説明

ばねおよびばねの製造方法

【課題】コーティング膜の膜厚を厚くし、ばね部材の腐食を防止するばねを提供する。また、ばね部材に厚い膜厚のコーティング膜を塗付することができるばねの製造方法を提供する。
【解決手段】ばねに、ばね部材に施された第1のコーティング膜と、該第1のコーティング膜の上に少なくとも部分的に施された第2のコーティング膜とを設ける。ばねの製造方法では、ばね部材に塗料を付着して第1のコーティング膜を形成し、該第1のコーティング膜上に塗料を直接少なくとも部分的に付着して第2のコーティング膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねおよびばねの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ばねの腐食を防止するために、ばね部材に腐食防止用の塗料(コーティング膜)が塗付される。塗料の塗付は、例えば、ドブ漬け(溶剤等による塗装)によって行われる。または、ばね部材に静電塗装により樹脂系粉体塗料を付着し、次に、加熱することによってコーティング膜をばね部材上に形成する。この静電塗装を用いると、全体に均一に所定の厚さ(約0.3mm)のコーティング膜が形成できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の静電塗装では、ばね部材上に全体に均一に所定の厚さ(約0.3mm)のコーティング膜が形成できるが、静電塗装中粉体塗料が所定の厚さ以上は堆積できないので、所定の厚さ以上のコーティング膜は形成できなかったし、通常の使用状態(ばねの上下の部分の衝突のない状態)では、膜厚をそれ以上にする必要はなかった。しかし、ばねの過酷な使用状態では、ばねの上下部分が衝突し、コーティング膜を徐〃に削りとり、最後にはばね部材を露呈させることになる。この結果、ばね部材の腐食が生じさせていた。
【0004】
したがって、本発明の目的は、コーティング膜の膜厚を厚くし、ばね部材の腐食を防止するばねを提供することにある。
【0005】
また、本発明の目的は、ばね部材に厚い膜厚のコーティング膜を塗付することができるばねの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために、本発明のばねは、ばね部材に施された第1のコーティング膜と、該第1のコーティング膜の上に少なくとも部分的に施された第2のコーティング膜とを有することを特徴とする。
【0007】
また、前述の目的を達成するために、本発明のばねの製造方法は、ばね部材に塗料を付着して第1のコーティング膜を形成し、該第1のコーティング膜上に塗料を直接少なくとも部分的に付着して第2のコーティング膜を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ばね部材に塗付されるコーティング膜を厚くでき、ばね部材の腐食を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ばねは、ばね部材に施された第1のコーティング膜と、該第1のコーティング膜の上に少なくとも部分的に施された第2のコーティング膜とを有する。
【0010】
ばねの製造方法は、ばね部材に塗料を付着して第1のコーティング膜を形成し、該第1のコーティング膜上に塗料を直接少なくとも部分的に付着して第2のコーティング膜を形成する。
【0011】
なお、特に好ましいばねの製造方法は、ばね部材に静電塗装により樹脂系粉体塗料を付着し、次に、加熱することによって第1のコーティング膜を形成し、該第1のコーティング膜上に静電塗装により樹脂系粉体塗料を直接少なくとも部分的に付着し、次に、加熱することによって第2のコーティング膜を形成することである。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例のばねの正面図である。図1において、ばね10には、ばね部材の上に塗付された第1のコーティング膜12と、第1のコーティング膜の上にさらに部分的に塗付された第2のコーティング膜14がある。この第2のコーティング膜のあるばね部分は、過酷な使用状態では、上下のばね部分が衝突し,コーティング膜が剥がされる所である。ばね部材の材質は、ばね鋼材、チタン合金、プラスチック等の任意の適切なものでよく、限定されるものではない。また、コーティング膜を形成の原料は粉体、液体等の塗料その他任意の適切な材質のものである。
【0013】
ばねの製造方法は、ばね部材の上に第1のコーティング膜を形成し、第1のコーティング膜の上に部分的にまたは全体に第2のコーティング膜を形成する。第1のコーティング膜は、例えば、ドブ漬け、静電塗装等の任意の方法によって形成され、第2のコーティング膜も例えば、ドブ漬け、静電塗装等の任意の方法によって形成される。
【0014】
しかし、本発明では、第1および第2のコーティング膜のいずれも静電塗装で形成されるのが好ましいので、以下これについて説明する。
【0015】
ばねの製造方法では、ばね部材に静電塗装により、すなわち、電気的に接地したばね部材に、帯電させた、例えば、ポリエステル・エポキシ樹脂系の粉体塗料を付着させ、次に、約200°Cに加熱することによってばね部材上に粉体を融着して均一の所定の膜厚(約0.3mm)の第1のコーティング膜12を形成する。次に、第1のコーティング膜12上に、マスクとして耐熱フィルム(例えば、約280°Cの温度までの耐熱性のある耐熱フィルム)で被覆し、静電塗装により樹脂系粉体塗料をばね全体に付着させ、次に、加熱することによって所定の膜厚(約0.3mm)の第2のコーティング膜を形成する。その後、マスクを剥がすことによって部分的に第2のコーティング膜を形成する。
【0016】
この結果、二重コーティングされた部分の膜厚は約0.6mmとなり、過酷な使用状態においても、ばね部材の腐食を長期間防止できる。
【0017】
一度の静電塗装では、粉体が所定の膜厚しか堆積しないので、所定の膜厚のコーティング膜しか得られないが、二度目の静電塗装では、第1のコーティング膜が形成されたときには、すなわち、粉体が融着した状態では、さらにその上に粉体を付着できるという現象を見出すことができた。本発明はこの原理に利用して第1のコーティング膜の上にさらに静電塗装で第2のコーティング膜を形成したものである。
【0018】
前述の実施例では、マスクを用いて部分的に第2のコーティング膜を形成したが、マスクを用いずに、全体に第2のコーティング膜を形成してもよい。
【0019】
第2のコーティング膜を部分的に形成する際、色彩の異なった第1のコーティング膜に用いる粉体塗料と第2のコーティング膜に用いる粉体塗料と用いることもできる。この場合には、色彩の同一の粉体塗料を用いることに比べて、コーティング膜に色彩の変化があり、デザイン的にも優れた印象を与えるとともに、二重コーティングされたばねであることを容易に認識させることができる。また、第2のコーティング膜の剥がれが進むと、第1のコーティング膜の色が出現するので、剥がれの程度を判断でき、その結果、ばねの使用可能な期間をある程度予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例のばねの正面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ばね
12 第1のコーティング膜
14 第2のコーティング膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね部材に施された第1のコーティング膜と、該第1のコーティング膜の上に少なくとも部分的に施された第2のコーティング膜とを有することを特徴とするばね。
【請求項2】
ばね部材に塗料を付着して第1のコーティング膜を形成し、該第1のコーティング膜上に塗料を直接少なくとも部分的に付着して第2のコーティング膜を形成することを特徴とするばねの製造方法。
【請求項3】
ばね部材に静電塗装により樹脂系粉体塗料を付着し、次に、加熱することによって第1のコーティング膜を形成し、該第1のコーティング膜上に静電塗装により樹脂系粉体塗料を直接少なくとも部分的に付着し、次に、加熱することによって第2のコーティング膜を形成することを特徴とするばねの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のばねの製造方法において、前記第1のコーティング膜上にマスク用の耐熱フィルムを部分的に貼付して、静電塗装により樹脂系粉体塗料を付着し、次に、加熱することによって第2のコーティング膜を形成することを特徴とするばねの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−231099(P2006−231099A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44964(P2005−44964)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(505062097)有限会社匠工房 (1)
【Fターム(参考)】