説明

アウターローターモーター

【課題】専用設計されたモーターでは、それぞれの用途に応じて最適な仕様となっている為、モーターとしての効率は良いものの、用途別に多数の種類を開発しなければならず、その結果、1種類毎の生産数量が少なくなってしまい、量産効果が望めず、コストを下げる事ができい。
【解決手段】アウターローターモーターの外周に、ワンウェイクラッチ、又は電磁クラッチを介して第2のアウターローターモーターを装置し、使用状況や要求特性に応じて第2のモーターの運転・停止を切り替える事で、最適な動力特性や回生制動特性を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として乗り物・輸送機器・産業機械・家電製品に使用されるモーターで、固定されたステータの外周を、ローターが回転する、アウターローターモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車用のインホイールモーターとしてアウターローターモーターが主力になりつつあるが、まだ研究段階の域を脱しておらず、モーターは個別に、専用設計されたものが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
専用設計されたモーターでは、それぞれの用途に応じて最適な仕様となっている為、モーターとしての効率は良いものの、用途別に多数の種類を開発しなければならず、その結果、1種類毎の生産数量が少なくなってしまい、量産効果が望めず、コストを下げる事ができい。
コストが下がらない事で普及が遅れ、普及が遅れればさらにコストが上がってしまうとの悪循環を起こしている。
また、使用状況に応じて容量を切り替え、最適なモーターや回生制動装置として使用する事ができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
アウターローターモーターの外周に、ワンウェイクラッチ、又は電磁クラッチを介して第2のアウターローターモーターを装置し、使用状況や要求特性に応じて第2のモーターの運転・停止を切り替える事で、最適な動力特性や回生制動特性を得る。
具体的には、請求項1から請求項8のいずれかに記載された通りに構成する。
【発明の効果】
【0005】
本発明品によれば、モーターの軸方向長さを増加させずにコイルやマグネットの容量を増やす事が可能で、薄型高出力モーターを得る事ができる。
また、用途に応じて、内側の第1のモーターだけでの運転と、第1のモーターと第2のモーターを両方共使用する運転とを切り替える事が可能で、出力制御の幅が格段に広がる。
さらに、小型モーターと大型モーターと、2種類の開発・生産を行う場合に比べ、開発費用を格段に減らす事が可能で、物流や在庫管理上も、大きな効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
アウターローターモーターの外周に、ワンウェイクラッチ、又は電磁クラッチを介して第2のアウターローターモーターを装置する。
【実施例】
【0007】
本発明の実施例は、請求項1から8で詳述された通りである。その一例を次に示す。
【0008】
図1は、本発明品のアウターローターモーターである。回転軸、即ち、被駆動軸2の端部にはスプライン3が設けられ、ローター6のスプラインと嵌合している。ローター6は、ワッシャ4とボルト5で、回転軸2に固定されている。ステータ7は、モーターを取り付ける機器11に固定されている。尚、図1は、軸心1に対して対称なので、下半分は省略してある。
9は、ローター6の外周にワンウェイクラッチ8を介して装置されたローターであり、10はローター9を回転させる為のステータである。ここで、6と7の組合せを第1のモーターと呼び、9と10の組合せを第2のモーターと呼ぶ。
通常は、第1のモーターだけで回転軸2を駆動する。その際、ワンウェイクラッチ8が滑っているので、第2のモーターは何も作用していない。高出力が必要な場合には、第2のモーターにも通電する。その結果、ワンウェイクラッチ8が接続され、第1と第2の2つのモーターにより、高出力を得る事ができる。
以上が、請求項1及び請求項2に記載の本発明の実施例である。
【0009】
図2は、本発明品のアウターローターモーターであり、請求項3から5に記載された構成を表す。
軸12は各種装置や自動車の車体などの固定部11に固定され、ベアリング4を介して第1のモーターのローター15が軸上を回転自在に保持される。この場合、軸とベアリング、及びベアリングとローターを圧入により組付ければ、回転自在に保持できる。
このモーターを電気自動車のインホイールモーターとして利用し、ホイールを直接駆動する場合は、ローター15にホイール取り付けボルト14を回転対称に装置し、ホイールを取り付ける。第2のモーターのローター9と、第1のモーターのローター15との間には電磁クラッチ13を装置し、接続と切断をコントロール自在に構成する。
以上の構成により、第1のモーターだけで運転する事も、第1のモーターと第2のモーターと両方で運転する事も可能となり、色々な走行制御が可能となる。また、第1のモーターで運転中に、第2のモーターを発電機として使用する方法や、第1のモーターで運転中に第2のモーターで制動する方法など、既存のモーターでは不可能な制御も可能となる。
【0010】
図2において、ステータ7とステータ7は、独立して固定部11に取り付ける。また、振動を防止する為、取り付け部は弾性部材を介在させた弾性結合とし、モーターからの反トルクを受ける為、トルクロッドで固定部11と連結しても良い。
尚、薄型高出力モーターである本発明の特徴を生かし、車両の床下の狭い隙間にモーターを配置し、ベベルギアを介して左右両輪を駆動する電気自動車を作る事も可能となる上、車両の大きさに合せ、第2のモーターの有無や大きさを選定する事で、設計の自由度が飛躍的に向上する。
また、第2のローターに、直接ホイールを取り付ければ、電気自動車用のインホイールモーターとしても活用で、ローターを遠心式ポンプとして活用すれば、モーターの空冷も可能である。
以上が、請求項5から請求8に記載の本発明の実施例である。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明によれば、低コストで薄型高出力モーターを得る事ができる。また、第1のモーターと第2のモーターへの通電や、回生制動を自在に制御する事で、既存技術では到底不可能だった制御が可能となり、特に電気自動車に活用すれば、利便性が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明品の請求項1及び請求項2に記載の本発明品の断面図を表す。
【図2】本発明品の請求項3から請求項5に記載の本発明品の断面図を表す。
【符号の説明】
【0013】
1、軸心
2、回転軸(出力取り出し軸)
3、スプライン嵌合部
4、ワッシャ
5、ボルト
6、第1のローター(スプライン嵌合用)
7、第1のステータ
8、ワンウェイクラッチ
9、第2のローター
10、第2のステータ
11、固定部(自動車においては、車体構成部品に相当する)
12、固定軸
13、電磁クラッチ
14、ホイール取り付けボルト
15、第1のローター(ベアリング保持用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターローターモーターにおいて、第1のモーターの第1ローターの外周側に、直径の大きな第2ステータと第2ローターで構成される第2のモーターを装置し、第1ローターと第2ローターとを接続すると伴に、モーターの駆動力を被回転物に伝達する為の取り付け装置を、第1ローターに設けた事を特徴とする、アウターローターモーター。
尚、駆動力を伝達する取り付け装置とは、スプライン嵌合部、又はベアリング圧入部、又は被駆動物取付け用のボルト、又は被駆動物取付け用貫通孔を指す。
【請求項2】
第1ローターと第2ローターの間に、機械式ワンウェイクラッチを装置し、第2ステータに通電しない時は接続が切断され、第1ローターのみで駆動可能に構成した事を特徴とする、請求項1に記載のアウターローターモーター。
【請求項3】
第1ローターと、第2ローターの間に電磁クラッチを装置し、駆動力の接続と切断を自在に制御可能に構成した事を特徴とする、請求項1に記載のアウターローターモーター。
【請求項4】
電気自動車用のアウターローターモーターであって、通常運転時は第1のモーターのみが稼動し、加速時と回生ブレーキ時のみ、第2のモーターが稼動する様に装置した事を特徴とする、請求項3に記載のアウターローターモーター。
【請求項5】
第1ステータと、第2ステータは、それぞれ独立して固定部品に弾性結合した事を特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のアウターローターモーター。尚、弾性結合とは、結合部にゴム又は樹脂を介在させ、ステータが微動可能にボルト止めした構成を指し、微動可能に装置された部分と、車体や装置の固定部とを、トルクロッドで結合し、可動範囲を規制した構成も含む。
【請求項6】
電気自動車用のアウターローターモーターであって、車両の中央部近傍を前後方向に切断する切断面に平行に、モーターの回転軸を配置し、ベベルギアを介して左右の両輪に回転力を伝達可能に構成した事を特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のアウターローターモーター。
車両の中央部近傍を前後方向に切断する切断面に平行に、モーターの回転軸を配置するとは、モーターを床下に吊り下げ、略垂直の回転軸でベベルギアを駆動し、略水平のアクスルシャフトを介して左右両輪を駆動する構成などの回転軸配置方向を指す。
【請求項7】
以下のいずれかの構成により、第2のローターに、車輪のホイールを取り付けた事を特徴とする、請求項4から6のいずれかに記載のアウターローターモーター。
1,ローターの端面に取り付けたボルトをホイールの貫通孔に挿入し、ナットで固定する。
2,ローターの端面設けたメネジにホイールの貫通孔を合わせ、ボルトで固定する。
3,ローターの外周に、ホイールを圧入、又はネジ止めする。
4,ローターとホイールを一体成形する。
5,ローターの外周にフランジを設け、フランジに開けた貫通孔にホイールの貫通孔を合わせ、ボルト及びナットで固定する。
6,ローターの外周にフランジを設け、フランジに取り付けたボルトにホイールの貫通孔を合わせ、ナットで固定する。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの構成において、ステータ又はステータが取り付けられた固定部に密封用シールを取り付け、そのリップ部をローターの内周面、又は端面に接触させ、ゴミや水がローターの内側に入らない様に、即ち、ステータにゴミや水が触れない様に装置するとともに、以下のいずれかの構成とした事を特徴とする、アウターローターモーター。
1,ステータ取り付け部近傍に貫通孔を設け、ローターの内側の空間と外気とを連通させた。
尚、外気と連通させる構成は、貫通孔にパイプを取り付け、パイプの解放端を回転軸よりも上部、又は下部に装置した構成や、外気と連通する部分に弁を設けた構成も含む。
2,ステータ取り付け部近傍に貫通孔を設け、ローターの内側の空間と外気とを連通させると共に、ローターの外周に遠心力で開く弁を設け、ローターの回転によるポンプ作用で、ローター内の空気を吐出する様に構成した。
尚、外気と連通させる構成は、貫通孔にパイプを取り付け、パイプの解放端を回転軸よりも上部、又は下部に装置した構成や、外気と連通する部分に弁を設けた構成も含む。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−17370(P2013−17370A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159375(P2011−159375)
【出願日】平成23年7月2日(2011.7.2)
【出願人】(512197032)
【Fターム(参考)】