説明

アウトリガ装置

【課題】 作業車両の安定性を高めることにより作業可能領域を広げ、高い安全性の下、高い作業性を実現可能とするアウトリガ装置の提供。
【解決手段】 ブラケット12、第1のアーム14、第2のアーム16、アウタボックス18、フロート20が連なるアウトリガ装置10において、ブラケット12、第1のアーム14、第1のリンク22、第2のリンク24、第4のリンク28、第5のリンク30、第1のシリンダ32により縦張出リンク機構を構成し、第2のアーム16、アウタボックス18、第2のリンク24、第3のリンク26、第2のシリンダ34により横張出リンク機構を構成し、第1のシリンダ32によって第1のアーム14の回動を可能とし、第2のシリンダ34によって第2のアーム16の回動を可能とし、第2のアーム16の先端部と第3のリンク26の基端部との距離変化を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の安定性を高めるアウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン等を搭載する作業車両は、作業時の車両の安定性を高めるためにアウトリガ装置を備える(例えば、特許文献1を参照)。一般的なアウトリガ装置を備える作業車両を図7に示す。作業車両1はトラッククレーンであり、作業車両1のシャーシフレームにサブフレーム3が搭載されている。サブフレーム3にクレーン5が搭載されており、サブフレーム3の後方側にクレーン5の旋回中心7が位置している。また、サブフレーム3の前後両端部に、それぞれ1対のアウトリガ装置50が搭載されている。
【0003】
図8に示すように、アウトリガ装置50は、中空のアウタボックス54、アウタボックス54に嵌装された横アウトリガ56、横アウトリガ56の先端に上端部が固定された縦アウトリガ60、縦アウトリガ60の下端に装着されたフロート62を有する。横アウトリガ56は横シリンダ64によって作業車両1の側方に伸縮可能に構成されており、縦アウトリガ60は縦シリンダ66によって上下に伸縮可能に構成されている。対をなすアウトリガ装置50同士は、前後に差し違いに配置されており、各アウトリガ装置50のアウタボックス54には作業車両1の車幅とほぼ同じ長さの横アウトリガ56が嵌装されている(図7を参照)。
【0004】
クレーン作業時には、各アウトリガ装置50のアウタボックス54から横アウトリガ56を作業車両1の左右側方に一杯に張り出し、縦アウトリガ60を伸長してフロート62を接地し、作業車両1の安定性を高める。作業終了時には、縦アウトリガ60を縮小し、横アウトリガ56をアウタボックス54に引き込み格納する。
かかるアウトリガ装置50において、各横アウトリガ56の張り出し長さは車幅とほぼ同じ長さとなる。横アウトリガ56の張り出し長さは長ければ長いほうが作業車両1の安定性は増すことになるが、このアウトリガ装置50ではクレーン5の張り出し長さを車幅より長くすることができない。
【0005】
また、アウトリガ装置50の構造上、横アウトリガ56の張り出し方向が作業車両1の左右の真横方向に限定されており、作業車両1の前方でクレーン作業する際、重量物である車両エンジンによってサブフレーム3の前端部にあるアウトリガ装置50を中心に転倒モーメントが働く。このため、作業車両1の後部が持ち上がる危険を防止しなければならず、作業車両1の前方におけるクレーン5の作業可能領域が制約を受けて狭くなり、クレーン5の吊り上げ能力が低下する。
【0006】
さらに、サブフレーム3の後端部にあるアウトリガ装置50とクレーン5の旋回中心7との距離を充分に長くとれない場合が多く、作業車両1の後方でクレーン作業する際、後端部のアウトリガ装置50を中心に転倒モーメントが働く。このため、作業車両1の前部が持ち上がる危険を防止しなければならず、作業車両1の後方におけるクレーン5の作業可能領域が制約を受けて狭くなり、クレーン5の吊り上げ能力が低下する。
【0007】
作業車両の側方でクレーン作業する際、作業車両の反対側が持ち上がる危険を防止し、クレーンの作業可能領域を広げるとともにクレーンの吊り上げ能力の低下を防止するために、多段式のアウトリガ装置が提唱されている(特許文献2を参照)。図9に示すように、このアウトリガ装置52は、多段構造の横アウトリガ58を有し、横アウトリガ58の張り出し長さが作業車両1の車幅以上の長さとなっている。
【0008】
また、作業車両前方でクレーン作業する際、作業車両の後部が持ち上がる危険を防止し、クレーンの作業領域を広げるとともにクレーンの吊り上げ能力の低下を防止するために、作業車両の前部に設置する前方支持用シリンダが提唱されている(特許文献3を参照)。図10に示すように、作業車両1の前部に前方支持用シリンダ68が設置されており、作業車両1の前方でクレーン作業する際、前方支持用シリンダ68により作業車両1の前部を支持する。
【特許文献1】実開昭57−138452号公報(第2図)
【特許文献2】実開昭54−92510号公報
【特許文献3】実開昭54−179607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、多段式のアウトリガ装置52において、横アウトリガ58が張り出す方向が作業車両1の真横方向である。作業車両1の前方又は後方でクレーン作業する際、作業車両1の後部又は前部が持ち上がりやすいという点は解決されておらず、クレーン5の作業可能領域が制約を受けて狭くなったままであり、クレーン5の吊り上げ能力が低下したままである。また、横アウトリガ58が多段構造となっているので、アウトリガ装置52の重量が増加し、そのコストが高くなる。
【0010】
前方支持用シリンダ68が配置された作業車両1において、前方支持用シリンダ68は作業車両1のシャーシフレームに直接固定されているため、作業車両1の前方で作業する際、負荷が大きくなるとシャーシフレームが変形してしまうという問題がある。このため、シャーシフレームが変形しないようにする補強等の対策が必要となる。また、前方支持用シリンダ68が必要であり、重量が増加するとともに、コストが高くなる。
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、アウトリガシリンダを増やすことなく全方向において作業車両の安定性を高めることにより作業可能領域の制約を減らし、高い安全性の下、高い作業性を実現可能とするアウトリガ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係るアウトリガ装置は、作業車両のフレームに固定されたブラケットと、ブラケットに、基端部を回動可能に枢支された第1のアームと、第1のアームの先端部に、基端部を回動可能に枢支された第2のアームと、第2のアームの先端部に、基端部を回動可能に枢支されたアウタボックスと、アウタボックスの先端部に、回動可能に枢支されたフロートと、ブラケットの第1のアームが枢支された位置とは異なる位置に、基端部を回動可能に枢支された第1のリンクと、第1のリンクの先端部に、基端部を回動可能に枢支されるとともに、第1のアームの先端部に、先端部を回動可能に枢支された第2のリンクと、第2のリンクの基端部に、基端部を回動可能に枢支され、アウタボックスの基端部と先端部の間に、先端部を回動可能に枢支された第3のリンクと、第1のアームを第1のアームの基端部の周りで回動させる第1の回動手段と、第2のアームを第2のアームの基端部の周りで回動させる第2の回動手段と、を有する。
【0012】
請求項1の発明によれば、ブラケットに第1のアームの基端部と第1のリンクの基端部がそれぞれ枢支され、第1のリンクの先端部に第2のリンクの基端部が枢支され、第1のアームの先端部に第2のリンクの先端部が枢支されているので、第1のアームがその基端部の周りを回動すると、第1のリンクと第2のリンクがブラケットに対して動く。第1のアームが起立すると第2のリンクがブラケットに対して上昇し、第1のアームが倒伏すると、第2のリンクがブラケットに対して下降する。第1のアームを起立させ又は倒伏させることによって、第2のリンクに連なる第2のアーム、アウタボックス、フロート及び第3のリンクもブラケットに対して上昇し又は下降する。
【0013】
第2のアームの基端部に第2のリンクの先端部が枢支され、第2のアームの先端部にアウタボックスの基端部が枢支され、第2のリンクの基端部に第3のリンクの基端部が枢支され、アウタボックスの基端部と先端部の間に第3のリンクの先端部が枢支されているので、第2のアームがその基端部の周りを第2のリンクに対して回動すると、第2のアームの先端部と第3のリンクの基端部との距離が変化する。第2のアームの先端部と第3のリンクの基端部との距離が小さくなると、アウタボックスの先端部が横方向に動いて第2のリンクから離れ、第2のアームの先端部と第3のリンクの基端部との距離が大きくなると、アウタボックスの先端部が横方向に動いて第2のリンクに近づく。アウタボックスから見て第2のリンクが存在する側はブラケットが存在する側であるので、第2のアームが回動すると、アウタボックスの先端部のフロートが横方向に移動し、ブラケットとフロートとの距離が変化する。
【0014】
アウトリガ装置が第1のアーム、第2のアーム及びアウタボックスを格納する場合、第1のアームを回動して起立させ、第2のアームを第2のリンクに対して回動し、第2のアームの先端部と第3のリンクの基端部との距離を最大にする。第1のアームが起立すると、第1のリンクがブラケットに引き寄せられ、第2のリンクが第1のアームに引き寄せられ、第1のアーム、第1のリンク及び第2のリンクが縦方向に折り畳まれて起立した状態となる。第2のアームの先端部と第3のリンクの基端部との距離を最大にすると、アウタボックスが第2のアームに引き寄せられ、第3のリンクが第2のリンクに引き寄せられ、第2のアーム、アウタボックス、第2のリンク及び第3のリンクが縦方向に折り畳まれて起立した状態となる。第1のアーム、第2のアーム及びアウタボックスがともに起立するので、格納状態のアウトリガ装置が占める面積は小さくなる。格納状態のアウトリガ装置が横方向に大きく張り出すことを防止しつつ、第1のアーム、第2のアーム及びアウタボックスの各長さを長くすることが可能となり、フロートの接地位置と作業車両との間の距離、すなわち、アウトリガ装置の張り出し長さを車幅よりも長くすることが容易である。
【0015】
アウトリガ装置から第1のアーム、第2のアーム及びアウタボックスを張り出す場合、第2のアームを第2のリンクに対して回動し、第1のアームを回動する。第2のアームが第2のリンクに対して回動すると、アウタボックスが張り出し、フロートが横方向に移動してブラケットから離れ、第1のアームが回動すると、フロートが接地する。第1のアームと第2のアームの回動をそれぞれ制御することで、第1のアーム、第2のアーム及びアウタボックスがブラケットから張り出す幅が変化し、フロートの接地位置が調整される。
なお、第1の回動手段、第2の回動手段として、例えば、シリンダ、モータ等を挙げることができる。
【0016】
請求項2の発明に係るアウトリガ装置は、請求項1記載のアウトリガ装置であって、第1の回動手段と第2の回動手段がそれぞれシリンダである。
請求項2の発明によれば、第1の回動手段と第2の回動手段をなす各シリンダのストロークをそれぞれ制御すれば、アウトリガ装置の格納と張り出しを制御でき、フロートの接地位置の制御も容易になされる。
【0017】
請求項3の発明に係るアウトリガ装置は、請求項1又は2に記載のアウトリガ装置であって、アウタボックスの張り出し方向が作業車両の斜め前方外側又は斜め後方外側である。
請求項3の発明によれば、作業車両の斜め前方外側又は斜め後方外側に、フロートを接地できる。そして、第1のアーム、第2のアーム及びアウタボックスの各長さを長くすれば、アウトリガ装置の張り出し長さを車幅よりも長くすることが容易に可能となり、張り出し長さの調整も容易である。作業車両の前方、側方、後方のいずれにおいて作業する際であっても、作業車両の安定性が確保され、作業可能領域が広がる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記のようなアウトリガ装置であるので、作業車両の安定性を高めることにより作業可能領域の制約が減り、高い安全性の下、高い作業性が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を図1から図6を参照しつつ説明する。図1は本発明に係るアウトリガ装置が格納状態にある作業車両の上面図、図2は本発明に係るアウトリガ装置が最大の張り出し状態にある作業車両の上面図、図3は格納状態にあるアウトリガ装置の側面図、図4はアウタボックスを張り出す過程におけるアウトリガ装置の側面図、図5は最大の張り出し状態にあるアウトリガ装置の側面図である、図6は最小の張り出し状態にあるアウトリガ装置の側面図である。
【0020】
図1及び図2に示す作業車両1はトラッククレーンであり、作業車両1のシャーシフレームにサブフレーム3が搭載されている。サブフレーム3にクレーン5が搭載されており、サブフレーム3の後方側にクレーン5の旋回中心7が位置している。また、サブフレーム3の前後両端部には、それぞれ1対のアウトリガ装置10が搭載されている。
【0021】
図5に示すように、アウトリガ装置10は、ブラケット12、第1のアーム14、第2のアーム16、アウタボックス18、フロート20を有する。サブフレーム3にブラケット12が固定されている。ブラケット12の中間部分に第1のアーム14の基端部が枢支され、その枢支軸40aの周りを第1のアーム14が回動可能となっている。第1のアーム14の先端部に第2のアーム16の基端部が枢支され、その枢支軸40bの周りを第2のアーム16が回動可能となっている。第2のアーム16の先端部にアウタボックス18の基端部が枢支され、その枢支軸40cの周りをアウタボックス18が回動可能となっている。アウタボックス18の先端部にフロート20が枢支され、その枢支軸40dの周りをフロート20が回動可能となっている。
【0022】
ブラケット12の下側部分に第1のリンク22の基端部が枢支され、その枢支軸40eの周りを第1のリンク22が回動可能となっている。第1のリンク22の先端部に第2のリンク24の基端部と第3のリンク26の基端部とがそれぞれ枢支され、その枢支軸40fの周りを第2のリンク24と第3のリンク26がそれぞれ回動可能となっている。第1のアーム14の先端部と第2のアーム16の基端部とを枢支する枢支軸40bに第2のリンク24の先端部が枢支され、枢支軸40bの周りを第2のリンク24が回動可能となっている。アウタボックス18の基端部よりも先端部側の位置に第3のリンク26の先端部が枢支され、その枢支軸40gの周りを第3のリンク26が回動可能となっている。第1のアーム14の基端部よりも先端部側の位置に第4のリンク28の基端部が枢支され、その枢支軸40hの周りを第4のリンク28が回動可能となっている。第4のリンク28の先端部に第5のリンク30の基端部が枢支され、その枢支軸40jの周りを第5のリンク30が回動可能となっている。ブラケット12の後方側(図5の右側)の位置に第5のリンク30の先端部が枢支され、その枢支軸40kの周りを第5のリンク30が回動可能となっている。
【0023】
第4のリンク28の先端部と第5のリンク30の基端部とを枢支する枢支軸40jに第1のシリンダ32の基端部が枢支され、枢支軸40jの周りを第1のシリンダ32が回動可能となっている。第1のアーム14の先端部と第2のアーム16の基端部とを枢支する枢支軸40bに第1のシリンダ32の先端部が枢支され、枢支軸40bの周りを第1のシリンダ32が回動可能となっている。第2のリンク24の基端部と第3のリンク26の基端部とを枢支する枢支軸40fに第2のシリンダ34の基端部が枢支され、枢支軸40fの周りを第2のシリンダ34が回動可能となっている。第2のアーム16の先端部とアウタボックス18の基端部とを枢支する枢支軸40cに第2のシリンダ34の先端部が枢支され、枢支軸40cの周りを第2のシリンダ34が回動可能となっている。
【0024】
そして、ブラケット12、第1のアーム14、第1のリンク22、第2のリンク24、第4のリンク28、第5のリンク30、第1のシリンダ32が、縦張出リンク機構を構成し、第2のアーム16、アウタボックス18、第2のリンク24、第3のリンク26、第2のシリンダ34が、横張出リンク機構を構成している。
【0025】
図2に示すように、サブフレーム3の前端部にある各アウトリガ装置10において、ブラケット12、第1のアーム14、第2のアーム16及びアウタボックス18が作業車両1の斜め前方外側に向かって並んでいる。サブフレーム3の後端部にある各アウトリガ装置10において、ブラケット12、第1のアーム14、第2のアーム16及びアウタボックス18が作業車両1の斜め後方外側に向かって並んでいる。
【0026】
次に、作用について説明する。
まず、アウトリガ装置10に第1のアーム14、第2のアーム16及びアウタボックス18が格納されている格納状態について図1及び図3を参照しつつ説明する。
格納状態のアウトリガ装置10において、第1のシリンダ32が縮小状態となり、第2のシリンダ34が伸張状態となっている。
第1のシリンダ32が縮小状態では、第1のシリンダ32の先端部に第1のアーム14の先端部が引き寄せられ、第1のシリンダ32が枢支軸40jの周りを回動し、第1のアーム14が枢支軸40aの周りを回動し、第1のシリンダ32と第1のアーム14がそれぞれ先端部を上方に向けて起立している。第1のシリンダ32が起立すると、第1のリンク22が枢支軸40eの周りを回動しブラケット12に引き寄せられて起立し、第2のリンク24がブラケット12に対して上昇し起立する。第1のアーム14、第1のリンク22、第2のリンク24がともに起立して、縦張出リンク機構が縦方向に折り畳まれた状態である。
【0027】
第2のシリンダ34が伸張状態では、枢支軸40cと枢支軸40fとの距離が大きくなる。第2のアーム16が枢支軸40bの周りを回動し先端部を上方に向けて起立し、第3のリンク26が枢支軸40fの周りを回動し第2のシリンダ34に引き寄せられて起立する。アウタボックス18の基端部が第2のシリンダ34の先端部により上方に引き上げられるとともに、アウタボックス18が枢支軸40gにおいて第3のリンク26に引き寄せられ、アウタボックス18が基端部を上方に向けて起立する。第2のアーム16、アウタボックス18、第2のリンク24、第3のリンク26及び第2のシリンダ34がともに起立して、横張出リンク機構が縦方向に折り畳まれた状態である。
格納状態において、縦張出リンク機構と横張出リンク機構がそれぞれ縦方向に折り畳まれて、アウトリガ装置10の占有面積が小さくなる。
【0028】
次に、格納状態にあるアウトリガ装置10を作業車両1から張り出し、その張り出し長さを最長とする場合について説明する。
まず、図3において、第1のシリンダ32を縮小状態としたまま、伸張状態にある第2のシリンダ34を縮小する(図4を参照)。第2のシリンダ34が縮小すると、枢支軸40cと枢支軸40fとの距離が小さくなり、第2のアーム16が枢支軸40bの周りを回動して第2のリンク24に引き寄せられ、第2のアーム16の先端部がブラケット12とは反対側(図4の左側)に向かって倒伏する。また、第3のリンク26が枢支軸40fの周りを回動し第2のリンク24から離れ、第3のリンク26の先端部がブラケット12とは反対側に向かって倒伏する。第1のシリンダ32が縮小状態のままであり、第2のリンク24はブラケット12に対して動かないので、第2のアーム16と第3のリンク26が倒伏するにつれて、アウタボックス18がブラケット12とは反対側に押し出され、同時に、アウタボックス18が枢支軸40gの周りを回動し、アウタボックス18の先端部のフロート20がブラケット12とは反対側に移動する。すなわち、縦方向に折り畳まれていた横張出リンク機構が広げられた状態となる(図4を参照)。
【0029】
次いで、縮小状態にある第1のシリンダ32を伸張する(図5を参照)。第1のシリンダ32が伸張すると、第1のアーム14が枢支軸40aの周りを回動し、第1のアーム14の先端部がブラケット12とは反対側(図5の左側)に向かって倒伏する。第1のアーム14が倒伏すると、第2のリンク24の先端部が枢支軸40bの周りを回動し、第1のリンク22の基端部が枢支軸40eの周りを回動し、第2のリンク24がブラケット12とは反対側の斜め下方に押し出されて移動する。そして、縦方向に折り畳まれていた縦張出リンク機構が広げられた状態となる。第2のリンク24は横張出リンク機構の一部をも構成しているので、第2のリンク24がブラケット12とは反対側の斜め下方に移動することによって、横張出リンク機構が第2のリンク24とともにブラケット12とは反対側の斜め下方に押し出されて移動し、アウタボックス18の先端部のフロート20が接地する(図5を参照)。
【0030】
次に、格納状態にあるアウトリガ装置10を作業車両1から張り出し、その張り出し長さを最短とする場合について説明する。
図3において、第2のシリンダ34を伸張状態としたまま、縮小状態にある第1のシリンダ32を伸張する。第1のアーム14が枢支軸40aの周りを回動して倒伏し、第2のリンク24の先端部が枢支軸40bの周りを回動し、第1のリンク22の基端部が枢支軸40eの周りを回動し、第2のリンク24がブラケット12とは反対側の斜め下方に押し出されて移動する。横張出リンク機構が縦方向に折り畳まれたまま、縦張出リンク機構のみが折り畳まれた状態から広げられる。縦張出リンク機構が広がって、第2のリンク24とともに折り畳まれた横張出リンク機構がブラケット12とは反対側の斜め下方に移動し、アウタボックス18の先端部のフロート20が接地する(図6を参照)。
【0031】
第2のシリンダ34のストロークを制御することによって、アウトリガ装置10の張り出し長さが最長の張り出し長さと最短の張り出し長さとの間で連続して無段階調整される。
例えば、最長の張り出し長さにおけるフロート20の接地位置と最短の張り出し長さにおけるフロート20の接地位置の中間の位置に、フロート20を接地する場合について説明する。第2のシリンダ34のストロークを、最長の張り出し長さのときの第2のシリンダ34のストロークと最短の張り出し長さのときの第2のシリンダ34のストロークとの中間の長さとする。そして、第1のシリンダ32を伸張すると、フロート20が目的の位置に接地する。
張り出し状態にあるアウトリガ装置10を格納する場合は、上記と逆の手順をとる。すなわち、第1のシリンダ32を縮小して、縦張出リンク機構を縦方向に折り畳む。縦張出リンク機構を折り畳んだら、第2のシリンダ34を伸張して、横張出リンク機構を縦方向に折り畳む。
【0032】
上記のようなアウトリガ装置10であるので、格納状態のアウトリガ装置10の占有面積が小さくなり、格納状態のアウトリガ装置10が作業車両1から側方に大きく突出することが容易に防止される。このため、第1のアーム14、第2のアーム16及びアウタボックス18の合計長さを長くしても、格納状態のアウトリガ装置10から第1のアーム14、第2のアーム16及びアウタボックス18が作業車両1の側方に大きく突出することを防止できる。また、格納状態のアウトリガ装置10同士が干渉することを容易に回避でき、各アウトリガ装置10の張り出し方向を自由に定めて各ブラケット12を自由にサブフレーム3に固定できる。
【0033】
なお、各ブラケット12をサブフレーム3に対して回動自在に取り付けて、各アウトリガ装置10を任意の方向に張り出すように構成することもできる。
したがって、アウトリガ装置10の張り出し長さを長くするためには、第1のアーム14、第2のアーム16、アウタボックス18の各長さを長くすれば良く、アウトリガ装置10を多段式にする必要がなく、アウトリガ装置10の重量の増加やコストの増大を防止できる。
【0034】
さらに、作業車両1の左右の斜め前方外側と左右の斜め後方外側に、アウタボックス18を大きく張り出すことが可能となっているので、作業車両1の前方、側方、後方のいずれにおいてクレーン作業をする場合であっても、作業車両1の安定性が増し、作業可能領域の制約が減り、広い作業可能領域で作業車両1の安定性を容易に確保でき、クレーン5の吊り上げ能力が低下することも防止され、クレーン作業の安全性と作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るアウトリガ装置が格納状態にある作業車両の上面図である。
【図2】本発明に係るアウトリガ装置が最大の張り出し状態にある作業車両の上面図である。
【図3】格納状態にあるアウトリガ装置の側面図である。
【図4】アウタボックスを張り出す過程におけるアウトリガ装置の側面図である。
【図5】最大の張り出し状態にあるアウトリガ装置の側面図である。
【図6】最小の張り出し状態にあるアウトリガ装置の側面図である。
【図7】従来のアウトリガ装置を備える作業車両の上面図である。
【図8】従来のアウトリガ装置の構造図である。
【図9】従来の多段式のアウトリガ装置を搭載する作業車両の正面図である。
【図10】従来の支持用シリンダを配置した作業車両の説明図であり、(i)は作業車両の正面図、(ii)は作業車両の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 作業車両
3 サブフレーム
5 クレーン
7 クレーンの旋回中心
10 アウトリガ装置
12 ブラケット
14 第1のアーム
16 第2のアーム
18 アウタボックス
20 フロート
22 第1のリンク
24 第2のリンク
26 第3のリンク
28 第4のリンク
30 第5のリンク
32 第1のシリンダ
34 第2のシリンダ
40a、40b、40c、40d、40e、40f、40g、40h、40j、40k 枢支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両のフレームに固定されたブラケットと、
ブラケットに、基端部を回動可能に枢支された第1のアームと、
第1のアームの先端部に、基端部を回動可能に枢支された第2のアームと、
第2のアームの先端部に、基端部を回動可能に枢支されたアウタボックスと、
アウタボックスの先端部に、回動可能に枢支されたフロートと、
ブラケットの第1のアームが枢支された位置とは異なる位置に、基端部を回動可能に枢支された第1のリンクと、
第1のリンクの先端部に、基端部を回動可能に枢支されるとともに、第1のアームの先端部に、先端部を回動可能に枢支された第2のリンクと、
第2のリンクの基端部に、基端部を回動可能に枢支され、アウタボックスの基端部と先端部の間に、先端部を回動可能に枢支された第3のリンクと、
第1のアームを第1のアームの基端部の周りで回動させる第1の回動手段と、
第2のアームを第2のアームの基端部の周りで回動させる第2の回動手段と、を有することを特徴とするアウトリガ装置。
【請求項2】
第1の回動手段と第2の回動手段がそれぞれシリンダであることを特徴とする請求項1記載のアウトリガ装置。
【請求項3】
アウタボックスの張り出し方向が作業車両の斜め前方又は斜め後方であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアウトリガ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−21914(P2006−21914A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203245(P2004−203245)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】