説明

ろ過膜破損検出システム及び膜式ろ過装置

【課題】ろ過装置のどの膜ろ過モジュールでリークが発生したかを、遅滞なく決定・検出できるろ過膜破損検出システム及び膜式ろ過装置を提供する。
【解決手段】原水を送水するポンプ2と、ポンプ2にバルブ7を介して接続される複数の膜式ろ過モジュール3と、膜式ろ過モジュール3の後段に接続され、光透過特性を有しろ過水中の含有物質を補足するろ過フィルタと、ろ過フィルタに光を投光する発光素子と、透過光を検出する受光素子で構成したろ過膜破損検出用センサ4と、ろ過膜破損検出用センサ4に接続される通信モジュール6と、通信モジュール6と送受信する通信装置8を具備し、受光素子の検出信号の処理とろ過膜破損検出用センサ4の測定条件を設定する計算機9とを備え、計算機9は、受光素子の検出信号からろ過膜が損傷した膜式ろ過モジュールを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川などから取水した水を膜によりろ過してろ過水を得る膜式ろ過装置のろ過膜破損検出システム及び膜式ろ過装置に関する。(特に膜式ろ過装置のろ過膜の損傷により原水がろ過水側にリークしたことを迅速に検出することにより確実にろ過膜の破損を検知する安価なろ過膜破損検出システムに関するものである。)
【背景技術】
【0002】
ろ過膜により原水をろ過して不純物含有率の低いろ過水を得る膜式ろ過装置がある。比較的簡単な構成の設備で清澄な水を得る方法として、この膜式ろ過装置は、複数のろ過膜を1つのモジュールとして構成し、このモジュールを複数使って所定のろ過水量を得るシステム構成となっている。
【0003】
このような膜式ろ過装置では、膜の破損や損傷により、原水がろ過水側にリークし、本来は除去される不純物質がろ過水中に混入する場合がある。膜の破損・損傷には、例えば膜の切断,部分的な裂傷,孔食等があり、また、膜の支持機構等の接続部分での漏洩等もある。また、不純物質は、固形物,細菌,バクテリアやそれらの死骸等、原水中に懸濁ないし浮遊する微細な粒子である。膜からのリークにより、透過水中にこれらの不純物質が混入すると、ろ過水質が低下するため、膜の破損を早期に発見して膜を交換する、或いは補修することが必要になる。
【0004】
ろ過膜のリークなく完全なろ過機能を保持しているか否かの試験方法に関しては、〔非特許文献1〕の第7章に述べられている。試験方法には、大別して、ろ過水側にリークする不純物質を検出する第1の方法,ろ過水の濁度を監視する第2の方法,原水側またはろ過側に圧力を印加して保持圧力の時間変化,加圧気体の噴出を検出する第3の方法がある。
【0005】
また、〔特許文献1〕には、上記の方法と異なる第4の方法として、膜式ろ過装置から流出した透過水の一部ないし全量を、更に膜でろ過して膜を透過する2次透過水と膜を透過することなく流出する濃縮水とに分離し、分離した濃縮水を試料として試料の単位体積当たりの混入微粒子数を微粒子計により計数し、計数した微粒子数に基づいて膜式ろ過装置の膜が破損したことを判定する膜破損検出方法が記載されている。この方法では、微粒子計は第1の方法と同様、光学的な手段を用い、具体的なリークの判定は、計数した微粒子数の時間的変化が予定する時間的変動より急激である時、計数した微粒子数が設定値を越えた時のいずれかを膜式ろ過装置の膜が破損したとしている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−252440号公報
【非特許文献1】「浄水膜」、技報堂出版、膜分離技術振興会・膜浄水委員会監修、浄水膜編集委員会編集
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来の技術のうち、第1の方法は光学的に粒子の存在を検出するものであり、光源,受光センサ,光学系の軸合わせ、調整が難しいという問題がある。さらに、構成部品が高価であり、装置の価格が相対的に高くなり、測定器の数を多くできない。このため、多数のろ過膜モジュールに個別にセンサを設置することは難しく、リークが発生したモジュールの同定には、検出位置を変えて探索する、ろ過水の採取位置を切り替えて計測する必要があり、破損ろ過膜モジュールを決定し、補修するまでに多大の時間が必要である。第2の方法も光学的に粒子の散乱・透過を観測するものであり、第1の方法と同様の問題がある。第3の方法では、ろ過流路に圧力を印加する必要があり、検査の間は、ろ過が不可能となり、ろ過システムの効率が低下する問題がある。第4の方法は、新たに追加したフィルタでリークによる微少物質を濃縮し、リーク検出の迅速性を図るものであるが、第1の方法と同じように光学的に物質の存在を検出する場合、装置が高価となる問題がある。また、濃縮用のフィルタの詰まりをその差圧で検出する方法もあるが、フィルタが詰まるまでの時間を必要とし、リーク検出の迅速性が損なわれる問題がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、膜式ろ過装置の膜が破損・損傷してろ過水に不純物質がリークし、ろ過水中の不純物物質が増大するのを、感度良く検出できる安価なろ過膜破損検出システム及び膜式ろ過装置を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、多数の検出器をろ過膜モジュール個別に設置し、通信によってリークが発生したモジュールを同定して該当モジュールの動作停止や交換など、迅速な安全措置を可能とするろ過膜破損検出システム及びろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のろ過膜破損検出システム及び膜式ろ過装置は、大別してろ過膜の破損によるリークを検出するセンサ部分と、検出信号を通信によって集中管理する部分を備えている。
【0011】
ろ過膜の破損によるリークを検出するセンサ部分では、リークによりろ過水中に漏洩する不純物物質を、ろ過フィルタで補足する。ろ過フィルタは適切な透過粒径を持ち、光透過性を有するものを用いる。ろ過膜の破損によるリークがない状態では、不純物物質の補足は少なく、ろ過フィルタの通過光はあるレベルを保つ。原水がリークすると、不純物物質がろ過フィルタに補足され、この補足不純物により光は遮光されるため、通過光は減少する。この通過光減少の時間的変化を観測することにより、ろ過膜破損によるリークを検出し、破損を検出する。例えば、センサを各ろ過膜モジュールに設置することにより、検出結果から、破損したろ過膜モジュールを決定することができる。
【0012】
透過光のデータは、通信装置で計算機に送信され一括管理される。一方、計算機側からセンサ側に対し、測定間隔・測定タイミングや、データ送信要求などの制御情報を送信する。
【0013】
このように、光透過型のろ過フィルタにろ過膜の破損によるリーク不純物物質が補足され、この補足物質によって透過光が減少するため、リーク発生、ろ過膜破損を検出できる。各センサを通信ネットワークで連結することにより、各ろ過モジュールの破損の有無を検知でき、破損ろ過膜モジュールを同定することが可能となる。また、各センサのセンシング間隔,センシングタイミングは、予め設定したり、必要に応じて変更したりする柔軟なセンシング動作が可能となる。本発明により、リークが発生したろ過モジュールを遅滞なく検知できるほか、必要に応じて破損ろ過モジュールへの原水供給停止など、水質確保に向けた対策を可能とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リークが発生したろ過モジュールを遅滞なく検知できるほか、必要に応じて破損ろ過モジュールへの原水供給停止など、水質確保に向けた対策を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
各実施例では、ろ過膜の損傷により原水側からろ過水側にリークした不純物質をフィルタでトラップし、このフィルタの透過光がトラップされた不純物質で遮光されて検出する光の強度が弱くなるため、不純物質のリークを検出する。
【0016】
このように、ろ過された水をセンサで監視し、リークを検出するため、ろ過水をセンサに導入する機構,導入したろ過水をフィルタリングする機構,フィルタの光透過割合を求めるためフィルタの両側に対向させた発光・受光器を設け、受光器の受光レベルを検出する。これらのセンサは、各ろ過モジュールに設置されており、各センサの受光レベルのデータは、通信装置で計算機に送信され一括管理される。各センサで検出した受光信号の時間的変化などからリークの発生したろ過モジュールを検知し、ろ過停止などの必要な対策をたてる。また、計算機側からセンサ側に対し、測定間隔・測定タイミングや、データ送信要求などの制御情報を送信する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1を図1から図5を用いて説明する。図1は、本実施例のろ過膜破損検出システムの主要な構成を示す構成図である。ろ過膜破損検出システムは、主として、ろ過膜破損検出用センサ4,通信モジュール6,通信装置8,計算機9で構成される。
【0018】
図1に示すように、原水タンク1には、原水を膜式ろ過モジュール3に送水するための送水ポンプ2が配管により接続されている。膜式ろ過モジュール3は、ろ過モジュール3−1,3−2,…3−Nの多数のろ過モジュールで構成されており、送水ポンプ2とは、分岐された配管によりそれぞれバルブ7−1,7−2,…7−Nを介して接続されている。ろ過モジュール3−1,3−2,…3−Nのそれぞれの後段、すなわちろ過水側には、配管5−1,5−2,…5−Nを介して、ろ過膜破損検出用センサ4−1,4−2,…4−Nが接続されている。各ろ過膜破損検出用センサ4−1,4−2,…4−Nには、通信モジュール6−1,6−2,…6−Nが設けられており、各ろ過膜破損検出用センサ4−1,4−2,…4−Nで検出された検出データを、例えば電波により通信装置8に送信するようになっている。ろ過膜破損検出用センサ4−1,4−2,…4−Nの後段は、集合されて1つの配管に接続され、ろ過水が供給水として供給されるようになっている。
【0019】
通信装置8には、計算機9が接続されており、通信モジュール6−1,6−2,…6−Nから送信される検出データを受信して計算機9に検出データを送信する。計算機9には、ろ過プラントの状態を示すプラントデータも入力される。一方、計算機9からは、通信装置8,通信モジュール6を介してろ過膜破損検出用センサ4に計測パラメータなどを送信する。膜式ろ過モジュール3のろ過膜の破断・破損をろ過膜破損検出センサ4で検出した場合、破損の程度に応じて計算機9からの制御信号、又は直接にバルブ7を操作することにより送水が制御される。
【0020】
図2は、ろ過膜破損検出用センサ4の構成図である。図2に示すように、配管5は、各ろ過モジュール3−1,3−2,…3−Nの出口側の配管であり、膜式ろ過モジュール3でろ過されたろ過水が流出する。図2では、ろ過水は左側から右側に流れる。
【0021】
配管5内には、筒状の導水路41が設けられ、第2の流路を形成している。導水路41の中央部には、光を透過し不純物質を捕捉するための捕捉用フィルタ42が導水路41の断面全面に設けられ、ろ過水中の不純物質が捕捉されるようになっている。導水路41内の捕捉用フィルタ42より上流側には発光素子43が、捕捉用フィルタ42より下流側には受光素子44が対向するように設置され、発光素子43からの発光は、光を透過する捕捉用フィルタ42を透過して受光素子44で検出される。このように、ろ過膜破損検出センサ4は、導水路41,捕捉用フィルタ42,発光素子43,受光素子44で構成される。
【0022】
この例では、発光素子43と受光素子44を対向配置させる場合を示しているが、発光素子43で発光された光が捕捉用フィルタ42を通過して受光素子44で受光されるように、鏡などを用いて光路を形成してもよい。又、捕捉用フィルタ42は、圧力で変形しないように、硬質フィルタの使用や光透過を大きく妨げない補強剤で挟む処置を行ってもよい。
【0023】
発光素子43,受光素子44は、配線により発光素子43,受光素子44に電源を供給する電源回路45に接続され、電源回路45は通信モジュール6に接続されている。
【0024】
図3に示すように、電源回路45は、電池などの電源451と、電源451に接続された電源の切り替器452で構成され、切り替器452は配線により発光素子43、受光素子に接続されている。通信モジュール6は、マイクロプロセッサ61と、マイクロプロセッサ61に接続された通信回路62で構成され、電源回路45の電源451は、配線によりマイクロプロセッサ61,通信回路62に接続されて電源が供給されるようになっている。又、マイクロプロセッサ61は、配線により切り替器452,受光素子44と接続されている。
【0025】
マイクロプロセッサ61の制御により、切り替器452はオン−オフ制御され、測定時に発光素子43,受光素子44に電源が供給される。マイクロプロセッサ61には、アナログ−デジタル変換器(以下ADCという)が設けられ、受光素子44からの検出電流信号をディジタル信号に変換して取り込み、演算処理を行った結果を、通信回路62により外部の通信装置8との通信を行う。マイクロプロセッサ61のデータ採取間隔,電源制御情報などの制御情報は、通信回路62から発信され通信装置8で受信される。これらの動作の詳細は後で詳しく説明する。
【0026】
ろ過膜破損検出用センサ4のうち、ろ過水の配管5内部に設置した発光素子43に電源を供給して一定の光量で発光させると、ろ過膜の破損がなく、ろ過が正常に行われている正常時には、原水のリークがなくろ過水の中に不純物質は混入しないため、捕捉用フィルタ42の材質に応じて減衰はするが、減衰量の少ない光量が受光素子44で検出される。
【0027】
一方、ろ過膜の破損があると、原水の一部がろ過されずに直接ろ過水側にリークして、原水中の不純物質51の量が増大し、不純物質51の一部は捕捉用フィルタ42に堆積し、発光素子43の光を遮光することになる。この遮光により、捕捉用フィルタ42を透過する光量は減少し、受光素子44で検出される光量の減少量からリークの発生が検出でき、ろ過膜の破損を検出できる。
【0028】
次に、ろ過膜破損検出用センサ4の透過光の減衰の大きさから検出したろ過膜の破損を検出データを使用して行う、ろ過プラント全体の監視ネットワークについて説明する。
【0029】
この監視ネットワークでは、プラント全体の監視のため、ろ過膜破損検出用センサ4のデータを収集すると共に、各ろ過膜破損検出用センサ4の計測タイミングなどの制御を行う。図4は、計算機9の動作を示すフローチャートである。
【0030】
処理が開始されると、ステップ901で処理パラメータを設定する。この処理パラメータの設定では、監視するろ過モジュール数や、そのモジュールとパラメータ,データの対応付けなど監視に必要なパラメータについて計算機9の設定を行う。このパラメータには、後述するリークが発生したことを判断するための判断パラメータが含まれる。
【0031】
ステップ902では、各ろ過モジュールのろ過膜破損検出用センサ4に対し、その測定条件を設定する。このステップでは、センシングの間隔,センシング時間,1回のセンシングに対するデータ採取回数,データの通信条件など、監視に必要なろ過膜破損検出用センサ4のセンシングパラメータを通信装置8からろ過膜破損検出用センサ4に送る。このステップ901,902により計算機9の監視に必要なパラメータ設定が終了する。
【0032】
ステップ903では、ろ過プラントの運転状態を示すプラント信号が入力され、以下、監視のためのループ処理が行われる。プラント信号は、圧力,流量などの動作状況である。
【0033】
ステップ904では、ろ過膜破損検出用センサ4からの信号を受信しているかを判定する。N個のろ過膜破損検出用センサ4のいずれかのろ過膜破損検出用センサ4から信号を受信すれば、ステップ905以降の処理に進むが、受信されなければ、順次ステップ903に戻り、ろ過膜破損検出用センサ4のプラント信号を順次入力し、プラント動作条件を更新する。
【0034】
ステップ904で、ろ過膜破損検出用センサ4からの信号受信があると、ステップ905で、計測時刻,計測値の受信データを該当するろ過膜破損検出用センサ4のセンサ番号と紐付けして記憶領域に記憶する。計測値は、上述したように受光素子44で検出される捕捉用フィルタ42を透過する光量であり、ステップ906で、計測時刻,計測値からその時間的な変化を計算し、ステップ907で、計測値である光量の時間変化率が、あらかじめ設定した範囲内にあるかを判定する。光量の時間変化率が、設定範囲内であれば、光量変化が少ない、あるいは外乱によって変化したと判定し、ステップ903に戻る。
【0035】
光量の時間的変化率が設定値範囲を超える場合は、原水のリーク発生の可能性があり、ステップ908で、光量変化の継続する時間が設定範囲であるかを判定する。光量変化の継続する時間が設定範囲を超える場合は、該当するろ過モジュールにリークが発生したと判定し、ステップ909で、該当するろ過モジュールでリークが発生したことを警報などで表示する。光量変化の継続する時間が設定範囲内であれば、該当するろ過モジュールにリークが発生している可能性があるものの、未だ確定ではない状況と判断できる。このため、ステップ911で、必要に応じて計測間隔をより短くするなど、当該モジュールのセンサパラメータを変更するかを判定し、ステップ912で、判定結果に応じてパラメータを送信する。
【0036】
ここで、光量の時間的変化率が設定値範囲を超える場合の原水のリークの可能性について説明したが、各ろ過モジュールの計測値間の時間的変化,数値レベルを比較し、時間的変化が異なるろ過モジュールの有無,数値レベルの異なるろ過モジュールの有無を判断し、他のろ過モジュールの計測値と異なると判定されたろ過モジュールに原水のリーク発生の可能性があると判定し、閾値を超える場合は、該当するろ過モジュールにリークが発生したと判定するようにしてもよい。
【0037】
このように、ステップ903から912の一連の動作によって、各モジュールの監視を実行し、リークが発生したと判断された場合、破損したろ過モジュールを決定する。破損したろ過モジュールが決定されると、計算機9から通信装置8を介して送信される制御信号により該当するろ過モジュールのバルブ7を閉じ、ろ過動作の停止を行うことも可能である。
【0038】
設定された監視時間を経過した場合や、操作員が監視終了の指令を行った場合などは、プログラムは終了される。
【0039】
なお、ステップ901から912で示すプログラム動作の他に、各センサやセンサ全体のデータの表示,トレンド表示,プラントデータの表示なども行うことができる。また、計算機9をろ過プラント内の通信ネットワークや、インターネットに接続し、プラント情報,ろ過膜破損情報を操作員が共有することもできる。
【0040】
図5は、各ろ過モジュールに設置したろ過膜破損検出用センサ4のマイクロプロセッサ61の動作を示すフローチャートである。
【0041】
動作が開始されると、ステップ921で、マイクロプロセッサ61自体のパラメータ設定、例えば、使用メモリ領域,動作のための設定情報エリアなどの設定を行い、ステップ922で、通信装置8から通信回路62を介して送信される計算機9からのセンシング設定パラメータの受信信号の有無を判定する。センシング設定パラメータの受信がされると、ステップ923で、センシング設定パラメータの受信,設定が行われる。ステップ924では、タイマーで計測時刻になったか否かの判定が行われ、計測時刻になったと判断されると、ステップ925で、切り替器452がオフからオンに制御され、発光素子43,受光素子44に電源が供給される。電源が供給されると、発光素子43から発光された光が捕捉用フィルタ42を透過して受光素子44で検出される。ステップ926の捕捉用フィルタ42の透過光の計測では、受光素子の検出光量を求める。検出されたアナログの光量値は、ADCでディジタル信号に変換される。計算機9は、計測データが採取されると、ステップ927で、該当する切り替器452をオンからオフに制御して発光素子43,受光素子44の電源供給を停止する。
【0042】
ステップ928では、計測データを計測した計測時刻と計測データを通信回路62から通信装置8に送信し、ステップ929で計算機9の計測終了判定により計測終了と判定されると計測を終了する。
【0043】
図4に示すステップ912で述べたように、該当するセンサのパラメータを変更する場合は、割り込み動作として図5に示すステップ930でマイクロプロセッサ61のパラメータ変更を実行する。
【0044】
本実施例によれば、光透過型のフィルタでトラップされた不純物質により透過光の光量減少を検知して、ろ過膜の破断・損傷が生じ原水がろ過水側にリークしたことを迅速に検知できる。また、各センサのデータを一括管理して膜ろ過プラントを監視でき、これより、不純物質のリークを検知することにより、どのろ過膜モジュールの膜に損傷が発生したかを検知することができ、ろ過水の水質確保の観点,迅速なろ過膜モジュールの補修の観点から実用的な測定装置を提供できる。
【実施例2】
【0045】
本発明の実施例2を図6により説明する。図6に示すように、本実施例では、実施例1に示すろ過膜破損検出用センサ4と通信モジュール6をろ過水側の配管5の外部に設置している。
【0046】
本実施例では、図6に示すように、ろ過水側の配管5に導水配管52を接続し、導水配管52にろ過膜破損検出用センサ4を接続し、ろ過膜破損検出用センサ4に排水管53を接続しており、導水配管5からろ過水をろ過膜破損検出用センサ4に導き、不純物質のリークが生じているか否かの計測が行われる。
【0047】
ろ過膜破損検出用センサ4は、実施例1で説明したのと同様の構造であり、不純物質のリークのセンシングも同様に計測される。
【0048】
排水管53は、ろ過水側の配管5の導水配管52の接続部より静圧の低い部分に接続されるか、捕捉用フィルタ42を通過した水を外部に放出するようになっており、ろ過膜破損検出用センサ4の捕捉用フィルタ42を通過した水は、排水管53から配管5に戻されるか、排出水量が小さければ、外部に放出することも可能なようになっている。
【0049】
本実施例では、配管の外部にセンサを設置しているので、メインテナンスが容易であるメリットがある。
【実施例3】
【0050】
本発明の実施例3を図7により説明する。本実施例では、図7に示すように、捕捉用フィルタ42が、発光素子43と受光素子44を結ぶ軸線に対して斜め方向に設置されている。すなわち、捕捉用フィルタ42を透過する光の方向と捕捉用フィルタ42の面が90度より小さい角度で交わるように、発光素子43と受光素子44,捕捉用フィルタ42を配置している。
【0051】
捕捉用フィルタ42でトラップされる不純物質は、捕捉用フィルタ42の表面や内部に付着するが、光の方向と捕捉用フィルタ42の面が90度より小さい角度であるので、付着した不純物質に対し斜めから光が照射されることになる。このため、光の透過長さを考えると、トラップされた不純物質の見かけの厚さが大きくなり、不純物質の厚みが増すとその減光量も増加し、この結果、トラップ不純物物質の総量に対して検出感度が増加する効果がある。
【実施例4】
【0052】
本発明の実施例4を図8により説明する。本実施例は、実施例1と同様に構成されているが、切り替器452Mには発光素子43,受光素子44の波長を変化させるための信号線がそれぞれ設けられ、発光素子43Mには2つの異なる波長帯を有する発光素子が設けられ、受光素子44は2つの波長帯に検出感度を有するように構成されている。又、切り替器452Mは、発光素子に対応して電源を切り替えるようになっている。ここで、受光素子44は、2つの波長帯に検出感度を有する1個の受光素子で構成したが、各々異なる波長帯に検出感度を有する2個の受光素子で構成してもよい。
【0053】
計算機9から自動、又は操作員の指令入力によるパラメータ設定で波長帯を切り替えるようになっている。計算機9から送信された制御信号を通信モジュール6で受信すると、
マイクロプロセッサ61の制御信号により、電源の切り替器452Mの波長帯を切り替えるとともに、電源をオンに切り替える。このように、本実施例では、計算機9から自動、または、操作員の指令によるパラメータ設定で波長の異なる発光素子を切り替えることができるようになっている。
【0054】
本実施例では、不純物質の遮光特性に波長依存性がある場合に有効である。また、波長依存性がない場合でも、複数の波長で透過光量を検出し、センシングの信頼性を増す効果がある。
【実施例5】
【0055】
本発明の実施例5を図9により説明する。本実施例では、実施例1と同様に構成されており、発光素子43,受光素子44に電源を供給するが、本実施例では、切り替器452Vから発光素子43と受光素子44にそれぞれ制御信号線が設けられ、発光素子43に供給する電源レベルを制御できるようになっている。
【0056】
計算機9から自動、又は操作員の指令入力によるパラメータ設定で発光素子43の発光光量レベルを制御する。
【0057】
電源の切り替器452Vは、発光素子43の電源レベルをコントールし、その発光光量を制御する。発光光量の制御には、時間的に一定の光量制御の他、ある周波数の正弦波や他の波形で変調でき、受光信号を復調することにより、周囲の電気雑音が多い場合でも受光光量の変化を正確に検出できる。本実施例の変形例として、受光信号の増幅度を制御することも考えられる。
【0058】
本実施例によれば、何らかの原因、例えば発光素子や受光素子の表面が曇るなどの原因で、検出光量が低下した場合に有効である。
【実施例6】
【0059】
本発明の実施例6を図10,図11により説明する。本実施例では、流路にトラップする不純物質の粒径を変えられる捕捉用フィルタを設けている。
【0060】
フィルタ構造の一例を図10に示す。図10に示す例では、回転板42Rにろ過粒径の異なる複数(図10に示す例では8種類)の光透過型フィルタ42Fを設け、半円状に形成された駆動機46により回転板42Rを一定角度回転させるようになっている。駆動機46が設置されていない部分の光透過型フィルタ42Fが設置される位置には、回転板
42Rを挟んで両側に、発光素子43と受光素子44が設けられている。
【0061】
図10に示す例では、ろ過水は、光透過型フィルタ42Fを通過して上から下に流れ、発光素子43と受光素子44の間に位置するろ過粒径のフィルタについて、発光素子43からのフィルタ透過光を受光素子44で検出する。
【0062】
図11は、本実施例における電源回路45Rと通信モジュール6Rの構成図である。回転板42Rの駆動機46を駆動するため、駆動用電源47が設けられ、電源451と配線により接続され、駆動用電源47の制御のため、通信モジュール6Rから制御線が接続されている。駆動用電源47は、計算機9により自動設定の、又は操作員の指令入力によるパラメータ設定で制御される。
【0063】
光透過型フィルタ42Fは、駆動機46により一定角度回転させるようになっているが、現在どのろ過粒径の透過型フィルタを計測しているかの確認は、例えば、透過光がないように設定されたフィルタ位置を基準として、予め決められた既知のろ過粒径をろ過用のフィルタとして配列しておくことで判定できる。
【0064】
本実施例では、あるろ過粒径のフィルタで、そのろ過粒径以上の不純物物質をトラップする。種々のろ過粒径のフィルタで予め原水の光透過特性を求めておき、データベースとして記憶しておく。センシング結果をこのデータベースの分布と比較することにより、原水のリーク検出をより高信頼性をもって検出できる。
【実施例7】
【0065】
本発明の実施例7を図12,図13により説明する。本実施例は、実施例1の計算機9の処理内容の一部を通信モジュール6内のマイクロプロセッサ61で処理して、通信の回数を減少させるものである。
【0066】
本実施例では、実施例1の図4で示したステップ905からステップ908の処理が、
マイクロプロセッサ61で行われるように構成している。
【0067】
図12に示すように、実施例1の計算機9のステップ905からステップ908の処理が、図13に示すマイクロプロセッサ61の処理におけるステップ931からステップ
934で実行される。図13に示すように、ステップ931で、計測時刻,計測値の受信データを該当するろ過膜破損検出用センサ4のセンサ番号と紐付けして記憶領域に記憶し、ステップ932で、計測時刻,計測値からその時間的な変化を計算し、ステップ933で、計測値である光量の時間変化率が、あらかじめ設定した範囲内にあるかを判定する。光量の時間変化率が、設定範囲内であれば、光量変化が少ない、あるいは外乱によって変化したと判定し、光量の時間的変化率が設定値範囲を超える場合は、原水のリーク発生の可能性があり、ステップ934で、光量変化の継続する時間が設定範囲であるかを判定する。光量変化の継続する時間が設定範囲を超える場合は、該当するろ過モジュールにリークが発生したと判定する。
【0068】
図12において、ステップ905aでは該当するセンサでのリーク発生信号と、処理データを受信してメモリに記憶する。本実施例では、ステップ911で、記憶したデータを再吟味してパラメータの変更が必要か判定している。本実施例では、処理をマイクロプロセッサ61で実行し、通信の回数を減らすことができるため、図3で示した電源451が例えば電池などの場合、使用電力を削減して電池交換の間隔を長くできるメリットがある。
【実施例8】
【0069】
本発明の実施例8を図14,図15により説明する。本実施例は、実施例1と同様に構成されているが、通信モジュール6の代わりに計算機10を設け、ろ過膜破損検出用センサ4の信号を計算機10内のマイクロプロセッサ101で処理し、その結果を表示器102に表示して膜の破損を知らせるようにしている。
【0070】
マイクロプロセッサ101の処理内容は、図13に示す処理内容と同様であるが、本実施例では、図13のステップ923,ステップ928が不要であり、ステップ934の次のステップ935で該当するセンサでリークが発生したと判定されると表示器102に表示している。
【0071】
本実施例では、データをプラントで一括管理する必要がなく、通信に関する処理は不要となり、計算機9や通信装置8を不要とできるため、より安価な検出システムとなる。又、表示器に表示することにより、操作員はろ過モジュールに破損が発生したことを知ることができ、バルブ7を閉めるなどの操作ができる。
【0072】
以上説明したように、各実施例によれば、ろ過膜の破断・損傷による原水側からろ過水側にリークした不純物物質を、ろ過フィルタで補足し、その補足不純物によってろ過フィルタを通過する光の強度が低下することで検出できる。そのセンサ検出情報を通信によって管理用の計算機に伝送し、データの一括管理を行うことができる。
【0073】
フィルタを透過させる光の光源にはLED(Light Emitting Diode),受光素子としてはPD(Photo Diode) が使用でき、いずれも安価な素子である。また、フィルタも安価であり、これらの素子を各ろ過モジュールに設置しても経済的なデメリットは小さい。各センサでリークを検出すれば、破損したモジュールが特定できるため、破損モジュールの同定が可能となる。
【0074】
各ろ過モジュールに設置したセンサの情報は、各モジュールにある通信モジュールを使って管理・計測用の計算機に伝送され、各ろ過モジュールの健全性を監視する。また、ろ過モジュールの破損の兆候が検出されると、センサの計測間隔の短縮による破損兆候の詳細確認、その他の検出パラメータの変更などろ過プラントの特性に応じたセンシング環境を構築できるメリットがある。
【0075】
又、原水側からリークした不純物物質を検知し、これによりセンサを設置したろ過モジュールのろ過膜の破断・損傷を遅滞なく検出でき、水質を大きく損ねることなく必要な対策を迅速に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の各実施例では、ろ過膜の損傷により原水側からろ過水側にリークした不純物質をフィルタでトラップし、このフィルタの透過光がトラップした不純物質で遮光されて検出光が減光する現象を用いる。つまり、ろ過された水をセンサで監視し、リークを検出する。これらのセンサは、各ろ過モジュールに設置しており、各センサの受光レベルデータは、通信装置で計算機に送信され一括管理される。各センサで検出した受光信号の時間的変化などからリークの発生したろ過モジュールを検知し、ろ過停止などの必要な対策をたてることができ、ろ過水の水質確保の観点から産業上有効である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例1であるろ過膜破損検出システムの構成図である。
【図2】実施例1のろ過膜破損検出用センサの構成図である。
【図3】実施例1の電源回路と通信モジュールの構成図である。
【図4】実施例1の計算機の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例1のマイクロプロセッサの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2のろ過膜破損検出用センサの構成図である。
【図7】本発明の実施例3のろ過膜破損検出用センサの構成図である。
【図8】本発明の実施例4のろ過膜破損検出用センサの構成図である。
【図9】本発明の実施例5の電源の切り替器の構成図である。
【図10】本発明の実施例6のフィルタ構成を示す斜視図である。
【図11】実施例6の電源の切り替器の構成図である。
【図12】本発明の実施例7である計算機の動作を示すフローチャートである。
【図13】実施例7のマイクロプロセッサの動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施例8の電源回路と計算機の構成図である。
【図15】実施例8の計算機の動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0078】
1…原水タンク、2…送水ポンプ、3…膜式ろ過モジュール、4…ろ過膜破損検出用センサ、5…配管、6,6R…通信モジュール、7…バルブ、8…通信装置、9,10…計算機、41…導水路、42…捕捉用フィルタ、42R…回転板、43,43M…発光素子、44…受光素子、45…電源回路、46…駆動機、47…駆動用電源、51…不純物質、52…導水配管、53…排水管、61,101…マイクロプロセッサ、62…通信回路、102…表示器、451…電源、452,452M,452V…切り替器。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を膜式モジュールに送水するポンプと、前記膜式モジュールの後段に接続されたろ過膜破損検出用センサと、該ろ過膜破損検出用センサに接続された通信モジュールを備え、前記ろ過膜破損検出用センサが、光透過特性を有しろ過水中の含有物質を補足するろ過フィルタと、該ろ過フィルタに光を投光する発光素子と、透過光を検出する受光素子と、発光素子と受光素子の計測時に電源を供給するよう制御される電源部で構成した膜式ろ過装置。
【請求項2】
原水を送水するポンプと、該ポンプにバルブを介して接続される複数の膜式ろ過モジュールと、該膜式ろ過モジュールの後段に接続され、光透過特性を有しろ過水中の含有物質を補足するろ過フィルタと、該ろ過フィルタに光を投光する発光素子と、透過光を検出する受光素子で構成したろ過膜破損検出用センサと、該ろ過膜破損検出用センサに接続される通信モジュールと、該通信モジュールと送受信する通信装置を具備し、受光素子の検出信号の処理と前記ろ過膜破損検出用センサの測定条件を設定する計算機とを備え、該計算機は、前記受光素子の検出信号からろ過膜が損傷した膜式ろ過モジュールを特定するろ過膜破損検出システム。
【請求項3】
前記計算機は、前記受光素子の検出信号の時間変化または信号の大きさが予め設定した値にあるか否かを比較することにより膜式ろ過モジュールにろ過機能の損傷があると判定する請求項2に記載のろ過膜破損検出システム。
【請求項4】
前記計算機は、前記各膜式ろ過モジュールでの光素子の検出信号の時間変化または信号の大きさを比較し、他の膜式ろ過モジュールの計測値と異なると判定された膜式ろ過モジュールに原水のリーク発生の可能性があると判定し、閾値を超える場合は、該当する膜式ろ過モジュールにろ過機能の損傷があると判定する請求項に記載のろ過膜破損検出システム。
【請求項5】
前記ろ過膜破損検出用センサは、複数の膜式ろ過モジュール毎、又はグループ毎のろ過水が流入するろ過水配管内、又は配管に設けた導水機構に設置された請求項2に記載のろ過膜破損検出システム。
【請求項6】
前記ろ過膜破損検出用センサは、前記ろ過フィルタが発光素子と受光素子の光路に対して設定された傾きとなるように設置されている請求項3に記載のろ過膜破損検出システム。
【請求項7】
前記ろ過膜破損検出用センサは、波長の異なる発光を行う発光素子と、該発光素子が発光した異なる波長の光を受光する受光素子を具備している請求項3に記載のろ過膜破損検出システム。
【請求項8】
前記ろ過膜破損検出用センサは、発光の強度を制御する、又は受光素子の検出増幅度を制御して透過光を計測する請求項3に記載のろ過膜破損検出システム。
【請求項9】
前記ろ過膜破損検出用センサは、含有物質透過径の異なる複数のフィルタを可変にできるものであって、受光素子の検出信号と、各フィルタの透過光強度を予め求めた強度パターンと比較して原水のリークを検出する請求項3に記載のろ過膜破損検出システム。
【請求項10】
前記ろ過膜破損検出用センサは、検出信号の時間変化又は信号の大きさを求める処理を行うマイクロプロセッサを具備する請求項3から9のいずれかに記載のろ過膜破損検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−49250(P2008−49250A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227292(P2006−227292)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】