
以上のことから、ファン回転軸周辺で大量のドロスが発生しているかのように見えるメカニズムは、噴流部分などの他部所で発生して回転軸周辺にまで広がってきた薄膜状のドロスが、回転する軸に接触して粉砕され、黒い粉体となって盛り上がっていくものであることが分かった。噴流を再開すると、フィンの回転軸は、順次押し寄せてくる薄膜状のドロスを黒い粉体に変えながら回転軸周囲盛り上げていき始めたことから、特許文献12に記載のファン駆動用の軸の回転は、明細書に記載されているような主要なドロス発生メカニズムではないことがいえる。
【0017】
上述の検討から言えることは、ドロス発生量の削減のためには、溶融はんだ水平液面の空気からの遮断の徹底を図るだけではなく、さらに噴流部および流下部におけるはんだ表面と空気の接触をさらに減少させる必要があるということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−237269号公報
【特許文献2】特開2003−154486号公報
【特許文献3】特開2004−066305号公報
【特許文献4】特開2007−038228号公報
【特許文献5】特開2007−111715号公報
【特許文献6】特開2007−313519号公報
【特許文献7】特開2008−030064号公報
【特許文献8】特開2008−043978号公報
【特許文献9】特開2010−029875号公報
【特許文献10】特開2004−259963号公報
【特許文献11】特開2007−196241号公報
【特許文献12】特開2007−038257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述のような問題を解決するため、半田槽の溶融はんだ噴流部、流下部及び水平面部を空気から遮断することのできるドロス削減方法及びその用具を提供する。さらに同方法及び用具を援用して、溶融半田面からの熱流出の防止方法及びその用具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の発明では、板状の遮蔽部材を溶融したはんだ表面の一部または全面に接して覆うことにより、溶融はんだと酸素を含む空気との接触面積を低減させる。
【0021】
請求項2に記載の発明では、請求項1の遮蔽部材を用い、噴流ノズルから噴出し流下する溶融はんだ表面に接して覆い、溶融はんだを噴流ノズル部の外側板と当該遮蔽部材の間の間隙に誘導して流下させることによって、溶融はんだ表面を両面から挟み込み酸素を含む空気との接触面積を減少させる。
【0022】
請求項3に記載の発明では、請求項2のはんだ噴流部の遮蔽部材を用いたとき、上部を通過する電子基板及び部品とが干渉することを防止するために、その上端部は、当該電子基板及び部品位置よりも下に位置させる。また、噴流後流下する溶融はんだを、当該噴流部用遮蔽部材より外側にこぼさないよう、上端辺縁部は噴流ノズル部から遠ざかるように外側方向に反り返らせたガイド形状とする。また当該噴流部用遮蔽部材の上端辺縁部以下の部分は、溶融はんだが噴流ノズル部の外側板と当該噴流部用遮蔽部材の間を流下する際の空隙発生を抑制するため、噴流ノズル部の外側板の形状に概類似の形状とする。
【0023】
請求項4に記載の発明では、請求項3のはんだ噴流部の遮蔽部材を用いて、噴流ノズル部の外側板と当該噴流部用遮蔽部材の間の空隙に溶融はんだを導入して流下させる際、当該噴流部用遮蔽部材の水平方向両端から溶融はんだが漏出することのなきよう、その水平方向両端部に、噴流ノズル部の外側板の面のに略垂直に当接する整流版を接続する。
【0024】
請求項5に記載の発明では、請求項1のはんだ噴流部の遮蔽部材を用いて、噴流ノズル部のノズル孔配置部よりも幅の狭い基板のはんだ付けを行なう際、基板幅より外側に配置されていてはんだ付けに寄与しない位置の噴流ノズル孔を、当該はんだ噴流部の遮蔽部材を用いて封鎖する。
【0025】
請求項6に記載の発明では、請求項5のはんだ噴流部の遮蔽部材を、封鎖可能範囲の異なる遮蔽部材を着脱、交換することによって、溶融はんだの噴流封鎖範囲を任意に変更する。
【0026】
請求項7に記載の発明では、請求項5のはんだ噴流部の遮蔽部材をスライド移動させることによって、溶融はんだの噴流封鎖範囲を任意に変更する。
【0027】
請求項7に記載の発明では、請求項5のはんだ噴流部の遮蔽部材をスライド移動させることによって、溶融はんだの噴流封鎖範囲を任意に変更する。
【0028】
請求項8に記載の発明では、請求項1の板状の遮蔽部材を溶融したはんだ表面の一部または全面に接して覆うため、当該板状遮蔽部材の辺縁部に隣接の遮蔽部材と互いに嵌め合わせる構造を持たせ、互いの離反を防止する。
【0029】
請求項9に記載の発明では、前述の請求項1乃至8の空気と溶融はんだ表面との遮蔽用部材を溶融はんだに接触する面とその反対側の面をそれぞれ板状素材とし、さらにその両素材の少なくとも外周辺縁部を溶接または耐熱接着剤等で貼り合わせて中空断熱構造とし、中空部は空気のままか、真空、または断熱材を充填する。
【0030】
請求項10に記載の発明では、前述の請求項1乃至9の遮蔽部材を外断熱構造とするため、少なくとも外気に接する表面に断熱材を接合する。
【0031】
請求項11に記載の発明では、溶融はんだより比重の重い素材の見かけ比重を、請求項9の中空構造底部の船形化によって溶融はんだより軽くする。
【0032】
請求項12に記載の発明では、遮蔽部材用の素材として、記載の ねずみ鋳鉄、チタン、表面を窒化チタン化したチタン、表面を酸化チタン化したチタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム、アルミナ、フォルステライト、ジルコニア、ジルコン、ムライト、ステアタイト、コーディエライト、窒化アルミ、窒化珪素、炭化珪素、フッ素樹脂、等による部材か、またはこれらをコーティング・蒸着・溶射等の手段で表面保被覆した部材を使用して製作することより、溶融はんだの熱や腐食に耐えるものとする。
【発明の効果】
【0033】
請求項1に記載の発明によって、溶融はんだ表面を広く空気から遮蔽することができ、ドロスの発生量を低減させることが可能となる。
【0034】
請求項2に記載の発明によって、半田槽のドロス発生のもっとも大きな要因である噴流部での溶融はんだと空気との接触面積を低減させることが容易となり、ドロス発生量を低減させることが可能となる。
【0035】
請求項3に記載の発明によって、はんだ噴流部の遮蔽部材を用いたとき、上部を通過する電子基板及び部品と当該遮蔽部材の衝突を防止することが可能となる。また、噴流後流下する溶融はんだが、当該噴流部用遮蔽部材より外側にこぼれることを防止でき、さらに、溶融はんだが噴流ノズル部の外側板と当該噴流部用遮蔽部材の間を流下する際の空隙発生を抑制することが容易となり、ドロス発生量を低減させることが可能となる。
【0036】
請求項4に記載の発明によって、当該噴流部用遮蔽部材の水平方向両端からの溶融はんだの漏出を低減することがさせることが容易となり、ドロス発生量を低減させることが可能となる。
【0037】
請求項5に記載の発明によって、噴流ノズル部のノズル孔配置部よりも幅の狭い基板のはんだ付けを行なう際、基板幅より外側に配置されていてはんだ付けに寄与しない位置の噴流ノズル孔を、当該はんだ噴流部の遮蔽部材を用いて封鎖し、空気との接触面積を低減することが容易となり、ドロス発生量を低減させることが可能となる。
【0038】
請求項6に記載の発明によって、はんだの噴流範囲を自由に封鎖することが容易となるため、はんだ付けする基板の幅以上の不要部分のはんだ噴流部で発生していたドロス発生量を低減させることが可能となる。
【0039】
請求項7に記載の発明によって、はんだ噴流部の遮蔽部材を自由にスライド移動させ、より容易により細かくはんだの噴流範囲を調整することができるようになるため、ドロス発生量をより低減させることが可能となる。
【0040】
請求項8に記載の発明によって、当該板状遮蔽部材が互いに離反して、溶融はんだが酸素を含む空気に触れてしまう間隙が発生してしまうことを防止することができ、ドロス発生量を低減させることが可能となる。
【0041】
請求項9に記載の発明によって、当該板状遮蔽部材を半田槽のエネルギー効率改善のための断熱手段として活用することが可能となる。
【0042】
請求項10に記載の発明によって、当該板状遮蔽部材の外断熱効果を向上させることが可能となる。
【0043】
請求項11に記載の発明によって、見かけ比重を溶融はんだより軽くすることが容易となるため、溶融はんだより重い素材を本発明の遮蔽部材として使用することが可能となる。
【0044】
請求項12に記載の発明によって、常時高温の溶融はんだと接触している遮蔽部材の耐熱性や耐腐食性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る溶融はんだ遮蔽部材の実施形態を示す概略断面図
【図2】本発明に係る溶融はんだ噴流部分の遮蔽部材とサイド整流板を示す概略図
【図3】本発明に係る溶融はんだ噴流ノズル孔配置部の可変遮蔽構造を示す概略図
【図4】本発明に係る溶融はんだ水平面用遮蔽部材の実施形態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明に係る溶融はんだ遮断部材の実施形態を示す概略断面図である。中心線より左に図示したのは、従来のフロー半田槽の噴流ノズル周辺、中心線より右に例示しているのは、本発明によるドロス発生の抑制策を実施した概念図である。図1において、半田槽内に貯留された溶融はんだ1は、噴流ファン2によって噴流ノズル部筐体3に開口された噴流ノズル孔4から上方に向かって噴出させられ、ノズル孔上で噴流ウェイブ形状5を形成した後、噴流ノズル部筐体3の外側板6に沿って流れ落ちる流下部7を形成しつつ、半田槽内に貯留された溶融はんだの水平面8に向けて落ち込んでいく。このはんだ循環サイクルにおいて、溶融はんだの水平面8、噴流ウェイブ形状5、流下部7、及び、流下したはんだが溶融はんだ水平面8に落ち込む部分は、常時酸素と触れ合って酸化が進行する部分である。
【0047】
このようにして発生する「はんだドロス」と呼ばれるはんだの酸化物は、溶融半田より軽いため、当初は溶融はんだの水平面8上に薄い酸化皮膜の状態で浮かんでいるが、次第にはんだの流れなどによって折り重なって堆積し、ドロス団塊やさらにそれが粉砕されたドロス微粉末となって、時に噴流ファン2に巻き込まれて噴流し、非番のはんだ付け部分に付着してはんだ付け不良を発生させたり、噴流ノズル孔4に付着したり目詰まりして噴流のばらつきを発生させる原因となる。
【0048】
このため、はんだ槽の担当者は頻繁に煩雑なドロス除去作業を行わなければならないため、生産性の低下の原因ともなり、さらに、ドロスとなって廃棄されるはんだの購入費用のロス、産業廃棄物処理費用のロスをも発生させる。
【0048】
そこでこの問題を解決するために考案したのが、図1の中心線より右に示す、溶融半田と空気との接触遮断の方法である。噴流ノズル孔4から上方に向かって噴出させられ、ノズル孔上で噴流ウェイブ形状5を形成した後、噴流ノズル部筐体3の外側板6に沿って流れ落ちる溶融半田は、噴流部用遮蔽部材9によって表面を空気と遮断されたまま、溶融はんだの水平面8に向けて落ち込んでいく。またこのとき、噴流部用遮蔽部材9の遮蔽効果により溶融はんだ1への空気巻き込みも減少するため、はんだドロスの発生を削減することができる。
【0049】
噴流部用遮蔽部材9の上端部は、流下してくる溶融はんだを噴流ノズル部筐体3の外側板6と噴流部用遮蔽部材9の間隙に誘導しやすい外反形状となっていて、溶融はんだが遮蔽部材9の上に乗り上げて空気と触れ合いながら流下することを防止する。はんだ付けする基板や部品の種類に応じて噴流の強弱を変更することがあるため、噴流ノズル部筐体3との間隙は変更可能であるが、さらに噴流部用遮蔽部材9は、噴流・流下してくる溶融はんだの圧によって間隙が変化するよう、間隙の増減方向に対し稼動可能に取り付けてあることが望ましい。
【0050】
図2は、本発明に係る溶融はんだ噴流部分の遮蔽部材9と噴流部サイド整流板10を示す概略図である。これは、噴流ノズル部筐体3の外側板6と噴流部用遮蔽部材9の間隙を流下してくる溶融半田を、両サイドから漏出させないためのもので、噴流ノズル部筐体3の湾曲する外形に略相似の形状を持って噴流ノズル部筐体の外壁に密着する。はんだ噴流量が少ないときは、噴流ノズル部筐体3の外側板6と噴流部用遮蔽部材9の間隙を通るはんだ流量も少なくなるため、はんだ流量が多い時に外にはんだが漏出してくるのとは逆に、流下するはんだに空気が引き込まれる現象が起こりやすくなるが、噴流部サイド整流板10を噴流ノズル部筐体3の外壁形状に密着させることで、この空気引き込み現象も防止することができる。
【0051】
図3は、本発明に係る溶融はんだ噴流ノズル孔配置部の可変遮蔽構造を示す概略図である。噴流ノズル部筐体3の噴流ノズル孔配列部12を噴流ノズル遮蔽板13が上部から覆ってノズル孔を塞ぎ、当該範囲のはんだ噴流を停止させる。この噴流ノズル遮蔽板13は、任意の長さのものを使ってはんだ噴流を停止させることができるため、はんだ槽の当初の噴流範囲に対し、はんだ付け使用とする基板の幅が狭い場合、はんだ付けに寄与しない範囲の噴流を止めてドロス発生量を削減しようとするものである。
【0052】
また、この着脱方式の噴流ノズル遮蔽板13をスライド式に変更することにより、より簡便に不要な噴流ノズルの遮蔽を行うことができる。
【0053】
図4は、溶融はんだ水平面用遮蔽部材の実施形態を示す概略図である。各遮蔽板の辺縁部には、フックとフックホルダ用開口が開けてあり、互いに重ね合わせて連結することができる。このため、遮蔽板同士の離間によって溶融はんだ表面が空気にさらされることを防ぐことができる。
【0053】
また、各遮蔽板の構造は、上下2枚の貼り合わせ構造とし、溶融半田に常時接する底面の板はチタンを使用してはんだによる腐食の対策としている。
【0054】
上下の板で貼り合わせた遮蔽板の内部を中空構造として、そこにロックウールを充填して断熱効果を向上させた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、フローはんだ付け工程において、はんだ槽内でのはんだドロスの発生量を抑制することができる。そのため、はんだ付け品質を改善することができ、かつ、ドロス除去作業を軽減しながら、はんだコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 半田槽内に貯留された溶融はんだ
2 噴流ファン
3 噴流ノズル部筐体3
4 噴流ノズル孔
5 噴流ウェイブ形状
6 噴流ノズル部筐体外側板
7 流下部
8 溶融はんだ水平面
9 噴流部用遮蔽部材
10 噴流部サイド整流板
11 溶融はんだ水平面用遮蔽部材11
12 噴流ノズル孔配列部
13 噴流ノズル遮蔽板
14 締結用フック
15 締結用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローはんだ槽で溶融したはんだの表面に接して覆う、板状の遮蔽部材によって溶融はんだ表面と空気との接触面積を減少させることを特徴とするはんだドロスの発生防止方法及びその用具。
【請求項2】
請求項1に記載の遮蔽部材であって、噴流ノズルから噴出し流下する溶融はんだ表面に接して覆い、溶融半田を噴流ノズル部の外側板と当該遮蔽部材の間の間隙に誘導して流下させることによって、溶融はんだ表面と空気との接触面積を減少させることを特徴とするはんだドロスの発生防止方法及びその用具。
【請求項3】
請求項2に記載のはんだ噴流部の遮蔽部材であって、その上端部は、上部を通過する電子基板及び部品位置よりも下に位置し、上端辺縁部は噴流ノズル部から遠ざかるように外側方向に反り返っていて、上端辺縁部以下の部分は噴流ノズル部の外側板形状に概類似の形状であることを特徴とするはんだドロスの発生防止方法及びその用具。
【請求項4】
請求項3に記載のはんだ噴流部の遮蔽部材であって、その水平方向両端部には、噴流ノズル部の外側板の面に略垂直に当接するサイド整流版が接続されていることを特徴とするはんだドロスの発生防止方法及びその用具。
【請求項5】
請求項1に記載のはんだ噴流部の遮蔽部材であって、噴流ノズル孔配置部の外形に略相似した逆雨樋形状をしていて、ノズル孔の開口部を情報から密着して遮蔽し、当該箇所の溶融はんだの噴流を停止させることを特徴とするはんだドロスの発生防止方法及びその用具。
【請求項6】
請求項5に記載のはんだ噴流部の遮蔽部材であって、遮蔽範囲の異なる遮蔽部材の着脱によって、溶融はんだの噴流封鎖範囲の変更を行うことを特徴とするはんだドロスの発生防止方法及びその用具。
【請求項7】
請求項5に記載のはんだ噴流部の遮蔽部材であって、基板進行方向と直行方向へのスライド移動によって、溶融はんだの噴流を停止範囲の変更を行うことを特徴とするはんだドロスの発生防止方法及びその用具。
【請求項8】
請求項1に記載の遮蔽部材であって、噴流ノズルから流下後にはんだ槽内に滞留して水平面をなす溶融はんだに浮いて、溶融はんだ表面を覆う板状の遮蔽部材であって、その辺縁には隣接の遮蔽部材と互いに連結可能な嵌め合わせ構造等を持つことを特徴とするはんだドロス発生防止方法及びその用具。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の水平面遮蔽部材は、溶融はんだに接触する面とその反対側の面がそれぞれ板状素材であり、その両素材の少なくとも外周辺縁部は貼り合わされた構造となっていて、その両面の中央内部は中空となっていて、空気、真空または断熱材が充填されていることを特徴とするはんだドロス発生防止方法及びその用具。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載の遮蔽部材は、少なくとも外気に接する表面には断熱材が接合されいることを特徴とするはんだドロス発生防止方法及びその用具。
【請求項11】
請求項9乃至10に記載の水平面遮蔽部材は、その見かけ比重が溶融半田より軽いことを特徴とする底部が船形をしたはんだドロス発生防止方法及びその用具。
【請求項12】
請求項1乃至11に記載の遮蔽部材の溶融はんだ接触部は、ねずみ鋳鉄、チタン、表面を窒化チタン化したチタン、表面を酸化チタン化したチタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム、アルミナ、フォルステライト、ジルコニア、ジルコン、ムライト、ステアタイト、コーディエライト、窒化アルミ、窒化珪素、炭化珪素、フッ素樹脂、等による部材か、またはこれらをコーティング・蒸着・溶射等の手段で表面保被覆した部材で製作されていることを特徴とするはんだドロス発生防止方法及びその用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−151427(P2012−151427A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23303(P2011−23303)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(305045597)
【Fターム(参考)】