説明

アウターロータ形エンジン発電機

【課題】 点火用の永久磁石の取付け部における構造の簡略化と小型軽量化とを図れるアウターロータ形エンジン発電機を得る。
【解決手段】 ロータヨーク2の周方向の外周面のある位置に点火用の希土類磁石5を接着固定する。希土類磁石5を間にしてロータヨーク2の周方向の外周面の両側には、磁極8a,8bをそれぞれ設ける。希土類磁石5の表面の磁極5aと2つの磁極8a,8bとにより、ロータヨーク2の周方向に並ぶ点火用磁石界磁の3つの磁極8a,5a,8bを形成する。点火用磁石界磁の各磁極8a,5a,8bに対向する磁極部9a,9bを有する鉄心9に一次コイル及び二次コイルからなるコイル部10を巻装してなる点火コイル11をロータヨーク2の外周側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンを原動機として発電するアウタロータ形エンジン発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】アウタロータ形エンジン発電機は、エンジン(内燃機関)の回転軸に取り付けられるアウタロータと、該アウタロータの内側に配置されるステータとにより構成される。
【0003】アウタロータは、ほぼカップ状のロータヨークと、等角度間隔で配置されて該ロータヨークの周壁部の内周に固定された複数の円弧状の主磁石とにより構成される。またステータは、アウタロータの磁石界磁に対向する磁極部を有する電機子鉄心と該電機子鉄心に巻回された電機子コイルとにより構成され、ロータの回転に伴って電機子コイルに交流電圧を誘起する。
【0004】エンジン発電機においては、エンジンを点火するために点火装置を設ける必要がある。エンジンを点火する点火装置としては、エンジンにより駆動される点火用マグネトと、該マグネトに設けられた点火コイルの一次電流を制御してその二次コイルに点火用の高電圧を誘起させる一次電流制御回路とを備えたものが多く用いられている。
【0005】点火用マグネトは、ステータを構成する点火コイルと、エンジン発電機のロータを利用して構成した点火用磁石界磁とにより構成される発電機で、点火コイルの一次コイルにエンジンの回転に同期した交流電圧を誘起する。
【0006】上記点火用マグネトを構成するために、点火コイルをアウタロータの内側に配置すると、発電機の本来の負荷を駆動する発電コイルを配置するためのスペースが少なくなるため、発電機の出力が低下するという問題が生じる。
【0007】またアウタロータが多極に構成される場合に、点火コイルを該ロータの内側に配置すると、点火コイルの一次コイルにエンジンの1回転当たり複数サイクルの交流電圧が誘起するため、点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧が1回転当たり複数回誘起して点火プラグに無駄火が飛ぶことになり好ましくない。
【0008】上記のような問題が生じるのを防ぐため、アウタロータのロータヨークの周壁部の外周側に点火用磁石界磁を構成するための専用の永久磁石を取り付けて、該点火用磁石界磁を構成する永久磁石に、アウタロータの外側に配置した点火コイルの鉄心の磁極部を対向させることにより点火用マグネトを構成するようにしたものがある。
【0009】図3は、従来のこの種のアウターロータ形エンジン発電機の要部構成を示す横断面図である。
【0010】このアウターロータ形エンジン発電機は、図示しないエンジン(内燃機関)の回転軸に取り付けられるアウタロータ1と、該アウタロータ1の内側に配置される図示しないステータとにより構成されている。
【0011】アウタロータ1は、ほぼカップ状のロータヨーク2と、等角度間隔で配置されて該ロータヨーク2の周壁部の内周に固定された複数の円弧状のフェライト磁石よりなる主磁石3とにより構成されている。また、図示しないステータは、アウタロータ1の磁石界磁に対向する複数の磁極部を有する電機子鉄心と、該電機子鉄心の各磁極部に巻回された電機子コイルとにより構成され、ロータの回転に伴って電機子コイルに交流電圧を誘起するようになっている。
【0012】ロータヨーク2の外周面には、1つの主磁石3に対応した位置に取付け用凹部4が形成され、この取付け用凹部4内には点火用の永久磁石としてフェライト磁石5´が配置され、この点火用のフェライト磁石5´の表面の磁極(この例では、S極)には磁極片6が重ねられてネジ7によりロータヨーク2に固定されている。このフェライト磁石5´の表面の磁極5a´(この例では、S極)と、この磁極5a´を間にしたロータヨーク2の周方向の両側の磁極(この例では、それぞれN極)8a,8bとにより、ロータヨーク2の周方向に並ぶ点火用磁石界磁の3つの磁極8a,5a´,8bが形成されている。
【0013】点火用磁石界磁のこれら磁極8a,5a´,8bに対向する磁極部9aを有する鉄心9に一次コイル及び二次コイルからなるコイル部10を巻装してなる点火コイル11がロータヨーク2の外周側に配置されている。
【0014】これらステータを構成する点火コイル11とエンジン発電機のアウターロータ1を利用して構成した点火用磁石界磁とにより、点火用マグネトが構成されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のアウターロータ形エンジン発電機では、ロータヨーク2として鋳鉄製のロータヨークが用いられ、永久磁石としては一般に抗磁力が大きく残留磁束密度が小さいフェライト磁石が用いられていた。このうちの点火用のフェライト磁石5´は、その低磁束密度のせいで点火に必要なエネルギーを与えるためには、断面積が大きく、ある長さを持った形状となり、このため磁石そのものの体積が大きくなり、また低磁束密度のため磁束を集中する磁極片6が必要である。このためフェライト磁石5´と磁極片6との合計重量が重くなり、ロータヨーク2の外周にはネジ7やリベットで固定しなければならず、フェライト磁石5´の取付け部における重量の増大と構造の複雑化をまねく問題点があった。
【0016】また、点火用のフェライト磁石5´を取り付ける取付け用凹部4は、点火用のフェライト磁石5´の形状により大きくしなければならず、このためロータヨーク2の外周壁は厚くなり、重くなる問題点があった。さらに、この取付け用凹部4が大きいためアンバランス形状のロータヨーク2となり、回転体として使用されるこのロータヨーク2のアンバランス量が大となり、これを補正する時間が多くかかる問題点があった。
【0017】本発明の目的は、点火用の永久磁石の取付け部における構造の簡略化と小型軽量化とを図れるアウターロータ形エンジン発電機を提供することにある。
【0018】本発明の他の目的は、ロータヨークの外周に取付け用凹部を設ける必要のないアウターロータ形エンジン発電機を提供することにある。
【0019】本発明の他の目的は、点火用の永久磁石の取付け部でのロータヨークのアンバランス量の増大を防止できるアウターロータ形エンジン発電機を提供することにある。
【0020】本発明の他の目的は、点火コイルの鉄心の磁極部に対向する点火用磁石界磁の3つの磁極とのエアギャップの間隔を容易に一定化することができるアウターロータ形エンジン発電機を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明は、エンジンの回転軸に取り付けられるほぼカップ状のロータヨークの周壁部の内周に複数の円弧状の主磁石を固定して磁石界磁を構成してなるアウタロータと、該アウタロータの磁石界磁に対向する磁極部を有する電機子鉄心と該電機子鉄心に巻回された電機子コイルとを有して前記アウタロータの内側に配置されるステータとを備えたアウタロータ形エンジン発電機を改良するものである。
【0022】本発明に係るアウタロータ形エンジン発電機においては、ロータヨークの周方向の外周面のある位置に点火用の希土類磁石が接着固定されている。この希土類磁石を間にしてロータヨークの周方向の外周面の両側には、磁極がそれぞれ設けられている。これら希土類磁石の表面の磁極と2つの磁極とにより、ロータヨークの周方向に並ぶ点火用磁石界磁の3つの磁極が形成されている。点火用磁石界磁の各磁極に対向する磁極部を有する鉄心に一次コイル及び二次コイルを巻装してなる点火コイルが、ロータヨークの外周側に配置されている。
【0023】このようなアウタロータ形エンジン発電機では、点火用の永久磁石として希土類磁石を用いており、この希土類磁石はフェライト磁石に比べて抗磁力も残留磁束も大きいため、フェライト磁石に比べて十分小さな体積で点火に必要なエネルギーを得ることができる。また、希土類磁石は磁気吸引力が強いので、接着剤と磁気吸引力により容易にロータヨークの外周に固定することができる。また、希土類磁石は高磁束密度のため、磁束を集中する磁極片が不要になる。さらに、希土類磁石は薄くすることができて、ロータヨークの外周に取付け用凹部を設けずに接着固定することができる。このため点火用の永久磁石の取付け部における構造の簡略化と小型軽量化とを図ることができ、且つ点火用の永久磁石の取付け部でのロータヨークのアンバランス量を少なくすることができる。
【0024】本発明では、希土類磁石を間にしてロータヨークの周方向の外周面の両側に設ける2つの磁極は、該ロータヨークの一部を外向きに打ち出して突起として形成することが好ましい。このように2つの磁極を突起として設けると、点火コイルの鉄心の磁極部に対向する点火用磁石界磁の3つの磁極とのエアギャップの間隔を容易に一定化することができる。また、この2つ突起よりなる磁極はロータヨークの一部を外向きに打ち出して形成するので、簡単にしかもロータヨークの重量の増加を招くことなく形成することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係るアウタロータ形エンジン発電機における実施の形態の第1例を示す要部横断面図である。なお、前述した図3と対応する部分には、同一符号を付けて示している。
【0026】本例のアウタロータ形エンジン発電機においては、ロータヨーク2の周方向の外周面のある位置に、例えば2mm程度の薄型の点火用の希土類磁石5が、例えばアクリル系等の接着剤による接着と磁気吸引力とにより固定されている。この希土類磁石5は、ロータヨーク2の半径方向に着磁され、本例では表面がS極よりなる磁極5aになっており、裏面がN極よりなる磁極になっている。この希土類磁石5を間にしてロータヨーク2の周方向の外周面の両側には、磁極8a,8bがそれぞれ設けられている。これら希土類磁石5の表面の磁極5aと2つの磁極8a,8bとにより、ロータヨーク2の周方向に並ぶ点火用磁石界磁の3つの磁極8a,5a,8bが形成されている。点火用磁石界磁の各磁極8a,5a,8bに対向する磁極部9a,9bを有する鉄心9に一次コイル及び二次コイルよりなるコイル部10を巻装してなる点火コイル11が、ロータヨーク2の外周側に配置されている。
【0027】これらステータを構成する点火コイル11と、エンジン発電機のロータヨーク2の外周に設けた点火用磁石界磁の3つの磁極8a,5a,8bにより、点火用マグネトが構成されている。
【0028】このようなアウタロータ形エンジン発電機では、点火用の永久磁石として希土類磁石5を用いており、この希土類磁石5はフェライト磁石に比べて抗磁力も残留磁束も大きいため、フェライト磁石に比べて十分小さな体積で点火に必要なエネルギーを得ることができる。また、希土類磁石5は磁気吸引力が強いので、接着剤と磁気吸引力により容易にロータヨーク2の外周に固定することができる。また、希土類磁石5は高磁束密度のため、磁束を集中する磁極片が不要になる。さらに、希土類磁石5は薄くすることができて、ロータヨーク2の外周に取付け用凹部を設けずに接着固定することができる。このため点火用の永久磁石の取付け部における構造の簡略化と小型軽量化とを図ることができ、且つ点火用の永久磁石の取付け部でのロータヨーク2のアンバランス量を少なくすることができる。
【0029】図2は本発明に係るアウタロータ形エンジン発電機における実施の形態の第2例を示す要部横断面図である。なお、前述した図1と対応する部分には、同一符号を付けて示している。
【0030】本例のアウタロータ形エンジン発電機においては、点火用の希土類磁石5を間にしてロータヨーク2の周方向の外周面の両側には、該ロータヨーク2の一部を外向きに打ち出して形成した磁極8a´,8b´がそれぞれ設けられている。その他の構成は、前述した第1例と同様になっている。
【0031】このように2つの磁極8a´,8b´を突起として設けると、点火コイル11の鉄心9の磁極部9a,9bに対向する点火用磁石界磁の3つの磁極8a´,5a,8b´とのエアギャップの間隔を容易に一定化することができる。また、この2つ突起よりなる磁極8a´,8b´は、ロータヨーク2の一部を外向きに打ち出して形成するので、簡単にしかもロータヨーク2の重量の増加を招くことなく形成することができる。
【0032】
【発明の効果】本発明に係るアウタロータ形エンジン発電機では、点火用の永久磁石としてフェライト磁石に比べて抗磁力も残留磁束も大きい希土類磁石を用いているので、フェライト磁石に比べて十分小さな体積で点火に必要なエネルギーを得ることができる。また、希土類磁石は磁気吸引力が強いので、接着剤と磁気吸引力により容易にロータヨークの外周に固定することができる。また、希土類磁石は高磁束密度のため、磁束を集中する磁極片が不要になる。さらに、希土類磁石は薄くすることができて、ロータヨークの外周に取付け用凹部を設けずに接着固定することができる。このため点火用の永久磁石の取付け部における構造の簡略化と小型軽量化とを図ることができ、且つ点火用の永久磁石の取付け部でのロータヨークのアンバランス量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアウタロータ形エンジン発電機における実施の形態の第1例を示す要部横断面図である。
【図2】本発明に係るアウタロータ形エンジン発電機における実施の形態の第2例を示す要部横断面図である。
【図3】従来のアウタロータ形エンジン発電機の要部横断面図である。
【符号の説明】
1 アウタロータ
2 ロータヨーク
3 主磁石
4 取付け用凹部
5´ 点火用のフェライト磁石
5a´ 磁極
5 点火用の希土類磁石
5a 磁極
6 磁極片
7 ネジ
8a,8b,8a´,8b´ 磁極
9 鉄心
9a,9b 磁極部
10 コイル部
11 点火コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの回転軸に取り付けられるほぼカップ状のロータヨークの周壁部の内周に複数の円弧状の主磁石を固定して磁石界磁を構成してなるアウタロータと、前記アウタロータの磁石界磁に対向する磁極部を有する電機子鉄心と該電機子鉄心に巻回された電機子コイルとを有して前記アウタロータの内側に配置されるステータとを備えたアウタロータ形エンジン発電機において、前記ロータヨークの周方向の外周面のある位置に点火用の希土類磁石が接着固定され、前記希土類磁石を間にして前記ロータヨークの周方向の外周面の両側には磁極がそれぞれ設けられ、前記希土類磁石の表面の磁極と2つの前記磁極とにより前記ロータヨークの周方向に並ぶ点火用磁石界磁の3つの磁極が形成され、前記点火用磁石界磁の前記各磁極に対向する磁極部を有する鉄心に一次コイル及び二次コイルを巻装してなる点火コイルが前記ロータヨークの外周側に配置されていることを特徴とするアウタロータ形エンジン発電機。
【請求項2】 エンジンの回転軸に取り付けられるほぼカップ状のロータヨークの周壁部の内周に複数の円弧状の主磁石を固定して磁石界磁を構成してなるアウタロータと、前記アウタロータの磁石界磁に対向する磁極部を有する電機子鉄心と該電機子鉄心に巻回された電機子コイルとを有して前記アウタロータの内側に配置されるステータとを備えたアウタロータ形エンジン発電機において、前記ロータヨークの周方向の外周面のある位置に点火用の希土類磁石が接着固定され、前記希土類磁石を間にして前記ロータヨークの周方向の外周面の両側には該ロータヨークの一部を外向きに打ち出して形成した磁極がそれぞれ設けられ、前記希土類磁石の表面の磁極と2つの前記磁極突起とにより前記ロータヨークの周方向に並ぶ点火用磁石界磁の3つの磁極が形成され、前記点火用磁石界磁の前記各磁極に対向する磁極部を有する鉄心に一次コイル及び二次コイルを巻装してなる点火コイルが前記ロータヨークの外周側に配置されていることを特徴とするアウタロータ形エンジン発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−95216(P2001−95216A)
【公開日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−266288
【出願日】平成11年9月20日(1999.9.20)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】